JP2010070447A - 第13族金属窒化物結晶の製造方法および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工業的に有利な製造方法であって、得られる結晶中のLi含有量が低い第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】窒素元素と第13族金属元素とイオン性溶媒を含む液9中において、シード6上に第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、イオン性溶媒としてハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物を合計0.1〜14モル%含有し、かつ、ハロゲン化リチウムを含む溶媒を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】窒素元素と第13族金属元素とイオン性溶媒を含む液9中において、シード6上に第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、イオン性溶媒としてハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物を合計0.1〜14モル%含有し、かつ、ハロゲン化リチウムを含む溶媒を用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は、GaN結晶等の第13族金属の窒化物結晶の製造方法、および該製造方法を用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)に代表される第13族金属元素と窒素元素との化合物結晶は、発光ダイオード、レーザダイオード、高周波対応の電子デバイス等で使用される物質として有用である。GaNの場合、実用的な結晶の製造方法としては、サファイア基板または炭化珪素等のような基板上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により気相エピタキシャル成長を行う方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、上記方法では、格子定数および熱膨張係数の異なる異種基板上にGaN結晶をエピタキシャル成長させるため、得られたGaN結晶には多くの格子欠陥が存在する。そのような格子欠陥が多く存在するGaN結晶を用いた場合、電子素子の動作に悪影響を与え、青色レーザ等の応用分野で用いるためには満足すべき性能を発現することはできない。このため、近年、基板上に成長したGaNの結晶の品質の改善、GaNの塊状単結晶の製造技術の確立が強く望まれている。
現在、気相法によるヘテロエピタキシャルGaN結晶成長法では、GaN結晶の欠陥濃度を減らすために、複雑かつ長い工程が必要とされている。このため、最近では、液相法によりGaNの単結晶化について精力的な研究がなされており、窒素とGaを高温高圧下で反応させる高圧法(非特許文献2参照)が提案されているが、過酷な反応条件のため工業的に実施することは困難である。そこで、反応条件をより低圧化させたGaN結晶成長方法の報告が多くなされている。例えば、GaとNaN3とを昇圧下で反応させる方法(非特許文献3)や、フラックス成長法(特許文献3、非特許文献4、5、8、9参照)等が提案されている。フラックスにはアルカリ金属が使われる場合が多いが、Ga融液にアルカリ金属を添加した合金融液を用いても、この合金融液に溶解するN量またはGaN量が非常に小さいため、GaN結晶を大型化することが困難とされている。さらに、アモノサーマル法によるGaNの合成法(非特許文献6参照)も報告されているが、結晶サイズと格子欠陥数に問題があり、また製造装置が高価なことから工業化されるに至っていない。
また、GaN粉末とアルカリ金属ハロゲン化物の混合物を加熱し、GaN結晶を作成する方法も提案されているが(特許文献1参照)、アルカリ金属ハロゲン化物へのGaNの溶解度は小さく、かつ窒素を安定に溶解させるために高圧で結晶成長を行う必要があるため、この方法は工業的に結晶成長を行う上で不利である。また、非特許文献7にもGaN粉末とアルカリ金属ハロゲン化物の混合物を用いた結晶成長が報告されているが、特許文献1と同様の技術と考えられる。また特許文献2にはリチウムの化合物を補助溶融剤として用いると記載されているが、この文献では溶融塩を用いた溶液を用いておらず、合金融液からの結晶成長であるため非特許文献4、5等と同様の問題を抱えている。
このような問題に対処する技術として、Li3GaN2などの複合金属窒化物をイオン性溶媒に溶解した溶液または融液を作成し、その溶液や融液中でGaNの結晶を成長させる方法が提案されている(特許文献4参照)。この公報には、イオン性溶媒としてLiClを用いた具体例と、LiClとNaClの共晶塩(Li:Na=85:15(モル比))を用いた具体例が記載されている。
J. Appl. Phys. 37 (1998) 309頁
J. Crystal Growth 178 (1977) 174頁
J. Crystal Growth 218 (2000) 712頁
J. Crystal Growth 260 (2004) 327頁
金属 Vol.73 No.11(2003)1060頁
Acta Physica Polonica A Vol.88 (1995) 137頁
J. Crystal Growth Vol.281 (2005) 5頁
J. Mater. Sci. Ele. 16 (2005) 29項
J. Crystal Growth 284 (2005) 91頁
本発明者らが特許文献4に記載される方法を種々検討したところ、得られるGaN結晶のLi含有量が高くなってしまうという課題があることが明らかになった。特許文献4に記載される方法は、低圧または常圧において良質な結晶を製造できることから工業的に有利であるという利点を有するが、得られる結晶中のLi含有量が多いと結晶の応用範囲が限定されてしまうという問題がある。このような従来技術の問題点に鑑みて、本発明者らは、工業的に有利な製造方法であって、なおかつ得られる結晶中のLi含有量が低い第13族金属窒化物結晶の製造方法を提供することを本発明の目的として検討を進めた。
