JP2010012715A - 光学用樹脂フィルムの製造方法および光学用フィルム - Google Patents

光学用樹脂フィルムの製造方法および光学用フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】環状オレフィン系樹脂を用いて溶融製膜法によりフィルムを製膜する際に、押出機でのゲルの発生を抑制し、且つ製膜されたフィルムの膜厚分布も発生しにくい。
【解決手段】環状オレフィン系の熱可塑性樹脂を二軸スクリュー押出機22により加熱溶融する溶融工程と、加熱溶融した溶融樹脂を一軸スクリュー押出機23から押し出して成形ダイ24に供給する供給工程と、成形ダイ24から溶融樹脂を冷却ドラム26にフィルム状に吐出して冷却することによりフィルム成形する成形工程と、を備えた。
【選択図】図1

Description

本発明は光学用樹脂フィルムの製造方法および光学用フィルムに係り、特に、液晶表示装置に好適な品質を有する環状オレフィン系樹脂を用いた光学用樹脂フィルムの製造方法及び該製造方法により得られる光学用フィルムに関する。
環状オレフィン系樹脂より製造されたフィルム(以下、「環状ポリオレフィンフィルム」ともいう。)は、セルローストリアセテートフィルムの吸湿性や透湿性を改良できるフィルムとして注目され、溶融製膜法及び溶液製膜法によるフィルム製造方法が注目されている。また、環状ポリオレフィンフィルムは、高い光学特性の発現性を得ており、更には温度変化による光学特性の変化が少なく、位相差膜(以下、「位相差フィルム」ともいう。)などの液晶表示装置等の光学用フィルムとしての開発が行われている。
特に、溶融製膜法は、溶液製膜法に比べて溶剤を使用しないメリットがあり、光学用としても使用できる高品質な環状オレフィン系樹脂フィルムを溶融製膜法で製造することが要望されている。
溶融製膜法によるフィルム製造は、樹脂を押出機で加熱溶融し、この溶融樹脂を成形ダイからフィルム状に吐出し、これを冷却ドラム上で冷却し、剥離することによって製造されている。
しかしながら、環状オレフィン系樹脂の溶融製膜では、溶融押出の際に樹脂の酸化(熱劣化)や剪断力によってゲルが大量に発生し、製造されたフィルム上に残留することにより光学特性を低下させる異物故障として発現するため、このゲルの発生が光学用フィルムを製造する上での問題点であった。
このことから、ゲルを低減するため、酸化を抑制する添加剤などを付与する検討がなされてきた(特許文献1〜特許文献3参照)。また、溶融製膜における押出機の押出条件からも検討がなされており、噛み合い型の二軸スクリュー押出機を用いて剪断速度30(sec−1)以上で溶融混練することにより、二軸スクリュー押出機内で発生したゲルを剪断力によって破砕し、ゲルの発生を低減することも試みられてきた(特許文献4参照)。
また、原料の熱可塑性樹脂を溶解させる第1の押出機と、可塑剤供給部を有し、第1の押出機から供給される溶融樹脂に可塑剤を供給混練する第2の押出機との間にフィルターを設け、更に第2の押出機に不活性ガスを供給することで、製造されるフィルムに残存する異物を低減する試みもなされている(特許文献5参照)。
特開2007−160720号公報 特開平7−145213号公報 特開平9−104061号公報 特開2006−142715号公報 特開2000−56130号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載されている酸化を抑制する添加剤を付与する方法では、ゲルを抑制する効果が充分ではなかった。
また、押出条件から検討した特許文献4の方法においても、ゲル抑制効果が充分でなかったと共に、二軸スクリュー押出機を使用すると、成形ダイへの定量的な安定供給性が低下し易く製膜されたフィルムに膜厚分布が発生し易いという問題がある。
また、特許文献5の方法は、酸化(熱劣化)によるゲル発生は多少抑制できるものの、押出機特有の剪断力によるゲル発生を本質的に解決するものではない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、環状オレフィン系樹脂を用いて溶融製膜法によりフィルムを製膜する際に、押出機でのゲルの発生を抑制し、且つ製膜されたフィルムの膜厚分布も発生しにくいので、高品質の光学用フィルムを製造することができる光学用樹脂フィルムの製造方法及びその製造方法で製造された光学用フィルムを提供することを目的とする。
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、環状オレフィン系の熱可塑性樹脂を二軸スクリュー押出機により加熱溶融する溶融工程と、前記加熱溶融した溶融樹脂を一軸スクリュー押出機から押し出して成形ダイに供給する供給工程と、前記成形ダイから前記溶融樹脂をフィルム状に吐出して冷却することによりフィルム成形する成形工程と、を備えたことを特徴とする光学用樹脂フィルムの製造方法を提供する。
請求項1によれば、溶融製膜法において、環状オレフィン系の熱可塑性樹脂を加熱溶融するための押出機として、セルフワイピング効果があり、低剪断でも混練効果の大きな二軸スクリュー押出機を使用する。そして、溶融樹脂を成形ダイに供給するための押出機として高剪断ではあるが二軸スクリュー押出機よりも押し出し安定性に優れた一軸スクリュー押出機を使用し、二軸と一軸の押出機の役割分担を明確にするようにした。これにより、二軸スクリュー押出機において溶融時のゲル発生を顕著に抑制しながら樹脂を溶融することができ、そして一軸スクリュー押出機において溶融樹脂を成形ダイに定量的に安定供給することができる。
即ち、ゲルの発生は押出機内での樹脂溶融時に付与される剪断力が大きな一因であるが、一旦溶融した後の溶融樹脂は剪断力に対して耐性がありゲルが発生しにくいという性質がある。このことから、樹脂を加熱溶融するための押出機として二軸スクリュー押出機をしようすれば、低剪断条件であってもゲル発生を顕著に抑制しながら樹脂の効果的な溶融を行うことができる。しかし、二軸スクリュー押出機は押し出し安定性が確保できず、二軸スクリュー押出機から直に成形ダイに溶融樹脂を供給したのでは、製造される樹脂フィルムに膜厚分布が発生し易い。そこで、本発明では、二軸スクリュー押出機と成形ダイとの間に、一軸スクリュー押出機を介在させて、二軸スクリュー押出機で溶融した溶融樹脂を一旦一軸スクリュー押出機に送り、一軸スクリュー押出機から成形ダイに供給するようにした。これにより、押出機でのゲルの発生を抑制し、且つ製膜されたフィルムの膜厚分布も発生しにくいので、高品質の光学用フィルムを製造することができる。
請求項2は請求項1において、前記二軸スクリュー押出機出口の樹脂温度をT1(℃)とし、前記一軸スクリュー押出機出口の樹脂温度をT2(℃)としたときに、200°<T1<T2を満足することを特徴とする。
従来のように、二軸スクリュー押出機から直に成形ダイに供給する場合、二軸スクリュー押出機から成形ダイに溶融樹脂を定量的に安定供給するには、二軸スクリュー押出機出口の樹脂温度を安定押し出しできる樹脂温度まで高める必要があり、樹脂が酸化(熱劣化)しゲルができ易い。
これに対して本発明の請求項2によれば、樹脂の溶融と、溶融樹脂の成形ダイへの安定供給の2つの役目を二軸スクリュー押出機と一軸スクリュー押出機とに役割分担させたことで、二軸スクリュー押出機出口での樹脂温度を、二軸スクリュー押出機から成形ダイに直に供給する場合に比べて低くできる。これにより、樹脂が酸化(熱劣化)しゲル化するのを一層抑制できる。なお、T2が200℃未満では、環状オレフィン系樹脂の溶融不足で粘度が高くなり過ぎて押し出しできなくなるからである。
請求項3は請求項1又は2において、前記二軸スクリュー押出機の出口圧力が0.1MPa〜5.5MPaであることを特徴とする。
樹脂を溶融するための二軸スクリュー押出機の出口圧力を0.1MPa〜5.5MPaと従来の押出機より圧力を低くした。上記したように、押出機内で発生するゲルには、樹脂を剪断することにより樹脂同士が架橋すること(剪断架橋)により発生するゲル、及び樹脂が酸化(熱劣化)することにより架橋(酸化架橋)し発生するゲルがあることが知られている。特に、樹脂溶融時の剪断架橋を抑える押出条件が重要であり、溶融を行う役割の二軸スクリュー押出機の出口圧力の上限を5.5MPaの低圧に抑えることで、スクリュー内部の樹脂充填率を低く保ち、フライトバレル壁面間などの高剪断部位の樹脂通過を抑制することができる。これにより、二軸スクリュー押出機内で樹脂が受ける剪断力は小さくなるため、剪断架橋の発生を小さくすることができ、樹脂溶融時のゲル発生を一層効果的に抑制することができる。出口圧力の下限として示した0.1MPaは、一軸スクリュー押出機への安定供給可能な限界である。
また、二軸スクリュー押出機を噛合い異方向回転型スクリューとすることにより、スクリュー同士の噛合部において樹脂が受ける剪断力を一層小さくすることができるので好ましい。
請求項4は請求項1〜3の何れかにおいて、前記一軸スクリュー押出機の出口圧力が4MPa〜20MPaの範囲であって、圧力変動が±0.1MPa以内であることを特徴とする。
請求項4によれば、一軸スクリュー押出機の押し出し条件として、出口圧力が4MPa〜20MPaの範囲であって、圧力変動が±0.1MPa以内であるようにしたので、二軸スクリュー押出機で溶融した溶融樹脂を成形ダイへ定量的に安定供給することができる。また、一軸スクリュー押出機での出口圧力を高圧にしても、樹脂は二軸スクリュー押出機で既に溶融されているので、ゲルは発生しにくい。ここで、圧力変動が±0.1MPaとは、例えば出口圧力を4MPa〜20MPaの範囲を満たす所定値に設定した場合、その所定値に対して圧力変動が±0.1MPa以内であることを意味する。
請求項5は請求項1〜4の何れかにおいて、前記二軸スクリュー押出機軸のバレル壁面とスクリューフライト部で発生する最大剪断応力σが10s−1より大きく1000s−1より小さいことを特徴とする。
ゲル発生を抑制するための好ましい条件として、バレル壁面とスクリューフライト部で発生する最大剪断応力σを規定したものであり、各数値を上記範囲にすることで、ゲル発生を更に抑制できる。
請求項6は請求項1〜5の何れかにおいて、前記二軸スクリュー押出機軸の入口でラジカルトラップ剤又は酸化防止剤を添加することを特徴とする。
請求項6によれば、二軸スクリュー押出機の入口でラジカルトラップ剤又は酸化防止剤を添加することで、酸化架橋により発生するゲルの低減を行うことができる。
請求項7は請求項1〜6の何れかにおいて、前記二軸スクリュー押出機の入口及び前記一軸スクリュー押出機の入口から不活性ガスを流入させて、入口部分の雰囲気酸素濃度が100ppm以下になるようにすることを特徴とする。
二軸及び一軸の押出機入口から不活性ガスを流入させて入口部分の雰囲気酸素濃度が100ppm以下になるようにすることで、酸化架橋により発生するゲルの一層の低減を図ることができる。
本発明の請求項8は、前記目的を達成するために、請求項1〜7の何れかに記載の光学用樹脂フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする光学用フィルムを提供する。
請求項8は、本発明の製造方法で製造した光学用フィルムであり、ゲルが少なく且つ膜厚が均一な光学用途のフィルムとして高品質な光学用フィルムを得ることができる。
請求項9は請求項8において、前記光学用フィルムは位相差フィルムであって、該フィルムを10%シクロヘキサン溶液とした際のヘイズが3%以下であることを特徴とする。
請求項9によれば、10%シクロヘキサン溶液とした際のヘイズが3%以下であるため、光学フィルムとして好適に用いることができる。
