JP6910187B2 - Trpv4活性抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、TRPV4活性抑制剤、及び過敏性腸症候群の予防又は改善剤に関する。
TRPV4(Transient receptor potential cation channel subfamily V member 4)は、温度感受性TRPチャネルを構成するタンパク質の1つである。TRPV4は、腎、肺、膀胱、心臓、皮膚、脳、消化管など幅広い組織で発現しており、異なった幅広い生理的役割を果たしていると考えられている。
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)は、細菌やウイルスの感染による腸炎や、潰瘍性大腸炎・大腸がん等の病気とは異なり、検査を行っても炎症や潰瘍といった器質的疾患が認められないにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛、ガス過多による下腹部の張りなどの腹部不快感が生じる疾患である。
その原因として、腸の運動を司る自律神経の異常による大腸を中心とした消化管運動の異常、消化管知覚閾値の低下、精神的不安や過度の緊張などを原因とするストレス、ライフスタイルのゆがみなど複合的な要因が指摘されている。IBS患者ではTRPV4アゴニストである多価不飽和脂肪酸の代謝産物(5,6−エポキシエイコサトリエン酸;5,6−EET)量が結腸で多いこと、当該5,6−EETを含む結腸の破砕液をマウス結腸へ投与した場合に腸運動反応が増加して腸が過剰反応するが、この場合においてTRPV4の発現を抑制すると当該過剰反応が抑制されることが報告されている(非特許文献1)。
したがって、TRPV4活性を抑制することにより、IBSを予防又は改善することが期待される。
シソ科植物に多く含有されているタンニンの一種であるロズマリン酸は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症や進行を抑制する作用があること(特許文献1)、インスリン分泌促進作用があること(特許文献2)、花粉症の改善作用があること(非特許文献2)等が報告されている。
また、ロズマリン酸の代謝産物としてヒト尿中に排出されるジメチルロズマリン酸は、シクロオキシゲナーゼ2の誘導抑制活性を有し、抗炎症作用があることが報告されている(特許文献3)。
しかし、ロズマリン酸やジメチルロズマリン酸がTRPV4活性抑制作用を有することや、IBSの予防又は改善に有用であることは全く知られていない。
特開2009−256282号公報 特開2005−139136号公報 特開2005−272362号公報
Nicolas Cenac et al., Gastroenterology 2015 149, 433-444 Osakabe N et al., Biofactors. 2004 21,127-31
本発明は、TRPV4の活性を抑制し、IBSの予防又は改善に有用なTRPV4活性抑制剤、IBSの予防又は改善剤を提供することに関する。
本発明者等は、TRPV4活性を抑制する素材について鋭意検討を行った結果、ロズマリン酸のヒト代謝産物であるジメチルロズマリン酸が、TRPV4活性を抑制する作用を有し、IBSの予防又は改善に有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)〜4)に係るものである。
1)ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とするTRPV4活性抑制剤。
2)ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とする過敏性腸症候群の予防又は改善剤。
3)ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とするTRPV4活性抑制用食品。
4)ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とする過敏性腸症候群の予防又は改善用食品。
本発明のTRPV4活性抑制剤は、TRPV4活性を効果的に抑制することができ、TRPV4チャネルが活性化されることによって生じる疾患、例えば過敏性腸症候群の予防又は改善に有用である。
本明細書において「TRPV4」とは、「Transient receptor potential cation channel subfamily V member 4」を意味する。TRPV4は、ヒトにおいてTRPV4遺伝子によってコードされているタンパク質である。
本発明の「ロズマリン酸」はシソ科植物に多く含有されているタンニンの一種であり、下記式(A)で示される。本発明の「ジメチルロズマリン酸」は、当該ロズマリン酸のヒト代謝産物であり(前記特許文献3)、下記式(B)で示される、3,3’−ジメチルロズマリン酸を意味する。
Figure 0006910187
