上記請求項1の構成によれば、「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制動制御の制動要求があり且つ車輌が停止状態にある」及び「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制動制御の制動要求があり且つ路面の摩擦係数が基準値以下の状況にて車輌が走行状態にある」の何れかのクリープトルク抑制制御実行条件が成立するときにのみ少なくとも駆動輪の制動力が増大するよう目標制動力が増大変更されるので、クリープトルク抑制制御実行条件が成立しクリープトルク抑制制御が必要であるときには確実に少なくとも駆動輪の制動力を増大させることができると共に、例えばアイドルアップ制御が実行されているが運転者又は自動制御の制動要求がない場合や、アイドルアップ制御が実行されており且つ運転者又は自動制御の制動要求があるが、車輌が路面の摩擦係数が高い走行路を走行しているような場合に、車輪の制動力が不必要に増大されること及びこれに起因してクリープトルクが不必要に抑制されることを確実に防止することができる。
また上記請求項2の構成によれば、「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制御の制動要求があり且つ運転者若しくは自動制御の加速要求がなく且つ車輌が停止状態にある」及び「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制御の制動要求があり且つ運転者若しくは自動制御の加速要求がなく且つ路面の摩擦係数が基準値以下の状況にて車輌が走行状態にある」の何れかのクリープトルク抑制制御実行条件が成立するときにのみ少なくとも駆動輪の制動力が増大するよう目標制動力が増大変更されるので、例えば運転者若しくは自動制御の制動要求があるが運転者若しくは自動制御の加速要求もあるような場合に、車輪の制動力が不必要に増大されることを確実に防止することができる。
また上記請求項3の構成によれば、車輌は駆動輪及び従動輪を有し、従動輪の車輪速度が零であるときに車輌が停止状態にあると判定されるので、車輌が停止状態にあるか否かを確実に判定することができ、これにより何れかのクリープトルク抑制制御条件が成立しているか否かを確実に判定することができる。
また上記請求項4の構成によれば、車輌は駆動輪及び従動輪を有し、駆動輪の前記目標制動力が増大変更されると共に従動輪の前記目標制動力が低減変更されるので、車輌全体の制動力を過剰に増大させることなく駆動輪の制動力を確実に増大させることができ、これにより車輌全体の制動力を過剰に増大させることなくクリープトルクを確実に抑制することができる。
また上記請求項5の構成によれば、クリープトルク抑制制御実行条件の何れも成立していない状況よりクリープトルク抑制制御実行条件の何れかが成立している状況へ変化したときには、目標制動力の増大変更量の増大変化率が制限されるので、クリープトルク抑制制御が不必要な状況よりクリープトルク抑制制御が必要な状況へ変化した場合に制動力が急激に増大することを確実に防止することができる。
また上記請求項6の構成によれば、クリープトルク抑制制御実行条件の何れかが成立している状況よりクリープトルク抑制制御実行条件の何れも成立していない状況へ変化したときには、目標制動力の増大変更量の低下変化率が制限されるので、クリープトルク抑制制御が必要な状況よりクリープトルク抑制制御が不必要な状況へ変化した場合に制動力が急激に低下することを確実に防止することができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6の構成に於いて、制動力制御手段は「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制御の制動要求があり且つ車輌が停止状態にある」及び「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制御の制動要求があり且つ路面の摩擦係数が基準値以下の状況にて車輌が基準車速以下の車速にて走行状態にある」の両者のクリープトルク抑制制御実行条件が成立するときにのみ少なくとも駆動輪の制動力が増大するよう目標制動力を増大変更するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項2乃至6の構成に於いて、制動力制御手段は「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制御の制動要求があり且つ運転者若しくは自動制御の加速要求がなく且つ車輌が停止状態にある」及び「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制御の制動要求があり且つ運転者若しくは自動制御の加速要求がなく且つ路面の摩擦係数が基準値以下の状況にて車輌が基準車速以下の車速にて走行状態にある」の両者のクリープトルク抑制制御実行条件が成立するときにのみ少なくとも駆動輪の制動力が増大するよう目標制動力を増大変更するよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項4乃至6又は上記好ましい態様1又は2の構成に於いて、駆動輪の目標制動力の増大変更量は従動輪の目標制動力の低減変更量の大きさよりも大きいよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、従動輪の目標制動力の低減変更量は車速が低いときには車速が高いときに比して小さいよう構成される(好ましい態様4)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5又は6又は上記好ましい態様1乃至4の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力の増大変更量の変化率の大きさを許容制限値以下に制限すると共に、運転者若しくは自動制御の制駆動要求量の変化率の大きさが大きいときには制駆動操作量の変化率の