JP2010002256A - 非線形ラマン散乱光測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】非線形ラマン散乱光測定装置において、被検体を構成する複数種類の分子を一度に分析する際の測定速度を高める。
【解決手段】光照射部10により、ポンプ光Lpと、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互に異なる波長を持つ複数のピークを有し、かつポンプ光Lpよりも波長が長いストークス光Lsとを被検体1に同時に照射する。スペクトル取得部60が、ストークス光Lsの照射を受けた被検体1から発せられる非線形ラマン散乱光Lcのスペクトルを取得する。
【選択図】図1

Description

本発明は非線形ラマン散乱光測定装置に関し、詳しくは、被検体から発せられる非線形ラマン散乱光のスペクトルを取得する非線形ラマン散乱光測定装置に関するものである。
従来より、レーザ光の照射を受けた被検体から発せられるラマン散乱光を分光して得られたスペクトルを分析するラマン分光法が知られている。被検体から発せられるラマン散乱光は物質固有のものであることから、被検体を構成する分子を分析することができるので、材料評価や新物質創製等に広く活用されている。このラマン分光法には、以下のような方式が知られている。
すなわち、ポンプ光とこのポンプ光よりも波長が長いストークス光を被検体へ同時に照射して、この被検体から上記ポンプ光よりも波長が短い非線形ラマン散乱光を発生させる。そして、この非線形ラマン散乱光を分光してスペクトルを得、このスペクトルの示す光強度分布におけるピークの値(極大値)とこのピークの示すラマンシフト量とから被検体を構成する分子を分析する非線形ラマン散乱光測定方式が知られている(特許文献1参照)。
この非線形ラマン散乱光測定方式によれば、ポンプ光およびストークス光の照射を受けた被検体から発せられる蛍光と非線形ラマン散乱光との波長範囲が重ならないので、非線形ラマン散乱光に混入するノイズを抑制することができ、より正確に被検体を構成する分子を分析することができる。
さらに、この非線形ラマン散乱分光法には、ポンプ光と特定の1つの波長に光強度を持つストークス光とを被検体に照射するナローバンド方式や、ポンプ光とそのナローバンド方式よりも広い波長範囲に光強度を持つストークス光とを被検体に照射するブロードバンド方式が知られている。
ブロードバンド方式では、ポンプ光とストークス光とを被検体へ照射したときに、それらの波長差に応じた様々な振動数のうなりが同時に生じ、それらのうなりに共鳴した複数種類の分子の共鳴振動を示す複数のピークが非線形ラマン散乱光のスペクトル中に生じる。そのスペクトルを調べることにより、被検体を構成する複数種類の分子を一度に特定することができる。
また、ナローバンド方式では、ポンプ光とストークス光とを被検体へ同時に照射したときに、それらの波長差に応じた1種類の振動数のうなりが生じ、そのうなりに共鳴した1種類の分子の共鳴振動を示すピークが非線形ラマン散乱光のスペクトル中に生じる。そのスペクトルを調べることにより、被検体を構成する1種類の分子を詳しく分析することができる。
このように、ナローバンド方式によれば、被検体を構成する分子のうちの1種類の分子を詳しく分析することができる。一方、ブロードバンド方式は、ナローバンド方式ほど高い精度で分子を分析することはできないが、被検体を構成する多種類の分子を一度に特定することができる。
特開2004−61411号明細書
ところで、複数種類の分子をナローバンド方式と同等の測定速度で一度に分析したいという要請がある。これに対して、例えば、ブロードバンド方式においてストークス光の光強度を高めることにより、被検体から発せられる非線形ラマン散乱光のS/Nを高めて測定速度を向上させることが考えられる。しかしながら、十分なS/Nを有する非線形ラマン散乱光を発生させには、ストークス光の光強度を広い波長範囲に亘って全体的に高める必要があり、このストークス光が被検体を変質させるほどの光強度に達してしまうことがある。すなわち、ブロードバンド方式は、複数種類の分子を一度に特定することができる点では優れているが、ナローバンド方式と同等の測定速度を得ようとすると、分子を変質させてしまうという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被検体を構成する複数種類の分子を一度に分析する際の測定速度を高めることができる非線形ラマン散乱分光法を提供することを目的とするものである。
本発明の非線形ラマン散乱光測定装置は、ポンプ光とこのポンプ光よりも波長が長くエネルギの小さいストークス光とを被検体に同時に照射するための光照射手段と、ポンプ光とストークス光の照射を受けた被検体から発せられる非線形ラマン散乱光のスペクトルを取得するスペクトル取得手段とを備えた非線形ラマン散乱光測定装置であって、ストークス光が、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互に異なる波長を持つ複数のピークを有するものであることを特徴とするものである。
前記ストークス光は、互に波長が隣り合う2つのピーク間の波長範囲内に、その2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有するものとすることが望ましい。
前記狭帯域のストークス光は、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有するものであり、互に波長が隣り合う2つのピークの間の波長範囲内に、非線形ラマン散乱光を実質的に発生させない光強度となる波長範囲を有するものであることが望ましい。
