JP2009258071A - 粒子分析装置および粒子分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒子分析装置において、被検粒子へのダメージを極力抑制しつつ、被検粒子の内部構造に基づく分析を可能にする。
【解決手段】粒子分析装置100は、励起光を発生する光源部1と、励起光を被検粒子である細胞8を含む試料液71の流れに照射する照射光学系2と、励起光が照射されることにより細胞8から生じる非線形ラマン散乱光を検出する検出部4と、検出部4からの信号を処理して細胞8を分析する分析部5とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】粒子分析装置100は、励起光を発生する光源部1と、励起光を被検粒子である細胞8を含む試料液71の流れに照射する照射光学系2と、励起光が照射されることにより細胞8から生じる非線形ラマン散乱光を検出する検出部4と、検出部4からの信号を処理して細胞8を分析する分析部5とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、粒子分析装置および粒子分析方法に関し、より詳しくは、フローサイトメーター等において非線形ラマン分光法を用いて被検粒子を分析する粒子分析装置および粒子分析方法に関する。
細胞等の粒子を分析する装置として、フローサイトメトリーの手法を用いた装置(フローサイトメーター)が用いられている。従来知られているフローサイトメーターでは、通常、サンプルから採取された大量の細胞を試料液流中で一列に整列させて流し、試料液流中の各細胞にレーザ光等の光を照射し、細胞から発せられた蛍光や散乱光を細胞ごとに検出することにより、個々の細胞の同定や、正常・異常等の判別を行う。フローサイトメーターには、細胞を分類して回収する分取機能を有するソータータイプのもの(一般にセルソーターと呼ばれる)と、分析機能のみを有し分取機能を有しないアナライザタイプのものがある。フローサイトメーターを用いることにより、大量の細胞を高速に分析することが可能になり、統計的な情報を短時間で得ることが可能になる。
下記特許文献には、共焦点光学系を有するフローサイトメーターにおいて、細胞から2光子励起により発せられる蛍光を検出することにより、微小サイズの細胞を分析する方法が記載されている。
特開2004−347608号公報
ところで、従来のフローサイトメーターで分析に用いられている散乱光は、主に回折散乱光やミー散乱光であり、これらからは、細胞の大きさに関する情報しか得ることができない。細胞の同定や正常・異常等の判別を行うためには内部構造の情報が必要であり、従来ではその目的で蛍光が用いられてきた。一般に、細胞からの蛍光を観測するには、細胞を色素で染色しておくことが必要である。しかしながら、細胞にとって色素は有害物質であり、染色により細胞は少なからずダメージを受け、細胞本来の機能が阻害され、場合によっては死に至ることもある。フローサイトメーターで分取した細胞を用いて、培養実験や抗癌剤の効果検証実験等を行うことを考えると、細胞へのダメージが極力少ないことが望まれる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被検粒子へのダメージを極力抑制しつつ、被検粒子の内部構造に基づく分析が可能な粒子分析装置および粒子分析方法を提供することを目的とする。
本発明の粒子分析装置は、励起光を発生する光源部と、励起光を被検粒子を含む試料液の流れに照射する照射光学系と、励起光が照射されることにより被検粒子から生じる非線形ラマン散乱光を検出する検出部と、該検出部からの信号を処理して被検粒子を分析する分析部とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、「被検粒子」は、細胞に限らず、粒子状で励起光の照射により非線形ラマン散乱光を発生するものであればよい。また、「被検粒子」は、医療・生物分野だけでなく工業分野におけるものでもよい。
本発明の粒子分析装置においては、励起光が、ポンプ光と該ポンプ光よりも波長が長いストークス光とを含み、該ストークス光が、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互いに異なる波長を持つ複数のピークを有するものであるように構成してもよい。
その際に、ストークス光が、互いに波長が隣り合う2つのピーク間の波長範囲内に、該2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有するものとすることが好ましい。すなわち、ストークス光が、互いに波長が隣り合う2つのピークの間の波長範囲内に、非線形ラマン散乱光を実質的に発生させない光強度となる波長範囲を有するものであることが好ましい。ここで、線形ラマン散乱光を実質的に発生させないストークス光の光強度とは、分子を分析するためのスペクトルの取得を可能とする光強度を有する非線形ラマン散乱光を発生させることができない光強度を意味するものである。
また、本発明の粒子分析装置においては、光源部が、ストークス光のピーク波長を変更するためのピーク波長変更手段を有するように構成してもよい。
さらに、本発明の粒子分析装置においては、照射光学系が、試料液の流れの方向と交わる方向における複数の位置に励起光を照射するものであるように構成してもよい。ここで、「複数の位置に励起光を照射」は、同時に照射するものでもよく、あるいは時間をずらして照射するものでもよい。
また、本発明の粒子分析装置においては、励起光を被検粒子上で走査させる走査光学系と、検出部から出力された信号を用いて被検粒子の画像を生成する画像処理部とをさらに備えるように構成してもよい。
また、本発明の粒子分析方法は、被検粒子を含む試料液の流れに励起光を照射し、励起光が照射されることにより被検粒子から生じる非線形ラマン散乱光を検出し、検出による信号を処理して被検粒子を分析するものである。
本発明の粒子分析装置および粒子分析方法は、非線形ラマン散乱光を用いて被検粒子を分析するものであるため、被検粒子を非染色で分析することが可能になり、染色によるダメージを回避することができる。また、非線形ラマン散乱光は、被検粒子を構成する分子の固有振動に基づいて発せられるものであり、分子やその分子の構造に固有のものであるため、本発明の粒子分析装置および粒子分析方法によれば、被検粒子の内部構造に基づいた分析が可能になる。
本発明の粒子分析装置において、励起光が、ポンプ光と該ポンプ光よりも波長が長いストークス光とを含み、該ストークス光が、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互いに異なる波長を持つ複数のピークを有するとした場合には、分子を変質させることなく、従来よりも高速度で複数種類の分子を一度に分析することができる。すなわち、複数種類の分子を個別に分析するために定められた波長においてストークス光の光強度を高めるように複数のピークを設定できるので、ストークス光の光強度を広い波長範囲に亘って全体的に高めて被検粒子を変質させるような高い光強度にすることなく、複数種類の分子を同時に分析する際の測定を高速化することができる。
より詳しくは、複数種類の分子を個別に分析するために定められた各波長においてストークス光の光強度を高めるように複数のピークを設定し、一方で、上記分子の分析に不要な、互いに波長が隣り合う2つのピーク間の波長においてストークス光の光強度を低下させることにより、複数種類の分子を同時に分析する際の測定時間を短縮しつつ、ストークス光の持つ光強度の総量を抑制して被検粒子を変質させないようにすることができる。これにより、被検粒子を構成する複数種類の分子を一度に分析する際の測定効率を高めることができる。