大きさが小さいときに比して許容制限値を大きくするよう構成される(好ましい態様5)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、制動力制御手段は運転者若しくは自動制御の制駆動要求量の変化率の大きさが大きいほど許容制限値が大きくなるよう、制駆動要求量の変化率の大きさに応じて許容制限値を可変設定するよう構成される(好ましい態様6)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5又は6又は上記好ましい態様1乃至4の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力の増大変更量の変化率の大きさを許容制限値以下に制限すると共に、車速が低いときには車速が高いときに比して許容制限値を大きくするよう構成される(好ましい態様7)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様7の構成に於いて、制動力制御手段は車輌が停止しているときには車輌が走行しているときに比して許容制限値を大きくするよう構成される(好ましい態様8)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項5又は6又は上記好ましい態様1乃至4の構成に於いて、制動力制御手段は路面の摩擦係数が低いときには路面の摩擦係数が高いときに比して許容制限値を小さくするよう構成される(好ましい態様9)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様9の構成に於いて、制動力制御手段は路面の摩擦係数が低いほど許容制限値が小さくなるよう、路面の摩擦係数に応じて許容制限値を可変設定するよう構成される(好ましい態様10)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力を増大させる過程に於いては運転者若しくは自動制御の制動要求量の増大変化率の大きさが大きいときには制動要求量の増大変化率の大きさが小さいときに比して許容制限値を大きくし、運転者若しくは自動制御の制動要求量の減少変化率の大きさが大きいときには制動要求量の減少変化率の大きさが小さいときに比して許容制限値を小さくするよう構成される(好ましい態様11)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力を低下させる過程に於いては運転者若しくは自動制御の制動要求量の増大変化率の大きさが大きいときには制動要求量の増大変化率の大きさが小さいときに比して許容制限値を小さくし、運転者若しくは自動制御の制動要求量の減少変化率の大きさが大きいときには制動要求量の減少変化率の大きさが小さいときに比して許容制限値を大きくするよう構成される(好ましい態様12)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力を低下させる過程に於いては運転者若しくは自動制御の駆動要求量の増大変化率の大きさが大きいときには駆動要求量の増大変化率の大きさが小さいときに比して許容制限値を大きくし、運転者若しくは自動制御の駆動要求量の減少変化率の大きさが大きいときには駆動要求量の減少変化率の大きさが小さいときに比して許容制限値を小さくするよう構成される(好ましい態様13)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様6又は11の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力を増大させる過程に於いては運転者若しくは自動制御の制動要求量の増大変化率の大きさが大きいほど許容制限値が大きくなり、運転者若しくは自動制御の制動要求量の減少変化率の大きさが大きいほど許容制限値が小さくなるよう、運転者若しくは自動制御の制動要求量の変化率の大きさに応じて許容制限値を可変設定するよう構成される(好ましい態様14)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様12の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力を低下させる過程に於いては運転者若しくは自動制御の制動要求量の増大変化率の大きさが大きいほど許容制限値が小さくなり、運転者若しくは自動制御の制動要求量の減少変化率の大きさが大きいほど許容制限値が大きくなるよう、運転者若しくは自動制御の制動要求量の変化率の大きさに応じて許容制限値を可変設定するよう構成される(好ましい態様15)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様13の構成に於いて、制動力制御手段は目標制動力を低下させる過程に於いては運転者若しくは自動制御の駆動要求量の増大変化率の大きさが大きいほど許容制限値が大きくなり、運転者若しくは自動制御の駆動要求量の減少変化率の大きさが大きいほど許容制限値が小さくなるよう、運転者若しくは自動制御の駆動要求量の変化率の大きさに応じて許容制限値を可変設定するよう構成される(好ましい態様16)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様9の構成に於いて、制動力制御手段は路面の摩擦係数が低いときには路面の摩擦係数が高いときに比して許容制限値を小さくするよう構成される(好ましい態様17)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様10又は17の構成に於いて、制動力制御手段は路面の摩擦係数が低いほど許容制限値が小さくなるよう、路面の摩擦係数に応じて許容制限値を可変設定するよう構成される(好ましい態様18)。
