JP2011047983A - 光学フィルムの製造方法および該製造方法により製造された光学フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】厚み方向に光学異方性を有するフィルムを、他の光学特性を併せて満足し、かつ、安価に製造する光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】光学フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂および溶媒を含む熱可塑性樹脂溶液12をダイ26によりキャスティングドラム28に流延することにより、製膜する製膜工程14と、製膜工程で製膜された未延伸熱可塑性樹脂フィルム12’を延伸する延伸工程16、18と、を有し、延伸工程16、18において、未延伸熱可塑性樹脂フィルム12’の一方の面側と他方の面側とで、異なる温度を付与することを特徴とする光学フィルムの製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルムの製造方法および該製造方法により製造された光学フィルムに係り、特に、液晶表示装置などにおいて位相差を補償するために用いることができる光学補償フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置は、液晶セルおよび偏光板を有する。前記偏光板は、一般的に保護フィルムおよび偏光膜を有し、例えば、ポリビニルアルコールからなる偏光膜をヨウ素にて染色し、延伸を行い、その両面を保護フィルムにて積層して得られる。透過型液晶表示装置では、偏光板を液晶セルの両側に貼り付け、さらには一枚以上の光学補償機能を持つ透明フィルムを配置することもある。反射型液晶表示装置では、通常、反射板、液晶セル、一枚以上の透明フィルムを配置することもある。反射型液晶表示装置では、通常、反射板、液晶セル、一枚以上の透明フィルム、偏光板の順に配置する。液晶セルは、液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは液晶性分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過および反射率いずれにも適用できる、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)のような表示モードが提案されている。
光学補償機能をもつ透明フィルムは、画像着色を解消し、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。従来は、延伸複屈折フィルムが使用されていた。しかし、近年では、延伸複屈折フィルムに代えて、透明支持体上に円盤状(ディスコティック)化合物を有する透明フィルムを使用することが提案されている。これは、円盤状化合物を含む組成物を配向膜の上に塗布し、配向温度よりも高い温度で加熱して円盤状化合物を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。
一般に、円盤状化合物は、大きな複屈折率を有するとともに、多様な配向形態がある。円盤状化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。円盤状化合物は、多様な配向形態があるため、所望の光学特性を発現させるためには、円盤状化合物の配向を制御する必要がある。
例えば、円盤状化合物を用いて、TNモードやOCBモードの液晶セルを光学的に補償する場合、円盤状化合物の円盤面の傾斜角(平均チルト角)が液晶化合物層の厚み方向で変化するようにハイブリッド配向させることが好ましいとされている。このような光学補償機能をもつ透明フィルムを製造するためには配向を制御する方法が重要である。
厚み方向に光学異方性を有するフィルムを得る方法として、下記の特許文献1には、位相差層の配向方向を高精度に制御するために、異なる層を積層した位相差フィルムが開示されている。特許文献2には、フィルム全域にわたり均一かつ高品位な表示を行うことを可能とする位相差フィルムの製造方法として、フィルム内に膜厚に応じた溶剤含有率の分布を形成する製造方法が開示されている。また、特許文献3には、得られる厚み方向および面内レターデーション値の範囲を拡大可能で、容易に任意の厚み方向および面内方向レターデーション値を得るため、屈折率異方性を有する材料がフィルムの厚み方向に濃度勾配を有している位相差フィルムが開示されている。特許文献4には、溶融製膜時に複数のロールを用いて剪断をかけることにより、フィルムにおける光軸を厚さ方向に対して傾斜させるフィルムの製造方法が開示されている。
特開2004−264345号公報 特開平10−142420号公報 特開2006−221140号公報 特開2003−25414号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているフィルムは、コストの面で問題があり、特許文献2〜4に記載されているフィルム、フィルムの製造方法では、表面特性などの光学フィルムに求められる他の特性(カールによるフィルムの反りやレターデーション分布等)が劣化する場合があり、他の特性も併せて満足させることが難しいという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、厚み方向に光学異方性を有するフィルムを、安価に製造する光学フィルムの製造方法および該製造方法により製造された光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、光学フィルムの製造方法において、熱可塑性樹脂および溶媒を含む熱可塑性樹脂溶液をダイによりキャスティングドラムに流延することにより、製膜する製膜工程と、該製膜工程で製膜された未延伸熱可塑性樹脂フィルムを延伸する延伸工程と、を有し、前記延伸工程において、前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムの一方の面側と他方の面側とで、異なる温度を付与することを特徴とする光学フィルムの製造方法を提供する。
請求項1によれば、光学フィルムの製造方法において、延伸工程を、未延伸熱可塑性樹脂フィルムの一方の面側と他方の面側とで、異なる温度を付与することにより、熱可塑性樹脂フィルムの厚さ方向に光学異方性を有することができる。延伸工程は、フィルムのレターデーションを発現させる工程であり、延伸工程で未延伸熱可塑性樹脂フィルムに温度差を付与することで、より効果的にdフィルムの厚さ方向のレターデーションの差を発現させることができる。また、従来と同様の材料を用い、製造装置についても温度制御を行う以外は同様の装置を用いることができるので、他の光学特性も良好な光学フィルムを製造することができる。
請求項2は請求項1において、前記製膜工程が溶融製膜法であることを特徴とする。
請求項3は請求項1において、前記熱可塑性樹脂溶液中の前記熱可塑性樹脂の濃度が5〜40質量%であり、前記製膜工程が溶液製膜法であることを特徴とする。
請求項2および3は、製膜工程における製膜法を規定したものであり、本発明においては、溶融製膜法、溶液製膜法のいずれにおいても、好適に用いることができる。
請求項4は請求項1から3いずれかにおいて、前記延伸工程後の熱可塑性樹脂フィルムに熱を与える熱処理工程を有し、前記熱処理工程は前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の温度雰囲気下にさらすことを特徴とする。
請求項4によれば、延伸された熱可塑性樹脂フィルムの幅方向、長手方向のレターデーションのバラツキをより少なくすることができる。
請求項5は請求項1から4いずれかにおいて、前記延伸工程が一軸または二軸に延伸する工程であることを特徴とする。
本発明の製造方法は、一軸または二軸に延伸するいずれの工程においても好適に用いることができる。
請求項6は請求項1から5いずれかにおいて、前記延伸工程で、前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムに異なる温度を付与した後、さらに、前記温度と逆の温度を付与する工程を有することを特徴とする。
請求項6によれば、異なる温度を付与された熱可塑性樹脂フィルムの物理特性の差を小さくすることができる。
請求項7は請求項1から6いずれかにおいて、前記延伸工程で、前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムに付与される温度の、一方の面側と他方の面側の温度差が100℃未満であることを特徴とする。
請求項7によれば、温度差を100℃未満とすることにより、シワの発生や添加剤の染み出しなどの不具合が生じることなく、フィルムの製造を行うことができる。
請求項8は請求項1から7いずれかにおいて、前記熱可塑性樹脂が、セルローストリアセテート、セルロースアシレートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、環状オレフィン、アクリル系樹脂およびポリカーボネートから選ばれることを特徴とする。
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂として、上記記載の熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
本発明の請求項9は前記目的を達成するために、請求項1から8いずれかに記載の光学フィルムの製造方法により得られた光学フィルムを提供する。
本発明の製造方法により製造されたフィルムは、フィルム厚さ方向に異なるレターデーションを有しているため、光学フィルムとして、様々な用途に用いることができる。
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、延伸工程で、未延伸熱可塑性樹脂フィルムの表面側と裏面側で温度差を設けて光学フィルムを製造しているため、この温度差により、フィルムの厚さ方向に光学異方性を有することができる。さらに、材料、装置についても従来と同様のものを用いることができるので、他の光学特性の品質を落とすことなく、安価に光学フィルムの製造を行うことができる。
本発明の製造方法に用いられる、溶融製膜法により光学フィルムを製造する製造装置の概略構成の一例を示した図である。 本発明の製造方法に用いられる、溶液製膜法により光学フィルムを製造する製造装置の概略構成の一例を示した図である。 実施例の条件および結果を示す表図である。
