JP2010071741A - 配管の厚み測定方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光ドップラ方式における長さ調整用ファイバが不要で、安価な汎用部品を用いた小型のシステム構成が可能な配管の厚み測定方法および装置を提供すること。
【解決手段】予め定められた周波数帯域内を掃引して出力する電磁石発振器300と、測定対象物の動的歪みを検出する光ファイバセンサ200とを一体化して有するアクティブセンサを用意し、前記アクティブセンサを前記測定対象物である配管10に取付け、前記配管の厚み方向に0〜10MHzの間の所望周波数に指定した超音波または振動を入力し、入力した超音波または振動の反射波またはその合成波を検出し、検出した超音波または振動信号における前記配管による共振を基に前記測定対象物の厚みを測定する、配管の厚み測定方法および装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、原子力発電プラントや火力発電プラントなどにおける配管の厚み測定方法および装置に係わり、とくに高温蒸気による配管減肉、化学プラントやゴミ焼却プラントなどにおける配管腐食などの異常の有無を判定するための厚み測定方法およびその装置に関する。
従来、配管の減肉や腐食については、定期検査時に、超音波探傷やX線透過装置などを用いて検査が行われている。超音波探傷法は、被試験体の表面に超音波を送受信する探触子を押し当て、内部に各種周波数の超音波を伝搬させる。
そして、被試験体内部の欠陥や裏面で反射して戻ってきた超音波を受信し、被試験体内部の状態を把握する。欠陥位置は超音波の送信から受信までに掛かる時間から測定し、欠陥の大きさは受信したエコーの高さや欠陥エコーの出現する範囲の測定によって求められる。
超音波による検査法は、原子力発電プラントにおいて、主に素材の板厚測定およびラミネーションの検出、溶接による溶融部および母材における溶込み不足、熱影響部に発生するクラックの検出に適用されている。また、原子炉圧力容器回りのノズル開口部、ブランチ、配管継手の補強として行う溶接肉盛に対しては、溶接肉盛部、溶融部および溶着肉盛部の直下にある母材に対して、この検査が適用されている(非特許文献1参照)。
また、断熱材を外さずに配管減肉を検出できるX線透過法があり、X線CTスキャナーなどでは、連続撮影して得たデータを高性能のコンピュータを用いて高速処理することで、X線透過率の違いを断層映像とし、対象物全体の映像を映し出すことができる。
最近では、本願出願人が、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色で発光し、透過量に応じて発光割合の変わるシート状カラーシンチレータ(蛍光板)とCCDカメラとを組み合わせただけの簡便なシステムで、X線透過率の異なる物質を同時に撮影できる方法を考案し、火力、原子力発電所および石油、化学コンビナートでの配管減肉観察、異物混入検査に適用している。
この他の配管減肉測定方法としては、電磁超音波発振子(EMAT)と光ファイバセンサ(FODセンサ)とを組み合わせた方法がある。これは、電磁超音波センサ(Electromagnetic Acoustic Transducer :EMAT)を用い、電磁力の作用によって配管内に超音波を直接励起し、その共振波をFOD(Fiber-optic Doppler)センサで検出、解析することによって、試料の厚さや内部欠陥の情報を得る手法である(非特許文献2ないし5参照)。
内ヶ崎 儀一郎他:「原子力と設計技術」大河出版(1980)、p226〜250 高橋、佐々木他「光ファイバセンサを利用した電磁超音波法による金属配管厚さ測定技術(第1報)」TRP-04987(2006) 佐々木、高橋他「光ファイバドップラセンサを用いた電磁超音波共鳴法による金属厚さ測定」溶接構造シンポジウム2006講演論文集(2006年11月) 高橋、佐々木他「光ファイバドップラを利用した電磁超音波共振法による金属配管厚さ測定」保全学会「第1回検査・評価・保全に関する連携講演会」資料(2008年1月) 山家、高橋、阿彦「火力発電プラントにおける配管減肉の測定技術」東芝レビュー、 Vol.63, No.4 (2008) pp.41-44
