JP2010038225A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】クラッチ焼けを防止してクラッチの耐久性を向上させることができる自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】クラッチ温度推定手段105はLowクラッチのプレート温度を推定し、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106は、アイドルニュートラル制御の実行開始からこの推定プレート温度がクラッチ上限温度に達するまでの連続許可時間を決定する。アイドルニュートラル制御実行手段104は、所定の条件下で、決定された連続許可時間だけアイドルニュートラル制御を実行する。アイドルニュートラル制御禁止手段107は、アイドルニュートラル制御実行手段104が上記のように決定された連続許可時間だけアイドルニュートラル制御を実行した場合には、その後、車両が所定の車速以上で所定時間走行するまでアイドルニュートラル制御実行手段104によるアイドルニュートラル制御の実行を禁止する。
【選択図】図2

Description

本発明は、車両用の自動変速機の制御装置に関し、特に、Lowクラッチのプレート温度を推定することによりいわゆるアイドルニュートラル制御の実行可能時間を適切に設定することができる自動変速機の制御装置に関する。
従来、車両用の自動変速機は、その内部に複数の油圧クラッチ、油圧ブレーキ等の摩擦係合要素を備えており、これらを適宜解放、締結することにより所定の変速段の達成等の様々な制御を行っている。近年では、エンジンにトルクコンバータ(流体継手)を介して入力軸を連結されるタイプの自動変速機において、アイドルニュートラル制御が実用化されている。
アイドルニュートラル制御とは、上記のような自動変速機においてシフトレンジ(シフトポジション)が走行レンジ(Dレンジ)にあるときであっても、アクセルペダル開度が所定値以下、ブレーキが踏み込まれている、車速が所定値以下等の条件が成立したときに、自動変速機を擬似的なニュートラル状態にする、すなわち、シフトレンジが中立レンジ(Nレンジ)や駐車レンジ(Pレンジ)にあるときのようなニュートラル状態に近づける制御である。アイドルニュートラル制御を行う自動変速機によれば、車両の停車時に走行レンジにあるアイドリング状態で発生するアイドリング振動を低減することができるとともに、車両の燃費(燃料経済性)を向上することができる。
ここで、このようなアイドルニュートラル制御では、摩擦係合要素においてある程度の伝達トルクを許容するため、アイドルニュートラル制御が所定時間以上継続して実行されたり、予め設定されていた値よりも大きい伝達トルクが摩擦係合要素に加えられたりすることにより、摩擦係合要素、すなわち、Lowクラッチのクラッチプレートの温度が過度に上昇してしまう可能性があった。この場合、過度の温度上昇を繰り返すことによりLowクラッチの耐久性を劣化させてしまうという問題がある。
この問題を解決するために、Lowクラッチのクラッチプレート温度を推定することにより、クラッチプレート温度が所定温度未満のときにアイドルニュートラル制御の実行を許可するとともに、アイドルニュートラル制御の実行中に当該所定温度以上になるとこのアイドルニュートラル制御を終了させる車両用自動変速機のニュートラル制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−353844号公報
特許文献1に開示される自動変速機のニュートラル制御装置では、クラッチプレートの温度は、駆動力源(エンジン)の回転速度、自動変速機の入力回転速度、および自動変速機へ供給される作動油の温度に基づいて推定されている。しかしながら、より正確なクラッチプレート温度の推定を行うためには、駆動力源の回転速度等に加え、摩擦係合要素の潤滑状態(シフトギア段、シフトレンジ)に基づいて自動変速機、とくにLowクラッチのクラッチプレートにおける発熱量および放熱量を計算し、クラッチプレートの温度を推定する必要がある。
また、特許文献1に開示される自動変速機のニュートラル制御装置では、上記のように推定したクラッチプレートの温度をリアルタイムで監視し、この温度が所定温度以上になったときにアイドルニュートラル制御の実行を禁止する制御を行っている。しかしながら、この自動変速機のニュートラル制御装置では、例えば、突発的に外乱が入力されることによりクラッチプレートの温度が瞬間的に所定温度を超えてしまった場合であっても実行中のアイドルニュートラル制御を中止してしまうため、実行可能な状態であるにもかかわらずアイドルニュートラル制御の実行時間が短くなってしまうという問題がある。
さらに、特許文献1に開示される自動変速機のニュートラル制御装置では、複雑な運転状況下では発熱量の計算にばらつきが生じてしまい、このばらつきによりクラッチプレート温度を誤認(誤推定)してクラッチプレートを焼いてしまう可能性がある。このため、このようなニュートラル制御装置では高負荷入力時にはその後十分な冷却時間を設ける必要がある。
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、Lowクラッチのプレート温度の推定精度を向上させることができるとともに、その推定温度に応じてアイドルニュートラル制御の実行時間を適切に設定することにより、クラッチ焼けを防止してクラッチの耐久性を向上させることができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様における自動変速機の制御装置は、自動変速機のシフトレンジが走行レンジ(Dレンジ)とされているときであっても、所定の条件が成立したときに、自動変速機を擬似的なニュートラル状態(アイドルニュートラル状態)にする擬似ニュートラル制御(アイドルニュートラル制御)と、擬似ニュートラル制御時の自動変速機のクラッチへの入力トルクが所定値となるようにクラッチ油圧を制御するクラッチ油圧制御とを行う自動変速機の制御装置(10、101〜109)において、所定の条件の成立を判断する手段として、アクセルペダル開度(APAT)が所定値以下であるか否かを判断するアクセルペダル開度判断手段(101)と、ブレーキが踏み込まれているか否かを判断するブレーキ判断手段(102)と、車速(Nv)が所定値以下であるか否かを判断する車速判断手段(103)とを備えるとともに、これらすべての判断手段が対応する条件の成立を判断したときに、自動変速機を擬似的なニュートラル状態に移行させる擬似ニュートラル制御実行手段(104)と、Lowクラッチのプレート温度(T)を推定するクラッチ温度推定手段(105)と、擬似ニュートラル制御実行手段(104)により擬似ニュートラル制御の実行が開始されてから、クラッチ温度推定手段(105)により推定されるプレート温度(T)が所定の上限温度(TPmax:例えば、130℃)に達するまでの連続許可時間(TIN)を決定する擬似ニュートラル制御実行時間決定手段(106)とを備え、擬似ニュートラル制御実行手段(104)は、すべての判断手段が対応する条件の成立を判断したとき、擬似ニュートラル制御実行時間決定手段(106)により決定された連続許可時間(TIN)だけ擬似ニュートラル制御を実行することを特徴とする。
