JP2010046618A - フッ素樹脂塗膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均粒子径が0.1〜0.5μm、融点が200℃超であるフッ素樹脂の微粒子を分散液全量に対して20〜70質量%、非イオン性界面活性剤を前記フッ素樹脂質量に対して2〜12質量%含有するフッ素樹脂水性分散液を、耐熱基材に塗布して塗布層を形成する工程と、前記塗布層を200℃〜前記フッ素樹脂の融点未満の温度で加熱処理して非イオン性界面活性剤含有量を対フッ素樹脂質量で2質量%未満に低減する工程と、前記塗布層を0.1〜100MPaの圧力で加圧処理する工程と、前記塗布層を前記フッ素樹脂の融点〜420℃の温度で加熱焼成して、耐熱基材上に前記フッ素樹脂の塗膜を形成する工程とを有することを特徴とするフッ素樹脂塗膜の形成方法。
【選択図】図1
Description
一般的に、フッ素樹脂水性分散液は、乳化重合法により製造される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという。)の場合には、以下の方法で水性分散液が製造される。
純水、過酸化物系重合開始剤、アニオン性のフッ素系界面活性剤、および重合安定剤であるパラフィンワックス等の混合物を撹拌しつつ、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)を単独で重合あるいは微量のコモノマーと共重合させることにより、平均粒子径が0.1〜0.5μmのPTFE微粒子が前記混合物中に分散したPTFE水性乳化液が得られる(非特許文献1参照)。
上記で得られたPTFE水性分散液は、これを耐熱基材に塗布し、耐熱基材上にPTFE微粒子の塗布層を形成した後、PTFE微粒子の塗布層を耐熱基材とともにPTFEの融点以上に加熱して、PTFE微粒子を焼成し、融着させて、PTFE塗膜付き耐熱基材の形で使用される。この様なPTFE塗膜を有する耐熱基材の具体例としては、金属板にフッ素樹脂塗膜を形成した、非粘着性の電気釜や鍋、ガラス繊維布等にPTFE塗膜が形成された耐熱ベルト等が挙げられる。
フッ素樹脂水性分散液を一定以上の膜厚で塗布して塗布層を形成すると、焼成後の塗膜にクラックやピンホールが発生し、塗膜の連続性を損ね、塗膜の性能や耐久性が低下する等、塗膜の品質が低下する。クラックが発生し始める厚みは、クラック限界膜厚(Critical Film Thickness。以下、CFTとよぶ)と呼ばれ、PTFEの場合、CFTは一般的に10〜12μmである。このため、通常は塗膜厚がCFT以下となるような塗布厚で耐熱基材上にPTFE水性分散液が塗布される。しかし用途により、フッ素樹脂塗膜の充分な耐久性を確保するためにかなり厚い膜厚が必要となる場合がある。例えば、厚さ100μmのフッ素樹脂塗膜が必要な場合があるが、このような膜厚を得るためには、所定の厚みになるまで数回以上の塗布と焼成を繰返す必要があった。このため、塗布回数が著しく増加し、加工コストが増加する問題があった。
[1]平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、融点が200℃超であるフッ素樹脂の微粒子を分散液全量に対して20〜70質量%、非イオン性界面活性剤を前記フッ素樹脂微粒子の全質量に対して2〜12質量%含有するフッ素樹脂水性分散液を、耐熱基材に塗布して、前記耐熱基材上に前記フッ素樹脂水性分散液の塗布層を形成する塗布層形成工程と、前記塗布層形成工程後の前記塗布層を200℃〜前記フッ素樹脂の融点未満の温度で加熱処理して前記塗布層中の非イオン性界面活性剤の含有量を前記フッ素樹脂微粒子の全質量に対して2質量%未満に低減する加熱工程と、前記加熱工程後の前記塗布層を加圧手段を用いて0.1〜100MPaの圧力で加圧処理する加圧工程と、前記加圧工程後の前記塗布層を前記フッ素樹脂の融点〜420℃の温度で加熱して、前記塗布層中のフッ素樹脂微粒子を焼成し、前記耐熱基材上に前記フッ素樹脂の塗膜を形成する焼成工程とを有することを特徴とするフッ素樹脂塗膜の形成方法。
R1−O−A−H (1)
(式中、R1は炭素数が6〜18であり、水素原子の10%以下がハロゲン原子で置換されていてもよい飽和アルキル基である。Oは酸素原子である。Aは5〜20個のオキシエチレン基、0〜3個のオキシプロピレン基、および0〜3個のオキシブチレン基より構成されるポリオキシアルキレン鎖である。)
