図1は、本発明を適用した流体噴射式織機として、空気噴射式織機の要部を示している。図示の空気噴射式織機は、一例として2色の緯入れ装置1を備えている。図1の緯入れ装置1において、カラーC1、C2の緯糸4は、ホルダ2により支持されている給糸体3から引き出され、例えばドラム式の測長貯留装置5の回転糸ガイド6の内部に導かれ、静止状態のドラム7の外周面で係止ピン8により係止されながら、回転糸ガイド6の回転運動によりドラム7の外周面に巻き付けられることによって、1回の緯入れに必要な長さに測長され、かつ各緯糸4の緯入れ時まで貯留されている。
測長貯留装置5(回転糸ガイド6の回転運動及び係止ピン8の進退運動)や、後述の緯入れ用のメインノズル10は、制御装置20の内部の緯入れ制御部31によって緯糸4の選択順序に基づいて動作する。なお、パッケージセンサ39は、給糸体3の近くに設置されており、対応の給糸体3における緯糸4の残糸量が所定量以下となったことを検出し、その検出信号S4を発生している。
緯入れ開始タイミングで、緯入れ制御部31によって選択された緯糸4に対応する係止ピン8が操作器9に駆動されて、ドラム7の外周面から後退すると、ドラム7の外周に巻き付けられている1回の緯入れに必要な長さの緯糸4は、ドラム7上において解舒可能な状態となる。そして、緯入れ用のメインノズル10が噴射動作を行うことにより、メインノズル10に通された緯糸4は、ドラム7上から解舒されて緯入れされる。なお、この例でメインノズル10は、補助メインノズル10aと主メインノズル10bとを緯糸4の方向に直列に配置し、2連式のものとして構成されている。
選択された緯糸4に対応するメインノズル10は、設定された緯入れ開始のタイミングで経糸13の開口14へ向けて圧力空気12の噴射を開始し、設定された噴射期間にわたって噴射を継続することによって、所定の長さの緯糸4を開口14内に緯入れする。この緯入れ動作によって、緯糸4は、開口14内の緯糸飛走経路に沿って飛走する。なお、圧力空気12は、圧力空気源26から共通の圧力調整弁27により緯入れに適切な圧力値に設定されてから、各電磁開閉弁28を経てメインノズル10としての補助メインノズル10a及び主メインノズル10bに供給されている。各電磁開閉弁28は、緯入れ制御部31の制御によって緯糸選択順序に基づいて動作する。
前記のように、図1の緯入れ装置1は、2色の緯入れであるが、2色以上の多色の緯入れの場合、給糸体3、測長貯留装置5及びメインノズル10は、多色数に応じて設置され、緯糸選択順序によって緯入れされることになる。もちろん、1色の緯入れであれば、測長貯留装置5及びメインノズル10は、1個だけ設けられることになる。
緯入れされた緯糸4が開口14内の飛走経路に沿って飛走する過程で、複数グループのサブノズル11は、圧力空気15を緯糸飛走経路に緯糸4の飛走方向に向けて一斉噴射するか、または圧力空気15を緯糸4の飛走速度と調和しながらリレー噴射することによって開口14内で飛走中の緯糸4を緯入れ方向に加勢する。なお、圧力空気15は、圧力空気源26から供給され、圧力調整弁29によって適切な圧力値に設定されてから各グループ毎の電磁開閉弁30を経て各グループのサブノズル11に供給されている。各グループの電磁開閉弁28は、緯入れのときに緯入れ制御部31によって一斉噴射またはリレー噴射を行って、緯糸4を緯入れ方向に加勢する。
メインノズル10及び複数グループのサブノズル11の噴射動作により、緯糸4が正常に緯入れされたとき、その緯糸4は、筬16の筬打ち運動によって織布17の織り前18に筬打ちされ、織布17に織り込まれた後、緯入れ側で給糸カッタ19によって切断され、メインノズル10としての主メインノズル10bの内部の緯糸4から切り離される。
緯入れが正常に行われたか否かは、第1の緯糸フィーラ21及びそのセンサ24、第2の緯糸フィーラ22及びそのセンサ25によって検出される。第1の緯糸フィーラ21のセンサ24は、反緯入れ側の織布17の織り端部分の近傍で緯糸飛走路に対向し、正常に緯入れされた緯糸4の到達し得る位置に設けられており、そこで正常に緯入れされた緯糸4の先端を検知する。この検知は、緯糸4の正常な到達時期(設定された検知期間)内においてセンサ24に発生する検知信号のレベルと基準信号レベルとを比較することによって行われる。従って、第1の緯糸フィーラ21のセンサ24によれば、緯入れされたにもかかわらずセンサ24の位置へ緯糸4の先端が到達しない緯入れ不良(ショートピック、ベントピック等)が検出される。なお、検知期間は、通常、主軸33の回転角上で設定される。
所定の検知期間において、センサ24は、緯糸4の到達を検出したときに、それに応じた出力信号を発生する。そのとき、第1の緯糸フィーラ21は、センサ24からの出力信号に基づき、正常な緯入れに対応する糸信号S1を発生し、この糸信号S1を制御装置20の内部の主制御部36及び統計値算出手段40に送る。主制御部36は、正常な緯入れに対応する糸信号S1の存在を条件として織機の運転(製織)を継続させる。なお、統計値算出手段40は、演算手段54とともに統計値算出部38を構成しており、緯入れ状況を表示するために、後に詳述するように、所定のサンプリング期間毎に、糸信号S1から緯糸4の到達時期(到達角度)に関する統計値を算出する。
所定の検知期間内において、糸信号S1が発生しなかったとき、つまり緯入れ不良が発生していて、センサ24が緯糸4の到達を検出できなかったとき、第1の緯糸フィーラ21は、緯入れの異常と判断して、緯止め信号S2を出力し、この緯止め信号S2を主制御部36及び演算手段54に送る。
主制御部36は、緯止め信号S2を受けると、直ちに停止制御を実行し、織機を所定の角度で停止させる。このときの織機の停止は、緯糸4の緯入れ異常による停台であり、後述の図3及び図4での表示「ヨコ停台」に相当する。また、演算手段54は、後に詳述するように、所定のサンプリング期間において発生した織機の停台状況を視認可能な状態で表示するために、第1の緯糸フィーラ21によって検出された緯糸4の緯入れ異常による停台回数を積算している。
