以下、本発明を具体化した一実施例について、図1ないし図7を参照しながら説明する。本実施例に係るセキュリティ機器(例えばセキュリティシステムのホームコントローラ)1は、図2に示すように、例えば合成樹脂製の薄型矩形箱状をなす本体ケース2内に、後述するように、セキュリティ機能を実現するための各種の電子部品(制御回路)等を組込んで構成されている。前記本体ケース2は、前面(図で上面)が開口するロアケース2aと、このロアケース2aの開口部を開閉可能に覆う第1の扉としてのアッパケース3とを結合して構成される。
尚、詳しく図示はしないが、建物に設けられるセキュリティシステムは、防災用、防犯用の各種のセンサ等(図1に示す各種セキュリティ用センサ4)を建物の各部に設けると共に、それら各種セキュリティ用センサ4の全体を統括管理するセキュリティ機器(ホームコントローラ)1を設けて構成される。この場合、このセキュリティ機器1は、例えば建物の室内の壁に、アッパケース3側を前面にして取付けられるものであるが、以下の説明において、上下や左右の方向をいう場合には、図2の状態(アッパケース3側を上面とした状態)を基準として述べることとする。
図2に示すように、前記アッパケース3は、図2でその左辺部3aに設けられたヒンジ部(図示せず)を介して、ロアケース2aに対し回動可能に連結されており、その右辺部3bが、ロアケース2a内に設けられた第1のロック手段たる電気錠5によって、通常時には閉塞状態にロックされている。そして、後述するように、個人認証(本実施例ではICカードを用いた認証)により、自動で電気錠5のロックが解除され、アッパケース3を開閉操作することが可能とされるようになっている。またこのとき、本体ケース2内には、ロアケース2aに対するアッパケース3の開閉状態を検出するための第1の扉センサ6(図1にのみ図示)が設けられている。
そして、本体ケース2内(ロアケース2aの内底部)には、ロアケース2aよりも一回り小さい矩形状の内箱7が設けられており、いわば二重の箱状とされている。この内箱7の図で上面を構成する上壁部7aには、図で右側部分を除いて開口部7bが形成されていると共に、その開口部7bを開閉可能に塞ぐ第2の扉としての内扉8が設けられている。また、この内箱7の上壁部7aには、第1の設定操作部であるユーザ操作部9が設けられている。
詳しく図示はしないが、このユーザ操作部9は、テンキー等の複数個のキーや表示部等を備えて構成され、その操作により、セキュリティ機器1において設定操作可能な全ての機能のうちの一部、例えば、家族の人数に変化があった場合のデータの部分的な変更、暗証番号の変更といった、ユーザが設定できる(ユーザによる設定が許可された)事項(機能)を設定することが可能とされている。このユーザ操作部9は、ロアケース2aに対しアッパケース3が開放されることにより操作が可能となることは勿論である。また、ロアケース2aに対しアッパケース3が開放されていることを条件に、前記内扉8の開閉操作が可能とされる。
この内扉8は、図2でその左辺部に設けられたヒンジ部10を介して、内箱7に対し回動可能に連結されており、その右辺部が、内箱7内に設けられた第2のロック手段たる機械錠11によって、ロック及びロック解除されるようになっている。この機械錠11は、通常時には内扉8を閉塞状態にロックしており、図3に示すように、前記上壁部7aに設けられたキー挿入口12に正規の専用キー13が差込まれることにより、ロックが解除され、内扉8の開閉が可能とされるようになっている。前記キー挿入口12部分の構成については後述する。また、内箱7内には、内扉8の開閉状態を検出するための第2の扉センサ14(図1にのみ図示)が設けられている。
前記内箱7内には、図1にも示すように、CPU(マイコン)15aを含んで構成され全体を制御する制御回路15、認証手段たる認証装置16、例えば電話回線を介して外部との通信(通報)を行う通信装置17、第2の設定操作部としての設定操作部18などが設けられている。そのうち認証装置16は、前記ユーザ操作部9の操作が許可されている個人の認証を行うもので、本実施例では、周知の非接触ICカードリーダから構成されている。