また、本発明の粒子分析装置において、ストークス光を、互いに波長が隣り合う2つのピークの間の波長範囲内に、その2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有するものとした場合には、測定対象とする分子を分析する測定に混入するノイズを低減することができ、かつ、ストークス光の光強度が低減されることにより測定対象とする分子に与える損傷をより少なくすることができるので、より確実に、被検粒子を構成する複数種類の分子の分析速度を高めることができる。
また、本発明の光源部が、ストークス光のピーク波長を変更するためのピーク波長変更手段を有するものとした場合には、複数種類の分子を個別に分析するために定められる複数のピークを有するストークス光をより容易に生成することができる。
本発明の照射光学系が、試料液の流れの方向と交わる方向における複数の位置に励起光を照射するものである場合は、1つの被検粒子の複数の部分について分析することが可能となるため、情報量が増加するとともに分析の信頼度を向上させることができる。
本発明の粒子分析装置が、励起光を被検粒子上で走査させる走査光学系と、検出部から出力された信号を用いて被検粒子の画像を生成する画像処理部とをさらに備える場合は、被検粒子の内部構造に基づいた構成を可視化することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態にかかる粒子分析装置および粒子分析方法について詳細に説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態にかかる粒子分析装置100の構成図を示す。粒子分析装置100は、被検粒子を含む試料液の流れに励起光を照射し、この励起光が照射されることにより被検粒子から生じる非線形ラマン散乱光を検出し、この検出による信号を処理して被検粒子を分析するフローサイトメーターである。ここでは、非線形ラマン散乱光としてCARS光(コヒーレントアンチストークスラマン散乱光)を用いており、以下の説明では、CARS光を用いて分析する場合を例にとり説明する。
初めに、CARS光について説明する。定性的なCARS光の発生原理は以下のように説明される。測定対象の分子が存在している領域に、振動数の異なる2つの光、振動数ω1の光と振動数ω2の光を入射させると(ω1>ω2とする)、振動数ω1−ω2のうなりが生じる。このうなりの振動数が測定対象の分子の固有振動数Ωと一致しているとき、分子は共鳴振動を起こす。共鳴振動が起こっている状態で、さらに振動数ω3の光を入射させると、分子の共鳴振動と振動数ω3の光との相互作用により、CARS光が発生する。
図2を参照しながら、エネルギー準位の観点から上記のCARS光の発生過程を辿る。光を入射させる前の分子は、図2で示すエネルギー準位がE1の初期状態にある。ここに振動数ω1の光と振動数ω2の光を入射させると、分子のエネルギー準位は、振動数ω1の光により励起されて仮想的なエネルギー準位E3まで上がり、振動数ω2の光に対応する仮想的な光子放出によりE3からE2に下がると考えられる。この振動数の差ω1−ω2が分子の固有振動数Ωと一致したとき、分子は共鳴振動を起こしてエネルギー準位がE2の励起状態となる。ここにさらに振動数ω3の光を入射させると、分子のエネルギー準位はE2から仮想的なエネルギー準位E4に上昇し、CARS光が発生することにより分子のエネルギー準位はE4からE1に下がることになる。
上記のような3つの励起光、すなわち振動数ω1、ω2、ω3の光の入射により、いわゆる四光波混合過程が生じ、結果として振動数ωas=ω1−ω2+ω3のCARS光が発生する。上記の過程は、振動数ω3の光の代わりに振動数ω1の光を用いて起こすことも可能である。この場合は振動数の異なる2種類の励起光でCARS光を発生でき、このときのCARS光の振動数ωasはωas=2ω1−ω2となる。励起光を2種類にした方が装置構成を簡易化できるため、図1に示す粒子分析装置100も、振動数の異なる2つの励起光でCARS光を発生させる構成を採っている。なお、一般に、振動数ω1の光はポンプ光、振動数ω2の光はストークス光と呼ばれている。
CARS光は、ω1−ω2が測定対象の分子の固有振動数Ωと一致したときに強く現れる光である。分子の固有振動数Ωは、分子の種類やその構造によって異なるため、CARS光の観測により、非破壊的に測定対象の分子の同定を行うことができる。例えば、ポンプ光の振動数ω1を固定したまま、ストークス光の振動数ω2を掃引して観測することにより、分子の固有振動スペクトルを観察することができ、これにより分子の同定が可能になる。あるいは、検出したい分子の固有振動数Ωが既知の場合は、ω1−ω2=Ωを満たすようにポンプ光、ストークス光の振動数を設定して観測することにより、目的を達成することができる。
CARS光の発生する過程は非線形光学過程であり、基本的には2つの励起光の位相が一致した光強度の高い状態で発生する。また、空間的にもCARS光は、ポンプ光とストークス光が強く集光された部分からのみ発生するため、CARS光による測定は、基本的に高い三次元空間分解能を実現することができる。観測されるCARS光の強度Iasは、下式(1)に示すように、ポンプ光の強度Ipの二乗とストークス光の強度Isの積に比例する。
Ias ∝ Ip2・Is (1)
2種類の励起光でCARS光を発生させる場合は、CARS光の振動数ωas、ポンプ光の振動数ω1、分子の固有振動数Ωは、ωas=ω1+Ωの関係にあるため、CARS光の波長は励起光であるポンプ光の波長より短くなる。これに対して、自家蛍光の波長や、線形光学現象である自発ラマン散乱により生じるストークス散乱光の波長は、励起光の波長より長い。ストークス散乱光を検出する場合、ストークス散乱光と自家蛍光は重畳してしまい分離しにくいのに対して、CARS光は、自家蛍光およびストークス散乱光との分離が容易であり、検出しやすいという利点がある。また、CARS光による測定は、自発ラマン散乱を用いた場合よりも強い信号強度が得られるため、自発ラマン散乱を用いた場合よりも高いスループットを実現することができる。
2種類の励起光でCARS光を発生させる場合は、CARS光の振動数ωas、ポンプ光の振動数ω1、分子の固有振動数Ωは、ωas=ω1+Ωの関係にあるため、CARS光の波長は励起光であるポンプ光の波長より短くなる。これに対して、自家蛍光の波長や、線形光学現象である自発ラマン散乱により生じるストークス散乱光の波長は、励起光の波長より長い。ストークス散乱光を検出する場合、ストークス散乱光と自家蛍光は重畳してしまい分離しにくいのに対して、CARS光は、自家蛍光およびストークス散乱光との分離が容易であり、検出しやすいという利点がある。また、CARS光による測定は、自発ラマン散乱を用いた場合よりも強い信号強度が得られるため、自発ラマン散乱を用いた場合よりも高いスループットを実現することができる。
次に、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態にかかる粒子分析装置100について説明する。図1に示す粒子分析装置100は、波長の異なる2つの励起光を発生する光源部1と、光源部1で発生した励起光を被検粒子を含む試料液の流れに照射する照射光学系2と、励起光が照射されることにより被検粒子から発せられる光を受光する受光光学系3と、励起光が照射されることにより被検粒子から生じる非線形ラマン散乱光を検出して信号を出力する検出部4と、検出部4から出力された信号を処理して被検粒子を分析する分析部5と、分析部5により分析された分析結果を表示する表示部6と、被検粒子を含む試料液を所定の流速で流すフロー部7とを備える。被検粒子として、本実施形態においては細胞8を用いている。