本発明において、ロズマリン酸は、市販品であってもよいし、常法に基づき化学合成すること(SYNTHESIS, 755-762 (1996)、Can. J. Chem., 75, 1783-1794 (1997))、或いはロズマリン酸を含有するシソ科植物等の植物体又は培養細胞から抽出・精製することにより取得することができる(特開昭62−32889号公報)。
ジメチルロズマリン酸は、後記製造例に示すとおり、例えば下記の反応スキームに従って合成することができる。
Figure 0006910187
本発明のロズマリン酸及びジメチルロズマリン酸には、光学異性体が存在する。本発明のロズマリン酸及びジメチルロズマリン酸は、これらのいずれかの光学異性体であっても、光学異性体の混合物であってもよい。本発明ではR体又は光学異性体混合物が好ましい。
本発明のロズマリン酸及びジメチルロズマリン酸は、その薬学的に許容される塩又は溶媒和物とすることができる。このような塩の好ましい例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、あるいは酸付加塩などが挙げられる。溶媒和物の好ましい例としては、水和物、アルコール和物あるいはアセトン和物などが挙げられる。
後記実施例で示すように、ロズマリン酸の代謝産物であるジメチルロズマリン酸は、TRPV4活性を抑制する。すなわち、TRPV4刺激物質(TRPV4作動薬、アゴニスト)の存在下で、TRPV4遺伝子導入により、TRPV4が機能的に発現している形質転換細胞(TRPV4発現細胞)とジメチルロズマリン酸とを接触させた場合、TRPV4刺激物質による細胞内の陽イオン量の流入を抑制するという、TRPV4活性を抑制する作用を有する。
したがって、ジメチルロズマリン酸、その前駆体であるロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物(以下、「本発明の化合物」とも称する)は、TRPV4活性抑制剤となり、TRPV4活性抑制のため、或いはTRPV4活性抑制剤を製造するために使用できる。
前述のとおり、IBS患者の結腸においては、多価不飽和脂肪酸の代謝産物ある5,6−EET(TRPV4アゴニスト)の量が多いこと、また当該5,6−EETを含む結腸の破砕液をマウス結腸へ投与した場合に腸が過剰反応し、当該過剰反応はTRPV4の発現を抑制することにより抑制されることが報告されている(前記非特許文献1)。
したがって、TRPV4活性抑制剤は、IBSの予防又は改善剤として、IBSに対する予防又は改善のために使用することができると考えられる。
本発明において、「TRPV4の活性抑制」とは、受容体であるTRPV4の活性を抑制することを指す。具体的には、TRPV4刺激物質がTRPV4に結合することによって発現する活性、例えばイオン流束の調節能(例えば、細胞外から細胞内へのカルシウムイオン、ナトリウムイオンなどの陽イオンの輸送能など)、膜電位の調節能(例えば、電流の発生能など)を抑制又は阻害することを意味する。
本発明において、「IBS(Irritable Bowel Syndrome」とは、主として大腸の運動および分泌機能の異常で起こる疾患の総称であり、細菌やウイルスの感染による腸炎や、潰瘍性大腸炎・大腸がん等の病気とは異なり、検査では異常が見当たらないが下痢や便秘を繰り返す症状が続く場合に診断される疾患を意味する。
本発明において、TRPV4活性抑制のため、或いはIBSの予防又は改善のための「使用」は、ヒトを含む動物への投与又は摂取であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
なお、本明細書において「予防」とは、個体における疾患若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は個体の疾患若しくは症状の発症の危険性を低下させることをいう。また、「改善」とは、疾患、症状若しくは状態の好転、疾患、症状若しくは状態の悪化の防止若しくは遅延、又は疾患、症状若しくは状態の進行の逆転、防止若しくは遅延をいう。
本発明のTRPV4活性抑制剤、IBSの予防又は改善剤は、ヒトを含む動物に摂取又は投与した場合に、TRPV4活性抑制効果、IBSの予防又は改善効果を発揮する医薬品、医薬部外品、サプリメント又は食品となり、或いはこれらへ配合するための素材又は製剤となり得る。
また、本発明の食品には、一般飲食品のほか、必要に応じてその旨を表示した食品、機能性食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品、サプリメントが包含される。
本発明の化合物を含む上記医薬品(医薬部外品を含む)は、任意の投与形態で投与され得るが、経口投与が好ましい。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射等の投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態で投与することができる。
このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
