JP2010065786A - ディスクブレーキ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ディスクブレーキ装置において、ピストンを適正に戻してパッドの引きずり現象の発生を抑制可能とする。
【解決手段】キャリパ14のシリンダ部21にピストン15を移動自在に支持し、シリンダ部21とピストン15との間に作動液を供給してピストン15を前進可能とする液圧室29を設け、このピストン15が前進して摩擦パッド12,13をディスクロータ11に押付可能とすると共に加圧時に作動液量を吸収し、除圧時にピストン15を初期位置に引き戻すシール機構(ピストン戻し機構)28を設け、液圧室29の加圧時に作動液の受圧面積をシール機構28が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】キャリパ14のシリンダ部21にピストン15を移動自在に支持し、シリンダ部21とピストン15との間に作動液を供給してピストン15を前進可能とする液圧室29を設け、このピストン15が前進して摩擦パッド12,13をディスクロータ11に押付可能とすると共に加圧時に作動液量を吸収し、除圧時にピストン15を初期位置に引き戻すシール機構(ピストン戻し機構)28を設け、液圧室29の加圧時に作動液の受圧面積をシール機構28が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、車輪と一体に回転するディスクロータを摩擦パッドにより挟持することで、その摩擦抵抗によりディスクロータを介して車輪に制動力を作用させるディスクブレーキ装置に関する。
一般的なキャリパ浮動型のディスクブレーキ装置は、キャリパが、マウンティングブラケットに、車輪の回転軸線方向に移動可能に支持されている。この場合、キャリパに一対のスライドピンが設けられる一方、マウンティングブラケットに一対のスライドピンが嵌合される一対の嵌合孔が設けられ、スライドピンが嵌合孔に摺動自在に嵌合することで、キャリパの移動が許容される。このキャリパは、ディスクロータを跨ぐようなU字形状をなし、一方側にインナパッド(摩擦パッド)が移動自在に支持され、他方側にアウタパッド(摩擦パッド)が固定されている。また、ディスクロータは、一方側にインナパッドをディスクロータに押圧するピストンを有するアクチュエータが設けられている。
従って、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、その踏力によりアクチュエータが作動し、ピストンが前進してインナパッドをディスクロータに押圧すると共に、ピストンが前進する反力によりキャリパが移動してアウタパッドをディスクロータに押圧する。そのため、一対のパッドによりディスクロータが挟持されることで、ディスクロータを介して車輪に制動力を作用させることができる。
ところで、上述したディスクブレーキ装置にて、キャリパのシリンダ孔には、ピストンが移動自在に支持されると共に、ピストンシールにより液密に保持されており、制動時に、シリンダ孔の液圧室へ作動液が供給されると、ピストンがピストンシールを変形させながら前進し、液圧室からの液圧解除時には、変形したピストンシールの復元力によりピストンが液圧室側へ後退するように構成されている。ところが、乗員によりブレーキペダル踏力が過大であるとき、ピストンがディスクロータ側へ所定以上に押し込まれ、ピストンとピストンシールとの間で相対移動が発生し、ピストンシールの復元力によりピストンを十分に後退させることができず、パッドがディスクロータに接触し続ける、所謂、引きずりが発生してしまう。すると、パッドが回転するディスクロータに弾かれてピストンを押し返す、所謂、ノックバックを生じることがある。
このような問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献1、2に記載されたものがある。
特許文献1に記載されたディスクブレーキ装置では、シリンダの内孔に環状のリング取付溝を形成すると共に、このリング取付溝のパッド側の開口縁にパッド側に面取り部を形成し、また、ピストンとシリンダ間をシールすると共に制動後の除圧時にピストンを戻すリトラクションリングをリング取付溝に組付けて構成し、リング取付溝のパッド側端壁に向けて開口する環状凹所をシリンダに形成すると共に、この環状凹所内に圧縮性材料からなりリトラクションリングの環状凹所内への進入変形を許容する変形許容リングを組付けている。従って、液圧の上昇に応じて増大するパッド及びシリンダの撓み量がリトラクションリングによるピストンのリトラクト量より大きくなる液圧を高い値に設定できるので、従来に比して高い液圧となる使用領域まで引きずりを低減することができる。
また、特許文献2に記載されたディスクブレーキキャリパでは、キャリパ本体に形成された大径孔部に、リテーナによりピストンの外周面に摩擦係合するピストンシールを設けると共に、リテーナをピストンの後退方向に付勢する皿ばねを設けている。従って、ブレーキ液圧が低い場合には、皿ばねの予荷重によりリテーナの前進が阻止され、ピストンの前進によりピストンシールが面取部内へ弾性変形させられ、ブレーキ解除時、シールの復元力によりピストンがリトラクトされる一方、ブレーキパッド摩耗時には、シールが許容限度まで弾性変形させられた後にピストンのすべりによる前進が許容され、クリアランスを補正することができる。また、ブレーキ液圧が高い場合には、リテーナ及びシールが皿ばねの予荷重に打ち勝って前進するため、ピストンとの間にすべりが生じず、ピストンを確実にリトラクトし、パッドの引きずり現象の発生を防止することができる。
ところで、パッドの引きずり現象の発生を防止する一方で、ブレーキの作動時に、初期の作動液の増量に応じた制動感の悪化がある。即ち、ピストンが前進するとき、パットとディスクロータとの隙間による作動液の消費とは別に、シールの圧縮による作動液の消費があり、このシールの圧縮による作動液の消費が大きいと、制動感が悪化するものと考えられる。
上述した特許文献1のディスクブレーキ装置にあっては、加圧時には、作動液がピストン及びリトラクションリングの全体に対して作用することから、受圧面積が大きくなってリトラクションリングの圧縮により作動液の消費が大きくなってしまう。また、特許文献2のディスクブレーキキャリパにあっては、加圧時に、作動液がピストンとピストンシールとリテーナに対して作用することから、受圧面積が大きくなってピストンシールの圧縮とリテーナの厚さにより作動液の消費が大きくなってしまう。
