JP2010075681A - 光音響装置および光音響波を受信するための探触子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
被検体に照射された光に起因して該被検体から発生する光音響波を受信して、被検体の情報を得る光音響装置であって、
前記被検体に光を照射するための光源と、
前記光音響波を受信するための音響波受信器と、
前記光源より被検体内に入射した光が光拡散によって被検体外に出射する光を、再び被検体内に入射させるための光反射部材と、を有し、
前記光反射部材は弾性波を透過する構成とする。
【選択図】 図1
Description
光音響トモグラフィーは、光源から発生したパルス光を被検体に照射し、被検体内で伝播・拡散した光のエネルギーを吸収した生体組織から発生する音響波を検出する。
そして、それらの信号を解析処理し、被検体内部の光学特性値に関連した情報を可視化する技術である。
つまり、光音響効果とは、物体にパルス光を照明すると、被検体内の吸収係数が高い領域で体積膨張により超音波(疎密波)が発生する現象である。
上記パルス光を照射することによる体積膨張によって発生した超音波を、本発明において「光音響波」という。
このような光音響イメージングを用いることで、解像度の高い光学特性値分布が得られる。
一方、上記非特許文献1によれば、探触子表面に光が照射されると、被検体からの音響信号とは関係のない大きなノイズ信号が生じるため、リニアアレイ型超音波探触子の前面に超音波伝播に影響しないアルミ膜を配設することが記載されている。
また、特許文献1には、回転楕円体の光反射部材を用いて構成された生体画像化装置が提案されている。
つまり、得られる音響波の音圧は、被検体内の吸収体に到達する局所的な光量に比例する。ところが被検体に照射された光は、散乱と吸収により体内で急激に減衰する。
さらに、人体の場合、照射可能な光量には安全上の制限が規格によって定められているので、体内奥深くの組織にまで大きな光を到達させることは難しい。
そのため生体深部からの光音響波を得ることが困難となる。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、被検体内において光は強く散乱するため、与えたエネルギーの一部が光音響波の生成に寄与しないまま被検体外に出射されることが明らかとされた。
この被検体内で吸収されずに被検体外に出射してしまう拡散光を、再び被検体方向に反射させることによって、与えた光エネルギーの損失を抑制することが可能となる。
そのため、こうした損失光の有効活用が出来れば、体内深部の情報が画像化できたり、あるいは小型の光源が利用できたりというメリットがある。
この場合、光が被検体に照射される前に、光を楕円体の焦点に集めることで光が効率的に照射される。
しかし、そもそも被検体に入射後に生体外に出射してしまう拡散光について有効利用するというものではない。
また、この場合被検体は楕円体の焦点に位置している必要があり、またアレイ探触子などの大きな探触子は光をさえぎってしまい使用できない。
さらに、探触子を走査しながら信号を検出することもできない。このように使用上大きな制限が生じるため、汎用的なイメージング装置への適用は困難である。
しかし、その詳細なサイズ等は開示されていない。一般に、リニアアレイ型超音波探触子の幅は1cm程度、そのうち受診素子の幅は5mm程度であることから、探触子前面に配設された反射膜の幅は高々1cm程度である。
また、一般にリニアアレイ型超音波探触子には音響レンズが配設されており、凸型形状となっている。
本特許の発明者らによる検討によると、詳細は後述するが、このように、ノイズ除去の目的で配されるようなサイズの反射層があったとしても、体内方向への反射光量は必ずしも大きいものではなかった。
また、凸型の反射面で光が反射すると光が拡散するため、生体に照射される反射光のエネルギー密度はさらに小さくなる。
つまり、非特許文献1の構成は、さほど有効に光エネルギーを活用できず、単にノイズ除去の目的で構成されているものである。
以上のように、生体外に出射した光を有効活用することによって生体深部の光音響信号を観測できると考えられるものの、その詳細な解決手段について確立されていなかった。
本発明の光音響装置は、被検体に照射された光に起因して該被検体から発生する光音響波を受信して、被検体の情報を得る光音響装置であって、
前記被検体に光を照射するための光源と、
前記光音響波を受信するための音響波受信器と、
前記光源より被検体内に入射した光が光拡散によって被検体外に出射する光を、再び被検体内に入射させるための光反射部材と、を有し、
