(第1の実施形態)
以下、図1から図10を参照して、本発明の第1の実施形態に係る発明について説明する。図1は、第1の実施形態に係る衝突予測装置の構成を示すブロック図である。衝突予測装置1は、自車両の進路上に向かって移動する他車両と自車両との衝突を予測する。衝突予測装置1は、角度測定手段2と、衝突判断手段3と、照射手段4とを備える。角度測定手段2は、自車両の進行方向に対する他車両の進行方向の角度を測定する。衝突判断手段3は、角度又は角度の変化の少なくとも一方を用いて衝突可能性の判断を行う。また、衝突判断手段3は、通知手段5、走行制御手段6および乗員保護手段7に接続される。照射手段4は、自車両の進行方向の路面上に、複数の光ビームスポットを第1のパターンと第2のパターンで照射する。なお、角度を求める方法については、後述するように様々な方法がある。ここでは、例として、図1に示される角度測定手段2を用いて角度を測定する。また、本実施形態では、衝突判断手段3は、角度のみで衝突判断を行う。以下、本実施形態に係る衝突予測装置1の各部の説明を行う。
(衝突予測装置1の各部の説明)
角度測定手段2は、他車両が照射した光ビームスポットを自車両が受光することによって、自車両と他車両との角度を測定する。角度測定手段2は、図1に示されるように、検出部11と、角度判定部12とを含む。角度測定手段2の詳細については、後述する。
衝突判断手段3は、角度測定手段2によって測定された自車両の進行方向に対する他車両の進行方向の角度を用いて衝突可能性の判断を行う。また判断結果に応じて、所定の支援を行う。所定の支援とは、後述する通知手段5、走行制御手段6および乗員保護手段7のうちの少なくとも1つによる支援である。衝突判断手段3の詳細については、後述する。
照射手段4は、車両の進行方向(車両の前方)に光ビームスポットを照射するように配置される。照射手段4は、ビーム発生器16と、ビーム整形レンズ17と、偏光整形器18と、スキャンアクチュエータ19とを有する。ビーム発生器16は、例えば、半導体レーザ装置で構成され、所定の波長の光を発生させる。本実施形態では、ビーム発生器16は、赤外域の波長の光を発生させる。ビーム発生器16は、光パルスを発生させる。光パルスを発生するタイミングは衝突判断手段3により制御される。ビーム整形レンズ17は、ビーム発生器16で発生した光ビームを整形する。偏光整形器18は、ビーム整形レンズ17から出力された光ビームの入射面に垂直な成分の一部を反射させることにより光ビームを偏光させる。スキャンアクチュエータ19は、偏光整形器18で偏光された光ビームを所望の方向に出射させる。本実施形態では、スキャンアクチュエータ19とビーム発生器16を制御することにより、2つのパターンの光ビームスポットを形成する。なお、ビーム発生器16が発生させる光は赤外域の波長の光に限られず、どのような波長の光であってもよい。また、照射手段4は、上記構成に限られず、少なくとも2つのパターンの光ビームスポットを照射するものであれば、どのような構成でもよい。
次に図2Aから図3を参照して、照射手段4が形成する2つのパターンの光ビームスポットについて説明する。図2Aおよび図2Bは、スキャンアクチュエータ19の詳細な構成を示す図である。図2Aはスキャンアクチュエータ19を側方から見た図であり、図2Bはスキャンアクチュエータ19を上方から見た図である。なお、図2Aおよび図2B(および図3)では、図の左側が車両の前方に対応する。図2Aおよび図2Bに示されるように、スキャンアクチュエータ19は、ポリゴンミラー21と反射鏡22で構成される。ポリゴンミラー21は、上面と下面および6つの側面21aから側面21fにより構成された柱状の形状である。側面21aから側面21fは、平面と多数の平面によって形成される多角面(概曲面と呼ぶ)が交互に配置される。すなわち、図2Bに示されるように、側面21a、21cおよび21eは平面により構成され、側面21b、21dおよび21fは概曲面により構成される。ここで、平面により構成される側面21a、21cおよび21eをA領域と呼び、概曲面により構成される側面21b、21dおよび21fをB領域と呼ぶことにする。また、ポリゴンミラー21は、回転軸21gを中心に時計回りに回転可能である。B領域の概曲面の曲率は、回転軸21gを中心とした6角形の外接円の曲率よりも大きく設定される。なお、ポリゴンミラー21は、上記構成に限らず、側面にA領域とB領域を有していればどのような形状でもよく、例えば、上面および底面が8角形で、側面が8面あってもよい。また、A領域とB領域は必ずしも交互に配置されていなくてもよい。
ビーム発生器16から発生した光ビームは、反射鏡22で反射され、ポリゴンミラー21の1つの側面、例えば、側面21aに入射する。側面21aに入射した光ビームは、側面21aで反射され、車両の前方に出射される。ポリゴンミラー21が回転した場合、光ビームは例えば、側面21bで反射され、車両の前方に出射される。次に、ポリゴンミラー21を回転させた場合、照射手段4が形成する光ビームスポットのパターンについて説明する。
図3は、ポリゴンミラー21を回転させた場合に形成される光ビームスポットのパターンを説明する図である。図3の(Aa)から(Ac)は、ポリゴンミラー21の回転角に応じてビーム発生器16から光パルスを複数発生させた場合(図では3つのパルス)に、入射光(破線)がポリゴンミラー21のA領域の1面で反射したときの反射光(実線矢印)が出射する方向を示したものである。図3の(Aa)から(Ac)に示されるように、A領域で反射した光ビームは、ポリゴンミラー21の回転方向と同じ方向に出射される。これらA領域の1つの面で反射した複数の光ビームスポットは路面上に照射され、それらは車両から見て左方向から右方向に略直線上に描かれる。これを右スキャンと呼ぶことにする。
一方、B領域で反射された光ビームは、図3の(Ba)から(Bc)で示されるような方向に出射される。図3の(Ba)から(Bc)は、ポリゴンミラー21の回転角に応じてビーム発生器16から光パルスを複数発生させた場合(ここでは3つのパルス)、入射光(破線)がポリゴンミラー21のB領域の1面で反射したときの反射光(実線矢印)が出射する方向を示したものである。図3の(Ba)で示されるように、B領域はその曲率が6角形の外接円の曲率よりも大きい概曲面であるため、入射光は(Aa)とは反対の方向に反射される。(Bc)においても同様に、入射光は、(Ac)とは反対の方向に反射される。すなわち、B領域で反射した光ビームは、ポリゴンミラー21の回転方向と反対の方向に出射される。これらB領域の1つの面で反射した複数の光ビームスポットは路面上に照射され、それらは車両から見て右方向から左方向に略直線上に描かれる。これを左スキャンと呼ぶことにする。
