JP2010047536A - 誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤 - Google Patents
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Abstract
Description
一酸化窒素は、血管弛緩因子として同定されたことを契機に、生体機能の調節に重要な働きを持つ生理活性物質であることが明らかとなっている。血圧調節や情報伝達のコントロールなどの生体防御に役割を担っている一方で、過剰に発現されると炎症や発ガンなどの原因となる。生体内では一酸化窒素合成酵素によりL-アルギニンがL-シトルリンへと転換される際に一酸化窒素が産生される。この一酸化窒素合成酵素には3種類のアイソザイム(血管内皮型、脳型、誘導型)が知られている。この中で、誘導型一酸化窒素合成酵素は、マクロファージ、好中球、肝実質細胞、血管平滑筋細胞、線維芽細胞、膵臓β細胞、腎メサンギウム細胞、消化管上皮、グリア細胞等あらゆる細胞に存在している。血管内皮型一酸化窒素合成酵素や脳型一酸化窒素合成酵素が構成的に発現しているのに対して、誘導型一酸化窒素合成酵素はエンドトキシンや各種サイトカイン等の刺激によって発現が誘導され、生体防御のために一酸化窒素を産生するが、血管内皮型一酸化窒素合成酵素や脳型一酸化窒素合成酵素と比較すると、誘導型一酸化窒素合成酵素の作用は長時間持続するため、産生する一酸化窒素量が過剰となり、生体に様々な弊害を起こす原因となる。
一酸化窒素の関与が認められる疾患または障害としては、脊髄損傷をはじめ、敗血症、エンドトキシンショック、心不全、ショック、結核、低血圧、リウマチ性炎症、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、潰瘍性大腸炎、ストレス性胃潰瘍、クローン病、自己免疫疾患、臓器移植後の組織障害、拒絶反応、虚血再灌流障害、急性冠微小血管塞栓、ショック性血管塞栓(汎発性血管内血液凝固症候群(DIC)等)、虚血性脳障害、動脈硬化、悪性貧血、ファンコニー貧血症、鎌形赤血球性貧血病、膵炎、ネフローゼ症候群、レーシュマニア症、糸球体腎炎、インスリン依存性糖尿病、肝性ポルフィリン症、アルコール中毒、パーキンソン病、慢性白血病、急性白血病、腫瘍、骨髄腫、抗がん剤副作用、幼児および成人性呼吸窮迫症候群、肺気腫、アルツハイマー病、多発性硬化症、ビタミンE欠乏症、老化、日焼け、筋ジストロフィー、白内障、インフルエンザ感染症、マラリア、AIDS、放射線障害、火傷、体外受精効率低下など種々の疾患や障害が知られている。これらは、誘導型一酸化窒素合成酵素により産生された一酸化窒素に起因していることが知られているので、誘導型一酸化窒素合成酵素の発現を抑制することは、これらの疾患や障害の治療や予防に有効であると期待される。
一酸化窒素の関与する様々な疾患の治療や予防を目的として、誘導型一酸化窒素合成酵素の活性を阻害する化合物としてクマリン類やセレナゾリン誘導体などが見出されている(例えば、特許文献1および2参照)。また、アミン誘導体や2−アミノピリジンは、一酸化窒素合成酵素の活性を阻害し、中枢神経系疾患の治療および予防に有用であるとされている(例えば、特許文献3および4参照)。この酵素の発現自体を抑制することができれば、より根本的な治療や予防に利用することが可能となるので、過剰な誘導型一酸化窒素合成酵素の発現を抑制する剤の開発が切望されているが、これまでのところ、その目的では担子菌培養由来の組成物が見出されているに過ぎない(例えば、特許文献5参照)。
上記したように、誘導型一酸化窒素合成酵素は多くの疾患または障害に関与しているが、例えばその代表的なものとして脊髄損傷を挙げることができる。脊髄損傷は、末梢組織と脳との間の知覚、運動神経情報の伝導路である脊髄が、交通事故やスポーツ事故、高齢者の圧迫骨折等で物理的傷害を受けて神経軸索が傷害されて運動麻痺、呼吸麻痺や知覚障害等の重篤な身体障害に陥る疾患であり、損傷による炎症部位では誘導型一酸化窒素合成酵素が強く発現していることが知られている。脳、脊髄を含む中枢神経系では神経軸索が再生しにくく、脊髄損傷の回復はほとんど望めないのが現状であり、現在のところ有効な治療法は確立されていない。さらに、誘導型一酸化窒素合成酵素の発現抑制剤は、脊髄損傷ばかりでなく、上記に列挙した種々の疾患の治療や予防に役立てることができる。このような経緯から、誘導型一酸化窒素合成酵素の発現を抑制し、一酸化窒素に起因する過剰な生体反応を抑えることができる化合物の提供が強く求められている。
ピロロキノリンキノン(以下、PQQという)は、1979年メタノール資化性菌のメタノール脱水素酵素の補酵素として見出された(例えば、非特許文献1および2参照)。細菌類以外にも、大豆、空豆、ピーマン、ジャガイモ、パセリ、ホウレンソウなどの食用植物や、酢、茶、ココア、納豆、豆腐等の加工食品からも検出されている(例えば、非特許文献3参照)。また、ヒトやラットの生体内にも存在すること(例えば、非特許文献4参照)が報告されている。2003年にはアミノ酸、リジンの酸化を触媒する酵素(2-アミノアジピン酸 6-セミアルデヒド脱水素酵素)の酸化還元補酵素として機能することが明らかとなり、新しいビタミンと位置付けられている化合物である(例えば、非特許文献5参照)。
ほ乳類におけるPQQの栄養学的な研究は1980年代から進められてきており、PQQ欠乏餌を与えられたマウスは、発育不良、繁殖能力低下、皮膚障害などの欠乏症の症状を示すが、PQQを補給すると異常が改善されることから、PQQは重要な栄養素の一つであると考えられている(例えば、非特許文献6)。
ほ乳類におけるPQQの栄養学的な研究は1980年代から進められてきており、PQQ欠乏餌を与えられたマウスは、発育不良、繁殖能力低下、皮膚障害などの欠乏症の症状を示すが、PQQを補給すると異常が改善されることから、PQQは重要な栄養素の一つであると考えられている(例えば、非特許文献6)。