図1は、従来の厚さ測定に用いている光ファイバセンサシステムを示している。このシステムは、光ドップラ効果を利用して光ファイバ振動速度を検出するものであり、光ファイバ振動速度を正確に検出するために、マッハツェンダ干渉系とヘテロダイン検波方法とを組み合わせた構成である。
主要な構成部品としては、狭線幅半導体レーザー、光変調器、ヘテロダイン検波回路などの特殊な部品類があり、これら各部品類は、高価で寸法も大きいことから、システム全体は高価で、小型化には難しい問題がある。
このシステムは、発信側(EMAT)および受信側(FOD)の両方に信号周波数を特定するための機能がついている。基礎検証レベルの試験では、発信および受信の周波数を双方でチェックできることは必要である。ただし、入、反射で周波数にずれが生じないことが確認できれば、実用化段階では、どちらか一方の周波数チェック機能のみで十分である。この装置構成の場合、光学測定側の装置が高価かつ大型であるため、これを削減することにより、装置の小型化および大幅なコストダウンが可能となる。
また、従来システムでは、マッハツェンダ干渉系の“センサ側”、“参照光側”のそれぞれのファイバ長を同じ長さに合わせる必要があり、センサ部ファイバ長と同長の“長さ調整用ファイバ”を予め準備する必要があった。
一方、センサファイバ長が異なった複数点の測定を行うこともあり、この場合は、それぞれの測定点に合わせた複数の“長さ調整用ファイバ”を用意して測定毎に取り替える必要があるため、現場での測定作業に煩わしさが伴う問題がある。
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、光ドップラ方式における長さ調整用ファイバが不要で、安価な汎用部品を用いた小型のシステム構成が可能な配管の厚み測定方法および装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、下記の方法および装置の発明を提供する。
まず、方法の発明は、
予め定められた周波数帯域内を掃引して出力する電磁石発振器と、測定対象物の動的歪みを検出する光ファイバセンサとが一体化されたアクティブセンサを用意し、
前記アクティブセンサを前記測定対象物である配管に取付け、
前記配管の厚み方向に0〜10MHzの間で予め定められた周波数に指定した超音波または振動を入力し、入力した超音波または振動の反射波またはその合成波を検出し、
検出した超音波または振動信号における前記配管による共振を基に前記測定対象物の厚みを測定する、
配管の厚み測定方法、である。
また、装置の発明は、
予め定められた周波数帯域内を掃引して出力する電磁石発振器と、測定対象物の動的歪みを検出する光ファイバセンサとが一体化されたアクティブセンサと、
前記アクティブセンサにより、前記測定対象物である配管に対して厚み方向に超音波または振動を入力したときの、前記配管からの反射波またはその合成波の検出信号における前記配管の共振周波数fを求め、下記式によって前記配管の厚みdを算出する厚み測定手段と、
を備えたことを特徴とする配管の厚み測定装置、
d=n・ν/(2・f
ここで、n:正の整数(1,2,3,・・・)
ν:配管内における音速
である。
(発明の概要)
本発明に係る配管の厚み測定方法は、アクティブセンサを測定対象物に取り付け、配管の厚み方向に0〜10MHzの間で予め定められた周波数に指定した超音波または振動を入力し、入力した超音波または振動の反射波またはその合成波を検出し、検出した超音波または振動信号における前記配管による共振を基に前記測定対象物の厚みを測定することを特徴とする。
また、本発明に係る厚み測定装置では、予め定められた周波数帯域で周波数をスイープできる電磁石発振器と、予め定められた周波数の動的歪みを検出する光ファイバセンサとを一体化して、発信および受信を行えるアクティブセンサを構成したため、構造広帯域の周波数の信号を使った共鳴検出が行える薄型のセンサを実現することができる。そして、光ファイバセンサが広帯域な光式振動センサであるため、0Hzから数MHまでの広い周波数帯域で動的歪みを高感度に検出することが可能となる。
