JP2010047533A - 脊髄損傷改善剤 - Google Patents
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Abstract
Description
脊髄損傷は、末梢組織と脳との間の知覚、運動神経情報の伝導路である脊髄が、交通事故やスポーツ事故、高齢者の圧迫骨折等で物理的傷害を受けて神経軸索が傷害されて運動麻痺、呼吸麻痺や知覚障害等の重篤な身体障害に陥る疾患である。脳、脊髄を含む中枢神経系では末梢神経系と異なり神経軸索が再生しにくく、脊髄損傷の回復はほとんど望めないのが現状であり、現在のところ有効な治療法は確立されていない。
脊柱は上部から順に、頸椎、胸椎、仙椎、尾椎に分けられる。損傷箇所が頭部に近い上部であるほど障害のレベルは高くなる。仙椎以下では、排泄などの機能に支障をきたし、下部胸椎から腰椎では両下肢が麻痺し、車椅子での生活を余儀なくされる。また、排泄が自力では困難になることから患者本人のみならず、家族などの介護者にとっても大きな負担となる。上部胸椎では腹筋、背筋が効かなくなるため、体幹の保持が困難となる。さらに頸椎の高い位置で損傷すると手指だけでなく呼吸筋まで麻痺し、人工呼吸器なしには生きられなくなることもある。このように脊髄損傷には患者の生活の質が著しく低下するという大きな問題点がある。
日本には10万人以上の脊髄損傷患者がおり、毎年5000人以上が新たに脊髄損傷を負っている。主な受傷原因および内訳は、交通事故(43.7%)、高所からの落下(28.9%)、転倒(12.9%)、打撲・下敷き(5.5%)、スポーツ(5.4%)などとされている。スポーツではスノーボードやオートバイでの事故に起因するものもある。
脊髄損傷を回復させるためには、損傷部位で切断された神経を再生させ、再結合させればよいのではないかとのコンセプトから様々な研究がなされつつある。そのような作用を示す物質として、脊髄損傷後の周辺組織に二次的損傷を引き起こす炎症反応を抑制する補体阻害タンパク質(例えば、特許文献1参照)、神経栄養因子の一つであることが明らかとなっている肝細胞増殖因子(HGF)(例えば、特許文献2参照)などが知られている。しかしながら、決定的あるいは根治的な効果を有する物質は未だに見出されておらず、安全で作用効果の高い活性物質の提供が強く待ち望まれている。
ピロロキノリンキノン(以下、PQQという)は、1979年メタノール資化性菌のメタノール脱水素酵素の補酵素として見出された(例えば、非特許文献1または2参照)。細菌類以外にも、大豆、空豆、ピーマン、ジャガイモ、パセリ、ホウレンソウなどの食用植物や、酢、茶、ココア、納豆、豆腐等の加工食品からも検出されている(例えば、非特許文献3参照)。また、ヒトやラットの生体内にも存在すること(例えば、非特許文献4参照)が報告されている。2003年にはアミノ酸、リジンの酸化を触媒する酵素(2−アミノアジピン酸 6−セミアルデヒド脱水素酵素)の酸化還元補酵素として機能することが明らかとなり、新しいビタミンと位置付けられている化合物である(例えば、非特許文献5参照)。
ほ乳類におけるPQQの栄養学的な研究は1980年代から進められてきており、PQQ欠乏餌を与えられたマウスは、発育不良、繁殖能力低下、皮膚障害などの欠乏症の症状を示すが、PQQを補給すると異常が改善されることから、PQQは重要な栄養素の一つであると考えられている(例えば、非特許文献6)。
ほ乳類におけるPQQの栄養学的な研究は1980年代から進められてきており、PQQ欠乏餌を与えられたマウスは、発育不良、繁殖能力低下、皮膚障害などの欠乏症の症状を示すが、PQQを補給すると異常が改善されることから、PQQは重要な栄養素の一つであると考えられている(例えば、非特許文献6)。
栄養学的な側面だけでなく、PQQの薬理学的作用についても多くの報告がある。in vitroおよびin vivoで、PQQには強い活性酸素除去作用が認められることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。また、細胞の増殖促進作用(例えば、特許文献4参照)、アルドース還元酵素阻害作用(例えば、特許文献5参照)、メラニン産生抑制および美白作用(例えば、特許文献6参照)、紫外線吸収作用(例えば、特許文献7参照)などが知られている。また、PQQの神経系に対する作用としては、神経成長因子産生促進作用(例えば、特許文献8または9参照)があるが、これはPQQが神経成長因子を増強することにより、末梢神経に分類される座骨神経の再生を促進するというものであった。一方、ラットを用いた検討から、経口摂取されたPQQが学習記憶能力などの認知機能の低下を抑制する作用を有し、さらにはコエンザイムQ10との併用効果が認められることも報告されている(例えば、非特許文献7参照)。しかし、これまで、PQQが中枢神経の再生や、脊髄損傷の回復に有用であることはまったく知られていなかった。
「ネイチャー(Nature)」、1979年、第230巻、p.843−844
「フェブス レター(FEBS Letter)」、1979年、第108巻、p.443−446
「バイオケミカル ジャーナル(Biochem Journal)」、1995年、第307巻、p.331−333
「バイオケミカ エト バイオフィジカ アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)」、1992年、第1156巻、p.62−66
「ネイチャー(Nature)」、2003年、第422巻、p.832
「サイエンス(Science)」、1989年、245巻、p.850−852
「ジャーナル オブ クリニカル バイオケミカル ニュートリッション(J Clin Biochem Nutr)」、2008年、第42巻、p.29−34
特開2007−8876号公報
特開2007−77125号公報
特開平5−078247号公報
特開昭61−58584号公報
特開平6−256191号公報
特開平8−020512号公報
特許第3625493号公報
特開平06−211660号公報
本発明の目的は、脊髄損傷の修復に役立つ改善剤を提供することにある。
本発明により、後遺症を残し生活の質に強く影響することが多い脊髄損傷の修復に役立つ改善剤を提供することが可能となる。
一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩において、式中のR1、R2およびR3は、同一または異なって、水素原子、フェニル基、または短鎖長のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、アルケニル基若しくはアルキニル基を表す。
短鎖長のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基のアルキル部分としては、例えば直鎖または分枝状の炭素数1〜6のアルキルが挙げられ、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられ、中でもメチルまたはエチルが好ましい。
短鎖長のアラルキル基としては、例えば炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられ、より具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチル等が挙げられる。