このとき、前記ユーザ操作部9の操作が許可されている個人、即ちユーザ(その家の主人(家族))や、セキュリティ管理会社のサービスマン等には、ユニークなIDデータを記憶した非接触型のICカード19が付与されている。前記認証装置16は、本体ケース2の前面側に設けられる通信エリア内に通信用の磁界を発生させ、近接されたICカード19に電力を供給し、該ICカード19から返信される電波を受信してICカード19に記録されているIDデータを読取り、個人認証を行うようになっている。このとき、ユーザ操作部9の操作が許可された個人のICカード19のIDデータ(照合用データ)が、認証装置16(或いは制御回路15)のメモリに予め登録(記憶)されていることは勿論である。なお、このときのIDデータ(照合用データ)により、ユーザかサービスマンかを区別できるようになっている。
前記通信装置17は、前記制御回路15により制御され、上記したセキュリティ用センサ4により異常発生が検知された時に、電話回線を介してセキュリティ管理会社のセンタ(更には、警察、消防、救急など)に対して通報を行うものである。この場合、建物(敷地)内への不審人物の侵入や、火災、ガス漏れの発生が検知された時等に通報が行われることは勿論、前記第1の扉センサ6が有効である状態(無効化されていない状態)で、該第1の扉センサ6がアッパケース3の開放を検知した際に、その信号が制御回路15に入力されることに基づき、通報が行われるようになっている。
従って、第1の扉センサ6、制御回路15、通信装置17等から、アッパケース3が開放されたことを検知して通報する第1の通報手段が構成される。又、同様に、前記第2の扉センサ14が有効である状態(無効化されていない状態)で、該第2の扉センサ14が内扉8の開放を検知した際に、その信号が制御回路15に入力されることに基づき、通報が行われるようになっている。従って、第2の扉センサ14、制御回路15、通信装置17等から、内扉8が開放されたことを検知して通報する第2の通報手段が構成される。
前記設定操作部18は、このセキュリティ機器1において設定操作可能な機能のうちのセキュリティ上最も重要となる事項(機能)の設定、例えば制御回路15のプログラムや重要なデータの変更を伴うような、セキュリティ管理会社の専門のサービスマンにしかできない(ユーザ等の他の者がしてはいけない)設定操作を行うために設けられている。図2に示すように、内箱7に対して内扉8を開放した状態で、この設定操作部18を操作することが可能となる。また、前記制御回路15、認証装置16、通信装置17、設定操作部18のメンテナンス等に関しても、内扉8を開放した状態で可能となる。
ここで、前記内扉8をロックする機械錠11のキー挿入口12部分の構成について、図3を参照しながら述べる。図3(a)に示すように、前記専用キー13は、つまみ13aとそのつまみ13aから先端側に延びるブレード13bとを一体的に有する平板状をなしていると共に、ブレード13bの両側縁部に外側に凸となる凸部13c,13cを有している。さらに、前記つまみ13aのいわゆるショルダー部分の両側には、先端側に突出する2箇所の突起部20,20が一体に設けられている。尚、この専用キー13は、前記設定操作部18の操作が許可された者、例えばセキュリティ管理会社の専門のサービスマンのみが所持するようになっている。
これに対し、前記キー挿入口12は、前記専用キー13のブレード13bに対応したスリット穴状に形成され、図3(a)に示すように、ブレード13bが差込まれたときに前記凸部13c,13cが夫々係合することにより専用キー13を保持するための凹部12a,12aを一体に有している。詳しく図示はしないが、前記機械錠11は、通常時に(キー挿入口12に専用キー13が差込まれていない状態で)、内扉8を閉塞状態にロックしており、キー挿入口12に専用キー13が差込まれた状態で、前記内扉8の開閉を許容する(ロックを解除する)ように構成されている。
