JP2009528358A - 酸化的蒸解からの冷却母液を不純物パージシステムへの供給材料として用いるポリカルボン酸製造システム - Google Patents
酸化的蒸解からの冷却母液を不純物パージシステムへの供給材料として用いるポリカルボン酸製造システム Download PDFInfo
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Abstract
テレフタル酸をより効率的且つ経済的に製造するための最適化システムを開示する。溶媒精製システムを使用して、溶媒精製供給材料中に存在する少なくとも1種の芳香族不純物を除去する。溶媒精製供給材料の少なくとも約20重量%は、冷却された後蒸解TPA含有スラリーに由来する。
Description
本発明は、一般に、ポリカルボン酸の製造方法に関する。本発明の一態様は、ジアルキル芳香族化合物(例えばp−キシレン)の酸化によって粗製芳香族ジカルボン酸(例えば粗製テレフタル酸)を製造し、そして得られた粗製芳香族ジカルボン酸をその後に精製及び分離に供して、精製芳香族ジカルボン酸(例えば精製テレフタル酸)を製造する方法に関する。
精製テレフタル酸(PTA)を製造するための様々な方法が先行技術において開示されている。しかし、これらの以前の方法のうち商業的に広く実施されているのはごくわずかにすぎない。このような商業的方法は、2つの酸化段階とそれらの酸化段階の間の液交換を用いる。本明細書中で「一次酸化(primary oxidation)」と称する第1の酸化段階においては、p−キシレンをテレフタル酸(TPA)に酸化する。一次酸化の生成物は、液体の母液と粗製テレフタル酸(CTA)粒子を含む粗製スラリーである。一次酸化において生成されたこの粗製スラリーは、最初の母液のかなりの部分をより清浄な溶媒(cleaner solvent)と置き換える液交換プロセスに供される。得られた液交換スラリーは、次に、本明細書中で「酸化的蒸解(oxidative digestion)」と称する第2の酸化段階で精製される。酸化的蒸解は、酸化条件下におけるTPA粒子の連続的な溶解及び再沈澱を含むプロセスによって、より純粋なTPA粒子を生成する。酸化的蒸解によって生成されるTPA粒子は、以下の2つの主な理由から、酸化的蒸解に導入されるCTA粒子よりも純粋である:(1)CTA粒子中に最初に捕捉された反応中間体(例えば4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)及びp−トルイル酸(PTAC))は、酸化的蒸解の間に、更にTPAに酸化される;(2)酸化的蒸解に関連する溶解及び再沈澱が、比較的非反応性の芳香族不純物(例えばイソフタル酸(IPA))の一部を固相から液相に分割する。TPA粒子の純度の増加に加えて、酸化的蒸解には、酸化的蒸解に供されたCTA粒子より大きいTPA粒子を生成するという利点もある。酸化的蒸解によって生成されたこれらのより大きいTPA粒子は、より効率的且つ効果的な下流処理を容易にする。
一次酸化と酸化的蒸解との間の液交換工程は、(1)固体CTAからの、可溶性で、比較的非反応性の芳香族不純物(例えばIPA)の除去;及び(2)粗製スラリーの液相中に存在する触媒化合物の除去の2つの主な働きをする。液交換によってもたらされた比較的非反応性の芳香族不純物の除去により、CTAは非常に費用のかかる水素化を行わずに適切に精製することができる。液交換によってもたらされる触媒の除去は、酸化的蒸解の間の化学的活性を低下させ、その結果、芳香族反応中間化合物をTPAにさらに転化するのに必要な反応性を依然として保持しながら、炭素焼損(carbon burn loss)を減少させる。液交換によってもたらされる触媒濃度の低下はまた、固体PTA生成物のその後の単離の間における触媒化合物の除去をより効率的で且つより完全なものにする。
一次酸化工程と酸化的蒸解工程との間の液交換には利点があるが、粗製スラリーから高温で、可燃性の腐蝕性母液を連続的に除去し且つ除去した母液を高温の可燃性で腐蝕性のより清浄な溶媒と置き換えることは、費用がかかり且つ困難である可能性がある。この種の液交換工程に関連して特に多くの費用がかかるのは、1つ又はそれ以上の大きい遠心分離機又は高価な金属(例えばチタン)若しくは金属合金でできている圧力フィルター中で典型的に行われる液交換である。
これまで、いくつかの製造業者が、一次酸化と酸化的蒸解との間に液交換工程を用いずにPTAを製造できたと申し出た。しかし、このようなシステムにおいては、酸化的蒸解への供給材料中の増大した触媒濃度が、酸化的蒸解に関連する炭素焼損を著しく増加させる。更に、一次酸化と酸化的蒸解との間の液交換を排除するこのようなPTA製造システムは、典型的には、酸化的蒸解の下流において液交換工程を用いる。この種のシステムにおいて、酸化的蒸解の下流で除去された母液は、比較的非反応性の芳香族不純物(例えばIPA)を、第2の酸化段階の上流の母液よりも高濃度で含む。これは、酸化的蒸解が、比較的非反応性の芳香族不純物の液相中への分割を増大させるためである。一次酸化への供給材料として再循還溶媒(即ち、一次酸化によって生成された母液に由来する、回収され且つ精製された溶媒)を用いる連続PTA製造法において、固体PTA生成物と一緒に出ていかない比較的非反応性の芳香族不純物は、他の方法で除去又は破壊されるまで、再循還溶媒中に蓄積する。再循還溶媒を精製するための補助プロセス工程の範囲が増大されなければ、比較的非反応性の芳香族不純物(例えばIPA)の再循還溶媒中濃度が時間と共に増加し続け、例えば一次酸化における着色芳香族不純物の形成速度の不所望な増加及び結果として起こる、固体TPA生成物の色の増加のような、連鎖的な化学的結果及び処理結果を誘発する。再循還溶媒の精製のための補助プロセス工程の詳細は、一次酸化工程及び酸化的蒸解工程との多くの複雑な相互作用を含み、運転コスト及び生成物の品質にかなり影響を与える可能性がある。例えば、着色されていないIPAの再循還を増加させると、色の濃い2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)の形成速度が実際に増加し、その結果、IPA及び2,7−DCFのレベルがプロセス全体にわたって新しい定常状態濃度までゆっくりと上昇につれて、固体TPA生成物の色にかなりの悪影響が及ぼされる。
