JP3990663B2 - 表面処理金属板、及びその製造方法、並びにこの製造方法に用いる潤滑樹脂と潤滑樹脂塗料組成物 - Google Patents

表面処理金属板、及びその製造方法、並びにこの製造方法に用いる潤滑樹脂と潤滑樹脂塗料組成物 Download PDF

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本発明は、添加剤を含有させた連続皮膜を表面に有する金属板とその製造方法に関する。特に、添加剤として固形潤滑剤を含有させた、潤滑性を有する金属板に関する。本発明は、従来の潤滑性金属板に比べてすべり性に優れていることから、特に物品等を滑らせて移動させる用途に好適に使用される。また、繰り返し摺動に対する耐久性にも優れているため、プレス成形用、特に多段成形用にも適用可能なものである。さらに、耐磨耗性にも優れていることから、複写機の通紙部分のような耐磨耗用途にも適用可能である。また、撥水性を有することから、滑雪性や耐汚染性を有する屋外用金属材料としても適用可能なものである。
自動物流においては、ホッパー、シューター等による物品の移動が従来より広く行われてきたが、近年、その高効率化、すなわち移送途中の渋滞による機会損失の低減、あるいは移送板の低勾配化による装置全体の小型化などが求められるようになってきている。一方で、自動販売機を例にとれば、従来の缶入りや瓶入りの商品に加えて、これらよりも滑りにくいPET ボトル入り商品の普及率が増え、高度の潤滑性を有する移送板へのニーズが高まりつつある。
古くから移送板として使用されてきた材料に、特開平6−325255号公報に見られるようなNi系めっきにフッ素系樹脂を共析させた複合めっき金属板がある。しかしこれは、コストが高いうえに、共析可能なフッ素系樹脂の量に限界があることから、高度の潤滑性を発現することができない。
これを改善しうる従来技術としては、潤滑性、プレス成形性向上を目的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂を固形潤滑剤として塗膜中に含有させた塗装金属板があげられる。例えば、特許第3071376号には、平均粒子径が0.1 〜5μmのポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子を固体潤滑剤としてエポキシ系樹脂に含有させ、亜鉛系めっき鋼板の表面に塗布した有機複合鋼板が開示されている。特開平8−174758号公報には、親水性樹脂に、潤滑剤として平均粒子径が0.05〜7μmの水分散性ポリオレフィン系樹脂もしくは水分散性フッ素系樹脂を含有させ、亜鉛系めっき鋼板に塗布、乾燥させた有機被覆めっき鋼板が開示されている。また、特許第2617837号には、めっき鋼板の表面に、いずれも粒子径が3μm以下のポリオレフィンワックスとポリテトラフルオロエチレン(テフロンワックス(商品名))とを水性樹脂に混合し、塗布、乾燥する潤滑めっき鋼板の製造方法が開示されている。これらの技術においてフッ素系樹脂の粒子径を制限している理由は、粒子径が小さすぎると潤滑性が劣ること、大きすぎると樹脂皮膜からの突出が大きすぎて皮膜中に保持されにくくなり皮膜摺動時等に欠落しやすいこと、また大きすぎると樹脂中に均一分散しにくくなることである。特開平2―92536号公報ではこの関係を定量化し、膜厚をT、フッ素系樹脂の粒子径をRとしたときに、T/R=0.6〜2が好適範囲であるとしている。
フッ素系樹脂は表面自由エネルギーが低い樹脂であるため、他の樹脂と混合すると、乾燥時に皮膜表層に濃化する傾向にある。このことと関連した従来技術として、特開平2−92536号公報、特許第3075117号をあげることができる。特開平2−92536号公報には、フッ素系樹脂の表面濃化による層分離を積極的に行わせる目的で、乾燥塗膜厚に適した粒子径のフッ素系樹脂粉末を選ぶ技術が開示されている。一方、特許第3075117号では、表面濃化がすすみすぎると表層が磨耗した段階で潤滑性が失われることから、むしろ皮膜中の金属板に近い側にフッ素系樹脂を残存させるべく、乾燥条件を適性化するという技術が開示されている。フッ素系樹脂の表面濃化による層分離は、ベース樹脂の乾燥塗膜厚に比べてフッ素系樹脂粉末の粒子径が相対的に小さいことから起こる技術課題であり、これらの公知例はそれを解決しようとしたものである。
一方、より粒子径の大きいフッ素系樹脂を用いる従来技術もある。特開2001−198522号公報には、アクリル樹脂をベースとして、粒子径0.1 〜5μmのポリテトラフルオロエチレン粉末を3〜30質量%加えて潤滑性を向上させ、さらに粒子径7〜20μmのポリテトラフルオロエチレン粉末を1〜10質量%加えて、つや消し外観を与えるという技術が見られる。ここで、粒子径7〜20μmの粉末を10質量%以下に制限したのは、これを超えて添加するとむしろ耐磨耗性が低下するためである。特開昭62−179936号公報には、焼き付け硬化型樹脂に粒子径が1〜110 μmのフッ素系樹脂粉末を添加し、乾燥膜厚5〜200 μmとしたプレコート鋼板が開示されている。
フッ素系樹脂を耐磨耗用途に適用した先行技術としては、特開2003−33995号公報がある。これは、平均粒子径1μm以下のフッ素樹脂粉末をポリエーテルスルフォン等の耐熱塗料中に、鱗片状無機添加材とともに混合して金属板に塗布し、フッ素樹脂の溶融温度まで加熱したのち焼成することにより、皮膜の最表層にフッ素樹脂単体の薄膜を形成させるものである。このフッ素樹脂薄膜があることにより、初期磨耗性、非粘着性が付与される。これと同様の考え方、すなわちフッ素系樹脂の熱溶融による表面濃化により金属板に耐磨耗性を付与するものとして、特開平8−57413号公報がある。
フッ素系樹脂の撥水性、耐汚染性を利用した従来技術も多数ある。特開平7−90691号公報には、金属やセラミクスからなる硬質母粒子の表面をフッ素系樹脂で被覆し、これをニッケル等の金属めっき中に共析させる技術が開示されている。また、特開平9−141780号公報には、鋼板表面に化成処理層を介して、フッ素系樹脂フィルムをラミネートすることにより、耐環境汚染性に優れた鋼板が得られることが開示されている。
フッ素系樹脂はまた、滑雪性に優れた金属板用表面処理としても利用されている。特開昭63−268636号公報および特開昭和64−58539号公報には、表層には滑雪性向上のために顔料を含まないフッ素系樹脂層を設け、第2層には耐久性向上のため顔料を含むフッ素系樹脂層を設けた金属板が開示されている。
特開平6−325255号公報 特許第3071376号公報 特開平8−174758号公報 特許第2617837号公報 特開平2―92536号公報 特許第3075117号公報 特開2001−198522号公報 特開昭62−179936号公報 特開2003−33995号公報 特開平8―57413号公報 特開平7―90691号公報 特開平9―141780号公報 特開昭63−268636号公報 特開昭64―58539号公報 特開平7−90620号公報 特開平4−341375号公報
しかしながら、これらの従来技術には課題がある。