従来の方法により得られる結晶中のLi含有量が高くなることを鑑みると、結晶成長させる液中のLi含有量をあらかじめ減らしてNaClなどの他のイオン性溶媒を比較的多量に用いれば課題を解決しうるように思われる。しかしながら、実際にNaClなどのイオン性溶媒の使用割合を増やすと、得られる結晶中のLi濃度は逆に高くなることが本発明者らの検討により明らかになった。本発明者らは種々の検討を重ねた結果、意外なことにNaClなどのイオン性溶媒の使用割合を減らすことにより、得られる結晶中のLi濃度を低減することができることを見い出し、以下の本発明を提供するに至った。
[1] イオン性溶媒中に窒素元素と第13族金属元素を含む溶液中において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、前記イオン性溶媒としてハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物を合計0.1〜14モル%含有し、かつ、ハロゲン化リチウムを含む溶媒を用いることを特徴とする第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[2] 前記イオン性溶媒がハロゲン化ナトリウムを0.1〜14モル%含有することを特徴とする[1に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[3] 前記シードの非極性面または半極性面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[1]または[2]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[4] 前記シードが第13族金属窒化物結晶であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[5] 前記シードのM面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[4]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[6] リチウム含有量が1×1018cm-3以下である第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[7] 前記溶液が、第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する複合金属窒化物を前記イオン性溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[8] 第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する固体状の複合金属窒化物を前記溶液に接触させることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[9] 前記複合金属窒化物の粒径が1μm以上であることを特徴とする[8]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[10] 前記複合金属窒化物の第13族以外の金属元素が、前記イオン性溶媒に含まれる金属元素と同じであることを特徴とする[7]〜[9]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[11] 前記複合金属窒化物がLi3GaN2であることを特徴とする[10]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[2] 前記イオン性溶媒がハロゲン化ナトリウムを0.1〜14モル%含有することを特徴とする[1に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[3] 前記シードの非極性面または半極性面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[1]または[2]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[4] 前記シードが第13族金属窒化物結晶であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[5] 前記シードのM面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[4]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[6] リチウム含有量が1×1018cm-3以下である第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[7] 前記溶液が、第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する複合金属窒化物を前記イオン性溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[8] 第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する固体状の複合金属窒化物を前記溶液に接触させることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[9] 前記複合金属窒化物の粒径が1μm以上であることを特徴とする[8]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[10] 前記複合金属窒化物の第13族以外の金属元素が、前記イオン性溶媒に含まれる金属元素と同じであることを特徴とする[7]〜[9]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[11] 前記複合金属窒化物がLi3GaN2であることを特徴とする[10]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[12] ハロゲン化リチウムを含むイオン性溶媒中に窒素元素と第13族金属元素を含む溶液中において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、成長する第13族金属窒化物結晶中に混入するリチウム量を低減する方法であって、前記イオン性溶媒中におけるハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物の合計含有量を0.1〜14モル%にすることを特徴とする、第13族金属窒化物結晶中に混入するリチウム量の低減方法。