また、第2の緯糸フィーラ22のセンサ25は、反緯入れ側において、織布17の織り端部分に対しセンサ24よりもさらに緯入れ方向に離れた位置つまり正常に緯入れされた緯糸4が到達しない位置で緯糸飛走路に対向し、緯糸4の吹き切れやロングピックといった緯入れ不良を検知するために設けられる。この検知は、所定の検知時期内において緯糸4の異常な到達時期(到達角度)でセンサ25に発生する検知信号のレベルと基準信号レベルとを比較することによって行われる。なお、所定の検知期間は、通常、主軸33の回転角上で設定される。所定の検知期間において、第2の緯糸フィーラ22は、センサ25からの出力信号を入力したときに、緯入れの異常と判断して、緯止め信号S3を発生し、この緯止め信号S3を主制御部36及び演算手段54に送る。
主制御部36は、緯止め信号S3を受けると、緯止め信号S2を受けたときと同様に、織機を所定の角度で直ちに停止させる。このときの織機の停止も、緯糸4の異常による停台であり、後述の図3及び図4での表示「ヨコ停台」に相当する。また、演算手段54は、後に詳述するように、所定のサンプリング期間において発生した織機の停台状況を視認可能な状態で表示するために、第2の緯糸フィーラ22によって検出された緯糸4の緯入れ異常による停台回数を積算している。
統計値算出部38の演算手段54は、第1の緯糸フィーラ21によって検出された緯糸4の緯入れ異常による停台回数と、第2の緯糸フィーラ22によって検出された緯糸4の緯入れ異常による停台回数とをそれぞれ別々に積算するほか、必要に応じて両者の和を積算していく。
一方、経糸13の糸切れは、ドロッパ装置50によって検出され、また、織り端でのレノ組織形成用の耳糸51の糸切れなどの異常は、両織り端の耳組み装置52によって検出される。ドロッパ装置50は、経糸13の本数に応じて図示しないドロッパを有しており、各経糸13は、対応のドロッパに通されて、ドロッパを吊り下げ状態として、各ドロッパを所定の高さに保持している。また耳組み装置52は、1回の緯入れ毎に複数の耳糸51に撚りをかけることによって緯糸4の端部を保持するためのレノ組織を形成している。
製織中に、どれかの経糸13に糸切れが起きると、糸切れ位置のドロッパが落ち、落ちたドロッパと図示しない電極との間に電気的な閉回路が形成されるため、ドロッパ装置50は、閉回路の通電状態からドロッパの落下を検知して、経止め信号S10を発生し、これを主制御部36及び演算手段54に送る。
また、製織中に、耳糸51に糸切れが起きると、耳組み装置52中に設けられた図示しない耳糸センサは、耳糸51の糸切れを検知して、経止め信号S11を発生し、これを主制御部36及び演算手段54に送る。
主制御部36は、経止め信号S10又は経止め信号S11を受けたとき、緯糸4の異常のときと同様に、織機を所定の角度で直ちに停止させる。このときの織機の停止は、経糸13又は耳糸51の異常による停台であり、後述の図3及び図4での表示「タテ停台」に相当する。また、演算手段54は、後に詳述するように、所定のサンプリング期間において発生した織機の停台状況を視認可能な状態で表示するために、経止め信号S10に基づく停台回数及び経止め信号S11に基づく停台回数を別々に積算すると共に、それらの停台回数の和を積算している。
制御装置20は、織機の主軸33の回転に同期した状態で織機を制御すると共に、緯入れ状況の表示を行うほか、その他の必要な制御を行うために、緯入れ制御部31、主制御部36、統計値算出部38、設定・表示部41、緯糸選択信号発生部42から構成されている。主軸33の回転角度の検出のために、主軸33にエンコーダ34が連結されており、製織中にエンコーダ34は、主軸33の回転角度θの信号を発生し、これを緯入れ制御部31、主制御部36、緯糸選択信号発生部42、統計値算出手段40などに送り込んでいる。
主制御部36は、主軸33の回転角度θの信号に基づいて織機の主運動の制御や停止時の制御を行う。緯糸選択信号発生部42は、回転角度θから主軸33の回転量を検知し、予め設定されている緯糸選択順序にもとづいて緯糸選択信号S8を発生し、この緯糸選択信号S8を緯入れ制御部31、統計値算出手段40、演算手段54に送っている。緯入れ制御部31は、主軸33の回転に同期して、緯糸選択信号S8に対応する緯糸4を選択し、選択した緯糸4に適切な回転角度θのもとに、緯入れ装置1での測長貯留装置5、メインノズル10、サブノズル11の動作を制御し、選択した緯糸4の緯入れ動作をさせる。
統計値算出手段40は、緯入れ毎に検出された緯糸4の到達時期に基づいて所定のサンプリング期間毎に緯糸4の到達時期に関する統計値を算出するために、回転角度θの信号から基準の回転角度(0°)の通過時にピック数(緯入れ回数)をカウントするとともに、予め設定されている所定のサンプル数(ピック数)のサンプリング期間にわたって、回転角度θ上での糸信号S1の入力時点から緯糸到達の回転角度θすなわち緯糸到達角度を検出し、サンプリング期間毎に緯糸到達時期の統計値を算出する。緯糸到達時期の統計値は緯糸選択信号S8の入力によって糸種毎に別々に算出される。
ここでいう統計値とは、緯糸到達時期(緯糸到達時の回転角度θ)の最小値(最も速い緯糸到達の回転角度θ)、最大値(最も遅い緯糸到達時の回転角度θ)及び緯糸到達時期の標準偏差のうち1以上の値、ならびに緯糸到達時期の平均値(回転角度θ)である。これらの値は、前記の通り、糸種毎に算出される。
最大値および最小値の2つの値の差は、ばらつきの幅を示すほか、各値はサンプリング期間におけるばらつき範囲の実際値を示す。なお、実際値であるため、標準偏差に比べ、ばらつきの範囲がわかる分、織機の調整に役に立つ。
これらの最大値、最小値によれば、それらの変動幅がわかるため、織機の調整上、例えば緯入れ用ノズル(メインノズル10およびサブノズル11)の圧力を変更できる等で有利である。標準偏差は、ばらつき度合いを数値により表示し、2項分布における分散度、いわゆる山の高さに対応する。これに対して、平均値は、文字通り、1サンプリング期間中での所定のピック数、例えば1000ピックにおける緯糸到達角度の平均の値であり、これから緯糸到達角度の大まかな変動がわかる。
設定・表示部41は、図2とともに後述するが、統計値表示や製織条件の変更情報を表示するための表示装置であり、1サンプリング期間中でのサンプリング数を設定するために例えばタッチパネル式の設定入力手段37を有している。統計値の算出に当たって、1サンプリング期間中でのサンプリング数は、設定・表示部41の設定画面により複数の中から選択して設定できるようになっている。
