JP2010018534A - ポリイソシアネートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
工業的な実施が容易で、色相の優れたポリイソシアネートを従来の技術に比べて少量の原料で製造可能な、ポリイソシアネートの製造方法を提供する
【解決手段】
ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物とアニリンとを原料物質とし、酸性イオン液体中でのポリアミン化により、下記一般式(I)で表される芳香族ポリアミンを得る、ポリアミン化工程と、
前記芳香族ポリアミンとホスゲンとのホスゲン化反応により、第1のイソシアネートを含むホスゲン化反応物を得るホスゲン化工程と、
第2のイソシアネート及び塩化水素を含有する塩化水素含有イソシアネートと、前記ホスゲン化反応物との混合により、ポリイソシアネートを得る混合工程と、
を備える、ポリイソシアネートの製造方法。
【化1】
Figure 2010018534

[式(I)中、qは0又は1以上の整数を示す。]
【選択図】 なし

Description

本発明は、工業的な実施が容易で、色相の優れたポリイソシアネートを従来の技術に比べ少量の原料で製造可能な、ポリイソシアネートの製造方法に関する。
芳香族ポリアミンのうち、メチレンジアニリン(MDA)及びその高級類似体は、プラスチック製造用の原料であるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びその高級類似体(ポリメリックMDI等)の前駆体である。一般に、MDIは、スパンデックスや塗料などの非発泡用途で使用され、MDI及びその高級類似体の混合物は、軟質及び硬質フォームなどの発泡用途で使用される。
MDA及びその高級類似体は一般に、触媒の存在下にアニリン及びホルムアルデヒドから製造される。工業的な製造方法では、触媒として塩酸が使用されるが、この場合、反応後の精製処理において、塩酸を中和する必要がある。中和処理は、例えば、塩酸に対して等モル量以上の塩基を添加する方法によって行われる。そして、塩基としては、通常、安価な水酸化ナトリウムが使用されるが、このような中和処理を施した場合、中和後に大量の塩化ナトリウムが発生する。したがって、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の観点から、反応後に酸を中和処理する必要のない製造法の開発が望まれている。
反応後の中和処理を必要としないMDA及びその高級類似体の製造方法にとしては、塩酸の代わりに、固定床触媒を用いる方法などが提案されている。固定床触媒として用いられる触媒としては、例えば、イオン交換樹脂(非特許文献1参照)や、特定の構造を有するゼオライトや有機珪酸塩(特許文献1〜7参照)などが開示されている。
一方、触媒として用いた塩酸に精製処理を施し再利用することで、中和処理を不要とする方法も提案されている。このような方法としては、例えば、反応混合物をアニリン含有の疎水性溶剤で抽出によって後処理し、MDA及びその高級類似体を含有する有機相と、塩酸を含有する水相を分離し、水相を濃縮し触媒として再利用する方法が開示されている(特許文献8〜10参照)。
MDI及びその高級類似体は工業的には、溶媒存在下、MDA及びその高級類似体の混合物とホスゲンとの反応により製造される。上記反応の後、減圧蒸留によって、過剰なホスゲン及び溶媒を含む留出成分と、MDI及びその高級類似体を含む不留出成分とに分離される。ここで、不留出成分は、不純物として酸分や加水分解性塩素含有化合物を含んでおり、これらの不純物が多いと、ポリウレタン製造時の反応性が悪くなることが知られている。そこで、このような不純物を低減するために、通常、減圧下180〜230℃の加熱処理が行われる。
しかし、このような加熱処理を行うとMDI及びその高級類似体の色相が悪化し、ポリウレタン製品の着色原因となる。したがって、上述の不純物を低減しつつ、MDI及びその高級類似体の色相を改善することが可能な製造方法の開発が望まれている。このような方法としては、例えば、MDA及びその高級類似体とホスゲンとの反応液に、塩化水素ガスを吹き込み、塩化水素ガスの存在下で加熱処理を行う方法が開示されている(例えば、特許文献11〜13)。
特開昭58−83658号公報 特表2003−522748号公報 特表2003−529577号公報 特開2004−300085号公報 特表2004−532232号公報 特表2005−521722号公報 特開2006−83103号公報 特開平02−124855号公報 特許3219836号公報 特許3219835号公報 特開2004−27160号公報 特表2004−43744号公報 特許3229714号公報 Applied Catalysis A: General 221(2001)p318−319
しかしながら、MDA及びその高級類似体の製造方法において、非特許文献1に記載の方法は、工業的に実施するには、反応性が低いという問題や、樹脂の耐熱性が低いという問題があった。また、特許文献1〜7に記載の方法は、触媒活性を持続させるために、反応原料中の水分量などを厳しく制限する必要があり、工業的な実施が困難であるという問題があった。
さらに、特許文献8〜10に記載の方法は、塩酸を含有した水相を濃縮する際に多大なエネルギーを消費するため、実質的な製造コストの削減にはならないという問題があった。
また、MDI及びその高級類似体の製造方法において、特許文献11〜13に記載の方法では、ホスゲン化反応で得られた反応液に塩化水素を必要量溶解させるために、その必要量を超える過剰な塩化水素ガスを供給する必要があり、供給された塩化水素ガスの大部分は反応液に溶解することなく系外に排出される。そのため、塩化水素ガスの使用量が多くなる、塩化水素を扱うポンプ等の装置が大型化する、及び、塩化水素によるプラント設備の腐食が発生しやすくなるといった問題があった。
上記事情に鑑みて、本発明者らは、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)とアニリンから芳香族ポリアミンを合成し、芳香族ポリアミンとホスゲンからポリイソシアネートを製造する一連の製造方法において、塩化水素等の原料の使用量を低減しつつ、ポリイソシアネートの色相が良好となる製造方法を鋭意検討した結果、ポリアミン化工程で酸性イオン液体を使用し、ホスゲン化反応後の反応物に塩化水素含有イソシアネートを混合させることで、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、工業的な実施が容易で、色相の優れたポリイソシアネートを従来の技術に比べて少量の原料で製造可能な、ポリイソシアネートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物とアニリンとを原料物質とし、酸性イオン液体中でのポリアミン化により、下記一般式(I)で表される芳香族ポリアミンを得る、ポリアミン化工程と、
前記芳香族ポリアミンとホスゲンとのホスゲン化反応により、第1のイソシアネートを含むホスゲン化反応物を得るホスゲン化工程と、
第2のイソシアネート及び塩化水素を含有する塩化水素含有イソシアネートと、前記ホスゲン化反応物との混合により、ポリイソシアネートを得る混合工程と、
を備える、ポリイソシアネートの製造方法を提供する。
Figure 2010018534
なお、式(I)中、qは0又は1以上の整数を示す。
上述のポリアミン化工程において、ポリアミン化を酸性イオン液体中で行うことで、酸の中和処理を必要とせず、かつ、工業的な実施が容易なポリアミン化工程を提供することができる。また、上述の混合工程において、塩化水素含有イソシアネートを用いることで、過剰な塩化水素ガスの供給を必要とせず、工業的な実施が容易で、かつ、ポリイソシアネートの色相改善に効果的な、混合工程を提供することができる。したがって、上述の製造方法において、上記ポリアミン化工程及び上記混合工程を備えることで、従来の技術に比べ少量の原料で製造可能で、工業的な実施が容易で、かつ、製造されるポリイソシアネートが色相に優れる、ポリイソシアネートの製造方法を提供することができる。
上記酸性イオン液体は、ポリアミン化終了後、酸の中和処理をせずとも容易に反応混合物から回収可能であるため、通常酸の中和処理に必要な塩基が不要となり、原料を削減できる。また、上記酸性イオン液体中でのポリアミン化は、反応性が高く、かつ、反応性の低下が生じ難く、工業的に実施が容易である。具体的には、例えば、分子内にスルホン酸基を有するイオン交換樹脂を固体酸として用いる方法と比較し、反応性を向上させることができるうえ、上記イオン交換樹脂を用いた場合に生じる、樹脂の耐熱性の低下という問題が生じ難い。また、分子内にプロトン酸を有し反応促進に適した細孔部を持つゼオライト又は有機珪酸塩を固体酸として用いる方法と比較し、反応原料中の水分量や不純物量などに起因する触媒活性低下が生じ難いため、厳しい原料組成制限の必要がなく工業的に実施が容易である。
さらに、上記反応混合物から回収した酸性イオン液体は、再度ポリアミン化に用いることができ、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の面で有利である。酸性イオン液体は回収が容易で、かつ、回収した酸性イオン液体を濃縮等の精製無しに再度ポリアミン化に用いることができる。そのため、上述した塩酸を含有した水相を濃縮し触媒として再利用する方法と比較し、工業的に実施が容易であり、製造コストの削減が可能である。
