JP2010003557A - 色素増感太陽電池、その製造方法および色素増感太陽電池モジュール - Google Patents

色素増感太陽電池、その製造方法および色素増感太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】故障が少なく、屋外に設置可能であり、かつ低コストにて容易に製造することができる色素増感太陽電池、その製造方法および色素増感太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】絶縁性基板1の上に、少なくとも第1電極層2、触媒層3、内部にキャリア輸送材料9を含有する多孔性絶縁層4、内部にキャリア輸送材料を含有しかつ色素が吸着された多孔性半導体層5、透光性を有する第2電極層6、透光性を有するカバー部材7がこの順で積層され、かつ前記絶縁性基板と前記カバー部材の間の周囲部が封止部にて封止されたことを特徴とする色素増感太陽電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感太陽電池、その製造方法および複数の色素増感太陽電池を具備した色素増感太陽電池モジュールに関する。
化石燃料に代るエネルギー源として太陽光を電力に変換できる太陽電池が注目されている。現在、結晶系シリコン基板を用いた太陽電池及び薄膜シリコン太陽電池が実用化されている。しかし、前者はシリコン基板の作製コストが高いという問題があり、後者は多種の半導体製造用ガスや複雑な装置を用いる必要があるために製造コストが高くなるという問題がある。そのため、いずれの太陽電池においても光電変換の高効率化による発電出力当たりのコストを低減する努力が続けられているが、上記問題を解決するには到っていない。
新しいタイプの太陽電池として、金属錯体の光誘起電子移動を応用した湿式太陽電池が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この湿式太陽電池は、表面上に電極を形成した2枚のガラス基板の電極間に、光増感色素を吸着させて可視光領域に吸収スペクトルをもたせた光電変換層と電解質層とを挟持した構造を有する。この湿式太陽電池に対して透明な電極側から光を照射すると、光電変換層に電子が発生し、発生した電子が一方の電極から外部電気回路を通って対向する電極に移動し、移動した電子が電解質中のイオンにより運ばれて光電変換層に戻る。このような一連の電子移動の繰り返しにより電気エネルギーが取り出される。
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感太陽電池の基本構造は、2枚のガラス基板の電極間に電解液を注入した構造であるため、小面積の太陽電池の試作は可能であるが、1m角のような大面積の太陽電池への適用は困難である。つまり、1つの太陽電池セルの面積を大きくすると、発生電流は面積に比例して増加するが、透明電極の面内方向の抵抗が増大し、それに伴って太陽電池としての内部直列電気抵抗が増大する。その結果、光電変換時の電流電圧特性における曲線因子(FF:フィルファクタ)、さらには短絡電流が低下し、光電変換効率が低くなるという問題が起こる。
そこで、上記の問題を解決するために、図5に示すように、複数個の色素増感太陽電池を直列接続した色素増感太陽電池モジュールも提案されている。この色素増感太陽電池モジュールは、太陽電池の電極(導電層)と隣り合う太陽電池の電極(対極)とを電気的に接続している(例えば、特許文献2参照)。
この色素増感型太陽電池モジュールは、まず、一方のガラス基板101上に透明導電膜からなる集電電極105を短冊形に形成すると共に、集電電極105上に色素を吸着させた多孔性酸化チタン層からなる光電変換層104を形成し、もう一方のガラス基板102上に対極103としての白金を短冊形に形成する。そして、2枚のガラス基板101、102を張り合わせて周囲部を封止し、基板間に電解液を注入してキャリア輸送層106を形成することにより、同一基板上に複数個の色素増感太陽電池(以下、セルと称する場合がある)が電気的に直列接続された色素増感型太陽電池モジュールが作製される。この場合、一つのセルの集電電極105と隣接するセルの対極103とが導電性接続層108によって接続されている。また、導電性接続層108が電解液と接触するのを防ぐために、光電変換層104と重ならないよう導電性接続層108の両側に保護層107が形成されている。このような直列接続構造は一般的にZ型と称されている。
他のZ型の色素増感太陽電池モジュールとして、図6に示す構造のものが挙げられる(例えば、特許文献3、4参照)。この色素増感太陽電池モジュールにおいて、個々のセルは、ガラス基板41上に透明導電膜42、色素が吸着された多孔性酸化チタン層からなる光電変換層43、多孔性絶縁層44および対極45が順次積層された構造を有しており、対極側がトップカバー47にて覆われ、トップカバー47とガラス基板41との間に電解液46が注入されている。この場合、光電変換層43の周囲は多孔性絶縁層44で覆われている。また、1つのセルの対極45を、隣接するセルの透明導電膜42と接触させることで、隣接する2つのセル同士が直列接続されている。
特許第2664194号公報 特開2001−357897号公報 国際公開公報第97/16838号パンフレット 特開2005−285781号公報
しかしながら、図5に示す色素増感太陽電池モジュールは、大面積化したときに生じる基板101、102の撓みによって基板間距離が一定に保たれ難い構造であるため、光電変換層104と対極103の距離が変化することにより、電解質の輸送距離が変化する。この結果、モジュール内部の単一セルの性能が変化するため、モジュール性能が低下する。また、導電性接続部108は集電電極105と対極103に物理的に接触しているため、衝撃等により各電極と導電性接続層108との接触部が脱離して故障しやすい構造と言える。
また、図6に示す色素増感太陽電池モジュールは、一つの基板41上に単一セルの透明導電膜42と対極45が形成されるため、図5に示した導電性接続層が省略され、耐衝撃性は向上している。しかしながら、光電変換層43は数十μmの膜厚を有するため、印刷法を用いて多孔性絶縁層44を形成して光電変換層43を被覆する場合、数十μmの高低差のある部分を印刷することとなる。そのため、特に光電変換層43の傾斜部において多孔性絶縁層44の形成不良が発生し、対極45と光電変換層43とが接触して内部短絡に起因する故障が発生し易い構造であると言える。
さらに、図5および図6に示す色素増感太陽電池モジュールは、透明導電膜を有するガラス基板上に光電変換層が形成されるため、このガラス基板の外面が受光面となる。また、光電変換層が形成されるガラス基板は、光電変換層の高温焼成に耐える耐熱性を有するものが使用される。したがって、図5および図6に示す色素増感太陽電池モジュールでは、十分な強度を具備させるために、透明導電膜付きガラス基板の受光面側に強化ガラスを配設する必要があり、受光面側の基板が二枚となって重量が増加すると共に、高コストとなる。
本発明は、上述の課題に鑑みなされたものであり、故障が少なく、屋外に設置可能であり、かつ低コストにて容易に製造することができる色素増感太陽電池、その製造方法および色素増感太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
かくして、本発明によれば、絶縁性基板の上に、少なくとも第1電極層、触媒層、内部にキャリア輸送材料を含有する多孔性絶縁層、内部にキャリア輸送材料を含有しかつ色素が吸着された多孔性半導体層、透光性を有する第2電極層、透光性を有するカバー部材がこの順で積層され、かつ前記絶縁性基板と前記カバー部材の間の周囲部が封止部にて封止された色素増感太陽電池が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、絶縁性基板上に少なくとも第1電極層、触媒層、多孔性絶縁層、色素が吸着された多孔性半導体層および第2電極層をこの順で積層する工程(1)と、前記第2電極層の表面を透光性カバー部材にて被覆し、かつ前記絶縁性基板と透光性カバー部材の間の周囲部を封止部にて封止する工程(2)と、前記絶縁性基板と透光性カバー部材の間の内側領域にキャリア輸送材料を注入して、前記多孔性半導体層および多孔性絶縁層の内部に前記キャリア輸送材料を浸透させる工程(3)とを備えた色素増感太陽電池の製造方法が提供される。