本発明によれば、環状オレフィン系樹脂を用いて溶融製膜法によりフィルムを製膜する際に、押出機でのゲルの発生を抑制し、且つ製膜されたフィルムの膜厚分布も発生しにくいので、高品質の光学用フィルムを製造することができる。
以下、添付図面に従って本発明に係る光学用樹脂フィルムの製造方法及びその製造方法で製造された光学用フィルムの好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の光学用樹脂フィルムの製造方法を実施する製造装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように製造装置10は主として、延伸前の樹脂フィルム12を製造する製膜工程部14と、製膜工程部14で製造された樹脂フィルム12を縦延伸する縦延伸工程部16と、横延伸する横延伸工程部18と、延伸された樹脂フィルム12を巻き取る巻取工程部20とで構成される。
製膜工程部14では、二軸スクリュー押出機22で溶融された環状オレフィン系樹脂が一軸スクリュー押出機23に押し出され、溶融された溶融樹脂が一軸スクリュー押出機23から成形ダイ24に押し出し供給される。そして、成形ダイ24からフィルム状に吐出され、回転する冷却ドラム26上でキャストされて急冷固化され、樹脂フィルム12が得られる。この樹脂フィルム12は、冷却ドラム26から剥離された後、縦延伸工程部16、横延伸工程部18に順に送られて延伸され、巻取工程部20でロール状に巻き取られる。これにより、位相差フィルムとしての延伸樹脂フィルム12が製造される。以下、各工程部の詳細について説明する。
図2は製膜工程部14の二軸スクリュー押出機22の構成を示し、図3は一軸スクリュー押出機23の構成を示している。
図2に示すように、二軸スクリュー押出機22は、シリンダー32内に2本のスクリュー38、38を備えており、2本のスクリュー軸34、34の回転方向が異方向のものを用いている。各スクリュー38はスクリュー軸34にスクリューフライト部36が取りつけられて構成されており、回転自在に支持されると共に、不図示のモータによって回転駆動される。そして、本発明においては、二軸スクリューの溝深さは、図2のように、入口から出口まで一定である。即ち、スクリュー軸34の太さは入口から出口まで同径であり、スクリュー軸34の表面からスクリューフライト部36の先端までの溝深さが入口から出口まで一定になる。これにより、二軸スクリュー押出機22内での樹脂の剪断を抑制する。また、二軸スクリューの出口付近にミキシングエレメントが付加されていてもよい。なお、二軸スクリュー押出機22は、2本のスクリュー軸34、34が平行に配置されたものを用いてもよいし、2本のスクリュー軸34、34が傾斜して配置させたものを用いてもよい。
シリンダー32の外周部には、不図示のジャケットが取りつけられており、所望の温度に温度制御できるようになっている。この温度制御は、樹脂温度が剪断発熱によって240℃を超えないように制御される。
シリンダー32の供給口40には不図示の定量供給装置(フィーダー)を介してホッパーが設けられ、このホッパーから環状オレフィン系樹脂が投入され、定量供給装置を経てシリンダー32内に供給される。
環状オレフィン系樹脂は、二軸スクリュー押出機22の供給口40を介してシリンダー32内に供給され、溶融される。この場合、二軸スクリュー押出機22の出口圧力は0.1MPa〜5.5MPaであり、好ましくは0.1MPa〜4.0MPaであり、さらに好ましくは0.5MPa〜1.0MPaである。出口圧力を上記範囲とすることにより、二軸スクリュー押出機22内で溶融樹脂にかかる圧力を抑えることができるので、スクリュー内部で発生する剪断架橋により発生するゲルの量を抑えることができる。また、圧力が低すぎても、樹脂の密度が低くなるため、安定して樹脂を押し出すことができなくなる。したがって、押し出が可能な範囲で圧力を低くし、具体的には0.1MPa以上とする。
また、図2における二軸スクリュー押出機22のバレル壁面44とスクリューフライト部36で発生する最大剪断応力σは、10kPa以上1000kPa以下であることが好ましく、20kPa以上400kPa以下であることがより好ましい。最大剪断応力σを上記範囲とすることにより、剪断架橋により発生するゲルの量を抑制することができる。
なお、剪断応力σは下記の式(1)及び式(2)により求めることができる。
式(1):γ=π・D・N/60h
式(2):σ=γ×η=(π・D・N/60h)×η
(σ:剪断応力[Pa]、γ:剪断速度[s−1]、η:粘度[Pas]、D:スクリュー径[mm]、N:スクリュー回転数[rpm]、h:フライトクリアランス[mm])
二軸スクリュー押出機22へ投入する直前の樹脂の温度Tは、樹脂のガラス転移点をTgとした場合、Tの範囲は(Tg−80)℃より大きくTg℃より小さくすることが好ましく、より好ましくは(Tg−30)℃より大きくTg℃より小さい、さらに好ましくは(Tg−5)℃より大きくTg℃より小さいことが好ましい。また、温度変動幅が±5℃以内であることが好ましい。直前の樹脂の温度Tを上記範囲とすることにより、溶融樹脂の粘性が下がるため、スクリュー内での混練溶融の際に、溶融樹脂同士にかかる摩擦力を抑えることができ、ゲルの発生を抑制することができる。また、スクリュー内部での温度変動幅を抑えることにより、スクリュー内部で温度が均一にかかり、摩擦力も等しくかかるため、ゲルの発生を抑制することができる。
また、二軸スクリュー押出機22出口での押出温度は、200℃を下回って低すぎると、溶融不足で押出しできなくなる。したがって、二軸スクリュー押出機22出口の樹脂温度をT1(℃)とし、一軸スクリュー押出機23出口の樹脂温度をT2(℃)としたときに、200°<T1<T2を満足することが好ましい。
また、二軸スクリュー押出機22入口からシリンダー32内部に不活性ガスを流入させながら混練溶融することが好ましい。この場合、入口部分の酸素濃度環境が100ppm以下になるように不活性ガスを流入させることが好ましい。二軸スクリュー押出機22の内部に窒素などの不活性ガスを流入させながら混練溶融することにより、スクリュー内部での酸化架橋により発生するゲルの量を抑えることができる。同様に、二軸スクリュー押出機22の内部をベント吸引することにより、スクリュー内部の酸素を排気することができるので、酸化架橋によるゲルの発生を防止することができる。なお、本発明において、樹脂入口部とは供給部Aのことをいい、樹脂出口部とは計量部Cのことをいう。
上記の如く押出条件が設定された二軸スクリュー押出機22を用いて環状オレフィン系樹脂を溶融することで、樹脂溶融時の剪断や酸化(熱劣化)によって発生するゲルの発生量を顕著に抑制することができる。そして、二軸スクリュー押出機22で溶融された溶融樹脂は一軸スクリュー押出機23に押し出される。なお、図1では、二軸スクリュー押出機22の出口と一軸スクリュー押出機23の入口を配管で直接繋げるように図示したが、配管途中にギアポンプ及びバッファータンク(図示せず)を配置してもよい。
次に、図3により一軸スクリュー押出機23について説明する。
図3に示すように、シリンダー50内に単軸スクリュー52を備えている。単軸スクリュー52はスクリュー軸54にスクリューフライト部56が取りつけられて構成されており、回転自在に支持されるとともに、不図示のモータによって回転駆動される。シリンダー50の外周部には、不図示のジャケットが取りつけられており、所望の温度に温度制御できるようになっている。
シリンダー50内は、二軸スクリュー押出機22と同様に各セクションに分類される。即ち、供給口58側から順に、供給口58から供給された環状オレフィン系樹脂を定量輸送する供給部(Aで示す領域)と、環状オレフィン系樹脂を混練・圧縮する圧縮部(Bで示す領域)と、混練・圧縮された環状オレフィン系樹脂を吐出口60に搬送しながら吐出量を計量する計量部(Cで示す領域)とで構成される。しかし、本発明では、二軸スクリュー押出機22で環状オレフィン系樹脂は既に溶融され、溶融された溶融樹脂が一軸スクリュー押出機23に供給され、一軸スクリュー押出機23から成形ダイ24に溶融樹脂を安定供給する。これにより、一軸スクリュー押出機23の機能としては特に計量部Cが重要となる。したがって、本発明で使用する一軸スクリュー押出機23としては、供給部A又は計量部Cのみを備えた(圧縮部Bのない)ものを用いることもできるが、既存の一軸スクリュー押出機をそのまま使用することもできる。なお、樹脂入口部とは供給部Aのことをいい、樹脂出口部とは計量部Cのことをいう。
また、一軸スクリュー押出機23の出口圧力は、4MPa〜20MPaの高圧範囲であって、圧力変動が±0.1MPa以内であることが好ましい。これにより、二軸スクリュー押出機22で溶融され、一軸スクリュー押出機23に押し出された溶融樹脂を、一軸スクリュー押出機23から成形ダイ24に定量的に安定供給することができる。また、一軸スクリュー押出機23での出口圧力を上記範囲の高圧にしても、樹脂は二軸スクリュー押出機22で既に溶融されているので、ゲルは発生しにくい。しかし、一軸スクリュー押出機23のシリンダー50内における溶融樹脂の平均滞留時間は5分以内に設定されることが好ましい。これは、一軸スクリュー押出機23には溶融樹脂の状態で供給されるので、ゲルが発生しにくいとはいえ、平均滞留時間が5分を上回ると、シリンダー50内での樹脂の熱劣化が懸念され、ゲル以外にも樹脂のコゲ等による異物発生の虞があるからである。なお、シリンダー50内における樹脂の平均滞留時間は、5分以内が好ましく、3分以内がより好ましく、2分以内がさらに好ましい。また、樹脂の滞留時間の下限は、成形ダイ24への安定供給が可能な時間であれば短ければ短い方がよいが、通常は20秒以上であることが好ましい。
また、一軸スクリュー押出機23の下流には、吐出量制御用のギアポンプ(図示せず)と異物除去フィルター(図示せず)を設けることが好ましい。本発明は、二軸スクリュー押出機22と一軸スクリュー押出機23とを組み合わせて役割分担することでゲルの発生を抑制しているが、ゲルが発生した場合においても、異物除去フィルターにより、除去することができる。また、吐出量制御用のギアポンプの量を調節することにより、一軸スクリュー押出機23の出口圧力を所望の値に調節し易くなる。
そして、一軸スクリュー押出機23から成形ダイ24に送られた溶融樹脂は、成形ダイ24からフィルム状に押し出され、冷却ドラム26上にキャストされて冷却固化され、樹脂フィルム12が製膜される。なお、成形ダイ24から押し出された際の溶融ポリマー温度は、熱劣化や着色を防止するために、Tg+100℃以上、Tg+130℃以下が好ましい。さらに、成形ダイ24は、そのスリットが、鉛直方向と、冷却ドラム26の回転方向に45°で傾斜した方向との範囲で形成されることが好ましい。
このように、溶融製膜法において、環状オレフィン系の熱可塑性樹脂を加熱溶融するための押出機として二軸スクリュー押出機22を使用し、溶融樹脂を成形ダイ24に供給するための押出機として一軸スクリュー押出機23を使用し、二軸と一軸の押出機22、23の役割分担を明確にすることで、樹脂溶融時のゲル発生を顕著に抑制することができ、且つ溶融樹脂を成形ダイ24に定量的に安定供給することができる。これにより、本発明の製造方法で製造された環状オレフィン系の樹脂フィルム12は、10%シクロヘキサン溶液とした際、ヘイズが3%以下であり、イエローネスインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。
