特許文献1に記載の技術は、衝突が避けられない場合に、衝突時の衝撃を低減するものであり、側面衝突が減速等によって回避できるか否かを予測するものではない。自車両が減速や操舵制御をすることにより自車両への側面衝突が回避できる場合、自車両はできるだけ減速等を行うべきである。一方、減速等によっても側面衝突が回避できない場合には、減速等を行うことによってかえって乗員への衝撃を増大させる場合もある。すなわち、ブレーキ制御や操舵制御等の回避操作が行われたことによって、自車両と他車両との衝突位置における位置関係が変化し、衝突した場合の被害が大きくなることがある。このような場合、回避のための支援よりは、衝突時の被害を軽減するための乗員保護支援が適切である。以上より、回避操作を考慮せずに衝突時の位置関係を予測するのみでは、安全のための支援を適切に行うことはできない場合がある。
それ故、本発明の目的は、運転者に対して適切な支援を行うことが可能な衝突予測装置を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、自車両の進路上に向かって移動する他車両と自車両との衝突を予測する衝突予測装置である。衝突予測装置は、情報取得手段と、衝突予測手段と、支援手段とを備える。情報取得手段は、他車両の走行情報を取得する。衝突予測手段は、他車両の走行情報と自車両の走行情報とに基づいて、自車両と他車両との衝突時における当該自車両と当該他車両との位置関係を予測する。支援手段は衝突を回避するための回避支援を含む支援動作を実行可能であり、前記衝突予測手段による予測結果に基づいて当該支援動作を行う。また、衝突予測手段は、上記回避支援による自車両の減速または操舵方向の変更の少なくともいずれか1つにより自車両の走行を変化させた場合における上記位置関係を、当該回避支援の実行前に予測する。
この発明によれば、回避支援が行われた場合の自車両と他車両との衝突時の位置関係を予測することができる。すなわち、自車両が減速した場合や操舵制御した場合を想定し、それによって自車両の走行を変化させた場合において、自車両と他車両とがどのような位置関係で衝突するかを予測することができる。
第2の発明では、第1の発明において、支援手段は、衝突予測手段によって予測された衝突時の位置関係が、自車両の側面に他車両が衝突しない位置関係である場合、回避支援を行い、当該衝突時の位置関係が、自車両の側面に他車両が衝突する位置関係である場合、当該回避支援を禁止してもよい。
この発明によれば、回避支援を行うことにより、自車両への側面衝突を回避することができる。また、回避支援を行うことにより、他車両への側面衝突を回避または、他車両への衝突時の衝撃を低減することができる。また、回避支援を禁止することにより、自車両への側面衝突を回避することができる。
第3の発明では、第1の発明において、支援手段は、支援動作として乗員を保護するための乗員保護支援をさらに実行可能であり、上記位置関係に応じて回避支援または乗員保護支援の少なくともいずれか1つによる支援動作を実行してもよい。
この発明によれば、回避支援を行った場合における自車両と他車両との位置関係の予測結果に応じて、様々な支援を行うことができる。すなわち、回避支援を行うことにより、衝突の回避または衝撃の低減を行うことができる。また、乗員保護支援を行うことにより、衝突した場合の衝撃の低減を行うことができる。さらにこれらを組み合わせることによって、より適切な支援を行うことができる。
第4の発明では、第3の発明において、支援手段は、衝突予測手段によって予測された位置関係が自車両の側面に他車両が衝突する位置関係である場合、乗員保護支援を行ってもよい。
この発明によれば、乗員保護支援を行うことにより、自車両への側面衝突による自車両の乗員への衝撃を低減することができる。
第5の発明では、第3の発明において、支援手段は、衝突予測手段によって予測された位置関係が、自車両の側面の所定位置に他車両が衝突する位置関係である場合は乗員保護支援および回避支援を行ってもよい。
この発明によれば、自車両の側面の一部に他車両が衝突する場合、乗員保護支援と共に回避支援を行うことができる。これにより、より適切な支援を行うことができる。
第6の発明では、第1から第5の発明において、情報取得手段は、他車両の走行情報として、他車両が衝突予測位置に到達するまでの到達予測時間を取得してもよい。また、衝突予測手段は、到達時間算出手段を含んでいてもよい。到達時間算出手段は、自車両の到達予測時間を算出する。そして、衝突予測手段は、他車両の到達予測時間と自車両の到達予測時間とによって、自車両が他車両の側面に衝突する位置関係か、他車両が自車両の側面に衝突する位置関係かを予測する。
この発明によれば、自車両および他車両の衝突予測位置への到達予測時間の差により、自車両が他車両の側面に衝突するか、他車両が自車両の側面に衝突するかを予測することができる。
第7の発明では、第6の発明において、上記到達時間算出手段は、衝突予測位置までの距離と速度とから自車両の到達予測時間を算出してもよい。
この発明によれば、自車両の到達予測時間を算出することができる。
第8の発明では、第6または第7の発明において、到達時間算出手段は、自車両が減速した場合の到達予測時間を算出してもよい。
この発明によれば、自車両の減速を考慮して自車両の到達予測時間を算出し、それによって、自車両と他車両との衝突時の位置関係を予測することができる。
第9の発明では、第1から第5の発明において、情報取得手段は、少なくとも他車両から衝突予測位置までの距離と他車両の速度とを他車両の走行情報として取得することによって他車両が衝突予測位置に到達するまでの到達予測時間を算出してもよい。また、衝突予測手段は、他車両の到達予測時間と自車両の到達予測時間とによって、自車両が他車両の側面に衝突する位置関係か、他車両が自車両の側面に衝突する位置関係かを予測してもよい。
この発明によれば、他車両の到達予測時間を算出することができ、それによって、自車両と他車両との衝突時の位置関係を予測することができる。
第10の発明では、第9の発明において、衝突予測手段は、他車両の減速をさらに考慮して他車両の到達予測時間を求めてもよい。
この発明によれば、他車両が減速した場合の衝突予測位置に到達するまでの時間を求めることができる。
第11の発明では、第1から第10の発明において、支援手段は、回避支援として、運転者への通知、ブレーキアシスト制御、介入ブレーキ制御、または操舵制御の少なくともいずれか1つを行ってもよい。
この発明によれば、運転者に対して、側面衝突を回避するための支援を提供することができる。
第12の発明では、第3から第5の発明において、支援手段は、乗員保護支援として、車両側面のエアバッグ装置のセーフィング解除または乗員シート位置の変更の少なくともいずれか1つを行ってもよい。
この発明によれば、他車両が自車両の側面に衝突した場合に、乗員を保護することができる。
第13の発明では、第1から第12の発明において、他車両は、他車両の走行情報に対応するように予め決められた所定のパターンの光ビームを他車両進行方向の路面上に照射してもよい。また、情報取得手段は、検出部と、特定部とを含んでもよい。検出部は、自車両進行方向の路面上の所定領域を検出領域として、他車両が照射した所定のパターンの光ビームを検出する。特定部は、検出部で検出した所定のパターンの光ビームから他車両の走行情報を特定する。