なお、線形ラマン散乱光を実質的に発生させないストークス光の光強度とは、分子を分析するためのスペクトルの取得を可能とする光強度を有する非線形ラマン散乱光を発生させることができない光強度を意味するものである。
前記光照射手段は、ストークス光のピーク波長を変更するためのピーク波長変更手段を有するものとすることができる。
前記非線形ラマン散乱光測定装置は、被検体を、ポンプ光およびストークス光と交わる平面に沿って、ポンプ光およびストークス光に対して相対的に移動させる移動手段と、移動手段による移動と光照射手段によるポンプ光およびストークス光の照射とを実行しつつ、被検体から発せられた非線形ラマン散乱光をスペクトル取得手段で取得するように制御する制御手段とを備えたものとすることもできる。
前記ポンプ光およびストークス光は、1つの光源から発せられた光から生成されたものとしてもよいし、それぞれが個別に用意された複数の光源から発せられた各光から生成されたものとしてもよい。
本発明の非線形ラマン散乱光測定装置によれば、ストークス光を、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互に異なる波長を持つ複数のピークを有するものとしたので、分子を変質させることなく、従来よりも高速度で複数種類の分子を一度に分析することができる。すなわち、複数種類の分子を個別に分析するために定められた波長においてストークス光の光強度を高めるように複数のピークを設定できるので、ストークス光の光強度を広い波長範囲に亘って全体的に高めて被検体を変質させるような高い光強度にすることなく、複数種類の分子を同時に分析する際の測定を高速化することができる。
より詳しくは、複数種類の分子を個別に分析するために定められた各波長においてストークス光の光強度を高めるように複数のピークを設定し、一方で、上記分子の分析に不要な、互に波長が隣り合う2つのピーク間の波長においてストークス光の光強度を低下させることにより、複数種類の分子を同時に分析する際の測定時間を短縮しつつ、ストークス光の持つ光強度の総量を抑制して被検体を変質させないようにすることができる。これにより、被検体を構成する複数種類の分子を一度に分析する際の測定効率を高めることができる。
また、ストークス光を、互に波長が隣り合う2つのピークの間の波長範囲内に、その2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有するものとすれば、測定対象とする分子を分析する測定に混入するノイズを低減することができ、かつ、ストークス光の光強度が低減されることにより測定対象とする分子に与える損傷をより少なくすることができるので、より確実に、被検体を構成する複数種類の分子の分析速度を高めることができる。
また、光照射手段を、ストークス光のピーク波長を変更するためのピーク波長変更手段を有するものとすれば、複数種類の分子を個別に分析するために定められる複数のピークを有するストークス光をより容易に生成することができる。
さらに、非線形ラマン散乱光測定装置を、ポンプ光およびストークス光と交わる平面に沿って被検体をそのポンプ光およびストークス光に対して相対的に移動させる移動手段と、この移動手段による移動と光照射手段によるポンプ光およびストークス光の照射とを実行しつつ、被検体から発せられた非線形ラマン散乱光をスペクトル取得手段で取得するように制御する制御手段とを備えたものとすれば、被検体を構成する分子をより高速度で測定することができる。
ポンプ光およびストークス光を、1つの光源から発せられた光から生成されるものとすれば、装置構成をより簡素化することができ装置コストを抑制できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の非線形ラマン散乱光測定装置の一例を示すブロック図、図2はCARS光の発生過程のエネルギー準位を示す図である。
初めに、非線形ラマン散乱光の1例であるCARS光(コヒーレントアンチストークスラマン散乱光)について説明する。定性的なCARS光の発生原理は以下のように説明される。
測定対象の分子が存在している領域に、振動数の異なる2つの光、振動数ω1の光と振動数ω2の光を入射させると(ω1>ω2とする)、振動数ω1−ω2のうなりが生じる。このうなりの振動数が測定対象の分子の固有振動数Ωと一致しているとき、分子は共鳴振動を起こす。共鳴振動が起こっている状態で、さらに振動数ω3の光を入射させると、分子の共鳴振動と振動数ω3の光との相互作用により、CARS光が発生する。
図2を参照しながら、エネルギー準位の観点から上記のCARS光の発生過程を辿る。光を入射させる前の分子は、図2で示すエネルギー準位がE1の初期状態にある。ここに振動数ω1の光と振動数ω2の光を入射させると、分子のエネルギー準位は、振動数ω1の光により励起されて仮想的なエネルギー準位E3まで上がり、振動数ω2の光に対応する仮想的な光子放出によりE3からE2に下がると考えられる。この振動数の差ω1−ω2が分子の固有振動数Ωと一致したとき、分子は共鳴振動を起こしてエネルギー準位がE2の励起状態となる。ここにさらに振動数ω3の光を入射させると、分子のエネルギー準位はE2から仮想的なエネルギー準位E4に上昇し、CARS光が発生することにより分子のエネルギー準位はE4からE1に下がることになる。
上記のような3つの励起光、すなわち振動数ω1、ω2、ω3の光の入射により、いわゆる四光波混合過程が生じ、結果として振動数ωas=ω1−ω2+ω3のCARS光が発生する。上記の過程は、振動数ω3の光の代わりに振動数ω1の光を用いて起こすことも可能である。この場合は振動数の異なる2種類の励起光でCARS光を発生でき、このときのCARS光の振動数ωasはωas=2ω1−ω2となる。励起光を2種類にした方が装置構成を簡易化できるため、本発明の非線形ラマン散乱光測定装置100も、振動数の異なる2つの励起光でCARS光を発生させる構成を採っている。なお、一般に、振動数ω1の光はポンプ光、振動数ω2の光はストークス光と呼ばれている。