本実施形態の光源部1は、2つの励起光として、狭帯域のポンプ光と狭帯域のストークス光を発生するように構成されている。光源部1は、レーザ11と、OPO(Optical Parametric Oscillator:光パラメトリック発振器)12と、ディレイライン13と、分波または合波用のビームスプリッター14a、14bと、光路折り曲げ用のミラー15a、15b、15c、15dと、光減衰器19a、19bとを有する。
レーザ11は、超短パルス光を発生できるレーザであることが好ましく、より詳しくは数十fs(フェムト秒)〜数十ps(ピコ秒)の時間範囲内でパルス光を発生できるレーザであることが好ましい。レーザ11としては例えば、波長800nm、パルス幅3ps、繰り返し周波数80MHz、ピークパワー8KW、平均パワー2Wのチタンサファイアレーザを用いることができる。
レーザ11を出射した光はビームスプリッター14aにより2つに分岐されて、ポンプ光用の一方の光はOPO12に入射し、ストークス光用の他方の光はミラー15a、15bで光路を曲げられた後、ディレイライン13に入射する。
OPO12は、波長変換器として機能するものであり、例えば波長800nmのチタンサファイアレーザの光を入力すると、波長550〜750nmの範囲で波長変換された光を出力することができる。なお、OPO12の代わりに異なる構成の波長変換器を使用することも可能である。OPO12からの出力光は、光減衰器19aによりポンプ光の平均パワーが細胞8において30mW以下になるように調節された後、ミラー15dで光路を曲げられ、ビームスプリッター14bに入射する。
ディレイライン13はポンプ光とストークス光を細胞8に照射する時間を調整するためのものである。ポンプ光およびストークス光は、異なる経路を辿って細胞8に到達するが、これらはパルス光であるため、同時に細胞8に照射されるとは限らない。ポンプ光およびストークス光の一方の光路にディレイライン13を設けることにより、ポンプ光およびストークス光を同時に細胞8に照射することができる。
本実施形態のディレイライン13は、互いに直交した2つの反射面を有するミラーからなり、このミラーを図1の両矢印の方向に移動させることにより、ミラー15b〜ディレイライン13〜ミラー15cの間の光路長を変更して、時間調整するように構成されている。なお、ディレイラインは、ポンプ光とストークス光を細胞8に照射する時間を調整できるものであればよく、上記構成に限定されず、別の構成を採用してもよく、また、ポンプ光の光路に設けられていてもよい。
ディレイライン13により時間調整されたストークス光はミラー15cで光路を曲げられ、光減衰器19bによりストークス光の平均パワーが細胞8において30mW以下になるように調節された後、ビームスプリッター14bに入射する。ビームスプリッター14bにおいて、ポンプ光とストークス光の2つの励起光は合波され、合波された光は同一光路を進行して照射光学系2に入射する。
照射光学系2は、2つの励起光を高密度に集光して細胞8内の微小領域に照射するものである。ここでは照射光学系2として、高NA(NA:Numerical Aperture:開口数)の対物レンズ21を用いている。対物レンズ21としては、例えば、倍率60×、NA1.2のものを用いることができ、この場合には照射領域のサイズをサブミクロンオーダーにまで絞ることができる。
受光光学系3は、励起光が照射された細胞8からの光を受光して検出部4へ導光するものである。受光光学系3は、対物レンズ31と、ポンプ光を遮断するためのカットフィルタ32と、ポンプ光より短波長側の光となるアンチストークス散乱光を選択的に透過させるためのショートパスフィルタ33と、光路折り曲げ用のミラー34とを有する。対物レンズ31は、例えば、照射光学系2の対物レンズ21と同じ仕様のものを用いることができる。
カットフィルタ32により、ポンプ光が検出部4に入射するのを防止することができる。また、ショートパスフィルタ33により、ストークス光、自家蛍光および自発ラマン散乱によるストークス散乱光が検出部4に入射するのを防止することができる。よって、受光光学系に入射した光のうち、CARS光を選択的に検出部4へ入射させることができる。なお、さらに、細胞8内の観測対象となる分子に特有のCARS光を透過するように中心波長が設定された狭い透過波長帯域を有するバンドパスフィルタを用いてもよい。複数種類の分子を観測するときは、複数の透過波長帯域を有するバンドパスフィルタを用いたり、異なる透過波長帯域を有する複数のバンドパスフィルタを用いたり、あるいは透過波長帯域が可変のものを用いるようにしてもよい。
検出部4は、CARS光を検出して電気信号を出力するものである。検出部4としては、例えば、フォトマルチプライヤーや、アバランシェフォトダイオード等を用いることができる。超高感度型の素子を用いることにより、CARS光の検出時間を短縮することができる。
分析部5は、検出部4から出力された電気信号を非線形ラマン分光法に基づき信号処理を行い、細胞8内部の分子を同定し、細胞8の内部構造の情報を取得し、細胞8を分析するものである。分析部5としては、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムを用いることができる。ここで、細胞の内部構造とは、細胞を構成する成分(例えばタンパク質や脂質、無機質等)、各成分の分布、各成分の割合等である。各分子に存在する官能基や各分子の立体構造により発揮される機能も異なるため、内部構造の情報を得ることにより、細胞の機能に関する情報も得ることができる。分析部5は、分析の目的に応じ、内部構造や機能の情報を用いて細胞を分析することができる。
表示部6は分析部5の分析結果を表示するものであり、例えばモニタ装置等により構成できる。
フロー部7は、細胞8を含有する試料液71を供給する試料液供給部72と、試料液供給部72の周囲に設けられてシース液73を供給するシース液供給部74と、試料液71とシース液73の合流地点に連結された細い管状のフローセル75とを有する。試料液供給部72から試料液71を流すと同時に、試料液71の周囲にシース液供給部74からシース液73を流す。このとき、試料液供給部72にかける圧力をシース液供給部74にかける圧力より若干低く設定することにより、流体力学的な絞り込みが生じ、シース液73に包まれた試料液71の流径が非常に細くなり、試料液71に含まれる細胞8をフローセル75内で一列に整列させてほぼ等間隔で流すことが可能になる。一例として、フローセル75を流れる試料液流の速度は数〜20m/秒、フローセル75の幅は5〜40μmにすることができる。
フローセル75内の試料液流の所定位置に励起光を照射できるように、照射光学系2の対物レンズ21が配置されている。また、フローセル75を挟んで対物レンズ21と対向するように受光光学系3の対物レンズ31が配置されている。
フローセル75の下流側の端部は開口しており、この端部から細胞8を1つずつ含有する液滴57が吐出される。粒子分析装置100はセルソーター型の構成を採用しており、フロー部7は、細胞8を分取するための分取制御部76、およびフローセル75の下流側に配置された偏向板77a、77bを有している。