この発明によれば、他車両が照射した所定のパターンの光ビームを自車両が検出することによって、自車両は、他車両の走行情報を取得することができる。
第14の発明では、第13の発明において、照射手段をさらに備えてもよい。照射手段は、自車両の走行情報に対応するように予め決められた所定のパターンの光ビームを自車両進行方向の路面上に照射する。
この発明によれば、自車両は、情報取得手段を備える他車両に対して、自車両の存在を知らしめ、自車両の走行情報を取得させることができる。
第15の発明では、第13または第14の発明において、所定のパターンの光ビームは、所定の時間間隔で照射された複数の光ビームスポットを含んでもよい。
この発明によれば、自車両は、他車両が所定の時間間隔で照射した複数の光ビームスポットを検出することにより、他車両の走行情報を取得することができる。
第16の発明では、第15の発明において、他車両の走行情報は、他車両が照射する光ビームスポットの位置に到達するまでの時間を示してもよい。
この発明によれば、自車両は、他車両が所定の時間間隔で照射した複数の光ビームスポットを検出することにより、他車両がその検出した光ビームスポットの位置に到達するまでの時間を求めることができる。
第17の発明では、第1から第12の発明において、レーダーまたはカメラ画像によって他車両の走行情報を取得してもよい。
この発明によれば、よく知られた簡単な方法で、他車両の走行情報を取得することができる。
第18の発明では、第1から第12の発明において、他車両が他車両のGPSによって取得した他車両位置を車車間通信によって取得することによって他車両の走行情報を取得してもよい。
この発明によれば、よく知られた方法で、他車両の走行情報を取得することができる。
この発明によれば、自車両と他車両との走行情報から、回避支援が行われた場合の自車両と他車両との衝突時の位置関係を予測することができる。すなわち、自車両が減速した場合や操舵制御した場合を想定し、それによって自車両の走行を変化させた場合において、自車両と他車両とがどのような位置関係で衝突するかを予測することができる。
以下、図1から図14を参照して、本発明の実施形態に係る衝突予測装置について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る衝突予測装置の構成を示すブロック図である。衝突予測装置1は、自車両の進路上に向かって移動する他車両と自車両との衝突を予測する。衝突予測装置1は、情報取得手段2と、衝突予測手段3と、照射手段4と、支援手段5とを備える。情報取得手段2は、他車両の走行情報を取得する。衝突予測手段3は、他車両の走行情報と自車両の走行情報とに基づいて、自車両と他車両との衝突時の位置関係を予測する。照射手段4は、自車両の走行情報に対応するように予め決められた所定のパターンの光ビームを自車両進行方向の路面上に照射する。支援手段5は、回避支援および乗員保護支援を含む支援動作を実行可能であり、衝突予測手段3による予測結果に基づいて当該支援動作を行う。なお、他車両の走行情報を取得する方法は、後述するように様々な方法がある。ここでは、照射手段4を有する他車両が照射手段4を用いて照射した光ビームスポットを、自車両が情報取得手段2によって検出することにより、自車両は、他車両の走行情報を取得する。以下、各部の詳細について説明する。
(衝突予測装置1の各部の説明)
情報取得手段2は、検出部11と、特定部12とを含む。検出部11は、自車両進行方向の路面上の所定領域を検出領域として、他車両が照射した所定のパターンの光ビームを検出する。特定部12は、検出部11で検出した所定のパターンの光ビームから他車両の走行情報を特定する。本実施形態では、上記所定のパターンの光ビームは、所定の時間間隔で照射された複数の光ビームスポットとする。また、本実施形態では、特定部12は、上記複数の光ビームスポットの時間間隔から、他車両の走行情報として他車両が光ビームスポットの位置に到達するまでの時間を特定する。情報取得手段2の詳細については、後述する。
衝突予測手段3は、情報取得手段2によって取得された他車両の走行情報に基づいて、自車両と他車両との衝突時の位置関係を予測し、回避支援による自車両の減速または操舵方向の変更の少なくともいずれか1つにより自車両の走行を変化させた場合における自車両と他車両との衝突時の位置関係(自車両が他車両の側面に衝突するか、それとも、他車両が自車両の側面に衝突するか)を予測する。また、衝突予測手段3は、衝突予測装置1の動作を制御する。衝突予測手段3は、情報取得手段2に対して、他車両の走行情報を取得するための命令を送信する。また、衝突予測手段3は、後述する照射手段4の動作の制御をも行う。さらに、衝突予測手段3は、衝突予測の結果に応じて、支援手段に対して所定の支援を行うための命令を送信する。ここで、所定の支援とは、自車両と他車両との側面衝突を回避するための回避支援、および、自車両と他車両とが衝突した場合に乗員を保護する乗員保護支援である。衝突予測手段3の詳細については、後述する。
照射手段4は、自車両の走行情報に対応するように予め決められた所定のパターンの光ビームを自車両進行方向の路面上に照射する。本実施形態では、照射手段4は、所定のパターンの光ビームとして、所定の時間間隔で照射された複数の光ビームスポットを照射する。具体的には、照射手段4は、自車両の走行情報として、自車両が照射する光ビームスポットの位置に自車両が到達するまでの時間を上記所定の時間間隔に対応させて、複数の光ビームスポットを照射する。照射手段4は、図1に示されるように、ビーム発生器16と、ビーム整形レンズ17と、偏光整形器18と、スキャンアクチュエータ19とを有する。ビーム発生器16は、例えば、半導体レーザ装置で構成され、所定の波長の光を発生させる。本実施形態では、ビーム発生器16は、赤外域の波長の光を発生させる。ビーム発生器16は、光パルスを発生させる。光パルスを発生するタイミングは衝突予測手段3により制御される。ビーム整形レンズ17は、ビーム発生器16で発生した光ビームを整形する。偏光整形器18は、ビーム整形レンズ17から出力された光ビームの入射面に垂直な成分の一部を反射させることにより光ビームを偏光させる。スキャンアクチュエータ19は、偏光整形器18で偏光された光ビームを所望の方向に出射させる。本実施形態では、スキャンアクチュエータ19とビーム発生器16が制御されることにより、照射手段4は、自車両進行方向と垂直の方向に並んだ2つの光ビームスポットを1組として、複数の組の光ビームスポットを照射する。各組の光ビームスポットは、自車両進行方向の路面上の異なる位置に照射される。なお、ビーム発生器16が発生させる光は赤外域の波長の光に限られず、どのような波長の光であってもよい。
