JP2010004413A - 時刻同期装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】GPS衛星を利用した時刻同期装置において、GPS衛星を捕捉不可能となった場合においても、システム運用可能な時間を長くとれるように安定制御を行う。
【解決手段】GPS衛星が捕捉できなくなった場合に、当該基地局と他の基地局とでハンドオーバーを行える関係にある移動局が存在するときは、GPS衛星を正常に受信できている他の基地局から送信されるフレームを移動局経由にて無線電波入出力部5にて受信し、フレームタイミング検知部7にてUTCに対するズレを推定する。1PPS補正回路部2はズレ量を補正する信号を送り、制御部3はGPSレシーバー1にフレームタイミングを変更調整させる。フレーム生成部4は補正後の1PPS信号によりフレームを生成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、時刻同期装置、特に、GPS通信衛星から受信する時報信号に基づくクロック同期の下に移動局の間の通信を中継する基地局における時刻同期装置に関する。
従来のこの種の時刻同期装置は、GPS通信衛星からの時報信号を受信できる場合には、GPS時報信号を受信してPPS(Pulse Per Second)信号を出力し、この信号に基づいてPPSクロックを発生することによりクロック同期行い、GPS通信衛星からの時報信号を受信できない場合には、基地局が発生しているRTC(Real Time Clock)によりクロック同期を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。PPS信号はGPS通信衛星からの時報信号を受信できない場合にも発生される。RTCはPPSクロックと一致するか監視され、一致しない場合はPPSクロックに基づいて補正される。なお、時報信号を受信したときに、RTCとPPS信号をカウントしたPSC(Pps Signal Counter)は初期化される。
図7は上記の従来技術を示すブロック図である。GPSレシーバー106は、GPS通信衛星によって提供される時報信号をアンテナ105により受信してPPS信号を出力すると共に、ラインL1を通じてこのPPS信号をPPS受信部107に送る。PPS受信部107は、PPS信号に基づいてPPSクロックを発生し、これをCPU101に提供する。PPS信号は、標準時報とほぼ等しい時報信号に基づいて発生される信号であり、1秒ごとに提供される信号である。従って、GPS通信衛星からの時報信号が受信可能な限りCPU101には、正確なタイミングのPPSクロックが提供され、クロック同期が正確に保たれる。
ローカルクロック発生部102はRTCを発生しており、RTCはPPSクロックと一致するかCPU101によって監視され、一致しない場合は、CPU101,ROM103およびRAM104によって構成される補正部により補正される。
特開平11−154920(第3頁−第4頁、図1)
しかしながら、上述した従来技術では、GPS通信衛星を捕捉できない状況になると、システム側のクロックはRTCにより秒単位で補正を行うようにしているが、RTCそのものが1秒程度の精度を前提とした回路であるため、このような方法では、UTC(Coordinated Universal Time:協定世界時)と同期したシステムを構築する場合、1秒程度の精度でしか補正できないので、正しい時刻を得ることができなくなるという第1の問題点がある。
また、GPS通信衛星を利用した時刻同期装置から出力されるPPS信号を毎秒カウントしたPSC(Pps Signal Counter)の値と、RTCクロックの秒情報を比較して、RTCへ補正をかけることにより正確な時刻を得ようとしているため、秒単位のレベルでしか正確な精度を保つことができないという第2の問題点もある。
本発明の目的は、GPS通信衛星を捕捉できない状況に陥った際にも、長時間安定したPPS信号(=時刻同期信号)を出力することができる時刻同期装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、時刻同期信号について同レベルの安定度を維持するためにかかる費用を低減することができる時刻同期装置を提供することにある。
