JP2010064293A - アルミニウム塗装板及びアルミニウム缶蓋 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形加工における樹脂塗膜のカジリ現象が低減され、金型に対するワックス成分のビルドアップが低減されたアルミニウム塗装板の提供。
【解決手段】アルミニウム合金板の両面に塗膜量が0.5〜20g/m2となる樹脂塗膜が形成し、片面の樹脂塗膜にポリエチレンワックス0.05〜4.95mass%、カルナバワックス0.05〜2.5mass%、その他のワックス0〜4.9mass%からなり、カルナバワックス/ポリエチレンワックスの重量比が1以下となるワックスを含有させ、他面の樹脂塗膜にカルナバワックス0.05〜1.0mass%、その他のワックス0〜0.95mass%となるワックスを含有させ、両面のカルナバワックスの総量を0.1〜2.0mass%とした。
【選択図】なし
【解決手段】アルミニウム合金板の両面に塗膜量が0.5〜20g/m2となる樹脂塗膜が形成し、片面の樹脂塗膜にポリエチレンワックス0.05〜4.95mass%、カルナバワックス0.05〜2.5mass%、その他のワックス0〜4.9mass%からなり、カルナバワックス/ポリエチレンワックスの重量比が1以下となるワックスを含有させ、他面の樹脂塗膜にカルナバワックス0.05〜1.0mass%、その他のワックス0〜0.95mass%となるワックスを含有させ、両面のカルナバワックスの総量を0.1〜2.0mass%とした。
【選択図】なし
Description
本発明は成形加工における潤滑性不足による樹脂塗膜のカジリ現象が低減され、かつ、金型に対するワックス成分のビルドアップが低減されたアルミニウム塗装板に関する。
アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、「アルミニウム合金」と記す)は、軽量で適度な機械的特性を有し、かつ美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類等に広く用いられている。
特に、コイル状にしたアルミニウム合金板をプレス機に連続的に供給する方式の成形加工は生産性に優れるため、上記用途に広く採用されている。このような用途のアルミニウム合金は、耐食性や対溶出性の向上、外観の向上、傷付きを防止を目的として、表面に樹脂塗料が塗装されることも多い。この際に、アルミニウム合金板には何らかの下地処理(例えばリン酸クロメート、クロム酸クロメート、リン酸亜鉛又はリン酸ジルコニウム等)が施される。
アルミニウム合金板の樹脂塗装とプレス加工の前後関係は、アルミニウム缶蓋や一部の熱交換器フィンのように、樹脂塗装を施してからプレスするプレコート方式と、アルミニウム缶ボディや自動車パネルのようにプレスした後に塗装を施すポストコート方式に分かれる。
特に、コイル状にしたアルミニウム合金板をプレス機に連続的に供給する方式の成形加工は生産性に優れるため、上記用途に広く採用されている。このような用途のアルミニウム合金は、耐食性や対溶出性の向上、外観の向上、傷付きを防止を目的として、表面に樹脂塗料が塗装されることも多い。この際に、アルミニウム合金板には何らかの下地処理(例えばリン酸クロメート、クロム酸クロメート、リン酸亜鉛又はリン酸ジルコニウム等)が施される。
アルミニウム合金板の樹脂塗装とプレス加工の前後関係は、アルミニウム缶蓋や一部の熱交換器フィンのように、樹脂塗装を施してからプレスするプレコート方式と、アルミニウム缶ボディや自動車パネルのようにプレスした後に塗装を施すポストコート方式に分かれる。
プレコート方式では、塗装されたアルミニウム合金板(以下、「アルミニウム塗装材」と記す)のプレス成形性を向上させるため、塗装塗膜表面に潤滑剤の層を形成させることが一般的に行われている。具体的には、塗装塗膜用塗料の成分に植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス又は石油系ワックス等をインナーワックスとして添加し、塗装、焼付によりワックス成分を塗膜表面に析出させる方法や、塗装後の塗膜表面に石油系ワックス等をアウターワックスとして塗布する方法などが挙げられる。これらの方法によれば、アルミニウム塗装材に潤滑性が付与されるため、プレス成形性の向上に一定の効果があり、その結果として、製品品質の安定性、プレス金型寿命の延長等に寄与する。