ここで、ヘイズ値は、ゲルの量を示す指標であり、ヘイズが大きいほどゲルが多いことを意味し、ヘイズ値は3%以下であることが好ましく、1%以下であることが好ましい。
したがって、本発明の製造方法を実施して光学用フィルムを製造すれば、例えばゲルが顕著に少なく、且つ膜厚分布のない均一な光学用フィルム、例えば位相差フィルムを得ることができる。
また、本発明により製造された樹脂フィルム12は、耐熱性の面で非常に優れている。すなわち、本実施の形態では、混練効果の大きい二軸スクリュー押出機22で樹脂の溶融を行っているので、可塑剤或いはRe発現剤の添加量を必要最小限に抑えることができる。したがって、可塑剤或いはRe発現剤によってガラス転移温度が低下して耐熱性が低下することを防止でき、製造後の樹脂フィルム12の変形率を低く抑えることができる。これにより、樹脂フィルム12の変形率(60℃×90%の環境下で24時間放置した時の変形率)を、縦横ともに0.3%以下、好ましくは0.1%以下にすることができる。
次に、製膜工程部14で製膜された樹脂フィルム12を、縦延伸する縦延伸工程部16、及び横延伸する横延伸工程部18について説明する。なお、本実施の形態では、製膜工程部14で製膜された未延伸の樹脂フィルム12を、縦延伸及び横延伸して位相差フィルムとする場合で説明する。
しかし、製膜工程部14で製造された未延伸の樹脂フィルム12を液晶表示装置の保護フィルム用途として使用することもでき、あるいは配向膜用や液晶用の塗布液を塗布して位相差フィルムを製造するためのベースフィルムとして使用したり、反射防止用塗布液を塗布して反射防止用フィルムを製造するためのベースフィルムとして使用したりすることもできる。
樹脂フィルム12の延伸は、樹脂フィルム12中の分子を配向させ、面内のレターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)を発現させるために行われる。
図1に示すように、樹脂フィルム12は、先ず、縦延伸工程部16で長手方向に縦延伸される。縦延伸工程部16では、樹脂フィルム12が予熱された後、樹脂フィルム12が加熱された状態で、二つのニップロール28、30に巻き掛けられる。出口側のニップロール30は、入口側のニップロール28よりも早い搬送速度で樹脂フィルム12を搬送しており、これによって、樹脂フィルム12が縦方向に延伸される。
縦延伸工程部16における予熱温度はTg−40℃以上、Tg+60℃以下が好ましく、Tg−20℃以上、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg以上、Tg+30℃以下がさらに好ましい。また、縦延伸工程部16の延伸温度は、Tg以上、Tg+60℃以下が好ましく、Tg+2℃以上、Tg+40℃以下がより好ましく、Tg+5℃以上、Tg+30℃以下がさらに好ましい。縦方向の延伸倍率は1.0倍以上2.5倍以下が好ましく、1.1倍以上2倍以下がさらに好ましい。
縦延伸された樹脂フィルム12は、横延伸工程部18に送られ、幅方向に横延伸される。横延伸工程部18では例えばテンターを好適に用いることができ、このテンターによって樹脂フィルム12の幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に延伸する。この横延伸によって、レターデーションRthを一層大きくすることができる。
横延伸は、テンターを用いて実施するのが好ましく、好ましい延伸温度はTg以上、Tg+60℃以下が好ましく、より好ましくはTg+2℃以上、Tg+40℃以下、さらに好ましくはTg+4℃以上、Tg+30℃以下である。延伸倍率は1.0倍以上2.5倍以下が好ましく、1.1倍以上2.0倍以下がさらに好ましい。横延伸の後に縦、横のいずれか、または両方に緩和させることも好ましい。これにより幅方向の遅相軸の分布を小さくすることができる。
このような延伸により、Reが0nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上400nm以下、さらに好ましくは15nm以上300nm以下、また、Rthが0nm以上500nm以下、より好ましくは50nm以上400nm以下、さらに好ましくは70nm以上350nm以下である。
このうちRe≦Rthを満足するものがより好ましく、さらに好ましくはRe×2≦Rthを満足するものがさらに好ましい。このような高Rth、低Reを実現するためには、上述のように縦延伸したものを、横(幅)方向に延伸するのが好ましい。即ち、縦方向と横方向の配向の差が面内のレターデーションの差(Re)となるが、縦方向に加えその直交方向である横方向にも延伸することで、縦横の配向の差を小さくし面配向(Re)を小さくできる。一方、縦に加え横にも延伸することで面積倍率は増加するため、厚みの減少に伴い厚み方向の配向は増加し、Rthを増加させることができるためである。
さらに、Re,Rthの幅方向、長手方向の場所による変動をいずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にすることが好ましい。
延伸後の樹脂フィルム12は、図1の巻取工程部20でロール状に巻き取られる。その際、樹脂フィルム12の巻取りテンションは、0.02kg/mm以下とすることが好ましい。巻取りテンションをこのような範囲に設定することによって、延伸樹脂フィルム12にレタ−デーション分布を発生させることなく巻き取ることができる。
次に本発明に適した樹脂フィルム、延伸前の樹脂フィルム12の製膜方法、樹脂フィルムの製膜方法について説明する。
(光学用フィルムの素材)
<環状オレフィン系樹脂>
本発明の光学用樹脂フィルムの素材は環状オレフィン系樹脂を用いる。環状オレフィン系樹脂は、ノルボルネン系化合物から重合されるものが好ましい。この重合は開環重合、付加重合いずれの方法でも行うことができるが、環状オレフィン系樹脂の中でも付加重合のもののほうが好ましい。
付加重合としては例えば特許3517471のものや特許3559360、特許3867178、特許3871721、特許3907908、特許3945598、特表2005−527696、特開2006−28993、WO2006−004376に記載のものが挙げられる。特に好ましいのは特許3517471に記載のものである。
開環重合としてはWO98−14499、特許3060532、特許3220478、特許3273046、特許3404027、特許3428176、特許3687231、特許3873934、特許3912159に記載のものが挙げられる。なかでも好ましいのがWO98−14499、特許3060532に記載のものである。
<添加剤>
これらの光学用樹脂フィルムには、可塑剤としてアルキルフタルリルアルキルグリコレート類、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類、多価アルコール類を0〜20質量%添加できる。安定剤としてフォスファイト系安定剤(例えばトリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト)、フェノール系安定剤(たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチルテトラキス[.3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオレート、4,4−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオレート]、エポキシ化合物、チオエーテル化合物を0〜3質量%添加できる。マット剤としてシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、炭酸カルシウム、クレイ等の無機微粒子、架橋アクリル、架橋スチレン等の有機微粒子を0〜1000ppm添加できる。また紫外線吸収剤(例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2,−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]])や赤外線吸収剤、レターデーション調整剤を添加することも好ましい。
(光学用樹脂フィルムの製膜)
<溶融製膜法>
イ)ペレット化
前記樹脂と添加物とは溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化は前記樹脂と添加物を乾燥した後、二軸混練押出機(二軸スクリュー押出機22とは別に設ける)を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することで作製できる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。
二軸混練押出機は噛合い異方向回転二軸スクリュー押出機を用いる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒以上10分以内、より好ましくは20秒間〜5分以内である。
好ましいペレットの大きさは10mm〜1000mmがこのましく、より好ましくは30mm〜500mmである。
ロ)混練溶融
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行っても良く、窒素中で行っても良く、真空中で行っても良い。
乾燥したペレットは二軸スクリュー押出機22の供給口を介してシリンダー32内に供給され混練、溶融される。シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。L/Dとは、図2のシリンダー内径(D)に対するシリンダー長さ(L)の比である。
二軸スクリュー押出機22で加熱溶融された溶融樹脂は一軸スクリュー押出機23に押し出し供給され、一軸スクリュー押出機23を介して成形ダイ24に定量的に安定供給される。二軸スクリュー押出機22出口の樹脂温度をT1(℃)とし、一軸スクリュー押出機23出口の樹脂温度をT2(℃)としたときに、200°<T1<T2を満足すること
が好ましい。一軸スクリュー押出機23内での温度が230℃を超える場合には、一軸スクリュー押出機23と成形ダイ24との間に冷却機(図示せず)を設けることもできる。さらに残存酸素による溶融樹脂が酸化し、ゲルが発生するのを防止するため、二軸スクリュー押出機22及び一軸スクリュー押出機23のシリンダー内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
ハ)濾過
溶融樹脂中のゲルなどの異物を濾過するためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを、一軸スクリュー押出機23と成形ダイ24との間に組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行っても良く多段濾過でもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましくさらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材はステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
ニ)ギアポンプ