[3]前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンあるいはテトラフルオロエチレン共重合体である上記[1]又は[2]に記載のフッ素樹脂塗膜の形成方法。
[5]前記塗膜の厚みが、1〜1000μmである上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のフッ素樹脂塗膜の形成方法。
また、本発明のフッ素樹脂塗膜の形成方法が有する加圧工程は、塗膜の表面の平滑化、外観の向上に寄与している。さらに、本発明のフッ素樹脂塗膜の形成方法によれば、塗布時にフッ素樹脂の凝集塊が付着して異物状の欠点となる頻度が低下し、製品歩留まりが向上する効果も得られる。
さらに、本発明のフッ素樹脂塗膜の形成方法においては、フッ素樹脂水性分散液塗布層中に存在する非イオン性界面活性剤を熱分解し除去した後に加圧処理を行なうことから、前記塗布層中のフッ素樹脂微粒子間の空隙体積を小さくすることができ、焼成時のフッ素樹脂の融着速度の増大に貢献できると考えられる。
本発明のフッ素樹脂塗膜の形成方法は、耐熱基材上に特定のフッ素樹脂水性分散液の塗布層を形成する塗布層形成工程と、前記塗布層を特定条件で加熱する加熱工程と、前記加熱後の塗布層を特定条件で加圧する加圧工程と、前記加圧後の塗布層を特定条件で焼成する焼成工程とを順に有する。
まず、本発明に用いる前記フッ素樹脂水性分散液について以下に説明する。
本発明に用いるフッ素樹脂水性分散液は、平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、融点が200℃超であるフッ素樹脂の微粒子を分散液全量に対して20〜70質量%、非イオン性界面活性剤を前記フッ素樹脂微粒子の全質量に対して2〜12質量%含有するものである。
なお、本明細書において用いるフッ素樹脂微粒子の平均粒子径は、フッ素樹脂微粒子を走査型電子顕微鏡を用いて1万倍で写真撮影し、微粒子100個について長軸と短軸の長さを測定し、各微粒子の長軸と短軸の長さの合計を2で除した値をその微粒子の粒子径として100個の平均値を求めたものである。
この様なフッ素樹脂のうちでも、本発明のフッ素樹脂塗膜の形成方法に用いるフッ素樹脂としては、PTFE又はTFE共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。TFE共重合体として具体的には、前記PFA、FEP、ETFE、TFE/VdF共重合体等が挙げられる。
なお、前記PTFEには、TFEの単独重合体のみでなく、実質的に溶融加工性を付与しない程度の微量のCTFE等のハロゲン化エチレン、HFP等のハロゲン化プロピレン、PAVE等のフルオロビニルエーテル、パーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、パーフルオロ(4−メチル−1,3−ジオキソール)等の、TFEと共重合しうる共重合成分に基づく重合単位を含むいわゆる変性PTFEも含まれる。
例えば、以下に重合方法を説明するTFEの重合中に重合開始剤の添加パターンを変えることにより内部層より外側層を高分子量のPTFEまたは低分子量のPTFEとしたもの、TFEの重合後期に共重合モノマー(CTFE、HFP等)を注入して、内部層をPTFE、外側層をTFE共重合体(TFE/CTFE共重合体、TEF/HFP共重合体)としたもの、TFEの重合初期にのみ共重合モノマー(CTFE、HFP等)を注入しその後はTFEを重合させ内部層をTFE/CTFE共重合体、TFE/HFP共重合体等、外側層をPTFEとしたもの、などをフッ素樹脂微粒子として本発明に用いることが可能である。
乳化重合法は、水性媒体中でビニル基を有する含フッ素モノマーを単独重合もしくは該含フッ素モノマーと他の原料モノマー(含フッ素であってもなくてもよい)とを共重合させてフッ素樹脂水性乳化液を得る重合法である。含フッ素モノマーの乳化重合法は、一般的には、水、重合開始剤、界面活性剤などの混合物を撹拌しつつ、この混合物に原料モノマーを導入して、含フッ素モノマーを単独重合もしくは他の原料モノマーと共重合することにより行われる。例えば、TFEの好適な乳化重合法としては、耐圧オートクレーブ中で、水、重合開始剤、アニオン性フッ素系界面活性剤、パラフィンワックス等の重合安定剤等の混合物を撹拌しつつ、TFEを加圧下で注入することにより重合する方法が挙げられる。
また、重合安定剤としては、パラフィンワックスなどが挙げられる。