しかしながら、上述の従来技術においては以下に示すような問題点がある。
近年になってプレス速度の高速化が益々進み、また加工精度に対する要求も厳しくなっていることに対応して、プレス金型の設計がより高度になっている。しかしながら、こうしたプレス加工機に従来技術に基づいたアルミニウム塗装材を適用すると、潤滑性が不足するため、加工時に強い力を受ける部分、例えばアルミニウム缶蓋における端面、スコアー部及びリベット部等において、金型への塗装塗膜の焼付きや塗装塗膜の剥離などの、いわゆるカジリ現象を生じることがある。このようなカジリ現象はプレス成形品の商品価値を著しく損なうため、その防止対策が求められていた。
また、カジリ対策としてアルミニウム塗装材表面に加工用潤滑油を塗布する方法も考えられるものの、加工後に洗浄工程が必要とされることや、潤滑油そのものが樹脂塗膜に損傷を与えることがある等の問題があり、必ずしも有効な手段ではない。
また、カジリ現象の他に、ワックス成分が金型に付着して堆積する、いわゆるビルドアップ現象が生じることもある。これは、金型に堆積したワックス成分によって金型が設計通りに機能せず、成形品の加工精度や、成形品の傷付きを引き起こすため、その対策が強く求められている。
しかしながら、上述の従来技術においては以下に示すような問題点がある。
近年になってプレス速度の高速化が益々進み、また加工精度に対する要求も厳しくなっていることに対応して、プレス金型の設計がより高度になっている。しかしながら、こうしたプレス加工機に従来技術に基づいたアルミニウム塗装材を適用すると、潤滑性が不足するため、加工時に強い力を受ける部分、例えばアルミニウム缶蓋における端面、スコアー部及びリベット部等において、金型への塗装塗膜の焼付きや塗装塗膜の剥離などの、いわゆるカジリ現象を生じることがある。このようなカジリ現象はプレス成形品の商品価値を著しく損なうため、その防止対策が求められていた。
また、カジリ対策としてアルミニウム塗装材表面に加工用潤滑油を塗布する方法も考えられるものの、加工後に洗浄工程が必要とされることや、潤滑油そのものが樹脂塗膜に損傷を与えることがある等の問題があり、必ずしも有効な手段ではない。
また、カジリ現象の他に、ワックス成分が金型に付着して堆積する、いわゆるビルドアップ現象が生じることもある。これは、金型に堆積したワックス成分によって金型が設計通りに機能せず、成形品の加工精度や、成形品の傷付きを引き起こすため、その対策が強く求められている。
ビルドアップ現象はカジリ現象と相反する特性であり、ビルドアップの対策としてはアルミニウム塗装材表面のワックス成分の総量を減らすことが最も容易である。しかしながら、高速連続プレス加工や複雑な成形加工に使用されるプレス成形においては、
ワックス成分量を減らすことは潤滑性不足に直結し、樹脂塗膜のカジリ現象等の成形不良を招くことが多い。したがって、ワックス成分の総量を単に減らすだけでは、問題解決において不十分である。
ワックス成分量を減らすことは潤滑性不足に直結し、樹脂塗膜のカジリ現象等の成形不良を招くことが多い。したがって、ワックス成分の総量を単に減らすだけでは、問題解決において不十分である。
このような不具合を解決するために、インナーワックスを工夫する種々の提案がなされている。特許文献1には、少なくとも片面に樹脂塗膜層が設けられた金属板において、該樹脂塗膜層の表面エネルギーを50mJ/m2以下、該樹脂塗膜層の厚みが0.1g/m2以上20g/m2以下であり、ワックスとして少なくともポリエチレンワックスとカルナバワックスを各々0.1mass%以上9.9mass%以下、総量で0.1mass%以上10mass%以下含み、カルナバワックス/ポリエチレンワックスの重量比を0.25以上10以下とすることが記載されている。
特許文献2には、片面あるいは両面に塗装焼付して塗膜を設けたアルミニウム合金塗装板において、塗膜の重量が30〜150mg/dm2であり、塗料にはインナーワックスとしてカルナウバとラノリンを各々0.1〜2.0PHR(PER HUNDRED REGIN)添加し、カルナウバとラノリンの合計重量に対するカルナウバの重量が70%〜90%であることが記載されている。
:特開2005−74790号公報