CARS光は、ω1−ω2が測定対象の分子の固有振動数Ωと一致したときに強く現れる光である。分子の固有振動数Ωは、分子の種類やその構造によって異なるため、CARS光の観測により、非破壊的に測定対象の分子の同定を行うことができる。例えば、ポンプ光の振動数ω1を固定したまま、ストークス光の振動数ω2を掃引して観測することにより、分子の固有振動スペクトルを観察することができ、これにより分子の同定が可能になる。あるいは、検出したい分子の固有振動数Ωが既知の場合は、ω1−ω2=Ωを満たすようにポンプ光、ストークス光の振動数を設定して観測することにより、目的を達成することができる。
CARS光の発生する過程は非線形光学過程であり、基本的には2つの励起光の位相が一致した光強度の高い状態で発生する。また、空間的にもCARS光は、ポンプ光とストークス光が強く集光された部分からのみ発生するため、CARS光による測定は、基本的に高い三次元空間分解能を実現することができる。観測されるCARS光の光強度Iasは、下式(1)に示すように、ポンプ光の光強度Ipの二乗とストークス光の光強度Isの積に比例する。
Ias ∝ Ip2・Is (1)
2種類の励起光でCARS光を発生させる場合は、CARS光の振動数ωas、ポンプ光の振動数ω1、分子の固有振動数Ωは、ωas=ω1+Ωの関係にあるため、CARS光の波長は励起光であるポンプ光の波長より短くなる。これに対して、自家蛍光の波長や、線形光学現象である自発ラマン散乱により生じるストークス散乱光の波長は、励起光の波長より長い。ストークス散乱光を検出する場合、ストークス散乱光と自家蛍光は重畳してしまい分離しにくいのに対して、CARS光は、自家蛍光およびストークス散乱光との分離が容易であり、検出しやすいという利点がある。また、CARS光による測定は、自発ラマン散乱を用いた場合よりも強い信号強度が得られるため、自発ラマン散乱を用いた場合よりも高いスループットを実現することができる。
図1に示す本発明の実施の形態の非線形ラマン散乱光測定装置の1例である非線形ラマン散乱光測定装置100は、生体組織の細胞である被検体1を構成する分子を分析するための測定を行うものである。
この非線形ラマン散乱光測定装置100は、ポンプ光Lpと、このポンプ光Lpよりも波長が長くエネルギの小さいストークス光Lsとを被検体1に同時に照射するための光照射部10と、上記ポンプ光Lpとストークス光Lsの照射を受けた被検体1から発せられる非線形ラマン散乱光のスペクトルを測定するためのスペクトル測定部60とを備えている。上記ストークス光Lsは後述する狭帯域ストークス光Lsnに対応するものである。
ここでは、スペクトル測定部60により、非線形ラマン散乱光としてCARS光Lc(コヒーレントアンチストークスラマン散乱光)のスペクトルを得、このCARS光Lcのスペクトルを用いて被検体1を構成する分子を分析する場合について説明する。
光照射部10は、ポンプ光Lpおよびストークス光Lsを生成するための超短パルス光からなるレーザ光を発する光源である光源部20と、このレーザ光からポンプ光Lpを生成し射出するポンプ光照射部30と、そのレーザ光からストークス光Lsを生成し射出するストークス光照射部40と、ポンプ光Lpとストークス光Lsを合波させ、合波させた合波パルス光Lgを被検体1上に走査させる合波走査部50とを備えている。
光源部20は、高ピークパワーのパルス光を射出するレーザ21と、レーザ21から出射されたパルスレーザ光を分岐させて、ポンプ光照射部30とストークス光照射部40の両方に入射させるためのビームスプリッタ22とを有している。
レーザ21は、超短パルス光を発生するレーザである。より詳しくは数十fs(フェムト秒)〜数十ps(ピコ秒)の時間範囲でパルス光を発生するレーザである。このレーザ21としては、例えば、波長800nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数80MHz、ピークパワー250KW、平均パワー2Wのチタンサファイアレーザを用いることができる。
ポンプ光照射部30は、光路の伝播方向に沿って、光路折り曲げ用のミラー31、光路折り曲げ用のミラー32、光遅延部35、光路折り曲げ用のミラー33、バンドパスフィルタ36、光減衰器37をこの順に有している。
光路折り曲げ用のミラー31は、ビームスプリッタ22で分岐された超短パルス光を光遅延部35に導くものである。
光遅延部35は、ポンプ光Lpとストークス光Lsとを被検体1に照射するタイミングを調節するものである。ポンプ光Lpおよびストークス光Lsは、超短パルス光であるため、異なる光路を通ると被検体1を照射するタイミングがずれる。そのため、ポンプ光Lpおよびストークス光Lsのいずれか一方の光路に光遅延部35を設けることにより、ポンプ光Lpおよびストークス光Lsを同時に被検体1へ照射することができる。
ディレイラインであるこの光遅延部35は、互いに直交する2つの反射面を有するミラーからなり、このミラーを図1中の両矢印Hの示す方向へ移動させることにより、ミラー31〜光遅延部35〜ミラー33の間の光路長を変化させて、ポンプ光Lpの伝播時間が調節されるように構成されている。なお、光遅延部35は、ポンプ光Lpとストークス光Lsとが被検体1へ同時に照射されるように調節できるものであれば上記構成に限定されず、別の構成を採用してもよく、また、ストークス光照射部40におけるストークス光Lsの光路に光遅延部35を設けてもよい。