以上のように、ポリゴンミラー21を構成すれば、照射手段4は、右スキャンと左スキャンという2つの異なるパターンの光ビームスポットを照射することができる。本実施形態では、例えば、右スキャンをポリゴンミラー21の側面21aによって照射し、左スキャンをポリゴンミラー21の側面21bによって照射する。ポリゴンミラー21が1回転する時間をα(sec)とする。また、右スキャンおよび左スキャンそれぞれに含まれる3つの光ビームスポットの時間間隔をβ(sec)とする。例えば、βはαの1/100から1/数100の時間に設定される。ポリゴンミラー21を継続して回転させながら側面21aおよび側面21bにそれぞれ3つの光ビームスポットを時間β間隔で照射すると、時間α間隔で右スキャンと左スキャンのパターンが交互に照射される。この場合、右スキャンのパターンが照射された1/6α(sec)後、左スキャンのパターンが照射される。すなわち、時間α内に、時間β間隔で右スキャンの3つの光ビームスポットが照射され、右スキャンの最初の光ビームスポットの1/6α(sec)後に、左スキャンの3つの光ビームスポットが時間β間隔で照射される。
なお、本実施形態では、右スキャンおよび左スキャンをそれぞれ3つの光ビームスポットで構成したが、光ビームスポットの数は2つ以上であればいくつであってもよい。また、照射手段4は、ポリゴンミラー21の側面21aおよび側面21bにのみ光ビームを照射したが、ポリゴンミラー21のすべての側面に光ビームを照射することにより、ポリゴンミラー21が1回転する間に右スキャンと左スキャンを3回照射してもよい。この場合は、他車両が右スキャンと左スキャンを区別することができるように、例えば、ポリゴンミラー21が1回転する毎に所定時間待って、次の右スキャンおよび左スキャンの光ビームスポットを照射することが好ましい。また、ポリゴンミラー21の回転軸21gの方向が車両の左右方向と並行になるように配置することで、車両の進行方向と並行に2つのスキャンパターンの光ビームスポットが照射されるように、ポリゴンミラー21が構成されてもよい。また、本実施形態では、右スキャンの光ビームスポットと逆向きに左スキャンの光ビームスポットが照射されるとしたが、これら2つのスキャンの光ビームスポットは、複数の光ビームスポットを照射順に結んだ軌跡の方向が、異なる方向であればどのような方向でもよい。例えば、第2のパターンの軌跡の方向が、第1のパターンの軌跡の方向とある角度を有するように、第2のパターンの光ビームスポットが照射されてもよい。さらに、本実施形態では、ポリゴンミラー21を用いて、右スキャンと左スキャンの光ビームスポットを照射したが、このようなパターンの光ビームスポットを照射可能なものであれば何でもよい。例えば、ガルバノミラーを用いて、このようなパターンの光ビームスポットを照射してもよい。
図1に戻り、通知手段5は、例えば液晶モニタ等の表示装置、および/または、スピーカ等の音声出力装置によって構成される。衝突判断手段3からの命令があった場合、通知手段5は、画像および/または音声により運転者に通知する。なお、通知手段5は、これら表示装置や音声出力装置による通知に限らず、例えば、座席を振動させることによって、運転者に通知を行ってもよい。
走行制御手段6は、例えばブレーキECUやステアリングECUである。衝突判断手段3からの命令があった場合、走行制御手段6は、車両のブレーキやステアリングを制御することによって車両の走行を制御する。
乗員保護手段7は、例えばエアバッグ等である。衝突判断手段3からの命令があった場合、エアバッグ等の作動準備がされる。
次に、角度測定手段2について詳細に説明する。角度測定手段2は、図1に示されるように、検出部11と、角度判定部12とを含む。検出部11は、自車両進行方向の路面上の所定領域を検出領域として、他車両が他車両進行方向の路面上に照射した光ビームスポットを検出する。角度判定部12は、検出部11で検出した光ビームスポットから角度を判定する。以下、各部について詳細に説明する。
検出部11は、車両前方に搭載され、自車両進行方向の路面上の所定領域を検出領域として、自車両の進行方向の路面上に他車両が照射した光ビームスポットを検出する。検出部11で検出する光ビームスポットは、上述した照射手段4を有する他車両から照射される。検出領域は、車両前方の所定距離離れた領域であり、車両の速度や環境に応じて距離や領域が変化するように制御されてもよい。すなわち、車両が高速で走行中は、検出領域はより遠方かつ広範囲に設定されてもよいし、車両が下り坂を走行中などは、検出領域はより遠方かつ広範囲になるように設定されてもよい。なお、検出部11は、車両前方に搭載される必要はなく、車両の後方に搭載されてもよいし、車両の前方および後方のどちらにも搭載されてもよい。すなわち、車両の進行方向に存在する光ビームスポットを検出すればよく、例えば、前方進行中は前方の検出部11が作動し、後方進行中は、後方の検出部11が作動するように制御されてもよい。
図1に示されるように、検出部11は、レンズ13と、フィルタ14と、受光素子15とを有する。レンズ13は、車両前方の検出領域から入射される光を集光する。フィルタ14は、集光された光のうち、所定の波長の光を透過する。ここで所定の波長の光とは、他車両が照射手段4から照射した光である。受光素子15は、フィルタ14が透過した光を受光する。受光素子15は、空間分解能を持たず、受光した光を電気信号に変換する。変換された電気信号は角度判定部12へ出力される。以上のようにして、検出領域に照射された光ビームスポットは、レンズ13、フィルタ14、受光素子15を介して検出される。なお、受光素子15は、空間分解能を持つものでもよい。
次に、角度判定部12の説明をする。角度判定部12は、まず、検出部11で検出した複数の光ビームスポットが、右スキャンおよび左スキャンの2つのパターンの光ビームスポットかどうかを判別する。右スキャンおよび左スキャンのパターンの光ビームスポットかどうかは、検出した複数の光ビームスポットの時間間隔で判別することができる。すなわち、時間α内に検出した複数の光ビームスポットの中に、時間β間隔の3つの光ビームスポットを1組のパターンとしてそのパターンが2組存在し、かつ、1組目のパターンの最初の光ビームスポットの1/6α(sec)後に2組目のパターンの最初の光ビームスポットが検出された場合、1組目のパターンの光ビームスポットは、右スキャンの光ビームスポットであり、2組目のパターンの光ビームスポットは、左スキャンの光ビームスポットである。なお、上記、3つの光ビームスポットの時間間隔は必ずしもβと一致する必要は無く、誤差等を考慮してβを含む範囲であればよい。同様に、1組目のパターンと2組目のパターンの時間間隔についても、1/6αと一致する必要は無く、1/6αを含む範囲であればよい。