:特開2005−343043号公報
しかしながら、前記技術を用いても、ビルドアップ現象とカジリ現象を共に解決させることはインナーワックスの種類、量、分布を定めるだけでは不十分であった。
すなわち、アルミニウム合金板の一方の面に塗膜量が0.5〜20g/m2となる樹脂塗膜A、他方の面に塗膜量が0.5〜20g/m2となる樹脂塗膜Bが形成され、樹脂塗膜Aは塗膜量に対してポリエチレンワックス0.05〜4.95mass%、カルナバワックス0.05〜2.5mass%、その他のワックス0〜4.9mass%からなり、カルナバワックス/ポリエチレンワックスの重量比が1以下となるワックスAを含有し、樹脂塗膜Bは塗膜量に対してカルナバワックス0.05〜1.0mass%、その他のワックス0〜0.95mass%となるワックスBを含有し、該ワックスAのカルナバワックス量をCAmass%、該ワックスBのカルナバワックス量をCBmass%としたときCA+CBが0.1〜2.0となることを、特徴とするアルミニウム塗装板。
ワックスAにその他のワックスとして、石油ワックス、植物ワックス、動物ワックスから選択されるワックスを1種以上を含む請求項1のアルミニウム塗装板。
ワックスBにその他のワックスとして、石油ワックス、合成ワックス、植物ワックス、動物ワックスから選択されるワックスを1種以上を含む請求項1又は請求項2のアルミニウム塗装板。
該樹脂塗膜Aが外面となり、該樹脂塗膜Bが内面となる、請求項1〜請求項3いずれかのアルミニウム塗装板を用いたアルミニウム缶蓋。
本発明は、アルミニウム塗装板の面毎に、所定のワックス種類、ワックス量を定め、塗料に含有させ塗布することにより、耐カジリ性及び耐ビルドアップ性を両立させたアルミニウム塗装材として好適に使用される。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の特徴は、アルミニウム塗装板において、コイルに巻き取った後の塗膜の表面状態を考慮し、両面のワックス組成を併せて規定したことにある。
本発明の特徴は、アルミニウム塗装板において、コイルに巻き取った後の塗膜の表面状態を考慮し、両面のワックス組成を併せて規定したことにある。
A.アルミニウム合金板
本発明で用いるアルミニウム合金板としては、アルミニウム又は、アルミニウム合金として3000系や5000系が好適に用いられる。
本発明で用いるアルミニウム合金板としては、アルミニウム又は、アルミニウム合金として3000系や5000系が好適に用いられる。
B.樹脂塗膜
本発明では、アルミニウム合金板の両面に樹脂塗膜が形成される。樹脂塗膜は、ベース樹脂とワックスを配合して溶媒である有機溶剤や水等に溶解又は分散した塗料をアルミニウム合金板表面に塗布し、乾燥後に焼付けすることによって形成される。塗料の塗布には、ロールコート法が用いられ、焼付け温度は、通常、200〜300℃である。
なお、アルミニウム合金板の表面に下地処理を施して下地皮膜を形成することにより、樹脂塗膜の密着性が良好となり成形加工性の向上に寄与する。下地皮膜としては、リン酸ジルコニウム皮膜やリン酸チタニウム皮膜などのノンクロメート皮膜、リン酸クロメート皮膜などのクロメート皮膜が挙げられる。更に、下地処理の前に、アルミニウム合金板をアルカリ脱脂等によって前処理するのが好ましい。
樹脂塗膜のベース樹脂としては、エポキシ樹脂、エポキシ/アクリル樹脂、エポキシ/尿素樹脂、エポキシ/フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂が用いられる。
本発明では、アルミニウム合金板の両面に樹脂塗膜が形成される。樹脂塗膜は、ベース樹脂とワックスを配合して溶媒である有機溶剤や水等に溶解又は分散した塗料をアルミニウム合金板表面に塗布し、乾燥後に焼付けすることによって形成される。塗料の塗布には、ロールコート法が用いられ、焼付け温度は、通常、200〜300℃である。
なお、アルミニウム合金板の表面に下地処理を施して下地皮膜を形成することにより、樹脂塗膜の密着性が良好となり成形加工性の向上に寄与する。下地皮膜としては、リン酸ジルコニウム皮膜やリン酸チタニウム皮膜などのノンクロメート皮膜、リン酸クロメート皮膜などのクロメート皮膜が挙げられる。更に、下地処理の前に、アルミニウム合金板をアルカリ脱脂等によって前処理するのが好ましい。