次に図2Aから図6を参照して、照射手段4が照射する光ビームスポットについて説明する。図2Aおよび図2Bは、スキャンアクチュエータ19の詳細な構成を示す図である。図2Aは、スキャンアクチュエータ19を側方から見た図であり、図2Bはスキャンアクチュエータ19を上方から見た図である。なお、図2Aおよび図2B(および図3)では、図の左側が車両の前方に対応する。図2Aおよび図2Bに示されるように、スキャンアクチュエータ19は、ポリゴンミラー21と反射鏡22で構成される。ポリゴンミラー21は、上面と下面および6つの側面21aから側面21fにより構成された柱状の形状である。図2Aに示されるように、ポリゴンミラー21の側面は、底面と垂直な方向よりもある角度θ1を有して底面と接している。各側面は、その角度θ1が異なるように構成される。例えば、側面21aと側面21bとでは、上記角度θ1が異なる。また、ポリゴンミラー21は、回転軸21gを中心に時計回りに回転可能である。なお、ポリゴンミラー21は、上記構成に限らず、例えば8つの側面を有していてもよい。
図3は、ポリゴンミラー21の回転により車両前方に照射される光ビームの様子を示した図である。図3(a)に示されるように、ビーム発生器16から出射した光ビームは、反射鏡22で反射し、さらにポリゴンミラー21の1つの側面(図では側面21a)で反射した後、車両の前方に出射される。このとき、光ビームが出射される方向は、車両前方の水平方向とある角度θ2を有し、光ビームは車両前方の路面上に照射される。ここで、ポリゴンミラー21の側面の角度θ1が側面21aから側面21fでそれぞれ異なるため、各側面に入射する光の入射角が異なる。従って、光ビームの出射方向の角度θ2はポリゴンミラー21の各側面によって異なる。このため、各側面で反射した光ビームは車両の進行方向の異なる位置に照射され、角度θ2が小さい場合は、より遠方に光ビームは照射される。例えば、ポリゴンミラー21の側面21aの角度θ1を側面21bの角度よりも小さくすることにより、側面21aよりも側面21bで反射した方が角度θ2が小さくなり、従って、側面21aより側面21bの方が、遠方に光ビームが照射される。ポリゴンミラー21の各側面の角度θ1は、各側面で反射した光ビームスポットが車両前方の路面上の異なる位置に照射されるように、調整される。なお、この角度θ1は、各側面で反射した光ビームが、車両前方の予め定められた距離の位置に照射されるように設定されてもよいし、上記距離が可変になるように角度θ1が制御されてもよい。
図3(b)は、ポリゴンミラー21を上方から見た図であり、光ビームをポリゴンミラー21の側面21aに照射した場合の光ビームが照射される方向を示した図である。上述したように、ポリゴンミラー21は、回転軸21gを中心に回転可能である。図3(b)に示されるように、回転しているポリゴンミラー21の側面21aで反射した光ビームは、車両の進行方向に対して、ある角度θ3を有して車両前方に出射される。この角度θ3は、ポリゴンミラー21の回転角によって異なる。従って、ポリゴンミラー21を回転させながら1つの側面に、例えば2つの光パルスを照射した場合、車両前方の路面上には車両進行方向と略垂直な方向に2つ並んだ光ビームスポット(1組の光ビームスポット)が照射される。この時に路面上に描かれる光ビームスポットを示した図が図4である。
図4は、ポリゴンミラー21を回転させながら2つの側面にそれぞれ2つの光パルスを照射した場合に路面上に描かれる光ビームスポットを示した図である。光ビームスポットA1およびA2(以下、組Aの光ビームスポットと呼ぶ。)は、ポリゴンミラー21の側面21aに光パルスを照射した場合に自車両41の進行方向の路面上に照射される光ビームスポットである。光ビームスポットB1およびB2(以下、組Bの光ビームスポットと呼ぶ。)は、ポリゴンミラー21の側面21bに光パルスを照射した場合に自車両41の進行方向の路面上に照射される光ビームスポットである。図4に示されるように、車両前方の所定距離の位置に、組Aの光ビームスポットが照射され、それよりも遠方に組Bの光ビームスポットが照射される。さらに、その他の側面21cから21fに光パルスを照射した場合、組Bの光ビームスポットよりもさらに遠方に光ビームスポットの組が照射される。ここで、ポリゴンミラー21の1つの側面に照射した2つの光ビームスポットの時間間隔を、β(sec)とする。時間間隔βは、照射する各側面によって異なる値に設定される。また、ポリゴンミラー21が1回転する時間をα(sec)とする。また、各側面21c、21d、21e、21fに2つの光パルスを照射した場合に路面上に照射される2つの光ビームスポットの組をそれぞれ組C、組D、組E、組Fの光ビームスポットと呼ぶ。
照射手段4は、照射する光ビームスポットの時間間隔と自車両がその照射位置に到達するまでの時間を対応させて、光ビームスポットを照射する。図5は、自車両が、照射する光ビームスポットの組の位置に自車両が到達するまでの時間を光ビームスポットの時間間隔に対応させて、光ビームスポットを照射することを示す図である。図5に示されるように、自車両41は、自車両41の進行方向の所定距離の位置に複数組の光ビームスポットを照射しながら矢印の方向に走行している。他車両42は、検出部11を有し、自車両41が検出領域R内に照射した光ビームスポットを検出する。Td1は、自車両41が、組Aの光ビームスポットが照射された位置に到達するまでの時間(sec)を示す。同様に、Td2からTd6は、それぞれ、組Bから組Fの光ビームスポットが照射された位置に到達するまでの時間を示す。ここで、各組の光ビームスポットが照射された位置に自車両41が到達するまでの時間Tdを、各組の光ビームスポットの時間間隔β(sec)に対応させる。すなわち、光ビームスポットの時間間隔βと時間Tdとの対応関係が予め定められており、自車両は、当該対応関係に従って光ビームスポットを照射する。光ビームスポットを検出した他車両は、上記対応関係を予め記憶しており、時間間隔βを測定することで、時間Tdを求めることができる。例えば、組Aの光ビームスポットおよび組Bの光ビームスポットの時間間隔をそれぞれβ1、β2とした場合、時間Td1を時間間隔β1に対応させ、時間Td2を時間間隔β2に対応させる。同様に、時間Td3からTd6を時間間隔β3からβ6にそれぞれ対応させる。このように自車両41が各組の光ビームスポットの照射位置に到達するまでの時間Tdを、各組の光ビームスポットの時間間隔βに対応させた場合、検出領域Rに照射された2つの光ビームスポットの時間間隔βを他車両42が測定することによって、他車両42は自車両41が検出領域Rに到達するまでの時間を知ることができる。ここで、自車両41が各組の光ビームスポットの照射位置に到達するまでの時間Tdは、自車両41の走行情報、すなわち、自車両41の速度、自車両41から光ビームスポットが照射される位置までの距離および加速度を考慮して決定される。
なお、自車両41が各組の光ビームスポットの照射位置に到達するまでの時間Tdが、Td1からTd6の順に大きくなる場合、各組の光ビームスポットの時間間隔βは、β1からβ6の順に小さく設定されることが好ましい。その理由は、各組の2つの光ビームスポットの距離間隔は、自車両41から光ビームスポットが照射される位置までの距離(Lとする)とポリゴンミラー21の回転角θ3とで決まり、距離Lが長ければ2つの光ビームスポットの距離間隔が長くなってしまうからである。また、ポリゴンミラー21は回転しているため、2つの光パルスの時間間隔βが長い場合、回転角θ3は大きくなる。各組の2つの光ビームスポットの距離間隔が長ければ、他車両42の検出領域Rの範囲外に2つの光ビームスポットが照射されてしまう。以上のような理由から、光ビームスポットの照射位置が自車両41から遠方ほど、光ビームスポットの時間間隔βを小さくすることが好ましい。