本発明の一態様における自動変速機の制御装置によれば、このようにLowクラッチのプレート温度を推定して、この推定されたLowクラッチのプレート温度に応じてアイドルニュートラル制御の実行時間、すなわち連続許可時間を適切に設定(決定)することにより、車両の発進商品性をできるだけ保証しつつ、Lowクラッチのクラッチ焼けを効果的に防止してクラッチの耐久性を向上させることができるとともに、車両の燃料経済性(燃費)を向上させることができる。
本発明の自動変速機の制御装置では、クラッチ温度推定手段(105)は、Lowクラッチ差回転(NLD)、Lowクラッチ入力トルク(TLI)およびエンジン回転数(Ne)に基づいてLowクラッチのプレート温度を推定すればよい。これにより、エンジンの回転速度、自動変速機の入力回転速度および自動変速機へ供給される作動油の温度に基づいて算出される従来のプレート推定温度よりも精度よくLowクラッチのプレート温度を推定することができる。すなわち、自動変速機の制御装置が本構成を有することにより、Lowクラッチのプレート温度の推定精度を高めることができる。
本発明の自動変速機の制御装置では、クラッチ油圧制御においてクラッチ油圧に制御される作動油の温度(TATF)を検出する作動油温度センサ(18)をさらに備え、擬似ニュートラル制御実行時間決定手段(106)は、クラッチ温度推定手段(105)により推定されるLowクラッチのプレート温度(T)、あるいは、該Lowクラッチのプレート温度(T)と作動油温度センサ(18)により検出される作動油の温度(TATF)とに基づいて連続許可時間(TIN)を決定すればよい。これにより、Lowクラッチのクラッチ焼けをより効果的に防止し、クラッチの耐久性を高めることができる。
本発明の自動変速機の制御装置では、すべての判断手段が対応する条件の成立を判断したことにより、擬似ニュートラル制御実行手段(104)が擬似ニュートラル制御実行時間決定手段(106)により決定された連続許可時間(TIN)だけ擬似ニュートラル制御を実行した場合には、その後、車両が所定の車速(Nvl:例えば、15km/h)以上で所定時間(例えば、5秒)走行するまで擬似ニュートラル制御実行手段(104)による擬似ニュートラル制御の実行を禁止する擬似ニュートラル制御禁止手段(107)をさらに備えることが好ましい。これにより、Lowクラッチのプレート温度が所定のクラッチ上限温度となるようなLowクラッチへの高負荷入力の後には、Lowクラッチのプレート温度が十分に下がるまでアイドルニュートラル制御の実行を禁止することにより、Lowクラッチの異常発熱を抑制することができ、クラッチの耐久性を高めることができる。
なお、上記で括弧内に記した図面参照符号は、後述する実施形態における対応する構成要素を参考のために例示するものである。また、上記で括弧内に記した時間や温度等も後述する実施形態に対応して例示したものである。
本発明によれば、Lowクラッチのプレート温度を推定して、この推定されたLowクラッチのプレート温度に応じてアイドルニュートラル制御の連続許可時間を適切に設定(決定)することにより、車両の発進商品性をできるだけ保証しつつ、Lowクラッチのクラッチ焼けを防止してクラッチの耐久性を向上させることができるとともに、車両の燃料経済性(燃費)を向上させることができる。
以下、添付図面を参照して本発明の自動変速機の制御装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置を備えた車両の動力伝達系統および制御系統を概略的に示すブロック図である。車両の動力伝達系統は、動力源であるエンジン1と、エンジン1の回転出力を変速ギア機構3に伝達するための流体継手であるトルクコンバータ2と、トルクコンバータ2の回転出力を入力して設定された速度比で変速して出力する変速ギア機構3と、変速ギア機構3の回転出力を左右の車輪(例えば後輪)5に分配するディファレンシャルギア機構4とを含む。トルクコンバータ2および変速ギア機構3に付属して油圧制御装置6が設けられており、この油圧制御装置6は、トルクコンバータ2および変速ギア機構3内に設けられている油圧制御型の複数の摩擦係合要素(クラッチなど)を所定の組み合わせで締結または解放することにより、トルクコンバータ2のロックアップや、変速ギア機構3における入出力速度比を所要の変速段に設定することを行う。車両の自動変速機は、これらのトルクコンバータ2、変速ギア機構3、油圧制御装置6などによって構成される。
車両の動力伝達系統を制御するための制御系統は、車両の各部に設けられたセンサと、該各センサの出力が入力される電子制御ユニット(ECU)10と、該電子制御ユニット10によって制御される油圧制御装置6などで構成される。回転センサ11はトルクコンバータ2の入力軸の回転数(エンジン回転数)Neを検出し、回転センサ12は変速ギア機構3の入力軸(すなわち、トルクコンバータ2の出力軸)の回転数Niを検出し、回転センサ13は変速ギア機構3の出力軸の回転数Noを検出し、車速センサ14は車両の走行速度(車速)Nvを検出する。なお、車速Nvを専用に検出する車速センサ14を設けることなく、入力軸回転数Niまたは出力軸回転数Noから車速Nvを算出するようにしてもよい。例えば、「Nv=Ni×変速レシオ×タイヤ周長」あるいは「Nv=No×タイヤ周長」のような関係式に基づいて車速Nvを検出(算出)することができる。シフトレバーポジションセンサ15は、運転者によって操作されるシフトレバーのポジションを検出する。シフトレバーのポジションには、公知のように、例えば、P(パーキング)、R(後進走行)、N(ニュートラル)、D(自動変速モードでの前進走行)などがあり、さらに、3速、2速、1速等の特定の変速段を手動で指定するためのポジションが設けられてもよい。