短鎖長のアルキルアリール基のアリール部分としては、例えば炭素数6〜14のアリールが挙げられ、より具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等が挙げられる。従って、アルキルアリール基としては、メチルフェニル、エチルフェニル等が挙げられる。
短鎖長のアラルキル基としては、例えば炭素数7〜15のアラルキル基が挙げられ、より具体的にはベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、ナフチルメチル等が挙げられる。
短鎖長のアルキルアリール基のアリール部分としては、例えば炭素数6〜14のアリールが挙げられ、より具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等が挙げられる。従って、アルキルアリール基としては、メチルフェニル、エチルフェニル等が挙げられる。
短鎖長のアルケニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、より具体的にはビニル、アリール、1−プロペニルメタクリル、クロチル、1−ブテニル、3―ブテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、2―ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。
短鎖長のアルキニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルキニルが挙げられ、より具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
短鎖長のアルキニル基としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルキニルが挙げられ、より具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。
上述の一般式(1)においてR1、R2およびR3がいずれも水素原子である化合物は、有機化学的方法(J.Am.Chem.Soc.、103、5599−5600(1981))または発酵法、例えばメタノール資化性を有し、かつPQQを生産する能力を有する細菌を、炭素源としてメタノールを含有し鉄化合物の濃度を制御した培養液中で培養することによりPQQを生産する方法(特開平1−218597号公報)などにより製造することが可能である。
一方、PQQのエステル体は、PQQより常法のエステル化反応に従って合成することができる。PQQのトリエステル体は、例えば、PQQまたはその塩を酸性条件下でアルコール類と反応させる方法(特開平3−123781号公報、特開平3−145492号公報)や、PQQまたはその塩を塩基の存在下でハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、ハロゲン化アルキルアリール、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルキニル等と反応させる方法などにより合成することができる。また、上記方法によって得られるPQQのトリエステル体を酸性または塩基性条件下で部分加水分解することで、モノエステル体、ジエステル体を得ることができる。
このようにして得られる一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩は、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、または溶媒抽出法などの通常の方法により、反応液中から分離、精製することができる。また、それらの同定には、元素分析、NMRスペクトル、IRスペクトル、質量分析などの各種手段が用いられる。
一般式(1)で表されるPQQ類の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、トリエタノールアミン、トリメチルアミン等の有機アミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。
本発明の脊髄損傷改善剤としては、一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩をそのまま投与することも可能であるが、通常各種の製剤として提供することが望ましい。製剤は、有効成分として一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩の他に、任意の他の有効成分を含有していてもよく、例えば、さらに一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。
製剤の投与形態は、経口投与、または静脈内、腹膜内、皮下若しくは経皮等の非経口投与を挙げることができ、個々の症例に対応した脊髄損傷の修復に最も効果的な形態を選択すればよい。剤形としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤、注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の経口剤や非経口剤を挙げることができる。
経口剤として製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体、安息香酸ナトリウム等の保存剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤または顆粒剤等の場合には、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば食甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体、安息香酸ナトリウム等の保存剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤または顆粒剤等の場合には、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば食甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
経口投与に適当な製剤は、そのまま、または例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態のものであってもよいし、健康食品、機能性食品、栄養補助食品等の飲食品として用いてもよい。
非経口投与に適当な、例えば注射剤は、好ましくは受容者の血液と等張である一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩を含む滅菌水性剤と、塩溶液、ブドウ糖溶液、または塩溶液とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて調製することができる。また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種またはそれ以上の補助成分を添加することができる。
