JP2010059355A - 紫外線予備硬化型シーリング材 - Google Patents

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Abstract

【課題】紫外線予備硬化型シーリング材において、ヘミング工法で製造される蓋物パネル等に用いられ、焼付け加熱時の内部の微小な空間や気泡の熱膨張による膨れを効果的に防止できること。
【解決手段】紫外線予備硬化型シーリング材は、アクリル系樹脂が50重量部、可塑剤としてのDINPが35重量部、OBzPが35重量部、充填剤としての炭酸カルシウムが35重量部(微粒)及び70重量部(粗粒)、密着性付与剤が22重量部、気泡防止剤が5重量部、紫外線硬化性樹脂材料が31重量部、それぞれ含有されてなり、開口部に塗布して紫外線を1秒または10秒照射して予備硬化させることによって、その後に加熱されて内部に包含された微小な空間や気泡が膨張する条件におかれても、膨れを生ずることがない。
【選択図】なし

Description

本発明は、紫外線硬化性樹脂材料を含有し水密・気密等のシール機能を有する紫外線予備硬化型シーリング材に関するものであり、特に、塗装焼付けのための加熱時における膨れの発生を抑制することができる紫外線予備硬化型シーリング材に関するものである。ここで、本明細書・特許請求の範囲・図面・要約書において、「紫外線硬化性樹脂材料」とは、紫外線の照射によって硬化する有機材料であって、高分子(ポリマー)のみならず、オリゴマー、モノマー、及びこれらの混合物をいうものとする。
自動車等の車両の蓋物パネル等の接合部には、シール機能(水密・気密等)を持たせるために加熱硬化タイプのシーリング材が施工されており、このようなシーリング材としては、塩化ビニル樹脂系シーリング材やアクリル樹脂系シーリング材等が用いられるが、コスト面や取扱いの容易性等の点から、加熱硬化タイプの塩化ビニル樹脂系シーリング材が主流となっている。この塩化ビニル樹脂系シーリング材は室温ではペースト状であり、その後の塗装工程における加熱焼付け時に、同時に硬化してエラストマー状になる。
一方、ドアやフード(ボンネット)等の蓋物パネルは、合わせ部に防錆接着剤を塗布した後、アウターパネルの端部を折り曲げて固定するヘミング工法によって施工されているが、この方法では内部に微小な空間や気泡が発生し易く、折り曲げ部分の上から塗布されたペースト状のシーリング材が、加熱硬化時に内部の微小な空間や気泡が熱膨張することによって膨れ現象を生じて外観上見栄えが悪くなるばかりでなく、膨れが大きくなると破泡して水密性が確保できなくなり、水漏れや錆が生ずることもあった。
そこで、塩化ビニル樹脂系シーリング材において、このような問題を解決することを目的としたものとして、例えば、特許文献1に記載された車体パネルのヘム部接着シール工法の発明がある。この特許文献1に記載された発明においては、ヘミング工程に用いられる接着剤中に100μm〜300μmのガラスビーズを添加することによって従来よりも低圧でプレスすることができ、板合わせ部に用いられるシーリング材に熱硬化性材料を3%以上添加して150℃における強度が50kPa以上になるようにすれば、膨れ等を有効に防止または低減できるとしている。
また、特許文献2に記載された自動車用光硬化型シーリング剤及びそれを用いた施工方法の発明においては、光硬化性樹脂、モノマー、充填剤、熱可塑性樹脂またはポリイソブチレン、光反応開始剤、熱反応開始剤を含有する自動車用光硬化型シーリング剤について開示しており、このシーリング材は塗布・修正した後に紫外線硬化させることによって短時間に仕上がり状態を確認することができ、後の加熱によって更に硬化して電着塗装板との密着性に優れたものとなるとしている。
特開2004−026070号公報 特開平06−116546号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、内部の微小な空間や気泡の熱膨張による膨れ現象は概ね40℃以上の昇温過程において発生するものであるため、150℃における強度が50kPa以上であっても、その前に既に膨れ現象が生じているため、確実に膨れを防止することができない。また、上記特許文献2に記載の技術においては、短時間に仕上がり状態を確認することのみを目的としているため、内部の微小な空間や気泡の熱膨張による膨れ現象を、効果的かつ確実に防止することができないという問題点があった。
そこで、本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、ヘミング工法によって製造される蓋物パネル等に用いられるシーリング材において、塗装焼付け時の加熱による内部の微小な空間や気泡の熱膨張に起因する膨れを効果的かつ確実に防止することができる紫外線予備硬化型シーリング材を提供することを目的とするものである。