R2−COOX (2)
(式中、R2は、1〜2個のエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数4〜9のアルキル基における水素原子の90〜100%がフッ素原子で置換されているポリフルオロアルキル基であり、Oは酸素原子であり、Xはアンモニウムイオンまたは水素イオンである。)
式(2)で表されるアニオン性フッ素系界面活性剤の具体例としては、C7F15COONH4、HC7F14COONH4、C6F13COONH4、HC6F12COONH4、C5F11COONH4、HC5F10COONH4、C4F9COONH4、C8F17COONH4、C4F9OC2F4OCF2COONH4、C2F5OC2F4OCF2COONH4、C2F5OC2F4OCF2COOH、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4、C2F5OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4、C4F9OCF(CF3)COONH4等が挙げられる。これらアニオン性フッ素系界面活性剤のうちでも、乳化重合プロセスの安定性の観点から、C7F15COONH4(パーフルオロオクタン酸アンモニウム)、C2F5OC2F4OCF2COONH4等が、好ましく用いられる。
上述の様にして乳化重合によりフッ素樹脂微粒子が、重合に用いた各種物質の混合液中に分散した状態のフッ素樹脂水性乳化液として得られる。フッ素樹脂微粒子の平均粒子径を本発明に用いる0.1〜0.5μmに調整するには、原料モノマーの種類にもよるが、アニオン性フッ素系界面活性剤の使用量や、重合時間の調節等の重合条件を適宜調整すればよい。
この様にして得られるフッ素樹脂水性乳化液をそのままの状態でフッ素樹脂水性分散液の調製に用いる。ただし、該フッ素樹脂水性乳化液におけるフッ素樹脂微粒子の含有量が、本発明に用いるフッ素樹脂水性分散液に求められるフッ素樹脂微粒子の含有量(分散液全量に対して20〜70質量%)より低い場合には、フッ素樹脂微粒子の含有量がフッ素樹脂水性分散液調製に使用可能な含有量となるように、フッ素樹脂水性乳化液を適当な方法で濃縮することが好ましい。
R1−O−A−H (1)
(式中、R1は炭素数が6〜18であり、水素原子の10%以下がハロゲン原子で置換されていてもよい飽和アルキル基である。Oは酸素原子である。Aは5〜20個のオキシエチレン基、0〜3個のオキシプロピレン基、および0〜3個のオキシブチレン基より構成されるポリオキシアルキレン鎖である。)
オキシプロピレン基やオキシブチレン基は、分岐したものであってもよいし、直鎖のものであってもよいが、分岐したものが好ましい。
なお、一般的には、非イオン性界面活性剤は一定の鎖長分布や異性体の混在する複数の分子の混合物であり、式(1)中の鎖長は複数の分子における平均鎖長を表わす。また、各数値は整数に限らない。
前記非イオン性界面活性剤の数平均分子量は、界面活性剤合成時の原料仕込みのモル数に従うが、水溶液としたのちにGPC(パーミエーションクロマトグラフィー)法や、超遠心法によって測定することができる。
C13H27-(OC2H4)10-OH、
C13H27-(OC2H4)9-OH、
C13H27-(OC2H4)8-OC3H6-OH、
C12−14H25−29-(OC2H4)9-OH、
C12H25-(OC2H4)10-OH、
C10H21CH(CH3)CH2-(OC2H4)9-OH、
C10H21CH(CH3)CH2-(OC2H4)8-OC3H6-OH、
C10H21CH(CH3)CH2-(OC2H4)8-OCH(CH3)CH2-OH、
C16H33-(OC2H4)10-OH、
HC(C5H11)(C7H15)-(OC2H4)9-OH、
C13H27-OCH(C2H5)CH2-(OC2H4)9-OH、
C13H27-OCH(C2H5)CH2-(OC2H4)8-OH、
CH3CH(CH3)CH2CH(CH2CH(CH3)CH2CH(CH3)2)−(OC2H4)9-OH、
などが挙げられる。市販品としては、ダウケミカル社製タージトール(登録商標)15Sシリーズ、ライオン社製ライオノール(登録商標)TDシリーズ、日本乳化剤社製ニューコールシリーズなどが挙げられる。
