次に、本発明を実施するための最良の形態について、以下に説明する。
〔第1の実施の形態〕
(積層構造体の構成)
本発明に係る第1の実施の形態について説明する。本実施の形態は、本発明に係る積層構造体であり、具体的には、電気配線の形成された配線基板である。図1に基づき本実施の形態における積層構造体となる配線基板の構成について説明する。
本実施の形態における積層構造体は、基板20上に濡れ性変化層30が形成されている。濡れ性変化層30は、エネルギーの付与により、表面エネルギーが変化する濡れ性変化材料を含むものであり、表面には、表面エネルギーの高い高表面エネルギー領域40と、表面エネルギーの低い低表面エネルギー領域50とが形成されている。
高表面エネルギー領域40では、後述するように、機能性材料を含む溶液と接触することにより、表面エネルギーを下げようとするので、機能性材料を含む溶液に対する濡れ性がよく、低表面エネルギー領域50では、機能性材料を含む溶液に対する濡れ性が悪い。従って、高表面エネルギー領域40上に導電性材料を含む溶液を選択的に付着させることができ、これにより、高表面エネルギー領域40上に導電層70を形成することができる。
基板20としては、ガラス基板、シリコン基板、ステンレス基板、フィルム基板等の基板が挙げられる。この中でフィルム基板としては、ポリイミド(PI)基板、ポリエーテルサルホン(PES)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板等が挙げられる。
濡れ性変化層30は、熱、電子線、紫外線、プラズマ等のエネルギーの付与により表面エネルギー(臨界表面張力)が変化する濡れ性変化材料を含む材料により構成されている。この濡れ性変化材料としては、側鎖に疎水基を有する高分子材料を用いることができる。このような高分子材料は、紫外線等のエネルギーの付与により、疎水基の結合が切断されることで、当初の低エネルギー表面(疎水性)から高エネルギー表面(親水性)へと変化する。具体的には、後述するように、所定のパターンの形成されたフォトマスクを用いて、濡れ性変化層30の表面を紫外線により露光することにより、露光された領域が高表面エネルギー領域40となり、濡れ性変化層30の表面には、高表面エネルギー領域40と低表面エネルギー領域50とが形成される。
このように、高表面エネルギー領域40に導電性材料を含んだ溶液の液滴をインクジェット方式により滴下することにより、この液滴が高表面エネルギー領域40に広がる。
このように、高表面エネルギー領域40に広がった溶液を乾燥させ、溶媒を揮発させることにより、高表面エネルギー領域40上に導電層70が形成される。
尚、本実施の形態においては、熱、電子線、紫外線、プラズマ等のエネルギーの付与以外により濡れ性変化層の表面エネルギーを変えた構成ものであっても良い。具体的には、表面加工等により、高表面エネルギー領域と低表面エネルギー領域とを形成してもよい。
尚、上述のインクジェット方式は、複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドを有するインクジェット装置において、複数のノズルより液滴を滴下させる方式のものである。
(濡れ性変化層)
次に、図1に基づき濡れ性変化層30について説明する。この濡れ性変化層30は、エネルギーの付与によって臨界表面張力が変化する材料からなる膜により構成されており、臨界表面張力の異なる少なくとも2つの領域を有している。具体的には、臨界表面張力の大きな高表面エネルギー領域40と、臨界表面張力の小さな低表面エネルギー領域50を有している。このような、表面エネルギーの変化は、エネルギーの付与によってなされ、エネルギーを付与する方法としては、紫外線照射、電子線照射等が挙げられる。
濡れ性変化層30は、単一の材料により構成されても、二種類以上の材料により構成されてもどちらでもよい。二種類以上の材料により構成される場合には、電気絶縁性のより大きな材料に、濡れ性変化の大きな材料を混合することにより、電気的な絶縁性に優れ、かつ、濡れ性変化にも優れた濡れ性変化層を得ることができる。
既に、基板上に電気配線等のパターンが形成されており、その上に、層間絶縁層を介して別の配線パターンを形成する場合には、このような電気的な絶縁性に優れた濡れ性変化層を用いることが有効である。即ち、濡れ性変化層が絶縁層としての機能を有するため、別途絶縁層を設ける必要がない。尚、濡れ性変化層を薄膜トランジスタ(TFT)のゲート絶縁膜として使用する場合には、特に高い絶縁性が要求される。
また、濡れ性変化は大きいが成膜性に問題がある材料を用いることが可能となるため選択できる材料が多くなる。具体的には、一方の材料の濡れ性変化はより大きいが凝集力が強いため成膜することが困難な材料である場合に、この材料を成膜性の良いもう一方の材料と混合することで、上記濡れ性変化層を容易に作製することが可能となる。
本実施の形態の濡れ性変化層30の断面模式図を図2に示す。例えば、第二の材料72よりも電気絶縁性に優れた第一の材料71から構成される層上に、第一の材料71よりも濡れ性変化に優れた第二の材料72からなる層が明確に分離され積層された構造となっている。
このような構造は、第一の材料71からなる層を作製した後に第二の材料72からなる層を順次積層して作製することが可能である。作製方法としては、真空蒸着などの真空プロセスを用いることも可能であるし、溶剤を用いた塗布プロセスを使用することも可能である。
また、第一の材料71と第二の材料72を混合した溶液を基板に塗布、乾燥することにより、作製することも可能である。これは第二の材料72の極性が相対的に小さい場合、相対的に分子量の小さい場合などでは、乾燥時に溶媒が蒸発するまでの間に第二の材料72が表面側に移行し層を形成する。なお、塗布プロセスを用いた場合は、図3の断面模式図に示すように、第一の材料71からなる層と第二の材料72からなる層は、界面によって明確に分離されない場合が多い。
本実施の形態において、相対的に電気絶縁性に優れた第一の材料71と相対的に濡れ性変化の大きい第二の材料72の組成割合である第一/第二は、重量比で50/50〜99/1である。第二の材料72の重量比が増加するにつれ濡れ性変化層30の電気絶縁性が低くなり電子素子の絶縁層としては不向きとなる。一方で第一の材料71の重量比が増すと濡れ性変化が小さくなるため、導電層のパターニングが良好でなくなる。それゆえ、両者の混合比は望ましくは60/40〜95/5、更に望ましくは70/30〜90/10である。