請求項1の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、紫外線硬化性樹脂材料を含有し、前記紫外線硬化性樹脂材料の含有量が5重量%〜25重量%の範囲内、より好ましくは5重量%〜15重量%の範囲内であるシーリング材であって、紫外線照射または紫外線を含む光の照射によって表面硬化して、表面硬化後のアスカーC型ゴム硬度計によって測定した硬度が20〜60の範囲内、より好ましくは30〜60の範囲内であるものである。
ここで、「アスカーC型ゴム硬度計によって測定した硬度」とは、デュロメータの一種であるアスカーC型ゴム硬度計を用いて測定された値であって、日本ゴム協会の規格である「SRIS0101」による硬度をいう。
請求項2の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、請求項1の構成において、アクリル系樹脂及び/または塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、充填剤と、気泡防止剤とを含有し、前記アクリル系樹脂及び/または塩化ビニル系樹脂の含有量が15重量%〜20重量%の範囲内であり、前記可塑剤の含有量が20重量%〜30重量%の範囲内であり、前記充填剤の含有量が30重量%〜45重量%の範囲内であり、前記気泡防止剤の含有量が1.0重量%〜2.0重量%の範囲内であるものである。
ここで、「アクリル系樹脂」とは、広くアクリル樹脂及びメタクリル樹脂を含むものであって、アクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステル等から選ばれるモノマーの単一重合体や共重合体を意味するものであり、これらのモノマーとして具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等を始めとして、種々のモノマーを用いることができる。
また、「塩化ビニル系樹脂」とは、塩化ビニルの単独重合体、酢酸ビニルとの共重合体、及びこれらの混合物をいうものである。更に、「可塑剤」としては、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸オクチルベンジル(OBzP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、等を用いることができる。また、「充填剤」としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、珪藻土、クレー、マイカ、等を用いることができる。更に、「気泡防止剤」としては、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、等を用いることができる。
請求項3の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、請求項1または請求項2の構成において、更に密着性付与剤を含有するものである。ここで、「密着性付与剤」としては、ブロックウレタンプレポリマー、ポリアミドアミン等を用いることができ、より具体的には、例えばエアプロダクツ社製のヌーリーボンド272、(株)ADEKA製のアデカレジンQR9428、アデカレジンQR−1636−2I、アデカハードナーEH4070S、アデカハードナーEH4358S、等を用いることができる。
請求項4の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記紫外線硬化性樹脂材料は、ウレタン変性アクリルオリゴマーを含有するとともに、ポリエステル変性アクリルオリゴマーを含有しないものである。ここで、「ウレタン変性アクリルオリゴマー」として、より具体的には(株)ADEKA製のアデカレジンQR9299等を用いることができる。
請求項5の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記充填剤は微粒の炭酸カルシウムと粗粒の炭酸カルシウムの混合物であるものである。ここで、「微粒の炭酸カルシウム」としては、例えば白石工業(株)製のビスコライトOS等を、「粗粒の炭酸カルシウム」としては、例えば竹原化学(株)製の重質炭酸カルシウム等を、それぞれ用いることができる。
