JP2010067350A - 有機el表示装置およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の有機EL表示パネルが形成されたマザーパネルから個々の有機EL表示パネルを分離する際、封止効果を損ねず、かつ、端部がスムースである有機EL表示パネルを得る。
【解決手段】マザー素子基板100とマザー封止基板400が接着材シート30によって貼り付けられてマザーパネル200が形成されている。マザーパネル200から個々の有機EL表示パネル300を分離する際、分離線に沿って、レーザ106を照射し、この部分の接着材シート30の接着力を低下させておく。その後、分離線に沿ってスクライビング107を形成する。これによって、封止効果が低下せず、かつ外観がスムースが有機EL表示パネル300を実現することが出来る。
【選択図】図3

Description

本発明は有機EL表示装置に係り、特に水分によるダークスポット等の発生を抑えた、信頼性の高い有機EL表示装置の製造方法に関する。
有機EL表示装置では下部電極と上部電極との間に有機EL層を挟持し、上部電極に一定電圧を印加し、下部電極にデータ信号電圧を印加して有機EL層の発光を制御することによって画像を形成する。下部電極へのデータ信号電圧の供給は薄膜トランジスタ(TFT)を介して行われる。有機EL表示装置には、有機EL層から発光した光を、有機EL層等が形成されたガラス基板方向に取り出すボトムエミッション型と、有機EL層等が形成されたガラス基板と逆の方向に取り出すトップエミッション型とがある。
有機EL表示装置に使用される有機EL材料は水分が存在すると発光特性が劣化し、長時間動作をさせると、水分によって劣化した場所が発光しなくなる。これは表示領域のダークスポットとして現れる。このダークスポットは時間の経過とともに成長し、画像の欠陥となる。なお、画素の周辺で発光しない領域が増加するエッジグロースという現象も水分の影響によって生ずる。
ダークスポット等の発生、あるいは成長を防止するためには、有機EL表示装置内への水分の浸入の防止、あるいは、浸入した水分を除去する必要がある。このために、有機EL層が形成された素子基板を周囲に設置したシールを介して、封止基板によって封止し、外部から有機EL表示装置内への水分の浸入を防止する。封止された内部の空間にはN等の不活性ガスを充填する。一方、有機EL表示装置内に進入した水分を除去するために、有機EL表示装置内に乾燥剤を設置する。これを中空封止型有機EL表示装置という。
中空封止型有機EL表示装置では、素子基板と封止基板のギャップ調整が難しい、封止内部の調整が難しい、封止剤によって封止するときの、封止剤から放出されたガスによる有機EL材料の汚染、スループットが低い等の問題がある。また、有機EL表示パネルが完成後、封止基板を外部から押したような場合、封止基板と素子基板に形成された有機EL層が接触すると、有機EL層が破壊されるという問題もある。
中空封止の問題を対策するものとして、膜厚が決まっている樹脂シートを素子基板と封止基板の間に挟み、この樹脂シートによって有機EL材料を水分から保護する技術が存在する。これを固体封止と称する。固体封止は、樹脂シートをまず、封止基板に接着し、樹脂シートが接着した封止基板と素子基板を樹脂シートを介して接着する。
有機EL表示パネルは個々のパネル毎に製造したのでは効率が悪いので、大きな有機EL表示パネルが複数形成されている大きなマザーパネルを形成し、このマザーパネルから個々の有機EL表示パネルを分離する方法が取られる。これは、液晶表示装置の場合も同様であり、液晶表示パネルが複数形成されている大きなマザーパネルを製作し、このマザーパネルから個々の液晶表示パネルを分離する方法が取られる。
液晶表示装置の場合、マザーパネルにおいて、個々の液晶表示パネルが形成された周囲を封止材で囲む場合がある。マザーパネルの外側を研磨することによって液晶表示パネルを薄くする場合に、研磨液がマザーパネルの内部に染み込まないようにするためである。
この場合、マザーパネルから個々の液晶表示パネルを分離する時、個々の液晶表示パネルが形成されている周囲を囲むシール材を横切って切断する必要がある。この切断は、ダイヤモンド切断ホイールによるスクライビングによって行う。このとき、シール材が形成されている部分とガラスだけの部分とで、ガラスの応力が異なるために、スクライブによる断面が不規則になる。これを防止するために、「特許文献1」には、スクライブが横断する部分のシール材をレーザ照射によって除去する構成が記載されている。
特開2005−165264号公報
固体封止タイプの有機EL表示装置を製造する場合、有機EL表示パネルをマザーパネルから多面取りする場合は、マザー素子基板とマザー封止基板、および、その間に挟持された接着材シートを切断する必要がある。マザー素子基板とマザー封止基板はガラスで形成されているが、接着材シートは樹脂で形成されているので、マザーパネルから個々の有機EL表示パネルを分離する場合に問題を生ずる。
