JP2010073416A - 両面受光の色素増感型太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明基材1の片面に集電電極と色素を含有させた金属酸化物半導体層8とが順に形成されてなる光電極10と、対極との間に電解質層が保持されてなり、光電極と対極の両面から外部光を入射させる両面受光の色素増感型太陽電池であって、光電極10及び前記対極は、いずれも、透明基材1の片面に形成された導電性薄膜からなる細線メッシュパターン2の上に金属メッキ層4が積層された金属メッシュパターン6を有することを特徴とする。
【選択図】図2
Description
色素増感型太陽電池の基本構成は、透明基材に設けた透明導電膜からなる透明電極(光電極)と、電解質層と、発色剤層(増感色素)と、金属酸化物半導体層と、前記光電極に対向して基材に設けた対極とからなる(例えば特許文献1参照)。
透明導電膜は、透明基材の上に加熱蒸着やスパッタ法などにより金属酸化物半導体を薄く積層したものであり、金属等の良導体に比べて比抵抗が大きいことから、セルの面積が広い場合は、透明導電膜の表面抵抗率をなるべく低くすることが求められる。
(1)光電極を受光側とし、受光した外部光を、透明基材に透明導電膜と金属酸化物半導体層を順に積層してなる光電極の金属酸化物半導体層に到達させ、発生する起電力を光電極の透明導電膜で集電する、透明光電極方式(例えば、特許文献4〜6参照)。この透明光電極方式の場合、対極は透明性を有しないのが一般的である。
(2)対極を受光側とし、受光した外部光を、透明基材に透明導電膜と白金蒸着膜などの触媒層を積層してなる対極、及び電解液を透過させて、光電極の金属酸化物半導体層にまで到達させ、発生する起電力を光電極の透明導電膜で集電する、透明対極方式(例えば、特許文献7〜9参照)。この透明対極方式の場合、光電極は透明性を有しないのが一般的である。
透明基材の上に積層した金属酸化物半導体層からの起電力は、光電極の透明基材に設けた透明導電膜にて集電される。
透明導電膜は、透明基材の上に加熱蒸着やスパッタ法などにより金属酸化物半導体層を薄く積層したものであり、金属等の良導体に比べて比抵抗が大きいことから、セルの面積が広い場合は、透明導電膜の表面抵抗率をなるべく低くすることが求められる。
光電極における表面抵抗率を低くするには透明導電膜の厚みをなるべく厚くするのが望ましいが、金属酸化物半導体層の膜厚みを厚くすると光透過率が低下するので、透明導電膜の厚みは、光透過率と表面抵抗率との兼ね合いにより制約される。
特許文献5には、基材の上に設けた面電極(透明導電膜)と、面電極に接するように太さの異なる線電極からなる集電体(集電電極)とを設け、面電極全体の導電性を向上させた光電極が示されている。しかし、集電体は、インクジェット法を用いて形成するとしているが、実施例には、第1の線状体の幅(平均)を1mm、間隔を5cmとし、第2の線状体の幅(平均)を0.1mm、間隔を1cmとし、第3の線状体の幅(平均)を0.03mm、間隔を2.5mmとした集電体を形成し、その上にITOを低温スパッタリングして形成したと記載されているように、優れた光透過性を得ることは困難であった。
有孔集電電極は、細線状の電極材を縦横に組み合わせた網目状の構造を有するものとし、実施例では、厚さ5μmで目の細かさが200メッシュの網目状のPt集電電極、厚み30μmの格子状Pt集電電極などが用いられている。腐食性の電解液に直接に接触する集電電極には、耐食性を有するPtなどの貴金属を使用することは避けられず、安価に製造することができないという問題があった。
実施例では、金属メッシュは、線径15μm、メッシュ数105のタングステンメッシュの上にスパッタリングにより30nmのPt薄膜を形成することが示されている。
腐食性の電解液に直接に接触する集電電極には、耐食性を有するタングステンを用いているが、タングステンは硬いため細線をメッシュ状に織り込むことが困難であって、さらに、そのメッシュの上にスパッタリングによりPt薄膜を形成する方法を用いたのでは、安価に製造することができないという問題があった。
また、太陽電池セルの面積を大きくするためには、例えば、集電電極の上に積層する透明導電膜の膜厚を厚くして、光電極基板の表面抵抗率の値を小さくする必要がある。しかし、透明導電膜の膜厚を厚くすると光線透過率が低下し光電変換効率が低下してしまうこと、また透明導電膜に含まれるインジウムや対極の触媒作用を付与するための白金は希少金属であり高価であるため、たとえ大型化できたとしてもそのコストに見合うだけの効率が得られなかった。このため、従来技術においては、太陽電池セルの面積を広くして大型化を図ることが容易でないという問題があった。
また、従来技術では、光電極または対極のどちらか一方を透明電極として集光に用いているが、光電極と対極の両方を透明電極としてセルの両面から外部光を入射させることは殆ど検討されていなかった。
また、前記導電性高分子層は、PEDOT/PSS系樹脂、又はPEDOT/TsO系樹脂を用いて形成された薄膜層であることが好ましい。
