JP4784741B2 - 車輌の駆動力制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車輌の駆動力制御装置に係り、更に詳細には乗員の運転操作状況及び車輌の走行状況に基づいて車輌の駆動力を制御する駆動力制御装置に係る。
自動車等の車輌の駆動力制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる下記の特許文献1に記載されている如く、運転者の加速要求に応じて車輌の目標駆動力を演算し、目標駆動力に基づいてエンジンの目標スロットル開度及びトランスミッションの目標変速段を決定し、目標スロットル開度に基づいてエンジンの出力を制御すると共に目標変速段に基づいてトランスミッションの変速段を制御するよう構成された駆動力制御装置が従来より知られている。
特開2003−191774号公報
上述の如き従来の駆動力制御装置に於いては、トランスミッションの目標変速段は車輌の目標駆動力及び車速(又は車速に対応する値)に基づいて予め設定された変速線により一義的に決定され、車速はトランスミッションの出力回転数や車輪の回転速度に基づいて推定されるため、路面の摩擦係数の状況やトラクション制御の実行によりトランスミッションの変速段が不必要に変更される場合がある。
例えば車輌が低摩擦係数の路面にて加速するような場合に駆動輪の駆動スリップ量が大きくなると、トランスミッションの出力回転数や駆動輪の回転速度が増大することに起因して推定車速が高くなるので、車輌の実際の車速は上昇していないにも拘らず、駆動力制御装置は増大した推定車速に基づいてトランスミッションの目標変速段を決定し、そのためトランスミッションを不必要にシフトアップしてしまうことがある。
またトラクション制御の実行により駆動輪の駆動スリップ量が低下すると、トランスミッションの出力回転数や駆動輪の回転速度が低下することに起因して推定車速が低くなるので、車輌の実際の車速は低下していないにも拘らず、駆動力制御装置は低下した推定車速に基づいてトランスミッションの目標変速段を決定し、そのためトランスミッションを不必要にシフトダウンしてしまうことがある。
上記問題はトランスミッションの変速機が多段式の自動変速機である場合に限られるものではなく、トランスミッションの変速機が無段式の自動変速機である場合にも程度の差はあるが同様に発生することがある。
本発明は、運転者の加速要求に応じて目標駆動力が演算され、トランスミッションの目標変速比が目標駆動力及び車速に基づいて予め設定された変速線により決定されるよう構成された従来の駆動力制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、トラクション制御が実行される状況に於いてはトランスミッションの変速比の変更を抑制することにより、トランスミッションの変速比が不必要に変更されることを防止することである。
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち駆動源及びトランスミッションを含む駆動装置と、少なくとも乗員の駆動操作量に基づいて前記駆動装置の目標駆動力を演算する手段と、前記駆動源の駆動力を制御する駆動源制御手段と、前記トランスミッションの変速比を制御する変速比制御手段と、少なくとも前記駆動装置の駆動力を制御することにより駆動輪の駆動スリップを抑制するトラクション制御を行うトラクション制御手段とを有する車輌の駆動力制御装置に於いて、
前記トラクション制御が行われていないときには、前記駆動源制御手段及び前記変速比制御手段は前記目標駆動力に基づいてそれぞれ前記駆動源の駆動力及び前記トランスミッションの変速比を制御し、
前記トラクション制御が行われているときには、前記駆動源制御手段はトラクション制御用目標駆動力を前記目標駆動力よりも小さい値に演算し、該トラクション制御用目標駆動力に基づいて前記駆動源の駆動力を制御するが、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの変速比の変更を抑制するための変速比制御用目標駆動力を前記目標駆動力よりも小さく且つ前記トラクション制御用目標駆動力よりも大きい値に演算し、該変速比制御用目標駆動力に基づいて前記トランスミッションの変速比を制御することを特徴とする車輌の駆動力制御装置によって達成される。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記変速比制御手段は、前記目標駆動力に基づいて前記目標駆動力に比して小さい低下勾配にて低下変化する値に第一の修正目標駆動力を演算し、
何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて、前記現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の値に第二の修正目標駆動力を設定し、駆動輪の駆動スリップ量が前記基準値以下であるときには、前記目標駆動力及び路面の摩擦係数に基づいて演算される暫定変速比制御用目標駆動力を演算し、前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の下限値及び前記暫定変速比制御用目標駆動力のうちの大きい方の値に第二の修正目標駆動力を設定することにより、前記目標駆動力と前記トラクション制御用目標駆動力との間の値であって前記トランスミッションの変速比の変更を防止する値に第二の修正目標駆動力を演算し、
前記第一及第二の修正目標駆動力のうちの大きい方の値を前記変速比制御用目標駆動力として演算するよう構成される(請求項の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項の構成に於いて、前記トラクション制御が行われている状況に於いて何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の下限値を求め、前記下限値よりも大きい値に前記第二の修正目標駆動力を設定するよう構成される(請求項の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項の構成に於いて、前記トラクション制御が行われている状況に於いて何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の上限値及び下限値を求め、前記上限値と前記下限値との間の値に前記第二の修正目標駆動力を設定するよう構成される(請求項の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項の構成に於いて、前記トラクション制御が行われている状況に於いて何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の上限値及び下限値を求め、前記上限値及び前記下限値の平均値に前記第二の修正目標駆動力を設定するよう構成される(請求項の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項の構成に於いて、前記変速比制御手段は路面の摩擦係数が低いほど小さくなるよう前記暫定変速比制御用目標駆動力を演算するよう構成される(請求項の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項乃至の何れか一つの構成に於いて、前記基準値は前記トラクション制御の開始判定の駆動スリップ量の基準値よりも大きいよう構成される(請求項の構成)。
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至の何れか一つの構成に於いて、前記トランスミッションは多段式の自動変速機を含んでいるよう構成される(請求項の構成)。
上記請求項1の構成によれば、少なくとも乗員の駆動操作量に基づいて駆動装置の目標駆動力が演算される。そしてトラクション制御が行われていないときには、目標駆動力に基づいて駆動源の駆動力及びトランスミッションの変速比が制御される。これに対しトラクション制御が行われているときには、駆動源の駆動力は目標駆動力よりも小さいトラクション制御用目標駆動力に基づいて制御されるが、トランスミッションの変速比は目標駆動力よりも小さく且つトラクション制御用目標駆動力よりも大きい変速比制御用目標駆動力に基づいて、即ちトランスミッションの変速比の変更を抑制する変速比制御用目標駆動力に基づいて制御される。従ってトラクション制御が行われている状況に於いて、駆動源の駆動力の制御に影響を及ぼすことなく、駆動輪の車輪速度が増減変化することに起因してトランスミッションの変速比が不必要に変更される虞れを効果的に低減することができる。