本発明他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6又は上記好ましい態様1乃至18の構成に於いて、制動力制御手段は車輌の実際の駆動力とアイドルアップ制御が行われない場合の車輌の目標駆動力との偏差に基づいて目標制動力の変更量を演算するよう構成される(好ましい態様19)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至6又は上記好ましい態様1乃至19の構成に於いて、車輌は後輪駆動車であるよう構成される(好ましい態様20)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施例について詳細に説明する。
図1は後輪駆動車に適用された本発明による車輌の制駆動力制御装置の一つの実施例を示す概略構成図(A)及び制御系のブロック線図(B)である。
図1に於いて、10はエンジンを示しており、エンジン10の駆動力はトルクコンバータ12及びトランスミッション14を含む自動変速機16を介してプロペラシャフト18へ伝達される。プロペラシャフト18の駆動力はディファレンシャル20により左後輪車軸22L及び右後輪車軸22Rへ伝達され、これにより駆動輪である左右の後輪24RL及び24RRが回転駆動される。
一方左右の前輪24FL及び24FRは従動輪であると共に操舵輪であり、図1には示されていないが運転者によるステアリングホイールの転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置によりタイロッドを介して周知の要領にて操舵される。
エンジン10への吸入空気量は吸気通路26に設けられたスロットルバルブ28により制御され、スロットルバルブ28は電動機を含むスロットルアクチュエータ30により駆動される。スロットルバルブ28の開度はアクセル開度センサ32により検出されるアクセルペダル33の踏み込み量に応じてエンジン制御装置34によりスロットルアクチュエータ30を介して制御される。またエンジン10の吸気通路26の各気筒の給気ポートにはガソリンの如き燃料を噴射するインジェクタ36が設けられており、インジェクタ36による燃料噴射量もエンジン制御装置34により制御される。
エンジン制御装置34にはアクセル開度センサ32よりアクセルペダル38の踏み込み量(アクセル開度A)を示す信号が入力され、また図には示されていない他のセンサよりエンジン回転数Ne、その他のエンジン制御情報を示す信号が入力される。エンジン制御装置34は通常時にはアクセル開度A等に基づき目標エンジントルクTetを演算し、目標エンジントルクTet及びエンジン回転数Neに基づきスロットルバルブ28の目標開度φstを演算し、スロットルバルブ28の開度を目標開度φstになるよう制御する。
またエンジン制御装置34は冷寒始動時や補機作動時のアイドル運転の如く、予め設定されたアイドルアップ条件が成立すると、エンジン10のアイドル運転の回転数を上昇させるアイドルアップ制御を行う。
左右の前輪24FL、24FR及び左右の後輪24RL、24RRの制動力は制動装置42の油圧回路44により対応するホイールシリンダ46FL、46FR、46RL、46RRの制動圧が制御されることによって制御される。図1には示されていないが、油圧回路44はリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル48の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ50内の圧力、即ちマスタシリンダ圧力Pmに基づいて制動力制御装置52により制御される。
また各ホイールシリンダの制動圧は先行車輌との間の車間距離が基準値以下になったときには、車間距離を所定の範囲内の値に制御すべく、マスタシリンダ圧力Pmに関係なく制動力制御装置52により制御される。更に各ホイールシリンダの制動圧は車輌の挙動が悪化したときには、車輌の挙動を安定化させるべく、マスタシリンダ圧力Pmに関係なく制動力制御装置52により制御される。
図1(B)に示されている如く、制動力制御装置52には、車間距離検出センサ54より車輌前方の先行車輌との間の車間距離Lを示す信号、CCDカメラの如く障害物検出センサ56より車輌前方の障害物の有無を示す信号等が入力される。また制動力制御装置52には、操舵角センサ58より操舵角θを示す信号、車速センサ60より車速Vを示す信号、ヨーレートセンサ62より車輌のヨーレートγを示す信号、μセンサ64より路面の摩擦係数μを示す信号、圧力センサ66よりマスタシリンダ圧力Pmを示す信号、圧力センサ68FL〜68RRよりそれぞれホイールシリンダ46FL〜46RR内の圧力Pi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。また制動力制御装置52にはエンジン制御装置34よりアクセル開度Aを示す信号、エンジン10の目標出力トルクTetを示す信号、エンジン10の実際の出力トルクTeaを示す信号、アイドルアップ制御が実行されているか否かを示す信号も入力される。
尚エンジン制御装置34及び制動力制御装置52は、実際にはそれぞれCPU、ROM、RAM、入出力ポート装置等を含み、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された周知の構成のマイクロコンピュータと駆動回路とを含むものであってよい。また操舵角センサ54及びヨーレートセンサ58はそれぞれ車輌の左旋回時を正として操舵角θ及び車輌のヨーレートγを検出する。
特に図示の実施例に於いては、制動力制御装置52は、図2乃至図4に示されたフローチャートに従って、(1)「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制動制御の制動要求があり且つ車輌が停止状態にある」及び(2)「アイドルアップ制御が行われており且つ運転者若しくは自動制動制御の制動要求があり且つ路面の摩擦係数が基準値以下の状況にて車輌が走行状態にある」の何れかの条件が成立しているか否かを判別し、上記(1)及び(2)の何れの条件も成立していないときには、運転者若しくは自動制動制御の制動要求に基づく目標制動力になるよう各車輪の制動力を制御し、これにより不必要なクリープトルク抑制制動力が車輪に付与されることを防止する。
