JP2010073354A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下に保持した場合、または高電圧で充電した場合にも、高い電池性能を維持することができる非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水電解質と、セパレータとを備える。正極は、リチウム(Li)およびコバルト(Co)を含む遷移金属複合酸化物粒子と、該遷移金属複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを有する被覆粒子を含んでいる。非水電解質は、5ppm以上50ppm以下のコバルト原子および/またはコバルト化合物と、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体とを含んでいる。
【選択図】図1

Description

この発明は、非水電解質二次電池に関する。詳しくは、リチウム(Li)を含有する正極活物質を用いた非水電解質二次電池に関する。
近年の携帯電子技術のめざましい発達により、携帯電話やノートブックコンピューターなどの電子機器は高度情報化社会を支える基盤技術と認知され始めている。また、これらの電子機器の高機能化に関する研究開発が精力的に進められており、これらの電子機器の消費電力も比例して増加の一途を辿っている。その反面、これらの電子機器は長時間の駆動が求められており、駆動電源である二次電池の高エネルギー密度化が必然的に望まれている。また、環境面の配慮からサイクル寿命の延命についても望まれている。
電子機器に内蔵される電池の占有体積や質量などの観点より、電池のエネルギー密度は高いほど望ましい。現在では、リチウムイオン二次電池が優れたエネルギー密度を有することから、殆どの機器に内蔵されるに至っている。
通常、リチウムイオン二次電池では、正極にはコバルト酸リチウム、負極には炭素材料が使用されており、作動電圧が4.2Vから2.5Vの範囲で用いられている。単電池において、端子電圧を4.2Vまで上げられるのは、非水電解質材料やセパレータなどの優れた電気化学的安定性によるところが大きい。
このようなリチウムイオン二次電池のさらなる高性能化、用途拡大を目的として多くの検討が進められている。その一つとして、例えば、充電電圧を高めるなどの方法で、コバルト酸リチウムをはじめとする正極活物質のエネルギー密度を高め、リチウムイオン二次電池の高容量化を図ることが検討されている。
しかしながら、高容量で充放電を繰り返した場合、正極と物理的に接触する電解液が酸化分解され、正極活物質に含まれる遷移金属が溶出するなどして負極上に析出するため、安全性を著しく損なうだけでなく、容量劣化を起こし、電池寿命が短くなってしまうという問題がある。
そこで、正極活物質を改質することでその化学的安定性を向上させ、電解液への遷移金属溶出等を抑制し、電池特性を改善する方法が検討されている。また、負極上に安定被膜を形成する物質を非水電解液中へ添加することで、正極から溶出した遷移金属の負極での析出を抑制する方法も報告されている。さらに、非水電解液中に遷移金属と錯形成する化合物を添加することで、溶出した遷移金属を電解液中で安定化し、負極での析出を抑制する方法も提案されている。さらにまた、電解液中にあらかじめ遷移金属化合物を存在させることで、正極から溶出した遷移金属の析出を防止し、負極に形成された導電性被膜により電池の内部抵抗を下げるという方法も報告されている。
例えば下記特許文献1には、正極電極の表面に金属酸化物を被覆することにより、サイクル特性を改善する方法が記載されている。下記特許文献2には、正極活物質の表面に金属酸化物を被覆することで、電解液中への遷移金属溶出を抑制し、電池寿命を向上させる方法が記載されている。
また、特許文献3には、非水電解液中に含まれる化合物が負極で緻密な被膜を形成し、遷移金属等の析出を抑制する方法が記載されている。特許文献4には、電解液中にコバルト原子と錯形成し、安定化する化合物を添加することで、遷移金属の負極上での析出を防止する方法が記載されている。特許文献5では、電解液中に遷移金属化合物を添加し、負極にあらかじめ金属を析出させ、さらなる析出を防止するだけでなく、電池の内部抵抗を低下させる方法が記載されている。
特許第3172388号公報 特開2000−195517号公報 特開2000−003724号公報 特開2002−134170号公報 特開2003−217657号公報
しかしながら、上述の特許文献1、2のように正極活物質に含まれる遷移金属酸化物を安定化するだけでは、一度正極から溶出した遷移金属はすべてセパレータに沈着するか、負極に析出し、容量劣化の改善は図れても効果は不十分である。また、充電状態において高い酸化状態にある正極表面が十分に活性を維持するために、正極表面と物理的に接触する電解液、セパレータの分解によるガス発生が大きいという問題がある。
さらに、特許文献3に記載されているように、負極に緻密な被膜を形成し金属析出を抑制する方法では、抑制効果を大きくすると界面抵抗が増加し、容量が大きく低下するし、高い容量を実現する場合には抑制効果が小さくなるという欠点がある。
また、特許文献4では電解液中に含まれる硫黄環状化合物が、正極から溶出したコバルトイオンに錯形成して安定化し、負極での析出を抑制しているが、高温環境下や充電後の開回路電圧が4.25V以上に設定されている電池では、錯形成の効果が引き金となり正極からの遷移金属の溶出が増大し、逆に電池容量が劣化する。
特許文献5のように、電解液中に添加した遷移金属化合物をあらかじめ負極に析出させる方法では、金属析出の形態が必ずしも一定でないなどの理由から安全性の問題が考えられる。
このように正極活物質を改質することで電解液中での安定性を高める方法や、電解液中に含まれる化合物を利用することで正極から溶出した遷移金属の負極上での析出を防ぐ手法では、電池特性の改善を得る上で不十分であった。
上記の技術を組み合わせた場合には、電池寿命の観点でより高い効果が期待されるが、実際に検討した結果、高温環境下や充電後の電圧が4.25V以上に設定されている電池では、その高い電池性能を維持する効果が不十分であることが明らかとなった。
したがって、この発明の目的は、高温環境下に保持した場合、または高電圧で充電した場合にも、高い電池性能を維持することができる非水電解質二次電池を提供することにある。
上述の課題を解決するために、この発明は、
正極と、負極と、非水電解質と、セパレータとを備え、
正極は、リチウム(Li)およびコバルト(Co)を含む遷移金属複合酸化物粒子と、該遷移金属複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを有する被覆粒子を含み、
非水電解質は、
5ppm以上50ppm以下のコバルト原子および/またはコバルト化合物と、
ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体と
を含んでいる非水電解質二次電池である。
この発明では、被覆粒子が遷移金属複合酸化物粒子表面の少なくとも一部に設けられた被覆層を有するので、正極表面と物理的に接触する非水電解質の分解を抑制することができる。また、非水電解質がハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含んでいるので、負極上の活性部位で非水電解質が分解し、安定で緻密な消費型被膜を逐次的につくることで、金属析出を抑制し、かつ界面抵抗の上昇も起こらないため、電池性能劣化が抑制される。
