JP2010007117A - 高強度浸炭部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 真空浸炭焼入れし、かつ1回以上のズブ焼入れを繰り返すことにより結晶粒を微細化することで、従来にない優れた衝撃強度、曲げ強度を有する浸炭部品を製造する。
【解決手段】 質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.10〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.20%以下、Cr:0.3〜3.0%、Cu:0.30%以下、Al:0.001〜0.1%、N:0.01%未満、Ti:0.05〜0.5%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用い、機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上のズブ焼入れを行った後、これを焼戻すことにより浸炭部品を製造する。
【選択図】 図3

Description

この発明は、はだ焼鋼から浸炭焼入れ・焼戻し処理してなる浸炭部品の製造、例えば、自動車、建設機械、工作機械などのギア、CVJやシャフトなどのはだ焼鋼を浸炭処理してなる浸炭部品を製造に関する。
近年、自動車用部品の高出力・小型軽量化に伴い、ギア、等速ジョイント部品やシャフトなどの浸炭焼入れ・焼戻し処理してなる自動車用部品では、一層の高強度化、長寿命化が要求されている。そこで、JIS規格のSNCMなどのニッケルクロムモリブデン鋼のように合金元素を添加して高強度化を図っている。しかし、このように合金元素を添加して高強度化を図った場合、素材コストが高くなり、冷間加工性が劣るため冷間鍛造ができず、さらに熱間鍛造後そのままでは切削の際に切削バイト寿命が短くなるため、焼鈍などの熱処理が必要となる問題がある。
一方、結晶粒微細化により鋼の強度が向上することが知られているが、この方法は合金元素の添加なしに高強度化でき、素材の鍛造性や切削性といった加工性を低下させることなく、また延性や靭性を損なわずに高強度化できることから、極めて有効な方法であると言える。
結晶粒を微細化させる方法として加工熱処理による方法があるが、この場合、成形加工と熱処理を組み合わせるため、成形加工の難しいものには適用できないなど、部品形状が限定され、自動車のギア、CVJやシャフトなどには適用が難しいという問題がある。
これらの問題点を解消するために、浸炭後に繰返し焼入れを行うことにより、積極的に旧オーステナイト粒を微細化して強度を向上させることができる高強度はだ焼鋼が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかし、特許文献1の方法では、浸炭前のはだ焼鋼をJIS G0551で規定されている粒度番号No.11以上まで微細化したマルテンサイト組織とする必要があり、コストが高いという問題がある。
また、特許文献1および特許文献2では、浸炭焼入れ後、繰返し焼入れを行うことによって旧オーステナイト粒径を微細化しているが、これらの方法では強度向上が十分とはいえないという問題がある。
特開2003−34843号公報 特開平8−92690号公報
上記の特許文献1あるいは特許文献2に記載の技術に対し、鋼材をより一層高強度化する方法を鋭意検討したところ、従来のガス浸炭を行った鋼において結晶粒径を小さくしても、ある粒径で強度は飽和してしまうことを見いだした。これはガス浸炭時に部品表面に浸炭異常層や粒界酸化層が生成し、その深さ以上に旧オーステナイト粒径を微細化しても、浸炭異常層や粒界酸化層が初期欠陥として作用し、旧オーステナイト粒の微細化効果がなくなったことによると推定された。そこで、真空浸炭することにより浸炭異常層を防止したところ、強度の飽和現象は見られず、結晶粒径が小さくなればなるほど強度は向上することを発明者は見いだした。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、浸炭した鋼部品において、真空浸炭を行うことにより、表面欠陥として作用する浸炭異常層を防止するとともに、従来に比して結晶粒を超微細化することによる相乗作用により、従来にまして優れた衝撃強度および曲げ強度を有する浸炭部品を製造する方法を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.10〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.20%以下、Cr:0.3〜3.0%、Cu:0.30%以下、Al:0.001〜0.10%、N:0.01%未満、Ti:0.05〜0.50%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用い、機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上のズブ焼入れを行った後、これを焼戻すことにより浸炭部品を製造することを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。