粒子径が数μm以下のフッ素系樹脂は、乳化重合で得られる。また、フッ素系樹脂の水分散体は、乳化重合でできたフッ素系樹脂のラテックスに界面活性剤を添加したのち濃縮・安定化したものとして市販されている。これは、特開平7−90620号公報にも述べられているように塗料組成物中での分散安定性には優れている。しかし、乳化重合で得られた粒子径が数μm以下のフッ素系樹脂を、他の樹脂に混合して金属板に塗布すると、塗布ロール上にフッ素系樹脂の巻きつきが起こりやすい。これは、フッ素系樹脂の特性として、せん断力を受けると繊維化しやすいことによるものと思われる。特開平4−341375号公報には、アクリル系やポリエチレン系の樹脂を被覆した粒子径0.01〜2μmのフッ素系樹脂粒子を用いると、製造時にフッ素系樹脂粒子が皮膜から剥脱してロールへ巻きつくという問題を解決できることが開示されている。しかしながらこれは、塗布、乾燥終了後の皮膜からの剥脱であるので、塗布ロールより下工程にある搬送ロールへの巻きつきを回避しただけであって、塗布ロール上での繊維化の問題を直接解決するものではない。
粒子径が数μm以下のフッ素系樹脂を用いる場合のもうひとつの課題は、先に述べたフッ素系樹脂の表面濃化による層分離である。この問題を解決するのに特開平2−92536号公報の方法によるには、粒子径分布が非常に狭いフッ素系樹脂を準備しなければならない(粒子径が膜厚の1/2以上、5/3以下)。そのためには、通常の方法で合成される粒子径分布が広いフッ素系樹脂をフィルター等で分別しなければならず、手間とコストがかかる。一方、特許第3075117号の方法は、乾燥条件のみによりフッ素系樹脂の表面濃化を制御しようとするものであるが、表面濃化を制御するにはベース樹脂の粘度が雰囲気温度によって変化することなども考慮する必要があり、安定的に所望の層分離構造を得るのは容易ではない。
特開2003−33995号公報や特開平8−57413号公報は、フッ素樹脂を溶融させることで表面濃化させる技術であるから、もともとのフッ素樹脂の粒子径によらず表面濃化できる点では有利である。しかし、乾燥板温をフッ素樹脂が溶融する温度まで上げてから、数分〜数十分の間焼成する必要がある。これはラインスピード数十mpm以上のラインでは不可能である。また、フッ素が溶融する温度でも耐熱性を有するベース樹脂を用いる必要があるが、このような樹脂は高価である。
一方、フッ素系樹脂の粒子径が塗膜厚に比べて十分大きい場合、具体的には粒子径が塗膜厚の3倍以上あるような場合には、層分離の問題が無いかわりに、塗膜からの脱落の懸念がある。
すなわち、従来技術においては、1)製造時に塗布ロール上でせん断力を受けたフッ素系樹脂が繊維化して塗布ロールへ巻きつく、2)ベース樹脂の乾燥塗膜厚に比べてフッ素系樹脂粉末の粒子径が相対的に小さいとフッ素系樹脂が表面濃化して層分離する、3)ベース樹脂の乾燥塗膜厚に比べてフッ素系樹脂粉末の粒子径が相対的に大きいとフッ素系樹脂粉末が塗膜から脱落する、という課題をすべて解決した安価な材料は見られない。
本発明の目的は、上記3つの課題を解決し、かつ、PET ボトルをも滑らせる高度な滑り性を有する移送板用材料を、安価に安定供給することである。本発明はまた、プレス成形用、耐磨耗用、滑雪・耐汚染用にも適用可能な潤滑性金属板を意図したものでもある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。この結果、従来技術においては、フッ素系樹脂の塗布ロールへの巻きつきとフッ素系樹脂の構造や物性との関係が明確化されていないこと、またフッ素系樹脂の層分離や脱落を防ぐのに、フッ素系樹脂が球状もしくはそれに近い形状であることを前提に、その粒子径と乾燥膜厚の関係を適正化するという視点しかないことに気づいた。
そこで、まず塗布ロールへの巻きつきを抑制する方法について検討したところ、乳化重合ままのフッ素系樹脂はその粒子径によらずロールへ巻きつきやすいのに対して、これに放射線を照射してC−F結合を切り低分子量化したものはロールへ巻きつきにくいことを見出した。また、もうひとつの重合法である懸濁重合により合成されたフッ素系樹脂は、そもそもロールへの巻きつきの問題が、乳化重合で合成されたものより少なく、これに放射線を照射してC−F結合を切り低分子量化したものはロールへ巻くことがほとんどないことも分かった。
つぎに層分離と脱落の問題については、乾燥膜厚よりも大きな粒子径のフッ素系樹脂粉末を用いることで膜厚方向の層分離の問題をなくし、かつ塗布時のロール面圧によりフッ素系樹脂の皮膜から突出した部分を押しつぶすことにより脱落の問題をも回避するという方法を考案した。そして、それを実現するための方策について鋭意検討した。
まず、懸濁重合により合成されたフッ素系樹脂をモールディングパウダー用に造粒(焼成)し、放射線照射により低分子量化した。これに塗布用ゴムロールで面圧をかけたところ、粒子は崩壊した。一方、乳化重合により合成されたフッ素系樹脂を粒子径数百ミクロンのファインパウダーとし、これを造粒(焼成)することなく、放射線照射により低分子量化したものは、ロール面圧によって塑性変形した。その理由は明らかではないが、モールディングパウダーを造粒したのち放射線照射したものは「硬くもろい」粒子となっていたのに対して、ファインパウダーを造粒することなく放射線照射したものはサブミクロンの一次粒子がゆるく結合して全体として数十ミクロンの大きさの「柔らかく変形しやすい」二次粒子になっていたと推察される。
一方、懸濁重合により合成されたフッ素系樹脂についても、これを造粒することなく放射線照射により低分子量化し、塗布用ゴムロールで面圧をかけたところ、この場合にもやはり塑性変形が起こった。すなわち、乳化重合、懸濁重合を問わず、造粒等の熱処理をすることなく放射線照射により低分子量化した粒子は、塑性変形することが分かった。
さらに、PET ボトルをも滑らせる高度な滑り性、多段成形に耐えるプレス成形性、高度な耐磨耗性や滑雪性・耐汚染性を発現する方法について検討したところ、ロール面圧によってつぶされたと思われる、膜厚に比べて長径が大きく扁平な形状をしたフッ素系樹脂の皮膜中における含有率を高めることにより、おそらくこれが面接触による潤滑点として働き、滑り性、成形性、耐磨耗性、滑雪性・耐汚染性などが飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の(1)〜(9)より成る。
(1)金属板の片面もしくは両面に平均膜厚が0.5μm以上20μmの連続皮膜(A)を有し、該連続皮膜中に添加物として、平均膜厚の3倍以上の長径を有する固形潤滑剤(B)が含有されており、この固形潤滑剤(B)は皮膜に垂直な方向から見ると長径が20μm超のフッ素系樹脂であり、その個数が1mmあたり10個以上であることを特徴とする表面処理金属板。
(2)連続皮膜がフッ素を含有せず、かつフッ素系樹脂の金属板上での付着量が、F換算で20mg/m2 以上であることを特徴とする前項(1)に記載の表面処理金属板。
(3)連続皮膜中に、固形潤滑剤としてさらにフッ素を含有しないワックスを含有する前項(1)または(2)記載の表面処理金属板。
(4)連続皮膜と金属板との間に下地処理層を有することを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理金属板。
(5)金属板表面に添加物を含有する連続皮膜を形成させるために、連続皮膜(A)の構成成分と添加物とを混合して金属表面に塗布する方法において、添加物が連続皮膜の平均膜厚の3倍よりも長径が大きいフッ素系樹脂からなる固形潤滑剤(B)であり、この固形潤滑剤(B)として、乳化重合により合成されたフッ素系樹脂のファインパウダーを造粒することなく、照射後の融点低下度が0.8℃以上となるように放射線照射により低分子量化したものを用い、連続皮膜の平均膜厚を0.5μm以上20μm以下とし、塗布時の面圧を利用して固形潤滑剤(B)を扁平化させることにより、連続皮膜中に保持させることを特徴とする表面処理金属板の製造方法。