この構成により、業種や機種ごとに異なる配管のサイズや厚さに合わせた診断が可能となる。また、偏波干渉方式の光式振動センサを採用することにより、長さ調整用ファイバが不要になり、LDモジュールからの1本のファイバ上に光センサを配置することができる。このため、長さ調整用ファイバが不要であり、長さの異なるセンサ長に簡単に適応することができる。
さらに、 汎用部品を用いたシステム構成が可能となり、市販のDFBレーザー、光学部品、アンプ等で単純にシステム構成することができるため、装置の小型化、部品費用低減が可能である。
以上説明したように、本発明によれば、コイル部に電力供給してアクティブに厚さ方向の超音波の挙動を測定して厚さを測定することができるし、コイル部への電力供給なしで、常時パッシブに、配管振動やキャビテーションの発生で配管表面に貼り付けた光ファイバ群が受ける動的歪みの累積をモニタリングして厚さを測定することもできる。これら2つの手法は同時に適用することもできるため、配管の厚さ異常や減肉を検出する確率を高めることができる。
本発明の骨子は、高温配管の劣化状態(減肉や腐食)を、プラントを停止せずにモニタリングでき、また広い範囲にわたって短時間に検査を済ませることができる配管の厚み測定方法および装置を提供することである。
蒸気配管のエルボ部やオリフィス部におけるエロージョン、コロージョン減肉をモニタリングするシステムにより、定期点検の短縮化および改良保全サービスの高度化を図る。さらに、装置の小型化、低コスト化を図り、実用性を向上させる。
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)、(b)および(c)は、超音波を使った厚さ測定法の原理を説明する図である。まず、図1(a)に示すように、厚さ測定の対象に厚さ方向の超音波を発生させる。例えば、加振器300における永久磁石に巻いたコイルに対し、0〜10MHzの周波数範囲の交流電流を入力すると、配管10の管壁の厚さ方向への縦波を入力することができる。この交流電流は、ファンクションジェネレータ(図示せず)を用いて周波数可変とし、予め定められた周波数帯域をスイープできるものとする。
この際、配管10の厚さdと超音波の波長λとの間に「λ=2d」の関係が成り立った時に入射波と反射波とが共振し、出力波の振幅が急激に大きくなる。したがって、この共振周波数λから逆算して、対象の厚さdを測定することができる。
図1(b)に示すように、例えば、配管が15mm厚の鋼板でできている場合、500kHzの超音波を入力すると共振が起きる。厚みがこれより厚くなれば周波数が低下し、薄くなれば周波数が上昇する。すなわち、金属板の厚さをd、超音波の波長をλとすると、
Figure 2010071741
の条件を満たすときに超音波が共振する。これを超音波の周波数fを用いて書き直せば、下記式(2)のようになる。
Figure 2010071741
ここで、ν: 音速
したがって、共振する周波数fおよび音速νが分かれば、下記式(3)によって板厚dを逆算することができる。
d=n・ν/(2・f) 式(3)
ここで、n:正の整数(1,2,3,・・・)
発振器としては、電磁石コイルを使う外に、圧電(ピエゾ)素子などを使って発振させてもよい。圧電素子を使った方が、低電力で強い発振が得られる傾向にある。
図1(b)に示すように、直径200mmで厚さが5,7,10,15,20,25,30mmのSUS304の板上に、巻き数50の光ファイバを瞬間接着剤で金属表面に固定して光ファイバセンサを構成した。そして、周波数シンセサイザを用いて正弦波を50kHzから500kHzまで1kHz刻みに発生させ、光ファイバセンサに与えて得られた信号をアンプで150Vp-pに増幅したところ、各周波数での光ファイバセンサの出力波形から、各板厚で板厚に対応した波長でのみ共鳴信号が得られた。
