上述したように、キャリア濃度の高い低抵抗のp型III族窒化物半導体を作製することは難しい。そのため、III族窒化物半導体を使用した高輝度青色LED,紫色LDが実用化されてはいるが、さらに高出力動作する紫色レーザーや、400nmより短い紫外領域で発光する発光ダイオードや半導体レーザー、あるいは紫外波長領域に感度特性を有する受光素子は実用化されていない。例えば、半導体レーザーの場合には、未だp型クラッド層の抵抗やp側オーミック電極の接触抵抗が高いために、動作電圧の増加や、大電流動作時の発熱を招き、高出力動作するものは実用化されていない。また、紫外波長領域で使用する発光素子あるいは受光素子の場合は、クラッド層になるp型AlGaN層のAl組成比が大きくなるに従い、低抵抗にならなくなるため、実用的なものは実現されていない。また、実用化された紫色半導体レーザーもp型化のための処理工程のため製造コストが高いものとなっている。
以下、上述した特許文献1〜6の問題点を具体的に説明する。先ず、特許文献1に示されているIII族窒化物半導体のp型化法は、p型不純物を不活性化している水素を、700℃程度の熱処理によって結晶外部へ排出させる方法のため、水素を含まない雰囲気、一般的には窒素ガス雰囲気で熱処理が行われる。しかしながら、窒素分子からなる窒素ガスはIII族窒化物の生成原料にはならないために、700℃を超える高温では結晶表面の分解が起り、表面抵抗が増加するなど、特性の劣化が生じる場合があった。表面抵抗の増加は、オーミック電極の接触抵抗の増大につながり、半導体装置の特性を大きく損ねる原因となる。また、p型化の熱処理工程のための時間と熱処理設備が必要となるため、工業的にはコストがかかるものであった。
また、特許文献2の低エネルギー電子線照射は、電子線の侵入深さが浅く、結晶表面近傍しかp型化できない。また、電子線を一度に照射できる面積が狭いために、ウエハー全面をp型化するには時間がかかり、工業的にはコストがかかりすぎるという問題がある。
また、特許文献3は、熱処理工程を必要としないので、コスト的には低くできるが、1000℃程度の結晶成長温度から室温までの冷却を窒素ガスや不活性ガスのみの雰囲気で行うので、特許文献1と同様に、結晶表面の分解が起り、表面抵抗が増加するなど、特性の劣化が生じる場合があった。
また、特許文献4の方法、すなわち、InxAlyGa(1-x-y)N,(0<x<1,0≦y<1)で表されるIII族窒化物層を成長させた後にMgを1×1017cm-3〜1×1020cm-3の範囲でドーピングしてp型GaNを作製する方法では、直上の結晶層は歪みが緩和されp型特性を示すが、多層構造を形成する場合には、層厚が厚くなるに従い、その効果が薄れてしまう。そのため、デバイス設計の自由度が少ないという問題がある。
水素を含まない雰囲気での結晶成長方法に関しては、まず、MBE法では、高真空中で結晶成長を行うため窒素の解離による欠陥が形成される等、高品質な結晶成長をすることが難しい。また、窒素の供給に課題があり、成長速度が遅く、MOCVD程には量産には向いていない。
一方、MBE法と同様に水素を極力含まない雰囲気でMOCVDで結晶成長を行った場合、本願の発明者によるGaNの実験では、表面の凹凸が激しいものしか成長できず、結晶性の良いものは成長できなかった。すなわち、水素を含まない雰囲気では高品質のp型GaNを成長できる条件が狭いと考えられる。
また、低抵抗のp型III族窒化物半導体を作製する特許文献5の方法では、MgとSiを2:1、あるいはMgとOを2:1、あるいはBeとSiを2:1、あるいはBeとOを2:1の比率でGaNに1019cm-3〜1020cm-3程度同時ドーピングして、高キャリア濃度のp型GaNを作製するが、ドーピング量を増やすに従い、表面モフォロジーが悪くなるため、半導体レーザーのような平坦な導波路構造を必要とするデバイスを作製するには難があった。
また、特許文献6の発光ダイオードでは、p型Al0.1Ga0.9N/GaN超格子を使用してp型クラッド層のキャリア濃度を実効的に増加させている。しかるに、高品質のAlGaNを結晶成長するには、成長温度をGaNの成長温度よりも高温にする必要がある。Alの混晶比が大きくなればなるほど高温での成長が必要とされる。逆にGaNの場合は、成長温度を高くすると、結晶表面の分解が生じ、高いAl混晶比のAlGaNの成長温度では結晶成長が困難になる。従って、GaN/AlGaNの超格子では、Al混晶比の小さな(GaNに近い)AlGaNを成長するか、どちらか一方の結晶性を犠牲にして結晶成長を行う必要がある。その結果、GaN/AlGaNの超格子全体としてみた実効的な屈折率や、バンドギャップの制御にはある程度の制約がある。すなわち、大きなバンドギャップを有する低抵抗のp型超格子を作製することは困難である。従って、紫外線領域の発光素子では大きなバンドギャップを有するクラッド層が必要とされるが、GaN/AlGaNの超格子では、このような発光素子を作製することは困難である。
また、In0.1Ga0.9N/GaN超格子によるコンタクト層の低抵抗化に関しても同様に、In0.1Ga0.9NとGaNの最適結晶成長温度が異なるため、この場合は、GaNの結晶性が犠牲にされている。また、InGaN/GaN超格子では、InGaNのアクセプター準位が浅いので低抵抗のp型半導体を得ることは可能であるが、紫外線領域の発光素子のクラッド層に必要とされる大きなバンドギャップのものを得ることは不可能である。さらに、どちらのp型超格子構造も低抵抗化のためには、700℃以上での熱処理が必要とされるので、結晶表面の分解が生じ、結晶性の劣化による表面の高抵抗化が起る。また、熱処理により、p型不純物や構成元素の固相拡散が生じ、超格子界面でのp型不純濃度や組成の急峻性が損なわれる場合がある。さらに、熱処理時の温度の上げ下げは、III族窒化物結晶に熱歪みを与え、結晶欠陥を発生させる要因になる。従って、熱処理による低抵抗化工程はp型半導体の特性を劣化させる要因となる場合がある。
本発明は、従来のp型III族窒化物半導体超格子からなるp型半導体よりも低抵抗のp型特性を示す所望の屈折率とバンドギャップ(特に大きなバンドギャップ)を有するp型III族窒化物半導体および半導体装置およびその作製方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、InとAlを構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、Inを構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されていることを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のp型III族窒化物半導体において、第2のIII族窒化物半導体は、InzGa(1-z)N(0<z≦1)であることを特徴としている。
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載のp型III族窒化物半導体において、第1のIII族窒化物半導体と第2のIII族窒化物半導体とは、それぞれの格子定数が異なることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のp型III族窒化物半導体を用いていることを特徴とする半導体装置である。
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の半導体装置において、該半導体装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いている発光素子であることを特徴としている。
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の半導体装置において、前記発光素子は、400nmよりも短い波長領域で発振する半導体レーザーであることを特徴としている。
また、請求項7記載の発明は、InとAlを構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、Inを構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体を積層することによって、所定の半導体装置を作製することを特徴としている。
また、請求項8記載の発明は、InとAlを構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、Inを構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体を含む積層構造を結晶成長によって形成した後に、成長温度からの冷却を、窒素原料を含む冷却ガス雰囲気で行ない、所定の半導体装置を作製することを特徴としている。