従来の電池では、正極から非水電解質中に溶出したコバルト原子および/またはコバルト化合物の量は5ppmよりも遙かに少なく、検出限界以下である。これに対して、この発明では、上述のように、被覆層と、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体とを組み合わせることで、コバルト原子が非水電解質中において5ppm以上50ppm以下の範囲で存在できる。これらは、負極上にも一部析出するが、量的な観点から電池特性への影響は軽微であり、むしろ特許文献5で報告されているように電池の内部抵抗の低減に寄与する。
この発明において、被覆層が、複合酸化物粒子を構成する主要遷移金属元素とは異なり、2族〜16族から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、リン(P)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、被覆層において異種元素MとXが異なる分布を示すことが好ましい。このような分布を異種元素MとXが示す場合、元素Mは、元素Xに比して、複合酸化物粒子表面により均一に分布することが特に好ましい。
このように異種元素MとXが異なる分布を示すことで、正極表面と物理的に接触する非水電解質の分解が大きく抑制される一方、局所的な部位では一部分解が起こることで安定な被膜が形成される。したがって、非水電解質中におけるコバルト原子の含有量を5ppm以上50ppm以下の範囲内に安定に保持することができる。
この発明において、セパレータは、ポリエチレンと、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド、ポリイミドおよびポリアクリロニトリルのうちの少なくとも何れかとを含むものであることが好ましい。
また、セパレータは、ポリエチレン層と、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド、ポリイミドおよびポリアクリロニトリルのうちの少なくとも何れかからなる層とが積層されたものであることが好ましい。このように積層構造とする場合、3層構造とすることが好ましい。
このような構成にすると、正極表面と物理的に接触するセパレータの酸化分解を抑制し、遷移金属溶出、ガス発生等を抑制することができる。
この発明において、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体が、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、および/または4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンであることが好ましい。ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体が非水電解質中に0.1重量%以上30重量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
この発明において、一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が好ましくは4.25V以上6.00V以下、より好ましくは4.25V以上4.80V以下である。このように高い開回路電圧に設定することで、高いエネルギー密度を達成することができる。
以上説明したように、この発明によれば、電池を高温環境下に保持した場合、または電池を高電圧で充電した場合にも、高い電池性能を維持することができる。
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(1)第1の実施形態
(1−1)電池の構成
図1は、この発明の第1の実施形態による非水電解質二次電池の一構成例を示す。この二次電池は、電極反応物質としてリチウム(Li)を用い、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この二次電池は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体20を有している。セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡または外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体20の中心には例えばセンターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
この発明の第1の実施の形態による非水電解質二次電池では、一対の正極21および負極22当たりの完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)が、4.20V以下でもよいが、4.20Vよりも高く、好ましくは4.25V以上6.00V以下、より好ましくは4.25V以上4.80V以下の範囲内になるように設計されていてもよい。電池電圧を高くすることにより、高いエネルギー密度を得ることができる。
図2は、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して示すものである。以下、図2を参照しながら、非水電解質二次電池を構成する正極21、負極22、セパレータ23、電解液について順次説明する。
(正極)
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、リチウム(Li)およびコバルト(Co)を含む遷移金属複合酸化物粒子と、この母材となる遷移金属複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを有する被覆粒子を含んでいる。
母材となる遷移金属複合酸化物粒子は、リチウム(Li)とコバルト(Co)とを含み、リチウムを吸蔵および放出できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、遷移金属複合酸化物粒子は、コバルト(Co)以外の、1または複数の遷移金属をさらに含んでいてもよい。遷移金属複合酸化物粒子は、高容量化の点から、コバルト酸リチウムなどの層状岩塩型の構造を有するリチウム含有遷移金属酸化物を主成分とすることが好ましい。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体であるLiNiyCo1-y2(0<y<1)、具体的にはLiNi0.5Co0.52、LiNi0.8Co0.22等を用いてもよい。
遷移金属複合酸化物粒子の材料としては、高充填性や高い放電電圧の点から、コバルト酸リチウムを主体としたリチウム含有遷移金属酸化物を用いることが好ましい。コバルト酸リチウムを主体としたリチウム含有遷移金属酸化物は、2族〜15族から選ばれる少なくとも1つ以上の元素で置換することや、粉体物性の調整など、公知の技術が施されたものであってもよい。具体的には、下記の一般式(1)で表された組成を有するリチウム含有遷移金属酸化物を用いることが好ましい。