さらに、図3 (b)にも示すように、前記キー挿入口12の長手方向両側の外側近傍部分に、前記2箇所の突起部20,20に対応して、2個の認証スイッチ21,22が設けられている。これら認証スイッチ21,22は、例えば圧電素子を含んで構成され、キー挿入口12に専用キー13が差込まれているときに、各突起部20,20によって押圧されることによって、前記制御回路15に対して押圧操作信号を出力するようになっている。制御回路15は、前記2個の認証スイッチ21,22が同時に押圧操作(オン)されているときに、前記専用キー13がキー挿入口12に差込まれていると判定するようになっており、2個の認証スイッチ21,22及び制御回路15等から専用キー判定手段が構成されている。尚、キー挿入口12や認証スイッチ21,22等を、内扉8側に設けるようにしても良い。
さて、図1は、本実施例におけるセキュリティ機器1の、前記制御回路15を中心とした電気的構成を概略的に示すものである。前記制御回路15には、前記各種セキュリティ用センサ4、電気錠5、ユーザ操作部9、認証装置16、通信装置17、設定操作部18が接続され、それらを制御するようになっている。また、制御回路15には、前記第1の扉センサ6、第2の扉センサ14、2個の認証スイッチ21,22からの検知信号が入力されるようになっている。
このとき、後の作用説明(フローチャート説明)で詳述するように、制御回路15は、そのソフトウエア(制御プログラムの実行)により、セキュリティシステム全体の統括の処理等を行うと共に、以下のような各処理を実行して各種の機能を果たすようになっている。即ち、通常時(セキュリティ機器1の電源オン時)には、制御回路15は、電気錠5をロック状態としており、また第1の扉センサ6及び第2の扉センサ14を共に有効としている。さらに、認証装置16は待機状態(通信待ち状態)とされ、アッパケース3の前方のICカード19との通信が可能な通信エリア内に、常に(一定時間間隔で)磁界(リクエスト信号)を発生させている。
従って、この状態で、仮に第1の扉センサ6がアッパケース3の開放を検知したら、通信装置17によるセキュリティ管理会社のセンタへの通報が行われる(第1の通報手段)。これに対し、ユーザ操作部9の操作が許可されているユーザ或いはサービスマンが、自らのICカード19をアッパケース3の近傍に掲げて認証装置16によって読取を行わせ、読取ったIDデータと照合用IDデータのいずれかとが一致し、正規の個人認証が行われた場合には、制御回路15は、電気錠5のロックを解除すると共に、第1の扉センサ6を無効化する(開放検知信号があっても通報しない)ようになっている。これにて、第1の制御手段としての機能が実現されるのである。
そして、上記の個人認証の後、アッパケース3が開放され、その状態で、更に認証スイッチ21,22からの検知信号により正規の専用キー13がキー挿入口12に差込まれていると判定された場合には、制御回路15は第2の扉センサ14を無効化する(開放検知信号があっても通報しない)ようになっている。これにて、第2の制御手段としての機能が実現されるのである。
次に、上記構成の作用について、図4ないし図7も参照しながら説明する。上記したように、ユーザ操作部9の操作が許可されているユーザは、認証のためのICカード19が付与されている。また、警備会社の専門のサービスマンは、ユーザ操作部9及び設定操作部18の操作が許可されており、例えばユーザの家を訪問する際には、認証のためのICカード19及び内扉8開放用の専用キー13を所持している。
図4〜図7のフローチャートは、ユーザ又はサービスマンがユーザ操作部9又は設定操作部18の設定操作を行う場合における、制御回路15が実行する処理の手順を示している。尚、これら図4〜図7は、本来、連続した一つのフローチャートであるが、図面のスペースの都合上、4つに分割して示している。まず、図4及び図5のフローチャートは、主としてユーザが、ユーザ操作部9を操作して設定を行う(変更する)場合の処理手順を示している。
即ち、図4に示すように、セキュリティ機器1の電源のオン時には、ステップS1にて、第1の扉センサ6及び第2の扉センサ14が有効とされ、またステップS2にて、認証装置16が待機状態(リクエスト信号を間欠的に出力している状態)とされる。尚、第1の扉センサ6、第2の扉センサ14が有効であるとは、それらセンサ6,14がアッパケース3,内扉8の開放を検知したときに、通報が行われるという意味であり、無効化するとは、アッパケース3,内扉8の開放を検知してもその通報を行わなくするという意味である。