本発明は、このような問題を解決するものであって、ピストンを適正に戻してパッドの引きずり現象の発生を抑制可能とすると共に作動液の消費量の増加による制動フィーリングの向上を図るディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決してその目的を達成するために、本発明のディスクブレーキ装置は、回転軸心回りに回転するディスクロータと、該ディスクロータの摩擦面に対向する摩擦パッドと、該摩擦パッドを前記ディスクロータの摩擦面に接近離間可能に支持するシリンダと、該シリンダに支持されて前進することで前記摩擦パッドを前記ディスクロータに押付可能なピストンと、前記シリンダと前記ピストンとの間に区画されて作動液を供給して前記ピストンを前進可能な液圧室と、前記シリンダと前記ピストンとの間に設けられて前記液圧室の加圧時に作動液量を吸収して除圧時に前記ピストンを戻すピストン戻し機構と、を備え、前記液圧室の加圧時に、作動液の受圧面積は、前記ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定される、ことを特徴とするものである。
本発明によるディスクブレーキ装置では、前記シリンダと前記ピストンの間に該ピストンと同方向に前進可能な可動子が設けられ、前記ピストンと前記可動子との間に該可動子を前記ピストンに追従させる追従部材が設けられることを特徴としている。
本発明によるディスクブレーキ装置では、前記追従部材は、前記可動子または前記ピストンに設けられる弾性部材を有し、前記可動子と前記ピストンに対して所定の押圧力が設定されることを特徴としている。
本発明によるディスクブレーキ装置では、前記可動子は、後端部に小径となる段付部が設けられ、該段付部に前記液圧室に対する受圧面が形成されることを特徴としている。
本発明によるディスクブレーキ装置では、前記段付部は、前記ピストンにおける前記液圧室に対する受圧面に対して該液圧室側に設けられることを特徴としている。
本発明によるディスクブレーキ装置では、前記ピストン戻し機構は、前記シリンダと前記可動子との間に設けられる弾性部材を有することを特徴としている。
本発明によるディスクブレーキ装置では、前記可動子と前記ピストンとの間に前記液圧室をシールする第1シールが設けられると共に、前記シリンダと前記可動子との間に前記液圧室をシールする第2シールが設けられることを特徴としている。
本発明のディスクブレーキ装置によれば、摩擦パッドをディスクロータの摩擦面に接近離間可能に支持するシリンダと、前進することで摩擦パッドをディスクロータに押付可能なピストンと、シリンダとピストンとの間に区画されて作動液を供給してピストンを前進可能な液圧室と、液圧室の加圧時に作動液量を吸収して除圧時にピストンを戻すピストン戻し機構とを設け、液圧室の加圧時に作動液の受圧面積をピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定している。従って、液圧室が加圧されてピストンが前進するとき、作動液の受圧面積がピストン戻し機構により作動液が吸収可能な吸収面積より小さいため、作動液の消費量が低減されて制動フィーリングを向上することができると共に、ピストン戻し機構によりピストンの戻り量を適正に確保してパッドの引きずり現象の発生を抑制することができる。
以下に、本発明に係るディスクブレーキ装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは、実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例1に係るディスクブレーキ装置におけるピストン戻し機構を表す断面図、図2は、実施例1のピストン戻し機構の作動を表す断面図、図3は、ピストン液圧に対するピストンストローク量を表すグラフ、図4は、実施例1のディスクブレーキ装置を表す断面図である。
実施例1のディスクブレーキ装置は、図示しないが、車両に回転可能に支持された車輪に制動力を付与する装置であって、この車輪と一体的に回転自在に設けられたディスクロータと、車体側に車輪と相対回転不能に設けられてディスクロータを挟持することで、摩擦抵抗力を付与する一対の摩擦パッドと、この摩擦パッドをディスクロータに押し付けるピストンを有するアクチュエータとを有している。
即ち、このディスクブレーキ装置は、図4に示すように、車輪(図示略)と一体的となって車軸の回転軸心回りに回転するディスクロータ11と、このディスクロータ11の両側の摩擦面に対向する一対の摩擦パッド12,13と、この一対の摩擦パッド12,13をディスクロータ11の摩擦面に接近離間可能に支持するキャリパ14と、一対の摩擦パッド12,13をピストン15によりディスクロータ11に押付可能なシリンダ機構(アクチュエータ)16とから構成されている。
具体的に説明すると、キャリパ14は、ディスクロータ11を跨いだU字形状をなし、ピストン15を前後に移動可能とするシリンダ機構16が搭載されている。このキャリパ14は、シリンダ機構16が設けられるシリンダ部21と、このシリンダ部21とディスクロータ11を挟んで対向する位置に配置されるリアクション部22と、シリンダ部21とリアクション部22とを連結する連結部23とから構成されている。
このキャリパ14は、車体側に固定された図示しないマウンティングブラケットによりディスクロータ11の回転軸線方向、つまり、回転方向に直交する方向に沿って移動自在に支持されている。
ディスクロータ11の両側の摩擦面に対向して配置される一対の摩擦パッド12,13は、キャリパ14におけるシリンダ部21側に配置されるインナパッド12と、リアクション部22側に配置されるアウタパッド13である。このインナパッド12及びアウタパッド13は、摩擦材24,25の基端部が裏金26,27に固定されて構成されている。そして、このインナパッド12及びアウタパッド13は、マウンティングブラケットによりディスクロータ11の回転軸線方向に沿って移動自在に支持されている。