ブレーキセンサ16は、運転者によりブレーキペダルが所定量以上踏み込まれるとブレーキがかけられたことを検出する。スロットルセンサ17は、アクセルペダルの踏み込みに応じて開度が設定されるエンジン1のスロットルの開度を検出する。アクセルペダルセンサ21は、アクセルペダルの踏み込みに応じたアクセルペダル開度APATを検出する。ATF温度センサ18は、油圧制御装置6における作動油の温度(ATF油温)TATFを検出する。油圧センサ20は、油圧制御装置6において図示しないリニアソレノイドバルブにより調圧されたライン圧Pを検出する。冷却水温センサ19は、エンジン冷却液の温度(冷却水温)を検出する。
本発明の自動変速機の制御装置は、自動変速機(変速ギア機構3)のシフトレンジが走行(D)レンジとされているときであっても、所定の条件が成立したときに、自動変速機を擬似的なニュートラル状態にするアイドルニュートラル制御と、アイドルニュートラル制御時の自動変速機のクラッチ(すなわち、Lowクラッチ)への入力トルクが所定値となるようにクラッチ油圧を制御するクラッチ油圧制御とを行うものである。そして、本発明の自動変速機の制御装置は、アイドルニュートラル制御に移行する際には、後述するアイドルニュートラル制御許可判定処理およびアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理において、アイドルニュートラル制御の実行が開始されてから、後述するクラッチプレート温度推定処理において推定されるLowクラッチのプレート温度Tが所定のクラッチ上限温度TPmax(本実施形態では、例えば、130℃)に達するまでの連続許可時間TINを決定し、この決定された連続許可時間TINだけアイドルニュートラル制御を実行するものである。これらの処理の詳細についてはフローチャートを用いて後述する。
図1に示した車両の動力伝達系統および制御系統の具体的構成は、公知の構成を適宜採用すればよい。本発明に係る自動変速機の制御装置は、電子制御ユニット10を含むものであり、該電子制御ユニット10が実現可能な種々の制御機能のうちの一つとして実施される。以下述べる実施形態においては、本発明に係る自動変速機の制御装置は、電子制御ユニット10が具備するコンピュータプログラムによって実行されるものとする。しかしながら、本発明に係る自動変速機の制御装置は、このようなコンピュータプログラムに限らず、専用の電子回路ハードウェアで構成することができるのは勿論である。
図2は、本発明の自動変速機の制御装置において実行されるアイドルニュートラル制御許可判定処理の制御系統を示すブロック図である。図2に示すように、電子制御ユニット10は、アイドルニュートラル制御における上述の所定の条件の成立を判断する手段(以下では、これらの判断手段をまとめて「所定条件成立判断手段」という)として、アクセルペダルセンサ21の検出結果に基づいて、アクセルペダル開度APATが所定値以下であるか否かを判断するアクセルペダル開度判断手段101と、ブレーキセンサ16の検出結果に基づいて、ブレーキが踏み込まれているか否かを判断するブレーキ判断手段102と、車速センサ14の検出結果に基づいて、車速Nvが所定値以下であるか否かを判断する車速判断手段103とを含む。
また、電子制御ユニット10は、所定条件成立判断手段のそれぞれが対応する条件の成立を判断したときに、変速ギア機構3をアイドルニュートラル状態に移行させるアイドルニュートラル制御実行手段104をさらに含む。ここで、変速ギア機構3をアイドルニュートラル状態に移行させるために、電子制御ユニット10は、ATF温度センサ18により検出された作動油の温度TATF等に基づいて決定される目標スリップ率を油圧制御装置6に出力し、油圧制御装置6は、トルクコンバータ2のスリップ率がこの目標スリップ率になるようにLowクラッチに供給する作動油の油圧を制御する。なお、目標スリップ率の決定等は本発明の特徴部分ではなく、公知の方法を用いて行えばよいため、その詳細な説明を省略する。
また、電子制御ユニット10は、Lowクラッチのプレート温度Tを推定するクラッチ温度推定手段105と、上述のように、アイドルニュートラル制御実行手段104によりアイドルニュートラル制御の実行が開始されてから、クラッチ温度推定手段105により推定されるLowクラッチのプレート温度が所定のクラッチ上限温度TPmaxに達するまでの連続許可時間TINを決定するアイドルニュートラル制御実行時間決定手段106とをさらに含む。アイドルニュートラル制御実行手段104は、上述するすべての判断手段101〜103が対応する条件の成立を判断したとき、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により決定された連続許可時間TINだけアイドルニュートラル制御を実行する。なお、従来の自動変速機の制御装置と同様に、いずれかの判断手段101〜103の対応する条件が不成立となったときには、アイドルニュートラル制御実行手段104は、連続許可時間TINが経過する前であっても実行中のアイドルニュートラル制御を終了するものである。
また、電子制御ユニット10は、すべての判断手段101〜103が対応する条件の成立を判断したことにより、アイドルニュートラル制御実行手段104がアイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により決定された連続許可時間TINだけアイドルニュートラル制御を実行した場合には、その後、車両が所定の車速Nvl(例えば、15km/h)以上で所定時間(例えば、5秒)走行するまでアイドルニュートラル制御実行手段104によるアイドルニュートラル制御の実行を禁止するアイドルニュートラル制御禁止手段107をさらに含む。連続許可時間TINだけアイドルニュートラル制御を実行した後にアイドルニュートラル制御禁止手段107により所定の条件が成立するまでアイドルニュートラル制御の実行を禁止することにより、アイドルニュートラル制御の実行によるLowクラッチプレートの過度の温度上昇を効果的に防止することができる。これにより、クラッチの耐久性を保証しつつ、できるだけ長くアイドルニュートラル制御を実行させることができ、車両の発進商品性を確保させることができる。