前記を考慮すると、中間液交換を使用せずに二段酸化を用いる先行技術の方法は、例えば(1)酸化的蒸解の間の炭素焼損の増加を示す;(2)再循還溶媒を使用できない;且つ/又は(3)再循還溶媒を使用するとしても、再循還溶媒中の増大した汚染物質レベルを制御するための費用のかかる追加精製システムを必要とするといった理由から、商業的に実現可能であることがわかっていない。
本発明の1つの目的は、従来の一次酸化システムよりも改善された純度を有する粗製生成物スラリーを生成する改良一次酸化システムを提供することにある。
本発明の別の目的は、不純物の形成が減少した、p−キシレンのテレフタル酸(TPA)への改善された液相酸化を容易にする気泡塔型反応器(バブルカラムリアクター)(bubble column reactor)を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、酸化的蒸解の上流の液交換の必要がない精製テレフタル酸(PTA)の製造システムを提供することにある。
本発明の更に別の目的は、酸化的蒸解の上流の液交換を必要とせずに、酸化的蒸解の間の炭素焼失(carbon burn)を最小限に抑えるPTA製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、酸化的蒸解の下流における比較的非反応性の芳香族不純物(例えばIPA)の沈澱を促進し、その結果として非反応性芳香族不純物がTPA粒子と共にプロセスから出ていき且つそれらを再循還溶媒からパージする必要のないPTA製造システムを提供することにある。
添付した「特許請求の範囲」に規定した本発明の範囲は、前記目的の全てを実現できる方法又は装置に限定するものではないことに留意すべきである。むしろ、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲は、前記目的の全て又はいずれかを達成しない種々のシステムを包含することができる。本発明のその他の目的及び利点は、以下の発明の詳細な説明及び関連した図面を見れば、当業者には明白になるであろう。
本発明の一実施態様は、(a)一次酸化ゾーンにおいて多相反応媒体を酸化に供することによって初期スラリーを生成せしめ;(b)蒸解ゾーンにおいて前記初期スラリーの少なくとも一部を酸化的蒸解に供することによって蒸解生成物スラリーを生成せしめ;(c)冷却ゾーンにおいて前記蒸解生成物スラリーの少なくとも一部を冷却することによって冷却液相及び固相を含む冷却スラリーを生成せしめ;(d)溶媒精製システムを用いて、それに導入された溶媒精製供給材料中に存在する少なくとも1種の芳香族不純物を除去する(ここで前記冷却スラリーの冷却液相が前記溶媒精製供給材料の少なくとも約20重量%を形成する)工程を含んでなるポリカルボン酸組成物の製造方法に関する。
本発明の好ましい実施態様を、添付図面の図に関して以下に詳述する。添付図面において、
図1は、本発明の一実施態様に従って構築された酸化反応器の側面図であり、反応器中への供給流、酸化剤流及び還流の導入、反応器中における多相反応媒体の存在並びに反応器の頂部(top)及び底部(bottom)のそれぞれからの気体及びスラリーの回収を特に示し;
図2は、図3のライン2−2に沿った気泡塔型反応器の底部の拡大側断面図であり、反応器への酸化剤流の導入に使用される酸化剤スパージャーの位置及び構造を特に示し;
図3は、図2の酸化剤スパージャーの上面図であり、酸化剤スパージャーの頂部に酸化剤排出開口部がないことを特に示し;
図4は、図2の酸化剤スパージャーの底面図であり、酸化剤スパージャーの底部の酸化剤排出開口部を特に示し;
図5は、図3のライン5−5に沿った酸化剤スパージャーの側断面図であり、酸化剤スパージャーの底部の酸化剤排出開口部の幾何学的配置を特に示し;
図6は、気泡塔型反応器の底部部分の拡大側面図であり、垂直方向に離間された複数の位置において反応器中へ供給流を導入するためのシステムを特に示し;
図7は、図6のライン7−7に沿った上断面図であり、図6に示される供給材料導入システムが好ましい半径方向供給ゾーン(FZ)及び方位角の2つ又はそれ以上のクアドラント(Q1、Q2、Q3、Q4)に供給流を分配する様子を特に示し;
図8は、図7と同様な上断面図であるが、多数の小さい供給開口部をそれぞれ有するバヨネットチューブを用いて反応器中に供給流を排出するための別の手段を示し;
図9は、多数の容器貫通を必要とせずに垂直方向に離間された複数の位置において反応ゾーン中に供給流を導入するための別のシステムの等角図であり、供給材料分配システムが酸化剤スパージャー上で少なくとも部分的に支持され得ることを特に示し;
図10は、図9に示された貫通が1つの供給材料分配システム及び酸化剤スパージャーの側面図であり;
図11は、酸化剤スパージャー上において支持された貫通が1つの供給材料分配システムを更に示す、図10のライン11−11に沿った上断面図であり;
図12は、内部及び外部反応容器(reaction vessel)を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図13は、図12の気泡塔型反応器のライン13−13に沿った拡大断面図であり、内部及び外部反応容器の相対的な幾何学的配置を特に示し;
図14は、内部及び外部反応容器を装着した別の気泡塔型反応器の側面図であり、外部反応容器が段階的な直径を有することを特に示し;