分取制御部76は、分析部5と接続され、分析部5からの情報に基づき、吐出された液滴78に正または負の電荷を選択的に帯電させる。液滴78の進行方向の両側にはそれぞれ正、負の所定電圧が印加され、分取用の異なるラインに接続された偏向板77a、77bが配設されている。帯電した液滴78が偏向板77a、77bの間を通過するときに、帯電の正負に応じて電場の力を受けて偏向板77aあるいは偏向板77bの方向へ偏向されることにより、所望の細胞を分取することができる。分取用のラインとは、例えば、培養実験用に細胞8を回収するライン、分析後の細胞を廃棄するためのライン等である。
なお、図1では、偏向板77a、77bの2方向へ分取する粒子分析装置100を図示しているが、正にも負にも帯電されない液滴を分取するためのラインをさらに設け、計3つのラインを備えた構成としてもよい。
次に、上記構成を有する粒子分析装置100の動作例について説明する。まず、フロー部7において、細胞8を含有する試料液71がシース液73に包まれてフローセル75内を流れるシースフローを形成する。シースフローにおいて、細胞8はフローセル75内を一列に整列した状態で流れていく。
光源部1からは同軸上を進行する2つの励起光(ポンプ光およびストークス光)が出射されて、照射光学系2に入射する。2つの励起光は対物レンズ21により集光されて、フローセル75内の試料液71の流れに照射され、各細胞8に照射される。この照射により、細胞8からはCARS光が発せられる。受光光学系3の対物レンズ31は、細胞8から発せられた前方散乱光を受光し、平行光に変換する。前方散乱光にはCARS光以外の光も含まれているが、カットフィルタ32およびショートパスフィルタ33を通過することにより、ほぼCARS光以外の光が排除される。
検出部4は、CARS光を検出し、電気信号として出力する。出力された電気信号を分析部5で信号処理することにより、細胞8に含まれる分子が同定され、細胞8の内部構造の情報が取得され、細胞8の同定や正常・異常等の判別が行われ、その結果が表示部6に表示される。また、必要に応じて、分析部5から分取制御部76へ分取を指示する信号が送信され、分取制御部76は分取指示の出された細胞8を含む液滴78に正あるいは負の電荷を帯電させて、分取を行う。
上記構成を有する粒子分析装置100によれば、非線形ラマン散乱光を用いて細胞8を分析するため、蛍光を用いて分析する従来の装置と異なり、染色の必要が無くなり、染色により細胞にダメージを与えることはない。粒子分析装置100では、非破壊的な分析が可能であるため、細胞等の生体の分析に好適である。また、非線形ラマン散乱光は、分子の固有振動に基づくものであり、多光子過程のため高い空間分解能を有するものであるため、粒子分析装置100によれば、細胞内の分子の同定が可能であり、これにより、細胞の局所的な内部構造や機能に関する情報を取得できる。粒子分析装置100は、単に細胞の大きさの情報しか得られない従来の散乱光を用いた分析装置では奏することのできない優れた効果を奏するものである。以上述べた非線形ラマン散乱光を用いることによる粒子分析装置100の効果は、後述の実施形態の粒子分析装置も同様に奏するものである。
次に、本発明の別の実施形態にかかる粒子分析装置について説明する。なお、以降の実施形態の説明および図面においては、前述の実施形態の構成要素と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図3および図4を参照しながら、本発明の第2の実施形態にかかる粒子分析装置200について説明する。図1に示す粒子分析装置100では、励起光として、狭帯域のポンプ光と狭帯域のストークス光を用いていたのに対し、粒子分析装置200では、狭帯域のポンプ光と広帯域のストークス光を用いる方法、いわゆるマルチプレックス分光法を採用している点が基本的に異なる。そのため、粒子分析装置200では主に光源部と検出部において、粒子分析装置100のものと異なる構成を有している。
図4はマルチプレックス分光法を説明するための概念図であり、縦軸にパワーP(光強度)、横軸に波長λを示す座標上に、広帯域ストークス光Lsw、ポンプ光Lp、および上記広帯域ストークス光Lswとポンプ光Lpの照射を受けた被検粒子から発生したCARS光Lcwの各スペクトルの例を示す図である。なお、粒子分析装置200ではポンプ光Lpおよび広帯域ストークス光Lswを合波した合波光Lgwが励起光となる。
マルチプレックス分光法では、ポンプ光とストークス光を入射させたときに様々な振動数のうなりが同時に生じ、複数の共鳴振動の情報を有するCARS光が同時に発生する。このCARS光を分光することにより、観測領域に含まれる分子の振動を一度に測定することができる。マルチプレックス分光法は、波長掃引することなく、CARS光のスペクトルを一度に取得できるため、分析のスループットを向上させることができる。
粒子分析装置200が備える光源部201は、図1の光源部1と比べて、OPO12の代わりにPCF(Photonic Crystal Fiber:フォトニック結晶ファイバ)212を用い、ミラー15cとビームスプリッター14bの間にバンドパスフィルタ216が追加され、PCF212とミラー15dの間にロングパスフィルタ217が追加されている点が異なる。
PCF212は、パルス光のパルス幅を広げることなく波長帯域を広帯域化できる。例えば、チタンサファイアレーザから出射された波長800nmの光を、PCF212により波長500〜1500nmの広帯域光に変換することができる。なお、PCF212の代わりに、同様の機能を有するものを用いてもよく、例えば同様の機能を有する非線形ファイバを用いてもよい。
また、光源部201が備えるレーザ11は、数十fs(フェムト秒)〜数十ps(ピコ秒)の時間範囲でパルス光を発生するレーザであることが好ましい。レーザ11としては例えば、波長800nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数80MHz、ピークパワー250KW、平均パワー2Wのチタンサファイアレーザを用いることができる。
粒子分析装置200においては、PCF212で広帯域化された光がストークス光用の光となり、ディレイライン13を経由した光がポンプ光用の光となる。バンドパスフィルタ216は、ポンプ光用の光を狭帯域化するものであり、透過させる波長幅は例えば2nmとすることができる。また、本実施形態では、光減衰器19bにより、ポンプ光の平均パワーが被検粒子において30mW以下になるように調節される。
ロングパスフィルタ217は、広帯域化された光からポンプ光の波長より長波長側の光だけを取り出すものである。例えばポンプ光が波長800nmの場合において、ロングパスフィルタ217は波長810nmより長波長側の光を透過させるものとすることができる。また、本実施形態では、光減衰器19aにより、ストークス光の平均パワーが被検粒子において30mW以下になるように調節される。
すなわち、レーザ11を出射してビームスプリッター14aにより分岐された2つの光のうち、一方の光は、ミラー15a、ディレイライン13、バンドパスフィルタ216、光減衰器19bを経由してポンプ光となり、ビームスプリッター14bに入射する。また、上記2つの光うち、他方の光は、PCF212、ロングパスフィルタ217、光減衰器19a、ミラー15dを経由してストークス光となり、ビームスプリッター14bに入射する。
粒子分析装置200が備える検出部204は、複数発生したアンチストークス光を分けるための分光器と、分光器で分光されたアンチストークス光を検出するための検出器を備える。検出器としては超高感度分光用のEM−CCD(Electron Multiplying CCD)等の、低ノイズで高増幅型の検出器を用いることが好ましく、この場合にはCARS光の検出時間を短縮することができる。
