JP2010019113A - ダンパを備える装置 - Google Patents

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伸好 高松
Takeshi Fujii
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【課題】ダンパが発生する熱に起因する伝動機構に対する熱影響の抑制を図る。
【解決手段】内燃機関において、動弁装置のカム軸22に発生する振動の振動エネルギを熱に変換して振動を低減するダンパ50と、カム軸22を回転駆動する伝動機構30の被動スプロケット33とが、被動スプロケット33を覆うチェーンカバー40を軸方向で挟む位置でカム軸22の軸端部22aに設けられることにより、ダンパ50と被動スプロケット33との間がチェーンカバー40により仕切られる。伝動機構30は、チェーンカバー40により形成されるチェーン室17でオイル雰囲気中に配置され、ダンパゴム53を有するダンパ50は、チェーンカバー40により油密状態でチェーン室17から隔離されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、伝動機構により回転駆動される回転軸と、該回転軸の振動エネルギを熱に変換して振動を低減するダンパとを備える装置に関する。そして、該装置は、例えば内燃機関であり、前記回転軸は該内燃機関の動弁装置のカム軸である。
内燃機関において、動弁装置のカム軸に設けられたダンパが、特定の回転速度領域でのカム軸の共振を防止するために、カム軸の振動エネルギを熱に変換してその振動を低減するダンパ弾性体を備えるものは知られている。(例えば、特許文献1参照)
また、内燃機関の動弁装置が、チェーンなどの無端伝動帯を備える伝動機構により回転駆動されるカム軸と、カム軸の端部に設けられてクランク軸に対するカム軸の位相を変更する位相制御機構と、位相制御装置に設けられたダンパとを備え、該ダンパがカム軸の振動エネルギを熱に変換して動弁系の振動を低減するものも知られている。(例えば、特許文献2参照)
特開平2−218805号公報 特開2007−107507号公報(図4,図5)
動弁装置のカム軸などの回転軸の振動を低減するダンパが、振動エネルギを熱に変換して振動を低減する場合、ダンパが発生する熱により、ダンパの近傍に配置される伝動機構(例えばカム軸に設けられたスプロケット)が加熱されることがある。そこで、そのような加熱による影響を排除するために伝動機構の温度上昇を抑制する手段を講じる必要が生じて、コストの増大を招来する。さらに、ダンパが発生する熱は、ダンパ自体に影響を与えて、ダンパの耐久性が低下することがある。
また、ダンパのダンパ要素がダンパゴムを有する一方、伝動機構が、その潤滑のためにオイル雰囲気中に配置される場合、オイルとの接触によるダンパゴムの劣化を防止する必要がある。しかしながら、ダンパを専用のカバーにより囲むのでは、部品点数が多くなって、コストが増大する。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜4記載の発明は、ダンパが発生する熱に起因する伝動機構に対する熱影響の抑制を図ることを目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、部品点数・コストの削減を図りながら、オイルによるダンパの劣化を防止することによりダンパの耐久性の向上を図ることを目的とし、請求項3記載の発明は、さらに、伝動カバーにより形成されるダンパ室にダンパが配置されることによる、回転軸の軸方向での装置の大型化を抑制すること、およびダンパ室内の熱気の外部への放出を促進して、伝動機構に対する熱影響を抑制すると共にダンパの耐久性を向上させることを目的とし、請求項4記載の発明は、さらに、カム軸およびダンパを備える内燃機関において、前述の目的の達成を図ること、および、伝動カバーによりブリーザ通路を形成すると共にダンパが配置されるダンパ室およびブリーザ通路を形成する伝動カバーの形状を簡素化することを目的とする。
