JP2010046964A - 剥離性ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】プリント配線基板の製造工程において使用されるキャリアフィルムとして好適に用いられる剥離性ポリエステルフィルムであって、熱プレス後におけるプリント配線基板からの剥離性に優れ、フィルムからの粒子の非欠落性に優れ、かつ生産性に優れた剥離性ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】金属貼り積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用されるキャリアフィルムであって、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)99〜90質量%と熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)とは非相溶の熱可塑性樹脂(ロ)1〜10質量%からなる樹脂層(I)を片面または両面の表層に有する延伸フィルムであることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、プリント配線基板製造工程におけるキャリアフィルムとして好適に用いられる剥離性に優れるポリエステルフィルムに関し、詳細には、電子機器などに広範に使用されるプリント配線基板積層工程で好適に用いられる剥離性ポリエステルフィルムに関するものである。
従来、多層の導体回路を有するプリント配線基板は、例えば、多数のビアホールを形成した導体回路とガラスクロスにエポキシ樹脂等を含浸させたプリプレグを絶縁、接着、導体保護のため多層積層して形成される。
プリント配線基板の製造工程は、剥離性に優れるキャリアフィルムが上下から挟み込むような形で多層のプリント配線基板積層体の上と下に配置され、このキャリアフィルムに載った形で基板積層体が搬送され、加熱真空プレス及び高圧加熱プレスという一連の工程を通して、一体化させる方法が一般的である。
キャリアフィルムは、加熱真空プレス及び高圧加熱プレス工程を経た後はプリント配線基板積層体から剥がされて巻き取られる。
一連のプリント配線基板の製造工程で、キャリアフィルムは(i)基板を搬送する役目と(ii)プリント配線基板とプレス板とが密着するのを防止する役目を担っている。さらには、(iii)加熱プレス工程時に軟化したエポキシ樹脂等が導体回路に形成されたビアホールを通りキャリアフィルムに接触するのを防ぐ役目もある。
したがって、プリント配線基板積層体とキャリアフィルムあるいはプレス板とキャリアフィルムとの剥離性が劣る場合、工程処理速度を上げることができなくなり、操業性の悪化を招き、歩留まりが低下する。このため、プリント配線基板積層工程で使用されるキャリアフィルムには、プリント配線基板材料やプレス板との剥離性が求められる。
また、キャリアフィルムは加熱真空プレスや高圧加熱プレス工程を経るため、これらのプレス成形を経ても寸法変化がないことが求められる。したがって、一般に耐熱性や寸法安定性の高いポリエステルフィルムが使用されている。
このような観点から、フィルム表面の中心線粗さが0.1〜1.0μm、熱収縮率3%以下のポリエステルフィルムが提案されている(特許文献1)。この特許文献1の実施例には平均粒径が4.5μm、6.4μm、8.4μmの無定形シリカを含有したフィルムが例示されている。
しかしながら、4.5μm以上の粒径の大きい無定型シリカを配合すれば、フィルムの表面粗さが高くなるため剥離性はある程度現出するが、このような4.5μmを超える無機粒子をフィルム中に配合する場合、フィルム製造時に無機粒子が二次凝集して粗大粒子を形成するため、製品への夾雑物の混入を防止する目的で溶融混練装置に設けられているフィルターに粗大粒子が捕集されることから昇圧速度が著しく速くなり操業性が格段に悪くなるという問題がある。
上記問題を解決するために中心線平均粗さが0.1〜1.0μmのフィルムにシリコーン樹脂等の剥離層を設けたポリエステルフィルムが提案されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2の方法ではポリエステルフィルム製造工程後にシリコーン剥離層を形成させる必要があるため加工工程が増加してコスト高になるばかりか、プリント配線基板のプレス工程を経てプリント配線基板から剥がされて巻き取られた剥離性フィルムは、ポリエステル樹脂層とシリコーン樹脂層とが一体化されたものであるためリサイクルに供することができない。
また、シリコーン由来の物質がプレス工程でのプレス熱板上に蓄積し、それが原因で、経時で剥離性が低下するため、定期的にプレス熱板を清掃する必要があり、生産性が低下するという問題があった。
さらには、最表層に平均粒径が3〜10μの有機粒子または無機粒子を3〜30重量%配合し、その表面粗度が算術平均粗さで0.30〜1.00μmである積層ポリエステルフィルムが提案されている(特許文献3)。しかしながら、粒径が3μm以上の粗大粒子を3〜30重量%と大量に配合すると、表面粗さが高くなるため剥離性は現出するが、フィルム製造時に前記粒子が二次凝集して粗大粒子を形成したり、または二次凝集しなくて一次粒子であっても、フィルターの昇圧速度が著しく速くなり操業性が格段に悪くなる。この場合に絶対濾過径が60μmを超える粗いフィルターを使用すれば、昇圧速度の懸念は払拭されるが、二次凝集物や一次粒子がフィルム中に混入するため、フィルム外観についての問題が生じる。
また、特許文献3の実施例のごとく、低濃度の粒子配合層に比べて高濃度の粒子配合層の厚さが厚い場合、フィルム延伸時の延伸切断の発生や、フィルム端部をトリミングする際のカッター刃の摩耗といった、操業性が著しく悪化する問題が指摘されていた。
特開2002−252458号公報 特開2005−111798号公報 特開2006−312263号公報
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、プリント配線基板の製造工程において使用されるキャリアフィルムとして好適に用いられる剥離性ポリエステルフィルムであって、熱プレス後におけるプリント配線基板からの剥離性に優れ、フィルムからの粒子の非欠落性に優れ、かつ生産性に優れたものを提供することを課題としている。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討した結果、特定組成からなる熱可塑性樹脂を延伸して得られる二軸延伸ポリエステルフィルムがプリント配線基板上の金属貼り積層版に対して高度の剥離性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は
(1)金属貼り積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用されるキャリアフィルムであって、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)99〜90質量%と熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)とは非相溶の熱可塑性樹脂(ロ)1〜10質量%からなる樹脂層(I)を片面または両面の表層に有する延伸フィルムであることを特徴とする剥離性ポリエステルフィルム、
(2)熱可塑性樹脂(ロ)が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)より高いガラス転移温度を有することを特徴とする(1)記載の剥離性ポリエステルフィルム、
(3)熱可塑性樹脂(ロ)がスチレンマレイミド樹脂である(1)または(2)のいずれか1つに記載の剥離性ポリエステルフィルム、
(4)樹脂層(I)側から測定した空気抜け時間が1.5秒以下である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の剥離性ポリエステルフィルム、
(5)熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)が平均粒径0.2〜4.3μmの不活性無機粒子を0.01〜3質量%含んでいることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の剥離性ポリエステルフィルム、
(6)剥離性ポリエステルフィルムが、第一の樹脂層(I)/熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)からなる樹脂層(II)/第二の樹脂層(I)で構成される三層フィルムであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の剥離性ポリエステルフィルム、
(7)三層フィルムの各樹脂層が質量比で合計100となるよう、第一の樹脂層(I)が5〜30、樹脂層(II)が90〜40、第二の樹脂層(I)が5〜30の割合で構成されることを特徴とする(6)に記載の剥離性ポリエステルフィルム、