上記塩化水素含有イソシアネートは、ポリイソシアネートの色相改善に必要十分量の塩化水素を含有しており、上記ホスゲン化反応物と混合することで容易に塩化水素を供給することができる。そのため、塩化水素ガスを直接供給する方法と比較し、塩化水素の使用量を大幅に低減することができる。また、塩化水素ガスが系外に排出されることが無く、プラント設備の腐食等も発生しにくく、工業的に実施が容易である。
上記酸性イオン液体は、酸性基含有イオン液体を含有することが好ましい。
上記酸性基含有イオン液体は、分子内に酸性官能基を有しているので、触媒として塩酸等の酸を新たに追加する必要がない。そのため、上記ポリイソシアネートの製造方法において、原料の消費量をさらに低減することができる。
上記酸性基含有イオン液体は、3価のホスフィノ基を有する化合物及びイミダゾール化合物から選ばれる極性化合物と、1,3−プロパンスルトン及び1,4−ブタンスルトンから選ばれるスルトン化合物との反応物である双性イオン化合物と、有機スルホン酸と、を反応させて得られる化合物であることが好ましい。
上記酸性基含有イオン液体は、市販の原料から容易に合成することができ、工業的に好適に実施できる。
上記酸性基含有イオン液体は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2010018534
ここで、式(II)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を示す。Rは炭素数1以上の有機基を示し、mは3又は4を示す。
また、上記酸性基含有イオン液体は、下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2010018534
ここで、式(III)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上の有機基を示し、nは3又は4を示す。
式(1)又は(2)で表される酸性基含有イオン液体は、高い触媒作用を有し、工業的な使用に有利である。また、酸性基含有イオン液体自体の合成のしやすさという面でも有利である。
上記酸性イオン液体は、酸及び酸性基非含有イオン液体を含有するものであっても良い。
上記酸性基非含有イオン液体は一般的に、酸を溶解し、かつ、疎水性の有機溶媒とは分離する性質を有する。したがって、上記ポリアミン化後の反応物に、疎水性の有機溶媒を添加すれば、反応生成物である芳香族ポリアミンを含む疎水性有機溶媒と、酸を含む酸性基非含有イオン液体とを、酸の中和処理無しに、容易に分離することができる。そして、このように分離された酸及び酸性基非含有イオン液体は、再度反応の触媒及び溶媒として用いることができ、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の面で有利である。なお、酸及び酸性基非含有イオン液体は、このような方法により容易に回収できるため、酸を含む溶液を濃縮等により精製する工程は必ずしも必要としない。
上記酸は、塩化水素であることが好ましい。
酸触媒として塩化水素を用いることで、製造コストを低く保つことができる。
上記酸性基非含有イオン液体は、4級アンモニウム塩であることが好ましい。
酸性基非含有イオン液体として、このような化合物を使用すると、反応に用いる酸及び原料の溶解性に優れ、反応時に低粘度で液状となり、疎水性の有機溶媒とは分離する性質を有するイオン液体を容易に設計できる。
本発明の製造方法においては、上記ポリアミン化を、上記アルデヒド化合物、上記アニリン及び上記酸性イオン液体を共存させて行うか、上記アルデヒド化合物と上記アニリンの反応物と、上記酸性イオン液体とを共存させて行うことができる。
いずれの方法によっても、酸性イオン液体は、ポリアミン化触媒及び溶媒として機能し、所望の芳香族ポリアミンを得ることができる。
上記ポリアミン化工程において得られる上記芳香族ポリアミンは、上記ポリアミン化終了後、疎水性の有機溶媒を添加し、抽出して得られたものであることが好ましい。
ポリアミン化終了後の反応物に、疎水性有機溶媒を添加した場合、酸性イオン液体は疎水性の有機溶媒にはほとんど溶解せず、かつ、反応生成物である芳香族ポリアミンは疎水性の有機溶媒側に溶解するため、酸性イオン液体と芳香族ポリアミンを容易に分離することができる。また、このように分離・回収された酸性イオン液体はリサイクルして再度用いることができる。
上記酸性イオン液体は、既に実施した上記ポリアミン化工程で回収された酸性イオン液体を含有してもよい。
このように酸性イオン液体をリサイクルすれば、原料の使用量を削減することができ、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の面で有効である。また、上記酸性イオン液体は、回収後のものであっても、反応性が高く、かつ、反応性の低下が生じ難い。
上記ホスゲン化工程は溶媒を用いて行われ、上記ホスゲン化工程において最終的に得られる上記ホスゲン化反応物は、上記溶媒及び/又は未反応の上記ホスゲンを除去して得られたものであると好ましい。
上記ホスゲン化反応物から、上記溶媒を除去すれば、ポリイソシアネートの色相改善に必要な塩化水素の量を低減することができる。また、上記未反応のホスゲンを除去すれば、より良好な色相を有するポリイソシアネートを製造することができる。
上記塩化水素含有イソシアネートは、0.01〜3質量%の塩化水素を含有することが好ましい。
上記塩化水素含有イソシアネートは、塩化水素の含有量が上記範囲であれば、塩化水素の浪費を抑えつつ、工業的に容易に調製することができる。また、塩化水素ガスの使用量が少ないため、従来の技術と比較して、塩化水素を扱うポンプ等の装置の縮小化が可能であるとともに、塩化水素によるプラント設備等の腐食が発生しにくくなる。
上記混合工程において、上記ホスゲン化反応物と上記塩化水素含有イソシアネートとを、60〜160℃で混合すると好ましく、80〜140℃で混合するとより好ましい。
上記温度範囲内で混合すると、塩化水素による色相改善効果がより顕著に発現し、得られるポリイソシアネートの色相が優れたものになる。
上記第1のイソシアネートと上記第2のイソシアネートは、同一種のイソシアネートであると好ましい。
第1のイソシアネートと第2のイソシアネートが同一種であれば、得られるポリイソシアネートの物性を容易に設計できる。ここで第1のイソシアネートと第2のイソシアネートが同一種であるとは、基本骨格が同じで分子量が異なるイソシアネートであることや、基本骨格が同じで分子量の異なるイソシアネートの混合物であって、その混合組成(混合比)が異なるイソシアネートであることを示す。具体的には、例えば、MDIの二核体、三核体、四核体以上のMDI高級類似体、及び、それらを任意の比率で混合したMDI混合物は、いずれも同一種である。ここで、核体とは分子中のベンゼン環のことを示し、例えば、二核体とはベンゼン環を分子内に二つ有することを示す。なお、分子内に三つ以上のベンゼン環を有するMDIは、MDI高級類似体と総称される。
本発明の製造方法は、上記混合工程の後に、上記混合工程で得られる上記ポリイソシアネートを180〜230℃で加熱する加熱工程を備えることが好ましい。
本発明の製造方法が上記加熱工程を備えると、ポリイソシアネートの色相改善をより確実に行うことができる。また、ポリイソシアネート中に生じる、溶解性の低いダイマーなどの多量体の沈降を抑制することができ、純度が高く性能の安定性が良好なポリイソシアネートを得ることができる。
本発明によれば、工業的な実施が容易で、かつ、各工程において従来技術と比較して原料を大幅に低減しつつ、色相に優れたポリイソシアネートが製造可能な、ポリイソシアネートの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の面で有効であり、厳しい原料組成制限を必要とせず、塩化水素によるプラント設備の腐食等が発生しにくい、ポリイソシアネートの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物とアニリンとを原料物質とし、酸性イオン液体中でのポリアミン化により、下記一般式(I)で表される芳香族ポリアミンを得る、ポリアミン化工程と、
前記芳香族ポリアミンとホスゲンとのホスゲン化反応により、第1のイソシアネートを含むホスゲン化反応物を得るホスゲン化工程と、
第2のイソシアネート及び塩化水素を含有する塩化水素含有イソシアネートと、前記ホスゲン化反応物との混合により、ポリイソシアネートを得る混合工程と、
を備える、ポリイソシアネートの製造方法を提供する。
Figure 2010018534
なお、式(I)中、qは0又は1以上の整数を示す。qとしては、0〜5の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましく、0〜3の整数が更に好ましい。
一般式(I)で表される芳香族ポリアミンは、qが0のときは二核体、qが1のときは三核体、qが2のときは四核体と称される。なお、核体とは分子内のベンゼン環のことを示し、例えば、二核体とはベンゼン環を分子内に二つ有することを示す。なお、分子内に三つ以上のベンゼン環を有する芳香族ポリアミンは、高級類似体と総称される。
以下、上述の製造方法における、各工程について好適な実施形態を詳細に説明する。
(ポリアミン化工程)
上記ポリアミン化工程において、ポリアミン化を、ホルマリン法又はアミナール法で行うことが好ましい。
ここで、ホルマリン法とは、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)、アニリン、及び酸性イオン液体を共存させて行う方法であり、アミナール法とは、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)とアニリンの反応物と、酸性イオン液体とを共存させて行う方法である。