図5は従来の固体封止タイプの有機EL表示パネルにおける問題点を示すものである。図5(a)は、マザー素子基板100が接着材シート30を介してマザー封止基板400によって封止されているマザーパネル200の状態を示す断面図である。図5(a)において、マザー素子基板100には、有機EL素子103が形成されており、マザーパネル200は、個々の有機EL素子300毎に分離される。本明細書で有機EL素子103という場合は、有機EL層、駆動TFT等を含む有機ELパネル300における画像を形成する部分の総称をいう。
図5(b)は、マザーパネル200を個々の有機EL表示パネル300に分離するために、スクライビングを入れていることを示す模式断面図である。図5(b)において、矢印107はスクライビングを示す。矢印107から伸びる点線は、破断線を示す。スクライビングがガラスのみであれば破断線は点線のように、直線的に延びる。しかし、ガラスとガラスの間に樹脂である接着材シート30が存在していると、この部分で、スクライビングによるガラスの破断面が不規則になってしまう。
図5(c)は、このような状態において、マザーパネル200から個々の有機EL表示パネル300を分離した状態を示す有機EL表示パネル300の断面図である。個々の有機EL表示パネル300は、スクライビングによる破断が不規則になっているために、端部がギザギザになっている。
図5(d)は個々の分離した有機EL表示パネル300の断面図である。図5(d)に示すように、端部がギザギザだと、端部においてガラス基板10、40と接着材シート30との接着が弱くなり、接着材シート30とガラス基板10,40との剥離の起点となる。そうすると、水分が有機EL素子103に浸入しやすくなって、有機EL表示装置の寿命を劣化させる。
図5においては、接着材シート30はマザーパネル全面にわたって形成されており、したがって、ガラスのひずみは一定である。この点が「特許文献1」と異なる点である。すなわち、「特許文献1」では、スクライビングをいれる部分は、大部分はガラスのみの部分であるが、シール材が形成されている部分を横断するときに、このシール材の部分におけるガラスの応力が他の部分と異なるために、ガラス基板に不規則なクラックが走る点が問題である。
これに対して、本発明が対象とする固体封止の有機EL表示パネルを製造するマザーパネル200においては、ガラスの応力は一定であるが、スクライビングでは、接着材シート30が破断しないために、ガラス端面が不規則な状態をなる点が問題となる。したがって、「特許文献1」と本発明とでは、対象とする現象が異なる。
したがって、本発明の課題は、固体封止の有機EL表示装置において、マザーパネル200から個々の有機EL表示パネル300を分離する際、個々の有機EL表示パネル300の端面における接着材シート30の破断を容易とすることによって、ガラス基板の端面の形状を規則的に保ち、端部が不規則な形状であることに起因する信頼性の低下を防止することである。
本発明は上記課題を解決するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
(1)有機EL素子が形成された素子基板と封止基板が接着材シートを介して接着した有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置において、前記有機EL表示パネルの端面においては、前記接着材シートは、前記接着材シートの他の部分と比較して変質していることを特徴とする有機EL表示装置。
(2)前記接着材シートが変質している部分の深さは、前記素子基板または前記封止基板の端部から0.05mm以上であることを特徴とする(1)に記載の有機EL表示装置。
(3)前記接着材シートが変質している部分は、前記接着材シートの他の部分に比較して炭化していることを特徴とする(1)に記載の有機EL表示装置。
(4)有機EL素子が形成された素子基板と封止基板が前記有機EL素子を覆う接着材を介して接着した有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置において、前記有機EL表示パネルの端面においては、前記接着材は、前記接着材の他の部分と比較して変質していることを特徴とする有機EL表示装置。
(5)前記接着材が変質している部分の深さは、前記素子基板または前記封止基板の端部から0.05mm以上であることを特徴とする(1)に記載の有機EL表示装置。
(6)前記接着材が変質している部分は、前記接着材シートの他の部分に比較して炭化していることを特徴とする(4)に記載の有機EL表示装置。
(7)前記接着材は印刷によって形成されていることを特徴とする(4)に記載の有機EL表示装置。