製織開始前の設定作業において、作業者は、設定・表示部41による表示中の設定画面から適当なサンプリングピック数を選択し、設定する。ここでいうサンプリング数は、1サンプリング期間中において、緯糸到達タイミングの統計値を算出する際に元にする緯糸到達タイミングの実測値の数である。後述の例のように、サンプリングピック数が1000ピックと設定された場合に、統計値算出手段40は、1000ピック分の緯糸到達タイミングの実測値をもとに1サンプリング期間中の統計値を算出することになる。また、統計値の記憶容量は、少なくとも1パッケージ分の給糸体3に相当するサンプリングピック数分とする。
統計値算出手段40は、緯糸カラー別にサンプリングされたデータに基づき統計値を算出するために、緯糸選択信号発生部42からの緯糸選択信号S8を入力とし、緯糸カラー別に緯糸到達時期の最大値、緯糸到達時期の最小値、緯糸到達時期の標準偏差のうち1以上の値、及び緯糸到達時期の平均値を算出し、これらの統計値を表示するための表示データ信号S9を設定・表示部41に出力する。
また、演算手段54は、緯糸カラー毎に停台回数を計算するために、緯糸選択信号S8を入力するとともに、緯止め信号S2、S3及び経止め信号S10、S11を入力として各サンプリング期間において、停台原因を識別しながら織機の停台回数を積算し、積算結果に基づいて緯糸カラー毎に表示データ信号S12を発生する。この表示データ信号S12は、織機の停台の発生状況の表示として停台回数を表示するために、設定・表示部41に出力される。
設定・表示部41は、前記のように、統計値表示や製織条件の変更情報をグラフィック表示のために設けられている。統計値算出部38(統計値算出手段40及び演算手段54)は、設定・表示部41からグラフィック表示のために必要な指令を受けて表示データ信号S9、S12を設定・表示部41に出力する。設定・表示部41は、統計値算出の条件設定のデータ、製織条件の設定や変更のデータを交換するために、緯入れ制御部31、主制御部36、緯糸選択信号発生部42に対して、また統計値などのグラフィック表示のデータを交換するために、統計値算出手段40及び演算手段54に対して双方向的に交信可能となっている。
また、設定・表示部41は、各サンプリング期間の終了とともに表示データ信号S9、S12を受け取り、表示データ信号S9のデータに基づいて、製織の経過に伴って統計値算出手段40により順次算出された統計値を時系列的に複数記憶し、記憶された統計値の大きさを表示画面の時間軸上で経時的にグラフィック表示すると共に、表示データ信号S12のデータに基づいて、前記統計値のグラフィック表示用の時間軸と同じ時間軸上で、前記各サンプリング期間において発生した織機の停台の発生状況、すなわち停台回数を視認可能な状態で表示する。
図2は、設定・表示部41の内部の構成例を示している。図2において、設定・表示部41は、記憶部46、タッチパネル式の画面表示器47、ポート48、処理部49を有している。ポート48は、統計値表示用の表示データ信号S9、停台回数表示用の表示データ信号S12などを受け取り、外部の統計値算出手段40や演算手段54と、内部の画面表示器47、処理部49との間で信号やデータの送受信を行う。
記憶部46は、書換え可能なものであり、表示データ信号S9の複数の統計値のデータ、表示データ信号S12の停台回数のデータをサンプリング番号に対応させて記憶する。この記憶部46には、タッチパネル式の画面表示器47を制御するためのプログラム、統計値や停台回数のグラフィック表示のためのプログラム、その他必要なソフトウェアが記憶されている。
画面表示器47は、表示装置であり、表示データ信号S9に基づいて複数の統計値の大きさを表示画面の時間軸上で経時的にグラフィック表示すると共に、表示データ信号S12に基づいて統計値のグラフィック表示用の時間軸と同じ時間軸上で、各サンプリング期間において発生した織機の停台回数を視認可能な状態として表示する。また、画面表示器47は、表示画面の一部でタッチパネル式の設定入力手段37を兼用しており、表示画面に対するタッチ操作によって、表示の要求や各種の指令、サンプル数のデータなどを入力可能に構成されている。サンプル数のデータなどは、ポート48を経由して統計値算出手段40や演算手段54に送られる。
設定・表示部41は、グラフィック表示について、第1の表示機能、第2の表示機能を有している。第1の表示機能は、停台の発生状況を、緯糸4の異常に伴う停台と経糸13の異常に伴う停台とに分けて表示する機能である。また、第2の表示機能は、時間軸上で指定された一部の期間を拡大表示すると共に、その拡大期間における前記停台の発生状況を停台原因別に表示する機能である。また、この拡大表示のときに、その拡大表示された期間に行われた製織条件の変更に関する情報として入力履歴を同一画面上に一覧表示する機能も含んでいる。
処理部49は、CPUいわゆるマイクロプロセッサにより構成されており、記憶部46に格納される所定のソフトウエアに従ってポート48での入出力を制御するとともに、画面表示器47を制御し、設定・表示部41からの画面表示の要求に応じて記憶部46から複数の統計値や停台回数などを読み出すとともに、複数の統計値の大きさに対応するグラフィック表示および停台回数を画面表示器47に表示させる。
以上のように、統計値算出部38及び設定・表示部41は、統計値の演算や停台回数の積算、これらの記憶、さらに記憶された統計値の大きさや停台回数を表示画面の時間軸上で経時的にグラフィック表示するが、この機能は、主制御部36の制御コンピュータを利用して、または専用のマイコンなどのコンピュータにより構成し、そのソフトウエア処理により実現することも可能である。
なお、図1および図2に示す構成例では、機能別のブロックとして構成しているが、それらはコンピュータを利用することによって1つのブロックとして構成することもできる。また、制御装置20の機能は、コンピュータを使用し、プログラムにより実現することもできる。従って、制御装置20の機能ブロックの部分は、コンピュータの入出力手段、記憶手段、演算(制御)、表示手段により置換可能である。