図1(c)のグラフに示すように、入力波の周波数と板圧の逆数との間に上記式(2)を証明する実験値が得られた。周波数可変手段は、ファンクションジェネレータ、またはファンクションジェネレータとアンプとの組合せ回路(図示せず)として入力波の周波数を自由に設定できるようにしており、併せて強度を自由に設定できることが望ましい。
図2(a)、(b)および(c)は、FOD(Fiber-optic Doppler)センサの構成および動作原理を説明する図である。図2(a)は、センサ部200および検出部400の接続関係を示しており、センサ部200は図2(b)に示すように光ファイバを平面渦巻状に巻いた形状であり、このセンサ部200に対して検出部400の光源LSから光を送り込み、検出器DETで受光する。センサ部200は、図2では単一の光ファイバセンサにより構成されているが、後述するように複数のセンサにより構成されてもよい。
図2(c)は、FODの動作原理を示しており、光ファイバセンサは、光ファイバ内で中心部にあるコアとその外側に配されたクラッドとの境界での光反射による伝搬中に、光ファイバの変形による歪や振動をドップラ効果として捉える。このセンサは、小型で薄くフレキシブルにすることが望ましい。
図3は、アクティブセンサ、すなわち光ファイバセンサ200に加振器300を組み合わせた装置の構造を説明する図である。この図3は、発振器(超音波励起機構)と複数の光ファイバセンサとを一体化した「多点パッチ型センサ」とする例を示している。
この図3の構成例では、図の上部に示した断面図に示すように、永久磁石310および電磁コイル320を有する発振器を、光ファイバセンサ200の上に接着剤330などで固定してアクティブセンサを構成し、このアクティブセンサ220を複数用意して基材210上に取付けている。図3の場合、100mm角のサイズの中に30mmφ程度のアクティブセンサ9個(3×3のマトリスク配置)を有する多点パッチ型のアクティブセンサを構成している。
このような多点パッチ型センサの形態を採ることにより、高温の配管曲面部などにセンサを取り付けおけるようになり、配管の減肉が想定される部位を検査し易くなる。
多点パッチ型のアクティブセンサ220は、高温仕様の接着剤やシリコンゴム、シリコンシート、金属部材などの基材により一体化を図り、かつ配管10のエルボ部などの減肉診断をしたい箇所に多点マトリックス状に貼り付ける。取付け方法は、高温接着剤や溶射などによる。FODセンサの場合は、発振器を中心にして蚊取り線香(渦巻き)状に巻き付けたり、楕円形に巻き付けたりして異方性を持たせてもよい。
光ファイバセンサ200は、金、ニッケル、シリカ、ポリイミドなどの耐熱性コーティングや細管での保護処理を施しておくことにより、高温まで(〜750℃程度)センシングが可能である。
この多点パッチ型センサに長期の信頼性を持たせるには、発振器素子のサイズダウンによるセンシング面積の抑制、マトリックス配置におけるセンサ間距離の最適化、センサ同士の接続、多点計測マッピング時の厚み測定分解能、保護シートの接着力の温度依存性、およびフレキシブルセンサのエルボ部での収縮度などを考慮しておくことが必要である。
その他、厚さ測定精度については、発振器からの超音波のパワー(ファンクションジェネレータのアンプ能力、電磁石コイルコアの磁力、コイルの巻き数、圧電素子性能)、光ファイバセンサ自体の感度(センサの巻き数)、および耐熱性などを考慮して設計する。
このように構成された光ファイバセンサを、建設時もしくは定期点検時にエロージョン、コロージョンが発生し易い配管エルボ部やオリフィス下流に取付けておく。これにより、配管の断熱材を取り外すことなく、運転中も含めて配管異常を監視することができる。
図4は、本発明の厚み測定装置を用いて配管劣化診断装置を構成する場合の概略的構成を説明する図であり、アクティブセンシングのための、多点パッチ型の光ファイバセンサ200に対応したモニタリングシステムを示している。
発振制御器401は、複数の一体型センサから任意に入力箇所の選択が可能なスイッチング機構を持つもの(超音波励起入力系統)とし、遠隔点から任意に入力点を選択できるスイッチング機構を追加し、パッチ内の何処の厚みをモニタリングしているのかが判別できる仕組みとする。