請求項1記載の発明は、伝動機構(30)により回転駆動される回転軸(22)と、前記伝動機構(30)を覆う伝動カバー(40)と、前記回転軸(22)に発生する振動の振動エネルギを熱に変換して振動を低減するダンパ(50)とを備える装置において、前記ダンパ(50)および前記伝動機構(30)が前記伝動カバー(40)を挟む位置で前記回転軸(22)に設けられることにより、前記ダンパ(50)と前記伝動機構(30)との間が前記伝動カバー(40)により仕切られる装置である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の装置において、前記伝動機構(30)は、前記伝動カバー(40)により形成される伝動室(17)でオイル雰囲気中に配置され、前記ダンパ(50)は、ゴム材からなるダンパゴム(53)を有し、かつ前記伝動カバー(40)により油密状態で前記伝動室(17)から隔離されているものである。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の装置において、前記ダンパ(50)は、前記回転軸(22)の軸方向で前記伝動機構(30)寄りに窪んで前記伝動カバー(40)に形成された凹部(46)と、前記凹部(46)を覆うダンパカバー(70)とにより形成されるダンパ室(59)に配置され、前記ダンパカバー(70)には、前記ダンパ室(59)と、前記ダンパ室(59)の外側の外部空間(So)とを連通する通気孔(76,77)が設けられるものである。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の装置において、前記装置は、内燃機関であり、前記回転軸(22)は、動弁装置のカム軸(22)であり、前記凹部(46)の周壁(62)は、前記伝動カバー(40)に形成されたブリーザ通路(49)の通路壁であるものである。
請求項1記載の発明によれば、ダンパで発生する熱が熱輻射および熱伝達により伝動機構に与える熱影響が、ダンパと伝動機構との間を仕切る伝動カバーにより抑制される。また、ダンパと伝動機構との間を仕切る部材には、伝動機構を覆う伝動カバーが利用されるので、伝動カバーとは別個の仕切り用の専用の部材が不要になって、部品点数が削減され、コストが削減される。
請求項2記載の事項によれば、オイル雰囲気中に配置される伝動機構に対して、伝動カバーを利用することにより、ダンパゴムがオイル雰囲気に曝されることが防止されて、ダンパゴムへのオイルの付着が防止される。この結果、オイルによるダンパゴムの劣化が防止されて、ダンパの耐久性が向上する。
請求項3記載の事項によれば、ダンパは、伝動ケースに形成された凹部に配置されるので、ダンパが軸方向で伝動カバーから大きく突出することが抑制されて、ダンパを備える装置を軸方向で小型化できる。しかも、ダンパが発生する熱が通気孔を通じて外部空間に放熱されることで、ダンパの冷却が促進されるので、ダンパが発生する熱が、熱輻射、熱伝達、さらには熱伝導により、被動スプロケット33に与える熱影響を一層抑制でき伝動機構に対する熱影響を一層抑制できると共に、ダンパの耐久性が向上する。
請求項4記載の事項によれば、カム軸およびダンパを備える内燃機関において、請求項1〜3の効果が奏され、そのうえ、伝動カバーを利用してブリーザ通路が形成され、しかも、ダンパが配置されるダンパ室を形成する凹部の周壁がブリーザ通路の通路壁を兼ねるので、ダンパ室およびブリーザ通路を形成する伝動カバーの形状が簡素化されて、伝動カバーのコストを削減できる。
以下、本発明の実施形態を図1〜図5を参照して説明する。
図1,図2を参照すると、本発明が適用された装置としての内燃機関Eは、車両に搭載される多気筒4ストローク内燃機関であり、それぞれにピストン6が往復運動可能に嵌合する複数のシリンダ5を有するシリンダブロック1と、シリンダ5の上端部に結合されるシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の上端部に結合されるヘッドカバー3と、シリンダブロック1の下端部に結合されるロアブロック4と、ロアブロック4の下端部に結合されるオイルパン(図示されず)とから構成される装置本体としての機関本体を備え、さらに、該機関本体に結合されるチェーンカバー40と、動弁装置(以下、単に「動弁装置」という。)とを備える。
