JP2010037643A - 堆積膜形成方法 - Google Patents

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誠 青木
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大介 田澤
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Abstract

【課題】特に光学積層膜を設計どおりに再現性よく得ることができる堆積膜形成方法を提供する。
【解決手段】反応容器内に原料ガスを導入する工程と、高周波電力を印加する工程を複数回繰り返す事により、基板上に複数の堆積膜を積層する堆積膜形成方法であって、(1)反応容器体積とガス圧力とガス流量から計算されるガス滞留時間の5倍以上の時間、一定流量のガスを流しつづけ、反応容器内のガス分布を安定化させる安定化工程211と、安定化工程211後に高周波電源から電力を印加して放電を開始し、基板上に堆積膜を形成する膜堆積工程212と、を有し、(2)膜堆積工程212は、電力の立ち上がり工程201と、インピーダンス整合工程203と、安定放電工程205と、電力をオフする立ち下がり工程204と、からなり、立ち上がり工程201とインピーダンス整合工程203と立ち下がり工程204の合計時間が、1秒以上、10秒以下である。
【選択図】図2

Description

本発明は堆積膜を形成するための方法に関し、特に多層の光学薄膜を再現性よく得るための方法に関する。
従来、半導体デバイス、電子写真感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素子を作成する際には様々な堆積膜形成方法が用いられる。一例として、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、プラズマCVD法の如き方法が多数知られており、そのための装置も実用に付されている。中でも高周波電力を用いたプラズマプロセスは、様々な材料を用いた堆積膜作成に用いることが出来、例えば酸化膜や窒化膜の如き絶縁性の材料形成にも使用できるため、広く応用されている。プラズマプロセスの好適な使用例としては、例えば電子写真用水素化アモルファスシリコン(以下、a−Si:Hと表記する)堆積膜の形成が挙げられ、これらの分野では現在実用化が非常に進んでおり、そのための装置も各種提案されている。
例えば、均一性、再現性、安定性を向上させるために、プラズマCVDで使用する高周波電源の電力の変化時間についての検討も数多く行われている。特に電源の立ち上がり部分に着目した放電安定性や、電力変化部分の改良による堆積膜の品質向上に関して各種提案されている。例えば、大気圧近傍の圧力下で均一なグロー放電プラズマを継続して発生させ、安定してグロー放電プラズマ処理を行う工夫が開示されている(特許文献1参照)。この中で、印加される電界がパルス化されたものであり、電圧立ち上がり時間が100μs以下、電界強度が1〜100kV/cmで作成する方法が例示されている。
また、複数の組成の異なる層を積層する際、堆積条件が変化する遷移領域における異常成長を起きにくくする工夫が為されている(特許文献2参照)。この中で、原料ガスの流量を変化させるタイミングと電力を変化させるタイミングとを異ならせ、且つ比較的緩やかな変化にすることで上記の効果を実現している。
また、電子写真感光体において、界面における光の屈折率が違うことによる反射の影響を少なくするために、屈折率を徐々に変化させる事で反射光を減少させる工夫が為されている(特許文献3参照)。具体的には、表面層と感光層との間に、両者の中間の屈折率を持ち、炭素、窒素又は酸素の含有率を膜厚方向に変化させることで実現している。
特開平10−154598号公報 特開2003−313668号公報 特公平05−049108号公報
上記従来の方法及び装置により、良好な堆積膜形成がなされる。しかしながら、例えば電子写真感光体を例に取ると、電子写真感光体に対する市場の要求レベルは日々高まっており、この要求に応えるべく、より高品質化が実現可能な電子写真感光体の製造方法が求められるようになっている。
電子写真の場合、高画質化の要求は非常に強く、これらを実現するためには感光体特性、具体的には帯電能、感度の向上が不可欠であると共に、それらの特性が感光体全体において出来るだけ均一である必要がある。また、近年その普及が目覚しいデジタル電子写真装置、カラー電子写真装置においては、文字原稿のみならず、写真、絵、デザイン画の如き出力も頻繁に為されるため、画像濃度ムラの低減が従来以上に強く求められるようになっている。例えばハーフトーン領域においては、微妙な濃度ムラも非常に目立つため、従来に増して画像濃度ムラを無くすことが求められるようになってきた。
表面層と光導電層との積層構造を持つ電子写真感光体において、このような濃度ムラは、光導電層の膜厚ムラ、膜の誘電率ムラ、抵抗の如き電気的特性のムラに起因することが多いが、近年の製造技術の発展でこれらのムラは少なくなってきている。一方、これらのムラを改善しても、表面層と光導電層との間に界面がある場合には、微妙な濃度ムラを引き起こす場合があった。即ち、表面層の膜厚に例え微小であっても面内分布がある場合、表面層と光導電層との界面における反射と、表面からの反射が干渉し、光導電層に実質的に入射する光の透過量が変化し、若干ながら濃度ムラが発生する場合があった。表面層の厚さは光導電層の厚さに比べ非常に小さいが、表面層のムラによる感度への寄与は光導電層の膜厚ムラ、膜質ムラに比べて、場合によっては大きくなってしまうことがあった。
また、電子写真装置の高画質化、高速化が進み、またオンデマンド化の要求の高まりも重なって、比較的部数の少ない軽印刷の分野において、電子写真を応用する動きが出てきている。その際には、出力画像の安定性は非常に重要である。例えば、数十万枚の出力後には、表面層が微小量磨耗することが想定されるが、その際に感度が変化して出力画像の濃度が変化することは好ましくない。また、仮に部分的な磨耗量の差が発生すると、干渉による実質的な光の透過量に差が生じ、微小な感度ムラが発生する事があった。従来であれば無視しえた程度の微妙な感度ムラも、高画質化の要求から、場合によっては問題になる可能性が出てきた。
このような表面での光の干渉を抑える方法として、特許文献3にあるような、組成を傾斜させた中間層を表面層と光導電層との間に挿入することが行われてきた。
この方法により、確かに光の干渉が抑えられ、第1に表面層の微妙な面内膜厚ムラによる初期の感度ムラを抑えることが出来る。第2に、実際の複写機内での使用に伴い発生する、微小な磨耗ムラによる感度ムラや一様な磨耗による感度変化を防ぐ事もできる。しかし、この方法ではラチチュードが狭く、例えば表面層の組成を所望の値に変えることを考えた場合、表面層と中間層とのつながりが変化するため、干渉を抑えるためには中間層の設計をやり直す必要があった。このように組成をなだらかに変化させた中間層の場合、その変化パターンを少し変えただけで分光反射率が大きく変わってしまう場合があり、干渉が抑えられない場合が生じることがあった。このように、分光反射率が作成条件に対して非常に敏感であることで、開発期間がかかってしまう場合があった。
また、上述した干渉防止の中間層を持つ感光体を、異なる装置、例えば新しい設計の量産装置で作成しようとした場合にも、問題が生じる事があった。即ち、CVD法、特にプラズマCVD法は特性の再現性に関しては装置の微妙な差に敏感になりやすいという特徴がある。このような手法を用いるため、装置ごとの最適化が必要になる場合があり、この点からも開発期間がかかってしまう場合があった。
以上のように、光学薄膜などの堆積膜に対する要求の高まりから、高精度で再現性がよく、ラチチュードが確保できる堆積膜形成方法が望まれてきた。その一例として電子写真感光体に関しては、近年の画像濃度ムラに対する要求の高まりから、感光体の表面層近傍での干渉を抑える技術が用いられてきたが、最表面の製造条件変更や、生産装置の変更時に必要となる最適化に開発期間がかかる場合があった。そこで、この開発期間を大幅に短縮し、表面近傍領域の設計を容易にし、濃度ムラを起こさないための優れた干渉防止機能を持つ電子写真感光体の製造方法が望まれてきた。
[本発明の目的]
本発明は上記課題の解決を目的とするものである。即ち、光学薄膜、特に積層膜を設計どおりに再現性よく得ることが出来、開発期間を短縮できる堆積膜形成方法を提供する事にある。
本発明の堆積膜形成方法は、反応容器内に原料となるガスを導入する工程と、高周波電力を印加する工程を複数回繰り返す事により、前記反応容器内に設置した基板上に複数の堆積膜を積層する堆積膜形成方法であって、(1)反応容器体積とガス圧力とガス流量から計算されるガス滞留時間の5倍以上の時間、一定流量を保持してガスを流しつづけ、前記反応容器内のガス分布を安定化させる安定化工程と、前記安定化工程の後に高周波電源から電力を印加して放電を開始し、前記基板上に前記堆積膜を形成する膜堆積工程と、を有し、(2)前記膜堆積工程は、高周波電源の電力を設定値にする立ち上がり工程と、反射電力を入射電力の3%以内に収めるためのインピーダンス整合工程と、安定放電工程と、高周波電源の電力をオフする立ち下がり工程と、からなり、(3)前記立ち上がり工程と前記インピーダンス整合工程と前記立ち下がり工程の合計時間が、1秒以上、10秒以下であることを特徴とする。