図15は、一次酸化反応器中の側部抜出し(sidedraw)からのスラリーを受ける外部二次酸化反応器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図16は、一次酸化反応器の側面の拡大開口部からのスラリーを受ける開口式外部二次酸化反応器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図17は、多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図であり、反応媒体中のいくつかの勾配を定量化するために等容積の30個の水平スライスに理論的に分割されている反応媒体を特に示し;
図18は、多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図であり、かなり異なる酸素濃度及び/又は酸素消費速度を有する、第1及び第2の独立した20%連続容積の反応媒体を特に示し;
図19A及び19Bは、本発明の一実施態様に従って製造された粗製テレフタル酸(CTA)粒子の拡大図であり、各CTA粒子が、多数の緩く結合したCTA子粒子から成る低密度高表面積の粒子であることを特に示し;
図20A及び20Bは、常法に従って製造されたCTA粒子の拡大図であり、従来のCTA粒子が、図19A及び19Bの本発明のCTA粒子よりも粒度が大きく、密度が高く且つ表面積が小さいことを特に示し;
図21は、TPAの精製に水素化を用いる先行技術の精製テレフタル酸(PTA)の製造方法の簡略化した工程系統図であり;
図22は、PTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、本発明の一実施態様に従って構成し且つ運転される一次酸化反応器から生成される初期スラリーの処理に使用されている従来の精製システムを特に示し;
図23は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、一次酸化と酸化的蒸解との間の液交換を減少させたか又は排除した構成を特に示し;
図24は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、多段酸化的蒸解、現場での(in situ)化学反応による蒸解反応媒体の加熱及び後蒸解冷却の間における溶媒の蒸発除去を用いる構成を特に示し;
図25は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、一次酸化反応器内部の初期蒸解段階、酸化的蒸解の後期段階前のスラリーの加熱及び最適化された滞留時間分布を有する後期酸化的蒸解段階を用いる構成を特に示し;
図26は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、初期側部抜出しの酸化的蒸解段階、後期酸化的蒸解に供給されたスラリーの蒸気注入による加熱及び一次酸化及び酸化的蒸解の塔頂ガスを処理するためのシステムを用いる構成を特に示し;
図27は、従来の酸化的蒸解がまから排出されたTPA粒子の拡大図であり、蒸解がま中における不所望に短い滞留時間を有する粒子(例えば右下隅の粒子)の物理的構造が適切に蒸解された粒子の物理的構造とはかなり異なることを特に示し;
図28は、プラグフロー(栓流)型反応器及び直列に接続された複数の連続撹拌槽型反応器(CSTR)に関して、換算時間に対して積算質量分率(CMF)をプロットした滞留時間分布曲線であり;
図29は、図28の滞留時間分布曲線の拡大図であり、1.0未満の換算時間値における滞留時間分布曲線の部分をより良く示し;
図30は、拡大した滞留時間分布曲線であり、本発明の酸化的蒸解反応器の構成に関する、0.2及び0.5の換算時間におけるCMFの好ましい範囲を特に示す。
図1は、本発明の一実施態様に従って構築された酸化反応器の側面図であり、反応器中への供給流、酸化剤流及び還流の導入、反応器中における多相反応媒体の存在並びに反応器の頂部(top)及び底部(bottom)のそれぞれからの気体及びスラリーの回収を特に示し;
図2は、図3のライン2−2に沿った気泡塔型反応器の底部の拡大側断面図であり、反応器への酸化剤流の導入に使用される酸化剤スパージャーの位置及び構造を特に示し;
図3は、図2の酸化剤スパージャーの上面図であり、酸化剤スパージャーの頂部に酸化剤排出開口部がないことを特に示し;
図4は、図2の酸化剤スパージャーの底面図であり、酸化剤スパージャーの底部の酸化剤排出開口部を特に示し;
図5は、図3のライン5−5に沿った酸化剤スパージャーの側断面図であり、酸化剤スパージャーの底部の酸化剤排出開口部の幾何学的配置を特に示し;
図6は、気泡塔型反応器の底部部分の拡大側面図であり、垂直方向に離間された複数の位置において反応器中へ供給流を導入するためのシステムを特に示し;
図7は、図6のライン7−7に沿った上断面図であり、図6に示される供給材料導入システムが好ましい半径方向供給ゾーン(FZ)及び方位角の2つ又はそれ以上のクアドラント(Q1、Q2、Q3、Q4)に供給流を分配する様子を特に示し;
図8は、図7と同様な上断面図であるが、多数の小さい供給開口部をそれぞれ有するバヨネットチューブを用いて反応器中に供給流を排出するための別の手段を示し;
図9は、多数の容器貫通を必要とせずに垂直方向に離間された複数の位置において反応ゾーン中に供給流を導入するための別のシステムの等角図であり、供給材料分配システムが酸化剤スパージャー上で少なくとも部分的に支持され得ることを特に示し;
図10は、図9に示された貫通が1つの供給材料分配システム及び酸化剤スパージャーの側面図であり;
図11は、酸化剤スパージャー上において支持された貫通が1つの供給材料分配システムを更に示す、図10のライン11−11に沿った上断面図であり;
図12は、内部及び外部反応容器(reaction vessel)を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図13は、図12の気泡塔型反応器のライン13−13に沿った拡大断面図であり、内部及び外部反応容器の相対的な幾何学的配置を特に示し;