つぎに、図3及び図4は、画面表示器47による統計値の表示画面61の一例を示している。図3の表示画面61は、製織過程の1サンプリング期間毎の統計値、停台回数及び運転情報を1画面で示している。緯糸4の到達時期(到達タイミング)の統計値の大きさについての時間軸上での経時的なグラフィック表示(以下、「統計値に関する表示」ともいう。)は、横軸(X軸)・縦軸(Y軸)のグラフとして表示されている。グラフでの横軸の1単位は1サンプル期間である。なお、横軸の目盛りは、ピック数であり、このピック数は、製織時の時間経過に比例している。このため、横軸は時間軸と言える。
サンプリング期間におけるサンプリング数(ピック数)は、設定入力手段37としての表示枠57内で「32」、「100」、「1000」の選択ボタン43に対するタッチ操作によって選択して設定可能である。図3及び図4で「1000」の部分にハッチングが付されているが、それは1サンプリング期間でのサンプリング数を1000ピックとして設定されていることを表している。
図示のグラフでの横軸における表示「−」(マイナス)は、「0」の現時点よりも過去であることを示す。従って、「−10」は、「0」の現時点より10のサンプリング期間前であり、10×1000(サンプリング数)=10000の計算によって10000ピック前の緯入れ時点を示す。このように、グラフは、横軸上で「0」から遡って「−100」までの過去のサンプリング数100の製織時間の期間を表しており、この期間での総ピック数は、100000ピックとなる。このような表示期間は、左右方向の三角マークのスクロールボタン44に対するタッチ操作によって、必要に応じて時間軸上で任意に移動できるようになっている。
また、表示画面61のグラフにおいて、左右の縦軸(Y軸)のうち、左側の縦軸は緯糸4の到達時期を回転角度θの角度(°)により示しており、右側の縦軸は標準偏差の大きさを示している。
そして、表示画面61のグラフにおいて、折れ線のグラフAは、時間軸上において左側の縦軸の角度(°)を参照目盛りとして、サンプル数1000ピック中の緯糸到達時期(緯糸到達角度)の平均値をグラフィック表示している。また、不連続な棒状のグラフBは、時間軸上において、左側の縦軸の角度(°)を参照目盛りとして、サンプル数1000ピック中の緯糸到達時期(緯糸到達角度)の最大値と最小値とを縦軸方向の線分で結んだ状態としてグラフィック表示している。さらに折れ線のグラフCは、時間軸上において、右側の縦軸を参照目盛りとして緯糸到達時期(緯糸到達角度)の標準偏差を示している。
なお、表示画面61の上部の給糸体マーク45は、緯糸4の糸種つまりカラーC1、C2とともに、表示中の緯糸4の糸種を示している。「1」の給糸体マーク45にハッチングが付されているが、それはカラーC1についての画面表示であることを示している。多色緯入れ織機の場合、表示画面61上で給糸体マーク45に対するタッチ操作によって、緯糸4の糸種(カラー)の選択が可能となり、選択した糸種の緯糸到達時期のグラフ表示に切り換えることもできる。ちなみに、画面表示器47を多色(カラー)表示とし、それぞれのグラフ(A、B、C)や、横軸、左右の縦軸などの表示色を異ならせたり、糸種ごとに表示色を異ならせて同時に表示するように構成すれば、より視認性が向上する。
さらに、図示の例では、表示画面61において、設定・表示部41は、第1の表示機能に基づいて画面中の統計値に関するグラフ表示の上方に、織機の停台の発生状況として停台情報を緯糸4の異常による停台「ヨコ停台」と、経糸13や耳糸51の異常(切断)による停台「タテ停台」とに分けて、それらを横軸上にグラフィック表示するとともに、「運転情報」のグラフィック表示をする。
しかも、図示の例では、上記の停台情報の表示について、停台回数が1回だけか複数回かを表示形態から視覚によって容易に判別できるように、すなわち、停台回数を視認可能な表示態様で表示を行っている。なお、この表示例では、「ヨコ停台」と「タテ停台」との和(合計の停台回数)は表示されていないが、必要に応じて適切な表示態様によって表示することもできる。また、「ヨコ停台」と「タテ停台」とに分けることなく、両者の和のみを表示してもよい。
また、「ヨコ停台」に関しては、緯糸カラー(糸種)別に、選択されているカラーの緯入れ時に発生した緯入れ不良による停台回数が表示される。このため、停台回数は、糸種別に認識できるものとなっている。
さらに、上記停台情報の表示について、詳しく説明すると、表示画面61において、「ヨコ停台」、「タテ停台」及び「運転情報」の表示は、統計値の大きさをグラフィック表示ための時間軸(X軸)に対して平行であり、当該時間軸の目盛りに対応する補助の軸上において、各サンプリング期間毎に当該サンプリング期間(1000ピック)中に発生した停台回数として表示される。ここでの補助の軸の時間目盛り(ピック)は、前記時間軸の時間目盛り(ピック)「−10」、「−20」、「−30」・・・と同じ間隔の目盛りであるから、停台回数(「ヨコ停台」及び「タテ停台」)は、統計値表示用の時間軸と同じ時間軸上に表示されているといえる。もっとも、前記時間軸に表示用の余白が確保できるならば、それらの停台回数は、前記時間軸(X軸)に対して平行な補助の軸上を利用することなく、前記時間軸上の余白に直接に表示することもできる。
因みに、「ヨコ停台」は、第1の緯糸フィーラ21からの緯止め信号S2と第2の緯糸フィーラ22からの緯止め信号S3との和(合計)となっている。「ヨコ停台」の内容は、既述の通り、緯入れ不良によるものであるが、給糸切れに伴う停台を含むものであってもよい。給糸切れに伴う停台を含むものとする場合には、図示しないが、給糸体3と測長貯留装置5との間の緯糸4の経路上等に給糸切れセンサを設置し、それらの給糸切れセンサの信号を第1の緯糸フィーラ21および第2の緯糸フィーラ22の信号と同様に積算処理することになる。
また、「タテ停台」は、ドロッパ装置50からの経止め信号S10と耳組み装置52からの経止め信号S11との和(合計)となっている。経糸(地経糸)13の切断による停止は、ドロッパ停止とも呼ばれ、耳糸(レノ糸)51の切断による停止は、レノ切れ停止とも呼ばれる。キャッチコードのある織機では、キャッチコード切れも「タテ停台」に含められる。