また、本発明のさらに別の観点によれば、前記色素増感太陽電池の2つ以上が同一の絶縁性基板上に電気的に直列接続されて形成され、かつ隣接する2つの色素増感太陽電池の間に電池間封止部が形成された色素増感太陽電池モジュールが提供される。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
(1)絶縁性基板上に第1電極層と触媒層との比較的膜厚の薄い積層膜(膜厚1μm以下)を形成した後に、多孔性絶縁層を形成することができる。そのため、絶縁性基板の表面と積層膜の表面との段差(高低差)を小さくすることができ、多孔性絶縁層を印刷法を用いて形成しても段差部分での多孔性絶縁層の形成不良を防止することができる。この結果、多孔性絶縁層の形成不良によって触媒層と多孔性半導体層とが接触し、内部短絡に起因する故障が少ない色素増感太陽電池並びにそのモジュールを提供することができる。
(2)本発明の構造では、非受光面側の基板に素子を形成するため、受光面側の透光性カバー部材には様々な材料を用いることができる。よって、高強度を要する屋外設置用(家庭用電源用)として一般家屋の屋根へ色素増感太陽電池またはそのモジュールを設置する場合、透光性カバー部材として、加熱すると性能が劣化する強化ガラスを用いることが可能である。したがって、従来構造(図5参照)の素子形成基板の受光面側に改めて強化ガラスを設置する必要がなくなるため、2枚のガラス基板による光入射ロスがなくなって短絡電流がより増加すると共に、色素増感太陽電池並びにそのモジュールの重量軽減およびコストダウンが可能となる。
(3)従来構造(図6参照)では、触媒層は、多孔性絶縁層上に形成するため、触媒材料の多孔性半導体層への付着防止策を施す必要があったが、本発明の構造(図1参照)では、触媒材料を絶縁性基板側の第1電極層上に直接形成するため、第1電極層上に結着さえすればどのような触媒材料でも用いることができる。
(4)第1電極層付き絶縁性基板としては、ガラス基板に透明導電膜を形成した高価なFTOガラスの代りに、安価な絶縁物基板(例えばセラミック基板など)の上にチタン、ニッケル、タンタルなどの電解液に対して腐食性を示さない金属膜を形成したものを用いることができ、色素増感太陽電池(またはそのモジュール)のさらなるコストダウンを図ることができる。
本発明の色素増感太陽電池は、絶縁性基板の上に、少なくとも第1電極層、触媒層、内部にキャリア輸送材料を含有する多孔性絶縁層、内部にキャリア輸送材料を含有しかつ色素が吸着された多孔性半導体層、透光性を有する第2電極層、透光性を有するカバー部材がこの順で積層され、かつ前記絶縁性基板と前記カバー部材の間の周囲部が封止部にて封止されたことを特徴とする。
つまり、この色素増感太陽電池は、絶縁性基板の上に、上述の順で発電素子を構成する各層を形成したことを主たる特徴としている。
また、本発明において、多孔性絶縁層が、触媒層の上から絶縁性基板の一部の上に連続して積層されていてもよい。このようにすれば、触媒層の端部を多孔性絶縁層によって確実に覆うことができ、多孔性絶縁層上に形成する多孔性半導体層を触媒層と接触して内部短絡が生じる不具合を確実に防止することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の色素増加太陽電池、および、色素増加太陽電池を用いた色素増加太陽電池モジュールの実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は一例であり、本発明の範囲内で種々の実施形態での実施が可能である。
(実施形態1−1)
図1は本発明の色素増感太陽電池の実施形態1−1を示す概略断面図である。具体的に説明すると、この色素増感太陽電池は、絶縁性基板1の上に第1電極層2、触媒層3、内部にキャリア輸送材料9を含有した多孔性絶縁層4、内部にキャリア輸送材料9を含有しかつ色素を吸着させた多孔質半導体層5、透光性を有する第2電極層6、透光性を有するカバー部材7がこの順で積層されてなる。なお、第1電極層2から第2電極層6まで積層された発電素子部分の周囲部に封止部8が形成され、これによりキャリア輸送材料9が封止されている。
また、第1電極層2はその一部が除去されたスクライブライン10を封止部8の近傍の内側領域に有している。したがって、第1電極層2は、スクライブライン10を挟んで、太陽電池形成領域となる幅の広い部分と幅の狭い部分とに分割されている。この幅の広い第1電極層における外部に露出した部分と、幅の狭い第1電極層における外部に露出した部分は、外部回路と電気的に接続される。
また、多孔性絶縁層4は、触媒層3上からスクライブライン底面(基板1の表面)にわたって形成されている。さらに、第2電極層6は、多孔性半導体層5上から前記幅の狭い第1電極層上にわたって形成されている。第2電極層6と電気的に接続された幅の狭い第1電極層は、第2電極層6の引出し電極2aとされている。
なお、図1〜4に示される色素増感太陽電池および色素増感太陽電池モジュールの各構成要素は、必ずしも絶対的なまたは相対的な縮尺率で示されている訳ではない。以下、色素増感太陽電池を太陽電池と略称する場合がある。
この実施形態1−1の太陽電池では、透光性カバー部材7の表面を受光面とすることができ、第2電極層6が負極となり、第1電極層2が正極となる。透光性カバー部材7の受光面に矢印で示す光が照射されると、多孔性半導体層5で電子が発生し、発生した電子が多孔性半導体層5から第2電極層6へ移動し、電子は引出し電極2aから外部回路を通って第1電極層2へ移動し、触媒層3を通って多孔性絶縁層4内のキャリア輸送材料9中のイオンにより運ばれて多孔性半導体層5に移動する。
この太陽電池は、絶縁性基板1上に第1電極層2、触媒層3、多孔性絶縁層4、色素が吸着された多孔性半導体層5および第2電極層6をこの順で積層する工程(1)と、第2電極層6の表面を透光性カバー部材7にて被覆し、かつ絶縁性基板1と透光性カバー部材7の間の周囲部を封止部にて封止する工程(2)と、絶縁性基板1と透光性カバー部材7の間の内側領域にキャリア輸送材料9を注入して、多孔性半導体層5および多孔性絶縁層4の内部にキャリア輸送材料9を浸透させる工程(3)とを備えた色素増感太陽電池の製造方法によって製造することができる。なお、第2電極層6が緻密な膜である場合は、工程(1)において、多孔性半導体層5上の第2電極層6に複数の小孔を形成する。
次に、この太陽電池における各構成要素について説明する。
(絶縁性基板)
絶縁性基板1の材料としては、絶縁性であり、多孔性半導体層5などを形成するときに必要なプロセス温度に対する耐熱性を有すれば、特に限定されない。たとえば、ガラス基板、可撓性フィルム等の耐熱性樹脂板、セラミック基板等が挙げられる。
例えば、多孔性半導体層5を形成するに際して、エチルセルロースを含有した多孔性半導体作製用ペーストを用いる場合には、500℃程度の耐熱性を有する絶縁性基板1を用いることが好ましい。また、キャリア輸送材料9が揮発のおそれのある溶媒を含む場合は、この溶媒に対して透過性の低い材料からなる絶縁性基板1を用いる必要がある。また、溶媒透過性の低い材料からなる絶縁性基板1を用いる場合でも、絶縁性基板1の一面または両面をSiO2などの透湿性の低い材料の膜でコートしてもよい。
(第1電極層)
第1電極層2は、絶縁性基板1の上に形成され、キャリア輸送材料9中の酸化還元種に電子を供給する触媒層3に電子を供給する機能を有する。
第1電極層2としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、透光性を有していても有していなくてもよく、その材料としては、例えば、透明導電性金属酸化物、金属、カーボンなどが挙げられる。