また、本発明の化合物を配合した上記食品の形態は、清涼飲料水、茶系飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、ゼリー、ウエハース、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品や栄養食等の各種食品の他、さらには、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、トローチ剤等の固形製剤)の栄養補給用組成物が挙げられる。なかでも、錠剤が好ましく、チュアブル錠がより好ましい。
種々の形態の食品を調製するには、本発明の化合物を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。
上記の医薬品(医薬部外品を含む)や食品中の本発明の化合物の含有量は、その使用形態により異なるが、通常、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。また、好ましくは0.01〜95質量%、より好ましくは0.1〜90質量%、更に好ましくは1〜70質量%である。
本発明の化合物を医薬品や食品として、或いは医薬品や食品に配合して使用する場合のヒトへの投与量は、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与の場合の成人1人当たりの1日の投与量は、通常、ジメチルロズマリン酸又はロズマリン酸として、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは1mg以上、更に好ましくは100mg以上であり、また、好ましくは80000mg以下、より好ましくは15000mg以下、更に好ましくは5000mg以下である。また、好ましくは0.01〜80000mg、より好ましくは1〜15000mg、更に好ましくは100〜5000mgである。
また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日1回〜数回に分け、数週間〜数ヶ月間継続して投与することが好ましい。
投与又は摂取対象としては、TRPV4活性抑制、IBSの予防又は改善を必要とする若しくは希望するヒトを含む動物であれば特に限定されないが、ストレス等により下痢や便秘、腹痛、ガス過多による下腹部の張りなどの症状を呈するヒトへの投与又は摂取が有効である。
上述した実施形態に関し、本発明においては以下の態様が開示される。
<1>ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とするTRPV4活性抑制剤。
<2>ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とする過敏性腸症候群の予防又は改善剤。
<3>ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とするTRPV4活性抑制用食品。
<4>ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とする過敏性腸症候群の予防又は改善用食品。
<5>TRPV4活性抑制剤を製造するためのロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上の使用。
<6>過敏性腸症候群の予防又は改善剤を製造するための、ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上の使用。
<7>TRPV4活性抑制用食品を製造するための、ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上の使用。
<8>過敏性腸症候群の予防又は改善用食品を製造するための、ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上の使用。
<9>TRPV4活性抑制に使用するための、ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上。
<10>過敏性腸症候群の予防又は改善に使用するための、ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上。
<11>ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を、それらを必要とする対象に有効量で投与又は摂取するTRPV4活性抑制方法。
<12>ロズマリン酸、ジメチルロズマリン酸及びそれらの塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を、それらを必要とする対象に有効量で投与又は摂取する過敏性腸症候群の予防又は改善方法。
<13><1>及び<5>のTRPV4活性抑制剤、<2>及び<6>の過敏性腸症候群の予防又は改善剤、<3>及び<7>のTRPV4活性抑制用食品、<4>及び<8>の過敏性腸症候群の予防又は改善用食品における、前記有効成分の含有量は、総量中好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。また、好ましくは0.01〜95質量%、より好ましくは0.1〜90質量%、更に好ましくは1〜70質量%である。