本発明の時刻同期装置は、GPS通信衛星が何らかの理由により捕捉できないときに他の正常にGPS通信衛星を受信できている時刻同期装置から正しい時刻情報を両時刻同期装置間に存在する移動局を経由させ、所定の遅延時間を補正することにより、GPS通信衛星が捕捉できない状態においても極力長い時間、時刻同期装置としての役割を果たせるような構成としたものである。
即ち、本発明の時刻同期装置は、GPS通信衛星から受信する時報信号に基づくクロック同期の下に移動局の間の通信を中継する基地局における時刻同期装置において、GPS通信衛星を捕捉できなくなると、ハンドオーバー状態にある他の基地局から移動局を経由して、他の基地局がGPS通信衛星から受信している時報信号の時刻情報を取得する回路と、取得した時刻情報により自己のクロック同期を行なう回路を有することを特徴とする。
より具体的には、本発明の時刻同期回路は、GPS通信衛星から受信する時報信号に基づくクロック同期の下に移動局の間の通信を中継する基地局における時刻同期装置において、通信により受信した通信フレームのタイミング情報を検知するフレームタイミング検出部(図2の7)と、正常時には時報信号に同期したクロックおよび1PPS信号を出力しているが、時報信号を受信できなくなるとアラーム情報を出力するGPSレシーバー(図2の1)と、正常時にはGPSレシーバーからの1PPS信号を出力しているが、アラーム情報出力時にハンドオーバー可能な基地局が存在する場合には、該基地局からタイミング情報により該基地局における1PPS信号のタイミングを算出し、またGPSレシーバーからの1PPS信号のタイミングとの比較結果により位相差を求めるCPU回路部(図2の6)と、位相差により位相補正量を算出する1PPS補正回路部(図2の2)と、正常時にはGPSレシーバーからの1PPS信号を出力しているが、アラーム情報出力時には算出された1PPS信号のタイミングとGPSレシーバーからの1PPS信号のタイミングを比較して、その結果をCPU回路部へ出力し、また位相補正量によりGPSレシーバーで位相補正された1PPS信号を出力する制御部(図2の3)と、制御部からの1PPS信号により通信用のフレームを生成するフレーム生成部(図2の4)を有することを特徴とする。
また、CPU回路部(図2の6)は、アラーム情報出力時にハンドオーバー可能な基地局が存在しない場合にはフレーム生成部におけるフレーム生成を停止させること特徴とする。
また、制御部(図2の3)はアラーム情報出力時にCPU回路部にタイマーを動作させ、CPU回路部は所定の時間内にハンドオーバー可能な基地局の存否を判断することを特徴とする。一定時間の猶予を設けるのは、システムが正常運用可能な時間まで待ってハンドオーバー可能な基地局の存在を探索するためである。一定時間の保障できる時間性能としては、GPSレシーバー1単体の性能に大きく依存し、許容できる範囲は、想定するシステム要件によって変化するものである。
また、基地局同士を有線接続しておき、他の基地局から時報信号の時刻情報を取得する際の送信時刻情報を得ることを特徴とする。これにより、より正確な1PPS信号のタイミングを算出できるようになる。
また、制御部は、比較の結果、位相差が所定値を超えるときは、CPU回路部に対してフレーム生成部におけるフレーム生成を停止させること特徴とする。基準時間よりも大きく異なるタイミングにて無線電波を出力することは、他の基地局への妨害電波となり得るからである。
更に、GPSレシーバー(図2の1)は、アンテナから時報信号を受信するとGPS_1PPSを生成するGPSエンジン(図4の11)と、クロックを発生して制御部へ出力している発振器(図4の14)と、クロックから1PPS信号を生成して制御部へ出力している分周器(図4の15)と、GPS_1PPSと1PPS信号の位相を比較する位相比較部(図4の12)と、位相比較結果によりクロックの位相を調整できるように発振器へ接続され、また制御部と各種データ通信や制御コマンドを授受し、位相比較結果により所定時間が経過してもGPS_1PPSを認識できない場合には、時報信号を受信できていないと見做して、アラーム情報を発生する位相制御部(図4の13)とで構成されていることを特徴とする。