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、一軸スクリュー押出機23と成形ダイ24との間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にできる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。また。二軸スクリュー押出機22と一軸スクリュー押出機23との間に更に別のギアポンプを設けることも好ましい。
ホ)成形ダイ
前記の如く構成された二軸スクリュー押出機22によって溶融され、一軸スクリュー押出機23によって成形ダイ24に供給される。また、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂が成形ダイ24に連続的に送られる。成形ダイ24はTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。また成形ダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜10倍がよく、好ましくは1.2〜5倍である。
成形ダイ24は5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果を成形ダイ24の厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から二軸スクリュー押出機22及び一軸スクリュー押出機23に入ってから成形ダイ24から出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
ヘ)キャスト
成形ダイ24よりフィルム状に押し出された溶融樹脂(メルト)を冷却ドラム26(キャスティングドラムともいう)上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、成形ダイ24と冷却ドラム26の間を遮蔽し風の影響を抑制することが好ましい。
メルトが冷却ドラム26に接触する際、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等を用い、キャスティングドラムとメルトとの密着を上げることが好ましく、中でもタッチロール法が好ましい。このような密着向上法はメルトの全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
タッチロール法とは、冷却ドラム26に接触させてタッチロールを設けてフィルム表面を整形するものである。この時、タッチロールは通常の剛性の高いものではなく、弾性を有するものが好ましい。これにより過剰な面圧により表面凹凸を本発明易の範囲以下にすることを抑制できる。このためには、タッチロールの外筒厚みを通常のタッチロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mm、さらに好ましくは0.3mm〜3.5mmである。タッチロールは金属シャフトの上に設置し、その間に熱媒(流体)を通してもよく、外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設け、外筒の間に熱媒(流体)を満たしたものが挙げられる。タッチロールによる押付けは弱いほうがRthをより低減でき好ましいが小さすぎると本発明の表面粗さを達成できず、一方大きすぎると表面粗さは小さくなるがRthが増加し易い。このためタッチロールの面圧は0.1MPa〜5MPaが好ましく、より好ましく0.2MPa〜3MPa、さらに好ましくは0.3MPa〜2MPaである。ここでいう面圧とはタッチロールを押し付けている力を光学用樹脂フィルムとタッチロールの接触面積で割った値である。
タッチロールの温度は60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定するのが好ましい。このような温度制御はこれらのロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成できる。このように内部に温調機構を有するものがより好ましい。
タッチロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面にメッキを行うことも好ましい。一方ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールではゴム表面の凹凸が大きすぎ、上記の表面凹凸を持つ光学用樹脂フィルムを製膜できず好ましくない。
タッチロール、キャスティングロールの表面は、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。タッチロールは例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
成形ドラム(ロール)は複数本用いて徐冷することがより好ましい(このうち前記タッチロールを用いるのは最上流側(ダイに近い方)の最初の成形ドラムにタッチさせるように配置する)。一般的には3本の冷却ドラムを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ドラムの直径は100mm〜1500mmが好ましく、より好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるドラムの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。冷却ドラムは60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
この後、成形ダイ24から剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は0.7m〜3mが好ましく、1m〜2mがさらに好ましい。製膜後(未延伸)の厚みは30μm〜300μmが好ましく、より好ましくは40μm〜250μm、さらに好ましくは60μm〜200μmである。
ト)トリミング、厚みだし加工、巻取り
このようにして製膜した後、両端をトリミングすることも好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。
また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。
巻き取る前に片面或いは両面にラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。好ましい巻き取り張力は2kg/m幅〜50kg/m幅、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/m幅である。
(延伸)
溶融製膜した樹脂フィルムは縦延伸、横延伸を行うのが好ましく、さらに収縮処理を組み合わせても良い。中でも好ましいのが縦延伸後に横延伸を行うもの、あるいは横延伸と縦収縮処理を組合わせるものであり、前者は高Rthを発現させるのに適し、後者は低Rthを発現させるのに適する。横延伸と縦収縮処理を組合せて実施する場合、縦収縮は横延伸中に実施しても良く、横延伸後に実施しても良く、両方で実施しても良い。さらにこの横延伸の前又は後或いは両方に縦延伸を組合わせても良い。
[縦延伸]
縦延伸単独で行っても良く、横延伸と組合せて実施しても良い。縦延伸は横延伸の前、後どちらで実施しても良いが、横延伸前に行うのがより好ましい。また縦延伸は1段で実施しても良く、多段に分けて実施しても良い。
縦延伸は2対のニップロールを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロールの周速を入口側のニップロールの周速より速くすることで達成できる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/Wが2を超え50以下(長スパン延伸)ではRthを小さくでき、L/Wが0.01以上0.3以下(短スパン延伸)ではRthを大きくできる。本発明では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)どれを使用しても良いが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
これらの縦延伸の好ましい延伸温度は(Tg−10)〜(Tg+50)℃、より好ましくは(Tg−5)〜(Tg+40)℃、さらに好ましくは(Tg)〜(Tg+30)℃である。好ましい延伸倍率は2%〜200%であり、より好ましくは4%以上150%以下、さらに好ましくは6%〜100%である。
≪長スパン延伸≫
延伸に伴いフィルムは伸張されるが、この時フィルムは体積変化を小さくしようと厚み、幅を減少させる。ニップロール間隔を大きくすると幅方向収縮しやすくなり厚み減少を抑制でき(厚み方向の圧縮が少なく)、フィルム面内の分子配向が抑制されRthを小さくできる。
L/Wは2を越え50以下が好ましく、より好ましくは3〜40、さらに好ましくは4〜20である。このような長スパン延伸は3対以上ニップロールで多段延伸しても良く、多段のうち最も長い縦横比が上記範囲に入っていれば良い。
このような長スパン延伸は所定の距離離した2対のニップロールの間でフィルムを加熱して延伸すればよく、加熱方法はヒーター加熱法(赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーター等をフィルム上や下に設置し輻射熱で加熱)でも良く、ゾーン加熱法(熱風等を吹き込み所定の温度に調温したゾーン内で加熱)でも良い。
≪短スパン延伸≫
L/Wが0.01を越え0.3未満、より好ましくは0.03〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.2で縦延伸(短スパン延伸)を行う。これによりネックイン(延伸に伴う延伸と直行する方向の収縮)を小さくでき、厚みが減少し易い。この結果、厚み方向に圧縮されたようになり、厚み方向の配向(面配向)が進みRthが増加し易い。
短スパン延伸は2対以上のニップロール間で搬送速度を変えることにより実施できるが、通常のロール配置(特開2007−152558の図3の縦延伸工程部(108)に示すようにニップロールを平行に配置、ロール間に隙間が発生しL/Wを小さくできない)と異なり、2対のニップロールを斜めに(前後のニップロールの回転軸を上下にずらす)配置することで達成できる(特開2006−51804の図1の縦延伸工程部(20)に示すようにニップロールを上下にずらして配置する。但しこの図ではニップロール(22、24)が広く描いてあるが、この間隔を狭めニップロールを近接させることでL/Wを小さくできる)。これに伴いニップロール間に加熱用ヒーターは設置できないため、ニップロール中に熱媒を流しフィルムを昇温することが好ましい。さらに入口側ニップロールの前に内部に熱媒を流した予熱ロールを設け、フィルムを延伸前に加熱することも好ましい。
[横延伸]
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御することができる。延伸温度は、Tg−10℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg−5℃以上Tg+45℃以下がより好ましく、Tg以上Tg+30℃以下がさらに好ましい。好ましい延伸倍率は10%以上250%以下、より好ましくは20%以上200%以下、さらに好ましくは30%以上150%以下である。ここでいう延伸倍率とは下記式で定義されるものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