請求項1の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、紫外線硬化性樹脂材料を含有し、その含有量が5重量%〜25重量%の範囲内であって、紫外線照射または紫外線を含む光の照射によって表面硬化して、表面硬化後のアスカーC型ゴム硬度計によって測定した硬度が20〜60の範囲内である。本発明者らは、ヘミング工法によって製造される蓋物パネル等に用いられるシーリング材において、塗装焼付け時の加熱による膨れを効果的に防止するための方法について鋭意実験研究を重ねた結果、紫外線硬化性樹脂材料を適量配合することによって膨れを効果的に防止できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
すなわち、シーリング材中に紫外線硬化性樹脂材料を5重量%〜25重量%の範囲内で含有させることによって、紫外線予備硬化後の「SRIS0101」による表面硬度が20〜60の範囲内となり、この上から塗装・加熱焼付けした場合でも、表面硬度が20以上であるために十分な強度を有しており、内部気泡の加熱膨張による膨れを抑えることができ、表面硬度が60以下であるため十分な柔軟性を有しており、割れが生じることもない。
ここで、紫外線硬化性樹脂材料の含有量が5重量%〜15重量%の範囲内であると、より確実に、紫外線予備硬化後の「SRIS0101」による表面硬度を20〜60の範囲内にすることができるため、より好ましい。また、紫外線予備硬化後の「SRIS0101」による表面硬度が30〜60の範囲内であると、より確実に内部気泡の加熱膨張による膨れを抑えることができるため、より好ましい。
このようにして、ヘミング工法によって製造される蓋物パネル等に用いられるシーリング材において、塗装焼付け時の加熱による内部の微小な空間や気泡の熱膨張に起因する膨れを効果的かつ確実に防止することができる紫外線予備硬化型シーリング材となる。
請求項2の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、アクリル系樹脂及び/または塩化ビニル系樹脂を15重量%〜20重量%の範囲内で含有し、可塑剤を20重量%〜30重量%の範囲内で含有し、充填剤を30重量%〜45重量%の範囲内で含有し、気泡防止剤を1.0重量%〜2.0重量%の範囲内で含有することから、請求項1に係る発明の効果に加えて、紫外線予備硬化後のシーリング材塗膜の膨れ抑制性・柔軟性・密着性を保持することができる。
請求項3の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材においては、更に密着性付与剤を含有することによって、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加えて、紫外線硬化性樹脂材料を多めに(5重量%〜25重量%の範囲内で)配合した場合でも、確実にシーリング材塗膜の密着性を保持することができる。なお、密着性付与剤の含有量は、5重量%〜8重量%の範囲内とすることが好ましい。
請求項4の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材においては、紫外線硬化性樹脂材料が、ウレタン変性アクリルオリゴマーを含有するとともに、ポリエステル変性アクリルオリゴマーを含有しないことから、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに係る発明の効果に加えて、ウレタン変性アクリルオリゴマーが紫外線硬化した場合の柔軟性が生かされて、より確実に紫外線予備硬化後の「SRIS0101」による表面硬度を60以下にでき、紫外線予備硬化後のシーリング材塗膜が十分な柔軟性を有するものとなる。
請求項5の発明に係る紫外線予備硬化型シーリング材においては、充填剤が微粒の炭酸カルシウムと粗粒の炭酸カルシウムの混合物であることから、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに係る発明の効果に加えて、充填剤の充填性がより向上して、より確実に、紫外線予備硬化後の「SRIS0101」による表面硬度を20〜60の範囲内にすることができ、紫外線予備硬化後のシーリング材塗膜が十分な柔軟性と十分な強度とを兼ね備えたものとなる。
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る紫外線硬化型シーリング材の膨れ抑制性の評価方法を示す説明図である。まず、本発明の実施の形態に係る紫外線硬化型シーリング材の配合成分と配合比について説明する。