ステップS3では、アッパケース3が本体ケース2に対して開けられたかどうかが、第1の扉センサ6によって監視される。通常の状態では、電気錠5によりアッパケース3は閉塞状態にロックされているから、もし第1の扉センサ6がアッパケース3の開放を検知したとすると(ステップS3にてYes)、それはアッパケース3が無理やりこじ開けられた等の異常であると判断することができ、ステップS4にて、通信装置17を介して警備会社等への通報が行われる。アッパケース3の開放が検知されない場合には(ステップS3にてNo)、次のステップS5にて、認証装置16(ICカードリーダ)により、その通信エリア内にICカード19の侵入があるかどうかが常に監視されている。
今、ユーザ又はサービスマンがユーザ操作部9又は設定操作部18の設定操作を行いたい場合には、ICカード19を本体ケース2の前方部分(通信エリア内)に掲げるようにする。すると、認証装置16は、ICカード19を認識し(ステップS5にてYes)、そのICカード19と通信を行ってIDデータの読取りを行う(ステップS6)。そして、ステップS7にて、読取ったIDデータを、記憶された照合用IDデータと比較し、認証を行う。認証が不調に終った場合には(ステップS7にてNo)、ステップS8にて、読取ったデータを破棄した上で、ステップS1に戻る。
認証が正しく行われた場合には(ステップS7にてYes)、次のステップS9にて、サービスマンかユーザかが判断される。サービスマンのIDデータであった場合には(ステップS9にてYes)、ステップS10にて、サービスマン用の認証処理(「認証1」)が行われ、ステップS11に進む。ユーザのIDデータであった場合には(ステップS9にてNo)、そのままステップS11に進む。尚、サービスマンが設定処理部18を操作する場合の処理は、後の図6,図7の説明において述べる。
ステップS11では、第1の扉センサ6が無効化(開放を検知しても通報を行わない)される。これと共に、ステップS12では、電気錠5によるアッパケース3のロックが解除される。これにて、ユーザやサービスマンは、通報の虞なく、アッパケース3を開放することができる。ステップS13では、アッパケース3が開放されたかどうかが監視される。この判断は、第1の扉センサ6の出力に基づいて行うことができる。
アッパケース3が開放されない場合には(ステップS13にてNo)、次のステップS14にて、電気錠5によるロックが解除された後、一定時間(例えば数分)が経過したかどうかが判断される。もし、一定時間が経過してもアッパケース3が開放されない場合には(ステップS14にてYes)、ステップS15にて、電気錠5によりアッパケース3が再び閉塞状態にロックされ、ステップS1に戻る。一定時間が経過するまでに、アッパケース3が開放された場合には(ステップS13にてYes)、ステップS16にて読み取ったICカード19のIDデータが破棄され、図5のステップS17に進む。
図5に進んで、ステップS17では、キー挿入口12に専用キー13が差込まれたかどうかが判断される。この判断は、認証スイッチ21,22の出力に基づいて行うことができる。キー挿入口12に専用キー13が差込まれた場合には(ステップS17にてYes)、図6のステップS30に進むのであるが、この処理については後述する。
キー挿入口12に専用キー13が差込まれない場合には(ステップS17にてNo)、ステップS18にて、第2の扉センサ14の検出に基づいて、内扉8が開放されたかどうかが判断される。このとき、キー挿入口12に専用キー13が差込まれることなく内扉8の開放が検知された場合は(ステップS18にてYes)、内扉8が無理やりこじ開けられた等の異常であると判断することができ、ステップS4にて、通信装置17を介して警備会社等への通報が行われる。