[13] 前記シードの非極性面または半極性面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[12]に記載の第13族金属窒化物結晶中に混入するリチウム量の低減方法。
[14] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の製造方法により第13族金属窒化物結晶を製造する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
[13] 前記シードの非極性面または半極性面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[12]に記載の第13族金属窒化物結晶中に混入するリチウム量の低減方法。
[14] [1]〜[11]のいずれか一項に記載の製造方法により第13族金属窒化物結晶を製造する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明の製造方法によれば、Li含有量が少ない第13族金属窒化物結晶を簡便な方法で製造することができる。また、本発明の半導体デバイスの製造方法によれば、パワーICや高周波対応可能な半導体デバイスを製造することが可能である。
以下に、本発明の第13族金属窒化物結晶の製造方法、および半導体デバイスの製造方法について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また第13族金属は、周期表第13族金属を意味する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また第13族金属は、周期表第13族金属を意味する。
[イオン性溶媒]
本発明で用いるイオン性溶媒は、副成分としてハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物を合計0.1〜14モル%含有する。ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物の合計含有率はイオン性溶媒の全体量に対して0.1〜14モル%が好ましく、0.1〜12モル%が好ましく、0.1〜10モル%がさらに好ましい。そして、さらに最も好ましい下限値として2モル%以上とすることができ、又、さらに最も好ましい上限値として6モル%とすることができる。これらのハロゲン化物の含有率が0.1モル%未満である場合には、結晶の成長速度が遅い点で好ましくない。また合計含有率が14モル%を超える場合には成長させた結晶中に含まれる不純物量が多くなる点で好ましくない。ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物の合計含有率が高すぎると、結晶成長速度が速すぎてシード上で成長の起点が多く発生する。成長の起点が多過ぎると各起点から成長した結晶同士が結合する際に結晶粒界が発生し易くなり、結晶粒界は不純物が混入し易い。したがって、第13族金属窒化物結晶を第13族金属以外の金属イオンを多く含むイオン性溶媒中で製造する本発明においては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物の合計含有率は多すぎても結晶成長に好ましくない。
本発明で用いるイオン性溶媒は、副成分としてハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物を合計0.1〜14モル%含有する。ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物の合計含有率はイオン性溶媒の全体量に対して0.1〜14モル%が好ましく、0.1〜12モル%が好ましく、0.1〜10モル%がさらに好ましい。そして、さらに最も好ましい下限値として2モル%以上とすることができ、又、さらに最も好ましい上限値として6モル%とすることができる。これらのハロゲン化物の含有率が0.1モル%未満である場合には、結晶の成長速度が遅い点で好ましくない。また合計含有率が14モル%を超える場合には成長させた結晶中に含まれる不純物量が多くなる点で好ましくない。ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物の合計含有率が高すぎると、結晶成長速度が速すぎてシード上で成長の起点が多く発生する。成長の起点が多過ぎると各起点から成長した結晶同士が結合する際に結晶粒界が発生し易くなり、結晶粒界は不純物が混入し易い。したがって、第13族金属窒化物結晶を第13族金属以外の金属イオンを多く含むイオン性溶媒中で製造する本発明においては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲン化物の合計含有率は多すぎても結晶成長に好ましくない。
イオン性溶媒には、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化セシウムのうちのいずれか一種のみが含まれていてもよいし、二種または三種が含まれていてもよい。好ましいのはいずれか一種のみが含まれている場合である。これらのハロゲン化物のうち、板状の結晶を容易に形成しうる点で好ましいのは、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムであり、さらに好ましいのはハロゲン化ナトリウムである。ハロゲン化物を構成するハロゲン元素としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子または臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。具体的な塩化物としては、NaCl、KCl、CsCl、NaBr、KBr、CsBr、NaI、KI、NaF、KFなどを挙げることができる。