本発明では、基板上に複数の堆積膜を積層する方法において、ガスの安定化と、高周波電力の立ち上がり、立ち下がり、インピーダンス整合を工夫する。このことにより、例えば電子写真感光体のような光学薄膜を設計どおりに再現性よく作成することが可能な堆積膜形成方法を提供できる。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を行った。すると、組成をなだらかに変化させる方法で作成する反射防止膜では、層設計のコントロールが難しい場合があることがわかった。例えば、電子写真感光体を例にとって説明する。図1(a)は、組成をなだらかに変化させることで屈折率を連続的に変化させた電子写真感光体である。これを作成する方法としては、図1(b)に示したように、原料ガスの流量を時間的になだらかに変化させる方法が考えられる。しかし、反応容器に導入されたガスは、厳密には導入時の流量どおりの濃度変化をしているわけではない。つまり、ガス供給配管の中では一定速度の濃度変化をしていても、反応容器内は常に供給と排気が同時に行われている。実際の膜堆積中の基板近傍のガス濃度は、ガスの反応容器中の流速分布、ガスの滞在時間にも依存するため、想定どおりになっているとは限らない。よって、供給と排気とから計算されるガス分布や滞留時間を考慮に入れながら、組成変化を厳密にコントロールする事は非常に困難である。このため、ある程度の設計を行った後、所望の製造条件や製造装置に合った微調整を施す必要がある場合が多かった。また、放電中にガス濃度やバランス、圧力が変化するため、その都度高周波電力のインピーダンス整合を取る必要がある。図1(c)は放電空間に導入される実効的な高周波電力を示しており、電力投入時の立ち上がり工程101、切断時の立ち下がり工程104、インピーダンス整合による実効的な電力の振れ102、その工程103を示している。図1(c)のように、ガス比率や圧力変化に伴ってインピーダンス整合動作が発生すると、インピーダンス整合を取る度に放電が不安定になる場合があった。
そこで本発明者らは、ガスを安定化させた後、放電を開始して一定の組成の膜を安定的に堆積させ、一旦放電を切り、ガスの比率を変え、ガスの安定化を行う、と言う事を繰り返して積層する方法で多層膜を作成した。この多層膜の多重反射を用いた光学的特性を予め設計し、設計どおりの膜を再現性よく得ることにより表面での反射を効率よく低減出来ることを見出し、本発明に至った。
図2(a)には、本発明の方法で作成した感光体の、断面方向の模式図と、深さ方向の屈折率について示した。一例としては、図2(a)にあるように階段状に組成を変化させ、屈折率を階段状にする事で表面反射の変化を抑えてもよいし、別の構成、例えば2種類の屈折率の膜を交互に積層する形の如き方法によって表面反射の変化を特定の波長域で抑えてもよい。図2(b)には、ガスの入替工程と、ガスの安定化工程211を含むガスの変化パターンを示している。ガスの入れ替え工程においては、厳密に言えば、所望のガス比であるのはガスを混合した配管内に限られ、反応容器内でその時点で狙いどおりの混合比になっているかどうかはわからないのが現状である。そこで、反応容器体積と反応ガス圧力とガス流量から計算されるガス滞留時間の5倍以上の時間、一定流量を保持してガスを安定化させる安定化工程211を設けることにより、反応容器内のガス比を平衡状態にする事が可能となり、設計どおりの組成の膜が形成可能である。5倍よりも少ない場合、若干ではあるが光学特性が設計から外れる場合があった。一方、安定化時間は長ければ長いほど好ましいが、あまり長いとガスを使用せずに捨てる量が増えるため、経済的或いはエコロジー的な観点からも好ましくない。多くとも20倍以下程度が好ましい。
安定化工程211の後に、膜堆積工程212を実行する。
理想的には、この手法で設計どおりの屈折率と膜厚の層が形成でき、予め設計した通りに積層することにより、所望の波長域で表面での反射率の変化のない多層膜が得られる。しかし、実際には、多層膜の各層の膜厚が非常に薄くなると、高周波電源投入時の立ち上がり、切断時の立ち下がりやインピーダンス整合時の合計時間の影響が無視できなくなる場合がある。今後この合計時間を非安定放電時間と称する事とし、以下で詳述する。
図2(c)には、放電時の実効的な電力を示している。放電開始、終了時には高周波電源装置のレスポンスに応じた立ち上がり工程201、立ち下がり工程204が存在する。また、立ち上がった直後にはインピーダンス整合工程203において、反射電力が変動する事による実効的な電力の振れ202が発生する。これらの非安定放電時間では厳密には設計どおりではない膜になっている可能性がある。しかし、従来技術の説明で挙げた図1(b)、(c)のような連続的に膜堆積を行う状況に対し、本発明のようにその都度ガスを安定化してから膜堆積を開始する方法では、実効的な電力の振れ202は開始時の1度しか発生しない。そこで、立ち上がり工程201、立ち下がり工程204、インピーダンス整合工程203からなる非安定放電時間を極力短くする事により、設計どおりの理想的な組成と膜厚が得られると考えられる。
インピーダンス整合工程203と立ち下がり工程204との間を、安定放電工程205と呼ぶ。
しかし実際には、立ち上がり工程201、立ち下がり工程204、インピーダンス整合工程203のいずれも、必ずしも短くすればよいというわけではない。立ち上がり工程201、立ち下がり工程204の短縮は、高周波電源の改良によりある程度達成可能であるが、あまり短時間にしすぎてもスパイク状のノイズが乗りやすくなり、好ましくない場合があった。また、インピーダンス整合工程203に関しては、正確なインピーダンス整合を取らなければ短時間での整合動作は可能である。しかし、実際にはきちんとした整合を取らなければ、所望の実効電力が反応容器内に投入できず、所望の屈折率や堆積速度を得られない可能性がある。そこで本発明者らは様々な高周波電源や反応容器、インピーダンス整合回路を用いて検討した。まず、反射電力を入射電力の3%以内に収めるためのインピーダンス整合に要する時間を整合に要する時間として定義する。この整合に要する時間をある程度以上取った方が、安定的にインピーダンス整合が得られやすいことが判った。この理由としては、如何なるインピーダンス整合回路であっても、整合には有限の時間を有する事、整合の時間をある程度とって整合の精度を上げるメリットの方が、整合時間を短くすることのメリットに比べ優っていることが挙げられる。そこで、このインピーダンス整合工程203に、立ち上がり工程201、立ち下がり工程204を合わせた合計時間である非安定放電時間が重要となる。本発明者らの検討の結果、この非安定放電時間は、如何なる電源回路、反応容器、インピーダンス整合回路を使用した場合においても、実験的に1秒以上が好ましい事が判った。一方、ある程度以上非安定放電時間が長くなると、所望の膜厚を得るための放電時間に占める不安定な放電の割合が増えてしまい、好ましくない場合が発生する。この場合、上述したようにインピーダンス整合のメリットと時間短縮のメリットとの競合関係から、非安定放電時間は、如何なる電源回路、反応容器、インピーダンス整合回路を使用した場合においても、実験的に10秒以下が好ましい事が判った。
また、ある程度インピーダンス整合回路の可変キャパシタや可変インダクタの設定値(以下、マッチングポイントと記す)が、所望の膜堆積条件の際に予め判っている場合には、そのマッチングポイントをプリセットしておく方法がより好ましい。具体的には、各層の条件で予め膜堆積を実施しておき、安定放電になった際のマッチングポイント近傍の設定値を調べておく。次に実際の感光体作成時には、各層で予め調べておいたマッチングポイントに設定後、放電を開始する。マッチングポイントは反応容器内の状況、例えば電極に堆積した膜や副生成物の量、電極の温度で微妙に変化するため、実際には予め調べておいたマッチングポイントから若干ずれることが多い。しかし、そのズレは若干量であるため、インピーダンス整合に要する時間は大幅に短縮できる。よって、より正確なインピーダンス整合を取る事が可能となり、所望の屈折率や堆積速度が正確に達成できるため、より好ましい。
また、インピーダンス整合は手動でも構わないが、何らかの自動化機構を用いた方がより好ましい。例えば具体的には、予め設定されたマッチングポイントを初期値として放電を開始した後、自動インピーダンス整合機構によってインピーダンス整合を制御することが、再現性の点でより好ましい。より具体的には、投入する電力の一部を検出する回路を設け、その回路から得られた電流検出値と電圧検出値の位相差を求めることで、整合度合いを判断する事が可能となる。位相差がない方がインピーダンス整合した状態であり、位相差を極小にするように可変キャパシタや可変インダクタを調整し、反射電力が入射電力の3%以内に収めるように調整すればよい。このような自動インピーダンス整合機構は、一般的に市販されている高周波電源に内蔵されているものが好適に使用可能である。
また、本発明では例として説明してきた通り、電子写真感光体の製造において、本願の効果が最も好適に得られる。電子写真感光体は繰り返し使用によって表面層が微量ながら磨耗していくことが一般的に知られている。このような磨耗を伴った使用が前提となる光学薄膜は電子写真以外では少なく、磨耗ムラの如き弊害を克服する上で本願発明が好適であることは言うまでもない。
次に、図2(a)のように、表面層、複数の堆積膜からなる中間層、光導電層という構成を考える。本願では、中間層と表面層との界面において、表面層を媒質と考えたときに、例えば反射防止条件を満たすように層設計を行うことも出来る。この事により、表面層が磨耗によって変化しても表面反射が変わらない状況を容易に作り出すことができる。このように、特に光導電層より上の部分(光導電層より表面側の部分)の作成時において、本願が好適に使用でき、表面反射の変化を起こさない層を設計どおりに作成する事が可能となる。
また、この光導電層より上の複数の堆積膜作成方法が、表面層及び5層以上の中間層からなる、6層以上の積層方法であることがより好ましい。これは、電子写真感光体として使用する上で単一波長のみで反射防止条件を満たすよりも、ある程度の広い波長範囲において反射防止条件を満たす方がより好ましいためである。電子写真感光体で使用する場合では、例えば像露光に用いる半導体レーザーの発振波長の温度によるドリフト、個体差の如き変動要因が考えられ、単一波長のみで反射防止条件を満たすだけでは所望の特性が得られない可能性がある。また、像露光光源の波長と、除電光光源の波長が異なる場合も想定される。このように電子写真感光体の使用時には単一波長での反射防止条件では不十分である場合が多い。そこで、上記のような反射防止条件をある程度の広い波長範囲で満たすためには、中間層が複数の層からなることがより好ましく、様々な電子写真装置での使用を考慮すれば、少なくとも5層以上の堆積膜を積層して中間層を作成する事がより好ましい。
次に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明の堆積膜形成方法を電子写真感光体に適用した例であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