また、前記金属メッシュパターンは、線幅が2〜60μm、ピッチ間隔が50〜1000μmであることが好ましい。
また、本発明によれば、透明基材の片面に形成した集電電極及び対極を、導電性薄膜からなる細線メッシュパターンの上に、金属メッキ層が積層された金属メッシュパターンからなることにより、光電極及び対極の表面抵抗率が低下し、通常は設けられている金属酸化物などからなる透明導電膜が不要となり、安価な光電極及び対極を提供することができる。
また、透明基材の片面に形成した細線パターンからなる金属メッシュパターンで形成した電極を、光電極と対極の両方に用いて、セルの両面から外部光を集光させることで、光透過性に優れた光電極と対極とすることができ、集光効率を向上させた両面受光の色素増感型太陽電池を提供することができる。
図1は、本発明による色素増感型太陽電池の、光電極および対極の金属メッシュパターンの例を示す部分平面図である。図2は、図1のA−A矢視断面図であって、本発明による色素増感型太陽電池の、光電極の部分断面図である。図3は、図1のA−A矢視断面図であって、本発明による色素増感型太陽電池の、光電極の別の形態例を示す部分断面図である。
また、図2及び図3に示すように、光電極10,10Aは、透明基材1の片面に形成された集電電極の金属メッシュパターン6が積層されていない凹部分には、透明な熱硬化性樹脂層7が埋められている。
また、金属メッシュパターン6及び透明な熱硬化性樹脂層7の上には、増感色素が付着された金属酸化物半導体層8が積層されている。
図4は、図2のB部を拡大して示したものであるが、電解液に対して耐食性を有する貴金属メッキ層4が、透明基材1と接するC部から、電解液が内部に浸透するのを防ぐため、透明な熱硬化性樹脂層7が埋められている。
電子を失ってできた増感色素カチオンは、レドックス性電解質により還元されて元に戻り、レドックス性電解質溶液中に生成したホール種は対極に達し、還元されて元に戻る。
また、図5及び図6に示す対極20,20Aの導電性薄膜からなる細線メッシュパターン12の上に1層または複数層の金属メッキ層13,14を積層した金属メッシュパターン16及びこの金属メッキ層の上に積層された導電性高分子層15は、電解質層を経由して金属酸化物半導体層に電子を循環させるために、太陽電池外部の電気回路を経た電子を電解質層に移動させる役割を有している。
また、図5、図6に示すように、本発明による色素増感型太陽電池の対極20,20Aは、透明基材11と前記金属メッシュパターン16とにより形成された凹部及び金属メッシュパターン16の表面に、導電性高分子層15が積層されている。
また、図6に示すように導電性薄膜からなる細線メッシュパターン12の膜厚みtが薄くてそれだけでは許容される導電性を確保できない場合には、貴金属メッキ層14の厚みを削減して製造費用を抑えるために、導電性薄膜からなる細線メッシュパターン12の上に、導電性を高めるための例えば銅メッキ層や、ニッケルメッキ層などの金属メッキ層13を形成し、更に金属メッキ層13の最外層には、電解液に対して耐食性を有する貴金属メッキ層14を積層することが好ましい。
本発明における金属メッシュパターン6,16は、線幅Wが2〜60μm、ピッチ間隔Pが50〜1000μmであり、従来技術に比較して非常に微細なメッシュパターンで構成されている。
金属メッキ層が、複数のメッキ層が積層されてなる場合、最外層のメッキ層には、電解液に対して耐食性を有するRuメッキ層を積層するのが好ましい。
このため、耐食性を有する最外層のメッキ層であるRuメッキ層が剥離するのを防ぐため、図4に示すC部を補強するのに、透明基材1の金属メッシュパターン6が形成されていない凹部分には、透明な熱硬化性樹脂層7が積層されている。
中でも、フレキシブル性を有する透明樹脂フィルムは、色素増感型太陽電池の取扱い性が優れている点で、好適に用いられる。
透明基材1,11に使用される透明樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等からなる厚さ50〜300μmの単層フィルム又は前記透明樹脂からなる複数層の複合フィルムが挙げられる。
なお、必要に応じて、透明基材1,11の外面(図2、図3、図5、図6の下面)に、耐候性を付与するための紫外性吸収剤層、ハードコート層、反射防止層などを形成させるための各種樹脂をコートしてもよい。
また、図5、図6に示すように、本発明による色素増感型太陽電池の対極20,20Aは、透明基材11の上に、複数の細線メッシュパターン12を配設し、その上に1層または複数層の金属メッキ層13,14が積層された金属メッシュパターン16が形成されている。透明基材11と前記金属メッシュパターン16とにより形成された凹部及び金属メッシュパターン16の表面には、導電性高分子層15が形成されている。
一方、従来技術では図7に示すように、集電電極の細線パターン32に対して色素増感型太陽電池の内部に貯蔵されている電解液(図示は省略)が接触しないようにするため、集電電極の細線パターン32を覆うように透明導電膜35が配設されている。