請求項2の発明では、請求項1の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ni:0.20〜5.0%、Mo:0.05〜3.0%、B:0.001〜0.005%のいずれか1種もしくは2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用い、機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上のズブ焼入れを行った後、これを焼戻すことにより浸炭部品を製造することを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。
請求項3の発明では、請求項1または2の鋼成分に加え、さらに質量%で、Nb:0.02〜0.50%、V:0.02〜0.50%のいずれか1種もしくは2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用い、機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上のズブ焼入れを行った後、これを焼戻すことにより浸炭部品を製造することを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。
上記の方法における鋼材の成分を限定した理由を以下に説明する。なお、%は質量%を示す。
C:0.10〜0.45%、望ましくは、C:0.10〜0.25%
Cは機械構造用部品として浸炭処理後の芯部強度を確保するために必要な元素である。Cが0.10%未満では、その効果は十分に得られず、0.45%を超えると加工性を低下し、かつ靱性を低下させる。そこで、Cは0.10〜0.45%、望ましくは0.10〜0.25%とする。
Si:0.05〜2.0%
Siは脱酸に必要な元素で、0.05%未満では脱酸が十分に得られず、2.0%を超えると加工性を低下させる。そこで、Siは0.05〜2.0%とする。
Mn:0.10〜2.0%
Mnは焼入性を確保するために必要な元素であるが、0.10%未満ではその効果は十分に得られず、2.0%を超えると加工性を低下させる。そこで、Mnは0.10〜2.0%とする。
P:0.030%以下
Pはスクラップから含有される不可避な元素であるが、オーステナイト粒界に偏析して衝撃強度や曲げ強度などの靱性を低下する。そこで、Pの含有量の上限を0.030%とする。
S:0.020%以下
Sは被削性を向上させる元素であるが、非金属介在物であるMnSを生成して、横方向の靱性および疲労強度を低下する。そこで、Sは0.20%以下とする。なお、Sはなくても良いが、被削性を要する場合にはSは0.001〜0.20%の範囲で添加する。
Ni:0.20〜5.0%
Niは焼入性および靱性を向上させる元素であるが、0.20%未満ではその効果が十分ではなく、5.0%を超えて含有すると加工性を著しく低下させ、かつ、コストアップとなる。そこで、Niは0.20〜5.0%とする。
Cr:0.30〜3.0%
Crは焼入性および浸炭性を向上させる元素であるが、0.30%未満ではその効果が十分ではなく、3.0%を超えて含有すると加工性を低下する。そこで、Crは0.30〜3.0%とする。
Mo:0.05〜3.0%
Moは焼入性および靱性を向上させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が十分ではなく、3.0%を超えて含有すると加工性を低下させる。そこで、Moは0.05〜3.0%とする。
Cu:0.30%以下
Cuはスクラップから含有される不可避な元素で、0.30%を超えると熱間加工性を低下する。そこで、Cuは0.30%以下とする。
Al:0.001〜0.10%、望ましくは0.02〜0.050%
Alは脱酸材として使用される元素であり、0.001%未満では脱酸効果は不十分であり、0.10%を超えるとアルミナ系酸化物が増加し疲労特性、加工性を低下する。そこで、Alは0.001〜0.10%、望ましくは0.02〜0.050%とする。
Ti:0.05〜0.50%、望ましくは0.10〜0.20%