(8)複数の素子基板が形成されたマザー素子基板とマザー基板封止材が接着材シートを介して接着しているマザーパネルを、個々の液晶表示パネルに分離することによって形成される有機EL表示装置の製造方法において、前記マザーパネルを個々の液晶表示パネルに分離する分離線にレーザを照射することによって、前記分離線付近の前記接着材シートの接着力を低下させ、その後、前記分離線に沿ってスクライビング入れることによって個々の有機EL表示パネルに分離することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
(9)複数の素子基板が形成されたマザー素子基板とマザー基板封止材が前記複数の素子基板の全面を覆う接着材を介して接着しているマザーパネルを、個々の液晶表示パネルに分離することによって形成される有機EL表示装置の製造方法において、前記マザーパネルを個々の液晶表示パネルに分離する分離線にレーザを照射することによって、前記分離線付近の前記接着材の接着力を低下させ、その後、前記分離線に沿ってスクライビング入れることによって個々の有機EL表示パネルに分離することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
複数の素子基板が形成されたマザー素子基板とマザー封止基板を封止材として機能する接着材シートによって接着したマザーパネルを個々の有機EL表示パネルに分離する際、分離線に沿って、レーザ照射することによって分離線付近の接着材シートの接着力を小さくするので、分離線に沿ってスクライビングをいれた場合に、切断部分のガラス形状が規則的になり、ガラス基板と接着材シートが端面において剥離する起点となることを防止することが出来る。また、有機EL表示パネルの外観を改善することが出来る。
接着材シートの替わりに、マザー封止パネルの状態において、印刷によって表示領域を覆う接着材を形成する場合も同様に、分離線に沿ってレーザを照射することによって、液晶表示パネルの封止効果を改善するとともに、液晶表示パネルの外観を改善することが出来る。
本発明の具体的な実施例を説明する前に、本発明が適用される有機EL表示装置の構成について説明する。
図1は本発明を適用したトップエミッション型の有機EL表示装置の表示領域の断面図である。本実施例はトップエミッション型の有機EL表示装置を例にとって説明するが、ボトムエミッション型の有機EL表示装置についても同様に本発明を適用することが出来る。トップエミッション型有機EL表示装置は、有機EL層の上にアノードが存在するトップアノード型と、有機EL層の上にカソードが存在するトップカソード型とが存在する。図1はトップアノード型の場合であるが、トップカソードの場合も本発明を同様に適用することが出来る。
図1において、素子基板10の上にはSiNからなる第1下地膜11と、SiOからなる第2下地膜12が形成されている。ガラス基板からの不純物が半導体層13を汚染することを防止するためである。第2下地膜12の上には半導体層13が形成される。半導体層13はCVDによってa−Si膜が形成されたあと、レーザ照射によってpoly−Si膜に変換する。
半導体層13を覆って、SiOからなるゲート絶縁膜14が形成される。ゲート絶縁膜14を挟んで、半導体層13と対向する部分にゲート電極15が形成される。ゲート電極15をマスクにして、半導体層13にリンあるいはボロン等の不純物をイオンインプランテーションによって打ち込み、導電性を付与して、半導体層13にソース部あるいはドレイン部を形成する。
ゲート電極15を覆って層間絶縁膜16がSiOによって形成される。ゲート配線とドレイン配線17を絶縁するためである。層間絶縁膜16の上にはドレイン配線17が形成される。ドレイン配線17は層間絶縁膜16およびゲート絶縁膜14にスルーホールを介して半導体層13のドレインと接続する。
その後、以上のようにして製作された薄膜トランジスタ(TFT)を保護するために、SiNからなる無機パッシベーション膜18が被着される。無機パッシベーション膜18の上には、有機パッシベーション膜19が形成される。有機パッシベーション膜19は無機パッシベーション膜18とともに、TFTをより完全に保護する役割を有するとともに、有機EL層22が形成される面を平坦にする役割を有する。したがって、有機パッシベーション膜19は1〜4μmと、厚く形成される。
有機パッシベーション膜19の上には反射電極24がAlまたはAl合金によって形成される。AlまたはAl合金は反射率が高いので、反射電極24として好適である。反射電極24は有機パッシベーション膜19および無機パッシベーション膜18に形成されたスルーホールを介してドレイン配線171と接続する。
本実施例はトップアノード型の有機EL表示装置なので、有機EL層22の下部電極21はカソードとなる。したがって、反射電極24として使用されるAlあるいはAl合金が有機EL層22の下部電極21を兼用することが出来る。AlあるいはAl合金は仕事関数が比較的小さいので、カソードとして機能することが出来るからである。