また上記請求項の構成によれば、目標駆動力に基づいて目標駆動力に比して小さい低下勾配にて低下変化する値に第一の修正目標駆動力が演算される。また何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、トランスミッションの出力回転数及びトランスミッションの現在の変速比に基づいて、現在の変速比にて達成可能な駆動装置の駆動力の値に第二の修正目標駆動力が設定され、駆動輪の駆動スリップ量が基準値以下であるときには、目標駆動力及び路面の摩擦係数に基づいて暫定変速比制御用目標駆動力を演算し、トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な駆動装置の駆動力の下限値及び暫定変速比制御用目標駆動力のうちの大きい方の値に第二の修正目標駆動力が設定されることにより、目標駆動力とトラクション制御用目標駆動力との間の値であってトランスミッションの変速比の変更を防止する値に第二の修正目標駆動力が演算され、第一及第二の修正目標駆動力のうちの大きい方の値が変速比制御用目標駆動力として演算される。従って目標駆動力に比して低下変化が小さく且つトランスミッションの変速比の変更を防止することのできる変速比制御用目標駆動力を演算することができる。
また上記請求項2の構成によれば、トラクション制御が行われている状況に於いて駆動輪の駆動スリップ量が基準値以下であるときには、目標駆動力及び路面の摩擦係数に基づいて暫定変速比制御用目標駆動力が演算され、トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な駆動装置の駆動力の下限値及び暫定変速比制御用目標駆動力のうちの大きい方の値が第二の修正目標駆動力に設定される。従って目標駆動力及び路面の摩擦係数に応じて変速比制御用目標駆動力をトランスミッションの変速比の変更を抑制する値に最適に設定することができると共に、トランスミッションの変速比が不必要にアップシフト側へ変更されることを確実に防止することができる。
また上記請求項の構成によれば、トランスミッションの出力回転数及びトランスミッションの現在の変速比に基づいてトランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の下限値が求められ、第二の修正目標駆動力は該下限値よりも大きい値に設定される。従ってトランスミッションの変速比が不必要にアップシフト側へ変更されることを確実に防止することができる。
また上記請求項の構成によれば、トランスミッションの出力回転数及びトランスミッションの現在の変速比に基づいてトランスミッションの現在の変速比にて達成可能な駆動装置の駆動力の上限値及び下限値が求められ、上限値と下限値との間の値に第二の修正目標駆動力が設定される。従ってトランスミッションの変速比が不必要にアップシフト側及びダウンシフト側へ変更されることを確実に防止することができる。
また上記請求項の構成によれば、トランスミッションの出力回転数及びトランスミッションの現在の変速比に基づいてトランスミッションの現在の変速比にて達成可能な駆動装置の駆動力の上限値及び下限値が求められ、上限値及び下限値の平均値に変速比制御用目標駆動力が設定される。従ってトランスミッションの変速比が不必要にアップシフト側及びダウンシフト側へ変更されることを上記請求項の構成の場合よりも更に一層確実に防止することができる。
また上記請求項の構成によれば、暫定変速比制御用目標駆動力は路面の摩擦係数が低いほど小さくなるよう演算される。従って路面の摩擦係数が低いほどトランスミッションの変速比の変更を抑制する効果を高くすることができる。
また上記請求項の構成によれば、基準値はトラクション制御の開始判定の駆動スリップ量の基準値よりも大きいので、トラクション制御が行われている状況に於いて何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いか否かに応じて変速比制御用目標駆動力を最適に設定することができる。
また上記請求項の構成によれば、トランスミッションは多段式の自動変速機を含んでいるので、トランスミッションの変速段が不必要に変更されることを抑制又は防止することができる。
[課題解決手段の好ましい態様]
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至の構成に於いて、変速比制御手段はトラクション制御が行われていないときには目標駆動力及び車速に対応する状態量に基づいてトランスミッションの変速比を制御し、トラクション制御が行われているときには変速比制御用目標駆動力及び車速に対応する状態量に基づいてトランスミッションの変速比を制御するよう構成される(好ましい態様1)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至又は上記好ましい態様1の構成に於いて、トランスミッションは無段式の自動変速機を含んでいるよう構成される(好ましい態様2)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項乃至の構成に於いて、変速比制御手段は低下変化の応答性が増加変化の応答性よりも低いフィルタ処理を目標駆動力に対し行うことにより第一の修正目標駆動力を演算するよう構成される(好ましい態様3)。
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項乃至又は好ましい態様3の構成に於いて、変速比制御手段は乗員の加速要求が高いときには乗員の加速要求が低いときに比して第一の修正目標駆動力の低下制限度合を高くするよう構成される(好ましい態様4)。
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施例について詳細に説明する。
図1は後輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動力制御装置の一つの実施例を示す概略構成図、図2は実施例1の制御系を示すブロック図である。
図1に於いて、10はエンジンを示しており、エンジン10の駆動力はトルクコンバータ12及び歯車式変速機構14を含むオートマチックトランスミッション16を介してプロペラシャフト18へ伝達される。エンジン10及びオートマチックトランスミッション16は互いに共働して車輌の駆動装置10Aを構成している。
プロペラシャフト18の駆動力はディファレンシャル20により左後輪車軸22L及び右後輪車軸22Rへ伝達され、これにより駆動輪である左右の後輪24RL及び24RRが回転駆動される。一方左右の前輪24FL及び24FRは従動輪であると共に操舵輪であり、図1には示されていないが、運転者によるステアリングホイールの転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置によりタイロッドを介して操舵される。
左右の前輪24FL、24FR及び左右の後輪24RL、24RRの制動力は制動装置26の油圧回路28により対応するホイールシリンダ30FL、30FR、30RL、30RRの制動圧が制御されることによって制御される。図1には示されていないが、油圧回路28はオイルリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含んでいる。
車輌の制駆動力は統合制御電子制御装置32により制御される。統合制御電子制御装置32は通常時には運転者によるアクセルぺダル34の操作やエンジン負荷等に応じてエンジン10の出力及びトランスミッション16の変速段を制御すると共に、運転者によるブレーキペダル36の踏み込み操作に応じて油圧回路28を制御し、また必要に応じて車輌の走行運動を制御すべくエンジン10の出力及びトランスミッション16の変速段を制御すると共に、油圧回路28を制御し、これにより車輌の制駆動力を制御する。
図2に示されている如く、統合制御電子制御装置32は駆動力制御電子制御装置40と車輌運動制御電子制御装置42とを含み、駆動力制御電子制御装置40及び車輌運動制御電子制御装置42は相互に必要な情報の授受を行い、互いに共働して運転者の駆動要求及び制動要求に応じて車輌の制駆動力を制御すると共に、各車輪の制駆動力の制御によって車輌の走行運動を安定化させる。尚図2には詳細に示されていないが、駆動力制御電子制御装置40及び車輌運動制御電子制御装置42はそれぞれCPUとROMとRAMと入出力ポート装置とを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続されたマイクロコンピュータ及び駆動回路よりなっていてよい。