図2を用いて、本発明の堆積膜形成方法を説明する。本発明の堆積膜形成方法は、反応容器内に原料となるガスを導入する工程と、高周波電力を印加する工程を複数回繰り返す事により、反応容器内に設置した基板上に複数の堆積膜を積層する堆積膜形成方法であって、(1)反応容器体積とガス圧力とガス流量から計算されるガス滞留時間の5倍以上の時間、一定流量を保持してガスを流しつづけ、反応容器内のガス分布を安定化させる安定化工程211と、(2)安定化工程211後に高周波電源から電力を印加して放電を開始し、基板上に堆積膜を形成する膜堆積工程212と、を有する。
膜堆積工程212は、高周波電源の電力を設定値にする立ち上がり工程201と、反射電力を入射電力の3%以内に収めるためのインピーダンス整合工程203と、安定放電工程205と、高周波電源の電力をオフする立ち下がり工程204と、からなる。
立ち上がり工程201とインピーダンス整合工程203と立ち下がり工程204の合計時間は、1秒以上、10秒以下である。
本発明の堆積膜形成方法により光学多層膜を作成する例として、表面反射制御のための中間層を含む電子写真感光体の作成手順を、図3を用いて説明する。
電子写真感光体において必須となる構成要件としては、光導電層と表面層がある。光導電層はa−Si:Hを感光材料として用いる場合、屈折率は3.2〜4程度の値となる場合が多く、表面層はa−SiC:Hを用いる場合には、屈折率は1.8〜2.3程度の値になることが多い。そこで、これらの中間の屈折率を持ち、適切な膜厚を持った膜を間に挿入する事により、所望の波長において、表面層の膜厚変化が起きた場合でも表面反射が変化しない条件を作ることが可能となる。具体的には前述したように、表面層を媒質と考えた際、所望の波長において反射防止条件を満たすように、中間層の屈折率と膜厚を適切に選択すればよい。また、このような反射防止条件を、単一の波長ではなく、ある幅を持った特定の波長域で実現しようとするときは、このような計算を複数の膜での多重反射に対して行えばよい。
それに先立って、まずガラス基板上に、例えばa−SiC:Hを材料として選択したとき、様々な条件(例えばシランガス流量、メタンガス流量、圧力、基板温度、高周波電力の各設定値)でテストサンプルを作成する(ステップS301)。次に、これらのテストサンプルの屈折率、膜厚を測定する(ステップS302)。この作業を繰り返すことにより、複数のテストサンプルについて、屈折率と堆積速度を得ることができる。
次に、これらのデータから、所望の屈折率を持つテストサンプルを選び、これらの条件で作成したテストサンプルを積層したと仮定した時、表面層を媒質としたときの反射防止条件を、様々な波長に対して計算する(ステップS303)。これを初期解とする。
次に、これらの複数の層の屈折率と膜厚とを最適化する。具体的には、所定の波長域、例えば600〜700nmの波長域において、反射率が最外層である表面層の膜厚に依存しないように、中間層の複数の層について、屈折率と膜厚をパラメータとして繰り返し演算して収束させる。このような最適化を行う事により、表面層が磨耗しても表面反射が変化しない電子写真感光体が設計できる。仮にこのような最適化した中間層がない場合、例えばa−SiC(屈折率:2)を表面層として用いたとき、600〜700nmの最表面での反射率の膜厚依存を計算すると、80nm程度の周期で反射率の最大値と最小値を取ることが判っている。よって、少なくとも表面層が100nm磨耗した際にも表面反射が変化しない設計ができれば、初期であっても如何なる磨耗を経た後であっても、表面反射が殆ど変化しない感光体が実現できる。
次に、この屈折率に近い値をもつテストサンプルを選び、場合によっては所望の屈折率が得られるように条件を変えて再度テストサンプルを作成する。このテストサンプルデータの堆積速度から該当する層の堆積時間を算出すれば、所望の屈折率、膜厚を持つ層が多層積層した層設計が完了する。
この設計を元に、図2に示したようにガスの安定化と、放電不安定期間に注意しながら膜堆積を行っていく(ステップS304)。具体的には、ガスの流量を変化させる期間とガスを安定化させる期間を分離し、十分な時間安定化を行う。ガス安定化期間は、反応容器体積とガス圧力とガス流量から計算されるガス滞留時間の少なくとも5倍以上の時間、一定流量のガスを流しつづけることが好ましい。
十分な期間ガスの安定化を行った後、放電を開始する。このとき、前述したように、高周波電源の立ち上がり工程、立ち下がり工程、インピーダンス整合工程からなる非安定放電時間が、1秒以上10秒以下となるように制御されることが好ましい。またマッチングポイントのプリセット、自動インピーダンス整合回路を用いる事で、インピーダンス整合を短時間に且つ安定的に再現性よく制御する事が出来、所望の特性を持つ多層膜を得ることが出来る。
以上のような手順を用いる事で、表面層の磨耗に拠らず表面反射が変化しない電子写真感光体が作成できる。
次に、電子写真感光体作製を行う方法及び装置を説明する。
図4は、電源周波数としてRF帯を用いた高周波プラズマCVD法(RF−PCVDとも略記する)による電子写真感光体の製造装置の一例を示す模式的な構成図である。この装置を用いて膜堆積を行う。図4に示す装置の構成は以下の通りである。
この装置は大別すると、堆積装置4100、原料ガスの供給装置4200、反応容器4111内を減圧にするための排気装置(図示せず)から構成されている。堆積装置4100中の反応容器4111はカソード電極を兼ねている。その内部には円筒状基体4112、基体加熱用ヒーター4113、原料ガス導入管4114が設置されている。さらに円筒状基体4112にはこれを回転させるモーター4121が接続され、反応容器4111には高周波マッチングボックス4115を介して高周波電源4120が接続されている。反応容器4111は中空構造をとり、内部に冷却用の冷媒を強制的に流すことで冷却してもよい。具体的には、例えば水を循環させる事で冷却すればよい。
原料ガス供給装置4200は、SiH、H、CH、B、CF、N2、O2、NO、He、Arの如き複数のガスから選ばれる必要な原料ガスのボンベ4221〜4226とバルブ4231〜4236、4241〜4246、4251〜4256及びマスフローコントローラー4211〜4216から構成される。各原料ガスのボンベは補助バルブ4260を介して反応容器4111内のガス導入管4114に接続されている。
この装置を用いたプラズマ処理は、例えば以下のように行うことができる。
先ず、反応容器4111内に円筒状基体4112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器4111内を排気する。
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器4111に流入させるには、まずガスボンベのバルブ4231〜4236、反応容器のリークバルブ4117が閉じられていることを確認する。次に、ガス流入バルブ4241〜4246、流出バルブ4251〜4256、補助バルブ4260が開かれていることを確認する。次にメインバルブ4118を開いて反応容器4111及び原料ガス配管内4116を排気する。
次に、真空計4119の読みが約0.1Pa以下になった時点で補助バルブ4260、ガス流出バルブ4251〜4256を閉じる。その後、ガスボンベ4221〜4226)より所望のガスを原料ガスボンベバルブ4231〜4236を開いて導入し、圧力調整器4261〜4266により所望のガスラインの圧力を0.2MPaに調整する。次に、ガス流入バルブ4241〜4246を徐々に開けて、所望のガスをマスフローコントローラー4211〜4216内に導入する。
同装置を用いた堆積膜の形成は、例えば以下のように行うことができる。
先ず、反応容器4111内に円筒状基体4112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器4111内を排気する。続いて、基体加熱用ヒーター4113により円筒状基体4112の温度を150℃乃至350℃の所定の温度に制御する。また、膜形成の均一化を図るために、層形成を行なっている間、円筒状基体4112をモーター4121によって所定の速度で回転させる。
以上のようにして成膜の準備が完了した後、以下の手順で各層の形成を行う。
円筒状基体4112が所定の温度になったところで流出バルブ4251〜4256のうちの必要なもの及び補助バルブ4260を徐々に開く。ガスボンベ4221〜4226から所定のガスを原料ガス導入管4114を介して反応容器4111内に導入する。次にマスフローコントローラー4211〜4216によって各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、反応容器4111内の圧力が1×10Pa以下の所定の圧力になるように真空計4119を見ながらメインバルブ4118の開口を調整する。内圧が安定したところで、周波数13.56MHzのRF電源4120を所望の電力に設定して、高周波マッチングボックス4115を通じて反応容器4111内にRF電力を導入し、グロー放電を生起させる。
高周波放電のエネルギーによって反応容器内に導入された原料ガスが分解され、円筒状基体4112上に所定の堆積膜が形成されるところとなる。所望の膜厚の形成が行われた後、RF電力の供給を止め、堆積膜の形成を終える。
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の積層構造の電子写真感光体が形成される。
また、本願の多層膜を作成する際には、前述したようにガスを変化させた後にガス安定化時間を設けたのち、RF電力を導入する事は言うまでもない。
また、マッチングボックス4115はバリコンの如き可変キャパシタ、タップ式コイルやコア可動式コイルの如き可変インダクタを持っていてもよく、これらの素子の値を手動で変えてもよいし、自動制御回路を用いて変えても良い。具体的には、入射電力をセンシングして電流値と電圧値の位相差からインピーダンス整合を取ることが好適に使用できる。インピーダンス整合度合いは方向性結合器を使ったパワーメータを用いて入射電力と反射電力をモニターし、反射電力が入射電力の3%以内に入るように演算して制御すればよい。反射電力が所望の範囲であればここに挙げた方法以外の方法で制御しても構わない。
それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うまでもない。また、それぞれのガスが反応容器4111内、流出バルブ4251〜4256から反応容器4111に至る配管内に残留することを避けることが好ましい。このために、流出バルブ4251〜4256を閉じ、補助バルブ4260を開き、さらにメインバルブ4118を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