以下、本発明の光学フィルムの製造方法および該方法により製造された光学フィルム、およびその用途について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表わされる数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
≪光学フィルムの素材≫
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの素材は、特に限定されないが、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアシレートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、アクリル系樹脂などが挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状オレフィンである。
[1]セルロースアシレート
セルロースアシレートは例えば特開2006−45500、特開2006−241433、特開2007−138141、特開2001−188128、特開2006−142800、特開2007−98917記載のものを使用でき、全アシル置換度は2.1以上3.0以下が好ましく、アセチル基の置換度は0.05以上2.5以下が好ましく、より好ましくは0.05以上0.5以下あるいは1.5以上2.5以下である。プロピオニル置換度は0.1以上2.8以下が好ましく、より好ましくは0.1以上1.2以下あるいは2.3以上2.8以下である。
[2]環状オレフィン
環状オレフィンはノルボルネン系化合物から重合されるものが好ましい。この重合は開環重合、付加重合いずれの方法でも行える。付加重合としては例えば特許3517471のものや特許3559360、特許3867178、特許3871721、特許3907908、特許3945598、特表2005−527696、特開2006−28993、WO2006−004376に記載のものが挙げられる。特に好ましいのは特許3517471に記載のものである。
開環重合としてはWO98−14499、特許3060532、特許3220478、特許3273046、特許3404027、特許3428176、特許3687231、特許3873934、特許3912159に記載のものが挙げられる。なかでも好ましいのがWO98−14499、特許3060532に記載のものである。
これらの環状オレフィンの中でも付加重合によって得られた環状オレフィンが好ましく用いられる。
[3]ラクトン環含有重合体
下記一般式(1)で表わされるラクトン環構造を有する化合物である
(式中R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表わす。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
一般式(1)のラクトン環構造の含有率は、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは10〜50質量%である。
一般式(1)で表わされるラクトン環構造以外に、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(2a)で表わされる単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表わし、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、または−C−O−R基を表し、Ac基はアセチル基を表し、RおよびRは水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
例えば、WO2006/025445、特開2007−70607、特開2007−63541、特開2006−171464、特開2005−162835記載のものを用いることができる。
[4]ポリカーボネート系樹脂
ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914に記載のものや特開2006−106386、特開2006−284703記載のものが好ましく用いることができる。
[5]添加剤
これらの熱可塑性樹脂フィルムには、可塑剤としてアルキルフタルリルアルキルグリコレート類、リン酸エステル類、カルボン酸エステル類、多価アルコール類を0〜20質量%添加できる。安定剤としてフォスファイト系安定剤(例えばトリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト)、フェノール系安定剤(たとえば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチルテトラキス[.3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドキシフェニル)プロピオレート、4,4−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオレート]、エポキシ化合物、チオエーテル化合物を0〜3質量%添加できる。マット剤としてシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、炭酸カルシウム、クレイ等の無機微粒子、架橋アクリル、架橋スチレン等の有機微粒子を0〜1000ppm添加できる。また紫外線吸収剤(例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2,−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]])や赤外線吸収剤、レターデーション調整剤を添加することも好ましい。
≪光学フィルムの製造≫
本発明の光学フィルムの製造方法は、溶融製膜、溶液製膜、いずれの方法に対しても行うことができる。
[1]溶融製膜法
[熱可塑性樹脂フィルムの製膜(製膜工程)]
図1は、溶融製膜法により熱可塑性樹脂フィルムを製造する製造装置の概略構成の一例を示したものである。
図1に示すように、製造装置10は、主として、未延伸熱可塑性樹脂フィルム12’を製膜する製膜工程部14と、製膜工程部14で製膜された未延伸熱可塑性樹脂フィルムをそれぞれ縦延伸、横延伸する縦延伸工程部16、横延伸工程部18と、延伸された熱可塑性樹脂フィルム12’’にエージング処理する熱処理工程部20、熱処理された熱可塑性樹脂フィルム12’’’を巻き取る巻取工程部22で構成されている。
イ)ペレット化
前記熱可塑性樹脂と添加物とは溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化は前記熱可塑性樹脂と添加物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することで作製できる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。
押出機24は単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒以上10分以内、より好ましくは20秒間〜5分以内である。
好ましいペレットの大きさは10mm〜1000mmが好ましく、より好ましくは30mm〜500mmである。
ロ)混練溶融
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率が1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行っても良く、窒素中で行っても良く、真空中で行っても良い。
乾燥したペレットは押出機24の供給口を介してシリンダー内に供給され混練、溶融される。シリンダー内は供給口側から順に、供給部(領域A)、圧縮部(領域B)、計量部(領域C)とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。押出温度は190〜300℃が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
ハ)濾過
樹脂中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置(図示しない)を設けることが好ましい。濾過は1段で行っても良く多段濾過でもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましくさらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材はステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
ニ)ギアポンプ
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機出機とダイの間にギアポンプ(図示しない)を設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にできる。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
ホ)ダイ
前記の如く構成された押出機24によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイ26に連続的に送られ、シート状溶融樹脂12をダイ26からキャスティングドラム28上に吐出する。ダイ26はTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサー(図示しない)を入れることも好ましい。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜10倍がよく、好ましくは1.2〜5倍である。
ダイ26は5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイ26の厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
ヘ)キャスト
ダイ26よりシート状に押し出された溶融樹脂(メルト)12をキャスティングドラム28上で冷却固化し、熱可塑性樹脂フィルム12’を得る。
この時、ダイ26とキャスティングドラム28の間を遮蔽し風の影響を抑制することが好ましい。
ここで、キャスティングドラム28は、内部に冷却媒体(例えば、水)が循環する構造を持つ回転式のドラムである。そして、キャスティングドラム28の表面温度は、Tg−20℃〜Tg+20℃であることが好ましい。Tg−20℃未満であると、シート状溶融樹脂がキャスティングドラム28に密着しにくくなるので、シート状溶融樹脂12の厚み精度が低下し、厚みムラを生じるようになる。一方、Tg+20℃を超えると、シート状溶融樹脂12とキャスティングドラム28の密着が強くなりすぎて、シート状溶融樹脂12が延伸されてしまし、結果として熱可塑性樹脂フィルム12’に配向歪みが発生してしまう。