なお、対極20,20Aは、透明基材11の片面に形成された導電性薄膜からなる細線メッシュパターン12の上に1層または複数層の金属メッキ層13,14が積層された金属メッシュパターン16と、更に透明基材11と前記金属メッシュパターン16とにより形成された凹部及び金属メッシュパターン16の表面に積層された導電性高分子層15とからなる。
具体的には、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン(以下、PEDOT)等のポリチオフェン、メトキシ−エチルヘキソキシ−ポリフェニレンビニレン(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン系樹脂が好適であるが、特にこれらに限定されるものではなく、ポリフルオレン等の比較的抵抗の高い材料を用いることもできる。
また、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)とを含有する溶液を用いて成膜したPEDOT/PSS系樹脂を用いることもできる。
また、導電性高分子の成膜材料として、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と、トルエンスルフォネート(TsO)とを含有する溶液を用いて成膜したPEDOT/TsO系樹脂を用いることもできる。
また、本発明による色素増感型太陽電池の対極20,20Aは、透明基材11の上に、複数の細線メッシュパターン12を配設し、その上に1層または複数層の金属メッキ層13,14が積層された金属メッシュパターン16が形成され、透明基材11と金属メッシュパターン16とにより形成された凹部及び金属メッシュパターン16の表面には、導電性高分子層15が形成されている。前記金属メッシュパターン16は、線幅が2〜60μm、ピッチ間隔が50〜1000μmであり、導電性に優れた微細なメッシュパターンが用いられる。
なお、導電性薄膜からなる細線メッシュパターン2,12は、光電極及び対極を安価に製造するため、電解液に対する耐食性は有していないが、高い電気導電性を有する、例えば銅、ニッケル、錫、銀、アルミニウムなどの比較的に安価な汎用性の金属を使用することができる。
また、貴金属メッキ層4,14の内側に積層される金属メッキ層3,13は、電解液に対して耐食性を有する必要はなく、安価な汎用の金属でよい。例えば、Niメッキ層、Znメッキ層、Cuメッキ層、Alメッキ層からなる群の中から選択された1つ以上のメッキ層が積層される。
また、光電極及び対極の細線メッシュパターン2,12を構成する導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかの方法で形成されたものからなることが好ましい。
また、透明基材1,11の上に、銀写真法による露光・現像により現像銀の配線パターンを形成し、さらに必要に応じてその上に無電解メッキまたは電解メッキを施して、導電性の細線メッシュパターン2,12を形成してもよい。
また、金属メッシュパターン6,16の線幅Wが2〜60μmであることが好ましい。
金属メッシュパターン6,16の線幅が60μmを越えると、全光線透過率に影響する開口率を一定以上に維持しながら、光電極及び対極の導電性を増すことが困難になる。また、光電極及び対極の導電性を維持しようとすると、開口率が小さくなり過ぎて太陽電池の発電効率が低下する不都合が生じる。
一方、金属メッシュパターン6,16の線幅を2μm以下にするためには、露光マスクの製作費用が嵩むと供に、技術的な困難さが著しく増大するなどの不都合が生じる。
また、光電極及び対極の金属メッシュパターン6,16線幅を細線化することで、光の回折、散乱等により、線幅が大きい場合に比して光電極及び対極の全光線透過率が向上し、太陽電池の発電効率を向上させることができるという副次的な効果がある。
しかし、太陽電池セルの単位面積当たりに占める電極の細線パターンの面積比率が大きくなる(開口率が低下する)と、入射光が遮られて発電効率が低下するため、発電効率を最適化できるように、光電極及び対極の金属メッシュパターン6,16の線幅Wおよびピッチ間隔Pの最適値が決められる。
本発明では、金属メッシュパターン6,16の線幅Wを2〜60μm、ピッチ間隔Pを50〜1000μmとしており、従来技術に比べて非常に微細な金属メッシュパターンを用いていることから、光電極及び対極のパターンの上に金属酸化物などの透明導電膜を積層する必要がない。
本発明では、図4において図示されたC部を補強し、金属メッキ層の最外層に形成された耐食性を有するRuメッキ層4が透明基材1から剥離するのを防ぐため、光電極の透明基材1の金属メッシュパターン6が形成されていない部分の上には、透明な熱硬化性樹脂層7を積層している。
このことにより、金属メッシュパターン6の耐食性を維持し、発電効率の低下が生じることを低減することが可能となる。
例えば、図2に示す光電極10においては、まず、透明基材1の上に集電電極の細線メッシュパターン2を形成し、さらに金属メッキ層4を積層して金属メッシュパターン6を形成した光電極基板Aを用意する。