図2に示されている如く、駆動力制御電子制御装置40は運転者要求目標駆動力演算部44、調停部46、分配部48、発生駆動力演算部50を有し、車輌運動制御電子制御装置42は運動状態推定部54、制駆動力分配部56、修正目標駆動力演算部58を有している。
運転者要求目標駆動力演算部44にはアクセルペダル34に設けられたアクセル開度センサの如き駆動操作量検出センサ62より運転者の駆動操作量Aを示す信号が入力される。運転者要求目標駆動力演算部44は運転者の駆動操作量Aに基づいて運転者要求目標駆動力Fp_dvmを演算し、運転者要求目標駆動力Fp_dvmを示す信号を調停部46へ出力すると共に、車輌運動制御電子制御装置42の運動状態推定部54及び修正目標駆動力演算部58へ出力する。
調停部46には上記運転者要求目標駆動力Fp_dvmを示す信号に加えて、車輌運動制御電子制御装置42の制駆動力分配部56より制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowを示す信号及び制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowがあるか否か(ONのとき「あり」、OFFのとき「なし」)を示すフラグF_FP_NOW信号が入力され、また修正目標駆動力演算部58より修正目標駆動力Fp_t_futureを示す信号及び修正目標駆動力Fp_t_futureがあるか否か(ONのとき「あり」、OFFのとき「なし」)を示すフラグF_FP_FUTURE信号が入力される。
調停部46は、フラグF_FP_NOW信号がOFFであるときには、調停後の目標駆動力Fp_nowを運転者要求目標駆動力Fp_dvmに設定し、フラグF_FP_FUTURE信号がOFFであるときには、調停後の修正目標駆動力Fp_futureを運転者要求目標駆動力Fp_dvmに設定する。これに対し調停部46は、フラグF_FP_NOW信号がONであるときには、調停後の目標駆動力Fp_nowを制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowに設定し、フラグF_FP_FUTURE信号がONであるときには、調停後の修正目標駆動力Fp_futureを修正目標駆動力Fp_t_futureに設定する。
分配部48には調停部46より調停後の目標駆動力Fp_nowを示す信号及び調停後の修正目標駆動力Fp_futureを示す信号が入力され、回転数センサ76よりトランスミッション16の出力回転数Ntoutを示す信号が入力される。分配部48は調停後の目標駆動力Fp_nowに基づいて目標エンジン出力トルクTetを演算すると共に目標エンジン出力トルクTetを示す信号をエンジン制御装置64へ出力し、また調停後の修正目標駆動力Fp_future及びトランスミッション16の出力回転数Ntoutに基づいて図4に示された変速線図に従ってトランスミッションの目標変速段Stを演算すると共に目標変速段Stを示す信号を自動変速機制御装置66へ出力し、これにより車輌の駆動トルクFp、即ちエンジン10及びトランスミッション16よりなる駆動装置10Aの出力トルクが調停後の目標駆動力Fp_nowになるよう制御する。
発生駆動力演算部50にはエンジン制御装置64より現在のエンジン出力トルクTeaを示す信号が入力され、また自動変速機制御装置66より現在の変速段Saを示す信号が入力される。発生駆動力演算部50は現在のエンジン出力トルクTea及び現在の変速段Saに基づいて車輌の現在の駆動トルクFp_currentを演算し、車輌の現在の駆動トルクFp_currentを示す信号を車輌運動制御電子制御装置42の運動状態推定部54へ出力する。また発生駆動力演算部50は車輌の現在の駆動トルクFp_current及び現在の変速段Saを示す信号を車輌運動制御電子制御装置42の修正目標駆動力演算部58へ出力する。
運動状態推定部54は車輪速度センサ68i(i=fl、fr、rl、rr)により検出される各車輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)に基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車体速度Vbを演算すると共に、左右後輪の駆動スリップ量SArl、SArrを演算し、駆動スリップ量SArl、SArrがトラクション制御(TRC制御)開始の基準値SAs(正の定数)よりも大きくなり、トラクション制御の開始条件が成立すると、トラクション制御の終了条件が成立するまで、当該車輪の駆動スリップ量を所定の範囲内にするためのトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcを演算する。
また運動状態推定部54には駆動力制御電子制御装置40の運転者要求目標駆動力演算部44よりの運転者要求目標駆動力Fp_dvmを示す信号及び発生駆動力演算部50よりの車輌の現在の駆動トルクFp_currentを示す信号に加えて、図2には示されていないが、図1に示されている如く車輪速度センサ68i(i=fl、fr、rl、rr)より各車輪の車輪速度Vwi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力され、また操舵角センサ、前後加速度センサ、横加速度センサ、ヨーレートセンサの如き車輌状態量検出センサ70より操舵角θ、車輌の前後加速度Gx、車輌の横加速度Gy、車輌のヨーレートγを示す信号等が入力される。
運動状態推定部54は各車輪の車輪速度に基づく車体速度Vb及び操舵角θに基づいて当技術分野に於いて公知の要領にて車輌の目標ヨーレートγtを演算し、車輌の実際のヨーレートγと目標ヨーレートγtとの偏差Δγに基づいて車輌の挙動を判定し、ヨーレート偏差Δγの大きさが大きく車輌の挙動の制御が必要であるときには、ヨーレート偏差Δγの大きさを小さくするための目標駆動力として目標駆動力Fp_t_now_vscを演算する。
尚運動状態推定部54は制動時には車輌の前後加速度Gx等の車輌状態量に基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車輌のスピンの程度を示すスピン状態量SS及び車輌のドリフトアウトの程度を示すドリフトアウト状態量DSを演算し、スピン状態量SS及びドリフトアウト状態量DSに基づき車輌の挙動を判定し、車輌の挙動がスピン状態又はドリフトアウト状態であるときにはこれらを抑制するための挙動制御の各車輪の目標制動力Fbvti(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
尚車輌挙動の判定及び車輌の走行運動を安定化させるための挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscや目標制動力Fbvtiの演算自体は本発明の要旨をなすものではなく、当技術分野に於いて公知の任意の要領にて行われてよい。
また運動状態推定部54は当技術分野に於いて公知の要領にて路面の摩擦係数μ及び各車輪の横力Fwyi(i=fl、fr、rl、rr)を推定し、路面の摩擦係数μがその基準値μo(正の定数)よりも大きく且つ何れかの車輪の横力Fwyiが基準値Fwyo(正の定数)よりも大きいときには、車輌が高横力旋回状態にあると判定する。
また運動状態推定部54は車輌の挙動が安定しておりトラクション制御も挙動制御も不要であり車輌が高横力旋回状態にはないときには、車輌の目標制駆動力F_tを運転者要求目標駆動力Fp_dvmに設定して車輌の目標制駆動力F_tを示す信号を制駆動力分配部56へ出力する。これに対し運動状態推定部54は、トラクション制御が必要であると判定したときには、車輌の目標制駆動力F_tをトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcに設定すると共に、トラクション制御の判定結果及び車輌の目標制駆動力F_tを示す信号を制駆動力分配部56へ出力する。また運動状態推定部54は、挙動制御が必要であると判定したときには、車輌の目標制駆動力F_tを挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscに設定すると共に、車輌挙動の判定結果及び車輌の目標制駆動力F_tを示す信号を制駆動力分配部56へ出力する。
