JP2010059105A - 炎症性腸疾患の予防又は治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】天然物由来の成分であって、日常生活における摂取による効果が期待できる安全かつ効果的な炎症性腸疾患の予防又は治療用薬学的組成物や飲食品を提供し、近年日本でも患者数が急増している炎症性腸疾患の改善を安全かつ効果的に進める。
【解決手段】L−アラビノースとスクロースを有効成分とすることを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療剤であり、L−アラビノースをスクロースに対して1〜10質量%含有するものであり、L−アラビノースはビートパルプなどの天然物由来の食物繊維素材を加水分解することにより得られたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、L−アラビノースとスクロースを有効成分とすることを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療剤に関する。
炎症性腸疾患の代表的な疾患である潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起こり潰瘍を形成する慢性疾患である。症状として長期に下痢、血便が続き、長期間、軽快したり憎悪したりする症状が持続するのが特徴である。原因は未だ解明されておらず、有力な発症機構として、腸管免疫寛容の障害のために、食物や腸内細菌に対して免疫反応が生じ、持続的な腸炎が起きると考えられている。
現在のところ根本的な治療法は見出されておらず、食事療法、下痢止め薬(抗コリン作用薬、ロペラミドまたはジフェノキシレート等)または抗炎症薬(アミノサリチル酸、スルファサラジン、メサラミン、オルサラジン、バルサラジド、プレドニゾロンなどのステロイド薬またはアミノサリチル酸等)、免疫抑制剤(アザチオプリン、メルカプトプリン、シクロスポリン等)等が使用されている。
他方、L−アラビノースは、砂糖に近い味質を持つ、難吸収性を示す糖質である。自然界では、高等植物のヘミセルロース中にアラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン等多糖体の構成糖として存在している。単糖の状態では、微量ではあるが味噌や酒等の発酵食品、インスタントコーヒー等に含まれている、食経験の豊かな糖質である。また、砂糖等、二糖の加水分解酵素を阻害することから、砂糖等摂取時の血糖値の上昇を抑制するという効果も知られている。このようなL−アラビノースの特性を利用してL−アラビノースを配合した体脂肪蓄積抑制剤(特許文献1、2)、肥満予防剤(特許文献3)、糖尿病用食品(特許文献4)、アディポネクチン分泌促進剤(特許文献5)、インスリン抵抗性改善剤(特許文献5)、抗動脈硬化剤(特許文献5)等が知られている。しかしながら、L−アラビノースの炎症性腸疾患に対する作用は知られていなかった。
また、スクロース(砂糖)は、本来小腸粘膜に局在する砂糖分解酵素スクラーゼによってブドウ糖と果糖に分解されて吸収される。本発明においてL−アラビノースと同時に摂取されたスクロースは、L−アラビノースのスクラーゼ阻害活性によって分解されず、およそ四割が小腸粘膜から吸収されずに腸管下部へ移行する。吸収されずに腸管下部へ移行したスクロースは腸内細菌叢に作用し、各種オリゴ糖と同様、ビフィズス菌増殖促進作用を有することが知られている(特許文献6)が、炎症性腸疾患にどのように影響するかは明らかではなかった。
特開平7−309765号公報 特開平7−242551号公報 特再平6‐812057号公報 特開2002−136272号公報 特開2007−246443号公報 特開2004−113068号公報
現在、潰瘍性大腸炎に使用されている前記薬剤は、いずれも副作用の問題を有しており、より安全で副作用等がなく、手軽に経口で長期に持続投与、もしくは摂取する事が可能で、持続的効果が期待できる薬剤の開発が求められている。
本発明者らは、安全性に優れたL-アラビノースとスクロースを併せて投与することによって、炎症性腸疾患の代表的な疾患である潰瘍性大腸炎を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一は、L−アラビノースとスクロースを有効成分とすることを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療剤を要旨とするものであり、好ましくは、L−アラビノースをスクロースに対して1〜10質量%含有するものであり、さらに好ましくは、L−アラビノースが、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物由来の食物繊維素材に、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンに作用してL−アラビノースを遊離する活性を有する酵素を作用させて得られた酵素処理物に由来するものである。