ポリアミン化を、ホルマリン法で行う場合、その反応温度は60〜120℃(好ましくは65〜115℃、さらには70〜110℃)が好ましい。60℃より低い温度で加熱処理した場合は転位反応の完結に時間を要し、生産性が低下する傾向にある。また、反応は120℃で十分速やかに進行するため、120℃より高い温度で加熱処理しても、生産性は必ずしも大きくならない。なお、反応は、常圧から、上記反応温度での反応混合物の個々の蒸気圧に相当する圧力の範囲で行われる。反応は上記圧力の範囲内で十分速やかに進行するため、これ以上の圧力で加圧しても、生産性は必ずしも大きくならない。
ポリアミン化を、アミナール法で行う場合、アニリン2分子がアルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)により縮合してアミナールが生じ、このアミナールが異性化して一般式(I)で表される芳香族ポリアミンが形成されると考えられる。
アルデヒド化合物とアニリンの反応物を、酸性イオン液体と共存させ、ポリアミン化を行う方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、アルデヒド化合物(ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド)に対してアニリンをモル比で2倍以上、好ましくは3〜6倍程度の割合で混合し、0〜40℃において縮合させる。縮合によって得られた反応物は、水相と有機相を分離する。そして、その有機相を酸性イオン液体と共存させて、縮合によって得られた反応物を異性化させ、一般式(I)で表される芳香族ポリアミンを得る。ここで、有機相中に含まれる水分量は低い方が好ましいが、通常は上記操作で得られる有機相をそのまま利用できる。
なお、異性化させる場合の温度は、60〜120℃(好ましくは80〜115℃、さらには90〜110℃)が好ましい。60℃より低い温度で加熱処理した場合は転位反応の完結に時間を要し、生産性が低下する傾向にある。また、反応は120℃で十分速やかに進行するため、120℃より高い温度で加熱処理しても、生産性は必ずしも大きくならない。なお、反応は、常圧から、上記反応温度での反応混合物の個々の蒸気圧に相当する圧力の範囲で行われる。反応は上記圧力の範囲内で十分速やかに進行するため、これ以上の圧力で加圧しても、生産性は必ずしも大きくならない。
酸性イオン液体としては、酸性基含有イオン液体を含有すると好ましい。
酸性基含有イオン液体は、分子内に酸性基を有するイオン液体であり、かつ、上記ポリアミン化おいて、酸触媒として機能する。酸性基含有イオン液体は反応時に液状であるものであれば特に制限なく使用できるが、酸性度が強いものが好ましく、例えば、pH3以下であることが好ましい。
酸性基は、酸性基含有イオン液体に酸性度を与えるものであれば特に制限なくできるが、酸性度の強さの観点からは、スルホン酸基及びカルボン酸基が好ましい。
酸性基含有イオン液体は公知の方法で合成できる。例えば、「J.Am.Chem.Soc.,124,5962(2002)」に記載の、N置換イミダゾール化合物やトリフェニルホスフィンと1,3−プロパンスルトンを反応させ、次にトリフルオロメタンスルホン酸やパラトルエンスルホン酸などを反応させる方法によっても得ることができる。
反応性の高さや、酸性基含有イオン液体自体の合成のしやすさの観点から、酸性基含有イオン液体は、3価のホスフィノ基を有する化合物又はイミダゾール化合物と、1,3−プロパンスルトン又は1,4−ブタンスルトンと、を反応させ得られる双性イオン化合物と、有機スルホン酸と、を反応させて得られる化合物であることが好ましい。
イミダゾール化合物としては、例えば、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−イソブチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1−エチル−2,4−ジメチルイミダゾール及び1,2,4,5−テトラメチルイミダゾールが挙げられる。3価のホスフィノ基を有する化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホスフィン及びブチルジフェニルホスフィンが挙げられる。有機スルホン酸としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及び10−カンファースルホン酸が挙げられる。
反応性の高さや、酸性基含有イオン液体自体の合成のしやすさの観点からは、酸性基含有イオン液体は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(III)で表される化合物であることも好ましい。
Figure 2010018534
Figure 2010018534
ここで、式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜4のアルキル基又は水素原子を示す。Rは炭素数1以上の有機基を示し、mは3又は4を示す。また、式(III)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上の有機基を示す。nは3又は4を示す。
炭素数が1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、2−ブチル基及び1−ブチル基が挙げられる。炭素数が1以上の有機基としては、例えば、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、2−メチル−1−プロピル基、2−メチル−2−プロピル基、2−ブチル基、1−ブチル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、フェニル基及び10−カンファ基が挙げられる。
一般式(II)で表される化合物としては、例えば、3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート及び3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネートが挙げられる。
一般式(III)で表される化合物としては、例えば、トリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネート、トリメチル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネート、トリエチル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネート、トリプロピル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネート、トリブチル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネート及びトリス(2−メチルフェニル)(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネートが挙げられる。
また、酸性基含有イオン液体の使用量は、原料として使用するアニリンの使用量に対して、モル比で、0.1〜1.0が好ましく、0.2〜0.8が更に好ましい。この使用量が0.1より小さいと、転位反応の進行が遅くなる傾向にある。また、この使用量が1で十分速やかに反応が進行するため、1より大きい使用量で反応しても生産性向上効果は小さい。
なお、上述のポリアミン化工程においては、ポリアミン化で得られた反応物、すなわち、一般式(I)で表される芳香族ポリアミンを含む反応物に、疎水性の有機溶媒を添加することが好ましい。
酸性基含有イオン液体は疎水性の有機溶媒にはほとんど溶解せず、かつ、反応生成物である芳香族ポリアミンは疎水性の有機溶媒側に溶解するため、疎水性の有機溶媒を反応液に添加することで、酸性基含有イオン液体と反応生成物である芳香族ポリアミンを容易に分離することができる。
疎水性の有機溶媒は一般的に用いられる溶媒であればよく、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、クロルトルエン、クロルベンゼン及びジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸ブチル及び酢酸アミル等のエステル類、及び、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられるが、トルエン、キシレン、クロルトルエン、クロルベンゼン及びジクロルベンゼンが特に好ましい。このような溶媒は、一般式(I)で表される芳香族ポリアミンに対して高い安定性を有する。
また、上述のポリアミン化工程においては、ポリアミン化終了後、酸性基含有イオン液体を回収し、回収した当該液体を、酸性イオン液体の一部または全部として用いて、再度ポリアミン化を実施することができる。上記酸性基含有イオン液体は、複数回回収した場合でも、反応速度の低下などが小さく、問題なく再利用できる。
上記酸性イオン液体は、酸及び酸性基非含有イオン液体を含有するものであっても好ましい。
酸性基非含有イオン液体は、アニオン及びカチオンから構成され、酸性官能基を有さない塩であって、反応時に液状であり、酸触媒を溶解可能な性質を有する限りにおいて特に制限なく用いることができる。公知の酸性基非含有イオン液体としては、例えば、「東レリサーチセンター著 イオン液体(2007年発刊)」に記載のものが挙げられるが、イオン液体の分子設計の容易さの点で4級アンモニウム塩が好ましい。