また、図3に示したように、基材210内に複数個配置された光ファイバセンサ220の垂直上方部にそれぞれ超音波発信機構を設けると、遠隔点における制御系は、a) 周波数掃引、b) 入力点切替、c) 入力電圧切替、の3系統となる。また、光ファイバセンサ220の出力から動的歪みを検出するための光検波器402も、モニタリングシステム中に組み込まれる。
診断手段であるコンピュータ403は、図1(c)に示した基本データを基にした診断データベース404を用いて、取り込んだサンプリング信号から、高速で肉厚数値を導出する信号処理プログラムにより、診断対象部位のマッピングを行う。
図5は、本発明における多点パッチ型のアクティブセンサの実機応用の様子を示している。この図5に示すように、多点パッチ型のアクティブセンサ200は、定期検査時などのある一定期間間隔でのモニタリングに加えて、光センサの耐久性、耐食性を活用し、突発的に現れる衝撃信号や、定常時には認められない異常振動のモニタリングをパッシブに行うシステムとしても使用できる。
この際、波形解析手段は、(1)高周波領域における突発挙動に着目した周波数解析(定常ノイズとの弁別)、(2)低周波領域における定在波の挙動観察(定常ノイズとの弁別)、(3)ニューラルネットワークなどを利用した「定常」、「非定常」観測の3つの機能を有し、実機の配管高応力負荷部(実機環境)において収録した実機データを診断データベースから読み込み、パッシブ信号処理手法の結果と照合して、配管の減肉や異常を判定する。
また、本発明では、光ファイバ中を伝搬する光の偏波の特性を利用している。偏波とは光の振動状態を表すものであり、偏波特性の強いレーザー(LD)光の特性を利用して光ファイバ振動センサなどに応用されている。
この方式では、レーザー光源として市販のDFB(Distributed Feedback)レーザーなどの単一周波数で発振するレーザーを用いることができる。このDFBレーザーからの出力光を偏波制御器によって偏波を調整した後、センサ部ファイバへ伝搬させる。センサ部では、光ファイバの振動によって導波路に歪みが生じ偏波の位相が変化する。
センサ部ファイバへ伝搬する光の偏波状態と、光ファイバの振動によって導波路の歪による偏波の位相変化に依存性は乏しく、したがって、偏波制御器で調整する偏波状態は直線、円、楕円の何れの偏波状態でもよく、また、これらの偏波状態が時間に対してランダムに変化するランダム偏光の状態でもよい。
その光を再び光偏波制御を用いて偏波調整した後、偏波分岐モジュールで偏波の平行成分と垂直成分とに分離し、垂直成分については偏波面を90度回転させ同一偏波面の方向に合わせてから偏波保持カプラで干渉させることで、センサ部での位相変化を光強度として検出することができる。この光強度変化は、光/電気変換モジュールを用いて電気信号に変換した後、オシロスコープで波形を直接観察することができる。
また、別の偏波位相変化の検出方法として、センサ部ファイバで偏波の位相が変化した光を光偏波制御を用いて直線偏光に変換すると、振動により位相変化が偏波軸角度の変化となるため、その光をポラライザなどの偏光子を通過させることで光強度の変化として検出することもできる。
図6は、光ドップラ方式による配管厚さ測定装置の測定原理を説明する図である。また、図7は、偏波干渉方式による配管厚さ測定装置の測定原理を説明する図である。この図7において、使用している光ファイバは、センサ部ではポリイミド被覆を施した高屈折率差光ファイバを用い、センサへの接続部分には通常のシングルモード光ファイバを用いる。
偏波分岐モジュール以降の光学系には、偏波保持ファイバを用いる。偏波保持光ファイバとは、光偏波状態の保持性に優れたファイバであり、偏波分岐モジュールで分岐した平行、垂直偏波成分を光ファイバ中で変化させることなく伝搬させ、効率良く安定した状態で干渉を行うために用いている。
通常の光ファイバでは偏波保持性が乏しいため、偏波分岐モジュールで分岐した平行、垂直偏波成分は光ファイバを伝搬中に偏波確度がランダムに変化し、安定した干渉状態が得られない問題が発生する。