このように、設定・表示部41は、第1の表示機能によって、停台の発生状況を停台の発生回数が視認可能な状態で表示している。この表示により、統計値に異常が現れた原因が停台によるものか否かを容易に判別することができる。しかも、停台の発生状況(停台回数)を緯糸4の異常に伴う停台と経糸13の異常に伴う停台とに分けて表示しているため、停台原因によって統計値に与える影響が異なることを考慮することにより、作業者は統計値に異常が現れた原因が停台によるものか否かをより正確に判別することができる。
なお、図3及び図4に示す停台情報の表示態様によると、各サンプリング期間毎の停台回数は棒線状にグラフィック表示され、その回数は、図3に補助的に図示した円内の部分の拡大説明図に見られるように、その棒線の数(太さ)によって視覚的に判断できるものとなっている。詳しくは、図示の棒線状のグラフィック画像では、停台回数が2回以上となった場合に、1回分の棒線が間隔をおかずに横軸方向(X軸方向)にその回数分だけ並べられるため、停台回数が1回の場合と2回以上の場合とで、視覚的には棒線の太さが大きくなった形態として視認される。ただし、1回の停台に対応する棒線状の表示が、停台回数が2回以上の場合において間隔をおいて並べられるものとしてもよく、その場合には、停台回数は、棒線の数として確認することになる。
また、図示の例では、表示画面61上での各サンプル期間内で表示可能な範囲に制限があり、最大で時間軸の方向に3目盛り(3ドット)分、つまり3回分までの表示が可能となっている。このため、停台回数が4回以上でも、その表示は3回と同じ表示のままとなっている。具体的には、各サンプリング期間(1000ピック)に対応する表示範囲は、X軸方向(時間の経過方向)に3ドット(dot)分であり、停台1回に対応する上記表示(棒線)は、横軸(X軸)方向に1ドット、高さ(Y軸)方向に17ドットのグラフィック画像である。従って図3及び図4の表示例において、表示範囲には、停台回数の最大値として3回分までが表示可能となっている。
そのように、図示の例では、停台回数について最大値として3回分までしか表示できないものとなっている。しかし、実際の製織において、最大で1000ピックの1サンプリング期間において、同じ停台原因(ヨコ停台又はタテ停台)で3回以上を超える停台は、そもそも異常であって実際には殆ど発生することがないため、実用上支障ない。
なお、停台回数の表示ついて、サンプリング期間に対応する表示範囲と同じ幅を持つブロック状のグラフィック画像が、停台回数に応じてY軸方向へ積み重ねられ、高さの変化による棒グラフにより表示するものであってもよく、また、停台回数を数字で表示するものとしてもよい。このようにすれば、表示される時間軸の範囲を狭めることなく、多くの停台回数を表示することが可能となる。
従って、停台回数の表示については、上記のような最大の停台回数を設定せずに、大きな数の停台回数を表示可能としておき、実際の停台回数をそのまま表示することもできる。このように、前述の停台回数の視認可能な状態での表示とは、表示可能な停台回数を制限する場合と、表示可能な停台回数を制限しない場合の何れの態様も含む。
つぎに、図示の表示画面61中における運転情報の表示について、図示の例では、統計値のグラフの表示欄と「タテ停台」の表示欄との間に「運転情報」と記した表示欄が設けられている。この「運転情報」の表示欄は、時間軸(横軸)に対して平行な補助の時間軸上に設けられており、そこに運転情報が変更されたことを示す記号「P」、「R」、「W」が表示されようになっている。これらの記号の意味は、図3での凡例ボタン32をタッチすることによって、図4のように小さなウインドウを開き、そのウインドウ内の運転情報説明画面35の表記から分かるようになっている。
運転情報説明画面35の表記において、「P」(パッケージセンサ)は、給糸体3の切り換わりに関する情報であり、パッケージセンサ39からの検出信号S4に基づいて給糸体3を交換した時点を表す。「R」(ヨコ制御リセット)は、緯入れ制御の実行によって緯糸4の到達角度に応じて緯入れ条件(例えば、緯入れ開始タイミング)を変更した後に、変更されたその緯入れ条件を初期値に戻すためのリセット操作を行ったことに関する情報であって、緯入れ条件を初期値に戻した時点を表す。さらに、「W」(パターン変更)は製織条件の変更に関する情報の一つとしての経糸13の開口パターンを変更した時点を表す。
上記の緯入れ制御について詳記すると、織機によっては、検出された緯糸4の到達角度に基づいて緯入れ開始タイミング(係糸ピン8の開放タイミング及び/又はメインノズル10の噴射開始タイミング)等の緯入れ条件を制御し、緯糸4の到達タイミングをほぼ一定化する自動制御の機能を持つものがある。また、前述のように、製織の進行に伴う給糸体3の巻き径の減少に応じて緯糸4の到達タイミングが変化する傾向にあるため、上記のような自動制御機能を持つ織機では、給糸体3の巻き径の減少に応じて上記緯入れ条件が制御されることになる。そして、前記の緯入れ制御のリセット操作(ヨコ制御のリセット)は、製織の進行に伴って給糸体3の残糸量が所定量以下となって、又は給糸体3の緯糸4が消尽されて、給糸体3が別の新たな給糸体3に切り換えられることに伴い、自動制御によって変更された上記緯入れ条件を初期値に戻す操作をいう。
パッケージセンサ39からの検出信号S4は、主制御部36の入力となっており、主制御部36は、検出信号S4の入力に伴って織機の停止制御を実行する。そして、給糸体3の交換が作業者によって、又は自動的に行われ、その後、主制御部36は織機を再起動して製織を再開させる。その際、前記した自動制御によって変更された緯入れ開始タイミングを初期値に戻すリセット操作は、給糸体3の交換が作業者によって行われる織機では、作業者がリセットボタンを操作することによって行われる。また、給糸体3を自動的に交換する機能を有する織機では、検出信号S4が緯入れ制御器31に入力されることにより、緯入れ制御器31の内部処理で行われる。ここで、パッケージセンサ39からの検出信号S4は、その発生に伴って製織条件としての緯入れ開始タイミングが変更されることから製織条件の変更情報とみなすことができる。そして、この検出信号S4は、主制御部36及び緯入れ制御部31に加え、設定・表示部41の入力ともなる。