また、シリンダ機構16は、シリンダ部21にピストン15が移動自在に支持されると共に、シリンダ部21の内面にピストン15の外面に対してシール可能なシール機構28が装着されることで構成されている。そして、シリンダ部21とピストン15とシール機構28により液圧室(液圧室)29が区画され、ピストン15の先端部がインナパッド12の裏金26に対向している。
従って、シリンダ機構16の液圧室29に作動液を供給して加圧すると、ピストン15が矢印A方向に前進し、このピストン15の前面がインナパッド12の裏金26を押圧し、このインナパッド12の前面をディスクロータ11の摩擦面に接近させることができる。また、このとき、キャリパ14は、ピストン15が前進するその移動反力によりこのピストン15とは逆方向、つまり、矢印B方向に前進し、アウタパッド13の押圧面をディスクロータ11の摩擦面に接近させることができる。
そして、インナパッド12及びアウタパッド13がディスクロータ11の各摩擦面に押し付けられると、このインナパッド12及びアウタパッド13と、回転するディスクロータ11との間で摩擦抵抗力が発生し、このディスクロータ11に制動力を付与することができる。
この場合、シリンダ部21に装着されたシール機構28における後述するシール部材がピストン15に密着しており、ピストン15の加圧時に、このピストン15がシール部材に追従して前進する。そして、ピストン15の除圧時には、ピストン15が所定の位置に戻される。そして、ピストン15が後退することで、インナパッド12がディスクロータ11から離間し、キャリパ14はピストン15が後退するその移動反力により後退し、アウタパッド13がディスクロータ11から離間する。
実施例1のディスクブレーキ装置にて、上述したように、シール機構28は、液圧室29の加圧時に作動液量を吸収する一方、除圧時にピストン15を引き戻すピストン戻し機構として機能する。そして、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積は、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定されている。
実施例1のシール機構28は、後述するが、シリンダ部21とピストン15の間に介装されてピストン15と同方向に前進可能な可動子と、ピストン15と可動子との間に弾装されて可動子をピストン15に追従させる追従部材と、ピストン15の加圧により可動子を介して圧縮変形可能な弾性部材とを有している。この場合、追従部材がシール部材として機能する。
即ち、図1及び図4に示すように、キャリパ14のシリンダ部(シリンダ)21は、支持孔14aが形成されており、この支持孔14aには、ピストン15の外周面15aが所定空間をもって移動自在に支持されている。そして、このシリンダ部21の支持孔14aとピストン15の外周面15aとの間、つまり、この所定空間には、可動子31が挿入されている。この可動子31は、円筒形状をなし、内周面31aがピストン15の外周面15aに対向して所定隙間が形成される一方、外周面31bがシリンダ部21の支持孔14aの内面と対向し、所定隙間が形成されている。
可動子31は、内周面31aにリング形状をなす収容溝32が形成され、この収容溝32に追従部材として機能する第1シール部材33が装着されている。また、可動子31は、ピストン15の後退側の端部に外周側に切欠部が形成されることで段付部31cが形成されている。一方、シリンダ部21は、支持孔14aに連続してピストン15の後退側の端部に縮径する段付部14bが形成されている。そして、可動子31の段付部31cがシリンダ部21の段付部14bに嵌合している。シリンダ部21は、段付部14bの内周面に収納溝34が形成され、この収納溝34に第2シール部材35が収納されている。
この場合、第1シール部材33は、リング形状をなすと共に矩形断面形状をなす一方、第2シール部材35は、リング形状をなすと共に円形断面形状(所謂、Oリング)をなしている。そして、第1シール部材33は、第2シール部材35よりも高い弾性力を有している。即ち、第1シール部材33は、外周側となる基端部が収容溝32に嵌合して取付けられる一方、内周側となる先端部がピストン15に押圧支持されている。この場合、第1シール部材33は、可動子31とピストン15との間に介装された状態で、ピストン15に対して予め設定された所定の押圧力、つまり、可動子31とシリンダ部21との間に介装された第2シール部材35の緊迫力より大きな緊迫力が設定される。また、ピストン15と可動子31が相対移動したときに、第1シール部材33は、可動子31と一体に移動し、弾性変形による復元力が作用しないように設定されている。
また、シリンダ部21とピストン15に対して液圧室29が設定されている。そして、第1シール部材33は、可動子31の収納溝32に収納された状態で、ピストン15の外周面15aに押圧しており、可動子31とピストン15との間に所定の緊迫力を設定している。一方、第2シール部材35は、シリンダ部21の収納溝34に収納された状態で、可動子31における段付部31cの外周面に押圧しており、可動子31とシリンダ部21との間に所定の緊迫力を設定している。そのため、第1シール部材33が可動子31とピストン15との間の空間に配置され、第2シール部材35が可動子31とシリンダ部21との間の空間に配置されることで、液圧室29からの作動液の漏洩を防止している。
可動子31におけるピストン15の前進側の端部には、外周部に位置して収納溝36が形成されている。一方、シリンダ部21における支持孔14aには、可動子31と摩擦パッド12(裏金26)との間に位置してリング形状をなすストッパ37が固定されている。そして、可動子31の収納溝36とストッパ37(シリンダ部21)との間に位置して、弾性部材38が配置されている。この弾性部材38は、リング形状をなすゴム部材であり、可動子31の前面に密着すると共にストッパ37に密着している。
可動子31は、弾性部材38の弾性力によりピストン15の後退方向に付勢されており、液圧室29への非加圧時には、可動子31の後面がシリンダ部21における段付部14bに当接した位置に位置決めされている。そして、液圧室29への初期加圧時には、ピストン15と共に可動子31が一体に前進し、弾性部材38を圧縮する。