図6は、側面21aから21cに光パルスを照射した場合の時間と光ビームの関係を模式的に示した図である。横軸は時間tを表し、縦軸は光ビームの強さを表す。A1およびA2は、組Aの光ビームスポットを表す。同様に、B1およびB2、C1およびC2はそれぞれ組B、組Cの光ビームスポットを表す。図6に示されるように、照射手段4は、ポリゴンミラー21の各側面(図6では側面21aから21c)に、2つの光パルスを異なる時間間隔(図6ではβ1からβ3)で照射する。このように、照射手段4は、ポリゴンミラー21が1回転する間(時間α)、各側面にそれぞれ2つの光ビームスポットを異なる時間間隔で照射する。
なお、本実施形態では、光ビームのパターンとして、路面に2つの光ビームスポットを形成する(2つの光パルスを照射する)こととしたが、光ビームスポットの数は2つ以上であってもよい。また、他の実施形態においては、光ビームのパターンは、光ビームスポットに限らず、路面に線状に形成される光ビーム(継続して照射された光ビーム)を含んでいてもよい。つまり、照射手段4は、照射時間が異なる複数の光ビームを照射するようにしてもよい。この場合、線状に形成される光ビームと光ビームスポットとを含むパターンに対して、上記時間Tdを対応させることができる。例えば、3つの光ビームスポットからなるパターンを時間Td1に対応させ、2つの光ビームスポットと、1つの線状に形成される光ビームとからなるパターンを時間Td2に対応させてもよい。また、光ビームの照射時間(路面に線状に形成される光ビームの長さ)に対して上記時間Tdを対応させることも可能である。
また、本実施形態では、ポリゴンミラー21により、上記光ビームスポットを照射することとしたが、このようなパターンの光ビームスポットを照射するものであればどのようなものでもよい。例えば、ガルバノミラーを用いて、このようなパターンの光ビームスポットを照射してもよい。
図1に戻り、支援手段5は、回避支援を行う回避支援部51と、乗員保護支援を行う乗員保護支援部52とを含む。衝突予測手段3が自車両と他車両との衝突が有ると予測し、回避支援が行われた場合の上記位置関係が、自車両の側面に他車両が衝突する位置関係でないと予測した場合、支援手段5は、回避支援を行う。支援手段5は、回避支援部51により、運転者への通知、ブレーキアシスト制御、介入ブレーキ制御、または操舵制御の少なくともいずれか1つにより、回避支援を行う。本実施形態では、回避支援部51は、運転者への通知、例えば、運転者にブレーキを踏むことを促す通知を音声および/または映像により行う。一方、衝突予測手段3が自車両と他車両との衝突が有ると予測し、回避支援が行われた場合の上記位置関係が、自車両の側面に他車両が衝突する位置関係であると予測した場合、支援手段5は、乗員保護支援を行う。支援手段5は、乗員保護支援部52により、車両側面のエアバッグ装置のセーフィング解除または乗員シート位置変更手段よるシート位置の変更の少なくともいずれか1つにより乗員保護支援を行う。本実施形態では、乗員保護支援部52は、車両側面のエアバッグ装置のセーフィング解除を行う。
次に、情報取得手段2について詳細に説明する。情報取得手段2は、図1に示されるように、検出部11と、特定部12とを含む。検出部11は、自車両進行方向の路面上の所定領域を検出領域として、他車両が照射した光ビームスポットを検出する。特定部12は、検出部11で検出した光ビームスポットから他車両の走行情報を特定する。以下、各部について詳細に説明する。
検出部11は、車両前方に搭載され、自車両進行方向の路面上の所定領域を検出領域として、他車両が照射した光ビームスポットを検出する。検出部11で検出する光ビームスポットは、上述した照射手段4を有する他車両から照射される。検出領域は、車両前方の所定距離離れた領域であり、車両の速度や環境に応じて距離や領域が変化するように制御されてもよい。すなわち、車両が高速で走行中や車両が下り坂を走行中などは、検出領域はより遠方かつ広範囲になるように設定されてもよい。なお、検出部11は、車両前方に搭載される必要はなく、車両の後方に搭載されてもよいし、車両の前方および後方のどちらにも搭載されてもよい。すなわち、車両の進行方向に存在する光ビームスポットを検出すればよく、例えば、前方進行中は前方の検出部11が作動し、後方進行中は、後方の検出部11が作動するように制御されてもよい。
図1に示されるように、検出部11は、レンズ13と、フィルタ14と、受光素子15とを有する。レンズ13は、車両前方の検出領域から入射される光を集光する。フィルタ14は、集光された光のうち、所定の波長の光を透過する。ここで所定の波長の光とは、他車両が照射手段4から照射した光である。受光素子15は、フィルタ14が透過した光を受光する。受光素子15は、空間分解能を持たず、受光した光を電気信号に変換する。変換された電気信号は特定部12へ出力される。以上のようにして、検出領域に照射された光ビームスポットは、レンズ13、フィルタ14、受光素子15を介して検出される。なお、受光素子15は、空間分解能を持つものでもよい。
次に、特定部12について説明する。特定部12は、検出部11で検出された複数の光ビームスポットの時間間隔から、他車両が光ビームスポットが照射された位置に到達するまでの時間を特定する。特定部12は、検出部11で検出された光ビームスポットの時刻をメモリ上に記憶しておく。特定部12は、メモリ上に記憶された各光ビームスポットの時刻から、2つの光ビームスポットの時間間隔βを算出する。次に、算出された2つの光ビームスポットの時間間隔βから、他車両が光ビームスポットが照射された位置に到達するまでの時間Tdを特定する。本実施形態では、この時間Tdは、予め特定部12のメモリ上に記憶された対応表によって、時間間隔βと対応付けられる。例えば、時間Td1は時間間隔β1に、Td2はβ2にそれぞれ予め対応付けされている。以上のようにして、検出部11によって検出された2つの光ビームスポットの時間間隔から、他車両が光ビームスポットが照射された位置に到達するまでの時間を取得することができる。なお、検出された2つの光ビームスポットの時間間隔βは、必ずしも予め対応付けされている値(例えばβ1やβ2)と一致する必要はなく、誤差等を考慮して予め対応付けされた値の所定範囲であればよい。また、時間Tdは予め定められた時間間隔βとの対応表により特定される必要はなく、何らかの算出式を用いて、その算出式と検出された時間間隔βにより、算出されてもよい。この場合、他車両は、時間Tdと時間間隔βが上記算出式を満たすように、光ビームスポットを照射する。