このような延伸の前に予熱、延伸の後に後熱処理を行うことで延伸後のRe,Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、後熱処理はどちらか一方であっても良いが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、後熱処理はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
後熱処理は延伸温度より1℃以上50℃以下、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以下低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすくなるため好ましくない。
予熱は延伸温度±50℃、より好ましくは延伸温度±35℃、さらに好ましくは延伸温度±20℃である。後熱処理後のボーイングが進行方向に凸の場合は延伸温度より下げるのが好ましく、進行方向に凹の場合は延伸温度より高くするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。このように熱固定温度<延伸温度<予熱温度であることがより好ましい。
このような延伸によりRe、Rthの幅方向、長手方向のばらつき、配向角のMD(長手方向)あるいはTD(幅方向)からのずれを小さくできる。
[収縮処理]
延伸中或いは延伸後に収縮処理を行うことが好ましく、より好ましくは横延伸中或いは横延伸後に縦(長手)方向に収縮緩和処理を行うことが好ましい。収縮処理は縦方向の搬送速度を上流側より下流側を低くすることで達成でき収縮量は0.1%以上50%以上が好ましく、より好ましくは1%以上40%以下、さらに好ましくは5%以上35%である。ここで云う収縮量とは、下記式で表される。
収縮量(%)=100×{(収縮処理前の長さ)−(収縮処理後の長さ)}/(収縮処理前の長さ)
収縮処理温度は(Tg−20)℃〜(Tg+50)℃、より好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg+40)℃、さらに好ましくはTg〜(Tg+30)℃が好ましく、収縮処理時間は1秒以上15分以下、より好ましくは5秒以上10分以下、さらに好ましくは10秒以上5分以下である。
延伸により延伸方向に伸張されるが、これに伴う物質収支を合わせるため延伸と直交方向、厚み方向が減少する。この厚み減少に伴いフィルム面が圧縮され面内に分子が配向し面配向が強くなる。この結果Rthが増加する。しかし縦収縮を行うことで厚み減少を抑制でき低いRthを実現できる。即ち縦収縮することでRth<Re×1.5、より好ましくはRth<Reを実現できる。さらにこの縦収縮により延伸後のフィルムの熱収縮を抑制する効果もあり、80℃100hrでの熱収縮量を0.5%以下、より好ましくは0.3%以下にできる。
このような縦収縮は例えば下記のような方法により達成することができる。
≪延伸中の収縮処理≫
横延伸中の縦収縮は、テンター内のクリップの搬送速度を入口側から出口側に向って遅くしながら幅方向に延伸することで達成でき、例えば、二軸延伸機を用いて行うことができ、具体的には、横延伸と縦収縮とを同時に行うことができる。例えば、特開2003−211533、特開平6−210726、特開平6−278204、特開平11−77825、特開2000−246795、特開2004−106434、特開2004−195712、特開2006−142595、特開2006−22916等に記載の装置を使用できる。具体的には、市金工業社製の高機能薄膜装置(商品名FITZ)等が使用できる。この装置は、縦方向(フィルムの長手方向=フィルムの進行方向)の延伸倍率と横方向(幅方向=フィルムの進行方向と垂直方向)の延伸倍率を任意に設定でき、さらに縦方向(長手方向)の収縮倍率も任意に設定可能であるため、延伸および収縮を同時に所定の条件で行うことができる。また、例えば、一般的に知られているレール幅制御方式、パンダグラフ方式、リニアモーターによる走行速度を制御する方式等を適宜組み合わせることによって、幅方向の延伸倍率を制御するとともに、フィルム端部を挟時したクリップの間隔を変化させて長手方向の長さを制御するようにした二軸延伸機等も使用できる。
≪延伸後の収縮処理≫
下記I)、II)、III)、IV)の方法を挙げることができるが、好ましい方法は、II)及びIV)である。
I)横延伸(テンター延伸)中あるいは/およびこれに引き続きテンター内のクリップの搬送速度を、延伸部入口のクリップの搬送速度より遅くする。
横延伸はクリップでフィルム両端を拡幅することで行われる(テンター延伸)が、延伸と直交方向の収縮を促し厚み収縮を促進するため、横延伸中あるいは/および延伸後にテンター内のクリップの搬送速度を延伸部入口より遅くする。
この中でもより好ましいのが横延伸後に縦収縮を行うものである(横延伸と縦収縮を同時に行うと、面内に延伸と伸張が同時に発生し残留歪が発生し易い上、面内の均一性が低下し易い)。このような横延伸後の縦収縮は、例えば横延伸と縦収縮を別のテンターレールを用意し、速度を独立に制御できるようにすることで達成でき、特開平6−210726号公報、特開平6−278204号公報、特開平11−77825号公報、特開2004−195712号公報、特開2006−142595号公報等に記載のようなものを使用し、縦(搬送方向)に収縮させることで実現できる。
II)テンターによる横延伸の後、熱処理ゾーンの入口側より出口側の搬送速度を遅くしながら熱処理する。
この方法では横延伸後(テンターから出た後)、フィルムを2対以上のニップロールを設けた熱処理ゾーンに挿入し、出口側のニップロールより入口側のニップロールの搬送速度を早くすることで達成できる。この縦収縮ゾーンではフィルムの収縮は縦、横両方向に発生するため、縦収縮を優先して発現させるためには、熱処理ゾーンの縦横比(ゾーン長を入口側フィルム幅で割った値)は0.01〜2であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.6、さらに好ましくは0.1〜1.3である。熱処理ゾーンの加熱方法は、ニップロール間に熱処理ゾーンやヒーターを設けて行ってもよく、またニップロールを加熱し樹脂フィルムを加熱しても良い。このような出口側の搬送速度を下げる縦収縮は、搬送張力を弱くしただけの熱処理とは効果が全く異なる。即ち搬送張力低下だけでは上記のようなネックインを促すような効果は全く発生しない。
III)テンターのチャック上で樹脂フィルムを搬送方向に収縮させる。
横延伸中あるいは横延伸後にチャック上で樹脂フィルムを搬送方向にスリップさせることで縦収縮させることができる。即ち、チャックに搬送(縦)方向に樹脂フィルムが滑るようにしておくと縦収縮させることができる。このような方法としては特に限定されないが、例えばチャックのクリップ部に搬送方向に滑車を設置することでも達成でき、またクリップの樹脂フィルム把持面に滑性の素材(例えばテフロン)を貼り付けてもよい。
IV)横延伸後のロール間低張力搬送
横延伸後(テンター後)、フィルムを低張力で熱処理すると縦、横両方向に収縮しようとするが、この時フィルムを、ロール間を搬送させることで、ロールとフィルムの摩擦力により横方向の収縮を抑制し縦収縮を優先して発現させることができる。
フィルムの横収縮を抑制するために必要な摩擦力を得るために、フィルムがロール上をラップしている長さ(W)と、ロール間でフィルムがロールと接触していない長さ(G)の比(W/G)は0.01以上3以下が好ましく、より好ましくは0.03以上1以下、さらに好ましくは0.05以上0.5以下である。この範囲を超えるとロール間が長くなり摩擦力が低下しTD収縮が発生しReが低下、Rth/Reが上昇し易い上、縦皺が発現し易く好ましくない。一方、W/Gがこの範囲未満では延伸で発生した残留歪が解消せず熱寸法変化が増大し好ましくない。
ロールの数は2本以上100本以下が好ましく、より好ましくは3本以上50本以下、さらに好ましくは4本以上20本以下である。好ましいロールの直径は5cm以上100cm以下が好ましく、より好ましくは10cm以上80cm以下、さらに好ましくは15cm以上60cm以下である。
さらにロールと樹脂フィルムの間の摩擦力を充分に得るために樹脂フィルムの表面粗さ(Ra)は0.005μm以上0.04μm以下が好ましく、より好ましくは0.007μm以上0.035μm以下、さらに好ましくは0.009μm以上0.030μm以下である。このような表面を持つフィルムはタッチロール製膜法により達成できる。これはキャストした直後のフィルムを両面から表面の平滑なロールで挟み込むことで、これを用いない場合に比べ高い平滑性を達成でき上述の表面粗さを実現できる。
上記I)、II)の縦収縮処理は単独で行っても良く、組合わせて行っても良い。II)の収縮処理は横延伸後、オンラインで行っても良く、延伸後巻き取ったあとオフラインで実施しても良い。好ましいのはオンライン処理である。
[延伸中の揮発成分]
上記縦延伸、横延伸は揮発成分(溶剤や水分など)が樹脂に対し、0.5wt%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3wt%以下、さらに好ましくは0wt%である。揮発成分が存在すると乾燥に伴う収縮応力が働き、ボーイングがより顕著になるためである。
[延伸・収縮処理後のフィルム物性]
このようにして延伸、収縮処理後のフィルムRe、Rthは下式(R−1)および(R−2)を満足することが好ましい。
式(R−1):0nm≦Re≦300nm
式(R−2):10nm≦Rth≦300nm
より好ましくは下式(R−3)および(R−4)を満足することが好ましい。
式(R−3):20nm≦Re≦200nm
式(R−4):20nm≦Rth≦200nm
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定されるもので、測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルまたはプログラム等で交換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーションン値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーションン値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(3)及び式(4)よりRthを算出することもできる。
Figure 2010012715
---式(3)
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。式(3)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d −−−式(4)
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)を算出することができる。Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーションン値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
製膜方向(長手方向)とフィルムのReの遅相軸とのなす角度θは、0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、0°、90°、−90°からの振れ角は±3°以内が好ましく、より好ましくは±2°以内、さらに好ましくは±1°以内である。θは0°(縦配向)、90°あるいは−90°(横配向)いずれでも構わないが、より好ましくは横配向である。Re,Rthの面内、長手方向のばらつきは0%から8%が好ましく、より好ましく0%から5%、さらに好ましくは0%から3%である。