本実施例では、上述したように、シール機構28は、シール機能のほかにリトラクト機能(液量吸収機能)を有し、それぞれ個別に設けられている。即ち、第1、第2シール部材33,35がシール機能を発揮し、弾性部材38がリトラクト機能(液量吸収機能)を発揮する。
また、本実施例では、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積Xは、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yより小さく設定されている。即ち、液圧室29に作動液が供給されて加圧されるとき、この液圧はピストン15の後面と可動子31における段付部31cの後面に作用することから、ピストン15の後面に可動子31における段付部31cの後面を加えた面積が、作動液の受圧面積Xとなる。また、このとき、ピストン15に追従して可動子31が前進することで弾性部材38を圧縮して作動液の液量が吸収されることから、ピストン15の後面に可動子31全体の後面を加えた面積が、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。実際には、作動液の受圧面積Xと作動液を吸収可能な吸収面積Yとの間で、ピストン15の後面の面積が一致することから、可動子31における段付部31cの面積が作動液の受圧面積Xとなり、可動子31全体の面積が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。
従って、図1に示す状態から、液圧室29に作動液が供給されて加圧されると、ピストン15及び可動子31が加圧される。この場合、ピストン15の起動荷重が可動子31の起動荷重よりも大きく設定され、弾性部材38がピストン15に追従するように弾性変形することから、ピストン15が矢印A方向に前進すると、第1シール部材33を介して可動子31が前進し、ピストン15の先端部が摩擦パッド12に当接する。また、作動液の受圧面積Xは、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yより小さく設定されていることから、作動液の吸収量が低減され、制動操作ストロークに応じたピストンストロークが確保される。
この極低圧加圧時に、ピストン15と第1シール部材33との接触部(シール部)は、両者が相対移動しない緊迫力と低弾性部材37のばね定数に設定されていることから、図2に示すように、ピストン15に対して可動子31が追従するように一体に前進する。すると、ピストン15と共に可動子31が前進することで、弾性部材38が圧縮変形され、この弾性部材38の変形量がピストン15の戻し量となる。
そして、液圧室29から作動液が排出されて除圧されると、圧縮変形した弾性部材38の復元力により、可動子31が後退し、第1シール部材33を介してピストン15が一体となって後退する。この場合、可動子31は、可動子31は、ピストン15と一体に移動することで、ピストン15が所定の位置(図1に示す位置)に適正に戻される。
一方、液圧入力が高圧であると、図2に示す状態から、ピストン15が更に前進する。すると、このピストン15に第1シール部材33が所定の緊迫力をもって密着し、且つ、ピストン15の前進に追従するように高弾性部剤38が変形することから、ピストン15に対して可動子31が一体に前進する。すると、ピストン15と共に可動子31が前進することで、弾性部材38を圧縮変形した状態のままで更に圧縮変形し、この弾性部材38の変形量がピストン15の戻し量となる。
そして、液圧室29から作動液が排出されて除圧されると、弾性変形した弾性部材38の復元力により可動子31が後退する。つまり、弾性変形した弾性部材38の復元力により、可動子31が後退し、第1シール部材33を介してピストン15が一体となって後退し、このピストン15が所定の位置(図1に示す位置)に適正に戻される。
また、加圧力が過大であったり、摩擦パッド12の摩耗量が大きいときには、ピストン15が必要以上に前進する。すると、このピストン15と第1シール部材33とがずれて相対移動する。しかし、本実施例では、ピストン15の当接時に所定量だけ作動し、圧力発生時にピストン15と追従するように作動することから、液圧室29から作動液が排出されて除圧されると、圧縮変形した弾性部材38の復元力により、可動子31及び第1シール部材33を介してピストン15が後退する。そのため、ピストン15は、液圧領域の全域で、圧力に依存した規定の戻り量を確保することが可能となり、摩擦パッド12の引きずり現象の発生を抑制し、且つ、安定した制動フィーリングが得られる。
ここで、ブレーキ液圧に対するピストンのストローク量について説明する。図3に示すように、ブレーキ液圧の増加に伴ってピストン15の前進量(図3の実線)が増加するとき、従来のディスクブレーキ装置にて、シールリトラクトによるピストン15の戻し量(図3の点線)は、初期時に増加して前進量(図3の実線)を上回るものの、ピストンシールとピストン15との相対移動が発生することから、その後のシールリトラクトは増加せずに、ピストン15の前進量(図3の実線)を下回ってしまう。一方、本実施例のディスクブレーキ装置では、シール機構28によるピストン15の戻し量(図3の一点鎖線)は、初期時から継続して増加し、全領域で前進量(図3の実線)を上回るものとなる。
このように実施例1のディスクブレーキ装置にあっては、キャリパ14のシリンダ部21にピストン15を移動自在に支持し、シリンダ部21とピストン15との間に作動液を供給してピストン15を前進可能とする液圧室29を設け、このピストン15が前進して摩擦パッド12,13をディスクロータ11に押付可能とすると共に加圧時に作動液量を吸収し、除圧時にピストン15を初期位置に引き戻すシール機構(ピストン戻し機構)28を設け、液圧室29の加圧時に作動液の受圧面積をシール機構28が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定している。
従って、液圧室29が加圧されてピストン15が前進するとき、作動液の受圧面積がシール機構28により作動液が吸収可能な吸収面積より小さいため、作動液の消費量が低減されて制動フィーリングを向上することができると共に、シール機構28によりピストン15の戻り量を適正に確保してパッドの引きずり現象の発生を抑制することができる。
