JP2010024104A - 複層構造ダイヤモンド基焼結体、ダイヤモンド工具及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粗大ダイヤモンド粉末層と結合成分層との間に微細ダイヤモンド粉末層を積層配置し、超高圧高温下で焼結を行い、粗大ダイヤモンド粒子からなる粗粒子層と微細ダイヤモンド粒子からなる微粒子層との複層構造で構成され、さらに、ダイヤモンド基焼結体中には、0.1〜15vol%の炭酸塩系結合成分が溶浸充填されている、複層構造ダイヤモンド基焼結体とダイヤモンド工具。
【選択図】図1
Description
そこで、この発明では、ダイヤモンド基焼結体の利点であるすぐれた硬度、熱伝導性、耐熱性、化学安定性に加えて、優れた強度を有するダイヤモンド基焼結体を提供することを目的とし、また、該ダイヤモンド基焼結体からなる耐欠損性、耐摩耗性にすぐれたダイヤモンド工具を提供することを目的とし、さらに、該ダイヤモンド基焼結体の簡易な製造方法を提供することを目的とする。
「(1) ダイヤモンド粒子の粒子間隙に、Mg、Ca、Sr、Baの炭酸塩並びにこれらの2種以上の複合炭酸塩のうちの1種または2種以上からなる結合成分が溶浸充填されたダイヤモンド基焼結体において、上記ダイヤモンド基焼結体は、粒径が20〜150μmの粗大ダイヤモンド粒子からなる粗粒子層と粒径が4〜16μmの微細ダイヤモンド粒子からなる微粒子層との複層構造として構成され、さらに、上記結合成分は、ダイヤモンド基焼結体中に0.1〜15vol%溶浸充填されていることを特徴とする複層構造ダイヤモンド基焼結体。
(2) 前記(1)に記載の複層構造ダイヤモンド基焼結体からなるダイヤモンド工具。
(3) 超高圧焼結装置の超高圧高温発生部内に、粒径が20〜150μmの粗大ダイヤモンド粒子からなる粗大ダイヤモンド粉末層と、粒径が4〜16μmの微細ダイヤモンド粒子からなる微細ダイヤモンド粉末層と、Mg、Ca、Sr、Baの炭酸塩並びにこれらの2種以上の複合炭酸塩のうちの1種または2種以上からなる結合成分層とを、上記粗大ダイヤモンド粉末層と上記結合成分層との間に上記微細ダイヤモンド粉末層が位置するように積層配置し、この成形体を、6〜12GPaの高圧条件下で1700〜2500℃の温度に加熱して上記結合成分層を溶融させ、溶融した結合成分を、上記粗大ダイヤモンド粉末層及び上記微細ダイヤモンド粉末層の各ダイヤモンド粒子間隙に0.1〜15vol%溶浸充填することを特徴とする前記(1)に記載の複層構造ダイヤモンド基焼結体の製造方法。」
に特徴を有するものである。
粒径が20〜150μmの粗大ダイヤモンド粒子は、本発明の複層構造ダイヤモンド基焼結体において、粗大粒子層を構成するが、その粒径が20μm未満では、例えば、石油掘削ビットの切刃材料として用いたような場合に十分な耐欠損性を発揮することができず、一方、粒径が150μmを超える程度に粗大になると、ダイヤモンド粒子の脱落が生じやすくなり、また、粒の粗大化による脆化傾向が生じるので、粗大ダイヤモンド粒子の粒径は20〜150μmと定めた。
粒径が4〜16μmの微細ダイヤモンド粒子は、本発明の複層構造ダイヤモンド基焼結体において、微細粒子層を構成し、ダイヤモンド粒子間隙に結合成分(Mg、Ca、Sr、Baの炭酸塩並びにこれらの2種以上の複合炭酸塩のうちの1種または2種以上)が過剰に溶浸充填されるのを抑制し、複層構造ダイヤモンド基焼結体の強度の低下防止を図る。
つまり、複層構造ダイヤモンド基焼結体の超高圧高温下での焼結時、微細ダイヤモンド粒子からなる微細ダイヤモンド粉末層は、粗大ダイヤモンド粉末層と結合成分層との間に介在し、結合成分が溶融しダイヤモンド粒子間隙に溶浸する際に、溶浸量を調整する作用を有する。
微細ダイヤモンド粒子の粒径が4μm未満の場合には、粗大ダイヤモンド粒子間隙への溶浸量が不足し、複層構造ダイヤモンド基焼結体の焼結性が低下し、一方、粒径が16μmを超えると、溶浸量の調整効果が低減し、複層構造ダイヤモンド基焼結体の強度向上を望めなくなることから、微細ダイヤモンド粒子の粒径を4〜16μmと定めた。
超高圧高温装置による焼結において、加圧圧力が6GPa未満では焼結体の十分な緻密化を図れず、また、その効果は12GPa以下で十分であり、それを超えると装置コストが高くなるので、加圧圧力は6〜12GPaと定めた。さらに、加熱温度が1700℃未満では、結合成分の溶融、溶浸、充填が不十分になるとともに焼結反応も不十分であるため焼結体の緻密化を図れず、一方、加熱温度が2500℃を超えると過焼結状態となり、ダイヤモンド粒子がグラファイト化する現象が生じることから、加熱温度を1700〜2500℃と定めた。