また、平均分子量10万〜200万のポリエチレンオキシド系増粘剤や、水溶性ポリウレタン系会合型増粘剤を任意成分として前記フッ素樹脂水性分散液に、フッ素樹脂微粒子の全質量に対して0.1〜5.0質量%程度含有させることにより、粘度が高くなり、厚く塗布しやすくなるほか、フッ素樹脂水性分散液の機械的安定性や保存安定性を改良することができる。
本発明のフッ素樹脂塗膜の形成方法は、(1)耐熱基材上に上記フッ素樹脂水性分散液の塗布層を形成する塗布層形成工程と、(2)前記塗布層を特定条件で加熱する加熱工程と、(3)前記加熱後の塗布層を特定条件で加圧する加圧工程と、(4)前記加圧後の塗布層を特定条件で焼成する焼成工程とを順に有する。以下、各工程について順に説明する。
ここで、本発明のフッ素樹脂塗膜の形成方法において、(1)の塗布層形成工程で、耐熱基材上に形成された塗布層を構成する上記フッ素樹脂水性分散液は、焼成処理が終了するまでは(2)の加熱工程によりその組成が変化するが、フッ素樹脂自体は変化せずこれを主構成成分とする塗布層であることは一貫していることから、本明細書において、全ての工程において前記塗布層を総称してフッ素樹脂塗布層という。なお、(4)の焼成工程が終了することによりフッ素樹脂塗布層はフッ素樹脂塗膜となる。
本発明における塗布層形成工程は、上記フッ素樹脂水性分散液を、耐熱基材に塗布して、前記耐熱基材上に前記フッ素樹脂水性分散液の塗布層を形成する工程である。なお、塗布とはフッ素樹脂水性分散液を耐熱基材に付着させることをいう。
本発明のフッ素樹脂塗膜形成方法における加熱工程は、前記塗布層形成工程後の前記フッ素樹脂塗布層を200℃〜前記塗布層中のフッ素樹脂の融点未満の温度で加熱処理して前記塗布層中の非イオン性界面活性剤の含有量を前記フッ素樹脂微粒子の全質量に対して2質量%未満に低減する工程である。加熱工程後の前記塗布層中の非イオン性界面活性剤の含有量は、好ましくはフッ素樹脂微粒子の全質量に対して1.5質量%以下であり、より好ましくは1質量%未満である。フッ素樹脂塗布層中の非イオン性界面活性剤の含有量が、前記フッ素樹脂微粒子の全質量に対して2質量%以上の場合には、次に行われる加圧処理に際して前記塗布層からフッ素樹脂微粒子が脱落しやすくなる。
前記塗布層の加熱処理は塗布層に対してのみ行われる処理ではなく、具体的には、フッ素樹脂塗布層が形成された耐熱基材の全体を温度調節されたオーブン等に入れる、赤外線照射により加熱する、等の方法で行われる。
本発明における加圧工程は、前記加熱工程後の前記フッ素樹脂塗布層を加圧手段を用いて0.1〜100MPaの圧力で加圧処理する工程である。前記加圧処理における圧力は、0.1〜100MPaであるが、好ましくは1〜80MPaであり、より好ましくは10〜50Mpaである。本発明のフッ素樹脂塗膜形成方法においては、この加圧工程を実施することにより、加圧工程以前に前記フッ素樹脂塗布層に生じたクラック等の欠陥を消失させることができ、最終的に品質の高いフッ素樹脂塗膜を形成させることが可能となる。前記圧力が0.1MPaよりも低い場合には、本加圧工程前に前記フッ素樹脂塗布層に生じたクラック等を消失させることが困難であり、100MPaよりも高い場合には前記フッ素樹脂塗布層を加圧する加圧手段の加圧面に前記フッ素樹脂塗布層の一部または全部が付着して、除圧時に前記付着したフッ素樹脂塗布層が耐熱基材から脱落する場合がある。
前記加圧工程における加圧処理の時間は、前記圧力で処理を行い、加圧工程以前に前記フッ素樹脂塗布層に生じたクラック等の欠陥を消失させることができる時間であれば特に制限されず、加圧時の圧力、温度、前記フッ素樹脂塗布層の厚さ等により適宜調整される。この様な加圧処理の時間としては、0.001〜60分間が好ましく、0.005〜30分間がより好ましく、0.01〜10分間を特に好ましい。加圧時間が、0.001分間よりも短い場合には加圧効果が不充分なことがあり、60分間よりも長い場合には生産効率の点から好ましくない。
本発明において、加圧ローラーを用いて前記加熱工程後のフッ素樹脂塗布層に加圧処理を施す実施の態様を図1および図2に模式的に示す。図1には、前記加熱工程後のフッ素樹脂塗布層2を片面に有する耐熱基材1を、2個の加圧ローラー4の間に連続的に通過させ、加圧処理されたフッ素樹脂塗布層3を有する耐熱基材1を得る具体例を示す。図2は、同様にして前記加熱工程後のフッ素樹脂塗布層2を両面に有する耐熱基材1の加圧ローラー4を用いた加圧処理の工程を具体的に示すものである。加圧処理に用いる加圧ローラー4は、通常、鉄、ステンレス鋼等の金属製であるが、加圧ローラー4の表面は、シリコンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム等の材料で被覆されていてもよい。また、加圧ローラー4は内部にヒーターが組み込まれた構造のものであってもよく、この様な加圧ローラーを用いれば、前記フッ素樹脂塗布層またはフッ素樹脂塗布層付き耐熱基材を上記好ましい範囲の温度で加熱しながら加圧処理することが可能である。