前記透明導電性金属酸化物では、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)、フッ素ドープされた酸化スズ、ボロン、ガリウムまたはアルミニウムがドープされた酸化亜鉛、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタン等が挙げられる。
前記金属では、金、銀、アルミニウム、インジウムなどが挙げられる。
前記カーボンでは、カーボンブラック、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。
第1電極層2の材料としては、導電性が高い方が好ましいため、金属または酸化物導電材料が好ましい。また、キャリア輸送材料9が腐食性の高いハロゲン系の酸化還元種を含む場合は、長期安定性の観点から、耐食性のあるNiやTi、Ta等の高融点金属材料からなる第1電極層2が好ましい。
透光性の第1電極層2は、スパッタ法、スプレー法などの公知の方法により前記基板1上に形成することができるが、基板1としてのソーダ石灰フロートガラス上に、透明導電層としてのFTOを積層した導電性基板の市販品を用いてもよい。
さらに、チタン、ニッケル、タンタルなどの電解液に対して腐食性を示さない金属膜からなる第1電極層2は、スパッタ法、蒸着法などの公知の方法により基板1上に形成することができる。
このような第1電極層2の膜抵抗としては低いほどよく、特に40Ω/sq以下が好ましい。また、第1電極層2と触媒層3とを合わせた膜厚合計は、薄い方が良く、例えば、多孔性絶縁層4の形成不良を防止する観点から3μm以下が好ましい。
第1電極層2は、絶縁性基板1上にパターン形成する、または絶縁性基板上に導電膜を形成した後に一部を除去することにより、所定のサイズに形成することができる。
第1電極層2をパターン形成する手法としては、例えば、メタルマスクやテープマスクを用いる手法や、半導体分野で用いられるようなフォトリソグラフィーを用いる手法を採用することができる。
導電膜の一部を除去する手法としては、レーザースクライブやサンドブラスターなどを用いた物理的手法や、溶液エッチングなどの化学的手法を採用することができる。
(触媒層)
触媒層3は、第1電極層2の上に形成され、キャリア輸送材料9中の酸化還元種への電子移動を促進すること機能を有する。
触媒層3の材料としては、白金族やルテニウム、カーボン含有材料、PEDOT/PSS(H)などの有機導電性材料が好ましい。ただし、キャリア輸送材料9に腐食性の高いハロゲン系の酸化還元種を用いる場合、耐食性の高い材料である方が長期安定性の観点で好ましく、酸化還元種への電子授受の促進のために白金(Pt)やルテニウム(Ru)を含有する材料を用いることが特に好ましい。
前記カーボン含有材料としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどが挙げられる。
触媒層3は、例えば、白金を用いる場合には、スパッタ法、塩化白金酸の熱分解、電着などの公知の方法により第1電極層2上に形成することができる。また、カーボン含有材料を用いる場合には、溶剤に分散してペースト状にしたカーボンをスクリーン印刷法などにより第1電極層2上に塗布して触媒層3を形成することができる。
触媒層3の形態としては特に限定されず、緻密な膜状、多孔質膜状あるいはクラスター状とすることができる。触媒層3の形状は特に限定されず、第1電極層2の全面に形成されても、あるいはドット状(図2参照)、格子状またはストライプ状の様な形状で第1電極層2の一部に形成されてもよい。
(多孔性絶縁層)
多孔性絶縁層4は、触媒層3と色素を吸着させた多孔性半導体層4との物理的接触及び電気的接続を防ぐ機能と、太陽電池モジュールでの隣接する2つの太陽電池の第1電極層2と第2電極層6との物理的接触および電気的接続を防ぐ機能と、キャリア輸送材料9を内部に含浸させ、かつキャリア輸送材料9中の酸化還元種を触媒層3と多孔性半導体層5との間で移動させる機能を有する。さらには、カバー部材7から光が入射するため、多孔性絶縁層4は、屈折率が高く、色素を吸着させた多孔性半導体層5を通り抜けた光を反射する機能を有することが好ましい。
多孔性絶縁層4は、多孔性絶縁層4の材料粒子を適当な溶剤に分散し、さらにエチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)などの高分子化合物を混合してペーストを得、得られたペーストを、触媒層3の上から、第1電極層2と触媒層3との厚み分の段差部を覆って、絶縁性基板1の表面まで連続的に塗布し、乾燥および焼成することにより形成することができる。
この際、上述のように、第1電極層2と触媒層3との合計厚みを1μm以下に薄く形成することにより、前記段差部での多孔性絶縁層4の膜厚が薄くなって触媒層3乃至第1電極層2が露出してしまう多孔性絶縁層4の形成不良を防止することができ、触媒層3乃至第1電極層2が多孔性半導体層5と接触して太陽電池の内部短絡することに起因する故障を防止することができる。
触媒層3乃至第1電極層2と多孔性半導体層5との物理的接触を多孔性絶縁層4によって防ぐ手法としては、触媒層3上に隙間なく多孔性絶縁層4を形成することが考えられる。この場合、多孔性絶縁層4をある程度の膜厚で形成する必要があり、場合によっては2回以上の膜形成工程を行う必要がある。
多孔性絶縁層4の膜厚としては、0.1〜20μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。この場合、多孔性半導体層5よりも多孔性絶縁層4を薄くすることにより、多孔性絶縁層4に含まれているキャリア輸送材料9内の酸化還元種の輸送距離を短くすることができる。
触媒層3乃至第1電極層2と多孔性半導体層5との電気的接続を多孔性絶縁層4によって防ぐ手法としては、多孔性絶縁層4の材料として高抵抗材料を用いる手法あるいは接触面積を低下させる手法が考えられる。
前記高抵抗材料としては、一般的に高抵抗の金属酸化物が好ましく、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素(シリカガラス、ソーダガラス)、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられ、これらの材料の1種または2種以上を選択的に用いることができる。これらの中でも、より高抵抗な酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムが好ましい。これらの材料は粒子状であることが好ましく、その平均一次粒径は5〜500nmが適当である。
また、接触面積を低下させる手法の場合、多孔性絶縁層4の膜表面の面積を減少させることが好ましい。具体的には、多孔性絶縁層4の材料粒子のサイズを大きくすることが考えられる。
なお、第1電極層2上に部分的に触媒層3が形成される場合は、多孔性絶縁層4によって第1電極層2と触媒層3の両方が多孔性半導体層5と物理的接触および電気的接続しないようにする必要がある。
(多孔性半導体層)
多孔性半導体層5は、多孔性絶縁層4の上に形成され、色素が吸着されており、キャリア輸送材料9を含有し、光電変換層として機能する。
多孔性半導体層5は、半導体から構成され、その形態は、粒子状、膜状等の種々な形態のものを用いることができるが、膜状の形態であることが好ましい。
多孔性半導体層5を構成する材料としては、当該分野で一般に光電変換材料に使用されるものであれば特に限定されない。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2、SrCu22などの半導体化合物およびこれらの組み合わせが挙げられる。中でも、光電変換効率、安定性、安全性の点から酸化チタンが好ましい。
膜状の多孔性半導体層5を多孔性絶縁層4上に形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられる。例えば、半導体粒子を含有する懸濁液を多孔性絶縁層4上に塗布し、乾燥および焼成の少なくとも一方を行う方法が挙げられる。