また、実施例1のディスクブレーキ装置では、シール機構28として、シリンダ部21とピストン15の間に介装されてピストン15と同方向に前進可能な可動子31と、ピストン15と可動子31との間に弾装されて可動子31をピストン15に追従させる第1シール部材(追従部材)33と、ピストン15の初期加圧により可動子31を介して圧縮変形可能な弾性部材38とを設けている。
従って、ピストン15が前進すると、第1シール部材33を介して可動子31が弾性部材38を圧縮変形しながら前進することで、ほぼ全域でピストン15と可動子31とを追従させることとなり、弾性部材38の圧縮変形量をピストン15の戻し量として確保することで、ピストン15の戻り量を安定して確保して摩擦パッド12,13の引きずり現象の発生を抑制することができる。
また、実施例1のディスクブレーキ装置では、可動子31に第1シール部材33を設け、この第1シール部材33にピストン15に対して予め設定された所定の押圧力を設定している。従って、第1シール部材33により、ピストン15に前進に追従するように可動子31を適正に前進させることができ、ピストン15と可動子31の相対移動を抑制してピストン15の戻り量を適正に確保することができる。
また、実施例1のディスクブレーキ装置では、シール機構28にて、液圧室29のシール機能と、ピストン15のリトラクト機能とを独立して設けている。即ち、シリンダ部21とピストン15との間にピストン15と可動子31を前進させるための液圧室29を設け、可動子31とピストン15との間に第1シール部材33を設けると共に、シリンダ部21と可動子31との間に第2シール部材35を設けている。また、シリンダ部21と可動子31との間に弾性部材38を配置している。従って、専用のシール部材33,35により液圧室29が液封されて作動液の漏洩を確実に防止することができると共に、弾性部材38によりピストン15の戻り量を安定して確保することができる。
また、実施例1のディスクブレーキ装置では、可動子31の後端部に小径となる段付部31cを設け、この段付部31cに液圧室29に対する受圧面を形成している。従って、簡単な構成で、液圧室29の加圧時に作動液の受圧面積をシール機構28が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定することができ、低コスト化を可能とすることができる。
図5は、本発明の実施例2に係るディスクブレーキ装置におけるピストン戻し機構を表す断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例2のディスクブレーキ装置にて、図5に示すように、シール機構40は、液圧室29の加圧時に作動液量を吸収する一方、除圧時にピストン15を引き戻すピストン戻し機構として機能する。そして、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積は、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定されている。
ピストン15は、後退方向側の端部に外周面15aより大径となる段付部15bが形成され、この段付部15bの外周面に収容溝41が形成され、この収容溝41に第1シール部材(追従部材)42が装着されている。また、可動子31は、段付部31cがシリンダ部21の段付部14bに嵌合し、段付部14bの内周面に収納溝34が形成され、この収納溝34に第2シール部材35が収納されている。この場合、第1シール部材42は、第2シール部材35よりも高い弾性力を有し、外周部が可動子31に押圧支持されており、可動子31とピストン15との間に介装された状態で、可動子31に対して予め設定された所定の押圧力、つまり、可動子31とシリンダ部21との間に介装された第2シール部材34の緊迫力より大きな緊迫力が設定される。
可動子31の後端部とシリンダ部21の段付部14bとの間に空間部43が区画され、この空間部43に弾性部材44が配置されている。また、シリンダ部21における支持孔14aには、可動子31と摩擦パッド12との間に位置してリング形状をなすストッパ45が固定されている。可動子31は、ピストン15の前進側の端部に外周側に切欠部が形成されることで段付部31dが形成され、この段付部31dの外周面がストッパ45の内周面に嵌合することで、シリンダ部21と可動子31とストッパ45により空間部46が区画される。そして、この空間部46に弾性部材47が配置されている。各弾性部材44,47は、ゴム製のOリングであって、空間部43,46内に密閉されることで、弾性変形特性が低弾性部材及び高弾性部材を合わせた機能となる。
即ち、この弾性部材44,47は、可動子31の各空間部43,46に収納された状態で、シリンダ部21に押圧しており、可動子31とシリンダ部21との間に所定の緊迫力を設定している。つまり、弾性部材44,47は、弾性支持部材として機能し、可動子31を、シリンダ部21(支持孔14a)内でフローティング支持、つまり、ピストン15の前進方向及び後退方向に移動可能に付勢支持している。
そのため、液圧室29への初期加圧時には、ピストン15と共に可動子31が前進して弾性部材47を圧縮可能であり、除圧時には、ピストン15と共に可動子31が後退して弾性部材44を圧縮可能となっている。
また、ストッパ45は、円盤形状をなし、内周面にピストン15の外周面15aが移動自在に嵌合しており、このストッパ45がピストン15のガイドとして機能している。
また、本実施例では、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積Xは、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yより小さく設定されている。即ち、液圧室29に作動液が供給されて加圧されるとき、この液圧はピストン15の後面と可動子31における段付部31cの後面に作用することから、ピストン15の後面に可動子31における段付部31cの後面を加えた面積が、作動液の受圧面積Xとなる。また、このとき、ピストン15に追従して可動子31が前進することで弾性部材47を圧縮して作動液の液量が吸収されることから、ピストン15の後面に可動子31全体の後面を加えた面積が、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。実際には、作動液の受圧面積Xと作動液を吸収可能な吸収面積Yとの間で、ピストン15の後面が一致することから、可動子31における段付部31cの面積が作動液の受圧面積Xとなり、可動子31全体の面積が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。