栄養学的な側面だけでなく、PQQの薬理学的作用についても多くの報告がある。in vitroおよびin vivoで、PQQには強い活性酸素除去作用が認められることが報告されている(例えば、特許文献6参照)。また、細胞の増殖促進作用(例えば、特許文献7参照)、アルドース還元酵素阻害作用(例えば、特許文献8参照)、メラニン産生抑制および美白作用(例えば、特許文献9参照)、紫外線吸収作用(例えば、特許文献10参照)などが知られている。また、PQQの神経系に対する作用としては、神経成長因子産生促進作用(例えば、特許文献11参照)があるが、これはPQQが神経成長因子を増強することにより、末梢神経の再生を促進するというものであった。また、ラットを用いた検討から、経口摂取したPQQが、学習能力などの認知機能の低下を防ぐ作用を発揮し、さらには、コエンザイムQ10との併用効果が認められることが報告されている(非特許文献7参照)。しかし、これまで、PQQが誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制作用を有していることはまったく知られていなかった。
「ネイチャー(Nature)」、1979年、第230巻、p.843−844
「フェブス レター(FEBS Letter)」、1979年、第108巻、p.443−446
「バイオケミカル ジャーナル(Biochem Journal)」、1995年、第307巻、p.331−333
「バイオケミカ エト バイオフィジカ アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)」、1992年、第1156巻、p.62−66
「ネイチャー(Nature)」、2003年、第422巻、p.832
「サイエンス(Science)」、1989年、245巻、p.850−852
「ジャーナル オブ クリニカル バイオケミカル ニュートリッション(J Clin Biochem Nutr)」、2008年、第42巻、p.29−34
特表2007−504234号公報
特開2006−232671号公報
特表平11−510513号公報
特表2002−537381号公報
特開2008−13550号公報
特開平5−078247号公報
特開昭61−58584号公報
特開平6−256191号公報
特開平8−020512号公報
特許第3625493号公報
特開平06−211660号公報
本発明の目的は、誘導型一酸化窒素合成酵素の発現抑制剤を提供することにある。
発明者らは、脊髄損傷モデルを用いて中枢神経の修復促進作用を有する物質の探索を行っていたところ、PQQに当該促進作用が認められ、かつその作用が誘導型一酸化窒素合成酵素の発現抑制作用に基づくものであるこることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記(1)に示すようなPQQ類またはその塩を含有することを特徴とする、誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤に関するものである。
(1)一般式(1)で表されるピロロキノリンキノン類またはその塩を含有することを特徴とする、誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤。
(式中R1,R2およびR3は、同一または異なって、水素原子、フェニル基、または短鎖長のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す。)
即ち、本発明は、下記(1)に示すようなPQQ類またはその塩を含有することを特徴とする、誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤に関するものである。
(1)一般式(1)で表されるピロロキノリンキノン類またはその塩を含有することを特徴とする、誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤。
本発明により、種々の疾患や障害の発症進展に関わっている誘導型一酸化窒素合成酵素の発現抑制剤を提供することが可能となる。
一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩において、式中のR1、R2およびR3は、同一または異なって、水素原子、フェニル基、または短鎖長のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す。
短鎖長のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基のアルキル部分としては、例えば直鎖または分枝状の炭素数1〜6のアルキルが挙げられ、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられ、中でもメチルまたはエチルが好ましい。
短鎖長のアラルキル基としては、例えば炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられ、より具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチル等が挙げられる。
短鎖長のアルキルアリール基のアリール部分としては、例えば炭素数6〜14のアリールが挙げられ、より具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等が挙げられる。従って、アルキルアリール基としては、メチルフェニル、エチルフェニル等が挙げられる。
短鎖長のアラルキル基としては、例えば炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられ、より具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチル等が挙げられる。
短鎖長のアルキルアリール基のアリール部分としては、例えば炭素数6〜14のアリールが挙げられ、より具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等が挙げられる。従って、アルキルアリール基としては、メチルフェニル、エチルフェニル等が挙げられる。