さらに、上述のガス種及びバルブ操作は各々の層の作製条件に従って変更が加えられることは言うまでもない。
基体の加熱方法は、真空仕様である発熱体を用いる方法であればよい。より具体的にはシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーターの如き電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプの如き熱放射ランプ発熱体、液体、気体を温媒とした熱交換手段による発熱体が挙げられる。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅の如き金属類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂を使用することができる。
それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の容器を設け、加熱した後、反応容器内に真空中で基体を搬送する方法が用いられる。
図5は本発明を用いて作成された堆積膜の一例として、電子写真感光体について示した模式図と、その表面層の磨耗による反射率の変化について模式的に説明する図である。
図5(a)に示す電子写真感光体500は、導電性基体501の上に非単結晶シリコン系感光層502が堆積された構造であって、感光層502は下部注入阻止層505、光導電層503、多層構成の中間層506、表面層504を含む構成である。
下部注入阻止層505は、導電性基体側からの電荷の注入を阻止するために設ける事が好ましい。また、中間層506は、特定の波長域において表面層504を媒質としたときの反射防止条件を満たすように設計された多層構造である。また、場合によっては、上部からの電荷注入を低減し、帯電性を向上させる機能を持っていてもよく、このような機能は負帯電用電子写真感光体に特に好適である。
図5(a)に示したような電子写真感光体の表面における分光反射率を図5(b)に示す。図5(b)は、中間層506を4層構成とし、電子写真装置で使用する光(像露光、除電光)の波長の例として660nmを選択し、この波長における反射率を低減するような設計を行ったものである。また、図5(b)には、表面層が1000nmの場合と、900nmの場合とで比較している。これは表面層が100nm磨耗した場合を想定している。このとき、波長が660nmの光に対して、反射率が殆ど変化していない。この層設計においては、表面層の磨耗が如何なる状況であっても、反射率の変化が500〜750nmの範囲で殆どないことが、表面層の膜厚を変えて計算したシミュレーション結果から予想されている。このように、非常に広い範囲で反射率の変化が少ない感光体を作成する事が可能である。
一方、図5(c)には、中間層が全くない他は、図5(a)と同じ層構成の電子写真感光体500が示されている。この図5(c)に示した電子写真感光体の表面反射率の分光特性を図5(d)に示す。図5(d)でも図5(b)と同様に、表面層が1000nmと900nmの際の反射率を計算すると、反射率が大きく異なっており、その差は25ポイントを越えている事が判る。このように、表面層が100nm程度磨耗する間に、表面反射率は刻々と変化してしまい、電子写真感光体としての感度特性が変化してしまう事が予想される。
ここで、前述した各層について詳細に説明する。
<基体>
本発明において使用される基体としては、導電性基体としては、Al、Cr、Mo、In、Nb、Te、V、Ti、Pd、Feの如き金属、およびこれらの合金、例えばステンレスを挙げることができる。また、電気絶縁性基体としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミドの如き合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミックを挙げることができる。これらの電気絶縁性基体の少なくとも光受容層を形成する側の表面は、導電処理され使用される。
本発明の効果を得る上では、基体は基本的には導電性でも電気絶縁性でも構わないが、特に、金属からなる基体の方がより好ましく、中でもAlないしAl合金は非常に好ましい。これは表面の制御性の良さが関わっている。ここで言う制御性のよさとは、表面形状の制御や表面の安定性が挙げられ、例えば表面を切削や研磨で平坦化する際の扱いやすさや、錆びの如き表面反応をしにくい点を指している。これらの点でAlないしAl合金からなる基体を用いた場合、切削により平坦で清浄な表面を得る事が出来、また鉄や銅のように錆びが成長することがなく、好ましい。
一例として挙げられたAl合金からなる円筒状基体は、まず表面を平坦化し且つ不純物や汚れを取り去ることが重要である。この際には、例えばバイトによる切削を行い、その後洗浄により脱脂、付着物の除去を行う方法がある。この際、バイトによる切削ピッチは10~200μmの範囲、高さは2μm以内の範囲で適宜選択すればよい。また、JIS
B 0601:2001で規定しているRzjisにおいて1μm以下程度が好ましく、より好ましくは0.7μm以下がよい。
<光導電層>
基体上に例えばグロー放電法によって光導電層を形成するには、次のようにすればよい。基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガスと、必要に応じてハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスとを用いればよい。次に、内部を減圧できる反応容器内に所望のガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させる。このとき、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定の基体上にa−Si:H,Xからなる層を形成すればよい。
光導電層中の水素原子、更に必要に応じて添加されるハロゲン原子は、シリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させる。
水素原子の含有量は、特に制限はないが、シリコン原子と水素原子の和に対して10〜40原子%とされるのが望ましい。また、その分布形状に関しても、露光系の波長に合わせて含有量を適宜調整することが望ましい。特に、水素原子やハロゲン原子の含有量をある程度多くすると、光学的バンドギャップが大きくなり、感度のピークが短波長側にシフトすることが知られている。このような光学的バンドギャップの拡大は、短波長の露光を用いる際には好ましく、その場合にはシリコンと水素原子の和に対して15原子%以上とすることが好ましい。
Si供給用ガスとなり得る物質としては、SiH、Si、Si、Si10のようなガス状態の、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられる。層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さの点でSiH、Siが好ましいものとして挙げられる。なお、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えない。
そして、膜の物性の制御性、ガスの供給の利便性を考慮し、これらのガスに更に、H、Heから選ばれる1種以上のガスを所望量混合して層形成することも出来る。
ハロゲン原子供給用の原料ガスとしては、具体的には、フッ素ガス(F)、BrF、ClF、ClF、BrF、BrF、IF、IFの如きハロゲン間化合物、SiF、Siの如きフッ化ケイ素が好ましいものとして挙げることができる。
光導電層中に含有されるハロゲン元素の量を制御するには、例えば、基体の温度、ハロゲン元素を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電空間の圧力、放電電力を制御すればよい。
加えて、光導電層には伝導性を制御する原子を光導電層の層厚方向に不均一な分布状態で含有することが好ましい。これは、光導電層のキャリアの走行性を調整し、また或は補償して走行性を高次元でバランスさせることにより、帯電能の向上、光メモリー低減、感度の向上のために有効である。
伝導性を制御する原子の含有量は、特に制限されないが、一般には層中の構成原子の総量に対して0.05〜5原子ppmとするのが望ましい。また、光の到達する範囲においては、伝導性を制御する原子を実質的に含有しないように制御を行う、すなわち積極的な添加を行わないことも出来る。
この伝導性制御原子は、膜厚方向に連続的に、又は段階的に変化する領域を含んでいてもよく、一定の領域を含んでいてもよい。
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。p型伝導性を与えるには周期表の第13族に属する原子(第13族原子とも略記する)を用いる事ができる。又、n型伝導特性を与えるには周期表の第15族に属する原子(第15族原子とも略記する)を用いることができる。
第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)があり、特にB、Al、Gaが好適である。
そのような第13族原子導入用の原料物質としては具体的には、ホウ素原子導入用としては、B、B10、B、B11、B10、B12、B14の如き水素化ホウ素、BF、BCl、BBrの如きハロゲン化ホウ素が挙げられる。この他、AlCl、GaCl、Ga(CH、InCl、TlClも挙げることができる。
第15族原子として、具体的には、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)があり、特にP、As、Sbが好適である。
第15族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、リン原子導入用としては、PH、Pの如き水素化リン、PHI、PF、PF、PCl5、PBr、PBr、PIの如きハロゲン化リンが挙げられる。この他、AsH、AsF、AsCl、AsBr、AsF、SbH、SbF、SbF、SbCl、SbCl、BiH、BiCl、BiBrも第15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができる。