これに対し、上記(1)及び(2)の何れかの条件が成立しているときには、制動力制御装置52は、左右前輪の制動力が増大し且つ左右後輪の制動力が減少することにより車輌全体の制動力が増大するよう制動要求に基づく目標制動力を変更し、変更後の目標制動力になるよう各車輪の制動力を制御し、これによりアイドルアップ制御に伴う余剰のクリープトルクを確実に抑制する。
また図示の実施例に於いては、制動力制御装置52は、図2乃至図6に示されたフローチャートに従って、クリープトルク抑制制御の開始時には車輌が停止状態にあるか否か、運転者若しくは自動制御の制動要求量の変化率、路面の摩擦係数μに応じてクリープトルク抑制制動力の増大変化率を制御し、クリープトルク抑制制御の終了時には車輌が停止状態にあるか否か、運転者若しくは自動制御の制動要求量の変化率、運転者若しくは自動制御の加速要求量の変化率、路面の摩擦係数μに応じてクリープトルク抑制制動力の低下変化率を制御し、これによりクリープトルク抑制制御の開始時及びクリープトルク抑制制御の終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の変化率を運転者の制駆動操作状況や車輌の走行状況(車速及び路面の摩擦係数)に応じて最適化する。
次に図2に示されたフローチャートを参照して図示の実施例に於ける制動力制御ルーチンについて説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。また図2に於いて、フラグFbはアイドルアップ制御に伴う目標制動力の変更が行われているか否かに関するものであり、1は目標制動力の変更が行われていることを意味し、フラグFbは制御の開始時に0に初期化される。
まずステップ10に於いてはマスタシリンダ圧力Pmを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては車間距離制御及び挙動制御が不要である状況に於いてはマスタシリンダ圧力Pmに基づき車輌の目標制動力Fv及び目標ヨーモーメントMv(V=0)が演算され、車間距離制御又は挙動制御による制駆動力の自動制御が必要であるときにはそれぞれ当技術分野に於いて公知の要領にて車間距離制御又は挙動制御を達成するための車輌の目標制動力Fv及び目標ヨーモーメントMvが演算される。
ステップ30に於いては車輌の目標制動力Fv及び目標ヨーモーメントMvに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車輌の目標制動力Fv及び目標ヨーモーメントMvを達成するための各車輪の暫定目標制動力Fwtpi(i=fl、fr、rl、rr)が演算される。
ステップ40に於いてはフラグFbが1であるか否かの判別、即ちアイドルアップ制御に伴うクリープトルク抑制制御が行われているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ90へ進み、否定判別が行われたときにはステップ50へ進む。
ステップ50に於いては図3に示されたフローチャートによるルーチンに従ってクリープトルク抑制制御の開始条件が成立しているか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ70に於いてフラグFbが1にセットされると共にクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値Fctfが0に設定された後ステップ100へ進み、否定判別が行われたときにはステップ80に於いて各車輪の目標制動力Fwtiがそれぞれ対応する暫定目標制動力Fwtpiに設定され、しかる後ステップ250へ進む。
ステップ90に於いてはステップ50の場合と同様、図4に示されたフローチャートによるルーチンに従ってクリープトルク抑制制御の終了条件が成立しているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ100へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ170へ進む。
ステップ100に於いてはエンジン制御装置34より入力されるエンジンの実際の出力トルクTeaとアイドルアップ制御が行われない場合に最適のエンジンの目標出力トルクTetとの偏差及び自動変速機16の変速段の情報に基づきアイドルアップ制御による車輌の過剰駆動力ΔFeが演算されると共に、過剰駆動力ΔFeに基づきクリープトルク抑制基本目標制動力Fctbが演算される。
ステップ110に於いては図5に示されたフローチャートによるルーチンに従ってクリープトルク抑制目標制動力の目標増減量ΔFctが演算され、ステップ130に於いてはクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値Fctfとステップ110に於いて演算された目標増減量ΔFctとの和としてクリープトルク抑制目標制動力Fctが演算される。
ステップ140に於いてはクリープトルク抑制目標制動力Fctがクリープトルク抑制基本目標制動力Fctb以上であるか否かの判別により、クリープトルク抑制目標制動力Fctの漸増処理が完了したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ160へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ150に於いてクリープトルク抑制目標制動力Fctがクリープトルク抑制基本目標制動力Fctbに設定され、しかる後ステップ160へ進む。
ステップ160に於いては車速Vが低いほど補正係数Kvbが0よりも大きく1以下の範囲にて小さくなるよう、車速Vに基づき図11に示されたグラフに対応するマップより補正係数Kvbが演算される。
ステップ170に於いては図6に示されたフローチャートによるルーチンに従ってクリープトルク抑制目標制動力の目標増減量ΔFctが演算され、ステップ200に於いてはクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値Fctfよりステップ200に於いて演算された目標増減量ΔFctが減算された値としてクリープトルク抑制目標制動力Fctが演算される。
