JP2010012968A - 車両のトラクション制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】クリープトルクに起因して駆動スリップが過大である状況に於いて、運転者により制動操作が行われる場合にも、トラクション制御を実行し、駆動輪の駆動スリップを抑制する。
【解決手段】運転者により加速操作が行われることなく(ステップ110)駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて、駆動輪の駆動スリップが過大であるときには(ステップ130)、運転者により制動操作が行われていても駆動輪に制動力を付与して駆動スリップを抑制するトラクション制御を行い(ステップ180)、運転者により制動操作が行われている状況にてトラクション制御を行う場合には、駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力Fbtr1(ステップ182〜186)及び運転者による制動操作量に基づく目標制動力Fbtr2(ステップ188)のうち大きい方の値に基づいて駆動輪に付与される制動力を制御する(ステップ190、192)。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両のトラクション制御装置に係り、更に詳細にはエンジンと駆動輪との間の駆動力伝達系の途中に流体式トルクコンバータを備えた車両のトラクション制御装置に係る。
自動車等の車両に於いて、駆動輪の駆動スリップが過大であるときには、駆動輪に制動力を付与して駆動スリップを抑制するトラクション制御装置はよく知られている。トラクション制御装置の一つとして、例えば下記の特許文献1に記載されている如く、トラクション制御の実行中に運転者により制動操作が行われると、トラクション制御を終了するよう構成されたトラクション制御装置も既に知られている。また下記の特許文献2に記載されている如く、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて、駆動輪の駆動スリップが過大であるときにも、トラクション制御を行うことも既に知られている。
特開平5−69815号公報 実開昭64−21054号公報
〔発明が解決しようとする課題〕
上記特許文献1に記載されている如きトラクション制御装置によれば、トラクション制御の実行中に運転者により制動操作が行われるとトラクション制御が終了されるので、運転者の制動意思を尊重して駆動輪の制動力を制御することができる。また上記特許文献2に記載されている如きトラクション制御装置によれば、クリープトルクに起因して駆動輪の駆動スリップが過大である場合にも、トラクション制御によって駆動スリップを抑制することができる。
しかしクリープトルクに起因して過大である駆動スリップを抑制すべくトラクション制御が実行されている状況に於いて、運転者により制動操作が行われることによりトラクション制御が終了されると、運転者による制動操作量が小さい場合には、トラクション制御の終了後に駆動輪に作用する制動力が不足し、そのため運転者が加速操作をしていないにも拘らず駆動輪の駆動スリップが増大する場合がある。
本発明は、クリープトルクに起因する過大な駆動スリップを抑制すべくトラクション制御が実行されている状況に於いて、運転者により制動操作が行われることによりトラクション制御が終了される場合に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、クリープトルクに起因して駆動スリップが過大である状況に於いて、運転者により制動操作が行われる場合にも、トラクション制御を実行し、駆動輪の駆動スリップを抑制することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち流体式トルクコンバータを備えた車両のトラクション制御装置にして、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて、駆動輪の駆動スリップが過大であるときには、運転者により制動操作が行われていても前記駆動輪に制動力を付与して駆動スリップを抑制するトラクション制御を行い、運転者により制動操作が行われている状況にてトラクション制御を行う場合には、前記駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力及び運転者による制動操作量に基づく目標制動力のうち大きい方の値に基づいて前記駆動輪に付与される制動力を制御することを特徴とする車両のトラクション制御装置によって達成される。
上記請求項1の構成によれば、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて、駆動輪の駆動スリップが過大であるときには、運転者により制動操作が行われていても駆動輪に制動力を付与して駆動スリップを抑制するトラクション制御が行われる。従って運転者により制動操作が行われてもトラクション制御が継続されるので、運転者による制動操作量が小さい場合にも、駆動輪に付与される制動力が不足すること及び運転者が加速操作をしていないにも拘らず駆動輪の駆動スリップが増大することを効果的に防止し、駆動輪の駆動スリップを効果的に抑制することができる。
また上記請求項1の構成によれば、運転者により制動操作が行われている状況にてトラクション制御が行われる場合には、駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力及び運転者による制動操作量に基づく目標制動力のうち大きい方の値に基づいて駆動輪に付与される制動力が制御される。従って駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力が運転者による制動操作量に基づく目標制動力よりも大きいときには、駆動輪に付与される制動力が不足することを防止し、駆動輪の駆動スリップを効果的に抑制することができる。また運転者による制動操作量に基づく目標制動力が駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力よりも大きいときには、駆動輪の駆動スリップを効果的に抑制しつつ、運転者が要求する制動力を駆動輪に付与することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上になったときに前記トラクション制御を開始し、運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於けるトラクション制御開始判定基準値は、運転者により加速操作が行われている状況に於けるトラクション制御開始判定基準値よりも小さいよう構成される(請求項2の構成)。