短鎖長のアルケニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、より具体的にはビニル、アリール、1−プロペニルメタクリル、クロチル、1−ブテニル、3―ブテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、2―ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。
短鎖長のアルキニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルキニルが挙げられ、より具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
短鎖長のアルキニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルキニルが挙げられ、より具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
上述の一般式(1)においてR1、R2およびR3がいずれも水素原子である化合物は、有機化学的方法(例えば、J.Am.Chem.Soc.、103、5599−5600(1981))または発酵法、例えばメタノール資化性を有し、かつPQQを生産する能力を有する細菌を、炭素源としてメタノールを含有し鉄化合物の濃度を制御した培養液中で培養することによりPQQを生産する方法(特開平1−218597号公報)などにより製造することが可能である。
一方、PQQのエステル体は、PQQより常法のエステル化反応に従って合成することができる。PQQのトリエステル体は、例えば、PQQまたはその塩を酸性条件下でアルコール類と反応させる方法(例えば、特開平3−123781号公報、特開平3−145492号公報)や、PQQまたはその塩を塩基存在下でハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル、ハロゲン化アラルキル、ハロゲン化アラアリール等と反応させる方法などにより合成することができる。また、上記方法によって得られるPQQのトリエステル体を酸性または塩基性条件下で部分加水分解することで、モノエステル体、ジエステル体を得ることができる。
このようにして得られる一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩は、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、または溶媒抽出法などの通常の方法により、反応液中から分離、精製することができる。また、それらの同定には、元素分析、NMRスペクトル、IRスペクトル、質量分析等の各種手段が用いられる。
一般式(1)で表されるPQQ類の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、トリエタノールアミン、トリメチルアミン等の有機アミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
本発明の誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤としては、一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩をそのまま投与することも可能であるが、通常各種の製剤として提供することが望ましい。製剤は、有効成分として一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩の他に、任意の他の有効成分を含有していてもよく、例えば、さらに一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。
製剤の投与形態は、経口投与、または静脈内、腹膜内、皮下若しくは経皮等の非経口投与を挙げることができ、投与に際し最も効果的な形態を選択すればよい。剤形としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤、注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の経口剤や非経口剤を挙げることができる。
経口剤として製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体、安息香酸ナトリウム等の保存剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤および顆粒剤等の場合には、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば食甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体、安息香酸ナトリウム等の保存剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤および顆粒剤等の場合には、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば食甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
経口投与に適当な製剤は、そのまま、または例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態のものであってもよい。また、健康食品、機能性食品、栄養補助食品等の飲食品として用いてもよい。
非経口投与に適当な、例えば注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張である一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩を含む滅菌水性剤と、塩溶液、ブドウ糖溶液、または塩溶液とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて調製することができる。
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種またはそれ以上の補助成分を添加することができる。
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種またはそれ以上の補助成分を添加することができる。