ステップ210に於いてはクリープトルク抑制目標制動力Fctが0以下であるか否かの判別により、クリープトルク抑制目標制動力Fctの漸減処理が完了したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ230へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ220に於いてフラグFbが0にリセットされると共に、クリープトルク抑制目標制動力Fctが0に設定され、しかる後ステップ230へ進む。
ステップ230に於いては左右前輪の目標制動力Fwtfl及びFwtfrがそれぞれ下記の式1及び2に従って演算され、ステップ240に於いては左右後輪の目標制動力Fwtrl及びFwtrrがそれぞれ下記の式3及び4に従って演算され、ステップ250に於いては各車輪の制動力がそれぞれ目標制動力Fwtiになるよう制御される。
Fwtfl=Fwtpfl−KvbFct/2 ……(1)
Fwtfr=Fwtpfr−KvbFct/2 ……(2)
Fwtrl=Fwtprl+Fct/2 ……(3)
Fwtfr=Fwtprr+Fct/2 ……(4)
次に図3に示されたフローチャートを参照して上記ステップ50に於いて実行されるクリープトルク抑制制御の開始条件が成立しているか否かの判別ルーチンについて説明する。
まずステップ52に於いてはエンジン10についてアイドルアップ制御が実行されているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ68へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ54へ進む。
ステップ54に於いては運転者による制動要求又は車間距離制御や挙動制御等の自動制動制御による制動要求があるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ68へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ56へ進む。
ステップ56に於いては図には示されていないシフトポジションセンサよりの信号に基づき自動変速機16のシフトポジションが前進段又は後進段(車輌の走行段)にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ68へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ58へ進む。
ステップ58に於いては運転者による加速要求又は車間距離制御や挙動制御等の自動制御による加速要求がないか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ68へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ60へ進む。
ステップ60に於いては車速Vが基準値Vo(正の定数)以下であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ68へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ62へ進む。
ステップ62に於いては路面の摩擦係数μが基準値μo(正の定数)以下であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ68へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ64へ進む。
ステップ64に於いては車速Vが0であるか否かの判別、即ち車輌が停止状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ68に於いてクリープトルク抑制制御の開始条件が成立している旨の判定が行われた後ステップ70へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ66に於いてクリープトルク抑制制御の開始条件が成立していない旨の判定が行われた後ステップ80へ進む。尚各車輪に車輪速度センサが設けられている場合には、車速Vが0であるか否かの判別は従動輪である左右前輪の車輪速度が0であるときに車速Vが0であると判定されてよい。
尚図4のステップ92〜108はそれぞれ図3のステップ52〜68に対応しており、従って上記ステップ90に於いて実行されるクリープトルク抑制制御の終了条件が成立しているか否かの判別ルーチンもクリープトルク抑制制御の開始条件が成立しているか否かの判別ルーチンと同様に実行され、ステップ106に於いてはクリープトルク抑制制御の終了条件が成立していない旨の判定が行われた後ステップ100へ進み、ステップ108に於いてはクリープトルク抑制制御の終了条件が成立している旨の判定が行われた後ステップ170へ進む。
次に図5に示されたフローチャートを参照して上記ステップ110に於いて実行されるクリープトルク抑制目標制動力の目標増減量ΔFct演算ルーチンについて説明する。
まずステップ112に於いては車速Vが0であるか否かの判別、即ち車輌が停止状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ114に於いて運転者による制動要求量の変化率又は自動制動制御による制動要求量の変化率(正は増加変化率、負は減少変化率)に基づき図7の実線にて示されたグラフに対応するマップよりクリープトルク抑制目標制動力の基本制限増加量ΔFabが演算され、肯定判別が行われたときにはステップ116に於いて運転者による制動要求量の変化率又は自動制動制御による制動要求量の変化率に基づき図7の破線にて示されたグラフに対応するマップよりクリープトルク抑制目標制動力の基本制限増加量ΔFabが演算される。