一般に、クリープトルクは運転者により加速操作が行われている場合の駆動トルクよりも小さいので、駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける駆動スリップの度合は運転者により加速操作が行われている状況に於ける駆動スリップの度合よりも低い。
上記請求項2の構成によれば、駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上になったときにトラクション制御が開始され、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於けるトラクション制御開始判定基準値は、運転者により加速操作が行われている状況に於けるトラクション制御開始判定基準値よりも小さい。従って駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於けるトラクション制御開始判定基準値が、運転者により加速操作が行われている状況に於けるトラクション制御開始判定基準値と同一又はこれよりも大きい場合に比して、駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて駆動スリップが過大な状況を効果的に判定し、必要なトラクション制御が開始されなくなることを防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2の構成に於いて、前記駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上である状態が基準時間以上継続したときに前記トラクション制御を開始し、運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける基準時間は運転者により加速操作が行われている状況に於ける基準時間よりも大きいよう構成される(請求項3の構成)。
上記請求項2の構成の場合には、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於けるトラクション制御開始判定基準値は、運転者により加速操作が行われている状況に於けるトラクション制御開始判定基準値よりも小さい。よって運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している場合には、運転者により加速操作が行われている場合よりも、駆動スリップが過大であると誤判定され易い。
上記請求項3の構成によれば、駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上である状態が基準時間以上継続したときにトラクション制御が開始され、運転者により加速操作が行われることなく動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける基準時間は運転者により加速操作が行われている状況に於ける基準時間よりも大きい。従って駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて駆動スリップが過大であるときには、その状況を確実に判定しつつ、駆動スリップが過大であると誤判定される虞れを効果的に低減することができる。
尚加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける基準時間が大きい場合には、それが小さい場合に比してトラクション制御の開始が遅くなるが、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける駆動スリップは、運転者により加速操作が行われている状況に於ける駆動スリップほど過大にはならないので、運転者により加速操作が行われている場合に比して基準時間が大きいことによるトラクション制御の開始の遅延は問題にはならない。
また本発明によれば、上記請求項2又は3の構成に於いて、運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いては、車速が基準車速以下であるときに前記駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上であるか否かを判定するよう構成される(請求項4の構成)。
一般に、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて駆動スリップが過大になるのは、車輌の停止状態又は微低速走行状態の如く車速が低い状況に於いて生じる。また運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて車速が高くなるのは降坂走行時等の場合であり、かかる状況に於いては運転者はその状況を許容又は希望していると考えられる。
上記請求項4の構成によれば、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いては、車速が基準車速以下であるときに駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上であるか否かが判定される。従って車速が基準車速よりも高い状況に於いて駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上であるか否かの判定が不必要に実行され、不必要なトラクション制御が開始されることを防止することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4の構成に於いて、前記基準車速はクリープトルクが低いときにはクリープトルクが高いときに比して小さくなるよう、クリープトルクに応じて可変設定されるよう構成される(請求項5の構成)。
一般に、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける車速は、クリープトルクが高いほど高くなるので、駆動スリップが過大になる際の車速もクリープトルクが高いほど高くなる。
上記請求項5の構成によれば、基準車速はクリープトルクが低いときにはクリープトルクが高いときに比して小さくなるよう、クリープトルクに応じて可変設定される。従ってクリープトルクに関係なく基準車速が一定である場合に比して、クリープトルクが低い状況に於いて駆動スリップが過大であると誤判定される虞れを低減しつつ、クリープトルクが高い状況に於いて駆動スリップが過大であるときには、そのことを確実に判定することができる。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の何れか一つの構成に於いて、運転者により加速操作が行われることなくエンジンのアイドルアップ制御が行われているときに、運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況であると判定するよう構成される(請求項6の構成)。