4級アンモニウム塩としては、例えば、アンモニア骨格を有するN,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム テトラフルオロボレート及びN,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム トリフルオロメタンスルフォネート、イミダゾリウム骨格を有する1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートなどが挙げられる。上記酸性基非含有イオン液体は、イミダゾリウム骨格を有することが特に好ましい。このような骨格を有する化合物は、反応時に低粘度で液状となるように分子設計を行うことが容易である。
また、酸性基非含有イオン液体の使用量は、原料として使用するアニリンの使用量に対して、質量比で、0.2〜1.0が好ましく、0.4〜0.8が更に好ましい。この使用量が、0.2より小さいと、反応液の粘度が高くなり、攪拌が困難となる傾向がある。また、この使用量が1である場合でも反応液は十分低粘度に保たれるため、1より大きい使用量は必ずしも必要ではない。
上述のポリアミン化工程において用いられる酸は、上記ポリアミン化の触媒として機能する。上記酸としては、酸性度を有するものであれば公知の酸触媒が使用できる。このような酸としては、例えば、塩酸、硫酸などの鉱酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。このうち製造コストの点では塩酸、すなわち塩化水素の水溶液が最も好ましい。
上記酸の使用量は、原料として使用するアニリンの使用量に対して、モル比で、0.1〜10が好ましく、0.2〜0.8が更に好ましい。この使用量が0.1より小さいと、転位反応の進行が遅くなる傾向にある。また、この使用量が1で十分速やかに反応が進行するため、1より大きい使用量で反応しても生産性向上効果は小さい。
なお、上述のポリアミン化工程においては、ポリアミン化により得られた反応物、すなわち、一般式(I)で表される芳香族ポリアミンを含む反応物に、疎水性の有機溶媒を添加することが好ましい。
酸性基非含有イオン液体は疎水性の有機溶媒にはほとんど溶解せず、かつ、反応生成物である芳香族ポリアミンは疎水性の有機溶媒側に溶解する。また、上記酸は、通常、酸性基非含有イオン液体側に溶解する。これにより、疎水性の有機溶媒を反応液に添加することで、酸を含む酸性基非含有イオン液体と反応生成物である芳香族ポリアミンを容易に分離することができる。
疎水性の有機溶媒は一般的に用いられる溶媒であればよく、例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、クロルトルエン、クロルベンゼン及びジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸ブチル及び酢酸アミル等のエステル類、及び、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられるが、トルエン、キシレン、クロルトルエン、クロルベンゼン及びジクロルベンゼンが特に好ましい。このような溶媒は、一般式(I)で表される芳香族ポリアミンに対して高い安定性を有する。
また、上述のポリアミン化工程においては、ポリアミン化終了後、酸を含有する酸性基非含有イオン液体を回収し、回収した当該液体を、酸性イオン液体の一部または全部として用いて、再度ポリアミン化を実施することができる。上記酸を含有する酸性基非含有イオン液体は、複数回回収した場合でも、反応速度の低下などが小さく、問題なく再利用できる。また、上記酸を含有する酸性基非含有イオン液体は、新たに酸を添加した後に、酸性イオン液体の一部または全部として用いて、ポリアミン化を実施することもできる。このように、酸を含む酸性基非含有イオン液体をリサイクルすれば、地球環境の保護及びエネルギー資源の有効活用の面で有効である。
(ホスゲン化工程)
上記ホスゲン化工程において、上記ホスゲン化反応としては、芳香族ポリアミンとホスゲンからイソシアネートを得る反応であれば、特に制限なく使用できる。以下、好適な実施形態を詳細に説明する。
ホスゲン化反応は、例えば、芳香族ポリアミンを反応溶媒である不活性溶媒に溶解させ、これにホスゲンを導入することによって行うことができる。不活性溶媒としては、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、クロルトルエン、クロルベンゼン及びジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸ブチル及び酢酸アミル等のエステル類、及び、メチルイソブチルケトン等のケトン類、等が挙げられる。また、ホスゲン化反応は、塩酸塩法、冷熱2段法及びホスゲン加圧法などの公知の方法を用いて行うことができ、工業的見地からは、連続的に反応を生じさせる方法が好ましい。
ホスゲン化反応を塩酸塩法で行う場合、例えば、上述した不活性溶媒中に芳香族ポリアミンを溶解させ、この溶媒の沸点以下の温度で塩化水素ガスを導入して芳香族ポリアミンの塩酸塩を生成させ、これにホスゲンガスを導入し、100℃〜180℃でホスゲン化反応を行うことができる。
ホスゲン化反応を冷熱2段法で行う場合、例えば、上述した不活性溶媒中に芳香族ポリアミンを溶解させ、この溶液に芳香族ポリアミンの5〜20倍モル程度のホスゲンを導入し、0〜90℃で第1段の反応を行うことができる。さらに、第1段の反応終了後、例えば、芳香族ポリアミンの0.5〜10倍モル程度のホスゲン存在下で、100〜150℃で第2段の反応を行い、ホスゲン化反応物を得ることができる。
ホスゲン化反応をホスゲン加圧法で行う場合、例えば、芳香族ポリアミンをその沸点または沸点以上の温度に加熱し、100〜500kPaの圧力下で、芳香族ポリアミンの1〜10倍モル程度のホスゲンを窒素又はアルゴン等のキャリアガスとともに導入し、ホスゲン化反応を行うことができる。
アミンのホスゲン化反応は、一般的に、R−NH+COCl→R−NCO+2HClで表すことができる(但し、Rはイソシアネート残基であり、芳香族炭化水素基を示す)。上記芳香族ポリアミンとホスゲンとのホスゲン化反応により生成する、第1のイソシアネートは、下記一般式(IV)で表されるイソシアネートである。
Figure 2010018534
ここで、式(IV)中、pは0又は1以上の整数を示す。
一般式(IV)で表されるイソシアネートは、pが0のときは二核体、pが1のときは三核体、pが2のときは四核体と称される。なお、核体とは分子内のベンゼン環のことを示し、例えば、二核体とはベンゼン環を分子内に二つ有することを示す。なお、分子内に三つ以上のベンゼン環を有するイソシアネートは、高級類似体と総称される。通常、第1のイソシアネートは、上記一般式(IV)で表されるイソシアネートの、二核体及び高級類似体の混合物として得られる。
上記ホスゲン化工程において、最終的に得られるホスゲン化反応物は、未反応のホスゲンを除去して得られたものであると好ましい。
また、上記ホスゲン化工程が溶媒を用いて行われた場合、該ホスゲン化工程において最終的に得られるホスゲン化反応物は、溶媒及び/又は未反応の前記ホスゲンを除去して得られたものであると好ましい。
ホスゲン化反応物中にホスゲンが残存すると、続く混合工程での色相改善が阻害される場合がある。また、ホスゲン化反応物中に反応溶媒が多量に残存した状態で、続く混合工程を行うと、混合液中の塩化水素濃度が低くなり、色相改善効果が十分に得られない場合がある。
ここで、上記未反応のホスゲンを除去、とは、必ずしもホスゲン化反応物中のホスゲンを完全に除去する必要はなく、色相改善を阻害しない程度にホスゲンの含有量を低減させれば良い。具体的には、ホスゲン化反応物中のホスゲンの含有量が1000ppm以下になるまでホスゲンを除去することが好ましく、100pm以下になるまで除去するとより好ましい。
また、上記溶媒を除去、とは、必ずしもホスゲン化反応物中の溶媒を完全に除去する必要はなく、混合工程において色相改善効果が十分に得られる程度まで溶媒の含有量を低減させれば良い。具体的には、ホスゲン化反応物全体を100質量%としたとき、ホスゲン化反応物中の溶媒の含有量20質量%以下になるまで溶媒を除去することが好ましく、10質量%以下になるまで除去するとより好ましい。
溶媒及び/又は未反応のホスゲンを除去する方法としては、例えば、ホスゲン化反応終了後に窒素、ヘリウム又はアルゴン等の不活性ガスを導入する方法や、ホスゲン化反応終了後に減圧下で、溶媒を蒸留留去できる程度まで加熱する方法(減圧法)が挙げられるが、コストの点からは減圧法が好ましい。
上記減圧法は、100〜160℃で行われることが好ましい。160℃より高い温度で長時間加熱を続けると、ポリイソシアネートの色相が悪化する場合がある。また、100℃より低い温度では、未反応のホスゲンや溶媒の除去効率が低く、上記好ましい範囲まで除去を行うのに非常に長い時間がかかる場合がある。
(混合工程)
上記混合工程において、第2のイソシアネート及び塩化水素を含有する塩化水素含有イソシアネートと、上記ホスゲン化反応物とを任意の割合で混合して、ポリイソシアネートを得ることができる。
上記塩化水素含有イソシアネートは、塩化水素含有イソシアネート全体を100質量%としたとき、0.01〜3質量%の塩化水素を含有することが好ましく、1〜3質量%の塩化水素を含有することがより好ましい。塩化水素含有イソシアネート中の塩化水素含有量が多くなると(すなわち、飽和状態に近くなると)、塩化水素の損失が多くなり、結果として塩化水素の使用量が増加する場合がある。また、塩化水素含有量が少なくなると、色相改善を十分に行うために必要な、塩化水素含有イソシアネートの使用量が増加してしまう。