また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてHおよび/またはHeにより希釈して使用してもよい。
光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜80μm、最適には20〜70μmとされるのが望ましい。層厚が5μmより薄くなると、帯電能や感度の如き電子写真特性が実用上不充分となり、100μmより厚くなると、光導電層の作製時間が長くなって製造コストが高くなる。
所望の膜特性を有する光導電層を形成するには、Si供給用、ハロゲン添加用のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体温度を適宜設定することが望ましい。
希釈ガスとして使用するHおよび/またはHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用ガスに対し、通常の場合3〜30倍、好ましくは4〜15倍、最適には5〜10倍の範囲に制御することが望ましい。反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×10−2〜1×10Pa、好ましくは5×10−2〜5×10Pa、最適には1×10−1〜2×10Paとするのが好ましい。
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量に対する放電電力の比を、0.5〜8、好ましくは2〜6の範囲に設定することが望ましい。
さらに、基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、好ましくは200〜350℃、より好ましくは210〜330℃、最適には220〜300℃とするのが望ましい。
光導電層を形成するための基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光受容部材を形成すべく相互的に最適値を決めるのが望ましい。
<表面層>
本発明における表面層は、主に短波長光透過性、高解像度、連続繰り返し使用耐性、耐湿性、使用環境耐性、良好な電気特性に関して良好な特性を得るために設けられている。負帯電用電子写真感光体の場合、それ自体が帯電保持層としての役割を持ってもよいが、後述する上部注入阻止層に帯電保持の機能を持たせてもよい。
本発明における表面層の材質は、シリコン原子と炭素原子を母体する非単結晶材料からなる。また、水素原子及び/又はハロゲン原子を膜中に適宜含んでいることが好ましい。
例えば、グロー放電法によってこのようなa−SiC系材料よりなる表面層を形成するには、次のようにすればよい。基本的にはシリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、炭素原子(C)を供給し得るC供給用の原料ガスを用いればよい。これらのガスを、内部を減圧し得る反応容器内に所望のガス状態で導入して、反応容器内にグロー放電を生起させる。このとき、あらかじめ所定の位置に設置された光導電層を形成した基体上にa−SiC系材料からなる層を形成すればよい。
このとき、表面層に含まれる炭素量は、前述したようにシリコン原子と炭素原子の和に対する炭素原子の数として50原子%から80原子%の範囲が好ましい。
また、表面層中に水素原子が含有されることが好ましいが、水素原子はシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させる。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合、膜中の平均値として5〜70原子%、好適には8〜60原子%、最適には10〜50原子%とするのが望ましい。
また、適宜窒素原子、酸素原子を含んでもよく、a−SiCON系の材料としても構わない。
表面層の形成において使用されるシリコン(Si)供給用ガスとなり得る物質としては、SiH、Si、Si、Si10の如きガス状物、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられる。更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さの点でSiH、Siが好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH、He、Ar、Neの如きガスにより希釈して使用してもよい。
窒素、酸素、炭素供給用ガスとなり得る物質としては、N、NH、NO、NO、NO、O、CO、CO、CH4、C22、C24、C26、C38、C410の如きガス状物、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。中でも、炭素供給用としてはCH4が好ましい。また、これらの原料ガスを必要に応じてH、He、Ar、Neの如きガスにより希釈して使用してもよい。
また、フッ素原子供給のために、フッ素ガス(F)、BrF、ClF、ClF、BrF、BrF、IF、IFの如きハロゲン間化合物や、SiF、Siの如きフッ化ケイ素を導入してもよい。
表面層を形成するには、反応容器のガス圧、放電電力、ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。基体温度は、層設計に従って最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150℃以上350℃以下、より好ましくは180℃以上330℃以下、最適には200℃以上300℃以下とするのが好ましい。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10−2Pa以上1×10Pa以下、好ましくは5×10−2Pa以上5×10Pa以下、最適には1×10−1Pa以上1×10Pa以下とするのが好ましい。
本発明においては、表面層を形成するための導電性基体の温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられる。ただし、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
また、例えばRF帯の高周波を用いたグロー放電法にて表面層を作成する場合には、放電電力としては10W〜5000W、カソード電極面積あたりに換算すると2mW/cm2から1.4W/cm2程度の範囲が好適である。
さらに、表面層には必要に応じて、第13族原子および第15族原子の如き伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、表面層中に万遍なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
表面層に含有させる伝導性を制御する原子の含有量としては、層中の構成原子の総量に対して、好ましくは1×10−3〜1×10原子ppm、より好ましくは1×10−2〜5×10原子ppm、最適には1×10−1〜10原子ppmとされるのが望ましい。
表面層の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1μmとされるのが望ましいものである。層厚が0.01μmよりも薄いと光受容部材を使用中に磨耗により表面層が失われる場合があり、3μmを越えると残留電位の増加の如き電子写真特性の低下が発生する場合がある。
以上の様な表面層を形成するには、例えば基体の温度、反応容器内のガス圧を所望にしたがって、適宜設定する必要がある。
基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃、最適には250〜300℃とするのが望ましい。
また、表面層および光導電層の間に、炭素原子の含有量が光導電層または上部注入阻止層に向かって減少するように変化する領域を設けても良い。これにより表面層と光導電層または上部注入阻止層との密着性を向上させ、光キャリアの表面への移動がスムーズになるとともに各層の界面での光の反射による干渉の影響をより少なくすることができる。
<中間層>
本発明において、光導電層503と表面層504の間に多層構成の中間層506を設けることが、本発明の目的を効果的に達成するためには好ましい構成である。
本発明における中間層の各層に含有される炭素原子の含有量は、構成原子のシリコン原子と炭素原子の総和に対して5原子%以上50原子%以下の範囲とするのが好ましい。より好ましくは10原子%以上40原子%以下、更に好ましくは15原子%以上35原子%以下であるのが良い。
また、本発明の中間層の各層には、水素原子が含有されることが好ましく必要である。水素原子はシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠である。水素原子の含有量は、中間層中の構成原子の総量に対して通常の場合5原子%以上90原子%以下、好適には10原子%以上85原子%以下、最適には15原子%以上70原子%以下とするのが望ましい。
本発明において、中間層の各々の層厚は所望の光学特性及び電子写真特性が得られること、製造容易性から好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上最適には10nm以上が望ましい。上限としては100nm以下程度で設計する事が好ましいが、100nm以上であっても構わない。層厚が3nm未満になると、層設計上の再現性が低下する場合がある。
本発明の目的を達成し得る特性を有する中間層506の各層を形成するには、シリコン原子供給用のガスと炭素原子供給用のガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10−2Pa以上1×10Pa以下、好ましくは5×10−2Pa以上5×10Pa以下、最適には1×10−1Pa以上1×10Pa以下とするのが好ましい。
さらに、基体の温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150℃以上350℃以下、より好ましくは180℃以上330℃以下、最適には200℃以上300℃以下とするのが望ましい。
本発明の中間層506は、特に負帯電用感光体においては、表面層側からの電荷の侵入を阻止し、帯電能を向上させる目的で、母体となるa−SiC系の膜に、p型の伝導性を付与するために周期表の第13族元素を含有させてもよい。中間層は多層構成であるため、そのうちの少なくとも一層にこのような第13族元素を含有させればよい。