キャスティングドラム28の表面部は、硬質クロム鍍金が施されていることが好ましい。硬質クロム鍍金は耐久性に優れており、キャスティングドラム28の表面部におけるキズの発生を抑制することができる。
なお、図示しないが、キャスティングドラム28の代わりに冷却バンドを使用することも可能である。冷却バンドは、駆動ローラと従動ローラとの間に掛け渡され、駆動ローラを駆動することにより、楕円状の軌道を描いて走行させ、熱可塑性樹脂フィルムの製膜を行うことができる。
メルト12がキャスティングドラム28に接触する際、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等を用い、キャスティングドラム28とメルト12との密着を上げることが好ましく、中でもタッチロール法が好ましい。このような密着向上法はメルト12の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
タッチロール法とは、キャスティングドラム28上にタッチロールを置いてフィルム表面を整形するものである。この時、タッチロールは通常の剛性の高いものではなく、弾性を有するものが好ましい。これにより過剰な面圧により表面凹凸を本発明の範囲以下にすることを抑制できる。このためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mm、さらに好ましくは0.3mm〜3.5mmである。タッチロールは金属シャフトの上に設置し、その間に熱媒(流体)を通してもよく、外筒と金属シャフトの上に間に弾性体層を設け、外筒の間に熱媒(流体)を満たしたものが挙げられる。タッチロールによる押付けは弱いほうがRthをより低減でき好ましいが小さすぎると本発明の表面粗さを達成できず、一方大きすぎると表面粗さは小さくなるがRthが増加し易い。このためタッチロールの面圧は0.1MPa〜5MPaが好ましく、より好ましく0.2MPa〜3MPa、さらに好ましくは0.3MPa〜2MPaである。ここでいう面圧とはタッチロールを押し付けている力を熱可塑性樹脂フィルムとタッチロールの接触面積で割った値である。
タッチロールの設定温度は60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。このような温度制御は、これらのローラ内部に温調した液体を、気体を通すことで達成できる。このように内部に温調機構を有するものが好ましい。
タッチロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面にメッキを行うことも好ましい。一方ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールではゴム表面の凹凸が大きすぎ、上記の表面凹凸を持つ熱可塑性樹脂フィルムを製膜できず好ましくない。
タッチロール、キャスティングロールの表面は、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
タッチロールは例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
図1においては1本のキャスティングドラム(ロール)で製膜を行っているが、複数本用いて徐冷することがより好ましい(このうち前記タッチロールを用いるのは最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する)。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は100mm〜1500mmが好ましく、より好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。キャスティングドラムは60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
[延伸(延伸工程)]
溶融製膜法により製膜された未延伸熱可塑性樹脂フィルム12’は、縦延伸工程部16に搬送され、縦延伸が行われる。縦方向に延伸された熱可塑性樹脂フィルム12’’は、横延伸工程部18に搬送され、横延伸が行われる。
なお、図1においては、縦延伸を行った後、横延伸を行う工程について図示したが、本発明はこれに限定されず、縦延伸を行った後横延伸を行う、縦延伸と横延伸のいずれかを行う、また、縦延伸と横延伸を同時に行うこともできる。また、さらに収縮処理を組み合わせることもできる。中でも、縦延伸後に横延伸を行うもの、あるいは、横延伸と縦収縮処理を組み合わせることが好ましく、前者は高Rthを発現させるのに適し、後者は低Rthを発現させるのも適する。
横延伸と縦収縮処理を組み合わせて実施する場合、縦収縮は横延伸中に実施しても良く、横延伸後に実施しても良く、両方で実施しても良い。さらにこの横延伸の前又は後或いは両方に縦延伸を組み合わせても良い。
本発明においては、延伸工程において熱可塑性樹脂フィルム12’、12’’の表裏に温度差を設け、製造される光学フィルムの厚み方向にレターデーションの差を設ける。延伸工程は、延伸させることにより、レターデーションを付与する工程であり、延伸工程において温度差を付与することにより、フィルムの厚さ方向のレターデーションの差を効果的に発現させることができる。熱可塑性樹脂フィルムに付与する温度差は、連続式の設備であれば、製造速度、フィルム厚み、フィルム物性、フィルムへの温度伝達方式により、逐次選択が可能であるが、温度差が大きいとシワの発生や添加剤の染み出しなどの不具合が生じるため、100℃未満であることが好ましく、より好ましくは60℃未満、さらに好ましくは40℃未満である。また、温度差が小さいと、フィルム厚み方向への異方性を充分に発揮できないため、3℃以上が好ましく、より好ましくは5℃以上であり、さらに好ましくは10℃以上である。また、温度差を設ける方法についても、製膜工程と同様に、送風機34、36により、縦延伸工程部16内、横延伸工程部18内の雰囲気温度を制御することに温度差を設けることができる。また、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、パネルヒーターなどをフィルム上や下に設置し、輻射熱で加熱するヒーター加熱法により温度差を設けることができる。
以下に縦延伸、横延伸について説明する。
(3−1)縦延伸
本発明では、縦延伸単独で行っても良く、横延伸と組み合せて実施しても良い。縦延伸は横延伸の前、後どちらで実施しても良いが、横延伸前に行うのがより好ましい。また縦延伸は1段で実施しても良く、多段に分けて実施しても良い。
縦延伸は複数のニップロール30、30a、31、31a、32、32aを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロール32、32aの周速を入口側のニップロール30、30aの周速より速くすることで達成できる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/Wが2を超え50以下(長スパン延伸)ではRthを小さくでき、L/Wが0.01以上0.3以下(短スパン延伸)ではRthを大きくできる。本発明では長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3を超え2以下)どれを使用しても良いが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。さらに高Rthを狙う場合は短スパン延伸、低Rthを狙う場合は長スパン延伸と区別して使用することがより好ましい。
これらの縦延伸の好ましい延伸温度は(Tg−10℃)〜(Tg+50)℃、より好ましくは(Tg−5℃)〜(Tg+40)℃、さらに好ましくは(Tg)〜(Tg+30)℃である。好ましい延伸倍率は2%〜200%であり、より好ましくは4%以上150%以下、さらに好ましくは6%〜100%である。
[1]長スパン延伸
延伸に伴いフィルムは伸張されるが、この時フィルムは体積変化を小さくしようと厚み、幅を減少させる。ニップロール間隔を大きくすると幅方向収縮しやすくなり厚み減少を抑制でき(厚み方向の圧縮が少なく)、フィルム面内の分子配向が抑制されRthを小さくできる。
L/Wは2を超え50以下が好ましく、より好ましくは3〜40、さらに好ましくは4〜20である。このような長スパン延伸は3対以上のニップロールで多段延伸しても良く、多段のうち最も長い縦横比が上記範囲に入っていればよい。
[2]短スパン延伸
L/Wが0.01を越え0.3未満、より好ましくは0.03〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.2で縦延伸(短スパン延伸)を行う。これによりネックイン(延伸に伴う延伸と直行する方向の収縮)を小さくでき、厚みが減少し易くなる。この結果、厚み方向に圧縮されたようになり、厚み方向の配向(面配向)が進みRthが増加し易くなる。
短スパン延伸は2対以上のニップロール間で搬送速度を変えることにより実施できるが、通常のロール配置(特開2007−152558の図3の縦延伸工程部(108)に示すようにニップロールを平行に配置、ロール間に隙間が発生しL/Wを小さくできない)と異なり、2対のニップロールを斜めに(前後のニップロールの回転軸を上下にずらす)配置することで達成できる(特開2006−51804の図1の縦延伸工程部(20)に示すようにニップロールを上下にずらして配置する。但しこの図ではニップロール(22、24)が広く描いてあるが、この間隔を狭めニップロールを近接させることでL/Wを小さくできる)。これに伴いニップロール間に加熱用ヒーターは設置できないため、ニップロール中に熱媒を流しフィルムを昇温することが好ましい。さらに入口側ニップロールの前に内部に熱媒を流した予熱ロールを設け、フィルムを延伸前に加熱することも好ましい。
(3−2)横延伸