なお、図3の断面模式図に示すように、第一の材料71からなる層と第二の材料72からなる層は界面によって明確に分離されていなくてもよい。また、図3或いは図4に示すように、膜厚方向に対して所定の濃度分布で第一及び第二の材料71,72が混在していてもよい。
2種類以上の材料から濡れ性変化層30が構成されている場合は、2層以上の積層構造からなっていても構わないし、層構造を持たずに膜厚方向に対して所定の濃度分布で材料が混在していてもよい。
基板と接していない側の濡れ性変化層表面30aは、図5の平面模式図に示すように、第二の材料72が均一に分散した表面からなっていることが望ましい。しかしながら、微細なパターニングが可能であるならば、図6の平面模式図に示すように第二の材料72が均一に分散した中に第一の材料71が分散している状態、図7の平面模式図に示されるように層分離を起こし、いわゆる海島構造になっていても構わない。
尚、海島構造は、光学顕微鏡や顕微赤外又はラマン分光法等を用いて観察することが可能であるが、特に、島構造が径5μm程度であれば、顕微赤外分光法により材料成分を特定することも可能である。
また、濡れ性変化層30には側鎖に疎水性基を有する高分子材料を用いるのが望ましい。具体的には、図8の概念図に示すように、ポリイミドや(メタ)アクリレート等の骨格を有する主鎖Lに直接或いは結合基(図示せず)を介して疎水性基を有する側鎖Rが結合しているものを挙げることができる。
疎水性基としては、末端構造が−CF2CH3、−CF2CF3、−CF(CF3)2、−C(CF3)3、−CF2H、−CFH2等である基が挙げられる。分子鎖同士を配向しやすくするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。さらには、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたポリフルオロアルキル基(以下、「Rf基」と記す。)が好ましく、特に炭素数4〜20のRf基が好ましく、とりわけ、炭素数6〜12のRf基が好ましい。Rf基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造の方が好ましい。さらに、疎水性基は、アルキル基の水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基はCnF2n+1−(ただし、nは4〜16の整数)で表わされる基が好ましく、特に、nが6〜12の整数である場合の該基が好ましい。パーフルオロアルキル基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、直鎖構造が好ましい。
上記材料については特開平3−178478号公報等に詳しく記載されて周知であり、加熱状態で液体又は固体と接触させたときに親液性となり、空気中で加熱すると疎液性となる性質を有する。即ち、(接触媒体の選択と)熱エネルギーの付与によって臨界表面張力を変化させることができる。
さらに、疎水性基としては、フッ素原子を含まない−CH2CH3、−CH(CH3)2、−C(CH3)3等の末端構造を有する基を挙げることができる。この場合にも、分子鎖同士を配向しやすくするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。疎水性基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造の方が好ましい。上記アルキル基はハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又は炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。Rの結合部位が多いほど表面エネルギーが低く(臨界表面張力が小さく)、疎液性となると考えられる。紫外線照射等によって、結合の一部が切断される、或いは、配向状態が変化するために臨界表面張力が増加し、親液性になるものと推察される。
これ以外にも疎水性基としては、−SiR3で表すことができるオルガノシリコン基を挙げることができる。ここでRはシロキサン結合を含む有機基である。
濡れ性変化層30上に半導体層を形成することを考慮すると、側鎖に疎水性基を有する高分子材料は、ポリイミドを含むことが望ましい。ポリイミドは耐溶剤性並びに耐熱性に優れているため、濡れ性変化層30上に半導体層を形成する際に、溶媒や焼成による温度変化によって、膨潤したりクラックが入ったりするといったことがない。
また、濡れ性変化層30を2種類以上の材料から構成する場合においては、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、側鎖に疎水性基を有する高分子材料以外の材料もポリイミドからなることが望ましい。
本実施の形態で用いられる側鎖に疎水性基を有するポリイミドの疎水性基は、例えば以下の化1〜化5の化学式で示される構造の何れかを持つことができる。
化1の化学式において、Xは−CH
2−又はCH
2CH
2−であり、A
1は1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン又は1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、A
2、A
3及びA
4は各々独立して単結合、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン又は1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、B
1、B
2、B
3は各々独立して単結合又はCH
2CH
2−であり、B
4は炭素数1〜10までのアルキレンであり、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は各々独立して炭素数が1〜10までのアルキルであり、pは1以上の整数である。
化2の化学式において、T、U及びVは各々独立してベンゼン環又はシクロヘキサン環であり、これらの環上の任意のHは炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のフッ素置換アルキル、F、Cl又はCNで置換されていてもよく、m及びnは各々独立して0〜2の整数であり、hは0〜5の整数であり、RはH、F、Cl、CN又は1価の有機基であり、mが2の場合の2個のU又はnが2の場合の2個のVは各々同じでも異なっていても良い。