角度判定部12は、衝突判断手段3からの要求に応じて、自車両と他車両との角度を判定し、その結果を衝突判断手段3に出力する。図4および図5を参照して、角度判定部12が自車両と他車両との角度を判定する方法について説明する。図4は、自車両41が検出した他車両42の右スキャンと左スキャンの光ビームスポットから自車両41と他車両42との角度を求める方法を説明する図である。図4で示されるように、自車両41と他車両42はそれぞれ、矢印で示される方向に走行している。他車両42は、交互に右スキャン、左スキャンの光ビームスポットを路面上に照射しながら走行している。他車両42は、右スキャンの光ビームスポットA1、A2、A3、左スキャンの光ビームスポットB1、B2、B3の順番に光ビームスポットを路面上に照射する。自車両41は、検出領域に他車両42の光ビームスポットが照射された場合、光ビームスポットを受光する。
図5は、他車両42が右スキャンおよび左スキャンの光ビームスポットを照射した場合の時間と光ビームの関係を模式的に示した図である。図5(a)は他車両42が照射した光ビームスポットが検出領域で反射した光ビームスポットを示し、図5(b)は自車両41が受光した光ビームスポットである。横軸は時間tを表し、縦軸は光ビームの強さを表す。図5(a)に示されるように、他車両42が照射した右スキャンの光ビームスポットがA1からA3の順に検出領域で反射し、続いて他車両42が照射した左スキャンの光ビームスポットがB1からB3の順に検出領域で反射する。この場合に路面上に描かれる光ビームスポットは、図4の検出領域に存在する右スキャンの光ビームスポットA1からA3および左スキャンの光ビームスポットB1からB3であり、その照射の順番は、A1からA3、続いて、B1からB3となる。一方、図5(b)に示されるように、自車両41は、検出領域で反射したタイミングよりも僅かに遅れて光ビームスポットを受光する。すなわち、各光ビームスポットが検出領域の反射位置から自車両41までの距離を進む時間だけ遅れて、自車両41は各光ビームスポットを受光する。
図4に示されるように、光ビームスポットA1は、検出領域で反射した後、自車両41で受光されるまで、距離L1を進む。光ビームスポットA1が距離L1を進むのに要する時間をt1とする。同様に、光ビームスポットA2およびA3は、検出領域で反射した後、自車両41で受光されるまで、それぞれ距離L2および距離L3を進む。光ビームスポットA2が距離L2を進むのに要する時間をt2、光ビームスポットA3が距離L3を進むのに要する時間をt3とする。このような場合、図5(b)で示されるように、自車両41が受光する光ビームスポットA1、A2、A3は、検出領域で反射した時刻より、それぞれt1、t2、t3だけ遅れて自車両41に受光される。一方、左スキャンの光ビームスポットB1、B2、B3は、右スキャンの場合とは反対である。すなわち、光ビームスポットB1は、検出領域で反射した後、自車両41で受光されるまで、距離L3を進み、光ビームスポットB3は、検出領域で反射した後、自車両41で受光されるまで、距離L1を進む。つまり、図5(b)で示されるように、光ビームスポットB1、B2、B3は、検出領域で反射した時刻より、それぞれt3、t2、t1だけ遅れて自車両41に受光される。
右スキャンの光ビームスポットの内、最後の光ビームスポットA3と最初の光ビームスポットA1との時間間隔をtrとし、左スキャンの光ビームスポットの内、最後の光ビームスポットB3と最初の光ビームスポットB1との時間間隔をtlとする。tlとtrの差をTdとすると、Tdは、Td=tl−tr=2・(t1−t3)で求められる。ここで、上述したように、t1とt3はそれぞれ光が距離L1とL3を進む時間である。つまり、Tdは、光の経路長L1とL3の差に相当する時間の差である。自車両41と他車両42との角度が、直角に近い場合は、光の経路長の差が大きいため、Tdの絶対値は大きくなる。一方、自車両41と他車両42との角度が、180度に近い鈍角の場合は、光の経路長の差が小さいため、Tdの絶対値は小さくなる。同様に、自車両41と他車両42との角度が、0度に近い鋭角の場合も光の経路長の差が小さいため、Tdの絶対値は小さくなる。また、他車両42が自車両41の右から接近してくる場合は、t1よりもt3の方が大きくなるため、Tdは負の値になる。
以上のようにして、角度判定部12が、検出部11で検出した右スキャンと左スキャンの光ビームスポットの時間間隔の差Tdを求めることで、自車両41の進行方向に対する他車両42の進行方向の角度が、180度に近い鈍角または0度に近い鋭角なのか、直角に近いのかが分かる。さらに、他車両42が、自車両41の右から接近しているのか、左から接近しているのかが分かる。
(衝突予測装置1の動作)
次に、図6から図9を参照して、衝突予測装置1の動作について説明する。
図6から図8は、自車両と他車両との角度の違いによって、衝突予測装置1が衝突すると判断する場合と衝突しないと判断する場合を示す。図6は、自車両と他車両との角度が180度に近い鈍角の場合である。このような場合、自車両41と他車両42とは、カーブしている道路を対向して走行中であり、すれ違う可能性が高いと推測できる。また、自車両41と他車両42の運転者は、互いに前方に相手車両を認識しやすい。このため、自車両41と他車両42との角度が180度に近い鈍角の場合、衝突判断手段3は、衝突しないと判断する。
図7は、自車両と他車両との角度が0度に近い鋭角の場合である。このような場合、自車両41と他車両42とは、並行して走行中であり、他車両42が自車両41を追い越す可能性が高いと推測できる。このため、自車両41と他車両42との角度が0度に近い鋭角の場合、衝突判断手段3は、衝突しないと判断する。
図8は、自車両と他車両との角度が直角に近い場合である。このような場合、自車両41と他車両42とは、互いに交差点に進入しようとしており、出会い頭の衝突の可能性が高いと推測できる。このため、自車両41と他車両42との角度が直角に近い鈍角と鋭角の範囲にある場合は、衝突判断手段3は、衝突すると判断する。
図9は、衝突予測装置1の衝突判断の流れを示すフローチャートである。図9に示すフローチャートによる処理は、衝突判断手段3によって制御される。図9に示すフローチャートは、例えば、イグニッションがONである間、あるいは、自車両が走行している間、繰り返し実行される。以下、図9に示すフローチャートの説明をする。
まず、ステップS101において、衝突判断手段3は、角度測定手段2に対して、自車両と他車両との角度を測定するように命令を送信する。角度測定手段2の角度判定部12は、検出部11を作動させ、検出領域で検出される光ビームスポットの検出を開始する。角度判定部12は、検出した各光ビームスポットの時刻をメモリ上に記憶しておく。角度判定部12は、右スキャンおよび左スキャンの2つのパターンの光ビームスポットを検出した場合、ステップS102に処理を進める。角度判定部12が、右スキャンおよび左スキャンの2つのパターンの光ビームスポットを検出するまで、繰り返しステップS101は実行される。