本発明における焼成工程は、前記加圧工程後の前記フッ素樹脂塗布層を前記フッ素樹脂の融点〜420℃の温度で加熱して、前記フッ素樹脂塗布層中のフッ素樹脂微粒子を焼成し、前記耐熱基材上に前記フッ素樹脂の塗膜を形成する工程である。なお、焼成とはフッ素樹脂の融点以上の温度でフッ素樹脂微粒子を融着させることをいう。
本発明において、焼成温度は、フッ素樹脂の融点〜420℃の範囲である。PTFEの場合には、さらに350〜400℃が好ましく、特に好ましくは360〜390℃である。焼成温度が420℃よりも高い場合にはフッ素樹脂が熱分解して性能低下を生じ、またフッ素樹脂の融点よりも低い場合には耐熱基材への密着が不十分であり性能や耐久性の低下を生ずる。
前記焼成工程において焼成時間は、前記焼成温度で処理を行い、前記フッ素樹脂塗布層中のフッ素樹脂微粒子を十分に融着できる時間であれば特に制限されず、前記塗布層の厚さ、焼成温度等の条件等により適宜調整される。この様な焼成時間として、1〜120分間が好ましく、2〜60分間がより好ましく、3〜30分間を特に好ましい時間として挙げることができる。焼成時間が1分間よりも短い場合には耐熱基材への密着が不十分であり性能や耐久性の低下を生ずることがある。また、120分間よりも長い場合には生産効率の点から好ましくない。
本発明において、上記説明した工程を経て焼成後、最終的に得られるフッ素樹脂塗膜の厚さとしては、1〜1000μmの範囲が好ましく、5〜300μmがより好ましく、10〜100μmが最も好ましい範囲として挙げられる。本発明によれば、最終的に得られるフッ素樹脂塗膜の厚さが前記1〜1000μmの範囲内であれば、クラックやピンホール、欠落等がなく耐久性のある品質が確保されたフッ素樹脂塗膜を耐熱基材上に形成することが可能である。
本発明の方法によれば上記の様にして耐熱基材上に所望の厚さのフッ素樹脂塗膜が形成されるが、さらに必要に応じて、上記で得られたフッ素樹脂塗膜の上に、これと同種のフッ素樹脂や、異なる種類のフッ素樹脂からなる塗膜を形成し、必要とされる塗膜厚になるようフッ素樹脂塗膜を積層形成することも可能である。
なお、以下の各実施例および各比較例で使用した非イオン性界面活性剤(A)、(B)、および(C)は、以下の表1に示す非イオン性界面活性剤に相当する。また、非イオン性界面活性剤(A)〜(C)のパーキンエルマー社製PYRIS1−TGAを用い、毎分10℃の昇温速度で測定した熱重量分析(TGA)結果を図4に示す。
(1)フッ素樹脂の数平均分子量:PTFEについて、諏訪(J.Appl.Polym.Sci,17,3253(1973)記載)の方法によって示差熱分析での潜熱量から求めた。
(2)フッ素樹脂の平均粒子径:フッ素樹脂水性乳化液を乾燥後、走査型電子顕微鏡を用いて10000倍で写真撮影し、微粒子100個について長軸と短軸の長さを測定し、各微粒子の長軸と短軸の長さの合計を2で除した値をその微粒子の粒子径として100個の平均値を求めた。
(3)フッ素樹脂水性分散液のフッ素樹脂および界面活性剤含有量:直径60mmのアルミニウム皿(質量=W0)にフッ素樹脂水性分散液を約7g入れて秤量し(質量=W1)、120℃で1時間乾燥後の質量(W120)、260℃で10分熱処理後の質量(W260)、300℃で10分熱処理後の質量(W300)、および380℃で35分間乾燥後の質量(W380)から、次式によって求めた。なお、本発明でいう界面活性剤含有量は、非イオン性界面活性剤、アニオン性フッ素系界面活性剤およびその他の熱分解成分を含む数値である。
・フッ素樹脂含有量(質量%)=[(W380−W0)/(W1−W0)]×100
・界面活性剤含有量(質量%/フッ素樹脂)=[(W120−W380)/(W380−W0)]×100
・260℃10分熱処理後の残存界面活性剤含有量(質量%/フッ素樹脂)=[(W260−W380)/(W380−W0)]×100
・300℃10分熱処理後の残存界面活性剤含有量(質量%/フッ素樹脂)=[(W300−W380)/(W380−W0)]×100