なお、実施形態において、上下方向はシリンダ軸線Lcに平行な方向(すなわちシリンダ軸線方向)であるとする。また、軸方向は、後述するダンパ50が設けられる回転軸としてのカム軸22の回転中心線L2に平行な方向であり、径方向および周方向は、該回転中心線L2を中心とする径方向および周方向である。
シリンダブロック1の下部1a、ロアブロック4および前記オイルパンにより構成されるクランクケースにおいて、該下部1aおよびロアブロック4には、各ピストン6にコンロッド7を介して連結された出力軸としてのクランク軸8が回転可能に支持される。
シリンダ5毎に、シリンダ軸線方向でピストン6とシリンダヘッド2との間には燃焼室10が形成され、シリンダヘッド2には、燃焼室10にそれぞれ開口する吸気ポート11および排気ポート12と、動弁装置により開閉駆動されて吸気ポート11および排気ポート12をそれぞれ開閉する機関弁としての吸気弁13および排気弁14とが設けられる。
そして、ピストン6は、燃焼室10内での燃料の燃焼により発生する燃焼ガスの圧力により駆動されて往復運動し、コンロッド7を介してクランク軸8を回転駆動する。
シリンダヘッド2とヘッドカバー3とにより形成される動弁室16に配置される動弁装置は、シリンダヘッド2に回転可能に支持される回転軸としてのカム軸である吸気カム軸21および排気カム軸22と、吸気カム軸21および排気カム軸22がそれぞれ有する動弁カムとしての吸気カム(図示されず)および排気カム(図示されず)により駆動されるカムフォロアとしての吸気ロッカアーム(図示されず)および排気ロッカアーム(図示されず)と、吸気弁13および排気弁14を閉弁方向に常時付勢する弁バネ(図示されず)と、吸気弁13の弁作動特性を内燃機関Eの運転状態に応じて変更可能な弁作動特性制御機構としての位相制御機構23とを備える。そして、前記吸気カムを有する吸気カム軸21および前記排気カムを有する排気カム軸22が、それぞれ、前記吸気ロッカアームおよび前記排気ロッカアームを介して吸気弁13および排気弁14を開閉駆動する。
内燃機関Eが備える動弁用伝動機構30により回転駆動されてクランク軸8の回転中心線Leに平行な回転中心線L1,L2を中心に回転する各カム軸21,22は、その複数のジャーナル部(図2には排気カム軸22のジャーナル部22dが示されている。)にて、シリンダヘッド2に一体に設けられるカムホルダ15に回転可能に支持される。カムホルダ15は、シリンダヘッド2に一体成形された下軸受部15aと、該下軸受部15aにボルトにより結合される上軸受部15bとから構成される。
伝動機構30は、クランク軸8に設けられた駆動回転体である駆動スプロケット31と、吸気カム軸21に位相制御機構23を介して設けられた被動回転体である被動スプロケット32と、排気カム軸22に設けられた被動回転体である被動スプロケット33と、これらスプロケット31〜33に掛け渡されて駆動スプロケット31の駆動トルクを各被動スプロケット32,33に伝達する無端伝動帯である無端のチェーン34とを備える巻掛け伝動機構である。そして、被動回転軸としての各カム軸21,22は、伝動機構30を介して伝達される駆動回転軸としてのクランク軸8の駆動トルクにより、クランク軸8の回転速度の1/2の回転速度で回転駆動される。
位相制御機構23は、吸気カム軸21の、カムホルダ15から軸方向に突出する軸端部21aに設けられ、被動スプロケット33は、排気カム軸22の、カムホルダ15から軸方向に突出する軸端部22aに設けられて排気カム軸22と一体に回転する。