(6)金属板表面に添加物を含有する連続皮膜を形成させるために、連続皮膜(A)の構成成分と添加物とを混合して金属表面に塗布する方法において、添加物が連続皮膜の平均膜厚の3倍よりも長径が大きいフッ素系樹脂からなる固形潤滑剤(B)であり、この固形潤滑剤(B)として、懸濁重合により合成されたフッ素系樹脂を造粒することなく、照射後の融点低下度が0.8℃以上となるように放射線照射により低分子量化したものを用い、連続皮膜の平均膜厚を0.5μm以上20μm以下とし、塗布時の面圧を利用して固形潤滑剤(B)を扁平化させることにより、連続皮膜中に保持させることを特徴とする表面処理金属板の製造方法。
(7)放射線を照射して低分子量化したフッ素系樹脂を、界面活性剤により水分散体とし、これを連続皮膜の水性成分と混合して攪拌しながら金属板に塗布、乾燥することを特徴とする前項(5)または(6)記載の表面処理金属板の製造方法。
(8)放射線を照射して低分子量化したフッ素系樹脂を、界面活性剤により水分散体としたことを特徴とする前項(7)記載の表面処理金属板の製造方法に用いるフッ素系樹脂水分散体。
(9)放射線を照射して低分子量化したフッ素系樹脂を、界面活性剤により水分散体とし、これを連続皮膜の水性成分と混合して得られる前項(7)記載の表面処理金属板の製造方法に用いる塗料組成物。

本発明は、フッ素系樹脂を固形潤滑剤として用いる従来技術が有していた製造上の3つの課題を解決し、かつ、PET ボトルをも滑らせる高度な滑り性を有する移送板用材料、さらにはプレス成形性、しごき加工性にすぐれた潤滑性金属板、紙摩耗に耐え得る通紙用部材、および滑雪屋根用材料などを、安価に安定供給することができる。したがって、きわめて工業的価値が高いものと言える。
以下、本発明を詳述する。
まず、前記(1)は、本発明の基本的な考え方を規定するものである。本発明の対象は、連続皮膜中に添加物を有する不均一な表面処理皮膜を片面もしくは両面に有する金属材料である。ここで連続皮膜と定義したのは、意図的に皮膜成分を金属板上に分散被覆させ、皮膜の無い部分が金属板全体の表面のうちかなりの割合、例えば数十%を占めるような場合を除外するためである。したがって、連続被覆を意図して形成されてはいるが、場所により膜厚の変化があったり、一部に金属が露出する部分があるような場合は、連続皮膜と呼ぶものである。平均膜厚を20μm以下としたのは、いわゆる後処理金属板および塗装金属板を対象とするためである。平均膜厚はのちに述べる方法により求める。連続皮膜は単層であってもよいし、2層以上の複層皮膜であってもよい。また、その主成分は有機物であっても、無機物であっても良い。
添加物として使用可能なものには、固形潤滑剤、防錆剤、色材、金属粉、繊維、箔片、磁性体などがある。本発明の特徴は、添加物のうち、固形潤滑剤の長径が連続皮膜の平均膜厚の3倍以上であること、すなわち扁平な固形潤滑剤を含んでいることである。長径が平均膜厚の3倍未満のものは、ここでは扁平潤滑剤とは呼ばない。
従来技術では、固形潤滑剤の長径は、膜厚の2倍程度まででないと、連続皮膜から脱落しやすいとされてきたのに対して、本発明では長径が膜厚の3倍以上である扁平な固形潤滑剤を、連続皮膜中に含有させている点に特徴がある。長径が平均膜厚の3倍以上あることにより、面接触による潤滑機能が発現され、高度なすべり性、耐磨耗性を得ることができる。さらに好適には5倍以上である。一方、固形潤滑剤の長径が平均膜厚の3倍未満では、点接触が支配的となり、すべり性、耐摩耗性のレベルは落ちる。
連続皮膜の成分として適用可能な有機物の種類に特に制限は無く、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、アイオノマー系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、あるいはポリエーテルサルホン、ポリフェニルスルフィド、ポリアミドイミドなどが例示される。これらを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いたり、共重合体を用いたり(例えばエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体)、お互いに変性したり(例えばエポキシ変性ウレタン樹脂、アクリル変性アイオノマー樹脂等)、あるいは別の有機物で変性したもの(例えばアミン変性エポキシ樹脂)を用いても良い。また、樹脂は溶剤系樹脂であっても、水系樹脂であっても良い。さらに、樹脂自身が以下に述べるようなフッ素系樹脂のなかの1つまたは2つ以上であっても良い。
また、連続皮膜の成分として適用可能な無機物の例としては、リチウムシリケート、ナトリウムシリケート(水ガラス)などの珪素化合物、ヴァナジン酸、チタン酸、ジルコン酸、モリブデン酸、クロム酸などの金属酸化物、りん酸、硝酸などの酸などが例示できる。
固形潤滑剤として適用可能なものの例としては、次項に述べるフッ素系樹脂があげられる
前記(1)は、扁平な固形潤滑剤としてフッ素系樹脂を必須成分としたものである。フッ素系樹脂は固形潤滑剤としては最もすべり性に優れたもののひとつである。
固形潤滑剤に用いるフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが使用可能である。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
前記(1)は、連続皮膜の最低膜厚と、固体潤滑剤として含有される扁平なフッ素系樹脂の最低長径を規定したものである。連続皮膜の最低膜厚は、以下に述べるフッ素系樹脂の大きさや形態を活用するには0.5μm以上が良い。ここで膜厚は、供試材の断面を適正な倍率でSEM観察することにより決定した。金属板の十分離れた位置から最低10サンプルを採取し、各サンプルとも特異でない3〜5箇所について断面観察により膜厚測定を行って、得られた合計30〜50測定の平均値を膜厚とした。
連続皮膜中におけるフッ素系樹脂(B)の形態については、図1のSEM 写真ともあわせて説明する。皮膜中に含まれるフッ素系樹脂(B)を大きさや形態で分類すると図1に示すように、長径が1μm以下のもの(B−1)、長径が1μm超、20μm以下のもの(B−2)、皮膜に垂直な方向から見ると長径が20μm超であるもの(B−3)から構成される。図1のSEM 写真は皮膜と垂直な方向から、加速電圧20kV,倍率500 倍で撮影したものである。なお、「皮膜に垂直な方向から見る」とは、SEM 写真を撮影する時に、サンプルを意図的に傾斜させていないという意味である。白っぽい粒子が多数見えているが、これがフッ素系樹脂であることはEDXによる元素分析(面分析)で確認できる。加速電圧を20kVと高めに設定したのはフッ素系樹脂を明瞭にするためであり、加速電圧を下げると、全体に黒っぽい写真となる。本発明においては、(B−1)の含有量はなるべく少ないことが望ましく、好適にはフッ素系樹脂(B)全体の10重量%以下である。(B−2)のタイプは主成分として含まれている。(B−3)のタイプは、本発明の構成上最大の特徴である。前記(3)では、連続皮膜中に(B―3)のタイプを含有していることを規定している。(B−3)より長径の小さい(B−2)しか含有されていなくても、前記(1)を満足する限りにおいては、従来よりも高度なすべり性を発現できるが、さらに高度なすべり性、成形性、耐磨耗性等が要求される場合には、長径20μm超である(B−3)のタイプを含有することが必須要件になってくる。