本実施の形態に係る紫外線硬化型シーリング材においては、「紫外線硬化性樹脂材料」として、アクリルモノマー、ウレタン変性アクリルオリゴマー、ヒドロキシアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイドを用いて、アクリルモノマーとしては新中村化学工業(株)製のNKエステルAPG400を、ウレタン変性アクリルオリゴマーとしては(株)ADEKA製のアデカレジンQR9299を、ヒドロキシアルキルフェノンとしてはチバジャパン(株)製のイルガキュア184を、ビスアシルフォスフィンオキサイドとしてはチバジャパン(株)製のイルガキュア819を、それぞれ用いた。
また、「アクリル系樹脂」として三菱レイヨン(株)製のダイヤナールLP−3105を、「塩化ビニル系樹脂(コポリマータイプ)」としてカネカ(株)製のPCH−22を、塩化ビニル系樹脂(ホモポリマータイプ)」としてヴィテック(株)製のP−100を、「可塑剤」としてJプラス(株)製のフタル酸ジイソノニル(DINP)及びJプラス(株)製のフタル酸オクチルベンジル(OBzP)を、それぞれ用いた。
更に、「充填剤」としては微粒の炭酸カルシウムと粗粒の炭酸カルシウムの混合物を用いて、微粒の炭酸カルシウムとして白石工業(株)製のビスコライトOSを、粗粒の炭酸カルシウムとして竹原化学工業(株)製の重質炭酸カルシウムを用いた。また、「気泡防止剤」として酸化カルシウム(CaO)である井上石灰工業(株)製のQC−Xを、「減粘剤」としてエクソンモービル(株)製のD−80を、それぞれ用いた。
更に、「密着性付与剤」としてはブロックウレタンプレポリマー及びポリアミドアミンを用いて、ブロックウレタンプレポリマーAとして(株)ADEKA製のアデカレジンQR9428を、ブロックウレタンプレポリマーBとして(株)ADEKA製のアデカレジンQR−1636−2Iを、ポリアミドアミンAとして(株)ADEKA製のアデカハードナーEH4070Sを、ポリアミドアミンBとして(株)ADEKA製のアデカハードナーEH4358Sを、それぞれ用いた。
これらの配合物を混合して、実施例1乃至実施例3までの3種類の紫外線予備硬化型シーリング材を作製した。また、比較のために、比較例1乃至比較例4までの4種類の比較用のシーリング材を作製した。なお、比較例3においては、「紫外線硬化性樹脂材料」としてのポリエステル変性アクリルオリゴマーとして、東亜合成化学(株)製のアロニックスA8060を使用した。実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例4の7種類のシーリング材の配合成分と配合比を、表1に示す。
Figure 2010059355
表1に示されるように、可塑剤の配合量は、実施例1乃至実施例3までの紫外線予備硬化型シーリング材において合計70重量部(DINP35重量部、OBzP35重量部)で統一し、減粘剤D−80の配合量は実施例1,2が15重量部、実施例3が8重量部と変化させている。同様に、充填剤としての炭酸カルシウムの配合量についても、実施例1,2が合計105重量部(微粒35重量部、粗粒70重量部)、実施例3が合計118重量部(微粒78重量部、粗粒40重量部)と変化させた。
そして、実施例1,2に係る紫外線予備硬化型シーリング材は、アクリル系樹脂を主体とするもので、アクリル系樹脂の配合量が50重量部、アクリル系樹脂用の密着性付与剤としてのブロックウレタンプレポリマーAの配合量が20重量部、ポリアミドアミンAの配合量が2重量部と統一されている。一方、実施例3に係る紫外線予備硬化型シーリング材は塩化ビニル系樹脂を主体としており、塩化ビニル系樹脂の配合量が合計48重量部(コポリマータイプ28重量部、ホモポリマータイプ20重量部)、塩化ビニル系樹脂用の密着性付与剤としてのブロックウレタンプレポリマーBの配合量が20重量部、ポリアミドアミンBの配合量が2重量部である。
気泡防止剤QC−Xの配合量は、実施例1乃至実施例3の紫外線予備硬化型シーリング材において、5重量部で統一されている。一方、「紫外線硬化性樹脂材料」としてのアクリルモノマー、ウレタン変性アクリルオリゴマー、ヒドロキシアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイドについては、実施例1,3においてはそれぞれ5重量部、25重量部、0.5重量部、0.5重量部(合計31重量部)と統一されているが、実施例2ではそれぞれ3重量部、12重量部、0.5重量部、0.5重量部(合計16重量部)と少なくなっている。
以上説明したように、実施例1の紫外線予備硬化型シーリング材はアクリル系樹脂を主体とし、紫外線硬化性樹脂材料としてアクリルモノマー、ウレタン変性アクリルオリゴマー、ヒドロキシアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイドを、合計約10.4重量%用いたものである。これと比較して、実施例2の紫外線予備硬化型シーリング材は、紫外線硬化性樹脂材料の量を約半分(約5.65重量%)にしたものであり、実施例3の紫外線予備硬化型シーリング材は、アクリル系樹脂の代わりに塩化ビニル系樹脂を主体としたものである。