上記混合工程において、塩化水素含有イソシアネート中の塩化水素の含有量が、上記好ましい範囲内である場合、十分な色相改善効果を得るためには、塩化水素含有イソシアネートとホスゲン化反応物を、塩化水素含有イソシアネートの質量/ホスゲン化反応物の質量の値が、0.1〜1になるように混合することが好ましく、0.2〜0.8になるように混合することがより好ましい。
上記塩化水素含有イソシアネートは、例えば、密閉容器中で上記第2のイソシアネートへ塩化水素ガスを吹き込み、加圧条件下で第2のイソシアネート中に塩化水素を溶解させて調製することができる(加圧状態形式)。上記塩化水素を溶解させる際の温度は、室温〜160℃であればよいが、低温である方が塩化水素の溶解度が大きくなる点で好ましい。具体的には、20〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることがより好ましい。このような調製方法であれば、減圧又は常圧状態(すなわち、容器が密閉されていない状態)、且つ、高温で塩化水素を溶解させる場合と比較して、塩化水素ガスの損失量が非常に少なくなる。
上記第2のイソシアネートは、上記第1のイソシアネートと、同一種のイソシアネートであることが好ましい。ここで同一種のイソシアネートであるとは、基本骨格が同じで分子量の異なるイソシアネートであることや、基本骨格が同じで分子量の異なるイソシアネートの混合物であってその混合組成(混合比)が異なるイソシアネートであることを示す。具体的には、例えば、MDIの二核体、三核体、四核体以上のMDI高級類似体、及び、それらを任意の比率で混合したMDI混合物は、いずれも同一種である。
したがって、第2のイソシアネートは、上記一般式(IV)で表されるイソシアネートであることが好ましい。第1のイソシアネートと第2のイソシアネートが同一種であれば、得られるポリイソシアネートの物性を容易に設計することができる。
上記混合工程において、上記ホスゲン化反応物と上記塩化水素含有イソシアネートとを、混合する際の温度条件は、60〜160℃であると、ホスゲン化反応物中の溶媒や未反応のホスゲンを除去しつつ混合工程を行えるので好ましい。また、80〜140℃であるとさらに好ましい。混合時の温度が80℃より低いと、ホスゲン化反応物中に含まれる着色の原因物質が分解しにくくなり、色相改善効果が低くなる傾向にある。混合時の温度が140℃より高くなると別の着色原因物質が新たに生じて、色相が悪化する傾向にある。
また、アミンのホスゲン化反応は、
R−NH+COCl→R−NHCOCl(中間生成物A)+HCl→R−NCO+2HCl、及び、
R−NH+HCl→R−NH・HCl(中間生成物B)
R−NH・HCl+COCl→R−NHCOCl+2HCl→R−NCO+3HCl
で表すことができるが、副反応として、
2R−NH+COCl→R−NHCONH−R(副反応生成物A)、及び、
R−NHCONH−R+COCl→R−NHCONRCOCl(副反応生成物B)
等が考えられる。このようなホスゲン化反応中の中間生成物A、中間生成物B及び副反応生成物Bは、上記ホスゲン化工程及び/又は上記混合工程において除かれることが好ましい。このうち、中間生成物A及び中間生成物Bは、上記ホスゲン化工程及び/又は上記混合工程において、加熱によってイソシアネート又は副反応生成物Aへ転化すると考えられる。副反応生成物Bは、混合工程において塩化水素と反応しイソシアネートへ転化すると考えられる。副反応生成物Aはイソシアネートと反応して、ビウレット基を有する高分子化合物へ転化すると考えられる。
(加熱工程)
本発明の製造方法は、上記混合工程の後に、上記混合工程で得られる上記ポリイソシアネートを180〜230℃で加熱する加熱工程を備えることが好ましい。
上記加熱工程において、混合工程で得られるポリイソシアネートを180〜230℃で加熱すると、ポリイソシアネートの色相改善をより確実に行うことができる。また、ポリイソシアネート中に生じる、溶解性の低いダイマーなどの多量体の沈降を抑制することができ、純度が高く性能の安定性が良好なポリイソシアネートを得ることができる。このように、加熱工程を行うことによって多量体の沈降が抑制される理由は必ずしも明らかではないが、生成したダイマー等の多量体が加熱により解離すること等が考えられる。
上記加熱工程において、加熱温度が230℃より高いと、生成したポリイソシアネートが熱分解する場合がある。また、加熱温度が180℃より低いと、多量体の沈降抑制効果が低くなる傾向がある。なお、加熱温度は、上記範囲内であれば多少の変動(昇温又は降温)があってもよい。また、上記加熱工程は、水分等の混入を防ぐため、窒素等の不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
上記加熱工程において、加熱時間は特に制限はないが、1〜30分であることが好ましい。また、生成したポリイソシアネートの変性や分解等を防ぐという観点から、10分以内であることが好ましく、上述した多量体の沈降抑制効果を十分得るという観点から、5分以上であることが好ましい。
上述した加熱工程実施後に得られるポリイソシアネートは、着色が極めて少ないものであり、併せて、精製時の沈降物の生成も抑制されており純度が高い。従って、例えば、上記ポリイソシアネートをポリウレタンの製造に用いれば、性能の安定性が向上し、着色が抑えられた淡色のポリウレタンを得ることができる。
また、本発明の製造方法において、さらなる着色改善のために、ホスゲン化反応物へのフェノール系酸化防止剤の添加、亜燐酸系酸化防止剤の添加、金属水素化物(例えば、ボラン)などの還元剤の添加、アルコールの添加、及び、水の添加といった、従来から知られた着色改善方法を併用してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(酸性基含有イオン液体の合成)
酸性基含有イオン液体として、3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、トリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネート、3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネート、を合成した。以下に、それぞれの合成方法を示す。
<3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに16.8gの1−メチルイミダゾール(東京化成社製)を秤量し、窒素雰囲気下で、液温を80℃以内に保ち激しく攪拌しながら、25gの1,3−プロパンスルトン(東京化成社製)を2時間掛けて滴下し、更に1時間攪拌した。次に20gのトルエン(キシダ化学社製)を加えて60℃で3時間攪拌した後に固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。得られた固体を真空乾燥し中間生成物1を40g得た。
100mLの三角フラスコに34gの中間生成物1と25.1gのトリフルオロメタンスルホン酸(キシダ化学社製)を秤量し、窒素雰囲気下、液温60℃で8時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを混合し、抽出分離し下相を分取した。この下相を真空乾燥し53gの目的化合物を得た。
<トリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに25.0gのトリフェニルホスフィン(東京化成社製)と11.6gの1,3−プロパンスルトンと70gのトルエンを秤量し、窒素雰囲気下、液温110℃で3時間攪拌した。次にろ過し固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。この固形分を真空乾燥し29.2gの中間生成物2を得た。
100mLの三角フラスコに20gの中間生成物2と7.8gのトリフルオロメタンスルホン酸と20gのトルエンを秤量し、窒素雰囲気下、液温110℃で24時間激しく攪拌した。次に抽出分離し下相を得て真空乾燥し、目的化合物を26g得た。
<3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに13.4gの1−ブチルイミダゾール(東京化成社製)を秤量し、窒素雰囲気下、液温を80℃以内に保ち激しく攪拌しながら、13.2gの1,3−プロパンスルトンを1時間掛けて滴下し、更に1時間攪拌した。次に20gのトルエンを加えて110℃で3時間攪拌した。次にろ過し固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。この固形分を真空乾燥し、25.5gの中間生成物3を得た。
100mLの三角フラスコに15gの中間生成物3と9.1gのトリフルオロメタンスルホン酸を秤量し、窒素雰囲気下、液温60℃で7時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを加え攪拌し、抽出分離し下相を得て、真空乾燥し23gの目的化合物を得た。
<3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに7.2gの1−メチルイミダゾールを秤量し、窒素雰囲気下、液温を80℃以内に保ち激しく攪拌しながら、12gの1,4−ブタンスルトン(東京化成社製)を1時間掛けて滴下し、更に1時間攪拌した。次に20gのトルエンを加えて110℃で3時間攪拌した。次に固形分をろ取し、20gのトルエンで洗浄した。この固形分を真空乾燥し18.7gの中間生成物4を得た。
100mLの三角フラスコに10gの中間生成物4と6.9gのトリフルオロメタンスルホン酸を秤量し、窒素雰囲気下、液温60℃で7時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを加え攪拌し抽出分離し下相を得た。この下相を真空乾燥し、15.3gの目的化合物を得た。