更に運動状態推定部54はトラクション制御及び挙動制御が必要であるときには、下記の式1に従ってトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc及び挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscのうちの小さい方の値を車輌の目標駆動力F_tとして演算し、トラクション制御及び車輌挙動の判定結果及び車輌の目標制駆動力F_tを示す信号を制駆動力分配部56へ出力する。
F_t=MIN(Fp_t_now_trc,Fp_t_now_vsc) ……(1)
制駆動力分配部56は車輌の目標制駆動力F_tが正の値であり駆動力であるときには、目標制駆動力F_tを制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowとし、制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowを示す信号を駆動力制御電子制御装置40の調停部46及び修正目標駆動力演算部58へ出力し、制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowがあるか否かを示すフラグF_FP_NOW信号を調停部46へ出力する。
また制駆動力分配部56は各車輪の車輪速度Vwiに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて車体速度Vbを演算すると共に、各車輪の制動スリップ量SBi(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、制動スリップ量SBiがアンチスキッド制御(ABS制御)開始の基準値よりも大きくなり、アンチスキッド制御の開始条件が成立すると、アンチスキッド制御の終了条件が成立するまで、当該車輪の制動スリップ量を所定の範囲内にするためのアンチスキッド制御の目標制動力Fbvti(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。
また制駆動力分配部56はトラクション制御若しくは挙動制御が必要であるときには、それらの各判定結果に基づいて各車輪の目標制動力Fbvtiを演算する。そして制駆動力分配部56は目標制動力Fbvtiがあるときには、目標制動力Fbvtiを示す信号を制動力制御装置72へ出力する。
制動力制御装置72にはブレーキペダル36に設けられた制動操作量検出センサ74により検出された運転者の制動操作量Fbを示す信号が入力され、また圧力センサ76i(i=fl、fr、rl、rr)により検出されたホイールシリンダ30FL〜30RRの制動圧Pbi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。制動力制御装置72は運転者の制動操作量Fbに基づいて各車輪の目標制動力Fbti(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、トラクション制御若しくは挙動制御若しくはアンチスキッド制御の目標制動力Fbvtiがあるときには、当該車輪の目標制動力Fbtiを目標制動力Fbvtiに置き換える。
そして制動力制御装置72は目標制動力Fbtiに基づいて当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の目標制動圧Pbti(i=fl、fr、rl、rr)を演算し、各車輪の制動圧Pbiがそれぞれ対応する目標制動圧Pbtiになるよう油圧回路28を制御することにより、各車輪の制動力Fbi(i=fl、fr、rl、rr)がそれぞれ対応する目標制動力Fbtiになるよう制御する。
修正目標駆動力演算部58には運転者要求目標駆動力演算部44より運転者要求目標駆動力Fp_dvmを示す信号が入力され、制駆動力分配部56より制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowを示す信号が入力される。また修正目標駆動力演算部58には回転数センサ76よりトランスミッション16の出力回転数Ntoutを示す信号が入力され、μセンサ78より路面の摩擦係数μを示す信号が入力される。
修正目標駆動力演算部58は制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowがトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcであるときには、下記の式2に従ってフィルタ処理後のトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcfを演算すると共に、下記の式3に従って一次遅れのフィルタ処理後のトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcf及びトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcのうちの大きい方の値をトラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1とする。
Fp_t_now_trcf=(1‐K1)/(1‐K1Z-1)Fp_t_now_trc ……(2)
Fp_t_future_trc1=MAX(Fp_t_now_trcf,Fp_t_now_trc) ……(3)
例えば図6は運転者の加速要求が増加し、運転者要求目標駆動力Fp_dvmが増加する過程に於いてトラクション制御が実行される場合に於ける運転者要求目標駆動力Fp_dvm、トラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc、トラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1の変化の一例を示している。図6に示されている如く、トラクション制御によりトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcが運転者要求目標駆動力Fp_dvmよりも小さい値に演算されるが、トラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1は急激には低下せず、トラクション制御の開始後徐々に低下する。
また修正目標駆動力演算部58は制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowが挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscであるときには、下記の式4に従って一次遅れのフィルタ処理後の挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscfを演算すると共に、下記の式5に従ってフィルタ処理後の挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscf及び挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscのうちの大きい方の値を挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscとする。
Fp_t_now_vscf=(1‐K2)/(1‐K2Z-1)Fp_t_now_vsc ……(4)
Fp_t_future_vsc=MAX(Fp_t_now_vscf,Fp_t_now_vsc) ……(5)
例えば図7は運転者の加速要求が増加し、運転者要求目標駆動力Fp_dvmが増加する過程に於いて挙動制御が実行される場合に於ける運転者要求目標駆動力Fp_dvm、挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vsc、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscの変化の一例を示している。図7に示されている如く、挙動制御により挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscが運転者要求目標駆動力Fp_dvmよりも小さい値に演算されるが、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscは急激には低下せず、挙動制御の開始後徐々に低下する。