図14は、内部及び外部反応容器を装着した別の気泡塔型反応器の側面図であり、外部反応容器が段階的な直径を有することを特に示し;
図15は、一次酸化反応器中の側部抜出し(sidedraw)からのスラリーを受ける外部二次酸化反応器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図16は、一次酸化反応器の側面の拡大開口部からのスラリーを受ける開口式外部二次酸化反応器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図17は、多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図であり、反応媒体中のいくつかの勾配を定量化するために等容積の30個の水平スライスに理論的に分割されている反応媒体を特に示し;
図18は、多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図であり、かなり異なる酸素濃度及び/又は酸素消費速度を有する、第1及び第2の独立した20%連続容積の反応媒体を特に示し;
図19A及び19Bは、本発明の一実施態様に従って製造された粗製テレフタル酸(CTA)粒子の拡大図であり、各CTA粒子が、多数の緩く結合したCTA子粒子から成る低密度高表面積の粒子であることを特に示し;
図20A及び20Bは、常法に従って製造されたCTA粒子の拡大図であり、従来のCTA粒子が、図19A及び19Bの本発明のCTA粒子よりも粒度が大きく、密度が高く且つ表面積が小さいことを特に示し;
図21は、TPAの精製に水素化を用いる先行技術の精製テレフタル酸(PTA)の製造方法の簡略化した工程系統図であり;
図22は、PTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、本発明の一実施態様に従って構成し且つ運転される一次酸化反応器から生成される初期スラリーの処理に使用されている従来の精製システムを特に示し;
図23は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、一次酸化と酸化的蒸解との間の液交換を減少させたか又は排除した構成を特に示し;
図24は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、多段酸化的蒸解、現場での(in situ)化学反応による蒸解反応媒体の加熱及び後蒸解冷却の間における溶媒の蒸発除去を用いる構成を特に示し;
図25は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、一次酸化反応器内部の初期蒸解段階、酸化的蒸解の後期段階前のスラリーの加熱及び最適化された滞留時間分布を有する後期酸化的蒸解段階を用いる構成を特に示し;
図26は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図であり、初期側部抜出しの酸化的蒸解段階、後期酸化的蒸解に供給されたスラリーの蒸気注入による加熱及び一次酸化及び酸化的蒸解の塔頂ガスを処理するためのシステムを用いる構成を特に示し;
図27は、従来の酸化的蒸解がまから排出されたTPA粒子の拡大図であり、蒸解がま中における不所望に短い滞留時間を有する粒子(例えば右下隅の粒子)の物理的構造が適切に蒸解された粒子の物理的構造とはかなり異なることを特に示し;
図28は、プラグフロー(栓流)型反応器及び直列に接続された複数の連続撹拌槽型反応器(CSTR)に関して、換算時間に対して積算質量分率(CMF)をプロットした滞留時間分布曲線であり;
図29は、図28の滞留時間分布曲線の拡大図であり、1.0未満の換算時間値における滞留時間分布曲線の部分をより良く示し;
図30は、拡大した滞留時間分布曲線であり、本発明の酸化的蒸解反応器の構成に関する、0.2及び0.5の換算時間におけるCMFの好ましい範囲を特に示す。
本発明の一実施態様によれば、改良一次酸化システムが提供される。この改良一次酸化システムは、従来の一次酸化システムよりも純粋な初期スラリーを生成する。改良一次酸化システムによって生成される、より純粋な初期スラリーは、本発明のいくつかの実施態様の主題である新規技術を用いてその後に処理されることができる。
本明細書中で使用する用語「一次酸化(primary oxidation)」は、ポリカルボン酸を製造するための少なくとも1つの一次酸化反応器/ゾーン中における芳香族化合物の酸化を意味し、一次酸化反応器/ゾーン中に導入される芳香族化合物の質量の少なくとも80%が一次酸化反応器/ゾーン中でポリカルボン酸に酸化される。一次酸化反応器/ゾーンは複数の容器、導管及び/又は段階によって形成できるが、本発明の好ましい一実施態様においては、一次酸化は単一の反応容器中で実施する。
一次酸化は、好ましくは1つ又はそれ以上の撹拌反応器中に含まれる多相反応媒体の液相中で行う。適当な撹拌反応器としては、例えば気泡撹拌反応器(例えば気泡塔型反応器)、機械的撹拌反応器(例えば連続撹拌槽型反応器)及び流動撹拌反応器(例えばジェット反応器)が挙げられる。本発明の一実施態様においては、一次酸化は少なくとも1つの気泡塔型反応器を用いて実施する。
本明細書中で使用する用語「気泡塔型反応器」は、反応媒体の撹拌が、主に反応媒体を通る気泡の上向きの移動によって提供される、多相反応媒体中で化学反応を促進するための反応器を意味するものとする。本明細書中で使用する用語「撹拌」は、流体の流れ及び/又は混合を引き起こす反応媒体中に放散される仕事を意味するものとする。本明細書中で使用する用語「大部分」、「主に」及び「主として」は、50%超を意味するものとする。本明細書中で使用する用語「機械的撹拌」は、反応媒体に逆らう又は反応媒体内部における1つ又は複数の硬質又は軟質要素の物理的運動によって引き起こされる反応媒体の撹拌を意味するものとする。例えば、機械的撹拌は、反応媒体中に配置された内部撹拌機、パドル、バイブレーター又は音響振動板の回転、往復運動(oscillation)及び/又は振動(vibration)によって提供されることができる。本明細書中で使用する用語「流動撹拌」は、反応媒体中の1種又はそれ以上の流体の高速噴射及び/又は再循環によって引き起こされる反応媒体の撹拌を意味するものとする。例えば、流動撹拌は、ノズル、エジェクター及び/又はエダクターによって提供されることができる。