周期表の第13族元素としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)があり、特に硼素が好適である。
本発明における中間層に含有される周期表の第13族元素の含有量は、構成原子の総量に対して30原子ppm以上5000原子ppm以下、好適には100原子ppm以上3000原子ppm以下の範囲とするのが好ましい。
中間層に含有される周期表の第13族元素は、層中に万偏なく均一に分布されていても良いし、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有していてもよい。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
<下部注入阻止層>
本発明において、図5(a)、図5(c)に示すように、導電性基体501の上層には、基体501側からの電荷の注入を阻止する働きのある下部注入阻止層505を設けるのが効果的である。下部注入阻止層505は光受容層502が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、基体501側より光導電層503側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有している。
下部注入阻止層505には、シリコン原子を母材に導電性を制御する不純物を、光導電層503に比べて比較的多く含有させる。正帯電用電子写真感光体の場合、下部注入阻止層505に含有される不純物元素としては、周期表の第13族元素を用いることが出来る。また、負帯電用電子写真感光体の場合、下部注入阻止層505に含有される不純物元素としては、周期表の第15族元素を用いることが出来る。本発明においては下部注入阻止層505中に含有される不純物元素の含有量は、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜決定される。好ましくは下部注入阻止層中の構成原子の総量に対して10原子ppm以上10000原子ppm以下、より好適には50原子ppm以上7000原子ppm以下、最適には100原子ppm以上5000原子ppm以下とされるのが望ましい。
更に、下部注入阻止層には、窒素及び酸素を含有させることによって、該下部注入阻止層と基体との間の密着性の向上を図ることが可能となる。また、負帯電用電子写真感光体の場合には、下部注入阻止層に不純物元素をドープしなくても窒素および酸素を最適に含有させることで優れた電荷注入阻止能を有することも可能となる。具体的に、下部注入阻止層の全層領域に含有される窒素原子および酸素原子の含有量は、窒素および酸素の和を下部注入阻止層中の構成原子の総量に対して、好ましくは0.1原子%以上40原子%以下とすればよい。より好ましくは1.2原子%以上20原子%以下、また、40原子%以下、より好ましくは20原子%以下とすることにより、更に電荷注入阻止能が向上する。
また、本発明における下部注入阻止層には水素原子を含有させるのが好ましく、この場合、含有される水素原子は、層内に存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。下部注入阻止層505中に含有される水素原子の含有量は、下部注入阻止層中の構成原子の総量に対して1原子%以上50原子%以下が好ましく、5原子%以上40原子%以下がより好ましく、10原子%以上30原子%以下が更に好ましい。
本発明において、下部注入阻止層の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果の点から好ましくは100nm以上5000nm以下が望ましい。より好ましくは300nm以上4000nm以下、最適には500nm以上3000nm以下とすることが望ましい。層厚を100nm以上5000nm以下とすることにより、基体501からの電荷の注入阻止能が充分となり、充分な帯電能が得られると共に電子写真特性の向上が期待でき、残留電位の上昇の如き弊害が発生しない。
下部注入阻止層を形成するには、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体の温度を適宜設定することが必要である。導電性基体温度(Ts)は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150℃以上350℃以下、より好ましくは180℃以上330℃以下、最適には200℃以上300℃以下とするのが望ましい。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10−2Pa以上1×103Pa以下、好ましくは5×10−2Pa以上5×10Pa以下、最適には1×10−1Pa以上1×102Pa以下とするのが好ましい。
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例における、寸法、形状、材質、プロセス条件等は本発明の一例であり、本発明の技術的範囲を満たす範囲内であれば、設計事項として任意に変更することができるものである。
<実施例1>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表1に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜3、表面層からなる堆積膜を順次積層した。
中間層1〜3は、波長660nmを露光に用いる電子写真装置に合わせて、660nmを中心としてその近傍で反射率の磨耗による変化が起こりにくくなるように設計を行った。設計にあたっては、予めテストサンプルにて屈折率と堆積速度を調べ、それを元に分光反射率をシミュレーションする。表1の中間層1〜3の屈折率は、それぞれ3.03、2.57、2.18という数値が得られている。この値から最適な膜厚を算出した。設計した多層膜の分光反射率を求め、表面層が磨耗して膜厚が変化しても、660nm近傍では反射率が殆ど変化しない事を確かめた。
中間層1〜3を堆積させる際には、所定の流量、圧力に調整後、反応容器体積とガス流量とガス圧力から計算される滞留時間(3秒)の5倍である15秒間安定化させ、その後高周波電力を投入、放電を開始した。このとき、所定の電力まで到達するまでの立ち上がり時間は50msecであり、インピーダンス整合にかかった時間は3秒弱であった。インピーダンス整合は手動で行った。計算された堆積速度から放電時間を計算し、所望の膜厚を得た。放電を切った際の立ち下がり時間も50msecであった。合計の非安定放電時間は3秒であった。立ち上がり、立ち下がりにおいてスパイク状のノイズが乗ることはなく、インピーダンス整合も反射電力が入射電力に対して1%となるように調整した。このような方法で中間層1から順次中間層3まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体1−1とする。
同様に中間層を作成する際、ガス安定化時間を滞留時間の20倍(60秒)とった以外は、感光体1−1と同一条件で中間層1〜3を作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体1−2とする。
このようにして得られた感光体は、大塚電子社製のSPECTRO
MULTICHANNEL PHOTODETECTOR(MCPD−2000)を用いて反射分光法により表面における光の反射を測定した。 次に、設計値との乖離率を評価した。600nm〜700nmの各波長λにおいて、設計値の反射率をRc(λ)、測定値の反射率をRe(λ)とする。このとき、{Rc(λ)+Re(λ)}/2は両者の中間の値を示し、|Rc(λ)−Re(λ)|/2は両者の差の半分を示す。そこで、この比を取る。
|Rc(λ)−Re(λ)|/{Rc(λ)+Re(λ)}…(1)
式(1)は、RcとReの平均値に対し、それぞれがどれだけ乖離しているかを示していることが判る。そこで、式(1)で得られた値を、その波長における設計値と実測値の乖離率と定義する。この乖離率を、600〜700nmの波長域で計算し、最も大きな値をこの波長域における最大乖離率とした。
この乖離率を元に、総合判定を以下のような基準により判定した。
AA・・・最大乖離率が3%以下(非常に乖離が少ない)
A・・・最大乖離率が3%より大きく、10%以下(乖離が少なく、ほぼ設計どおりである)
B・・・最大乖離率が10%より大きく、25%以下(やや乖離が大きく、設計どおりではない)
C・・・最大乖離率が25%より大きい(設計から大きく外れている)
得られた結果を比較例1の結果と合わせて図6及び表2に示した。
<比較例1>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表1に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜3、表面層を順次積層した。
このようにして得られた感光体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を図6及び表2に示した。
実施例1の感光体1−1に関しては、図6(a)にあるように、設計どおりの結果が得られた。図6(a)にはないが、感光体1−2も同様に設計どおりの結果が得られた。600nm〜700nmにおける乖離率を調べたところ、最大でも2.1、1.7%しか乖離しておらず、極めて正確な膜堆積が行えたことを示している。
一方、比較例1の感光体1−3では、図6(b)にあるように、設計には近いものの、やや乖離している様子が見られた。同様に600nm〜700nmでの乖離率を調べたところ、最大で11%の乖離が見られた。このことから、ガスの安定化時間は、反応容器体積やガス流量や圧力から計算されるガスの滞留時間の5倍以上が好ましい事がわかった。
Figure 2010037643
Figure 2010037643
<実施例2>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表1に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜3、表面層を順次積層した。