偏波干渉方式による測定システムは、光ドップラ方式と比較して、「長さ調整用ファイバが不要」という長所を有する。レーザー光源(LDモジュール)からの1本のファイバ上に光センサを配置することができるため、長さ調整用ファイバが不要であり、長さの異なるセンサ長に簡単に適応することができる。
さらにこの偏波干渉方式では、汎用部品を用いたシステム構成が可能であり、従来の光ドップラ方式と異なって、特殊光学部品、複雑な検波回路を必要とせず、市販カタログ品のDFBレーザー、光学部品、アンプ等で単純かつ安価にシステム構成することができるため、装置の小型化、部品費用低減が可能である。
ただし、測定毎に偏波面の調整が必要となる。偏波状態の調整方法は、何らかの外部振動源が必要であり、振動源からの信号をセンサ受信感度が最も大きくなるように手動で調整を行う。したがって、いつ信号が発生するか分からない破壊音(AE)、衝撃波などの突発的な信号を検出することや、長期間のモニタリングには不向きである。そこで、偏波干渉方式による測定を実用化する上では光ドップラ方式と対比して検証しておく必要がある。
図8は、この検証のため、光ドップラ方式による検出波形および偏波干渉方式による検出波形を示した図であり、共振状態の波形を示したものである。また、図9は、光ドップラ方式による検出波形および偏波干渉方式による検出波形の周波数スペクトルを示した図であり、共振周波数スペクトルを示している。
この波形検出には、厚さt=15mmの炭素鋼(SS400)製の鋼管を用い、光ファイバセンサは外径20mm、EMAT は横波発生タイプ構造で電気コイル外径20mm、永久磁石は大きさφ10、厚さ5mmのネオジウム磁石を用いた。
これらの検出結果から、図8、図9はともに、共振時の受信波形が同一であり、共振振動周波数も184kHzと同じ結果であることが分かる。ただし、偏波干渉方式の共振周波数スペクトルのS/N比は光ドップラ方式よりも幾分劣り、共振周波数(184kHz)以外にも複数のノイズピークがある。これらノイズピークの原因は、周波数掃引測定中の偏波面の変動による波形ノイズなどの影響によると考えられる。
図10は、被検出体である250A配管エルボにおける測定点および測定結果を説明する図である。この図10に、偏波干渉方式による測定板厚値の検出結果を光ドップラ方式のそれと対比的に示している。
すなわち、偏波干渉方式の測定精度を、250Aの配管エルボ試験体を用いて確認した。材質は、STPT370である。試験に用いたセンサの大きさは外径15mm(感度が小さい箇所は20mm)であり、EMATは横波発生タイプ構造で電気コイルの外径25mmのもの、永久磁石は大きさφ10、厚さ5mmのネオジウム磁石を用いた。測定点は、配管端部の半周上3箇所でエルボ曲げの外側10a、側面10b、内側10cである。周波数掃引間隔は、測定点10a,10b,10cの何れも0.5kHz間隔である。
この検出結果は、得られた共振周波数に基く板厚測定点の外側における値で、金属中の音速補正を行って各板厚値を求めたものである。その結果、両者の板厚値は0.1mmの範囲内で一致しており、配管エルボの2つの曲率を有する面においても偏波干渉方式による板厚測定が正確に行えることを確認した。
下記表1は、光ドップラ方式による検出波形および偏波干渉方式による検出波形からの板厚測定結果を比較したものである。
Figure 2010071741
被測定体はJIS RB-E試験体を模した構造であり、材質はSUS304である。測定に用いたセンサの大きさは外径15mm、EMATは横波発生タイプ構造で、電気コイルの外径20mm、永久磁石は大きさφ10、厚さ5mmのネオジウム磁石を用いた。掃引周波数間隔は、厚さt=5mm、9mm、13mmは1kHz間隔、厚さt=15mm、19mm、23mmは0.5kHz間隔で掃引した。
その結果、両者の板厚値は0.1mm範囲で一致しており、直線性も良好な結果であったことから、偏波干渉方式による板厚測定は正確に行えることを確認した。また、測定可能な周波数帯域は、この測定結果に示されるように100kHzから500kHzまで共振ピークが得られていることから、板厚測定に必要な周波数帯域は測定可能である。