吸気カム軸21の軸端部21aに設けられる位相制御機構23は、吸気カム軸21の位相をクランク軸8の位相に対して変更して吸気弁13の開閉時期を変更するために、被動スプロケット32と吸気カム軸21との相対的な回転位置を変更する。位相制御機構23は、内燃機関Eのオイルポンプから吐出されたオイルを作動油とする油圧式機構であり、油圧制御弁を備える油圧制御機構により制御される。
伝動機構30および軸端部21a,22aは、シリンダブロック1、シリンダヘッド2、ヘッドカバー3およびロアブロック4のそれぞれの、軸方向での端部1e,2e,3e,4eと、該端部1e,2e,3e,4eに密封状態で結合される伝動カバーとしてのチェーンカバー40とにより形成される伝動室としてのチェーン室17に配置される。
チェーン室17は、動弁装置および伝動機構30などの潤滑箇所の潤滑したオイルなどのオイルが混入している空気であるオイル雰囲気が存在する空間であり、各スプロケット31〜33およびチェーン34は、軸方向でチェーンカバー40により覆われて、オイル雰囲気中に配置される。
チェーンカバー40を境にして、伝動機構30がチェーンカバー40の内側の空間である内燃機関Eの内部空間Siに配置され、後述するダンパ50がチェーンカバー40の外側の空間である外部空間Soに配置される。内部空間Siには、チェーン室17および動弁室16が含まれ、外部空間Soには、後述するダンパ室59が含まれる。
チェーンカバー40は、端部1e,2e,3e,4eに多数のボルトB1により結合される外周縁部41と、軸方向で端部1e,2e,3e,4eおよび伝動機構30と対向すると共に端部1e,2e,3e,4eおよび伝動機構30を軸方向外方から覆う対向壁42とを有する。対向壁42は、軸方向での段差を形成する壁部分である段差壁43と、段差壁43が形成されることにより外周縁部41の合わせ面41a(図2参照)からの軸方向外方での距離が異なる複数の壁部分である低壁部44および高壁部45とを有する。低壁部44よりも軸方向外方に突出している高壁部45は、シリンダブロック1の下部1aからシリンダブロック1およびシリンダヘッド2において吸気側の外周縁部41iに沿ってシリンダヘッド2およびヘッドカバー3に向かって延びて、動弁室16まで達している。
ここで、軸方向外方は、軸方向において、チェーンカバー40に対して、外部空間So、ダンパ50またはダンパ室59が位置する方向であり、軸方向内方は、軸方向外方とは反対方向であり、チェーンカバー40に対して、伝動機構30またはチェーン室17を含む内部空間Siが位置する方向である。
また、内燃機関Eにおいて、軸方向から見て、シリンダ軸線Lcに対して、吸気ポート11が位置する側が吸気側であり、排気ポート12が位置する側が排気側である。
高壁部45は、チェーン室17において、局部的に、軸方向で低壁部44よりも軸方向外方に突出した空間部分である通路状の突出空間17aを形成する。該突出空間17aは、前記クランクケースにより形成されるクランク室から動弁室16まで延びていて、前記クランク室内のブローバイガスを動弁室16内に導くブリーザ通路49を構成する。したがって、高壁部45および段差壁43は、ブリーザ通路49の通路壁を構成する。
そして、動弁室16に導かれたブローバイガスは、動弁室16内に設けられた気液分離器(図示されず)でオイルが分離された後に、内燃機関Eの吸気装置に導かれて吸入空気と混合され、吸気ポート11を経て燃焼室10内に吸入される。
ブリーザ通路49がチェーン34の外側を、その弛み側34aに沿って延びている部分では、動弁室16に向かうブローバイガスの流れが弛み部34aにより阻害されない程度に、突出空間17aと弛み部34aとを離隔することが好ましい。
各カム軸21,22には、伝動機構30を介してカム軸21,22を回転駆動するクランク軸8の駆動トルクが周期的に変動すること、さらに動弁装置の前記弁バネの弾発力に基づく吸気弁13および排気弁14からのバルブ反力によるトルクがカム軸21,22に対する負荷トルクと付勢トルクとからなる外部トルクとして周期的に作用することに起因して、捩り振動を含む振動が発生する。そして、この捩り振動の振動数が内燃機関Eの或る機関回転速度においてカム軸21,22の固有振動数に一致すると、カム軸21,22が共振する。この共振は、被動スプロケット32,33ひいては伝動機構30に大きな振幅の振動を発生させ、その結果、チェーン34に過大な張力が発生することがある。