樹脂塗膜のベース樹脂としては、エポキシ樹脂、エポキシ/アクリル樹脂、エポキシ/尿素樹脂、エポキシ/フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂が用いられる。
C.樹脂塗膜量
樹脂塗膜は、樹脂塗膜A及び樹脂塗膜Bはともにその塗膜量が0.5g/m2以上20g/m2以下のときに成形加工性や他の特性も良好となる。0.5g/m2未満では、ワックス分布状態を前記したように規定しても成形加工性が低下し耐食性にも劣る。塗膜量が20g/m2を超えると、樹脂塗膜層の密着性の低下により成形加工性が低下し、更にコスト高になるので経済的ではない。樹脂塗膜量は、好ましくは1〜15g/m2である。より好ましくは樹脂塗膜Aを缶蓋材の外面に使う場合には3〜5g/m2、樹脂塗膜Bを缶蓋材の内面に使う場合には、内容物に応じて耐食性が確保できるよう3〜15g/m2とする。なお、樹脂塗膜層の塗膜量は硫酸脱膜による皮膜質量試験法を用いて測定される。
樹脂塗膜は、樹脂塗膜A及び樹脂塗膜Bはともにその塗膜量が0.5g/m2以上20g/m2以下のときに成形加工性や他の特性も良好となる。0.5g/m2未満では、ワックス分布状態を前記したように規定しても成形加工性が低下し耐食性にも劣る。塗膜量が20g/m2を超えると、樹脂塗膜層の密着性の低下により成形加工性が低下し、更にコスト高になるので経済的ではない。樹脂塗膜量は、好ましくは1〜15g/m2である。より好ましくは樹脂塗膜Aを缶蓋材の外面に使う場合には3〜5g/m2、樹脂塗膜Bを缶蓋材の内面に使う場合には、内容物に応じて耐食性が確保できるよう3〜15g/m2とする。なお、樹脂塗膜層の塗膜量は硫酸脱膜による皮膜質量試験法を用いて測定される。
D.ポリエチレンワックスおよびカルナバワックスの作用効果
本発明において、樹脂塗膜Aではポリエチレンワックスおよびカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせて、樹脂塗膜Bではカルナバワックス単独或いはカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせて用いられる。ポリエチレンワックスの分布状態を図1へ、カルナバワックスの分布状態を図2へ模式的に示す。
ポリエチレンワックスは、樹脂塗膜の内部に粒状に分散しやすく、比較的硬度が高いことから、特に耐摩耗性向上に寄与する。一方、大量に添加すると耐食性や密着性の低下の原因となり、これらの性能が要求される用途、例えば缶蓋材の内面側に使用する場合には注意が必要である。また、カルナバワックスは、特に潤滑性向上に寄与する。樹脂塗膜の表面に析出しやすいことから、耐食性や密着性を妨げにくく、これらの性能を重視する用途に好適である。
これらのことから、缶蓋用に使用されるアルミニウム塗装板には、ポリエチレンワックスおよびカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせた樹脂塗膜Aを端部のカジリが生じやすい外面側に、カルナバワックス単独或いはカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせた樹脂塗膜Bを内容物に接する内面側に用いるのが良い。
本発明において、樹脂塗膜Aではポリエチレンワックスおよびカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせて、樹脂塗膜Bではカルナバワックス単独或いはカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせて用いられる。ポリエチレンワックスの分布状態を図1へ、カルナバワックスの分布状態を図2へ模式的に示す。
ポリエチレンワックスは、樹脂塗膜の内部に粒状に分散しやすく、比較的硬度が高いことから、特に耐摩耗性向上に寄与する。一方、大量に添加すると耐食性や密着性の低下の原因となり、これらの性能が要求される用途、例えば缶蓋材の内面側に使用する場合には注意が必要である。また、カルナバワックスは、特に潤滑性向上に寄与する。樹脂塗膜の表面に析出しやすいことから、耐食性や密着性を妨げにくく、これらの性能を重視する用途に好適である。