ステップS102において、角度判定部12は、検出した右スキャンの光ビームスポットの内、3つ目の光ビームスポットと1つ目の光ビームスポットとの時刻の差trを算出する。同様に、角度判定部12は、検出した左スキャンの光ビームスポットの内、3つ目の光ビームスポットと1つ目の光ビームスポットとの時刻の差tlを算出する。次に、角度判定部12は、tlとtrの差Tdを算出し、結果を衝突判断手段3に出力する。角度判定部12からTdを受け取った衝突判断手段3は、次にステップS103に処理を進める。
ステップS103において、衝突判断手段3は、予め定められた時間T2とTdの絶対値とを比較し、Tdの絶対値がT2以下であれば、ステップS104に処理を進める。Tdの絶対値がT2より大きい場合、衝突判断手段3は、ステップS105に処理を進める。ここで、T2は、自車両と他車両との角度が直角を含む所定範囲にない角度に相当する時間である。すなわち、T2は、自車両と他車両との角度が、所定の鈍角または所定の鋭角である場合に相当する時間である。上述したように、自車両と他車両との角度が180度または0度の場合、Tdは0となり、自車両と他車両との角度が直角の場合、Tdの絶対値は|2・(t1−t3)|となる(図4参照)。Tdの絶対値がT2以下の場合、自車両と他車両との角度は、上記所定の鈍角と180度の間の角度か、または、上記所定の鋭角と0度の間の角度である。ここで、所定の鈍角または所定の鋭角は、直角から大きく離れた角度、例えば直角から30度離れた角度であってもよい。
ステップS104において、衝突判断手段3は、衝突しないと判断する。すなわち、自車両と他車両との角度が、直角から大きく離れた鈍角または鋭角であるため、衝突判断手段3は自車両と他車両はすれ違う、またはすり抜けると判断し、処理を終了する。
ステップS105において、衝突判断手段3は、予め定められた時間T1とTdの絶対値とを比較し、Tdの絶対値がT1以下であれば、ステップS106に処理を進める。Tdの絶対値がT1より大きければ、衝突判断手段3は、ステップS111に処理を進める。ここでT1は、例えば、Tdの絶対値として想定される値の最大値に設定される。TdがT1より大きい場合とは、例えば、受光した光ビームスポットが、他車両が照射した光ビームスポットが様々な物体によって反射され、検出領域に到達した場合等、マルチパスの場合である。すなわち、図4に示されるように、Tdは、距離L1とL3の差に相当する時間であり、自車両と他車両とが直角になった場合に最大となる。この最大値は右スキャンおよび左スキャンの各光ビームスポット間の間隔によって予め定まる値であり、この最大値を超える場合は、検知された光ビームスポットは直接他車両から照射された光ビームスポットではないか、誤検知である可能性が高い。このような光ビームスポットを排除するために、T1は設定される。
ステップS106において、衝突判断手段3は、Tdが0より小さい場合、ステップS107に処理を進める。Tdが0以上の場合、衝突判断手段3は、ステップS109に処理を進める。
ステップS107において、衝突判断手段3は、自車両と他車両との角度が直角を含む所定範囲であり、かつTdの値が負であるため、他車両は自車両の右側から直角に近い角度で接近中と判断する。従って、衝突判断手段3は、他車両が右側から衝突すると判断し、処理をステップS108に進める。
ステップS108において、衝突判断手段3は、他車両が右側から衝突すると判断し、通知手段5に対して、運転者に右側に注意を促すための命令を送信する。通知手段5は、衝突判断手段3からの通知命令に従って、運転者に対して、右側を注意するように音声および/または表示装置を用いて注意を促す。この場合、通知手段5は、注意すべき方向(この場合、右側)を運転者が直感的に認識できるように注意を促す。また、衝突判断手段3は、通知手段5に替わって(または加えて)、走行制御手段6に対して、作動命令を送信してもよい。さらに、衝突判断手段3は、これらに替わって(または加えて)、乗員保護手段7に対して、作動命令を送信してもよい。これらの動作の後、衝突判断手段3は、処理を終了する。
ステップS109において、衝突判断手段3は、自車両と他車両との角度が直角を含む所定範囲であり、かつTdの値が正であるため、他車両は自車両の左側から直角に近い角度で接近中と判断する。従って、衝突判断手段3は、他車両が左側から衝突すると判断し、処理をステップS110に進める。
ステップS110において、衝突判断手段3は、他車両が左側から衝突すると判断し、通知手段5に対して、運転者に左側に注意を促すための命令を送信する。通知手段5は、衝突判断手段3からの通知命令に従って、運転者に対して、左側を注意するように音声および/または表示装置を用いて注意を促す。この場合、通知手段5は、注意すべき方向(この場合、左側)を運転者が直感的に認識できるように注意を促す。ステップS108と同様、衝突判断手段3は、通知手段5、走行制御手段6および/または乗員保護手段7を作動させてもよい。これらの動作の後、衝突判断手段3は、処理を終了する。
ステップS111において、衝突判断手段3は、受光した右スキャンと左スキャンの光ビームスポットがマルチパス等によるものであるため、衝突しないと判断する。その後、衝突判断手段3は、処理を終了する。
以上に示したように、第1の実施形態に係る衝突予測装置1は、右スキャンと左スキャンの光ビームスポットを検出し(ステップS101)、右スキャンと左スキャンの光ビームスポットの時間間隔差Tdを算出し(ステップS102)、Tdの値から自車両と他車両との角度が直角を含む所定範囲の角度か否かを判定する(ステップS103)。角度が直角を含む所定範囲でない場合(ステップS103でYes)、衝突しないと判断する(ステップS104)。角度が直角を含む所定範囲である場合(ステップS103でNo)、マルチパス等の誤検知を除いて(ステップS105)、他車両が自車両の右側から接近中か、左側から接近中かを判定し(ステップS106)、それに応じて運転者へ支援を行う(ステップS108、ステップS110)。このように、本実施形態に係る衝突予測装置1は、自車両と他車両との角度によって衝突する/しないを判断し、それに応じた対応を行う。