なお、自車両の検出領域には、他車両が照射した光ビームスポットが様々な物体に反射して検出領域に到達したマルチパスによる光ビームスポットや他車両と他車両とは異なる第3の車両とから照射された光ビームスポット等(これらを不適切な光ビームスポットと呼ぶ)が含まれる可能性がある。自車両の検出部11は、これら不適切な光ビームスポットを検出する可能性がある。特定部12は、検出した複数の光ビームスポットの中にこのような不適切な光ビームスポットが含まれるか否かを、検出した複数の光ビームスポットの時間間隔βおよびポリゴンミラー21が1回転する時間αにより判別することが可能である。すなわち、検出された2つの光ビームスポットの時間間隔βが、上記特定部12のメモリ上に対応付けされた時間間隔と異なっている場合(誤差等を考慮した所定の範囲を超えている場合)、検出された2つの光ビームスポットは上記不適切な光ビームスポットであると判別することができる。また、光ビームスポットの組は、ポリゴンミラー21が1回転する時間α周期で照射されるため、時間α間隔でない光ビームスポットの組を複数検出した場合、特定部12は、それらは上記不適切な光ビームスポットであると判別することができる。例えば、2つの組の光ビームスポットを検出し、それらの組の時間間隔が時間αでなければ、これらは異なる車両から照射された光ビームスポットであると判別することができる。
次に、図7から図13を参照して、衝突予測手段3の詳細について説明する。図7は、自車両が他車両を検出した時点での他車両の位置によって、衝突時の位置関係が変わることを示す図である。自車両41は、図7に示されるように、上述した検出部11を含み、自車両進行方向の検出領域Rに他車両42が照射した光ビームスポットを検出しながら矢印で示される方向に走行中である。他車両42は、上述した照射手段4を備える。他車両42は、照射する光ビームスポットの時間間隔βと他車両がその照射位置に到達するまでの時間Tdを対応させて、光ビームスポットを照射する。他車両42は、自車両41の進行方向と直角の方向に走行中であり、自車両41の検出領域Rに向かって走行中である。
他車両42が位置P1よりも検出領域Rから遠方にある場合(図の位置P1よりも左側にある場合)、他車両42と自車両41がそれぞれ速度を維持して走行したときでも、自車両41と他車両42とは衝突せず、自車両41が先に検出領域Rを通過する。このような領域をC領域と呼ぶことにする。この領域は、自車両および他車両の速度、それぞれの車両から衝突予測位置までの距離等によって変化する。図8は、他車両42がC領域にある場合に、自車両41と他車両42がそれぞれ速度を維持して走行したときに自車両41と他車両42がすれ違う様子を示した図である。自車両41が他車両42を検出した時点で他車両42がC領域にある場合、図8に示されるように、他車両42が検出領域Rに到達する前に、自車両41は検出領域Rを通過する。ここで、自車両41が他車両42を検出した時点から、自車両41が検出領域Rを完全に通過するまでの時間をT0(sec)とする。T0は、自車両41から検出領域Rまでの距離と自車両41の速度から求められ、衝突判断の閾値として設定される。閾値T0は、自車両41の大きさも考慮して求められてもよい。他車両42が検出領域Rに到達するまでの時間Tdが閾値T0以上の場合、自車両41は、他車両42が検出領域Rに到達するまでに検出領域Rを通過する。すなわち、図7に示されるように、自車両41が他車両42を検出した時点で他車両42がC領域に存在する場合、自車両41と他車両42は衝突しない。従って、衝突予測手段3は、自車両41と他車両42とは衝突しないと判断し、運転者に対して支援を行わない。
一方、図7に示されるように、他車両42が位置P3よりも検出領域Rから遠方、かつ、上記P1の位置よりも検出領域R側に存在する場合、自車両41と他車両42がそれぞれ速度を維持して走行したとき、他車両42は、自車両41の側面に衝突する。このような領域をB領域と呼ぶことにする。図9は、他車両42がB領域にある場合に、自車両41と他車両42がそれぞれ速度を維持して走行したときに他車両42が自車両41の側面に衝突する様子を示した図である。図9に示されるように、自車両41が検出領域Rに到達した後、検出領域Rを通過する前に、他車両42が検出領域Rに到達する。そのため他車両42は自車両41の側面に衝突する。
ここで、自車両41が他車両42を認識した時点で、自車両41が減速する場合を考慮する。自車両41が減速した場合、他車両42が検出領域Rに到達した時点で、自車両41は、図9で示される位置よりも進行方向と反対側の位置(図9に示される位置よりも下側)に到達する。自車両41が減速することにより、他車両42が検出領域Rに到達した時点で、自車両41が検出領域Rよりも手前に位置する場合(すなわち他車両42が先に検出領域Rに到達する場合)、他車両42は自車両41の側面に衝突しない。この場合、自車両41が他車両42の側面に衝突するか、または、自車両41が検出領域Rに到達する前に他車両42が検出領域Rを通過することにより、自車両41と他車両42とは衝突しない。すなわち、自車両41が減速しなければ、他車両42は自車両41の側面に衝突するが、自車両41が減速すれば、自車両41の側面への衝突は回避される。一方、自車両41が減速した場合でも、他車両42が検出領域Rに到達した時点で、自車両41が検出領域Rを通過中の場合(すなわち他車両42が後に検出領域Rに到達する場合)、他車両42は自車両41の側面に衝突する。すなわち、自車両41が減速しても減速しなくても、自車両41の側面への衝突は回避されない。このように、B領域の中に、減速によって自車両41への側面衝突が回避できる領域と、回避できない領域とが存在する。B領域の中で、減速によって自車両41への側面衝突が回避できる領域をB1領域、回避できない領域をB2領域と呼ぶことにする。図7に示されるように、B2領域は、B1領域よりも検出領域Rの遠方側に位置する。B1領域とB2領域の境界の位置をP2とする。
一般に、車両同士が衝突する場合、車両の側面に衝突する方が、車両の前面に衝突するよりも危険である。そのため、他車両が自車両の側面に衝突することは、可能な限り回避されるべきである。一方、自車両が減速しながら自車両の側面に他車両が衝突した場合、減速しない場合に比べて、危険となる場合がある。減速しなければ自車両の後方側面に衝突するにも拘わらず、減速することにより自車両の中央側面に衝突し、乗員への衝撃が大きくなる可能性や、減速により乗員への負荷が生じた上で側面衝突をすることによって乗員への衝撃を増大させる可能性があるからである。従って、自車両が減速することにより、自車両への側面衝突を回避することができる場合は、自車両は減速すべきであり、減速によっても自車両への側面衝突を回避することができない場合は、自車両は減速すべきでない。また、自車両が他車両の側面に衝突する場合は、他車両への衝撃を軽減するため、可能な限り減速すべきである。
従って、図7において、自車両41が他車両42を検出した時点で、他車両42がB2領域にある場合、衝突予測手段3は、回避支援を行っても、衝突時の位置関係は自車両41の側面に他車両42が衝突する位置関係であると予測する。そのため、衝突予測手段3は、回避支援を行わない。この場合、衝突予測手段3は、支援手段5に対して、乗員保護支援の準備のための命令を送信する。乗員保護支援とは、上述した乗員保護支援部52による支援であり、本実施形態では、側面エアバッグ装置による支援である。一方、自車両41が他車両42を検出した時点で、他車両42がB1領域にある場合、衝突予測手段3は、回避支援を行うことにより、自車両41と他車両42とは衝突しないか、衝突時の位置関係は他車両42の側面に自車両41が衝突する位置関係であると予測する。そのため、衝突予測手段3は、回避支援を行う。この場合、衝突予測手段3は、支援手段5に対して回避支援のための命令を送信する。回避支援とは、上述した回避支援部51による支援であり、本実施形態では、運転者にブレーキを促す通知である。ここで、図7に示されるように、他車両42が位置P2から検出領域Rに到達するまでの時間をT1とする。時間T1は、衝突判断手段3が、回避支援を行うか、乗員保護支援を行うかを判断するための閾値である。ここで、閾値T1の算出方法について説明する。