これらのことから、缶蓋用に使用されるアルミニウム塗装板には、ポリエチレンワックスおよびカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせた樹脂塗膜Aを端部のカジリが生じやすい外面側に、カルナバワックス単独或いはカルナバワックスを含む2種類以上を組み合わせた樹脂塗膜Bを内容物に接する内面側に用いるのが良い。
D−1.ワックスA
樹脂塗膜Aに含有されるワックスAは、ポリエチレンワックス0.05〜4.95mass%、カルナバワックス0.05〜2.5、その他のワックス0〜4.9mass%からなる。
ワックスAの総量が0.1mass%未満だと十分な効果が得られず、プレス加工時の耐カジリ性が低下する。また、ワックスAの総量が5mass%を越えるとプレス加工時の金型へのビルドアップが酷くなり、成形品にキズがつくなど正常な成形ができなくなる。
ワックスAの総量は好ましくは1mass%以上3mass%以下である。
また、カルナバワックス/ポリエチレンワックスの重量比は1以下とする。1以上だとワックスの樹脂塗膜表面への析出が多くなり、金型へのビルドアップが悪化してしまう。好ましくは0.25以上0.9以下である。
その他ワックスとして用いられるワックスは、カルナバワックス及びポリエチレンワックスの特性に影響しなければ限定されないが、特に石油ワックスとしてはマイクロクリスタリン、パラフィンワックス、植物ワックスとしてはライスワックス、動物ワックスとしてはラノリンワックスが挙げられる。
樹脂塗膜Aに含有されるワックスAは、ポリエチレンワックス0.05〜4.95mass%、カルナバワックス0.05〜2.5、その他のワックス0〜4.9mass%からなる。
ワックスAの総量が0.1mass%未満だと十分な効果が得られず、プレス加工時の耐カジリ性が低下する。また、ワックスAの総量が5mass%を越えるとプレス加工時の金型へのビルドアップが酷くなり、成形品にキズがつくなど正常な成形ができなくなる。
ワックスAの総量は好ましくは1mass%以上3mass%以下である。
また、カルナバワックス/ポリエチレンワックスの重量比は1以下とする。1以上だとワックスの樹脂塗膜表面への析出が多くなり、金型へのビルドアップが悪化してしまう。好ましくは0.25以上0.9以下である。
その他ワックスとして用いられるワックスは、カルナバワックス及びポリエチレンワックスの特性に影響しなければ限定されないが、特に石油ワックスとしてはマイクロクリスタリン、パラフィンワックス、植物ワックスとしてはライスワックス、動物ワックスとしてはラノリンワックスが挙げられる。
D−2.ワックスB
樹脂塗膜Bに含有されるワックスBは、カルナバワックス0.05〜1.0mass%、その他のワックス0〜0.95mass%からなる。
ワックスBの総量は0.1mass%未満だとワックスの量が不足してプレス加工時の耐カジリ性が低下する。1mass%を越えると、缶蓋の内面側に用いた場合、フレーバー性等内容物への影響が無視できなくなる。好ましくは0.2mass%以上0.75mass%以下である。
その他ワックスとして用いられるワックスは、カルナバワックスの特性に影響しなければ限定されないが、特に石油ワックスとしてはマイクロクリスタリン、パラフィンワックス、合成ワックスとしてはポリエチレンワックス、植物ワックスとしてはライスワックス、動物ワックスとしてはラノリンワックスが挙げられる。
樹脂塗膜Bに含有されるワックスBは、カルナバワックス0.05〜1.0mass%、その他のワックス0〜0.95mass%からなる。
ワックスBの総量は0.1mass%未満だとワックスの量が不足してプレス加工時の耐カジリ性が低下する。1mass%を越えると、缶蓋の内面側に用いた場合、フレーバー性等内容物への影響が無視できなくなる。好ましくは0.2mass%以上0.75mass%以下である。
その他ワックスとして用いられるワックスは、カルナバワックスの特性に影響しなければ限定されないが、特に石油ワックスとしてはマイクロクリスタリン、パラフィンワックス、合成ワックスとしてはポリエチレンワックス、植物ワックスとしてはライスワックス、動物ワックスとしてはラノリンワックスが挙げられる。
D−3.ワックスAとワックスBのカルナバワックス量