なお、図1に想像線で示すように、順に使用される2以上の給糸体3の緯糸4の終端と始端とを糸結びした所謂ピックテールの状態として連続的に緯入れ可能とした給糸体3を使用する場合、上記のパッケージセンサ39に代え、ピックテールの状態の2つの給糸体3の間に設けられるピックテールセンサ(継ぎ目センサ)39aが使用され、このピックテールセンサ(39)の検出信号が、上記検出信号S4の代わりに、給糸体3の切り替わりを示す信号として主制御装置36等へ入力される。
前記の運転情報の欄に表示される情報は、図示のものに限らず、他の製織条件、例えば緯入れパターン、緯糸密度、織機の回転数の変更に関する情報を記号化して表示するようにしてもよい。因みに、前記の給糸体3の切り換わりや緯入れ条件のリセット、あるいは製織条件としての緯入れパターンや織機の回転数は、その変更によって製織中の緯糸4の飛走に影響を及ぼし、緯糸4の到達角度を変動させる要因となり得る。従って、その変更に関する情報は、緯糸4の飛走を変動させる要因に関する情報とも言える。
また、運転情報の欄に表示される記号は、図示のようなアルファベット1文字によるものに限らず、他の識別可能な記号や文字列等であってもよい。さらに、図3及び図4の表示画面61のように、統計値表示と運転情報の表示とが単一の表示画面61中に表示される場合に限らず、表示画面61中に開かれる別のウインドウの表示画面に運転情報を表示するようにしてもよい。この場合も、両者は同一画面上に表示されているといえる。
つぎに、図5ないし図7は、設定・表示部41の第2の表示機能によって、表示画面61の特定の範囲の拡大表示画面62の例を示している。図3又は図4の表示画面61において、作業者が時間軸上で期間を指定すると、設定・表示部41は、指定により設定された期間における到達タイミングの統計値に関する表示及び停台回数の表示を、図5ないし図7のように、別の拡大表示画面62によって大きく表示する機能(第2の表示機能)を有している。なお、図の例では、前述の運転情報に関する表示は示されていないが、この運転情報に関する表示についても、拡大表示画面62に表示するようにしてもよい。
図5ないし図7の例は、拡大表示前の表示画面61に代えて別の拡大表示画面62を置き換えて表示する態様としている。しかし、この拡大表示画面62は、拡大前の表示画面61を残したままその画面の上にずらした状態で重ねて表示してもよいし、拡大表示前の表示画面61と並べて表示してもよい。さらに図示の拡大表示では、停台の発生状況を示す停台回数を停台原因別、すなわち、その停台原因を検出した検出器(センサ)の種類別に表示するものとなっている。ただし、例示の表示期間は、あくまでも一例であって、時間軸上での表示期間を狭めて、X軸方向の目盛りの間隔を大きく取れば、さらに詳細に表示可能となる。なお、図5の拡大表示画面62は、右下の閉じるボタン55をタッチすることによって、図3の表示画面61に戻る。
既述のように、画面表示器47がタッチパネル式で設定入力手段37を兼用している。このため、作業者は、表示画面61の特定の位置をタッチすることによって時間軸上の拡大表示させたい範囲を設定するようになっている。このとき表示画面61のタッチ部分は、設定入力手段37として機能することになる。具体的には、作業者が時間軸上において、拡大表示させたい部分の中間部付近の画面をタッチすることにより、それに対応する1時点が指定された状態となり、その指定された時点を基準とした前後の予め設定された期間からなる拡大期間が設定される。
ただし、この拡大期間の設定については、拡大表示させたい期間の中間点を基準の時点として指定するものに限らず、期間の始め又は終わりを基準となる時点として指定し、それに基づいて拡大表示させたい期間が設定されるものであってもよい。また、指定された1時点と予め設定された期間とに基づいて拡大表示させたい期間を設定するのに代え、期間の始めと終わりの2時点を指定して期間を設定するものであってもよい。さらには、期間設定の元となる前記時点(中間点、始点、終点)の指定は、タッチパネル式で表示画面をタッチするものに限らず、ピック番号等の数値を入力して指定(設定)するものとしてもよい。
なお、ここでは、期間設定のための前記指定動作(期間設定操作)が同時に拡大表示の操作を兼ねている。換言すれば、期間設定操作を行うだけで自動的に拡大表示が行われるようになっている。ただし、これらの期間設定操作と拡大表示操作とは、別々の操作として行うこともでき、さらには、拡大表示の操作のときに拡大率の設定も任意に変更できるようにするとよい。
また、拡大表示する期間は、前記のように、作業者によって任意に指定された時点に基づいて設定される。すなわち拡大表示させたい期間を任意に設定可能とするものに限らず、設定・表示部41に予め特定の期間、例えば、現時点を起点としてそれ以前の所定の期間を設定値(過去の時間値あるいは過去のピック数の数値)によって予め設定しておき、前記の期間設定操作を行わずに、拡大表示の操作を行うことにより、設定された所定の期間における表示を拡大して表示させることも可能である。そして、この場合は拡大表示操作が同時に期間設定操作を兼ねていることになる。
さらに、図5において、作業者が拡大表示画面62の右上の「凡例」と表記されている凡例ボタン53をタッチすると、図6に示す様に、同じ画面上に小さな解説用のウインドウが表示され、解説画面58が表れ、そこに必要事項が表示される。具体的には、解説画面58内の停台回数の表示枠59内には、表示態様を異にして表示された停台回数を表す各表示記号と各停台原因との対応関係が表示される。図示の例では、各停台原因は、各停台原因を検出するための検出器(センサ)の名称(H1フィーラ、H2フィーラ、ドロッパ及びレノ)で表示されている。ちなみに、上記のH1フィーラは、第1の緯糸フィーラ21及びセンサ24に対応しており、H1フィーラの検知結果に基づく織機の停止はH1停止とも呼ばれている。また、上記のH2フィーラは、第2の緯糸フィーラ22及びセンサ25に対応しており、H2フィーラの検知結果に基づく織機の停止はH2停止とも呼ばれている。