なお、電子制御ユニット10は、計時手段(タイマ)108と、メモリ109とをさらに含む。計時手段108は、アイドルニュートラル制御実行手段104によりアイドルニュートラル制御が開始されてからの経過時間を計時するとともに、アイドルニュートラル制御禁止手段107の判定基準となる所定時間を計時する。また、メモリ109には、アイドルニュートラル制御やクラッチ油圧制御を含む各種制御を実行するための制御プログラムを格納するとともに、アクセルペダル開度判断手段101の判断基準であるアクセルペダル開度の所定値、車速判断手段103の判断基準である車速の所定値、クラッチ温度推定手段105により推定されるLowクラッチのプレート温度T、Lowクラッチのプレート温度のクラッチ上限温度TPmax、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により決定される連続許可時間TIN、後述するアイドルニュートラル終了フラグ等が格納される。
クラッチ温度推定手段105は、Lowクラッチ差回転、Lowクラッチ入力トルクおよびエンジン回転数Neに基づいてクラッチの温度を推定する。本発明では、Lowクラッチのプレート温度は、クラッチの潤滑状態に影響を与えるエンジン回転数Ne、シフトギア段、シフトレンジ毎にクラッチの冷却特性を考慮して推定される。このため、Lowクラッチのプレート温度の推定精度を高めることができる。以下、本発明の自動変速機の制御装置において用いられるLowクラッチのプレート温度の推定処理の具体的な処理内容を説明する。
本発明では、Lowクラッチにおける発熱量Qcと放熱量Qdを用いて、Lowクラッチのプレート温度Tを推定するものである。発熱量Qcおよび放熱量Qdは以下の式(1)〜(3)により算出(推定)される。
発熱量Qc(J/秒)
=NLD(rpm)×2π/60×TLI(kgfm)×9.8087 (1)
ここで、NLDはLowクラッチ差回転であり、変速ギア機構3の入力軸回転数Niからその出力軸回転数NoとLowレシオの積を引いた値をアイドルレシオで除したものである。TLIはLowクラッチ入力トルクであり、本実施形態ではアイドルニュートラル時には一定値α(kgfm)であり、Lowクラッチ締結状態からアイドルニュートラル制御への移行時またはアイドルニュートラル制御からのLowクラッチへのインギア時にはα+(Low指示油圧−アイドルニュートラル中Low指示油圧)×k1である。k1は定数であり、油圧をトルクに変換するための係数である。
なお、発熱量Qcの推定精度を増すために、以下のような式により発熱量Qcを算出してもよい。
発熱量Qc(J/秒)
=A+NLD(rpm)×2π/60×B(kgfm)×9.8087 (2)
ここで、定数Aは、アイドルニュートラル制御中、Lowクラッチ締結状態からアイドルニュートラル制御への移行時およびアイドルニュートラル制御からのLowクラッチへのインギア時のそれぞれにおいて一定の値である。NLDは上記と同様にLowクラッチ差回転である。また、定数Bは、Lowクラッチ締結状態からアイドルニュートラル制御への移行時またはアイドルニュートラル制御からのLowクラッチへのインギア時には(Low指示油圧−アイドルニュートラル中Low指示油圧)×k1であり、それ以外の場合には0である。なお、k1は定数であり、油圧をトルクに変換するための係数である。
放熱量Qd(J/秒)=kd×(TPP−(TATF−kc)) (3)
ここで、kdは放熱係数であり、Lowクラッチの状態(締結、強制潤滑有り無し)毎にエンジン回転数で持ち分ける係数である。TPPはLowクラッチのプレート温度の前回推定値であり、TATFはATF温度センサ18により検出される作動油の油温である。また、kcは補正定数である。なお、放熱係数kdをエンジン回転数により持ち分けるのは、作動油の潤滑量によりLowクラッチプレートの冷え方が変化するためである。
このような発熱量Qcおよび放熱量Qdを用いて、Lowクラッチのプレート温度Tは以下のように算出される。
(℃)=TPP+(Qc−Qd)/k2×Tw (4)
ここで、TPPはLowクラッチのプレート温度の前回推定値であり、QcおよびQdはそれぞれ上記の式により算出された発熱量および放熱量(J/秒)である。また、k2は定数であり、熱量を温度に変換するための係数である。TwはLowクラッチの仕事時間(秒)である。
このようにLowクラッチのプレート温度Tを推定することにより、エンジンの回転速度、自動変速機の入力回転速度および自動変速機へ供給される作動油の温度に基づいて算出される従来のプレート推定温度よりも精度よくLowクラッチのプレート温度Tを推定することができる。
本発明では、このような推定処理を用いることにより精度よく推定されたLowクラッチのプレート温度Tを利用してアイドルニュートラル制御の実行の連続許可時間TINを最適に設定することができる。すなわち、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106は、クラッチ温度推定手段105により推定されるLowクラッチのプレート温度T、あるいは、Lowクラッチのプレート温度TとATF温度センサ18により検出される作動油の温度TATFとに基づいて連続許可時間TINを決定する。
次に、アイドルニュートラル制御の連続許可時間TINとLowクラッチのプレート温度Tとの関係を具体的に説明する。図3は、アイドルニュートラル制御の実施に対するアイドルニュートラル制御の連続許可時間TINとLowクラッチのプレート温度Tとの関係を示すタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、アイドルニュートラル制御を実行中であるか否かを表すフラグを上段に示し、後述するようなアイドルニュートラル制御がタイムアップにより終了したことを表すアイドルニュートラル終了フラグを中段に示し、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により決定される連続許可時間TINおよびLowクラッチのプレート温度Tの時間変化を下段に示す。