内扉8が開けられることのない場合には(ステップS18にてNo)、ステップS19にて、第1の扉センサ6の検出に基づいて、アッパケース3が閉められたかどうかが判断される。ユーザ操作部9の操作等が行われることなくアッパケース3が閉められた場合には(ステップS19にてYes)、ステップS15に進み、電気錠5がロックされた上で、ステップS1に戻る。アッパケース3が閉められることもない場合には(ステップS19にてNo)、ステップS20にて、ユーザ操作部9の操作があるかどうかが判断される。ここで、ユーザ或いはサービスマンは、ユーザ操作部9を操作することによって、例えば家族の人数に変更があった場合のデータの部分的な変更といった、セキュリティ機器1において設定操作可能な機能のうちの比較的簡単なレベルの設定操作が可能となる。
ユーザ操作部9の操作がない場合には(ステップS20にてNo)、ステップS21にて、アッパケース3の開放が検知されて(ステップS13にてYes)から一定時間(例えば数分)が経過したかどうかが判断される。一定時間が経過していなければ(ステップS21にてNo)、ステップS17に戻る。もし、一定時間が経過してもユーザ操作部9の操作がない場合には(ステップS21にてYes)、ステップS22にて、ユーザに対しユーザ操作部9の操作を促す報知が行われる。
この報知が行われた後、ユーザ操作部9の操作が行われたならば(ステップS23にてYes)、ステップS25に進む。依然としてユーザ操作部9の操作がない場合には、ステップS24にてアッパケース3が閉められたかどうかが判断され、アッパケース3が閉められた場合には(ステップS24にてYes)、ステップS15に進み、電気錠5がロックされた上で、ステップS1に戻る。アッパケース3が閉められることもない場合には(ステップS24にてNo)、アッパケース3が開けられたまま比較的長い時間放置されている状態であるので、ステップS4に進み、異常通報がなされる。
ユーザ或いはサービスマンによるユーザ操作部9の操作があった場合には(ステップS20にてYes、或いはステップS23にてYes)、ステップS25にて、操作に応じた設定処理が行われる。ユーザ或いはサービスマンは、操作が完了した場合にはユーザ操作部9にて完了した旨の操作を行うようになっており、操作が未だ完了しない場合には(ステップS26にてNo)、ステップS17に戻る。操作が完了した場合には(ステップS26にてYes)、ステップS27にて設定内容がメモリに保存される。
ステップS28では、アッパケース3が閉められたかどうかが判断され、アッパケース3が閉められた場合には(ステップS28にてYes)、ステップS15に進み、電気錠5がロックされた上で、ステップS1に戻る。アッパケース3が閉められない場合には(ステップS28にてNo)、ステップS29にて、再びユーザ操作部9の操作があったかどうかが判断され、操作があった場合には(ステップS29にてYes)、ステップS25からの処理を繰返す。操作がない場合には(ステップS29にてNo)、ステップS17に戻る。
これにて、通常時には、アッパケース3が電気錠5によってロックされていると共に、そのアッパケース3が無理やりこじ開けられた場合には、第1の扉センサ6の検出に基づく通報が確実に行われるようになる。そして、正規のICカード19を所持する、つまりユーザ操作部9の操作が許可されたユーザ或いはサービスマンは、そのICカード19を用いて個人認証を行うことにより、アッパケース3のロックが解除されると共に、第1の扉センサ6の検知に基づく通報が無効化されるので、ユーザ操作部9を操作して所望の(ユーザに許された種類の)設定操作を行うことができる。誤通報が未然に防止されることは勿論である。
さて、図6及び図7のフローチャート(ステップS30以降の処理)は、警備会社の専門のサービスマンが設定操作部18を操作して設定等を行う場合の処理手順を示している。ここで、専用キー13を所持しているサービスマンが設定操作部18を操作したい場合には、上記のように、キー挿入口12に専用キー13を差込むようにする(図5のステップS17にてYes)。すると、ステップS30にて、2個の認証スイッチ21,22が同時に押されているかどうかが判断される。