また修正目標駆動力演算部58は、挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscが演算されており挙動制御が必要であるとき又は車輌が高横力旋回状態にあると判定されているときには、当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の発生前後力Fwxi及び発生横力Fwyi(i=fl、fr、rl、rr)を演算する。そして修正目標駆動力演算部58は、左右の後輪について発生前後力Fwxi及び発生横力Fwyiの二乗和平方根として左右後輪のタイヤ発生力F_current_tire_rl、F_current_tire_rrを演算し、それらの和を駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tireとする。
尚車輌が前輪駆動車である場合には、駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tireは左右前輪のタイヤ発生力の和に設定され、車輌が四輪駆動車である場合には、駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tireは左右前輪及び左右後輪のタイヤ発生力の和に設定される。
また修正目標駆動力演算部58は、駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tireに対し下記の式6に従ってフィルタ処理後の駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tirefを演算すると共に、下記の式7に従ってフィルタ処理後の駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tiref及び駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tireのうちの大きい方の値を高横力旋回制御の目標駆動力Fp_t_future_tireとする。
Fp_current_tiref=(1‐K3)/(1‐K3Z-1)Fp_current_tire ……(6)
Fp_current_tire=MAX(Fp_current_tiref,Fp_current_tire) ……(7)
尚上記式2、4、6に於けるフィルタ時定数K1、K2、K3は相互に異なる値であり、時にK2はK1、K3よりも大きい値に設定される。またフィルタ時定数K1、K2、K3は定数であってもよいが、図示の実施例に於いては駆動操作量検出センサ62により検出される運転者の駆動操作量Aが高いほど大きくなるよう、運転者の駆動操作量Aに応じて可変設定される。
また修正目標駆動力演算部58は、図4に示された変速線図を記憶しており、図3に示されたフローチャートに従ってトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2を演算する。
まずステップ10に於いては左右後輪の駆動スリップ量SArl及びSArrのうちの大きい方の値をSArとして、駆動スリップ量SArが基準値SAc(トラクション制御開始の基準値SAsよりも大きい正の定数)以下であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ60へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ20へ進む。
ステップ20に於いては現在の変速段Sa及びトランスミッション16の出力回転数Ntoutに基づき図4に示された変速線図より現在の変速段Saにて可能な駆動装置10Aの駆動力の下限値Fp_t_lowが演算され、ステップ30に於いてはμセンサ78により検出された路面の摩擦係数μが低いほど制御ゲインKmが小さい値になるよう、路面の摩擦係数μに基づいて図5に示されたグラフに対応するマップより制御ゲインKmが演算される。
ステップ40に於いては制御ゲインKmと運転者要求目標駆動力Fp_dvmとの積として路面の摩擦係数μ及び運転者要求目標駆動力Fp_dvmに基づく暫定の目標駆動力Fp_t_mが演算され、ステップ50に於いては下記の式8に従って駆動力の下限値Fp_t_low及び路面の摩擦係数μに基づく目標駆動力Fp_t_mのうちの大きい方の値がトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2に設定される。
Fp_t_future_trc2=MAX(Fp_t_low,Fp_t_m) ……(8)
ステップ60及び70に於いては現在の変速段Sa及びトランスミッション16の出力回転数Ntoutに基づき図4に示された変速線図より現在の変速段Saにて可能な駆動装置10Aの駆動力の下限値Fp_t_low及び上限値Fp_t_highがそれぞれ演算され、ステップ80に於いては駆動力の下限値Fp_t_low及び上限値Fp_t_highの平均値としてトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2が演算される。
また修正目標駆動力演算部58は、下記の式9に従ってトラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1及び第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2のうちの大きい値をトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcとすると共に、下記の式10に従ってトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trc、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vsc、高横力旋回制御の修正目標駆動力Fp_t_future_tireのうちの最も大きい値をその後の車輪及び車輌の運動状態の変化に備えてトランスミッション16の変速段を決定するための修正目標駆動力Fp_t_futureとする。
Fp_t_future_trc=MAX(Fp_t_future_trc1,Fp_t_future_trc2) ……(9)
Fp_t_future=MAX(Fp_t_future_trc,Fp_t_future_vsc,Fp_t_future_tire)
……(10)
更に修正目標駆動力演算部58は、トラクション制御中又は挙動制御中又は高横力旋回状態にあると判定されているときには、修正目標駆動力Fp_t_futureがあるか否かを示すフラグF_FP_FUTUREをONに設定すると共に、修正目標駆動力Fp_t_futureを示す信号及びフラグF_FP_FUTURE信号を駆動力制御電子制御装置40の調停部46へ出力し、トラクション制御及び挙動制御の何れも実行されておらず高横力旋回状態にあると判定されていないときには、修正目標駆動力Fp_t_futureがあるか否かを示すフラグF_FP_FUTUREをOFFに設定し、修正目標駆動力Fp_t_futureを0に設定すると共に、修正目標駆動力Fp_t_futureを示す信号及びフラグF_FP_FUTURE信号を駆動力制御電子制御装置40の調停部46へ出力する。
尚トラクション制御及び挙動制御の何れも実行されておらず高横力旋回状態にあると判定されていないときには、修正目標駆動力Fp_t_futureが運転者要求目標駆動力Fp_dvmに設定されてもよい。
次に上述の如く構成された図示の実施例の作動を車輌の様々な走行状況について説明する。
(1)トラクション制御も挙動制御も不要である場合
車輌の挙動が安定しておりトラクション制御も挙動制御も不要であり車輌が高横力旋回状態にはないときには、フラグF_FP_NOW及びF_FP_FUTUREはOFFであり、調停後の目標駆動力Fp_now及び調停後の修正目標駆動力Fp_futureが運転者要求目標駆動力Fp_dvmに設定されるので、目標エンジン出力トルクTet及びトランスミッション16の目標変速段Stは運転者要求目標駆動力Fp_dvmに基づいて演算され、これにより従来の駆動力制御装置の場合と同様、エンジン10の出力及びトランスミッション16の変速比は運転者の駆動要求に応じて制御される。
(2)トラクション制御は必要であるが挙動制御は不要である場合