化3の化学式において、連結基ZはCH
2、CFH、CF
2、CH
2CH
2又はCF
2Oであり、環Yは1,4−シクロへキシレン又は1〜4個のHがF又はCH
3で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、A
1〜A
3は各々独立して単結合、1,4−シクロへキシレン又は1〜4個のHがF又はCH
3で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、B
1〜B
3は各々独立して単結合、炭素数1〜4のアルキレン、酸素原子、炭素数1〜3のオキシアルキレン又は炭素数1〜3のアルキレンオキシであり、RはH、任意のCH
2がCF
2で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキル、又は1個のCH
2がCF
2で置き換えられてもよい炭素数1〜9のアルコキシもしくはアルコキシアルキルであり、ベンゼン環に対するアミノ基の結合位置は任意の位置である。但し、ZがCH
2である場合には、B
1〜B
3の全てが同時に炭素数1〜4のアルキレンであることはなく、ZがCH
2CH
2であって、環Yが1,4−フェニレンである場合には、A
1及びA
2がともに単結合であることはなく、また、ZがCF
2Oである場合には、環Yが1,4−シクロへキシレンであることはない。
化4の化学式において、R2は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基であり、Z
1はCH
2基であり、mは0〜2であり、環Aはベンゼン環又はシクロヘキサン環であり、lは0又は1であり、各Y
1は独立に酸素原子又はCH
2基であり、各n
1は独立に0又は1である。
化5の化学式において、各Y
2は独立に酸素原子又はCH
2基であり、R3、R4は独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又はパーフルオロアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数3以上のアルキル基、又はパーフルオロアルキル基であり、各n
2は独立に0又は1である。
これらの材料についての詳細は、特開2002−162630公報、特開2003−96034公報、特開2003−267982公報、特開2004−86184公報等に詳しく記載されている。また、これら疎水性基の主鎖骨格を構成するテトラカルボン酸二無水物については、脂肪族系、脂環式、芳香族系など種々の材料を用いることが可能である。具体的には、ピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物などである。この他特開平11−193345号公報、特開平11−193346号公報、特開平11−193347号公報等に詳しく記載されている材料についても用いることが可能である。
上述したように、上記化1〜化5に示す化学式の疎水性基を含むポリイミドは単独で用いても良いし、他の材料と混合し用いても良い。ただし、混合して用いる場合は、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、混合する材料もポリイミドであることが望ましい。
また、上記化1〜化5の化学式で示されない疎水性基を含むポリイミドを用いることもできる。
具体的には、特許第3097702号公報に記載されている直鎖状アルキル鎖を有する芳香族ジアミン残基を含んだポリイミドである。
なお、より低温で成膜プロセスが行えることを考慮すると、側鎖に疎水性基を有する高分子材料は、可溶性ポリイミドを含むことが望ましい。ここで可溶性ポリイミドとは、溶剤に可溶なポリイミドのことである。原料の酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリアミック酸を予め溶液中で化学的イミド化処理することで得られる。ポリイミド骨格が剛直な構造を有していると溶媒に溶解しにくい。そこでポリイミドの結晶性を乱し溶媒和を受けやすくするため、嵩高い脂環式シクロカルボン酸二水物が一般には用いられる。
ポリイミドがどのような酸無水物から構成されているかは、ポリイミド薄膜の赤外吸収スペクトルによる特性基振動の解析や紫外−可視吸収スペクトルの測定により推察される。嵩高い脂環式シクロカルボン酸二水物骨格を有するポリイミド薄膜では、その吸収端波長は300nm以下となる。詳細については、今井淑夫、横田力男編著、日本ポリイミド研究会編者「最新ポリイミド〜基礎と応用〜」、株式会社エヌ・ティ・エス発行、2002年や、「次世代のためのエレクトロニクス・電子材料に向けた新しいポリイミドの開発と高機能付与技術」、株式会社技術情報協会発行、2003年に記述がある。
ポリイミドが溶媒に溶解しているため、溶媒を蒸発せしめる温度即ち200℃以下の低温で成膜が可能となる。また、ポリイミド薄膜中に未反応のポリアミック酸や副反応生成物の酸無水物がポリイミド中に残るといったことがなく、これら不純物によりポリイミド膜の電気特性が不良となるといった問題が生じにくい。
可溶性ポリイミドはいかなる溶媒にも可溶性を示すわけではなく、特定の例えばγ−ブチルラクトン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の極性の高い溶媒にのみ可溶性を示す。それゆえ、濡れ性変化層30上に半導体層を形成する際に、トルエン、キシレン、アセトン、イソプロピルアルコール等の極性の低い溶媒を用いれば、可溶性ポリイミドを含んだ薄膜が溶媒に侵食されることはない。
また、濡れ性変化層30を2種類以上の材料から構成する場合においては、側鎖に疎水性基を有する可溶性ポリイミド以外の材料も、可溶性材料からなることが望ましい。これにより低温で成膜が可能となる。さらには、可溶性ポリイミドと良好な相溶性を示す材料であることが望ましい。これにより溶剤下で相分離が生じにくく、成膜プロセスに最適である。
可溶性材料は有機物である必要はなく、有機物と無機物との化合物などを用いることが可能である。これらの例としては、ポリビニルフェノールなどのフェノール樹脂、メラミン樹脂、アセチル化処理などを施したプルランなどの多糖類、シルセスキオキサンなどが挙げられる。
また、側鎖に疎水性基を有する可溶性ポリイミド以外の材料も可溶性ポリイミドからなると、耐熱性、耐溶剤性、親和性の点で好適である。
本実施の形態で用いられる側鎖に疎水性基を有する可溶性ポリイミドの疎水性基は、例えば以下の化6の化学式で示される構造を有することができる。