バンドパスフィルタ36は、レーザ21から出射されビームスプリッタ22で分岐された上記超短パルス光を透過させて波長幅を狭めるものであり、バンドパスフィルタ36を透過させることにより波長幅を例えば2nmとすることができる。
光減衰器37は、バンドパスフィルタ36を通った超短パルス光の光強度を減衰させるものである。
レーザ21から出射された超短パルス光を、上記光遅延部35、バンドパスフィルタ36、光減衰器37等に通してポンプ光Lpが生成される。
なお、ここでは、光減衰器37により、ポンプ光Lpの平均パワーが被検体1において30mW以下になるように調節される。
ストークス光照射部40は、レーザ21から出射されビームスプリッタ22で分岐された上記超短パルス光の波長帯域を広帯域化して射出する帯域拡張部43と、帯域拡張部43から射出された広帯域化された超短パルス光の波長範囲の長波長側のみを透過させるロングパスフィルタ45と、後述する狭帯域化部46および光減衰器48とを備えている。
帯域拡張部43としては、上記レーザ21であるチタンサファイアレーザから出射された波長800nmの光を、波長500〜1500nmの広帯域光に変換するPCF(Photonic Crystal Fiber:フォトニック結晶ファイバ)を採用することができる。なお、帯域拡張部43として、上記PCFと同様の機能を有するもの、例えば非線形ファイバ等を用いてもよい。
ロングパスフィルタ45は、帯域拡張部43から射出された波長500〜1500nmの広帯域化された光が入射され波長810nmより長波長側の光を透過させる。
上記レーザ21から出射された超短パルス光を、帯域拡張部43、ロングパスフィルタ45に通して広帯域ストークス光Lswが生成される。
さらに、このストークス光照射部40は、狭帯域化部46と光減衰器48と光路を折り曲げるためのミラー49Mとを備えている。
狭帯域化部46は、ロングパスフィルタ45から射出された広帯域ストークス光Lswを通して狭帯域化させることにより、光強度が減衰される前の狭帯域のストークス光を生成する。
光減衰器48は、狭帯域化部46から射出された狭帯域のストークス光を通してその光強度を減衰させる。
すなわち、広帯域ストークス光Lswを、狭帯域化部46と光減衰器48に通すことにより、所定の光強度を有する狭帯域ストークス光Lsnが生成される。この狭帯域ストークス光Lsnは、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互いに異なる波長を持つ複数のピークを有するものである。
なお、ここでは、光減衰器48により、狭帯域ストークス光Lsnの平均パワーが被検体1において30mW以下になるように調節される。
狭帯域化部46としては、複数の透過波長帯域を有するバンドパスフィルタや、透過波長帯域が可変可能なフィルタ等を採用することができる。
光減衰器48を通して生成された狭帯域ストークス光Lsnは、光路を折り曲げるためのミラー49Mを通ってストークス光照射部40から射出される。
合波走査部50は、ポンプ光照射部30から射出されたポンプ光Lpとストークス光照射部40から射出された狭帯域ストークス光Lnsとを合波させるビームスプリッタ51と、この合波された合波パルス光Lgを被検体1上に2次元走査させるための第1のガルバノミラー52および第2のガルバノミラー53と、合波パルス光Lgを被検体1上に集光させる対物レンズ54とを備えている。
なお、合波パルス光Lgは、狭帯域ストークス光Lsnとポンプ光Lpとを合波させてなる超短パルス光である。
対物レンズ54は、上記合波パルス光Lgを高密度に集光して被検体1内の微小領域に照射する。ここでは対物レンズ54として、高NA(NA:Numerical Aperture:開口数)のものを用いている。この対物レンズ54には、例えば、倍率60倍、NA1.2のものを用いることができ、この場合には照射領域のサイズをサブミクロンオーダーにまで絞ることができる。
したがって、合波走査部50により、高密度に集光させた合波パルス光Lgを被検体1上に2次元走査させることができる。
なお、合波パルス光Lgを走査させる走査系は、ガルバノミラーに限らず、例えばガルバノミラーとポリゴンミラーとを組み合わせて2次元走査させたり、被検体1を移動させつつ合波パルス光Lgを1方向にのみ走査させたりするものを採用できる。さらに、合波パルス光Lgをシリンドリカルレンズに通して線状の合波パルス光Lgを生成し、この線状の合波パルス光Lgに対して被検体1を、この合波パルス光Lgが線状に延びる方向と交わる方向へ相対的に移動させるように走査系を構成してもよい。
なお、上記被検体1を、ポンプ光およびストークス光と交わる平面に沿って、そのポンプ光およびストークス光に対して相対的に移動させる移動手段である合波走査部50の動作や、この合波走査部50による移動と光照射部によるポンプ光およびストークス光の照射とを実行しつつ、スペクトル取得部が被検体から発せられた非線形ラマン散乱光のスペクトルを取得する2次元走査等に係る動作は、制御手段であるコントローラ90によって制御される。
スペクトル取得部60は、合波パルス光Lgnの照射を受けた被検体1から発せられたCARS光Lcのスペクトルを取得するためのものである。
このスペクトル取得部60は、対物レンズ61と、ポンプ光Lpを遮断するためのカットフィルタ62と、ポンプ光Lpの波長よりも短波長側に生じるCARS光Lcを選択的に透過させるためのショートパスフィルタ63と、ショートパスフィルタ63を通ったCARS光Lcの光路を折り曲げるためのミラー64とを備えている。
対物レンズ61は、被検体1上の1点から発せられた前方散乱光を平行光束にするものである。この対物レンズ61は、例えば、合波走査部50を構成する対物レンズ54と同じ仕様のものを用いることができる。