前記光反射部材は弾性波を透過することを特徴とする。
また、本発明の探触子は、被検体に照射された光に起因して該被検体から発生する光音響波を受信するための音響波受信器を有する探触子であって、
前記被検体に対向する受信面を有する探触子本体と、
前記測定面に設けられた光音響波の受信素子と、
被検体内に入射した光が光拡散によって被検体外に出射する光を反射させる光反射部材と、を有し、
前記測定面における該光反射部材の面積は、前記受信面における受信素子領域の面積より大きく設定されていることを特徴とする。
これらにより光利用効率が改善されることから、限られた光量で、従来よりも深い位置の診断が可能となる。
(実施形態1)
図1を用いて、本発明の光音響装置を適用した実施形態における生体情報イメージング装置の構成例を説明する。
図1において、1は被検体としての生体、2は光放射点、3は光源、4は光ファイバー、5は生体内を伝播する光、6は光反射部材、7は光吸収体、8は音響波、9は音響波受信器である。
また、生体情報イメージング装置とは別体でも構わないが、信号処理部10、画像表示部11を含んでもよい。
本実施形態の生体情報イメージング装置は、光を生体1に照射する、光放射点2を備える。
光放射点2に伝播させるために、光源3から出射した光は光ファイバー4を通じて伝播させてもよいし、反射鏡などにより空中を伝播させてもよい。
光反射部材6としては、使用する光において80%以上の反射率を持つものを用いるのが好ましい。
例えば、400nm以上、1600nm以下の範囲の光を照射光として用いる場合は、光反射性部材6をアルミニウムで形成したものが好適に使用される。
あるいは、近赤外領域の照射光を用いるのであれば該波長領域で反射率が高ければよく、金・銀・銅など用いる波長に応じて適宜選択することができる。
また、光反射部材上で音響波を検出する場合には、これらの光反射部材は光を反射すると共に音響波を透過することが必須である。
これに金属材料を用いるのであれば音響波を透過する程薄いもの、例えば厚み10μmほどのアルミ箔が好ましい。また、弾性波の透過率としては、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
また、光を反射し、音を透過するものとして誘電多層膜を用いた誘電体ミラーを使うこともできる。
こうして選択した光反射部材により測定部位内に光閉じ込めを行うことが出来、光吸収体に照射される光量が増加する。
特に本発明者の検討によれば、図2に示すように、前記光反射性部材6のように光放射点2の周囲の一部に配置するだけでも、従来の構成と比較して十分な効果があることが示される。
この反射性部材のサイズは大きいほど効果は大きいが、反射性部材を介して音響波を検出する場合には、そのサイズに関して次の臨界的意義に基づいて適切なサイズが規定される。
ここで、本発明において「受信面」とは、音響波受信器のうち実際の受信素子が配置される面を意味する。そして、受信面の中で、受信素子が配置される領域を「受信素子領域」と定義する。
このとき反射部材のサイズに関し、受信素子領域の一部だけが光反射部材で覆われている場合には、覆われている部分とそうでない部分とで信号強度の分布が生じたり、覆われていない部分のみからノイズが発生したりすることになる。こうした現象を避けるため、受信素子領域の全面を光反射部材で覆うことが好ましい。すなわち、光反射部材が、探触子の受信素子領域よりも大きいことが好ましい。
確実に受信素子領域を遮光する目的を達成させるための条件について、本発明者がさまざまなサイズにて検討した結果によると、受信素子領域の各辺よりも5mm以上大きな範囲で光反射部材を覆うことがより好ましい。
さらに体外に放出した光を、反射によって再び生体に戻す際に、反射面の形状が凸面であれば反射の際に拡散してしまうため、生体へと再入射するときの光のエネルギー密度が低下する。そのため、光反射部材は平面状であることが好ましい。また被検体側から見て凹面鏡の形状になっていることが、エネルギー密度を高める意味で、より好ましい。
図13を用いて説明する。
100は、生体1と接触しうる板状部材である。そして、板状部材は、光反射部材と生体への光照射領域との間に配置される。
生体1の屈折率は概ね1.37〜1.4である。このとき光反射部材6と生体1との間に介在する板状部材による屈折を考える。一般的な超音波ジェルや非特許文献1に記載の寒天製カップリングパッドの屈折率は概ね水と同等の屈折率であるので、1.33程度である。
生体の屈折率よりも小さい屈折率を有する部材が生体に接している場合、図13(a)のように生体から出射される光の出射角が大きくなるため、有限の面積を有する反射板に到達しない光が増加する。