前記(1)は、(B−3)のタイプのフッ素系樹脂の最低含有量を規定したものである。(B−3)の含有量がこれ以下であっても、従来よりも優れたすべり性は発現できるが、例えばPET ボトルのようなすべりにくい材料との潤滑性を改善するためには、皮膜1mm2 あたり10個以上含まれていることが必要である。10個未満では改善効果が少ない。また、長径が20μm以下ではやはり改善効果が少ない。
(B−3)のタイプの個数は、皮膜と垂直な方向から、すなわちサンプルを意図的に傾斜させずに、加速電圧20kV,倍率500 倍でSEM 写真を撮影し、その視野内でフッ素系樹脂(B)の長径を測定し、条件に合うものを数えるという操作を、1サンプルあたり最低40視野について行って合計し、1mm2 あたりに換算することで求めた。40視野の選は、サンプルの中の十分離れた位置から10〜20箇所の小片を切り出し、各小片につきランダムに選んだ2〜4視野のSEM 写真を撮影するという方法で、なるべく偏りがないように行った。
なお、(B−3)のタイプのフッ素系樹脂はその大きさと形態が重要であって、潤滑性皮膜の表面に露出しているかどうか、あるいは下地金属に接触する位置まで埋め込まれているかどうかは必ずしも重要でない。図2に示すように、(B−3)タイプの中には、ロール面圧で押しつぶされた際に、連続皮膜の成分によってその表面が覆われたと思われるものもあるが、完全に露出していなくても潤滑性皮膜から多少なりとも盛り上がった形となっているかぎり、へき開性コロ潤滑の潤滑点として機能できるためである。逆に、下地金属に接触する位置まで埋め込まれていない粒子もあるが、これについても潤滑性皮膜からの盛り上がりを有するため、潤滑点として機能できる。
前記(2)は、連続皮膜を構成する成分とフッ素系樹脂の付着量について規定したものである。連続皮膜の成分としてフッ素を含有しないのは、安価に高度なすべり性を発現する必要がある場合の要件である。すなわち、連続皮膜(A)および固形潤滑剤(B)ともにフッ素系樹脂を用いれば、確かに高度なすべり性、耐磨耗性が得られるが、フッ素系樹脂は高価であることから全体コストが高くなる。これに対して、連続皮膜(A)にフッ素を含有せず、それ自身のすべり性は優れていないが安価なものを用い、固形潤滑剤(B)に本発明の扁平フッ素樹脂を用いることにより、すべり性を大幅に改善するものである。ただし、フッ素系樹脂の付着量がF換算で20mg/m2 未満ではすべり性改善効果が不十分ある。
供試材のF付着量は、重量法により検量線を作成したのち、蛍光X線により測定した。その手順は以下の通りである。板厚0.8mm の亜鉛めっき鋼板を140mm ×140mm に切断したもの10枚程度準備し、それぞれ重量を化学天秤で0.1mg のオーダーまで正確に測定する。つぎに、フッ素を含有しない連続皮膜の成分(A)とフッ素系樹脂(B)を混合した組成物を準備する。これを重量測定済みの上記亜鉛めっき鋼板の片面に均一塗布する。この際、組成物中のフッ素系樹脂(B)の割合や水希釈率、塗布条件等を変えて、全付着量が1〜2g/m2 程度の範囲で10〜15水準のもの(以下、各サンプルとよぶ)を作成する。塗乾燥後の亜鉛めっき鋼板の重量を再び化学天秤で測定し、重量増から組成物の全付着量(g/m2 ) を各サンプルごとに算出する。
ここで、組成物中のフッ素系樹脂(B)の割合、およびフッ素系樹脂(B)の分子構造(たとえばPTFEならばCF2 −CF2 )を考慮して、全付着量に対するFの重量比率(wt%)を算出し、この値を上記で求めた各サンプルごとの全付着量(g/m2 ) に乗じることによ、各サンプルにおけるFの付着量(mg/m2 ) が算出される。
つぎに、各サンプルを35mm× 35mm に切断し、各16枚の小片サンプルとする。これを蛍光X線分析装置(理学電機工業製、RIX2000)で分析する。X線管のターゲットはRh、印加条件は50kV, 50mA、測定面積は20mmφとした。測定元素はFとし、そのX線強度(kcps)を測定する。小片サンプル16枚の平均値をもって、各サンプルのFの強度(kcps)とした。
最後に、上記で求めた各サンプルのFの強度(kcps)と、さきに算出した各サンプルごとのFの付着量(mg/m2 ) とを相関させて直線近似することにより、蛍光X線におけるFの検量線とする。以後はこの検量線を用いて、未知サンプルのFの蛍光X線強度(kcps)から換算して、それぞれのF付着量(mg/m2 ) を求めた。
なお、全付着量が2g/m2 を超える場合には、付着量が増えるにしたがって、表面まで達するフッ素の蛍光X線量が減少してゆくことから、全付着量ごとにフッ素の検量線が必要になる。例えば、全付着量が4g/m2 の場合、含有するF量を正確に測定するには、全付着量を4g/m2 に統一し、フッ素添加率を変化させたサンプルを作成して、上記と同様に重量法と蛍光X線強度から、「全付着量4g/m2 用のフッ素検量線」を作成しなければならない。
前記(3)は、固形潤滑剤として上記のフッ素系樹脂に加えて、フッ素を含有しないワックスを併用することにより、さらに高度な潤滑性を発現させたものである。ここでフッ素を含有しないワックスとして用いることができるワックスには、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、天然ワックス、ステアリン酸エステル、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、グラファイト、二硫化タングステン、窒化ホウ素などがあげられる。なお、フッ素系樹脂が前記(1)を満足する扁平な固形潤滑剤である限りにおいては、フッ素を含有しないワックスは扁平であってもなくても良い。
前記(4)は、連続皮膜と金属板との密着性を向上させるために、金属板と連続皮膜の間に下地処理層を用いるものである。下地処理層としては、化成処理層および/またはプライマー層を使用するのが良い。化成処理層の例としては、りん酸亜鉛処理層、クロメート処理層、非クロメート処理層、陽極酸化処理層など、浸漬処理、電解処理、塗布・乾燥などにより形成可能なものがあげられ、一方プライマー層としては、エポキシ系樹脂をはじめとする各種樹脂や、シランカップリング剤等のカップリング剤などが適用可能である。
前記(5)は、本発明品の製造方法に関する基本的な考え方を規定したものである。本発明の対象は、連続皮膜中に、連続皮膜の平均膜厚の3倍以上の長径を有する、扁平な添加物を有する不均一な表面処理皮膜を、片面もしくは両面に有する金属材料である。これを製造するにあたって、連続皮膜の構成成分と添加物とを混合して金属板に塗布するのであるが、本発明の特徴は、連続皮膜の平均膜厚の3倍以上の長径を有する添加物を、塗布時の面圧を利用して扁平化し、連続皮膜に保持させることにある。