(8)(1)から(7)までのいずれか1つに記載の剥離性ポリエステルフィルムを製造するに際し、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)99〜90質量%と熱可塑性樹脂(ロ)1〜10質量%からなる樹脂層(I)を片面または両面の表層に有する未延伸フィルムを延伸することを特徴とする(1)から(7)記載の剥離性ポリエステルフィルムの製造方法、
を要旨とするものである。
本発明のプリント配線基板のキャリアフィルムとして使用される剥離性ポリエステルフィルムは、パソコンや携帯電話等の小型電子機器に使用される薄型多層板からなる多層プリント配線基板との剥離性に優れる他、フィルムからの粒子の非欠落性に優れ、また製造性にも優れるためプリント配線基板の生産性を高めることが可能となりその工業的価値は非常に高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムは、金属貼り積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用されるキャリアフィルムであって、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)99〜90質量%と熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)とは非相溶の熱可塑性樹脂(ロ)1〜10質量%からなる樹脂層(I)を片面または両面の表層に有する延伸フィルムであることを特徴とする。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムを構成する熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)あるいはポリ−p−エチレンオキシベンゾエート(PEOB)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂であれば特に制限はない。
中でもPETが安価であり、フィルムの延伸性に優れることから好適に使用される。PETは、通常、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換方法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールとからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合して得られる。
また、カーボンニュートラル素材として環境面から注目されているPLAも好適である。
本発明に使用するポリエステル樹脂は、目的とする樹脂物性を得るため他の成分を共重合することによって得ることもできる。他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε―カプロラクトンや乳酸などが挙げられる。
また、グリコール成分として、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加物などが挙げられる。
本発明において用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の分子量については特に制限はなく、溶融押出しによりフィルム化することができれば使用可能であるが、溶融押出し時に溶融樹脂の粘度が低すぎるとフィルム化できない。そのため、フェノール/テトラクロルエタン=1/1(質量%比)の混合溶媒を用いて25℃で測定した時の熱可塑性ポリエステル樹脂の極限粘度が0.4(dl/g)以上であることが好ましい。
一方、本発明で使用する熱可塑性樹脂(ロ)は熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と非相溶の樹脂である。本発明において非相溶の樹脂とは、同時に混合して使用する他の樹脂と比べて臨界表面張力が1mN/m以上異なる樹脂のことである。ここで熱可塑性樹脂(ロ)と熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)との臨界表面張力の差が1mN/m以上の場合、熱可塑性樹脂(ロ)と熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)とを溶融混練すると熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とがミクロ相分離し海島構造を形成する。
すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とを溶融混合することにより海成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に島成分である熱可塑性樹脂(ロ)が分散した未延伸フィルムが得られ、この未延伸フィルムを延伸することにより熱可塑性樹脂(ロ)で形成された突起物を表面上に有するフィルムが得られる。
このように熱可塑性樹脂(ロ)によって形成されたフィルム表面上の突起物は、貼り合わされたフィルム面とプリント配線基板との接着を妨げる効果がある。これは、フィルム表面上の突起物によりプリント配線基板とフィルムとの間に隙間が生じ、フィルムとプリント配線基板との密着性が緩和されるため剥離性が良くなることによる。
ところが、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の臨界表面張力と熱可塑性樹脂(ロ)の臨界表面張力との差が1mN/m未満の場合は、両樹脂の相溶性がよくなるため熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とがミクロ相分離して海島構造を形成しなくなる。よって溶融混練して得られる未延伸フィルムを延伸してもフィルム表面上に突起物が形成されないため剥離性が悪くなる。
一方、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)の臨界表面張力の差が20mN/mを越えて大きくなると、フィルム延伸時にかかる張力に耐え切れず、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)との界面が剥離する結果、フィルム表面に突起物が形成されなくなる。
以上の観点から、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)の臨界表面張力の差は1〜20mN/mであることが必要で、1〜10mN/mがより好ましく、1〜5mN/mが更に好ましい。
本発明において、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の臨界表面張力に対して1mN/m以上異なる臨界表面張力を有する熱可塑性樹脂(ロ)として好ましく用いることができる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂(臨界表面張力が33mN/m)、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、アモルファスナイロン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、マレイミド系共重合体樹脂、フッ素系樹脂などがある。
その中でも、熱可塑性樹脂(ロ)としては、上記の臨海表面張力、後述するガラス転移温度、融点、製膜時の熱処理温度等の点からスチレンマレイミド系樹脂が好ましい。
スチレンマレイミド系樹脂は、スチレンとスチレンに共重合可能なモノマーであるマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸とを共重合して得られるガラス転移温度の高いマレイミドがスチレン主鎖中に導入された熱可塑性樹脂である。
本発明で使用する熱可塑性樹脂(ロ)は単独重合体であっても上記のスチレンマレイミド系樹脂のように共重合体であってもよく、さらには2種以上の熱可塑性樹脂(ロ)を併用してもよいが、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と溶融押出しを行う時にそれ自身分解しにくく、また熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と反応しにくいものが好ましい。
ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン構造を基本構成単位として含む熱可塑性樹脂を指し、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アイソタクティックポリスチレン等のホモポリマーのほか、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂、例えば耐衝撃性ポリスチレン樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂等、更にはこれらのポリスチレン系樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂例えばポリフェニレンエーテルとの混合物を含む。