樹脂塗膜Aのカルナバワックス量をCAmass%、樹脂塗膜Bのカルナバワックス量をCBmass%としたとき、CA+CBが0.1以上2.0以下となるようにする必要がある。0.1未満ではそれぞれの樹脂塗膜の潤滑性が十分得られない。2.0を越えると塗装したアルミニウム板をコイルアップした際、外面側の樹脂塗膜表面に析出したワックスと、内面側の樹脂塗膜表面に析出したワックスが混合、転写することにより、片方の塗膜表面上のワックス量が多くなり過ぎ、成形時の金型へのビルドアップが悪化してしまう。好ましくは0.5以上1.8以下である。
樹脂塗膜Aのカルナバワックス量をCAmass%、樹脂塗膜Bのカルナバワックス量をCBmass%としたとき、CA+CBが0.1以上2.0以下となるようにする必要がある。0.1未満ではそれぞれの樹脂塗膜の潤滑性が十分得られない。2.0を越えると塗装したアルミニウム板をコイルアップした際、外面側の樹脂塗膜表面に析出したワックスと、内面側の樹脂塗膜表面に析出したワックスが混合、転写することにより、片方の塗膜表面上のワックス量が多くなり過ぎ、成形時の金型へのビルドアップが悪化してしまう。好ましくは0.5以上1.8以下である。
以下に、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1〜17及び比較例1〜9
アルミニウム合金板として、板状のJIS 5182−H19合金(板厚0.25mm)を用いた。このアルミニウム合金板の両面に、前処理として市販のアルカリ脱脂液((株)日本ペイント社製、サーフクリーナー420N−2)を用いて脱脂した後、下地処理として市販のリン酸クロメート液((株)日本ペイント社製、アルアサーフ45/405)を用いて付着量としてCr量換算で20mg/m2の化成処理を施した。次いで、表1に示す組成のワックスと、ベース樹脂であるエポキシ樹脂とを溶媒である水と有機溶剤との混合溶液に分散したエポキシ系樹脂塗膜A、Bを、連続塗装ラインにおいてロールコーターによって合金板のそれぞれの面に塗布し、焼付け時間30秒、焼付け温度270℃で焼付け処理を施して(板到達温度は250℃であった)樹脂塗膜層を形成し、樹脂塗膜金属板を作製した。樹脂塗膜量は、硫酸脱膜による皮膜質量試験法により測定した。すなわち、100mm×100mmの樹脂塗膜板を濃硫酸に浸漬し樹脂被服層を溶解し、その前後の重量を測定することにより求めた。その値を表1に示す。
アルミニウム合金板として、板状のJIS 5182−H19合金(板厚0.25mm)を用いた。このアルミニウム合金板の両面に、前処理として市販のアルカリ脱脂液((株)日本ペイント社製、サーフクリーナー420N−2)を用いて脱脂した後、下地処理として市販のリン酸クロメート液((株)日本ペイント社製、アルアサーフ45/405)を用いて付着量としてCr量換算で20mg/m2の化成処理を施した。次いで、表1に示す組成のワックスと、ベース樹脂であるエポキシ樹脂とを溶媒である水と有機溶剤との混合溶液に分散したエポキシ系樹脂塗膜A、Bを、連続塗装ラインにおいてロールコーターによって合金板のそれぞれの面に塗布し、焼付け時間30秒、焼付け温度270℃で焼付け処理を施して(板到達温度は250℃であった)樹脂塗膜層を形成し、樹脂塗膜金属板を作製した。樹脂塗膜量は、硫酸脱膜による皮膜質量試験法により測定した。すなわち、100mm×100mmの樹脂塗膜板を濃硫酸に浸漬し樹脂被服層を溶解し、その前後の重量を測定することにより求めた。その値を表1に示す。
このようにして作製したアルミニウム塗装材の試料について、以下のようにして耐摩耗性、耐カジリ性、耐ビルドアップ性の評価を行い、総合評価を行なった。結果を表2に示す。
耐摩耗性
樹脂塗膜Aを塗装した樹脂塗膜Aについて、耐磨耗性評価をヘイドン式摩擦磨耗試験機で行った。同一の場所を接触子で繰り返し摺動し、摩擦係数が0.2を超えるまでの摺動回数を測定した。摺動条件は、接触子:φ3mm超硬ボール、摺動幅:10mm、荷重:500gf、摺動速度:10mm/秒とした。表2の評価おいて、摺動回数が500回以上の場合、実使用における耐摩耗性が非常に優れることから◎とし、摺動回数が350回以上500回未満の場合を○、摺動回数が200回以上350回未満の場合実使用における耐摩耗性は問題ないので△とし、摺動回数が200回未満の場合、実使用における耐摩耗性が不足し、塗膜の一部が削れ耐食性や意匠性が悪化するので×とした。◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
