JP5784793B2 - 材料劣化診断装置 - Google Patents

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本発明は、材料劣化診断を行う材料劣化診断装置に関する。
配管の減肉や腐食の検査に超音波探傷法が用いられている。超音波探傷法は、被試験体の表面に超音波を送受信する探触子を押し当て、内部に各種周波数の超音波を伝播させる。そして、被試験体内部の欠陥や裏面で反射して戻ってきた超音波を受信し、被試験体内部の状態を把握する。欠陥位置は超音波の送信から受信までに要する時間から測定され、欠陥の大きさは受信したエコーの強度や欠陥エコーの出現する範囲の測定によって求められる。
超音波による検査法は、原子力発電プラントにおいて、素材の板厚測定や、ラミネーション等の溶接欠陥の検出に用いられている。また、原子炉圧力容器回りのノズル開口部、ブランチ、配管継手を補強する溶接肉盛部の検査においてもこのような検査法が用いられている(例えば非特許文献1参照)。
発電プラントでは、流れ加速型腐食(FAC: Flow Accelerated Corrosion)やエロージョンなどによって、配管のエルボ部やオリフィスの下流側などに減肉が生じ易い傾向があることが分かっている。このような知見に基づいて、配管減肉管理に関する規格(発電用設備規格JSME S CA1-2005)が日本機械学会により策定されている。規格化された配管減肉管理技術として、超音波厚さ測定器を使った配管厚さ測定が行われている。しかし、この手法は、測定の度に配管を覆う断熱材を解体/復旧する必要があるため、多大な時間とコストを要する。
そこで、低コストの減肉管理を実現するために、埋め込み型の定点測定用センサが開発されている。例えば、電磁超音波発振子(Electro Magnetic Acoustic Transducer :EMAT)と光ファイバ振動センサとを組み合わせた超音波光プローブが知られている。光ファイバ振動センサはポリイミドコーティングされ、ポリイミド系接着剤を用いて配管表面に貼り付けられる。電磁超音波発振子が、電磁力の作用によって配管内に超音波を直接励起し、励起された超音波の共振波が光ファイバ振動センサにより検出される。そして、検出結果を解析することによって、配管の厚さや内部欠陥の情報を得ることができる(例えば非特許文献2乃至4参照)。
このような技術を発電所の給水系配管の減肉管理に適用する場合、センサ取り付け箇所には長期間にわたる耐久性や、300℃を超える耐熱性が求められるが、従来のポリイミド系接着剤を用いた取り付けでは、せいぜい250℃〜300℃程度の耐熱性を実現するにとどまっていた。
内ヶ崎儀一郎他:「原子力と設計技術」大河出版(1980)、pp.226-250 佐々木、高橋他「光ファイバドップラセンサを用いた電磁超音波共鳴法による金属厚さ測定」溶接構造シンポジウム2006講演論文集(2006年11月) 高橋、佐々木他「光ファイバドップラを利用した電磁超音波共振法による金属配管厚さ測定」保全学会「第1回検査・評価・保全に関する連携講演会」資料(2008年1月) 山家、高橋、阿彦「火力発電プラントにおける配管減肉の測定技術」東芝レビュー、 Vol.63, No.4 (2008) pp.41-44
本発明は、超音波光プローブを用いた診断の長期信頼性を向上させることができる材料劣化診断装置を提供することを課題とする。
本発明の一態様による材料劣化診断装置は、第1接着剤により金属製材料の表面に第1面が接着されたシート材と、金、ニッケル、又はシリカによりコーティングされ、第2接着剤により前記シート材の第2面に接着された光ファイバと、前記光ファイバ上に設けられ、前記金属製材料中に振動を与える発振子と、前記金属製材料中の振動に応じた前記光ファイバを透過する光の変動を電気信号に変換する光干渉計と、前記電気信号に基づいて前記金属製材料の厚さを算出し、前記金属製材料の劣化度を判定する計測・制御部と、を備え、前記第1接着剤は、金属ペースト、ガラスペースト、又はセラミック系接着剤である。
本発明の一態様による材料劣化診断装置は、部分溶接により金属製材料の表面に接合された金属メッシュと、前記金属メッシュに接着され、光源から光が入力される光ファイバと、前記光ファイバ上に設けられ、前記金属製材料中に振動を与える発振子と、前記金属製材料中の振動に応じた前記光ファイバを透過する光の変動を電気信号に変換する光干渉計と、前記電気信号に基づいて前記金属製材料の厚さを算出し、前記金属製材料の劣化度を判定する計測・制御部と、を備えるものである。