また、本発明の第二は、前記した炎症性腸疾患の予防又は治療剤を含有することを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療用の薬学的組成物を要旨とするものである。
さらに、本発明の第三は、前記した炎症性腸疾患の予防又は治療剤を含有することを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療用飲食品を要旨とするものである。
本発明によれば、天然物由来の成分であって、日常生活における摂取による効果が期待できる安全かつ効果的な炎症性腸疾患の予防・治療用薬学的組成物や飲食品を提供することができ、その摂取は、近年日本でも患者数が急増している炎症性腸疾患の改善を安全かつ効果的に進めるために極めて有用なものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一において有効成分として用いられるL−アラビノースとしては、特に限定されず、市販のものや、あるいはコーンファイバーやアラビアガム、ビートパルプ等に含まれるアラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン等のヘミセルロースをアルカリ抽出し、これを酵素分解又は酸分解することにより製造されるものを用いることができる。このうち、本発明者らが先に開発したL−アラビノースの製造方法並びにL−アラビノース含有酵素処理物およびその製造方法(特開2001−286294号公報参照)を用いることが好ましい。すなわち、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物由来の食物繊維素材を、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン分解酵素により直接酵素処理することにより、L−アラビノースを遊離させる方法である。
この方法をさらに説明する。アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物には、オレンジファイバー、みかんジュース粕、アップルファイバー、りんごジュース粕、ビートファイバー、ビートパルプ、落花生粕、米ぬか、コーンファイバー、コーンコブ、とうもろこし粕又は大豆粕等が挙げられ、なかでもビートパルプ、オレンジファイバー、アップルファイバーが酵素処理により遊離するL−アラビノース量が多い等の理由により好ましい。
作用させる酵素としては、アラビナーゼ(アラバナーゼ)、アラビノフラノシダーゼ等のアラビナン分解酵素が挙げられる。アラビナン分解酵素の起源としては、細菌(Bacillus Subtilis、Streptmyces sp.)、酵母(Rhodotorula sp.)、糸状菌(Aspergillus niger、A.oryzae、A.pulverulentus、A.terreus、A.japonicus、A.flavus、Trichoderma reesei、T.viride、Trichosporon penicillatum、Rhizopus sp.)等が挙げられるが、上記天然物との反応性の理由からAspergillus由来の酵素が好適である。特にAspergillus niger由来の酵素がより好ましい。
また、上記のほか、市販のセルラーゼやキシラナーゼ、ペクチナーゼ、ガラクタナーゼ等のヘミセルラーゼ酵素剤もまた、上記天然物からL−アラビノースを遊離する活性を有していれば使用することができる。さらに、これら異なる活性を有する二種類以上の酵素を組み合わせて、L−アラビノースの遊離量を向上させることも可能である。
L−アラビノースを遊離させる条件としては、原料である天然物100gに対して、酵素を0.4〜4000ユニット含有する水を原料に対して0.5〜50倍量投入し、20〜90℃、pH2〜9の条件で3〜48時間、静置あるいは攪拌しながら処理を行なえばよい。この場合、酵素1ユニットは、直鎖アラビナンから1分間に1マイクロモルのL−アラビノースを遊離する活性を有する酵素量とする。
このようにして得られた酵素処理物から、通常用いられる方法によりL−アラビノースの高純度品を精製することができる。具体的には、酵素処理物からの抽出、限外濾過等による多糖成分の除去、活性炭による脱色、イオン交換カラムクロマトによる脱塩、温度差による溶解度差を利用した結晶化等であるが、本発明で用いられるL−アラビノースの精製は、これらの方法に限定されるものではない。なお、結晶化に関しては、本発明者らが先に開発したL−アラビノース含有結晶性粉末糖組成物およびその製造方法(特開2004−261039号公報参照)を用いるのが好ましい。