80℃200時間経時前後のRe,Rthの変化は0%以上8%以下が好ましく、より好ましくは0%以上6%以下、さらに好ましくは0%以上4%以下である。80℃200時間経時前後の縦(MD)、横(TD)の寸法変化はいずれも0%以上±0.5%以下が好ましく、より好ましくは0%以上±0.3%以下、さらに好ましくは0%以上±0.1%以下である。
延伸後のフィルムの厚みは、15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは20μm〜120μm、さらに好ましくは25μm〜80μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
(フィルムの加工)
このようにして得た樹脂フィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板とを組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。これらは以下の工程により達成できる。
≪表面処理≫
表面処理を行うことによって、各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着を向上させることができる。例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、1×10−3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。
これらの中でも、好ましいのがグロー放電処理、コロナ処理、火炎処理であり、さらに好ましいのがコロナ処理である。
機能層との接着のため、下塗り層を設けることも好ましい。この層は表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
≪機能層の付与≫
本発明の光学用樹脂フィルムの実施の形態では、製膜工程部14で製膜した樹脂フィルム12(ベースフィルム)を縦延伸、横延伸して位相差フィルムを製造する例で説明した。しかし、未延伸のベースフィルムに発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることもできる。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学異方性層(光学補償層)の付与、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
〔光学異方性層〕
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶性化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶性化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶性化合物の配向状態に関しては、IDW'00、FMC7−2のP411〜414等に記載されている。
光学異方性層は、支持体上に直接液晶性化合物から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性化合物から形成する。配向膜は、10μm以下の膜厚を有することが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性化合物には、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物が含まれる。棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。本発明の配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。
[棒状液晶性化合物]
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。すなわち、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、例えば、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載のものを採用できる。
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
[ディスコティック液晶性化合物]
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
ディスコティック液晶性化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物がディスコティック液晶性化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式(5)で表わされる化合物であることが好ましい。
一般式(5)
D(−LQ)
(一般式(5)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、rは4〜12の整数である。)
円盤状コアの(D)の例を以下に示す。以下の各例においてLQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性(Q)との組み合わせを意味する。
Figure 2010012715
Figure 2010012715
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Figure 2010012715
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Figure 2010012715
Figure 2010012715
一般式(5)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−、
L2:−AL−CO−O−AL−O−、
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−、
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−、
L5:−CO−AR−O−AL−、
L6:−CO−AR−O−AL−O−、
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L8:−CO−NH−AL−、
L9:−NH−AL−O−、
L10:−NH−AL−O−CO−、
L11:−O−AL−、
L12:−O−AL−O−、
L13:−O−AL−O−CO−、
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−、
L15:−O−AL−S−AL−、
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−、
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−、
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−、
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−、
L21:−S−AL−、
L22:−S−AL−O−、
L23:−S−AL−O−CO−、
L24:−S−AL−S−AL−、
L25:−S−AR−AL−。
一般式(5)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)の例を以下に示す。
Figure 2010012715
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1、Q2、Q3、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)またはエポキシ基(Q6、Q18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)であることが最も好ましい。具体的なrの値は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
ハイブリッド配向では、ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)と支持体の面との角度、すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ(すなわち、透明支持体に垂直な)方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいはディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーは、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。添加成分の中でも重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)の添加が好ましい。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることができる。
前記光学異方性層は、ディスコティック液晶性化合物とともにポリマーを含有していてもよい。該ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
[液晶性分子の配向状態の固定]
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各公報記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各公報記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号、米国特許4239850号の各公報記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmの範囲にあることが好ましく、20mJ/cm〜5000mJ/cmの範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm〜800mJ/cmの範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
前記光学異方性層は、前記液晶性化合物の少なくとも一種と、所望により重合性開始剤、フッ素系ポリマー等の添加剤を含有する塗布液を調製し、該塗布液を配向膜表面に塗布・乾燥することで形成することができる。
フッ素系化合物としては、従来公知の化合物が挙げられるが、具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]に記載のフッ素系化合物等が挙げられる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
均一性の高い光学補償フィルムを作製する場合には、前記塗布液の表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることが更に好ましい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
[偏光板]
(偏光膜)