ステップ118に於いては路面の摩擦係数μが低いほど補正係数Kmが正の範囲にて小さくなるよう、路面の摩擦係数μに基づき図10に示されたグラフに対応するマップより補正係数Kmが演算され、ステップ120に於いてはクリープトルク抑制目標制動力Fctが過剰な増大率にて増大することを防止するための制限増加量ΔFaが補正係数Kmと基本制限増加量ΔFabとの積として演算される。
ステップ122に於いてはクリープトルク抑制基本目標制動力Fctbとクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値Fctfとの偏差が制限増加量ΔFaよりも大きいか否かの判別、即ちクリープトルク抑制制動力を制限増加量ΔFa増大させてもクリープトルク抑制基本目標制動力Fctbに到達しない状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ124に於いてクリープトルク抑制制動力の目標増減量ΔFctが制限増加量ΔFaに設定され、否定判別が行われたときにはステップ126に於いてクリープトルク抑制制動力の目標増減量ΔFctがクリープトルク抑制基本目標制動力Fctbよりクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値Fctfを減算した値に設定される。
次に図6に示されたフローチャートを参照して上記ステップ170に於いて実行されるクリープトルク抑制目標制動力の目標増減量ΔFct演算ルーチンについて説明する。
まずステップ172に於いては車速Vが0であるか否かの判別、即ち車輌が停止状態にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ180へ進み、否定判別が行われたときにはステップ174へ進む。
ステップ174に於いては運転者による加速要求の変化率又は自動制動制御による加速要求があるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ176に於いて運転者による制動要求量の変化率又は自動制動制御による制動要求量の変化率に基づき図8の実線にて示されたグラフに対応するマップよりクリープトルク抑制目標制動力の基本制限低下量ΔFbbが演算され、肯定判別が行われたときにはステップ178に於いて運転者による加速要求量の変化率又は自動制動制御による加速要求量の変化率(正は増加変化率、負は減少変化率)に基づき図9の実線にて示されたグラフに対応するマップよりクリープトルク抑制目標制動力の基本制限低下量ΔFbbが演算される。
同様に、ステップ180に於いては運転者による加速要求又は自動制動制御による加速要求があるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ182に於いて運転者による制動要求量の変化率又は自動制動制御による制動要求量の変化率に基づき図8の破線にて示されたグラフに対応するマップよりクリープトルク抑制目標制動力の基本制限低下量ΔFbbが演算され、肯定判別が行われたときにはステップ184に於いて運転者による加速要求量の変化率又は自動制動制御による加速要求量の変化率に基づき図9の破線にて示されたグラフに対応するマップよりクリープトルク抑制目標制動力の基本制限低下量ΔFbbが演算される。
ステップ186に於いては路面の摩擦係数μが低いほど補正係数Kmが正の範囲にて小さくなるよう、路面の摩擦係数μに基づき図10に示されたグラフに対応するマップより補正係数Kmが演算され、ステップ188に於いてはクリープトルク抑制目標制動力Fctが過剰な低下率にて低下することを防止するための制限低下量ΔFbが補正係数Kmと基本制限低下量ΔFbbとの積として演算される。
ステップ190に於いてはクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値Fctfと制限低下量ΔFbとの偏差が0よりも小さいか否かの判別、即ちクリープトルク抑制制動力を制限低下量ΔFa低下させてもクリープトルク抑制目標制動力が負の値にならない状況であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ192に於いてクリープトルク抑制制動力の目標増減量ΔFctが制限低下量ΔFbに設定され、否定判別が行われたときにはステップ194に於いてクリープトルク抑制制動力の目標増減量ΔFctがクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値に設定される。
かくして図示の実施例によれば、ステップ20及び30に於いて運転者又は自動制動の制動要求に基づいて各車輪の暫定目標制動力Fwtpiが演算され、ステップ50及び90に於いてクリープトルク抑制制御の実行条件が成立しているか否かの判別が行われ、クリープトルク抑制制御の実行条件が成立しているときにはステップ100〜160及びステップ230〜250に於いてアイドルアップ制御による車輌の過剰駆動力ΔFeに基づいてクリープトルク抑制目標制動力Fctが演算され、クリープトルク抑制目標制動力Fctに基づいて左右前輪の目標制動力Fwtfl及びFwtfrが低減変更されると共に左右後輪の目標制動力Fwtrl及びFwtrrが増大変更され、各車輪の制動力がそれぞれ変更後の目標制動力Fwtiになるよう制御されることによりクリープトルク抑制制御が実行される。
従って図示の実施例によれば、クリープトルク抑制制御の実行条件が成立しているときには、即ちアイドルアップ制御に起因してクリープトルクが過剰であるときには、アイドルアップ制御による車輌の過剰駆動力ΔFeに応じて車輌全体の制動力を増大させ、これによりクリープトルクを過不足なく適正に抑制することができる。