第13族以外の金属の窒化物、または第13族金属と第13族以外の金属の複合金属窒化物を用いる場合には、本発明で用いるイオン性溶媒の主成分は、前記窒化物を構成する第13族以外の金属と同じ金属元素を含むハロゲン化物であることが好ましい。例えば、第13族以外の金属の窒化物としてLi3Nを用いたり、複合金属窒化物としてLi3GaN2を用いたりする場合には、イオン性溶媒の主成分をハロゲン化リチウムにすることが好ましい。主成分の含有率はイオン性溶媒の全体量に対して86モル%〜99.9モル%であることが好ましく、88モル%〜99.9モル%であることがより好ましく、90モル%〜99.9モル%であることがさらに好ましい。
本発明で用いるイオン性溶媒は、ハロゲン化リチウムと、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物とからなるものであることが好ましく、ハロゲン化リチウムと、ハロゲン化ナトリウムまたはハロゲン化カリウムとからなるものであることがより好ましく、ハロゲン化リチウムとハロゲン化ナトリウムからなるものであることがさらに好ましい。
本発明で用いるイオン性溶媒は、溶融塩として提供されることが好ましい。結晶成長させる溶液の均一性の観点から、混合塩(例えばLiClとNaClの混合塩)を加熱溶融させて作成することが特に好ましい。もっとも、常温において固体のままあらかじめ混合しておき、反応温度において融液とすることもできる。常温において混合する際には、粉末状にして混合することが好ましい。
なお、溶融塩に水等の不純物が含まれている場合は、反応性気体を吹き込んであらかじめ溶融塩を精製しておくことが望ましい。反応性気体としては、例えば、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができ、塩化物の溶融塩に対しては、特に塩化水素を用いることが好ましい。
[溶液の組成]
第13族金属窒化物結晶を成長させる溶液は、上記のイオン性溶媒の他に、第13族金属元素と窒素元素を含む。第13族金属元素と窒素元素は、第13族金属や第13族金属元素を含む化合物、窒素元素を含む化合物をそれぞれイオン性溶媒に溶解させることにより溶液中に存在させることができる。ここで溶液中に含まれる第13族金属元素は、結晶成長させようとしている第13族金属窒化物結晶の第13族金属元素である。したがって、GaN結晶を成長させようとしている場合は、イオン性溶媒中にGaかGa化合物を溶解させる。
第13族金属窒化物結晶を成長させる溶液は、上記のイオン性溶媒の他に、第13族金属元素と窒素元素を含む。第13族金属元素と窒素元素は、第13族金属や第13族金属元素を含む化合物、窒素元素を含む化合物をそれぞれイオン性溶媒に溶解させることにより溶液中に存在させることができる。ここで溶液中に含まれる第13族金属元素は、結晶成長させようとしている第13族金属窒化物結晶の第13族金属元素である。したがって、GaN結晶を成長させようとしている場合は、イオン性溶媒中にGaかGa化合物を溶解させる。
溶液中に溶解させる窒化物としては、Li3N、Ca3N2、Mg3N2、Sr3N2、Ba3N2などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の窒化物を例示することができる。イオン性溶媒の主成分としてLiClを用いる場合には、窒化物としてLi3Nを採用することが好ましい。これらの窒化物を溶解させることにより、後述する複合金属窒化物の溶解度を増加させることもできる。
窒化物は、第13族金属窒化物結晶を成長させる溶液中に断続的または連続的に添加することもできる。より安定で継続的な結晶成長を実現するためには、連続的に窒化物の添加を行うことが好ましい。窒化物の添加方法は特に制限されず、気相の窒化物、液相の窒化物、固相の窒化物のいずれを溶液中に添加してもよい。固相の窒化物を添加する場合は、Li3Nのように速やかに溶液中に溶解する窒化物を用いてもよいし、GaNのように徐々に溶解する窒化物を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。また、溶液中には、窒化物自体を添加せずに、窒化物を徐々に溶液中に供給することができる固体状の窒化物供給化合物を添加してもよい。また、窒化物を含む液体または固体を添加してもよい。
窒化物を徐々に溶液中に供給することができる固体状の窒化物供給化合物を用いる場合は、結晶成長開始前にあらかじめ溶液と固体状の窒化物供給化合物が接触する状態にしておくことが好ましい。接触の態様は特に制限されないが、例えば固体状の窒化物供給化合物の一部ないし全部が溶液中に浸漬している態様を例示することができる。具体的には、固体状の窒化物供給化合物が溶液下方に存在している態様や、窒化物供給化合物の粒子が溶液中に分散している態様を挙げることができる。溶液と接触させるときに、ある程度の粒径を有する固体状の窒化物供給化合物を用いれば、徐々に窒化物を溶液中に放出することができるため好ましい。粒径が大きいと、固体状の窒化物供給化合物から窒化物が短時間ですべて溶出してしまったり、溶液中の対流により固体状の窒化物供給化合物が舞い上がってシード表面に付着し結晶成長を阻害したり結晶中に不純物を混入させたりする問題が生じにくい傾向がある。固体状の窒化物供給化合物の好ましい粒径は1μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、さらに好ましいのは300μm以上であり、最も好ましいのは1000μm以上である。また、粒径に分布を持たせたり、形状に工夫を持たせることにより、時間の経過に伴う窒化物の放出量を制御することも可能である。さらに、固体状の窒化物供給化合物と窒化物をともに添加することも可能である。このような固体状の窒化物供給化合物としては、第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する固体状の複合金属窒化物が特に好ましく、例えば上記のLi3GaN2などを挙げることができる。