図12は、自車両41が減速することにより側面衝突を回避できる領域を求める図である。図12に示されるように、自車両41は速度v1で走行中であり、他車両42は速度v2で検出領域Rに向かって走行中である。自車両41の前端と他車両42の前端は、時間T1(sec)後に、検出領域Rで衝突する。自車両41と検出領域Rとの距離をl(m)とし、他車両42と検出領域Rとの距離をx(m)とする。また、自車両41は、他車両42を検出した時点から、加速度αで減速を開始する。このような場合、自車両41は、以下の式1を満たす。
v1・T1−α・(T1−t0)2/2=l (式1)
ここで、t0は人間が危険を認識してからブレーキを踏むまでに要する時間等遅れ時間である。上記、式1を時間T1について解くと、以下式2になる。
T1=t0+v1/α±√((v1/α)2+2・(v1・t0−l)/α) (式2)
従って、時間T1は、以下の式3により表される。
T1=t0+v1/α−√((v1/α)2+2・(v1・t0−l)/α) (式3)
ここで、時間T1は式3から明らかなように、自車両41の速度v1、加速度α、自車両41から検出領域Rまでの距離lで求められる。
一方、自車両41が低速で走行中であり、他車両42が高速で走行中の場合、自車両41および他車両42が図12に示される位置にある時点で、自車両41は、他車両42の光ビームスポットを検出していない場合がある。他車両42が照射する光ビームスポットのうち、最も他車両42から遠い位置に照射される光ビームスポットが自車両41の検出領域Rに到達していないからである。図13は、他車両42の最も遠い光ビームスポットが自車両41の検出領域Rに到達していない場合を示す図である。図13に示される時点から時間T1(sec)後、自車両41と他車両42は検出領域Rで衝突する。しかし、自車両41は、図13に示される時点では、他車両42の光ビームスポットを検出できない。自車両41は、図13に示される時点から、所定時間経過後、他車両42が照射する他車両42から最も遠い光ビームスポットを検出する。ここで、他車両42がある位置から他車両42が照射する最も遠い光ビームスポットの位置までの距離をs(m)とすると、上記所定時間は、x−s(m)の距離を他車両42が走行するまでの時間である。すなわち、自車両41は、(x−s)/v2(sec)だけ遅れて、他車両42を認識する。従って、この場合、上記式1において遅れ時間t0がt0+(x−s)/v2に置き換えられる。
v1・T1−α・(T1−t0−(x−s)/v2)2/2=l (式4)
また、時間T1は以下の式5を満たす。
T1=x/v2 (式5)
式4および式5から時間T1を求めると以下、式6になる。
T1=(α・(s/v2−t0)2/2+l)/v1 (式6)
ここで、s/v2は、速度v2で走行中の他車両42が距離sを走行する時間であり、この値は、自車両41が他車両42の最も遠い光ビームスポットの時間間隔を測定することによって求められる。従って、自車両41は、検出した光ビームスポットの時間間隔と自車両41の速度や加速度等の情報から、上記時間T1を算出することができる。なお、時間T1を上記式3により求めるべきか、上記式6により求めるべきかは、上記他車両の速度v2、距離s、自車両の速度v1により変わるが、ここでは、自車両41の速度v1が所定速度よりも遅い場合に、上記式6により求めることにする。
以上のようにして、自車両41は、閾値T1を求めることができる。自車両41は、他車両42が検出領域Rに到達するまでの時間Tdを上述した情報取得手段により取得する。取得した時間Tdが閾値T1以上であれば、自車両41への側面衝突は回避できない。一方、時間Tdが閾値T1よりも小さければ、自車両41への側面衝突は回避できる。
また、図7に戻り、他車両42が位置P4よりも検出領域Rから遠方、かつ、上記P3の位置よりも検出領域R側に存在する場合、自車両41と他車両42がそれぞれ速度を維持して走行したとき、自車両41は、他車両42の側面に衝突する。このような領域をA領域と呼ぶことにする。図10は、他車両42がA領域にある場合に、自車両41と他車両42とがそれぞれ速度を維持して走行したときに、自車両41が他車両42の側面に衝突する様子を示した図である。自車両41が他車両42を検出した時点で、他車両42がA領域にある場合、図10に示されるように、自車両41が検出領域Rに到達する前に、他車両42は検出領域Rに到達する。この場合、自車両41は他車両42の側面に衝突するため、他車両42にとって危険である。従って、自車両41は、回避支援を行う。これにより、自車両41は、他車両への側面衝突を回避する、または衝突した場合の他車両42への衝撃を軽減することができる。
さらに、他車両42が、P4よりも検出領域R側に存在する場合、すなわちA領域よりも右側にある場合は、他車両42は、自車両41より先に検出領域Rを通過する。図11は、他車両42がA領域よりも右側にある場合に、自車両41と他車両42とがそれぞれ速度を維持して走行したときに、他車両42が自車両41より先に検出領域Rを通過する様子を示した図である。図11に示されるように、自車両41が検出領域Rに到達する前に、他車両42は検出領域Rを通過する。この場合、衝突予測手段3は、自車両41と他車両42とは衝突しないと判断し、運転者に対して支援を行わない。ここで、自車両41と他車両42とがそれぞれ速度を維持して走行したときに、自車両41が他車両42の後方の側面に衝突する限界の時間をT2とする。図7に示されるように、時間T2は、A領域とA領域よりも検出領域R側との境界を示し、衝突判断の閾値として設定される。閾値T2は、自車両41と他車両42の速度、各車両から検出領域Rまでの距離、他車両42の大きさ等を考慮して定められるが、ここでは、自車両41が検出領域Rに到達するまでに要する時間よりも所定時間短い時間に設定される。他車両42が検出領域Rに到達するまでに要する時間Tdが閾値T2よりも小さい場合、自車両41が検出領域Rに到達するまでに他車両42は検出領域Rを通過する。
なお、本実施形態においては、衝突予測手段3は、回避支援として自車両がブレーキ等で減速することにより、自車両41と他車両42との衝突時の位置関係が自車両41の側面に他車両42が衝突する位置関係か否かを予測したが、回避支援として操舵制御を行うことにより、上記位置関係か否かを予測してもよい。すなわち、他車両42が上記B領域にある場合において、自車両41が操舵制御を行うことによって自車両41の走行軌道を変化させ、自車両41が衝突予測位置に到達した時点での自車両41の位置と他車両42の位置とを計算することによって、衝突予測手段3は、上記位置関係を予測してもよい。そして、予測された上記位置関係が、自車両41の側面に他車両42が衝突する位置関係である場合は、衝突予測手段3は、乗員保護支援を行うように支援手段5に対して命令を送信する。反対に、予測された上記位置関係が、自車両41の側面に他車両42が衝突しない位置関係である場合は、衝突予測手段3は、回避支援として操舵制御を行うように支援手段5に対して命令を送信する。また、衝突予測手段3は、回避支援として、減速および操舵制御を組み合わせて、上記位置関係を予測してもよい。