本発明の第1の効果は、GPS通信衛星を利用している、これまでの時刻同期装置の基本構成を変更せずに、GPS通信衛星を捕捉不可能となった場合でも、システム運用可能な時間を長く保てるようにできるということである。その理由は、GPS通信衛星が捕捉できなくなった基地局のUTCタイミングを、他の正常にGPS通信衛星を受信できている基地局からのフレームデータを元に算出し、補正調整をかけるためである。
本発明の第2の効果は、GPS通信衛星を利用しているこれまでの時刻同期装置において、GPSレシーバー内部のオシレータを低価格のものへ変更が可能になるということである。その理由は、従来は、HoldOver時にシステムとして必要な時間、所定の精度に入るように高価なものを採用していたが、UTCタイミングへの補正がかけられることにより、性能の多少劣る、低価格なものでも対応可能となるためである。従って、高価な発振器を装備しなくても、同程度以上の精度が確保できる。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[構成の説明]
本発明の時刻同期装置を備えた基地局はクロック同期の下に移動局(Mobile Station)の間の通信を中継する。図1は、基地局100がアンテナ91を経由して移動局41と移動局42の間の通信を中継し、基地局200がアンテナ92を経由して移動局42と移動局43の間の通信を中継している様子を示す。基地局100はアンテナ81により、基地局200はアンテナ82により、それぞれGPS通信衛星(以下、「GPS衛星」と記す)から時報信号を受信して、これに基づいて基地局100と基地局200の間におけるクロック同期を行う。この時報信号は、UTCに極めて高い精度で同期したものである。なお、基地局100と基地局200は有線通信網30によっても接続されている。
図2は、本発明の基地局100,200の一実施の形態のブロック図である。これらの基地局は、GPSレシーバー1,1PPS補正回路部2,制御部3,フレーム生成部4,無線電波入出力部5,CPU回路部6,フレームタイミング検知部7,アンテナ8,アンテナ9およびLANポート10で構成されている。アンテナ8はGPS衛星捕捉用、アンテナ9は無線接続用である。
GPSレシーバー1は、アンテナ8を介してGPS衛星からの情報を受信し、内部処理を行うことで、位置情報,GPS衛星情報,時間情報(時報信号を含む)等を取得する。また、GPSレシーバー1は、内部処理後、10MHzのクロック(以下、単に「クロック」と記す)と1PPS(1Pulse Per Second)信号を制御部3へ出力する。更に、時報信号を受信できなくなるとアラーム情報を制御部3へ出力する。
制御部3はクロックに同期して動作する。制御部3は、GPSレシーバー1からの各種ステータス情報やアラーム情報をRS−232C(シリアル通信)を介して受信することができる。また、GPSレシーバー1の状態やステータスを変更するために、RS−232Cを介して、GPSレシーバー1の設定等の変更をすることが可能となるように接続されている。
制御部3は、正常状態ではGPSレシーバー1からの1PPS信号をフレーム生成部4へ出力している。しかし、GPSレシーバー1からアラーム情報を受けると、CPU回路部6へタイマー動作の開始要求を行なう。そして、所定時間内にハンドオーバー可能な基地局が存在しない場合には無線出力を停止させる。一方、所定時間内にハンドオーバー可能な基地局が存在する場合には、CPU回路部6で算出された、その基地局における1PPS信号のタイミングと、GPSレシーバー1からの1PPS信号のタイミングを比較する。また、PPS補正回路部2からの補正情報(補正位相量)を受け取り、補正情報をGPSレシーバー1へ送付できるように接続されている。更に、GPSレシーバー1からの補正後の1PPS信号をフレーム生成部4へ出力することができるように接続されている。
なお、ハンドオーバーとは、移動局が複数の基地局間において送受信可能なエリア(ハンドオーバーエリア)に存在する場合に、例えば、移動局が通信を行っている基地局から、通信を行っていない他の基地局へ通信を行う基地局を変更する動作のことをいう。