本発明の偏光板に使用可能な偏光膜は、Optiva社製のものに代表される塗布型偏光膜、またはバインダーとヨウ素もしくは二色性色素とからなる偏光膜が好ましい。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
汎用の偏光子は、例えば、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製することができる。
汎用の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。一方、厚みの上限については、特に限定はしないが、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在、汎用の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置では、観察されなくなる。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱あるいはpH変化により、バインダー間で反応させて偏光膜を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびそれらのコポリマー(例、アクリル酸/メタクリル酸重合体、スチレン/マレインイミド重合体、スチレン/ビニルトルエン重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル重合体、エチレン/酢酸ビニル重合体)が含まれる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、95〜100%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、−COONa、−Si(OH)、N(CH・Cl、C19COO−、−SONa、−C1225を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、−
COONa、−SH、−SC1225を導入することができる。変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ケン化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコールおよびアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光膜の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。バインダー層中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。すなわち、架橋剤の残留量が多い偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
架橋剤については、米国再発行特許23297号公報に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。二色性色素については、特開平1−161202号、同1−172906号、同1−172907号、同1−183602号、同1−248105号、同1−265205号、同7−261024号の各公報に記載がある。二色性色素は、遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩として用いられる。2種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光膜を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光膜、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光膜または偏光板が、単板透過率および偏光率とも優れており好ましい。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にある(偏光板の単板透過率の最大値は50%である)ことが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
偏光膜と光学異方性層、あるいは、偏光膜と配向膜を、接着剤を介して配置することも可能である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。その中でもポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
(偏光板の製造)
偏光膜は、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10〜80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。
通常の傾斜角度は45度である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45度でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
延伸法の場合、延伸率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。なお。ここでいう延伸率とは、延伸前にフィルムに標点を付けておき、その延伸前の長さ(L)と延伸後の長さ(L’)の比(L’/L)で表される。
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフイルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10〜80度斜め延伸されたバインダーフイルムが製造される。
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90度が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360度以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60度の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50度が好ましい。45度が特に好ましい。
[液晶表示装置]
本発明の光学用樹脂フィルムの製造方法により製造された光学フィルムは種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。以下、各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホメオトロピック配向(円盤面が寝ている水平配向)のディスコティック液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向(長軸の傾きが偏光膜との距離に伴って変化している配向)のディスコティック液晶性化合物で補償することができる。
また、セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホモジニアス配向(長軸が寝ている水平配向)の棒状液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向のディスコティック液晶性化合物で補償することもできる。
ホメオトロピック配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が85〜95度の状態で配向している。
ホモジニアス配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が5度未満の状態で配向している。
ハイブリット配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が15度以上であることが好ましく、15度〜85度であることがさらに好ましい。
支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層、さらにはホメオトロピック配向したディスコティック液晶性化合物とホモジニアス配向した棒状液晶性化合物の混合体からなる光学異方性層は、Rthレターデーション値が40nm〜200nmであり、Reレターデーション値が0〜70nmであることが好ましい。
ホメオトロピック配向(水平配向)しているディスコティック液晶性化合物層およびホモジニアス配向(水平配向)している棒状液晶性化合物層に関しては、特開平12−304931号および同12−304932号の各公報に記載されている。ハイブリット配向しているディスコティック液晶性化合物層に関しては、特開平8−50206号公報に記載がある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性化合物を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各公報に開示されている。棒状液晶性化合物が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードと呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性化合物が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
黒表示にTNモードと液晶の配向は同じ状態であるため、好ましい態様もTNモード対応と同じである。ただし、TNモードに比べ、OCBモードの方がセル中央部で液晶性化合物が立ち上がった範囲が大きいために、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層について、若干のレターデーション値の調整が必要である。具体的には、支持体上のディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm〜500nmであり、Reレターデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性化合物が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置の黒表示において、液晶セル中の棒状液晶性化合物は、そのほとんどが、立ち上がった状態であるため、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層で液晶性化合物を補償し、別に、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向し、棒状液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の透過軸方向との角度が5度未満である光学異方性層で偏光板の視角依存性を補償することが好ましい。
支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm〜500nmであり、Reレターデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(その他の液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
(ハ)反射防止層の付与(反射防止フィルム)