図3のタイミングチャートの事象を時間経過に従って説明する。まず、クラッチ温度推定手段105により推定されるLowクラッチのプレート温度(以下、ここでは、「クラッチ推定温度」という)Tが十分に低い状態においてアイドルニュートラル制御実行手段104により変速ギア機構3をアイドルニュートラル制御に移行すると、図示のように十分に長い連続許可時間TINが設定される。アイドルニュートラル制御の実施(1)に移行後、計時手段108により経過時間(アイドルニュートラル制御の連続実行時間)が計時され、時間の経過に伴ってクラッチ推定温度Tが徐々に上昇していく。
最初のアイドルニュートラル制御の実施(1)では、アイドルニュートラル制御から通常の自動変速制御(走行状態)に移行したことによりアイドルニュートラル制御が解除される。車両の走行中には作動油の潤滑量が増えるとともに、Lowクラッチが締結または開放のいずれかの状態となってクラッチすべりによる発熱が生じないため、クラッチ推定温度が徐々に低下していく。クラッチ推定温度Tがあまり下がっていない状態で各判断手段101〜103の対応する条件が成立することにより再度アイドルニュートラル制御の実施(2)に移行すると、今度はクラッチ推定温度Tが高いため短い連続許可時間TINが設定される。そして、アイドルニュートラル制御の実施(2)に移行後の経過時間が設定された連続許可時間TINに到達すると、タイムアップによりアイドルニュートラル制御が解除される。このとき、クラッチ推定温度Tは、予め設定され、メモリ109に格納されていたクラッチ上限温度TPmaxに到達したものと推定される。また、タイムアップにより実行中のアイドルニュートラル制御が強制的に終了されたので、アイドルニュートラル終了フラグに「1」が設定される。
このようにタイムアップによりアイドルニュートラル制御が解除された場合には、上述のように、アイドルニュートラル制御禁止手段107は、その後、車両が所定の車速Nvl(例えば、15km/h)以上で所定時間(例えば、5秒)走行するまでアイドルニュートラル制御実行手段104によるアイドルニュートラル制御の実行を禁止する。この場合、クラッチすべりによる発熱が生じることがなく、また上記条件をクリアするために車両が所定の走行状態に移行しなければならないので、作動油の潤滑量も増えることにより、クラッチ推定温度Tが徐々に低下する。そして、所定のタイミングでアイドルニュートラル制御禁止手段107によるアイドルニュートラル制御の実行禁止の解除条件が成立し、アイドルニュートラル終了フラグに「0」が設定される。
その後、各判断手段101〜103の対応する条件が再度成立することによりアイドルニュートラル制御の実施(3)に移行すると、現在のクラッチ推定温度Tに応じたそれなりの長さの連続許可時間TINが設定される。そして、アイドルニュートラル制御の実施(3)に移行後の経過時間が設定された連続許可時間TINに到達すると、タイムアップによりアイドルニュートラル制御が解除される。このとき、上記(2)の場合と同様に、クラッチ推定温度Tはクラッチ上限温度TPmaxに到達したものと推定される。また、タイムアップによりアイドルニュートラル制御が解除されたので、アイドルニュートラル終了フラグに「1」が設定されるとともに、アイドルニュートラル制御禁止手段107により所定の実行禁止の解除条件をクリアするまでアイドルニュートラル制御の実行が禁止される。
次に、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置の動作を説明する。本実施形態では特に本発明に特有の動作についてフローチャートを参照しつつ説明するものとし、従来から行われているアイドルニュートラル制御そのものの動作についてはその説明を省略する。
まず、電子制御ユニット10により実行されるクラッチプレート温度推定処理について説明する。図4は、自動変速機の電子制御ユニット10において実行されるクラッチプレート温度推定処理を示すフローチャートである。図3のタイミングチャートを用いて説明したように、本クラッチプレート温度推定処理は、車両のエンジン1が駆動している状態において実行される。なお、アイドルニュートラル制御の実施に際して(すなわち、運転者(ユーザ)が自動変速モードでの前進走行(D)モードを選択中に)Lowクラッチのプレート温度Tを推定するものであり、その他の状態(例えば、P(パーキング)、R(後進走行)、N(ニュートラル)モード)においては原則としてクラッチプレート温度推定処理を実行しなくてもよい。
まず、電子制御ユニット10のクラッチ温度推定手段105は、変速ギア機構3の入力軸回転数Niおよび出力軸回転数NoとLowレシオ等を用いてLowクラッチのクラッチ差回転NLDを計算する(ステップS101)。そして、クラッチ温度推定手段105は、現在アイドルニュートラル制御を実行中であるか、あるいはLowギアへのインギア制御を実行中であるかを判断する(ステップS102)。
現在アイドルニュートラル制御もLowギアへのインギア制御も実行していないと判断すると、Lowクラッチが完全に締結されている状態であるかあるいは開放されているニュートラル(オフギア)状態であるので、クラッチ温度推定手段105は、発熱量を0と設定し(ステップS106)、ステップS107に移行する。また、現在アイドルニュートラル制御またはLowギアへのインギア制御を実行中であると判断すると、クラッチ温度推定手段105は、さらに現在アイドルニュートラル制御においてクラッチ入力トルクをフィードバック中であるか否かを判断する(ステップS103)。
クラッチ入力トルクをフィードバック中ではないと判断すると、アイドルニュートラル制御においてまだクラッチ入力トルクが一定値に到達していない状態であるかあるいはLowクラッチの締結途中で該クラッチ入力トルクがアイドルニュートラル制御中のクラッチ入力トルク以上の状態であるため、クラッチ温度推定手段105は、アイドルニュートラル制御中のクラッチ入力トルクと現在のクラッチ入力トルクとの差分トルクをLowクラッチの指示油圧を用いて計算し(ステップS104)、ステップS105に移行する。クラッチ入力トルクがフィードバック中であると判断するとそのままステップS105に移行し、クラッチ温度推定手段105は、アイドルニュートラルフィードバック制御実施中のクラッチトルク容量を一定としてLowクラッチの発熱量Qc(上述の式(1)、(2)を参照)を計算する(ステップS105)。