Tiは、Ti炭化物、Tiを含有する複合炭化物、Ti窒化物を微細に析出させることによって、浸炭時のオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制するために必要な元素である。特に、鋼中に微細分散したナノオーダーのTiCが結晶粒の成長を抑制する。Tiが0.05%未満では結晶粒粗大化防止効果は十分でなく、0.1%以上が望ましい。しかし、0.5%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Tiは0.05〜0.50%、望ましくは0.10〜0.20%とする。
N:N:0.01%未満、望ましくは0.005%未満
NはTiNを生成するが、TiNが多くなると、鋼の被削性、疲労強度を低下させる。そこで、Nは0.01%未満、望ましくは0.005%未満とする。
B:0.0010〜0.0050%
Bは極小量の含有によって鋼の焼入性を著しく向上させ、浸炭部品の強度を向上させる元素で選択的に含有される。しかし、0.0010%未満では焼入性、強度の向上効果が小さく、0.0050%を超えると強度を低下する。そこで、Bは0.0010〜0.0050%とする。
V:0.02〜0.50%
Vは炭化物あるいは炭窒化物を形成し、Ti同様にオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制する効果を有する。Vが0.02%未満ではその効果が十分得られず、0.50%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Vは0.02〜0.50%とする。
Nb:0.02〜0.50%
Nbは炭化物あるいは炭窒化物を形成し、Ti同様にオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制する効果を有する。Nbが0.02%未満ではその効果が十分得られず、0.50%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Nbは0.02〜0.50%とする。
Ti、Nb、Vを含有せしめる理由
本発明の工程では、浸炭焼入れ後の繰返し焼入れによって結晶粒を微細化する。ところで、繰返し焼入れの際の加熱時に非常に微細なオーステナイト初期粒が生成するが、JIS SCM420のような鋼では、その後の焼入れ温度までの加熱時に結晶粒が粗大化してしまい微細化しない。この結晶粒の粗大化を防止するために、Ti、Nb、Vといったピンニング力の高い元素を含有させる。
真空浸炭とズブ焼入れによる繰返し焼入れによる結晶粒微細化の組合せ、などの工程の限定理由について以下に説明する。
先ず、繰返し焼入れについて説明する。本発明は結晶粒の微細化手法としてズブ焼入れによる繰返し焼入れ法を用いる。しかし、1回の焼入れよりも繰返し2回の焼入れの方がその効果は大きい。ただし、鋼種によっては、3回以上の繰返し焼入れを行うと逆に混粒が発生し、強度も低下するという問題がある。
次いで、真空浸炭と繰返し焼入れによる結晶粒微細化処理の組合せについて説明する。ガス浸炭処理を行う場合、雰囲気中に含まれている酸素が鋼材表面から侵入し、結晶粒界近傍のSi、Mn、Crと結びつき酸化物を形成する。これらの固溶合金成分が少なくなった近傍では、焼入れ性が低下し、焼入れ時にマルテンサイトが生成せずに、トルースタイトやベイナイトが生成する。特に酸素は結晶粒界に沿って侵入し易く、結晶粒界にそって浸炭異常層が生成する。この結晶粒界にそった浸炭異常層は特に粒界酸化層と呼ばれている。鋼材表面に粒界酸化層が生成すると、粒界酸化層は欠陥として作用するため、その深さが深いほど強度が低下することが知られている。
ところで、ガス浸炭した材料は結晶粒径を小さくしていった場合、ある程度までは、結晶粒径が小さくなるほど強度は向上するが、ある粒径以下に小さくしても、強度は飽和して向上しない。この理由としては、粒界酸化層が影響していると推定される。すなわち、結晶粒径が粒界酸化層より大きい場合は、結晶粒径が小さくなればなるほど強度は向上するが、結晶粒径が粒界酸化層より小さくなると、粒界酸化層の方が欠陥として大きくなり、結晶粒微細化の効果が得られないと考えられる。したがって、結晶粒微細化の効果を最大限に発揮させようとすれば、粒界酸化層を低減、もしくは防止することが必須である。一方、粒界酸化層を低減して強度を向上させる方法も知られているが、この方法でも結晶粒が大きければ粒界酸化層の低減の効果が十分に得られず、強度は大きく向上しない。この様に結晶粒の微細化、粒界酸化層の低減のいずれか一方では強度向上効果は小さく、強度向上効果を大きくするためには「結晶粒の微細化」と「粒界酸化層の低減、防止」の両方の組合わせが必要であると考えられる。
