JP2005314450A - 耐カジリ性に優れたワックス組成物および耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム等板及びその製造方法 - Google Patents

耐カジリ性に優れたワックス組成物および耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム等板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 成形加工用アルミニウム等板、特に少なくとも片面に樹脂皮膜を有するアルミニウム等板の成形加工においてアルミニウム等板の潤滑不足に由来する塗膜カジリの低減を図ったワックス組成物、アルミニウム塗装板の製造方法並びに耐カジリ性に優れた成形加工用塗装板の提供。
【解決手段】 カルナウバワックスと融点が70℃以下であるパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合さたせワックス組成物を、アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板又は樹脂塗膜を有するアルミニウム等板に5〜150mg/m塗布することを特徴とする耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム等板の製造方法及び該方法によって製造された耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板。
【選択図】 なし

Description

本発明は、成形加工用アルミニウム板またはアルミニウム合金板(本発明においては、両者を一括して「アルミニウム等板」と呼称する)、特に少なくとも片面に樹脂皮膜を有するアルミニウム等板の成形加工においてアルミニウム等板の潤滑不足に由来する塗膜カジリの低減を図ったワックス組成物、アルミニウム塗装板の製造方法並びに耐カジリ性に優れた成形加工用塗装板に関する。
アルミニウム等板は、軽量で適度な機械的特性を有し、かつ美感、成形加工性、耐食性等に優れた特徴を有しているため、各種容器類等に広く使われている。
特に、コイル状のアルミニウム等板をプレス機に連続的に供給する方式の成形加工は生産性に優れるため、上記用途に広く採用されている。
上記用途のアルミニウム等板は、耐食性・耐溶出性のさらなる向上、外観の向上および加工性の改善、特にキズつき防止等のため、その表面に樹脂塗料が塗装されることも多い。このとき、アルミニウム等板には何らかの下地処理(例えばリン酸クロメート、クロム酸クロメート、リン酸亜鉛およびリン酸ジルコニウム等)が施されるのが一般的である。
アルミニウム等板の塗装とプレス加工の前後関係は、アルミ缶フタや一部の熱交換器フィンのように、塗装を施してからプレスする(プレコート)場合と、アルミ缶ボディや自動車パネルのようにプレスしてから塗装を施す(ポストコート)場合に分かれる。前者では、塗装されたアルミニウム等板(以下、アルミニウム塗装板と呼称)のプレス成形性を向上させるため、塗膜の表面に潤滑剤の層を形成させることが一般的に行われている。具体的には、塗料成分中に植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックスおよび石油系ワックス(パラフィン系炭化水素)等を添加し(インナーワックス)、塗装・焼付によりワックスを表面に析出させる方法や、塗装後の塗膜表面に石油系ワックス等を塗布する(アウターワックス)方法などが挙げられる。これらの方法によれば、アルミニウム塗装板に潤滑性が付与されるため、プレス成形性の向上に一定の効果があり、その結果として製品品質の安定、プレス金型寿命の延長等に寄与してきた。
例えば、インナーワックスとして塗料成分に配合するワックスとして、塗料樹脂固形分に対して0.2質量%以上のラノリンを添加した上、更にアウターワックスとしてパラフィンワックスまたはマイクロクリスタリンワックスを10〜100mg/m塗布する方法が提案(例えば特許文献1参照)されている。
また、塗装されたアルミニウム等板の上面にパラフィンワックスをアウターワックスとして融点以上の温度で塗布し、冷却速度を調節してアウターワックスがパラフィンワックスであり、その70%以上を斜方晶パラフィンとする提案(特許文献2参照)などの提案がある。
しかしながら、上述の技術には、以下に示すような問題点がある。
すなわち、近年ますますプレス速度の高速化が進み、また加工精度に対する要求も厳しくなっていることに対応して、プレス金型の設計がより高度になっている。
こうした要求に対応したプレス加工機に、上述の従来技術により製造されたアルミニウム塗装板を適用すると潤滑性が不足するため、強い加工を受ける部分、例えばアルミニウム缶フタにおける端面、スコアー部およびリベット部等において、金型に対する塗膜の焼付きや塗膜剥離などの、いわゆるカジリ現象を生じることがある。これは、プレス成形品の商品価値を著しく低減するため、その抑止が求められる。