本発明によれば、超音波光プローブを用いた診断の長期信頼性を向上させることができる。
本発明の第1の実施形態に係る材料劣化診断装置の概略構成図である。 同第1の実施形態に係るEMATの概略構成図である。 同第1の実施形態に係る光ファイバセンサ部の概略構成図である。 同第1の実施形態に係る超音波光プローブの取り付け方法を説明する図である。 同第1の実施形態に係る材料劣化診断装置の配管への取り付けの一例を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る光ファイバセンサ部の概略構成図である。 同第2の実施形態に係る超音波光プローブの取り付け方法を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係る材料劣化診断装置の概略構成を示す。材料劣化診断装置は、電磁超音波発振子(以下EMATと称する)1、光ファイバセンサ部2、光源3、光干渉計4、計測・制御部5、波形信号発生器6、及びアンプ7を備える。EMAT1及び光ファイバセンサ部2により構成される超音波光プローブは厚さ測定対象の金属8の表面に配置される。厚さ測定対象は例えば原子力発電プラントや火力発電プラントの配管である。波形信号発生器6及びアンプ7は計測・制御部5の制御に基づいて、EMAT1に高周波電流を供給する。
図2に、EMAT1の概略構成を示す。EMAT1は、アンプ7に接続され、高周波電流が供給される電気コイル12と、電気コイル12上に載置された永久磁石11とを有する。永久磁石11の材質は例えばサマリウムコバルトである。サマリウムコバルトは350〜400℃の間に減磁点があるため、350℃以下の環境で使用することが好ましい。
永久磁石11を鍍金(めっき)して酸化を防止するとともに、電気コイル12をポリイミドコーティングしてもよい。このようにすることで、高温下でも発振パワーを保持することができる。
光ファイバセンサ部2の上面を図3(a)に示し、側面を図3(b)に示す。図3(a)に示すように、光ファイバセンサ部2では光ファイバ21が渦巻状に巻かれ円形平板になっている。光ファイバ21の内側の一端が光干渉計4に接続され、内側から外側に一層の渦巻状に巻かれて外側の他端が光源3に接続されている。光ファイバ21は、光源3から基準レーザ光が入力される。また、光ファイバ21の中を透過する光の変動を光干渉計4が検出する。光ファイバ21は金、ニッケル等の金属、又はシリカによりコーティングされている。
なお、図示はしないが、光干渉計4と光源3の光ファイバに対する接続関係が逆になっていてもよい。
図3(b)に示すように、この光ファイバ21は、接着剤23を用いて、シート材22に貼着されている。シート材22には例えばシリコン箔、ガラス箔、セラミック箔等の金属を含まないフレキシブルシート材を使用することができる。光ファイバ21とシート材22とを接着する接着剤23は、光ファイバ21をコーティングする材料によって異なり、例えば、光ファイバ21が金コーティングされている場合には接着剤23に金ペーストを使用する。また、光ファイバ21がニッケルコーティングされている場合には接着剤23に金ペースト又は銀ペーストを使用する。あるいはまた、光ファイバ21がシリカコーティングされている場合には接着剤23にガラスペーストを使用する。
図3(c)に示すように、光ファイバ21を、シート材22及び樹脂シート24で挟むような構成にしてもよい。シート材22と樹脂シート24との間に接着剤23を充填して光ファイバ21を固定する。樹脂シート24には、耐熱性エポキシ、ポリベンゾイミダゾール、マイカ強化ポリ四フッ化エチレン、芳香族ポリエステルなどの耐熱性樹脂シートを用いることができる。
次に、超音波光プローブを金属8の表面に取り付ける方法を、図4(a)、(b)に示す超音波光プローブ等の縦断面を用いて説明する。
まず、図4(a)に示すように、接着剤23を用いて一方の面(第2面)に光ファイバ21が接着されたシート材22を準備する。そして、このシート材の他方の面(第1面)を、金属8(例えば炭素鋼)の表面に、耐熱性の高い接着剤31を用いて接着する。ここでは、金属8が配管であり、表面が曲面になっているものとした。シート材22と金属8とを接着する接着剤31は、シート材22の材料によって異なる。例えば、シート材22がシリコン箔である場合は、接着剤31に金属ペーストが使用される。金属ペーストには、例えば銀ペースト等の、500℃程度の耐熱性を有するものを用いることができる。