また、ショートパスフィルタ63が、ストークス光Ls、被検体1から発せられた自家蛍光等を遮断する。
さらに、スペクトル取得部60は、CARS光Lcを分光する分光器65と、分光器65で分光されたCARS光Lcのスペクトルを検出するための検出器66とを備えている。
分光器65としてはグレーティング等を用いることができる。また、検出器66としては、低ノイズで高増幅型でCARS光Lcの検出時間を短縮することができる超高感度分光用のEM−CCD(Electron Multiplying CCD)を採用することができる。また、検出器66として、フォトマルチプライヤーや、アバランシェフォトダイオード等を用いることもできる。
なお、ここでは、被検体1を間に挟んで合波走査部50を構成する対物レンズ54とスペクトル取得部60を構成する対物レンズ61とが対向配置されている。
分析部71は、検出器66から出力されたCARS光Lcのスペクトルを示す信号を非線形ラマン分光法に基づいて信号処理し、被検体1を構成する分子を分析して被検体1の内部構造の情報を取得するものである。
分析部71としては、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムを用いることができる。なお、被検体1の内部構造とは、細胞を構成する各成分(例えばタンパク質や脂質、無機質等)の分布や各成分の割合等を意味する。さらに、分子の種類に依存する官能基、あるいは分子の立体構造に応じて発現される機能等に関する情報も得ることができる。
表示部72は、分析部71で得られた分析結果を表示するものであり、例えば液晶モニタ装置等により構成できる。
なお、上記コントローラ90は、非線形ラマン散乱光測定装置100全体の動作やそのタイミング等を制御するものである。
以下、上記非線形ラマン散乱光測定装置の作用について説明する。
図3は縦軸にパワーP(光強度)、横軸に波長λを示す座標上に、互いに波長の異なる複数のピークを持つ狭帯域ストークス光Lsn、ポンプ光Lp、および上記狭帯域ストークス光Lsnとポンプ光Lpの同時照射で発生したCARS光Lcの各スペクトルを示す図である。
上記注目する複数種類の分子を個別に分析するために定められた互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光Lsnが生成されるように、狭帯域化部46を設定する。そして、ストークス光照射部40から射出させた狭帯域ストークス光Lsnを合波走査部50のビームスプリッタ51へ入射させる。
狭帯域ストークス光Lsnとポンプ光Lpとはビームスプリッタ51を通って合波される。合波された合波パルス光Lgは合波走査部50を通って被検体1に照射され、この被検体1上を2次元状に走査する。
合波パルス光Lgの走査により被検体1から発生したCARS光Lcを含む光は、カットフィルタ62とショートパスフィルタ63とを通ってCARS光Lcのみが抽出される。抽出されたCARS光Lcは、分光器65で分光されて、検出器66がこのCARS光Lcのスペクトルを検出する。
このようにして検出されたCARS光Lcのスペクトルを示す信号は、分析部71によって分析され被検体1を構成する複数の分子が詳しく分析される。
上記分析により被検体1の内部構造の情報が取得される。そして、被検体1である細胞が正常であるか異常であるか等の判別が行われ、その結果が表示部72に表示される。
上記構成を有する非線形ラマン散乱光の測定は、非破壊的な分析であるため、細胞等の生体の分析に適している。さらに、この測定は、分子の固有振動に基づくものであり、高い空間分解能を有するので、細胞中の局所的な内部構造や機能を詳しく分析することができる。
図4に、非線形ラマン散乱光測定装置において取得される非線形ラマン散乱光のスペクトルの一例を示す。図4の横軸は波数(波数=1cm/波長、すなわち、1センチメートルあたりの波の数、単位はカイザー)、縦軸は相対信号強度である。横軸の波数は、励起光の振動数とCARS光の振動数との差に対応し、一般にラマンシフトと呼ばれる量である。縦軸の相対信号強度はCARS光の光強度に対応する。
図4中の符号Nは正常部位から得られた非線形ラマン散乱光のペクトルを示しており、図4中の符号ANは癌部位から得られたラマンスペクトルを示している。癌細胞に関連した細胞の構成要素としては、アミドI、アミドIII、脂質由来物質が下記のラマンシフトを有するものであることが知られている。
アミドI :1655〜1670cm−1
アミドIII:1265〜1280cm−1
脂質由来物質:1440〜1450cm−1
:2800〜2880cm−1
:2890〜2970cm−1
図4では、上記ラマンシフトに見られる各ピークに縦線および横線からなる補助線を付している。図4中に符号ANで示すスペクトルは、上記のアミドI、アミドIII、脂質由来物質に対応する波数において強度の大きい鋭いピークが見られるが、図4中に符号Nで示すスペクトルではこれらの波数におけるピークは強度が小さく鈍った形状となっている。上記の癌細胞に関連した構成要素は癌細胞にも正常細胞にも存在するが、細胞が癌化すると細胞内で構成バランスが崩れ、非線形ラマン散乱光のペクトルが相対的に変化する。この相対的な変化を検出することにより癌細胞と正常細胞を区別することができる。
上記実施の形態で示したような非線形ラマン散乱光測定装置は、例えば、組織に含まれる正常細胞と癌細胞を分離する際に使用可能であり、細胞へのダメージが軽微であるため、測定に用いられた細胞を培養して株化細胞の生成や、抗癌剤の効果検証等の実験に用いることができる。例えば、培養した細胞を分析して、細胞の大きさや構造に関する情報を得ることができる。