上記請求項6の構成によれば、運転者により加速操作が行われることなくエンジンのアイドルアップ制御が行われているときに、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況であると判定されるので、運転者により加速操作が行われることなくエンジンのアイドルアップ制御が行われている状況を判定することにより、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況を判定することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6の何れか一つの構成に於いて、駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力は、エンジンのアイドル回転数に基づく補正係数と駆動輪の駆動スリップ値に基づく基本目標制動力との積として演算されるよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6の何れか一つ又は上記好ましい態様1の構成に於いて、運転者により制動操作が行われていない状況にてトラクション制御を行う場合には、駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力に基づいて駆動輪に付与される制動力を制御するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6の何れか一つ又は上記好ましい態様1又は2の構成に於いて、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける目標制動力は、駆動輪の同一の駆動スリップ値について見て、運転者により加速操作が行われている状況に於ける目標制動力よりも小さいよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6又は上記好ましい態様1乃至3の何れか一つの構成に於いて、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いては、運転者により加速操作が行われている状況に比して、駆動輪の駆動スリップ値が小さくても駆動輪に制動力を付与するよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4又は上記好ましい態様1乃至4の何れか一つの構成に於いて、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いては、駆動輪の車輪速度が基準車輪速度以下であるときに駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上であるか否かを判定するよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4乃至6又は上記好ましい態様1乃至5の何れか一つの構成に於いて、エンジンについてアイドルアップ制御が行われており且つ駆動輪の車輪速度が基準車輪速度以下であり且つ駆動輪のスリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上である状況が基準時間以上継続したときにトラクション制御を開始するよう構成される(好ましい態様6)。
尚本願に於ける「駆動スリップ値」は、駆動輪の車輪速度と車体速度との差である駆動スリップ量、駆動スリップ量を車体速度にて除算した値である駆動スリップ率の如く、駆動輪の駆動スリップの程度を表す値を意味する。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施例について詳細に説明する。
図1は後輪駆動車に適用された本発明による車両のトラクション制御装置の一つの実施例を示す概略構成図である。
図1に於いて、10はエンジンを示しており、エンジン10の駆動力はトルクコンバータ12及び歯車式変速機構14を含むオートマチックトランスミッション16を介してプロペラシャフト18へ伝達される。
プロペラシャフト18の駆動力はディファレンシャル20により左後輪車軸22L及び右後輪車軸22Rへ伝達され、これにより駆動輪である左右の後輪24RL及び24RRが回転駆動される。一方左右の前輪24FL及び24FRは従動輪であると共に操舵輪であり、図1には示されていないが、運転者によるステアリングホイールの転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置によりタイロッドを介して操舵される。
左右の前輪24FL、24FR及び左右の後輪24RL、24RRの制動力は制動装置26の油圧回路28により対応するホイールシリンダ30FL、30FR、30RL、30RRの制動圧が制御されることによって制御される。図1には示されていないが、油圧回路28はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含んでいる。
車両の制駆動力は電子制御装置32により制御される。電子制御装置32は車両の駆動力を制御する駆動力制御部と、車両の制動力を制御する制動力制御部と、車両の走行運動を制御する運動制御部とを含んでいる。駆動力制御部、制動力制御部と、運動制御部は相互に必要な情報や指令の授受を行う。尚図1には詳細に示されていないが、駆動力制御部、制動力制御部と、運動制御部はそれぞれCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータを含んでいてよい。
図1に示されている如く、電子制御装置32にはアクセルペダル34に設けられたアクセル開度センサの如き駆動操作量検出センサ40より運転者の駆動操作量Aを示す信号が入力される。また電子制御装置32にはブレーキペダル36に設けられた制動操作量検出センサ42により検出された運転者の制動操作量Bを示す信号が入力され、圧力センサ44i(i=fl、fr、rl、rr)により検出されたホイールシリンダ30FL〜30RRの制動圧Pbi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。
更に電子制御装置32には車輪速度センサ46i(i=fl、fr、rl、rr)より各車輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力され、また操舵角センサ、前後加速度センサ、横加速度センサ、ヨーレートセンサの如き車両状態量検出センサ48より操舵角θ、車両の前後加速度Gx、車両の横加速度Gy、車両のヨーレートγを示す信号等が入力される。
電子制御装置32の駆動力制御部は、通常時には運転者によるアクセルぺダル34の操作やエンジン負荷等に応じてエンジン10の出力及びトランスミッション16の変速段を制御し、運動制御部より指令信号を受信しているときにはその指令に応じてエンジン10の出力及びトランスミッション16の変速段を制御する。