なお、本実施形態では、衝突予測装置1は、自車両と他車両との角度によって衝突する/しないの判断をしたが、角度以外のパラメータをも用いて衝突する/しないの判断を行ってもよい。例えば、上記角度に加えて、自車両と他車両とが衝突するまでの時間(TTC(Time To Collision)と呼ぶ)を用いて衝突する/しないの判断を行ってもよい。TTCは検出位置から他車両までのTTC1と検出位置から自車両までのTTC2があり、TTC1とTTC2がほぼ一致する場合に衝突の可能性が高い。TTC1の測定方法は、例えば、他車両は、その光ビームスポットの位置までの到達時間とパルス時間間隔を対応させて光ビームスポットを照射する。他車両は、他車両進路上の様々な距離に前記パルス間隔で光ビームスポットを照射し、自車両はそのパルス間隔を測定することでTTC1を測定することができる。TTC2は、自車両の測定位置(距離)を自車両の車速で割った値を利用する。また、TTCは、例えば車載レーダー等を用いて算出することも可能である。TTCを用いる場合、衝突する/しないの判断は、TTCと所定の閾値との大小関係に応じて行われる。すなわち、TTCが所定の閾値以上である場合には衝突しないと判断し、TTCが所定の閾値よりも小さい場合には衝突すると判断する。このようにTTCを用いて衝突する/しないの判断を行う場合、衝突予測装置1は、上記角度に応じて上記所定の閾値の大きさを変更してもよい。すなわち、本装置で衝突可能性が低いと考えられるステップS104やステップS111において、上記閾値を相対的に高い値に設定し、設定された閾値とTTCとを比較することにより、衝突する/しないの判断を行ってもよい。これとは反対に、本装置で衝突可能性が高いと考えられるステップS108やステップS110において、上記閾値を相対的に低い値に設定し、設定された閾値とTTCとを比較することにより、衝突する/しないの判断を行ってもよい。また、本装置と別の装置を組み合わせることにより、衝突する/しないの判断を行ってもよい。すなわち、本装置で衝突可能性に応じて上記閾値を変更し、変更された閾値と上記パラメータとを別の装置を用いて比較することにより、衝突する/しないの判断を行ってもよい。また、角度以外のパラメータとして、上記TTCに加えて(または替えて)自車両と他車両との距離や自車両で受光した光ビームスポットの強さ等を用いてもよい。
また、本実施形態では、衝突予測装置1は、衝突結果として2種類の結果(衝突する/しない)を算出するものであったが、他の実施形態においては、衝突予測装置1は、衝突する可能性(の度合)を示す数値を衝突結果として算出するものであってもよい。例えば、衝突予測装置1は、上記角度に応じた数値を算出するものであってもよい。この数値は、例えば、衝突可能性を0〜100(%)で表すものであってもよいし、衝突判断に用いるパラメータ(上記TTC等)と比較するための閾値として用いられるものであってもよい。なお、この数値は、衝突判断に用いるパラメータと比較するために用いられる他、この数値に応じて所定の支援の内容を変更するために用いられてもよい。例えば、数値が比較的小さい場合には運転者に対する警告を所定の支援として行い、数値が比較的大きい場合には車両の走行を制御(例えばブレーキやステアリングを制御)を所定の支援として行うようにしてもよい。また、衝突すると判断した場合、判断に使った角度または角度の変化の少なくとも一方を用いてより良い回避支援を行うことができる。例えば、角度が直角の場合は制動回避を主体に行い、角度が鋭角、鈍角の場合は操舵回避を主体に行うことで、スムースな回避が可能になる。
なお、衝突予測装置1における検出部11および照射手段4は、図10Aおよび図10Bに示されるように、車両のヘッドライト内に内蔵されてもよい。図10Aは、照射手段4をヘッドライト100内に内蔵した構成を示す図である。図10Aに示されるように、反射板103は、ヘッドライト100内の空間(ランプ104が配置される空間)に取り付けられる。当該空間において、反射板103は、ランプ104よりも車両前方側に配置される。また、ビーム発生器101およびポリゴンミラー102は、ヘッドライト100の上記空間の外部(図10Aでは、底面105の下側)に取り付けられる。図10Aの実線矢印に示されるように、照射手段4は、ビーム発生器101から光ビームを発生し、ポリゴンミラー102で光を反射し、反射板103で光を反射することによって、車両の前方に光ビームスポットを照射する。ここで、ビーム発生器101が発生するレーザ光は、例えば赤外域の波長の光である。また、反射板103は、赤外域の波長の光を反射させ、可視光を透過させる反射板である。一方、ランプ104から発生した可視光は、反射板103を透過し、破線矢印に示されるように、可視光を車両の前方に照射する。
一方、図10Bは、検出部11をヘッドライト110内に内蔵した構成を示す図である。図10Aに示す照射手段4と同様、反射板113は、ヘッドライト110内の空間(ランプ114が配置される空間)に取り付けられる。当該空間において、反射板113は、ランプ114よりも車両前方側に配置される。また、受光素子111およびミラー112は、ヘッドライト110の上記空間の外部(図10Bでは、底面115の下側)に取り付けられる。図10Bの実線矢印に示されるように、検出部11は、車両前方の検出領域で反射した光ビームを反射板113で反射し、ミラー112を介して、受光素子111で受光する。ここで、反射板113は、反射板103と同様、赤外域の波長の光を反射させ、可視光を透過させる反射板である。また、反射板113は、検出領域で反射した光を集光するため、凹面に構成される。一方、ランプ114から発生した可視光は、上述と同様に、反射板113を透過し、車両の前方に照射される。
このように、検出部11および照射手段4を構成することで、光ビームスポットを照射および検出しつつ、ヘッドライトの光を照射することができる。また、検出部11および照射手段4をヘッドライト内に設置することにより、検出部11および照射手段4の設置スペースを新たに設けることなく車両に搭載することが可能となる。なお、検出部11は例えば右側のヘッドライト内に、照射手段4は左側のヘッドライト内に内蔵されてもよいし、その逆でもよい。また、検出部11および照射手段4共に、単一のヘッドライト内に内蔵されてもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る衝突予測装置の説明をする。第2の実施形態に係る衝突予測装置の構成は、図1に示す第1の実施形態に係る衝突予測装置1と同様の構成であるため、説明は省略する。第2の実施形態では、自車両と他車両との角度とその角度変化との組み合わせで衝突可能性の判断を行う。以下、図11から図15を参照して、第2の実施形態における衝突可能性の判断について説明する。
図11は、自車両41と他車両42との角度が180度に近い鈍角で、その角度が大きくなる方向に変化している様子を示す図である。図11に示されるように、自車両41がP1の位置にある場合、自車両41と他車両42との角度は180度に近い鈍角である。次に、自車両41がP2の位置に移動すると、自車両41と他車両42との角度は、自車両41がP1の位置にある場合よりも大きくなる。このような場合、自車両41は、カーブしている道路をカーブに沿って走行中である状況と想定されるので、自車両41と他車両42とはすれ違う可能性が高いと判断できる。従って、このような場合、衝突判断手段3は、衝突しないと判断する。