また図示の実施例によれば、ステップ50及び90に於いてクリープトルク抑制制御の実行条件が成立しているか否かの判別が行われ、図3及び図4に示されている如く、(1)「アイドルアップ制御が実行されており(ステップ52、92)且つ運転者による制動要求又は自動制動制御による制動要求があり(ステップ54、94)且つ車輌が停止状態にある(ステップ64、104)」及び(2)「アイドルアップ制御が実行されており(ステップ52、92)且つ運転者による制動要求又は自動制動制御による制動要求があり(ステップ54、94)且つ路面の摩擦係数が基準値以下の状況にて車輌が走行状態にある(ステップ62、102)」の何れかの条件が成立するときにのみクリープトルク抑制制御が実行されるので、クリープトルク抑制制御が不必要に実行され車輪に不必要にクリープトルク抑制制動力が付与されることを防止することができ、これによりブレーキ鳴きや異音の発生の虞れを低減し、ブレーキパッドやブレーキアクチュエータの耐久性を向上させることができ、また環境保護にも資することができる。
特に図示の実施例によれば、上記(1)及び(2)の条件には、「自動変速機のシフトポジションが前進段又は後進段にあり且つ(ステップ56、96)且つ運転者による加速要求又は自動制御による加速要求がない(ステップ58、98)」の条件が加重されているので、上記(1)及び(2)の条件の成立判定の場合に比してクリープトルク抑制制御が不必要に実行される虞れを更に一層低減することができる。
また図示の実施例によれば、ステップ50に於いてクリープトルク抑制制御の開始条件が成立したと判定されると、ステップ100に於いてクリープトルク抑制基本目標制動力Fctbが演算され、ステップ110に於いてクリープトルク抑制目標制動力の目標増減量ΔFctが演算され、ステップ130に於いてクリープトルク抑制目標制動力Fctの前回値Fctfとステップ110に於いて演算された目標増減量ΔFctとの和としてクリープトルク抑制目標制動力Fctが演算され、これによりクリープトルク抑制制御の開始時に於けるクリープトルク抑制目標制動力Fctの増大率が目標増減量ΔFctの対応する増大率に制限される。
特にクリープトルク抑制制御の開始時に於ける目標増減量ΔFct(目標増加量)は図5に示されたルーチンのステップ112〜126により演算され、図7に示されている如く、制動要求量の増大変化率が大きいほど大きくなると共に制動要求量の低下変化率が大きいほど小さくなるよう、制動要求量の変化率に応じて可変設定される。
従ってクリープトルク抑制制御の開始時に於ける運転者の制動操作量が一定である状況に於いて、クリープトルク抑制制動力が急激に増大することを防止し、これにより運転者が車輌が不自然に重たくなったように感じることを効果的に防止することができる。またクリープトルク抑制制御の開始時に運転者の制動操作量が増大される場合にはクリープトルク抑制制動力を速やかに増大させてクリープトルクの抑制効果を早期に発揮させることができ、逆にクリープトルク抑制制御の開始時に運転者の制動操作量が低下される場合にはクリープトルク抑制制動力を穏やかに増大させてクリープトルク抑制制動力が急激に増大することを防止することができる。
またクリープトルク抑制制御の開始時に於ける目標増減量ΔFctは図7に示されている如く、車輌が停止状態にあるときには車輌が走行状態にあるときよりも大きいので、制動力が急激に増大しても車輌の乗員が違和感を覚えることがない車輌の停止状態時にはクリープトルクの抑制効果を早期に発揮させることができると共に、車輌が走行状態にあるときには制動力の増大変化を穏やかにして制動力の急増に起因して車輌の乗員が違和感を覚えることを効果的に防止することができる。
またクリープトルク抑制制御の終了時に於ける目標増減量ΔFct(目標低減量)は図6に示されたルーチンのステップ172〜194により演算され、運転者又は自動制御の加速要求がないときには、図8に示されている如く、制動要求量の増大変化率が大きいほど小さくなると共に制動要求量の低下変化率が大きいほど大きくなるよう、制動要求量の変化率に応じて可変設定される。
従ってクリープトルク抑制制御の終了時に運転者の制動操作量が増大される場合にはクリープトルク抑制制動力を穏やかに低下させてクリープトルク抑制制動力が急激に低下することを防止することができ、逆にクリープトルク抑制制御の終了時に運転者の制動操作量が低下される場合にはクリープトルク抑制制動力を速やかに低下させてクリープトルク抑制制動力が不必要に長く車輪に付与されることを防止することができる。
またクリープトルク抑制制御の終了時に運転者又は自動制御の加速要求があるときには、目標増減量ΔFct(目標低減量)は図9に示されている如く、加速要求量の増大変化率が大きいほど大きくなると共に加速要求量の低下変化率が大きいほど小さくなるよう、加速要求量の変化率に応じて可変設定される。
従ってクリープトルク抑制制御の終了時に運転者の加速操作量が増大される場合にはクリープトルク抑制制動力を速やかに低下させてクリープトルク抑制制動力が不必要に長く車輪に付与されることに起因して運転者が引っ掛かり感を覚えることを効果的に防止することができ、逆にクリープトルク抑制制御の終了時に運転者の制動操作量が低下される場合にはクリープトルク抑制制動力を穏やかに低下させてクリープトルク抑制制動力が急激に低下することを防止することができる。
またクリープトルク抑制制御の終了時に於ける目標増減量ΔFctも図8及び図9に示されている如く、車輌が停止状態にあるときには車輌が走行状態にあるときよりも大きいので、制動力が急激に低下しても車輌の乗員が違和感を覚えることがない車輌の停止状態時にはクリープトルクの抑制制御を速やかに終了させることができると共に、車輌が走行状態にあるときには制動力の低下変化を穏やかにして制動力の急減に起因して車輌の乗員が違和感を覚えることを効果的に防止することができる。
また図示の実施例によれば、車輌が停止状態にある場合及び車輌が走行状態にある場合の何れの場合にも、同一の制動要求量の変化率について見て、クリープトルク抑制制御の開始時に於ける目標増減量ΔFctはクリープトルク抑制制御の終了時に於ける目標増減量ΔFctよりも小さいので、クリープトルク抑制制御の開始時に於けるクリープトルク抑制制動力の増大率をクリープトルク抑制制御の終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の低下率の大きさよりも小さくすることができ、これによりクリープトルク抑制制御開始時に制動力の変化に起因して車輌の乗員が違和感を覚える虞れを確実に低減すると共に、クリープトルク抑制制御の終了時にクリープトルク抑制制動力を速やかに低下させることができる。