図3を元にハンドオーバーエリアの説明をする。基地局から移動局に届く電波到達距離は、基地局の送信電力パワーと各受信機の性能によって決定される。それらによって決定された基地局100、基地局200と移動局との通信可能な範囲を基地局100、基地局200からの電波到達範囲として示している。この電波到達範囲は、移動局との通信を途切れることなく行うことができるようにオーバーラップして存在し、図3の斜線部分が該当する。また、基地局100、基地局200は移動局の位置情報や上位ネットワーク等と通信を行うために、例えばLAN網等の有線通信網にて接続されている。
フレーム生成部4は、制御部3からの1PPS信号を基準にフレームを生成し、生成されたフレームは無線電波入出力部5へ送られる。無線電波入出力部5は、フレーム生成部4から入力されたフレームを移動局或いは他の基地局に向けてアンテナ9から無線出力する。つまり、このフレームによって移動局或いは他の基地局との間で通信が行なわれる。他の基地局から無線出力されアンテナ9で受信されたフレームは、無線電波入出力部5を経由してフレームタイミング検知部7へ送られる。フレームタイミング検知部7は、フレームにおいてタイミング情報を検知しCPU回路部6へ送る。
CPU回路部6は、制御部3からのタイマー動作の開始要求を受けると、一定時間内にハンドオーバー可能な基地局を探る。そのような基地局が存在しない場合はフレーム生成部4におけるフレームの生成を停止させ、ハンドオーバー可能な基地局が存在する場合はLANポート10経由で全ての基地局にハンドオーバー情報の提供を求める。基地局100の上位装置はハンドオーバーすべき基地局(この例では基地局200)を決定する。
また、CPU回路部6は、基地局200から無線および有線で種種のデータを受信する。このデータは、基地局200はハンドオーバーになっているという情報、時刻情報とした使用されるタイミング情報を含む。CPU回路部6は、移動局,基地局100および基地局200の位置情報により、移動局を経由した基地局200から基地局100へのデータ送信の遅延時間を算出し、受信したフレームが有する時刻情報に基づいて、基地局200における1PPS信号のタイミングを算出する。
また、CPU回路部6は、制御部3よる制御の下に、フレーム生成部4におけるフレーム生成を制御する。CPU回路部6は、制御部3からの1PPS信号の比較結果により、基地局100における1PPS信号と基地局200における1PPS信号の位相差を算出して1PPS補正回路部2へ送付する。1PPS補正回路部2は、上記位相差により補正位相量を算出して制御部3へ送付する。
図4は、図2に示したGPSレシーバー1の詳細なブロック図を示す。図4において、GPSエンジン11は、アンテナ8から時報信号を受信するとGPS_1PPSを生成する。発振器14は10MHzのクロックを発生しており、分周器15と制御部3へ出力している。分周器15は、クロックから1PPS信号を生成して位相比較部12と制御部3へ出力する。位相比較部12は、GPS_1PPSと1PPS信号の位相を比較し、その結果を位相制御部13へ送る。
位相制御部13は位相比較結果によりクロックの位相を調整できるように発振器14へ接続されている。また、位相比較結果により所定時間が経過してもGPS_1PPSを認識できない場合には、時報信号を受信できていないと見做して、その情報を外部I/F部16へ伝える。外部I/F部16は、RS−232Cを介して制御部3との各種データ通信を行い、位相制御部13からの情報を受け、また制御コマンドを位相制御部13へ送れるような構成とされている。
[動作の説明]
次に、図2に示した時刻同期装置の動作について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。実際には、基地局100は多くの基地局と通信可能であるが、説明を単純化するため、いま、基地局100と基地局200が移動局を経由して通信可能とし、基地局100の動作に注目する。
基地局100,200のGPSレシーバー1においては、発振器14が10MHzのクロックを発生して分周器15と制御部3へ出力している。分周器15は、このクロックから1PPS信号を生成して位相比較部12と制御部3へ出力する。一方、GPSエンジン11は、アンテナ8から時報信号を受信すると、GPS_1PPSを生成して位相比較部12へ出力する。位相比較部12はGPS_1PPSと分周器15が生成した1PPS信号との位相を比較し、その結果を位相制御部13へ送る。