そして、クラッチ温度推定手段105は、Lowクラッチの締結/開放状態、変速ギア機構3への入力軸回転数Ni(あるいは、エンジン1の出力軸回転数Ne)に応じてLowクラッチの放熱量Qd(上述の式(3)を参照)を計算する(ステップS107)。最後に、クラッチ温度推定手段105は、ステップS105(またはS106)およびS107で得られたLowクラッチの発熱量Qc(または0)および放熱量Qdに基づいて、Lowクラッチのプレート温度T(上述の式(4)を参照)を推定して(ステップS108)、その推定されたLowクラッチのプレート温度Tをメモリ109に格納するとともに、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106に出力して、このクラッチプレート温度推定処理を終了する。
次に、Lowクラッチのプレート温度Tが推定されたことにより実行されるアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理について説明する。図5は、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置において実行されるアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理を示すフローチャートである。図4のクラッチプレート温度推定処理が実行され、Lowクラッチのプレート温度Tが推定されると、電子制御ユニット10は、続いて、このアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理を実行する。
まず、電子制御ユニット10は、各判断手段101〜103で対応する条件がすべて成立しているか否かを判断する(ステップS201)。すなわち、電子制御ユニット10は、アイドルニュートラル制御への移行を許可すべき条件が成立しているか否かを判断する。各判断手段101〜103の対応する条件のうちいずれかの条件が成立していないと判断した場合には、このアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理を終了する。
一方、各判断手段101〜103で対応する条件がすべて成立していると判断した場合には、電子制御ユニット10は、現在アイドルニュートラル制御を実施中であるか否かを判断する(ステップS202)。現在アイドルニュートラル制御を実施中であると判断した場合には、既にアイドルニュートラル制御の連続許可時間が設定されているので、このアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理を終了する。
一方、現在アイドルニュートラル制御を実施中ではないと判断した場合には、今回の処理で初めてアイドルニュートラル制御に移行したことになるので、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106は、図4のクラッチプレート温度推定処理において推定されたLowクラッチのプレート温度T、あるいは、この推定されたLowクラッチのプレート温度TとATF温度センサ18により検出された作動油の温度TATFとに基づいて、アイドルニュートラル制御の連続許可時間TINを決定する(ステップS203)。そして、アイドルニュートラル制御実行手段104は、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により決定された連続許可時間TINを計時手段108が計時している間アイドルニュートラル制御を実行するようにアイドルニュートラル制御の実行を開始して(ステップS204)、このアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理を終了する。
次に、図3に示すタイミングチャートのような一連のアイドルニュートラル制御許可判定処理について説明する。図6および図7は、本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置において実行されるアイドルニュートラル制御許可判定処理を示すフローチャートである。このアイドルニュートラル制御許可判定処理は、車両のエンジン1の駆動中に繰り返し実行されるものである。
まず、電子制御ユニット10は、アイドルニュートラル終了フラグに「1」が設定されているか否かを判断する(ステップS301)。アイドルニュートラル終了フラグに「1」が設定されていないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、タイマ1を設定し(ステップS302)、ステップS307に移行する。
一方、アイドルニュートラル終了フラグに「1」が設定されていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、車速センサ14により検出される車速Nvが所定の車速Nvl以上であるか否かを判断する(ステップS303)。車速Nvが所定の車速Nvl以上ではないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、タイマ1を設定し(ステップS304)、さらにタイマ2を設定して(ステップS313)、ステップS316に移行する。また、車速Nvが所定の車速Nvl以上であると判断した場合には、電子制御ユニット10は、計時手段108によりタイマ1に設定された時間が計時されたか否か、すなわち、タイマ1が「0」になったか否かを判断する(ステップS305)。
タイマ1が「0」になっていないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、タイマ2を設定して(ステップS313)、ステップS316に移行する。一方、タイマ1が「0」になったと判断した場合には、電子制御ユニット10は、メモリ109に格納されているアイドルニュートラル終了フラグに「0」を設定し(ステップS306)、現在アイドルニュートラル制御の実行中であり、かつ計時手段108がアイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により決定されたアイドルニュートラル制御の連続許可時間TINを計時したか否か、すなわち、アイドルニュートラル制御の連続許可時間タイマが「0」になったか否かを判断する(ステップS307)。アイドルニュートラル制御の実行中ではなく、あるいはアイドルニュートラル制御の連続許可時間タイマが「0」ではないと判断した場合には、ステップS309に移行する。一方、アイドルニュートラル制御の実行中であり、かつアイドルニュートラル制御の連続許可時間タイマが「0」になったと判断した場合には、電子制御ユニット10は、アイドルニュートラル終了フラグに「1」を設定してから(ステップS308)、ステップS309に移行する。