LipCo(1-q)q(2-y)z ・・・(1)
(式中、Mはコバルト(Co)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を、Xは酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.2、0≦q<0.3、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.1の範囲内の値である。)
被覆層は、遷移金属複合酸化物粒子の少なくとも一部に設けられ、遷移金属複合酸化物粒子に含まれる遷移金属を実質的に構成する主要遷移金属とは異なり、2族〜16族から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、リン(P)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1つの元素Xとを含むものである。この被覆層において元素Mと元素Xとは異なる分布を呈することが好ましい。
ここで、遷移金属複合酸化物粒子を構成する主要遷移金属とは、遷移金属複合酸化物粒子を構成する遷移金属のうち最も比率の大きい遷移金属を意味する。例えば、平均組成がLiCo0.98Al0.01Mg0.012の複合酸化物粒子の場合、主要遷移金属はコバルト(Co)を示す。
また、被覆層とは、遷移金属複合酸化物粒子と異なる組成元素または組成比を有し、複合酸化物粒子表面の少なくとも一部を被覆する層である。この被覆層は、元素Mおよび/または元素Xが遷移金属複合酸化物粒子表面に分布することにより形成される層で、被覆層における元素Mおよび/または元素Xの組成比が、遷移金属複合酸化物粒子における元素Mおよび/または元素Xの組成比よりも高い領域である。
被覆層は、従来のように被覆層に含まれる複数の元素の分布態様が同じである単純な構成の被覆層とは異なり、被覆層に含まれる元素Mと元素Xとが被覆層において異なる分布を呈するものである。具体的には、元素Mと元素Xとは分布の均一性に差異を有し、元素Mは元素Xに比して遷移金属複合酸化物粒子表面により均一に分布することが好ましい。また、元素Xより元素Mが遷移金属複合酸化物粒子表面により多く分布していることが好ましい。なお、このような元素Mおよび元素Xの分布形態は、例えばエネルギー分散型X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X-ray)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron microscope)(以下、SEM/EDXと称する)により、被覆層を有する複合酸化物粒子を観察することにより確認することができる。また、TOF−SIMS(Time of Flight secondary Ion Mass Spectrometry:飛行時間型2次イオン質量分析法)により複合酸化物粒子の表面や断面の分析を行い、元素Mや元素Xを含むイオンを測定することでも確認することができる。
元素Mは、遷移金属複合酸化物粒子表面にほぼ均一に分布して被覆層を形成することが好ましい。元素Mを含む被覆層が遷移金属複合酸化物粒子の表面を被覆することにより、複合酸化物粒子に含まれる主要遷移金属元素の溶出を抑制したり、電解液との反応を抑制したりでき、電池特性の劣化を抑制することができるからである。
このような元素Mとしては、例えば、正極活物質に用いられてきたコバルト酸リチウムに対して従来から置換、添加、被覆などが行われてきた2族〜16族の元素を用いることができる。
一方、元素Xは、遷移金属複合酸化物粒子表面に点在するように分布して被覆層を形成することが好ましい。元素Xを含む被覆層によるリチウムの吸蔵放出の阻害を抑制することができるからである。なお、元素Xは、例えば複合酸化物粒子表面に偏在してもいいし、表面全体に複数点で点在してもよい。また、元素Xは、元素Mを含む被覆層の上に点在して分布してもよい。
なお、元素Xは、リン(P)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1つの元素であるが、これらの元素は複合酸化物粒子に固溶しにくく表面に点在可能で、かつリチウムと安定な化合物を形成することでガス発生を抑制可能な元素である。
ここで、正極活物質表面のコバルト(Co)、元素Xおよび元素Mの元素比率は、走査型X線光電子分光装置(ESCA:アルバック・ファイ社製、QuanteraSXM)を用いて測定することができる。具体的には、測定する粒子試料を金属インジウム片に埋め込み、その試料片を板バネで試料台に固定して測定を行う。X線源は単色化Al−Kα線(1486.6eV)を用い、アルゴンイオン銃および電子中和銃を用いて測定試料表面を自動モードで帯電補正しながら測定することができる。
正極活物質の平均粒子径は、2.0μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましい。2.0μm未満では、正極21を作製する際にプレス工程において正極活物質が正極集電体21Aから剥離しやすくなり、また、正極活物質の表面積が大きくなるので、導電剤または結着剤などの添加量を増加させなければならず、単位質量当たりのエネルギー密度が小さくなってしまうからである。逆に、50μmを超えると、正極活物質がセパレータ23を貫通し、短絡を引き起こしてしまう可能性が高くなるからである。
(負極)
負極22は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層21Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、または活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークス、または石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。さらにまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も好ましい。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、この発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素または半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)、または白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素、または半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズ(Sn)の化合物またはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
中でも、この負極材料としては、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを構成元素として含み、炭素(C)の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズ(Sn)とコバルト(Co)との合計に対するコバルト(Co)の割合が30質量%以上70質量%以下であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