さらに、従来、被検体1から発せられたCARS光の検出は、1受光画素当たり150ms程度の電荷蓄積時間が必要であったが、上記のように狭帯域ストークス光Lsnを用いることにより、効率良くCARS光を発生させることができ、1受光画素当たりの電荷蓄積時間を10ms程度に短縮することができる。
また、本発明の非線形ラマン散乱光測定装置は、癌腫瘍を摘出する際の判断材料を提供することも可能である。癌腫瘍の摘出手術では、癌細胞が患者の身体に残存すると再発の可能性が高まり好ましくないが、再発を恐れるあまり、過剰に組織を切除するのも患者の身体の負担が増大し好ましくない。そこで、摘出腫瘍が接していた領域の組織を微少量切り取り、本発明の非線形ラマン散乱光測定装置を用いて、癌細胞の有無を調べることができる。癌細胞が検出された場合はさらなる切除が必要と判断し、癌細胞が検出されなかった場合は摘出が十分であったと判断することができる。
図5は、光照射部を構成するための各構成要素の例と、各構成要素の組み合わせの適合性とを示すものである。すなわち、光源の数、光の分配方式、波長選択方式、合波方式、およびそれらの構成要素の組み合わせの適合性を示す図である。適合性の欄に記載されている「◎」、「○」、「△」、「×」の記号は、この順に適合性が低下することを示すものである。
例えば、光源の数を1以上、光の分配方式をビームスプリッタ、波長選択方式をバンドパスフィルタ、および合波方式をビームスプリッタ合波としたときの適合性の記号は「◎」であり、適合性は非常に良好である。
また、例えば、光源の数を複数、光の分配方式を「なし」、波長選択方式を波長チューナブルフィルタ、および合波方式をファイバ合波としたときの適合性の記号は「×」であり、適合性は非常に低い。
以下に、狭帯域化部46の具体的な構成について説明する。すなわち、広帯域の光から、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互に異なる波長を持つ複数のピークを有するストークス光(ここでは狭帯域ストークス光)を生成するための種々の構成およびその作用について図6から図9を用いて説明する。
図6は第1の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図、図7は第2の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図、図8は第3の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図、図9は第4の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図である。なお、各図において、同様の機能を有する構成要素には同じ符号を用いている。例えば、異なる性能を有する空間光変調器であっても各狭帯域ストークス光の生成方式毎に繰り返し同じ符号を用いている。
図6に示す第1の狭帯域ストークス光の生成方式は以下のような方式である。
すなわち、超短パルス光である広帯域の光Lwを、複数のビームスプリッタBsa、Bsb・・・に通して分岐させて複数の広帯域の光Lwa、Lwb・・・を得、広帯域の光Lwa、Lwb・・・それぞれを互に波長特性の異なるバンドパスフィルタFa、Fb・・・へ通して複数の互に異なる波長を持つ狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・を生成する。各バンドパスフィルタFa、Fb・・・の半値幅は2〜10nmとすることができる。
なお、バンドパスフィルFa、Fb・・・を周囲に配置してなるフィルタホイールを備えるようにし、フィルタホイールの中心を通る回転中心軸の回りにこのフィルタホイールを回転させてバンドパスフィルFa、Fb・・・を回転移動させることにより、バンドパスフィルタの交換を行うようにすることもできる。
そして、超短パルス光である狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・の一部または全部を光遅延部Dea、Deb・・・(ディレイライン)および減衰器Ata、Atb・・・(ATT:アッテネータ)に通して、各光成分Lna、Lnb・・・の被検体への照射タイミングを同期させるとともにそれらの光強度を調節する。
その後、各光成分Lna、Lnb・・・を複数のビームスプリッタBpa、Bpb・・・へ通して合波させ、第1の狭帯域ストークス光Lsnを生成する。
なお、広帯域の光Lwとしては、上記広帯域ストークス光Lsw等を用いることができる。
すなわち、上記のように狭帯域化部46を構成し、広帯域ストークス光Lswの波長領域中の一部分を切り出すことにより、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。これにより、互に波長が隣り合う2つのピーク間の各波長範囲内に、その2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
図7に示す第2の狭帯域ストークス光の生成方式は以下のような方式である。
すなわち、超短パルス光である広帯域の光Lwを、複数のビームスプリッタBsa、Bsb・・・に通して分岐させて複数の広帯域の光Lwa、Lwb・・・を得、広帯域の光Lwa、Lwb・・・それぞれを互に波長特性の異なるチューナブルフィルタTa、Tb・・・へ通して複数の互に異なる波長を持つ狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・を生成する。
そして、超短パルス光である狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・の一部または全部を光遅延部Dea、Deb・・・(ディレイライン)および減衰器Ata、Atb・・・(ATT:アッテネータ)に通して、各光成分Lna、Lnb・・・の被検体への照射タイミングを同期させるとともにそれらの光強度を調節する。