この方法では、まず、半導体微粒子を適当な溶剤に懸濁して懸濁液を得る。半導体粒子としては、市販されているもののうち適当な平均粒径、例えば1nm〜500nm程度の平均一次粒径を有する単一または化合物半導体の粒子等が挙げられる。また、溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶剤、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、イソプロピルアルコール/トルエンなどのアルコール系混合溶剤、水などが挙げられる。また、このような懸濁液の代わりに市販の酸化チタンペースト(例えば、Solaronix社製、Ti−nanoxide、D、T/SP、D/SP、)を用いてもよい。
次いで、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法により、得られた懸濁液を多孔性絶縁層4上に塗布し、乾燥および焼成の少なくとも一方を行って多孔性半導体層5を形成する。なお、厚膜化や製造コストの観点より、ペーストを用いたスクリーン印刷法が好ましい。
乾燥および焼成に必要な温度、時間、雰囲気などは、多孔性半導体層5の形成用半導体粒子の種類に応じて適宜設定すればよく、例えば、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲で10秒〜12時間程度が挙げられる。この乾燥および焼成は、単一の温度で1回または温度を変化させて2回以上行ってもよい。
多孔性半導体層5は複数層で構成されていてもよく、このような場合には、異なる半導体粒子の懸濁液を調製し、塗布、乾燥および焼成の少なくとも一方を行う工程を2回以上繰り返せばよい。
多孔性半導体層5を形成した後、半導体微粒子同士の電気的接続の向上、多孔性半導体層5の表面積の増加、半導体微粒子上の欠陥準位の低減を目的として、例えば、多孔性半導体層5が酸化チタン膜の場合は四塩化チタン水溶液で処理してもよい。種々の公知の方法を使用することができる。
多孔性半導体層5の膜厚は、特に限定されるものではないが、例えば光電変換効率の観点より、5〜50μm程度が好ましい。
光電変換効率を向上させるためには、後述する色素を多孔性半導体層5により多く吸着させることが必要である。このため、膜状の多孔性半導体層5は比表面積が大きなものが好ましく、10〜200m2/g程度が好ましい。なお、本明細書において示す比表面積はBET吸着法により測定した値である。
(色素)
色素は、多孔性半導体層5に吸着して光増感剤として機能する。
色素としては、種々の可視光領域および/または赤外光領域の光を吸収する有機色素、金属錯体色素などが挙げられ、本発明ではこれらの色素の1種または2種以上を選択的に用いることができる。
有機色素としては、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。
金属錯体色素としては、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、TA、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rhなどの金属分子が配位結合した形態のものが挙げられ、具体的には、ルテニウムビピリジン系金属錯体色素、ルテニウムターピリジン系金属錯体色素、ルテニウムクォーターピリジン系金属錯体色素などのルテニウム系金属錯体色素が挙げられる。
また、多孔性半導体層5に色素を強固に吸着させるためには、色素分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましく、これらの中でもカルボキシル基(COOH基)が特に好ましい。一般に、インターロック基は、励起状態の色素と多孔性半導体層5の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を供給する。
多孔性半導体層5に色素を吸着させる方法としては、例えば、絶縁性基板1上に第1電極層2、触媒層3、多孔性絶縁層4および多孔性半導体層5が形成された積層体を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が代表的なものとして挙げられる。この際、色素吸着溶液を多孔性半導体層5内の微細孔奥部まで浸透させる上で、色素吸着溶液を加熱してもよい。
色素を溶解させる溶媒としては、色素を溶解するものであればよく、具体的には、アルコール類(例えばエタノール)、ケトン類(例えばアセトン)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、窒素化合物類(例えばアセトニトリル)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えばクロロホルム)、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン)、エステル類(例えば酢酸エチル)、水等が挙げられる。これらの溶媒は2種類以上を混合して用いることもできる。
溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶媒の種類により適宜調整することができるが、吸着機能を向上させるためにはできるだけ高濃度である方が好ましく、例えば、1×10-5モル/リットル以上が好ましい。色素吸着用溶液の調製においては、色素の溶解性を向上させるために加熱してもよい。
(キャリア輸送材料)
キャリア輸送材料9は、色素が吸着された多孔性半導体層5と触媒層3の間でイオン伝導する機能を有する。
キャリア輸送材料9は、イオンを輸送できる導電性材料で構成され、例えば、電解液、高分子電解質等のイオン伝導体が好ましい。イオン伝導体には、酸化還元種が含まれることが好ましい。
酸化還元種としては、鉄系、コバルト系など金属類や塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン物質が用いられる。ヨウ素を酸化還元種として用いる場合、一般に電池等に使用できるものであれば特に限定されないが、その中でも、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム等の金属ヨウ化物とヨウ素との組み合わせが最も好ましい。さらに、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド等のイミダゾール塩等を混入してもよい。
また、電解質の溶剤としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール等のアルコール類、その他、水や非プロトン極性物質等が挙げられるが、その中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好ましい。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
一方、電解液の揮発が問題となる場合は、溶融塩を用いてもよい。
電解質濃度としては、種々の電解質により選択されるが、0.01〜1.5モル/リットルの範囲が好ましい。
上述の電解質には、必要に応じて添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、t−ブチルピリジン(TBP)などの含窒素芳香族化合物、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII)、メチルプロピルイミダゾールアイオダイド(MPII)、エチルメチルイミダゾールアイオダイド(EMII)、エチルイミダゾールアイオダイド(EII)、ヘキシルメチルイミダゾールアイオダイド(HMII)などのイミダゾール塩が挙げられる。
(第2電極層)
第2電極層6は、色素が吸着された多孔性半導体層5で発生した電子を外部回路に輸送する機能、および、太陽電池モジュールにおいては隣接する他の太陽電池の第1電極層2と電気的に接続して直列接続する機能を有する。