式中、R
1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のハロアルキル基又はハロゲン原子であり、X、Yは互いに独立に下記化7の化学式中の(a)〜(d)で表わされる2価の結合基であり、aは1〜5の整数である。
この材料についての詳細は、例えば特開平9−272740号公報に記載されている。
また、前述の化1〜化5の化学式で示される材料からなるポリイミドを、適当な化学処理によって溶媒可溶とすることも可能である。これらの材料を可溶性ポリイミドとする方法については、国際公開WO01/000732公報に記載されている。
なお、上記では、側鎖基を有する残基を与えるジアミン化合物の例を挙げたが、テトラカルボン酸類が側鎖基を有する残基を与えることも可能である。
疎水性基を有する側鎖Rが表面に配列している他の効果として、それに接している半導体層6との界面特性を良好なものとすることができる。半導体層6が有機半導体からなる場合、その効果がより顕著である。界面特性が良好であるとは、a.半導体が結晶質である場合には結晶粒が大きくなり、移動度が増大する、b.半導体が非晶質(高分子)である場合には、界面準位密度が減少し、移動度が増大する、c.半導体が高分子であり、長鎖アルキル基等の側鎖を有する場合には、その配向が規制されることによりπ共役主鎖の分子軸を概ね一方向に配列させることができ、移動度が増大する、等の現象が出現することを指す。
本実施の形態における濡れ性変化層30の厚さは30nm〜3μmが好ましく、50nm〜1μmがさらに好ましい。これより薄い場合にはバルク体としての特性(絶縁性、ガスバリア性、防湿性等)が損なわれ、これより厚い場合には表面形状が悪化するため好ましくない。
(導電層)
導電層70は、望ましくは導電性材料を含有する液体を加熱、紫外線照射等によって固化することによって得られる層である。なお、導電性材料を含有する液体とは、
1 導電性材料を溶媒に溶解したもの、
2 導電性材料の前駆体若しくは前駆体を溶媒に溶解したもの、
3 導電性材料粒子を溶媒に分散したもの、
4 導電性材料の前駆体粒子を溶媒に分散したもの、
等を言う。より具体的には、Ag,Au,Ni等の金属微粒子を有機溶媒や水に分散したものやドープドPANI(ポリアニリン)やPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等を例示することができる。
導電性材料を含有する溶液を塗れ性変化層30の表面に付与する方法として、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法等の各種塗布方法を用いることができる。特に、濡れ性変化層30の表面エネルギーの影響を受けやすくするためには、小さな液滴により溶液を供給することが可能なインクジェット法が好ましい。後述するように、プリンタに使用されるレベルの通常の液体吐出ヘッドを用いた場合では、インクジェット法の解像度は30μm、位置合せ精度は、±15μm程度であるが、濡れ性変化層30における表面エネルギー差を利用することにより、それよりも微細なパターンを形成することが可能となる。
また、濡れ性変化層30の一部にエネルギーを付与する方法としては、a.大気中で操作できる、b.高い解像度が得られる、c.層内部へのダメージが少ない等の点から紫外線照射を用いる方法が好ましい。
(インクジェット装置)
次に、本実施の形態における積層構造体である配線基板の電極となる導電層70を形成するために用いられるインクジェット装置について説明する。
図9に本実施の形態において用いられるインクジェット装置を示す。本実施の形態において用いられるインクジェット装置100は、定盤1と、ステージ2と、液滴吐出ヘッド3と、液滴吐出ヘッド3に接続されたX軸方向移動機構4と、ステージ2に接続されたY軸方向移動機構5と、制御装置6とを備えている。
ステージ2は、基板Sを支持する目的で備えられており、基板Sを吸着する吸着機構(図示せず)等の固定機構を備えている。また、基板S上に滴下された機能性材料含有液を乾燥させるための熱処理機構を備えて良い。
液滴吐出ヘッド3は、複数の吐出ノズルを備えたヘッドであり、複数の吐出ノズルが液滴吐出ヘッド3の下面に、X軸方向に沿って一定間隔で並んでいる。この吐出ノズルからステージ2に支持されている基板Sに対して機能性材料含有液の液滴が吐出される。液滴吐出ヘッド3の液滴吐出機構には、例えばピエゾ方式を用いることができ、この場合、液滴吐出ヘッド3内のピエゾ素子に電圧を印加することで液滴が吐出する。
X軸方向移動機構4はX軸方向駆動軸7、及びX軸方向駆動モータ8で構成される。X軸方向駆動モータ8はステッピングモータ等であり、制御装置6からX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸駆動軸7を動作させ、液滴吐出ヘッド3がX軸方向に移動する。
Y軸方向移動機構5はY軸方向駆動軸9およびY軸方向駆動モータ10で構成される。Y軸方向移動機構5はX軸と直交する平面内で直交するY軸方向の移動を行うためのものである。制御装置6からX軸方向の駆動信号が供給されるとステージ2がY軸方向に移動する。
制御装置6は液滴吐出ヘッド3に吐出制御用の信号を供給する。またX軸方向駆動モータ8にX軸方向の駆動信号を、またY軸方向駆動モータ10にY軸方向の駆動信号をそれぞれ供給する。なお制御装置6は、液滴吐出ヘッド3、X軸方向駆動モータ8、Y軸方向駆動モータ10とそれぞれつながっているが、その配線は図示していない。
インクジェット装置100は、液滴吐出ヘッド3とステージ2とを相対的に走査させながらステージ2上に固定された基板Sに対して機能性材料含有液の液滴を吐出する。なお液滴吐出ヘッド3とX軸方向移動機構4の間には、X軸方向移動機構4と独立動作する回転機構を備え付けても良い。回転機構を動作させて液滴吐出ヘッド3とステージ2との相対角度を変化させることで、吐出ノズル間ピッチを調節できる。また液滴吐出ヘッド3とX軸方向移動機構4の間には、X軸方向移動機構4と独立動作するZ軸方向移動機構を備え付けても良い。Z軸方向に液滴吐出ヘッド3を移動させることで、基板Sとノズル面との距離を任意に調節可能である。またステージ2とY軸方向移動機構5の間には、Y軸方向移動機構5と独立動作する回転機構を備え付けても良い。回転機構を動作させることで、ステージ2上に固定された基板Sを任意の角度に回転させた状態で、基板Sに対して液滴を吐出できる。