一方、各スプロケット31〜33およびチェーン34から構成される伝動機構30においても、クランク軸8の前記駆動トルクの変動、ならびに動弁装置により周期的に作用する前記外部トルクに起因して或る機関回転速度で共振が発生することがあり、その場合にも、チェーン34に過大な張力が発生することがある。
そこで、捩り振動によるカム軸21,22の共振の発生を防止して該共振に起因する伝動機構30の振動を低減することにより、または、伝動機構30自体の共振の発生を防止することにより、チェーン34での過大な張力の発生を防止するために、内燃機関Eは、排気カム軸22に発生する振動として、主に前述の捩り振動、または伝動機構30から排気カム軸22に伝達された振動を低減するダンパ50を備える。なお、この実施形態では、ダンパ50は、2つのカム軸21,22のうちの一方のカム軸である排気カム軸22に設けられているが、吸気カム軸21にも設けられてもよい。
図3を併せて参照すると、排気カム軸22の軸端部22aに設けられて該カム軸22と一体に回転するダンパ50は、取付部材としての円筒状のボス部材54を介して軸端部22aに結合される。ボス部材54には結合具としてのボルトB2が挿通される挿通孔54aが設けられ、該ボルトB2により軸端部22aに結合されるボス部材54がカム軸22と一体に回転する。
軸端部22aから軸方向外方に向かって延出して配置されるボス部材54は、チェーンカバー40に設けられた貫通孔48を貫通して、軸方向でチェーン室17およびダンパ室59に渡って配置される。ボス部材54は、軸方向で被動スプロケット33に当接して、該被動スプロケット33が軸方向に移動することを阻止する軸方向ストッパを兼ねる。
ダンパ50は、ボス部材54に圧入されてボス部材54と一体に回転するように結合される取付部としての円環状のスリーブ51と、ボス部材54およびスリーブ51に対して径方向外方に配置される円環状のダンパマス52と、径方向でスリーブ51とダンパマス52との間に配置されるダンパ弾性体としての円環状のダンパゴム53とから構成される。ゴム材からなるダンパゴム53は、その内周にてスリーブ51の外周に焼付けまたは接着により固着され、その外周にてダンパマス52の内周に焼付けまたは接着により固着される。
ダンパ要素であるダンパゴム53は、カム軸22に発生する振動の振動エネルギを熱に変換することによりカム軸22の振動を低減する。そして、ダンパ50の固有振動数を適宜設定することにより、内燃機関Eの特定の機関回転速度において、カム軸22の共振を防止でき、または伝動機構30の共振を防止できる。
図2〜図4を参照すると、ダンパ50は、チェーンカバー40に設けられるダンパハウジングHにより形成されるダンパ室59内に配置される。ダンパハウジングHは、チェーンカバー40の一部により形成されているダンパケース60と、ダンパケース60にその取付座63a,63b,63cにてボルトB3により結合されるダンパカバー70とから構成される。
チェーンカバー40に一体成形されたダンパケース60は、チェーンカバー40において軸方向で被動スプロケット33またはチェーン34寄り(すなわち軸方向内方)に窪んで形成された凹部46により構成される。
ダンパケース60は、円形の貫通孔48を形成する内周縁部61aを有すると共に径方向に延びている径方向壁61と、径方向壁61の外周から軸方向外方に延びている周壁62と、周壁62に連なる複数としての3つのボスである取付座63a,63b,63cとを有する。径方向壁61はダンパケース60(すなわち凹部46)の底壁である。