中間層1〜3を堆積させる際には、ガスの安定化時間を滞留時間の5倍とし、合計の非安定放電時間は4秒であった。インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して0.8%となるように調整した。このような方法で中間層1から順次中間層3まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体2−1とした。
次に、インピーダンス整合を、反射電力が入射電力に対して3%となるように調整した他は、感光体2−1と同様とし、感光体2−2を完成させた。
得られた感光体に対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
<比較例2>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表1に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜3、表面層を順次積層した。
中間層1〜3を堆積させる際には、インピーダンス整合を完全に行う事はせず、反射電力が入射電力に対して4%となるように調整した他は、実施例2と同様とした。このような方法で中間層1から順次中間層3まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体2−3とした。
得られた感光体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
反射電力を4秒間の間に入射電力の0.8%まで絞りこんだ実施例2では、設計値との最大乖離率が2.5%しかなく、設計通りの結果が得られた。また、3%とした感光体2−2では、最大乖離率が7.5%とやや大きくなるものの、ほぼ設計どおりの特性が得られた。一方、比較例2の感光体2−3はインピーダンス整合に関して寛容にした場合の例であるが、反射電力を入射電力の4%程度までしかインピーダンス整合しなかった場合、設計値との乖離が26%と非常に大きくなった。このことは、反射電力が大きい場合には反応容器内に導入される実効電力が少なくなり、特性に影響を与えるためと考えられる。以上の点から、インピーダンス整合は反射電力を入射電力の3%以下になるように行う事が好ましい事が判った。
Figure 2010037643
<実施例3>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表1に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜3、表面層を順次積層した。
中間層1〜3を堆積させる際には、ガスの安定化時間を滞留時間の6倍とし、立ち上がり、立ち下がりは50msecずつ、インピーダンス整合は1秒弱であり、合計の非安定放電時間は1秒であった。インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して1.3%となるように調整した。このような方法で中間層1から順次中間層3まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体3−1とした。
同様に、立ち上がり、立ち下がりは50msec、インピーダンス整合は5秒弱、合計の非安定放電時間は5秒、インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して0.2%となるように調整して作成した。この電子写真感光体を感光体3−2とした。
同様に、立ち上がり、立ち下がりは50msec、インピーダンス整合は10秒弱、合計の非安定放電時間は10秒、インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して0.1%となるように調整して作成した。この電子写真感光体を感光体3−3とした。
次に、立ち上がり、立ち下がりはそれぞれ2秒、インピーダンス整合は4秒、合計の非安定放電時間は6秒、インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して0.2%となるように調整して作成した。この電子写真感光体を感光体3−4とした。
同様に、立ち上がり、立ち下がりはそれぞれ3秒、インピーダンス整合は4秒、合計の非安定放電時間は10秒、インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して0.2%となるように調整して作成した。この電子写真感光体を感光体3−5とした。
得られた感光体3−1〜3−5に対し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
<比較例3>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表1に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜3、表面層を順次積層した。
中間層1〜3を堆積させる際には、立ち上がり、立ち下がり時間を50msec、インピーダンス整合時間を0.4秒とし、合計の非安定放電時間を0.5秒となるように短縮した。このことにより、インピーダンス整合がやや犠牲になり、反射電力が入射電力に対して2.8%となった。この他の条件に関しては、実施例3と同様とした。このような方法で中間層1から順次中間層3まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体3−6とした。
一方、立ち上がり、立ち下がりを50msec、インピーダンス整合時間を12秒弱、合計の非安定放電時間を12秒とし、インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して0.1%となるように調整した他は、実施例3と同様に作成した電子写真感光体を感光体3−7とした。
次に、立ち上がり、立ち下がりはそれぞれ4秒、インピーダンス整合は4秒、合計の非安定放電時間は12秒、インピーダンス整合は反射電力が入射電力に対して0.2%となるように調整して作成した。この電子写真感光体を感光体3−8とした。
得られた感光体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
立ち上がり、立ち下がり時間をそれぞれ50msecとし、インピーダンス整合を0.9秒、合計の非安定放電時間を1秒とした実施例3の感光体3−1は、設計値との乖離が1.9%でほぼ設計どおりであった。またインピーダンス整合を約5秒とした感光体3−2は、その分インピーダンス整合がきちんとできたためにバランスがよく、最大乖離率も2.5%と小さく、設計どおりであった。また、インピーダンス整合を約10秒とした感光体3−3は、インピーダンス整合はきちんとできるものの、非安定放電時間が全放電期間に占める割合が比較的大きかったため、設計値との乖離は3.8%であったが、ほぼ設計どおりであった。
また、インピーダンス整合時間は4秒で一定とし、立ち上がり、立ち下がりをそれぞれ2秒とした感光体3−4、それぞれ3秒とした感光体3−5では、最大乖離率が3.1、3.7であり、ほぼ設計どおりであった。
一方、立ち上がり、立ち下がり時間はそれぞれ50msec、インピーダンス整合時間が0.4秒、合計の非安定放電時間を0.5秒と非常に短くした比較例3の感光体3−6では、その分インピーダンス整合が犠牲となったため、設計値との乖離が29%と大きくなってしまった。また、インピーダンス整合時間を約12秒とした感光体3−7は、非安定放電時間が長すぎ、設計値との乖離が17%となった。また、立ち上がり、立ち下がり時間をそれぞれ4秒、インピーダンス整合時間を4秒とした感光体3−8でも、やはり合計である非安定放電時間が長すぎ、最大乖離率は16%となった。以上の点から、非安定放電時間は短すぎても長すぎても設計通りの堆積膜が得にくくなることがわかった。具体的には、非安定放電時間は1秒以上、10秒以下が望ましい事が判った。
Figure 2010037643
<実施例4>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表5に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜4、表面層を順次積層した。
中間層1〜4は、波長660nmを露光に用いる電子写真装置に合わせて、660nmを中心としてその近傍で反射率の磨耗による変化が起こりにくくなるように設計を行った。設計にあたっては、予めテストサンプルにて屈折率と堆積速度を調べ、それを元に反射率の分光データを計算する。表5の中間層1〜4の屈折率は、それぞれ3.12、2.77、2.38、2.12という数値が得られている。この値から最適な膜厚を算出した。設計した多層膜の分光反射率を求め、表面層が磨耗して膜厚が変化しても、660nm近傍では反射率が殆ど変化しない事を確かめた。
中間層1〜4を堆積させる際には、まずガスを30秒かけて徐々に変化させ、所定の流量、圧力に調整後、反応容器体積とガス流量とガス圧力から計算される滞留時間(3秒)の5倍である15秒間安定化させ、その高周波電力を投入、放電を開始した。このとき、所定の電力まで到達するまでの立ち上がり時間は50msecであった。インピーダンス整合は手動で行ったが、インピーダンス整合を行う回路のインピーダンス整合設定部において、それぞれの中間層の放電を開始する前に、予めその放電条件におけるマッチングポイント(安定放電時の設定値)をプリセットしておき、放電を開始した。このことにより、インピーダンス整合にかかる時間を短縮する事が出来る。そのときにかかった時間は2秒弱であった。計算された堆積速度から放電時間を計算し、所望の膜厚を得た。放電を切った際の立ち下がり時間も50msecであった。合計の非安定放電時間は2秒であった。立ち上がり、立ち下がりにおいてスパイク状のノイズが乗ることはなく、インピーダンス整合も反射電力が入射電力に対して0.5%となるように調整した。このような方法で中間層1から順次中間層4まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体4−1とした。
同様に中間層を作成する際、マッチングポイントをプリセットしないこと以外は、感光体4−1と同一条件で中間層1〜4を作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体4−2とした。