電子制御装置32の制動力制御部は、通常時には運転者の制動操作量Bに基づいて各車輪の目標制動力Fbti(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。そして制動力制御部はアンチスキッド制御の目標制動力やトラクション制御(以下「TRC制御」という)の目標制動力を示す信号を受信していないときには、目標制動力Fbtiに基づいて当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の目標制動圧Pbti(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
これに対しアンチスキッド制御、TRC制御、又は車輌運動制御の目標制動力を示す信号を受信しているときには、制動力制御部はアンチスキッド制御等の目標制動力がある車輪の目標制動力Fbtiをアンチスキッド制御等の目標制動力に置き換え、目標制動力Fbtiに基づいて当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の目標制動圧Pbti(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
そして制動力制御部は各車輪の制動圧Pbiがそれぞれ対応する目標制動圧Pbtiになるよう油圧回路28を制御することにより、各車輪の制動力Fbi(i=fl、fr、rl、rr)がそれぞれ対応する目標制動力Fbtiになるよう制御する。
電子制御装置32の運動制御部は、運転者により加速操作が行われている状況に於いて、駆動輪である左右後輪24RL、24RRの少なくとも一方の駆動スリップが過大であるときには、後輪に付与される駆動力が低減されるよう車両の目標駆動力Fdtを0に設定して駆動力制御部へ出力するすると共に、駆動スリップを抑制するための後輪の目標制動力(TRC制御の目標制動力)Fbtrを演算し、目標制動力Fbtrを示す信号を制動力制御部へ出力する。
また運動制御部は、運転者により加速操作が行われていない状況に於いて、クリープトルクに起因して駆動輪である左右後輪24RL、24RRの少なくとも一方の駆動スリップが過大であるときには、駆動スリップを抑制するための後輪の目標制動力(TRC制御の目標制動力)Fbtrを演算し、目標制動力Fbtrを示す信号を制動力制御部へ出力する。
また運動制御部は、車輪に制動力が付与されている状況に於いて、何れかの車輪の制動スリップが過大であるときには、制動スリップの程度に応じて当該車輪の目標制動力(アンチスキッド制御の目標制動力)Fbvti(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、目標制動力Fbvtiを示す信号を制動力制御部へ出力する。
更に運動制御部は、車両の走行運動がスピン傾向、ドリフトアウト傾向の如く不安定になる傾向があるときには、車両の走行運動が不安定になることを抑制するための車両の目標駆動力Fdtや各車輪の目標制動力(車輌運動制御の目標制動力)Fbvtiを演算し、それらを示す指令信号を駆動力制御部及び制動力制御部へ出力する。尚運動制御部は車間距離制御、定速走行制御、衝突防止制御の如き車両の運転支援制御を行うようになっていてよい。
特に図示の実施例に於ける運動制御部は、何れの車輪にも制動スリップが発生しておらず、また車両の走行運動がスピン傾向、ドリフトアウト傾向の如く不安定になる傾向がないときには、図2乃至図4に示されたフローチャートによる制御ルーチンに従ってトラクション制御を行う。
次に図2に示されたフローチャートを参照して図示の実施例に於けるトラクション制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。また図2に示されたフローチャートによる制御の開始に先立って、フラグFa及びFbがそれぞれ0にリセットされると共に、カウンタのカウント値Na及びNbがそれぞれ0にリセットされる。
まずステップ110に於いては例えば駆動操作量検出センサ40により検出された運転者の駆動操作量Aが正の値であるか否かの判別により、運転者により加速操作が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ220へ進み、否定判別が行われたときにはステップ120へ進む。尚図2には示されていないが、アイドルアップ(本願に於いては「IU」と略称する)時のTRC制御の実行中に運転者により加速操作が行われていると判別されたときには、フラグFbが0にリセットされた後にステップ220へ進む。
ステップ120に於いてはフラグFbが1であるか否かの判別、即ちIU時のTRC制御の実行中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ160へ進み、否定判別が行われたときにはステップ130へ進む。
ステップ130に於いては図3に示されたフローチャートに従ってIU時のTRC制御の開始が許可される状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ150に於いてフラグFbが1にセットされた後ステップ180へ進み、否定判別が行われたときにはステップ170へ進む。
ステップ160に於いてはIU時のTRC制御の終了が許可される状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ180へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ170に於いてフラグFbが0にリセットされ、しかる後図2に示されたフローチャートによる制御が一旦終了される。
尚IU時のTRC制御の終了が許可される状況であるか否かの判別は、
(1)後に説明する後輪の車輪速度Vwrがその制御終了基準値Vwrf(例えば後に説明する基準値Vwro)よりも大きい
(2)後に説明する後輪のスリップ量Srがその制御終了基準値Srbf(後に説明する基準値Srb以下の正の定数)よりも小さい
の何れかの終了条件が成立しているか否かの判別により行われてよい。
ステップ180に於いては図4に示されたフローチャートに従ってIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtrが演算されると共に、目標制動力Fbtrを示す信号が運動制御部より制動力制御部へ出力され、しかる後図2に示されたフローチャートによる制御が一旦終了される。
ステップ220に於いてはフラグFaが1であるか否かの判別、即ち加速時のTRC制御の実行中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ260へ進み、否定判別が行われたときにはステップ230へ進む。