また、上記光反射部材と同様の事情により、板状部材100についても、音響波を透過させる性質を有することが好ましい。こうした物質として、屈折率1.463であり音波の減衰が少ないポリメチルペンテンを使用することができる。
また、本実施形態においては、図5等に示すように、被検体への光照射領域に対する光反射部材の正射影が、該光照射領域と重複する領域を有するように、光反射部材が配置されていることが好ましい。
ここで、「被検体への光照射領域」とは、被検体に光を照射するにあたり、本発明の光音響装置が被検体を接触しうる箇所における光の出射領域を意味する。
すなわち、被検体が光音響装置の接触しているときは、この出射領域が被検体における光の被照射領域と一致することとなる。
上記のような構成とすることで、拡散光が被検体外に出射しやすい領域からの拡散光を重点的に被検体内へと反射させることができる。
また、電気信号の解析により、光学特性値分布情報を得る信号処理部10を備える。
光放射点2は、生体を構成する成分のうち特定の成分に吸収される特定の波長の光を照射する手段として用いられる。
光源3は、パルス光を発生する光源とする。パルス光は、数ナノから数百ナノ秒オーダーのものであり、波長は400nm以上、1600nm以下の範囲であることが好ましい。光源3としてはレーザーが好ましいが、レーザーの代わりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。
発振する波長の変換可能な色素やOPO(Optical Parametric Oscillators)などを用いれば、光学特性値分布の波長による違いを測定することも可能になる。
使用する光源の波長に関しては、生体内において吸収が少ない700nmから1100nmの領域が好ましい。
また、光の閉じ込めにより光吸収体7における光エネルギーの吸収が増加することにより、上記の波長領域よりも範囲の広い、例えば400nmから1600nmの波長領域も使用することが可能である。
圧電現象を用いたトランスデューサー、光の共振を用いたトランスデューサー、容量の変化を用いたトランスデューサーなど音響波信号を検知できるものであれば、どのような音波検出器を用いてもよい。
容量の変化を検出するトランスデューサーは、広い帯域の素子を容易に設計できることが知られているので、様々な大きさの吸収体からの超音波を検出できる点で好ましい。
すなわち、複数の個所で音響波を検知できれば同じ効果が得られるため、1個の音波検出器を生体表面上又は光反射部材上で走査しても良い。
また、上記の板状部材100に沿って走査させることも好ましい実施形態である。このように音響波受信器を走査させるための可動部(可動機構)として、音響波受信器を含む探触子を支持し、該探触子を移動させるスライダなどが挙げられるが、これに限定されることはない。
なお、音響波検出器9から得られた電気信号が小さい場合は増幅器を用いて、信号強度を増幅することが好ましい。
また、音響波検出器と測定対象である生体物質との間には、音波の反射を抑えるための音響インピーダンスマッチング剤を使うことが望ましい。
板状部材100を配置する場合は、少なくとも板状部材100と生体との間に設けることが好ましい。この場合、板状部材100はマッチング剤を介して生体と接触しうる構成となる。
例えば、図1に示すように、信号処理部10が、音響波検出器9より得られた電気信号に基づいて、生体内の吸収体の位置や大きさ、あるいは光吸収係数あるいは光エネルギー堆積量分布などの光学特性値分布を計算する。
なお、信号処理部10は音響波8の強さとその時間変化を記憶し、それを演算手段により、光学特性値分布のデータに変換できるものであればどのようなものを用いてもよい。
例えば、オシロスコープとオシロスコープに記憶されたデータを解析できるコンピューターなどが使用できる。
つぎに、本発明の実施形態において、上記の光の有効活用が実現できる探触子、および該探触子を用いた生体情報処理装置の構成例について、図を用いて説明する。
本実施形態においては、光反射部材が音響波受信器を含む探触子に設けられている点が特徴となる。
図5に、本実施形態における生体情報処理装置の構成例を説明する図を示す。
本実施形態の生体情報処理装置は、悪性腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などのため、生体内の光学特性値及び、それらの情報から得られる生体組織を構成する物質の濃度分布の画像化を可能とするものである。