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg−5℃以上Tg+45℃以下がより好ましく、Tg以上Tg+30℃以下がさらに好ましい。横延伸工程部18内にて、熱可塑性樹脂フィルム12’’に温度差を設ける場合は、上記範囲内で温度差を設けることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムに付与する温度差は、連続式の設備であれば、製造速度、フィルム厚み、フィルム物性、フィルムへの温度伝達方式により、逐次選択が可能であるが、温度差が大きいとシワの発生や添加剤の染み出しなどの不具合が生じるため、100℃未満であることが好ましく、より好ましくは60℃未満、さらに好ましくは40℃未満である。また、温度差が小さいと、フィルム厚み方向への異方性を充分に発揮できないため、3℃以上が好ましく、より好ましくは5℃以上であり、さらに好ましくは10℃以上である。好ましい延伸倍率は10%以上250%以下、より好ましくは20%以上200%以下、さらに好ましくは30%以上150%以下である。ここでいう延伸倍率とは下記式で定義されるものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
(3−3)収縮処理
延伸中あるいは延伸後に収縮処理を行うことが好ましく、より好ましくは横延伸中あるいは横延伸後に縦(長手)方向に収縮緩和処理を行うことが好ましい。収縮処理は縦方向の搬送速度を上流側より下流側を低くすることで達成でき収縮量は0.1%以上50%以上が好ましく、より好ましくは1%以上40%以下、さらに好ましくは5%以上35%である。ここで云う収縮量とは、下記式で表される。
収縮量(%)=100×{(収縮処理前の長さ)−(収縮処理後の長さ)}/(収縮処理前の長さ)
収縮処理温度は(Tg−20)℃〜(Tg+50)℃、より好ましくは(Tg−10)℃〜(Tg+40)℃、さらに好ましくはTg〜(Tg+30)℃が好ましく、収縮処理時間は1秒以上15分以下、より好ましくは5秒以上10分以下、さらに好ましくは10秒以上5分以下である。
延伸により延伸方向に伸張されるが、これに伴う物質収支を合わせるため延伸と直交方向、厚み方向が減少する。この厚み減少に伴いフィルム面が圧縮され面内に分子が配向し面配向が強くなる。この結果Rthが増加する。しかし縦収縮を行うことで厚み減少を抑制でき低いRthを実現できる。即ち縦収縮することでRth<Re×1.5、より好ましくはRth<Reを実現できる。さらにこの縦収縮により延伸後のフィルムの熱収縮を抑制する効果もあり、80℃、100hrでの熱収縮量を0.5%以下、より好ましくは0.3%以下にできる。
このような縦収縮は例えば下記のような方法により達成することができる。
[1]延伸中の収縮処理
横延伸中の縦収縮は、テンター内のクリップの搬送速度を入口側から出口側に向かって遅くしながら幅方向に延伸することで達成でき、例えば、二軸延伸機を用いて行うことができ、具体的には、横延伸と縦収縮とを自動的に行うことができる。例えば、特開2003−211533、特開平6−210726、特開平6−278204、特開平11−77825、特開2000−246795、特開2004−106434、特開2004−195712、特開2006−142595、特開2006−22916等に記載の装置を使用することができる。具体的には、市金工業社製の高機能薄膜装置(商品名FITZ)等が使用できる。この装置は、縦方向(フィルムの長手方向=フィルムの進行方向)の延伸倍率と横方向(幅方向=フィルムの進行方向と垂直方向)の延伸倍率を任意に設定でき、さらに縦方向(長手方向)の収縮倍率も任意に設定可能であるため、延伸および収縮を同時に所定の条件で行うことができる。また、例えば、一般的に知られているレール幅制御方式、パンダグラフ方式、リニアモーターによる走行速度を制御する方式等を適宜組み合わせることによって、幅方向の延伸倍率を制御するとともに、フィルム端部を挟時したクリップの間隔を変化させて長手方向の長さを制御するようにした二軸延伸機等も使用することができる。
[2]延伸後の収縮処理
下記[2−1]〜[2−4]の方法を挙げることができるが、[2−2]、[2−4]がより好ましい。
[2−1]横延伸(テンター延伸)中あるいは/およびこれに引き続きテンター内のクリップの搬送速度を、延伸部入口のクリップの搬送速度より遅くする。
横延伸はクリップでフィルム両端を拡幅することで行われる(テンター延伸)が、延伸と直交方向の収縮を促し厚み収縮を促進するため、横延伸中あるいは/および延伸後にテンター内のクリップの搬送速度を延伸部入口より遅くする。
この中でもより好ましいのが横延伸後に縦収縮を行うものである(横延伸と縦収縮を同時に行うと、面内に延伸と伸張が同時に発生し残留歪が発生し易い上、面内の均一性が低下し易い)。このような横延伸後の縦収縮は、例えば横延伸と縦収縮を別のテンターレールを用意し、速度を独立に制御できるようにすることで達成でき、特開平6−210726号公報、特開平6−278204号公報、特開平11−77825号公報、特開2004−195712号公報、特開2006−142595号公報等に記載のようなものを使用し、縦(搬送方向)に収縮させることで実現できる。
[2−2]テンターによる横延伸の後、後処理ゾーンの入口側より出口側の搬送速度を遅くしながら熱処理する。
この方法では横延伸後(テンターから出た後)、フィルムを2対以上のニップロールを設けた熱処理ゾーンに挿入し、出口側のニップロールより入口側のニップロールの搬送速度を早くすることで達成できる。この縦収縮ゾーンではフィルムの収縮は縦、横両方向に発生するため、縦収縮を優先して発現させるためには、熱処理ゾーンの縦横比(ゾーン長を入口側フィルム幅で割った値)は0.01〜2であることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.6、さらに好ましくは0.1〜1.3である。熱処理ゾーンの加熱方法は、ニップロール間に熱処理ゾーンやヒーターを設けて行ってもよく、またニップロールを加熱し熱可塑性樹脂フィルムを加熱しても良い。このような出口側の搬送速度を下げる縦収縮は、搬送張力を弱くしただけの熱処理とは効果が全く異なる。即ち搬送張力低下だけでは上記のようなネックインを促すような効果は全く発生しない。
[2−3]テンターのチャック上で熱可塑性樹脂フィルムを搬送方向に収縮させる。
横延伸中あるいは横延伸後にチャック上で熱可塑性樹脂フィルムを搬送方向にスリップさせることで縦収縮させることができる。即ち、チャックに搬送(縦)方向に熱可塑性樹脂フィルムが滑るようにしておくと縦収縮させることができる。このような方法としては特に限定されないが、例えばチャックのクリップ部に搬送方向に滑車を設置することでも達成でき、またクリップの熱可塑性樹脂フィルム把持面に滑性の素材(例えばテフロン(登録商標))を貼り付けてもよい。
[2−4]横延伸後のロール間低張力搬送
横延伸後(テンター後)、フィルムを低張力で熱処理すると縦、横両方向に収縮しようとするが、この時フィルムをロール間を搬送させることで、ロールとフィルムの摩擦力により横方向の収縮を抑制し、縦収縮を優先して発現させることができる。
フィルムの横収縮を抑制するために必要な摩擦力を得るために、フィルムがロール上をラップしている長さ(W)と、ロール間でフィルムがロールと接触していない長さ(G)の比(W/G)は0.01以上3以下が好ましく、より好ましくは0.03以上1以下、さらに好ましくは0.05以上0.5以下である。この範囲を超えるとロール間が長くなり摩擦力が低下しTD収縮が発生しReが低下、Rth/Reが上昇し易い上、縦皺が発現し易く好ましくない。一方、W/Gがこの範囲未満では延伸で発生した残留歪が解消せず熱寸法変化が増大し好ましくない。
ロールの数は2本以上100本以下が好ましく、より好ましくは3本以上50本以下、さらに好ましくは4本以上20本以下である。好ましいロールの直径は5cm以上100cm以下が好ましく、より好ましくは10cm以上80cm以下、さらに好ましくは15cm以上60cm以下である。
さらにロールと熱可塑性樹脂フィルムの間の摩擦力を充分に得るために熱可塑性樹脂フィルムの表面粗さ(Ra)は0.005μm以上0.04μm以下が好ましく、より好ましくは0.007μm以上0.035μm以下、さらに好ましくは0.009μm以上0.030μm以下である。このような表面を持つフィルムはタッチロール製膜法により達成できる。これはキャストした直後のフィルムを両面から表面の平滑なロールで挟み込むことで、これを用いない場合に比べ高い平滑性を達成でき上述の表面粗さを実現することができる。
延伸後の収縮処理は、図1において、[2−1]、[2−3]については、横延伸工程部18にて用いられるテンターにて行うことができ、[2−2]、[2−4]については、次に示す熱処理工程部20にて行うことができる。
上記延伸中の収縮処理、延伸後の収縮処理は、単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。また、延伸後の収縮処理は横延伸後、オンラインで行ってもよく、延伸後巻き取ったあとオフラインで実施してもよいが、オンラインで実施することが好ましい。
(延伸中の揮発成分)
上記縦延伸、横延伸は揮発成分(溶剤や水分など)が樹脂に対し0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0質量%以下である。揮発成分が存在すると乾燥に伴う収縮応力が働き、ボーイングがより顕著になるためである。
≪延伸・収縮処理後のフィルム物性≫
このようにして延伸、収縮処理後のフィルムのRe、Rthは下式(R−1)および(R−2)を満足することが好ましい。
式(R−1):0nm≦Re≦300nm
式(R−2):10nm≦Rth≦300nm
より好ましくは下式(R−3)および(R−4)を満足することが好ましい。
式(R−3):20nm≦Re≦200nm
式(R−4):20nm≦Rth≦200nm
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定されるもので、測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルまたはプログラム等で交換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
製膜方向(長手方向)とフィルムのReの遅相軸とのなす角度θは、0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、0°、90°、−90°からの振れ角は±3°以内が好ましく、より好ましくは±2°以内、さらに好ましくは±1°以内である。θは0°(縦配向)、90°あるいは−90°(横配向)いずれでも構わないが、より好ましくは横配向である。
Re,Rthの面内、長手方向のばらつきは0%〜8%が好ましく、より好ましく0%〜5%、さらに好ましくは0%〜3%でる。
80℃200時間経時前後のRe,Rthの変化は0%以上8%以下が好ましく、より好ましくは0%以上6%以下、さらに好ましくは0%以上4%以下である。
80℃200時間経時前後の縦(MD)、横(TD)の寸法変化はいずれも0%以上±0.5%以下が好ましく、より好ましくは0%以上±0.3%以下、さらに好ましくは0%以上±0.1%以下である。