位相制御部13において、位相比較部12における位相比較の結果によりGPS_1PPSを認識できる場合は、基地局100においてGPS衛星を捕捉できている(図6のステップS1でYES)ことになるので正常運用モードとなる(図6のステップS9)。正常運用モードにおいては、位相制御部13から外部I/F部16経由での制御部3に対する情報の送付は無い。
制御部3は分周器15からの1PPS信号(補正なし)をフレーム生成部4へ送り、フレーム生成部4は、制御部3からの1PPS信号を基準にフレームを生成する。生成されたフレームは無線電波入出力部5へ送られ、アンテナ9から放射され基地局100と基地局200の間で授受されることによって移動局の中継を行なう。基地局間におけるクロックの位相ズレは、位相比較部12におけるGPS_1PPSと1PPS信号の位相比較および位相制御部13における発振器14に対する位相制御によって是正される。これにより、基地局100と基地局200の間のクロック同期を維持することができる。
1PPS信号は、協定世界時:Coordinated Universal Time(以下、UTCという)と極めて高い精度で同期させたものである。例えば、発振器14に高価なダブルオーブン型オシレータを使用すれば、UTCに対して±100nsec以内で同期させることができる。
一方、位相制御部13においてGPS_1PPSを認識できない場合は、基地局100において何らかの理由によりGPS衛星を捕捉できていないことになる(図6のステップS1でNO)。この場合はHoldOverモードへ遷移する(図6のステップS2)。HoldOverとは、GPS衛星を捕捉できなくなった結果、GPSレシーバー1に搭載されている発振器14の性能を元にクロックと1PPS信号を制御部3へ出力している状態をいう。HoldOverモードでは、GPS衛星からの時報信号を元に上述のような位相制御をかけることができなくなり、クロック同期はGPSレシーバー1の持つ性能により一意的に決定されてしまう。
HoldOverモードになると、GPSレシーバー1から制御部3へシリアル通信にてアラーム情報が通知される。この通知は、図4において位相制御部13、外部I/F部16およびRS−232Cを経て制御部3へ到るルートによる。制御部3は、このアラーム情報をトリガーにCPU回路部6へタイマー動作の開始要求を行う。
CPU回路部6は、タイマー動作の開始要求によりタイマーを作動させ(図6のステップS3)、一定時間内にフレームタイミング検知部7からタイミング情報を受け取れるか監視する。このようにして、基地局200が受信しているGPS衛星からの時報信号を移動局による中継により受け取れるかを探る。つまり、ハンドオーバー可能な移動局の存在を探るのである。
ハンドオーバー可能な移動局の存在を探るにあたり、一定時間の猶予を設ける意味について図5を元に説明する。この場合の一定時間とは、システムが正常運用可能な時間と同意であり、その保障できる時間性能としては、GPSレシーバー1単体の性能に大きく依存する。許容できる範囲は、想定するシステム要件によって変化するものである。例えば、IEEE802.16e(以下、「WiMAX」と記す)をシステム的に考慮すると、UTCに対して10usec以内の精度を保つ必要が考えられる。
図5において、フレームAは、UTCに同期、つまり完全に時間にズレが発生していないタイミングで送出されるフレームを表したものである。フレームBは、GPS衛星を正常に捕捉しており、安定した状態にある基地局から送出されるフレーム信号の送出開始タイミングを表したものである。この際の時間的な状態はUTCとは全くの同一時間とはなっていないが、システム的に十分なマージンを持った状態である。
フレームCは、フレームBと同様に正常に動作している他の基地局から送出されるフレームタイミングを表したものである。この際、時間的な状態はフレームBと同様にシステム的に十分なマージンを持った状態であるが、フレームBとは異なり、UTCに対して早いタイミングとなっている。しかし、システムが許容する範囲にあるため問題とならない。例えば、発振器14にダブルオーブン形のオシレータを採用すれば、±100nsec以内の精度を得ることが十分に可能である。この精度が得られていれば、WiMAXにおいても十分使用できるレベルのものである。