周壁62は、周方向で取付座63a,63b,63cを境にして、径方向壁61からの軸方向外方での幅(または高さ)が異なる複数の、ここでは2つの周壁部分である高周壁部62aと低周壁部62bとから構成される。低周壁部62bよりも高い高周壁部62aは、段差壁43の一部により構成され、周方向で隣接する取付座63a,63b同士の間に位置する。低周壁部62bは周方向で隣接する取付座63b,63c同士の間に位置し、周方向で隣接する取付座63a,63c同士の間には周壁62がない。
軸方向でダンパ50と被動スプロケット33との間には、チェーンカバー40の一部である径方向壁61が配置される。そして、径方向で内周縁部61aとボス部材54との間には、内周縁部61aとボス部材54との間を油密に密封するシール部材であるオイルシール55が設けられる。このように、ダンパ50および伝動機構30の被動スプロケット33は、軸方向でチェーンカバー40を挟む位置で、軸方向に並んで排気カム軸22の軸端部22aに設けられる。それゆえ、共に軸端部22aに結合されたダンパ50と被動スプロケット33との間に、チェーンカバー40が配置される。これにより、ダンパ50と伝動機構30または被動スプロケット33との間がチェーンカバー40により仕切られ、ダンパ室59が油密状態でチェーン室17から隔離され、したがってダンパ50およびダンパゴム53が油密状態で伝動機構30または被動スプロケット33から隔離される。
図5を併せて参照すると、ダンパケース60を軸方向外方から覆う椀状のダンパカバー70は、径方向に延びている径方向壁71と、径方向壁71の外周から軸方向内方に延びている円筒状の周壁72と、周壁72に連なると共に取付座63a,63b,63cと同数のボスである取付部73a,73b,73c(図1も参照)と、周壁72から軸方向内方に延びている1以上の、ここでは2つの部分円筒状の延長周壁部74(図4では、二点鎖線で示されている。)とを有する。
取付座63a,63b,63cおよび取付部73a,73b,73cは、回転中心線L2を中心として周壁72の外径にほぼ等しい直径を有する円周上で周方向に等しい間隔をおいて配置される。そして、ダンパカバー70は、各取付部73a,73b,73cに挿通されて対応する取付座63a,63b,63cにねじ込まれるボルトB3によりダンパケース60、したがってチェーンカバー40に結合される。
延長周壁部74は、この実施形態では、周方向で隣接する取付部73b,73c同士の間および取付部73a,73c同士の間に設けられる一方で、周方向で隣接する取付部73a,73b同士の間には設けられていない。したがって、ダンパハウジングHにおいて、ダンパ50は、周方向での取付座63a,63b間または取付部73a,73b間では、高周壁部62aおよび周壁72により径方向外方から覆われ、周方向での取付座63b,63c間または取付部73b,73c間では、底周壁部62b、周壁72および延長周壁部74bにより径方向外方から覆われ、周方向での取付座63a,63c間または取付部73a,73c間では、周壁72および延長周壁部74cにより径方向外方から覆われる。
そして、ダンパ50が径方向外方および軸方向外方からダンパカバー70により覆われることにより、回転するダンパ50に他の部材が接触してダンパ50による振動低減効果が阻害されることが防止される。
このように、延長周壁部74は、ダンパケース60の周壁62の高さに応じて、除去または軸方向での幅(突出量)が調整可能とされる調整壁部である。このため、周方向で隣接する取付部73a,73b;73b,73c;73a,73c同士間のそれぞれに延長周壁部74が周方向に間隔をおいて設けられたダンパカバー(以下、「原型ダンパカバー」という。)を共通のダンパカバーとして製造し、該原型ダンパカバーが取り付けられるダンパケース60(すなわち凹部46)の周壁62の形状またはチェーンカバー40の形状に応じて、該原型ダンパカバーの延長周壁部74を、該延長周壁部74毎に除去または該延長周壁部74の軸方向での幅を調整するような加工を施すことで、ダンパケース60の周壁62の高さが異なるチェーンカバー40にも適用可能となるので、ダンパカバーのコスト削減が可能になる。