次に、図5および図6を参照しながら、上記第2の実施形態の変形例である粒子分析装置220について説明する。粒子分析装置220は、いわば上記の粒子分析装置200の改良型であり、粒子分析装置200で用いられた広帯域のストークス光の代わりに複数のピークを有するストークス光を用いる点が特徴である。
図6は粒子分析装置220における分光法を説明するための概念図であり、縦軸にパワーP(光強度)、横軸に波長λを示す座標上に、複数のピークを有する狭帯域ストークス光Lsn、ポンプ光Lp、および上記狭帯域ストークス光Lsnとポンプ光Lpの照射を受けた被検粒子から発生したCARS光Lcnの各スペクトルの例を示す図である。粒子分析装置220ではポンプ光Lpおよび狭帯域ストークス光Lsnを合波した合波光Lgnが励起光となる。
ここで、粒子分析装置220における上記狭帯域ストークス光は、ポンプ光よりも波長が長く、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互いに異なる波長を持つ複数のピークを有するものであり、ストークス光の個々のピークにおける光強度はポンプ光のピークの光強度よりも小さい。また、狭帯域ストークス光は、互いに波長が隣り合う2つの前記ピーク間の波長範囲内に、該2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有するものであることが好ましく、本実施形態ではそのように設定されている。
粒子分析装置220は、粒子分析装置200と比べて、光源部の構成が異なる。粒子分析装置220が有する光源部221は、図3に示した粒子分析装置200の光源部201のロングパスフィルタ217と光減衰器19aの間の光路に狭帯域化部18を挿入した構成となる。粒子分析装置220における狭帯域化部18は、広帯域の光から、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互いに異なる波長を持つ複数のピークを有するストークス光(ここでは狭帯域ストークス光)を生成するためのものである。ここでは、狭帯域化部18はさらに、狭帯域ストークス光のピーク波長を変更するためのピーク波長変更手段として機能する制御部18Hを備えている。
狭帯域化部18の具体的な種々の構成例について、図7〜図9を用いて説明する。図7は第1の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図、図8は第2の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図、図9は第3の狭帯域ストークス光の作成方式を示す図である。なお、各図において、同様の機能を有する構成要素には同じ符号を用いている。例えば、異なる性能を有する空間光変調器であっても各狭帯域ストークス光の生成方式毎に繰り返し同じ符号を用いている。
図7に示す第1の狭帯域ストークス光の生成方式は以下のような方式である。すなわち、超短パルス光である広帯域の光Lwを、複数のビームスプリッターBsa、Bsb・・・に通して分岐させて複数の広帯域の光Lwa、Lwb・・・を得、広帯域の光Lwa、Lwb・・・それぞれを互いに波長特性の異なるバンドパスフィルタFa、Fb・・・へ通して複数の互いに異なる波長を持つ狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・を生成する。各バンドパスフィルタFa、Fb・・・の半値幅は2〜10nmとすることができる。
なお、バンドパスフィルFa、Fb・・・を周囲に配置してなるフィルタホイールを備えるようにし、制御部18Hにより、フィルタホイールの中心を通る回転中心軸の回りにこのフィルタホイールを回転させてバンドパスフィルFa、Fb・・・を回転移動させることにより、バンドパスフィルタの交換を行い、狭帯域化部18により得られる狭帯域ストークス光のピーク波長を変更するようにしてもよい。
そして、超短パルス光である狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・の一部または全部を光遅延部Dea、Deb・・・(ディレイライン)および減衰器Ata、Atb・・・(ATT:アッテネータ)に通して、各光成分Lna、Lnb・・・の被検粒子への照射タイミングを同期させるとともにそれらの光強度を調節する。
その後、各光成分Lna、Lnb・・・を複数のビームスプリッターBpa、Bpb・・・へ通して合波させ、第1の狭帯域ストークス光Lsnを生成する。
なお、広帯域の光Lwとしては、上記広帯域ストークス光Lsw等を用いることができる。
すなわち、上記のように狭帯域化部18を構成し、広帯域ストークス光Lswの波長領域中の一部分を切り出すことにより、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。これにより、互いに波長が隣り合う2つのピーク間の各波長範囲内に、その2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
図8に示す第2の狭帯域ストークス光の生成方式は以下のような方式である。すなわち、超短パルス光である広帯域の光Lwを、複数のビームスプリッターBsa、Bsb・・・に通して分岐させて複数の広帯域の光Lwa、Lwb・・・を得、広帯域の光Lwa、Lwb・・・それぞれを互いに波長特性の異なるチューナブルフィルタTa、Tb・・・へ通して複数の互いに異なる波長を持つ狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・を生成する。この際に、制御部18Hにより、チューナブルフィルタTa、Tb・・・における波長選択を行い、狭帯域化部18により得られる狭帯域ストークス光のピーク波長を変更するようにしてもよい。
そして、超短パルス光である狭帯域の光成分Lna、Lnb・・・の一部または全部を光遅延部Dea、Deb・・・(ディレイライン)および減衰器Ata、Atb・・・(ATT:アッテネータ)に通して、各光成分Lna、Lnb・・・の被検粒子への照射タイミングを同期させるとともにそれらの光強度を調節する。
その後、各光成分Lna、Lnb・・・を複数のビームスプリッターBpa、Bpb・・・へ通して合波させ、第2の狭帯域ストークス光Lsnを生成する。
なお、広帯域の光Lwとしては、上記広帯域ストークス光Lsw等を用いることができる。
すなわち、上記のように狭帯域化部18を構成し、広帯域ストークス光Lswの波長領域中の一部分を切り出すことにより、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。これにより、互いに波長が隣り合う2つのピークの間の各波長範囲内に、その2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
図9に示す第3の狭帯域ストークス光の生成方式は以下のような方式である。すなわち、超短パルス光である小径の広帯域の光LwをミラーM1で反射させグレ−ティングG1へ入射させ、この広帯域の光Lwが波長に応じて空間的に分離されるように発散させる。
グレ−ティングG1により空間的に波長分散された広帯域の光Lwは、コリメートレンズCo1を通って大径の平行光束となる。
大径の平行光束となった広帯域の光Lwは空間光変調器Sm1を通って波長が選択され、互いに異なる波長にピークを持つ2種類の光成分Lna1、Lnb1が抽出される。
なお、空間光変調器Sm1としては、例えば液晶パネル型変調器を用いることができ、その液晶パネルの変調パターン(光を空間変調させるためのパターン)を制御部18Hを用いて電気的な制御によって変更することにより、抽出する光成分のピーク波長を選択することができ、また、後述するように、選択する波長範囲や、切り出す光成分の数を変更することができる。