また、真空浸炭は減圧下で高温に加熱された炉内に炭化水素系のガスを供給し炉内に挿入された被処理物を浸炭する方法で粒界酸化などの浸炭異常層が生成しないという特長がある。つまり、真空浸炭により粒界酸化層を生成させず、その後に繰返し焼入れにより結晶粒微細化を行うことにより衝撃強度、曲げ強度を大きく向上させることができる。
本発明は、真空浸炭焼入れすることにより粒界酸化などの浸炭異常層を防止することと、真空浸炭焼入れ後に1回以上のズブ焼入れを行うことにより結晶粒を微細化することの両方法の手段でもって、自動車、建設機械、工作機械などのギアやシャフトなどの機械部品の浸炭鋼材による高強度浸炭部品を、従来の鋼材に比して、加工性を低下することなく、低コストで製造可能とすることができるなど、本発明の方法は従来にない優れた効果を奏するものである。
本発明の方法を実施するための最良の形態について表および図面を参照して説明する。先ず、表1に示す比較例のNo.1〜8と本発明の実施例のNo.1〜13の化学成分を含有するそれぞれの鋼を、100kg真空誘導溶解炉で溶製してインゴットに鋳造した。これらの鋼において、Al、Nb、V、Tiの析出物をいったん固溶させ、その後に熱処理で微細に析出させるため、このインゴットを1250℃に加熱し、5時間保持して溶体化処理を行い、析出物を微細に析出させた鋼材を得た。
Figure 2010007117
上記の溶体化処理した鋼材を角40mmの素材に鍛伸した。この素材を900℃に加熱し、1時間保持した後、空冷することにより焼きならしを行い、図1に示す2mm10RCノッチ2のシャルピー衝撃性試験片1と、図2に示す2mmVノッチ4の静曲げ試験片3を作製した。これらの試験片を、それぞれ図3に示すように950℃に加熱して0.5時間予熱し真空浸炭を1時間行い、2.5時間保持して拡散し、850℃に下げて0.5時間保持し、次いで20℃の油に焼入れし、180℃に焼戻した。また、真空浸炭の効果と比較確認するために、図4に示すように930℃に加熱して0.5時間予熱しガス浸炭を3時間行い、2.5時間保持して拡散し、830℃に下げて0.5時間保持し、次いで60℃の油に焼入れし180℃に戻した試験片も作製した。さらに繰返し焼入れを行うものは、それぞれの浸炭焼入れ後に、図5に示す850℃に0.5時間保持して60℃に油焼入れを1〜2回繰り返した後、180℃に加熱して1.5時間保持して焼戻す条件により、結晶粒を微細化した。すなわち、それぞれの浸炭焼入れし、このままのものである浸炭焼入れままのものと、さらに、これに加えて1回または2回のズブ焼入れと焼戻しを行った。これらの場合、(1)浸炭焼入れ・焼戻して、これを表2に「浸炭焼入れまま」と示したものと、さらに(1)の浸炭焼入れに加えて、(2)のズブ焼入れ1回の繰返し焼入れをした後に焼戻したものと、または(1)の浸炭焼入れに加え、(3)の2回の繰返し焼入れをした後に焼戻したものとを、それぞれ表2に「浸炭焼入れまま」、「ズブ焼入れ1回」、および「ズブ焼入れ2回」と示し、これらの3種の焼入れ・焼戻しを実施した。
以上のように、焼入れ・焼戻し条件を3種に変化させることによって、結晶粒の異なる試験片を作製し、その衝撃強度および静曲げ強度と、それらに及ぼす結晶粒径の影響を調査した。
上記のように作製したシャルピー衝撃試験片を、シャルピー衝撃試験機を用いて衝撃試験し、その亀裂発生エネルギーにより衝撃値を評価し、この評価をシャルピー衝撃試験片の浸炭層表面の平均結晶粒径とあわせて、表2に衝撃試験結果として示した。表2で、シャルピー衝撃試験片の浸炭層表面の平均結晶粒径はμmを単位として示し、衝撃値は比較例のNo.1のガス浸炭焼入・焼戻しの試験片の亀裂発生エネルギーを1.0とし、この値を基準として対比したそれぞれの亀裂発生エネルギーの値により示した。なお、衝撃試験は室温で行った。
Figure 2010007117
表2に示すように、比較例の鋼は浸炭焼入れ後のズブ焼入れ1回では旧オーステナイト粒がやや小さくなるが、ズブ焼入れ2回でもそれ以上はほとんど小さくならなかった。一方、実施例の鋼は比較例の鋼に比して浸炭焼入れ後の1回のズブ焼入れで旧オーステナイト粒径が大幅に小さくなり、2回のズブ焼入れを繰り返すとさらに小さくなった。
以上のように、比較例の鋼は浸炭焼入れ後にズブ焼入れを繰り返しても旧オーステナイト粒径は小さくなっておらず、真空浸炭したものも、ガス浸炭したものも、衝撃強度はほとんど向上しなかった。これに対し、実施例の鋼は、真空浸炭したものも、ガス浸炭したものも、浸炭焼入れ後のズブ焼入れを繰り返すことで、旧オーステナイト粒径は小さくなっているが、ガス浸炭したものは、旧オーステナイト粒径が小さくなっても衝撃強度は大きく向上していない。これに対し、真空浸炭したものは、旧オーステナイト粒径の微細化により衝撃強度が大きく向上した。以上の様に、実施例の鋼を用いて、真空浸炭焼入れ後に繰返し焼入れを行うことにより衝撃値が大幅に向上した。