このCoSnC含有材料は、必要に応じてさらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)が好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性をさらに向上させることができるからである。
なお、このCoSnC含有材料は、スズ(Sn)と、コバルト(Co)と、炭素(C)とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このCoSnC含有材料では、構成元素である炭素(C)の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ(Sn)などが凝集または結晶化することによるものであると考えられるが、炭素(C)が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化を抑制することができるからである。
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素(C)の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素(C)が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、CoSnC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、CoSnC含有材料に含まれる炭素(C)の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとCoSnC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、CoSnC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
負極活物質層22Bは、さらに、他の負極活物質を含んでいてもよく、また、導電剤、結着剤または粘度調整剤などの充電に寄与しない他の材料を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、または易黒鉛化炭素などの炭素材料が挙げられる。導電剤としては、黒鉛繊維、金属繊維、または金属粉末などが挙げられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系高分子化合物、またはスチレンブタジエンゴムもしくはエチレンプロピレンジエンゴムなどの合成ゴムなどが挙げられる。粘度調整剤としては、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエチレンなどよりなる合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多硬質膜により構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。
セパレータ23がポリエチレンを含む場合には、セパレータ23がポリエチレン以外にポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、Al23、SiO2のいずれかを含むようにした合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成してもよい。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンのうち数種を混合して多孔質膜としてもよい。さらには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンの多孔質膜にAl23、ポリフッ化ビニリデン、SiO2を表面に塗布しても、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンの2種以上の多孔質膜を積層した構造としてもよい。
セパレータ23にポリエチレンを用いる場合には、セパレータ23が、ポリエチレン以外にポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリルの何れかを含むようにすることが好ましい。また、セパレータ23が、ポリエチレン層と、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド、ポリイミドおよびポリアクリロニトリルのうちの少なくとも何れかからなる層とが積層されたものであることが好ましい。積層構造としては、3層構造のものが好ましい。セパレータ23にポリエチレンを用いる場合に、セパレータ23として上記のものを採用することで、正極21と物理的に接触するセパレータ23の酸化分解を抑制することができるため、ガス発生抑制などの効果が得られる。
(電解液)
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。
電解質である電解液は、5ppm以上50ppm以下のコバルト原子および/またはコバルト化合物を含んでいる。5ppm未満であると、電池を高温環境下に保持した場合、および/または電池を高電圧で充電した場合に、電池性能が低下する傾向にある。電解液中に溶出したコバルト原子および/またはコバルト化合物の大部分が負極22に析出しているからである。50ppmを超える場合には、正極自身の構造変性等が著しく起こっているため電池性能は大きく低下する傾向にある。
電解質塩は、LiPF6を含んでいることが好ましい。LiPF6を用いることにより電解液のイオン伝導性を高くすることができるからである。LiPF6の濃度は、電解液において、0.1mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内でイオン伝導性をより高くすることができるからである。
電解質塩としては、この電解質塩に加えて、他の電解質塩を混合して用いてもよい。他の電解質塩としては、例えば、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO225)、LiN(SO2CF3)(SO237)、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、LiSiF6、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、またはLiBrなどが挙げられる。他の電解質塩は、1種を単独で混合して用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
溶媒としては、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含んでいる。ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体が非水電解質中に0.1重量%以上30重量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
溶媒としては、例えば、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンなどの環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