図1を併せて参照すると、ダンパカバー70には、ダンパ室59と、ダンパ室59の外側の外部空間Soとを連通する通気路を構成する1以上の、この実施形態では複数の通気孔76,77が設けられている。ダンパ室59内の熱気を外部空間Soに放出する放熱孔である通気孔76,77は、径方向壁71に設けられて径方向に放射状に形成された長孔である1以上の、ここでは複数の径方向通気孔である径方向スリット76と、周方向に設けられた周壁72に軸方向に平行な長い長孔である1以上の、ここでは複数の軸方向通気孔である軸方向スリット77とから構成される。各径方向スリット76は同一の径方向範囲に設けられ、各軸方向スリット77は同一の軸方向範囲に設けられる。
径方向スリット76同士、および、軸方向スリット77同士は、周方向に互いに等しい間隔で隔てられて形成され、各径方向スリット76および各軸方向スリット77は、径方向で隔てられて形成される。このように、各スリット76,77は互いにつながることないので、ダンパカバー70の剛性が高められている。
図1,図5に示されるように、径方向スリット76は、径方向でダンパ50の位置にほぼ等しい径方向範囲に設けられ、軸方向から見てダンパゴム53の全体およびダンパマス52の全体と重なる位置に設けられる。この構造により、ダンパゴム53が発生する熱が、径方向スリット76を通じて効率よくダンパ室59外に放出される。
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
内燃機関Eにおいて、動弁装置のカム軸22に発生する振動の振動エネルギを熱に変換して振動を低減するダンパ50と、カム軸22を回転駆動する伝動機構30の被動スプロケット33とが、被動スプロケット33を覆うチェーンカバー40を軸方向で挟む位置でカム軸22の軸端部22aに設けられることにより、ダンパ50と被動スプロケット33との間がチェーンカバー40により仕切られる。この構造により、ダンパ50のダンパ要素であるダンパゴム53で発生する熱が熱輻射および熱伝達により伝動機構30の被動スプロケット33に与える熱影響が、ダンパ50と被動スプロケット33との間を仕切るチェーンカバー40により抑制される。また、ダンパ50と被動スプロケット33との間を仕切る部材には、伝動機構30を覆うチェーンカバー40が利用されるので、チェーンカバー40とは別個の仕切り用の専用の部材が不要になって、部品点数が削減され、コストが削減される。
伝動機構30は、チェーンカバー40により形成されるチェーン室17でオイル雰囲気中に配置され、ダンパ50は、ゴム材からなるダンパゴム53を有し、かつチェーンカバー40により油密状態でチェーン室17から隔離されていることにより、オイル雰囲気中に配置される伝動機構30に対して、チェーンカバー40を利用することにより、ダンパゴム53がオイル雰囲気に曝されることが防止されて、ダンパゴム53へのオイルの付着が防止される。この結果、オイルによるダンパゴム53の劣化が防止されて、ダンパ50の耐久性が向上する。
ダンパ50は、カム軸22の軸方向で被動スプロケット33寄りに窪んでチェーンカバー40に形成されたダンパケース60である凹部46と、凹部46を覆うダンパカバー70とにより形成されるダンパ室59に配置され、ダンパカバー70には、ダンパ室59と、ダンパ室59の外側の外部空間Soとを連通する複数のスリット76,77が設けられることにより、ダンパ50はチェーンカバー40に形成された凹部46に配置されるので、ダンパ50が軸方向でチェーンカバー40から大きく突出することが抑制されて、ダンパ50を備える内燃機関Eを軸方向で小型化できる。しかも、ダンパ50が発生する熱がスリット76,77を通じて外部空間Soに放熱されることで、ダンパ50の冷却が促進されるので、ダンパ50が発生する熱が、熱輻射、熱伝達、さらには、ボス部材54または軸端部21a,22aを通じての熱伝導により、被動スプロケット33に与える熱影響を一層抑制できると共に、ダンパ50の耐久性が向上する。