ポリメチルペンテン系樹脂とは、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が4−メチルペンテン−1から誘導される単位を有するポリマーであり、他の成分としてはエチレン単位、プロピレン単位、ブテン−1単位、3−メチルブテン−1等からの誘導単位が例示される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン等のホモポリマー以外に、その他の成分をグラフトあるいはブロック共重合した改質樹脂も含まれる。
ポリプロピレン系樹脂の存在状態としては、上記のポリプロピレン系樹脂を前記ポリメチルペンテンとは別に混合して用いてもよいし、ポリメチルペンテン系樹脂中にプロピレン単位を共重合成分として導入したものを用いても構わない。
本発明に用いる熱可塑性樹脂(ロ)のガラス転移温度は、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のガラス転移温度より高い方が好ましい。
溶融混練して得た未延伸フィルムを延伸する際に加温するが、熱可塑性樹脂(ロ)のガラス転移温度が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のガラス転移温度よりも低いと、延伸する際に熱可塑性樹脂(ロ)が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と一緒に延びてしまうため熱可塑性樹脂(ロ)が結晶化されずフィルム上で突起を形成するための核となりにくい。即ち、海成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中で熱可塑性樹脂(ロ)が島成分を形成しにくくなり、ポリエステルフィルム表面に突起物が発生しにくくなる。
一方、熱可塑性樹脂(ロ)のガラス転移温度が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のそれより高いと、延伸する際に加温しても熱可塑性樹脂(ロ)は熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)よりもガラス転移温度が高いため延伸時に熱可塑性樹脂(イ)といっしょに伸びにくくなることから、フィルム表面上で突起物を形成するための核となりやすくなる。即ち、海成分である熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中で熱可塑性樹脂(ロ)が島成分を形成しやすくなり、ポリエステルフィルム表面に突起物を形成しやすくなる。
尚、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とのガラス転移温度の差は10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であれば一層好ましい。
また、熱可塑性樹脂(ロ)の融点は、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の融点よりも低く、かつ製膜時にフィルムを熱固定して配向させる際の温度(熱処理温度)よりも高いことが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とを溶融混練後、溶融押出しによりフィルム化するが、熱可塑性樹脂(ロ)の融点が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の融点より高い場合、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の融点付近の温度で溶融押出しを行っても熱可塑性熱可塑性樹脂(ロ)が溶融していないため溶融押出し時に樹脂が均一に溶融混練したフィルムが得られなくなるからである。
一方、本発明に使用する熱可塑性樹脂(ロ)の温度280℃、剪断速度103sec-1における溶融粘度は30〜5000Pa・sの範囲にあることが好ましく、100〜3000Pa・sの範囲であれば尚好ましい。溶融粘度が30Pa・s以下の場合は、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のマトリックス中に分散する熱可塑性樹脂(ロ)の粒子径が小さくなるためフィルムを延伸してもフィルム表面上に隆起した突起が十分に形成されにくくなる。
一方、溶融粘度が5000Pa・s以上の場合は粘度が高いため熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のマトリックス中で十分に突起が形成されるが、熱可塑性樹脂(ロ)の粒子が大きくなりすぎてフィルム製膜時の操業性が悪化する。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムにおいては、前記のように熱可塑性樹脂(ロ)が島成分となって海成分の熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に分散されるが、熱可塑性樹脂(ロ)の形状はできるだけ球状であることが好ましく、平均分散粒子径が0.005〜5.0μmの範囲、特には0.1〜3.0μmの範囲にあることが好ましい。
本発明において使用する熱可塑性樹脂(ロ)は、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)との合計中に1〜10質量%の範囲で含まれるが3〜8質量%の範囲がより好ましい。熱可塑性樹脂(ロ)の量が1質量%未満では、フィルム表面での突起状物の形成が不十分となり、その結果後述する空気抜け速度が遅くなり、プリント配線基板とポリエステルフィルムとの剥離性が劣るため好ましくない。熱可塑性樹脂(ロ)をその量が10質量%を超えて配合すると、ダイスから押出されたポリマーの端部が脈動してキャスティングドラム上での着地位置が安定しなくなったりして操業性が悪化するため好ましくない。
一方、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に熱可塑性樹脂(ロ)が1種または複数種類で存在することでフィルム表面に突起物が形成されるため本発明の剥離性効果が得られるが、ポリエステルフィルム原料中に不活性無機粒子(ハ)を0.01〜3質量%、好ましくは0.05〜2質量%の範囲で、上記熱可塑性樹脂(ロ)と共に含有させることにより、プリント配線基板とポリエステルフィルムとの剥離効果がより発揮される。
ポリエステルフィルム原料中で不活性無機粒子(ハ)を熱可塑性樹脂(ロ)と共存させることにより、プリント配線基板とポリエステルフィルムとの剥離効果が向上する理由としては、不活性無機粒子(ハ)が溶融状態の熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の中で核となりフィルム表面上に微細な突起物を多数形成するためである。即ち、不活性無機粒子(ハ)を熱可塑性樹脂(ロ)と共存させることで、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とがミクロ相分離することにより形成されるフィルム表面上の突起物と熱可塑性ポリエステル(イ)中で二次凝集した不活性無機粒子(ハ)が分散することによりフィルム表面に形成される突起物とが足し合わさることにより、全体としてより多くの突起物が形成されることになるため、プリント配線基板とフィルムとの剥離効果がより顕著に発揮されることになる。
本発明の剥離性フィルムに用いられる不活性無機粒子(ハ)は、平均粒子径が0.2〜4.3μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜4.1μmの範囲、さらにより好ましくは、2.5〜4.0μmの範囲である。不活性無機粒子(ハ)の平均粒子径が0.2μm未満では、プリント配線基板とポリエステルフィルムとの剥離性を付与させる微細な突起を形成するための核として作用しないため不活性無機粒子の添加の効果がない。また、不活性無機粒子(ハ)の平均粒子径が4.3μmを超える場合は、かかる粒子がポリエステル中で凝集して粗大粒子を形成する結果、ポリエステルフィルム製造時の溶融押出工程においてスクリュー内に設けられているフィルター(通常ポリエステルフィルム製造の場合、15〜40μmメッシュ)で粗大粒子が捕集されるため、スクリュー内圧の昇圧速度が著しく速まり、スクリュー内圧を通常圧に戻すためのフィルター交換頻度が上がるため操業上好ましくない。さらには、不活性無機粒子(ハ)の平均粒子径が4.3μmを超える場合、フィルターを通過した無機粒子の二次凝集物や粒子径の大きな一次粒子がフィルムに存在することが目視確認され、フィルムとしての製品品位が劣るために好ましくない。