また、請求項9記載の発明は、請求項8記載の半導体装置の作製方法において、冷却ガス雰囲気に含まれる窒素原料は、アンモニアであることを特徴としている。
以上に説明したように、請求項1記載の発明によれば、InとAlを構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、Inを構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されており、請求項1の超格子構造は、第1と第2のIII族窒化物半導体の構成元素として両方にInを含んでいるので、同一の結晶成長温度で第1,第2のIII族窒化物半導体をともに高品質に結晶成長させることができる。従って、AlGaN/GaN超格子やInGaN/GaN超格子のように成長温度の制約により、一方の半導体層の結晶性を犠牲にする必要がないので、請求項1のp型III族窒化物半導体は、従来の超格子構造で作製されたp型III族窒化物半導体よりも高品質である。従って、ドナー性の結晶欠陥によるアクセプターの補償が低減される。その結果、見かけのバンドギャップが同程度である従来のAlGaN/GaN超格子やInGaN/GaN超格子よりも低抵抗のp型特性を示す。なお、従来のAlGaN/GaN超格子やInGaN/GaN超格子と同様に厚い単層のp型III族窒化物半導体よりも低抵抗のp型特性を示す。
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載のp型III族窒化物半導体において、第2のIII族窒化物半導体は、InzGa(1-z)N(0<z≦1)であり、InzGa(1-z)N(0<z≦1)は、アクセプターの活性化エネルギーが小さく、高いキャリア濃度が得られるので、請求項2の超格子構造は全体としてキャリア濃度が高くなり、低抵抗のp型特性を示すことができる。
また、超格子構造の見かけの屈折率とバンドギャップは第1のIII族窒化物半導体と第2のIII族窒化物半導体の混晶組成を制御することで可能であるので、所望の屈折率とバンドギャップの超格子構造を作製することができる。従って、請求項2のp型III族窒化物半導体は、請求項1のp型III族窒化物半導体の作用効果に加えて、従来のAlGaN/GaN超格子やInGaN/GaN超格子構造では実現できなかった所望のバンドギャップと屈折率を有する(特に大きなバンドギャップを有する)低抵抗のp型III族窒化物半導体となる。
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載のp型III族窒化物半導体において、第1のIII族窒化物半導体と第2のIII族窒化物半導体とは、それぞれの格子定数が異なっており、超格子には、格子不整に伴う歪みが導入されている。III族窒化物半導体は圧電係数が大きいため、格子不整に伴う歪みによって、大きな電場が発生し、超格子のバンド構造が大きく変化する。この変化は、第1と第2のIII族窒化物半導体のアクセプターの活性化率を上げるように作用するため、歪みが導入されていないかあるいは歪みの少ない超格子構造に比べ、キャリア濃度は一桁程度増加する。従って、請求項3のp型III族窒化物半導体は、請求項1あるいは請求項2の作用効果に加えて、さらに低抵抗のp型III族窒化物半導体となる。
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のp型III族窒化物半導体を用いている半導体装置であるので、従来、III族窒化物半導体積層構造からなる半導体装置の抵抗の増大の原因となっていたp型半導体層が結晶性が良く低抵抗であるため、従来のIII族窒化物半導体積層構造からなる半導体装置よりも動作電圧が低く、発熱しにくい等、装置特性が向上しているとともに信頼性が高い。また、半導体装置が受光素子の場合には、低抵抗のワイドギャップのp型III族窒化物半導体層を使用できるので、従来より短い波長領域(紫外領域)で動作する受光素子となる。また、発光素子の場合には、従来より短波長の領域で発光する発光装置となる。
また、請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の半導体装置において、該半導体装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いている発光素子であり、従来のIII族窒化物半導体発光素子よりも、結晶品質が高く低抵抗のp型III族窒化物半導体(超格子構造)をp型クラッド層に使用しているので、動作電圧の低い、高出力、長寿命、高信頼性の半導体発光素子を提供することができる。
また、請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の半導体装置において、前記発光素子は、400nmよりも短い波長領域で発振する半導体レーザーであるので、低しきい値、高出力、長寿命、低コストの400nm以下の波長域で発振する半導体レーザーを提供することができる。すなわち、従来のIII族窒化物半導体レーザーは、p型AlGaNクラッド層のキャリア濃度が低いため、電子が活性層からp型クラッド層にオーバーフローし発光効率の低下を招いていたが、請求項6の半導体レーザーは、高いキャリア濃度のp型超格子構造をクラッド層に使用することができるので、電子のオーバーフローを低減できるため発光効率が高い。その結果、低しきい値で発振する。また、p型層の抵抗が低いので素子抵抗が低くなり、低電圧で動作する。そのため発熱が少ないので、高出力動作することができる。また、発熱による素子の劣化が抑制される。さらに、請求項6の半導体レーザーは、p型クラッド層にバンドギャップが大きく高いキャリア濃度のp型超格子構造を使用することができるので、従来は困難であった400nmより短い波長域での高効率のレーザー発振が実現できる。従って、請求項6の発明では、低しきい値、高出力、長寿命、低コストの400nm以下の波長域で発振する半導体レーザーを提供することができる。
また、請求項7記載の発明によれば、InとAlを構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、Inを構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体を積層することによって、所定の半導体装置を作製するので、従来のような熱処理等の後処理をせずに、低抵抗のp型III族窒化物半導体を結晶成長することが可能となる。このように、高温での長時間の熱処理を必要としないので、p型III族窒化物半導体超格子は、熱処理による超格子の界面での原子の拡散がなく、混晶組成やドーパント濃度のプロファイルの急峻性が結晶成長直後の状態に保たれる。また、熱処理時の温度を上げ下げによる歪みの発生がいないので、結晶欠陥の発生が抑制される。従って、請求項7では、結晶成長直後の高品質の結晶性が保たれた低抵抗のp型III族窒化物半導体を作製することができる。このようにして作製されたp型III族窒化物半導体を使用して半導体装置を作製することにより、従来の熱処理によって低抵抗化したp型III族窒化物半導体を使用する場合よりも、電気的特性に優れ、高信頼性の半導体装置を作製することができる。
また、請求項8記載の発明によれば、InとAlを構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、Inを構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体を含む積層構造を結晶成長によって形成した後に、成長温度からの冷却を、窒素原料を含む冷却ガス雰囲気で行ない、所定の半導体装置を作製するので、低抵抗のp型III族窒化物半導体あるいはそれを含む積層構造をas−grownで作製することができる。
請求項8の作製方法では、冷却雰囲気に含まれる窒素原料が、窒化物半導体結晶の生成反応に寄与する原子状の窒素を生成するため、結晶表面からの窒素の解離が防止される。その結果、ドナー性欠陥となる窒素空孔の生成が抑制され、表面の高抵抗化が防止される。また、窒素原料による結晶表面の分解の抑制は、p型超格子構造だけでなく、他のIII族窒化物結晶にも効果があるので、半導体装置を構成するIII族窒化物積層構造の最表面の熱分解による劣化が防止され、結晶品質の良い結晶を半導体装置に使用することができる。従って、従来よりも電気的特性が優れ、高信頼性の半導体装置を作製することができる。
また、p型化のための熱処理を必要としないため、半導体装置の作製工程を簡略化できるとともに、熱処理の設備費とエネルギー消費を削減できるので、低コストで半導体装置を作製することができる。