本発明の誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤における一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩の濃度は、製剤の種類、該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、例えば経口剤の場合、PQQ類またはその塩として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。
本発明の誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状や重篤度等により異なるが、通常、成人一日当たり、PQQ類またはその塩として、0.5mg〜10000mg、好ましくは0.5mg〜5000mg、より好ましくは5mg〜1000mgとなるように、一日一回ないし数回投与する。投与期間は、疾患の種類や障害の程度によって適宜選択すればよい。
本発明の誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状や重篤度等により異なるが、通常、成人一日当たり、PQQ類またはその塩として、0.5mg〜10000mg、好ましくは0.5mg〜5000mg、より好ましくは5mg〜1000mgとなるように、一日一回ないし数回投与する。投与期間は、疾患の種類や障害の程度によって適宜選択すればよい。
なお、本発明の製剤は、ヒトだけでなく、ヒト以外の動物(以下、非ヒト動物と略す)に対しても使用することができる。非ヒト動物としては、ほ乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類等、好ましくはほ乳類に属する非ヒト動物を挙げることができる。
本発明の誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤を非ヒト動物に投与する場合の投与量および投与回数は、投与形態、動物の年齢、種類等により異なるが、通常、体重1kg1日当たり、一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩として、0.01mg〜200mg、好ましくは0.1mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜20mgとなるように一日一回ないし数回投与する。投与期間は、疾患の種類や障害の程度によって適宜選択すればよい。
本発明の誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤を非ヒト動物に投与する場合の投与量および投与回数は、投与形態、動物の年齢、種類等により異なるが、通常、体重1kg1日当たり、一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩として、0.01mg〜200mg、好ましくは0.1mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜20mgとなるように一日一回ないし数回投与する。投与期間は、疾患の種類や障害の程度によって適宜選択すればよい。
以下に、実施例および比較例にて本発明を説明するが、本発明はこれらの例にのみに限定されるものではない。
実施例1
試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=11)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PQQ二ナトリウム塩(三菱瓦斯化学株式会社製)を1.2mg/mlの濃度になるようにPBS緩衝液に溶解し、0.5ml (PQQ二ナトリウム塩として0.6mg) を1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケール(Basso et al.,J.Neurotrauma,12,1−21,1995)を用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した。この評価スケールでは、完全な麻痺を0、正常を21として21段階で評価する。スケール8までは後肢で体重を支えられないレベル、スケール9を超えると体重を支えられるようになり、14を越えると前肢と後肢の協調運動が認められ、19、20になると一見しただけでは正常と区別しにくいレベルとされている。また、経過観察途中のラットから脊髄損傷部位を摘出し、組織中の誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)およびβ-アクチンのmRNA発現量を測定した(n=4)。表1にBBBスコアおよびiNOSmRNA発現量の経日変化を示す。なお、iNOSmRNA発現量は、組織の種類や刺激によらず一定に発現しているハウスキーピング遺伝子で、mRNAの発現量変化を検討する際の対照遺伝子として一般的に用いられているβ−アクチンmRNAの電気泳動時のバンドの濃さを基準としたiNOSmRNA/β−アクチンmRNA比を用いて示した。
PQQ二ナトリウム投与群では、PBS緩衝液を投与した対照のPQQ二ナトリウム非投与群(下表2参照)に比べ、投与後5―14日間での運動機能の回復度合いが有意に高く、PQQ二ナトリウムに脊髄損傷の修復を促進する作用が認められた。
一方、PQQ二ナトリウム投与群と非投与群でのiNOSmRNAの発現量は、各々損傷1日目(21.2:64.0)、3日目(12.0:35.0)、7日目(1.8:10.5)、14日目(1.7:9.9)であり、投与後1−14でのiNOSmRNAの発現量は、PQQ二ナトリウム投与群が有意に低く、PQQ二ナトリウムにiNOS発現を抑制する作用が認められた。
実施例1