<3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネートの合成>
100mLの三角フラスコに5gの中間生成物1と4.7gのp−トルエンスルホン酸1水和物(東京化成社製)を秤量し、窒素雰囲気下、液温100℃で6時間激しく攪拌した。次に20gのトルエンを加え攪拌し抽出分離し下相を得た。この下相を真空乾燥し7.7gの目的化合物を得た。
(N,N’−ジフェニルメチレンジアミン(アニリン及びホルマリンの縮合物)とアニリンの混合液の合成)
留出口を備えた1000mLの4つ口セパラブルフラスコに450gのアニリン(東ソー社製)を入れ、窒素雰囲気下、液温を5〜10℃に保ちながら80.5gの37%ホルマリン水溶液(日本ポリウレタン社製)を2時間かけて滴下した。次に液温を30℃として4時間攪拌した。これを分液ロートへ移液し、水相を取り除いた。次に50mLのイオン交換水を加え、分液ロートを軽く振り、静置後、水相を取り除いた。得られた有機相に硫酸ナトリウムを加え1時間放置後ろ過し、N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液(転位反応の原料)を作製した。当該混合液は、液体クロマトグラフィー及び水分含有量測定による計測を行った結果、N,N’−ジフェニルメチレンジアミン57.3質量%、アニリン41.1質量%、水分1質量%、不明成分0.6質量%を含有していた。この混合物を、転位反応(異性化反応)の原料として、以下の実施例1〜5、実施例7及び比較例1〜5に使用した。
(MDA及びその高級類似体の合成)
<実施例1>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に分析した。分析は、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーを用いて行い、「MDA及びその高級類似体の核体分布」、「MDA中の異性体の存在比」及び「不完全な転位反応生成物の存在比」を計算した。分析項目の詳細を以下に示す。
[分析項目の詳細]
MDA及びその高級類似体の核体分布(液体クロマトグラフィーによる測定);
二核体、三核体及び四核体以上の合計を100PA%としたときの、二核体、三核体及び四核体以上のPA%を求めた。なお、核体とは分子中のベンゼン環のことを示し、例えば、二核体とはベンゼン環を分子内に二つ有するMDAを示す。ここで、三核体及び四核体以上はMDAの高級類似体と称される。PAとは、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどの検出器で検出された各化合物のピーク面積を示し、PA%とは、各化合物のピーク面積を、検出されたピーク面積の総和で除した値に、100を乗じた値を示す。
MDA中の異性体の存在比(ガスクロマトグラフィーによる測定);
「(2,2’−MDA+2,4’−MDA)/(2,2’−MDA+2,4’−MDA+4,4’−MDA)(ピーク面積比)×100」を、MDA中の異性体の存在比(PA比)とした。ここでMDA中の異性体とは、2,2’−MDA及び2,4’−MDAを示す。
不完全な転位反応生成物の存在比(ガスクロマトグラフィーによる測定);
「不完全な転位反応生成物/(2,2’−MDA+2,4’−MDA+4,4’−MDA)(ピーク面積比)×100」を、不完全な転位反応生成物の存在比(PA比)とした。ここで、不完全な転位反応生成物の存在比が大きいことは、反応が不十分であることを表す。
[反応時の外観評価基準]
反応液が液体状態で均一である状態;均一
反応液が有機相と水相の2相に分離した状態:液体−液体
反応液が固体触媒と液体の2相に分離した状態;固体触媒−液体
[トルエン混合時の外観評価基準]
反応液が有機相とイオン液体相の2相に分離した状態;有機相−イオン液体相
有機相と固形物の2相に分離した状態;有機相−固体
反応液が有機相と水相の2相に分離した状態;有機相−水相
反応液が固体触媒と液体の2相に分離した状態;固体触媒−液体
[反応2バッチ目から20バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加え、液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し、10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は上述と同様の方法で行った。
<実施例2>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gのトリフェニル(プロピル−3−スルフォニル)ホスフォニウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加え、液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<実施例3>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−ブチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置した後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<実施例4>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−メチル−1−(ブチル−4−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<実施例5>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トルエンスルフォネートと2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で2時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<実施例6>
[反応1バッチ目]
50mLの2つ口セパラブルフラスコに5gの3−メチル−1−(プロピル−3−スルフォニル)イミダゾリウム トリフルオロメタンスルフォネートと4.5gのアニリンを秤量した。次に液温100℃で3.5gの8.5%ホルマリン水溶液(日本ポリウレタン社製の37%ホルマリン水溶液をイオン交換水で希釈した)を5分間掛けて滴下した後、2時間攪拌した。次に20gのトルエンを加え、脱水しながら110℃で60分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相と下相(イオン液体相)を分取した。上相に4gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相及び下相(水相)を分取した。上相の溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目から10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に4.5gのアニリンを加えた。次に液温100℃で3.5gの8.5%ホルマリン水溶液を5分間掛けて滴下した後、2時間攪拌した。次に20gのトルエンと前バッチで回収した下相(水相)を加え、脱水しながら110℃で60分間激しく攪拌した。10分間静置し、上相と下相(イオン液体相)を分取した。上相に4gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相及び下相(水相)を分取した。上相の溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<実施例7>
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに、イオン液体として2gの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(シグマ−アルドリッチ社製)、原料として2gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリン混合液、及び触媒として0.14gの35%塩酸水溶液(日本ポリウレタン工業社製)を加えて100℃で3時間攪拌した後、疎水性の有機溶媒として10gのトルエン(キシダ化学社製)を加え30分間激しく攪拌した。5分間静置後、上相を分取し、これにイオン交換水2gを混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目〜4バッチ目、反応6バッチ目〜7バッチ目及び反応9バッチ目〜10バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gの原料N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリン混合液を加えて100℃で3時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。5分間静置後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し、10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応5バッチ目及び反応8バッチ目]