次に、この光電極基板Aの金属メッシュパターン6が形成されていない凹部分に、熱硬化性樹脂の組成物を公知の方法にて塗布した後、熱エネルギー線を塗布側から加え、熱硬化性樹脂の反応硬化物からなる熱硬化性樹脂層7を形成する。
エネルギー線硬化性樹脂に用いる樹脂化合物としては、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、などの単官能の(メタ)アクリレート成分;多価アルコールのジ、トリまたはポリ(メタ)アクリレートやヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの多官能の(メタ)アクリレート成分;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミドなどの官能基含有モノマー成分;酢酸ビニル、スチレン、アクリルウレタン系オリゴマーなどが挙げられる。
この金属酸化物半導体層8の厚みとしては、一般的には10nm以上であり、100nm〜15μmが好ましい。
増感色素となる金属錯体としては、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン等の金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミンや、公知のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛等の錯体を用いることができる。
また、増感色素となる有機色素としては、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素を用いることができる。
まず、透明基材1の上に、光電極の細線メッシュパターン2が形成され、その上に金属メッキ層4を積層して金属メッシュパターン6を形成する。
次に、この光電極の金属メッシュパターン6が形成されていない凹部分に、熱硬化性樹脂の組成物を公知の方法にて塗布した後、熱エネルギー線を塗布側から加え、熱硬化性樹脂の反応硬化物からなる熱硬化性樹脂層7を形成する。
この光電極基板の金属メッシュパターン6及び熱硬化性樹脂層7上に、増感色素が担持された金属酸化物半導体層8を形成する。
金属酸化物半導体層8の形成には、気相成膜法(真空成膜法)、物理蒸着法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法、CVD法等の公知の薄膜形成法および金属酸化物半導体粒子を溶媒に分散させた液を公知の方法により塗布・乾燥する方法を用いることができる。
また、増感色素の担持は、増感色素を適宜の有機溶媒に溶解した溶液中に、常温又は加熱下で金属酸化物半導体層8を設けた光電極基板を浸漬させればよい。
まず、透明基材11の上に、導電性薄膜からなる細線メッシュパターン12,12が形成された対極基板を用意する(図1,5を参照)。
導電性薄膜からなる細線メッシュパターン12,12の上に、電解メッキ法にて耐食性の貴金属メッキ層14,14を積層し、貴金属メッキ層14の積層された金属メッシュパターン16を形成する。
次に、透明基材11と金属メッシュパターン16とにより形成された凹部及び金属メッシュパターン16の表面には、スクリーン印刷などの方法にて導電性高分子の溶解液を塗布した後、加熱処理を行い、触媒層となる導電性高分子層15の被膜を形成する。
例えば、図2および図3において、光電極の熱硬化性樹脂層7は、金属メッシュパターン6の低い位置のみに配設されているが、金属メッシュパターン6が金属酸化物半導体層8と接触する面積が極度に狭くならない範囲において、熱硬化性樹脂層7が集電電極の金属メッシュパターン6の側面部分を覆うように配設してもよい。
(1)標準光源:ソーラーシミュレータ(ペクセル・テクノロジーズ(株)、型式:PEC−L11)
(2)試験装置:電流電圧特性計測装置(ペクセル・テクノロジーズ(株)、型式:PECK2400−N)
(3)光透過率の測定機:日本電色工業(株)製、型式;NDH2000
・色素増感型太陽電池セルの発電性能の測定:キセノンランプを光源としたソーラーシミュレータ(ペクセル・テクノロジーズ(株)、型式:PEC−L11)を用いて、UVカットフィルターと太陽光標準スペクトル(AM1.5)フィルターを通して1kW/m2の強度の疑似太陽光を、色素増感型太陽電池セルに当てることにより発電性能(短絡電流、開放電圧、フィルファクター(形状因子)、光電変換効率)の測定を行った。
・光透過率の測定方法:JIS−K−7105、「プラスチックの光学的特性試験方法」による。
次に示す手順により、色素増感型太陽電池を作製し、実施例1とした。
まず、光電極の透明基材として、厚みが100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムを用いた。光電極の細線メッシュパターンは、線幅が5μm、光電極の細線パターンのピッチ間隔が45μmであって、縦方向の長さが100mm、横方向の長さが100mmの細線パターンを、写真製法による現像銀からなる導電性の金属薄膜に金属メッキ層を積層して作製した。金属メッシュパターンの凹部に透明な熱硬化性樹脂を塗布・硬化させて、凹部を埋めた。