空間光変調器Sm1から射出され波長が選択された大径の光成分Lna、Lnbは、集光レンズCo2を通して集光され、さらにグレーティングG2を経由して小径の平行光束からなる同一光路を通る光成分Lna1、Lnb1である第3の狭帯域ストークス光Lsn1が生成される。この第3の狭帯域ストークス光Lsn1はミラーM2で反射され伝播せしめられる。以上のようにして、広帯域の光の波長領域中の一部分を切り出した光成分を合成して、互いに異なる波長を持つ2つのピークを有する狭帯域のストークス光を生成することができる。
なお、空間光変調器による波長選択は種々の態様の選択が可能である。例えば、大径の平行光束となった広帯域の光Lw中へ、空間光変調器Sm1の代わりに空間光変調器Sm1とは異なる透過率分布を有する空間光変調器Sm2が配された場合には、例えば図9に示すような互いに異なる波長にピークを持つ2種類の光成分Lnab2、Lnc2が抽出され、これらの成分を合成してなる第3の狭帯域ストークス光Lsn2が生成される。
光成分Lnab2、Lnc2のピーク波長は光成分Lna1、Lnb1のものと異なる。また、光成分Lnab2の波長範囲は、光成分Lnc2の波長範囲よりも広い。すなわち、波長範囲が広い光成分Lnab2を用いると、波長範囲が狭い光成分Lnc2よりも多くの分子を一度に分析することができる。
さらに、大径の平行光束となった広帯域の光Lwの光路中へ、空間光変調器Sm1の代わりに空間光変調器Sm1とは異なる透過率分布を有する空間光変調器Sm3が配された場合には、例えば図9に示すような互いに異なる波長にピークを持つ3種類の光成分Lna3、Lnb3、Ln3が抽出され、これらの光成分を合成してなる第3の狭帯域ストークス光Lsn3を生成することができる。空間光変調器Sm3が配された場合には、ピークの数が3つとなり、光成分Lnb3、Lnc3のピーク波長は光成分Lnb1のものと異なる。すなわち、広帯域の光の波長領域中の一部分を切り出した光成分を合成して、互いに異なる波長を持つ3つのピークを有する狭帯域のストークス光を生成することができる。
なお、広帯域の光Lwとしては、上記広帯域ストークス光Lsw等を用いることができる。
すなわち、上記のように狭帯域化部18を構成し、広帯域ストークス光Lswの波長領域中の一部分を切り出すことにより、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。これにより、互いに波長が隣り合う2つのピークの間の各波長範囲内に、非線形ラマン散乱光を実質的に発生させない光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
なお、空間光変調器Sm1、Sm2、およびSm3は、1つの空間光変調器を光路中に配置したままの状態で、この空間光変調器を制御部18Hで制御することにより形成することが可能である。すなわち、1つの空間光変調器について変調パターンを制御することにより、所望のピークの波長、波長範囲、光強度が得られるように変調パターンが形成された空間光変調器Sm1、Sm2、およびSm3を得ることができる。
狭帯域化部18の具体例を挙げて説明したが、狭帯域化部18の構成は上記例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記の第3の狭帯域ストークス光の生成方式においては、空間光変調器の代わりに所定位置に開口部を有するスリットを用いたり、グレーティングの代わりにプリズムを用いたりしてもよい。また、ストークス光のピーク波長を変更する必要がない場合は、制御部18Hを省略した構成も可能である。
上記例は、広帯域の光の波長領域中の一部分を切り出して複数のピークを有する狭帯域のストークス光を生成するものであったが、これとは異なる方法で複数のピークを有する狭帯域のストークス光を生成してもよい。例えば、複数の光源を用いて狭帯域ストークス光Lsnを生成してもよく、この方式を第4の狭帯域ストークス光の生成方式として、図10を参照しながら説明する。
すなわち、互いに異なる波長の超短パルス光を射出する複数種類のレーザ光源Lea、Leb・・・と、各レーザ光源Lea、Leb・・・から超短パルス光を射出させるタイミングを定める同期信号Sgを発生する同期信号発生部Syとを用意する。
同期信号発生部Syの同期信号Sgに同期させて各レーザ光源Lea、Leb・・・から超短パルス光を射出させる。
複数のレーザ光源Lea、Leb・・・から射出させた超短パルス光である、互いに異なる波長を持つ各光成分Lna、Lnb・・・の一部または全部を光遅延部Dea、Deb・・・(ディレイライン)および減衰器Ata、Atb・・・(ATT:アッテネータ)に通して、各光成分Lna、Lnb・・・の被検粒子への照射タイミングを同期させるとともにそれらの光強度を調節する。
その後、各光成分Lna、Lnb・・・を複数のビームスプリッターBpa、Bpb・・・へ通して合波させ、第3の狭帯域ストークス光Lsnを生成する。
すなわち、上記のように光源部を構成し、複数のレーザ光源から射出させた超短パルス光を合成することにより、互いに異なる波長を持つ複数のピークを有する狭帯域ストークス光を生成することができる。なお、上記複数のレーザ光源それぞれは、広帯域のストークス光Lswの波長範囲内のより狭い波長範囲に定められた超短パルス光を射出するものである。これにより、互いに波長が隣り合う2つのピークの間の各波長範囲内に、非線形ラマン散乱光を実質的に発生させない光強度となる波長範囲を有する狭帯域ストークス光を生成することができる。
なお、光源部221においても、光減衰器19bによりポンプ光の平均パワーが被検粒子で30mW以下となるように調節され、光減衰器19aにより複数のピークを有するストークス光の総和の平均パワーが被検粒子で30mW以下となるように調節される。
次に、図11を参照しながら、本発明の第3の実施形態にかかる粒子分析装置300について説明する。基本的に、粒子分析装置300は、走査光学系を備えて励起光を細胞8上で走査させ、細胞8の画像を生成可能にした点が、粒子分析装置220と異なる。粒子分析装置300は、粒子分析装置220と比べて、照射光学系と分析部の構成が異なる。
粒子分析装置300の照射光学系302は、対物レンズ21と、対物レンズ21より上流側に配置されたポリゴンミラー342とを有する。ポリゴンミラー342は走査光学系を構成するものであり、所定軸の周りに配置された複数の反射面を回転することにより光を偏向して走査を行う。光源部201からの光はポリゴンミラー342により偏向されて対物レンズ21により細胞8上に集光されて、細胞8上を走査する。なお、使用可能な走査光学系は、ポリゴンミラーに限定されず、例えばガルバノミラー等、別の構成を用いることも可能である。
図12A、図12Bは、走査により細胞8上に形成される照射スポット9を例示したものである。図12Aに示すように、一連の照射スポット9により細胞8上に形成される走査線10は1本でもよく、あるいは図12Bに示すように複数本でもよい。または、照射スポット9間の間隔を狭くして、細胞8の画像を取得可能なように2次元的に走査するようなものでもよい。走査は、試料液71の流れの方向(図12A、図12Bの矢印方向)と交わる方向に複数の照射スポット9が位置するように行われる。なお、図12A、図12Bに示す細胞8、照射スポット9のサイズは必ずしも実際のものと一致するものではない。