前バッチの下相(イオン液体相)に2gの原料N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリン混合液及び0.05gの35%塩酸水溶液を加えて100℃で3時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。5分間静置後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し、10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った
<比較例1>塩酸量が多い一般縮合例
25mLの2つ口セパラブルフラスコに、10gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液と、4.7gの35%塩酸水溶液(日本ポリウレタン社製)とを秤量した。次に液温100℃で2時間攪拌した。次に10gの24%水酸化ナトリウム水溶液(東ソー社製水酸化ナトリウムをイオン交換水で希釈した)を加え中和し抽出分離し上相を分取した。これに2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例2>塩酸量が少ない一般縮合例
25mLの2つ口セパラブルフラスコに、2gの原料N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液と、0.14gの35%塩酸水溶液とを秤量した。次に液温100℃で7時間攪拌した。次に0.2gの48%水酸化ナトリウム水溶液と1gのイオン交換水を加え、更に30分間激しく攪拌した。10分間静置後、上相を分取し、これに0.5gのイオン交換水を混合し、10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例3>塩酸量が少ない一般縮合例/抽出操作あり
25mLの2つ口セパラブルフラスコに2gの原料N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリン混合液及び0.14gの35%塩酸水溶液を加えて100℃で7時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。5分間静置後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し、10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例4>水溶媒
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに0.14gの35%塩酸水溶液と反応溶媒として2gのイオン交換水を加えた。次に2gの原料N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリン混合液を加えて100℃で3時間攪拌した後、トルエン10gを加え10分間激しく攪拌した。10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目及び反応3バッチ目]
前バッチの下相(水相)に2gの原料N,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリン混合液を加えて100℃で7時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間激しく攪拌した。5分間静置後、上相を分取し、これに2gのイオン交換水を混合し、10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例5>固体酸触媒
[反応1バッチ目]
25mLの2つ口セパラブルフラスコに5gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液と0.1gの脱アルミニウム型Y型ゼオライトHSZ360HUAのペレット品(東ソー社製)を秤量し、液温100℃で7時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間攪拌した。この溶液をろ過し、ろ液に2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
[反応2バッチ目と3バッチ目]
前バッチで回収したゼオライトに5gのN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を加えた。次に液温100℃で7時間攪拌した後、10gのトルエンを加え、更に10分間攪拌した。この溶液をろ過し、ろ液に2gのイオン交換水を混合し10分間静置後、上相を分取した。この溶液をエバポレートし、アニリン及びトルエンを減圧除去した後に、液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析した。分析後の評価は実施例1と同様の方法で行った。
(MDA及びその高級類似体の評価結果)
実施例1〜6及び比較例1〜5について、上述の分析による結果を、表1〜5に示す。
Figure 2010018534
Figure 2010018534
Figure 2010018534
Figure 2010018534
Figure 2010018534
実施例1〜5は出発原料にN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を用い、分子内にスルホン酸基(−SOH)を有するイオン液体の存在下で反応を行った例であるが、反応バッチを10又は20回繰り返しても、問題なく反応が進行した。
実施例6は出発原料にアニリンとホルマリンを用い、分子内にスルホン酸基(−SOH)を有するイオン液体の存在下で反応を行った例であるが、反応バッチを10回繰り返しても、問題なく反応が進行した。尚、反応2バッチ目まではイオン液体と塩を形成しトルエン中に抽出されなかった為、反応3バッチ目以降の分析値について表記する。
実施例7は出発原料にN,N’−ジフェニルメチレンジアミンとアニリンの混合液を用い、酸性基を含有しないイオン液体の存在下で、反応1バッチ目、5バッチ目及び8バッチ目に触媒として塩酸を添加して反応を行った例であるが、10回繰り返し試験を行っても、問題なく反応が進行した。
比較例1〜2は一般的なMDA及びその高級類似体の製造及び精製方法であるが、反応後の後処理工程で塩化ナトリウムが副生した。
比較例3は一般的なMDA及びその高級類似体の製造方法で、精製工程で水酸化ナトリウムを添加せず、トルエンを添加した例であるが、反応器の底部に固化物が沈殿し、分離が困難で、工業生産には適さないと理解される。
比較例4は本発明のイオン液体の代わりに水を反応溶媒とした例であるが、不完全な転位反応生成物が多く、また反応液が2相分離した状態であることから、本発明と異なり工業生産には適さないと理解される。
比較例5は良好な反応性能を示すとされるゼオライトを触媒として用いた例であるが、反応2バッチ目以降に不完全な転位反応生成物が多く生成した。
(ホスゲン化工程)
実施例1の反応スケールを20倍にして、実施例1と同様の操作を繰返し、反応3〜10バッチ目で得られたMDA及びその高級類似体を混合し、ホスゲン化工程用の原料を得た。
[MDA及びその高級類似体(ホスゲン化工程用の原料)の詳細]
二核体:三核体:四核体以上(PA%)=74.6:18.4:7.1
MDA中の異性体の存在比(PA比)=21.9%
不完全な転位反応生成物(PA比)=0.8%
<実施例8>
3Lの耐圧反応容器中に、250gの上記ホスゲン化工程用の原料と1500gのモノクロルベンゼンを仕込み、液温を10℃に調整した。次に、密閉状態で0℃の液化ホスゲン590gを添加し、90分間攪拌した。次いで80℃で90分間、さらに120℃で90分間加熱攪拌を行った。反応終了後、液温を130℃に保ち、4kPaの減圧状態で、低沸物を除去し、ホスゲン化反応物を得た。得られたホスゲン化反応物を液体クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィーにより分析し、以下に示す方法で分析後の評価を行った。
[分析項目の詳細]
MDI及びその高級類似体の核体分布(液体クロマトグラフィーによる測定);
二核体、三核体及び四核体以上の合計を100PA%としたときの、二核体、三核体及び四核体以上のPA%を求めた。なお、核体とは分子中のベンゼン環のことを示し、例えば、二核体とはベンゼン環を分子内に二つ有するMDIを示す。ここで、三核体及び四核体以上はMDIの高級類似体と称される。
MDI中の異性体の存在比(ガスクロマトグラフィーによる測定);
「(2,2’−MDI+2,4’−MDI)/(2,2’−MDI+2,4’−MDI+4,4’−MDI)(ピーク面積比)×100」を、MDI中の異性体の存在比(PA比)とした。ここでMDI中の異性体とは、2,2’−MDI及び2,4’−MDIを示す。
上記実施例8で得られたホスゲン化反応物の分析結果は以下のようになった。
[ホスゲン化反応物(実施例8)の詳細]
二核体:三核体:四核体以上(PA%)=68.6:16.9:14:5
MDI中の異性体の存在比(PA比)=21.9%
ホスゲン含有量=100ppm
クロルベンゼン(反応溶媒)含有量=8質量%
(混合工程)
上記ホスゲン化反応物と混合する塩化水素含有イソシアネートは、500gの以下に詳細を示すポリメリックMDI(商品名ミリオネートMR200:日本ポリウレタン工業株式会社製)と10gの塩化水素を密閉容器内で混合させて調製した。
[ポリメリックMDI(塩化水素含有イソシアネートの原料)の詳細]
二核体
二核体:三核体:四核体以上(PA%)=41.5:24.7:33.8
MDI中の異性体の存在比(PA比)=1.3%
ホスゲン含有量=0ppm
クロルベンゼン(反応溶媒)含有量=0質量%