延伸後のフィルムの厚み15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは20μm〜120μm、さらに好ましくは25μm〜80μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
[熱処理(熱処理工程)]
延伸の後に熱処理を行うことで延伸後のRe,Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくすることができる。
熱処理工程はTg−20℃以上Tg+60℃以下で行うことが好ましく、より好ましくはTg−10℃以上Tg+50℃以下であり、さらに好ましくはTg−5℃以上Tg+40℃以下である。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。
このような熱処理工程によりRe、Rthの幅方向、長手方向のばらつき、配向角のMD(長手方向)あるいはTD(幅方向)からのずれを小さくできる。
熱処理工程の後、延伸工程において、フィルムの表裏に付与していた温度差と反対の温度を付与する後処理工程42を有することが好ましい。つまり、今までの工程において、図1において上側を高温、下側を低温として温度差を付与していた場合には、上側の温度を低温に、下側の温度を高温にする。このような工程を付与することにより、フィルム端部が片側に反るカールなどの機械特性差を小さくすることができる。処理時間としては、1秒以上5分以下が好ましく、より好ましくは5秒以上3分以下である。
また、図1においては、熱処理工程の次に後処理工程42を設けた構成を示しているが、後処理工程42を設けずに熱処理工程20において、延伸工程で付与されたフィルムの表裏に付与していた温度差と反対の温度差を付与することも可能である。
このようにして形成された熱可塑性樹脂フィルムは巻取工程部22でロール状に巻き取られる。
[2]溶液製膜法
[熱可塑性樹脂フィルムの製膜(製膜工程)]
次に溶液製膜法により熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法について説明する。図2は、溶液製膜法により熱可塑性樹脂フィルムを製造する製造装置の概略構成の一例を示したものである。
図2に示すように、製造装置110は、主として、未延伸熱可塑性樹脂フィルム112’を製膜する製膜工程部114と、製膜工程部114で製膜された未延伸熱可塑性樹脂フィルムを乾燥させながら延伸する延伸工程部116、延伸された熱可塑性樹脂フィルム112’’多数のローラに巻き掛けながら搬送する間に乾燥させる熱処理工程部120と、熱可塑性樹脂フィルム112’’をロール状に巻き取る巻取工程部122で構成されている。
イ)溶解
溶液製膜では、使用する熱可塑性樹脂に応じて溶剤を選択し、樹脂の高濃度溶液(ドープ)を調整する。セルロースアシレート、ポリカーボネートにはジクロロメタン系溶剤が好ましく使用され、例えば特開2001−188128の段落[0044]に記載の溶剤を使用することができる。また、シクロオレフィンの場合、ジクロロメタン、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサンなど)を使用することができ、例えば特開2007−108529の段落[0180]に記載のものを使用することができる。
これらのドープ中の熱可塑性樹脂の濃度は5質量%以上40質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。この時、上述の添加剤を一緒に溶解するのが好ましい。
溶解のために冷却・昇温法を用いてもよい。冷却・昇温法は、特開平11−323017号公報、特開平10−67860号公報、特開平10−95854号公報、特開平11−302388号公報の方法を用いることができる。
ロ)溶液製膜
製造装置110には、配管を介してミキシングタンク131が接続されている。ミキシングタンク131には、モータ(図示しない)により回転される攪拌羽132が取り付けられている。そして、予め上述した方法により調整され、ミキシングタンク131に入れられている原料ドープは攪拌羽の回転により均一に攪拌混合されている。
原料ドープは脱泡した後、高精度ポンプ(例えば加圧型定量ギアポンプ)を通してダイ126に送り口金(スリット)からキャスティングドラム128上に均一に流延する。そして、キャスティングドラム128上で冷却されることでゲル状膜となり、自己支持性を持つ熱可塑性樹脂フィルム12’を得る。なお、図1においては、キャスティングドラム128を用いたが、エンドレスに走行しているバンド上に均一に流延することにより製膜を行うこともできる。また、図1においては単層で流延しているが、2種以上で多層流延することもできる。なお、キャスティングドラム128、バンドについては、上述した溶融製膜法と同様のものを用いることができる。
熱可塑性樹脂フィルム12’(生乾きのドープ膜)は、支持体がほぼ一周した剥離点で剥離される。キャスティングドラム28またはバンドは−30℃から30℃にしておくのが好ましい。
[延伸(延伸工程)]
剥離した熱可塑性樹脂フィルム112’の両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥しながら、延伸を行う。延伸工程部116は、テンターを用いて横延伸が行われる。横延伸の方法としては、上述した溶融製膜と同様の方法により行うことができる。また、溶液製膜法においては、製膜工程後、熱可塑性樹脂フィルム112’中に溶媒が含まれているため、乾燥しながら延伸を行う。
延伸工程においても、溶融製膜法と同様に送風機34を用いて延伸工程部116内の雰囲気温度を制御し、熱可塑性樹脂フィルム112’の表裏で異なる雰囲気温度とすることにより、フィルムの表裏で異なる温度差を付与する。延伸工程は、延伸させることにより、レターデーションを付与する工程であり、延伸工程において温度差を付与することにより、フィルムの厚さ方向のレターデーションの差を効果的に発現させることができる。
熱可塑性樹脂フィルムに付与する温度差は、連続式の設備であれば、製造速度、フィルム厚み、フィルム物性、フィルムへの温度伝達方式により、逐次選択が可能であるが、温度差が大きいとシワの発生や添加剤の染み出しなどの不具合が生じるため、100℃未満であることが好ましく、より好ましくは60℃未満、さらに好ましくは40℃未満である。また、温度差が小さいと、フィルム厚み方向への異方性を充分に発揮できないため、3℃以上が好ましく、より好ましくは5℃以上であり、さらに好ましくは10℃以上である。また、温度差を付与する方法としては、雰囲気温度を制御する方法に限定されず、ヒーターによりフィルムを加熱し、温度差を付与することもできる。
[熱処理(熱処理工程)]
延伸された熱可塑性樹脂フィルム112’’は複数のローラ139、139a、140、140a、141、141aが配された熱処理工程部120に送り込まれる。熱処理工程部120には、送風機138が設けられており、熱可塑性樹脂フィルム112’’は複数のローラにより支持されながら搬送される間に、送風機138から送り出される乾燥風により乾燥される。
また、溶液製膜法と同様に、熱処理工程の後、今までの工程において、フィルムの表裏に付与していた温度差と反対の温度を付与する後処理工程142を有することが好ましい。また、反対の温度差を付与する工程は熱処理工程において行うこともできる。このような工程を付与することにより、溶融製膜法と同様の効果を得ることができる。
このようにして形成された熱可塑性樹脂フィルムは巻取工程部22でロール状に巻き取られる。
このような溶液製膜は公開技法(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)に記載の方法も用いることができる。
(4)フィルムの加工
このようにして得た熱可塑性樹脂フィルムは、単独で使用してもよく、これらと偏光板と組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。これらは以下の工程により達成できる。
(表面処理)
[1]セルロースアシレートフィルム
表面処理を行うことによって、各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上させることができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ鹸化処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。
これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液に浸漬してもよく(浸漬法)、鹸化液を塗布してもよい(塗布法)。浸漬法の場合は、NaOHやKOH等のpH10〜14の水溶液を20℃〜80℃に加温した槽を0.1分間から10分間通過させたあと、中和、水洗、乾燥することで達成できる。
塗布法の場合、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を用いることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、濡れ性向上のためアルコール系溶媒を用いるのが好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、KOH、NaOH等を用いることができる。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。鹸化条件は、室温で5秒〜5分が好ましく、20秒〜3分が特に好ましい。鹸化反応後、水洗することが好ましい。塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を連続して行うことができ、工程数を減少できる。これらの鹸化方法は、例えば特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレットに内容の記載が挙げられる。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は前記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
[2]セルロースアシレート以外の本発明の熱可塑性樹脂フィルム
セルロースアシレート以外の熱可塑性樹脂フィルムは、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。