本実施形態の生体情報処理装置は、照射光11a,11bを生体12に照射する。
生体12は固定具(板状部材)13で固定されている。図5において光は11a、11b両方から照射されているが、これに限らず11a、11bのどちらか片方から照射しても良い。
また、生体内に入射した光11a,11bが生体内を拡散した後、生体外に出射する光14を反射する光反射部材15を、探触子16の受信素子領域に配置する。
これにより、17に示されるように生体外に出射する光14は生体内に再び入射し押し戻される。
例えば、400nm以上、1600nm以下の範囲の光を照射光として用いる場合は、光反射性部材15をアルミニウムで形成したものが好適に使用される。
あるいは、近赤外領域の照射光を用いるのであれば該波長領域で反射率が高ければよく、金・銀・銅など用いる波長に応じて適宜選択することができる。銀は可視光、近赤外光領域ともに90%以上の反射率をもつため有効である。
本実施形態の生体情報処理装置では、受信素子領域で音響波を検出するために、これらの光反射部材は光を反射すると共に音響波を透過する必要があり、金属は音響波を透過する程薄いもの、例えば厚み10μmほどのアルミ箔が好ましい。また、光を反射し、音を透過するものとして誘電多層膜を用いた誘電体ミラーを使うこともできる。
まず、図6を用いて探触子について説明する。図6(a)において受信面とは、探触子本体21のうち、受信素子が配置されている面22である。
この受信面は、測定時に被検体と対向する。探触子の受信面は、受信素子24がむき出しの場合(図6(b)、(c))と受信素子の前に音響インピーダンスの整合層26が配置されている場合(図6(d)、(e))がある。受信素子領域とは図6(a)における23の領域である。
つまり、整合層が配置される場合は整合層もふくめて受信素子領域とする。
第1の種類を図7(a)および7(b)に示す。図7(a)は斜視図であり、図7(b)は平面図である。
図7(a)に示される光反射部材の配置では、光反射部材31の面積は、受信素子領域(図6(a)の23)の面積より大きく設定される。
そして、受信面22の全面を覆うように設けられている。探触子の測定面における反射部材の面積は、測定面における受信素子領域の面積より大きく設定されているため、確実に受信素子に散乱光が照射されるのを防ぐことができる。
その結果、より正確な被検体内の情報を得ることが可能となる。
第2の種類の光反射部材の配置を図7(c)、7(d)に示す。
図7(c)は斜視図であり、図7(d)は平面図である。図7(c)、(d)に示される光反射部材の配置では、探触子本体21の側面、すなわち、測定面の周囲の探触子側面の一部にも光反射部材32を配置している。
図7(a)の場合、反射部材の受信領域への接着に微量の隙間などが生じてしまった場合、そこから光が微量でも入ってきてしまい、受信領域において光音響波が生じる可能性がある。
図7(b)のように周囲も囲むことにより、光の侵入を完全に防ぐことが出来、さらに探触子周囲から生じる微量の光音響波を防ぐことも出来る。このよう理由から、図7(b)の方がより光音響波のノイズを軽減する効果は大きい。
第3の種類の光反射部材の配置を図7(e)、7(f)に示す。
図7(e)は斜視図であり、図7(f)は平面図である。図7(e)、(f)に示される光反射部材の配置では、受信領域の面積より大きく配置した反射部材33の一部に光を通すための開口34が空いている。
光は光ファイバーを用いて探触子の側面から導かれ、この開口を通過するようにすることが好ましい。この際、開口34の直径はファイバーの直径となる。
このような配置を取ることにより、拡散して体外に放出される光をより効率的に被検体内に閉じ込めることができ、より広範囲の光学的情報を得ることが出来る。同時に、受信領域への光入射を防ぐことが出来る。
また、上述した通り、前記光反射部材と被検体の間に、光の屈折率が1.4以上の超音波を透過する材質を配設するのが好ましい。
この材質を被検体の固定具として使用してもよい。
ここで、光反射部材の大きさと、被検体から出射される拡散光を反射して再び被検体に押し戻す効果との関係を調べるため、シミュレーションを行った。
このシミュレーションでは、図8のようなモデルを立てて行った。
探触子41の受信素子領域の大きさは4cm角の正方形とした。被検体42への光の照射は探触子側からのみ行った。
これは本構成において非探触子側からの光照射は被検体42中で大きく減衰し、反射部材に到達する光量自体が少量であるため、反射効果への寄与は小さいためである。
光照射領域43は生体表面において同様に4cm角の正方形になるように行った。照射光量は1W、4cm角の照射面において照射密度は一定とした。