上記の方法により得た塩化水素含有イソシアネートは、塩化水素含有量1.8質量%だった。なお、塩化水素含有量は、塩化水素添加前後のイソシアネートの質量差から算出した。
上記ホスゲン化反応物及び上記塩化水素含有イソシアネートを用いて、以下に示す実施例9を行った。また、上記ホスゲン化反応物及び上記ポリメリックMDI(塩化水素含有イソシアネートの原料)を用いて、以下に示す比較例6〜8を行った。
<実施例9>
300mLの4つ口セパラブルフラスコに90gの上記ホスゲン化反応物と、40gの上記塩化水素含有イソシアネートを加え、窒素雰囲気下、110℃で加熱しながら10分間、150rpmで攪拌した(混合工程)。このようにして得られた溶液のうちの50mLを、予め220℃に加熱しておいたステンレス製の100mL容器に加え、50mL/分の流量で窒素バブリングを行いながら7分間放置した(加熱工程)。次に、この容器を氷浴に浸し、溶液を30℃まで急冷した後、ろ過してMDI及びその高級類似体を得た。ここで得たMDI及びその高級類似体は、以下に示す方法で色相を評価した。
[溶液色相測定方法]
450mLの無色透明瓶中で、2gの試料(MDI及びその高級類似体)に400mLのアセトンを加えて溶解し、23℃で溶液の色相を目視にて測定した。値はAPHA(ハーゼン単位色数)で示した。なお、上記ホスゲン化反応物90gに上記塩化水素含有イソシアネート40gを室温で混合した溶液と、上記ホスゲン化反応物90gに上記ポリメリックMDI40gを室温で混合した溶液を、それぞれ上記方法で溶液色相を測定した結果、共に20APHAであった。
<比較例6>
90gの上記ホスゲン化反応物に、40gの上記ポリメリックMDIを加え、窒素雰囲気下、110℃で加熱しながら10分間、150rpmで攪拌した。それ以外の条件については上記実施例9と同様に行い、MDI及びその高級類似体を得た。ここで得たMDI及びその高級類似体は、実施例9と同様の方法により色相を評価した。
<比較例7>
90gの上記ホスゲン化反応物に、40gの上記ポリメリックMDIを加え、塩化水素ガスを100mL/分の流量でバブリングしつつ、110℃で加熱しながら20分間、150rpmで攪拌した。それ以外の条件については上記実施例9と同様に行い、MDI及びその高級類似体を得た。ここで得たMDI及びその高級類似体は、実施例9と同様の方法により色相を評価した。
<比較例8>
90gの上記ホスゲン化反応物に、40gの上記ポリメリックMDIを加え、110℃で加熱しながら10分間、150rpmで攪拌した。ただし、10分間の攪拌時間のうち、前半の5分間は塩化水素ガスを100mL/分の流量でバブリングしながら攪拌を行い、後半の5分間は窒素雰囲気下で攪拌を行った。それ以外の条件については上記実施例9と同様に行い、MDI及びその高級類似体を得た。ここで得たMDI及びその高級類似体は、実施例9と同様の方法により色相を評価した。
(MDI及びその高級類似体の評価結果)
以上の実施例9及び比較例6〜8について、各種反応条件、塩化水素使用量、及び、MDI及びその高級類似体の溶液色相の測定結果を、表6に示す。
Figure 2010018534
表6中の「塩化水素使用量」について、実施例9の値(0.8g)には、上記塩化水素含有イソシアネートに実際含まれている塩化水素の量(40g×1.8/100=0.72g)だけでなく、上記塩化水素含有イソシアネートを調製する際に損失した塩化水素の量も含まれている。比較例6〜8においては、「塩化水素使用量」とは、混合工程中に吹き込まれた塩化水素ガスの総量である。
表6に示すように、実施例9では、塩化水素を含むイソシアネートを製造する際に損失した塩化水素を含めて、塩化水素使用量は0.8gである。しかしこの4倍の量の塩化水素を使用した比較例7と同程度に着色の少ないMDI及びその高級類似体が得られた。これにより、本発明のポリイソシアネート製造方法によれば、塩化水素の使用量を大幅に削減しつつも、十分な色相改善を実現できることがわかる。
塩化水素処理を行わなかった比較例6では、MDI及びその高級類似体が激しく着色した。また、実施例9と同程度まで塩化水素使用量を減らした比較例8では、着色低減効果が著しく低下した。
本発明により、ポリイソシアネートを製造する際に、原料の使用量を少なくしつつ、イソシアネートの色相改善を十分に行うことが可能になった。したがって、本発明のポリイソシアネートの製造方法は、ポリイソシアネートを原料とする分野(バインダー等)、又はポリイソシアネートを原料として得られるポリウレタン樹脂が用いられるあらゆる分野(発泡体、塗料、接着剤、シーラント、エラストマー等)において、低着色が要求される場合に有用である。

Claims (17)

  1. ホルムアルデヒド及びパラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物とアニリンとを原料物質とし、酸性イオン液体中でのポリアミン化により、下記一般式(I)で表される芳香族ポリアミンを得る、ポリアミン化工程と、
    前記芳香族ポリアミンとホスゲンとのホスゲン化反応により、第1のイソシアネートを含むホスゲン化反応物を得るホスゲン化工程と、
    第2のイソシアネート及び塩化水素を含有する塩化水素含有イソシアネートと、前記ホスゲン化反応物との混合により、ポリイソシアネートを得る混合工程と、
    を備える、ポリイソシアネートの製造方法。
    Figure 2010018534

    [式(I)中、qは0又は1以上の整数を示す。]
  2. 前記酸性イオン液体は、酸性基含有イオン液体を含有する、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記酸性基含有イオン液体は、
    3価のホスフィノ基を有する化合物及びイミダゾール化合物から選ばれる極性化合物と、1,3−プロパンスルトン及び1,4−ブタンスルトンから選ばれるスルトン化合物との反応物である双性イオン化合物と、
    有機スルホン酸と、を反応させて得られる、請求項2記載の製造方法。
  4. 前記酸性基含有イオン液体は、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項2又は3に記載の製造方法。
    Figure 2010018534

    [式(II)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を示す。Rは炭素数1以上の有機基を示し、mは3又は4を示す。]
  5. 前記酸性基含有イオン液体は、下記一般式(III)で表される化合物である、請求項2又は3に記載の製造方法。
    Figure 2010018534

    [式(III)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上の有機基を示し、nは3又は4を示す。]
  6. 前記酸性イオン液体は、酸及び酸性基非含有イオン液体を含有する、請求項1記載の製造方法。
  7. 前記酸は、塩化水素である、請求項6記載の製造方法。
  8. 前記酸性基非含有イオン液体は、4級アンモニウム塩である、請求項6又は7記載の製造方法。
  9. 前記ポリアミン化を、
    前記アルデヒド化合物、前記アニリン及び前記酸性イオン液体を共存させて行うか、
    前記アルデヒド化合物と前記アニリンの反応物と、前記酸性イオン液体とを共存させて行う、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記ポリアミン化工程において得られる前記芳香族ポリアミンは、
    前記ポリアミン化終了後、疎水性の有機溶媒を添加し、抽出して得られたものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 前記酸性イオン液体は、
    既に実施した前記ポリアミン化工程で回収された酸性イオン液体を含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 前記ホスゲン化工程は溶媒を用いて行われ、
    前記ホスゲン化工程において最終的に得られる前記ホスゲン化反応物は、当該溶媒及び/又は未反応の前記ホスゲンを除去して得られたものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 前記塩化水素含有イソシアネートは、0.01〜3質量%の塩化水素を含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
  14. 前記混合工程において、
    前記ホスゲン化反応物と前記塩化水素含有イソシアネートとを、60〜160℃で混合する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
  15. 前記混合工程において、
    前記ホスゲン化反応物と前記塩化水素含有イソシアネートとを、80〜140℃で混合する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  16. 前記第1のイソシアネートと前記第2のイソシアネートは、
    同一種のイソシアネートである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
  17. 前記混合工程の後に、
    前記混合工程で得られる前記ポリイソシアネートを180〜230℃で加熱する加熱工程を備える、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
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