フレームDは、何らかの理由により正常にGPS衛星を捕捉することができず、HoldOverモードへ移行し、徐々にUTCからの時間的な乖離が発生し、システム的に許容できる時間的なズレを超えてしまったときの状態を示している。以上のフレームA〜Dのタイミングはタイミング情報としてCPU回路部6へ供給される。
HoldOverモードへ移行すると、フレームの位相はGPSレシーバー1内部の発振器14の性能に大きく依存するため、時間経過と共にUTCからの時間的な乖離が発生してしまう。例えば、ダブルオーブン型のオシレータであれば、UTCから10usec以内のズレを24時間以上保持することが可能である。このような状態を把握するために、制御部3はCPU回路部6へタイマー動作の要求を行い、HoldOverへ移行した後の時間的な管理を行うのである。
さて、一定時間内にハンドオーバー可能な移動局が存在しない場合(図6のステップS4でNO)、基地局は無線出力停止へ遷移する(図6のステップS10)。この場合は、フレームDのように、CPU回路部6は、一定時間内にフレームタイミング検知部7からタイミング情報を受け取れなかったため、フレーム生成部4にフレームの生成を停止させる。この結果、無線電波入出力部5からフレームの送信が停止する。GPS衛星からの時報信号を受信できず、他の基地局から時報信号を移動局の中継により受け取れることもできないため、クロック同期を維持できないからである。
一方、一定時間内にハンドオーバー可能な移動局が存在した場合(図6のステップS4でYES)、CPU回路部6は、LANポート10から有線通信網を経由して全ての基地局にハンドオーバー情報の提供を求める。いま、基地局200がハンドオーバーの状態になっているとすると、基地局100は基地局200から有線および無線で種種のデータを受信する(図6のステップS5)。
即ち、CPU回路部6は、基地局200がハンドオーバーの状態になっているという情報をLANポート10経由で基地局200から受け取り、移動局からの電波を受信できるように準備する。また、基地局200は、基地局100への時刻情報を送ることを前提としたフレームを移動局経由にて送信する。このフレームは、基地局200において制御部3からの1PPS信号を基準にフレーム生成部4で生成され、アンテナ9から放射されて基地局100の無線電波入出力部5に入力するものである。また、移動局は、この時の自己の位置情報を基地局100へ送信する。また、基地局200から移動局宛に送信されたフレームの時刻情報は有線通信網へ上記フレームと同時に送出され、基地局100のLANポート10を経由してCPU回路部6へ送られる。
無線電波入出力部5は、受信したフレームと移動局の位置情報をフレームタイミング検知部7へ送り、フレームタイミング検知部7は、フレームタイミング、つまりフレームの先頭がどのタイミングで送り出されたかというタイミング情報を検知する。このようなタイミング情報は、他の基地局からのものも含めて多数存在し得るが、CPU回路部6は、基地局200から有線通信網経由で送出されてきた内容と同じものが含まれているフレームデータをピップアップする。
移動局を中継して基地局100で受信されたフレームは、基地局200で送信した時刻から、基地局200から移動局までの空間電波伝搬遅延時間、移動局内部で受けたデータの再送出のための遅延時間および移動局から基地局100までの空間電波伝搬遅延時間が加算されて基地局100へ届く。
CPU回路部6は、移動局の位置情報と自己の位置情報とから移動局と基地局100との間の距離を算出し、移動局の位置情報と基地局200の位置情報とから移動局と基地局200の間の距離を算出する。このようにして算出した距離に光速度を乗じ、その乗算結果に、移動局内部でのデータ再送出のための遅延時間を加えることにより、上記の遅延時間を算出する。そして、フレームタイミング検知部7が検出したフレームタイミングから算出した遅延時間を減算して、基地局200が送出した時刻タイミングを求める。
CPU回路部6は、移動局を中継して受信されたフレームのフレームタイミングをこの時刻タイミングに合わせることにより、基地局200においてGPS時報信号に同期した1PPSタイミングを算出する(図6のステップS6)。制御部3は、この1PPSタイミングと分周器15からの1PPS信号のタイミングを比較する(図6のステップS7)。