このとき、上述のように、正規の専用キー13がキー挿入口12に差込まれているのであれば、各突起部20,20によって2個の認証スイッチ21,22が同時に押圧操作(オン)されるので、正規の専用キー13が差込まれていると判定され(ステップS30にてYes)、ステップS33にて、専用キー13が用いられた旨の認証処理(認証2)がなされる。
これに対し、2個の認証スイッチ21,22が同時にオンしていない場合には(ステップS30にてNo)、ステップS31にて認証失敗とされ、更にステップS32にて内扉8が開けられたかどうかが判断される。内扉8が開けられた場合には(ステップS32にてYes)、不正に内扉8が開けられたと判断され、ステップS4に進み、異常通報がなされる。また、内扉8が開けられない場合には(ステップS32にてNo)、図5のステップS17に戻る。
ステップS33の認証処理(認証2)が行われると、ステップS34にて、認証1(図4のステップS10)が済んでいるかどうかが判断される。この場合、仮に、アッパケース3を開けるときだけはユーザが自分の所持するICカード19を用い、その後、作業をサービスマンと交代しようとしたケースなどにおいては、認証1が済んでいないことになる。認証1が済んでいない場合には(ステップS34にてNo)、ステップS35にて、カード認証を促す報知がなされ、次のステップS36では、認証装置16によるICカード19の読取りが行われたかどうかが判断される。
サービスマンの所持していたICカード19の読取りが行われると(ステップS36にてYes)、ステップS37にて、読取ったIDデータがサービスマン用のIDデータかどうかが判断される。サービスマン用のIDデータである場合には(ステップS37にてYes)、ステップS38にて認証処理(認証1)が行われ、ステップS40に進む。これに対し、ICカード19の読取りが行われなかったり(ステップS36にてNo)、ICカード19の認証が不調に終ったりした場合には(ステップS37にてNo)、ステップS39に進み、内扉8が開放されたかどうかの判断がなされる。内扉8が開けられた場合には(ステップS39にてYes)、不正に内扉8が開けられたと判断され、ステップS4に進み、異常通報がなされる。内扉8が開けられない場合には(ステップS39にてNo)、ステップS35に戻る。
認証1が既に済んでいる場合(ステップS34にてYes)、及びステップS38にて認証処理(認証1)が行われた場合には、次のステップS40にて、第2の扉センサ14が無効化(内扉8の開放を検知しても通報を行わない)される。これにて、サービスマンは、通報の虞なく、内扉8を開放することができる。次のステップS41では、内扉8が開放されたかどうかが監視される。この判断は、第2の扉センサ14の出力に基づいて行われる。
サービスマンによって内扉8が開放されると(ステップS41にてYes)、ステップS42にて、専用キー13がキー挿入口12に差込まれているかどうかが判断される。この時点でキー挿入口12から専用キー13が抜かれた場合には(ステップS42にてNo)、不正な動作であるとしてステップS4に進み、異常通報がなされる。専用キー13がキー挿入口12に差込まれていれば(ステップS42にてYes)、ステップS43にて、設定操作部18の操作があるかどうかが判断される。ここで、サービスマンは、ユーザ設定操作部18を操作することによって、例えば制御回路15のプログラムや重要なデータの変更を伴うようなセキュリティ上最も重要となる事項(機能)の設定操作やメンテナンス等が可能となる。
サービスマンによる設定操作部18の操作があった場合には(ステップS43にてYes)、ステップS46にて、操作に応じた設定処理が行われ、ステップ47に進む。設定操作部18の操作がない場合には(ステップS43にてNo)、そのままステップS47に進む。サービスマンは、操作が完了した場合には設定操作部18にて完了した旨の操作を行うようになっており、操作が未だ完了しない場合には(ステップS47にてNo)、ステップS44に進む。
ステップS44では、内扉8が閉められたかどうかが判断される。内扉8が閉められていない場合には(ステップS44にてNo)、ステップS42に戻る。一方、内扉8が閉められた場合には(ステップS44にてYes)、ステップS45にて、サービスマンに対し処理(設定操作部18の操作)が未完である旨の報知が行われ、ステップS40に戻る。