得られた感光体について、それぞれ実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。
マッチングポイントのプリセットを行った感光体4−1では、非安定放電時間が2秒と少なく、且つ反射電力も0.5%と低く抑えることが可能となった。このことから、設計値との乖離も0.8%と非常に少なく、設計どおりの積層膜が得られていることが確かめられた。
一方、プリセットを行わなかった感光体4−2でも、同様の反射電力とするためには倍の4秒が必要であった。設計値との乖離は2.1%であり、ほぼ設計どおりであった。
以上の点から、予めマッチングポイント(設定値)を調べておき、バリコンの容量やコイルのタップなどの設定値を予めプリセットした上で各層の放電を開始することにより、より短時間でより正確なインピーダンス整合が得られることが確かめられた。このことにより、正確な屈折率と膜厚を持つ積層膜が設計どおり得られるため、より好ましいことが確かめられた。
Figure 2010037643
Figure 2010037643
<実施例5>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表5に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜4、表面層を順次積層した。
中間層1〜4を堆積させる際には、ガスの安定化時間を滞留時間の5倍とした。また、インピーダンス整合はプリセットと自動整合機構(オートマッチング)とを併用したため、合計の非安定放電時間は1秒と短時間であったにもかかわらず、反射電力が入射電力に対して0.5%となるように調整することが出来た。このような方法で中間層1から順次中間層4まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体5−1として5本作成した。
次に、インピーダンス整合方法を手動にした他は、感光体5−1と同様の条件で感光体5−2を5本作成した。
得られた感光体は、それぞれ1本について、実施例1と同様の評価を行い、更に5本のそれぞれについて、どの程度ばらついているかを600〜700nmの範囲で評価し、同様に差分の最も大きかった値をバラツキ(単位:ポイント)として示した。結果を表7に示す。
インピーダンス整合方法を自動にする事により、不安定時間が2秒から1秒に短縮できたが、設計値との乖離に関しては差が見られなかった。そこで5本の全てを調べ、ばらつきに関して検討したところ、手動の場合には最大で1.2ポイントの差が見られた。
以上の点から、インピーダンス整合方法に関しては、自動で整合する方が、複数の感光体を作成する際のばらつきを抑える効果があることが確かめられた。
Figure 2010037643
<実施例6>
図4に示したプラズマCVD装置を用い、直径84mmの鏡面加工を施したアルミニウムシリンダー(基体)を設置し、表8に示した条件で下部注入阻止層、光導電層、中間層1〜5、表面層を順次積層した。(光導電層より上の層を計6層とした)
中間層1〜5は、波長630nmの除電光と、波長660nmの像露光に用いる電子写真装置に合わせて、630nm〜660nmに渡って、その近傍で反射率の磨耗による変化が起こりにくくなるように設計を行った。設計にあたっては、予めテストサンプルにて屈折率と堆積速度を調べ、それを元に反射率の分光データを計算する。表8の中間層1〜5の屈折率は、それぞれ3.18、2.84、2.56、2.31、2.10という数値が得られている。この値から最適な膜厚を算出した。設計した多層膜の分光反射率を求め、表面層が磨耗して膜厚が変化しても、630nm〜660nm近傍では反射率が殆ど変化しない事を確かめた。
中間層1〜5を堆積させる際には、まずガスを30秒かけて徐々に変化させ、所定の流量、圧力に調整後、反応容器体積とガス流量とガス圧力から計算される滞留時間(3秒)の5倍である15秒間安定化させ、その高周波電力を投入、放電を開始した。このとき、所定の電力まで到達するまでの立ち上がり時間は50msecであった。インピーダンス整合は自動(オートマッチング)で行ったが、それぞれの中間層の放電を開始する前に、予めその放電条件におけるマッチングポイントをプリセットしておき、放電を開始した。このことにより、インピーダンス整合にかかる時間を短縮する事が出来る。そのときにかかった時間は1秒弱であった。計算された堆積速度から放電時間を計算し、所望の膜厚を得た。放電を切った際の立ち下がり時間も50msecであった。合計の非安定放電時間は1秒であった。立ち上がり、立ち下がりにおいてスパイク状のノイズが乗ることはなく、インピーダンス整合も反射電力が入射電力に対して0.5%となるように調整した。このような方法で中間層1から順次中間層5まで作成し、最後に表面層を作成して感光体を完成させた。この電子写真感光体を感光体6−1とした。
得られた感光体について、それぞれ実施例1と同様の評価を行った。結果を表9、図7に示す。
5層構成にした感光体6−1では、非安定放電時間が1秒と少なく、且つ反射電力も0.5%と低く抑えたため、図7に示すように設計値との乖離も0.8%と非常に少なく、設計どおりの積層膜が得られていることが確かめられた。
次にこの感光体6−1を、キヤノン製電子写真装置(iRC−6800を検討用に改造したもの)に取り付け、通常のトナーに研磨剤を多く添加したトナーを用いた複写操作(濃度1%原稿、黒のみ、A4)をする事で、磨耗に対する促進耐久試験を行った。10万枚の耐久の後、ドラムを取り出した。中間層のない感光体で同様の試験を行った場合、90nm磨耗する事が判っている。感光体6−1でも同程度磨耗していると考えられるが、磨耗試験前後において、表面での反射率が殆ど変化していない事が確かめられた。
以上の点から、中間層を5層以上、表面層を含めて6層以上にする事により、広い波長域において、磨耗による反射率の変化が起こらない設計が可能であることが判った。このことから、例えば除電光と像露光の波長が離れているような電子写真装置で用いる電子写真感光体においては特に有利であることが判った。
Figure 2010037643
Figure 2010037643
(a)従来技術で作成された電子写真感光体表面近傍の層構成と屈折率の模式図、(b)中間層作成時のガス流量の時間的推移の模式図、(c)中間層作成時の反応容器に投入された実効電力の時間的推移の模式図である。 (a)本発明で作成された電子写真感光体表面近傍の層構成と屈折率の模式図、(b)中間層作成時のガス流量の時間的推移の模式図、(c)中間層作成時の反応容器に投入された実効電力の時間的推移の模式図である。 本発明の堆積膜形成方法を用いた中間層の作成手順を示す模式図である。 本発明の電子写真感光体の製造に使用することが可能な、RF帯の高周波を用いたプラズマCVD堆積装置の好適な構成の一例を模式的に示した図である。 (a)本発明の方法で作成した電子写真感光体の層構成の一例と、(b)本発明の方法で作成した電子写真感光体の層構成による分光反射率を説明する図、(c)従来技術で作成された電子写真感光体の層構成の一例と、(d)従来技術で作成された電子写真感光体の層構成による分光反射率を説明する図である。 (a)実施例1の分光反射率について、設計値と実測値を示した図、(b)比較例1の分光反射率について、設計値と実測値を示した図である。 実施例6の分光反射率について、設計値と実測値を示した図である。
符号の説明
101、201 立ち上がり工程
102、202 実効的な電力の振れ
103、203 インピーダンス整合工程
104、204 立ち下がり工程
4100 堆積装置
4111 反応容器
4112 円筒状基体
4113 基体加熱用ヒーター
4114 原料ガス導入管
4115 高周波マッチングボックス
4116 原料ガス配管
4117 反応容器リークバルブ
4118 メイン排気バルブ
4119 真空計
4120 RF電源
4121 モーター
4211〜4216 マスフローコントローラー
4221〜4226 原料ガスのボンベ
4231〜4236 原料ガスボンベバルブ
4241〜4246 ガス流入バルブ
4251〜4256 ガス流出バルブ
4260 補助バルブ
4261〜4266 圧力調整器
500 電子写真感光体
501 基体
502 感光層
503 光導電層
504 表面層
505 下部注入阻止層
506 中間層

Claims (6)

  1. 反応容器内に原料となるガスを導入する工程と、高周波電力を印加する工程を複数回繰り返す事により、前記反応容器内に設置した基板上に複数の堆積膜を積層する堆積膜形成方法であって、
    反応容器体積とガス圧力とガス流量から計算されるガス滞留時間の5倍以上の時間、一定流量を保持してガスを流しつづけ、前記反応容器内のガス分布を安定化させる安定化工程と、
    前記安定化工程の後に高周波電源から電力を印加して放電を開始し、前記基板上に前記堆積膜を形成する膜堆積工程と、を有し、
    前記膜堆積工程は、高周波電源の電力を設定値にする立ち上がり工程と、反射電力を入射電力の3%以内に収めるためのインピーダンス整合工程と、安定放電工程と、高周波電源の電力をオフする立ち下がり工程と、からなり、
    前記立ち上がり工程と前記インピーダンス整合工程と前記立ち下がり工程の合計時間が、1秒以上、10秒以下であることを特徴とする、堆積膜形成方法。
  2. 前記インピーダンス整合を行う回路のインピーダンス整合設定部において、各層の膜堆積を行う時には、予め調べておいた安定放電時の設定値の近傍に設定することを特徴とする、請求項1に記載の堆積膜形成方法。
  3. 前記インピーダンス整合設定部は、前記安定放電時の設定値を初期値として放電を開始した後、自動整合機構によってインピーダンス整合を制御することを特徴とする、請求項2に記載の堆積膜形成方法。
  4. 前記堆積膜を形成する方法が、電子写真感光体の作成方法であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の堆積膜形成方法。
  5. 前記複数の堆積膜を積層する方法が、前記電子写真感光体の光導電層より表面側の部分の作成方法であることを特徴とする、請求項4に記載の堆積膜形成方法。
  6. 前記複数の堆積膜を積層する方法が、少なくとも6層以上の堆積膜の作成方法であることを特徴とする、請求項5に記載の堆積膜形成方法。
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