ステップ230に於いては図5に示されたフローチャートに従って加速時のTRC制御の開始が許可される状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ250に於いてフラグFaが1にセットされた後ステップ280へ進み、否定判別が行われたときにはステップ270へ進む。
ステップ260に於いては加速時のTRC制御の終了が許可される状況であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ280へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ270に於いてフラグFaが0にリセットされ、しかる後図2に示されたフローチャートによる制御が一旦終了される。尚加速時のTRC制御の終了が許可される状況であるか否かの判別は、後に説明する後輪のスリップ量Srが基準値Sraf(後に説明する基準値Sra以下の正の定数)よりも小さいか否かの判別により行われてよい。
ステップ280に於いては路面の摩擦係数μが低いほど加速時のTRC制御のための車両の目標駆動力Fdtが小さくなるよう、路面の摩擦係数μに基づき加速時のTRC制御のための車両の目標駆動力Fdtが演算されると共に、目標駆動力Fdtを示す信号が運動制御部より駆動力制御部へ出力される。
尚IU時のTRC制御の場合にステップ280に対応する制御がステップ180に先立って行われないのは、エンジン10についてIU制御が行われているときには、目標駆動力Fdtを示す信号を駆動力制御部へ出力しても、その信号が駆動力制御部により受け入れられず、拒否されてしまうことによる。
ステップ290に於いては後述のステップ132の場合と同様の要領にて後輪のスリップ量Srが演算され、後輪のスリップ量Srに基づき図9に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップより加速時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtraが演算される。図9に示されている如く、目標制動力Fbtraは後輪のスリップ量Srが大きいほど大きくなるよう演算される。尚図9に於いて、二点鎖線はIU時のTRC制御の左右後輪の基本目標制動力Fbtrb1を示している。
またステップ290に於いては加速時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtraを示す信号が目標制動力Fbtrを示す信号として運動制御部より制動力制御部へ出力され、しかる後図2に示されたフローチャートによる制御が一旦終了される。
次に図3に示されたフローチャートを参照してIU時のTRC制御の開始許可判別ルーチンについて説明する。
ステップ132に於いては電子制御装置32の駆動力制御部よりの信号に基づき、エンジン10についてアイドルアップ制御が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ134へ進む。
ステップ134に於いては電子制御装置32の駆動力制御部よりの信号に基づき、左右の後輪に付与されているクリープトルクTcが推定されると共に、クリープトルクTcに基づき図6に示されたグラフに対応するマップより車輪速度の基準値Vwroが演算される。図6に示されている如く、基準値VwroはクリープトルクTcが予め設定された値Tco(正の定数)以下であるときには一定に設定され、クリープトルクTcが予め設定された値Tcoよりも大きいときには、クリープトルクTcが大きいほど大きくなるよう演算される。
ステップ136に於いては例えば左右後輪の車輪速度Vwrl及びVwrrの平均値として後輪の車輪速度Vwrが演算されると共に、後輪の車輪速度Vwrが基準値Vwro以下であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ138へ進む。尚後輪の車輪速度Vwrは左右後輪の車輪速度Vwrl及びVwrrのうちの大きい方の値であってもよい。
ステップ138に於いては各車輪の車輪速度Vwiに基づき車体速度Vbが演算され、後輪の車輪速度Vwrと車体速度Vbとの差として後輪のスリップ量Srが演算されると共に、後輪のスリップ量Srが基準値Srb(後述の基準値Sraよりも小さい正の定数)以上であるか否かの判別が行われる。そして否定判別が行われたときにはステップ140に於いてカウンタのカウント値Nbが0にリセットされた後ステップ170へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ142に於いてカウンタのカウント値Nbがカウントアップされた後ステップ142へ進む。車体速度Vbの演算は本発明の要旨をなすものではないので、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて演算されてよい。
ステップ144に於いてはカウンタのカウント値Nbが基準値Nbc(後述の基準値Nacよりも大きい正の一定の整数)以上であるか否かの判別が行われる。そして否定判別が行われたときにはステップ170へ進み(IU時のTRC制御の開始不許可判定)、肯定判別が行われたときにはステップ146に於いてカウンタのカウント値Nbが0にリセットされた後ステップ150へ進む(IU時のTRC制御の開始許可判定)。
次に図4に示されたフローチャートを参照してIU時のTRC制御に於ける左右後輪の目標制動力Fbtrの演算ルーチンについて説明する。
ステップ182に於いては後輪のスリップ量Srに基づき図7に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップよりIU時のTRC制御の左右後輪の基本目標制動力Fbtrb1が演算される。図7に示されている如く、基本目標制動力Fbtrb1は後輪のスリップ量Srが大きいほど大きくなるよう演算される。尚図7に於いて、二点鎖線は加速時のTRC制御の左右後輪の基本目標制動力Fbtraを示している。
ステップ184に於いては電子制御装置32の駆動力制御部より送信されるエンジン10のアイドル回転数Neiに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより補正係数Kgが演算される。図8に示されている如く、補正係数Kgはアイドル回転数Neiが予め設定された値Neio(正の定数)以下であるときには1に設定され、アイドル回転数Neiが予め設定された値Neioよりも大きいときには、アイドル回転数Neiが大きいほど大きくなるよう演算される。
ステップ186に於いてはIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1が補正係数Kgと基本目標制動力Fbtrb1との積として演算される。