本発明で用いられるL−アラビノースの純度としては特に限定されず、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物由来の食物繊維素材に、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタン分解酵素を直接作用させて得られた酵素処理物そのままであっても、またこの酵素処理物から、抽出、脱色、脱塩、結晶化等の精製工程を経た高純度のL−アラビノースであっても、その精製過程に得られる中間体(例えば、抽出液、脱色液、脱塩液や結晶化濾液)であっても構わない。さらに、このような酵素処理物、中間体又は高純度品の混合物であっても構わない。
本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤は、上記したL−アラビノースあるいは酵素処理物とスクロースが有効量含有していればよく、その含有量は、後述する摂取量を考慮して適宜設定することができる。
本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤の形態としては、液状、あるいは液状品をソフトカプセルに封入したもの、種々の賦形剤等を添加して調製した粉末、顆粒、錠剤としたもの、粉末、顆粒をさらにカプセルに封入したもの等どのような形態であってもよい。
液状品を作製する場合には、必要に応じて種々の濃度の溶液に濃縮され、そのまま、あるいは、界面活性剤、油剤、アルコール、乳化剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、色素、香料等の1種または2種以上を必要に応じて適宜混合することができる。また、そのようにして調製した液状品をソフトカプセルに封入してもよい。
また、粉末、顆粒、錠剤とするためには、有効成分であるL−アラビノース、スクロースの他に、ラクトース、デキストロース、セルロース、とうもろこし澱粉又は馬鈴薯澱粉等の増量剤、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はポリエチレングリコール等の滑沢剤、デンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリジン等の結合剤、デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩又はグリコール酸デンプンナトリウム等の崩壊剤、発泡剤、色素、甘味料、レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩等の湿潤剤等を用いて、粉末、顆粒、錠剤の形状をとることができる。
さらに、本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤は、種々の食物繊維を配合した形態をとってもよい。食物繊維は水溶性のものでも、不溶性のものでもよく、例えば、デキストリン、難消化性デキストリン、マンナン、ガラクトマンナン、澱粉等、水溶性のもの、結晶セルロース等、不溶性のものを配合して、粉末、顆粒、錠剤や清涼飲料、炭酸飲料等の形状をとることも可能である。例えば、水溶性食物繊維としては、松谷化学工業製の「ファイバーソル2」や「パインファイバー」等の難消化性デキストリンや、太陽化学製の「サンファイバー」等のガラクトマンナンは水溶性が高く、本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤に配合する食物繊維として、特に好ましい。
本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤の摂取量としては、特に限定されないが、スクロース量に換算して1日あたり1g〜30gであることが好ましく、5g〜15gであることがさらに好ましい。その際、L−アラビノースとしてはスクロースに対して1〜10質量%、すなわち10mg〜3gであることが好ましく、50mg〜1.5gであることがさらに好ましい。L−アラビノースのスクラーゼ阻害活性により、スクロースのおよそ四割は分解、吸収されずに腸管下部へ移行するが、L−アラビノースによるスクラーゼの阻害は、スクロースに対しおよそ3質量%の添加でほぼ十分に発揮され、10質量%より多く添加してももはや効果が増大することはないからである。なお、スクロース、L−アラビノースの最大無作用量は限度試験においていずれも5g/Kg以上であり、本摂取量にはなんら問題がない。
本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤が有する作用には、L−アラビノースのα−グルコシダーゼ阻害により分解、吸収が阻害されたスクロースが関与しているものと推察される。分解、吸収が阻害されたスクロースは腸管下部へ移行し、腸内細菌に資化されることで種々の短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)の合成を促すが、そのうちの酪酸の利用、すなわち酪酸の酸化能の欠如が、遠位結腸における炎症性腸疾患の原因になっているという知見がある。腸内で増加した酪酸は大腸細胞の栄養源としてグルコースやグルタミンより優先的に利用されることから、大腸細胞の成長と代謝活性にとって不可欠な栄養素と考えられ、大腸疾患の防御因子として働いていると推測される。また、酪酸には炎症惹起性サイトカインの作用を阻害する活性もあると言われており、これら作用の複合的結果として炎症性腸疾患の予防又は治療効果を発揮すると考えられる。