次に、スクリーン印刷の印刷方法により、金属酸化物半導体層の積層を行なった後、金属酸化物半導体層に、増感色素(品番:N719)を吸着させて光電極を作製した。
作製した太陽電池セルに、ソーラーシミュレータを用いて試験した結果、出力電圧は0.7V、短絡電流密度は3.1mA/cm2であり、フィルファクター(形状因子)は0.65であり、光電変換効率は1.4%であった。また、実施例1の太陽電池セルの光透過率は、50%であった。
実施例1において、光電極の基材を、ITOの蒸着膜を付着させた厚みが200μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムとし、対極の基材を、白金を蒸着させた厚みが200μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムとした外は同様の方法にて色素増感太陽電池を作製し、比較例1とした。
作製した比較例1の色素増感型太陽電池セルを試験した結果、出力電圧は0.7V、短絡電流密度は0.3mA/cm2であり、フィルファクター(形状因子)は0.35であり、光電変換効率は0.07%であった。また、比較例1の太陽電池セルの光透過率は、0%であった。
実施例1において、対極の基材を、ITO蒸着膜付きのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム(厚みが200μm)に白金を蒸着させて作製した以外は、同様の方法にて色素増感型太陽電池セルを作製し、比較例2とした。
作製した比較例2の色素増感型太陽電池セルを試験した結果、出力電圧は0.7V、短絡電流密度は3.2mA/cm2であり、フィルファクター(形状因子)は0.65であり、光電変換効率は1.5%であった。また、比較例2の太陽電池セルの光透過率は、0%であった。
これは、実施例1で用いた光電極と対極の両方共、それぞれの基材が金属のグリッドを用いて低抵抗化が可能となったため、従来良く用いられているITO蒸着膜付きのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムを光電極に使用した比較例1よりも集電性能が著しく上昇したためである。
また、白金蒸着膜付きのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムは、非常に高価である。このため、比較例2の色素増感太陽電池セルを使用する場合には、コストがかかり過ぎることから、大面積のセルとすることが困難である。
本発明による両面受光の色素増感型太陽電池は、太陽電池セルの大面積化、大型化を図った色素増感型太陽電池として利用することができる。
Claims (5)
- 透明基材の片面に集電電極と色素を含有させた金属酸化物半導体層とが順に形成されてなる光電極と、対極との間に電解質層が保持されてなり、光電極と対極の両面から外部光を入射させる両面受光の色素増感型太陽電池であって、前記光電極及び前記対極は、いずれも、透明基材の片面に形成された導電性薄膜からなる細線メッシュパターンの上に金属メッキ層が積層された金属メッシュパターンを有することを特徴とする両面受光の色素増感型太陽電池。
- 前記光電極において、前記透明基材の片面に形成された集電電極の金属メッシュパターンが積層されていない凹部分には、透明な熱硬化性樹脂層が埋められてなることを特徴とする請求項1に記載の両面受光の色素増感型太陽電池。
- 前記対極において、前記透明基材と前記金属メッシュパターンとにより形成された凹部及び前記金属メッシュパターンの表面には、導電性高分子層が積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の両面受光の色素増感型太陽電池。
- 前記金属メッキ層は、Niメッキ層、Znメッキ層、Cuメッキ層、Alメッキ層、Ruメッキ層からなる群の中から選択された1つ以上のメッキ層が積層されてなることを特徴とする請求項1に記載の両面受光の色素増感型太陽電池。
- 前記導電性薄膜は、写真製法により生成された現像銀層からなる金属薄膜、フォトレジストパターンまたは溶剤溶解性の印刷材料を印刷したパターンのいずれかを遮蔽マスクとして用いて金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着を行った後に遮蔽マスクを除去して行なう、剥離(リフトオフ)法により形成した導電性薄膜、金属または金属酸化物のスパッタまたは真空蒸着により製膜された薄膜をフォトリソ法によりエッチングして形成した導電性薄膜、のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の両面受光の色素増感型太陽電池。
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