この対策として、アルミニウム塗装板表面のワックス量を増やす方法が考えられ、実際にある程度までは有効である。しかし、高度な設計がなされたプレス金型においては、既存のワックスでは性能的に効果の限界があり、大量に塗布してもカジリが生じる事例がしばしば生じる。また、アルミニウム塗装板表面に加工用潤滑油を塗布する方法も考えられるものの、加工後に洗浄工程が必要とされることや、潤滑油そのものが塗膜にダメージを与えることがある等の問題があり、必ずしも有効な手段ではない。
特開2002−283496号公報 特開平06−254490号公報
本発明は、アルミニウム等板、特にアルミニウム塗装板の高速、精密なプレス加工において、従来問題とされてきた強い加工を受ける部分などにおける潤滑性の不足による焼き付きや塗膜の剥離を確実に防止するとともに、多量の潤滑剤を用いることではなく、耐カジリ性の優れたワックス組成物の開発、及びそれを用いた成形加工用アルミニウム等板の製造方法並びにそれにより製造された成形加工用アルミニウム塗装板の提供を目的とするものである。
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、下記の条件を満たすことにより、耐カジリ性に優れたワックス組成物が得られることを見出し、これをアルミニウム塗装板の表面に設けることで、上記課題を解決した。
[1] カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させることを特徴とする、耐カジリ性に優れたワックス組成物、
[2] パラフィンワックスの融点が70℃以下であることを特徴とする上記[1]に記載の耐カジリ性に優れたワックス組成物、
[3] カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合さたせワックス組成物を、アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板又は樹脂塗膜を有するアルミニウム等板に5〜150mg/m塗布することを特徴とする耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム等板の製造方法、
[4] ワックス組成物を、アウターワックスとしてアルミニウム等板の樹脂塗膜の表面に塗布する上記[3]に記載の耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板の製造方法、及び
[5] カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させたワックス組成物からなる5〜150mg/mのアウターワックス層を、アルミニウム塗装板の樹脂塗膜表面に設けたことを特徴とする耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板、を開発することにより上記の課題を解決した。
本発明は、カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%未満の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合することにより耐カジリ性に優れたワックス組成物を得ることができる。このワックス組成物をアルミニウム等板、特にその樹脂塗膜の表面に塗布することにより、高度な設計がなされたプレス金型を用いた高速のプレス加工において、優れた性能を有する耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板を得ることができる。
以下、本発明の詳細を順に説明する。
カルナウバワックスおよびパラフィンワックスはいずれも既知物質であり、従来技術でもアルミニウム等板やその塗装板に用いられてきた実績はある。具体的には、カルナウバワックスは主にインナーワックスとして、またパラフィンワックスはアウターワックスとして、それぞれ活用されてきた。また、カルナウバワックスをインナーワックスに含有した塗料を塗装・焼付し、更にパラフィンワックスをアウターワックスとして塗布する製造方法も広く一般に実施されている。
しかしこれらの事例では、塗膜表面にそれぞれのワックス成分が塗膜内または塗膜表面に、各々別々に独立に存在するに過ぎず、カジリの抑止に対して特別な機能を有するものではなかった。
カルナウバワックスおよびパラフィンワックスは、それぞれ固体の状態であらかじめ混合し加熱溶融させてもよいし、両者を溶融した後混合してもよいが、両者の混合物は混合比には比例しない硬さや粘りと言った物理的性質を示す、新規なワックス組成物が得られることを見出した。