図12は、自車両41と他車両42との角度が0度に近い鋭角で、その角度が小さくなる方向に変化している様子を示す図である。図12に示されるように、自車両41がP1の位置にある場合、自車両41と他車両42との角度は0度に近い鋭角である。次に、自車両41がP2の位置に移動する場合、自車両41と他車両42との角度は、自車両41がP1の位置にある場合よりも小さくなる。このような場合、自車両41は、車線変更のために移動中である状況と想定されるので、自車両41は他車両42を追い越す可能性が高いと判断できる。従って、このような場合、衝突判断手段3は、衝突しないと判断する。
図13は、自車両41と他車両42との角度が180度に近い鈍角で、その角度が小さくなる方向に変化している様子を示す図である。図13に示されるように、自車両41がP1の位置にある場合、自車両41と他車両42との角度は180度に近い鈍角である。次に、自車両41がP2の位置に移動する場合、自車両41と他車両42との角度は、自車両41がP1の位置にある場合よりも小さくなる。このような場合、自車両41は、他車両42に向かって走行中である状況と想定されるので、衝突判断手段3は、衝突すると判断する。
図14は、自車両41と他車両42との角度が0度に近い鋭角で、その角度が大きくなる方向に変化している様子を示す図である。図14に示されるように、自車両41がP1の位置にある場合、自車両41と他車両42との角度は0度に近い鋭角である。次に、自車両41がP2の位置に移動する場合、自車両41と他車両42との角度は、自車両41がP1の位置にある場合よりも大きくなる。このような場合、自車両41は、他車両42に向かって走行中である状況と想定されるので、衝突判断手段3は、衝突すると判断する。
以上のように、自車両41と他車両42との角度が180度に近い鈍角または0度に近い鋭角の場合において、その角度が直角に近づく方向に変化している場合、衝突判断手段3は、衝突すると判断し、その角度が直角から離れる方向に変化している場合、衝突判断手段3は、衝突しないと判断する。
図15は、自車両41と他車両42との角度が直角を含む所定範囲で、その角度が変化している様子を示す図である。図15に示されるように、自車両41がP1の位置にある場合、自車両41と他車両42との角度は直角である。次に、自車両41がP2の位置に移動すると、自車両41と他車両42との角度は、自車両41がP1の位置にある場合よりも大きく、かつ、その変化が後述する場合に比べて相対的に大きい。また、自車両41がP1の位置からP3の位置に移動する場合、自車両41と他車両42との角度は、自車両41がP1の位置にある場合よりも小さく、かつ、その変化が大きい。このような場合、自車両41は左折または右折する状況と想定されるため、衝突可能性は低い。一方、自車両41がP1の位置からP4(またはP5)の位置に移動する場合、自車両41と他車両42との角度は、自車両41がP1の位置にある場合よりも大きく(または小さく)、かつ、その変化が上述した場合と比べて小さい。このような場合、自車両41は他車両42に向かって走行中である状況と想定されるため、衝突する可能性が高くなる。従って、自車両41と他車両42との角度の変化の大きさによって衝突可能性の判断を変える。すなわち、衝突判断手段3は、角度の変化が所定値以下の場合、衝突すると判断する。
なお、図15では、交差点等、自車両41と他車両42との角度が直角を含む所定範囲で、自車両41と他車両42が接近する場合を想定したが、自車両41と他車両42との角度が直角を含む所定範囲にない場合においても、角度の変化が所定値以下の場合、衝突可能性を高く判断してもよい。例えば、図11に示されるように、自車両41と他車両42との角度が180度に近い鈍角で、その角度が大きくなる方向に変化している場合でも、角度の変化が僅かに大きくなる方向に変化している(あまり変化していない)のであれば、自車両41はほぼ直進走行していると状況と想定できるため、衝突する可能性がある。従って、角度の変化が所定値以上の場合では、衝突可能性は低いが、所定値以下の場合は、衝突可能性は高くなる。ここで所定値とは、自車両41と他車両42との角度に応じて定められる角度の変化の量を表す値である。
なお、図11から図15では、自車両41が移動することによって自車両41と他車両42との角度が変化する場合について述べたが、他車両42が移動することによって、または自車両41と他車両42が共に移動することによって、角度が変化する場合も同様であることはいうまでもない。
以上、図11から図15を参照して、様々な場合において、本実施形態における衝突予測装置1が行う判断を示した。以下、それぞれの場合について、本実施形態における衝突予測装置1が行う判断を簡単に示す。
(イ)自車両と他車両とが180度に近い鈍角で、角度が増加傾向の場合
(判断)衝突しない
(ロ)自車両と他車両とが180度に近い鈍角で、角度が減少傾向の場合
(判断)衝突する
(ハ)自車両と他車両とが0度に近い鋭角で、角度が増加傾向の場合
(判断)衝突する
(二)自車両と他車両とが0度に近い鋭角で、角度が減少傾向の場合
(判断)衝突しない
(ホ)自車両と他車両とが直角に近い場合で、角度の変化量が大きい場合
(判断)衝突しない
(へ)自車両と他車両とが直角に近い場合で、角度の変化量が小さい場合
(判断)衝突する
図16は、第2の実施形態における衝突判断の流れを示すフローチャートである。第2の実施形態では、自車両と他車両との角度とその角度の変化によって、衝突可能性の判断を行う。図16に示される処理は、例えば、イグニッションがONである間、あるいは、自車両が走行している間、繰り返し実行される。図16において、図9と同じ処理を表すステップについては、図9と同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、ステップS101からステップS102の処理が行われる。ここで、ステップS102の後、ステップS201が処理される。
ステップS201において、衝突判断手段3は、自車両と他車両との角度を表す時間Tdの変化が所定値T3以上か否か判定する。第2の実施形態では、衝突判断手段3は、前回算出されたTdをメモリ上に記憶しておく。衝突判断手段3は、メモリ上に記憶されたTd(前回のTd)と直前のステップS102で算出されたTd(現在のTd)とを比較し、その変化がT3以上の場合は、ステップS111に処理を進め、その変化がT3より小さい場合は、ステップS103に処理を進める。ここで、T3は、物理的に有り得ない程度の大きな角度の変化を表す、予め定められた値であり、このT3よりも角度の変化が大きい場合は、マルチパス等の誤検知である可能性が高い。従って、衝突判断手段3は、角度の変化が所定値(T3)以上の場合、衝突しないと判断し、処理をステップS111に進める。一方、TdがT3より小さければ、衝突判断手段3は、処理をステップS103に進める。なお、T3は、前回のTdが算出された時刻と現在のTdが算出された時刻との差に応じて定められてもよい。