比較の結果、位相差が10usec以内でなければ(図6のステップS7でNO)、基地局100の無線出力停止に遷移し、基地局100の無線出力を停止させる(図6のステップS10)。その理由は、基準時間よりも大きく異なるタイミングにて無線電波を出力することは、他の基地局への妨害電波となり得るからである。CPU回路部6は、フレーム生成部4にフレームの生成を停止させ、この結果、無線電波入出力部5からフレームの送信が停止する。
一方、位相差が10usec以内であれば(図6のステップS7でYES)、CPU回路部6は、位相差を1PPS補正回路部2へ送付する。1PPS補正回路部2は、位相差により、補正位相量を算出して制御部3へ送付する。制御部3は、RS−232Cのシリアル通信にてGPSレシーバー1へ補正情報を伝える。GPSレシーバー1の外部I/F部16は補正情報を受けた場合、位相制御部13にて発振器14の微調整を行い、1PPSを所定の基準時間(基地局200の1PPS信号)へ合わせる(図6のステップS8)。微調整されて分周器15から出力される1PPS信号は、制御部3を経由してフレーム生成部4へ供給され、フレームの生成のために使用される。
なお、基地局100において基地局200の1PPS信号を使用してクロック同期を行なっている間に、基地局100においてGPS衛星を捕捉できるようになると(図6のステップS1でYES)、正常運用モードに復する(図6のステップS9)。
以上のようにして、基地局100で何らかの理由によりGPS通信衛星を捕捉できなくなった場合においても、有線通信網にて接続された基地局200とハンドオーバーエリアに移動局が存在すれば、フレーム送出の絶対時刻の補正が可能となる。本補正が可能となることで、GPSレシーバー1の発振器14自体の性能よりも更に長い時間、通信可能となり、基地局の長期安定化が図れるものである。また、本実施例によれば、従来の基地局構成要素から大きく機器を追加するものではないため、追加コストも低く抑えることができる。
なお、上記実施例では、基地局100の無線出力を停止させる判断として、UTCに対するズレを10usec以内としたが、より高い絶対時刻精度が求められるシステムにおいては、1usecとしてもよいし、逆に絶対時刻精度に余裕があるシステムにおいては、100usecとしてもよい。
また、上記実施例では、GPS捕捉をできている基地局を1つだけあげたが複数あってもよい。
また、上記実施例では、GPSレシーバーを使用しているが、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo(欧州版衛星測位システム)を利用してもよいし、GPSとGLONASS、GPSとGalileo、GLONASSとGalileo、GPSとGLONASSとGalileoを併用利用したものでもよい。
また、上記実施例では、発振器14にダブルオーブン型オシレータを適用しているが、シングルオーブン型オシレータを適用したものでもよい。但し、システムが許容できる、UTCからのズレを超えてしまうまでの時間が短くなる。コストは低下させることが出来る。
また、上記実施例では、発振器404にダブルオーブン型オシレータを適用しているが、オーブンなしタイプのオシレータを適用したものでも良い。但し、システムが許容出来る、UTCからのずれを超えてしまうまでの時間が、シングルオーブン型オシレータを適用したものよりも更に時間が短くなる。コストは更に低下させることが出来る。
また、上記実施例では、GPSレシーバーと制御部との間の通信方式をRS−232Cとしているが、RS−422、GP−IB、IrDA、IEEE 1394、シリアルATA(Serial AT Attachment)、PCI Express、USB(Universal Serial Bus)を利用したものでもよいし、他のパラレル通信方式を利用したものでもよい。
また、上記実施例では、基地局100と基地局200との接続を有線通信網としたが、無線通信を利用したものでもよい。
2つの基地局と移動局との位置的な関係を例示する図 本発明の時刻同期装置の一実施例を示すブロック図 ハンドオーバーエリアを説明するための図 図2の時刻同期装置におけるGPSレシーバーの一詳細例を示すブロック図 フレームのUTC時刻との時間ズレを示す相対関係図 図2の時刻同期装置の動作説明用フローチャート 従来の時刻同期装置の一例を示すブロック図
符号の説明
1 GPSレシーバー
2 1PPS補正回路部