<14><11>又は<12>において、成人1人当たりの1日の投与量は、ロズマリン酸又はジメチルロズマリン酸として、好ましくは0.01mg以上、より好ましくは1mg以上、更に好ましくは100mg以上であり、また、好ましくは80000mg以下、より好ましくは15000mg以下、更に好ましくは5000mg以下である。また、好ましくは0.01〜80000mg、より好ましくは1〜15000mg、更に好ましくは100〜5000mgである。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
製造例 ジメチルロズマリン酸の合成
(1)試薬
3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)乳酸ナトリウム(1)(ラセミ混合物)は東京化成より、フェルラ酸(3)は和光純薬工業より、それぞれ購入して使用した。
(2)α−ヒドロキシ−3−メトキシ−4−(2−プロピレニロキシ)ベンゼンプロパン酸2−プロピレニルエステル(2)の合成
Figure 0006910187
3−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)乳酸ナトリウム(1)(500mg、2.14mmol)および炭酸カリウム(885mg、6.41mmol)を50mLナスフラスコにとり、アルゴン置換した後、超脱水アセトン 7.1mLを加え、分散させた。その後、臭化アリル(2.77mL、32.0mmol)を加え、N置換後reflux条件下に20時間撹拌した。
反応終了後、ろ過、ろ過残渣を塩化メチレン(25mL)で洗浄し、ろ液と洗浄液を併せ、減圧濃縮を行った。これに塩化メチレン 20mLとHO 20mLを加え、分層後、塩化メチレン層を回収した。水層は、さらに塩化メチレン 5mLで3回抽出し、回収した。回収した塩化メチレン層を併せて、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧濃縮した(988.2mg)。
これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標題化合物(2)の精製品513mg(無色、油状、収率82%)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件は、以下の通り。
<シリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件>
カラム: Universal Premium L (30μm, 60Å, 3.0x16.5cm, 40g) [YAMAZEN]
インジェクトカラム:INJECT COLUMN S [YAMAZEN]
溶離液:ヘキサン / 酢酸エチル = 95 / 5 (4min) 95 / 5 (11min) 74 / 26 (14min) 74 / 26
流速:20mL / min、分取時間:29min、分取容量:12mL / 本、48本分取
分取各Fr.をTLCにて確認後、目的Fr.(fr.43-53)を減圧濃縮、乾燥。
(3)3−メトキシ−4−(2−プロピレニロキシ)フェニル−2−プロピレン酸(4)の合成
Figure 0006910187
フェルラ酸(3)(500mg、2.58mmol)に、超脱水エタノール17mLを加え、溶解させた。その後、臭化アリル(267μL、3.09mmol)および炭酸カリウム(427mg、3.09mmol)を順次加え、N置換後reflux条件下に5.5時間撹拌した。TLCにより反応進行を確認しつつ、室温まで放冷し、水酸化カリウム(434mg、7.74mmol)を加え、さらに16時間撹拌した。
反応終了後、減圧濃縮し、再度HO 25mLに溶解後、2N塩酸および濃塩酸を添加して、pH=0とした。これを酢酸エチル(25mL)で5回抽出した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した(687.5mg)。
これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標題化合物(4)の精製品221.4mg(無色、油状、収率37%)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件は、以下の通り。
<シリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件>
カラム: Universal Premium L (30μm, 60Å, 3.0x16.5cm, 40g) [YAMAZEN]
インジェクトカラム:INJECT COLUMN M [YAMAZEN]
溶離液:
1%酢酸 in ヘキサン / 1%酢酸 in 酢酸エチル = 100 / 0 (4min) 100 / 0 (11min) 84 / 16 (24min) 84 / 16 (0min) 80 / 20 (7min) 80 / 20
流速:20mL / min、分取時間:46min、分取容量:12mL / 本、77本分取
分取各Fr.をTLCにて確認後、目的Fr.(fr.48-75)を減圧濃縮、乾燥。