これらの中でも好ましいのがグロー放電処理、コロナ処理、火炎処理であり、さらに好ましいのはコロナ処理である。
機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は前記表面処理をした後、塗設してもよく、表面処理なしで塗設してもよい。下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
(機能層の付与)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光層の付与(偏光板)、光学異方性層(光学補償層)の付与、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
<光学異方性層>
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶性化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶性化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶性化合物の配向状態に関しては、IDW'00、FMC7−2のP411〜414等に記載されている。
光学異方性層は、支持体上に直接液晶性化合物から形成するか、もしくは配向膜を介して液晶性化合物から形成する。配向膜は、10μm以下の膜厚を有することが好ましい。
光学異方性層に用いる液晶性化合物には、棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物が含まれる。棒状液晶性化合物およびディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。光学異方性層は、液晶性化合物および必要に応じて重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。本発明の配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。
(棒状液晶性化合物)
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。すなわち、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶性化合物については、例えば、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載のものを採用できる。
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
(ディスコティック液晶性化合物)
ディスコティック液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告(J.C.S.,Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
ディスコティック液晶性化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物がディスコティック液晶性化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式(5)で表わされる化合物であることが好ましい。
一般式(5)
D(−LQ)
(一般式(5)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、rは4〜12の整数である。)
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
一般式(5)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
L1:−AL−CO−O−AL−、
L2:−AL−CO−O−AL−O−、
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−、
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−、
L5:−CO−AR−O−AL−、
L6:−CO−AR−O−AL−O−、
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L8:−CO−NH−AL−、
L9:−NH−AL−O−、
L10:−NH−AL−O−CO−、
L11:−O−AL−、
L12:−O−AL−O−、
L13:−O−AL−O−CO−、
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−、
L15:−O−AL−S−AL−、
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−、
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−、
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−、
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−、
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−、
L21:−S−AL−、
L22:−S−AL−O−、
L23:−S−AL−O−CO−、
L24:−S−AL−S−AL−、
L25:−S−AR−AL−。
一般式(5)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)の例を以下に示す。
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1、Q2、Q3、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)またはエポキシ基(Q6、Q18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1、Q7、Q8、Q15、Q16、Q17)であることが最も好ましい。具体的なrの値は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
ハイブリッド配向では、ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)と支持体の面との角度、すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ(すなわち、透明支持体に垂直な)方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に増加することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいはディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤および重合性モノマーは、ディスコティック液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。添加成分の中でも重合性モノマー(例、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物)の添加が好ましい。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることができる。
前記光学異方性層は、ディスコティック液晶性化合物とともにポリマーを含有していてもよい。該ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロースおよびセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。ディスコティック液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各公報記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各公報記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号、米国特許4239850号の各公報記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
前記光学異方性層は、前記液晶性化合物の少なくとも一種と、所望により重合性開始剤、フッ素系ポリマー等の添加剤を含有する塗布液を調製し、該塗布液を配向膜表面に塗布・乾燥することで形成することができる。
フッ素系化合物としては、従来公知の化合物が挙げられるが、具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]に記載のフッ素系化合物等が挙げられる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
均一性の高い光学補償フィルムを作製する場合には、前記塗布液の表面張力が25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることが更に好ましい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
[偏光板]
(偏光膜)
本発明の偏光板に使用可能な偏光膜は、Optiva社製のものに代表される塗布型偏光膜、またはバインダーとヨウ素もしくは二色性色素とからなる偏光膜が好ましい。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
汎用の偏光子は、例えば、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製することができる。
汎用の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
上記のように、バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。一方、厚みの上限については、特に限定はしないが、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在、汎用の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置では、観察されなくなる。