また、解説画面58の到達角度の表示枠60内には、統計値、すなわちグラフ表示用の各線種と最大値/最小値、平均及び標準偏差との対応関係が表記される。図6において、解説画面58は右下の閉じるボタン56をタッチすることにより閉じる。
このように、時間軸上で指定された範囲が拡大表示されると共に、前記停台の発生状況が停台原因別に表示されるため、作業者は、統計値の異常を視覚的に確認し易くなり、その原因の判別を具体的な停台原因を考慮できるために、さらに正確に判別を行えるようになる。
作業者は、表示内容を確認した結果、統計値の異常が現れた原因を織機の停台によるものと容易に判別できれば、今後の製織にそれ程影響を及ぼさないと判断でき、見過ごすことも可能である。逆に統計値に異常が現れているにも拘わらず、そのサンプリング期間において、統計値に影響する程の回数の停台が発生していない場合、その原因が停台では無いと判断でき、緯糸4あるいは装置の異常等が原因ではないかと推測できる。このような表示によれば、統計値に異常として現れた原因が停台か否かが容易に判断でき、それに基づいて原因の特定がより短時間で行えるものとなる。
つぎに、図7は、製織条件(特に、緯入れ条件)の設定値の変更に関する情報として、前述の「入力履歴」を表示する例である。図5の拡大表示画面62において、作業者が拡大表示画面62の右上の入力履歴ボタン63をタッチすると、図7に示す様に、同じ画面上に小さな入力履歴表示用のウインドウが表示され、そのウインドウ内の入力履歴の表示画面64内に製織条件(図示の例では一例としての緯入れ条件)の設定値の変更に関しての「入力履歴」が表示される。表示画面64では、拡大表示されている期間において作業者によって行われた製織条件の設定値の変更に関する情報が、時間的に古いものほど画面の下に位置するような順で履歴として表示される。ただし、後述するように、この製織条件の変更情報の表示に関しては、「拡大表示」や「期間指定」は必須ではなく、必要に応じて行われる。
なお、図5において、その画面下に示されているのように、1サンプリング期間が1000ピックに設定されているとすると、図7で拡大表示される期間は、カラーC1の緯糸4の緯入れに関する現在から11サンプリング期間前までの期間、言い換えると、カラーC1の緯糸4が11000ピック緯入れされる間の期間である。これは、織機の製織期間でいえば、例えば、4色の緯糸4が均等に選択されて緯入れされるとすると、上記期間は、その織機において44000ピックの緯入れが行われる期間である。そして、表示される入力履歴に含まれる緯入れ条件の設定変更情報は、このカラーC1の緯糸4による11000ピックの緯入れが行われる期間に応じた織機の製織期間において行われた緯入れ条件の設定値の変更を表す情報となる。
また、図7の例では、上記入力履歴の表示画面64が、統計値表示の表示画面62とは別ウインドウで、表示画面62に重ねた状態で表示される。このように図7の例では、図5の拡大表示画面62に別のウインドウを開き、そのウインドウの表示画面64に、緯入れ条件の設定変更情報として入力履歴を表示しているが、そのような表示態様も統計値表示と入力履歴とを同一画面上に表示しているといえる。なお、入力履歴を表示する表示画面64は、上記のように拡大表示画面62に重ねた形態で表示するのに代えて、拡大表示画面と並べて同一画面上に表示することもできる。さらには、図3又は図4の表示画面61において期間を指定し、その指定された期間における入力履歴を表示画面61と同一画面上に表示することも可能である。
図示の入力履歴に関する表示例について、各表示の内容は次の通りである。表示画面中の「サブ1」、「補助メイン」、「メイン」、「係止ピン」は、設定変更された対象装置を表し、1番目のグループのサブノズル11、補助メインノズル10a、主メインノズル10b、係止ピン8をそれぞれ表している。なお、各グループのサブノズル11は、メインノズル10に近いグループから1番目、2番目・・となる。
「C1」、「C2」は、それぞれカラー1、カラー2に対応しており、多色の緯入れ装置1で緯入れされる複数の緯糸4のうちのどの緯糸に対する設定値かを表している。3以上のメインノズル10を使用して緯入れを行う場合(同じ緯糸4を2以上のメインノズル10から緯入れする場合も含む。)は、更に「C3」、「C4」・・となる。
「ON」、「OFF」は、ノズル(メインノズル10、サブノズル11)であれば、それぞれ噴射開始タイミング、噴射終了タイミングを表す。係止ピン8の場合に、「ON」は後退することによって緯糸4を解舒可能な状態とするタイミング、「OFF」はドラム7に進出し、緯糸4を係止可能な状態とするタイミングを表す。
また、「65→70」、「185→190」等の表記において、各数字は織機の主軸33の回転角度θ(クランク角度)を表し、設定値がクランク角度65°から70°へ、クランク角度185°から190°へ変更されたことを表す。
最も右側の〔−2〕、〔−6〕等は、その設定変更が行われた時期を表し、〔−2〕は現在よりも2つ前のサンプリング期間において設定変更が行われたことを表す。すなわち、複数の変更情報を履歴的に表示する場合には、どの時点でその設定変更が行われたかを把握できるようにする必要があるため、図示の例における製織条件の変更情報は、対象装置や、その設定値だけでなく、変更が行われた時期(時間)に関する情報(時期情報)も含んでいる。
以上の定義付けから、例えば「サブ1 C1 ON 65 → 70 〔−2〕」は、カラー1に関する統計値の2サンプリング期間前において、カラー1の緯糸4を緯入れするときに、第1グループのサブノズル11群の噴射開始タイミングがクランク角度65°から70°に変更されたことを表す。
ところで、図示の入力履歴表示では、緯糸4のカラー別ではなく、異なる緯糸4のための緯入れ条件の設定変更情報が混在しており、前述の期間に行われた緯入れ条件の設定値の変更を表す情報の全てが履歴として表示されている。このように、表示される入力履歴は表示している統計値表示に対応する緯糸4の緯入れに対する緯入れ条件の設定値の変更情報のみが表示されるものに限らず、別の緯糸4の緯入れに対する緯入れ条件の変更情報を含むものであってもよい。また、緯入れに関するもの(緯入れ条件)以外の製織条件の設定変更情報も入力履歴に含めて表示するものもであってもよい。さらに、緯入れに関するもの(緯入れ条件)以外の製織条件(例えば、緯入れパターン、経糸開口パターン、緯糸密度、織機の回転数等)の設定変更情報も入力履歴に含めて表示するものもであってもよい。