また、シート材22がガラス箔である場合は、接着剤31にガラスペーストが使用される。ガラスペーストは380℃程度の耐熱性を有する。ガラスペーストには、例えば、SiO、B、PbOを含むものや、SiO、ZnO、ROを含むものなどを使用することができる。
また、シート材22がセラミック箔である場合は、接着剤31に耐熱性無機接着剤(ニッセラコート)等のセラミック系高温接着剤が使用される。セラミック系高温接着剤は700℃程度の耐熱性を有する。
そして、図4(b)に示すように、光ファイバ21上に電気コイル12及び永久磁石11を順に配置する。通常、永久磁石11は磁力によって金属8に固定され、電気コイル12は永久磁石11と光ファイバ21との間に挟まれて固定されるが、位置ずれを防ぐために接着剤などで固定してもよい。
このようにして金属8に取り付けられた超音波光プローブを用いて金属8の厚みを測定する方法を説明する。電気コイル12は、高周波電流が流れると、電磁誘導作用に伴って発生するローレンツ力や磁歪によって金属8を振動させ、金属8内部に電磁超音波を発生させる。波形信号発生器6によって電気コイルへ与える交流電流の周波数を変化させ、発生する電磁超音波の周波数を所望の周波数帯域でスイープさせる。
金属8内部の振動は、高温ひずみゲージのひずみ計測と同様の原理で光ファイバセンサ部2に伝わる。光源3から基準レーザ光が入力されている状態で光ファイバセンサ部2に振動が到達すると、光ファイバ21が微小に伸び縮みして、レーザ光にドップラ効果や偏波面の変動が生じる。この変動(伸縮速度)を光干渉計4が光電変換により電圧値に変換することで、金属8内に伝播する超音波の周波数を計測できる。
厚さ測定対象の金属8の内部で発生させる振動の周波数は、波形信号発生器6により、金属の厚さに応じて1Hz〜10MHzの任意の周波数を選択することができる。計測・制御部5は、光ファイバ21及び光干渉計4を介して、周波数1Hz〜20kHzの振動や、20kHz〜10MHzの超音波振動を検出する。
電磁超音波の周波数をスイープし、金属8の厚みdと、電磁超音波の波長λとの間にλ=2dの関係が成り立つとき、入射波と反射波が共振し、出力波の振幅が大きくなる。この関係は、超音波の周波数f、音速vを用いて、f=v/2dと表すことができる。従って、共振周波数と音速により、金属8の厚さを求めることができる。例えば、9mm厚の鋼板の場合、300kHzの超音波を入力すると共振が起きる。
図5に、本実施形態に係る材料劣化診断装置の配管への取り付けの一例を示す。EMAT1及び光ファイバセンサ部2により構成される超音波光プローブ40を配管41の外面に取り付け、配管41の内面と外面から多重反射した共振超音波信号を計測・制御部5により解析することで、配管41の厚さを測定する。配管41の材質は例えば炭素鋼である。上述のように、光ファイバ21が接着されたシート材22が、接着剤(接着剤31)を用いて配管41に接着される。超音波光プローブ40は、配管41のエルボ部やオリフィス部下流など、統計的に減肉しやすいと考えられている箇所に取り付けることが好適である。
計測・制御部5は、配管41の腐食や減肉などの劣化に関する判定閾値を含む診断データベースを有しており、光干渉計4から受け取った原波形や、原波形に信号処理を施した結果と、診断データベースとを照合して、配管41の劣化度を判定する。
超音波光プローブ40は、あらかじめ配管41と断熱材42との間に埋め込んでおくことで、オンラインでの厚さ測定(劣化度判定)が可能となる。配管41の厚さ測定にあたり、断熱材42を解体/復旧する必要がないので、プラントの安全性や設備稼働率を高めることができる。
なお、配管減肉管理規格では、配管の厚さ測定点の位置が配管径に応じて決められており、配管のサイズが150A(外径:約165mm)以上の場合は周方向に8箇所(45°間隔)、サイズが150A未満の場合は周方向に4箇所(90°間隔)となっている。
また、配管の軸方向については、配管の外径長さ以下の間隔で配管の厚さを測定することが決められている。
本実施形態では、金属又はシリカでコーティングされた光ファイバ21が接着されたフレキシブルシート材22を、配管等の厚さ測定対象の金属表面に耐熱性の高い接着剤23で取り付けるため、従来のようなポリイミドワニスで金属表面に取り付ける場合よりも接合強度が高くなり、耐熱性や耐久性等の信頼性を長期に渡って向上させることができる。