例えば、ビッカース硬さで言えば、カルナウバワックス100%では4.9、アルナウバワックス/パラフィンワックス(以下同じ)75/25では5.6、50/50では3.5、25/75では2.4、パラフィンワックス100%では0.7である。
本発明においては、原料となるカルナウバワックスとパラフィンワックスを単に混合するだけではなく、両ワックスの融点以上、200℃以下に加熱し、溶融状態にして攪拌・混合させることに特徴がある。
加熱温度がカルナウバワックスまたはパラフィンワックスの双方または高融点側の融点に達しない場合、当然、ワックスの完全な溶融混合は達成されない。なお、カルナウバワックスの融点は80〜85℃程度、パラフィンワックスの融点は40〜75℃程度である。
一方、加熱温度が200℃を超えると、パラフィンワックスの引火点(約210℃以上)に近接しているところから製造上危険であること、混合中にワックス等の酸化変質を招きやすいこと、さらにエネルギーコストの無駄になること等の点で、好ましくない。
カルナウバワックスとパラフィンワックスの混合比率は、混合ワックス中のカルナウバワックスが質量比にて5%以上、70%以下とすることが必要である。より好ましくは10質量%以上、50質量%未満が望ましい。すなわち、発明者らの実験的知見によると、上記の比率にてカルナウバワックスにパラフィンワックスを相溶させることにより、その混合ワックスは、カルナウバワックスの適度な硬さと、パラフィンワックスの適度な粘りを併せ持つ性質を示すようになる。
カルナウバワックスの混合比が5%に満たない場合、パラフィンワックスとの溶融混合の効果が顕現せず、その潤滑性はパラフィンワックス単体とほとんど変わらないので、カジリ性の改善が不十分となる。具体的には、プレス加工等によって金型と塗膜が摺動する際、ワックス皮膜強度が不足するため皮膜切れが発生し、潤滑作用が失われる。逆に、カルナウバワックスの混合比が70%を超えると、混合ワックスが非常に硬くなり、摺動の際にワックスが押し広げられる作用が大幅に低下し、そのためにワックス被膜切れが起こり、やはり潤滑作用が低減するので、課題解決に不向きである。
原料として用いるカルナウバワックスには、原料のカルナバ椰子の葉によって1号から3号までグレードがあるが、本発明ではどのグレードを用いても有効である。またパラフィンワックスは、パラフィンワックスとして市販されているものであれば好適に用いられるが、特に、融点が70℃以下のものを用いると、より顕著にカジリが抑制される。これは、パラフィンワックスの融点はその分子量に依存しており、この領域の分子量をもつパラフィンワックスが、よりカルナウバワックス分子と相互作用を起こしやすいためと考えられる。
上記の混合ワックスを塗膜の表面に設けることにより、従来技術の水準を上回る潤滑性を持った、耐カジリ性の高いアルミニウム塗装板が得られる。なおその手段は、先述したインナーワックス法およびアウターワックス法のどちらを用いても良い。また、その塗布量に関しては特に制限はないものの、従来技術の範疇、具体的には5mg/m以上、150mg/m以下、好ましくは10mg/m以上、100mg/m以下にて、良好な結果が得られる。混合ワックス層を塗膜表面に設ける方法としては塗料中に混合ワックスを予め配合しておき、塗膜乾燥時あるいは塗膜乾燥後に加熱処理して混合ワックスを塗膜表面にブリーディングさせるか、塗膜を形成した後にアウターワックスとして塗布することであっても良い。塗布方法としては静電塗装方法等が使用できる。
本発明のワックス組成物を適用できる対象塗料としては、エポキシ樹脂、エポキシ/アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ/尿素樹脂、エポキシ/フェノール樹脂等の既知の樹脂を含んだ一般的な塗料全てであり、水性塗料の塗装、溶剤性塗料の塗装、粉末静電塗装の区別なく有効である。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
用いたカルナウバワックスおよびパラフィンワックスを表1に示す。カルナウバワックス1種類に対し、パラフィンワックスは融点の異なる2種類を準備した。なお実施例1〜8,比較例1及び2においては両者を溶融して均一に混合したものを用いている。
Figure 2005314450
(実施例1〜8,比較例1〜5)
JIS 5182−H19合金(板厚0.26mm)のアルミニウム合金板に下地処理として常法に基づいてアルカリエッチング(エッチング量=100mg/m)後、リン酸クロメート処理(Cr=20mg/m)を施した。これに、インナーワックスを配合しない水性エポキシ変性アクリル塗料を、樹脂固形分として5g/m塗布し、雰囲気温度270℃×30秒にて焼付(=板到達温度250℃)した。
表1のワックスを、表2に示す要領で溶融混合を行った後、該ワックス組成物を溶融し、噴霧、帯電させて、静電塗装法により上記アルミニウム塗装版に塗布した。塗布量は表2に示すとおりである。