本発明の製造方法で用いられる第13族金属と第13族以外の金属元素を含有する複合金属窒化物は、第13族金属の窒化物粉体と第13族金属以外の金属の窒化物粉体(例えばLi3N、Ca3N2)とを混合した後、温度を上げて固相反応させるなどの方法により得ることができる。第13属の金属としては、Ga、Al、In、GaAl、GaIn等を好ましい例として挙げることができる。また、第13族以外の金属元素としては、Li、Na、Ca、Sr、Ba、Mg等を挙げることができ、中でもLi、Ca、Ba、Mgを好ましい元素として挙げることができる。好ましい複合金属窒化物としては、Li3GaN2、Ca3Ga2N4、Ba3Ga2N4、Mg3GaN3、CaGaN等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属と第13族金属との複合金属窒化物を挙げることができ、Li3GaN2がより好ましい。Li3GaN2を用いる場合には、Li3GaN2に含まれている不純物Li3Nを除去したり逆にLi3Nを添加したりしてあらかじめLi3Nの含有量を調節しておくことが好ましい。本発明では、2種類以上の複合金属窒化物を用いてもよい。
本発明の製造方法で用いられる複合金属窒化物は、通常第13族金属と13族以外の金属との合金をつくっておき、窒素雰囲気中で加熱することによっても容易に合成できる。例えばLi3GaN2は、Ga−Li合金を窒素雰囲気中で600〜800℃で加熱処理することによって作製することができる。通常、アモノサーマル法等では、目的の第13族金属窒化物結晶の微粉または微結晶を合成し、これを溶媒に溶解するが、こうしたプロセスから較べると、非常に容易に原料を作ることができ、工業的な価値は大きい。また、複合金属窒化物は化学的に合成された結晶性のものでなくともよく、例えば、それらの合金からなるターゲットを反応性スパッターにより、窒素プラズマとの反応で作製したサファイア基板や石英等の基板上に生成した化学量論組成からずれた混合窒化物膜であってもよい。こうしたドライプロセスで作られた複合金属窒化物薄膜は、溶融塩と接触させておくと、窒化物薄膜から溶融塩へ窒化物が少しずつ溶解し、界面付近に拡散支配の窒化物溶解相を形成でき、シードをこの界面付近に置くことによって容易に結晶成長が達成できる。また、ドライプロセスを用いる特徴としては、化学的に合成が難しいような窒化物でも容易に作製ができることが挙げられる。なお、ここでは固体状の複合金属窒化物の合成法を説明したが、本発明では溶液中で2種の窒化物を反応させて溶液中に溶解した複合金属窒化物を合成し、これを液状の複合金属窒化物としてそのまま結晶成長に用いても構わない。
窒化物や窒化物供給化合物を添加する際には、反応系内に酸素または水分が入らないように、添加する物質および添加時に反応系内に同伴される気相に酸素または水分が入らないように操作することが好ましい。
[シード]
本発明の製造方法では、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる。使用するシードは、第13族金属窒化物結晶であってもよいし、サファイア、SiC、ZnO等の異種基板であってもよい。好ましいのは、シードとして、第13族金属窒化物結晶または基板を用いる場合である。シードの形状は特に制限されず、平板状であっても、棒状であってもよい。また、ホモエピタキシャル成長用のシードであってもよいし、ヘテロエピタキシャル成長用のシードであってもよい。具体的には、気相成長させたGaN、InGaN、AlGaN等の13族金属窒化物のシードを挙げることができる。また、サファイア、シリカ、ZnO、BeO等の金属酸化物や、SiC、Si等の珪素含有物や、GaAs等の気相成長法等で基板として用いられる材料を挙げることもできる。これらのシードの材料は、本発明で成長させる第13族金属窒化物結晶の格子定数にできるだけ近いものを選択することが好ましい。棒状のシードを用いる場合には、最初にシード部分で成長させ、次いで水平方向にも結晶成長を行いながら、垂直方向に結晶成長を行うことによってバルク状の結晶を作製することもできる。
本発明の製造方法では、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる。使用するシードは、第13族金属窒化物結晶であってもよいし、サファイア、SiC、ZnO等の異種基板であってもよい。好ましいのは、シードとして、第13族金属窒化物結晶または基板を用いる場合である。シードの形状は特に制限されず、平板状であっても、棒状であってもよい。また、ホモエピタキシャル成長用のシードであってもよいし、ヘテロエピタキシャル成長用のシードであってもよい。具体的には、気相成長させたGaN、InGaN、AlGaN等の13族金属窒化物のシードを挙げることができる。また、サファイア、シリカ、ZnO、BeO等の金属酸化物や、SiC、Si等の珪素含有物や、GaAs等の気相成長法等で基板として用いられる材料を挙げることもできる。これらのシードの材料は、本発明で成長させる第13族金属窒化物結晶の格子定数にできるだけ近いものを選択することが好ましい。棒状のシードを用いる場合には、最初にシード部分で成長させ、次いで水平方向にも結晶成長を行いながら、垂直方向に結晶成長を行うことによってバルク状の結晶を作製することもできる。
第13族金属窒化物結晶をシードとして用いる場合は、シードの主面が非極性面または半極性面であることが好ましい。シードの主面とは、シードの総表面積に対してその面の占める表面積が最も広い面を意味する。
以下第13族金属窒化物としてGaNを例にとり、シードの極性の違いが不純物の混入に与える影響について説明する。