ステップ188に於いては電子制御装置32の制動力制御部より送信される運転者の制動操作量Bに基づく左右後輪の目標制動力Fbtrl、Fbtrrの平均値として制動操作の左右後輪の目標制動力Fbtr2が演算される。尚運転者により制動操作が行われていないときには、制動操作量Bが0であり、目標制動力Fbtrl、Fbtrrが0であるので、目標制動力Fbtr2も0になる。
ステップ190に於いてはIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1及び制動操作の左右後輪の目標制動力Fbtr2のうちの大きい方の値が左右後輪の目標制動力Fbtrとして演算され、ステップ192に於いては左右後輪の目標制動力Fbtrを示す信号が運動制御部より制動力制御部へ出力される。
次に図5に示されたフローチャートを参照して加速時のTRC制御に於ける開始許可判別ルーチンについて説明する。
ステップ232に於いては電子制御装置32の制動力制御部より送信される運転者の制動操作量Bに基づき制動中であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ270へ進み、否定判別が行われたときにはステップ234へ進む。
ステップ234に於いては上述のステップ138の場合と同様の要領にて後輪のスリップ量Srが演算されると共に、後輪のスリップ量Srが基準値Sra(正の定数)以上であるか否かの判別が行われる。そして否定判別が行われたときにはステップ236に於いてカウンタのカウント値Naが0にリセットされた後ステップ270へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ238に於いてカウンタのカウント値Naがカウントアップされた後ステップ240へ進む。
ステップ240に於いてはカウンタのカウント値Naが基準値Nac(正の一定の整数)以上であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ270へ進み(加速時のTRC制御の開始不許可判定)、肯定判別が行われたときにはステップ242に於いてカウンタのカウント値Naが0にリセットされた後ステップ250へ進む(加速時のTRC制御の開始許可判定)。
かくして図示の実施例によれば、ステップ110に於いて運転者により加速操作が行われているか否かの判別が行われる。そして運転者により加速操作が行われていないと判別されたときには、ステップ120〜180のIU時のTRC制御に関するステップが実行される。これに対し運転者により加速操作が行われていると判別されたときには、ステップ220〜290の加速時のTRC制御に関するステップが実行される。
特に運転者により加速操作が行われていないときには、ステップ130に於いて図3に示されたフローチャートに従ってIU時のTRC制御の開始が許可される状況であるか否かの判別が行われる。そしてIU時のTRC制御の開始が許可される状況であるときには、ステップ160に於いてIU時のTRC制御が終了されるべきと判定されるまで、ステップ180に於いて図4に示されたフローチャートに従ってIU時のTRC制御が実行される。
運転者により加速操作が行われているときには、ステップ230に於いて図5に示されたフローチャートに従って加速時のTRC制御の開始が許可される状況であるか否かの判別が行われる。そして加速時のTRC制御の開始が許可される状況であるときには、ステップ260に於いて加速時のTRC制御が終了されるべきと判定されるまで、ステップ280及び290に於いて加速時のTRC制御が実行される。
ステップ130に於けるIU時のTRC制御の開始許可判定に於いては、図3に示されている如く、エンジン10についてアイドルアップ制御が行われており且つ後輪の車輪速度Vwrが基準値Vwro以下であり且つ後輪のスリップ量Srが基準値Srb以上である状況がNbcサイクル以上継続したときにIU時のTRC制御の開始が許可される状況であると判定される。
従って図示の実施例によれば、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にアイドルアップ制御によるクリープトルクが作用しており且つ車輌が停止状態又は微低速走行状態にあり且つ後輪の駆動スリップが過大である状況が基準時間以上継続したときに、IU時のTRC制御が開始される。
よって運転者により加速操作が行われることなく後輪にクリープトルクが作用している状況に於いて、後輪の駆動スリップが過大であるときには、運転者により制動操作が行われていてもIU時のTRC制御を行い、後輪に制動力を付与することによって駆動スリップを効果的に抑制することができる。
特に図示の実施例によれば、後輪の車輪速度Vwrが基準値Vwro以下であること、即ち車輌が停止状態又は微低速走行状態にあることがIU時のTRC制御の開始条件の一つとされているので、後輪の車輪速度Vwrが基準値Vwroよりも高い状況に於いて、不必要なIU時のTRC制御が開始されることを確実に防止することができる。
また図示の実施例によれば、車輪速度の基準値Vwroは、ステップ134に於いて、クリープトルクTcが予め設定された値Tco以下であるときには一定に設定され、クリープトルクTcが予め設定された値Tcoよりも大きいときには、クリープトルクTcが大きいほど大きくなるよう演算される。
従って基準値VwroがクリープトルクTcに関係なく一定である場合に比して、クリープトルクが低い状況に於いて駆動スリップが過大であると誤判定される虞れを低減しつつ、クリープトルクが高い状況に於いて駆動スリップが過大であるときには、そのことを確実に判定し、過大な駆動スリップを確実に抑制することができる。
また図示の実施例によれば、IU時の後輪のスリップ量SrについてのTRC制御開始判定の基準値Srbは、加速時の後輪のスリップ量SrについてのTRC制御開始判定の基準値Sraよりも小さい。従ってIU時のTRC制御開始判定の基準値Srbが加速時のTRC制御開始判定の基準値Sraと同一又はこれよりも大きい場合に比して、IU制御により駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて駆動スリップが過大な状況を効果的に判定し、必要なトラクション制御が開始されなくなることを効果的に防止することができる。
またIU時の後輪のスリップ量SrについてのTRC制御開始判定の基準値Srbが、加速時の後輪のスリップ量SrについてのTRC制御開始判定の基準値Sraよりも小さい場合には、IU制御により駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて駆動スリップが過大であると誤判定され易い。