走査光学系を有しない粒子分析装置100、200においても、照射時間の間隔と試料液71の流速を設定することにより、試料液71の流れ方向において1つの細胞8について複数の照射スポットを形成することは可能である。しかし、粒子分析装置100、200では、試料液71の流れ方向の一次元的な観測となる。これに対して、本実施形態の粒子分析装置300では、試料液71の流れの方向と交わる方向に走査するものであるため、2次元的な観測が可能となる。
粒子分析装置300の分析部305は、画像処理部352を備えている。画像処理部352は、検出部304から出力された信号を用いて細胞8の画像を生成し、表示部6に表示させる。なお、画像処理部352を分析部305とは別に設けて、両者を接続する構成としてもよい。
上記構成の粒子分析装置300によれば、細胞8内の複数点観測が可能になり、情報量が増加するとともに検出の信頼度が向上する。また、2次元的に走査した場合は、細胞8内における各分子の分布状態が観測可能になり、画像処理部352により、この分布状態を可視化することができる。
従来、位相差顕微鏡を用いて非染色で細胞の画像を取得する方法もあるが、これでは位相差に寄与するものの情報しか得られない。例えば、異なる分子であっても、照明光に対して同じ位相差を有するものであれば、観察像には同じものとして現れる。これに対して、本実施形態の粒子分析装置300は、分子レベルで細胞を分析しているため、異なる分子は異なるものとして発現される。さらに、異なる分子は異なる機能を有するため、粒子分析装置300によれば、機能に基づいた画像の取得が可能である。
次に、図13を参照しながら、本発明の第4の実施形態にかかる粒子分析装置400について説明する。基本的に、粒子分析装置400は、粒子分析装置300と比べて、照射光学系と検出部の構成が異なる。粒子分析装置400の照射光学系は、粒子分析装置300の走査光学系の代わりに複数のビームを発生させるビーム変換素子を用いたものである。
粒子分析装置400の照射光学系402は、対物レンズ21と、対物レンズ21より上流側に配置されてビーム変換素子として機能するマイクロレンズアレイ422とを有する。マイクロレンズアレイ422は、複数の微小レンズが並設された構成を有する。光源部201から一本のビームとして出射された2つの励起光は、このマイクロレンズアレイ422を通過することにより、複数のビームに変換される。
そして、このようにして生成された複数のビームは、対物レンズ21によって収束された後に細胞8上に同時に照射されて、図14に示すように複数の照射スポット409を同時に形成する。これにより、細胞8の複数の部分からCARS光が同時に発せられる。なお、複数の照射スポット409は、試料液71の流れの方向と交わる方向(図14の矢印方向)に位置し、より好ましくは試料液71の流れの方向と直交する方向に位置する。
粒子分析装置400の検出部404は、複数の照射スポットに関する軸と、分光された波長軸との2軸が必要なため、平面ディテクタである2次元検出器により構成される。
上記構成の粒子分析装置400によれば、細胞8の複数点観測が同時に可能となるため、分析のスループットを向上させることができる。
次に、図15を参照しながら、本発明の第の5実施形態にかかる粒子分析装置500について説明する。基本的に、粒子分析装置500は、粒子分析装置400と比べて、照射光学系の構成が異なり、走査光学系の代わりに略線状のビームを発生させるビーム変換素子を用いたものである。
粒子分析装置500の照射光学系502は、対物レンズ21と、対物レンズ21より上流側に配置されてビーム変換素子として機能するシリンドリカルレンズ522とを有する。シリンドリカルレンズ522は、光軸に垂直な面内の一方向にのみ収束作用を有し、これに直交する方向にはパワーを持たないレンズである。光源部201から一本のビームとして出射された2つの励起光は、このシリンドリカルレンズ522を通過することにより、線状のビームに変換される。
そして、このようにして生成された線状のビームは、対物レンズ21によって収束された後に細胞8上に照射されて、図16に示すように略線状の照射領域509を形成する。照射領域509は、長軸方向が試料液71の流れの方向と交わる方向(図16の矢印方向)にあり、より好ましくは試料液71の流れの方向と直交する方向である。また、細胞8の全域を照射するためには、照射領域509の長軸方向の長さが細胞8の最長部の長さより長いことが好ましい。
上記構成の粒子分析装置500によれば、細胞8がフローセル75内を流れることにより、細胞8上を2次元的に走査することができる。また、略線状の照射領域509を形成する粒子分析装置500は、照射スポットを走査させる粒子分析装置300よりも短時間で細胞8を走査することができるので、細胞の画像を取得する時間を短縮化することができる。
なお、第3〜第5の実施形態において説明したような、走査光学系やビーム変換素子を用いた構成は、第1の実施形態や第2の実施形態の粒子分析装置にも同様に適用可能である。なお、第4、第5の実施形態のビーム変換素子を第1の実施形態に適用する場合は、検出部として1次元検出器(ラインディテクタ)を用いることが好ましい。
図17に、本発明の第2の実施形態にかかる粒子分析装置200において取得されるラマンスペクトルの一例を示す。図17の横軸は波数(=1cm/波長、すなわち、1センチメートルあたりの波の数。単位はカイザー)、縦軸は相対信号強度である。横軸の波数は、励起光の振動数とCARS光の振動数との差に対応し、一般にラマンシフトと呼ばれる量である。縦軸の相対信号強度はCARS光の光強度に対応する。
図17のNは正常部位から得られたラマンスペクトルであり、図17のANは癌部位から得られたラマンスペクトルである。癌細胞に関連した細胞の構成要素としては、アミドI、アミドIII、脂質由来物質が下記のラマンシフトを有することが知られている。
アミドI :1655〜1670cm−1
アミドIII:1265〜1280cm−1
脂質由来物質:1440〜1450cm−1
:2800〜2880cm−1
:2890〜2970cm−1
図17では、ガイドのため、上記ラマンシフトに見られる各ピークに縦軸、横軸に平行な点線を付している。図17のANでは、上記のアミドI、アミドIII、脂質由来物質に対応する波数において強度の大きい鋭いピークが見られるが、図17のNではこれらの波数におけるピークは強度が小さく鈍った形状となっている。上記の癌細胞に関連した構成要素は癌細胞にも正常細胞にも存在するが、細胞が癌化すると細胞内で構成バランスが崩れ、ラマンスペクトル強度が相対的に変化する。この相対的な変化を検出することにより癌細胞と正常細胞を区別することができる。
アミドIII:1265〜1280cm−1
脂質由来物質:1440〜1450cm−1
:2800〜2880cm−1
:2890〜2970cm−1
図17では、ガイドのため、上記ラマンシフトに見られる各ピークに縦軸、横軸に平行な点線を付している。図17のANでは、上記のアミドI、アミドIII、脂質由来物質に対応する波数において強度の大きい鋭いピークが見られるが、図17のNではこれらの波数におけるピークは強度が小さく鈍った形状となっている。上記の癌細胞に関連した構成要素は癌細胞にも正常細胞にも存在するが、細胞が癌化すると細胞内で構成バランスが崩れ、ラマンスペクトル強度が相対的に変化する。この相対的な変化を検出することにより癌細胞と正常細胞を区別することができる。