また、シート材22に、シリコン箔、ガラス箔、セラミック箔等の金属を含まないフレキシブルシート材を使用するため、シート材22に金属箔を使用する場合と比較して、電磁界遮蔽を小さくすることができ、材料劣化診断装置の診断精度を向上させることができる。
(第2の実施形態)図6に本発明の第2の実施形態に係る材料劣化診断装置の超音波光プローブの概略構成を示す。本実施形態は、図3に示す第1の実施形態と比較して、光ファイバ21を金属メッシュ25に接着する点が異なる。図6において、図3に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。金属メッシュ25の材料は例えば鉄である。
次に、図6に示すような構成の光ファイバセンサ部2を有する超音波光プローブを、金属8の表面に取り付ける方法を、図7(a)、(b)、(c)に示す超音波光プローブ等の縦断面を用いて説明する。
まず、図7(a)に示すように、接着剤23を用いて光ファイバ21が接着された金属メッシュ25を金属8(例えば炭素鋼)の表面に配置する。ここでは、金属8は配管であり、表面が曲面になっているものとした。金属メッシュ25を金属8の表面に押し当てると、金属メッシュ25の凸部(図示せず)が金属8表面に点接触する。このとき、金属メッシュ25と金属8表面とを接着剤等で仮止めしてもよい。
続いて、図7(b)に示すように、溶接電源(図示せず)を用いて、金属メッシュ25に電流を流し、金属8表面に点接触している金属メッシュ25の凸部を溶かす。これにより、金属メッシュ25と金属8とが部分溶接され、金属メッシュ25が金属8に接合される。
そして、図7(c)に示すように、光ファイバ21上に電気コイル12及び永久磁石11を順に配置する。通常、永久磁石11は磁力によって金属8に固定され、電気コイル12は永久磁石11と光ファイバ21との間に挟まれて固定されるが、位置ずれを防ぐために接着剤などで固定してもよい。
本実施形態では、光ファイバ21が接着された金属メッシュ25を配管等の厚さ測定対象の金属表面に部分溶接で取り付けるため、金属表面に接着剤で取り付ける場合よりも接合強度が高くなり、耐熱性や耐久性等の信頼性を長期に渡って向上させることができる。
また、光ファイバ21を金属メッシュ25に接着するため、光ファイバ21を金属箔に接着する場合と比較して、メッシュ構造である分だけ電磁界遮蔽を小さくすることができ、材料劣化診断装置の診断精度を向上させることができる。
なお、上記第1及び第2の実施形態において、劣化診断対象となる配管の材料は炭素鋼などの磁性体に限定されず、非磁性体であってもよい。上記第1の実施形態のように、配管に接着されるシート材22に金属が含まれない場合は、永久磁石11は磁力で固定されないので、他の永久磁石とあわせて上から固定治具で固定する。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
1 EMAT
2 光ファイバセンサ部
3 光源
4 光干渉計
5 計測・制御部
6 波形信号発生器
7 アンプ
8 金属
11 永久磁石
12 電気コイル
21 光ファイバ
22 シート材
23 接着剤
24 樹脂シート
25 金属メッシュ
31 接着剤

Claims (2)

  1. 部分溶接により金属製材料の表面に接合された金属メッシュと、
    前記金属メッシュに接着され、光源から光が入力される光ファイバと、
    前記光ファイバ上に設けられ、電磁力により前記金属製材料中に振動を与える発振子と、
    前記金属製材料中の振動に応じた前記光ファイバを透過する光の変動を電気信号に変換する光干渉計と、
    前記電気信号に基づいて前記金属製材料の厚さを算出し、前記金属製材料の劣化度を判定する計測・制御部と、
    を備える材料劣化診断装置。
  2. 前記光ファイバが金コーティングされている場合、前記光ファイバは金ペーストにより前記金属メッシュに接着され、
    前記光ファイバがニッケルコーティングされている場合、前記光ファイバは金ペースト又は銀ペーストにより前記金属メッシュに接着され、
    前記光ファイバがシリカコーティングされている場合、前記光ファイバはガラスペーストにより前記金属メッシュに接着されることを特徴とする請求項1に記載の材料劣化診断装置。
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