本発明の光学用樹脂フィルムの上に反射防止層を付与しても良い。反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)を透明基体上に設けて形成される。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明の光学用樹脂フィルムは前記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
(ハ−1)塗布型反射防止フィルムの層構成
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層との間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(ハ−2)高屈折率層および中屈折率層
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(ハ−3)低屈折率層
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、前記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハ−4)ハードコート層
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
前記硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(ハ−5)前方散乱層
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。前記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開平11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
(ハ−6)その他の層
前記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(ハ−7)塗布方法
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(ハ−8)アンチグレア機能
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を、塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
《測定法》
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
(1)Rth/Re比、Rth/Re比のレンジ
[1]製膜フィルムの両端5cmずつスリットした後、全幅に亘り等間隔で20点サンプリング(3cm×3cmの正方形)した。この時正方形の各辺をMD(製膜方向)、TD(幅方向)に平行に切り出した。
[2]サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%に5時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測器(株)製)を用いて、相対湿度25℃・60%において、上述のようにサンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±50°まで10°ずつ傾斜させて方向から波長550nmにおけるレターデーション値を測定した。
[3]垂直(法線)方向から面内のレターデーション(Re)、垂直方向、±10〜40°方向の測定値から厚み方向のレターデーション(Rth)を算出した。
[4]これらの各測定点のRth/Re比の平均値を「Re/Rth比」とした。また、20点のRth/Re比の中で最大値と最小値の差を「Rth/Re比のレンジ」とした。
(2)熱寸法変化、熱寸法変化むら
[1]下記サンプルの全幅を5等分した点でサンプリングする。
イ) MDサンプル:MD15cm×TD5cm
ロ) TDサンプル:TD15cm×MD5cm
[2]各サンプルを25℃、60%rhで3時間以上調湿し、この環境中で10cm基長のピンゲージを用い測長する。これをL1とする。
[3]各サンプルを80℃、dry200時間放置後、25℃、60%rhで3時間以上調湿し、この環境中で10cm基長のピンゲージを用い測長する。これをL2とする。
[4]下記式からMD,TDの各点(10点)の熱寸法変化を測定し、この平均値を熱寸法変化とする。
熱寸法変化(%)=100×|L2−L1|/L1
[5]上記10点中の熱寸法変化(絶対値)の最大値と最小値の差を、10点の熱寸法変化の平均値で割り百分率でしめしたものを熱寸法変化むらした。
(3)表面粗さ
コンパクトレーザー干渉計(富士写真光機(株)製 F601)を用いてRaを測定した。
(4)ガラス転移温度(Tg)
走査型示差熱量計(DSC)の測定パンにサンプルを20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後(1st−run)、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温した(2nd−run)。2nd−runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度をガラス転移温度(Tg)とした。
次に、本発明の実施例を説明する。
(試験条件)
試験は、原料樹脂として、安定剤(Irganox1010)を0.1質量%含む環状オレフィン系樹脂のペレットを使用し、二軸スクリュー押出機、一軸スクリュー押出機の順に通過させて成形ダイに供給し、成形ダイから樹脂を押し出すことで光学用樹脂フィルムを製造した。
二軸スクリュー押出機は、2本のスクリュー径(スクリューフライドの直径)がそれぞれ37mmで、L/D54の異方向噛み合い型のものを使用した。また、一軸スクリュー押出機は、1本のスクリュー径(スクリューフライドの直径)が50mmで、フルフライド型のものを使用した。二軸スクリュー押出機及び一軸スクリュー押出機の条件は図4に示す通りであり、図4において、第1スクリュとは樹脂が1番目に通る押出機を意味し、第2スクリュとは2番目に通る押出機を意味する。また、T1outは第1スクリュー出口の樹脂温度であり、T2outは第2スクリュー出口の樹脂温度である。
そして、試験結果の評価は、製造されたフィルムをシクロヘキサンに溶解し、10質量%溶液としたものをヘイズメーターで測定した溶液ヘイズの値と、第2スクリュ(2番目の押出機)での出口圧力の安定性と、を評価した。ゲルが発生すると、溶融ヘイズ値が増加となって現れ、光学用途フィルムとしては溶融ヘイズ値が3%以下であることが好ましい。また、第2スクリュでの出口圧力が安定しないと、成形ダイから吐出する吐出圧力が変動し、製造されるフィルムに膜厚分布が発生する。
(試験結果)
図4から分かるように、環状オレフィン系樹脂を先ず二軸スクリュー押出機で加熱溶融し、次に一軸スクリュー押出機から押し出して成形ダイに供給した実施例1〜12は、溶液ヘイズ値が3%以下であり、ゲルの発生が少ないことが分かる。
これに対して、一軸スクリュー押出機と一軸スクリュー押出機を組み合わせた比較例1は、安定性は良好であるものの、溶液ヘイズ値が15%となり、ゲルが顕著に発生(15%)していることが分かる。また、二軸スクリュー押出機と二軸スクリュー押出機を組み合わせた比較例2は、比較例1よりも溶液ヘイズ値が多少下がっているものの、安定性が悪くなっている。また、一軸スクリュー押出機のみを使用した比較例3及び二軸スクリュー押出機のみを使用した比較例4についても、溶液ヘイズ値が高く(10%、5%)、ゲルが多く発生していることが分かる。
また、実施例1〜12の中で二軸スクリュー押出機出口の樹脂温度に着目すると、二軸スクリュー押出機出口での樹脂温度が200℃(実施例3〜12)のときが150℃(実施例1)及び300℃(実施例2)に比べて溶液ヘイズ値が低くなっている。
また、実施例1〜12の中で二軸スクリュー押出機の出口圧力に着目すると、出口圧力が10MPa(実施例1〜3)の場合も溶液ヘイズ値は3%以下であるが、4MPa以下(実施例4〜12)において溶液ヘイズ値の更なる改良が見られた。
また、実施例1〜12の中で二軸スクリュー押出機の最大剪断速度に着目すると、最大剪断速度が1500(実施例12)であっても溶液ヘイズ値は3%以下であるが、最大剪断速度が15(実施例10)と800(実施例11)とにおいて溶液ヘイズ値の更なる改良が見られた。
本発明の光学用樹脂フィルムの製造方法に用いられるフィルム製造装置の構成を示す摸式図である。 二軸スクリュー押出機の構成を示す概念図である。 一軸スクリュー押出機の構成を示す概念図である。 本発明の実施例を示す表図である。
符号の説明
10…フィルム製造装置、12…樹脂フィルム、14…製膜工程部、16…縦延伸工程部、18…横延伸工程部、20…巻取工程部、22…二軸スクリュー押出機、23…一軸スクリュー押出機、24…成形ダイ、26…冷却ドラム、32…シリンダー、34…スクリュー軸、36…スクリューフライト部、38…スクリュー、40…供給口(入口)、42…吐出口(出口)、44…バレル壁面、50…シリンダー、52…スクリュー、54…スクリュー軸、56…スクリューフライト部、58…供給口(入口)、60…吐出口(出口)

Claims (9)

  1. 環状オレフィン系の熱可塑性樹脂を二軸スクリュー押出機により加熱溶融する溶融工程と、
    前記加熱溶融した溶融樹脂を一軸スクリュー押出機から押し出して成形ダイに供給する供給工程と、
    前記成形ダイから前記溶融樹脂をフィルム状に吐出して冷却することによりフィルム成形する成形工程と、を備えたことを特徴とする光学用樹脂フィルムの製造方法。
  2. 前記二軸スクリュー押出機出口の樹脂温度をT1(℃)とし、前記一軸スクリュー押出機出口の樹脂温度をT2(℃)としたときに、200°<T1<T2を満足することを特徴とする請求項1の光学用樹脂フィルムの製造方法。
  3. 前記二軸スクリュー押出機の出口圧力が0.1MPa〜5.5MPaの範囲であることを特徴とする請求項1又は2の光学用樹脂フィルムの製造方法。
  4. 前記一軸スクリュー押出機の出口圧力が4MPa〜20MPaの範囲であって、圧力変動が±0.1MPa以内であることを特徴とする請求項1又は2の光学用樹脂フィルムの製造方法。
  5. 前記二軸スクリュー押出機軸のバレル壁面とスクリューフライト部で発生する最大剪断応力σが10s−1より大きく1000s−1より小さいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光学用樹脂フィルムの製造方法。
  6. 前記二軸スクリュー押出機の入口でラジカルトラップ剤又は酸化防止剤を添加することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光学用樹脂フィルムの製造方法。
  7. 前記二軸スクリュー押出機の入口及び前記一軸スクリュー押出機の入口から不活性ガスを流入させて、入口部分の雰囲気酸素濃度が100ppm以下になるようにすることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光学用樹脂フィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の光学用樹脂フィルムの製造方法により製造されたことを特徴とする光学用フィルム。
  9. 前記光学用フィルムは位相差フィルムであって、該フィルムを10%シクロヘキサン溶液とした際のヘイズが3%以下であることを特徴とする請求項8の光学用フィルム。
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