ステップS103において、Tdの絶対値がT2以下であれば、衝突判断手段3はステップS202に処理を進める。Tdの絶対値がT2より大きければ、衝突判断手段3はステップS203に処理を進める。すなわち、衝突判断手段3は、自車両と他車両との角度が所定の鈍角または所定の鋭角である場合は、ステップS202に処理を進め、直角を含む所定の範囲である場合は、ステップS203に処理を進める。
ステップS202において、衝突判断手段3は、前回のTdと現在のTdとを比較し、現在のTdの絶対値が前回のTdの絶対値よりも小さくなっているか否かを判定する。現在のTdの絶対値が前回のTdの絶対値よりも小さくなっている場合、自車両と他車両との角度は、前回測定した時よりも直角から離れる方向に変化している。すなわち、自車両と他車両との角度が180度に近い鈍角の場合、角度は180度に近づく方向に変化しており(上述の(イ))、自車両と他車両との角度が0度に近い鋭角の場合、角度は0度に近づく方向に変化している(上述の(二))。従って、Tdの絶対値が小さくなる方向に変化している場合、衝突判断手段3は、衝突しないと判断し、ステップS104に処理を進める。これとは反対に、現在のTdの絶対値が前回のTdの絶対値よりも大きくなっている場合、自車両と他車両との角度は、前回測定した時よりも直角に近づく方向に変化している(上述の(ロ)および(ハ))。従って、この場合、衝突判断手段3は、衝突すると判断し、ステップS105に処理を進める。また、現在のTdが前回のTdと比較して全く変化していない場合、すなわち、角度の変化が0の場合、本実施形態における衝突判断手段3は、衝突しないと判断し、ステップS104に処理を進める。なお、他の実施形態では、自車両と他車両との角度が180度に近い鈍角または0度に近い鋭角の場合において、角度の変化量が所定値と比較して大きいか小さいかによって、衝突可能性の判断を変えてもよい。例えば、他の実施形態では、自車両と他車両との角度が180度に近い鈍角または0度に近い鋭角の場合において、角度の変化が0である場合、衝突すると判断してもよい。
ステップS203において、衝突判断手段3は、Tdの絶対値の変化が所定値T4以下か否かを判定する。ここで、T4は、交差点等で自車両と他車両とが衝突すると想定される最大の(所定時間あたりの)角度の変化量を表す値であり、予め定められた値である。すなわち、TdがT4以下であれば衝突し、T4より大きければ衝突しない。従って、自車両と他車両との角度が直角に近い場合であって、所定時間あたりの角度の変化がT4より大きい場合(上述の(ホ))、衝突判断手段3は、自車両と他車両とは衝突しないと判断し(ステップS203においてNo)、ステップS204に処理を進める。この場合、上述した図15に示されるように、交差点等で自車両が左折または右折する状況と想定される。一方、自車両と他車両とが直角に近い場合であって、所定時間あたりの角度の変化が小さい場合(上述の(へ))、衝突判断手段3は、衝突すると判断し(ステップS203においてYes)、ステップS105に処理を進める。この場合、上述した図15に示されるように、自車両は他車両に向かって走行中である状況と想定される。なお、T4は、自車両と他車両との角度に応じて変化する値であってもよい。
ステップS204において、衝突判断手段3は、交差点等で自車両と他車両とがすれ違う場合等であるため、自車両と他車両とは衝突しないと判断し、処理を終了する。
以上のように、第2の実施形態においては、自車両と他車両との角度および角度の変化を用いて、自車両と他車両との衝突可能性の有無を判断した。これにより、車両周辺の環境および運転状況に応じてより正確に衝突を予測することができる。
なお、第2の実施形態において、自車両と他車両との角度および角度の変化を用いて、自車両と他車両とが衝突する/しないを判断したが、上記角度および角度の変化に加えて、TTC等その他のパラメータを用いて衝突する/しないを判断してもよい。すなわち、例えばTTCと所定の閾値とを比較することにより、衝突する/しないを判断してもよい。このようにTTCを用いて衝突する/しないの判断を行う場合、衝突予測装置1は、上記角度および角度変化に応じて上記所定の閾値の大きさを変更してもよい。すなわち、本装置で衝突可能性が低いと考えられるステップS104、ステップS204やステップS111において、上記閾値を相対的に高い値に設定し、設定された閾値とTTCとを比較することにより、衝突する/しないの判断を行ってもよい。これとは反対に、本装置で衝突可能性が高いと考えられるステップS108やステップS110において、上記閾値を相対的に低い値に設定し、設定された閾値とTTCとを比較することにより、衝突する/しないの判断を行ってもよい。
また、本実施形態では、衝突予測装置1は、衝突結果として2種類の結果(衝突する/しない)を算出するものであったが、他の実施形態においては、衝突予測装置1は、衝突する可能性(の度合)を示す数値を衝突結果として算出するものであってもよい。例えば、衝突予測装置1は、上記角度と角度変化の組み合わせに応じた数値を0〜100(%)で算出するものであってもよい。また、これら角度と角度変化の組み合わせに応じて、衝突判断に用いるパラメータ(上記TTC等)と比較するための閾値が算出されてもよい。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る衝突予測装置は、図1に示す第1の実施形態に係る衝突予測装置1と同様の構成であるため、説明は省略する。第3の実施形態では、自車両と他車両との角度を求める方法が、上述した第1の実施形態および第2の実施形態における方法と異なる。第3の実施形態では、他車両は、複数の光ビームスポットが略直線上に並ぶように、複数の光ビームスポットを照射する。そして自車両の角度判定部12は、検出部11で検出した光ビームスポットの数から角度を判定する。以下、詳細について説明する。
図17および図18を参照して、第3の実施形態における自車両と他車両との角度を求める方法について説明する。図17は、自車両41が検出した他車両42の光ビームスポットの数から自車両41と他車両42との角度を測定する方法を示す図である。他車両42は、図の矢印の方向に向かって光ビームスポットを照射しながら走行中である。ここでは、図17に示されるように、他車両42の照射手段4が照射する複数の光ビームスポットは、複数の光ビームスポットを結んだ線が他車両42の進行方向に対して略直角になるように照射される。