(高表面エネルギー領域のパターン)
次に、本実施の形態における高表面エネルギー領域40のパターンについて説明する。上述のとおり、高表面エネルギー領域40は、濡れ性変化層30の所定の領域に紫外線等のエネルギーを付与することにより形成される。導電層70は、高表面エネルギー領域40上に、液体吐出ヘッドにより、導電性材料を含む溶液の液滴を滴下することにより形成される。
ところで、この液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット方式では、液滴吐出ヘッドの走査方向(主走査方向)と、垂直の方向(副走査方向)とは独立して制御することが可能である。液滴吐出ヘッドの走査方向(主走査方向)の解像度は、液滴吐出ヘッドの最大駆動周波数fと、走査速度vによって定まるv/fまで解像度を高めることができ、走査速度vを調整することにより、任意の解像度に設定することが可能である。よって、比較的容易に解像度を向上させることが可能である。
一方、液滴吐出ヘッドの走査方向に垂直な方向(副走査方向)においては、液滴吐出ヘッドは一回の走査ごとに、相対的に液滴吐出ヘッドが副走査方向に移動することにより行われる。従って、副走査方向の解像度を向上させようとすると、走査の度に行う必要があり多大な時間を要してしまう。特に、このことは微細パターンになればなるほど顕著になり、微細化すればする程、より多大な時間を要する。
図10に、本実施の形態における積層構造体を形成するための高表面エネルギー領域40の形状を示す。
本実施の形態における導電層70が形成される高表面エネルギー領域40においては、液滴吐出ヘッド3の副走査方向に延びる配線領域41のパターンに、液滴吐出ヘッド3より液滴を連続的に滴下する高表面エネルギー領域40からなる液滴供給領域42を延設して設けた構成のものである。これにより、液滴供給領域42に滴下された溶液が同じ高表面エネルギーである配線領域41に流動し全体に広がり、配線領域41が微細な構造であっても短時間で導電層70を形成することができる。
液滴吐出ヘッド3は、副走査方向に一回の主走査ごとに微動させることが可能であり、液滴吐出ヘッド3の副走査方向に配列されたノズルのピッチをPである場合において、液滴供給領域42をP/N(N:整数)で設けることにより、配線領域41の全体に導電性材料を含む溶液を広げることが可能となる。(図10においては、Nが2の場合を示す。)
次に、図11に基づき本実施の形態における積層構造体の導電層70の形成方法について説明する。
最初に、図11(a)に示すように、液滴吐出ヘッド3は、図面上、上方向に移動しながら液滴34を吐出する。具体的には、最初、破線で示す位置に存在していた液滴吐出ヘッド3aが、上方向に移動し、実線で示す液滴吐出ヘッド3の位置まで移動する。液滴吐出ヘッド3の移動に際しては、各々のノズル33より高表面エネルギー領域40上に液滴34が滴下される。ヘッドの走査方向(主走査方向)に延びる高表面エネルギー領域40のパターンにおいては、液滴吐出ヘッド3が移動しながら、連続的にノズル33より液滴34を吐出することにより、微細なパターンであっても容易に液滴34を供給することが可能である。一方、ヘッドの走査方向と垂直な方向(副走査方向)に延びる高表面エネルギー領域40のパターンにおいては、液滴吐出ヘッド3におけるノズル33間のピッチPの間隔をおいて液滴が吐出されるため、ノズル33間においては、液滴が滴下されない領域が存在し、導電性材料を含む溶液が不足し、十分に機能する導電層70を得ることができない。このため、本実施の形態においては、液滴供給領域42を設け、この液滴供給領域42に連続的に数多くの液滴を滴下することにより、この液滴供給領域42に滴下された溶液を副走査方向に延びる配線領域41に広げることが可能となる。
このように、液滴供給領域42を設けることにより、液滴吐出ヘッド3を走査方向に移動させながら、液滴を連続的に数多く滴下することが可能となる。このような、液滴供給領域42がない場合、滴下された液滴が高表面エネルギー領域40からあふれてしまい所望の形状の導電層が形成されない場合や、液滴吐出ヘッド3の走査方向へ移動させながら十分な液滴が供給されない場合が生じる。
次に、図11(b)に示すように、液滴吐出ヘッド3を走査方向とは垂直の副走査方向に移動させる。この移動距離は、液滴吐出ヘッド3における副走査方向のノズルピッチをPとした場合、P/N(N:整数)である。本図においては、Nが2であるため、この移動距離はP/2であるが、液滴供給領域42を設けられる位置により、この移動距離が定まる。
次に、図11(c)に示すように、液滴吐出ヘッド3は、図面上、下方向に移動しながら液滴34を吐出する。具体的には、最初、破線で示す位置に存在している液滴吐出ヘッド3bが、下方向に移動し、実線で示す液滴吐出ヘッド3の位置まで移動する。この液滴吐出ヘッド3の移動に際しては、各々のノズル33より高表面エネルギー領域40上に液滴34が滴下される。図示しないが、ヘッドの走査方向(主走査方向)に延びる高表面エネルギー領域40のパターンにおいては、液滴吐出ヘッド3が移動しながら、連続的にノズル33より液滴34を吐出することにより、微細なパターンであっても容易に液滴34を供給することが可能である。一方、ヘッドの走査方向と垂直な方向(副走査方向)に延びる高表面エネルギー領域40のパターンにおいては、液滴吐出ヘッド3におけるノズル33間のピッチPの間隔をおいて液滴が吐出されるため、ノズル33間においては、液滴が滴下されない領域が存在し、導電性材料を含む溶液が不足し、十分に機能する導電層70を得ることができない。このため、液滴供給領域42に連続的に数多くの滴下することにより、この液滴供給領域42に滴下された溶液を副走査方向に延びる配線領域41に広げることが可能となる。
このように、液滴吐出ヘッド3を走査方向に移動させながら液滴を滴下し、走査方向への移動が終了した後に、液滴吐出ヘッド3を副走査方向に移動距離P/Nだけ移動させ、再び液滴吐出ヘッド3を走査方向に移動させながら液滴を滴下する動作を繰り返す。これにより、副走査方向に延びる高表面エネルギー領域40のパターン全体に導電性材料を含む溶液を広げることができ、均一な膜厚の導電層70を形成することが可能となる。
次に、図12、図13に基づき、形成される導電層70と液滴吐出ヘッド3のノズル33より吐出される溶液の量との関係について説明する。