また、剥離性ポリエステルフィルムに含まれる平均粒子径が0.2〜4.3μmの不活性無機粒子(ハ)の配合量が3質量%を超える場合には、ポリエステルフィルム製造時の溶融押出工程において不活性無機粒子(ハ)の二次凝集物がフィルターで捕集されるためスクリュー内圧の昇圧速度が著しく速まるため、フィルター交換頻繁が上がり、また、フィルム延伸時の延伸切断の発生頻度も高まることに加えて、フィルム端部をトリミングする際のカッター刃の摩耗も早くなるといった操業性が著しく悪化する問題が生じ操業上好ましくない。その上熱プレス時に、フィルム表面上の二次凝集物あるいはフィルム表面から欠落した二次凝集物がプリント配線基板の導体回路と接触して傷が入り商品価値を低下させることにつながり好ましくない。その上、プリント配線基板のプレス工程で、フィルムから無機粒子が欠落し、これが原因となって、プリント配線基板に傷が入り、商品価値を低下させることにつながり好ましくない。
不活性無機粒子(ハ)としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ゼオライト、カオリン、クレー、タルク、マイカ等が用いられる。中でも特に酸化ケイ素(シリカ)は粒径分布、製膜性に優れ、安価なことから好適である。さらには、2種類以上の無機粒子を併用しても構わない。しかし、不活性無機粒子(ハ)は特にこれらに限定されるものではなく、粒子径が重要なファクターである。
不活性無機粒子(ハ)は、熱可塑性樹脂(ロ)との相溶性を良くし、ボイドの発生を防止するために、あらかじめ表面処理を行うことも可能である。不活性無機粒子の表面処理方法としては、シランカップリング剤による処理、アクリル酸、アクリル酸エステルなどアクリル系化合物を添着させる処理などの化学的処理、およびコロナ処理などの物理的処理のどちらも可能である。
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に不活性無機粒子(ハ)を添加する時期は、特に制限はないが、エステル化工程が終了してから実質的重縮合に入る任意の時点に添加すると、不活性無機粒子の分散性がよく、好適である。また、従来公知のミキサー等によって熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に直接不活性無機粒子(ハ)を添加しミキシングしてもよいが、該不活性無機粒子(ハ)が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中で十分均一に分散されている必要がある。
不活性無機粒子(ハ)を該樹脂中に十分分散させるには、撹拌機、サンドミル、高圧分散機等公知の機械を使用して、十分一次粒子まで解砕しておくことが好ましい。また粒子が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中で凝集しないような従来公知の重合方法の採用や分散助剤の添加が好ましい。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムは、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)からなる単層フィルム、あるいは熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)と不活性無機粒子(ハ)からなる単層フィルムであってもプリント配線基板に対して優れた剥離性を有するが、上記フィルム層と他のポリマー層とを積層した構造を有していてもプリント配線基板に対して優れた剥離性を有する。
剥離性ポリエステルフィルムを積層フィルムにすると、単層フィルムに比べてフィルムの押出し、製膜時の操業性の向上、コストダウン等につながるので好ましい。
ここで、積層フィルム製造時に使用する前記「他のポリマー」としては、得られる剥離性ポリエステルフィルムの機械的性質や製造のしやすさから、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)の中から選ばれるPET、PBT、PEN、PCT、PLAなどの熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムは、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)からなる樹脂層(II)を内層として、この樹脂層(II)の両側に、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とからなる樹脂層(I)を外層として配した三層構造とすることが好ましい。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とからなる第一の樹脂層(I)/熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)からなる樹脂層(II)/熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とからなる第二の樹脂層(I)で構成される三層フィルムである。また、この三層フィルムの各樹脂層が質量比で合計100となるよう、第一の樹脂層(I)が5〜30、樹脂層(II)が90〜40、第二の樹脂層(I)が5〜30の割合で構成されることが好ましい。三層フィルムとすることでフィルムの押出し、製膜時の操業性の向上、コストダウン等につながるからである。
尚、三層フィルムの樹脂層(I)の質量比が5未満の場合、フィルム表面上の突起物の形状、大きさ、突起数が不十分となるため空気抜け速度が遅くなり剥離性が劣ってしまい好ましくない。
また、本発明の剥離性ポリエステルフィルムには、本発明の効果を阻害しない範囲において、不活性無機粒子(ハ)の他に公知の有機系滑剤、潤滑剤、熱劣化防止剤、耐光剤、難燃剤、制電剤、着色剤などを含有していてもかまわない。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムの全層厚みは、15μm以上であることが好ましく、25〜50μmがより好ましい。フィルム厚が15μm未満の場合はフィルムが薄いためその剛性が低くなる。よって、熱プレスの後にプリント配線基板に貼り付けたポリエステルフィルムを剥がす際にフィルムにかかった張力により剥がされた後のフィルムにシワが発生する他、フィルム巻き取り張力に負けてフィルムが破断することがある。
本発明における剥離性ポリエステルフィルム表面層の中心線平均粗さSRa(μm)は0.15〜1.0μmが好ましく、更に0.3〜0.6μmが好ましい。SRaが0.15μm未満ではフィルム表面に突起物が得られるもののその突起物は剥離に必要な形状または大きさではないため目的とする剥離性が得られない。SRaが1.0μmを越えた場合は、フィルム表面に形成される突起物が大きくなりすぎた状態である。よって、不活性無機粒子を使用してフィルム表面上に突起物を形成させた場合においてSRaが1.0μmを越えると、熱プレス時にフィルム表面に形成された粗大な突起物である不活性無機粒子が脱落して熱プレス板に付着する等の問題が起こることがある。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムの表面層における高さ0.25μm以上の突起の数SPc(個/0.1mm2 )は、5000〜30000であることが好ましく、10000〜25000であることが一層好ましい。SPcが5000未満ではフィルム表面に突起物が形成されるものの剥離に必要な突起数に満たないため目的とする剥離性が得られない。SPcが30000を越えるとフィルム表面に突起物が形成されるものの突起数が多くなりすぎる。よって、熱プレス時にフィルム表面に多数形成された突起物である不活性無機粒子が脱落して熱プレス板に付着する等の問題が起こることがある。
このようにSRaによりフィルム表面の突起物の形状や大きさが、SPcによりフィルム表面の突起数が判断できるためプリント配線基板に貼り付けたフィルムを剥がす際の剥離性の目安となる。しかし、突起物が大きい場合は、いくらSRaおよびSPcが高くてもフィルム表面から突起物が欠落してプリント配線基板表面に混入することがあり、また突起が偏在すると、剥離張力が偏り剥離性が劣ることになるため、SRaやSPcは剥離性ポリエステルフィルムとしての適正を判断する指標として用いにくい。
そのため、SRa及びSPcは、剥離性の目安となるが、最終的にはプリント配線基板の製造工程のキャリアフィルムとして使用することを想定し、下記測定方法による空気抜け時間を指標とすることが必要である。