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。架橋しているバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることができる。官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入して得られるバインダーを、光、熱あるいはpH変化により、バインダー間で反応させて偏光膜を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、ポリマーまたはポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行なうことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
偏光膜のバインダーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびそれらのコポリマー(例、アクリル酸/メタクリル酸重合体、スチレン/マレインイミド重合体、スチレン/ビニルトルエン重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル重合体、エチレン/酢酸ビニル重合体)が含まれる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、95〜100%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、−COONa、−Si(OH)、N(CH・Cl、C19COO−、−SONa、−C1225を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、−COONa、−SH、−SC1225を導入することができる。変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ケン化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコールおよびアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光膜の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。バインダー層中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。すなわち、架橋剤の残留量が多い偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
架橋剤については、米国再発行特許23297号公報に記載がある。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。二色性色素については、特開平1−161202号、同1−172906号、同1−172907号、同1−183602号、同1−248105号、同1−265205号、同7−261024号の各公報に記載がある。二色性色素は、遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩として用いられる。2種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光膜を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光膜、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光膜または偏光板が、単板透過率および偏光率とも優れており好ましい。
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にある(偏光板の単板透過率の最大値は50%である)ことが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
偏光膜と光学異方性層、あるいは、偏光膜と配向膜を、接着剤を介して配置することも可能である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。その中でもポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
(偏光板の製造)
偏光膜は、歩留まりの観点から、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10〜80度傾斜して延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。
通常の傾斜角度は45度である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45度でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
延伸法の場合、延伸率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。なお。ここでいう延伸率とは、延伸前にフィルムに標点を付けておき、その延伸前の長さ(L)と延伸後の長さ(L’)の比(L’/L)で表される。
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフイルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10〜80度斜め延伸されたバインダーフイルムが製造される。
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90度が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360度以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60度の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50度が好ましい。45度が特に好ましい。
[液晶表示装置]
本発明の光学補償フィルム及び偏光板は、種々のモードの液晶表示装置に用いることができる。以下、各液晶モードにおける光学異方性層の好ましい形態について説明する。
(TNモード液晶表示装置)
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホメオトロピック配向(円盤面が寝ている水平配向)のディスコティック液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向(長軸の傾きが偏光膜との距離に伴って変化している配向)のディスコティック液晶性化合物で補償することができる。
また、セル中央部分の棒状液晶性化合物に対しては、ホモジニアス配向(長軸が寝ている水平配向)の棒状液晶性化合物もしくは(透明)支持体で補償し、セルの基板近傍の棒状液晶性化合物に対しては、ハイブリット配向のディスコティック液晶性化合物で補償することもできる。
ホメオトロピック配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が85〜95度の状態で配向している。
ホモジニアス配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が5度未満の状態で配向している。
ハイブリット配向の液晶性化合物は、液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の面との角度が15度以上であることが好ましく、15度〜85度であることがさらに好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層、さらにはホメオトロピック配向したディスコティック液晶性化合物とホモジニアス配向した棒状液晶性化合物の混合体からなる光学異方性層は、Rthレターデーション値が40nm〜200nmであり、Reレターデーション値が0〜70nmであることが好ましい。
ホメオトロピック配向(水平配向)しているディスコティック液晶性化合物層およびホモジニアス配向(水平配向)している棒状液晶性化合物層に関しては、特開平12−304931号および同12−304932号の各公報に記載されている。ハイブリット配向しているディスコティック液晶性化合物層に関しては、特開平8−50206号公報に記載がある。
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性化合物を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各公報に開示されている。棒状液晶性化合物が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードと呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性化合物が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性化合物が寝た配向状態にある。
黒表示にTNモードと液晶の配向は同じ状態であるため、好ましい態様もTNモード対応を同じである。ただし、TNモードに比べ、OCBモードの方がセル中央部で液晶性化合物が立ち上がった範囲が大きいために、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層について、若干のレターデーション値の調整が必要である。具体的には、(透明)支持体上のディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm〜500nmであり、Reレターデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(VAモード液晶表示装置)
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性化合物が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性化合物を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置の黒表示において、液晶セル中の棒状液晶性化合物は、そのほとんどが、立ち上がった状態であるため、ディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層で液晶性化合物を補償し、別に、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向し、棒状液晶性化合物の長軸の平均配向方向と偏光膜の透過軸方向との角度が5度未満である光学異方性層で偏光板の視角依存性を補償することが好ましい。