駆動輪の駆動スリップが過大でありトラクション制御は必要であるが、車輌の走行運動は安定的であり挙動制御は不要である場合には、制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowがトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcに基づいて設定され、トラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcに基づいてトラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1が演算されると共に、運転者の駆動要求及び路面の摩擦係数μに基づいてトランスミッション16の変速段の変更を防止するトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2が演算される。
そして第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1及び第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2のうちの大きい方の値がトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcに設定され、そしてフラグF_FP_NOW及びF_FP_FUTUREがONに設定され、調停後の目標駆動力Fp_now及び調停後の修正目標駆動力Fp_futureがそれぞれトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc、トラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcに設定される。
従ってこの場合にはトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trcに基づいて目標エンジン出力トルクTetを演算し、エンジン10の出力を確実に低下させて駆動輪の駆動スリップを効果的に低減することができると共に、目標駆動力Fp_t_now_trcよりも低下変化が小さく目標駆動力Fp_t_now_trcよりも大きいトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcに基づいてトランスミッション16の目標変速段Stを演算することができ、これにより車輌が一時的にマンホールの如き低摩擦係数の路面を通過する際にもトラクション制御によりトランスミッション16の変速段がシフトアップされること及びこれに起因して車輌が低摩擦係数の路面を通過した直後に於ける加速不足を効果的に防止することができ、またトラクション制御中にトランスミッション16の出力回転数Ntoutが増減することに起因してトランスミッション16が不必要にシフトアップされたりシフトダウンされることを効果的に防止することができる。
特に図示の実施例によれば、左右後輪の駆動スリップ量SArl及びSArrのうちの大きい方の値である駆動スリップ量SArが基準値SAc以下であるときには、図3に示されたフローチャートのステップ10に於いて肯定判別が行われ、ステップ20に於いて現在の変速段Sa及びトランスミッション16の出力回転数Ntoutに基づき現在の変速段Saにて可能な駆動装置10Aの駆動力の下限値Fp_t_lowが演算され、ステップ30に於いて路面の摩擦係数μが低いほど制御ゲインKmが小さい値になるよう、路面の摩擦係数μに基づいて制御ゲインKmが演算され、ステップ40に於いて制御ゲインKmと運転者要求目標駆動力Fp_dvmとの積として暫定の目標駆動力Fp_t_mが演算され、ステップ50に於いて駆動力の下限値Fp_t_low及び路面の摩擦係数μに基づく目標駆動力Fp_t_mのうちの大きい方の値がトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2に設定される。
従って駆動スリップ量SArが基準値SAc以下であるときには、運転者要求目標駆動力Fp_dvm及び路面の摩擦係数μに応じてトランスミッション16の変速段の変更を抑制する値に第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2を最適に設定することができると共に、トランスミッション16の変速段が不必要にシフトアップされること、特に二段のシフトアップが行われることを確実に防止することができる。
また図示の実施例によれば、駆動スリップ量SArが基準値SAcよりも大きいときには、図3に示されたフローチャートのステップ10に於いて否定判別が行われ、ステップ60及び70に於いて現在の変速段Sa及びトランスミッション16の出力回転数Ntoutに基づき現在の変速段Saにて可能な駆動装置10Aの駆動力の下限値Fp_t_low及び上限値Fp_t_highがそれぞれ演算され、ステップ80に於いて駆動力の下限値Fp_t_low及び上限値Fp_t_highの平均値としてトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2が演算される。
従ってトランスミッション16の変速段が不必要にシフトアップされること及びシフトダウンされることを確実に防止する値として第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2を演算することができ、トランスミッション16の変速段が不必要にシフトアップされること及びシフトダウンされることを確実に防止することができる。
また図示の実施例によれば、トラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1及び第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2のうちの大きい値がトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcとされるので、トラクション制御が実行されている時間全体に亘りトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcを確実にトランスミッション16の変速段の変更が行われない値に設定することができ、これによりトラクション制御の実行中にトランスミッション16の変速段が変更されることを確実に防止することができる。
例えば運転者要求目標駆動力Fp_dvmが増加する過程に於いてトラクション制御が実行され、運転者要求目標駆動力Fp_dvm、トラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc、トラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1が図6に示されている如く変化し、第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2が図8(A)に示されている如く変化するとすると、トラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcは図8(B)に示されている如く変化し、トラクション制御が実行される時間全体に亘りトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcを確実にトランスミッション16の変速段の変更が行われない値に設定することができる。
(3)トラクション制御は不要であるが挙動制御は必要である場合
駆動輪の駆動力は過剰ではなくトラクション制御は不要であるが、車輌の走行運動は不安定であり車輌の駆動力の低減制御による挙動制御は必要である場合には、制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowが挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscに基づいて設定され、挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscに基づいて挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscが演算され、フラグF_FP_NOW及びF_FP_FUTUREがONに設定され、調停後の目標駆動力Fp_now及び調停後の修正目標駆動力Fp_futureがそれぞれ挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vsc、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscに設定される。