本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療用薬学的組成物は、本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤を含有するものであれば、その形態は特に限定されない。上記炎症性腸疾患の予防又は治療剤をそのままでも、また、本発明の炎症性腸疾患予防又は治療の作用を妨げない限り、種々の添加剤を含んでもよい。具体的には、界面活性剤、賦形剤、着色料、保存料、コーティング助剤ならびにこれらの組合せが挙げられる。これら添加剤は、通常の医薬品製造における添加剤であれば特に限定されず、より具体的な例としては、ラクトース、デキストリン、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ソルビトール、結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、デキストリン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩、ステアリン酸及びその塩、タルクなどの添加剤であり、これらの1種又は2種以上を必要に応じて適宜配合したものであってもよい。また、炎症性腸疾患の予防又は治療剤の含有量は前述した摂取量を考慮して適宜設定すればよい。
本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療用薬学的組成物の形態としては、錠剤、液体、カプセル、軟カプセル、ペースト若しくはトローチ、ガム又は乳濁液、ドライ経口サプリメント、ウェット経口サプリメントなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの形態のものは従来から知られている方法によって作製することができる。
また、本発明の炎症性腸疾患予防又は治療剤を含有する飲食品も、本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤を含有するものであれば、その形態は特に限定されない。上記炎症性腸疾患の予防又は治療剤をそのままでも、また、本発明の炎症性腸疾患予防又は治療の作用を妨げない限り、種々の添加剤を含んでもよい。混合され得る他の材料としては、一般に食品用材料として使用され得るものが挙げられる。例としては、米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、昆布などから得られる多糖類、大豆や乳製品、動物原料などから得られるタンパク質、グルコース、ラクトース、フルクトース、スクロース、マンニトール、キシリトールや各種オリゴ糖などの糖類、ならびにこれらの組合せが挙げられる。さらに、香辛料、着色料、甘味料、酸味料、食用油、ビタミンや他の食品破砕物、食品抽出物などを添加してもよい。これら適切な材料及び添加剤は単独又は組合せて使用される。またさらに、必要に応じて水を添加して所望の形状に加工してもよい。
飲食品の具体例としては、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック菓子、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、インスタント食品に本発明の炎症性腸疾患予防又は治療剤を添加してもよい。例えば、炎症性腸疾患予防又は治療剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥したものを、粉末、顆粒、打錠又は溶液にすることで容易に飲食品に含有させることができる。
また、本発明の炎症性腸疾患の予防又は治療剤は、自然の甘味料であるスクロースを主成分とし、スクロースと味質の似通った、同じく天然物由来のL−アラビノースを1〜10質量%含有するものであることから、通常の甘味料(砂糖)の代替として利用することが可能である。
以下、本発明の実施例及びその効果を説明するための試験例を挙げるが、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、L−アラビノース、スクロースの定量は高速液体クロマトグラフィー法(カラム;アミネックスHPX−87P(バイオラッド社製)、カラム温度;60℃、移動相;イオン交換水、流速0.6mL/分、検出;示差屈折率)により行なった。
実施例1〔炎症性腸疾患予防又は治療剤の製造〕