図12は、液滴吐出ヘッド3とNの値が3の場合の副走査方向に延びたパターンの高表面エネルギー領域40を示す。図13は、液滴供給領域42近傍の拡大図である。液滴吐出ヘッド3のノズル33のピッチはPであり、液滴供給領域42は、配線領域41に延設して、P/N(本図においては、P/3)のピッチで設けられている。配線領域41の全体において導電層70を形成するために必要な液滴34の数は、配線領域41の幅Lや、設けられる液滴供給領域42のピッチP/Nに依存する。この配線領域41に導電層70を形成するために必要な液滴34の数をm、着弾時の液滴34の直径をaとした場合、液滴吐出ヘッド3を走査方向に移動速度vで移動させながら液滴34を供給する場合には、液滴供給領域42の長さMAと、配線領域41の幅Lとの和、即ち、(MA+L)は、a+m・(v/f)以上であることが必要となる。尚、この場合、液滴供給領域42の幅MBは、a以上である。
次に、図14に基づき、本実施の形態における積層構造体における導電層70となる高表面エネルギー領域40の形状について説明する。図14は、Nの値が2となる場合のものである。
本実施の形態では、図14(a)に示すように、配線領域41が、液滴吐出ヘッド3の走査方向である主走査方向の成分と副走査方向の成分の双方を含むような形状であってもよい。副走査方向の成分を有する配線領域41において走査方向に延設して液滴供給領域42を設けることにより、液滴供給領域42に供給された液滴34が配線領域41の全体に広がり導電層70を形成することが可能となるからである。
また、図14(b)に示すように、配線領域41の両側、即ち、図面上、上下となる主走査方向に延設して液滴供給領域42を設ける構成であっても良い。このような構成にすることにより、液滴供給領域41に供給された溶液がより円滑に配線領域41全体に広げることが可能となる。
一方、図15に示すように、液滴吐出ヘッド3のノズル33の配列は、千鳥状に配列させることも可能である。このように千鳥状に配列させることにより、液滴を吐出する際のピッチPを狭めることが可能となる。
また、図16に示すように、液滴吐出ヘッド3を液滴吐出ヘッド3の走査方向(主走査方向)に対し、傾けた状態で設置し液滴を吐出させることにより、実際のノズル33のピッチPよりも、狭いピッチPAで液滴34を吐出することが可能となる。
更には、図17に示すように、千鳥状にノズル33が配列された液滴吐出ヘッド3を図16の場合と同様に傾けた状態で設置し液滴を吐出させることにより、ピッチPB又は、ピッチPCで液滴を滴下することが可能となる。この場合において、実際のノズル33のピッチPの場合と比較すると全体的に高密度となる
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、アクティブマトリックス基板及び画像表示装置に関するものである。
図18に基づき、本実施の形態におけるアクティブマトリックス基板について説明する。図18(a)は、本実施の形態におけるアクティブマトリックス基板の配線の構成を示す上面図であり、図18(b)は、図18(a)の破線18A−18Bにおいて切断した断面図であり、図18(c)は、図18(a)の部分拡大図である。
本実施の形態におけるアクティブマトリックス基板は、基板110上に第1の濡れ性変化層120を形成し、この第1の濡れ性変化層120の表面に紫外光等を照射し露光することにより、高表面エネルギー領域を形成する。この高表面エネルギー領域上に導電性材料を含む溶液の液滴を液滴吐出ヘッドを用いて滴下し、その後乾燥させることによりゲート電極130及びゲート信号線131を形成する。ゲート信号線131は、個々のゲート電極130を図面上、縦方向に接続するためのものである。
次に、このゲート電極130及びゲート信号線131上に第2の濡れ性変化層140を形成し、この第2の濡れ性変化層140の表面に紫外光等により露光を行うことにより、高表面エネルギー領域を形成する。この高表面エネルギー領域上に導電性材料を含む溶液の液滴を液滴吐出ヘッドを用いて滴下し、その後乾燥させることによりドレイン電極150、ソース電極160及びソース信号線161を形成する。ソース信号線161は、個々のソース電極160を図面上、横方向に接続するためのものである。尚、第1の濡れ性変化層120は、絶縁性が高いため、ゲート絶縁膜としての機能を有しているため、ゲート絶縁膜と称する場合もある。
次に、半導体層170を、ゲート絶縁膜131を介するゲート電極130上であって、ドレイン電極150とソース電極160とに接して、その間に島状に形成する。これにより、個々のトランジスタが形成され、本実施の形態におけるアクティブマトリックス基板が作製される。
尚、半導体層170を構成する半導体材料としては、CdSe、CdTe、Si等の無機の半導体材料や、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニアリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体を用いることができる。
各々のトランジスタのゲート電極130は、このアクティブマトリックス基板を駆動するための不図示の走査信号用のドライバーICに、ゲート信号線131を介し接続されており、各々のトランジスタのソース電極160は、このアクティブマトリックス基板を駆動するための不図示のデータ信号用のドライバーICに、ソース信号線161を介し接続されている。このためゲート信号線131及びソース信号線161には、アクティブマトリックス基板におけるトランジスタの外側まで引出し部分を形成する必要がある。
よって、ゲート信号線131を形成する際、特に、引出し部分においてはゲート配線領域132とゲート液滴供給領域133からなる高表面エネルギー領域が形成され、これらの領域上に導電性材料を含む溶液が滴下される。この際、ゲート液滴供給領域133に導電性材料を含む溶液の液滴を滴下することにより、図面上、横方向の成分のゲート信号線131を短時間で容易に形成することが可能となる。尚、縦方向の成分のゲート信号線131は、この方向が主走査方向となるため、短時間で形成することが可能である。
一方、ソース信号線161を形成する際、特に、引出し部分においてはソース配線領域162とゲート液滴供給領域163からなる高表面エネルギー領域が形成され、これらの領域上に導電性材料を含む溶液が滴下される。この際、ゲート液滴供給領域163に導電性材料を含む溶液の液滴を滴下することにより、図面上、横方向の成分のゲート信号線161を短時間で容易に形成することが可能となる。尚、縦方向の成分のゲート信号線161は、この方向が主走査方向となるため、短時間で形成することが可能である。