その後、各光成分Lna、Lnb・・・を複数のビームスプリッタBpa、Bpb・・・へ通して合波させ、第2の狭帯域ストークス光Lsnを生成する。
なお、広帯域の光Lwとしては、上記広帯域ストークス光Lsw等を用いることができる。
すなわち、上記のように狭帯域化部46を構成し、広帯域ストークス光Lswの波長領域中の一部分を切り出すことにより、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。これにより、互に波長が隣り合う2つのピークの間の各波長範囲内に、その2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
図8に示す第3の狭帯域ストークス光の生成方式は以下のような方式である。
すなわち、互に異なる波長の超短パルス光を射出する複数種類のレーザ光源Lea、Leb・・・と、各レーザ光源Lea、Leb・・・から超短パルス光を射出させるタイミングを定める同期信号Sgを発生する同期信号発生部Syとを用意する。
同期信号発生部Syの同期信号Sgに同期させて各レーザ光源Lea、Leb・・・から超短パルス光を射出させる。
複数のレーザ光源Lea、Leb・・・から射出させた超短パルス光である、互いに異なる波長を持つ各光成分Lna、Lnb・・・の一部または全部を光遅延部Dea、Deb・・・(ディレイライン)および減衰器Ata、Atb・・・(ATT:アッテネータ)に通して、各光成分Lna、Lnb・・・の被検体への照射タイミングを同期させるとともにそれらの光強度を調節する。
その後、各光成分Lna、Lnb・・・を複数のビームスプリッタBpa、Bpb・・・へ通して合波させ、第3の狭帯域ストークス光Lsnを生成する。
すなわち、上記のようにストークス光照射部40を構成し、複数のレーザ光源から射出させた超短パルス光を合成することにより、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。なお、上記複数のレーザ光源それぞれは、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた超短パルス光を射出するものである。これにより、互に波長が隣り合う2つのピークの間の各波長範囲内に、非線形ラマン散乱光を実質的に発生させない光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
図9に示す第4の狭帯域ストークス光の生成方式は以下のような方式である。
すなわち、超短パルス光である小径の広帯域の光LwをミラーM1で反射させグレ−ティングG1へ通して、この広帯域の光Lwが波長に応じて空間的に分離されるように発散させる。
グレ−ティングされ空間的に分離されるように発散せしめられた広帯域の光Lwは、コリメートレンズCo1を通って大径の平行光束となる。
大径の平行光束となった広帯域の光Lwは空間光変調器Sm1を通って波長が選択され、互に異なる波長にピークを持つ2種類の光成分Lna1、Lnb1が抽出される。
なお、空間光変調器Sm1としては、例えば液晶パネル型変調器を用いることができ、その液晶パネルの変調パターン(光を空間変調させるためのパターン)を電気的な制御によって変更することにより、抽出する光成分のピーク波長を選択することができる。
空間光変調器Sm1から射出され波長が選択された大径の光成分Lna、Lnbは、集光レンズCo2を通して集光され、さらにグレーティングG2を通して小径の平行光束からなる同一光路を通る光成分Lna1、Lnb1である第4の狭帯域ストークス光Lsn1が生成される。この第4の狭帯域ストークス光Lsn1はミラーM2で反射され伝播せしめられる。すなわち、広帯域の光の波長領域中の一部分を切り出した光成分を合成して、互いに異なる波長を持つ2つのピークを有する狭帯域のストークス光を生成することができる。
なお、大径の平行光束となった広帯域の光Lw中へ空間光変調器Sm2が配された場合には、互に異なる波長にピークを持つ2種類の光成分Lnab2、Lnc2が抽出され、これらの成分を合成してなる第4の狭帯域ストークス光Lsn2が生成される。
光成分Lnab2の波長範囲は、光成分Lnc2の波長範囲よりも広い。すなわち、波長範囲が広い光成分Lnab2を用いると、波長範囲が狭い光成分Lnc2よりも多くの分子を一度に分析することができる。
さらに、大径の平行光束となった広帯域の光Lwの光路中へ空間光変調器Sm3が配された場合には、互に異なる波長にピークを持つ3種類の光成分Lna3、Lnb3、Ln3が抽出され、これらの光成分を合成してなる第4の狭帯域ストークス光Lsn3を生成することができる。すなわち、広帯域の光の波長領域中の一部分を切り出した光成分を合成して、互いに異なる波長を持つ3つのピークを有する狭帯域のストークス光を生成することができる。
なお、広帯域の光Lwとしては、上記広帯域ストークス光Lsw等を用いることができる。
すなわち、上記のように狭帯域化部46を構成し、広帯域ストークス光Lswの波長領域中の一部分を切り出すことにより、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。これにより、互に波長が隣り合う2つのピークの間の各波長範囲内に、非線形ラマン散乱光を実質的に発生させない光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
なお、空間光変調器Sm1、Sm2、およびSm3は、1つの空間光変調器を光路中に配置したままの状態で、この空間光変調器を制御することにより形成することができる。すなわち、1つの空間光変調器について変調パターンを制御することにより、所望のピークの波長が得られるように変調パターンが形成された空間光変調器Sm1、Sm2、およびSm3を得ることができる。なお、上記空間光変調器の変調パターンを制御するための制御部46Hを狭帯域化部46に備えるようにすることができる。