一方、操作が完了した場合には(ステップS47にてYes)、図7のステップS48に進み、設定内容がメモリに保存される。ステップS49では、内扉8が閉められたかどうかが判断され、内扉8が閉められた場合には(ステップS49にてYes)、ステップS50にて、専用キー13がキー挿入口12から抜かれたかどうかが判断される。専用キー13が抜かれていない状態で(ステップS50にてNo)、アッパケース3が閉じられた場合には(ステップS51にてYes)、専用キー13の抜き忘れであるため、ステップS52にて、専用キー13を抜き忘れている旨の報知がなされ、ステップS50に戻る。この場合、未だアッパケース3はロックされていないので、サービスマンはアッパケース3を開放させて専用キー13を抜くことができる。
専用キー13がキー挿入口12から抜かれた場合には(ステップS50にてYes)、ステップS53にて、第2の扉センサ14が有効化される。そして、ステップS54にて、アッパケース3が閉じられたかどうかが監視され、閉じられた場合には(ステップS54にてYes)、ステップS55にて、電気錠5がロックされた上で、ステップS1に戻る。
これにて、アッパケース3が正規に開放された後であっても、専用キー13を有する、つまり設定操作部18の操作が許可されたサービスマンのみが、その専用キー13をキー挿入口12に差込むことによって、第2の扉センサ14の検知に基づく通報を無効化して内扉8を開放させることができ、設定操作部18を操作して専門的な設定操作を行うことができるのである。内扉8の不正な操作があった場合には、確実に通報が行われると共に、誤通報を防止することができることは勿論である。
このように本実施例のセキュリティ機器1によれば、アッパケース3の開放即ちユーザ操作部9の設定操作に関しては、ICカード19による個人認証だけで許可されるようになるので、一定のセキュリティ性が得られながら、ユーザが管理すべき部材は1枚のICカード19だけで済む。これに対し、本体ケース2内に設けられる内扉8の開放、即ち設定操作部18の設定操作に関しては、ICカード19による個人認証(認証1)及び専用キー13による認証(認証2)の両方がなされることで、第2の扉センサ14(第2の通報手段)を無効化することができ、高いセキュリティ性を得ることができる。
この結果、本実施例によれば、ユーザにおいては、ユーザ操作部9の操作のみを許可し、セキュリティ管理会社の専門のサービスマンにおいては、ユーザ操作部9の操作及び設定操作部18の操作の双方を許可することにより、設定操作可能な複数の機能に関して、個人の知識などのレベルに応じた機能の分担(制限)を図ることができる。また、それら機能を、セキュリティの重要度に応じて、ユーザ操作部9と設定操作部18とに分けて設定する構成とすることにより、それらのセキュリティのレベルに応じたセキュリティ性を付与することができる。
更に、特に本実施例では、キー挿入口12の近傍に、該キー挿入口12に専用キー13が差込まれた状態で2箇所の突起部20,20によって夫々押圧操作される2個の認証スイッチ21,22を設け、それら2個の認証スイッチ21,22が同時に押圧操作されているときに、専用キー13がキー挿入口12に差込まれていると判定する構成としたので、専用キー判定手段を比較的簡単な構成で実現することができ、ピッキングに対する安全性を高めることができるといったメリットを得ることができる。
図8は、本発明の他の実施例を示すものであり、この実施例が上記一実施例と異なる点は、内箱7の上壁部7aに設けられたキー挿入口12部分の構成にある。即ち、本実施例では、の下面側(裏面側)には、キー挿入口12を開閉可能に塞ぐ矩形板状の蓋部材31が設けられている。この蓋部材31は、上壁部7aの下面側において図で左辺側が枢支されて、矢印A方向及びそれとは反対方向に回動(開閉)可能に設けられていると共に、ばね32によって、常にキー挿入口12を閉塞する方向(矢印Aとは反対方向)に付勢されている。