また、溶媒としては、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸メチルプロピルなどの鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
これらの他にも、溶媒としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、フルオロベンゼン、ジメチルスルフォキシド、またはリン酸トリメチルなどを用いることができる。
なお、溶媒は、1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。複数種混合して用いる場合には、比誘電率が30以上の高誘電率溶媒と、粘度が1mPa・s以下の低粘度溶媒とを混合して用いることが好ましい。これにより高いイオン伝導性を得ることができるからである。
高誘電率溶媒としては、例えば、環式化合物が挙げられ、炭酸エチレンもしくは炭酸プロピレンなどの環状炭酸エステル、または4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンもしくは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体が好ましく、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、特に、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましい。耐還元性が高く、分解されにくいからである。また、低粘度溶媒としては、例えば、鎖式化合物が挙げられ、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、または炭酸メチルエチルなどの鎖状炭酸エステルが好ましい。高誘電率溶媒および低粘度溶媒についても、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
(1−2)電池の製造方法
上述した構成を有する非水電解質二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、上述した正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を形成する。
また、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
次に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体22Aに負極リード26を溶接などにより取り付ける。その後、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12、13で挟み電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。その後、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が形成される。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
この発明の第1の実施形態によれば、正極活物質層21Bが被覆粒子を含み、この被覆粒子が少なくともリチウム(Li)とコバルト(Co)とを含む遷移金属複合酸化物粒子と、この粒子表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを有しているので、正極表面と物理的に接触する電解液の分解を抑制するとともに、安定な被膜を形成することができる。
また、電解液はハロゲン原子および/またはハロゲン化合物を有する環状の炭酸エステル誘導体を含んでいるので、負極上の活性な部位で電解液が分解し、緻密で安定な消費型被膜を逐次的に形成し、界面抵抗の上昇を抑制すると同時に遷移金属の析出を抑制することができる。
これらの被覆粒子と炭酸エステル誘導体との組合せにより、正極21から溶出したコバルト原子および/またはコバルト化合物が、電解液中において5ppm以上50ppm以下の範囲で存在することが可能となる。このハロゲン原子および/またはハロゲン化合物は負極22にも析出するが、量的な観点から、電池の内部抵抗低減に寄与する。したがって、電池を高温環境下に保持した場合、および/または電池を高電圧で充電した場合にも、高い電池性能を維持することができる。これに対して、従来の二次電池では、コバルト原子および/またはコバルト化合物は、電解液中において検出限界以下と報告され、電解液中にはほとんど存在しないとされている。このため、電池を高温環境下に保持した場合、および/または電池を高電圧で充電した場合には、高い電池性能を維持することが困難となる。
また、正極活物質層21Bが、異種元素MとXが異なる分布を示す被覆層を有する遷移金属複合酸化物粒子を含む場合、正極表面と物理的に接触する電解液の分解が抑制される一方、局所的な部位では一部分解が起こり、安定被膜が形成される。
また、セパレータ23として、ポリエチレン以外にポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリルのいずれかを含むものを用いた場合、正極21と物理的に接触するセパレータ23の酸化分解を抑制することが出来るため、ガス発生の抑制などの効果も得られる。
また、充電終止電圧を好ましくは4.25V以上6.00V以下、より好ましくは4.25V以上4.80V以下の高い電圧に設定した場合、高いエネルギー密度を達成することができる。また、上述した被覆層、炭酸エステル誘導体、およびセパレータの作用効果は、上記高電圧の範囲においても、持続することができる。よって、エネルギー密度を高くすることができると共に、高温特性を向上させることができる。
(2)第2の実施の形態
図3は、この発明の第2の実施形態による非水電解質二次電池の一構成を示す。この第2の実施形態による非水電解質二次電池は、図3に示すように、負極活物質層22Bの上に、絶縁性の金属酸化物を含む多孔質絶縁層27を配置した構造を有する点において、第1の実施形態とは異なる。
多孔質絶縁層27は、絶縁性の金属酸化物および結着剤を含むことが好ましい。絶縁性の金属酸化物は、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニアおよびジルコニアよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。結着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)なる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
なお、多孔質絶縁層27は、正極21と負極22との間に配置すればよく、負極活物質層22Bの上ではなく、正極活物質層21Bの上に配置した構造としてもよい。正極21の両面または負極22の両面、正極21または負極22の片面のみに配置するようにしてもよい。
この第2の実施形態において、上記以外のことは、第1の実施形態と同様である。