本発明の好ましい実施態様においては、酸化の間における一次酸化反応器中の反応媒体の撹拌の約40%未満、より好ましくは約20%未満、最も好ましくは5%未満が、機械的及び/又は流動撹拌によって提供される。好ましくは、酸化の間に多相反応媒体に与えられる機械的及び/又は流動撹拌の量は、反応媒体立方メートル当たり約3キロワット未満、より好ましくは反応媒体立方メートル当たり約2キロワット未満、最も好ましくは反応媒体立方メートル当たり1キロワット未満である。
図1を参照すると、好ましい気泡塔型一次酸化反応器20が、反応セクション24及び離脱セクション(disengagement section)26を有する容器シェル22を含むものとして示されている。反応セクション24は内部反応ゾーン28を規定し、離脱セクション26は離脱ゾーン30を規定する。主として液相の供給流は、供給口32a、b、c及びdを経て反応ゾーン28に導入される。主として気相の酸化剤流は、反応ゾーン28の下部(lower portion)に配置された酸化剤スパージャー34を経て反応ゾーン28に導入される。液相供給流及び気相酸化剤流は共同で反応ゾーン28内に多相反応媒体36を形成する。多相反応媒体36は、液相と気相を含む。より好ましくは、多相反応媒体36は固相、液相及び気相成分を有する三相媒体を含む。反応媒体36の固相成分は好ましくは、反応媒体36の液相中で行われる酸化反応の結果として反応ゾーン28内に沈殿する。一次酸化反応器20は、反応ゾーン28の底部近くに配置されたスラリー出口38及び離脱ゾーン30の頂部近くに配置された気体出口40を含む。反応媒体36の液相成分及び固相成分を含むスラリー流出物は、スラリー出口38を経て反応ゾーン28から回収され、主として気体の流出物は気体出口40を経て離脱ゾーン30から回収される。一次酸化のスラリー流出物は、本明細書中では「初期スラリー(initial slurry)」と称する。
供給口32a、b、c及びdを経て一次酸化反応器20中に導入される液相供給流は好ましくは、芳香族化合物、溶媒及び触媒系を含む。
液相供給流中に存在する芳香族化合物は好ましくは、少なくとも1個の結合したヒドロカルビル基又は少なくとも1個の結合した置換ヒドロカルビル基又は少なくとも1個の結合したヘテロ原子又は少なくとも1個の結合したカルボン酸基(−COOH)を有する。より好ましくは、芳香族化合物は少なくとも1個の結合したヒドロカルビル基又は少なくとも1個の結合した置換ヒドロカルビル基を有し、各結合基は1〜5個の炭素原子を含む。更に好ましくは、芳香族化合物はちょうど2個の結合基を有し、各結合基はちょうど1個の炭素原子を含み且つメチル基及び/又は置換メチル基及び/又は最大限でも1個のカルボン酸基を含む。更に好ましくは、芳香族化合物は、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、p−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、p−トルイル酸、m−トルイル酸及び/又はアセトアルデヒドである。最も好ましくは、芳香族化合物はp−キシレンである。
ここで定義する「ヒドロカルビル基」は、水素原子又は他の炭素原子にのみ結合した少なくとも1個の炭素原子である。ここで定義する「置換ヒドロカルビル基」は、少なくとも1個のヘテロ原子及び少なくとも1個の水素原子に結合した少なくとも1個の炭素原子である。ここで定義する「ヘテロ原子」は、炭素及び水素原子以外の全ての原子である。ここで定義する芳香族化合物は芳香環、好ましくは環の一部として少なくとも6個の炭素原子を有する、より好ましくは炭素原子のみを有する芳香環を含む。このような芳香環の適当な例としては、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン及び他の炭素系縮合芳香環が挙げられるが、これらに限定するものではない。
液相供給流中に存在する芳香族化合物が、常態では固体の(即ち標準温度及び圧力で固体の)化合物である場合には、芳香族化合物は、反応ゾーン28に導入されると、溶媒中に実質的に溶解するのが好ましい。大気圧における芳香族化合物の沸点は、少なくとも約50℃であるのが好ましい。より好ましくは、芳香族化合物の沸点は、約80〜約400℃、最も好ましくは125〜155℃の範囲である。液相供給材料中に存在する芳香族化合物の量は、好ましくは約2〜約40重量%、より好ましくは約4〜約20重量%、最も好ましくは6〜15重量%の範囲である。
液相供給材料中に存在する芳香族化合物は2種又はそれ以上の異なる被酸化性化学物質の組合せを含むことができることが注目される。これらの2種又はそれ以上の異なる化学物質は、液相供給流中に混ぜ合わせて供給することもできるし、或いは複数の供給流で別々の供給することもできる。例えば、p−キシレン、m−キシレン、p−トルアルデヒド及びp−トルイル酸を含む芳香族化合物は、単一の入口又は複数の別々の入口を経て反応器に供給することができる。
液相供給流中に存在する溶媒は、好ましくは酸成分及び水成分を含む。溶媒は、好ましくは液相供給流中に約60〜約98重量%、より好ましくは約80〜約96重量%、最も好ましくは85〜94重量%の範囲の濃度で存在する。溶媒の酸成分は、好ましくは主に、炭素数1〜6の、より好ましくは炭素数2の有機低分子量モノカルボン酸である。最も好ましくは、溶媒の酸成分は主に酢酸である。好ましくは、酸成分は溶媒の少なくも約75重量%、より好ましくは溶媒の少なくとも約80重量%、最も好ましくは溶媒の85〜98重量%を構成し、残りは主に水である。一次酸化反応器20に導入される溶媒は、少量の不純物、例えばp−トルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、安息香酸、p−トルイル酸、p−トルアルデヒド、α−ブロモ−p−トルイル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、多環芳香族炭化水素及び/又は浮遊粒子を含むことができる。一次酸化反応器20中に導入される溶媒中の不純物の総量は約3重量%未満であるのが好ましい。