上記実施形態で示したような粒子分析装置は、例えば、組織に含まれる正常細胞と癌細胞を分離する際に使用可能である。医療現場等においては、癌細胞が含まれると思われる組織をその周辺領域とともに摘出し、細胞分離試薬により組織から単体の細胞に分離することが行われている。分離された細胞群には正常細胞と癌細胞の両方が存在する。正常細胞と癌細胞では、上述したようにラマンスペクトルが異なるため、本発明の粒子分析装置によれば、非染色で正常細胞と癌細胞を分離することができる。従来の蛍光を用いた分析装置に比べて細胞へのダメージは軽減されるため、分取した癌細胞を培養して株化細胞の作製や、抗癌剤の効果検証等の実験に用いることができる。例えば、培養した細胞を分析して、細胞の大きさや構造に関する情報を得ることにより、細胞の周期を測定することができる。
また、本発明の粒子分析装置は、癌腫瘍を摘出する際の判断材料を提供することも可能である。癌腫瘍の摘出手術では、癌細胞が患者の身体に残存すると再発の可能性が高まり好ましくないが、再発を恐れるあまり、過剰に組織を切除するのも患者の身体の負担が増大し好ましくない。そこで、摘出腫瘍が接していた領域の組織を微少量切り取り、細胞分離試薬により単体の細胞に分離した後、本発明の粒子分析装置を用いて、癌細胞の有無を調べる。癌細胞が検出された場合はさらなる切除が必要と判断し、癌細胞が検出されなかった場合は摘出が十分であったと判断することができる。
上記の株化細胞の作製や、抗癌剤の効果検証は、細胞が新鮮なうちに培養を始める必要がある。また、上記の癌腫瘍の摘出の判断は手術中に短時間で行う必要がある。すなわち、大量の細胞の分析や分取を短時間で行う必要があり、スループットが高い粒子分析装置は有用である。
また、上述した実施形態の粒子分析装置の用途としては、赤血球、白血球等の血球細胞の分類にも用いることができる。その際には、赤血球に含まれるヘモグロビン量の分析や、5種類の白血球(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球)の分類を行うことができる。この5種類の白血球は、形状が異なるだけでなく、独自の機能を有し、病気により増減する種類が違うため、各種類の増減数を調べて診断材料とすることができる。
以上、本発明による粒子分析装置および方法の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限りにおいて、種々変更することが可能である。
例えば、上記実施形態では、測定対象を分取するセルソーター型のフローサイトメーターを例にとり説明したが、本発明は分取機能を持たないアナライザ型のフローサイトメーターにも適用可能である。また、上記実施形態では、フローセル内を流れる被検粒子に光を照射して分析する例について説明したが、フローセルで覆われてない試料液流中の被検粒子に光を照射して分析するジェット・イン・エア方式のフローサイトメーターにも適用可能である。
上記実施形態では、1つのレーザから2つの励起光を発生させる例について説明したが、2つの励起光用にそれぞれ個別のレーザを用いてもよい。また、励起光は2つに限らず、3以上の励起光を用いてもよい。また、上記実施形態では、励起光を被検粒子に同時に入射させる例について説明したが、測定対象の分子の固有振動の周期によっては、複数の励起光を時間遅延させて入射させるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、非線形ラマン散乱光として、CARS光を例にとり説明したが、別の散乱光、例えば、誘導ラマン散乱光やハイパーラマン散乱光等を用いることも可能である。
1、201、221 光源部
2、302、402、502 照射光学系
3 受光光学系
4、204、404 検出部
5、305 分析部
6 表示部
7 フロー部
9、409 照射スポット
10 走査線
11 レーザ
12 OPO
13 ディレイライン
14a、14b ビームスプリッター
15a、15b、15c、15d ミラー
18 狭帯域化部
18H 制御部
19a、19b 光減衰器
21、31 対物レンズ
32 カットフィルタ
33 ショートパスフィルタ
34 ミラー
71 試料液
72 試料液供給部
73 シース液
74 シース液供給部
75 フローセル
76 分取制御部
77a、77b 偏向板
78 液滴
100、200、220、300、400、500 粒子分析装置
212 PCF
216 バンドパスフィルタ
217 ロングパスフィルタ
342 ポリゴンミラー
352 画像処理部
422 マイクロレンズアレイ
509 照射領域
522 シリンドリカルレンズ
2、302、402、502 照射光学系
3 受光光学系
4、204、404 検出部
5、305 分析部
6 表示部
7 フロー部
9、409 照射スポット
10 走査線
11 レーザ
12 OPO
13 ディレイライン
14a、14b ビームスプリッター
15a、15b、15c、15d ミラー
18 狭帯域化部
18H 制御部
19a、19b 光減衰器
21、31 対物レンズ
32 カットフィルタ
33 ショートパスフィルタ
34 ミラー
71 試料液
72 試料液供給部
73 シース液
74 シース液供給部
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76 分取制御部
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78 液滴
100、200、220、300、400、500 粒子分析装置
212 PCF
216 バンドパスフィルタ
217 ロングパスフィルタ
342 ポリゴンミラー
352 画像処理部
422 マイクロレンズアレイ
509 照射領域
522 シリンドリカルレンズ
Claims (7)
- 励起光を発生する光源部と、
前記励起光を被検粒子を含む試料液の流れに照射する照射光学系と、
前記励起光が照射されることにより前記被検粒子から生じる非線形ラマン散乱光を検出する検出部と、
該検出部からの信号を処理して前記被検粒子を分析する分析部とを備えたことを特徴とする粒子分析装置。 - 前記励起光が、ポンプ光と該ポンプ光よりも波長が長いストークス光とを含み、
前記ストークス光が、複数種類の分子を個別に分析するために定められた互いに異なる波長を持つ複数のピークを有するものであることを特徴とする請求項1記載の粒子分析装置。 - 前記ストークス光が、互いに波長が隣り合う2つの前記ピーク間の波長範囲内に、該2つのピークのうちのより小さい光強度を持つピークの1/e2以下の光強度となる波長範囲を有するものであることを特徴とする請求項2記載の粒子分析装置。
- 前記光源部が、前記ストークス光の前記ピーク波長を変更するためのピーク波長変更手段を有するものであることを特徴とする請求項2または3記載の粒子分析装置。
- 前記照射光学系が、前記試料液の流れの方向と交わる方向における複数の位置に前記励起光を照射するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の粒子分析装置。
- 前記励起光を前記被検粒子上で走査させる走査光学系と、
前記検出部から出力された信号を用いて前記被検粒子の画像を生成する画像処理部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の粒子分析装置。 - 被検粒子を含む試料液の流れに励起光を照射し、
前記励起光が照射されることにより前記被検粒子から生じる非線形ラマン散乱光を検出し、
前記検出による信号を処理して前記被検粒子を分析することを特徴とする粒子分析方法。
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- 2008-08-14 JP JP2008208808A patent/JP2009258071A/ja not_active Withdrawn
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