GaN結晶における極性面とは、表面にGaまたはNのどちらか一方のみが配列している面である。極性面は、表面に存在する原子の偏りにより表面が電気的に正または負に帯電している。非極性面とは、GaとNが表面に同数存在している面であり、表面は電気的に中性である。半極性面とは、表面のGaとNの存在比が1:1ではないものの両方存在している面であり、このため極性面と比べ表面の帯電が少ない。
イオン性溶媒中において結晶成長を行う場合において、結晶成長に用いるシードの表面の帯電が多いと他の金属イオン種が表面に引き寄せられ易く成長部に不純物が取り込まれやすい。成長部に不純物が混入すると、デバイスとして結晶を用いる場合にデバイスの特性を低下させる欠点がある。よってイオン性溶媒中において結晶成長を行う本発明においては、極性面を主面とするシードは用いずに非極性面または半極性面を用いることが好ましく、これらのシードを用いれば得られる第13族金属窒化物結晶の結晶中に混入する不純物量を一段と低減させることができる。
ウルツ鉱型GaN結晶では、極性面の例として(0001)面および(000−1)面が挙げられる。非極性面の例として(10−10)面および(11−20)面が挙げられる。半極性面の例としては(10−1−1)面、(10−1−2)面、(10−11)面、(10−12)面、(11−22)面、(11−2−2)面が挙げられる。また、本明細書においてM面とは、ウルツ鉱型の結晶における(1−100)面およびそれと等価な面をいい、具体的には(1−100)面、(−1100)面、(01−10)面、(0−110)面、(10−10)面、(−1010)面の総称である。結晶中のLi濃度は、1cm3の結晶中に含まれているLi原子数として表す(単位:cm-3)。
以下第13族金属窒化物としてGaNを例にとり、シードの極性の違いが不純物の混入に与える影響について説明する。
GaN結晶における極性面とは、表面にGaまたはNのどちらか一方のみが配列している面である。極性面は、表面に存在する原子の偏りにより表面が電気的に正または負に帯電している。非極性面とは、GaとNが表面に同数存在している面であり、表面は電気的に中性である。半極性面とは、表面のGaとNの存在比が1:1ではないものの両方存在している面であり、このため極性面と比べ表面の帯電が少ない。
イオン性溶媒中において結晶成長を行う場合において、結晶成長に用いるシードの表面の帯電が多いと他の金属イオン種が表面に引き寄せられ易く成長部に不純物が取り込まれやすい。成長部に不純物が混入すると、デバイスとして結晶を用いる場合にデバイスの特性を低下させる欠点がある。よってイオン性溶媒中において結晶成長を行う本発明においては、極性面を主面とするシードは用いずに非極性面または半極性面を用いることが好ましく、これらのシードを用いれば得られる第13族金属窒化物結晶の結晶中に混入する不純物量を一段と低減させることができる。
ウルツ鉱型GaN結晶では、極性面の例として(0001)面および(000−1)面が挙げられる。非極性面の例として(10−10)面および(11−20)面が挙げられる。半極性面の例としては(10−1−1)面、(10−1−2)面、(10−11)面、(10−12)面、(11−22)面、(11−2−2)面が挙げられる。また、本明細書においてM面とは、ウルツ鉱型の結晶における(1−100)面およびそれと等価な面をいい、具体的には(1−100)面、(−1100)面、(01−10)面、(0−110)面、(10−10)面、(−1010)面の総称である。結晶中のLi濃度は、1cm3の結晶中に含まれているLi原子数として表す(単位:cm-3)。
[反応容器]
本発明に用いられる反応容器は、熱的および化学的に安定な酸化物を主成分とする反応容器であることが好ましい。ここでいう主成分とは、反応容器内の溶液または融液に触れる壁面を構成する材質に含まれる酸化物成分において90重量%以上を占める成分を意味し、好ましくは反応容器内の溶液または融液に触れる壁面を構成する材質に含まれる酸化物成分において95重量%以上を占める成分である。反応容器が均一な材質からなる場合は、反応容器全体を構成する材質に含まれる酸化物成分において90重量%以上、好ましくは95重量%以上を占める成分に等しい。また、ここでいう酸化物は、Mg、Ca、Al、Ti、Y、Ce、La等の周期表第2〜3族金属を含む酸化物であることが好ましい。より好ましくは標準生成エネルギーが1000Kにおいて−930kJ/mol以下であり化学的に安定な酸化物、具体的にはY2O3、CaO、La2O3、MgOなどが好ましく、特に好ましくは標準生成エネルギーが1000Kにおいて−1000kJ/mol以下である酸化物、具体的にはY2O3、CaO、La2O3などが好ましい。本発明に用いられる反応容器の具体的な態様については、特開2007−84422号公報の図1〜5、11、12、15などを参照することができる。
本発明に用いられる反応容器は、熱的および化学的に安定な酸化物を主成分とする反応容器であることが好ましい。ここでいう主成分とは、反応容器内の溶液または融液に触れる壁面を構成する材質に含まれる酸化物成分において90重量%以上を占める成分を意味し、好ましくは反応容器内の溶液または融液に触れる壁面を構成する材質に含まれる酸化物成分において95重量%以上を占める成分である。反応容器が均一な材質からなる場合は、反応容器全体を構成する材質に含まれる酸化物成分において90重量%以上、好ましくは95重量%以上を占める成分に等しい。また、ここでいう酸化物は、Mg、Ca、Al、Ti、Y、Ce、La等の周期表第2〜3族金属を含む酸化物であることが好ましい。より好ましくは標準生成エネルギーが1000Kにおいて−930kJ/mol以下であり化学的に安定な酸化物、具体的にはY2O3、CaO、La2O3、MgOなどが好ましく、特に好ましくは標準生成エネルギーが1000Kにおいて−1000kJ/mol以下である酸化物、具体的にはY2O3、CaO、La2O3などが好ましい。本発明に用いられる反応容器の具体的な態様については、特開2007−84422号公報の図1〜5、11、12、15などを参照することができる。