液相供給流中に存在する触媒系は、好ましくは芳香族化合物の酸化(部分酸化を含む)を促進できる均一液相触媒系である。より好ましくは、触媒系は、少なくとも1種の多価遷移金属を含む。更に好ましくは、多価遷移金属はコバルトを含む。更に好ましくは、触媒系はコバルト及び臭素を含む。最も好ましくは、触媒系はコバルト、臭素及びマンガンを含む。
コバルトが触媒系中に存在する場合には、液相供給流中に存在するコバルトの量は、反応媒体36の液相中のコバルト濃度が、好ましくは約300〜約6,000重量百万分率(ppmw)、より好ましくは約700〜約4,200ppmw、最も好ましくは1,200〜3,000ppmwの範囲に保持されるような量である。臭素が触媒系中に存在する場合には、液相供給流中に存在する臭素の量は、反応媒体36の液相中の臭素濃度が、好ましくは約300〜約5,000ppmw、より好ましくは約600〜約4,000ppmw、最も好ましくは900〜3,000ppmwの範囲に保持されるような量である。マンガンが触媒系中に存在する場合には、液相供給流中に存在するマンガンの量は、反応媒体36の液相中のマンガン濃度が、好ましくは約20〜約1,000ppmw、より好ましくは約40〜約500ppmw、最も好ましくは50〜200ppmwの範囲に保持されるような量である。
前に示した、反応媒体36の液相中のコバルト、臭素及び/又はマンガンの濃度は、時間平均及び容量平均で表している。ここで使用する用語「時間平均(time-averaged)」は、少なくとも100秒の連続期間にわたって同様に取られた少なくとも10個の測定値の平均を意味するものとする。ここで使用する「容量平均(volume-averaged)」は、ある容量全体にわたって均一な三次元間隔で取られた少なくとも10個の測定値の平均を意味するものとする。
反応ゾーン28中に導入される触媒系中のコバルト対臭素の重量比(Co:Br)は、好ましくは約0.25:1〜約4:1、より好ましくは約0.5:1〜約3:1、最も好ましくは0.75:1〜2:1の範囲である。反応ゾーン28中に導入される触媒系中のコバルト対マンガンの重量比(Co:Mn)は好ましくは約0.3:1〜約40:1、より好ましくは約5:1〜約30:1、最も好ましくは10:1〜25:1の範囲である。
一次酸化反応器20に導入される液相供給流は少量の不純物、例えばトルエン、エチルベンゼン、p−トルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、安息香酸、p−トルイル酸、p−トルアルデヒド、α−ブロモ−p−トルイル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、多環芳香族炭化水素、及び/又は浮遊粒子を含むことができる。一次酸化反応器20をテレフタル酸の製造に用いる場合には、m−キシレン及びo−キシレンも不純物と見なされる。一次酸化反応器20中に導入される液相供給流中の不純物の総量は約3重量%未満であるのが好ましい。
図1は、芳香族化合物、溶媒及び触媒系を一緒に混合して、単一供給流として一次酸化反応器20に導入する一態様を示すが、本発明の別の実施態様においては、芳香族化合物、溶媒及び触媒は一次酸化反応器20中に別々に導入することができる。例えば、純粋なp−キシレン流は溶媒及び触媒の入口とは別の入口を介して一次酸化反応器20中に供給できる。
酸化剤スパージャー34を経て一次酸化反応器20中に導入される、主として気相の酸化剤流は、分子状酸素(O2)を含む。好ましくは酸化剤流は約5〜約40モル%、より好ましくは約15〜約30モル%、最も好ましくは18〜24モル%の範囲の分子状酸素を含む。酸化剤流の残りは、酸化に不活性な窒素のような1種又はそれ以上の気体から主になるのが好ましい。より好ましくは、酸化剤流は分子状酸素及び窒素から本質的になる。最も好ましくは、酸化剤流は、約21モル%の分子状酸素及び約78〜約81モル%の窒素を含む乾燥空気である。本発明の別の実施態様において、酸化剤流は、実質的に純粋な酸素を含むことができる。
再び図1を参照すると、一次酸化反応器20には、好ましくは反応媒体36の上面44の上方に還流分配器42が装着される。還流分配器42は、公知の任意の液滴形成手段によって離脱ゾーン30中に主として液相の還流の液滴を導入する働きをする。より好ましくは、還流分配器42は、反応媒体36の上面44に向かって下方に向けられた液滴の噴霧を生じる。好ましくは、この下向きの液滴噴霧は、離脱ゾーン30の最大水平断面積の少なくとも約50%に作用する(即ち、関与して、影響を与える)。より好ましくは、液滴噴霧は離脱ゾーン30の最大水平断面積の少なくとも約75%に作用する。最も好ましくは、液滴噴霧は離脱ゾーン30の最大水平断面積の少なくとも90%に作用する。この下向きの液体還流噴霧は、反応媒体36の上面44又はその上方における泡立ちを防止するのに役立つことができ、更に、気体出口40に向かって流れる上方に移動する気体に同伴される任意の液体又はスラリー液滴の離脱を助けることができる。更に、液体還流は、気体出口40を経て離脱ゾーン30から回収される気体流出物中に存在する粒子状物質及び沈殿する可能性のある化合物(例えば溶解されている安息香酸、p−トルイル酸、4−CBA、テレフタル酸、触媒金属塩)の量を減少させる働きをすることができる。更に、離脱ゾーン30中への還流液滴の導入は、蒸留作用によって、気体出口40を経て回収される気体流出物の組成を調整するのに用いることができる。