そして、光ファイバによるセンシングでは、長距離かつ広範囲に渡る同時モニタリングが可能となり、異常部位の位置同定および精密診断のためのスクリーニング技術として効果的である。
本発明による、超音波を使った厚さ測定法の測定原理を説明する図。 従来のFOD(Fiber-optic Doppler)センサの動作原理を説明する図。 本発明に用いる(多点パッチ型)アクティブセンサの構造を説明する図。 厚み測定結果を用いて配管の劣化診断を行う装置の概略的構成を説明する図。 本発明に用いるアクティブセンサおよび厚さ測定装置の実機応用の様子を説明する図。 光ドップラ方式による配管厚さ測定装置の動作原理を説明する図。 本発明に用いる偏波干渉方式による配管厚さ測定装置の動作原理を説明する図。 光ドップラ方式による検出波形と偏波干渉方式による検出波形を比較する図。 光ドップラ方式による検出波形および偏波干渉方式による検出波形の周波数スペクトルを比較する図。 250A配管エルボ(被測定体)の測定点および測定結果を説明する図。
符号の説明
10 配管
11 エルボ
12 オリフィス下流部配管
13 オリフィス
14 オリフィス上流部配管
100 光送出部
200 (多点パッチ型)光ファイバセンサ
200’ 長さ調整用ファイバ
210 基材
220 アクティブセンサ
300 加振器
310 永久磁石
320 電磁コイル
330 スペーサ
400 光受信部
401 発振制御器
402 光検波器
403 診断手段
404 診断データベース
500 オシロスコープ
SMF シングルモードファイバ
PMF 偏波保持ファイバ

Claims (21)

  1. 予め定められた周波数帯域内を掃引して出力する電磁石発振器と、測定対象物の動的歪みを検出する光ファイバセンサとが一体化されたアクティブセンサを用意し、
    前記アクティブセンサを前記測定対象物である配管に取付け、
    前記配管の厚み方向に0〜10MHzの間で予め定められた周波数に指定した超音波または振動を入力し、入力した超音波または振動の反射波またはその合成波を検出し、
    検出した超音波または振動信号における前記配管による共振を基に前記測定対象物の厚みを測定する、
    配管の厚み測定方法。
  2. 請求項1記載の配管の厚み測定方法において、
    さらに前記測定対象物の厚みを、前記配管の腐食や減肉などの劣化に関する判定閾値を備えた診断データベースと照合して前記配管の劣化度を判定する
    ことを特徴とする配管の劣化度判定方法。
  3. 予め定められた周波数帯域内を掃引して出力する電磁石発振器と、測定対象物の動的歪みを検出する光ファイバセンサとを一体化して有するアクティブセンサと、
    前記アクティブセンサにより、前記測定対象物である配管に対して厚み方向に超音波または振動を入力したときの、前記配管からの反射波またはその合成波の検出信号における前記配管の共振周波数fを求め、下記式によって前記配管の厚みdを算出する厚み測定手段と、
    を備えたことを特徴とする配管の厚み測定装置。
    d=n・ν/(2・f
    ここで、n:正の整数(1,2,3,・・・)
    ν:配管内における音速
  4. 請求項3記載の配管の厚み測定装置において、
    前記配管の腐食や減肉などの劣化に関する判定閾値を含む診断データベースを備え、
    前記厚み測定手段により測定された厚みを前記診断データベースと照合して前記配管の劣化度を判定するようにしたことを特徴とする配管の厚み測定装置。
  5. 請求項3記載の配管の厚み測定装置において、
    前記光ファイバセンサは、広帯域な光式振動センサであることを特徴とする配管の厚み測定装置。
  6. 請求項3記載の配管の厚み測定装置において、
    前記光ファイバセンサは、振動により光ファイバ内部を伝搬する光の位相が変化し、その位相変化によって変化する光偏波状態から振動を検出することを特徴とする配管の厚み測定装置。
  7. 請求項6記載の配管の厚み測定装置において、