空気抜け時間の測定は、図1に示す測定装置を使用して行う。空気抜け時間は1.5秒以下であることが好ましく、0.6秒以下であることがより好ましく、0.4秒以下であることが更に好ましい。空気抜け時間が1.5秒を超えると、プリント配線基板のプレス工程を経てプリント配線基板からポリエステルフィルムを剥がす際に、プリント配線基板との密着性が良いため、プリント配線基板から容易に剥がれなくなる。そのため、フィルムをプリント配線基板から剥がす際の張力によってフィルムにシワが発生し、更にフィルムを巻き取る際の張力に負けて剥がされた後のフィルムが破断してしまう。また、巻き取り張力を弱めて巻き取っても、高圧加熱プレス部へシワが伝播することがあり、製品品位に影響して不良率が上がる傾向が高くなる。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)、または熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)と不活性無機粒子(ハ)とを単軸あるいは二軸押出機で熱可塑性樹脂(イ)の融点〜(融点+40℃)の温度範囲で溶融混合して熱可塑性樹脂(ロ)と必要に応じて不活性無機粒子(ハ)とを熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に分散させる。
得られた熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)または熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)と不活性無機粒子(ハ)は、ステンレス鋼繊維でできたウェブを焼結圧縮成形した絶対濾過径20〜30μmのフィルターを介して単独で、あるいは積層させる場合は他の積層させるポリマーと共に、Tダイやサーキュラーダイから膜状に溶融押出し、静電印加キャスト法、エアーナイフ法等の公知の方法により30℃以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させて急冷し、ガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化して所望の厚さの未延伸シートを得る。
このようにして得られた未延伸フィルムは表面上は比較的滑らかであるが、延伸することによりフィルム表面上に突起物が形成される。熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に添加された熱可塑性樹脂(ロ)は、単軸あるいは二軸押出機による溶融混練時にスクリュー中で剪断されて熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)中に1〜30μmの大きさで分散されているが、未延伸フィルムを延伸することにより、分散している熱可塑性樹脂(ロ)がフィルム表面上で突起物を形成するためである。
二軸延伸方法としては、テンター式同時二軸機により縦方向と横方向に同時に延伸する同時二軸延伸方法、ロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式横延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸方法等を用いることができる。同じ樹脂を用いて、同じ面積倍率で逐次二軸延伸したフィルムと同時二軸延伸したフィルムとを比較すると、逐次二軸延伸の方が空気抜け時間が格段に長くなるため、同時二軸延伸方法がより好適である。同時二軸延伸においては、縦方向と横方向に同時に延伸するため、フィルム表面の突起の生成が効率的に行われ、結果として同時二軸延伸の方が空気抜け時間が短くなると考えられるからである。
一方、逐次二軸延伸では、第1段目の延伸でフィルム表面上に突起が形成されるため、第2段目以降の延伸ではフィルム表面にはほとんど突起が形成されず、フィルム単位あたりの突起個数は第2段目以降の面積倍率に逆比例する形で減少する。
また、未延伸フィルムの延伸温度は熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のガラス転移温度以上であることが好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のガラス転移温度より低い温度では熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)が溶融しにくくなるためフィルムの延伸性が悪くなるからである。
熱可塑性樹脂(ロ)のガラス転移温度が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のガラス転移温度よりも高い場合には、未延伸フィルムの延伸温度は、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)のガラス転移温度以上、かつ、熱可塑性樹脂(ロ)のガラス転移温度以下である範囲が好ましい。熱可塑性樹脂(ロ)のガラス転移温度より高い温度では、フィルム延伸の際に熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)とが一緒に延びてしまい、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)である海成分中で熱可塑性樹脂(ロ)が島成分となりにくく、突起物が形成されにくいからである。
延伸倍率は、一軸延伸の場合は1.5倍以上が好ましく、縦横二軸延伸の場合も、縦横に各々1.5倍以上が好ましく、面積倍率で通常3倍以上、好ましくは面積倍率にして6〜20倍、より好ましくは、6.5〜13倍の範囲である。面積倍率が3倍未満の場合、空気抜け時間の短いフィルムを得ることは困難である。
さらに、延伸後のフィルムはテンター内で縦及び横方向に弛緩率を0〜10%として150℃〜(熱可塑性樹脂(イ)の融点−5℃)以下で数秒間熱処理した後、室温まで冷却し、20〜200m/分の速度で巻き取って所望の厚さのフィルムを得る。
延伸後の熱処理は、フィルムの熱収縮率を小さくするために必要な工程である。熱処理方法としては、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等を用いることができるが、均一に精度良く加熱するためには熱風を吹き付ける方法が好ましい。
二軸延伸フィルムの製造においては、テンター内でクリップで把持しているフィルム端部を延伸処理後に切断(耳トリミング)しているが、この耳トリミング部をスクラップ処理せずに、リサイクルのために本発明にて使用する単軸押出機または二軸押出機に再投入してフィルム原料として使用しても構わない。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムは、表面に公知のサンドマット処理やエンボス加工を施すことによりフィルム表面に突起物を付与させてもよいし、あるいは、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を公知の方法によりフィルム表面にコーティング処理してもよい。
本発明の剥離性ポリエステルフィルムは、プリント配線基板の多数の導体層と絶縁層からなる積層体を積層させるビルドアップ工法における剥離性に優れるキャリアフィルムとして使用される。
プリント配線基板の多数の導体層と絶縁層を積層させるビルドアップ工法とは、銅箔からなる導体とガラスにエポキシ樹脂等を含浸したプリプレグを加熱加圧して積層する方法、エポキシ、ポリイミド等の樹脂付きの銅箔を加熱加圧して積層する方法、エポキシ、ポリイミド等の樹脂液をフィルム上にコーティングした絶縁樹脂体の上に銅メッキしたプリプレグを加熱加圧して積層する方法等が挙げられるが、いずれの方法のキャリアフィルムとして使用してもよい。
次に、本発明を実施例、比較例、参考例により具体的に説明する。なお、実施例、比較例、参考例で用いた各種物性の測定方法は以下の通りである。
(1)ガラス転移点
試料6〜8mgをアルミニウム製のDSCサンプルパンに入れ、Perkin Elmer社製DSC(pyris1)を使用し、窒素中において280℃で5分間溶融保持し、−55℃まで急冷固化した後、昇温速度20℃/分で280℃まで昇温した。この時観測されるガラス転移温度をその試料のガラス転移温度とした。
(2)溶融粘度
チップ状の試料を130℃で24時間減圧乾燥して水分を除き、フローテスター(島津製作所製、型式CFT-500)を用いて、280℃、3分間保持後の溶融粘度を測定し、剪断速度1000s-1における溶融粘度(Pa・s)をその試料の溶融粘度とした。
(3)中心線平均粗さ SRa(μm)及び突起数 SPc(個/0.1mm2
小坂研究所社製の表面粗さ測定器SE−3AK型を使用して試料フィルムの中心線平均粗さ及び突起数測定した。触針径2μmR、触針圧10mg、高さ倍率50000倍とした。
(4)各層厚み
電子顕微鏡(SEM)により試料フィルムの断面観察を行い、各層の厚みを測定した。
(5)無機または有機粒子の粒子径
島津製作所社製のレーザー回折散乱式粒子径測定機SALD−2000により測定した。
(6)空気抜け時間