すなわち、従来技術においては、膜厚の2倍を超える粒子径を有する添加物は、皮膜から脱落する恐れがあるため使用できないとされてきた。したがってこのような添加物を使用するには、あらかじめボールミル等で粉砕することにより扁平化させたのち、連続皮膜成分と混合し、塗布するのが通例であった。これは例えば、特開平01−170666号公報、特開昭63−303001号公報などにその例が見られる。これに対して本発明では、膜厚の3倍を超える添加物であっても、塗布時の面圧によって突出部分を押しつぶすことにより、皮膜から脱落しないようにしたものである。したがって、塗布方式としては、直接接触可能なロールコーティング方式が最も適している。ただし、十分な面圧がかけられるのであれば、非接触方式、例えばエアワイピング方式であってもかまわない。
前記(8)は、添加物として固形潤滑剤を必須成分とするものである。従来技術では、固形潤滑剤の長径は、膜厚の2倍程度までとされてきたのに対して、本発明では長径が膜厚の3倍以上である固形潤滑剤を、塗布時の面圧を利用して扁平化させ、連続皮膜中に含有させている点に特徴がある。固形潤滑剤に関しては、先に述べたようなあらかじめボールミル等で粉砕することにより扁平化させるという従来技術すら無く、使用可能な固形潤滑剤の大きさは、連続皮膜の膜厚により必然的に制限されてきた。本発明はこれをブレークスルーしたものである。
前記(8)は、固形潤滑剤としてフッ素系樹脂を必須成分とするものであり、前記(1)の製造方法である。フッ素系樹脂は固形潤滑剤の中ではすべり性に最も優れたもののひとつであるが、ポリエチレンやパラフィンなどと比較すると、粒子径の揃ったものが得られにくい。すなわち通常、サブミクロンの微粒子であるか、もしくは数十〜数百ミクロンの混合粉末である。したがって従来技術では、膜厚が20μm以下の連続皮膜に添加する場合は、必然的に微粒子タイプを選択せざるを得なかった。本技術はこの点をブレークスルーしたものである。しかも、フッ素系樹脂という比較的「固くてもろい」と思われているものを、塗布ロールの面圧程度で扁平化可能とさせた点に大きな特徴がある。
前記(6)は、本発明の金属板の製造方法のひとつである。市販のフッ素系樹脂の水分散体は、乳化重合で得られたフッ素系樹脂のラテックスに界面活性剤を添加したのち濃縮・安定化したものである。しかしこれをそのまま、水系樹脂に混合して金属板に塗布したり、あるいは、これを乾燥・凝出させたいわゆるファインパウダーをそのまま溶剤系樹脂に添加したものを金属板に塗布すると、塗布ロール上にフッ素系樹脂の巻きつきが起こりやすい。また、生成した潤滑性皮膜中には、先に述べた皮膜に垂直な方向から見ると長径が20μm超であるもの(B−3)が含まれず、高度なすべり性を発現できない。これに対して、乳化重合で得られたフッ素系樹脂のラテックスを凝析・乾燥してファインパウダーとし、必要に応じて粉砕したのちに、放射線照射により低分子量化したものを用いると、塗布ロール上の巻きつきの問題が無く、また潤滑性皮膜中には(B−2)や(B−3)のタイプが含まれるようになる。
ここではファインパウダーを放射線で低分子量化したものを使用するので、この場合の粒子径は二次粒子径を意味し、これが20μmを超えていれば良い。一次粒子径は1μm以下である。放射線照射後の低分子量ファインパウダーが、塗布ロールの面圧程度で扁平化可能になっているのは、一次粒子同士が適度に結合され、塑性変形可能な状態になっているためと思われる。
ファインパウダーとしては、通常得られる二次粒子径300 〜600 μm(一次粒子径はサブミクロン)のものが使用可能である。これに放射線を照射することにより低分子量化する。ここで用いる放射線とは、電子線、γ線、X線などを指す。
なお、フッ素系樹脂の分子量を正確に測定するのは困難であるため、分子量低下の目安としては、製造ままのファインパウダーと比較した時の融点の低下度を用いることができる。融点の低下度が0.8 ℃以上あれば、塗布ロールへの巻きつきを抑制する効果がある。なお、ここで言う融点とは、いったん融解してから冷却した焼成品を再度融解するときのものであり、示差熱分析法(DSC)を用いて昇温速度10℃/minで融解、冷却、再融解した場合のものである。
前記(6)も、本発明の金属板の製造方法のひとつである。懸濁重合により合成されたフッ素系樹脂をモールディングパウダー用に造粒(焼成)する等の熱処理を行ことなく、必要に応じて粉砕したのちに、放射線を照射することにより低分子量化する。懸濁重合により合成されたフッ素系樹脂はそもそも塗布ロールへの巻きつきの問題が少なく、ここで放射線を照射する主目的はむしろ、塑性変形をしやすくさせることである。塑性変形しやすければ、塗布時の面圧で扁平化することができ、この結果、皮膜中には(B−2)、(B−3)のタイプのフッ素樹脂が含まれるようになる。照射前と比較して融点の低下度が0.8 ℃以上あれば、その効果が見られる。
なお、粒子径が大きいため、連続皮膜(A)の成分と混合して金属板に塗布する際には、混合液を連続的に攪拌する必要がある。攪拌が不足すると沈降を生じる。沈降の生成を抑制するには、少なくとも50rpm 相当以上の攪拌をすることが好ましい。100rpm相当以上であればほとんど沈降は生じない。
前記(7)は、本発明を水性成分から構成される連続皮膜(A)に適用する場合の製造方法である。水性成分から構成される連続皮膜とは、水系樹脂、すなわち水溶性樹脂もしくは水分散性樹脂、あるいは水系無機化合物、例えば水ガラス、水系金属酸化物等のことである。前記(11)および(12)で用いる放射線照射により低分子量化されたフッ素系樹脂を、さらに界面活性剤により水分散体とする。これを、連続皮膜(A)の水性成分と混合して、金属板に塗布・乾燥する。沈降の生成を抑制するには、やはり少なくとも50rpm 相当以上の攪拌をすることが好ましい。
前記(8)は、放射線照射により低分子量化されたフッ素系樹脂を、さらに界面活性剤により水分散体としたもので、前記(7)で用いるものである。水分散体自身の分散安定性を高めるには、固形分濃度を30重量%程度以上にするのが良い。一方、取り扱いの容易さからは、固形分濃度は60重量%程度以下としておくのが望ましい。長期保管後、使用する場合には、水分散体のままで保管し、使用前によく攪拌してから、連続皮膜(A)の水性成分と混合するのが良い。
前記(9)は、フッ素系樹脂水分散体を連続皮膜(A)の水性成分に混合して得られる水性塗料組成物であり、前記(7)の製造方法において用いるものである。
次に本発明に使用可能なその他の原料、材料について述べる。
連続皮膜中には、すべり性を阻害しない範囲で、種々の添加物を加える事ができる。例えば、耐食性向上のために、有機化合物として各種インヒビターが、無機化合物としてシリカ、チタニア、ジルコニア等が添加できる。また、着色が必要であれば、各種有機、無機顔料を添加できる。塗布性を向上させるために、レベリング剤や消泡剤を添加しても差し支えない。
本発明に使用する組成物は、先に述べた成分(A)、(B)、および各種添加物を所定の割合で混合するだけで得られる。混合の順序は特に規定するものではないが、大スケールで安定的に組成物を得るためには、固形潤滑剤(B)をあらかじめ所定量だけ計りとり、これを連続皮膜(A)の成分で2〜3倍に希釈してよく攪拌し、これを連続皮膜(A)の成分や添加物、溶媒等を混合した組成物の混合液にゆっくり攪拌しながら混合してゆくのが良い。できた組成物は定常的に攪拌しておくのがよい。