第2電極層6は、カバー部材7に入射した光を色素が吸着された多孔性半導体層5に到達させるために透光性を有している。
第2電極層6の材料としては、インジウム錫複合酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)、酸化錫にフッ素をドープしたもの(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム等の透明材料、もしくは、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタルなどの不透明な金属材料を薄膜にしたものが挙げられる。ただし、金属材料を用いる場合、キャリア輸送材料9に腐食される材料もあるため、キャリア輸送材料9と接触する部分に、腐食に強い材料をコーティングしてもよい。好ましくは、インジウム錫複合酸化物、酸化錫、フッ素がドープされた酸化錫、酸化亜鉛および酸化インジウムのうちの少なくとも1つを含む酸化物透明導電膜が好ましい。この酸化物透明導電膜により、光透過率を極度に低減させることなく、低抵抗化が可能となる。
なお、第2電極層6はキャリア輸送材料9と接触するため、カーボン含有材料や白金系の酸化還元を促進する材料を用いない方がよい。それは、第2電極層6中の電子が酸化還元反応により、酸化還元種に移動し、内部短絡が起こるからである。
第2電極層6は、スパッタ法、スプレー法、蒸着法などの公知の方法により、多孔性絶縁膜4上に形成することができる。第2電極層6の膜厚としては0.02〜5μm程度が適当であり、膜抵抗としては低いほどよく、特に40Ω/sq以下が好ましい。
第2電極層6が緻密な構造をなす場合、色素吸着用溶液の多孔性半導体層5への含浸を容易とするため(色素吸着時間の短縮化)、および、キャリア輸送材料9の多孔性半導体層5および多孔性絶縁層4への含浸を容易とするために、第2電極層6は、カバー部材7側から多孔性半導体層5側へ貫通する複数の小孔(図示省略)を有していることが好ましい。
この小孔は、物理接触やレーザー加工により形成することができ、レーザー加工の方が小孔の大きさおよび分布を高精度に制御できる上で好ましい。小孔の大きさは、0.1μm〜100μm程度が好ましく、1μm〜50μm程度がさらに好ましい。小孔と小孔の間隔は、1μm〜200μm程度が好ましく、10μm〜300μm程度がさらに好ましい。
(カバー部材)
カバー部材7は、色素増感太陽電池の受光面として機能する。
カバー部材7は、発光素子形成時に行われる加熱プロセスを受けないため、その材料として、焼成後に性能が劣化する強化ガラスや樹脂フィルムを使用することが可能となる。特に、太陽電池および太陽電池モジュールを建造物へ適応させるには、JIS8917A8試験を満足することが重要となり、強化ガラスを受光面として使用することにより2枚の支持体のみで対応することができる。
このように、受光面に強化ガラスを用いることにより、高強度を有しながら従来構造よりも支持体一枚分の重量軽減が可能であり、かつ低コスト化が可能な太陽電池あるいは太陽電池モジュールを提供することができる。
また、カバー部材7は、第2電極層6と接触していてもよい。それは、それらの間に存在するキャリア輸送材料9が減少することにより、材料の低減およびキャリア輸送材料9による光吸収を減少させることができるためである。その結果、色素を吸着させた多孔性半導体層5の光の吸収量が増加させることができ、色素増感太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
また、カバー部材7の材料として樹脂フィルムを用いる場合、絶縁性基板1の非受光面側と多孔性半導体層5の受光面側とに2枚の樹脂フィルムを配置し、それらの外周縁を熱融着することにより太陽電池全体を封止することができ、後述の封止部を省略することができる。
なお、カバー部材7の材料としては、キャリア輸送材料9が揮発のおそれがある溶媒を含む場合は、この溶媒に対して透過性の低い材料を選択する必要がある。また、溶媒透過性の低い材料を用いる場合において、カバー部材7の一面または両面をSiO2等の透湿性の低い材料でコートしてもよい。
(封止部)
封止部8は、絶縁性基板1とカバー部材7の間における発電素子の周囲部に、キャリア輸送材料9を封止するために形成される。
封止部8は多孔性絶縁層4上に形成されていないことが好ましい。それは、多孔性絶縁層4が多孔体であり、キャリア輸送材料9中の酸化還元種が多孔性絶縁層4を通して移動することが可能であるためである。ただし、多孔性絶縁層4中に封止部8の材料を十分浸透させることができれば、この限りではない。
封止部8の材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつキャリア輸送材料9中の酸化還元種を浸透しない材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、紫外線硬化性樹脂および熱硬化性樹脂などが挙げられ、具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ホットメルト樹脂、ガラスフリットなどが挙げられ、これら2種類以上の材料を2層以上に積層して封止部8を形成することもできる。
色素増感太陽電池間の封止部8は、隣接する色素増感太陽電池のキャリア輸送材料9が電気的、空間的に接触することを阻止する機能を有し、色素増感太陽電池モジュールなどの周囲部の封止部8はキャリア輸送材料9を保持する機能を有する。
紫外線硬化樹脂としては、スリーボンド社製、型番:31X−101、熱硬化性樹脂としては、スリーボンド社製、型番:31X−088や一般に市販されているエポキシ樹脂などを用いることができる。
封止部8は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ガラスフリットを使用する場合には、ディスペンサーを用いて形成することができ、ホットメルト樹脂を使用する場合には、シート状のホットメルト樹脂にパターニングした穴を開けることにより形成することができる。
(実施形態1−2)
図2は、前記実施形態1−1の太陽電池を複数個電気的に直列接続してなる色素増感太陽電池モジュールを示す概略断面図である。なお、図2において、図1中の構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付している。
この太陽電池モジュールは、色素増感太陽電池の2つ以上が同一の絶縁性基板1上に電気的に直列接続されて形成され、かつ隣接する2つの太陽電池の間に電池間封止部18が形成されている。また、太陽電池モジュールに含まれる任意の1つの第1太陽電池の第2電極層6の一部が、第1色素増感太陽電池に隣接する1つの第2太陽電池の第1電極層2と電気的に接続し、第1太陽電池の多孔性絶縁層4の一部が、第1太陽電池と第2太陽電池の間の絶縁性基板1の少なくとも一部の上に形成されている。なお、図2では、触媒層3が第1電極層2上にドット状に形成されている場合を例示している。
この太陽電池モジュールを製造するに際しては、まず、基板1上に形成された導電層を所定間隔でレーザスクライブ法によりパターニングして、導電層が除去されたスクライブライン10を複数本形成する。これにより、相互に電気的に分離した複数の第1電極層2が形成され、各第1電極層2上が太陽電池形成領域となる。
なお、複数の第1電極層2のうち、スクライブラインと直交する方向の一方端側の第1電極層2は幅を小さくして形成され、この幅の小さい第1電極層2上には太陽電池は形成されず、この第1電極層2は隣の太陽電池の第2電極層5の引出し電極2aとして利用される。
次に、各第1電極層2上に触媒層3を形成し、触媒層3上から第1電極層2の一端側のスクライブライン10の底面(基板1の表面)の一部にわたって多孔性絶縁層4を形成する。実施形態1−2の場合、各第1電極層2の左側部分を除いて触媒層3が形成され、触媒層3を含む第1電極2の表面と右側端部を覆うように多孔性絶縁層4が形成される。このとき、多孔性絶縁層4の右側端部はスクライブライン10の右側部分を被覆していない。また、上述のように、第1電極層2と触媒層3との合計厚みを1μm以下に薄く形成することにより、第1電極層2の右側端部と触媒層3との厚み分の段差が小さくなり、その段差部分での多孔性絶縁層4の形成不良が防止される。よって、触媒層3と第1電極層2の少なくとも一方が第2電極層6と接触して太陽電池の内部短絡に起因する故障が発生することがない。
