JP4554980B2 - 耐ビルドアップ性に優れたワックス組成物および耐ビルドアップ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板 - Google Patents
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Description
上記用途のアルミニウム等板は、耐食性・耐溶出性のさらなる向上、外観の向上および加工性の改善、特に防食性、キズつき防止等のため、その表面に樹脂塗料が塗装されることも多い。このとき、アルミニウム板には何らかの下地処理(例えばリン酸クロメート、クロム酸クロメート、リン酸亜鉛およびリン酸ジルコニウム等)が施されるのが一般的である。
また、塗装されたアルミニウム塗装板の塗装面上にパラフィンワックスをアウターワックスとして融点以上の温度で塗布し、冷却速度を調節してアウターワックスがパラフィンワックスであり、その70%以上を斜方晶パラフィンとする等の提案(特許文献2)がされている。
すなわち、近年ますますプレス速度の高速化が進み、また加工精度に対する要求も厳しくなっていることに対応して、プレス金型の設計がより高度になっている。
こうした要求に対応したプレス加工機に、上述の従来技術により製造されたアルミニウム塗装板を適用すると、ワックス成分が金型に付着し堆積する、いわゆるビルドアップ現象が生じることがある。これは、操業の進行に伴い金型に堆積するワックス成分によって金型が設計どおりに機能せず、成形品の加工精度不良や、成形品のキズ付きを引き起こすため、その対策が強く求められている。
[1]カルナバワックスとパラフィンワックスを、カルナバワックス30%以上、95%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させることを特徴とする、耐ビルドアップ性に優れたアルミニウム板またはアルミニウム合金板の成形加工用ワックス組成物。
[2]パラフィンワックスの融点が70℃以下であることを特徴とする上記[1]に記載の耐ビルドアップ性に優れたアルミニウム板またはアルミニウム合金板の成形加工用ワックス組成物。
カルナバワックスおよびパラフィンワックスはいずれも既知物質であり、従来技術でもアルミニウム塗装板に用いられてきた実績はある。具体的には、カルナバワックスは主にインナーワックスとして、またパラフィンワックスはアウターワックスとして、それぞれ活用されてきた。また、カルナバワックスをインナーワックスに含有した塗料を塗装・焼付し、パラフィンワックスをアウターワックスとして塗布する製造方法も、広く一般に実施されている。
カルナバワックスおよびパラフィンワックスを、それぞれ固体の状態であらかじめ混合し、加熱・溶融させてもよいし、両者を溶融した後混合しても良いが、両者の混合物は混合比に比例しない硬さや粘りといった物理的性質が全く異なる、新規なワックス組成物が得られることを見出した。
例えば、ビッカース硬さで言えば、カルナウバワックス100%では4.9、アルナウバワックス/パラフィンワックス(以下同じ)75/25では5.6、50/50では3.5、25/75では2.4、パラフィンワックス100%では0.7である。
本発明においては、原料となるカルナバワックスとパラフィンワックスを単に混合するだけではなく、両ワックスの融点以上、200℃以下に加熱し、溶融状態にして攪拌・混合させることに特徴がある。
一方、加熱温度が200℃を超えると、パラフィンワックスの引火点(約210℃以上)に近接しているところから製造上危険であること、混合操作中にワックスの酸化変質等を招きやすいこと、さらにエネルギーコストの無駄になること等の点で、好ましくない。
また、ワックス成分以外の添加成分については、市販ワックスに添加されている程度のものであれば、添加しても本発明の効果を損なうことはない。
用いたカルナバワックスおよびパラフィンワックスを表1に示す。カルナバワックス1種類に対し、パラフィンワックスは融点の異なる2種類を準備した。
JIS 5182−H19合金(板厚0.26mm)のアルミニウム合金板に、下地処理として常法に基づいてアルカリエッチング(エッチング量=100mg/m2)後、リン酸クロメート処理(Cr=20mg/m2)を施した。これに、インナーワックスを配合しない水性エポキシ変性アクリル塗料を、樹脂固形分として5g/m2塗布し、雰囲気温度270℃×30秒にて焼付(=板到達温度250℃)した。
表1のワックスを、表2に示す要領で溶融混合を行った後、ワックス組成物を溶融し、噴霧。帯電させて、静電塗装法により上記アルミニウム塗装版に塗布した。 塗布量は表2に示すとおりである。
これらの評価用サンプルを、以下の項目により評価した。
・ビルドアップ試験・・・評価サンプルの上に、10cm角に切り揃えた清浄なアルミニウム合金板(JIS 5182−H19合金,板厚0.26mm)を乗せ、ホットプレス装置により6.5kgf/cm2の圧力で50℃×2分圧着した。評価サンプルの圧着位置を変えながら、同一操作を10回繰り返し、アルミニウム合金板に転写されたワックスを、固体TOC(有機炭素量)にて定量した。
・缶フタ成形試験・・・一般的なアルミニウム缶フタのプレス成形工程、すなわち、シェルプレスにてシェル加工した後、コンバージョンプレスにより缶フタ形状に成形する工程において、連続20,000枚加工した。連続成形の最後から50枚を抽出し、金型へのワックスビルドアップに起因する形状不良発生の個数を記録した。
その結果を表3に示す。
ところが、比較例1は請求項1の範囲よりカルナバワックスが多すぎ、また比較例3はカルナバワックスのみであるため、ビルドアップが抑制しきれない。カルナバワックスは、後述するパラフィンワックスと比較するとビルドアップはしにくいものの、実施例1〜8とは明白な性能差がある。
Claims (4)
- カルナバワックスとパラフィンワックスを、カルナバワックス30%以上、95%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させることを特徴とする、耐ビルドアップ性に優れたアルミニウム板またはアルミニウム合金板の成形加工用ワックス組成物。
- パラフィンワックスの融点が70℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐ビルドアップ性に優れたアルミニウム板またはアルミニウム合金板の成形加工用ワックス組成物。
- カルナバワックスとパラフィンワックスを、カルナバワックス30%以上、95%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させたワックス組成物を、アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板又は樹脂塗膜を有するアルミニウム板もしくはアルミニウム合金板に5〜150mg/m2塗布することを特徴とする耐ビルドアップ性に優れた成形加工用のアルミニウム板またはアルミニウム合金板の製造方法。
- カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス30%以上、95%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させたワックス組成物からなる5〜150mg/m2のアウターワックス層を、樹脂塗膜を有するアルミニウム板もしくはアルミニウム合金板の樹脂塗膜表面に設けたことを特徴とする耐ビルドアップ性に優れた成形加工用のアルミニウム塗装板またはアルミニウム合金塗装板。
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