塗布は通常の方法でよく、例えばロールコーターによる方法、スプレー+ロール絞り、浸漬+ロール絞り、バーコーター、ローラー塗布、はけ塗りなどいずれの方法でも良いが、塗布時にロール面圧に相当する圧力が加わることが必要である。したがって、非接触で付着量制御するエアナイフ絞りを行う場合には、添加物の扁平化に十分な面圧がかかっているかどうかを確認する必要がある。乾燥は、連続皮膜(A)の種類にもよるが、一般的には溶剤もしくは水分が十分に除去される程度、すなわち乾燥板温100 ℃程度以上あればよい。乾燥方法も、直火炉、誘導加熱炉、電気抵抗炉、熱風乾燥炉など、通常の方法から選択できる。
本発明が適用可能な金属板としては、鋼板、アルミニウムおよびその合金板、マグネシウムおよびその合金板、チタンおよびその合金板、銅およびその合金板、ニッケルおよびその合金板などが例示できる。このうち鋼板の例としては、熱延鋼板、冷延鋼板、めっき鋼板、ステンレス板などがあげられる。
このうちめっき鋼板の例としては、電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき、無電解めっき、溶融塩電解めっき等の方法により作成された各種めっき鋼板があげられる。たとえば、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、クロムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、銅めっき鋼板などの純金属でめっきされた鋼板がある。また、例えば亜鉛とニッケル、鉄、アルミニウム、クロム、チタン、マグネシウム、マンガン、コバルト、錫、鉛などの1種または2種以上の金属との合金めっき鋼板、さらにこれらのめっき層に他の金属および/またはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機物、および/または有機化合物を意図的に含有させた、もしくは不純物として含有するめっき鋼板、さらには、上述の2種類以上のめっきを複層有するめっき鋼板などがある。
次に、本発明を実施例を用いて非限定的に説明する。
(1)供試した金属板
下記の金属板を用いた。
GI(溶融亜鉛めっき鋼板):板厚0.8mm の軟鋼板に片面あたり 60g/m2 の溶融亜鉛めっ きを施した鋼板。
EG(電気亜鉛めっき鋼板):板厚0.8mm の軟鋼板に片面あたり 20g/m2 の亜鉛めっき電 析させた鋼板。
SUS(ステンレス鋼板):板厚1.2mm のSUS304
(2)連続皮膜
表1に示す6種類の連続皮膜を用いた。
(3)固形潤滑剤
表2に示した以下の2種類を用いた。
PTFE ポリテトラフルオロエチレン
PE ポリエチレンワックス
(4)塗布、乾燥
連続皮膜の成分と固形潤滑剤を混合し、ロールコーターで金属板に塗布し、直火型の乾燥炉で乾燥した。
(5)固形潤滑剤の最大長径の測定
走査型電子顕微鏡により、皮膜の表面観察および断面観察を行って、扁平な固形潤滑剤を選んでその最大長径を測定した。
(6)滑り出し角度の測定
供試板を100mm 角程度の大板と20mm角程度の小片に切り出し、大板の上に小片を乗せてから、大板を傾けていったときの小片の滑り出し角度を求めた。測定は10回行い、最大、最小を除く8データを平均した。
結果を表2に示す。いずれの連続皮膜と固形潤滑材の組み合わせにおいても、固形潤滑剤が微粒子である場合に比べて、膜厚の3倍以上の長径を有するの扁平な潤滑剤を含有する場合のほうが滑り性に優れていることがわかる。
(1)供試した金属板
下記の金属板を用いた。
GI(溶融亜鉛めっき鋼板):板厚0.8mm の軟鋼板に片面あたり 60g/m2 の溶融亜鉛めっ きを施した鋼板。
EG(電気亜鉛めっき鋼板):板厚0.8mm の軟鋼板に片面あたり 20g/m2 の亜鉛めっきを 電析させた鋼板。
AL(溶融アルミニウムめっき鋼板):板厚1.6mm の軟鋼板に片面あたり 50g/m2 の溶融 アルミニウムめっきを施した鋼板。
なお、めっき中には合金元素としてシリコンを8 wt%含有している。
HR(熱延鋼板):酸洗をした板厚2.3mm の熱延鋼板(440MPa)
SUS(ステンレス鋼板):板厚1.2mm のSUS304
Ti(チタン板):板厚1.0mm の純チタン板
Al (アルミニウム板):板厚1.0mm のJIS3004
(2)下地処理
金属板の種類に応じて、以下の各種下地処理を行った。
1)クロメート処理:部分還元クロム酸とコロイダルシリカの混合物を塗布、乾燥した。
2)りん酸亜鉛処理:市販のりん酸亜鉛処理液を用いて処理を行った。
3)非クロメート処理:タンニン酸とシランカップリング剤の混合物を塗布、乾燥した。
4)プライマー処理:エポキシ系のプライマーを塗布、乾燥した。
5)陽極酸化処理:アルミニウム板用にはりん酸陽極酸化処理、チタン板用には過酸化水素 陽極酸化処理を行った。
(3)水性樹脂
水性樹脂として、以下のいずれかを用いた。
1)ウレタン樹脂:エーテル・エステル系ウレタン樹脂とエステル系ウレタン樹脂の1:1 混合物
2)アイオノマー樹脂:Na中和型アイオノマー樹脂
3)アクリル樹脂:メタクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、スチ レンの共重合体
4)オレフィン樹脂:エチレン−メタアクリル酸共重合体
5)ポリエステル樹脂:線状飽和ポリエステル樹脂
(4)フッ素系樹脂の水分散体
フッ素系樹脂としては、乳化重合で得られたPTFE, PFA, FEPのラテックスをそれぞれ凝析・乾燥したのち、放射線照射(ここでは電子線を使用)により融点の低下度が0.8 ℃以上となるように低分子量化し、これを界面活性剤等により水分散体としたものを主に用いた。また、一部の実施例(番号23,25,30)については、懸濁重合で得られたフッ素系樹脂を熱処理することなく、放射線を照射(ここではγ線を使用)して融点の低下度が0.8℃以上となるように低分子量化したのち、界面活性剤により水分散体としたものを用いた。なお、比較として、乳化重合で得られたPTFEのラテックスに界面活性剤を添加したのち濃縮・安定化した市販の水分散体も用いた(番号34)。
(5)その他の潤滑剤
いくつかの例については、ポリエチレンワックス(PE)、マイクロクリスタリンワックス(MC)、パラフィンワックス(PAR)のいずれかを、それぞれ樹脂固形分の16重量%添加した。
(6)その他の添加物
いくつかの例については、コロイダルシリカを樹脂固形分の20重量%添加した。また、すべての例について、レベリング剤を微量添加し、樹脂のハジキを防止した。
(7)塗布、乾燥
上記(3)〜(6)を混合して得られた組成物を攪拌しながらロールコーターにより金属帯に塗布し、直火型の乾燥炉にて、到達板温100 〜150 ℃で乾燥した。なお、ロールコーター上に樹脂の巻きつきが起こるかどうかを確認した。
(8)評価試験
(8−1)すべり性
供試板を水平に対して一定の角度で傾けて保持し、その上にフィルムが全身に巻かれた市販のPET ボトル(500CC入り)を横向きに静置したとき、何度の角度で保持した場合にすべり出すかを調べた。
◎:7°未満ですべり出した。
○:7°以上、9°未満ですべり出した。
△:9°以上、11°未満ですべり出した。
×:11°以上にしないと滑らなかった。
(8−2)耐磨耗性
上記のPET ボトルを、供試剤の上に横向きに置いて、1分間に60往復の速度で摺動を行い、10万往復後の供試材表面の損傷状態を調べた。
◎:摺動部に目立った傷が見られない。