ここで、他車両42が照射する光ビームスポットがどのように照射されるかを説明する。他車両42は照射手段4を備える。照射手段4のスキャンアクチュエータ19およびビーム発生器16は、複数の光ビームスポットを結んだ線が他車両42の進行方向に対して略直角になるように、制御される。具体的には、第1の実施形態と同様、ポリゴンミラー21を回転させながらビーム発生器16で光パルスを発生させる。ここで、第1の実施形態においては、ポリゴンミラー21のA領域とB領域にそれぞれ3つの光パルスを反射させて、右スキャンと左スキャンの光ビームスポットが交互に照射されるように、ポリゴンミラー21およびビーム発生器16は制御された。第3の実施形態においては、ビーム発生器16は、A領域またはB領域のいずれか1つの側面に複数の(ここでは5つの)光パルスを所定の時間間隔で照射する。例えば、図2に示されるポリゴンミラー21が1回転する間、ポリゴンミラー21の側面21aに光ビームスポットを5つ照射してもよい。ここで、ポリゴンミラー21が1回転するのに要する時間をα(sec)、光パルスの間隔をβ(sec)とする。このようにポリゴンミラー21およびビーム発生器が制御されることにより、図17に示されるように、略直線上に複数の光ビームスポットがほぼ等間隔に並ぶように照射される。なお、本実施形態では、複数の光ビームスポットを結んだ直線が、光ビームスポットを照射する車両の進行方向に対して略直角になるように複数の光ビームスポットが照射されたが、複数の光ビームスポットを結んだ直線と車両の進行方向との角度が所定の角度になるように、複数の光ビームスポットが照射されてもよい。例えば、光ビームスポットを照射する車両の進行方向と並行になるように複数の光ビームスポットが照射されてもよい。また、複数の光ビームスポットは、必ずしも等間隔に並ぶように照射されなくてもよい。さらに、ポリゴンミラー21の複数の側面にそれぞれ複数の光ビームスポットを照射してもよい。
自車両41は、検出領域に他車両42が上述の方法により照射した光ビームスポットを検出する。図17に示されるように、自車両41の検出領域は、自車両41の進行方向の長さよりも自車両41の進行方向と垂直の方向の長さの方が短くなるように設定される。自車両41が、自車両41と他車両42との角度が直角である位置P1にある場合と、自車両41と他車両42との角度が直角でない位置P2にある場合とでは、検出領域が異なる。すなわち、図17に示されるように、自車両41が位置P1にある場合の検出領域は検出領域Xであり、自車両41が位置P2にある場合の検出領域は検出領域Yとなる。自車両41が位置P1にある場合、自車両41の検出領域Xの長軸方向は、図17に示されるように、他車両42が照射する光ビームスポットを結んだ直線と並行となる。一方、自車両41が位置P2にある場合、自車両41の検出領域Yの長軸方向は、他車両42が照射する光ビームスポットを結んだ直線とある角度を有して交わる。従って、自車両41と他車両42との角度の違いにより、検出領域で検出される光ビームスポットの数が異なる。ここでは、図17に示されるように、検出領域Xに存在する光ビームスポットの数は5つである。一方、検出領域Yに存在する光ビームスポットの数は4つである。この場合の自車両41が検出する光ビームスポットを示したものが、図18である。
図18は、自車両41が位置P1およびP2にある場合に検出する光ビームスポットの数を表した図である。図18(a)は、図17において、自車両41が位置P1にある場合に検出する光ビームスポットを示す。図18(b)は、図17において、自車両41が位置P2にある場合に検出する光ビームスポットを示す。図18で示されるように、自車両41が検出する光ビームスポットの数は、自車両41と他車両42との角度が直角である位置P1にある場合は5つ、自車両41と他車両42との角度が直角でない位置P2にある場合は4つとなる。なお、自車両41の検出領域には、不適切な光ビームスポット(マルチパスによる光ビームスポットや、他車両42とは異なる第3の車両から照射された光ビームスポット等)が含まれ、不適切な光ビームスポットが検出される可能性がある。検出した複数の光ビームスポットの中にこのような不適切な光ビームスポットが含まれるか否かは、検出した複数の光ビームスポットの時間間隔βおよび時間αにより判別することが可能である。すなわち、例えば、時間α内に5つの光ビームスポットが検出され、そのうちの4つの光ビームスポットの時間間隔がβであり、1つの光ビームスポットが他の光ビームスポットと時間βと異なる時間間隔であった場合、その1つの光ビームスポットはマルチパスによるものであると判別することができる。また、時間α内に、時間間隔βの複数の光ビームスポットを1組として、2組の光ビームスポットが検出された場合は、それらは異なる車両から照射された光ビームスポットであると判別することができる。
以上示したように、他車両42が光ビームスポットを直線上に照射し、自車両41の検出領域を自車両41の進行方向に長く設定した場合、自車両41と他車両42との角度の違いにより、自車両41で検出する光ビームスポットの数が異なる。具体的には、自車両41は、角度が直角に近い場合の方が、角度が180度に近い鈍角や0度に近い鋭角の場合よりも多く光ビームスポットを検出する。従って、検出領域で検出した光ビームスポットの数を数えることによって、自車両41と他車両42との角度が、直角に近いか否かを判断することができる。
このような方法で自車両41と他車両42との角度を求め、第1の実施形態または第2の実施形態で示された方法により、衝突する/しないの判断を行うことができる。
(角度を算出するための他の方法)
なお、別の実施形態においては、上述した角度の測定方法の他に、レーダーまたはカメラ画像によって検出された他車両の相対位置から自車両と他車両との角度を測定してもよい。レーダーを用いて自車両と他車両との相対位置および角度を測定する装置については、当業者によく知られており、例えば、特開2004−295620号公報に開示されている。これによると、指向性の高い送信アンテナと受信アンテナを回動させ、その回動角θと、送信アンテナから送信した電波が、他車両に反射し受信アンテナで受信されることにより、自車両と他車両との相対距離dを求めている。さらにカメラにより取得した画像を用いて他車両の幅が考慮されている。これにより、自車両と他車両との位置と角度を測定している。このようにして車両に搭載されたレーダーにより測定した自車両と他車両との角度を用いて、上述した本発明に係る衝突予測装置により衝突予測を行ってもよい。
また、角度の測定方法として、GPSによって取得した他車両位置を車車間通信によって取得することで自車両と他車両との角度を測定してもよい。GPSによって取得した他車両の位置を車車間通信によって取得する装置については、当業者によく知られており、例えば、特開2000−276696号公報に開示されている。これによると、自車両は、他車両が他車両のGPSにより取得した他車両の位置情報を車車間通信により取得し、自車両が自車両のGPSにより取得した自車両の位置情報と他車両の位置情報とから、自車両と他車両との相対位置を算出することにより、車両同士の衝突を回避する装置が提案されている。このような当業者によく知られたGPSと車車間通信を用いた方法により自車両と他車両との角度を算出し、算出した角度を用いて上述した本発明に係る衝突予測装置により衝突予測を行ってもよい。