なお、シール機構40におけるその他の作動は、前述の実施例と同様であるため、説明は省略する。
このように実施例2のディスクブレーキ装置にあっては、ピストン15が前進して摩擦パッド12,13をディスクロータ11に押付可能とすると共に加圧時に作動液量を吸収し、除圧時にピストン15を初期位置に引き戻すシール機構40を設け、液圧室29の加圧時に作動液の受圧面積をシール機構40が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定している。
従って、液圧室29が加圧されてピストン15が前進するとき、作動液の受圧面積がシール機構40により作動液が吸収可能な吸収面積より小さいため、作動液の消費量が低減されて制動フィーリングを向上することができると共に、シール機構40によりピストン15の戻り量を適正に確保してパッドの引きずり現象の発生を抑制することができる。
また、実施例2のディスクブレーキ装置では、シール機構40として、シリンダ部21とピストン15の間に介装されてピストン15と同方向に前進可能な可動子31と、ピストン15と可動子31との間に弾装されて可動子31をピストン15に追従させる第1シール部材(追従部材)42と、ピストン15の初期加圧により可動子31を介して圧縮変形可能な弾性部材47とを設けている。
従って、ピストン15が前進すると、第1シール部材42を介して可動子31が弾性部材47を圧縮変形しながら前進することで、ほぼ全域でピストン15と可動子31とを追従させることとなり、弾性部材47の初期圧縮変形量をピストン15の戻し量として確保することで、ピストン15の戻り量を安定して確保して摩擦パッド12,13の引きずり現象の発生を抑制することができる。
また、実施例2のディスクブレーキ装置では、可動子31の後端部と段付部14bとの間に空間部43を形成して弾性部材44を収納する一方、可動子31の前端部とストッパ45との間に空間部46を形成して弾性部材47を収納している。従って、可動子31は、各弾性部材44,47により支持孔14a内で前進方向及び後退方向に移動可能に付勢支持されていることから、可動子31が前進するときには、弾性部材47を圧縮する一方、可動子31が後退するときには、弾性部材44を圧縮することとなる。そのため、車両の旋回時にディスクロータ11が軸方向に倒れるように移動した場合であっても、可動子31がこれを吸収することができ、作動液量の増加を抑制して制動感を向上することができる。
また、実施例2のディスクブレーキ装置では、ピストン15における段付部15bの外周面に収容溝41を形成し、この収容溝41に第1シール部材42を装着し、この第1シール部材42を第2シール部材34よりも高い弾性力で可動子31に押圧している。従って、第1シール部材42をピストン15側に配置することで、ピストン15及び可動子31における径方向及び軸方向のコンパクト化を図ることができる。また、ストッパ45をピストン15のガイドとして機能させることで、ピストン15を前後2点で支持することとなり、ピストン15を安定して移動自在に支持し、作動効率を向上することができる。
図6は、本発明の実施例3に係るディスクブレーキ装置におけるピストン戻し機構を表す断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例3のディスクブレーキ装置にて、図6に示すように、シール機構50は、液圧室29の加圧時に作動液量を吸収する一方、除圧時にピストン15を引き戻すピストン戻し機構として機能する。そして、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積は、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定されている。
キャリパ14のシリンダ部21に支持孔14aが形成され、この支持孔14aにピストン15の外周面15aが所定空間をもって移動自在に支持され、このシリンダ部21の支持孔14aとピストン15の外周面15aとの間に可動子31が挿入されている。可動子31は、内周面31aに収容溝32が形成され、第1シール部材33が装着されている。また、可動子31は、段付部31cがシリンダ部21の段付部14bに嵌合し、段付部14bの内周面に収納溝34形成され、第2シール部材35が収納されている。
シリンダ部21における支持孔14aには、可動子31と摩擦パッド12(裏金26)との間に位置してリング形状をなすストッパ51が固定されている。そして、可動子31とストッパ51(シリンダ部21)との間に位置して、弾性部材52が配置されている。この弾性部材52は、円盤形状をなす皿ばねであり、可動子31の前面に密着すると共にストッパ51に密着している。
可動子31は、弾性部材52の弾性力によりピストン15の後退方向に付勢されており、液圧室29への非加圧時には、可動子31の後面がシリンダ部21における段付部14bに当接した位置に位置決めされている。そして、液圧室29への初期加圧時には、ピストン15と共に可動子31が前進し、弾性部材52を圧縮する。
本実施例では、シール機構50は、シール機能のほかにリトラクト機能(液量吸収機能)を有し、それぞれ個別に設けられている。即ち、第1、第2シール部材33,35がシール機能を発揮し、弾性部材52がリトラクト機能(液量吸収機能)を発揮する。
また、本実施例では、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積Xは、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yより小さく設定されている。即ち、液圧室29に作動液が供給されて加圧されるとき、この液圧はピストン15の後面と可動子31における段付部31cの後面に作用することから、ピストン15の後面に可動子31における段付部31cの後面を加えた面積が、作動液の受圧面積Xとなる。また、このとき、ピストン15に追従して可動子31が前進することで弾性部材52を圧縮して作動液の液量が吸収されることから、ピストン15の断面に可動子31の後面を加えた面積が、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。実際には、作動液の受圧面積Xと作動液を吸収可能な吸収面積Yとの間で、ピストン15の後面(断面)が一致することから、可動子31における段付部31cの面積が作動液の受圧面積Xとなり、可動子31の面積が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。