次に、多孔性絶縁層4上に多孔性半導体層5を形成する。この場合、多孔性半導体層5は、多孔性絶縁層4上におけるスクライブライン10の領域には形成されていない。
次に、多孔性半導体層5上からスクライブライン10の残部の露出した底面にわたって第2電極層6を形成する。なお、第2電極層6が緻密な構造をなす場合、実施形態1−1での説明に準じて、第2電極層6に複数の小孔(図示省略)を形成する。
次に、実施形態1−1での説明に準じて多孔性半導体層6に増感色素を吸着させる。
続いて、第1電極層2および引出し電極2aの周囲部と、太陽電池形成領域間に封止材料を塗布し、封止材料上および第2電極層6上に透明カバー部材7(例えば、強化ガラス)を載置し、封止材料を硬化させて封止部8および電池間封止部18を形成する。なお、図2では、電池間封止部18が一方の太陽電池の露出した第1電極2および多孔性絶縁層4の表面上に形成されている。
その後、基板1に予め形成した注入孔から内部に電解液を注入して、多孔性絶縁層4および多孔性半導体層5の内部に電解液を浸透させ、前記注入孔を樹脂にて封止することにより、複数の色素増感太陽電池が電気的に直列接続された色素増感太陽電池モジュールが完成する。
なお、この太陽電池モジュールを構成する各層の形成方法および材料の選択等は、実施形態1−1での説明に準じて行うことができる。
この実施形態1−2の太陽電池モジュールにおいて、透光性カバー部材7の表面が受光面となり、第2電極層5が負極となり、第1電極層2が正極となる。透光性カバー部材7の受光面に矢印で示す光が照射されると、各多孔性半導体層5で電子が発生し、発生した電子が各多孔性半導体層5から各第2電極層6へ移動し、各第2電極層6から隣の太陽電池の各第1電極層2に移動し、移動した電子が各触媒層3を通って各多孔性絶縁層4内の電解質中のイオンにより運ばれて各第2電極層6に移動する。なお、図2において、直列接続方向の左側の太陽電池の第1電極層2と右側の太陽電池の引出し電極2aは、外部回路と電気的に接続されるため電気が外部に取り出される。
(実施形態2−1)
図3は、本発明の色素増感太陽電池の実施形態2−1を示す概略断面図である。なお、図3において、図1中の構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付している。
以下、実施形態2−1の実施形態1−1とは異なる点を主に説明する。
実施形態2−1の太陽電池において、多孔性絶縁層4は触媒層3上から右のスクライブライン10の底面全体にわたって形成されている。
また、多孔性絶縁層4上の多孔性絶縁層5は、多孔性絶縁層4のスクライブライン10に形成された部分の上にまで形成されている。
また、第2電極層6は、多孔性半導体層5上から引出し電極2a上にわたって形成されている。
なお、実施形態2−1において、上述の構成以外の構成は、実施形態1−1と概ね同様である。
実施形態2−1の太陽電池では、上述のように多孔性絶縁層4上の多孔性絶縁層5は、多孔性絶縁層4のスクライブライン10に形成された部分の上にまで形成されているため、実施形態1−1に比べて多孔性半導体層5の面積が広くなり、発電電流を増加させることができる。
(実施形態2−2)
図4は、前記実施形態2−2の太陽電池を複数個電気的に直列接続してなる太陽電池モジュールを示す概略断面図である。なお、図4において、図1中の構成要素と同様の構成要素については同一の符号を付している。
この太陽電池モジュールは、色素増感太陽電池の2つ以上が同一の絶縁性基板1上に電気的に直列接続されて形成され、かつ隣接する2つの太陽電池の間に電池間封止部18が形成されている。また、太陽電池モジュールに含まれる任意の1つの第1太陽電池の第2電極層6の一部が、第1色素増感太陽電池に隣接する1つの第2太陽電池の第1電極層2と電気的に接続している。また、第1太陽電池の多孔性絶縁層4の一部が、第1太陽電池と第2太陽電池の間の絶縁性基板1の全面に形成されている。さらに、第1太陽電池の多孔性半導体層4の一部が、第1太陽電池と隣接する第2太陽電池の間に形成された第1太陽電池の多孔性絶縁層4の一部の上に形成されている。
なお、図4では、触媒層3が第1電極層2上にドット状に形成されている場合を例示している。
この太陽電池モジュールの製造方法は、多孔性絶縁層4、多孔性半導体層5および第2電極層6を上述のように形成すること以外は、実施形態1−2の製造方法と同様である。
この太陽電池モジュールにおいても、透光性カバー部材7の表面に矢印で示す光が照射されると、実施形態1−2と同様に作動して発電する。
(他の実施形態)
上述の実施形態では、透光性カバー部材7と第2電極層6との間にキャリア輸送層9が介在している場合を例示したが、透光性カバー部材7が第2電極層6と接触して設けられてもよい。
本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例および比較例により本発明が限定されるものではない。
実施例および比較例における各層の膜厚は、特に断りのない限り、株式会社東京精密製、商品名:サーフコム1400Aを用いて測定した。
(実施例1)
図2に示す構造の色素増感太陽電池モジュールを作製した。その製造工程を以下に示す。
<第1電極層のパターンニング>
ガラスからなる絶縁性基板上1にSnO2膜からなる第1導電層2が成膜された、縦60mm×横36mm×厚さ約500nmの導電性ガラス基板(日本板硝子株式会社製、フッ素ドープされたSnO2膜付ガラス)を用意し、第1電極層2にレーザー光(YAGレーザー、基本波長:1.06μm、西進商事株式会社製)を照射しSnO2を蒸発させて、幅200μmのスクライブライン10を形成した。スクライブライン10は、絶縁性基板1の左端から9.1mmの位置と、そこから6.2mm間隔で4本形成した。
<触媒層の作製>
前記導電性ガラス基板上に、開口部が5個並ぶスクリーン版を用意し、スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型式:LS−34TVA)を用いて触媒形成材料である塩化白金ペースト(Solaronix社製、T−Catalithic)を塗布し、得られた塗膜を450℃で1時間焼成して触媒層3を形成した。触媒層3をAFM観察すると、高さ:数10nm、大きさ:100nm前後のアイランド状(ドット状)のPtが多数第1電極層2上に形成されていた。
<多孔性絶縁層の作製>
酸化ジルコニウムの微粒子をテルピネオールに分散させ、さらにエチルセルロースを混合してペーストを調製した。
5.2mm×52mmの開口部が5個並ぶスクリーン版を用意し、スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型式:LS−34TVA)を用いて、得られたペーストを触媒層3上に塗布し、室温でレベリングを行った。
次いで、得られた塗膜を予備乾燥し、500℃で焼成して多孔性絶縁層(酸化ジルコニウム膜)4を形成した。
多孔性絶縁層4は、絶縁性基板1の左端から6.5mmの位置を中心として、幅5.2mm、長さ52mm、膜厚5μmの形状で1個形成すると共に、前記中心から中心間隔6.2mmで同様の大きさおよび膜厚で4個形成した。また、多孔性絶縁層4の一部は、スクライブライン10における絶縁性基板1上の一部に形成された。
<多孔性半導体層の作製>
5mm×50mmの開口部が5個並ぶスクリーン版を用意し、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名:Ti−Nanoxide D/SP、平均粒径13nm)をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型式:LS−34TVA)を用いて塗布し、室温で 時間レベリングを行った。