回避支援として操舵制御を行うことによる衝突時の位置関係は、例えば、以下のように求めることができる。自車両41は、操舵制御を考慮して進行方向に対して垂直に配置された複数の検出領域を有する。自車両41は、操舵制御を行うことによって変化する走行軌道を算出し、算出した(自車両の)走行軌道から新たな衝突予測位置を算出する。そして、新たな衝突予測位置に到達するまでの時間を自車両41の速度と距離等から算出する。一方、新たな衝突予測位置に他車両による光ビームスポットが生成され、かつ、当該衝突予測位置が自車両41の(複数ある内の1つの)検出領域内にある場合には、自車両41は、当該衝突予測位置の光ビームスポットを検出することによって、他車両が新たな衝突予測位置に到達するまでの時間を算出することができる。また、後述するように、他車両42の速度と当該光ビームスポットまでの距離とが光ビームスポットに対応付けられる場合には、自車両41が他車両42の光ビームスポットを検出することにより、自車両41は、他車両42の速度および距離を求めることができる。自車両41は、求められた他車両42の速度と距離とから他車両42が新たな衝突予測位置に到達するまでの時間を算出することができる。そして、以上のようにして算出された、自車両41が新たな衝突予測位置に到達するまでの時間と、他車両42が新たな衝突予測位置に到達するまでの時間とに基づいて、自車両41と他車両42とが衝突するか否か、さらに、衝突時の位置関係を算出することができる。
以上が衝突予測装置1の各部の説明である。
(衝突予測装置1の動作)
次に、図14を参照して、衝突予測装置1の動作について説明する。図14は、衝突予測装置1の衝突判断の流れを示すフローチャートである。図14に示すフローチャートによる処理は、衝突予測手段3によって制御される。図14に示すフローチャートは、例えば、イグニッションがONである間、あるいは、自車両が走行している間、繰り返し実行される。以下、図14に示すフローチャートの説明をする。
まず、ステップS101において、衝突予測手段3は、情報取得手段2に対して、他車両が検出領域Rに到達するまでに要する時間Tdを取得するように命令を送信する。情報取得手段2の特定部12は、検出部11を作動させ、検出領域で検出される光ビームスポットの検出を開始する。特定部12は、検出した光ビームスポットの検出時刻をメモリ上に記憶しておく。特定部12は、他車両が照射した2つの光ビームスポットを検出した場合、ステップS102に処理を進める。特定部12は、他車両が照射した2つの光ビームスポットを検出するまで、ステップS101の処理を繰り返し実行する。
ステップS102において、特定部12は、メモリ上に記憶された各光ビームスポットの時刻から、2つの光ビームスポットの時間間隔βを算出する。次に、算出された2つの光ビームスポットの時間間隔βから、他車両が光ビームスポットが照射された位置に到達するまでの時間Tdを特定する。特定部12は、特定した時間Tdを衝突予測手段3に出力する。特定部12から時間Tdを受け取った衝突予測手段3は、ステップS103に処理を進める。
ステップS103において、衝突予測手段3は、自車両の車速が所定以上か否かを判定する。ここでは、自車両の車速が所定以上の場合、上述した閾値T1を式3により算出し、車速が所定未満の場合、閾値T1を式6により算出する。自車両の車速が所定以上の場合、衝突予測手段3は、ステップS104に処理を進める。自車両の車速が所定未満の場合、衝突予測手段3は、ステップS105に処理を進める。
ステップS104において、衝突予測手段3は、閾値T0、T1およびT2を上述した方法により、算出する。閾値T1は、上述した式3により算出される。
ステップS105において、衝突予測手段3は、閾値T0、T1およびT2を上述した方法により、算出する。閾値T1は、上述した式6により算出される。
ステップS106において、衝突予測手段3は、時間Tdが閾値T0以上か否かを判定する。時間Tdが閾値T0以上の場合、上述したように、自車両は、他車両が検出領域に到達するまでに、検出領域を通過する。従って、この場合、衝突予測手段3は、自車両と他車両が衝突しないと判断し、ステップS107に処理を進める。TdがT0よりも小さい場合、衝突予測手段3は、ステップS108に処理を進める。
ステップS107において、衝突予測手段3は、自車両と他車両とは衝突しないため、支援を行わず、処理を終了する。
ステップS108において、衝突予測手段3は、時間Tdが閾値T1以上か否かを判定する。時間Tdが閾値T1以上の場合、ステップS109に処理を進める。この場合、図7に示されるように、他車両はB2領域に存在する。すなわち、上述したように、衝突予測手段3は、自車両が減速することによっても他車両が自車両の側面に衝突すると予測する。時間Tdが閾値T1よりも小さい場合、衝突予測手段3は、ステップS110に処理を進める。
ステップS109において、衝突予測手段3は、乗員への保護を行うために、支援手段5に対して、乗員保護支援部52を作動させるように命令を送信する。命令を受信した支援手段5は、乗員保護支援部52の作動準備を行う。乗員保護支援部52は、上述したように、側面エアバッグ装置である。その後衝突予測手段3は、処理を終了する。
ステップS110において、衝突予測手段3は、時間Tdが閾値T2以上か否かを判定する。時間Tdが閾値T2以上の場合、ステップS111に処理を進める。この場合、図7に示されるように、他車両はB1領域またはA領域に存在する。すなわち、上述したように、衝突予測手段3は、自車両が減速することによって、他車両が自車両の側面に衝突しないと予測する。一方、時間Tdが閾値T2より小さい場合、ステップS112に処理を進める。この場合、図7に示されるように、他車両はA領域よりも検出領域側に存在する。従って、自車両と他車両とは衝突せず、他車両は自車両よりも先に検出領域を通過する。
ステップS111において、衝突予測手段3は、自車両への側面衝突を回避するため、または、他車両への側面衝突を回避するため(もしくは他車両への衝撃を軽減するため)、支援手段5に対して、回避支援部51を作動させるように命令を送信する。具体的には、回避支援部51は、運転者にブレーキを促す通知を行う。その後衝突予測手段3は、処理を終了する。
ステップS112において、衝突予測手段3は、自車両と他車両とは衝突しないため、支援を行わず、処理を終了する。
以上示したように、本実施形態に係る衝突予測装置1は、他車両が照射した光ビームスポットの時間間隔から他車両が検出領域に到達するまでの時間Tdを取得する(ステップS102)。次に、閾値T0、T1,T2を算出した後(ステップS104、ステップS105)、時間Tdの値から他車両がどの領域に存在するかを判断する(ステップS106、ステップS108およびステップS110)。自車両が減速等を行った場合でも自車両の側面への衝突が避けされないときは(ステップS108においてYes)、衝突予測装置1は、減速等を行わずに側面のエアバッグ装置の準備(セーフィング解除)をさせる(ステップS109)。自車両が減速等を行った場合、自車両の側面への衝突が避けられるときは(ステップS110においてYes)、衝突予測装置1は、減速等のための支援を行う(ステップS111)。自車両と他車両とが衝突しない場合は(ステップS106においてYes、ステップS110においてNo)、衝突予測装置1は、支援を行わない(ステップS107、ステップS112)。