式中、質量%/フッ素樹脂とは、フッ素樹脂微粒子の全質量に対する質量%を示す。
得られた質量数69のフラグメントイオンのシグナル強度から、アニオン性フッ素系界面活性剤含有量を算出した。なお、測定に先立ち、あらかじめ含有量が既知のアニオン性フッ素系界面活性剤を使用して得られたシグナル強度から検量線を作成し、定量分析に用いた。この方法による検出感度は、パーフルオロオクタン酸アンモニウムの場合、サンプル液質量に対して0.1ppmである。
(6)粘度:ブルックフィールド型粘度計で#1スピンドルを用い、液温23℃、60rpmで粘度を測定した。
(8)塗膜厚:アルミニウム板に塗布し焼成したサンプルについては、渦電流式膜厚計で膜厚を5点測定し平均値を求めた。また、ガラス繊維布に塗布し焼成したサンプルは、単位面積当たりの重量増加を測定して算出した。
(PTFE水性乳化液の調製)
重合後に得られるPTFE質量に対して、0.24質量%のアニオン性フッ素系界面活性剤としてパーフルオロオクタン酸アンモニウム、および、0.1質量%のジコハク酸パーオキシド触媒を使用し、乳化重合法によりTFEを重合し、PTFEの数平均分子量が300万であり、PTFE微粒子の平均粒子径が0.25μmであり、PTFE微粒子含有量が27質量%であるPTFE水性乳化液を得た。
上記で得られたPTFE水性乳化液に、前記表1に示す非イオン性界面活性剤(A)を、PTFE微粒子全質量に対して3質量%の割合で溶解させ、陰イオン交換樹脂である三菱化学製ダイアイオン(登録商標)WA−30をPTFE微粒子全質量に対して3質量%加えて48時間攪拌を行ない、陰イオン交換樹脂にパーフルオロオクタン酸アンモニウムを吸着させた後、100メッシュフィルターで濾過し、前記陰イオン交換樹脂を除去した。
このPTFE水性分散液のpHは9.5であり、粘度は18mP・sであり、CFTは12μmであった。また、このPTFE水性分散液の260℃10分間熱処理後に残存する界面活性剤含有量はPTFE微粒子全質量に対して1.3質量%であり、300℃10分間熱処理後に残存する界面活性剤含有量はPTFE微粒子全質量に対して0.7質量%であった。
耐熱基材として、片面をサンドブラスト処理した厚み1mm、長さ20cm、幅15cmのアルミニウム板を使用した。スプレーガン(Binks−Bullows Spray Gun Model 630)に上記で得られたPTFE水性分散液を入れ、アルミニウム板に5秒間スプレー塗布し、120℃オーブン中で10分間乾燥を行なった。PTFE樹脂塗布層の表面にはクラックが観察された。
上記実施例1においてPTFE塗膜の形成における加熱処理の条件を260℃10分間とした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム板上にPTFE塗膜を得た。PTFE塗膜厚は15μmであり、目視観察では塗膜にクラック、ピンホール等はほとんど認められなかった。得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は0.1mA以下であり、良好な結果であった。
上記実施例1においてPTFE塗膜の形成におけるアルミニウム板へのPTFE水性分散液のスプレー塗布を10秒間行なった以外は実施例1と同様にしてアルミニウム板上に28μmのPTFE塗膜を得た。さらに、この塗膜面に再度同じ塗布工程を1回だけ繰返して行い、合計55μmの塗膜厚を得た。目視観察では塗膜にクラック、ピンホール等はほとんど認められなかった。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は0.1mA以下であり、良好な結果であった。
(PTFE水性分散液の調製)
上記実施例1で得られたのと同様のPTFE水性乳化液に、前記表1に示す非イオン性界面活性剤(B)を、PTFE微粒子の全質量に対して3質量%の割合で溶解させ、これを三菱化学製ダイアイオン(登録商標)WA−30を充填したカラムを通過させ、パーフルオロオクタン酸アンモニウムを吸着させた。
このPTFE水性分散液のpHは9.3であり、粘度は85mP・sであり、CFTが11μmであった。また、このPTFE水性分散液の300℃10分間熱処理後の界面活性剤含有量はPTFE微粒子全質量に対して0.9質量%であり、260℃10分間熱処理後の界面活性剤含有量はPTFE微粒子全質量に対して1.7質量%であった。