下部電極21の上には有機EL層22が形成される。有機EL層22は、下層から電子輸送層、発光層、ホール輸送層である。なお、電子輸送層と下部電極21との間に電子注入層を設ける場合もある。また、ホール輸送層と上部電極23の間にホール注入層を設ける場合もある。有機EL層22の上にはアノードとなる上部電極23が形成される。本実施例では上部電極23としてはIZOを用いている。IZOはマスクを用いず、表示領域全体に蒸着される。IZOの厚さは光の透過率を維持するために、30nm程度に形成される。IZOの代わりにITOを用いることも出来る。
電子輸送層としては電子輸送性を示し、アルカリ金属と共蒸着することにより電荷移動錯体化しやすいものであれば特に限定は無く、例えばトリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4-メチル-8-キノリノラート)アルミニウム、ビス(2-メチル−8−キノリノラート)−4−フェニルフェノラート−アルミニウム、ビス[2-[2-ヒドロキシフェニル]ベンゾオキサゾラート]亜鉛などの金属錯体や2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン等を用いることができる。
発光層材料としては電子、ホールの輸送能力を有するホスト材料に、それらの再結合により蛍光もしくはりん光を発するドーパントを添加したもので共蒸着により発光層として形成できるものであれば特に限定は無く、例えば、ホストとしてはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]のような錯体、アントラセン誘導体、カルバゾール誘導体、等であっても良い。
また、ドーパントとしてはホスト中で電子とホールを捉えて再結合させ発光するものであって、例えば赤ではピラン誘導体、緑ではクマリン誘導体、青ではアントラセン誘導体などの蛍光を発光する物質やもしくはイリジウム錯体、ピリジナート誘導体などりん光を発する物質であっても良い。
ホール輸送層は、例えば、テトラアリールベンジシン化合物(トリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、銅フタロシアニン誘導体等を用いることができる。
なお、有機EL層22が端部において段切れによって破壊することを防止するために、画素と画素の間にバンク20が形成される。バンク20は有機材料で形成する場合もあるし、SiNのような無機材料で形成する場合もある。有機材料を使用する場合は、一般にはアクリル樹脂によって形成される。
バンク20上の上部電極23の上には導通を補助するために補助電極が用いられる場合もある。上部電極23の抵抗が大きい場合は輝度むらが生ずる場合があるからである。本実施例では補助電極を使用していないが、補助電極を使用した有機EL表示装置においても、本発明を適用できることは言うまでも無い。
上部電極の上には接着材シート30が形成されている。この接着材シート30は熱硬化性のエポキシ樹脂で、素子基板10、具体的には、上部電極とガラスで形成された封止基板40を接着している。接着材シート30の厚さは10μm〜20μmである。接着材シート30には封止基板40が接着されており、封止基板40によって有機EL層が水分から保護されている。
以下に、実施例を用いて、本発明の内容を詳細に説明する。
図2は本発明の有機EL表示装置を構成する有機EL表示パネル300の断面図である。図2において、素子基板10には画像を表示するための有機EL素子が形成されている。有機EL素子は、図1に示す有機EL層、TFT等を含む画像を形成する要素を含む総称である。
有機EL素子を覆って、封止の役割を兼ねる接着材シート30が設置されている。この接着材シート30によってガラスで形成される封止基板40が素子基板10に接着している。接着材シート30としては、熱硬化性のエポキシ樹脂が使用される。接着材シート30の厚さは10μm〜20μmである。なお、接着材シート30としてはエポキシ樹脂に限らずアクリル樹脂あるいはシリコン樹脂でも良い。
接着材シート30は非透湿のものが好ましいが、必ずしも、水分に対するバリアが強力なものでなくとも良い。水分に対するバリアは主としてガラスで形成された封止基板40が担うからである。すなわち、図2のような構成であれば、上方からの水分の浸入はガラスである封止基板40によってブロックされるが、側部からの水分が有機EL層に到達するには長い距離を通過する必要があるということである。
図2はいわゆる固体封止であり、封止基板40と素子基板10の間に空間が形成されていない。したがって、中空封止の場合のように、封止基板40が押された場合に素子基板10に接触して黒点が生ずるというような問題は生じない。また、封止のときの、封止ガスの内部圧力による種々の問題点も生じない。