ただし、上記のように、入力履歴の表示画面64中において、表示している統計値表示とは関係の無い製織条件の設定値の変更情報も表示されると、作業者が表示事項から誤った判断を行ってしまうことも考えられる。例えば、カラーC1の緯糸4に関する統計値表示上で統計値に異常がみられたために入力履歴を表示させた場合、カラーC1の緯糸4の緯入れに対する緯入れ条件の変更情報のみを確認したいにも関わらず、他の変更情報が同じ表示画面上に多く表示されていると、その確認に時間を要してしまう可能性がある。また統計値に異常が現れたのと同じサンプリング期間に別の緯糸4の緯入れに対する緯入れ条件が変更されていた場合に、その変更情報をカラーC1の緯糸4に関するものと誤認してしまうおそれもある。そこで、誤認の防止のために、入力履歴として表示する製織条件の設定変更情報を、表示している統計値表示に対応する緯糸4の緯入れに対応する情報のみとするか、あるいは、他の緯糸4の緯入れに対する製織条件の設定値の変更情報は表示されないようにしてもよい。また、表示数を絞るべく、特定の製織条件(例えば、メインノズル10やサブノズル11の噴射タイミング)を指定可能とし、その指定された製織条件の設定値の変更情報に関する入力履歴のみを表示するようにしてもよい。
以上の例によれば、製織過程において、図3の到達角度に関する統計値の表示画面上で統計値に異常が確認された場合、作業者は、図3の表示画面上において期間を指定して図5のように拡大表示する。図5の例では、現時点から過去11サンプリング期間前までが指定された期間として表示されている。そして、作業者は、図5のの拡大表示された表示画面62において、異常が発生し始めたサンプリング期間を確認し、次に図5の表示画面62上の入力履歴ボタン63を操作し、指定された期間における入力履歴のウインドウを開き、入力履歴の表示画面64を表示する。
これにより、作業者は、到達角度に関する統計値に異常が現れたサンプリング期間において、その統計値に対応する緯糸の緯入れに対する製織条件の設定値が変更されていた場合に、その設定値の変更(変更後の設定値)に問題があったと推認することができる。特にそのサンプリング期間において、前述の停台状況に関する表示から確認できる織機の停台や、緯糸4(給糸体3)の切り換わりに伴う製織条件の変更等の他の原因となり得るものが無ければ、作業者によって行われた製織条件の設定値の変更を原因の有力な候補として判断することができる。従って、本発明によれば、到達角度に関する統計値に異常が現れた原因を、製織条件の変更情報から容易かつ迅速に特定することができる。
本発明は、上記具体例に限らず、以下のように変形して実施できる。前述の具体例では、入力履歴の表示画面64を、統計値表示の表示画面61とは別のウインドウとして、統計値表示の拡大表示画面62上に重ねる形態で表示するものとしたが、本発明はこれに限定されない。両者は、同一画面上に表示されておればよく、2つ並べて表示するものであってもよい。すなわち、本願発明でいう「同一画面上に表示」とは、図示の例のような重ねて表示するものに限らず、並べて表示するものも含む。
前述の具体例では、到達時期に関する統計値の表示画面において指定した期間を拡大表示し、この拡大表示された期間における入力履歴を表示するものとしたが、この拡大表示を省略し、指定した期間における入力履歴を図3又は図4の表示画面61と同一画面上に表示するものであってもよい。
また、前述の具体例では、拡大表示のために期間を設定し、その設定期間内における入力履歴を表示するものとしたが、これに代えて、時間軸上において任意の時点を指定可能とし、その指定により設定した時点に最も近い時点で行われた設定変更から順に、設定された数の設定変更に関する情報を入力履歴として表示するようにしてもよい。この場合、指定された時点よりも前に行われた設定変更のみであってもよいし、その前後に行われた設定変更に関する設定数だけ入力履歴として表示するものであってもよい。なお、期間の指定について、図示の例では、現在を起点として期間を指定するものとしてあるが、本発明はこれに限らず、過去の任意の期間を指定し、その期間における入力履歴を表示するようにしてもよい。また、期間や特定の時点の指定を省略し、例えば、履歴表示のボタン操作により、現在を起点としたそれ以前の特定の期間、または特定の数の変更情報が入力履歴として表示されるようにすることもできる。
さらに、入力履歴の表示について、前述の具体例では、指定された範囲における入力履歴として表示される各設定変更情報が、何時の時点(サンプリング期間)で設定変更が行われたかを情報(時間情報)として含んでいる。しかし、指定される期間が狭い範囲、例えば特定の1サンプリング期間であれば、この時間情報を省略することができる。また、変更された設定値に関する情報を省略し、どの製織条件が何時変更されたかのみを情報として表示するものであってもよい。この場合、別の表示画面によって詳細な情報(設定値、詳細な時期、変更した作業者等)を表示できるようにしてもよい。
以上では、「製織条件の変更に関する情報」の例として、作業者によって設定変更された製織条件の設定値に関する「入力履歴」を表示する場合について述べたが、本発明における「製織条件の変更に関する情報」は、これに限定されず、他の製織条件の切り換わりに関する情報をも含む。例えば、製織される織物の種類等によっては、製織中に開口パターン(織物組織)が変更されたり、あるいは回転数が変更されたりする場合がある。このように、製織条件(開口パターン、回転数等)が製織途中で切り換わるように予め設定されたものにおいて、その切り換わり(製織条件の変更)が行われたことを情報として表示するようにしてもよい。従って、先に述べた図3及び図4に示されている運転情報の欄に表示される情報のうちの製織条件に関するものも、本発明でいう「製織条件の変更に関する情報」に含まれる。