このPTFE水性分散液を塗布液として用いる以外は、上記実施例3と同様にして、アルミニウム板上にPTFE塗膜を形成させた。このPTFE塗膜の厚みは、28μmであった。目視観察では塗膜にクラック、ピンホール等はほとんど認められなかった。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は0.1mA以下であり、良好な結果であった。
上記実施例4において、PTFE塗膜の形成における加圧処理時にPTFE樹脂塗布層付きのアルミニウム板全体の温度を80℃に設定して加圧処理を行なった以外は、上記実施例4と同様にしてアルミニウム板上にPTFE塗膜を形成した。このPTFE塗膜厚は、27μmであった。目視観察では塗膜にクラック、ピンホール等はほとんど認められなかった。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は0.1mA以下であり、良好な結果であった。
厚み220μmで単位重量200g/m2のガラス繊維布(大きさ20cm×15cm)を耐熱基材として用い、このガラス繊維布を上記実施例4で得られたのと同様のPTFE水性分散液に1分間漬浸し引き上げ、自然乾燥後、300℃で10分間加熱処理を行なった。
さらに上記と同様の塗布工程を更に1回繰返して行い、片面あたり合計102μmの塗膜を得た。塗膜にクラック、ピンホール等はほとんど認められなかった。
前記実施例4において、PTFE塗膜の形成における300℃10分間の加熱処理後の加圧処理を、PTFE樹脂塗布層の上に厚み1mmのシリコンゴムを乗せ、図3に示すのと同様の油圧プレスを用い、圧力30MPaで3分間加圧し、シリコンゴムを剥離する方法で実施し、その後380℃で10分間の焼成を行った以外は実施例4と同様にして、アルミニウム板上にPTFE塗膜を形成した。
このPTFE塗膜厚は、27μmであった。目視観察では塗膜にクラック、ピンホール等はほとんど認められなかった。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は0.1mA以下であり、良好な結果を得た。
実施例1において、PTFE塗膜の形成における加圧処理を行なわない以外は実施例1と同様にしてアルミニウム板上にPTFE塗膜を得た。このPTFE塗膜厚は16μmであり、目視観察では焼成後の塗膜にはクラックや表面の荒れが認められた。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値はクラックのために4mAと大きかった。
実施例1において、PTFE塗膜の形成における300℃10分間の加熱処理を行なわない以外は実施例1と同様の操作を行なったが、加圧処理の際にPTFE樹脂塗布層の欠落を生じ、焼成後に得られたアルミニウム板上のPTFE塗膜にそのまま欠落が残った。このため得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は16mAと大きかった。
実施例1において、PTFE塗膜の形成における加熱処理を、PTFEの融点(327℃)を超える350℃で10分間行なった以外は実施例1と同様の操作を行なった。実施例1と同様、乾燥の操作後にPTFE樹脂塗布層にクラックが発生し、加圧工程でもクラックが消失せず、焼成後にアルミニウム板上に得られたPTFE塗膜には、クラックがそのまま残った。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値も3mAと大きかった。
実施例1において、PTFE塗膜の形成における加圧処理の圧力を0.05MPaに下げた以外は実施例1と同様の操作を行なったが、加圧処理後にPTFE樹脂塗布層にクラックや表面の荒れが認められ、焼成後にアルミニウム板上に得られたPTFE塗膜には、クラックや表面の荒れがそのまま残った。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は3mAと大きかった。
実施例7において、PTFE塗膜の形成における加圧処理の圧力を200MPaとして3分間加圧処理を行なった以外は、実施例7と同様の操作を行なったが、圧力が高すぎたために除圧後にシリコンゴムを取り除く際にPTFE樹脂塗布層の欠落を生じ、焼成後にアルミニウム板上に得られたPTFE塗膜には、欠落がそのまま残った。また、得られたPTFE塗膜のピンホール電流値は12mAと大きかった。