また図示の実施例によれば、ステップ118及び186に於いて路面の摩擦係数μが低いほど補正係数Kmが正の範囲にて小さくなるよう演算され、クリープトルク抑制制御の開始時にはステップ120に於いて制限増加量ΔFaが補正係数Kmと基本制限増加量ΔFabとの積として演算され、ステップ122〜126に於いて制限増加量ΔFaに基づいて目標増減量ΔFctが演算され、クリープトルク抑制制御の終了時にはステップ188に於いて制限低下量ΔFbが補正係数Kmと基本制限低下量ΔFbbとの積として演算され、ステップ190〜194に於いて制限低下量ΔFbに基づいて目標増減量ΔFctが演算される。
従ってクリープトルク抑制制御の開始時及びクリープトルク抑制制御の終了時の何れの場合にも、路面の摩擦係数μが低いほどクリープトルク抑制制動力の変化率を小さくすることができ、これによりクリープトルク抑制制御の開始時及びクリープトルク抑制制御の終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の増減変化率を路面の摩擦係数μに応じて最適化することができる。例えば路面の摩擦係数μが低い状況に於いては、クリープトルク抑制制御の開始時に於けるクリープトルク抑制制動力の増加変化率が過剰になって車輪がロックする虞れを低減することができ、クリープトルク抑制制御の終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の低下変化率が過剰になって車輪がホイルスピンし車輌の発進が困難になる虞れを低減することができ、路面の摩擦係数μが高い状況に於いては、クリープトルク抑制制御の開始時に於けるクリープトルク抑制制動力の増大及びクリープトルク抑制制御の終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の低減を効率的に行うことができる。
また図示の実施例によれば、クリープトルク抑制制御が実行される際には、ステップ230及び240に於いて駆動輪である左右後輪の制動力が増大されると共に従動輪である左右前輪の制動力が低減されるので、車輌全体の制動力が過剰になることを防止しつつクリープトルクを効果的に抑制することができる。
また図示の実施例によれば、ステップ160に於いて車速Vが低いほど補正係数Kvbが0よりも大きく1以下の範囲にて小さくなるよう演算され、クリープトルク抑制制御が実行される際に於ける左右前輪の制動力の低減量は補正係数Kvbが乗算された値に制御されるので、車速が低い状況に於いて確実に駆動輪である左右後輪の制動力を増大すると共に従動輪である左右前輪の制動力を低減することができ、また中高速の車速域に於いて不必要にクリープトルク抑制制動力が付与されることを確実に防止することができる。
また図示の実施例によれば、クリープトルク抑制制御の開始時に於けるクリープトルク抑制制動力の変化率は運転者又は自動制御の制動要求量の変化率に応じて可変設定され、クリープトルク抑制制御の終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の変化率は運転者又は自動制御の加速要求量の変化率に応じて可変設定されるようになっているので、運転者の制動要求量の変化率及び運転者の加速要求量の変化率に応じてクリープトルク抑制制動力の変化率を最適化することができるだけでなく、自動制御の制動要求量や加速要求量が変化する場合にも自動制御の制動要求量の変化率及び自動制御の加速要求量の変化率に応じてクリープトルク抑制制動力の変化率を最適化することができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の実施例に於いては、クリープトルク抑制制御の開始時に於けるクリープトルク抑制制動力の変化率は運転者又は自動制御の制動要求量の変化率に応じて可変設定され、クリープトルク抑制制御の終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の変化率は運転者又は自動制御の加速要求量の変化率に応じて可変設定されるようになっているが、クリープトルク抑制制動力の変化率は運転者の制動要求量及び加速要求量の変化率に応じて可変設定されるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、クリープトルク抑制制御の開始時及び終了時に於けるクリープトルク抑制制動力の変化率はステップ112及び172に於いて車輌が停止状態にあるか否かが判定され、車輌が停止状態にあるか走行状態にあるかに応じて異なるマップ(図7〜図9)より演算されるようになっているが、図12〜図14に示されている如く、車輌が停止状態にあるか否かが判定されることなく、車速Vに応じてマップが切り替えられるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、自動制御は車間距離制御及び制駆動力制御式の挙動制御であるが、自動制御は運転者の制駆動操作に依存することなく制駆動力を制御する当技術分野に於いて公知の任意の制御であってよい。
また上述の実施例に於いては、駆動輪である左右後輪の目標制動力が増大変更されると共に従動輪である左右前輪の目標制動力が低減変更されるようになっているが、従動輪の目標制動力の低減変更が行われないよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、ステップ160に於いて車速Vが低いほど補正係数Kvbが0よりも大きく1以下の範囲にて小さくなるよう演算され、クリープトルク抑制制御が実行される際に於ける左右前輪の制動力の低減量は補正係数Kvbが乗算された値に制御されるようになっているが、補正係数Kvbは省略されてもよい。
更に上述の実施例に於いては、車輌は後輪駆動車であるが、本発明が適用される車輌は前輪駆動車や四輪駆動車であってもよい。