図1に示す測定装置を使用した。台1の中央部に円形のガラス板2を取り付け、取り付けたガラス板2の外周に沿って空気溝1(X)及び空気孔1(Y)を形成させた。次に、その空気孔1(Y)と真空ポンプ5をコック4のついたホース3で接続し、台1の上部に、ガラス板2を覆い隠す大きさの試料フィルム6を粘着テープ7で固定し、真空ポンプ5を駆動させ、コック4を開き、ガラス板2の外周に干渉縞が出現してからガラス板2全体に広がり、最終的にその移動が止まるまでの時間(秒)を測定し、それを空気抜け時間とした。
(7)フィルター昇圧速度
ギヤポンプを具備したスクリュー径14mmの縦方向直下型短軸スクリュー(L/D=15)に濾過面積10mmのブレーカープレートにステンレス鋼繊維でできたウェブを焼結圧縮成形した絶対濾過径20μm(日本精線社製ナスロン)のフィルターを固定して取り付け、280℃で1.0kg/hrの押出速度で試料樹脂を溶融押出して1時間後の押出圧力を測定して昇圧速度(MPa/hr)を求めた。連続生産を想定した場合、昇圧速度が3.0MPa/hrを超える場合は、フィルターの昇圧速度が速すぎて製造が安定しなくなるため剥離性ポリエステルフィルムの製造原料として使用できない。1.5〜3.0MPa/hrは、短期間の生産はできるが、好ましくは1.5MPa/hr以下である。
(8)プリント配線基板モデルテスト1
直径約0.1mmのビアホールを5個/cm2形成した銅箔(400mm×400mm)とガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸したプリプレグ(400mm×400mm)とを銅箔/プリプレグ/銅箔/プリプレグ/銅箔で積層した積層板を準備し、最外層である銅箔の上と下の両面に試料フィルム(450mm×450mm)を挟み込んで固定し、さらにアルミ板(420mm×420mm)で挟んで油圧プレス機に導入した。次に105℃とした油圧プレス機で2.5MPaの圧力で10分間プレス処理を行い、油圧プレス機から取り外した。冷却後、アルミ板を取り外した後、試料フィルムを剥がし、試料フィルムの剥離強力を測定した。
剥離強力が
0.07N/cm未満であるものを○
0.07N/cm〜0.3N/cmであるものを△
0.3N/cmを超えるものを×とした。
剥離強力が0.3N/cmを超えると、試料フィルムが積層板から剥がれる際に抵抗を受けて容易に剥がれないため剥離性ポリエステルフィルムとして使用できない。
(9)プリント配線基板モデルテスト2
プリント配線基板モデルテスト1と同様のテストにおいて10分間のプレス処理後、油圧プレスを解放した。この際、試料フィルムの端部を10N/cmで引っ張りながら油圧プレスを解放し、フィルムが破断することなく解放できれば○、フィルムが破断すれば×とした。
(10)欠落粒子測定
プリント配線基板モデルテスト1で得られた積層板の積層板表面1cm×1cm当たりに付着した試料フィルム表面の無機粒子からなる突起物の欠落数を顕微鏡観察した。欠落数の計測を10点行った結果、無機粒子の欠落が確認された点数が1点以下の場合を○、2点以上確認された場合を×とした。
(11)極限粘度
フェノール/テトラクロルエタン=1/1(質量比)の混合溶媒を用いて、20℃で測定した。
(12)融点
試料6〜8mgをアルミニウム製のDSCサンプルパンに入れ、Perkin Elmer社製DSC(pyris1)を使用し、窒素中において昇温速度20℃/分で昇温した時に得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。
(13)フィルム生産状況
実施例、比較例、参考例に示した二軸延伸積層ポリエステルフィルムの連続製造を一週間行い、問題点の抽出を行った。
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)について説明する。
(ポリエステルA−1の製造)
2ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及び/またはそのオリゴマーの存在するエステル化反応装置にテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸モル比1.6 )を連続的に供給し、250℃常圧下で滞留時間6時間にてエステル化反応を行い、平均重合度7.0 のエステル化生成物を連続的に得た。これを100 重量部重合槽に移送し、280℃に加熱し、ポリエステルを構成する全酸成分1モルに対し、酢酸マグネシウムを2×10-4モル添加し、触媒として酸成分1モルに対し、三酸化アンチモンを2 ×10-4モル添加し、減圧を開始し、重縮合反応させた結果、極限粘度が0.69(dl/g)のポリエステルA−1を得た。得られたポリエステルA−1のフィルター昇圧速度は0MPa/hrで全く昇圧しなかった。ポリエステルA−1の物性を表1に示す。
(ポリエステルA−2の製造)
2ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及び/またはそのオリゴマーの存在するエステル化反応装置にテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸モル比1.6 )を連続的に供給し、250℃常圧下で滞留時間6時間にてエステル化反応を行い、平均重合度7.0 のエステル化生成物を連続的に得た。これを100 重量部重合槽に移送し、280℃に加熱し、目開き30μmのフィルターで濾過した平均粒子径2.7μmのシリカ(富士シリシア社製サイリシア310P)のエチレングリコール分散液(濃度5.5質量%)を、生成ポリエステルに対して実質上2.0質量%となるように加え、さらにポリエステルを構成する全酸成分1モルに対し、触媒として、三酸化アンチモンを2 ×10-4モル添加し、減圧を開始し、重縮合反応させた結果、極限粘度が0.64(dl/g)のポリエステルA−2を得た。得られたポリエステルA−2のフィルター昇圧速度は0.6MPa/hrであった。
(ポリエステルA−3の製造)
ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及び/またはそのオリゴマーの存在するエステル化反応装置にテレフタル酸とエチレングリコールのスラリー(エチレングリコール/テレフタル酸モル比1.6 )を連続的に供給し、250℃常圧下で滞留時間6時間にてエステル化反応を行い、平均重合度7.0 のエステル化生成物を連続的に得た。これを100 重量部重合槽に移送し、280℃に加熱し、目開き30μmのフィルターで濾過した平均粒子径3.9μmのシリカ(富士シリシア社製サイリシア550)のエチレングリコール分散液(濃度5.5質量%)を、生成ポリエステルに対して実質上0.3質量%となるように加え、さらにポリエステルを構成する全酸成分1モルに対し、触媒として、三酸化アンチモンを2.0 ×10-4モル添加し、減圧を開始し、重縮合反応させた結果、極限粘度が0.65(dl/g)のポリエステルA−3を得た。得られたポリエステルA−3の昇圧速度は0.3MPa/hrであった。
(ポリエステルA−4〜A−10の製造)
シリカの添加量、平均粒径を表1に示したものに変更した以外はポリエステルA−3と同様の処方により極限粘度0.64または0.66(dl/g)のポリエステルA−4〜A−10を得た。得られたポリエステルの昇圧速度を表1に示した。
(ポリエステルA−11の製造)
シリカの代わりに平均粒径4.0μmのゼオライト(水澤化学社製JC−40)を生成ポリエステルに対して実質上2.0質量%添加した以外はポリエステルA−3と同様の処方により極限粘度0.65(dl/g)のポリエステルA−11を得た。得られたポリエステルA−11の昇圧速度は1.2MPa/hrであった。
(ポリエステルA−12の製造)
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部とを、エステル交換反応触媒として酢酸マンガンを用いて150℃から240℃に徐々に昇温しながら反応させ、その後トリメチルホスフェートを添加して実質的にエステル交換反応を終了させた後、295℃に加熱し、目開き30μmのフィルターで濾過した平均粒子径3.9μmのシリカ(富士シリシア社製サイリシア310P)のエチレングリコール分散液(濃度5.5質量%)を、生成ポリエステルに対して実質上0.3質量%となるように加え、さらにポリエステルを構成する全酸成分1モルに対し、触媒として、三酸化アンチモンを2 ×10-4モル添加し、減圧を開始し、重縮合反応させた結果、極限粘度が0.70(dl/g)のポリエステルA−12を得た。得られたポリエステルA−12のフィルター昇圧速度は0.4MPa/hrであった。
(ポリエステルA−13)
熱可塑性ポリエステル樹脂として、極限粘度が3.56(dl/g)のポリ乳酸(ネイチャーワークス社製 4032D)を使用した。
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)A−1〜A−13の特性を表1に示す。
Figure 2010046964