次いで、アクセルペダル開度判断手段101は、アクセルペダル開度が実質的に0であるか、すなわち、アクセルがOFFになっているか否かを判断し(ステップS309)、また、ブレーキ判断手段102は、ブレーキが踏み込まれているか、すなわちブレーキがONされているか否かを判断し(ステップS310)、電子制御ユニット10は、ATF温度センサ18により検出される作動油の温度TATFが一定の範囲内にあるか否かを判断するとともに(ステップS311)、冷却水温センサ19により検出されるエンジン冷却液の温度(冷却水温)が一定の温度以上であるか否かを判断する(ステップS312)。ステップS310〜S313のいずれかのステップにおいて否定的な判断がなされると、電子制御ユニット10は、タイマ2を設定し(ステップS313)、アイドルニュートラル制御の実行を不許可(禁止)とし(ステップS316)、アイドルニュートラル連続許可時間タイマに「0」を設定して(ステップS317)、このアイドルニュートラル制御許可判定処理を終了する。
一方、ステップS309〜S312のすべてのステップにおいて肯定的な判断がなされると、電子制御ユニット10は、タイマ2が「0」になっているか否かを判断する(ステップS314)。タイマ2が「0」になっていると判断した場合には、電子制御ユニット10は、アイドルニュートラル制御の実行を許可し(ステップS315)、このアイドルニュートラル制御許可判定処理を終了する。一方、タイマ2が「0」になっていないと判断した場合には、電子制御ユニット10は、アイドルニュートラル制御の実行を不許可(禁止)とし(ステップS316)、アイドルニュートラル連続許可時間タイマに「0」を設定して(ステップS317)、このアイドルニュートラル制御許可判定処理を終了する。
以上説明したように、本発明の一態様における自動変速機の制御装置によれば、自動変速機のシフトレンジが走行レンジ(Dレンジ)とされているときであっても、所定の条件が成立したときに、自動変速機をアイドルニュートラル状態にするアイドルニュートラル制御と、アイドルニュートラル制御時の自動変速機のクラッチへの入力トルクが所定値となるようにクラッチ油圧を制御するクラッチ油圧制御とを行う自動変速機の制御装置において、所定の条件が成立したことに応じて、アイドルニュートラル制御実行手段104により自動変速機をアイドルニュートラル制御の実行状態に移行させるのに際し、クラッチ温度推定手段105によりLowクラッチのプレート温度Tを推定し、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により、アイドルニュートラル制御実行手段104によりアイドルニュートラル制御の実行が開始されてから、クラッチ温度推定手段105により推定されるLowクラッチのプレート温度Tが所定のクラッチ上限温度TPmaxに達するまでの連続許可時間TINを決定し、アイドルニュートラル制御実行手段104は、所定の条件が成立したとき、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106により決定された連続許可時間TINだけアイドルニュートラル制御を実行することとした。したがって、このようにLowクラッチのプレート温度Tを推定して、この推定温度に応じてアイドルニュートラル制御の実行時間を適切に設定することにより、車両の発進商品性をできるだけ保証しつつ、クラッチ焼けを防止してクラッチの耐久性を向上させることができるとともに、車両の燃料経済性(燃費)を向上させることができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、クラッチ温度推定手段105は、Lowクラッチ差回転、Lowクラッチ入力トルクおよびエンジン1の回転数に基づいてLowクラッチのプレート温度Tを推定しているので、エンジンの回転速度、自動変速機の入力回転速度および自動変速機へ供給される作動油の温度に基づいて算出される従来のプレート推定温度よりも精度よくLowクラッチのプレート温度Tを推定することができる。すなわち、Lowクラッチのプレート温度Tの推定精度を高めることができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、アイドルニュートラル制御実行時間決定手段106は、クラッチ温度推定手段105により推定されるLowクラッチのプレート温度T、あるいは、Lowクラッチのプレート温度TとATF温度センサ18により検出される作動油の温度TATFとに基づいて連続許可時間TINを決定しているので、クラッチ焼けをより効果的に防止し、クラッチの耐久性を高めることができる。また、Lowクラッチのプレート温度Tを連続的に(リアルタイムに)監視して必要に応じてアイドルニュートラル制御を禁止する従来の装置に比べて、連続的な発熱ではなく、外乱等による瞬間的な発熱により一瞬だけ温度が上昇したと推定されるときにも、最適な連続許可時間TINを設定(決定)することによりアイドルニュートラル制御の実行を適切に継続することができる。
上述の実施形態における自動変速機の制御装置では、アイドルニュートラル制御実行手段104がアイドルニュートラル制御実行時間決定手段105により決定された連続許可時間TINだけアイドルニュートラル制御を実行した場合には、アイドルニュートラル制御禁止手段107は、その後、車両が所定の車速以上で所定時間走行するまでアイドルニュートラル制御実行手段104によるアイドルニュートラル制御の実行を禁止しているので、Lowクラッチのプレート温度Tが所定のクラッチ上限温度TPmaxとなるようなLowクラッチへの高負荷入力の後には、Lowクラッチのプレート温度Tが十分に下がるまでアイドルニュートラル制御の実行を禁止することにより、Lowクラッチの異常発熱を抑制することができ、クラッチの耐久性を高めることができる。
以上、本発明の自動変速機の制御装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は、これらの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書および図面に記載のない形状・構造・機能を有するものであっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。すなわち、自動変速機の制御装置(油圧制御回路を含む)を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