さらに、請求項7の方法と同様に、低抵抗化のための高温での長時間の熱処理を必要としないので、熱処理による超格子の界面での原子の拡散がなく、混晶組成やドーパント濃度のプロファイルの急峻性が結晶成長直後の状態に保たれる。また、温度を上げ下げすることによる歪みの発生がいないので、結晶欠陥の発生が抑制される。
このように、請求項8のp型III族窒化物半導体の作製方法では、結晶成長直後の高品質の結晶性が保たれた低抵抗のp型III族窒化物半導体を作製することができ、このようにして作製されたp型III族窒化物半導体を使用して半導体装置を作製することにより、従来の熱処理によって低抵抗化したp型III族窒化物半導体を使用する場合よりも、電気的特性に優れ、高信頼性の半導体装置を作製することができる。
また、請求項9記載の発明によれば、請求項8記載の半導体装置の作製方法において、冷却ガス雰囲気に含まれる窒素原料は、アンモニアであるので、請求項8と同様に、as−grownで低抵抗のp型III族窒化物半導体あるいはそれを含む積層構造が作製できる。さらに請求項8の作用効果に加えて、冷却雰囲気に含まれる窒素原料はアンモニアであるので、NH3の分解によって生成される水素によって、結晶表面に吸着している未反応の有機原料や、有機物の水素によるクリーニング効果が期待できる。その結果、表面の汚染による表面抵抗の増加が防止できる。また、アンモニアガスは、工業的には高純度のものが得られるので、不純物による結晶の汚染を防止することができる。
このように、請求項9記載の発明では、他の窒素原料を使用するよりも、さらに高品質のp型III族窒化物半導体を作製することができ、このようにして作製されたp型III族窒化物半導体を使用することで、電気的特性に優れ、高信頼性の半導体装置を低コストで作製することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明のp型III族窒化物半導体は、In(インジウム)とAl(アルミニウム)を構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、In(インジウム)を構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されていることを特徴としている。
ここで、第1のIII族窒化物半導体とは、B(ボロン),Al(アルミニウム),Ga(ガリウム),In(インジウム)のIII族元素のうち少なくともInとAlを構成元素に含むN(窒素)との化合物からなる半導体である。例えば、InAlNの三元系や、InAlGaNやBInAlNの四元系、あるいは、BInAlGaNの五元系混晶半導体である。
また、第2のIII族窒化物半導体とは、B(ボロン),Al(アルミニウム),Ga(ガリウム),In(インジウム)のIII族元素のうち少なくともInを構成元素に含むN(窒素)との化合物からなる半導体である。例えば、InAlNやInGaNやInBNの三元系や、InAlGaNやBInAlNやBInGaNの四元系や、BInAlGaNの五元系混晶半導体である。
上記第1および第2のIII族窒化物半導体は、ともに、III族元素の混晶比率を変えることで所望のバンドギャップを有するものにすることができる。
また、上記超格子構造は、第1と第2のIII族窒化物半導体がクラックが入らない程度の厚さで交互に積層されて形成される。一般的には、数nm〜十数nm程度の厚さの第1,第2の半導体層が、数十層から百数十層程度交互に積層されるが、このような厚さ,積層数は、特に限定されるものではない。また、各層が同一の厚さである必要も無く、用途によって適宜選択することができる。上記構成のp型III族窒化物半導体において、p型III族窒化物半導体の見かけ上の屈折率は、超格子構造全体に含まれる各III族元素の比率によって決定される。従って、各層の厚さと組成を制御することによって、本発明のp型III族窒化物半導体の見かけの屈折率を制御することができる。
また、上記超格子構造にはp型ドーパントがドーピングされている。p型ドーパントは、一般的にはMgやBeが使用されるが、アクセプターとなるものであれば、MgやBe以外であっても使用することができる。p型ドーパントは、第1と第2のIII族窒化物半導体の両方に、あるいは、第1のIII族窒化物半導体のみに、あるいは、第2のIII族窒化物半導体のみに、ドーピングすることが可能である。また、第1と第2のIII族窒化物半導体のどちらか一方のドーピング量を少なくする変調ドーピングの形態をとることも可能である。
p型ドーパントがドーピングされた超格子構造はp型の電気伝導型を示す。なお、ここで言うp型の電気伝導型とは、超格子構造全体を一つの半導体層とみなした場合の電気伝導型を意味する。従って、超格子構造を構成する各半導体層のみの電気伝導型を意味するものではない。例えば、第1のIII族窒化物半導体が、絶縁性(高抵抗のn型あるいはp型)であっても、第2のIII族窒化物半導体がp型であって、超格子構造全体としてp型特性を示すものは、p型半導体とみなす。また、第1のIII族窒化物半導体がp型で、第2のIII族窒化物半導体が絶縁性(高抵抗のn型あるいはp型)である場合や、第1、第2の両方の半導体がp型で超格子構造全体としてp型特性を示すものも、p型半導体とみなす。
より具体的に、本発明のp型III族窒化物半導体において、第2のIII族窒化物半導体には、InzGa(1-z)N(0<z≦1)を用いることができる。この場合、低抵抗のp型特性を効果的に得るには、少なくとも第2のIII族窒化物半導体に、p型ドーパントをドーピングすることが望ましい。その理由は、第2のIII族窒化物半導体であるInzGa(1-z)N(0<z≦1)は、Inの混晶比が大きい程アクセプター準位が浅くなり(すなわちアクセプターの活性化エネルギーが小さくなり)、高いキャリア濃度を得ることが可能になるからである。従って、第2のIII族窒化物半導体であるInzGa(1-z)N(0<z≦1)にp型ドーパントをドーピングすることによって、超格子構造のキャリア濃度を高くすることが可能となり、低抵抗のp型特性を示すことができる。
また、本発明のp型III族窒化物半導体において、第1のIII族窒化物半導体と第2のIII族窒化物半導体はそれぞれの格子定数が異なるものにすることができる。なお、第1のIII族窒化物半導体と第2のIII族窒化物半導体のそれぞれの格子定数は、混晶組成を制御することで制御できる。
図1,図2は本発明に係るp型III族窒化物半導体の構成例を示す図である。なお、図2は図1の部分Bを拡大した図である。図1,図2を参照すると、このp型III族窒化物半導体は、サファイア基板20上に低温GaNバッファー層21,GaN層22が順次積層された積層構造上にエピタキシャル成長された、In0.04Al0.2Ga0.76N層23aとp型In0.1Al0.04Ga0.86N層23bとの超格子構造からなるp型III族窒化物半導体23である。超格子を構成する各層23a,23bの厚さはそれぞれ5nmであり、各層23a,23bを50周期で成長して形成されている。超格子全体では0.5μmの厚さである。また、p型In0.1Al0.04Ga0.86N層23bには、p型不純物のMg(マグネシウム)がドーピングされている。超格子構造からなるp型III族窒化物半導体層23のキャリア濃度は3×1018cm-3であり、低抵抗のp型を示した。
また、図3,図4は本発明に係るp型III族窒化物半導体の他の構成例を示す図である。なお、図4は図3の部分Cを拡大した図である。図3,図4では、第2のIII族窒化物半導体にInzGa(1-z)N(0<z≦1)を用いる場合の例が示されている。すなわち、図3,図4を参照すると、このp型III族窒化物半導体は、サファイア基板30上に低温GaNバッファー層31,GaN層32が順次積層された積層構造上にエピタキシャル成長された、In0.04Al0.2Ga0.76N層33aとp型In0.2Ga0.8N層33bとの超格子構造からなるp型III族窒化物半導体である。超格子を構成する各層の厚さは、In0.04Al0.2Ga0.76N層33aが10nm、In0.2Ga0.8N層33bが5nmであり、各層33a,33bを30周期で成長して形成されている。超格子全体では0.45μmの厚さである。また、p型In0.2Ga0.8N層33bには、p型不純物のMg(マグネシウム)がドーピングされている。超格子構造からなるp型III族窒化物半導体層33のキャリア濃度は9×1018cm-3であり、低抵抗のp型を示した。