専用キー13(図示せず)は、キー挿入口12に対し、ばね32のばね力に抗して蓋部材31を矢印A方向に押し開ける(回動させる)ようにしながら、差込まれるようになっている。そして、上壁部7aには、キー挿入口12の長手方向両側(図で前後両側)に位置して、認証スイッチ21,22が設けられているのであるが、これら認証スイッチ21,22は、上壁部7aの裏面側からも押圧操作可能に設けられている。
これに対し、前記蓋部材31には、前記各認証スイッチ21,22を夫々オン操作するための突起部33,33(図8(b)に1個のみ図示)が一体的に設けられている。従って、図8(b)に示すように、前記蓋部材31がキー挿入口12を閉塞している状態で、各突起部33,33が各認証スイッチ21,22を押してオンさせており、蓋部材31が開放されると、各突起部33,33が各認証スイッチ21,22から離れてオフさせるようになっている。従って、認証スイッチ21,22は、専用キー判定手段として機能することに加えて、蓋部材31が開放されたことを検出する開放検知センサとしても機能するようになっている。
認証スイッチ21,22からの信号が入力される制御回路15は、通常時、つまりキー挿入口12に専用キー13が差込まれていない状態では、突起部33,33により認証スイッチ21,22がオンされていることにより、蓋部材31が閉塞状態にあると判断する。これに対し、正規の専用キー13がキー挿入口12に差込まれた場合には、蓋部材31の回動によって認証スイッチ21,22が一旦オフになるが、その後すぐに専用キー13の突起部20,20によって認証スイッチ21,22が同時にオンになるので、正規の専用キー13が差込まれたことを判定することができる。
これに対し、もし認証スイッチ21,22がオフになった状態が所定時間継続することがあると、キー挿入口12に正規の専用キー13以外の部材(別のキーや工具など)が差込まれたと判断することができ、制御回路15は、そのような場合に(開放検知センサが蓋部材31の開放を検知しているにも拘らず専用キー判定手段により専用キーが差込まれていると判定されないときに)、警備会社への通報を行う。従って、制御回路15及び通信装置17等から第3の通報手段が構成されるようになっている。これにより、ピッキングに対する有効な対策とすることができ、しかも認証スイッチ21,22を開放検知センサとして兼用させる構成であるため、別途のセンサが不要となり、簡単な構成で済ませることができる。
尚、上記実施例では、個人の認証を行う認証手段として、非接触式のカードリーダ(認証装置16)によりICカード19のIDデータを読取る方法を採用するようにしたが、ICカード19に代えて、RFタグや携帯電話機との通信に基づいて個人の認証を行うものや、バーコードや二次元コードを光学的に読取ることに基づいて認証を行うもの、指紋、手指の静脈、虹彩、声紋などを用いた生体認識など、様々な手法を採用することができる。
また、上記実施例では、アッパケース3の内側(本体ケース2内)に内扉8を設ける構成としたが、第2の扉を、第1の扉が開放状態とされていることを条件に開閉操作可能に設けるための構成としては、第1の扉と第2の扉とを並列に設けながらも、第1の扉の閉塞状態では、第1の扉に設けられた覆い部がキー挿入口を覆って専用キーの差込みを禁止するといった構成とすることも可能である。その他、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で、適宜変更して実施し得るものである。
図面中、1はセキュリティ機器、2は本体ケース、3はアッパケース(第1の扉)、5は電気錠(第1のロック手段)、6は第1の扉センサ(第1の通報手段)、7は内箱、7aは上壁部、8は内扉(第2の扉)、9はユーザ操作部(第1の設定操作部)、11は機械錠(第2のロック手段)、12はキー挿入口、13は専用キー、14は第2の扉センサ(第2の通報手段)、15は制御回路(第1制御手段、第2の制御手段、専用キー判定手段)、16は認証装置(認証手段)、17は通信装置、18は設定操作部(第2の設定操作部)、19はICカード、20は突起部、21,22は認証スイッチ(専用キー判定手段)、31は蓋部材を示す。