還流分配器42を経て一次酸化反応器20中に導入される液体還流は、好ましくは供給口32a、b、c及びdを経て一次酸化反応器20中に導入される液相供給流の溶媒成分と概ね同じ組成を有する。従って、液体還流は酸成分及び水を含むのが好ましい。還流の酸成分は好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数2の低分子量有機モノカルボン酸である。最も好ましくは、還流の酸成分は酢酸である。好ましくは、酸成分は還流の少なくとも約75重量%、より好ましくは約80重量%、最も好ましくは85〜98重量%を構成し、残りは水である。還流は典型的には、液相供給流中の溶媒と実質的に同じ組成を有するので、この記載が反応器に導入される「総溶媒」に言及する場合には、このような「総溶媒」は、還流と供給流の溶媒部分の両方を含むものとする。
一次酸化反応器20中の液相酸化の間には、気体及びスラリー流出物流が反応器ゾーン28から実質的に連続的に回収されながら、供給材料、酸化剤及び還流が反応ゾーン28に実質的に連続的に導入されるのが好ましい。ここで使用する用語「実質的に連続的に」は、10分未満しか中断されない少なくとも10時間の期間を意味する。酸化の間において、芳香族化合物(例えばp−キシレン)は、好ましくは少なくとも約8,000kg/時、より好ましくは約15,000〜約200,000kg/時の範囲、更に好ましくは約22,000〜約150,000kg/時の範囲、最も好ましくは30,000〜100,000kg/時の範囲の速度で反応ゾーン28に実質的に連続的に導入する。入ってくる供給材料、酸化剤及び還流の流速は実質的に定常であるのが一般に好ましいが、本発明の一実施態様は、混合及び物質移動を改善するために、入ってくる供給材料、酸化剤及び/又は還流を脈動させることを考慮していることが注目される。入ってくる供給材料、酸化剤及び/又は還流がパルスで導入される場合には、それらの流速は、好ましくは、ここに挙げた定常状態の流速の約0〜約500%の範囲内で、より好ましくは約30〜約200%の範囲内で、最も好ましくは80〜120%の範囲内で変動する。
一次酸化反応器20中における平均空時反応速度(average space-time rate of reaction:STR)を、供給される芳香族化合物の質量/反応媒体36の単位容量/単位時間(例えば、供給されるp−キシレンのkg/m3/時)と定義する。慣例的用法では、生成物に転化されない芳香族化合物の量は、典型的にはSTRの計算前に供給流中の芳香族化合物の量から差し引かれるであろう。しかし、ここで好ましい、芳香族化合物の多く(例えばp−キシレン)の場合には典型的には転化率及び収率が高く、ここでは前述のようにこの用語を定義するのが都合よい。資本コスト及び運転インベントリーのために、特に反応は高STRで行うのが一般に好ましい。しかし、STRを次第に増加させながら反応を実施すると、部分酸化の質又は収率が影響される可能性がある。一次酸化反応器20は、芳香族化合物(例えばp−キシレン)のSTRが約25〜約400kg/m3/時、より好ましくは約30〜約250kg/m3/時、更に好ましくは約35〜約150kg/m3/時、最も好ましくは40〜100kg/m3/時の範囲である場合に特に有用である。
一次酸化反応器20の酸素−STRは、消費される分子状酸素の重量/反応媒体36の単位容量/単位時間(例えば、消費される分子状酸素のkg/m3/時)と定義する。資本コスト及び溶媒の酸化的消費のために、特に反応は高酸素−STRで行うのが一般に好ましい。しかし、酸素−STRを次第に増加させながら反応を実施すると、部分酸化の質又は収率が最終的に低下する。理論によって拘束されないが、これは、界面領域における気相から液体への、従ってバルク液体中への分子状酸素の移動速度に関係する可能性があるようである。酸素−STRが速すぎると、反応媒体のバルク液相中の溶存酸素量が過度に低くなる。
全体(global)平均酸素−STRは、ここでは単位時間に反応媒体36の全容量において消費される全酸素の重量(例えば、消費される分子状酸素のkg/m3/時)と定義する。一次酸化反応器20は、全体平均酸素−STRが約25〜約400kg/m3/時、より好ましくは約30〜約250kg/m3/時、更に好ましくは約35〜約150kg/m3/時、最も好ましくは40〜100kg/m3/時の範囲である場合に特に有用である。
一次酸化反応器20中における酸化の間において、[反応ゾーン28に入る総溶媒(供給材料及び還流の両方からの溶媒)の質量流速]対[反応ゾーン28に入る芳香族化合物の質量流速]の比は、約2:1〜約50:1、より好ましくは約5:1〜約40:1、最も好ましくは7.5:1〜25:1の範囲に保持するのが望ましい。(供給流の一部として導入される溶媒の質量流速)対(還流の一部として導入される溶媒の質量流速)の比は、好ましくは約0.5:1〜還流ゼロ、より好ましくは約0.5:1〜約4:1、更に好ましくは約1:1〜約2:1、最も好ましくは1.25:1〜1.5:1の範囲に保持する。
一次酸化反応器20中における液相酸化の間において、酸化剤流は、化学量論的酸素要求量を若干上回る分子状酸素を提供する量で一次酸化反応器20中に導入するのが好ましい。個々の芳香族化合物に関して最良の結果を得るのに必要な過剰の分子状酸素の量は、液相酸化の全体的経済性に影響を及ぼす。一次酸化反応器20中における液相酸化の間において、[反応器20に入る酸化剤流の質量流速]対[反応器20に入る芳香族化合物(例えばp−キシレン)の質量流速]の比は、約0.5:1〜約20:1、より好ましくは約1:1〜約10:1、最も好ましくは2:1〜6:1の範囲に保持するのが好ましい。