また、図5,図6は本発明に係るp型III族窒化物半導体の他の構成例を示す図である。なお、図6は図5の部分Dを拡大した図である。図5,図6では、第1のIII族窒化物半導体と第2のIII族窒化物半導体とは、それぞれの格子定数が異なる場合の例が示されている。すなわち、図5,図6を参照すると、このp型III族窒化物半導体は、サファイア基板40上に低温GaNバッファー層41,GaN層42が順次積層された積層構造上にエピタキシャル成長された、In0.05Al0.24Ga0.71N層43aとp型In0.2Ga0.8N層43bとの超格子構造からなるp型III族窒化物半導体43である。超格子を構成する各層43a,43bの厚さはそれぞれ5nmであり、各層43a,43bを50周期で成長して形成されている。超格子全体では0.5μmの厚さである。また、In0.05Al0.24Ga0.71N層43aとp型In0.2Ga0.8N層43bには、p型不純物のMg(マグネシウム)がドーピングされている。超格子構造からなるp型III族窒化物半導体層43のキャリア濃度は9×1018cm-3であり、低抵抗のp型を示した。
また、上記本発明のp型III族窒化物半導体を含む積層構造を有する半導体装置を構成することができる。この場合、半導体装置としては、上記本発明のp型III族窒化物半導体の特性を用いて機能するものであれば、発光素子,受光素子,電子デバイス等の任意の形態をとることができる。
例えば、上記半導体装置が発光素子である場合、この発光素子は、上記本発明のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いたものにすることができる。ここで、発光素子の構造は、特に限定されるものではなく、上記本発明のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いたものであって、少なくとも1つのp−n接合を有し、キャリアの再結合によって発光し、光が外部に取り出されるものであれば良い。すなわち、発光ダイオード,スーパールミネッセンスダイオード,半導体レーザーのいずれであってもよい。また、端面発光型,面発光型のどちらの構造であっても良い。
具体的に、上記発光素子が半導体レーザーである場合、該半導体レーザーは、上記本発明のp型III族窒化物半導体がクラッド層に用いられた400nmよりも短い波長領域で発振するものにすることができる。ここで、半導体レーザーの構造は、p型超格子からなるp型クラッド層と、発振波長が400nm以下の波長に対応したバンドギャップを有するIII族窒化物半導体からなる活性層とが少なくとも積層されている積層構造で構成されているものであれば、任意の構成をとることができる。また、半導体レーザーの形態としては、端面発光型,面発光型のどちらの形態をとっても良い。
上記構成の半導体レーザーでは、正負の2つの電極間に電圧を印加することによって活性層に電流が注入され、そこでキャリアの再結合が生じ、共振器ミラーで光が増幅され、400nmよりも短い波長領域でレーザー発振する。
また、本発明では、上述した半導体装置の第1の作製方法として、In(インジウム)とAl(アルミニウム)を構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、In(インジウム)を構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体を積層することによって、所定の半導体装置を作製することができる。
結晶成長直後のp型III族窒化物半導体が高抵抗である原因は、アクセプターに水素が結合し不活性化されているためであると言われている。本願の発明者は、不活性化の原因を実験により調べた。その結果、p型III族窒化物半導体の高抵抗化は、主として結晶成長後の冷却過程で、雰囲気ガス中に含まれる水素が、p型III族窒化物半導体結晶中に拡散侵入することによって生じることがわかった。
この第1の作製方法では、結晶成長後の冷却過程でのp型III族窒化物半導体への水素の拡散を防止するため、p型III族窒化物半導体の結晶成長に続けて、その上にIII族窒化物半導体からなる水素の拡散防止層を形成して、p型III族窒化物半導体の高抵抗化を抑制している。この水素の拡散防止層となるIII族窒化物半導体は、その組成,電気伝導型は特に限定するものではない。また、厚さに関しては、水素の拡散深さ以上であれば良い。本願の発明者の実験によれば、p型GaNを拡散防止層とする場合には、p型GaNは約0.5μm程度の厚さであれば良いことを確認している。
上記のように、この第1の作製方法で作製されたp型III族窒化物半導体は、アニール等の特別なp型活性化処理を必要とせず、as−grown(結晶成長のみの状態)でp型特性を示す。すなわち、この第1の作製方法では、as−grownでp型特性を示すp型III族窒化物半導体を有する半導体装置を作製できる。なお、上記のようにして作製されたIII族窒化物半導体積層構造を使用して半導体装置を作製する場合には、拡散防止層をそのまま使用することも可能であるし、また、拡散防止層の全部あるいは一部を除去して、半導体装置を作製することも可能である。
また、本発明では、上述した半導体装置の第2の作製方法として、In(インジウム)とAl(アルミニウム)を構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、In(インジウム)を構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体を含む積層構造を結晶成長によって形成した後に、成長温度からの冷却を、窒素原料を含む冷却ガス雰囲気で行ない、所定の半導体装置を作製することができる。
本願の発明者は、低抵抗のp型GaNを得るため、結晶成長後の冷却を水素を全く含まない窒素雰囲気で行った。しかしながら、結晶成長したGaNは高抵抗であった。また、結晶成長終了後に、ガス雰囲気を窒素に切り替えて、成長温度で10分間保持したところ、表面に多数のステップが形成されており、明らかに分解されているのが判明した。さらに、結晶成長後の冷却雰囲気中に水素が含まれていても、その濃度がある程度までであれば、結晶内部への水素拡散は少なく、結晶全体を高抵抗にする濃度にはなっていないことを実験により確認した。以上の実験結果から、本願の発明者は、水素のガス濃度が少ない雰囲気ガスでの冷却においては、水素パシベーションによるアクセプターの不活性化よりも、結晶表面の分解による結晶性の劣化が原因となって低抵抗のp型結晶が得られないという結論を得た。
本発明のこの第2の作製方法についてより詳細に説明する。まず、MOCVD等の水素を含むガス雰囲気中で加熱した基板表面に、上述した本発明のp型III族窒化物半導体、あるいは、本発明のp型III族窒化物半導体を含む積層構造の結晶成長を行う。次いで、結晶成長した基板を成長温度から冷却する。この時の冷却雰囲気を窒素原料を含むガス雰囲気にする。
冷却時のガス雰囲気は、具体的には、窒素やアルゴン等の不活性ガスと窒素原料との混合ガス、あるいは、窒素原料ガスのみを使用することができる。また、これらの雰囲気ガスに数%〜30%程度までの水素を加えた混合ガスも使用することができる。
窒素原料ガスは、雰囲気ガス中に数パーセント程度含まれていれば結晶表面の分解が抑制されるが、過半数(50%より多く)が窒素原料であると、より効果的である。
窒素原料としては、モノメチルヒドラジンやジメチルヒドラジン等の有機化合物、アンモニア等が使用可能である。
このような方法で作製されたp型III族窒化物半導体は、アニール等の後工程を行うことなく、as−grownで低抵抗のp型特性を示す。すなわち、この第2の作製方法では、低抵抗のp型III族窒化物半導体をas−grownで作製することができる。
上述した第2の作製方法において、冷却ガス雰囲気に含まれる窒素原料としてアンモニア(NH3)を用いる場合について特に説明する。従来、低抵抗のp型GaNをNH3ガス雰囲気中で熱処理すると、高抵抗化することが報告されており、高抵抗化したp型III族窒化物半導体を熱処理によって低抵抗化する場合の雰囲気ガス中にはNH3ガスを含むことは好ましくないとされていた。しかるに、本願の発明者は、結晶成長後の冷却過程では、NH3ガスを含んでいても低抵抗のp型III族窒化物半導体がas−grownで得られることを見出した。さらに、NH3を100%としたガス雰囲気で冷却を行っても、低抵抗のp型III族窒化物半導体がas−grownで得られることがわかった。
すなわち、結晶終了後の冷却過程の雰囲気をNH3を含む雰囲気にする場合、冷却時においては、NH3の分解によって水素が発生しても、結晶内部へ拡散して結晶全体を高抵抗化するには至らず、むしろNH3の分解により生成される活性窒素が結晶表面の分解を抑制するため、結晶表面の高抵抗化が抑制されて低抵抗のp型III族窒化物半導体がas−grownで得られると考えられる。なお、NH3ガスは、雰囲気ガス中に数パーセント程度含まれていれば効果が得られるが、過半数(50%より多く)がNH3ガスであると、より効果的である。