また、この発明による複層構造ダイヤモンド基焼結体で、ダイヤモンド工具(例えば、石油掘削ビットの切刃の如き掘削工具、非鉄金属、超硬合金、セラミックス等の切削工具あるいは耐摩工具等)を構成すると、該ダイヤモンド工具は優れた耐欠損性ばかりか優れた強度を有するものであるため、耐摩耗性に優れかつ長寿命のダイヤモンド工具を得ることができる。
さらに、この発明によれば、粗大ダイヤモンド粉末層と結合成分層との間に微細ダイヤモンド粉末層を積層配置し、超高圧高温下で焼結を行うという簡易な操作で、硬度、熱伝導性、耐熱性、化学安定性とともに強度、耐欠損性にも優れた上記複層構造ダイヤモンド基焼結体を製造することができる。
図2には、一例として、本発明焼結体8の厚さ方向断面の光学顕微鏡写真(倍率37.5)を示す。
そして、本発明焼結体1〜10について、その硬度、熱伝導度、耐熱性、化学安定性の測定・評価を行った。その結果を表4に示す。
さらに、本発明焼結体1〜10を掘削ビットの切刃として、ダイヤモンド工具を形成し、花崗岩を掘削してビットの性能を調べた。
具体的には、図3に示す回転式掘削試験装置において、
ビット回転数100(rpm),掘進率5(cm/min),水流量45〜25(l/min),掘削全長70(m)
の条件で掘削試験を行い、耐欠損性を調査した。耐欠損性評価を表4に示す。
そして、比較焼結体11〜14の硬度、熱伝導度、耐熱性、化学安定性の測定・評価を行い、その結果を表4に示す。
さらに、比較焼結体11〜14を掘削ビットの切刃として、ダイヤモンド工具を形成し、
ビット回転数100(rpm),掘進率5(cm/min),水流量45〜25(l/min),掘削全長70(m)
の条件で花崗岩の掘削試験を行い、耐欠損性を調査した。耐欠損性評価を表4に示す。
硬度測定;ビッカース硬さ試験機を用いて測定した。
熱伝導度測定;レーザーフラッシュ法を用いて測定した。
耐熱性評価;真空炉にて、温度800℃と1200℃でそれぞれ保持時間30分間の条件で熱処理する耐熱試験を行い、その後、XRD(X線)分析により、熱処理後のグラファイト化(ダイヤモンドの逆変換)の有無を確認した。
化学安定性評価;焼結体を150℃の熱フッ酸に2時間浸漬し、焼結体の形状変化の有無を調べた。
表4に示される諸特性からも明らかなように、本発明焼結体1〜10は、すぐれた硬度、熱伝導性、耐熱性、化学安定性を備えている。
さらに、本発明焼結体1〜10は、これをダイヤモンド工具1〜10として用いた場合の掘削試験の耐欠損性評価からも明らかなように、高強度を有しすぐれた耐欠損性を備えている。
また、粗大ダイヤモンド粒子からなる比較焼結体11,12及び微細ダイヤモンド粒子からなる比較焼結体13,14についても、本発明焼結体1〜10と同様にすぐれた硬度、熱伝導性、耐熱性、化学安定性を備えている。
しかし、比較焼結体11〜14をダイヤモンド工具として用いた場合、比較焼結体11,12では掘削試験中にダイヤモンド粒子の剥離・欠落等が生じ十分な耐欠損性を備えるとは言えず、また、比較焼結体13,14では、掘削長さがほぼ30mの位置において焼結体の破損が生じたため、強度が不十分であってダイヤモンド工具としての寿命が非常に短いものであった。
また、この発明の製造方法によれば、すぐれた特性を有する上記複層構造ダイヤモンド基焼結体を簡易な工程で製造することができるので、これによる実用上の効果は非常に大である。
Claims (3)
- ダイヤモンド粒子の粒子間隙に、Mg、Ca、Sr、Baの炭酸塩並びにこれらの2種以上の複合炭酸塩のうちの1種または2種以上からなる結合成分が溶浸充填されたダイヤモンド基焼結体において、上記ダイヤモンド基焼結体は、粒径が20〜150μmの粗大ダイヤモンド粒子からなる粗粒子層と粒径が4〜16μmの微細ダイヤモンド粒子からなる微粒子層との複層構造として構成され、さらに、上記結合成分は、ダイヤモンド基焼結体中に0.1〜15vol%溶浸充填されていることを特徴とする複層構造ダイヤモンド基焼結体。
- 請求項1に記載の複層構造ダイヤモンド基焼結体からなるダイヤモンド工具。
- 超高圧焼結装置の超高圧高温発生部内に、粒径が20〜150μmの粗大ダイヤモンド粒子からなる粗大ダイヤモンド粉末層と、粒径が4〜16μmの微細ダイヤモンド粒子からなる微細ダイヤモンド粉末層と、Mg、Ca、Sr、Baの炭酸塩並びにこれらの2種以上の複合炭酸塩のうちの1種または2種以上からなる結合成分層とを、上記粗大ダイヤモンド粉末層と上記結合成分層との間に上記微細ダイヤモンド粉末層が位置するように積層配置し、この成形体を、6〜12GPaの高圧条件下で1700〜2500℃の温度に加熱して上記結合成分層を溶融させ、溶融した結合成分を、上記粗大ダイヤモンド粉末層及び上記微細ダイヤモンド粉末層の各ダイヤモンド粒子間隙に0.1〜15vol%溶浸充填することを特徴とする請求項1に記載の複層構造ダイヤモンド基焼結体の製造方法。
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