PTFE水性分散液として、旭硝子社製フルオン(登録商標)AD1を用いた以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム板上にPTFE塗膜を形成させた。
前記PTFE水性分散液は、PTFE微粒子として実施例1で説明したPTFE水性乳化液が含有するPTFE微粒子と同様のPTFE微粒子を含有し、その含有量が水性分散液全量に対して60.6質量%、前記表1に示すポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系の非イオン性界面活性剤(C)がPTFE微粒子全質量に対して4.9質量%、パーフルオロオクタン酸アンモニウム含有量がPTFE微粒子全質量に対して0.15質量%であり、pHは9.6であり、粘度は20mP・sであり、CFTが11μmである。また、このPTFE水性分散液の300℃10分間加熱処理後の界面活性剤含有量は、PTFE微粒子全質量に対して3.6質量%であった。
以下、表2に上記実施例1〜7について、表3に比較例1〜6について、それぞれ用いたフッ素樹脂水性分散液の特性、製造条件、得られたフッ素樹脂塗膜の評価結果を示す。
また、膜厚は、塗膜形成を2回実施した実施例については、「1回目の膜厚/1回目と2回目の合計膜厚」の形で示している。
含有量については、フッ素樹脂微粒子は水性分散液全量に対する質量%を示し、界面活性剤、残留界面活性剤については、水性分散液が含有するフッ素樹脂微粒子全量に対する質量%(質量%/フッ素樹脂)を示す。
このため、従来、フッ素樹脂水性分散液が塗布されてきた多くの用途に対し、より好ましく使用できる。例えば、フッ素樹脂水性分散液単独または顔料や耐熱樹脂を配合しアルミニウム板にコーティングして電気釜やケーキ型の非粘着加工を行なう用途、ガラス繊維布やアラミド繊維布やカーボン繊維布に塗布して搬送用耐熱ベルトや建築用膜構造シートやプリント基板用材料に加工する用途、フッ素樹脂水性分散液をアルミニウム板やステンレス板等に塗布し焼成したのちにフッ素樹脂層を剥離して得られるフッ素樹脂極薄シートに加工する用途、その他にフッ素樹脂水性分散液が従来利用されてきた多くの用途が挙げられる。
Claims (5)
- 平均粒子径が0.1〜0.5μmであり、融点が200℃超であるフッ素樹脂の微粒子を分散液全量に対して20〜70質量%、非イオン性界面活性剤を前記フッ素樹脂微粒子の全質量に対して2〜12質量%含有するフッ素樹脂水性分散液を、耐熱基材に塗布して、前記耐熱基材上に前記フッ素樹脂水性分散液の塗布層を形成する塗布層形成工程と、
前記塗布層形成工程後の前記塗布層を200℃〜前記フッ素樹脂の融点未満の温度で加熱処理して前記塗布層中の非イオン性界面活性剤の含有量を前記フッ素樹脂微粒子の全質量に対して2質量%未満に低減する加熱工程と、
前記加熱工程後の前記塗布層を加圧手段を用いて0.1〜100MPaの圧力で加圧処理する加圧工程と、
前記加圧工程後の前記塗布層を前記フッ素樹脂の融点〜420℃の温度で加熱して、前記塗布層中のフッ素樹脂微粒子を焼成し、前記耐熱基材上に前記フッ素樹脂の塗膜を形成する焼成工程と
を有することを特徴とするフッ素樹脂塗膜の形成方法。 - 前記非イオン性界面活性剤が、下記式(1)で表される化合物である請求項1に記載のフッ素樹脂塗膜の形成方法。
R1−O−A−H (1)
(式中、R1は炭素数が6〜18であり、水素原子の10%以下がハロゲン原子で置換されていてもよい飽和アルキル基である。Oは酸素原子である。Aは5〜20個のオキシエチレン基、0〜3個のオキシプロピレン基、および0〜3個のオキシブチレン基より構成されるポリオキシアルキレン鎖である。) - 前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン又はテトラフルオロエチレン共重合体である請求項1又は2に記載のフッ素樹脂塗膜の形成方法。
- 前記フッ素樹脂水性分散液の粘度が、ブルックフィールド型粘度計で#1スピンドルを用い、液温23℃、60rpmの条件で測定した場合に、1〜1000mPa・sである請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素樹脂塗膜の形成方法。
- 前記塗膜の厚みが、1〜1000μmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素樹脂塗膜の形成方法。
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