本発明は図2のような有機EL表示パネル300をマザーパネル200に複数形成する。そして、マザー素子基板100とマザー封止基板400を接着するための大判の接着材シート30をマザー封止基板に貼り付けた後、マザー封止基板400とマザー素子基板100とを接着する。本明細書では、マザーパネルに存在する大判のいわばマザー接着材シートも、個々の有機EL表示パネルに存在する接着材シートも、いずれも、接着材シート30と呼ぶ。
このようにして形成されたマザーパネル200から個々の有機EL表示パネル300をスクライビングによって分離する。接着材シート30がマザー素子基板100とマザー封止基板400の間に存在していると、マザーパネル200からここの有機EL表示パネル300を分離する場合に問題が生ずる。本発明は、個々の有機EL表示パネル300との間のスクライビングの部分にレーザを照射しておいて、その部分の接着材シート30を変質さて接着力を無くしておく、あるいは、小さくしておくことによって、ガラスの破断が接着材シート30の影響を受けないようにしている。
図2において、接着材シート30の端面は内側に凹部31が形成されている。これは、後で説明するように、ガラスのスクライビングの部分にレーザを照射することによって、この部分の接着材シート30を変質させてガラスから容易に剥離するようにしているためである。図2においては、接着材シート30に対して、レーザを照射して変質した部分35が脱落した状態を示している。図2において、レーザ照射によって変質した部分が脱落して形成された凹部31の範囲dは0.05mm以上になる。レーザを照射されて変質した接着材シート30の部分はガラス基板から容易に剥離するので、この部分を起点にガラスと変質していない接着材シート30との剥離が進行することは無い。
図3は本発明の製造方法を示す工程図である。図3(a1)は、マザー素子基板100を示す。図3(a2)はマザー封止基板400を示す。図3(b1)は、マザー素子基板100に有機EL素子103を形成した状態を示す。有機EL素子103は、マトリクス状に形成された有機EL層を含む画素、TFTを含む画像形成部の総称である。図3(a2)において、有機EL素子103はマザー素子基板に複数形成されている。
図3(b2)はマザー封止基板400に接着材シート30が接着された状態を示す。接着材シート30は大判のエポキシシートであり、熱硬化、あるいは紫外線硬化の性質を有している。図3(b2)は接着材シート30がマザー封止基板400に仮固定された状態である。接着材シート30とマザー封止基板400との接着は気泡を巻き込まないようにするために、通常は減圧雰囲気下において行われる。
図3(c)は有機EL素子103が形成されたマザー素子基板100と接着材シート30が接着したマザー封止基板400を接着し、マザーパネル200を形成した状態である。この接着は一般には、気泡を巻き込まないように、減圧雰囲気下で行われる。接着は接着材シート30に紫外線を照射することによって行う。図3(c)における矢印105は紫外線を示す。この段階の接着は仮接着である。強い紫外線を照射すると有機EL層が破壊されるので、仮接着程度の紫外線の照射にとどめておく。その後、大気圧に戻してから、マザーパネル200をベーク炉内で加熱して接着材シート30の本硬化を行う。
このようにして形成されたマザーパネル200に対して、図3(e)に示すように、スクライビング線、すなわち、分離線に沿ってレーザを照射する。図3(e)の矢印106はレーザ光線を示す。接着材シート30において、レーザを照射された部分は、熱によって変質し、接着力を失う。レーザの強さがあまり強いと、その部分の接着材シート30が気化してしまい、気泡の圧力によってガラス基板と接着材シート30との接着に悪影響を及ぼすので、レーザの強度は、接着材シート30が気化しない程度にとどめておく。レーザとしては、緑、あるいは、赤のYAGレーザが用いられる。
レーザが照射された部分は、熱によって接着材シート30が変質し、接着材シート30は接着力を失う。変質した部分35は、黒く炭化して見える。変質した部分35は、図3(e)においては、楕円形で示しているが、これは模式図であって、実際は不規則な形状であることが多い。
その後、図3(f)に示すように、ダイヤモンド切断ホイールを用いて、マザーパネル200に対し、スクライビング線に沿ってスクライビングを入れる。その後、ガラス基板に衝撃を加えると、図3(f)に示すように、点線に沿って、ガラスに規則的なクラックが走り、個々の有機EL表示パネル300がマザーパネル200から分離される。
図3(g)はこのようにして、個々の有機EL表示パネル300が分離された状態の断面図である。個々の有機EL表示パネル300を分離する際、スクライビング線に沿ってあらかじめレーザを照射して接着材シート30の接着力を低下あるいは無くしているので、ガラスのクラックが接着材シート30に影響されることは無い。また、レーザが照射された部分の接着材シートは変質して脆くなっているので、容易に破断する。したがって、ガラス面は、ガラス基板とガラス基板の間が中空の場合と同様なきれいな面となる。一方、接着材シート30のスクライブ線付近はレーザによって変質しているので、レーザが当たった部分は変色している。図3(g)において、レーザが照射されて変質した部分35の深さdは0.05mm以上である。