    前記光ファイバセンサの偏波変化の検出方法が、偏波干渉方式の光振動センサであることを特徴とする配管の厚み測定装置。
  8. 請求項6記載の配管の厚み測定装置において、
    前記光ファイバセンサの偏波変化の検出方法が、偏波軸の角度変化を検出する手法の光振動式センサであることを特徴とする配管の厚み測定装置。
  9. 請求項7記載の配管の厚み測定装置において、
    前記光振動センサは、
    偏波特性の強いレーザー光源と、前記レーザー光源からの出力光の偏波を調整する偏波制御器と、偏波の位相変化として測定するための干渉計装置部と、前記配管に固定されて前記偏波制御器からの光を前記干渉計装置部への導波路を形成する光害ファイバセンサとをそなえ、前記光ファイバセンサが前記配管の振動によって前記導波路に生じた歪を検出するようにしたことを特徴とする配管の厚み測定装置。
  10. 請求項9記載の配管の厚み測定装置において、
    前記レーザー光源からの出力光の偏波を、制御器を用いて直線偏光に調整した
    ことを特徴とする配管の厚み測定装置。
  11. 請求項9記載の配管の厚み測定装置において、
    前記レーザー光源からの出力光の偏波を、制御器を用いて円偏光に調整した
    ことを特徴とする配管の厚み測定装置。
  12. 請求項9記載の配管の厚み測定装置において、
    前記レーザー光源からの出力光の偏波を、制御器を用いてランダム偏光に調整した
    ことを特徴とする配管の厚み測定装置。
  13. 請求項9記載の配管の厚み測定装置において、
    前記レーザー光源が、単一周波数で発振するレーザーであることを特徴とする配管の厚み測定装置。
  14. 請求項9記載の配管の厚み測定装置において、
    前記光ファイバセンサのファイバ被覆材料が、高弾性率の材料で被覆されている
    ことを特徴とする配管の厚み測定装置。
  15. 請求項6記載の配管の厚み測定装置において、
    前記光ファイバセンサで位相変化したレーザー光を、光偏波制御により偏波制御して偏波光を形成する偏波制御器と、偏波光の変化状態を光強度変化として変換する偏波変換器と、前記偏波変換器で変換した光強度の変化を光電変換する光/電気変換モジュール(PDM)とをそなえ、前記光ファイバセンサの位相変化を光強度として検出することを特徴とする配管の厚み測定装置。
  16. 請求項15記載の配管の厚み測定装置において、
    前記干渉計装置部の偏波変換器が、
    前記偏波光を平行成分と垂直成分とに分離する偏波分岐モジュールと、前記偏波光の垂直成分の偏波面を90度回転させて平行成分と同一偏波面の方向に合わせてから干渉させる偏波保持カプラとで構成されていることを特徴とする配管の厚み測定装置。
  17. 請求項15記載の配管の厚み測定装置において、
    前記干渉計装置部の光偏波制御器により前記光ファイバセンサからの光を直線偏光に調整し、
    前記偏波変換器が偏光子で構成されていることを特徴とする配管の厚み測定装置。
  18. 請求項17記載の光偏波器と偏波変換器との間が偏波保持ファイバで構成されていることを特徴とする配管の厚み測定装置。
  19. 請求項16記載の配管の厚み測定装置において、
    前記レーザー光源と前記偏波制御器との間、または前記偏波分岐モジュールと前記偏波補助カプラとの間に偏波保持ファイバを採用し、偏波面のゆらぎを抑えるようにしたこと
    を特徴とする配管の厚み測定装置。
  20. 請求項16記載の配管の厚み測定装置において、
    前記偏波分岐モジュールは、前記光ファイバセンサの前後における偏波面の組み合わせでセンサ出力が最大になるように偏波面を調整できるようにしたことを特徴とする配管の厚み測定装置。
  21. 請求項16記載の配管の厚み測定装置において、
    前記偏波保持カプラで前記光ファイバセンサの光ファイバを置換したことを特徴とする配管の厚み測定装置。
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