凹部46の周壁62はチェーンカバー40に形成されたブリーザ通路49の通路壁であることにより、チェーンカバー40を利用してブリーザ通路49が形成され、しかも、ダンパ50が配置されるダンパ室59を形成する凹部46の周壁62がブリーザ通路49の通路壁を兼ねるので、ダンパ室59およびブリーザ通路49を形成するチェーンカバー40の形状が簡素化されて、チェーンカバー40のコストを削減できる。
以下、前述した実施形態の一部が変更された形態について、変更された部分を中心に説明する。
ダンパは、吸気カム軸および排気カム軸の少なくとも一方に設けられればよい。動弁装置は、1つのカム軸のみを備えるものであってもよい。
ダンパは、カム軸に直接結合されてもよい。
伝動機構の無端伝動帯はベルトであってもよい。また、伝動機構は、複数の歯車から構成される歯車列により構成されてもよい。
ダンパケースは、全周に渡って連続する周壁を有していてもよい。また、ダンパケースは、チェーンカバーとは別個の部材であって、かつ軸方向内方に窪んだ凹部となる部材により構成されてもよい。
ダンパ要素は、高粘度の粘性流体の剪断抵抗を利用したものであってもよい。
内燃機関は、単気筒内燃機関またはV型内燃機関であってもよく、さらに、車両以外の機械に使用されてもよく、例えば、鉛直方向を指向するクランク軸を備える船外機等の船舶推進装置に使用されるものであってもよい。
ダンパを備える装置は、前述の実施形態では内燃機関であったが、内燃機関以外の装置または内燃機関を備える装置(例えば、発電機)であってもよい。また、回転軸は、カム軸以外の回転軸であってもよい。
(a)は、本発明が適用された内燃機関を軸方向から見た要部の図であり、(b)は、(a)のb−b線でのチェーンカバーの断面図である。 図1のII−II線断面図である。 図1のIII−III線断面図である。 図2のIV−IV矢視でのチェーンカバーの要部の図である。 図2のV−V矢視でのダンパカバーの図である。
符号の説明
1…シリンダブロック、2…シリンダヘッド、17…チェーン室、21,22…カム軸、30…伝動機構、31〜33…スプロケット、34…チェーン、40…チェーンカバー、46…凹部、49…ブリーザ通路、50…ダンパ、59…ダンパ室、70…ダンパカバー、76,77…スリット、
E…内燃機関。

Claims (4)

  1. 伝動機構により回転駆動される回転軸と、前記伝動機構を覆う伝動カバーと、前記回転軸に発生する振動の振動エネルギを熱に変換して振動を低減するダンパとを備える装置において、
    前記ダンパおよび前記伝動機構が前記伝動カバーを挟む位置で前記回転軸に設けられることにより、前記ダンパと前記伝動機構との間が前記伝動カバーにより仕切られることを特徴とする装置。
  2. 前記伝動機構は、前記伝動カバーにより形成される伝動室でオイル雰囲気中に配置され、
    前記ダンパは、ゴム材からなるダンパゴムを有し、かつ前記伝動カバーにより油密状態で前記伝動室から隔離されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  3. 前記ダンパは、前記回転軸の軸方向で前記伝動機構寄りに窪んで前記伝動カバーに形成された凹部と、前記凹部を覆うダンパカバーとにより形成されるダンパ室に配置され、
    前記ダンパカバーには、前記ダンパ室と、前記ダンパ室の外側の外部空間とを連通する通気孔が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
  4. 前記装置は、内燃機関であり、
    前記回転軸は、動弁装置のカム軸であり、
    前記凹部の周壁は、前記伝動カバーに形成されたブリーザ通路の通路壁であることを特徴とする請求項3記載の装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2022219693A1 (ja) * 2021-04-13 2022-10-20 日産自動車株式会社 内燃機関のダンパ冷却構造

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