次に熱可塑性樹脂(ロ)については、市販品として表2記載のものを使用した。
Figure 2010046964
(マレイミド系共重合体樹脂の合成)
スチレン約100部、無水マレイン酸約67部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部、メチルエチルケトン(MEK)300部を窒素雰囲気中80℃で10時間反応させた。得られた重合体にトリエチルアミン1.2部、アニリン46.2部を加え、130℃で6時間反応を行ってマレイミド系共重合体樹脂(C−1)を得た。他のマレイミド系共重合体樹脂も同様に、表3の組成となるように調製した。C−3はC−1より重合時間を長くすることで溶融粘度を高くした。この結果を表3に示す。
Figure 2010046964
(実施例1〜9)
乾燥により水分率を20ppm以下とした熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)である(A−1)と熱可塑性樹脂(ロ)である(B−1)〜(B−9)の各々を表4に示す割合で配合し、押出機(スクリュー径150mm)に投入し280℃で溶融押出した。一方、乾燥により水分率を20ppm以下とした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−1)を別の押出機(スクリュー径220mm)に投入し280℃で溶融押出した。2台の押出機で溶融した樹脂をマルチマニホールドダイス中で重ね合わせて、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)との混合樹脂からなる樹脂層(I)を外層に熱可塑性ポリエステル樹脂(A−1)からなる樹脂層(II)を内層に設けてなる三層フィルムが、表4記載の構成比で各層構成され且つ厚さ250μmとなるようTダイからシート状に押出し、表面温度25℃の冷却ドラム上にエアノズル法により密着させて冷却し、未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機を用い、延伸温度92℃にて縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍の延伸条件で同時二軸延伸した後、温度240℃で5秒間熱処理を施し、さらに温度240℃の状態のまま横方向の弛緩率を5%とした後、80℃で冷却して巻き取り、厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
Figure 2010046964
(実施例10〜12)
熱可塑性樹脂(ロ)を表4記載の樹脂に変更した以外は実施例1と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(実施例13〜15)
熱可塑性樹脂(ロ)を表4記載の配合量に変更した以外は実施例3と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(実施例16)
乾燥により水分率を20ppm以下とした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−1)と熱可塑性樹脂(B−3)とを表4に示す割合で配合し、押出機(スクリュー径150mm)に投入し280℃で溶融押出しした。一方、乾燥により水分率を20ppm以下とした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−1)を別の押出機(スクリュー径220mm)に投入し280℃で溶融押出した。2台の押出機で溶融した樹脂をマルチマニホールドダイス中で重ね合わせて、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)との混合樹脂からなる樹脂層(I)を外層に熱可塑性ポリエステル樹脂(A−1)からなる樹脂層(II)を内層に設けてなる三層フィルムが、表4記載の構成比で各層構成され且つ厚さ350μmとなるようTダイからシート状に押出し、表面温度25℃の冷却ドラム上に静電印加キャスト法により密着させて冷却し、未延伸シートを得た。次にこの未延伸フィルムを縦延伸ロールで90℃の温度で3.5倍に延伸し、連続して横テンター延伸機で120℃の温度で4倍に延伸した。温度240℃で5秒間熱処理を施し、さらに温度240℃の状態のまま横方向の弛緩率を5%とした後、80℃で冷却して巻き取り、厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(実施例17〜23)
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)を表4記載の樹脂に変更した以外は実施例3と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(実施例24)
乾燥により水分率を100ppm以下とした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−12)と熱可塑性樹脂(B−3)とを表4に示す割合で配合し、押出機(スクリュー径150mm)に投入し300℃で溶融押出した。一方、乾燥により水分率を100ppm以下とした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−12)を別の押出機(スクリュー径220mm)に投入し300℃で溶融押出した。2台の押出機で溶融した樹脂をマルチマニホールドダイス中で重ね合わせて、熱可塑性ポリエステル樹脂(A−12)と熱可塑性樹脂(B−3)との混合樹脂からなる樹脂層(I)を外層に熱可塑性ポリエステル樹脂(A−12)からなる樹脂層(II)を内層に設けてなる三層フィルムが、表4記載の構成比で各層構成され且つ厚さ250μmとなるようTダイからシート状に押出し、表面温度25℃の冷却ドラム上にエアノズル法により密着させて冷却し、未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機を用い、延伸温度140℃にて縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍の延伸条件で同時二軸延伸した後、温度245℃で5秒間熱処理を施し、さらに温度245℃の状態のまま横方向の弛緩率を5%とした後、80℃で冷却して巻き取り、厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(実施例25)
乾燥により水分率を100ppm以下にした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−13)と熱可塑性樹脂(B−3)とを表4に示す割合で配合し、押出機(スクリュー径150mm)に投入し230℃で溶融押出した。一方、乾燥により水分率を100ppm以下とした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−13)を別の押出機(スクリュー径220mm)に投入し230℃で溶融押出した。2台の押出機で溶融した樹脂をマルチマニホールドダイス中で重ね合わせて、熱可塑性ポリエステル樹脂(A−13)と熱可塑性樹脂(B−3)との混合樹脂からなる樹脂層(I)を外層に熱可塑性ポリエステル樹脂(A−13)からなる樹脂層(II)を内層に設けてなる三層フィルムが、表4記載の構成比で各層構成され且つ厚さ250μmとなるようTダイからシート状に押出し、表面温度30℃の冷却ドラム上にエアノズル法により密着させて冷却し、未延伸シートを得た。次に得られた未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機を用い、延伸温度80℃にて縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍の延伸条件で同時二軸延伸した後、温度140℃で5秒間熱処理を施し、さらに温度140℃の状態のまま横方向の弛緩率を5%とした後、80℃で冷却して巻き取り、厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(実施例26、27)
樹脂層(I)/樹脂層(II)/樹脂層(I)からなる三層フィルムの構成比を表4記載の比率に変更した以外は実施例19と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(実施例28)
乾燥により水分率20ppm以下にした熱可塑性ポリエステル樹脂(A−4)と熱可塑性樹脂(B−3)とを表4に示す割合で配合し、押出機(スクリュー径150mm)に投入し280℃で溶融押出して、厚み250μmのポリエステルフィルムとして、Tダイからシート状に押し出し、表面温度25℃の冷却ドラム上にエアノズル法により密着させて冷却し、未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機を用い、延伸温度92℃にて縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍の延伸条件で同時二軸延伸した後、温度240℃で5秒間熱処理を施し、さらに温度240℃の状態のまま横方向の弛緩率を5%とした後、80℃で冷却して巻き取り、厚さ25μmの単層延伸フィルムを得た。得られたフィルムの特性値を表4に示す。