本発明の脊髄損傷改善剤における一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩の濃度は、製剤の種類、該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、例えば経口剤の場合、PQQ類またはその塩として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。また、投与量および投与回数は、投与形態、投与対象者の年齢、体重、損傷の程度等により異なるが、通常、成人一日当たり、PQQ類またはその塩として、通常は、0.5mg〜10000mg、好ましくは0.5mg〜5000mg、より好ましくは5mg〜1000mgとなるように、一日一回ないし数回投与する。
投与期間は、特に限定されないが、通常は脊髄損傷後〜1年間、好ましくは損傷後〜3ヶ月間、より好ましくは損傷後〜2週間である。
投与期間は、特に限定されないが、通常は脊髄損傷後〜1年間、好ましくは損傷後〜3ヶ月間、より好ましくは損傷後〜2週間である。
なお、本発明の製剤は、ヒトだけでなく、ヒト以外の動物(以下、非ヒト動物と略す)に対しても使用することができる。非ヒト動物としては、ほ乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類等、好ましくはほ乳類に属する非ヒト動物を挙げることができる。
本発明の脊髄損傷改善剤を非ヒト動物に投与する場合の投与量および投与回数は、投与経路、動物の種類、年齢等により異なるが、体重1kg1日当たり、一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩として、通常は0.01mg〜200mg、好ましくは0.1mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜20mgとなるように一日一回ないし数回投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は脊髄損傷後〜1年間、好ましくは損傷後〜3ヶ月間、より好ましくは損傷後〜2週間である。
本発明の脊髄損傷改善剤を非ヒト動物に投与する場合の投与量および投与回数は、投与経路、動物の種類、年齢等により異なるが、体重1kg1日当たり、一般式(1)で表されるPQQ類またはその塩として、通常は0.01mg〜200mg、好ましくは0.1mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜20mgとなるように一日一回ないし数回投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は脊髄損傷後〜1年間、好ましくは損傷後〜3ヶ月間、より好ましくは損傷後〜2週間である。
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
実施例1
試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=11)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PQQ二ナトリウム塩(三菱瓦斯化学株式会社製)を1.2mg/mlの濃度になるようにPBS緩衝液に溶解し、0.5ml (PQQ二ナトリウム塩として0.6mg) を1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケール(Basso et al.,J.Neurotrauma,12,1−21,1995)を用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した。この評価スケールでは、完全な麻痺を0、正常を21として21段階で評価する。スケール8までは後肢で体重を支えられないレベル、スケール9を超えると体重を支えられるようになり、14を越えると前肢と後肢の協調運動が認められ、19、20になると一見しただけでは正常と区別しにくいレベルとされている。表1にPQQ二ナトリウム塩を投与した場合の脊髄損傷修復経過を示す。
PQQ二ナトリウム塩投与群(表1)では、PBS緩衝液を投与した対照のPQQ二ナトリウム非投与群(下表2参照)に比べ、投与後5−14日間での運動機能の回復度合いが有意に高く、PQQ二ナトリウム塩が脊髄損傷の修復を促進した。
実施例1
試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=11)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PQQ二ナトリウム塩(三菱瓦斯化学株式会社製)を1.2mg/mlの濃度になるようにPBS緩衝液に溶解し、0.5ml (PQQ二ナトリウム塩として0.6mg) を1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケール(Basso et al.,J.Neurotrauma,12,1−21,1995)を用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した。この評価スケールでは、完全な麻痺を0、正常を21として21段階で評価する。スケール8までは後肢で体重を支えられないレベル、スケール9を超えると体重を支えられるようになり、14を越えると前肢と後肢の協調運動が認められ、19、20になると一見しただけでは正常と区別しにくいレベルとされている。表1にPQQ二ナトリウム塩を投与した場合の脊髄損傷修復経過を示す。
PQQ二ナトリウム塩投与群(表1)では、PBS緩衝液を投与した対照のPQQ二ナトリウム非投与群(下表2参照)に比べ、投与後5−14日間での運動機能の回復度合いが有意に高く、PQQ二ナトリウム塩が脊髄損傷の修復を促進した。
比較例1
比較試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=10)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PBS緩衝液0.5mlを1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。実施例1と同様に、BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケールを用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した(損傷直後は0、非損傷は21)。結果を表2に示す。
比較試験には、7週齢の雌性Wistar系ラット(n=10)を用いた。飼育は、室温22±3℃、湿度50±25%の条件下で行い、試料および水は自由摂取とした。7週齢の雌性Wistar系ラットをペントバルビタール(40mg/kg)で麻酔し、脊柱を露出後、第9胸椎の椎弓を切除し、鋭利な刃物で第10胸髄(T10)右側半球を切断した。背筋、皮膚を縫合した後、後肢麻痺を確認し試験に用いた。PBS緩衝液0.5mlを1日1回、7日間にわたり腹腔内に投与した。実施例1と同様に、BBB (Basso、Beattie and Breshnahan) 運動機能評価スケールを用いて、右後肢の運動機能を毎日評価した(損傷直後は0、非損傷は21)。結果を表2に示す。
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