図示の実施例によれば、IU時のTRC制御の開始許可判定のカウント値Nbの基準値Nbcは、加速時のTRC制御の開始許可判定のカウント値Naの基準値Nacよりも大きい。換言すれば、IU時のTRC制御の場合には所定の制御開始条件が加速時のTRC制御の場合よりも長い時間に亘り継続して成立しなければ、TRC制御の開始が許可されない。従って基準値Nbcが基準値Nacと同一又はこれよりも小さい場合に比して、駆動スリップが過大であると誤判定される虞れを効果的に低減しつつ、IU制御により駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて駆動スリップが過大であるときには、その状況を確実に判定することができる。
例えば図10及び図11はそれぞれ駆動時のTRC制御(従来のTRC制御)及びIU時のTRC制御について、後輪のスリップ量Srの変化に対するスリップ判定及びTRC制御許可判定の関係を示すタイムチャートである。
図10及び図11に示されている如く、時点t1に於いて後輪のスリップ量Srが基準値Sra、Srb以上になり、時点t3に於いて後輪のスリップ量Srが基準値Sra、Srbよりも小さくなったとする。この場合時点t1より時点t3まで後輪のスリップ量Srが基準値Sra、Srb以上であり、後輪のスリップが過大であると判定される。
図10に示された駆動時のTRC制御の場合には、時点t1よりNacサイクルが経過した時点t2に於いてTRC制御許可フラグFaが1にセットされ、時点t3に於いてフラグFaが0にリセットされ、時点t2より時点t3まで駆動時のTRC制御による制動力が後輪に付与される。
これに対し図11に示されたIU時のTRC制御の場合には、時点t1よりNbcサイクルが経過した時点t2′に於いてTRC制御許可フラグFbが1にセットされ、時点t3に於いてフラグFbが0にリセットされ、時点t2′より時点t3までIU時のTRC制御による制動力が後輪に付与される。
図10と図11との比較より解る如く、IU時のTRC制御に於いては、駆動時のTRC制御の場合に比して、後輪のスリップ量Srの増大過程に於けるスリップ量Srが小さい段階(時点t1)に於いて後輪のスリップ量Srが基準値以上になったと判定されるが、その判定よりTRC制御開始時点までの時間は駆動時のTRC制御の場合に比して長くなる。
尚IU時のTRC制御の開始許可判定のカウント値Nbの基準値Nbcが大きい場合には、それが小さい場合に比してIU時のTRC制御の開始が遅くなるが、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける駆動スリップは、運転者により加速操作が行われている状況に於ける駆動スリップほど過大にはならないので、運転者により加速操作が行われている場合に比してTRC制御の開始許可判定のカウント値の基準値が大きいことによるTRC制御の開始の遅延は問題にはならない。
またステップ180に於けるIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtrの演算に於いては、図4に示されている如く、ステップ182〜186に於いてIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1が演算され、ステップ188に於いて制動操作の左右後輪の目標制動力Fbtr2が演算され、ステップ190に於いてIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1及び制動操作の左右後輪の目標制動力Fbtr2のうちの大きい方の値が左右後輪の目標制動力Fbtrとして演算される。
従って図示の実施例によれば、後輪の駆動スリップ量Srに基づく目標制動力Fbtr1が運転者による制動操作量に基づく目標制動力Fbtr2よりも大きいときには、後輪に付与される制動力が不足することを防止し、後輪の駆動スリップを効果的に抑制することができる。逆に運転者による制動操作量に基づく目標制動力Fbtr2が後輪の駆動スリップ量Srに基づく目標制動力Fbtr1よりも大きいときには、後輪の駆動スリップを効果的に抑制しつつ、運転者が要求する制動力を後輪に付与することができる。
図12は運転者による制動操作量Bが漸減されると共に後輪の駆動スリップ量Srが漸増する場合於ける目標制動力Fbtr1、Fbtr2、Fbtrの変化の例を示すタイムチャートである。
図12より解る如く、目標制動力Fbtrは目標制動力Fbtr1及びFbtr2の大きい方の値であるので、目標制動力Fbtr1が目標制動力Fbtr2よりも大きい領域に於いては目標制動力Fbtr1とされ、目標制動力Fbtr1が目標制動力Fbtr2よりも小さい領域に於いては目標制動力Fbtr2とされる。
また図示の実施例によれば、ステップ182に於いて後輪のスリップ量Srに基づき図7に於いて実線にて示されたグラフに対応するマップよりIU時のTRC制御の左右後輪の基本目標制動力Fbtrb1が演算され、ステップ184に於いてエンジン10のアイドル回転数Neiに基づき図8に示されたグラフに対応するマップより補正係数Kgが演算され、ステップ186に於いてはIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1が補正係数Kgと基本目標制動力Fbtrb1との積として演算される。
従って後輪のスリップ量Srが大きいほど大きくなるよう、後輪のスリップ量Srに応じてIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1を演算することができると共に、エンジン10のアイドル回転数Neiが高いほど大きくなるよう、換言すれば後輪に作用するクリープトルクTcが高いほど大きくなるよう、クリープトルクTcに応じてIU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1を演算することができる。
またIU時のTRC制御の左右後輪の基本目標制動力Fbtrb1は、加速時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtraの場合に比して、後輪のスリップ量Srが小さい領域に於いても0以外の値に演算される。
従ってIU時のTRC制御の場合には、加速時のTRC制御の場合に比して、後輪のスリップ量Srが小さい段階から後輪に制動力を付与し、後輪の駆動スリップが過大になることの抑制を早期に開始することができる。
また後輪のスリップ量Srが同一の値について見て、IU時のTRC制御の左右後輪の基本目標制動力Fbtrb1は、加速時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtraに比して、小さい値に演算される。
従ってIU時のTRC制御の場合には、加速時のTRC制御の場合に比して、後輪のスリップ量Srが小さい段階から後輪に制動力が付与されるが、IU時のTRC制御時に後輪に付与される制動力を加速時のTRC制御の場合に比して小さくし、これにより後輪に過剰な制動力が付与されることを確実に防止することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の実施例に於いては、ステップ136に於いて左右後輪の車輪速度Vwrl及びVwrrの平均値として後輪の車輪速度Vwrが演算されると共に、後輪の車輪速度Vwrが基準値Vwro以下であるか否かの判別が行われるようになっているが、左右後輪の車輪速度Vwrl及びVwrrのうち大きい方の値が基準値Vwro以下であるか否かの判別が行われるよう修正されてもよい。