この第2の実施形態による非水電解質二次電池の作用および効果は、上述した第1の実施形態と同様である。
(3)第3の実施形態
(3−1)電池の構成
図4は、この発明の第3の実施形態による非水電解質二次電池の一構成を示す。この二次電池は、いわゆるラミネートフィルム型といわれるものであり、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものである。
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、またはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着または接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図5は、図4に示した巻回電極体30のV−V線に沿った断面構造を示すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの片面または両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面または両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、上述した第1の実施形態における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。高分子材料としては、例えば、ポリエチレンオキサイドもしくはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物もしくはアクリレート系高分子化合物、またはポリフッ化ビニリデンもしくはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ化ビニリデンの重合体が挙げられ、これらのうちのいずれか1種または2種以上が混合して用いられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ化ビニリデンの重合体などのフッ素系高分子化合物を用いることが好ましい。
(3−2)電池の製造方法
上述した構成を有する非水電解質二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、正極33および負極34のそれぞれに、電解液と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。その後、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接などにより取り付ける。次に、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図4および図5に示した二次電池が完成する。
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、正極33および負極34を作製し、これらの正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付ける。次に、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次に、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。次に、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成し、図4および図5に示した二次電池を組み立てる。
この第3の実施形態による非水電解質二次電池の作用および効果は、上述した第1の実施形態と同様である。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1−1〜実施例1−5)
図1に示した二次電池を以下のようにして作製した。
正極21は以下のようにして作製した。まず、母材となる複合酸化物粒子として、レーザー散乱法により測定した平均粒子径が13μmのコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用意した。次に、被覆材として、炭酸リチウム(Li2CO3)と、炭酸マンガン(MnCO3)と、リン酸アンモニウム((NH4)H2PO4)とを、リチウム(Li):マンガン(Mn):リン(P)=3:3:2のモル比となるようそれぞれ秤量し、混合した。得られた混合粉末を、LiCoO2100wt%に対して2wt%になるよう秤量した。次に、この混合粉末とLiCoO2とを、メカノケミカル装置を用いて1時間処理を行い、LiCoO2表面にLi2CO3、MnCO3、および(NH4)H2PO4を被着させて焼成前駆体を作製した。この焼成前駆体を毎分3℃の速度で昇温し、900℃で3時間保持した後に徐冷し、LiCoO2表面に被覆処理を施した正極活物質を得た。
正極活物質断面をSEM/EDX、およびTOF−SIMSで分析することで、リン(P)は複合酸化物粒子の表面に点在しており、マンガン(Mn)は複合酸化物微粒子の表面全体に分布していることが確認された。
また、この粉末について、長波長のCuKαを用いた粉末X線回折(XRD:X-ray diffraction)パターンを測定したところ、層状岩塩構造を有するLiCoO2に相当する回折ピークに加えてLi3PO4の回折ピークが確認された。
次に、このリチウムコバルト複合酸化物94質量%と、導電剤としてケッチェンブラック(アモルファス性炭素粉)3質量%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量%とを混合し、溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。次に、この正極合剤スラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布して乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し正極21を作製した。その後、正極集電体21Aの一端にアルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
負極22は以下のようにして作製した。まず、負極活物質として黒鉛粉末90wt%と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)10wt%とを混合して負極合剤を調製した。この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて負極合剤スラリーを作製した。次に、負極合剤スラリーを厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し、さらに、これを加熱プレス成型することにより、負極活物質層22Bを形成した。その後、負極集電体22Aの一端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
なお、上述の正極21および負極22の作製工程において、正極活物質の量と負極活物質の量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が下記の表1のようになるように設計した。