図7,図8,図9は本発明に係る半導体装置(上述した本発明のp型III族窒化物半導体を用いている半導体装置)の構成例を示す図である。ここで、図7,図8,図9の半導体装置は端面発光型発光ダイオードと端面受光型フォトダイオードとがモノリシックに集積化された受発光素子として構成されている。なお、図7は受発光素子の発光ダイオードの光出射端面に垂直な面での断面図であり、図8は図7の部分Eを拡大した図であり、また、図9は発光ダイオードの光出射端面に平行な面での断面図である。
図7,図8,図9を参照すると、発光ダイオードとフォトダイオードとは、概ね直方体の形状をしており、発光ダイオードの1つの光出射端面とフォトダイオードの受光端面とが向き合うように空間的に分離されて形成されている。
また、発光ダイオードとフォトダイオードは同一の積層構造からなっている。その積層構造は、サファイア基板50上に、AlN低温バッファー層51、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52、n型Al0.07Ga0.93Nクラッド層53、In0.17Ga0.83N活性層54、In0.05Al0.24Ga0.71N層55aとp型In0.15Ga0.85N層55bとの超格子からなるp型クラッド層55、p型GaNコンタクト層56が順次に積層されたものとなっている。ここで、p型クラッド層55,p型GaNコンタクト層56にはp型ドーパントとしてMgがドーピングされている。
発光ダイオードとフォトダイオードは、上記積層構造をp型GaNコンタクト層56の表面からn型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52までエッチングすることで空間的に分離されている。そして、このエッチングによってn型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52表面が露出し、露出したn型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52上には、Ti/Alからなるn側オーミック電極59が形成されている。また、発光ダイオードとフォトダイオードのp型GaNコンタクト層56上には、Ni/Auからなるp側オーミック電極58が形成されている。さらにオーミック電極以外の部分には、SiO2からなる絶縁保護膜57が堆積されている。そして、絶縁保護膜57上に、Ti/Alからなる配線電極60が形成されている。配線電極60は、発光ダイオードとフォトダイオードのそれぞれの、p側オーミック電極58と電気的に接続されている。発光ダイオードとフォトダイオードの側面は基板に対して概ね垂直に形成されている。
そして、発光ダイオードとフォトダイオードの溝を介して向き合う側面が、それぞれ光出射端面502と受光面503になる。また、発光ダイオードのフォトダイオードと向き合う側面と反対側の端面が外部へ光を出射する光出射端面501となる。
この集積型受発光素子は、発光ダイオードに順方向電流を注入し、フォトダイオードに逆バイアスを印加することによって動作する。すなわち、それぞれの素子のp側,n側オーミック電極に順方向あるいは逆方向にバイアスを印加すると、発光ダイオードは2つの光出射端面501,502から光を出射する。そして、フォトダイオードに向いた光出射端面502から出射した光が、フォトダイオードの受光面503に入射し、その強度に対応した光起電力がフォトダイオードで発生し、外部に光電流として取り出される。フォトダイオードの光電流をモニターすることによって、発光ダイオードに注入する電流を調整し、光出力を制御することができる。なお、発光ダイオードに電流を注入して発光させると、発光のピーク波長は、約412nmであった。
次に、図7,図8,図9の集積型受発光素子の作製工程例について説明する。なお、この作製工程例では、集積型受発光素子の積層構造はMOCVD法で結晶成長して作製した。この作製工程例では、まず、サファイア基板50を反応管にセットし、水素ガス中、1120℃で加熱し、基板50の表面をクリーニングした。次いで、温度を520℃に下げ、成長雰囲気をNH3と窒素と水素の混合ガス雰囲気にし、TMAを流し、低温AlNバッファー51を堆積した。
次いで、温度を1070℃に上げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMA,SiH4を組成にあわせて供給し、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52を3μmの厚さ、n型Al0.07Ga0.93Nクラッド層53を0.5μmの厚さに順次積層した。次いで、水素ガスの供給を止め、雰囲気をNH3と窒素の混合ガス雰囲気にし、温度を810℃に下げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMIを供給し、In0.17Ga0.83N活性層54を50nmの厚さに成長した。次いで、TMG,TMA,TMI,(EtCp)2Mgを組成にあわせて供給し、In0.05Al0.24Ga0.71N層55aとp型In0.15Ga0.85N層55bの超格子からなるp型クラッド層55を0.5μm成長した。各層55a,55bの厚さはそれぞれ5nmであり、各層55a,55bを50周期成長した。次いで、温度を1050℃に上げ、TMG,(EtCp)2Mgを供給し、p型GaNコンタクト層56を0.2μmの厚さに積層した。結晶成長終了後、p型層の低抵抗化のため、窒素雰囲気中で、750℃で15分間の熱処理を行った。
次に、幅30μm、長さ50μmの矩形パターンを長さ方向に5μm離して2つ並べたパターンをレジストで形成した。このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングを行い、発光ダイオードとフォトダイオードになる高さ約1.5μmの直方体形状を形成するとともに、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52を露出させた。次いで、絶縁保護膜57となるSiO2を積層構造の表面に約0.5μmの厚さに堆積した。
次いで、p側オーミック電極58を形成した。p側オーミック電極58の形成工程は次の通りである。すなわち、まず、発光ダイオードとフォトダイオードの上部に、レジストでヌキストライプパターンを形成した後、SiO2をエッチングしてリッジ上のp型GaNコンタクト層56を露出させる。次いで、p側オーミック電極材料であるNi/Auを蒸着した。その後、ウエハーを有機溶剤に浸し、レジストを溶かしてレジスト上に蒸着された電極材をリフトオフして、発光ダイオードとフォトダイオードの上部にp側オーミック電極パターンを形成した。その後、窒素雰囲気中、600℃で熱処理し、p型GaNコンタクト層56にp側オーミック電極58を形成した。
次いで、n側オーミック電極59と配線電極60を形成した。n側オーミック電極59と配線電極60の形成工程は次の通りである。すなわち、まず、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52上部のSiO2膜57上に、レジストで約100μm幅のヌキストライプパターンを形成した後、SiO2をエッチングしてn型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層52を露出させる。次に、レジストを除去し、再度レジストで、配線電極60とn側オーミック電極59のリフトオフパターンを形成する。次いで、n側オーミック電極59と配線電極60の材料であるTi/Alを蒸着した。その後、ウエハを有機溶剤中に浸し、レジストを溶かしてレジスト上に蒸着された電極材料をリフトオフし、n側オーミック電極と配線電極パターンを形成した。その後、窒素雰囲気で450℃で熱処理し、n側オーミック電極59を形成した。次いで、ダイシングを行い、集積型受発光素子をチップに分離した。
また、図10,図11,図12は本発明に係る半導体装置の他の構成例を示す図である。なお、図10は半導体装置(半導体レーザー)の光出射方向に垂直な面での断面図であり、図11は図10の部分Fを拡大した図であり、図12は図10の部分Gを拡大した図である。図10,図11,図12の半導体装置は、上述した本発明のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いた発光素子として構成されている。より詳しくは半導体レーザーとして構成されている。