なお、シール機構50におけるその他の作動は、前述の実施例と同様であるため、説明は省略する。
このように実施例3のディスクブレーキ装置にあっては、ピストン15が前進して摩擦パッド12,13をディスクロータ11に押付可能とすると共に加圧時に作動液量を吸収し、除圧時にピストン15を初期位置に引き戻すシール機構50を設け、液圧室29の加圧時に作動液の受圧面積をシール機構50が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定している。
従って、液圧室29が加圧されてピストン15が前進するとき、作動液の受圧面積がシール機構50により作動液が吸収可能な吸収面積より小さいため、作動液の消費量が低減されて制動フィーリングを向上することができると共に、シール機構50によりピストン15の戻り量を適正に確保してパッドの引きずり現象の発生を抑制することができる。
また、実施例3のディスクブレーキ装置では、シール機構50として、シリンダ部21とピストン15の間に介装されてピストン15と同方向に前進可能な可動子31と、ピストン15と可動子31との間に弾装されて可動子31をピストン15に追従させる第1シール部材(追従部材)33と、ピストン15の初期加圧により可動子31を介して圧縮変形可能な弾性部材52とを設けている。
従って、ピストン15が前進すると、第1シール部材33を介して可動子31が弾性部材52を圧縮変形しながら前進することで、ほぼ全域でピストン15と可動子31とを追従させることとなり、弾性部材52の初期圧縮変形量をピストン15の戻し量として確保することで、ピストン15の戻り量を安定して確保して摩擦パッド12,13の引きずり現象の発生を抑制することができる。
図7は、本発明の実施例4に係るディスクブレーキ装置におけるピストン戻し機構を表す断面図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例4のディスクブレーキ装置にて、図7に示すように、シール機構60は、液圧室29の加圧時に作動液量を吸収する一方、除圧時にピストン15を引き戻すピストン戻し機構として機能する。そして、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積は、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定されている。
キャリパ14のシリンダ部21には、支持孔14aより小径の第2支持孔14cが形成され、この第2支持孔14cより小径の段付部14bが形成されている。この第2支持孔14cには、ピストン15の外周面15aが所定空間をもって移動自在に支持され、この第2支持孔14cとピストン15の外周面15aとの間に可動子61が挿入されている。この可動子61は、円筒形状をなし、内周面61aがピストン15の外周面15aに対向して所定隙間が形成される一方、外周面61bがシリンダ部21の第2支持孔14cの内面と対向し、所定隙間が形成されている。
ピストン15は、段付部15bの外周面に収容溝41が形成され、第1シール部材42が装着されている。可動子61は、段付部61cがシリンダ部21の段付部14bに嵌合し、段付部61cの外周面に収納溝62が形成され、第2シール部材63が収納されている。可動子61の段付部61cは、ピストン15の段付部15bより径方向の内側に延出している。即ち、可動子61の段付部61cの内径より、ピストン15の段付部15bの外径が大きくなっており、可動子61の段付部61cは、ピストン15における液圧室29に対する受圧面(後面)に対向、つまり、段付部61cは、ピストン15における液圧室29に対する受圧面よりピストン15の後方方向側に設けられている。
また、第1シール部材42は、第2シール部材63よりも高い弾性力を有し、外周部が可動子61に押圧支持されており、可動子61とピストン15との間に介装された状態で、可動子61に対して予め設定された所定の押圧力、つまり、可動子61とシリンダ部21との間に介装された第2シール部材63の緊迫力より大きな緊迫力が設定される。
可動子61の後端部とシリンダ部21の段付部14bとの間に空間部64が区画され、この空間部64に弾性部材65が配置されている。また、シリンダ部21における第2支持孔14cには、可動子61と摩擦パッド12との間に位置してリング形状をなすストッパ66が固定されている。可動子61は、ピストン15の前進側の端部に外周側に切欠部が形成されることで段付部61dが形成され、この段付部61dの外周面がストッパ66の内周面に嵌合することで、シリンダ部21と可動子61とストッパ66により空間部67が区画される。そして、この空間部67に弾性部材68が配置されている。
また、本実施例では、液圧室29の加圧時に、作動液の受圧面積Xは、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yより小さく設定されている。即ち、液圧室29に作動液が供給されて加圧されるとき、この液圧はピストン15の後面と可動子61における段付部61cの後面に作用することから、ピストン15の後面に可動子61における段付部61cの後面を加えた面積が、作動液の受圧面積Xとなる。また、このとき、ピストン15に追従して可動子61が前進することで弾性部材68を圧縮して作動液の液量が吸収されることから、ピストン15の後面に可動子61全体の後面を加えた面積が、ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。実際には、作動液の受圧面積Xと作動液を吸収可能な吸収面積Yとの間で、ピストン15の後面が一致することから、可動子61における段付部61cの面積が作動液の受圧面積Xとなり、可動子61全体の面積が作動液を吸収可能な吸収面積Yとなる。