本実施の形態では、ゲート電極130及びゲート信号線131と、ソース電極160及びソース信号線161との双方を形成する際に、下地として濡れ性変化層120、140を用いたが、どちらか一方を用いた構成であってもよい。
尚、本実施の形態におけるアクティブマトリックス基板は、酸素や水分、放射線等によりトランジスタの特性が劣化することを防止するため、図示はしていないが、全体をパッシベーション膜に覆うことが望ましい。
この際に用いられるパッシベーション膜としては、具体的には、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化酸化シリコン等が用いられる。また、これらの膜の形成方法としては、CVD、イオンプレーティング、スパッタリング等による形成方法が挙げられる。
以上のように、本実施の形態におけるアクティブマトリックス基板は短時間に容易に作製することが可能であり、製造の際のスループットを向上させることができる。
次に、本実施の形態における画像表示装置について説明する。本実施の形態における画像表示装置は、図19に示すように、前述したアクティブマトリックス基板上に表示素子を積層することにより形成されるものである。
前述したアクティブマトリックス基板上に層間絶縁膜180を形成し、層間絶縁膜180にドレイン電極150と接続するためのスルーホールを形成し、このスルーホールを金属材料で埋め込み、ドレイン電極150と電気的に接続される下部電極190を層間絶縁膜180の表面に形成する。この下部電極190は、画像表示のためのものであり、表示素子の電極となるものである。更に、この上に表示素子となる層200、上部電極210,上部基板220が積層されている。
本実施の形態における画像表示装置においては、表示素子として、TN、STN、ゲスト・ホスト型の液晶、高分子分散液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)等の表示素子、セル中またはマイクロカプセル中に封じた着色粒子の移動により表示を行う電気泳動素子、有機EL(Electro Luminescence)等からなる発光表示素子等が挙げられる。
以上のように、本実施の形態における画像表示装置は短時間に容易に作製することが可能であり、製造の際のスループットを向上させることができる。
(実施例1)
実施例1は、第1の実施の形態における積層構造体に関するものである。具体的には、図1に示す構造の基板20となるガラス基板上に濡れ性変化層30を形成し、更に導電層70を形成したものである。濡れ性変化層30は、化8及び化9の化学式で表される構造体となる前駆体を溶解した混合溶液をスピンコート法により塗布して、280℃で焼成した。
この濡れ性変化層の紫外線照射量と水に対する接触角の関係を図20に示す。未照射時には、接触角が90°を超えて疎水性(撥水性)であるが、紫外線の照射量が10J/cm
2以上では、20°程度に低下し親水性に変化している。この変化を誘発するために効果のある光の波長を合わせた光源を用いることにより照射量をさらに小さくすることが可能であるものと考えられる。
また、図21は、この濡れ性変化層上における液体の表面張力と接触角の関係を示したものである。この図より臨界表面張力は、紫外線が未照射の場合には、約24mN/m、紫外線を照射した場合には、約45mN/mであることがわかる。
次に、高表面エネルギー領域のパターンが形成されたフォトマスクを用い、波長250nmの紫外線を8mJ/cm2照射し、高表面エネルギー領域40を形成した。このフォトマスクのパターンは、図10に示すように、液滴供給領域42が設けられている構成のものである。配線領域41の幅Lは30μm、液滴供給領域42における長さMAは20μm、幅MBは30μmであり、形成される液滴供給領域42のピッチP/Nは、254μmである。
一方、インクジェット装置の液滴吐出ヘッドのノズルのピッチPは254μmである(従って、Nの値は1となる)。この液滴吐出ヘッドを用い、ノズルより一つの液滴の体積が4pLの液滴を吐出させた。尚、この液滴を構成する溶液は、導電性材料を含む溶液であり、具体的には、固形分濃度20wt%の銀ナノメタルインクである。
銀ナノメタルインクの液滴は、液滴吐出ヘッドは走査方向に一回移動させながら滴下させた。液滴吐出ヘッドの走査方向の解像度は、4800dpi(ピッチ5.3μm)であり、液滴供給領域42が設けられた高表面エネルギー領域40上には、4滴の液滴が滴下され、配線領域41の全体に溶液が濡れ広がる。この後、導電性材料を含む溶液の溶媒を揮発させることにより、膜厚45nmの導電層70が形成された。本実施例では、液滴吐出ヘッドを走査方向に1回走査するだけで、走査方向に垂直に延びる導電層70を形成することができた。
(比較例1)
比較例1は、図10に示す液滴供給領域42が設けられていない高表面エネルギー領域40が直線的な配線領域41のみからなる構成のものである。実施例1と同様のプロセスで、同様の液滴吐出ヘッド及び銀ナノメタルインクを用い、実施例1と同等の導電層70を得るためには、高表面エネルギー領域の同一地点に4滴の液滴を滴下する必要があった。従って、走査方向に垂直に延びる導電層を形成するためには、液滴吐出ヘッドは走査方向に4回走査することが必要であった。
(実施例2)
実施例2は、第1の実施の形態における積層構造体に関するものである。実施例2は、実施例1と同様のプロセスで導電層70を形成した。配線領域41の幅Lは30μm、液滴供給領域42における長さMAは20μm、幅MBは30μmであり、形成される液滴供給領域42のピッチP/Nは、127μmである。
一方、インクジェット装置の液滴吐出ヘッドのノズルのピッチPは254μmである(従って、Nの値は2となる)。この液滴吐出ヘッドを用い、ノズルより一つの液滴の体積が4pLの液滴を吐出させた。尚、この液滴を構成する溶液は、導電性材料を含む溶液であり、具体的には、固形分濃度20wt%の銀ナノメタルインクである。
銀ナノメタルインクの液滴は、液滴吐出ヘッドは走査方向に2回移動させながら滴下させた。液滴吐出ヘッドの走査方向の解像度は、4800dpi(ピッチ5.3μm)であり、液滴供給領域42が設けられた高表面エネルギー領域40上には、4滴の液滴が滴下され、配線領域41の全体に溶液が濡れ広がる。この後、導電性材料を含む溶液の溶媒を揮発させることにより、膜厚80nmの導電層70が形成された。本実施例では、液滴吐出ヘッドを走査方向に2回走査するだけで、走査方向に垂直に延びる厚膜の導電層70を形成することができた。