3 制御部
4 フレーム生成部
5 無線電波入出力部
6 CPU回路部
7 フレームタイミング検知部
8 アンテナ
9 アンテナ
10 LANポート
11 GPSエンジン
12 位相比較器
13 位相制御部
14 発振器
15 分周器
16 外部I/F部
30 有線通信網
40 移動局
100 基地局
200 基地局

Claims (8)

  1. GPS通信衛星から受信する時報信号に基づくクロック同期の下に移動局の間の通信を中継する基地局における時刻同期装置において、
    前記GPS通信衛星を捕捉できなくなると、ハンドオーバー状態にある他の基地局から前記移動局を経由して、前記他の基地局が前記GPS通信衛星から受信している時報信号の時刻情報を取得する回路と、
    前記取得した時刻情報により自己のクロック同期を行なう回路を有することを特徴とする時刻同期装置。
  2. 前記時刻情報は、前記基地局で前記移動局間の通信を中継するための前記クロック同期されたフレームのタイミング情報を使用することを特徴とする時刻同期回路。
  3. GPS通信衛星から受信する時報信号に基づくクロック同期の下に移動局の間の通信を中継する基地局における時刻同期装置において、
    前記通信により受信した通信フレームのタイミング情報を検知するフレームタイミング検出部と、
    正常時には前記時報信号に同期したクロックおよび1PPS信号を出力しているが、前記時報信号を受信できなくなるとアラーム情報を出力するGPSレシーバーと、
    正常時には前記GPSレシーバーからの1PPS信号を出力しているが、前記アラーム情報出力時にハンドオーバー可能な基地局が存在する場合には、該基地局から前記タイミング情報により該基地局における1PPS信号のタイミングを算出し、また前記GPSレシーバーからの1PPS信号のタイミングとの比較結果により位相差を求めるCPU回路部と、
    前記位相差により位相補正量を算出する1PPS補正回路部と、
    正常時には前記GPSレシーバーからの1PPS信号を出力しているが、前記アラーム情報出力時には前記算出された1PPS信号のタイミングと前記GPSレシーバーからの1PPS信号のタイミングを比較して、その結果を前記CPU回路部へ出力し、また前記位相補正量により前記GPSレシーバーで位相補正された1PPS信号を出力する制御部と、
    前記制御部からの1PPS信号により前記通信用のフレームを生成するフレーム生成部を有することを特徴とする時刻同期回路。
  4. 前記CPU回路部は、アラーム情報出力時にハンドオーバー可能な基地局が存在しない場合には前記フレーム生成部におけるフレーム生成を停止させること特徴とする請求項3記載の時刻同期回路。
  5. 前記制御部は前記アラーム情報出力時に前記CPU回路部にタイマーを動作させ、前記CPU回路部は所定の時間内に前記ハンドオーバー可能な基地局の存否を判断することを特徴とする請求項6記載の時刻同期回路。
  6. 前記制御部は、前記比較の結果、位相差が所定値を超えるときは、前記CPU回路部に対して前記フレーム生成部におけるフレーム生成を停止させること特徴とする請求項3〜5記載の時刻同期回路。
  7. 前記GPSレシーバーは、
    アンテナから前記時報信号を受信するとGPS_1PPSを生成するGPSエンジンと、
    前記クロックを発生して前記制御部へ出力している発振器と、
    前記クロックから前記1PPS信号を生成して前記制御部へ出力している分周器と、
    前記GPS_1PPSと前記1PPS信号の位相を比較する位相比較部と、
    前記位相比較結果により前記クロックの位相を調整できるように前記発振器へ接続され、また前記制御部と各種データ通信や制御コマンドを授受し、前記位相比較結果により所定時間が経過しても前記GPS_1PPSを認識できない場合には、前記時報信号を受信できていないと見做して、前記アラーム情報を発生する位相制御部とで構成されていることを特徴とする請求項3〜6記載の時刻同期回路。
  8. 前記基地局同士を有線接続しておき、他の基地局から前記時報信号の時刻情報を取得する際の送信時刻情報を得ることを特徴とする請求項1〜7記載の時刻同期回路。
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