またステップ134及び136による車輪速度についての判定に代えて、車速Vが基準値Vo以下であるか否かの判別が行われるよう修正されてもよく、その場合には基準値VoはクリープトルクTcが大きいほど大きくなるよう、クリープトルクTcに応じて可変設定されてよい。
また上述の実施例に於いては、車輪速度の基準値Vwroは、ステップ134に於いて、クリープトルクTcに応じて可変設定されるようになっているが、車輪速度の基準値Vwroは定数であってもよい。逆に上述の実施例に於いては、IU時の後輪のスリップ量SrについてのTRC制御開始判定の基準値Srbは一定であるが、基準値Srbは加速時の後輪のスリップ量SrについてのTRC制御開始判定の基準値Sraよりも小さい値の範囲内にて、クリープトルクTcが大きいほど小さくなるよう、クリープトルクTcに応じて可変設定されてもよい。
また上述の実施例に於いては、IU時のTRC制御の左右後輪の目標制動力Fbtr1は、ステップ186に於いては、エンジン10のアイドル回転数Neiに基づき演算される補正係数Kgと、後輪のスリップ量Srに基づき演算されるIU時のTRC制御の左右後輪の基本目標制動力Fbtrb1との積として演算されるようになっているが、エンジン10のアイドル回転数Nei及び後輪のスリップ量Srの関数として演算されるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、車両は後輪駆動車であるが、本発明のトラクション制御装置はエンジンと駆動輪との間の駆動力伝達系の途中に流体式トルクコンバータを備えた前輪駆動車や四輪駆動車に適用されてもよい。
後輪駆動車に適用された本発明による車両のトラクション制御装置の一つの実施例を示す概略構成図である。 実施例のトラクション制御ルーチンを示すフローチャートである。 アイドルアップ時のTRC制御に於ける開始許可判別ルーチンを示すフローチャートである。 アイドルアップ時のTRC制御に於ける左右後輪の目標制動力Fbtrの演算ルーチンを示すフローチャートである。 加速時のTRC制御に於ける開始許可判別ルーチンを示すフローチャートである。 クリープトルクTcと車輪速度の基準値Vwroとの間の関係を示すグラフである。 後輪のスリップ量Srとアイドルアップ時のTRC制御に於ける左右後輪の基本目標制動力Fbtrb1との間の関係を示すグラフである。 エンジンのアイドル回転数Neiと補正係数Kgとの間の関係を示すグラフである。 後輪のスリップ量Srと加速時のTRC制御に於ける左右後輪の目標制動力Fbtraとの間の関係を示すグラフである。 駆動時のTRC制御(従来のTRC制御)について、後輪のスリップ量Srの変化に対するスリップ判定及びTRC制御許可判定の関係を示すタイムチャートである。 IU時のTRC制御について、後輪のスリップ量Srの変化に対するスリップ判定及びTRC制御許可判定の関係を示すタイムチャートである。 運転者による制動操作量Bが漸減されると共に後輪の駆動スリップ量Srが漸増する場合於ける目標制動力Fbtr1、Fbtr2、Fbtrの変化の例を示すタイムチャートである。
符号の説明
10…エンジン、12…トルクコンバータ、14…歯車式変速機構、16…オートマチックトランスミッション、26…制動装置、32…電子制御装置、40…駆動操作量検出センサ、42…制動操作量検出センサ、44i…圧力センサ、46i…車輪速度センサ、48…車両状態量検出センサ

Claims (6)

  1. 流体式トルクコンバータを備えた車両のトラクション制御装置にして、運転者により加速操作が行われることなく駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いて、駆動輪の駆動スリップが過大であるときには、運転者により制動操作が行われていても前記駆動輪に制動力を付与して駆動スリップを抑制するトラクション制御を行い、運転者により制動操作が行われている状況にてトラクション制御を行う場合には、前記駆動輪の駆動スリップ値に基づく目標制動力及び運転者による制動操作量に基づく目標制動力のうち大きい方の値に基づいて前記駆動輪に付与される制動力を制御することを特徴とする車両のトラクション制御装置。
  2. 前記駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上になったときに前記トラクション制御を開始し、運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於けるトラクション制御開始判定基準値は、運転者により加速操作が行われている状況に於けるトラクション制御開始判定基準値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の車両のトラクション制御装置。
  3. 前記駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上である状態が基準時間以上継続したときに前記トラクション制御を開始し、運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於ける基準時間は運転者により加速操作が行われている状況に於ける基準時間よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の車両のトラクション制御装置。
  4. 運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況に於いては、車速が基準車速以下であるときに前記駆動輪の駆動スリップ値がトラクション制御開始判定基準値以上であるか否かを判定することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両のトラクション制御装置。
  5. 前記基準車速はクリープトルクが低いときにはクリープトルクが高いときに比して小さくなるよう、クリープトルクに応じて可変設定されることを特徴とする請求項4に記載の車両のトラクション制御装置。
  6. 運転者により加速操作が行われることなくエンジンのアイドルアップ制御が行われているときに、運転者により加速操作が行われることなく前記駆動輪にクリープトルクが作用している状況であると判定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の車両のトラクション制御装置。
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