さらに、上記で熱処理を行った静曲げ試験片3を、図6に示すように、支点間距離50mmの3点曲げにより、中心のクロスヘッドを2mm/minの移動速度で、すなわち静曲げ試験片3の両端部を下方から支持して中心5を下方の矢印方向に荷重を掛けて押し、静曲げ試験を実施した。この試験により、静曲げ試験片3の表面層に亀裂が生じた時点における荷重を亀裂発生荷重として静曲げ強度を評価し、浸炭層表面の平均結晶粒径とあわせて、表3に静曲げ試験の結果を示す。表3において、比較例のNo.1のガス浸炭焼入・焼戻しままの試験片の亀裂発生荷重を1.0とし、この値を基準に対比した値でそれぞれの亀裂発生荷重を示した。なお、この静曲げ試験は室温で行った。
Figure 2010007117
表3に示すように、比較例の鋼は衝撃試験片と同様に、浸炭焼入れ後のズブ焼入れ1回では、旧オーステナイト粒がやや小さくなるが、ズブ焼入れ2回でもそれ以上はほとんど小さくならなかった。一方、実施例の鋼は、比較例の鋼に比して、浸炭焼入れ後の1回のズブ焼入れで、旧オーステナイト粒径が大幅に小さくなり、2回のズブ焼入れを繰り返すとさらに小さくなった。
以上のように、比較例の鋼は、浸炭焼入れ後にズブ焼入れを繰り返しても、旧オーステナイト粒径は小さくなっておらず、真空浸炭したものも、ガス浸炭したものも、静曲げ強度はほとんど向上しなかった。これに対し、実施例の鋼は、真空浸炭したものも、ガス浸炭したものも、浸炭焼入れ後のズブ焼入れを繰り返すことで、旧オーステナイト粒径は小さくなっている。さらにガス浸炭したものは、旧オーステナイト粒径が小さくなっても静曲げ強度は大きく向上していないのに対し、真空浸炭したものは、旧オーステナイト粒径の微細化により静曲げ強度が大きく向上した。以上の様に、実施例の鋼を用いて、真空浸炭焼入れ後に繰返し焼入れを行うことにより大幅に静曲げ強度が向上した。
以上に説明したように、本発明の方法の真空浸炭焼入れ後に繰返し焼入れを行うことにより、結晶粒の微細な衝撃強度および静曲げ強度に優れた浸炭部品を製造することができた。
シャルピー衝撃試験片の形状・大きさを示す図である。 静曲げ試験片の形状・大きさを示す図である。 真空浸炭焼入れ・焼戻し条件を示す図である。 ガス浸炭焼入れ・焼戻し条件を示す図である。 繰返し焼入れ・焼戻し条件を示す図である。 試験片に静曲げ試験方法を示す図である。
符号の説明
1 シャルピー衝撃試験片
2 10R2mmCノッチ
3 静曲げ試験片
4 2mmVノッチ
5 中心

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.10〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.20%以下、Cr:0.3〜3.0%、Cu:0.30%以下、Al:0.001〜0.10%、N:0.01%未満、Ti:0.05〜0.50%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用い、機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上のズブ焼入れを行った後、これを焼戻すことにより浸炭部品を製造することを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。
  2. 請求項1の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ni:0.20〜5.0%、Mo:0.05〜3.0%、B:0.001〜0.005%のいずれか1種もしくは2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用い、機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上のズブ焼入れを行った後、これを焼戻すことにより浸炭部品を製造することを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。
  3. 請求項1または2の鋼成分に加え、さらに質量%で、Nb:0.02〜0.50%、V:0.02〜0.50%のいずれか1種もしくは2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼を用い、機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上のズブ焼入れを行った後、これを焼戻すことにより浸炭部品を製造することを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。
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