レーザが照射された部分は、他の接着材シート30とは変質しているので、この部分は脱離する場合がある。図3(h)は分離された後の個々の液晶表示パネルの断面図である。図3(h)において、レーザが照射されて、接着材シートが変質した部分が脱離し、接着材シート30の端部は内側に凹となっている状態を示している。図3(h)における凹部31の深さdは0.05mm以上である。しかし、レーザが照射されていない部分は素子基板10、あるいは封止基板40との接着は正常となっているので、この部分が接着材シート30と素子基板10あるいは封止基板40の剥離の起点となることはない。図3(h)に示すように、本発明によれば、素子基板10あるいは封止基板40の端面が規則的になるので、液晶表示パネルの外観が改善できるという効果も有る。
図4は、このようにして形成された個々の有機EL表示パネル300の端部の詳細断面図である。図4(a)は、有機EL素子103が形成された素子基板10と封止基板40が接着材シート30を介して接着している状態の、有機EL表示パネル300の端部の断面図を示す。図4(a)において、接着材シート30の端部は楕円状に内側に凹部31が形成されている。この楕円の部分はレーザ照射によって接着材シート30が変質していることを示す。但し、このように、楕円状に変質するようなケースは多くはない。
接着材シート30が変質した部分35はどの部分にレーザの焦点を当てるかによっても異なる。図4(b)は接着材シート30の膜厚方向のほぼ中央部にレーザの焦点を当てた場合の断面図である。接着材シート30の変質した部分35は、接着材シート30の厚さ方向全体に形成されている。
図4(c)は接着材シート30の膜厚方向の封止基板40側にレーザの焦点を当てた場合の断面図である。この場合は、接着材シート30の変質した部分35は、封止基板40側に多く形成されている。図4(d)は接着材シート30の膜厚方向の素子基板10側にレーザの焦点を当てた場合の断面図である。この場合は、接着材シート30の変質した部分35は、素子基板10側に多く形成されている。図4(a)〜図4(d)において、レーザ照射によって変質した部分35の深さdは0.05mm以上である。
このように、レーザの照射条件によって接着材シート30端部の変質した状態は異なってくる。通常の接着材シート30は透明であるのに対し、レーザ照射によって変質した部分35は多くの場合は炭化しており、目視可能である。また、接着材シート30の変質しない部分は、正常の接着力を有しているので、有機EL素子103に対する防湿効果にはほとんど影響が無い。
実施例1では素子基板10と封止基板40とは接着材シート30を用いて接着し、同時に接着材シート30に防湿効果を持たせている。本実施例は接着材として、接着材シート30を用いるのではなく、接着材を塗布によってマザー封止基板400に直接印刷する。塗布膜は精細度を必要としないので、例えば、スクリーン印刷で形成することが出来る。
印刷による接着材の材料は例えば、エポキシ樹脂、あるいは、アクリル樹脂を用いることが出来る。印刷の膜厚は例えば、10μm〜20μmである。印刷の膜厚は素子基板10と封止基板40の十分な接着が確保できれば、もっと薄くても良い。
このようにして、マザー封止基板400に接着材を印刷で形成したあと、80℃程度でプリベークを行い、接着材38を半硬化させる。半硬化された接着材38はある程度の粘着力を有するようになる。その後、マザー素子基板100とマザー封止基板400を半硬化した接着材によって張り合わせ、マザーパネル200を製作する。その後100℃、2時間あるいは、120℃、30分で最終ベーキングを行う。最終ベーキング後は、素子基板10と封止基板40は強固に接着し、かつ、接着材38の耐湿効果も生ずる。
エポキシ樹脂、あるいは、アクリル樹脂等の印刷によって形成された接着剤も機械的な強度を有するので、個々の有機EL表示パネル300を分離する場合は、スクライビング部において、ガラス端面が不規則になり、また、この部分を起点に接着剤とガラス基板の剥離が生ずる場合がある。
印刷によって接着材を形成した場合も、実施例1で説明したように、スクライビング線に沿ってレーザを照射し、この部分の接着材の接着力を無くす、あるいは弱めることによって、マザーパネル200から個々の有機EL表示パネル300を分離するときのガラスの端部が不規則になることを防止することが出来る。また、接着材にレーザが照射された部分は変質して脆く成っており、容易に破断する。
なお、本実施例におけるプロセスは、接着材シート30の代わりに印刷による接着材を形成した点を除いては、実施例1の図3と同様である。印刷によって形成された接着材も通常は透明なので、有機EL表示パネルの端部において、