反応容器内において第13族金属窒化物結晶を成長させる際の温度は、通常200〜1000℃であり、好ましくは400〜850℃、さらに好ましくは、600〜800℃である。また、第13族金属窒化物結晶を成長させる際の反応容器内の圧力は、通常10MPa以下であり、好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、より好ましくは0.11MPa以下である。
[半導体デバイスの製造方法]
本発明の製造方法は、半導体デバイスの製造方法における第13族金属窒化物結晶を製造する工程に用いることができる。その他の工程における原料、製造条件および装置は一般的な半導体デバイスの製造方法で用いられる原料、条件および装置をそのまま適用できる。本発明の製造方法によれば、パワーIC、高周波対応可能な半導体デバイス等を製造することができる。
本発明の製造方法は、半導体デバイスの製造方法における第13族金属窒化物結晶を製造する工程に用いることができる。その他の工程における原料、製造条件および装置は一般的な半導体デバイスの製造方法で用いられる原料、条件および装置をそのまま適用できる。本発明の製造方法によれば、パワーIC、高周波対応可能な半導体デバイス等を製造することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(実施例1)
固体のLi3GaN20.52gを外径31mm、内径25mm、高さ200mmのY2O3製反応容器に入れ、次いで溶媒としてNaClとLiClのモル比がNaCl:LiCl=2.2:97.8となるように0.156gのNaClと5.044gのLiClを炭化タングステン製乳鉢でよく粉砕混合し、Y2O3製反応容器に入れた。固体のLi3GaN2は篩を使用して1μm未満の粒径のものを除外し、1μm以上の粒径のものを選んで使用した。次にY2O3製反応容器(5)を石英製反応管(4)内にセットし、石英製反応管のガス導入口(1)およびガス排気口(2)を閉状態にした。これらの操作は全てArボックス中で行った。次に、石英製反応管(4)をArボックスから取り出し、電気炉(3)にセットした。石英製反応管(4)にガス導入管をつなぎ、導入管中を減圧にした後、さらに石英製反応管のガス導入口(1)を開いて石英製反応管内を減圧してからN2で復圧し、石英製反応管内をN2雰囲気とした。その後、石英製反応管のガス排気口(2)を開き、N2を100ccmで流通させた。次に、電気炉の加熱を開始し、Y2O3製反応容器(5)の内部が室温から750℃になるまで1時間で昇温し、塩を溶融させた。前処理として750℃で38時間保持した後、シード保持棒(8)の先端に取り付けたシード(6)をY2O3製反応容器中の溶液(溶融塩)(9)中に投入し結晶成長を開始した。溶液(9)の底には窒化物供給化合物であるLi3GaN2(7)が固体状で存在している。シードには(10−10)面を主面とするGaN基板を用いた。90時間成長させた後、シード(6)を溶液(9)から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管(4)を急冷した。
成長終了後、シードを温水に投入し、処理して付着している塩を溶解させた。シードの重量は成長前に比べて2.1mg増加し、シードの主面にGaN成長部ができていた。このGaN成長部の不純物量をSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)により測定した。その結果、成長部中の不純物Li濃度は5×1016cm-3であった。
固体のLi3GaN20.52gを外径31mm、内径25mm、高さ200mmのY2O3製反応容器に入れ、次いで溶媒としてNaClとLiClのモル比がNaCl:LiCl=2.2:97.8となるように0.156gのNaClと5.044gのLiClを炭化タングステン製乳鉢でよく粉砕混合し、Y2O3製反応容器に入れた。固体のLi3GaN2は篩を使用して1μm未満の粒径のものを除外し、1μm以上の粒径のものを選んで使用した。次にY2O3製反応容器(5)を石英製反応管(4)内にセットし、石英製反応管のガス導入口(1)およびガス排気口(2)を閉状態にした。これらの操作は全てArボックス中で行った。次に、石英製反応管(4)をArボックスから取り出し、電気炉(3)にセットした。石英製反応管(4)にガス導入管をつなぎ、導入管中を減圧にした後、さらに石英製反応管のガス導入口(1)を開いて石英製反応管内を減圧してからN2で復圧し、石英製反応管内をN2雰囲気とした。その後、石英製反応管のガス排気口(2)を開き、N2を100ccmで流通させた。次に、電気炉の加熱を開始し、Y2O3製反応容器(5)の内部が室温から750℃になるまで1時間で昇温し、塩を溶融させた。前処理として750℃で38時間保持した後、シード保持棒(8)の先端に取り付けたシード(6)をY2O3製反応容器中の溶液(溶融塩)(9)中に投入し結晶成長を開始した。溶液(9)の底には窒化物供給化合物であるLi3GaN2(7)が固体状で存在している。シードには(10−10)面を主面とするGaN基板を用いた。90時間成長させた後、シード(6)を溶液(9)から引き上げてから炉の加熱を止め、石英製反応管(4)を急冷した。
成長終了後、シードを温水に投入し、処理して付着している塩を溶解させた。シードの重量は成長前に比べて2.1mg増加し、シードの主面にGaN成長部ができていた。このGaN成長部の不純物量をSIMS(Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)により測定した。その結果、成長部中の不純物Li濃度は5×1016cm-3であった。
(実施例2〜4、比較例1)
シードとして(000−1)面を主面とするGaN基板を用いて、さらに条件を表1に記載される通りに変更した点を除いて実施例1と同じ方法でGaN結晶を成長し、シードの成長重量と成長部のLi濃度を測定した。結果を表1にまとめて示す。
シードとして(000−1)面を主面とするGaN基板を用いて、さらに条件を表1に記載される通りに変更した点を除いて実施例1と同じ方法でGaN結晶を成長し、シードの成長重量と成長部のLi濃度を測定した。結果を表1にまとめて示す。
(実施例5)