ビートパルプ(北海道糖業製)2KgにスミチームPX(新日本化学製、アラバナーゼ力価100ユニット/mL)2質量%の水溶液を2L添加し、混和、55℃で24時間反応した。反応物を圧搾し、その搾汁1.8Lを限外濾過膜(分画分子量6000)に通し、膜透過液4Lを得た。これを陽イオン交換カラム(三菱化学製、ダイアイオンSKシリーズ)、陰イオン交換カラム(同、ダイアイオンWAシリーズ)、ならびに混床カラム(同、ダイアイオンSKシリーズ+PAシリーズ)に順次通し、脱塩処理液をロータリーエバポレータにて濃縮し、固形分濃度70質量%の濃縮液とした。この濃縮液を徐々に10℃まで冷却し、結晶化を行なった。析出した結晶を遠心濾過装置により分離し、真空乾燥、粉砕の工程を経て、白色の粉末を得た。ここへスクロース(粉糖)1.8Kgを添加し、粉末タイプの炎症性腸疾患の予防又は治療剤2Kg(L−アラビノース170g、スクロース1.8Kg含有)を得た。
実施例2〔デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発潰瘍性大腸炎の改善作用〕
本発明の炎症性腸疾患予防又は治療剤の潰瘍性大腸炎改善作用を以下のようにして検討した。
実験動物用粉末飼料(CRF-1、オリエンタル酵母)に25%(w/w)となるようにスクロースを混合し、さらに対スクロース重量比で1%、3%及び10%相当量のL−アラビノースを添加した固形飼料を作製した。また、対象としてL−アラビノースを添加しない固形飼料も作製した。これらの飼料を5週齢の雄性ICRマウス(日本エスエルシー)に4週間継続的に投与した。試験群は、(1):L−アラビノース不含餌投与/大腸炎非誘発群、(2):L−アラビノース不含餌投与/大腸炎誘発群、(3)L−アラビノース1%対スクロース餌投与/大腸炎誘発群、(4):L-アラビノース3%対スクロース餌投与/大腸炎誘発群、(5):L−アラビノース10%対スクロース餌投与/大腸炎誘発群の計5群とした。
投与開始4週間後に各群のマウスから糞を採取し、0.005N硫酸に縣濁して遠心分離を行い、上清中に含まれる酪酸の量をHPLCによって測定した。糞重量あたりの酪酸含有量を求めた。
その後、大腸炎を誘発させるため、DSS(分子量5000、Wako)を2%(w/v)含んだ飲料水を自由摂取させた。DSSの投与開始日とその後3−4日おきに尾静脈血のヘモグロビン値(Hb)の測定と大腸炎のスコア付けを行った。HbはHemoglobin assay kit(フナコシ)を用いて行った。大腸炎スコアは、マウスを個別ケージに移し、各個体の糞の状態を確認することによって行った。すなわち、0:正常便、1:軟便・下痢、2:軽度血便、3:重度の血便、4:下血、とスコア付けした。
結果を、以下の図に示す。アスタリスクは統計学的な有意差(*:p<0.05、**:p<0.01)があることを示す。
図1より、L−アラビノースとスクロースの併用は(1)及び(2)群と比較して、糞中の酪酸を増加させることが示された。
図2より、L−アラビノースとスクロースの併用は、DSSによる貧血を抑制することが明らかとなった。
図3より、L−アラビノースとスクロースの併用は、DSSによる大腸炎スコアを改善することが明らかとなった。
L−アラビノースとスクロースの併用が、マウスの糞中の酪酸量を増加させることを示した図である。 L−アラビノースとスクロースの併用群では、DSS誘発潰瘍性大腸炎マウスにおける貧血が(2)群と比較して軽度であることを示した図である。 L-アラビノースとスクロースの併用群では、DSS誘発潰瘍性大腸炎マウスにおける大腸炎スコアが(2)群と比較して軽度であることを示した図である。

Claims (5)

  1. L−アラビノースとスクロースを有効成分とすることを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
  2. L−アラビノースをスクロースに対して1〜10質量%含有する請求項1記載の炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
  3. L−アラビノースが、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンを含有する天然物由来の食物繊維素材に、アラビナン、アラビノキシラン又はアラビノガラクタンに作用してL−アラビノースを遊離する活性を有する酵素を作用させて得られた酵素処理物に由来するものである請求項1又は2記載の炎症性腸疾患の予防又は治療剤。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の炎症性腸疾患の予防又は治療剤を含有することを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療用の薬学的組成物。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の炎症性腸疾患の予防又は治療剤を含有することを特徴とする炎症性腸疾患の予防又は治療用飲食品。
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