次いで、得られた塗膜を予備乾燥した後、500℃で焼成し、この工程を複数回繰り返して、合計膜厚20μmの多孔性半導体層(酸化チタン膜)6を形成した。
多孔性半導体層5は、絶縁性基板1の左端から6.5mmの位置を中心として幅5mm、長さ50mmで1個形成すると共に、前記中心から中心間隔6.2mmで同様の大きさで4個形成した。
<第2電極層の作製>
開口部が5個並ぶメタルマスクを用意し、第2電極層の材料である塗布液を多孔性半導体5上にスプレー法にて塗布し乾燥した後、焼成して、フッ素がドープされた酸化錫からなる第2電極層6を膜厚400nmで形成した。
第2電極層6は、一の太陽電池形成領域の多孔性半導体層5の上から隣接する他の太陽電池形成領域の第1電極層1の左端から0.3mmまでの触媒層3の上に連続して形成された。
第2電極層6の形成後、太陽電池形成領域間の第1電極層2同士の抵抗を測定すると、10MΩ以上を示した。このことから、多孔性絶縁層の形成不良に起因する内部短絡は発生していないと考えられる。
<増感色素の吸着>
増感色素として式(1)示すN719(Solaronix社製 Ru535bisTBA)を、3×10-4モル/リットルの濃度となるようエタノール(Aldrich Chemical Company製)に溶解し、色素溶液を調製した。
次に、前記工程を経て得られた積層体を色素溶液に100時間浸漬し、増感色素を多孔質半導体層5に吸着させた。その後、積層体をエタノール(Aldrich Chemical Company製)で洗浄し、乾燥させて、光電変換層を得た。

Figure 2010003557
<酸化還元性電解液の調製>
キャリア輸送材料9として用いる酸化還元性電解液は、溶剤としてのアセトニトリル(Aldrich Chemical Company製)に、濃度0.1モル/リットルのヨウ化リチウム(Aldrich Chemical Company製)、濃度0.01モル/リットルのヨウ素(Aldrich Chemical Company製)、濃度0.5モル/リットルのTBP(Aldrich Chemical Company製)、濃度0.6モル/リットルのジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII、四国化成製)を溶解させて作製した。
<封止部の形成および電解液の注入>
太陽電池形成領域間に、紫外線硬化材(スリーボンド社製、型番:31X−101)をディスペンサー(EFD社製 ULTRASAVER)により塗布し、別途用意した縦56mm×横32mmのガラス基板7と基板1とを貼り合せた。基板1には予め電解質注入用孔を設けておいた。
次いで、紫外線照射ランプ(EFD社製、商品名:NOVACURE)を用いて塗布部分に紫外線を照射して紫外線硬化材を硬化させて電池間封止部18を形成すると共に、2枚の基板1、7を固定した。その後、前記第1電極2および引出し電極2a上における周囲部にも同様に紫外線硬化材を塗布し、硬化させて封止部8を形成した。
次いで、基板1の電解質注入用孔から前記酸化還元性電解液をキャピラリー効果を用いて注入し、電解質注入用孔を樹脂にて封止することにより、図2に相当する太陽電池モジュールを完成した。
得られた太陽電池モジュールに、1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射してIV特性を測定すると、光電変換効率4.1%であった。
また、実施例1の製造方法により30個の太陽電池を直列接続した太陽電池モジュールを作製し、第2電極層6の形成後に太陽電池間の第1電極層1同士の抵抗を測定すると、10MΩ以上を示した。
(比較例1)
図6に示す構造の色素増感太陽電池モジュールを作製した。その製造工程を以下に示す。
<透明導電膜のパターンニング>
ガラスからなる絶縁性基板上41にSnO2膜からなる透明導電膜42が成膜された、縦60mm×横50mm×厚さ約500nmの導電性ガラス基板(日本板硝子株式会社製、SnO2膜付ガラス)を用意し、透明導電膜42にレーザー光(YAGレーザー、基本波長:1.06μm、西進商事株式会社製)を照射しSnO2を蒸発させて、幅100μmのスクライブラインを形成した。スクライブラインは、絶縁性基板1の左端から9.4mmの位置と、そこから8mm間隔で3本形成した。
<多孔性酸化チタン層の作製>
多孔性酸化チタン層43の形成では、まず、5mm×50mmの開口部が5個並ぶスクリーン版を用意し、パターニングされた透明導電膜42の上に酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名Ti−Nanoxide D/SP、平均粒径13nm)を、スクリーン印刷機を用いて塗布した。その後、500℃で焼成を行い、膜厚15μmの多孔性酸化チタン層43を形成した。多孔性酸化チタン層43は、透明基板41の左端から6.75mmの位置を中心として5mm×50mmの大きさで1個形成すると共に、前記中心から中心間隔8mmで同様の大きさで4個形成した。
<中間多孔性層の作製>
中間多孔性層44の形成は、まず、5.5mm×52mmの開口部が5個並ぶスクリーン版を用意し、多孔性酸化チタン層43上にペースト材料を、スクリーン印刷機を用いて塗布した。その後、500℃で焼成を行い、膜厚7μmの中間多孔性層44を形成した。
多孔性酸化チタン層43は、透明基板41の左端から6.8mmの位置を中心として5。5mm×52mmの大きさで1個形成すると共に、前記中心から中心間隔8mmで同様の大きさで4個形成した。
<触媒層および対極の作製>
開口部が5個並ぶメタルマスクを用意し、中間多孔性層44上にPtを電子ビーム蒸着器ei−5(アルバック株式会社製)を用いて蒸着速度5Å/Sで成膜して膜厚約50nmの触媒層15を形成し、さらにその上に、Tiを蒸着速度5Å/Sで成膜して膜厚約200nmの対極45導電層を形成した。
触媒層は中間多孔性層44の上のみに形成し、対極45は触媒層上から隣接する透明導電膜42上にわたって形成した。
蒸着後、太陽電池間の抵抗を測定すると、一部が1kΩ以下を示した。このことから、中間多孔性層が形成不良を生じており、それに起因する内部短絡が発生している可能性があると考えられる。
<増感色素の吸着および電解液の調整>
その後、増感色素の吸着および電解液の調整は、実施例1と同様の手法で行った。
<封止部の形成および電解液の注入>
太陽電池形成領域間に、紫外線硬化材(スリーボンド社製、型番:31X−101)を塗布し、別途用意した縦56mm×横32mmのトップカバー47と基板41とを貼り合せた。なお、トップカバー47には予め電解質注入用孔を設けておいた。
次いで、紫外線照射ランプ(EFD社製、商品名:NOVACURE)を用いて塗布部分に紫外線を照射して紫外線硬化材を硬化させて電池間封止部(図示省略)を形成すると共に、トップカバー47の周囲部にも紫外線硬化材を塗布し硬化させて封止部(図示省略)を形成した。
次いで、トップカバー47の電解質注入用孔から酸化還元性電解液をキャピラリー効果を用いて注入し、電解質注入用孔を樹脂にて封止することにより、図6に相当する太陽電池モジュールを完成した。
得られた太陽電池モジュールに、1kW/m2の強度の矢印で示す光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射してIV特性を測定すると、光電変換効率3.2%であった。
このことから、従来技術である比較例1は、実施例1と比較すると、短絡による故障が発生していることがわかった。
(実施例2)
カバー部材7に強化ガラス(化学強化ガラス:日本板硝子製)を用いること以外は、実施例1と同様の方法で太陽電池モジュールを作製した。
また、実施例1と同様の条件で実施例2の太陽電池モジュールのIV特性を測定すると 、光電変換効率4.0%であった。この実施例2では、実施例1と同程度の光電変換率 が得られ、かつ受光面に強化ガラスのみを用いた構造の太陽電池モジュールが得られた 。
(比較例2)