これに対して、比較例に係るシーリング材においては、比較例1が実施例1のアクリル系樹脂を主体とした配合から紫外線硬化性樹脂材料を除いたものであり、比較例2が実施例3の塩化ビニル系樹脂を主体とした配合から紫外線硬化性樹脂材料を除いたものである。したがって、比較例1,2は紫外線予備硬化型シーリング材ではない。
また、比較例3は、実施例1と配合比は全く同じであるが、紫外線硬化性樹脂材料であるアクリルオリゴマーとして、ウレタン変性アクリルオリゴマーの代わりにポリエステル変性アクリルオリゴマーを用いたものである。更に、比較例4は、実施例3の配合に基づいて、実施例3と比較して紫外線硬化性樹脂材料の量を増加させたものである。
このような配合組成を有する実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例4の7種類のシーリング材について、紫外線(UV)硬化性・UV硬化硬度・膨れ抑制性・柔軟性及び密着性についての性能評価を実施した。
UV硬化性の評価方法としては、紫外線硬化性樹脂材料を含有しない比較例1,2を除いた実施例1乃至実施例3及び比較例3,4の5種類のシーリング材について、内径30mm、深さ15mmのアズノールシャーレの中に深さ以上に充填し、端面が直線状になっているヘラ等を用いて、表層が一定になるように余分なシーリング材を除去した。このようにして作製した試料の表層に対して、UV照射装置を用いて、UVランプからの距離を20cmとし、照射時間を1秒及び10秒として、UV照射を行った。
UV照射装置としては、アイグラフィックス社製UV照射装置(メタルハライドランプ、出力1.5kW、照度192mW/cm2 (照射距離20cmのとき。中心波長365nm))を用いた。したがって、照射時間が1秒の場合は積算光量が192mJ/cm2 、照射時間が10秒の場合は積算光量が1920mJ/cm2 となる。照射後に、シーリング材の表層の硬化部分を切り出して未硬化部分を取り除いた後、ノギス等を用いて硬化膜厚を測定した。
また、UV硬化硬度の評価方法としては、上記の方法で作製したUV硬化部分を、厚さが10mm以上になるように重ね合わせて、アスカーC型ゴム硬度計を用いて硬度(日本ゴム協会の規格である「SRIS0101」に基づく硬度)を測定した。
次に、膨れ抑制性の評価方法について、図1を参照して説明する。まず、図1(a)に示されるように、電着塗装を施した70mm×150mm×0.8mmの鋼板3の上に、加熱硬化型のエポキシ系接着剤4を、図1(a)に示されるパターンで、厚さ0.2mm〜0.3mmになるように塗布した。その上から、同じく電着塗装を施した35mm×150mm×0.8mmの鋼板2を貼り合わせて、加熱してエポキシ系接着剤4を硬化させ、図1(b)に示されるように開口部5の内部に所定寸法の空間を有する供試体1を作製した。
この供試体1に対して、実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例4の7種類のシーリング材を、それぞれ各開口部5の上から各開口部5を塞ぐようにして、幅10mm・厚さ2mmの寸法に塗布した。そして、そのまま或いはUV照射を実施した後、140℃に調整された乾燥機に30分間投入し、乾燥機から取り出して膨れの発生の有無や大きさについて評価した。評価基準としては、膨れの大きさが直径10mm以上または膨れの高さが0.5mm以上のものを×、膨れの大きさが直径10mm未満及び膨れの高さが0.5mm未満のものを△、膨れの発生が認められないものを○とした。
また、柔軟性の評価方法としては、電着塗装を施した70mm×150mm×0.8mmの鋼板の上に、実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例4の7種類のシーリング材を、それぞれ幅10mm・長さ100mm・厚さ2mmとなるように塗布した。そして、そのまま或いはUV照射を実施した後、140℃に調整された乾燥機に30分間投入し、乾燥機から取り出して室温まで放冷した後、供試体を直径1インチの丸鋼管に巻き付けて、シーリング材に割れが発生した場合は×、シーリング材に割れが発生しない場合は○と評価した。