○:摺動部の両端にのみ傷が見られる。
△:摺動部の中央部分にも浅い傷が見られる。
×:摺動部の中央部分にも深い傷が多数見られる。
(8−3)磨耗後すべり性
上記(8−2)の耐磨耗性試験終了後に、(8−1)のすべり性試験を行った。
◎:7°未満ですべり出した。
○:7°以上、9°未満ですべり出した。
△:9°以上、11°未満ですべり出した。
×:11°以上にしないと滑らなかった。
(8−4)皮膜密着性
供試板の潤滑性皮膜面に1mmゴバン目状にカッターナイフでクロスカットを入れ、テープ剥離した。
○:皮膜剥離が見られない
△:皮膜剥離が5%未満
×:皮膜剥離が5%超
結果を表3に示す。本発明品はいずれも、塗布時にロールへの樹脂巻きがなく、かつ塗布後の金属板は優れたすべり性、耐磨耗性、磨耗後すべり性および皮膜密着性を兼ね備えているため、自販機シューター、トップトレイ用材料として適用可能である。
表3に示した18(実施例)と35(比較例)のめっき鋼板について円筒成形試験を行った。限界絞り比を求めたところ、18が2.7、35が2.2となり、1が優れていた。したがって、本発明品は成形用途にも適用できる優れた摺動性を示す。
表3に示した30(実施例)と39(比較例)の熱延鋼板をしごき成形した。いずれも板厚減少率を15%として、別々の金型で各々1000サンプル試験したあと、それぞれの金型の損傷を比較したところ、30を用いたものが圧倒的に損傷軽微であった。したがって、本発明は金型損傷対策としても有効なものである。
(1)フッ素系樹脂の水分散体
表4に示すような、樹脂種類、重合方法、重合後処理方法、熱処理有無、低分子量化方法の異なるフッ素系樹脂の水分散体を用意した。水分散化には、極性基を有するフルオロカーボン系界面活性剤を用いた。低分子量化したものについては、高分子量体に対する融点低下度を、さきに述べた示差熱分析法(DSC)で求めた。また、水分散体の粒子径を光散乱法により測定した。
なお、表4のH, Kは乳化重合ままで濃縮・安定化させた市販の水分散体であり本発明の比較例である。またC, Gは、フッ素系樹脂を乳化重合により合成する途中で反応を停止させて低分子量化したものであり、これも比較例である。さらに、Bは低分子量を行っておらず、Dは熱処理を行っているため、これらもやはり比較例である。
(2)水性樹脂
ウレタン樹脂:エーテル・エステル系ウレタン樹脂とエステル系ウレタン樹脂の1:1混 合物
(3)供試した金属板
GI(溶融亜鉛めっき鋼板):板厚0.8mm の軟鋼板に片面あたり 60g/m2 の溶融亜鉛めっ きを施した鋼板。
(4)下地処理
非クロメート処理:タンニン酸とシランカップリング剤の混合物
(5)塗布、乾燥
上記(4)を全付着量が100〜 150mg/m2 となるように塗布、乾燥した金属板(3)に、(1)と(2)を、固形分比率で20:80となるように混合して攪拌しながら塗布し、直火型の乾燥炉にて、到達板温100 〜150 ℃で乾燥した。乾燥後の膜厚は3〜4μmとなるようにした。
(6)水分散体および金属板の評価試験
(6−1)水性樹脂+水分散体の分散安定性
上記(5)で用いた(1)と(2)の混合物を全固形分濃度25wt%としたものを500cc のビーカーに入れ、金属製の攪拌羽を水面近傍にセットして、50rpm もしくは100rpmで攪拌させた。これを18時間連続したのち停止し、ビーカーの底に溜まった沈殿の量を測定した。
◎:沈殿の生成なし
○:沈殿量がフッ素系樹脂固形分の10%未満
△:沈殿量がフッ素系樹脂固形分の10%超、30%未満
×:沈殿量がフッ素系樹脂固形分の30%超
(6−2)水性樹脂+水分散体の塗布ロールへの巻きつき
前記(6−1)と同じ混合物を1L用意し、ラボロールコーターにて塗布時をシミュレートしたロール回転テストを行った。ロール形式は2ロール(ピックアップロールは金属ロール、アプリケーターロールはゴムロール)のナチュラルコーターで、ロール幅300mm 、ロール径120mm である。これを、受けパン内に1Lの上記混合物を満たした状態で、アプリケーターロールの回転速度15mpm 、ピックアップロールの回転速度10mpm 、線圧200g/mm で2時間連続回転したときのロールへの樹脂巻き発生を観察した。なお実操業により近い条件とするため、GI板をアプリケーターロールに常時接触するように固定したまま、ロールコーターを回転させた。
◎:ロールへの樹脂巻き発生なし
○:ロールの一部にわずかに樹脂巻きが見られる
△:1時間以内に顕著な樹脂巻きが発生
×:15分以内に顕著な樹脂巻きが発生
(6−3)潤滑性皮膜中の(B−3)個数
先に述べたように、潤滑性皮膜中におけるフッ素系樹脂(B)の形態をSEM観察により確認し、皮膜に垂直な方向から見ると長径20μm超である(B−3)のタイプのフッ素系樹脂が1mm2 あたり10個以上含有されているかどうかを確認した。
○:(B−3)タイプのフッ素系樹脂が1mm2 あたり10個以上含有されている。
×:(B−3)タイプのフッ素系樹脂が1mm2 あたり10個以上含有されていない。(6−4)金属板のすべり性
供試板を水平に対して一定の角度で傾けて保持し、その上にフィルムが全身に巻かれた市販のPET ボトル(500cc入り)を横向きに静置したとき、何度の角度で保持した場合にすべり出すかを調べた。
◎:7°未満ですべり出した。
○:7°以上、9°未満ですべり出した。
△:9°以上、11°未満ですべり出した。
×:11°以上にしないと滑らなかった。
結果を表4に示す。本発明の水分散体はいずれも塗布ロールへの樹脂巻きを起こしにくく、回転数100rpmで攪拌すれば沈殿生成もわずかであり、かつ金属板に塗布することにより、優れたすべり性を発現させることができる。すなわち、本発明は安定的に製造が可能であり、品質も安定している。
(1)供試した金属板
板厚2.3mm の熱延鋼板(440MPa 級)を用いた。
(2)連続皮膜と固形潤滑剤の種類
表5に示す実施例3水準、比較例3水準および市販潤滑剤であるボンデ・ボンダリューベ(日本パーカライジング)処理された熱延鋼板を用いた。ここで、実施例−2および比較例−2は、連続皮膜として溶剤系樹脂を用いているため、固形潤滑剤としてはそれぞれ、表4のEおよび市販のポリエチレンワックスを、水分散体とすることなく、粉末のまま添加した。
(3)塗布、乾燥
表5の混合物を酸洗された熱延鋼板にロールコーターで塗布し、熱風炉で乾燥した。(4)金属板の連続摺動性
塗布、乾燥の済んだサンプルから20mm× 360mmの試験片を切り出し、連続引き抜き試験を行った。ダイスはSKD11 で肩R2.5、幅5mm、面圧は40kgf/mm2 とし、引き抜き速度3.3mm/sec で長さ260mm を引き抜き、引き抜き荷重の平均値より動摩擦係数を求めた。引き抜き試験を30〜50回繰り返し、動摩擦係数が上昇してゆくかどうかを調べた。
結果を図3に示す。比較例は摺動回数が少ないと、市販ボンデ処理よりも低い動摩擦係数を示すが、摺動回数が増えると動摩擦係数が増加する傾向にある。これに対して本発明品は、動摩擦係数が比較例よりもさらに低い値であり、かつ摺動回数が増えてもそのままの値で安定しており、高面圧での連続摺動性に優れている。
(1)供試した金属板
板厚2.3mm の熱延鋼板(440MPa 級)を用いた。
(2)連続皮膜と固形潤滑剤の種類