試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=11)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PQQ二ナトリウム塩(三菱瓦斯化学株式会社製)を1.2mg/mlの濃度になるようにPBS緩衝液に溶解し、0.5ml (PQQ二ナトリウム塩として0.6mg) を1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケール(Basso et al.,J.Neurotrauma,12,1−21,1995)を用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した。この評価スケールでは、完全な麻痺を0、正常を21として21段階で評価する。スケール8までは後肢で体重を支えられないレベル、スケール9を超えると体重を支えられるようになり、14を越えると前肢と後肢の協調運動が認められ、19、20になると一見しただけでは正常と区別しにくいレベルとされている。また、経過観察途中のラットから脊髄損傷部位を摘出し、組織中の誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)およびβ-アクチンのmRNA発現量を測定した(n=4)。表1にBBBスコアおよびiNOSmRNA発現量の経日変化を示す。なお、iNOSmRNA発現量は、組織の種類や刺激によらず一定に発現しているハウスキーピング遺伝子で、mRNAの発現量変化を検討する際の対照遺伝子として一般的に用いられているβ−アクチンmRNAの電気泳動時のバンドの濃さを基準としたiNOSmRNA/β−アクチンmRNA比を用いて示した。
一方、PQQ二ナトリウム投与群と非投与群でのiNOSmRNAの発現量は、各々損傷1日目(21.2:64.0)、3日目(12.0:35.0)、7日目(1.8:10.5)、14日目(1.7:9.9)であり、投与後1−14でのiNOSmRNAの発現量は、PQQ二ナトリウム投与群が有意に低く、PQQ二ナトリウムにiNOS発現を抑制する作用が認められた。
比較例1
比較試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=10)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PBS緩衝液0.5mlを1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。実施例1と同様に、BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケール(Basso et al.、1995)を用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した(損傷直後は0、非損傷は21)。また、経過観察中のラットから脊髄損傷部位を摘出し、組織中のiNOSおよびβ-アクチンのmRNA発現量を測定した(n=4)。BBBスコアおよび両mRNAの比を表2に示す。
PQQ二ナトリウム非投与の本比較例の場合は、損傷1日後、著明にiNOSmRNA発現が上昇し、3日後には半減したものの、依然としてPQQ二ナトリウム投与1日目の最大値よりも高値を維持した。7日後、14日後にはさらにmRNAレベルは低下したが、PQQ二ナトリウム投与群と異なり、0日に比べ依然として有意に高かった。
このように、PQQ二ナトリウム塩は脊髄損傷によって誘導される誘導型一酸化窒素合成酵素mRNAの発現を阻害する作用を発揮していた。損傷直後には炎症細胞、例えば好中球およびマクロファージが損傷部位に浸潤し、神経組織に対する二次的な損傷を引き起こすとされている。従って、誘導型一酸化窒素合成酵素mRNAの発現を抑制することにより、脊髄損傷局所での炎症を抑制し、二次的な損傷を抑え、実施例1のごとく、脊髄損傷の修復を促進したものと考える。
比較試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=10)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PBS緩衝液0.5mlを1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。実施例1と同様に、BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケール(Basso et al.、1995)を用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した(損傷直後は0、非損傷は21)。また、経過観察中のラットから脊髄損傷部位を摘出し、組織中のiNOSおよびβ-アクチンのmRNA発現量を測定した(n=4)。BBBスコアおよび両mRNAの比を表2に示す。
このように、PQQ二ナトリウム塩は脊髄損傷によって誘導される誘導型一酸化窒素合成酵素mRNAの発現を阻害する作用を発揮していた。損傷直後には炎症細胞、例えば好中球およびマクロファージが損傷部位に浸潤し、神経組織に対する二次的な損傷を引き起こすとされている。従って、誘導型一酸化窒素合成酵素mRNAの発現を抑制することにより、脊髄損傷局所での炎症を抑制し、二次的な損傷を抑え、実施例1のごとく、脊髄損傷の修復を促進したものと考える。
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JP2008214293A JP2010047536A (ja) | 2008-08-22 | 2008-08-22 | 誘導型一酸化窒素合成酵素発現抑制剤 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2022143710A1 (zh) * | 2020-12-31 | 2022-07-07 | 南京舒鹏生物科技有限公司 | 吡咯喹啉醌、其衍生物和/或盐作为抗病毒新药的用途及其药物组合物 |
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2008
- 2008-08-22 JP JP2008214293A patent/JP2010047536A/ja active Pending
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