レーザ照射によって接着材シートが変質し、炭化した部分は目視で判別することが出来る。また、印刷による接着材の場合も、炭化した部分の深さは、有機EL表示パネル300の端部から0.05mm以上である。この場合も、レーザが照射されない部分の接着材は通常の接着力を有しているので、レーザ照射したことによる有機EL表示パネル300の封止効果には影響が無い。
上記接着材は、スクリーン印刷で形成されるとして説明したが、接着材は印刷に限らず、インクジェット法、ロッドコーティング法等によっても形成することが出来る。
有機EL表示パネルの表示領域の断面図である。 本発明の有機EL表示装置の断面図である。 本発明の有機EL表示装置の製造工程である。 本発明の有機EL表示装置の端部の断面図である。 従来の固体封止の有機EL表示装置の断面図である。
符号の説明
10…素子基板、 11…第1下地膜、 12…第2下地膜、 13…半導体層、 14…ゲート絶縁膜、 15…ゲート電極、 16…層間絶縁膜、 17…SD電極、 18…無機パッシベーション膜、 19…有機パッシベーション膜、 20…バンク、 21…下部電極、 22…有機EL層、 23…上部電極、 30…接着材シート、 31…凹部、 35…接着材変質部、 40…封止基板、 100…マザー素子基板、 103…有機EL素子、 105…紫外線、 106…レーザ、 107…スクライビング、 200…マザーパネル、 300…有機EL表示パネル、 400…マザー封止基板。

Claims (9)

  1. 有機EL素子が形成された素子基板と封止基板が接着材シートを介して接着した有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置において、
    前記有機EL表示パネルの端面においては、前記接着材シートは、前記接着材シートの他の部分と比較して変質していることを特徴とする有機EL表示装置。
  2. 前記接着材シートが変質している部分の深さは、前記素子基板または前記封止基板の端部から0.05mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
  3. 前記接着材シートが変質している部分は、前記接着材シートの他の部分に比較して炭化していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
  4. 有機EL素子が形成された素子基板と封止基板が前記有機EL素子を覆う接着材を介して接着した有機EL表示パネルを有する有機EL表示装置において、
    前記有機EL表示パネルの端面においては、前記接着材は、前記接着材の他の部分と比較して変質していることを特徴とする有機EL表示装置。
  5. 前記接着材が変質している部分の深さは、前記素子基板または前記封止基板の端部から0.05mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
  6. 前記接着材が変質している部分は、前記接着材シートの他の部分に比較して炭化していることを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示装置。
  7. 前記接着材は印刷によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の有機EL表示装置。
  8. 複数の素子基板が形成されたマザー素子基板とマザー基板封止材が接着材シートを介して接着しているマザーパネルを、個々の液晶表示パネルに分離することによって形成される有機EL表示装置の製造方法において、
    前記マザーパネルを個々の液晶表示パネルに分離する分離線にレーザを照射することによって、前記分離線付近の前記接着材シートの接着力を低下させ、その後、前記分離線に沿ってスクライビング入れることによって個々の有機EL表示パネルに分離することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
  9. 複数の素子基板が形成されたマザー素子基板とマザー基板封止材が前記複数の素子基板の全面を覆う接着材を介して接着しているマザーパネルを、個々の液晶表示パネルに分離することによって形成される有機EL表示装置の製造方法において、
    前記マザーパネルを個々の液晶表示パネルに分離する分離線にレーザを照射することによって、前記分離線付近の前記接着材の接着力を低下させ、その後、前記分離線に沿ってスクライビング入れることによって個々の有機EL表示パネルに分離することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
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