(実施例29)
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)を表4記載の樹脂に変更した以外は実施例28と同様にして厚さ25μmの単層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(参考例1、2)
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)を表4記載の樹脂に変更した以外は実施例3と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(比較例1、2)
熱可塑性樹脂(ロ)を表4記載の配合量に変更した以外は実施例3と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(比較例3)
熱可塑性樹脂(ロ)を表4記載の配合量に変更した以外は実施例17と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
(比較例4)
熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と熱可塑性樹脂(ロ)を表4記載の樹脂及び配合量に変更した以外は実施例26と同様にして厚さ25μmの三層延伸フィルムを得た。フィルムの特性値を表4に示す。
実施例1〜29では、本発明の剥離性ポリエステルフィルムを構成する熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)99〜90質量%と熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)とは非相溶の熱可塑性樹脂(ロ)1〜10質量%からなる樹脂層(I)を逐次または同時延伸して得たフィルムを使用した。そのため、フィルム表面上に微細な突起物が十分形成されていたため空気抜け時間が1.5秒以下となる剥離性に優れたフィルムを得ることができた。特に熱可塑性樹脂(ロ)として、ガラス転移温度の高いスチレンマレイミド系樹脂(B−3,C−1〜C−3)を使用した場合には、他の熱可塑性樹脂の使用時と比較してより剥離性の優れたフィルムを得ることができた。すなわち、熱可塑性樹脂(ロ)の変更以外は同条件で実施し比較した結果、スチレンマレイミド系樹脂(B−3,C−1〜C−3)を使用した場合は他の熱可塑性樹脂B−1、B−2、B−4〜B−9を使用した場合に比べて空気抜け時間が0.3秒以下となり、フィルム表面上へ微細な突起物を多数形成する効果がより高くなることを確認した。
参考例1は、フィルム表面上に突起物が十分形成されていたためプリント配線基板との剥離性には優れていたが、樹脂層(I)を構成する熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)に含まれる不活性無機粒子の割合が3質量%を超えていたために、連続操業中フィルターで不活性無機粒子が捕集されたため、フィルム製造時にスクリュー内圧が上昇した。スクリュー内圧を通常圧に戻すため連続操業運転を一端停止し、フィルター交換をしたため、生産コストが低下する問題が生じた。また、得られたフィルムをプリント配線基盤のキャリアフィルムとして銅箔に貼り合わせて熱プレスした後、キャリアフィルムを銅箔から剥離した時、積層板である銅箔表面に無機粒子の付着を確認した。
参考例2は、フィルム表面上に突起物が十分形成されていたためプリント配線基板との剥離性には優れていたが、樹脂層(I)を構成する熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)に含まれる不活性無機粒子の平均粒径が4.3μmを超えていたため、連続操業中フィルターで無機粒子が凝集した粗大粒子が捕集されたため、フィルム製造時にスクリュー内圧が上昇した。スクリュー内圧を通常圧に戻すため連続操業運転を一端停止し、フィルター交換をしたため生産コストが低下する問題が生じた。連続操業中のフィルター昇圧速度が速すぎるため生産上問題があった。
比較例1は、樹脂層(I)を構成する熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)と混合して使用する熱可塑性樹脂(ロ)の割合が1質量%以下であったために、フィルム表面上の突起物の形成が不十分となった。その結果、空気抜け速度が遅くなりプリント配線基板との剥離性に劣る結果となった。
比較例2は、樹脂層(I)を構成する熱可塑性樹脂(ロ)の割合が10質量%を超えていたため、ダイスから押出されるフィルムの端部がキャスティングドラム上に安定して着地せず操業性に問題があり、延伸フィルムを製造することができなかった。
比較例3は、樹脂層(I)が熱可塑性樹脂(ロ)を含んでいなかったため、フィルム表面上に突起物が十分形成されなかった。その結果、空気抜け速度が遅くなりプリント配線基板との剥離性に劣る結果となった。
比較例4は、樹脂層(I)の構成成分として熱可塑性樹脂(ロ)を用いる代わりに、フィルム表面上に突起物を形成させる目的で熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)に対して不活性無機粒子粒径4.5μmの無機粒子を9質量%添加した。ところが、無機粒子の平均粒径が4.3μmを超えており、且つ添加量も3質量%を超えていたため、連続操業中フィルターで無機粒子が凝集した粗大粒子がフィルター捕集され、その結果、スクリュー内圧の昇圧速度が異常に速くなった。また、延伸時にフィルムの切断が多発して、延伸操業性が悪くフィルム採取を断念した。
本発明に基づく空気抜け時間を測定するための装置の断面図である。
符号の説明
1 台
1(X) 空気溝
1(Y) 空気孔
2 ガラス平板
3 吸引ホース
4 コック
5 真空ポンプ
6 試料フィルム
7 粘着テープ

Claims (8)

  1. 金属貼り積層板製造時のプリプレグプレス工程において使用されるキャリアフィルムであって、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)99〜90質量%と熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)とは非相溶の熱可塑性樹脂(ロ)1〜10質量%からなる樹脂層(I)を片面または両面の表層に有する延伸フィルムであることを特徴とする剥離性ポリエステルフィルム。
  2. 熱可塑性樹脂(ロ)が熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)より高いガラス転移温度を有することを特徴とする請求項1記載の剥離性ポリエステルフィルム。
  3. 熱可塑性樹脂(ロ)がスチレンマレイミド樹脂である請求項1または2のいずれか1項に記載の剥離性ポリエステルフィルム。
  4. 樹脂層(I)側から測定した空気抜け時間が1.5秒以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の剥離性ポリエステルフィルム。
  5. 熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)が平均粒径0.2〜4.3μmの不活性無機粒子を0.01〜3質量%含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の剥離性ポリエステルフィルム。
  6. 剥離性ポリエステルフィルムが、第一の樹脂層(I)/熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)からなる樹脂層(II)/第二の樹脂層(I)で構成される三層フィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の剥離性ポリエステルフィルム。
  7. 三層フィルムの各フィルム層が質量比で合計100となるよう、第一の樹脂層(I)が5〜30、樹脂層(II)が90〜40、第二の樹脂層(I)が5〜30の割合で構成されることを特徴とする請求項6に記載の剥離性ポリエステルフィルム。
  8. 請求項1から7までのいずれか1項に記載の剥離性ポリエステルフィルムを製造するに際し、熱可塑性ポリエステル樹脂(イ)99〜90質量%と熱可塑性樹脂(ロ)1〜10質量%からなる樹脂層(I)を片面または両面の表層に有する未延伸フィルムを延伸することを特徴とする請求項1から7記載の剥離性ポリエステルフィルムの製造方法。
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