なお、シール機構60におけるその他の作動は、前述の実施例と同様であるため、説明は省略する。
このように実施例4のディスクブレーキ装置にあっては、ピストン15が前進して摩擦パッド12,13をディスクロータ11に押付可能とすると共に加圧時に作動液量を吸収し、除圧時にピストン15を初期位置に引き戻すシール機構60を設け、液圧室29の加圧時に作動液の受圧面積をシール機構60が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定している。
従って、液圧室29が加圧されてピストン15が前進するとき、作動液の受圧面積がシール機構60により作動液が吸収可能な吸収面積より小さいため、作動液の消費量が低減されて制動フィーリングを向上することができると共に、シール機構60によりピストン15の戻り量を適正に確保して摩擦パッド12,13の引きずり現象の発生を抑制することができる。
また、実施例4のディスクブレーキ装置では、シール機構60として、シリンダ部21とピストン15の間に介装されてピストン15と同方向に前進可能な可動子61と、ピストン15と可動子61との間に弾装されて可動子61をピストン15に追従させる第1シール部材(追従部材)42と、ピストン15の初期加圧により可動子61を介して圧縮変形可能な弾性部材68とを設けている。
従って、ピストン15が前進すると、第1シール部材42を介して可動子61が弾性部材68を圧縮変形しながら前進することで、ほぼ全域でピストン15と可動子61とを追従させることとなり、弾性部材68の初期圧縮変形量をピストン15の戻し量として確保することで、ピストン15の戻り量を安定して確保して摩擦パッド12,13の引きずり現象の発生を抑制することができる。
また、実施例4のディスクブレーキ装置では、可動子61の段付部61cを、ピストン15の段付部15bより径方向の内側に延出することで、可動子61の段付部61cの内径よりピストン15の段付部15bの外径を大きくし、可動子61の段付部61cを、ピストン15における液圧室29に対する受圧面(後面)に対向して設けている。従って、ピストン15と可動子61との第1シール部材42と、シリンダ部21と可動子61との第2シール部材63とをピストン15の移動方向に沿ってほぼ直列に配置することとなり、全体の強度に関係なく可動子61の段付部61cを設けることができ、液圧室29の加圧時における作動液の受圧面積を極力小さく設定することができ、径方向におけるコンパクト化を可能とすることができる。
以上のように、本発明に係るディスクブレーキ装置は、ピストンを適正に戻してパッドの引きずり現象の発生を抑制可能とすると共に作動液の消費量の増加による制動フィーリングの向上を図るものであり、いずれのディスクブレーキ装置に適用しても好適である。
11 ディスクロータ
12 インナパッド(摩擦パッド)
13 アウタパッド(摩擦パッド)
14 キャリパ
15 ピストン
16 シリンダ機構
21 シリンダ部
28,40,50,60 シール機構(ピストン戻し機構)
29 液圧室
31,61 可動子
33,42 第1シール部材(追従部材)
35,63 第2シール部材
37,45,51,66 ストッパ
38,44,47,52,65,68 弾性部材
12 インナパッド(摩擦パッド)
13 アウタパッド(摩擦パッド)
14 キャリパ
15 ピストン
16 シリンダ機構
21 シリンダ部
28,40,50,60 シール機構(ピストン戻し機構)
29 液圧室
31,61 可動子
33,42 第1シール部材(追従部材)
35,63 第2シール部材
37,45,51,66 ストッパ
38,44,47,52,65,68 弾性部材
Claims (7)
- 回転軸心回りに回転するディスクロータと、
該ディスクロータの摩擦面に対向する摩擦パッドと、
該摩擦パッドを前記ディスクロータの摩擦面に接近離間可能に支持するシリンダと、
該シリンダに支持されて前進することで前記摩擦パッドを前記ディスクロータに押付可能なピストンと、
前記シリンダと前記ピストンとの間に区画されて作動液を供給して前記ピストンを前進可能な液圧室と、
前記シリンダと前記ピストンとの間に設けられて前記液圧室の加圧時に作動液量を吸収して除圧時に前記ピストンを戻すピストン戻し機構と、を備え、
前記液圧室の加圧時に、作動液の受圧面積は、前記ピストン戻し機構が作動液を吸収可能な吸収面積より小さく設定される、
ことを特徴とするディスクブレーキ装置。 - 前記シリンダと前記ピストンの間に該ピストンと同方向に前進可能な可動子が設けられ、前記ピストンと前記可動子との間に該可動子を前記ピストンに追従させる追従部材が設けられることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
- 前記追従部材は、前記可動子または前記ピストンに設けられる弾性部材を有し、前記可動子と前記ピストンに対して所定の押圧力が設定されることを特徴とする請求項2に記載のディスクブレーキ装置。
- 前記可動子は、後端部に小径となる段付部が設けられ、該段付部に前記液圧室に対する受圧面が形成されることを特徴とする請求項2または3に記載のディスクブレーキ装置。
- 前記段付部は、前記ピストンにおける前記液圧室に対する受圧面に対して該液圧室側に設けられることを特徴とする請求項4に記載のディスクブレーキ装置。
- 前記ピストン戻し機構は、前記シリンダと前記可動子との間に設けられる弾性部材を有することを特徴とする請求項2から5のいずれか一つに記載のディスクブレーキ装置。
- 前記可動子と前記ピストンとの間に前記液圧室をシールする第1シールが設けられると共に、前記シリンダと前記可動子との間に前記液圧室をシールする第2シールが設けられることを特徴とする請求項2から6のいずれか一つに記載のディスクブレーキ装置。
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2008
- 2008-09-11 JP JP2008233936A patent/JP2010065786A/ja active Pending
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