Figure 2005314450
(測定方法)
これらの評価用サンプルを、以下の項目により評価した。
・摺動試験・・・バウデン試験機(試験荷重=500g,摺動速度=0.6mm/秒,鋼球直径=3/16インチ)にて、100往復目の動摩擦係数を測定する。なお、50往復に達する前ににカジリが発生した場合、その往復回数を記録する。
・缶フタ成形試験・・・一般的なアルミニウム缶フタのプレス成形工程、すなわち、シェルプレスにてシェル加工した後、コンバージョンプレスにより缶フタ形状に成形する工程において、連続20,000枚加工した。この中から、無作為に50枚を抽出し、端面、スコアー部およびリベット部のカジリ発生度合いを記録した。
・ERV(エナメルレーター値)測定手順:
1.シェルプレスにより、連続20000枚シェル加工(成形試験と異なり 、コンバージョンプレスは実施しない。)
2.無作為に50枚を摘出
3.1%塩化ナトリウム水溶液を用い、シェル=陰極、白金電極=陽極として、6V5秒間通電し、電流の最大値を測定する。
4.50枚の平均値を算出してERVとする。
即ち、ERVが大きいことは塗膜に欠陥があることを意味する。
その結果を表3に示す。
Figure 2005314450
表3から明らかなように、本発明の請求項を満たす実施例1〜8は潤滑性に優れているためカジリが効果的に抑制された。また、実施例4および5は、他の実施例より若干摩擦係数が高いものの、缶フタ成形試験では良好な成績を示し、実使用上では問題ないことが確認された。実施例では、性能の優れたワックス組成物を用いているため加工性がよいのでカジリが発生しない。
これに対し、比較例1は請求項1の範囲よりカルナウバワックスが多すぎ、また比較例3はカルナウバワックスのみであるため、カジリが発生している。これは、ワックスが硬すぎるために生じる不具合と考えられる。
また、比較例2は請求項1の範囲よりパラフィンワックスが多すぎ、また比較例4はパラフィンワックスのみであるため、やはりカジリが生じている。これは、パラフィンワックスが比較的軟らかく、ワックス皮膜切れが発生したためと考えられる。
さらに比較例5は、カルナウバワックスをまず静電塗装し、次いでパラフィンワックスを静電塗装した。その配合割合こそ請求項1に記載の条件を満たしているものの、溶融混合がなされていない点において要件を満たしていないため、本発明の優れた効果が発動せず、カジリが発生している。
本発明は、アルミニウム等板、特にアルミニウム塗装板の高速、精密なプレス加工において、多量の潤滑剤を用いることではなく、耐カジリ性の優れたワックス組成物及びそそれにより製造された成形加工用アルミニウム塗装板を提供するものである。この結果当該ワックス組成物をアルミニウム等板、特にその樹脂塗膜の表面に塗布することにより、高度な設計がなされたプレス金型を用いた高速のプレス加工において、優れた性能を有する耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板を得ることができる。

Claims (5)

  1. カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させることを特徴とする、耐カジリ性に優れたワックス組成物。
  2. パラフィンワックスの融点が70℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐カジリ性に優れたワックス組成物。
  3. カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合さたせワックス組成物を、アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板又は樹脂塗膜を有するアルミニウム等板に5〜150mg/m塗布することを特徴とする耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム等板の製造方法。
  4. ワックス組成物を、アウターワックスとしてアルミニウム等板の樹脂塗膜の表面に塗布する請求項3に記載の耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板の製造方法。
  5. カルナウバワックスとパラフィンワックスを、カルナウバワックス5%以上、70%以下の質量比にて、両ワックスの融点以上、200℃以下の温度にて溶融混合させたワックス組成物からなる5〜150mg/m アウターワックス層を、アルミニウム塗装板の樹脂塗膜表面に設けたことを特徴とする耐カジリ性に優れた成形加工用アルミニウム塗装板。

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