樹脂塗膜Aを塗装した樹脂塗膜Aについて、耐磨耗性評価をヘイドン式摩擦磨耗試験機で行った。同一の場所を接触子で繰り返し摺動し、摩擦係数が0.2を超えるまでの摺動回数を測定した。摺動条件は、接触子:φ3mm超硬ボール、摺動幅:10mm、荷重:500gf、摺動速度:10mm/秒とした。表2の評価おいて、摺動回数が500回以上の場合、実使用における耐摩耗性が非常に優れることから◎とし、摺動回数が350回以上500回未満の場合を○、摺動回数が200回以上350回未満の場合実使用における耐摩耗性は問題ないので△とし、摺動回数が200回未満の場合、実使用における耐摩耗性が不足し、塗膜の一部が削れ耐食性や意匠性が悪化するので×とした。◎、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
耐カジリ性
缶蓋の成形性について試験した。樹脂塗膜Aを塗装した面を外面側、樹脂塗膜Bを塗装した面を内面側として、一般的なアルミニウム缶蓋のプレス成形工程、すなわち、シェルプレスにてシェル加工した後、コンバージョンプレスにより缶蓋形状に成形する工程において、連続して20,000個の試料を加工した。この中から、無作為に50個を抽出し、端面、スコア部及びリベット部のカジリ現象(塗膜の削れや剥離)の発生を観察した。表2の評価において、端面、スコア部及びリベット部のいずれにもカジリ現象が発生しない場合を◎、端面、スコア部及びリベット部において発生したカジリ現象の個数が、いずれも5個以下の場合を○、いずれも10個以下の場合を△、端面、スコア部及びリベット部のいずれかにおいて発生したカジリ現象の個数が10個を超える場合を×とした。◎、○および△を合格とし、×を不合格とした。
缶蓋の成形性について試験した。樹脂塗膜Aを塗装した面を外面側、樹脂塗膜Bを塗装した面を内面側として、一般的なアルミニウム缶蓋のプレス成形工程、すなわち、シェルプレスにてシェル加工した後、コンバージョンプレスにより缶蓋形状に成形する工程において、連続して20,000個の試料を加工した。この中から、無作為に50個を抽出し、端面、スコア部及びリベット部のカジリ現象(塗膜の削れや剥離)の発生を観察した。表2の評価において、端面、スコア部及びリベット部のいずれにもカジリ現象が発生しない場合を◎、端面、スコア部及びリベット部において発生したカジリ現象の個数が、いずれも5個以下の場合を○、いずれも10個以下の場合を△、端面、スコア部及びリベット部のいずれかにおいて発生したカジリ現象の個数が10個を超える場合を×とした。◎、○および△を合格とし、×を不合格とした。
耐ビルドアップ性
また、連続成形した最後の50枚に関して、金型へのワックスのビルドアップに起因する、スコア残厚とパネル形状についての形状不良発生の個数を測定した。表2の評価において、スコア残厚とパネル形状のいずれについても形状不良が発生しない場合を◎、いずれかにおいて発生した形状不良の個数の合計で3個未満の場合を○、いずれかにおいて発生した形状不良の個数の合計が3個以上の場合を×とした。◎および○を合格とし、×を不合格とした。
また、連続成形した最後の50枚に関して、金型へのワックスのビルドアップに起因する、スコア残厚とパネル形状についての形状不良発生の個数を測定した。表2の評価において、スコア残厚とパネル形状のいずれについても形状不良が発生しない場合を◎、いずれかにおいて発生した形状不良の個数の合計で3個未満の場合を○、いずれかにおいて発生した形状不良の個数の合計が3個以上の場合を×とした。◎および○を合格とし、×を不合格とした。
総合評価
耐摩耗性、成形性試験における耐カジリ性、ならびに、成形性試験における耐ビルドアップ性の評価において、最も低い評価を総合評価とした。少なくともいずれかが×であったものについては総合評価を×として不合格とした。それ以外は、合格とした。
表2から明らかなように、本発明の条件を満たす実施例1〜17では、耐摩耗性、ならびに、成形性における耐カジリ性及び耐ビルドアップ性のいずれも優れ総合評価が合格であり、良好な潤滑性が得られカジリ現象及びビルドアップ現象を効果的に防止できた。また、実施例1〜5および16、17では耐摩耗性および耐カジリ性が若干劣るものの、総合評価は合格であり実用上は問題がないことが確認された。