従ってこの場合には挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscに基づいて目標エンジン出力トルクTetを演算し、エンジン10の出力を確実に低下させて車輌の走行運動を効果的に安定化させることができると共に、挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscよりも低下変化が小さい挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscに基づいてトランスミッション16の目標変速段Stを演算することができ、これにより車輌の走行運動の不安定化が一時的である場合に挙動制御によりトランスミッション16の変速段が不必要にシフトアップされること及びこれに起因して一時的な挙動制御が完了した直後に於ける加速不足を効果的に防止することができる。
尚車輌の走行運動の不安定な状況が長く継続するような場合には、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscが変速線まで低下した段階でトランスミッション16の変速段がシフトアップされるので、不安定な走行状態が長く継続するような場合にも駆動力が過大な状況が長時間に亘り継続することはない。
(4)トラクション制御及び挙動制御が必要である場合
駆動輪の駆動力は過剰であり車輌の走行運動も不安定であることによりトラクション制御及び挙動制御の何れも必要である場合には、制駆動力分配後の目標駆動力Fp_t_nowがトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc及び挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vscのうちの小さい方の値に設定され、修正目標駆動力Fp_t_futureがトラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vsc、高横力旋回制御の修正目標駆動力Fp_t_future_tireのうちの最も大きい値に設定され、フラグF_FP_NOW及びF_FP_FUTUREがONに設定され、調停後の目標駆動力Fp_now及び調停後の修正目標駆動力Fp_futureがそれぞれ目標駆動力Fp_t_now、修正目標駆動力Fp_t_futureに設定される。
従ってこの場合には目標駆動力Fp_t_nowに基づいて目標エンジン出力トルクTetを演算し、エンジン10の出力を確実に低下させて駆動輪の駆動スリップを効果的に低減すると共に車輌の走行運動を効果的に安定化させることができ、また目標駆動力Fp_t_nowよりも低下変化が小さい修正目標駆動力Fp_t_futureに基づいてトランスミッション16の目標変速段Stを演算することができ、これにより駆動輪の過大な駆動スリップや車輌の走行運動の不安定化が一時的である場合にトラクション制御や挙動制御によりトランスミッション16の変速段が不必要にシフトアップされること及びこれに起因して一時的なトラクション制御や挙動制御が完了した直後に於ける加速不足を効果的に防止することができる。
特に図示の実施例によれば、フィルタ時定数K1、K2、K3は駆動操作量検出センサ62により検出される運転者の駆動操作量Aが高いほど大きくなるよう、運転者の駆動操作量Aに応じて可変設定されるので、運転者の駆動要求が高いほど修正目標駆動力Fp_t_futureの低下勾配を小さくしてトランスミッション16の変速段のシフトアップが行われ難くし、これにより車輌が低摩擦係数の路面を一時的に通過した直後に於ける加速不足を効果的に防止して運転者の駆動要求を充足することができ、また運転者の駆動要求が高くないときには修正目標駆動力Fp_t_futureの低下勾配を大きくしてトランスミッション16の変速段のシフトアップが行われ易くし、これにより車輌の駆動力の低減を速やかに実行することができる。
また図示の実施例によれば、運動状態推定部54により車輌が高横力旋回状態にあるか否かが判定され、修正目標駆動力演算部58により駆動輪のタイヤ発生力Fp_current_tireが演算されると共に、タイヤ発生力Fp_current_tireよりも低下勾配が小さい高横力旋回制御の目標駆動力Fp_t_future_tireが演算され、トランスミッション16の変速段を決定するための修正目標駆動力Fp_t_futureは上記式10に従ってトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trc、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vsc、高横力旋回制御の修正目標駆動力Fp_t_future_tireのうちの最も大きい値に設定されるので、車輌の高横力旋回状態が考慮されない場合に比して、車輌が高横力旋回状態にある状況に於いてトランスミッション16がアップシフトされ難くすることができ、従って車輌が高横力旋回状態にある状況に於いてトランスミッション16のアップシフトが行われることにより駆動輪の駆動力が急激に低下し、これに起因して駆動輪の横力が急激に変化し車輌の挙動が急変する虞れを確実に低減することができる。
また図示の実施例によれば、フィルタ時定数K2はフィルタ時定数K1、K3よりも大きい値に設定されており、同一の目標駆動力の変化について見て挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscの低下勾配はトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trc及び高横力旋回制御の修正目標駆動力Fp_t_future_tireの低下勾配よりも大きいので、車輌の走行運動が不安定である場合には駆動輪の駆動力が過剰である場合に比してトランスミッション16のアップシフトを早期に行わせることができ、これにより駆動輪の駆動力が過剰であることに起因する車輌の不安定な走行状態を効果的に安定化させることができる。
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
例えば上述の実施例に於いては、ステップ80に於いて駆動力の下限値Fp_t_low及び上限値Fp_t_highの平均値としてトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2が演算されるようになっているが、第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2は駆動力の下限値Fp_t_lowよりも大きく且つ上限値Fp_t_highよりも小さい値である限り、任意の要領にて演算されてよい。
また上述の実施例に於いては、トラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1及び第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2のうちの大きい方の値がトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcとされるようになっているが、第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1の演算が省略され、実施例の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2が修正目標駆動力Fp_t_future_trcとして演算されるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、修正目標駆動力演算部58が図4に示された変速線図を記憶しており、該変速線図に基づいて駆動力の下限値Fp_t_low及び上限値Fp_t_highが演算されるようになっているが、修正目標駆動力演算部58が変速線図を記憶せず、駆動力の下限値Fp_t_low及び上限値Fp_t_highを示す情報が駆動力制御電子制御装置40の発生駆動力演算部50より通信により供給されるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、修正目標駆動力Fp_t_future_trc、Fp_t_future_vsc、Fp_t_future_tireはそれぞれ目標駆動力Fp_t_future_trc、Fp_t_future_vsc、Fp_current_tireに対しフィルタ処理を施すことにより演算されるようになっているが、修正目標駆動力Fp_t_future_trc、Fp_t_future_vsc、Fp_t_future_tireはそれぞれ目標駆動力Fp_t_future_trc、Fp_t_future_vsc、Fp_current_tireよりも低下勾配が小さい限り、それぞれ目標駆動力Fp_t_future_trc、Fp_t_future_vsc、Fp_current_tireに基づいて任意の要領にて演算されてよい。