(4)α−[[3−[3−メトキシ−4−(2−プロピレニロキシ)フェニル]−1−オキソ−2−プロピレニル]オキシ]-3−メトキシ−4−(2−プロピレニロキシ)ベンゼンプロパン酸2−プロピレニルエステル(5)の合成
Figure 0006910187
化合物(2)(100mg、0.34mmol)に、塩化メチレン 1.7mLを加え、溶解させた。その後、化合物(4)(104mg、0.44mmol)およびジメチルアミノピリジン(6.3mg、0.051mmol)を順次加え、−20℃に冷却した後、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(88.2mg、0.43mmol)を加えた。N置換後室温で24時間撹拌した後、析出した尿素をろ過除去、酢酸エチルで洗浄し、減圧濃縮した(288.5mg)。
これを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、標題化合物(5)の精製品151.8mg(白色、ワックス状)を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件は、以下の通り。
<シリカゲルカラムクロマトグラフィーの条件>
カラム: Universal Premium L (30μm, 60Å, 3.0x16.5cm, 40g) [YAMAZEN]
インジェクトカラム:INJECT COLUMN S [YAMAZEN]
溶離液:
ヘキサン / 酢酸エチル = 87 / 13 (4min) 87 / 13 (11min) 66 / 34 (14min) 66 / 34
流速:20mL / min、分取時間:29min、分取容量:12mL / 本、48本分取
分取各Fr.をTLCにて確認後、目的Fr.(fr.34-36)を減圧濃縮、乾燥。
(5)3,3’−ジメチルロズマリン酸(B)の合成
Figure 0006910187
化合物(5)(87.3mg、0.172mmol)をN雰囲気下のグローブボックス中で50mLナスフラスコに採り、超脱水テトラヒフドロフラン 8.6mLおよびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)錯体(Pd(PPh)(19.8mg、17.2μmol)、モルホリン(450μL、5.15mmol)を順次加えた。反応混合物は、N雰囲気下、室温で18時間撹拌した。
反応終了後、減圧濃縮した後、1N塩酸20mLで酸性化し、これを酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。酢酸エチル層は併せて、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した(117.0mg)。これを、分取TLCにて精製し、標題化合物(B)の精製品61.4mg(白色、粉末状、収率92%)を得た。分取TLCの条件は、以下の通り。
なお以下の実施例では、合成したジメチルロズマリン酸をジメチルスルホキサイド(DMSO)で適宜希釈して評価に供した。
<分取TLCの条件>
TLC: PLC Silica gel 60 F254 (1mm, 20x20cm, #1.13895.0001) [Merck]
展開溶媒:クロロホルム / アセトン/ 88%ギ酸 = 75 / 16.5 / 8.5 200mL
脱離液:クロロホルム / アセトン / 88%ギ酸 = 75 / 16.5 / 8.5 15mL
Figure 0006910187
実施例1 TRPV4活性抑制作用の評価
(1)ヒトTRPV4遺伝子発現ベクターの作製
ヒト十二指腸由来細胞(Hutu−80細胞、American Type Culture Collectionより購入)から抽出したtotalRNAを逆転写して得られたcDNAを鋳型にして、公開されているヒトTRPV4遺伝子配列を参考に合成した、下記に示す塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマーセットを用いて、下記の条件下でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行った。
<プライマーセット>
フォワードプライマー;5’-CACCATGGCGGATTCCAGCGAAGGCCC-3’(配列番号1)
リバースプライマー;5’-CTAGAGCGGGGCGTCATCAGTCC-3’(配列番号2)
<PCR条件>
a)PCR溶液組成
cDNA(Template) 15μL
5x PrimeStar GXL Buffer 10μL
dNTPs mixture(2.5mM) 4μL
PrimeStar GXL DNA Polymerase(タカラバイオ) 1μL
Forward Primer(10μM) 1μL
Reverse Primer(10μM) 1μL
Water 18μL
b)温度とサイクル条件
95℃ 2min

98℃ 10sec 33 cycles
70℃ 2min