(実施例3)
実施例3は、第1の実施の形態における積層構造体に関するものである。実施例3は、実施例1と同様のプロセスで導電層70を形成した。配線領域41の幅Lは30μm、液滴供給領域42における長さMAは6μm、幅MBは30μmであり、形成される液滴供給領域42のピッチP/Nは、86.7μmである。
一方、インクジェット装置の液滴吐出ヘッドのノズルのピッチPは86.7μmである(従って、Nの値は1となる)。この液滴吐出ヘッドを用い、ノズルより一つの液滴の体積が4pLの液滴を吐出させた。尚、この液滴を構成する溶液は、導電性材料を含む溶液であり、具体的には、固形分濃度20wt%の銀ナノメタルインクである。
銀ナノメタルインクの液滴は、液滴吐出ヘッドは走査方向に1回移動させながら滴下させた。液滴吐出ヘッドの走査方向の解像度は、4800dpi(ピッチ5.3μm)であり、液滴供給領域42が設けられた高表面エネルギー領域40上には、2滴の液滴が滴下され、配線領域41の全体に溶液が濡れ広がる。この後、導電性材料を含む溶液の溶媒を揮発させることにより、膜厚70nmの導電層70が形成された。本実施例では、液滴吐出ヘッドを走査方向に1回走査するだけで、走査方向に垂直に延びる厚膜の導電層70を形成することができた。
(実施例4)
実施例4は、第2の実施の形態におけるアクティブマトリックス基板に関するものである。実施例4においては、図18に示す構成のアクティブマトリックス基板を作製した。具体的には、基板110上に実施例1に示した材料からなる濡れ性変化層120を形成し、図18(a)におけるゲート電極130及びゲート信号線131の形状パターンのフォトマスクを用い、波長250nmの紫外線を8mJ/cm2照射し、ゲート電極130及びゲート信号線131の形状の高表面エネルギー領域を形成した。このゲート信号線131となる高表面エネルギー領域のゲート配線領域132の幅L1は30μm、ゲート液滴供給領域133における長さMA1は6μm、幅MB1は30μmであり、形成されるゲート液滴供給領域133のピッチP/Nは、86.7μmである。
一方、インクジェット装置の液滴吐出ヘッドのノズルのピッチPは86.7μmである(従って、Nの値は1となる)。この液滴吐出ヘッドを用い、ノズルより一つの液滴の体積が4pLの液滴を吐出させた。尚、この液滴を構成する溶液は、導電性材料を含む溶液であり、具体的には、固形分濃度20wt%の銀ナノメタルインクである。
銀ナノメタルインクの液滴は、液滴吐出ヘッドは走査方向に1回移動させながら滴下させた。液滴吐出ヘッドの走査方向の解像度は、4800dpi(ピッチ5.3μm)であり、ゲート液滴供給領域133が設けられた高表面エネルギー領域上には、液滴が滴下され、ゲート配線領域132の全体に溶液が濡れ広がる。この後、導電性材料を含む溶液の溶媒を揮発させることにより、液滴吐出ヘッドを走査方向に1回走査でゲート電極130及びゲート信号線131が形成された。
次に、濡れ性変化層120を構成する材料と同一の材料により濡れ性変化層140を形成し図18(a)におけるドレイン電極150、ソース電極160及びソース信号線161の形状パターンのフォトマスクを用い、波長250nmの紫外線を8mJ/cm2照射し、ドレイン電極150、ソース電極160及びソース信号線161の形状の高表面エネルギー領域を形成した。このソース信号線161となる高表面エネルギー領域のソース配線領域162の幅L2は30μm、ソース液滴供給領域163における長さMA2は6μm、幅MB2は30μmであり、形成されるソース液滴供給領域163のピッチP/Nは、86.7μmである。
一方、インクジェット装置の液滴吐出ヘッドのノズルのピッチPは86.7μmである(従って、Nの値は1となる)。この液滴吐出ヘッドを用い、ノズルより一つの液滴の体積が4pLの液滴を吐出させた。尚、この液滴を構成する溶液は、導電性材料を含む溶液であり、具体的には、固形分濃度20wt%の銀ナノメタルインクである。
銀ナノメタルインクの液滴は、液滴吐出ヘッドは走査方向に1回移動させながら滴下させた。液滴吐出ヘッドの走査方向の解像度は、4800dpi(ピッチ5.3μm)であり、ソース液滴供給領域163が設けられた高表面エネルギー領域上には、液滴が滴下され、ソース配線領域162の全体に溶液が濡れ広がる。この後、導電性材料を含む溶液の溶媒を揮発させることにより、液滴吐出ヘッドを走査方向に1回走査でドレイン電極150、ソース電極160及びソース信号線161が形成される。
次に、化10の化学式に示すスキームにより合成した有機半導体である重合体1をトルエンに溶解した溶液をインクジェット法により、ドレイン電極150とソース電極160の双方に接して塗布し、溶媒を揮発させ乾燥させることにより半導体層190を形成した。この後、ゲート信号線131を不図示の走査信号用ドライバーICに接続し、ソース信号線161を不図示のデータ信号用ドライバーICに接続し、駆動させたところ、データ信号及び走査信号に応じて各々のトランジスタを駆動することができた。
本実施例では、ゲート電極130及びゲート信号線131、ソース電極160及びソース信号線161の形成時間を短くすることができ、最終的にアクティブマトリックス基板を短時間に作製することができた。
(実施例5)
実施例5は、第2の実施の形態における画像表示装置に関するものである。実施例4において作製したアクティブマトリックス基板に、図19に示す表示素子として電気泳動素子を貼り合わせ画像表示装置を作製した。この電気泳動素子は、酸化チタン粒子とオイルブルーで着色したアイソパーを内包するマイクロカプセルをPVA水溶液に混合して、ITOからなる上部電極210が形成されているポリカーボネートからなる上部基板220上に塗布することにより、マイクロカプセルとPVAバインダーからなる層を形成した。
これを実施例4におけるアクティブマトリックス基板に積層することにより、画像表示装置を作製した。尚、この積層を行う際には、実施例4のアクティブマトリックス基板上に層間絶縁膜180、下部電極190を形成し、その後に、前述の上部基板220上に上部電極210が形成されたものの上に表示素子となる層190が積層したものを貼り合わせた。
このように作製した画像表示装置を駆動させたところ画像表示を行うことができた。
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。