図10,図11,図12を参照すると、この半導体レーザーは、サファイア基板70上に、AlGaN低温バッファー層71、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72、In0.05Al0.24Ga0.71N層73aとn型In0.2Ga0.80N層73bとの超格子からなるn型クラッド層73、n型GaNガイド層74、In0.15Ga0.85N/In0.02Ga0.98N多重量子井戸活性層(2ペア)75、p型Al0.2Ga0.8N層76、p型GaNガイド層77、p型In0.05Al0.24Ga0.71N層78aとp型In0.2Ga0.80N層78bとの超格子からなるp型クラッド層78、p型GaNコンタクト層79が順次積層されて形成されている。ここで、p型Al0.2Ga0.8N層76,p型GaNガイド層77,p型クラッド層78,p型GaNコンタクト層79には、p型ドーパントとしてMgがドーピングされている。
そして、上記積層構造は、p型GaNコンタクト層79の表面からn型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72までエッチングされて、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72の表面が露出し、露出したn型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72上には、Ti/Alからなるn側オーミック電極82が形成されている。また、p型GaNコンタクト層79の表面からp型クラッド層78の途中までエッチングされて、電流狭窄リッジ構造400が形成されている。そして、リッジ400最表面のp型GaNコンタクト層79上には、Ni/Auからなるp側オーミック電極81が形成されている。また、電極形成部以外は絶縁保護膜80として、SiO2が堆積されている。絶縁保護膜80上にはp側電極から引き出された配線電極83が形成されている。そして、積層構造と電流狭窄リッジ構造と概ね垂直に光共振器端面が形成されている。
この半導体レーザの電極に順方向に電流を注入すると発光し、さらに電流を増加させるとレーザー発振する。発振波長は約409nmである。
次に、図10,図11,図12の半導体レーザーの作製工程例について説明する。なお、この作製工程例では、半導体レーザーの積層構造の結晶成長はMOCVD法で行った。また、前述した第2の作製方法(すなわち、In(インジウム)とAl(アルミニウム)を構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、In(インジウム)を構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体を含む積層構造を結晶成長によって形成した後に、成長温度からの冷却を、窒素原料を含む冷却ガス雰囲気で行ない、半導体レーザーを作製する作製方法)を用いた。ここで、結晶成長後の冷却時の雰囲気ガスに含まれる窒素原料をモノメチルヒドラジンとした。
この作製工程例では、まず、サファイア基板70を反応管にセットし、水素ガス中、1120℃で加熱し、基板70の表面をクリーニングした。次いで、温度を520℃に下げ、雰囲気をMMHy(モノメチルヒドラジン)とNH3と窒素と水素の混合ガス雰囲気にし、TMGとTMAを流し、低温AlGaNバッファー層71を堆積した。次いで、温度を1050℃に上げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMI,SiH4を組成にあわせて供給し、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72を2μmの厚さに成長した。
次いで、水素ガスの供給を止め、雰囲気をMMHy(モノメチルヒドラジン)とNH3と窒素の混合ガス雰囲気にし、温度を810℃に下げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMI,TMA,SiH4を供給し、In0.05Al0.24Ga0.71N層73aとIn0.2Ga0.80N層73bとの超格子からなるn型クラッド層73を0.6μmの厚さに成長した。なお、各層73a,73bの厚さはそれぞれ6nmで、各層73a,73bを50周期成長した。
次いで、温度を1050℃に上げ、雰囲気をMMHy(モノメチルヒドラジン)とNH3と窒素と水素の混合ガス雰囲気にし、n型GaNガイド層74を0.1μmの厚さに積層した。
次いで、水素ガスの供給を止め、雰囲気をMMHyとNH3と窒素の混合ガス雰囲気にし、温度を810℃に下げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMIを供給し、In0.15Ga0.85N/In0.02Ga0.98N多重量子井戸活性層75(2ペア)を成長した。次いで、成長雰囲気をMMHyとNH3と窒素と水素の混合ガス雰囲気にし、温度を1070℃に上げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMA,(EtCp)2Mgを組成にあわせて供給し、p型Al0.2Ga0.8N層76を20nmの厚さに、また、p型GaNガイド層77を0.1μmの厚さに成長した。
次いで、水素ガスの供給を止め、雰囲気をMMHyとNH3と窒素の混合ガス雰囲気にし、温度を810℃に下げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMI,TMA,(EtCp)2Mgを供給し、In0.05Al0.24Ga0.71N層78aとIn0.2Ga0.80N層78bとの超格子からなるp型クラッド層78を0.6μmの厚さに成長した。なお、各層78a,78bの厚さはそれぞれ6nmで、各層78a,78bを50周期成長した。最後に、温度を1050℃に上げ、p型GaNコンタクト層79を0.2μmの厚さに積層した。
結晶成長終了後、III族原料とp型ドーパント原料の供給を止め、窒素ガスとMMHyと水素ガス(全体の約6%)との混合ガス雰囲気中で室温まで冷却した。冷却後、積層構造表面にテスターを充てると、導通が有り、表面のp型GaNコンタクト層79が低抵抗であることが確認された。
次いで、レジストで幅4μmのストライプパターンを繰り返しピッチ1mmで形成した。このレジストパターンをマスクとして、約0.7μmの深さをドライエッチングして、リッジ構造400を形成した。レジストマスクを除去した後に、さらにレジストでリッジ構造400を覆う幅500μmのストライプパターンを繰り返しピッチ1mmで形成した。このレジストパターンをマスクとして、約1.5μmの深さドライエッチングして、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72を露出させた。次いで、絶縁保護膜80となるSiO2を積層構造の表面に約0.5μmの厚さに堆積した。
次いで、p側オーミック電極81を形成した。p側オーミック電極81の形成工程は次の通りである。まず、リッジ構造400の上部に、レジストでヌキストライプパターンを形成した後、SiO2をエッチングしてリッジ構造400上のp型GaNコンタクト層79を露出させる。次いでレジストを除去し、再度レジストで約450μm幅のヌキストライプパターンを形成し、リッジ構造400上にp側オーミック電極材料であるNi/Auを蒸着した。その後、ウエハーを有機溶剤に浸し、レジストを溶かしてレジスト上に蒸着された電極材をリフトオフして、半導体レーザー積層構造上にのみp側オーミック電極パターンを形成した。その後、窒素雰囲気中、600℃で熱処理し、p型GaNコンタクト層79にp側オーミック電極81を形成した。
次いで、n側オーミック電極82と配線電極83を形成した。n側オーミック電極82と配線電極83の形成工程は次の通りである。まず、n型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72上部のSiO2膜上に、レジストで約100μm幅のヌキストライプパターンを形成した後、SiO2をエッチングしてn型Al0.03Ga0.97Nコンタクト層72を露出させる。レジストを除去した後、再びレジストを塗布して、p側オーミック電極81上とn側オーミック電極を形成する部分にリフトオフ用の電極パターンを形成する。次いで、n側オーミック電極材料と配線電極材料であるTi/Alの蒸着を行い、ウエハを有機溶剤中に浸し、レジストを溶かしてレジスト上に蒸着された電極材料をリフトオフし、n側オーミック電極パターンと配線電極パターンを形成した。その後、窒素雰囲気で450℃で熱処理し、n側オーミック電極82を形成した。
次いで、サファイア基板70を薄く研磨し、リッジ400に概ね垂直になるように割り、光共振器端面を形成した。
また、図13,図14,図15は本発明に係る半導体装置の他の構成例を示す図である。なお、図13は半導体装置(端面発光型発光ダイオード)の光出射端面に垂直な面での断面図であり、図14は図13の部分Hを拡大した図であり、図15は図13の部分Iを拡大した図である。図13,図14,図15の半導体装置は、上述した本発明のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いた発光素子(端面発光型発光ダイオード)として構成されている。