なお、本実施形態では、他車両が光ビームスポットの照射位置まで到達する時間Tdを2つの光ビームスポットの時間間隔βに対応させたが、他の実施形態においては、他車両が異なる複数のパターンの光ビームを照射することにより、他車両は、所定のパターンを他車両の速度、照射位置までの距離および加速度に対応させて光ビームを照射してもよい。さらに、他車両の情報として他車両の大きさをも上記光ビームのパターンに対応させてもよい。自車両は、他車両が照射したパターンの光ビームを検出することで、これら他車両の走行情報を取得する。そして、他の実施形態における衝突予測装置は、これら他車両の走行情報から、上記自車両が他車両を検出した時点での位置(A領域、B1領域、B2領域やC領域)を求め、それぞれの位置に応じて、上述したように支援を変えてもよい。
また、自車両の検出部に空間分解能を持たせることによって、他車両が照射した2つの光ビームスポットの位置から、他車両の接近方向を求めてもよい。すなわち、本実施形態において、他車両は、2つの光ビームスポットの組を他車両の進行方向と略直角に並ぶように照射し、他車両から見て左側の光ビームスポットを常に最初に照射する。一方、他車両が自車両の検出領域に接近する場合において、自車両の左側から自車両の進行方向と略直角に接近するとき、自車両は、自車両から進行方向の離れた位置に1つ目の光ビームスポットを検出し、それよりも自車両に近い位置に2つ目の光ビームスポットを検出する。自車両の検出部が空間分解能を有する場合、2つの光ビームスポットの位置を区別することができる。従って、2つの光ビームスポットの内、1つ目の光ビームスポットの方が2つ目の光ビームスポット遠い位置にある場合、自車両は、他車両が左側から接近中であると判別することができる。また、これら2つの光ビームスポットの位置から自車両の進行方向に対する他車両の進行方向の角度も判定することができる。このようにして、自車両は、他車両がどの方向から自車両の進路上に移動してくるかを判別し、支援の仕方を変えてもよい。例えば、本実施形態に係る衝突予測装置が、他車両が自車両の側面に衝突することを回避できないと判断した場合において、左側から他車両が接近中と判別したとき、本衝突予測装置は、左側側面エアバッグ装置のセーフィング解除をしてもよいし、乗員シート位置を右側に変更してもよい。また、上記角度を用いてより良い回避支援を考慮し、自車両と他車両との衝突時の位置関係を求めることができる。例えば、角度が直角の場合は制動回避を主体に考慮して、自車両への側面衝突が回避可能か否かを予測することができ、角度が鋭角、鈍角の場合は操舵回避を主体に考慮して、自車両への側面衝突が回避可能か否かを予測することができる。そして、より適切な回避支援を行うことで、自車両への側面衝突が回避できると予測された場合は、その適切な回避支援を行い、自車両への側面衝突が回避できないと予測された場合は、乗員保護支援を行うことができる。
以上述べたように、他車両が照射した予め定められた所定のパターンの光ビームを自車両が検出することによって、自車両は、他車両の走行情報(上記では速度、距離、加速度や方向等)を取得することができる。自車両は、これら他車両の走行情報と自車両の走行情報とから、自車両と他車両とが衝突した場合にどのような位置関係で衝突するか(他車両が自車両の側面に衝突するか、自車両が他車両の側面に衝突するか)を予測することができる。予測された衝突の位置関係に応じて、衝突予測装置は、乗員に対して支援を変えることができる。
また、本実施形態において、回避支援を行った場合において、自車両と他車両との衝突時の位置関係を予測し、その予測結果に応じて回避支援または乗員保護支援のいずれかを行ったが、これらのいずれも行ってもよい。すなわち、他車両が自車両の側面の一部(車両の前端または後端等乗員がいない位置)に衝突する場合、回避支援を行っても乗員への衝撃の増大にはならない場合がある。このような場合、乗員保護支援と共に回避支援を行ってもよい。
(他の実施形態における他車両走行情報の測定方法)
なお、別の実施形態においては、上述した他車両走行情報の測定方法の他に、レーダーまたはカメラ画像によって他車両の走行情報を測定してもよい。レーダーを用いて他車両の走行情報を測定する装置については、当業者によく知られており、例えば、特開2004−295620号公報に開示されている。これによると、指向性の高い送信アンテナと受信アンテナを回動させ、その回動角θと、送信アンテナから送信した電波が、他車両に反射し受信アンテナで受信されることにより、自車両と他車両との相対距離および相対速度を求めている。さらにカメラにより取得した画像を用いて他車両の幅が考慮されている。これにより、他車両の位置、速度および角度を測定している。また、レーダーを用いて他車両の走行情報を測定する方法として、上記の他に、特開2007−253720号公報に記載の技術が存在する。これによると、レーダーセンサが車両の右側と左側に1つずつ配設されている。各レーダーセンサは、ミリ波、マイクロ波等の電波を他車両、障害物等の車両周囲の物体に対して送出する。そして、各レーダーセンサは、車両右側または左側の物体からの反射波に基づいて、物体の位置(車両と物体との距離)、物体の車両に対する相対的な移動方向及び移動速度(接近速度)を検出している。このようにして車両に搭載されたレーダーにより測定した他車両の走行情報を用いて、上述した本発明に係る衝突予測装置により衝突予測を行ってもよい。
また、他車両走行情報の測定方法として、GPSによって取得した他車両位置を車車間通信によって取得することで自車両と他車両との位置を測定してもよい。GPSによって取得した他車両の位置を車車間通信によって取得する装置については、当業者によく知られており、例えば、特開2000−276696号公報に開示されている。これによると、自車両は、他車両が他車両のGPSにより取得した他車両の位置情報を車車間通信により取得し、自車両が自車両のGPSにより取得した自車両の位置情報と他車両の位置情報とから、自車両と他車両との相対位置を算出することにより、車両同士の衝突を回避する装置が提案されている。また、他車両の位置を車車間通信によって取得する方法として、上記の他に、特開2008−65483号公報に記載の技術が存在する。これによると、車両用運転支援システムは、同システムを搭載する1台又は複数台の他車との間で各種情報を送受する車車間通信装置と、カーナビゲーション装置と、自車の走行状態に関する情報を出力する走行状態検出装置とを備えている。カーナビゲーション装置や走行状態検出装置から検出された自車の位置や速度、進行方向(方位)等、自車の車両サイズ、車両の種別等、様々な情報が、所定の車車間通信可能な範囲内に存在する他車に対して車車間通信装置によって配信される。このような当業者によく知られたGPSと車車間通信を用いた方法により自車両と他車両との位置を算出し、算出した位置を用いて上述した本発明に係る衝突予測装置により衝突予測を行ってもよい。