正極21および負極22をそれぞれ作製したのち、微多孔膜よりなるセパレータ23を用意し、負極22、セパレータ23、正極21、セパレータ23の順に積層してこの積層体を渦巻型に多数回巻回することにより、外径17.5mmのジェリーロール型の巻回電極体20を作製した。その際、セパレータ23としては、15μm厚さのポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンとが3層重なったセパレータ23を用いた。
巻回電極体20を作製したのち、巻回電極体20を一対の絶縁板12、13で挟み、負極リード26を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめっきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。次に、電池缶11の内部に電解液を減圧方式により注入した。電解液には、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、4−フルオロ−1−3−ジオキソラン−2−オンを、炭酸エチレン:炭酸プロピレン:炭酸ジメチル:炭酸エチルメチル:4−フルオロ−1−3−ジオキソラン−2−オン=25:5:60:5:5の重量比で混合した混合溶媒を用いた。電解液におけるLiPF6の濃度は、1.2mol/kgとした。
その後、ガスケット17を介して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、直径18mm、高さ65mmの円筒型の二次電池を作製した。
(実施例1−6)
母材となる複合酸化物微粒子としてLiCo0.98Al0.01Mg0.012を用いたこと以外はすべて実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。
(実施例1−7)
母材となる複合酸化物微粒子としてLiNi0.2Co0.82を用いたこと以外はすべて実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。
(実施例1−8)
セパレータ23にポリエチレンセパレータを用いたこと以外はすべて実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。
(比較例1−1〜比較例1−7)
正極活物質であるLiCoO2芯粒子表面を被覆処理しなかったこと以外はすべて実施例1−1〜1−7とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。
(比較例1−8)
電解液中に4−フルオロー1,3−ジオキソラン−2−オンを添加しなかったこと以外はすべて比較例1−4と同様にして二次電池を作製した。
(比較例1−9)
電解液中に4−フルオロー1,3−ジオキソラン−2−オンを添加しなかったこと以外はすべて実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。
以上のようにして作製された実施例および比較例の二次電池について、高温連続充電後の電解液中のCoイオン量、および容量保持率を以下のようにして評価した。
<電解液中のCoイオン量解析>
まず、25℃環境中において、所定電圧、所定電流で定電流定電圧充電を行った後、70℃環境下にて100時間の高温連続充電試験を行った。次に、図1に示す電池缶11の下部を閂の要領で開口し、所定回転数において遠心分離することで電池内部の電解液を採取して、メンブレンフィルターによりろ過し、ろ液を硝酸および硫酸の混酸中にて加熱処理し、測定サンプルとした。その後、ICP分光法を用いて電解液単位重量当たりのコバルト(Co)イオン量(ppm)を測定した。表1にその結果を示す。
<高温連続充電後の容量保持率>
上述した高温連続充電試験を実施した後、25℃環境中において、所定電圧、所定電流にて定電流定電圧充電を行い、容量保持率=(高温連続充電試験後の放電容量/高温連続充電試験前の放電容量)×100(%)を求めた。表1にその結果を示す。
Figure 2010073354
表1から以下のことがわかる。
実施例1−1〜1−8から、正極活物質として、母材となる芯粒子表面の少なくとも一部に被覆層を備えたリチウム遷移金属複合酸化物微粒子と、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含む電解液とを組み合わせることで、電解液中にコバルト原子を5ppm以上50ppm以下の範囲で存在させることができる。これにより、高温連続充電試験後の容量保持率を向上させることができる。
これに対して、比較例1−1〜比較例1−8では、被覆層が形成されたリチウム遷移金属複合酸化物微粒子を用いていないので、電解液中におけるコバルト原子の含有量が5ppm未満となるか50ppmより大きくなり、容量保持率が実施例1−1〜1−8に比べて低下している。また、比較例1−9では、ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体を含む電解液を用いていないので、電解液中におけるコバルト原子の含有量が5ppm未満となり、容量保持率が実施例に比べて低下している。
実施例1−1〜1−5および比較例1−1〜1−5から、充電終止電圧を4.25V以上にした場合でも高い効果を維持できることがわかる。
実施例1−6、実施例1−7から、母材となる複合酸化物微粒子としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)以外の複合酸化物微粒子を用いた場合にも、高い効果を得ることができることがわかる。
実施例1−8から、3層セパレータの代わりに、単層のポリエチレンセパレータを用いても高温特性を改善できることが分かる。
実施例1−4と比較例1−9とを比較すると、電解液中にハロゲン化環状炭酸エステルを含まない比較例1−9では、それを含む実施例1−4に比べてコバルトの含有量が低くなり5ppm未満となる。これにより、比較例1−9では、比較例1−4に比べて相対的に低い容量保持率しか得られず、十分な効果が得られない。
(実施例2−1〜2−8)
電解液中の4−フルオロ−1−3−ジオキソラン−2−オンの重量比を0.1〜30%の範囲内で変化させたこと以外はすべて実施例1−4と同様にして二次電池を作製した。この際、炭酸エチレンとハロゲン化環状炭酸エステルとの電解液中での重量比の総和が一定となるよう電解液組成を変化させた。
(実施例2−8)
4−フルオロ−1−3−ジオキソラン−2−オンに代えて、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いたこと以外はすべて実施例2−4と同様にして二次電池を作製した。
(比較例2−1〜比較例2−8)
正極活物質である複合酸化物微粒子に被覆層を設けなかったこと以外はすべて実施例2−1〜2−8とそれぞれ同様にして二次電池を作製した。
以上のようにして作製された実施例および比較例の二次電池について、実施例1−1〜実施例1−7と同様にして、高温連続充電後の電解液中に含まれるCoイオン量、および高温連続充電後の容量保持率(%)を評価した。その結果を表2に示す。
Figure 2010073354
表2から以下のことがわかる。