被検体42のz方向の厚みは4cm、大きさは12cm角の正方形、屈折率は1.333、光吸収係数μaは0.1cm−1、等価光散乱係数は10cm−1とした。また固定具44の厚みは1cm、大きさは24cm角の正方形、屈折率は1.463とした。
このような条件の下、被検体に照射された光の挙動をモンテカルロ法によりシミュレーションした。
シミュレーション時には反射部材は配置せず、その際に被検体42から放出される拡散光の光強度を、本来反射部材が配置される46の位置でプロットしたものが図9(a)である。
x軸方向(距離)は図8に示したようにとり、原点は探触子41の受信領域の中心とした。
例えば、受信領域の大きさは4cm角なので、このグラフにおいて受信領域の端は2cmの位置となる。
つまり、この結果は受信領域の中心を原点としたときの範囲と、その範囲から放出される拡散光の光量の合計との関係を示している。
ここで、xの値が12cmのときシミュレーションの全範囲となり、この範囲から放出される拡散光の光量は被検体全体から放出される全光量となる。
このため光量の値は、xが12cmでの値を1として規格化している。例えば受信領域と同じ面積の4cm角の領域から放出される全光量は、このグラフのx軸が2cmのところに当たり、被検体全体から放出される全光量の65%となる。この範囲に、例えば反射率が100%である反射部材を配置すれば、この範囲から放出される拡散光をすべて反射することができる。
これは、受信領域と同じ大きさである4cm角の、反射率が100%である光反射部材を配置すれば、被検体42から放出される拡散光の65%を、被検体42に押し戻し有効利用することができることを示している。
一方、グラフのx軸の値が1cm、つまり2cm角の反射部材を配置するだけでも、約40%の拡散光を被検体42に押し戻すことが可能であることがわかる。なお、非特許文献1に示唆される幅1cm未満の反射部材では、x軸の値が0.5cm未満であるので、放出される全光量の20%未満しか押し戻されていないことがわかる。
この光反射効率の結果と、受信素子領域への拡散光の照射による光音響波の発生を確実に防止する効果とを考えると、反射部材は受信素子領域よりも大きなものを使うことが有効であることがわかる。
また、反射部材の形状は上記シミュレーションにより、幅が広いことが効果的であるが、探触子がいわゆる1D(リニア)型である場合、上記非特許文献1のように幅の狭い反射部材となる。
あるいは、1D型の場合、探触子とは著しく形状の異なる反射部材を採用することとなり、実使用上好ましくない。
そのため、本発明に用いる探触子はいわゆる2D(2次元)アレイ型の探触子を用いることが好ましい。
2Dアレイを採用することにより反射光の効率だけでなく、探触子形状と反射部材とが略相似形となるため、取り扱いやすさやデザインの観点で好ましい。
これらにより、照射光を無駄にすることなく、被検体が生体である場合には見たい組織により多くの光を吸収させることが可能となる。
また、これにより、被検体の深部にまで強い光を到達させることができ、生体内深部における広範囲の光特性値分布イメージングが可能となる。
さらに、生体における吸収の強いつまり減衰しやすい近赤外領域以外の波長領域を用いた、生体組織の光学特性のイメージングも可能となる。
また、確実に受信素子領域に散乱光が照射されるのを防ぐことができる。これにより、受信素子領域から光音響波が発生するのを確実に防止することができ、被検体からの信号以外のノイズが軽減される。
このように、前記光反射部材を配置した探触子を用いることにより、ノイズの少ないより正確な画像を、深部までの広範囲に取得することが可能となる。
つまり、探触子16を直接生体12に押し当てて使用することも可能である。この場合、光反射部材15は生体12に接することになる。
探触子16は生体内における腫瘍、血管、またはこれらに類する生体内の光吸収体18が光のエネルギーの一部を吸収して発生した音響波19を検出し電気信号に変換する。
この電気信号は信号伝達部20を通して信号処理部に送られる。信号処理部において前記電気信号を解析し、これにより前記生体の光学特性値分布情報が得られる。
例えば信号処理部が、探触子16より得られた電気信号に基づいて、生体内の吸収体の位置や大きさ、あるいは光吸収係数あるいは光エネルギー堆積量分布などの光学特性値分布を計算する。
なお、複数の波長の光を用いた場合は、それぞれの波長に関して、生体内の光学係数を算出する。
そして、それらの値と生体組織を構成する物質(グルコース、コラーゲン、酸化・還元ヘモグロビンなど)固有の波長依存性とを比較することによって、生体を構成する物質の濃度分布を画像化することも可能である。