図13,図14,図15を参照すると、この発光ダイオードは概ね直方体の形状をしており、発光ダイオードの一側面が光出射端面となっている。発光ダイオードの積層構造は、n型GaN基板90上に、n型Al0.07Ga0.93N低温バッファー層91、In0.02Al0.34Ga0.64N層92aとIn0.18Ga0.82N層92bとの超格子からなるn型クラッド層92、Al0.07Ga0.93N活性層93、In0.02Al0.34Ga0.64N層94aとIn0.18Ga0.82N層94bとの超格子からなるp型クラッド層94、p型GaNコンタクト層95が順次積層されて形成されている。ここで、p型クラッド層94、p型GaNコンタクト層95には、それぞれp型不純物であるMgが添加されている。
発光ダイオードのp型GaNコンタクト層95上には、Ni/Auからなるp側オーミック電極96が形成されている。また、基板90の裏面には、Ti/Alからなるn側オーミック電極97が形成されている。発光ダイオードの側面は基板に対して垂直に形成されている。そして、発光ダイオードのp側、n側オーミック電極96,97に順方向のバイアスを印加すると、発光ダイオードの一側面である光出射端面700から光が外部に出射される。この発光ダイオードの発光のピーク波長は、約350nmであった。
次に、図13,図14,図15の発光ダイオードの作製工程例について説明する。なお、この作製工程例では、発光ダイオードの積層構造はMOCVD法で結晶成長して作製した。また、前述した第2の作製方法(すなわち、In(インジウム)とAl(アルミニウム)を構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、In(インジウム)を構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体を含む積層構造を結晶成長によって形成した後に、成長温度からの冷却を、窒素原料を含む冷却ガス雰囲気で行ない、発光ダイオードを作製する作製方法)を用いた。また、このとき、冷却ガス雰囲気に含まれる窒素原料をアンモニアにした。
この作製工程例では、まず、n型GaN基板90を反応管にセットし、アンモニアガス中、1120℃で加熱し、基板90の表面をクリーニングした。次いで、温度を600℃に下げ、雰囲気をNH3と窒素と水素の混合ガス雰囲気にし、TMAとTMGおよびn型ドーパントガスであるSiH4ガスを流し、n型低温Al0.07Ga0.93Nバッファー層91を堆積した。次いで、温度を810℃に上げ、TMG,TMA,TMI、および、n型不純物ガスとしてSiH4を組成にあわせて供給し、In0.02Al0.34Ga0.64N層92aとIn0.18Ga0.82N層92bとの超格子からなるn型クラッド層92を0.3μmの厚さに積層した。なお、各層92a,92bの厚さは、In0.02Al0.34Ga0.64N層92aが10nm、In0.18Ga0.82N層92bが5nmで、各層92a,92bを20周期成長した。次いで、温度を1070℃に上げ、Al0.07Ga0.93N活性層93を0.05μmの厚さに積層した。次いで、温度を810℃に下げ、TMG,TMA,TMI、および、p型不純物ガスとして(EtCp)2Mgを組成にあわせて供給し、In0.02Al0.34Ga0.64N層94aとIn0.18Ga0.82N層94bとの超格子からなるp型クラッド層94を0.3μmの厚さに積層した。なお、各層94a,94bの厚さは、In0.02Al0.34Ga0.64N層94aが10nm、In0.18Ga0.82N層94bが5nmで、各層94a,94bを20周期成長した。次いで、温度を1050℃に上げ、p型GaNコンタクト層95を0.2μmの厚さに積層した。
結晶成長終了後、反応管内をアンモニアガス60%と窒素ガス40%の混合ガス雰囲気にして成長温度から室温まで冷却した。冷却後、積層構造表面にテスターを充てると、導通が有り、表面のp型GaNコンタクト層95が低抵抗であることが確認された。
次いで、p側オーミック電極材料であるNi/Auを積層構造上面に蒸着した。その後、窒素雰囲気中、600℃で熱処理し、p型GaNコンタクト層95にp側オーミック電極96を形成した。次いで、GaN基板90の裏面を研磨し、約100μmの厚さにした。次いで、n側オーミック電極材料であるTi/Alを蒸着し、窒素雰囲気で450℃で熱処理して、n側オーミック電極97を形成した。次いで、基板をへき開して、出射端面700の形成と、チップ分離を行った。
図16,図17,図18,図19は本発明に係る半導体装置の他の構成例を示す図である。なお、図16は半導体レーザーの斜視図であり、図17は半導体レーザーの光出射方向に垂直な面での断面図であり、図18は図17の部分Jを拡大した図であり、図19は図17の部分Kを拡大した図である。図16,図17,図18,図19の半導体装置は、上述した本発明のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いた発光素子(半導体レーザー)として構成されている。
図16,図17,図18,図19を参照すると、この半導体レーザーの積層構造1000は、n型GaN基板100上に、n型AlGaN低温バッファー層101、n型Al0.03Ga0.97N高温バッファー層102、In0.05Al0.24Ga0.71N層103aとIn0.2Ga0.80N層103bとの超格子からなるn型クラッド層103、n型GaNガイド層104、In0.02Ga0.98N/In0.17Ga0.85N多重量子井戸活性層105、p型Al0.2Ga0.8N層106、p型GaNガイド層107、In0.05Al0.24Ga0.71N層108aとIn0.2Ga0.80N層108bとの超格子からなるp型クラッド層108、p型GaNコンタクト層109、絶縁型GaN層110が順次に積層されて形成されている。そして、p型Al0.2Ga0.8N層106、p型GaNガイド層107、p型クラッド層108、p型GaNコンタクト層109、絶縁型GaN層110には、p型不純物であるMgがドーピングされている。
また、絶縁型GaN層110は、p型GaNコンタクト層109の表面が露出するまでストライプ状にエッチングされている。そして、絶縁型GaN層110と露出したp型GaNコンタクト層109上に、Ni/Auからなるp側オーミック電極材料が形成され、p型GaNコンタクト層109上にストライプ状にp側オーミック電極111が形成されている。
そして、積層構造1000とp側オーミック電極111のストライプと概ね垂直に光共振器端面801,802が形成されている。また、GaN基板100の裏面にはTi/Alからなるn側オーミック電極112が形成されている。この半導体レーザーの電極111,112に順方向に電流を注入すると発光し、さらに電流を増加させるとレーザー発振した。発振波長は約409nmであった。
次に、図16,図17,図18,図19の半導体レーザーの作製工程例について説明する。なお、この作製工程例では、半導体レーザーの積層構造の結晶成長はMOCVD法で行った。また、前述した第1の作製方法(すなわち、In(インジウム)とAl(アルミニウム)を構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、In(インジウム)を構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体を積層することによって、半導体装置を作製する作製方法)を用いた。
この作製工程例では、まず、n型GaN基板100を反応管にセットし、水素と窒素とアンモニアガスの混合ガス中、1120℃に加熱し、基板100の表面をクリーニングした。次いで、温度を600℃に下げ、NH3と窒素と水素の混合ガス雰囲気で、TMAとTMGおよびn型ドーパントガスであるSiH4ガスを流し、n型低温AlGaNバッファー層101を堆積した。次いで、温度を1070℃に上げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMA,n型不純物ガスとしてSiH4を組成にあわせて供給し、n型Al0.03Ga0.97N高温バッファー層102を1μmの厚さに積層した。次いで、温度を810℃に下げ、TMG,TMA,TMI,n型不純物ガスとしてSiH4を組成にあわせて供給し、In0.05Al0.24Ga0.71N層103aとIn0.2Ga0.80N層103bとの超格子からなるn型クラッド層103を0.5μmの厚さに積層した。次いで、温度を1050℃に上げ、n型GaNガイド層104を0.1μmの厚さに積層し、次いで、温度を810℃に下げ、TMG,TMIを組成にあわせて供給し、In0.02Ga0.98N/In0.17Ga0.85N多重量子井戸活性層105(2ペア)を積層した。