シードとして(10−1−1)面を主面とするGaN基板を用いて、さらに条件を表1に記載される通りに変更した点を除いて実施例1と同じ方法でGaN結晶を成長し、シードの成長重量と成長部のLi濃度を測定した。結果を表1に示す。
シードとして(10−1−1)面を主面とするGaN基板を用いて、さらに条件を表1に記載される通りに変更した点を除いて実施例1と同じ方法でGaN結晶を成長し、シードの成長重量と成長部のLi濃度を測定した。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明にしたがってイオン性溶媒中におけるNaClの使用量を0.1〜14モル%にして結晶成長させた場合は、得られたGaN結晶のLi含有量が低いことが確認された(実施例1〜5)。特に、シードの非極性面である(10−10)面上または(10−1−1)面上に結晶を成長させた場合には、得られたGaN結晶のLi含有量が極めて低かった(実施例1、5)。これに対して、イオン性溶媒中におけるNaClの使用量が14モル%を超える場合は、得られたGaN結晶のLi含有量が高いことが確認された(比較例1)。以上より、本発明にしたがってイオン性溶媒中におけるNaClの使用量を0.1〜14モル%にして結晶成長させることにより、Li含有量が低くて良質なGaNを効率よく製造し得ることが確認された。
本発明の製造方法によれば、Li含有量が低い第13族金属窒化物結晶を製造することができる。また、本発明の製造方法は簡便で工業的な応用が図りやすいという利点がある。さらに、本発明によれば比較的安価な容器を用いて、半導体デバイスに応用するのに十分なサイズを有する化合物結晶を製造することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
1 ガス導入口
2 ガス排出口
3 電気炉
4 石英製反応管
5 反応容器
6 シード
7 窒化物供給化合物(原料)
8 シード保持棒
9 溶液
2 ガス排出口
3 電気炉
4 石英製反応管
5 反応容器
6 シード
7 窒化物供給化合物(原料)
8 シード保持棒
9 溶液
Claims (14)
- イオン性溶媒中に窒素元素と第13族金属元素を含む溶液中において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、前記イオン性溶媒としてハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物を合計0.1〜14モル%含有し、かつ、ハロゲン化リチウムを含む溶媒を用いることを特徴とする第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記イオン性溶媒がハロゲン化ナトリウムを0.1〜14モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記シードの非極性面または半極性面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする請求項1または2に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記シードが第13族金属窒化物結晶であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記シードのM面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする請求項4に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- リチウム含有量が1×1018cm-3以下である第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記溶液が、第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する複合金属窒化物を前記イオン性溶媒に溶解させた溶液であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する固体状の複合金属窒化物を前記溶液に接触させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記複合金属窒化物の粒径が1μm以上であることを特徴とする請求項8に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記複合金属窒化物の第13族以外の金属元素が、前記イオン性溶媒に含まれる金属元素と同じであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- 前記複合金属窒化物がLi3GaN2であることを特徴とする請求項10に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
- ハロゲン化リチウムを含むイオン性溶媒中に窒素元素と第13族金属元素を含む溶液中において、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、成長する第13族金属窒化物結晶中に混入するリチウム量を低減する方法であって、前記イオン性溶媒中におけるハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウムおよびハロゲン化セシウムからなる群より選択される1つ以上のハロゲン化物の合計含有量を0.1〜14モル%にすることを特徴とする、第13族金属窒化物結晶中に混入するリチウム量の低減方法。
- 前記シードの非極性面または半極性面上に第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする請求項12に記載の第13族金属窒化物結晶中に混入するリチウム量の低減方法。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法により第13族金属窒化物結晶を製造する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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