また、本発明の実施形態では信号処理により得られた画像情報を表示する画像表示部11を備えることが望ましい。
このような実施形態に示された生体情報イメージング装置を用いることで、生体内深部の光音響イメージングが可能になる。
[実施例1]
実施例1として、生体情報イメージング装置を構成する反射部材として、反射率100%の反射部材を用いた場合における結果をシミュレーションにより計算した。
一辺4cmの生体を模擬した立方体に光を入射した場合を計算した。シミュレーションは公知の光拡散方程式を有限要素法により計算した。
立方体内の光学定数は、吸収係数を0.1[cm−1]、等価散乱係数を10[cm−1]とした。
立方体の底面の中心(正方形の中心)に、直径1mmの円形の連続光を10mW照射した。
境界条件は、反射部材がある場合には拡散光は全反射し(反射率100%)、反射部材がない場合には境界から全て拡散光は透過する(反射率0%)ものとした。
放射発散度とは光強度を全立体角に渡って積分したものである。X軸は照射点からの距離である。
立方体の周囲に反射部材を配設すると、反射部材を配設しない場合と比較して、照射点から2cmの深さで光の放射発散度が約5倍に増加する。
実施例2として、実施例1の結果を光音響トモグラフィーに適用した構成例について説明する。
光源としてパルス幅50ナノ秒、波長が1064nmのYAGレーザーを用い、実施例1と同じ光学定数を有する被検体を用いて光音響効果によって得られる信号を取得する。
本実施例では反射部材として厚さ10μmのアルミニウムの膜を用いている。音響波検出器として容量検出型のものを用いている。
このとき、照射点から深さ2cmの位置に光吸収体が存在する場合、本発明の構成を用いることによって、従来の反射部材を配設しない場合と比較すると吸収体から発する光音響信号は大きく増加する。
あるいは、従来の反射部材を配設しない場合における2cmの深さの吸収体から生じる音響信号強度が、本発明の構成では深さ約2.8cmに吸収体があるときと同じ信号強度となる。
つまり、従来よりも深い位置に存在する吸収体の情報を得ることが可能となる。
実施例3として、実施例2で用いられていたレーザーにおいて2倍波のYAGレーザー(532nm)を用い、反射部材の材質としてアルミニウムと金を比較した構成例について説明する。
本実施例において、反射部材の材質としてアルミニウムと金を比較した結果、アルミニウムを用いる方が大きい音響波を得ることが明らかとなった。
一方、基本波のYAGレーザー(1064nm)を用いると、ほぼ同等の音響波を得ることができる。したがって、用いる波長における反射率が高い方が、本発明の効果を高められることがわかる。
実施例4として本発明を適用した光音響トモグラフィーの構成例について図10を用いて説明する。
生体61はポリメチルペンテンの板62aとアクリル樹脂の板62bによって固定される。光源としてパルス幅50ナノ秒、波長が1064nmのYAGレーザーを用い、このパルス光を、63a、63bのように生体の両側から照射する。探触子64は受信素子がPZTからなる二次元アレイ構造をもつ。探触子64は測定面の前面がアルミニウム箔65によって覆われている。
アルミニウム箔は測定面周囲の探触子側面の一部も覆っている。アルミニウム箔の厚みは10μmである。これにより、受信領域は完全に光反射部材で覆われている。
また、照射光63a、63bも探触子64と同方向に走査する。このように探触子64は走査しながら、同様に走査する照射光63a、63bによって生体中の光吸収体66から生じる光音響波を検出する。
探触子64はこの光音響波を電気信号に変換する。この電気信号は信号伝達部67を通して信号処理部に送られる。
信号処理部において前記電気信号を解析し、これにより生体内の光学特性値分布情報が得られる。
実施例5として光反射部材を用いた光閉じ込めによる、生体内の光強度の増加をシミュレーションした。
図11のようなシミュレーションモデルで、被検体72中の光強度のシミュレーションを行った。反射部材76は反射率100%であり、大きさは2cm角とした。それ以外の構成や各々の光学定数は、実施形態中で記した図8の構成と同じである。
同様に、反射部材76を配置しない際の被検体72中の光強度のシミュレーションも行った。
図12は光の放射発散度[W/cm2]を光照射面からの深さ方向にプロットしたものである。
放射発散度とは光強度を全立体角に渡って積分したものである。深さ方向の原点は被検体の照射面73とした。