なお、上述の実施形態では、アイドルニュートラル制御禁止手段107は、アイドルニュートラル制御実行手段104がアイドルニュートラル制御実行時間決定手段105により決定された連続許可時間TINだけアイドルニュートラル制御を実行した場合には、その後所定の条件が成立するまでアイドルニュートラル制御の実行を禁止していたが、アイドルニュートラル制御禁止手段107は、このような場合にアイドルニュートラル制御の実行を禁止するのみならず、例えば、Lowクラッチに高負荷入力を与えるような事象(キックダウン(ブレーキペダルをキックすることによる自動変速機の自動シフトダウン)、マニュアルによるシフトダウン、レーシングインギア等)が生じた場合においても、クラッチプレートの温度が十分に下がるまでアイドルニュートラル制御の実行を禁止するように構成されてもよい。
本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置を備えた車両の動力伝達系統および制御系統を概略的に示すブロック図である。 本発明の自動変速機の制御装置において実行されるアイドルニュートラル制御許可判定処理の制御系統を示すブロック図である。 アイドルニュートラル制御の実施に対するアイドルニュートラル制御の連続許可時間とLowクラッチのプレート温度との関係を示すタイミングチャートである。 本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置において実行されるクラッチプレート温度推定処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置において実行されるアイドルニュートラル制御連続許可時間設定処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置において実行されるアイドルニュートラル制御許可判定処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態における自動変速機の制御装置において実行されるアイドルニュートラル制御許可判定処理を示すフローチャートである。
符号の説明
1 エンジン
2 トルクコンバータ
3 変速ギア機構
4 ディファレンシャルギア機構
6 油圧制御装置
10 電子制御ユニット
11〜13 回転センサ
14 車速センサ
15 シフトレバーポジションセンサ
16 ブレーキセンサ
17 スロットルセンサ
18 ATF温度センサ
19 冷却水温センサ
20 油圧センサ
21 アクセルペダルセンサ
101 アクセルペダル開度判断手段
102 ブレーキ判断手段
103 車速判断手段
104 アイドルニュートラル制御実行手段
105 アイドルニュートラル制御実行時間決定手段
105 クラッチ温度推定手段
106 アイドルニュートラル制御実行時間決定手段
107 アイドルニュートラル制御禁止手段
108 計時手段(タイマ)
109 メモリ

Claims (4)

  1. 自動変速機のシフトレンジが走行レンジとされているときであっても、所定の条件が成立したときに、前記自動変速機を擬似的なニュートラル状態にする擬似ニュートラル制御と、前記擬似ニュートラル制御時の前記自動変速機のクラッチへの入力トルクが所定値となるようにクラッチ油圧を制御するクラッチ油圧制御とを行う自動変速機の制御装置において、
    前記所定の条件の成立を判断する手段として、
    アクセルペダル開度が所定値以下であるか否かを判断するアクセルペダル開度判断手段と、
    ブレーキが踏み込まれているか否かを判断するブレーキ判断手段と、
    車速が所定値以下であるか否かを判断する車速判断手段と
    を備えるとともに、
    これらすべての判断手段が対応する条件の成立を判断したときに、前記自動変速機を擬似的なニュートラル状態に移行させる擬似ニュートラル制御実行手段と、
    Lowクラッチのプレート温度を推定するクラッチ温度推定手段と、
    前記擬似ニュートラル制御実行手段により前記擬似ニュートラル制御の実行が開始されてから、前記クラッチ温度推定手段により推定される前記プレート温度が所定の上限温度に達するまでの連続許可時間を決定する擬似ニュートラル制御実行時間決定手段と
    を備え、
    前記擬似ニュートラル制御実行手段は、前記すべての判断手段が対応する条件の成立を判断したとき、前記擬似ニュートラル制御実行時間決定手段により決定された連続許可時間だけ前記擬似ニュートラル制御を実行することを特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 前記クラッチ温度推定手段は、Lowクラッチ差回転、Lowクラッチ入力トルクおよびエンジン回転数に基づいて前記Lowクラッチのプレート温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記クラッチ油圧制御において前記クラッチ油圧に制御される作動油の温度を検出する作動油温度センサをさらに備え、
    前記擬似ニュートラル制御実行時間決定手段は、前記クラッチ温度推定手段により推定される前記Lowクラッチのプレート温度、あるいは、該Lowクラッチのプレート温度と前記作動油温度センサにより検出される作動油の温度とに基づいて前記連続許可時間を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置。
  4. 前記すべての判断手段が対応する条件の成立を判断したことにより、前記擬似ニュートラル制御実行手段が前記擬似ニュートラル制御実行時間決定手段により決定された前記連続許可時間だけ前記擬似ニュートラル制御を実行した場合には、その後、車両が所定の車速以上で所定時間走行するまで前記擬似ニュートラル制御実行手段による前記擬似ニュートラル制御の実行を禁止する擬似ニュートラル制御禁止手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
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