図10は、本発明の非線形ラマン散乱光測定装置を適用した内視鏡装置を示す図である。なお、この内視鏡装置にかかる説明および図面に関し、前述の実施形態の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。より具体的には、非線形ラマン散乱光測定装置を適用した内視鏡装置101を構成する光照射部10のガルバノミラー53から合波パルス光Lgを射出させるまでに適用される構成要素とその作用、および、CARS光Lcを含む光がスペクトル測定部60のカットフィルタ62に入射した後に適用される構成要素とその作用については上述の非線形ラマン散乱光測定装置と同様なのでその説明は省略する。
上記非線形ラマン散乱光測定装置を適用した内視鏡101において、ガルバノミラー53から射出された合波パルス光Lgは、ミラー78で折り曲げられダイクロイックミラー79を通して光ファイバユニット80の一端のレンズ部81へ入射せしめられる。
光ファイバユニット80のレンズ81部へ入射した合波パルス光Lgは、このレンズ部81および光ファイバ82通って、光ファイバユニット80の他端に配された高NAのレンズ部83から射出され被検体1に入射する。
この合波パルス光Lgの照射を受けた被検体1から発せられたCARS光Lcを含む後方散乱光は、他端のレンズ部83に再び入射し、光ファイバ82を通って一端のレンズ部81から射出される。
レンズ部81から射出されたCARS光Lcを含む光成分の一部は、ダイクロイックミラー79で反射せしめられてカットフィルタ62に入射する。
その後のCARS光Lcを含む光成分の一部の処理は上述の非線形ラマン散乱光測定装置と同様である。
以上、本発明による非線形ラマン散乱光測定装置および方法の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限りにおいて、種々変更することが可能である。
なお、上記実施形態では、非線形ラマン散乱光として、CARS光を例にとり説明したが、別の散乱光、例えば、誘導ラマン散乱光やハイパーラマン散乱光等を用いることも可能である。
本発明の非線形ラマン散乱光測定装置の一例を示すブロック図 CARS光の発生過程のエネルギー準位を示す図 狭帯域ストークス光、ポンプ光、およびCARS光の各スペクトルを示す図 非線形ラマン散乱光測定装置において取得される非線形ラマン散乱光のスペクトルの一例を示す図 光照射部の構成要素の例と各構成要素の組み合わせの適合性とを示す図 第1の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図 第2の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図 第3の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図 第4の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図 本発明の非線形ラマン散乱光測定装置を適用した内視鏡装置を示す図
符号の説明
1 被検体
10 光照射部
20 光源部
30 ポンプ光照射部
40 ストークス光照射部
50 合波走査部
60 スペクトル取得部
100 非線形ラマン散乱光測定装置
Lp ポンプ光
Lsw 広帯域ストークス光
Lsn 狭帯域ストークス光
Lc 非線形ラマン散乱光

Claims (5)

  1. ポンプ光と該ポンプ光よりも波長が長くエネルギの小さいストークス光とを被検体に同時に照射するための光照射手段と、
    前記照射を受けた前記被検体から発せられる非線形ラマン散乱光のスペクトルを取得するスペクトル取得手段とを備えた非線形ラマン散乱光測定装置であって、
    前記ストークス光が、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互に異なる波長を持つ複数のピークを有するものであることを特徴とする非線形ラマン散乱光測定装置。
  2. 前記ストークス光が、互に波長が隣り合う2つの前記ピーク間の波長範囲内に、該2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有するものであることを特徴とする請求項1記載の非線形ラマン散乱光測定装置。
  3. 前記光照射手段が、前記ストークス光の前記ピーク波長を変更するためのピーク波長変更手段を有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の非線形ラマン散乱光測定装置。
  4. 前記被検体を、前記ポンプ光およびストークス光と交わる平面に沿って、該ポンプ光およびストークス光に対して相対的に移動させる移動手段と、
    前記移動手段による移動と前記光照射手段によるポンプ光およびストークス光の照射とを実行しつつ、前記被検体から発せられた非線形ラマン散乱光を前記スペクトル取得手段で取得するように制御する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の非線形ラマン散乱光測定装置。
  5. 前記ポンプ光および前記ストークス光が、1つの光源から発せられた光から生成されるものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の非線形ラマン散乱光測定装置。
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