探触子の受信領域に反射部材を配設すると、反射部材を配設しない場合と比較して、照射点から1cmの深さで光の放射発散度が約1.7倍に、2cmの深さでは約2倍に増加する。
実施例6として、実施例5の結果を光音響トモグラフィーに適用した構成例について説明する。
装置の構成は実施例5と同様である。光源としてパルス幅50ナノ秒、波長が1064nmのYAGレーザーを用い、実施例5と同じ光学定数を有する被検体を用いて光音響効果によって得られる信号を取得する。
本実施例では反射部材として厚さ10μmのアルミニウムの膜を用いている。音響波検出器として容量検出型のものを用いている。
このとき、照射点から深さ2cmの位置に光吸収体が存在する場合、本発明の構成を用いることによって、従来の反射部材を配設しない場合と比較すると吸収体から発する光音響信号は大きく増加する。
あるいは、従来の反射部材を配設しない場合における2cmの深さの吸収体から生じる音響信号強度が、本発明の構成では深さ約2.8cmに吸収体があるときと同じ信号強度となる。
つまり、従来よりも深い位置に存在する吸収体の情報を得ることが可能となる。
なお、本実施例では生体を被検体として測定した例を述べたが、本発明の対象は生体に限られるものではない。
例えば、食品の異物検査、寝具・衣類の検針、その他のさまざまな非破壊検査に対して好適に利用できる。
2:光放射点
3:光源
4:光ファイバー
5:生体内を伝播する光
6:光反射性部材
7:光吸収体
8:音響波
9:音響波検出器
10:信号処理部
11:画像表示部
Claims (13)
- 被検体に照射された光に起因して該被検体から発生する光音響波を受信して、被検体の情報を得る光音響装置であって、
前記被検体に光を照射するための光源と、
前記光音響波を受信するための音響波受信器と、
前記光源より被検体内に入射した光が光拡散によって被検体外に出射する光を、再び被検体内に入射させるための光反射部材と、を有し、
前記光反射部材は弾性波を透過することを特徴とする光音響装置。 - 前記光反射部材は、前記被検体への光照射領域に対する該光反射部材の正射影が、該光照射領域と重複する領域を有するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光音響装置。
- 前記被検体と接触し得る、光の屈折率が1.4以上の板状部材を更に有し、
該板状部材が、前記光反射部材と被検体への光照射領域との間に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光音響装置。 - 前記板状部材が、弾性波を透過することを特徴とする請求項3に記載の光音響装置。
- 前記音響波受信器は、該音響波受信器の受信面に前記光反射部材が配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光音響装置。
- 前記光反射部材が、平面状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光音響装置。
- 前記光反射部材が、前記被検体側から見て凹面となっていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光音響装置。
- 前記光反射部材が、探触子の受信素子領域よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の光音響装置。
- 前記音響波受信器を前記板状部材に沿って走査させるための可動部を有することを特徴とする請求項3に記載の光音響装置。
- 被検体に照射された光に起因して該被検体から発生する光音響波を受信するための音響波受信器を有する探触子であって、
前記被検体に対向する受信面を有する探触子本体と、
前記受信面に設けられた光音響波の受信素子と、
被検体内に入射した光が光拡散によって被検体外に出射する光を反射させる光反射部材と、を有し、
前記受信面における該光反射部材の面積は、前記受信面における受信素子領域の面積より大きく設定されていることを特徴とする探触子。 - 前記光反射部材は、前記受信面の全面を覆うように設けられていることを特徴とする請求項10に記載の探触子。
- 前記反射部材は、前記探触子本体の側面に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の探触子。
- 前記反射部材の一部に、前記探触子の側面から導かれる光を前記被検体に照射するための開口が設けられることを特徴とする請求項10に記載の探触子。
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