更に、密着性の評価方法としては、電着塗装を施した70mm×150mm×0.8mmの鋼板の上に、実施例1乃至実施例3及び比較例1乃至比較例4の7種類のシーリング材を、それぞれ幅10mm・長さ100mm・厚さ2mmとなるように塗布し、そのまま或いはUV照射を実施した後、140℃に調整された乾燥機に30分間投入し、乾燥機から取り出して室温まで放冷した後、爪等で剥離試験を実施した。そして、破壊状態を光学顕微鏡で観察して、破壊状態が界面破壊となったものを×、痕跡破壊となったものを△、凝集破壊となったものを○と評価した。以上の各評価結果を、表2にまとめて示す。
Figure 2010059355
表2に示されるように、UV硬化性の硬化膜厚については、評価した実施例1乃至実施例3及び比較例3,4の5種類のシーリング材の間に有意な差は見られないが、UV硬化硬度については、実施例1乃至実施例3及び比較例4が、いずれもアスカーC型ゴム硬度計で測定した硬度が20〜60の範囲内であるのに対して、ポリエステル変性アクリルオリゴマーである東亜合成化学(株)製のアロニックスA8060を使用した比較例3は、照射時間1秒及び10秒のいずれの場合も、硬度が60を超えてしまっている。
この結果、比較例3のシーリング材は、柔軟性の評価において割れを生じて、×の評価となった。したがって、紫外線予備硬化型シーリング材において、十分な柔軟性を確保するためには、デュロメータの一種であるアスカーC型ゴム硬度計で測定した硬度(日本ゴム協会の規格である「SRIS0101」に基づく硬度)が60以下となることが必要であることが明らかになった。
また、膨れ抑制性については、「UV照射なし」の場合はいずれのシーリング材もペースト状のままであるため、当然膨れが発生して×の評価となるが、UV照射を10秒間実施した場合は、実施例1乃至実施例3の紫外線予備硬化型シーリング材は全て○の評価であり、膨れが全く発生しなかった。更に、UV照射を1秒間だけ実施した場合は、実施例1は○の評価であるが、実施例2,3については△の評価であり、小さい膨れが発生した。
したがって、本実施の形態に係る紫外線予備硬化型シーリング材の中でも、アクリル系樹脂を主体として一定量以上(10重量%以上)の紫外線硬化性樹脂材料を使用したものが、より好ましいことが明らかになった。また、比較例3,4においてもUV照射を1秒間だけ実施した場合でも膨れが全く発生していないことから、アスカーC型ゴム硬度計で測定した硬度(「SRIS0101」に基づく硬度)が、20〜60の範囲内であることに加えて、30以上であることがより好ましいことが明らかになった。
更に、密着性については、実施例1乃至実施例3の全てにおいて剥離試験における破壊状態が凝集破壊であって、密着性にも優れていた。これに対して、紫外線硬化性樹脂材料を多く使用した比較例4については、剥離試験における破壊状態が痕跡破壊または界面破壊であって、密着性が不足していた。したがって、紫外線硬化性樹脂材料の使用量は一定量以下(25重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下)であることが、より好ましいことが明らかになった。
以上の評価結果を総合すると、比較例1乃至比較例4のシーリング材については、膨れ抑制性・柔軟性・密着性のいずれかにおいて問題があり、シーリング材として実用に耐えないことが判明した。これに対して、実施例1乃至実施例3の紫外線予備硬化型シーリング材1については、膨れ抑制性・柔軟性・密着性の全ての試験に合格しており、シーリング材として優れた特性を有することが明らかになった。
したがって、ヘミング工法によって製造される蓋物パネル等に用いられ、内部に微小な空間や気泡を有する部分のシーリング材においては、紫外線硬化性樹脂材料の含有量が5重量%〜25重量%の範囲内、より好ましくは5重量%〜15重量%の範囲内であって、紫外線照射または紫外線を含む光の照射によって表面硬化して、表面硬化後のアスカーC型ゴム硬度計によって測定した硬度が20〜60の範囲内、より好ましくは30〜60の範囲内である、という条件を満たす必要があることが証明された。
このように、本実施の形態に係る実施例1乃至実施例3の紫外線予備硬化型シーリング材においては、ヘミング工法によって製造される蓋物パネル等に用いられるシーリング材において、塗装焼付け時の加熱による内部の微小な空間や気泡の熱膨張に起因する膨れを効果的に防止することができる。
すなわち、本実施の形態に係る実施例1乃至実施例3の紫外線予備硬化型シーリング材を、ヘミング工法によって製造される蓋物パネル等の、内部に微小な空間や気泡を含有する施工部分に塗布して、紫外線を照射することによって予備硬化させた後に、その上から塗料を塗装する等して、例えば140℃に加熱することによって、内部の微小な空間や気泡の熱膨張に起因する膨れを生ずることなく、柔軟性及び密着性を保持して硬化させることができ、施工部分をシールすることができる。