実施例2−1〜2−7から、電解液中のハロゲン化炭酸エステルの重量比を増加させても同様の効果が得られることがわかる。また、比較例2−1〜2−7から、活物質として被覆粒子を用いずに、電解液中の4−フルオロ−1−3−ジオキソラン−2−オンの重量比を増大させても、やはり十分な高温特性の改善には至らないことがわかる。
実施例2−8から、電解液中のハロゲン化炭酸エステルを4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとした場合でも、同様の効果が得られることがわかる。また、比較例2−8から、電解液に4−フルオロー1,3−ジオキソランー2−オンの代わりとして4,5−ジフルオロー1,3−ジオキソランー2−オンを含ませても、活物質として被覆粒子を用いていない場合には、十分な効果が得られないことがわかる。
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値、形状および構成はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、上述の実施形態および実施例においては、巻回構造を有する二次電池について説明したが、この発明は、正極および負極を折り畳んだ構造を有する二次電池、または正極および負極を積み重ねた構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、いわゆるコイン型、ボタン型、角型、またはラミネートフィルム型などの二次電池についても適用することができる。
また、上述の実施形態および実施例においては、電解質として電解液またはゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、この発明は、他の電解質を用いる場合についても適用することができる。
また、上述の実施形態および実施例では、負極の容量が、リチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池について説明したが、この発明は、負極活物質にリチウム金属を用い、負極の容量が、リチウムの析出および溶解による容量成分により表されるいわゆるリチウム金属二次電池、または、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の充電容量を正極の充電容量よりも小さくすることにより、負極の容量がリチウムの吸蔵および放出による容量成分と、リチウムの析出および溶解による容量成分とを含み、かつその和により表されるようにした二次電池についても同様に適用することができる。
また、上述の実施形態および実施例では、電極反応物質としてリチウム(Li)を用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)もしくはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)もしくはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウム(Al)などの他の軽金属を用いる電池についても、この発明を適用することができる。
この発明の第1の実施形態による非水電解質二次電池の一構成を示す断面図である。 図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して示す断面図である。 この発明の第2の実施形態による非水電解質二次電池の一構成を示す断面図である。 この発明の第3の実施形態による非水電解質二次電池の一構成を示す分解斜視図である。 図4に示した巻回電極体のV−V線に沿った構成を示す断面図である。
符号の説明
11 電池缶
12、13 絶縁板
14 電池蓋
15 安全弁機構
15A ディスク板
16 熱感抵抗素子
17 ガスケット
20、30 巻回電極体
21、33 正極
21A、33A 正極集電体
21B、33B 正極活物質層
22、34 負極
22A、34A 負極集電体
22B、34B 負極活物質層
23、35 セパレータ
24 センターピン
25、31 正極リード
26、32 負極リード
27 多孔質絶縁層
36 電解質層
37 保護テープ
40 外装部材
41 密着フィルム

Claims (9)

  1. 正極と、負極と、非水電解質と、セパレータとを備え、
    上記正極は、リチウム(Li)およびコバルト(Co)を含む遷移金属複合酸化物粒子と、該遷移金属複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部に設けられた被覆層とを有する被覆粒子を含み、
    上記非水電解質は、
    5ppm以上50ppm以下のコバルト原子および/またはコバルト化合物と、
    ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体と
    を含んでいる非水電解質二次電池。
  2. 上記被覆層は、
    上記遷移金属複合酸化物粒子を構成する主要遷移金属元素とは異なり、2族〜16族から選ばれる少なくとも1種の元素Mと、
    リン(P)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、およびハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素Xと
    を含み、
    上記被覆層において、上記元素Mと上記元素Xとが異なる分布を呈する請求項1記載の非水電解質二次電池。
  3. 上記被覆層において、上記元素Mは、上記元素Xに比して、上記遷移金属複合酸化物粒子表面により均一に分布する請求項2記載の非水電解質二次電池。
  4. 上記セパレータは、ポリエチレンと、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド、ポリイミドおよびポリアクリロニトリルのうちの少なくとも何れかとを含むものである請求項1記載の非水電解質二次電池。
  5. 上記セパレータは、ポリエチレン層と、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド、ポリイミドおよびポリアクリロニトリルのうちの少なくとも何れかからなる層とが積層されたものである請求項1記載の非水電解質二次電池。
  6. 上記セパレータは、3層構造である請求項5記載の非水電解質二次電池。
  7. 上記ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体が、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、および/または4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンである請求項1記載の非水電解質二次電池。
  8. 上記ハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体が非水電解質中に0.1重量%以上30重量%以下の割合で含まれている請求項1記載の非水電解質二次電池。
  9. 一対の正極および負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V以上4.80V以下である請求項1記載の非水電解質二次電池。
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