比較例2、3、7は、ワックス量が不足したため、いずれもカジリ現象が発生した。 比較例4、5は、樹脂塗膜Aのカルナバ/ポリエチレンの重量比が規定を超えていたため、ビルドアップ現象が発生した。比較例6は樹脂塗膜Aの総ワックス量が多すぎ、比較例8は樹脂塗膜Aと樹脂塗膜Bのカルナバワックス量がトータルで多すぎたため、ビルドアップ現象が発生した。比較例1は樹脂塗膜Aの塗膜量が少ないため、カジリ現象が発生した。比較例9は樹脂塗膜Aの塗膜量が多すぎたため、端面での塗膜剥離が生じたほか、ワックスの絶対量が多くなりビルドアップ現象も発生した。
耐摩耗性、成形性試験における耐カジリ性、ならびに、成形性試験における耐ビルドアップ性の評価において、最も低い評価を総合評価とした。少なくともいずれかが×であったものについては総合評価を×として不合格とした。それ以外は、合格とした。
表2から明らかなように、本発明の条件を満たす実施例1〜17では、耐摩耗性、ならびに、成形性における耐カジリ性及び耐ビルドアップ性のいずれも優れ総合評価が合格であり、良好な潤滑性が得られカジリ現象及びビルドアップ現象を効果的に防止できた。また、実施例1〜5および16、17では耐摩耗性および耐カジリ性が若干劣るものの、総合評価は合格であり実用上は問題がないことが確認された。
比較例2、3、7は、ワックス量が不足したため、いずれもカジリ現象が発生した。 比較例4、5は、樹脂塗膜Aのカルナバ/ポリエチレンの重量比が規定を超えていたため、ビルドアップ現象が発生した。比較例6は樹脂塗膜Aの総ワックス量が多すぎ、比較例8は樹脂塗膜Aと樹脂塗膜Bのカルナバワックス量がトータルで多すぎたため、ビルドアップ現象が発生した。比較例1は樹脂塗膜Aの塗膜量が少ないため、カジリ現象が発生した。比較例9は樹脂塗膜Aの塗膜量が多すぎたため、端面での塗膜剥離が生じたほか、ワックスの絶対量が多くなりビルドアップ現象も発生した。
1 アルミニウム合金板
2 樹脂塗膜
3 ポリエチレンワックス
4 カルナバワックス
2 樹脂塗膜
3 ポリエチレンワックス
4 カルナバワックス
Claims (4)
- アルミニウム合金板の一方の面に塗膜量が0.5〜20g/m2となる樹脂塗膜A、他方の面に塗膜量が0.5〜20g/m2となる樹脂塗膜Bが形成され、樹脂塗膜Aは塗膜量に対してポリエチレンワックス0.05〜4.95mass%、カルナバワックス0.05〜2.5mass%、その他のワックス0〜4.9mass%からなり、カルナバワックス/ポリエチレンワックスの重量比が1以下となるワックスAを含有し、樹脂塗膜Bは塗膜量に対してカルナバワックス0.05〜1.0mass%、その他のワックス0〜0.95mass%となるワックスBを含有し、該ワックスAのカルナバワックス量をCAmass%、該ワックスBのカルナバワックス量をCBmass%としたときCA+CBが0.1〜2.0となることを、特徴とするアルミニウム塗装板。
- ワックスAにその他のワックスとして、石油ワックス、植物ワックス、動物ワックスから選択されるワックスを1種以上を含む請求項1のアルミニウム塗装板。
- ワックスBにその他のワックスとして、石油ワックス、合成ワックス、植物ワックス、動物ワックスから選択されるワックスを1種以上を含む請求項1又は請求項2のアルミニウム塗装板。
- 該樹脂塗膜Aが外面となり、該樹脂塗膜Bが内面となる、請求項1〜請求項3いずれかのアルミニウム塗装板を用いたアルミニウム缶蓋。
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JP2008230560A JP2010064293A (ja) | 2008-09-09 | 2008-09-09 | アルミニウム塗装板及びアルミニウム缶蓋 |
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Publications (1)
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-
2008
- 2008-09-09 JP JP2008230560A patent/JP2010064293A/ja active Pending
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