したがって、本明細書には、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項5に係る発明が記載されているのみならず、「請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載された紫外線予備硬化型シーリング材を、施工部分に塗布して紫外線を照射して予備硬化させた後に、加熱して施工部分をシールすることを特徴とするシーリング材の施工方法」の発明も記載されている。
本実施の形態においては、アクリル系樹脂または塩化ビニル系樹脂を単独で配合した場合について説明したが、アクリル系樹脂及び塩化ビニル系樹脂を混合して使用することも可能である。また、「塩化ビニル系樹脂」としてコポリマータイプとホモポリマータイプを混合して使用した場合について説明したが、コポリマータイプまたはホモポリマータイプを単独で使用することもできる。
更に、本実施の形態においては、「アクリル系樹脂」として三菱レイヨン(株)製のダイヤナールLP−3105を使用した場合について説明したが、「アクリル系樹脂」としてはこれに限られるものではなく、広くアクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸アルキルエステル等から選ばれるモノマーの単一重合体や共重合体を使用することができ、これらのモノマーとして具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル等を始めとして、種々のモノマーを用いることができる。
また、本実施の形態においては、「充填剤」として炭酸カルシウムを用いた場合について説明したが、これに限られるものではなく、他にも硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、珪藻土、クレー、マイカ、等を用いることができる。更に、本実施の形態においては、「気泡防止剤」として酸化カルシウム(CaO)を用いた場合について説明したが、他にも酸化マグネシウム(MgO)等を用いることができる。
また、本実施の形態においては、「可塑剤」としてフタル酸ジイソノニル(DINP)及びフタル酸オクチルベンジル(OBzP)を混合して用いた場合について説明したが、これらの可塑剤を単独で用いることもでき、また他にもフタル酸ジオクチル(DOP)等を用いることができる。
本発明を実施するに際しては、紫外線予備硬化型シーリング材のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、本実施の形態及び各実施例に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る紫外線硬化型シーリング材の膨れ抑制性の評価方法を示す説明図である。

Claims (5)

  1. 紫外線硬化性樹脂材料を含有し、前記紫外線硬化性樹脂材料の含有量が5重量%〜25重量%の範囲内であるシーリング材であって、
    紫外線照射または紫外線を含む光の照射によって表面硬化して、表面硬化後のアスカーC型ゴム硬度計によって測定した硬度が20〜60の範囲内であることを特徴とする紫外線予備硬化型シーリング材。
  2. アクリル系樹脂及び/または塩化ビニル系樹脂と、可塑剤と、充填剤と、気泡防止剤とを含有し、
    前記アクリル系樹脂及び/または塩化ビニル系樹脂の含有量が15重量%〜20重量%の範囲内であり、前記可塑剤の含有量が20重量%〜30重量%の範囲内であり、前記充填剤の含有量が30重量%〜45重量%の範囲内であり、前記気泡防止剤の含有量が1.0重量%〜2.0重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線予備硬化型シーリング材。
  3. 更に密着性付与剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紫外線予備硬化型シーリング材。
  4. 前記紫外線硬化性樹脂材料は、ウレタン変性アクリルオリゴマーを含有するとともに、ポリエステル変性アクリルオリゴマーを含有しないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の紫外線予備硬化型シーリング材。
  5. 前記充填剤は微粒の炭酸カルシウムと粗粒の炭酸カルシウムの混合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の紫外線予備硬化型シーリング材。
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