得られたPCR産物をHigh Pure PCR Product Purification Kit(商品名、ロッシュ社製)用いて精製した。精製したPCR産物と、pcDNA3.1 Directional TOPO Expression Kit(商品名、インビトロジェン社製)を用いて、ヒトTRPV4遺伝子発現ベクターを作製した。
(2)ヒトTRPV4発現細胞の作製
10%牛胎児血清を含むDMEM/F12培地(インビトロジェン社製)を用いて、ヒト子宮頸癌由来細胞株(HeLa細胞、American Type Culture Collectionより購入)の培養を行った。HeLa細胞をT−75細胞培養用フラスコに5×10cells/Flaskで播種した。培養3日後、前記(1)で作製したヒトTRPV4遺伝子発現用ベクター(8μg)をTransIT−HeLaMONSTER Transfection Kit(Mirus社製)を用いて細胞にトランスフェクションし、1日培養した。
Detachin(Genlantis社製)で細胞をはがし96well Optical bottom plate(Nunc社製)に10%牛胎児血清を含むDMEM/F12培地で1.5×10cells/90μL/wellの細胞密度で播き、さらに1日培養した。
(3)細胞内カルシウムイオン流入活性の測定
細胞内カルシウムイオン流入活性の測定は、Calcium Kit II− fluo 4(商品名、DOJINDO)を用いて行った。Fluo4−AMを含有したLoading bufferを前記(2)で作製したヒトTRPV4発現細胞に90μL/well添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、37℃で蛍光プレートリーダーFDSS3000(商品名、浜松ホトニクス社製)を用いて蛍光強度(励起波長:488nm、蛍光波長:524nm)を2秒毎に測定した。測定開始30秒後にTRPV4作動薬であるGSK1016790a(Sigma社製)と検体として前記製造例で調製したジメチルロズマリン酸溶液をそれぞれ測定キットの希釈bufferで希釈し、それらの混合溶液(添加直前に混合)を20μL/well添加し、300秒まで2秒毎に蛍光強度変化を測定した。なお、GSK1016790aは終濃度3nMとなるように添加した。
また、TRPV4活性抑制の陽性対照として、TRPV4の拮抗薬であるHC067047を終濃度100μMで添加した。
検体のTRPV4活性は、TRPV4作動薬であるGSK1016790aの処理によるカルシウムイオン流入率を100%として、次式により算出した。
(数1)
カルシウムイオン流入率(%)=[(F300/F0)- (F300C2/F0C2) ]/[(F300C1/F0C1)- (F300C2/F0C2)]×100
F300:測定開始300秒後のGSK1016790aと検体を添加したウェルの蛍光強度
F300C1:測定開始300秒後のGSK1016790aと溶媒を添加したウェルの蛍光強度
F300C2:測定開始300秒後の溶媒のみを添加したウェルの蛍光強度
F0:測定開始直後のF300と同じウェルの蛍光強度
F0C1:測定開始直後のF300C1と同じウェルの蛍光強度
F0C2:測定開始直後の溶媒のみを添加したウェルの蛍光強度
検体を添加した場合のカルシウムイオン流入率を、GSK1016790a+溶媒添加時と比較しDunnett’s testを用いて検定した。ジメチルロズマリン酸を添加した場合の結果を表2に示す(表中、GSK1016790a、ジメチルロズマリン酸は、それぞれGSK、MeRAと略記)。
Figure 0006910187
表2より、陽性対照であるHC067047(TRPV4の拮抗薬)と同様、ジメチルロズマリン酸は濃度依存的にカルシウムイオン流入を有意に低下させた。
以上の結果から、ジメチルロズマリン酸を適用することにより、TRPV4活性が有意に抑制される。これは、ジメチルロズマリン酸が、TRPV4活性の抑制に有効であることを示している。さらに、TRPV4活性を抑制する作用を有するジメチルロズマリン酸は、過敏性腸症候群の予防又は改善に有効であることを示している。
なお、前述のとおり、ジメチルロズマリン酸は、ロズマリン酸の体内代謝産物であることから、前駆体であるロズマリン酸もTRPV4活性の抑制、過敏性腸症候群の予防又は改善に有効であると考えられる。

Claims (4)

  1. 3,3’−ジメチルロズマリン酸及びその塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とするTRPV4活性抑制剤。
  2. 3,3’−ジメチルロズマリン酸及びその塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とする過敏性腸症候群の予防又は改善剤。
  3. 3,3’−ジメチルロズマリン酸及びその塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とするTRPV4活性抑制用食品。
  4. 3,3’−ジメチルロズマリン酸及びその塩若しくは溶媒和物から選択される1種以上を有効成分とする過敏性腸症候群の予防又は改善用食品。
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