透明基板41の上に、強化ガラス(化学強化ガラス:日本板硝子製)を重ね合わせて一体化したこと以外は、比較例1と同様の方法で太陽電池モジュールを作製した。
この比較例2の太陽電池モジュールは、受光面側の強化ガラスによって実施例2よりも重量が増加した。つまり、実施例2は、比較例2より軽量化することができ、従来技術よりも太陽電池モジュールの重量軽減および低コスト化が可能であることが示された。
(実施例3)
図3に示す構造の色素増感太陽電池モジュールを作製した。その製造工程を以下に示す。なお、実施例3において、以下の二工程以外は、実施例2と同様である。
<多孔性絶縁層の作製>
多孔性絶縁層4は、触媒層3上からスクライブライン10の全面上にわたって形成された。多孔性絶縁層4は、絶縁性基板1の左端から6.6mmの位置を中心として幅5.4mm、長さ52mm、膜厚5μmの形状で1個形成されると共に、前記中心から中心間隔6.2mm間隔で同様の大きさで4個形成された。
<多孔性半導体層の作製>
多孔性半導体層5は、絶縁性基板1の左端から6.6mmの位置を中心として幅5.1mm、長さ50mm、膜厚20μmの大きさで1個形成されると共に、前記中心から中心間隔6.2mmで同様の大きさで4個形成された。
このように多孔性半導体層5を形成することにより、スクライブライン10上にある多孔性絶縁層4の一部の上まで多孔性半導体層5を大きくすることができる。
この太陽電池モジュールについて、実施例1と同様の条件で太陽電池間の抵抗を測定すると、10MΩ以上を示し、モジュールのIV特性を測定すると、光電変換効率4.3%であった。
これらのことから、実施例3は実施例2と比較して、色素を吸着させた多孔性半導体層5の幅が広いため光の吸収量が増加し、光電変換効率が向上したと考えられる。
また、実施例3の製造方法により30個の太陽電池を直列接続した太陽電池モジュールを作製し、第2電極層6の形成後に太陽電池間の第1電極層1同士の抵抗を測定すると、10MΩ以上を示した。
(実施例4)
以下の工程以外は実施例3と同様にして実施例4の太陽電池モジュールを作成した。
実施例4では、第2電極層6にレーザー光(YAGレーザー、基本波長:1.06μm、西進商事株式会社製)を照射し、電流値と周波数を調整して、孔径40μmの小孔を間隔80μmで複数個形成した。また、色素吸着時間を75時間とした。
その結果、実施例1と同様の条件で作製した太陽電池モジュールのIV特性を測定すると、光電変換効率4.2%であった。
この結果から、実施例4は実施例3と比較して、第2電極層6に小孔を形成することにより、色素吸着時間が早まり、作製時間の短縮が図れることが示された。
(実施例5)
実施例5は、第2電極層6に形成した小孔の間隔を40μmに狭め、色素吸着時間を63時間にしたこと以外は、実施例4と同様にして太陽電池モジュールを作製した。
その結果、実施例1と同様の条件で太陽電池モジュールのIV特性を測定すると、光電変換効率4.2%であった。
この結果から、実施例5は実施例4と比較して、小孔の間隔を狭くすることにより色素吸着時間が早まり、作製時間の短縮が図れることが示された。
(実施例6)
カバー部材7と第2電極層6を接触させること以外は、実施例3と同様に実施例6の太陽電池モジュールを作製した。
この太陽電池モジュールについて、実施例1と同様の条件でIV特性を測定すると、光電変換効率4.5%であった。
この結果から、実施例6は実施例3と比較して、カバー部材7と第2電極層6間に存在するキャリア輸送材料9が減少し、キャリア輸送材料9の光吸収が減少したことにより光電変換効率が向上することが示された。また、電解液の使用量が低減するため、コスト低減もできた。
本発明の色素増感太陽電池の実施形態1−1を示す概略断面図である。 実施形態1−1の太陽電池を複数個電気的に直列接続してなる色素増感太陽電池モジュールを示す概略断面図である。 本発明の色素増感太陽電池の実施形態2−1を示す概略断面図である。 実施形態2−2の太陽電池を複数個電気的に直列接続してなる色素増感太陽電池モジュールを示す概略断面図である。 特許文献2で示された色素増感太陽電池モジュールの概略断面図である。 特許文献3で示された色素増感太陽電池モジュールの概略断面図である。
符号の説明
1 絶縁性基板
2 第1電極層
3 触媒層
4 多孔性絶縁層
5 多孔性半導体層
6 第2電極層
7 カバー部材
8 封止部
9 キャリア輸送材料
18 電池間封止部

Claims (13)

  1. 絶縁性基板の上に、少なくとも第1電極層、触媒層、内部にキャリア輸送材料を含有する多孔性絶縁層、内部にキャリア輸送材料を含有しかつ色素が吸着された多孔性半導体層、透光性を有する第2電極層、透光性を有するカバー部材がこの順で積層され、かつ前記絶縁性基板と前記カバー部材の間の周囲部が封止部にて封止されたことを特徴とする色素増感太陽電池。
  2. 前記多孔性絶縁層が、前記触媒層の上から前記絶縁性基板の一部の上に連続して積層された請求項1に記載の色素増感太陽電池。
  3. 前記第2電極層が、前記カバー部材側から前記多孔性半導体層側へ貫通する小孔を複数個有する請求項1または2に記載の色素増感太陽電池。
  4. 前記小孔が、レーザー加工により形成された請求項3に記載の色素増感太陽電池。
  5. 前記第2電極層が、金属酸化物からなる請求項1から4のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
  6. 前記第2電極層が、酸化錫、フッ素がドープされた酸化錫、酸化亜鉛および酸化インジウムのうちの少なくとも1つを含んでなる請求項1から5のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
  7. 前記カバー部材が、強化ガラスである請求項1から6のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
  8. 前記多孔性絶縁層が前記多孔性半導体層よりも薄い請求項1から7のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
  9. 前記カバー部材が、前記第2電極層と接触している請求項1から8のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池。
  10. 絶縁性基板上に少なくとも第1電極層、触媒層、多孔性絶縁層、色素が吸着された多孔性半導体層および第2電極層をこの順で積層する工程(1)と、
    前記第2電極層の表面を透光性カバー部材にて被覆し、かつ前記絶縁性基板と透光性カバー部材の間の周囲部を封止部にて封止する工程(2)と、
    前記絶縁性基板と透光性カバー部材の間の内側領域にキャリア輸送材料を注入して、前記多孔性半導体層および多孔性絶縁層の内部に前記キャリア輸送材料を浸透させる工程(3)とを備えたことを特徴とする色素増感太陽電池の製造方法。
  11. 請求項1から9のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池の2つ以上が同一の絶縁性基板上に電気的に直列接続されて形成され、かつ隣接する2つの色素増感太陽電池の間に電池間封止部が形成された色素増感太陽電池モジュール。
  12. 前記色素増感太陽電池モジュールに含まれる任意の1つの第1色素増感太陽電池の前記第2電極層の一部が、第1色素増感太陽電池に隣接する1つの第2色素増感太陽電池の前記第1電極層と電気的に接続し、
    第1色素増感太陽電池の前記多孔性絶縁層の一部が、第1色素増感太陽電池と第2色素増感太陽電池の間の前記絶縁性基板の少なくとも一部の上に形成された請求項11に記載の色素増感太陽電池モジュール。
  13. 第1色素増感太陽電池の前記多孔性半導体層の一部が、第1色素増感太陽電池と第2色素増感太陽電池の間に形成された第1色素増感太陽電池の前記多孔性絶縁層の一部の上に形成された請求項12に記載の色素増感太陽電池モジュール。
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