(透明)支持体もしくはディスコティック液晶性化合物がホメオトロピック配向している光学異方性層、もしくは、棒状液晶性化合物がホモジニアス配向している光学異方性層は、Rthレターデーション値が150nm〜500nmであり、Reレターデーション値が20〜70nmであることが好ましい。
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で光学的に補償することができる。
(ハ)反射防止層の付与(反射防止フィルム)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの上に反射防止層を付与しても良い。反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは前記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
(ハ−1)塗布型反射防止フィルムの層構成
基体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率 また、透明支持体と中屈折率層との間に、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。
また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(ハ−2)高屈折率層および中屈折率層
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908号公報、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
(ハ−3)低屈折率層
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、前記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハ−4)ハードコート層
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。
前記硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(ハ−5)前方散乱層
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。前記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開平11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
(ハ−6)その他の層
前記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(ハ−7)塗布方法
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。
(ハ−8)アンチグレア機能
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を、塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
1.未延伸フィルムの調製
(1)溶融製膜フィルム
特開2007−98917の実施例1のセルロースアセテートプロピオネートフィルム(厚み100μm)を調製した。このTgは146℃であった。
(2)溶液製膜フィルム
特開2001−188128の実施例1に記載のフィルムNo.1(セルロースアシレートプロピオネート:厚み100μm)を調製した。このTgは150℃であった。
2.フィルムの延伸・後処理
溶融製膜および溶液製膜それぞれに得られたフィルムを用いて、図3に示す温度条件にて、延伸、後処理を行った。
[実施例1]
溶融製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差30℃、後処理温度180℃でフィルムの表裏温度差3℃にて処理を行った。
[実施例2]
溶融製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差25℃、後処理温度180℃でフィルムの表裏温度差30℃にて処理を行った。
[実施例3]
溶液製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差30℃、後処理温度130℃でフィルムの表裏温度差2℃にて処理を行った。
[実施例4]
溶液製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差25℃、後処理温度130℃でフィルムの表裏温度差40℃にて処理を行った。
[実施例5]
溶融製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差105℃、後処理温度180℃でフィルムの表裏温度差2℃にて処理を行った。
[実施例6]
溶液製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差105℃、後処理温度130℃でフィルムの表裏温度差3℃にて処理を行った。
[比較例1]
溶融製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差2℃、後処理工程温度130℃で表裏温度差30℃にて処理を行った。
[比較例2]
溶融製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表面温度差2℃、熱処温度180℃でフィルムの表面温度差30℃にて処理を行った。
[比較例3]
溶液製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差3℃、後処理温度80℃でフィルムの表裏温度差35℃にて処理を行った。
[比較例4]
溶液製膜法にて得られたフィルムを、延伸工程におけるフィルムの表裏温度差2℃、後処理温度130℃でフィルムの表裏温度差35℃にて処理を行った。
3.評価方法
<フィルムの反り>
得られたフィルムを50cmスパンのロール間にテンション50N/mで保持した際のフィルム端部の片面側への反り量を測定し、以下の基準により評価を行った。
◎:反りは1mm未満で光学フィルムとして好適に用いることができる。
○:反りは2mm未満で光学フィルムとして問題無いレベル。
×:反りは2mm以上あり、光学フィルムとしての使用が難しい。
<厚み方向のレターデーション分布>
得られたフィルムの厚み方向のレターデーション分布をKOBRA(王子計測機器(株))で測定した。比較例1で得られたフィルムの分布をa、比較例3で得られたフィルムの分布をbとし、実施例の分布との差により評価を行った。
4.結果
延伸工程でフィルムの表裏に温度差を設けることにより、温度差を設けなかった比較例に比べ、3〜5倍のレターデーション分布を得ることができ、厚み方向に異方性を有する光学フィルムを得ることができた。また、延伸工程後に逆の温度差を付与した実施例2、4では、フィルムの反りを抑制することができた。
10、110…製造装置、12、112…シート状溶融樹脂(メルト)、12’、12’’、12’’’、112’、112’’…熱可塑成樹脂フィルム、14、114…製膜工程部、16…縦延伸工程部、18…横延伸工程部、20、120…熱処理工程部、22、122…巻取工程部、24…押出機、26、126…ダイ、28、128…キャスティングドラム、34、36、134、138…送風機、30、30a、31、31a、32、32a、39、39a、40、40a、139、139a、140、140a、141、141a…ニップロール、42…後処理工程、116…延伸工程部

Claims (9)

  1. 光学フィルムの製造方法において、
    熱可塑性樹脂および溶媒を含む熱可塑性樹脂溶液をダイによりキャスティングドラムに流延することにより、製膜する製膜工程と、該製膜工程で製膜された未延伸熱可塑性樹脂フィルムを延伸する延伸工程と、を有し、
    前記延伸工程において、前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムの一方の面側と他方の面側とで、異なる温度を付与することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記製膜工程が溶融製膜法であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂溶液中の前記熱可塑性樹脂の濃度が5〜40質量%であり、前記製膜工程が溶液製膜法であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記延伸工程後の熱可塑性樹脂フィルムに熱を与える熱処理工程を有し、
    前記熱処理工程は前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上の温度雰囲気下にさらすことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記延伸工程が一軸または二軸に延伸する工程であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記延伸工程で、前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムに異なる温度を付与した後、さらに、前記温度と逆の温度を付与する工程を有することを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 前記延伸工程で、前記未延伸熱可塑性樹脂フィルムに付与される温度の、一方の面側と他方の面側の温度差が100℃未満であることを特徴とする請求項1から6いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記熱可塑性樹脂が、セルローストリアセテート、セルロースアシレートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、環状オレフィン、アクリル系樹脂およびポリカーボネートから選ばれることを特徴とする請求項1から7いずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 請求項1から8いずれかに記載の光学フィルムの製造方法により得られた光学フィルム。
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