表6に示す実施例3水準、比較例1水準および市販潤滑剤であるボンデボンダリューベ(日本パーカライジング)処理された熱延鋼板を用いた。実施例4と5では、熱延鋼板の下地処理として、りん酸亜鉛皮膜を電解処理により付着させた。処理時間は1〜2秒である。
(3)塗布、乾燥
表6の混合物を酸洗された熱延鋼板にロールコーターで塗布し、熱風炉で乾燥した。(4)金属板の多段成形性
塗布、乾燥の済んだサンプルを円形にブランキングしたのち、図4に示す自動車ミッション部品の形状となるように多段成形により成形した。塗油は行わず、歯型部分は合計4回のしごき成形により板厚減少率30%となるようにした。成形は300 個行い、以下のようにランクづけ評価した。ボンデ処理品を基準にとったのは、現状、多段成形に多用されているためである。
◎:割れ無く成形でき、寸法精度、製品タクトタイムともボンデ処理品と同等であっ た。
○:割れ無く成形でき、寸法精度はボンデ処理品と同等だが、ノックアウトが遅れ気 味でタクトタイムが長くなった。
△:割れ無く成形できたが、寸法精度がボンデ処理品に比べて劣っていた。
×:成形途中で割れが発生した。
結果を表6に示す。本発明品はボンデ処理とほぼ同等の多段成形性を示し、特に下地処理として電解ボンデを行ったものは、製品タクトタイムも含めてボンデ処理同等であった。したがって、本発明品はミッション部品等をプレスの多段成形により製造する場合にも適用可能である。
(1)供試した金属板
EG(電気亜鉛めっき鋼板):板厚0.8mm の軟鋼板に片面あたり20g/m 2 の亜鉛めっきを 電析させた鋼板
(2)連続皮膜と固形潤滑剤の種類
表7に示す実施例3水準、比較例1水準を用いた。
(3)塗布、乾燥
表7の混合物をEGにロールコーターで塗布し、直火炉で乾燥した。
(4)通紙適性試験
供試材の複写機通紙部材としての適性を以下の方法で調べた。
(4−1)紙滑り性
30mm×30mmのKB用紙を金属板上に置き、荷重250g、滑り速度150mm/min で摺動させて動摩擦係数を求めた。
(4−2)耐紙摩耗性
φ50mmの円筒にKB用紙を巻きつけ、荷重500gで金属板に押し付けながら振幅30mm、1往復ごとに1°回転しながら、合計5000回摺動して、紙摩耗に対する耐久性を以下のように判定した。
○:金属板表面に擦り傷がほとんど認められず、紙の汚れもほとんど無い。
△:金属板表面に浅い擦り傷(連続皮膜の傷)が認められ、紙の汚れも若干認めら れる。
×:金属板表面に深い擦り傷(金属表面の傷)が認められ、紙の汚れも激しい。
(4−3)帯電性
KB用紙で供試材を摩擦し、摩擦前後の電位差を測定して帯電の目安とする。
○ : 10V以下
△ : 10V超、100V以下
× : 100V超
結果を表7に示す。本発明は通紙適性にも優れており、複写機やプリンターの通紙部材としても適用可能である。
(1)供試した金属板
SUS(ステンレス鋼板):板厚1.2mm のSUS304
(2)連続皮膜と固形潤滑剤の種類
表8に示す実施例2水準、比較例1水準を用いた。ここでは、金属板上に3層の有機皮膜(下塗り、中塗り、上塗り)が形成されているが、本発明はこのうち上塗り樹脂に適用するものである。また、上塗りの連続皮膜として溶剤系樹脂を用いているため、固形潤滑剤としてはそれぞれ、表4のEおよび市販のポリエチレンワックスを、水分散体とすることなく、粉末のまま添加した。
(3)塗布、乾燥
下地処理、中塗り、上塗りともそれぞれロールコーターで金属板に塗布し、熱風炉で乾燥する、いわゆる3コート、3ベーク方式で行った。
(4)滑雪性試験
氷を供試板の上に静置し、水平方向に力を加えて、動摩擦係数を求めた。
(5)耐候性試験
紫外線照射と乾湿繰り返しからなる耐候性サイクル試験をラボにて4000時間行い、皮膜の剥離有無、および滑雪性の変化を調べた。
結果を表8に示す。本発明品は滑雪性、耐候性にも優れ、屋根材としても適用可能であることがわかる。
本発明の金属板表面の走査型電子顕微鏡写真である。B−1 長径が1μm以下のフッ素系樹脂B−2 長径が1μm超、20μm以下のフッ素系樹脂B−3 皮膜に垂直な方向から見ると長径が20μm超であるフッ素系樹脂 本発明の金属板の断面模式図である。 本発明の金属板と比較材で連続摺動試験を行ったときの、動摩擦係数の変化を表すグラフである。 多段成形される自動車ミッション部品の写真である。

Claims (9)

  1. 金属板の片面もしくは両面に平均膜厚が0.5μm以上20μm以下の連続皮膜(A)を有し、該連続皮膜中に添加物として、平均膜厚の3倍以上の長径を有する固形潤滑剤(B)が含有されており、この固形潤滑剤(B)は皮膜に垂直な方向から見ると長径が20μm超のフッ素系樹脂であり、その個数が1mmあたり10個以上であることを特徴とする表面処理金属板。
  2. 連続皮膜がフッ素を含有せず、かつフッ素系樹脂の金属板上での付着量が、F換算で20mg/m2 以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理金属板。
  3. 連続皮膜中に、固形潤滑剤としてさらにフッ素を含有しないワックスを含有する請求項1または2に記載の表面処理金属板。
  4. 連続皮膜と金属板との間に下地処理層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面処理金属板。
  5. 金属板表面に添加物を含有する連続皮膜を形成させるために、連続皮膜(A)の構成成分と添加物とを混合して金属表面に塗布する方法において、添加物が連続皮膜の平均膜厚の3倍よりも長径が大きいフッ素系樹脂からなる固形潤滑剤(B)であり、この固形潤滑剤(B)として、乳化重合により合成されたフッ素系樹脂のファインパウダーを、造粒することなく照射後の融点低下度が0.8℃以上となるように放射線照射により低分子量化したものを用い、連続皮膜の平均膜厚を0.5μm以上20μm以下とし、塗布時の面圧を利用して固形潤滑剤(B)を扁平化させることにより、連続皮膜中に保持させることを特徴とする表面処理金属板の製造方法。
  6. 金属板表面に添加物を含有する連続皮膜を形成させるために、連続皮膜(A)の構成成分と添加物とを混合して金属表面に塗布する方法において、添加物が連続皮膜の平均膜厚の3倍よりも長径が大きいフッ素系樹脂からなる固形潤滑剤(B)であり、この固形潤滑剤(B)として、懸濁重合により合成されたフッ素系樹脂を造粒することなく、照射後の融点低下度が0.8℃以上となるように放射線照射により低分子量化したものを用い、連続皮膜の平均膜厚を0.5μm以上20μm以下とし、塗布時の面圧を利用して固形潤滑剤(B)を扁平化させることにより、連続皮膜中に保持させることを特徴とする表面処理金属板の製造方法。
  7. 放射線を照射して低分子量化したフッ素系樹脂を、界面活性剤により水分散体とし、これを連続皮膜の水性成分と混合して攪拌しながら金属板に塗布、乾燥することを特徴とする請求項5または6記載の表面処理金属板の製造方法。
  8. 放射線を照射して低分子量化したフッ素系樹脂を、界面活性剤により水分散体としたことを特徴とする請求項7記載の表面処理金属板の製造方法に用いるフッ素系樹脂水分散体。
  9. 放射線を照射して低分子量化したフッ素系樹脂を、界面活性剤により水分散体とし、これを連続皮膜の水性成分と混合して得られる請求項7記載の表面処理金属板の製造方法に用いる塗料組成物。
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