また上述の実施例に於いては、修正目標駆動力演算部58により高横力旋回制御の目標駆動力Fp_t_future_tireが演算され、トラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trc、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vsc、高横力旋回制御の修正目標駆動力Fp_t_future_tireのうちの最も大きい値がトランスミッションの変速段を決定するための修正目標駆動力Fp_t_futureとされるようになっているが、高横力旋回制御の目標駆動力Fp_t_future_tireが省略され、修正目標駆動力Fp_t_futureはトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trc及び挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscのうちの大きい方の値に設定されるよう修正されてもよい。
また上述の実施例に於いては、車輌は後輪駆動車であるが、本発明の駆動力制御装置は前輪駆動車や四輪駆動車に適用されてもよく、また駆動力発生源はエンジンであるが、本発明の駆動力制御装置は駆動力発生源がハイブリッドシステムである車輌に適用されてもよい。
また上述の実施例に於いては、トランスミッションの変速機は多段式の自動変速機であるが、変速機は無段式の自動変速機であってもよく、その場合には修正目標駆動力Fp_t_futureに基づいて無段変速機の目標変速比が演算される。
後輪駆動車に適用された本発明による車輌の駆動力制御装置の一つの実施例を示す概略構成図である。 実施例の制御系を示すブロック図である。 実施例に於けるトラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2の演算ルーチンを示すフローチャートである。 実施例に於ける変速線図を示すグラフである。 実施例に於ける路面の摩擦係数μと制御ゲインKmとの間の関係を示すグラフである。 運転者の加速要求が増加し、運転者要求目標駆動力Fp_dvmが増加する過程に於いてトラクション制御が実行される場合に於ける運転者要求目標駆動力Fp_dvm、トラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc、トラクション制御の第一の修正目標駆動力Fp_t_future_trc1の変化の一例を示すグラフである。 運転者の加速要求が増加し、運転者要求目標駆動力Fp_dvmが増加する過程に於いて挙動制御が実行される場合に於ける運転者要求目標駆動力Fp_dvm、挙動制御の目標駆動力Fp_t_now_vsc、挙動制御の修正目標駆動力Fp_t_future_vscの変化の一例を示すグラフである。 運転者要求目標駆動力Fp_dvmが増加する過程に於いてトラクション制御が実行される場合に於ける運転者要求目標駆動力Fp_dvm、トラクション制御の目標駆動力Fp_t_now_trc、トラクション制御の第二の修正目標駆動力Fp_t_future_trc2の変化の一例を示すグラフ(A)及びトラクション制御の修正目標駆動力Fp_t_future_trcの変化の一例を示すグラフ(B)である。
符号の説明
10 エンジン
16 トランスミッション
26 制動装置
32 統合制御電子制御装置
34 アクセルぺダル
36 ブレーキぺダル
40 駆動力制御電子制御装置
42 制動力制御電子制御装置
64 エンジン制御装置
66 自動変速機制御装置
68i 車輪速度センサ
70 車輌状態量検出センサ
72 制動力制御装置
74 制動操作量検出センサ
76 回転数センサ
78 μセンサ

Claims (8)

  1. 駆動源及びトランスミッションを含む駆動装置と、少なくとも乗員の駆動操作量に基づいて前記駆動装置の目標駆動力を演算する手段と、前記駆動源の駆動力を制御する駆動源制御手段と、前記トランスミッションの変速比を制御する変速比制御手段と、少なくとも前記駆動装置の駆動力を制御することにより駆動輪の駆動スリップを抑制するトラクション制御を行うトラクション制御手段とを有する車輌の駆動力制御装置に於いて、
    前記トラクション制御が行われていないときには、前記駆動源制御手段及び前記変速比制御手段は前記目標駆動力に基づいてそれぞれ前記駆動源の駆動力及び前記トランスミッションの変速比を制御し、
    前記トラクション制御が行われているときには、前記駆動源制御手段はトラクション制御用目標駆動力を前記目標駆動力よりも小さい値に演算し、該トラクション制御用目標駆動力に基づいて前記駆動源の駆動力を制御するが、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの変速比の変更を抑制するための変速比制御用目標駆動力を前記目標駆動力よりも小さく且つ前記トラクション制御用目標駆動力よりも大きい値に演算し、該変速比制御用目標駆動力に基づいて前記トランスミッションの変速比を制御することを特徴とする車輌の駆動力制御装置。
  2. 前記変速比制御手段は、前記目標駆動力に基づいて前記目標駆動力に比して小さい低下勾配にて低下変化する値に第一の修正目標駆動力を演算し、
    何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて、前記現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の値に第二の修正目標駆動力を設定し、駆動輪の駆動スリップ量が前記基準値以下であるときには、前記目標駆動力及び路面の摩擦係数に基づいて暫定変速比制御用目標駆動力を演算し、前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の下限値及び前記暫定変速比制御用目標駆動力のうちの大きい方の値に第二の修正目標駆動力を設定することにより、前記目標駆動力と前記トラクション制御用目標駆動力との間の値であって前記トランスミッションの変速比の変更を防止する値に第二の修正目標駆動力を演算し、
    前記第一及第二の修正目標駆動力のうちの大きい方の値を前記変速比制御用目標駆動力として演算することを特徴とする請求項1に記載の車輌の駆動力制御装置。
  3. 前記トラクション制御が行われている状況に於いて何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の下限値を求め、前記下限値よりも大きい値に前記第二の修正目標駆動力を設定することを特徴とする請求項に記載の車輌の駆動力制御装置。
  4. 前記トラクション制御が行われている状況に於いて何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の上限値及び下限値を求め、前記上限値と前記下限値との間の値に前記第二の修正目標駆動力を設定することを特徴とする請求項に記載の車輌の駆動力制御装置。
  5. 前記トラクション制御が行われている状況に於いて何れかの駆動輪の駆動スリップ量が基準値よりも高いときには、前記変速比制御手段は前記トランスミッションの出力回転数及び前記トランスミッションの現在の変速比に基づいて前記トランスミッションの現在の変速比にて達成可能な前記駆動装置の駆動力の上限値及び下限値を求め、前記上限値及び前記下限値の平均値に前記第二の修正目標駆動力を設定することを特徴とする請求項に記載の車輌の駆動力制御装置。
  6. 前記変速比制御手段は路面の摩擦係数が低いほど小さくなるよう前記暫定変速比制御用目標駆動力を演算することを特徴とする請求項に記載の車輌の駆動力制御装置。
  7. 前記基準値は前記トラクション制御の開始判定の駆動スリップ量の基準値よりも大きいことを特徴とする請求項乃至の何れか一つに記載の車輌の駆動力制御装置。
  8. 前記トランスミッションは多段式の自動変速機を含んでいることを特徴とする請求項1乃至の何れか一つに記載の車輌の駆動力制御装置。
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