次いで、温度を1070℃に上げ、TMG,TMA,p型不純物原料の(EtCp)2Mgを組成にあわせて供給し、p型Al0.2Ga0.8N層106を20nmの厚さに、また、p型GaNガイド層107を0.1μmの厚さに積層した。次いで、温度を810℃に下げ、TMG,TMA,TMI,p型不純物原料の(EtCp)2Mgを組成にあわせて供給し、In0.05Al0.24Ga0.71N層108aとIn0.2Ga0.80N層108bとの超格子からなるp型クラッド層108を0.5μmの厚さに積層した。次いで、温度を1050℃に上げ、p型GaNコンタクト層109を0.2μmの厚さに積層し、最後に、(EtCp)2Mgの供給量を減らして絶縁型GaN層110を0.5μmの厚さに積層した。結晶成長終了後、水素と窒素とアンモニアガスの混合ガス雰囲気中で、成長温度から室温まで冷却した。
次いで、レジストで幅5μmのヌキストライプパターンを繰り返しピッチ300μmで形成した。このレジストパターンをマスクとして、約0.5μmの深さをドライエッチングして、p型GaNコンタクト層109を露出させた。レジストマスクを除去した後、p型GaNコンタクト層109にストライプ状のp側オーミック電極111を形成した。P側オーミック電極111は、ウエハー表面に、p側オーミック電極材料であるNi/Auを蒸着した後、窒素雰囲気中、600℃で熱処理して形成した。次いで、基板100の裏面を研磨し、厚さを約100μmにした後、n側オーミック電極材料であるTi/Alを蒸着した。その後、窒素雰囲気で450℃で熱処理し、n側オーミック電極112を形成した。次いで、半導体レーザー構造が形成されたウエハーをストライプ状電極111に概ね垂直になるようにへき開し、光共振器端面801,802を形成した。
また、図20,図21,図22,図23は本発明に係る半導体装置の他の構成例を示す図である。なお、図20は半導体レーザーの斜視図であり、図21は半導体レーザーの光出射方向に垂直な面での断面図であり、図22は図21の部分Lを拡大した図であり、図23は図21の部分Mを拡大した図である。図20,図21,図22,図23の半導体装置は、上述した本発明のp型III族窒化物半導体をクラッド層に用いた発光素子(半導体レーザー)として構成されている。特に、この発光素子は、上述した本発明のp型III族窒化物半導体がクラッド層に用いられた400nmよりも短い波長領域で発振する半導体レーザーとして構成されている。
図20,図21,図22,図23を参照すると、半導体レーザーの積層構造2000は、n型GaN基板120上に、n型AlGaN低温バッファー層121、n型Al0.03Ga0.97N高温バッファー層122、In0.04Al0.24Ga0.72N層123aとIn0.18Ga0.82N層123bとの超格子からなるn型クラッド層123、n型Al0.1Ga0.9Nガイド層124、GaN/Al0.1Ga0.9N多重量子井戸活性層125、p型Al0.2Ga0.8N層126、p型Al0.1Ga0.9Nガイド層127、In0.04Al0.24Ga0.72N層128aとIn0.18Ga0.82N層128bとの超格子からなるp型クラッド層128、p型GaNコンタクト層129が順次に積層されて形成されている。そして、p型Al0.2Ga0.8N層126、p型Al0.1Ga0.9Nガイド層127、p型クラッド層128、p型GaNコンタクト層129には、p型不純物であるMgがドーピングされている。
積層構造2000は、p型GaNコンタクト層129の表面からp型クラッド層128の途中までエッチングされ、電流狭窄リッジ構造900が形成されている。リッジ構造900の最表面のp型GaNコンタクト層129上には、Ni/Auからなるp側オーミック電極131が形成されている。また、p側電極形成部以外は絶縁保護膜130として、SiO2が堆積されている。そして、積層構造2000と電流狭窄リッジ構造900と概ね垂直に光共振器端面901,902が形成されている。また、GaN基板120の裏面には、Ti/Alからなるn側オーミック電極132が形成されている。この半導体レーザーの電極131,132に順方向に電流を注入すると発光し、さらに電流を増加させるとレーザー発振した。発振波長は約365nmであった。
次に、図20,図21,図22,図23の半導体レーザーの作製工程例について説明する。なお、この作製工程例では、半導体レーザーの積層構造の結晶成長はMOCVD法で行った。また、前述した第2の作製方法(すなわち、In(インジウム)とAl(アルミニウム)を構成元素に含む第1のIII族窒化物半導体と、第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが小さく、In(インジウム)を構成元素に含む第2のIII族窒化物半導体とが交互に積層された超格子構造で構成されているp型III族窒化物半導体を含む積層構造を結晶成長によって形成した後に、成長温度からの冷却を、窒素原料を含む冷却ガス雰囲気で行ない、半導体装置を作製する作製方法)を用いた。また、このとき、冷却ガス雰囲気に含まれる窒素原料をアンモニアとした。
この作製工程例では、まず、n型GaN基板120を反応管にセットし、水素と窒素とアンモニアガスの混合ガス中、1120℃に加熱し、基板120の表面をクリーニングした。次いで、温度を600℃に下げ、NH3と窒素と水素の混合ガス雰囲気で、TMAとTMGおよびn型ドーパントガスであるSiH4ガスを流し、n型低温AlGaNバッファー層121を堆積した。次いで、温度を1070℃に上げ、水素をキャリアガスとしてTMG,TMA,n型不純物ガスとしてSiH4を組成にあわせて供給し、n型Al0.03Ga0.97N高温バッファー層122を1μmの厚さに積層した。
次いで、温度を810℃に下げ、TMG,TMA,TMI,n型不純物ガスとしてSiH4を組成にあわせて供給し、In0.04Al0.24Ga0.72N層123aとIn0.18Ga0.82N層123bとの超格子からなるn型クラッド層123を0.6μmの厚さに積層した。なお、各層123a,123bの厚さは、In0.04Al0.24Ga0.72N層123aが10nm、In0.18Ga0.82N層123bが5nmで、各層123a,123bを40周期成長した。次いで、温度を1070℃に上げ、n型Al0.1Ga0.9Nガイド層124を0.1μmの厚さに積層し、次いで、GaN/Al0.1Ga0.9N多重量子井戸活性層125(3ペア)を積層した。次いで、TMG,TMA,p型不純物原料の(EtCp)2Mgを組成にあわせて供給し、p型Al0.2Ga0.8N層126を20nmの厚さに、また、p型Al0.1Ga0.9Nガイド層127を0.1μmの厚さに積層した。次いで、温度を810℃に下げ、TMG,TMA,TMI,p型不純物原料の(EtCp)2Mgを組成にあわせて供給し、In0.04Al0.24Ga0.72N層128aとIn0.18Ga0.82N層128bとの超格子からなるp型クラッド層128を0.6μmの厚さに積層した。各層128a,128bの厚さは、In0.04Al0.24Ga0.72N層128aが10nm、In0.18Ga0.82N層128bが5nmで、各層128a,128bを40周期成長した。次いで、温度を1050℃に上げ、p型GaNコンタクト層129を0.2μmの厚さに積層した。結晶成長終了後、反応管内をアンモニアガスのみの雰囲気にして成長温度から室温まで冷却した。
冷却後、積層構造表面にテスターを充てると、導通が有り、表面のp型GaNコンタクト層129が低抵抗であることが確認された。
次いで、レジストで幅4μmのストライプパターンを繰り返しピッチ300μmで形成した。このレジストパターンをマスクとして、約0.7μmの深さをドライエッチングして、リッジ900を形成した。レジストマスクを除去した後、絶縁保護膜130となるSiO2を積層構造の表面に約0.5μmの厚さに堆積した。
次いで、p側オーミック電極131を形成した。p側オーミック電極131の形成工程は次の通りである。まず、リッジ900上部に、レジストでヌキストライプパターンを形成した後、SiO2絶縁保護膜130をエッチングしてリッジ上のp型GaNコンタクト層129を露出させる。次いで、レジストを除去し、ウエハー表面にp側オーミック電極材料であるNi/Auを蒸着した。その後、窒素雰囲気中、600℃で熱処理し、p型GaNコンタクト層129にp側オーミック電極131を形成した。
次いで、基板120の裏面を研磨し、厚さを約100μmにした後、n側オーミック電極材料であるTi/Alを蒸着した。その後、窒素雰囲気で450℃で熱処理し、n側オーミック電極132を形成した。次いで、半導体レーザー構造が形成されたウエハーをリッジ900に概ね垂直になるようにへき開し、光共振器端面901,902を形成した。