再び図1を参照すると、一次酸化反応器20中に導入される供給材料、酸化剤及び還流は共同で多相反応媒体36の少なくとも一部を形成する。反応媒体36は、好ましくは固相、液相及び気相を含む三相媒体である。前述のように、芳香族化合物(例えばp−キシレン)の酸化は、主として反応媒体36の液相で起こる。従って、反応媒体36の液相は、溶存酸素及び芳香族化合物を含む。一次酸化反応器20中で起こる酸化反応の発熱性が、供給口32a、b、c及びdを経て導入される溶媒(例えば酢酸及び水)の一部を沸騰/揮発させる。従って、反応器20中の反応媒体36の気相は、揮発された溶媒及び酸化剤流の溶解していない未反応部分から主として形成される。
先行技術のいくつかの酸化反応器は、反応媒体の加熱又は冷却に熱交換管/フィンを使用する。しかし、このような熱交換構造は、本明細書中に記載した本発明の反応器及び方法においては望ましくない可能性がある。従って、一次酸化反応器20は、反応媒体36と接触する表面を実質的に含まず且つ30,000ワット/m2より大きい時間平均熱流束を示すのが好ましい。更に、反応媒体36の時間平均反応熱の、好ましくは約50%未満、より好ましくは約30%未満、最も好ましくは10%未満が熱交換表面によって除去される。
反応媒体36の液相中の溶存酸素の濃度は、気相からの質量移動の速度と液相内の反応による消費速度との動的バランスである(即ち、それは供給気相中の分子状酸素の分圧だけで決められるのではなく、これは溶存酸素の供給速度の1つの要因であり且つ溶存酸素の上限濃度に影響を与える)。溶存酸素の量は局所的に変化し、気泡界面近くでより高くなる。全体的には、溶存酸素の量は、反応媒体36の種々の領域における供給要因と要求要因とのバランスによって決まる。時間的には、溶存酸素の量は、化学的消費速度に関連した気液混合の均一性によって決まる。反応媒体36の液相中の溶存酸素の供給と要求を適切に釣り合わせるためには、反応媒体36の液相中の時間平均及び容量平均酸素濃度は、約1モルppm(ppm molar)超、より好ましくは約4〜約1,000モルppmの範囲、更に好ましくは約8〜約500モルppmの範囲、最も好ましくは12〜120モルppmの範囲に保持するのが望ましい。
一次酸化反応器20中で実施される液相酸化反応は、好ましくは固体を生じる沈澱反応である。より好ましくは、一次酸化反応器20中で実施される液相酸化反応は、反応ゾーン28中に導入される芳香族化合物(例えばp−キシレン)の少なくとも約10重量%に、反応媒体36中で固体ポリカルボン酸化合物(例えば粗製テレフタル酸粒子)を形成させる。更に好ましくは、液相酸化は反応媒体36中で芳香族化合物の少なくとも約50重量%に固体ポリカルボン酸化合物を形成させる。最も好ましくは、液相酸化は反応媒体36中で芳香族化合物の少なくとも90重量%に固体ポリカルボン酸化合物を形成させる。反応媒体36中の固体の総量は、時間平均及び容量平均ベースで約3重量%超であるのが好ましい。より好ましくは、反応媒体36中の固体の総量は、約5〜約40重量%、更に好ましくは約10〜約35重量%、最も好ましくは15〜30重量%の範囲に保持される。一次酸化反応器20中において生成されるポリカルボン酸生成物(例えばテレフタル酸)の相当量が、反応媒体36の液相中に溶解したままではなく、反応媒体36中に固形分として存在するのが好ましい。反応媒体36中に存在する固相ポリカルボン酸生成物の量は、好ましくは反応媒体36中の総ポリカルボン酸酸化生成物(固相及び液相)の少なくとも約25重量%、より好ましくは少なくとも約75重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%である。反応媒体36中の固体の量に関する前述の数値範囲は、実質的に連続的な期間における一次酸化20の実質的に定常状態の運転に適用し、一次酸化反応器20の始動、運転停止又は次善運転(sub-optimal operation)には適用しない。反応媒体36中の固体の量は重量法で測定する。この重量法においては、スラリーの代表的な部分を反応媒体から回収して、重さを量る。反応媒体内に存在する全体的な固液分配を効率的に保持する条件において、遊離液体は固体部分から沈降又は濾過によって、沈殿固体の損失を伴わず且つ最初の液体質量の約10%未満を固体部分と共に残して効率的に除去する。固体上に残っている液体は、固体の昇華を伴わずに効率的に蒸発乾固する。固体部分の重量対最初のスラリー部分の重量の比は、典型的には百分率として表される固体の割合である。
一次酸化反応器20中において実施される沈澱反応は、反応媒体36と接触する一部の硬質構造の表面に汚染(即ち固形の沈着)を生じる可能性がある。従って、本発明の一実施態様において、一次酸化反応器20は、反応ゾーン28中に内部熱交換、撹拌又はバフリング構造を実質的に含まないのが好ましい。これは、このような構造が汚染を生じやすいためである。内部構造が反応ゾーン28中に存在する場合には、かなりの量の上向き平面領域を含む外面を有する内部構造は避けるのが望ましい。これは、このような上向き平面は汚染を非常に生じやすいためである。従って、内部構造が反応ゾーン28中に存在する場合には、傾斜が水平から約15°未満の実質的に平面である面によって形成されるのは、このような内部構造の上向き露出外面領域全体の約20%未満であるのが好ましい。この種の構造を有する内部構造を、本明細書中では「非汚染」構造を有する構造と称する。
再び図1を参照すると、一次酸化反応器20の物理的構造は、不純物の生成を最小限に抑えた芳香族化合物(例えばp−キシレン)の最適化酸化を実現するのに役立つ。容器シェル22の細長い(elongated)反応セクション24は、実質的に円筒形の本体46と下部ヘッド48を含むのが好ましい。反応ゾーン28の上端は、円筒形本体46の頂部の直径方向に広がる水平面50によって規定される。反応ゾーン28の下端52は、下部ヘッド48の最低内面によって規定される。典型的には、反応ゾーン28の下端52は、スラリー出口38の開口部の近傍に位置する。従って、一次酸化反応器20内に規定される細長い反応ゾーン28は、円筒形本体46の延長軸に沿って反応ゾーン28の上端50から下端52まで測定された最大長さLを有する。反応ゾーン28の長さLは好ましくは約10〜約100m、より好ましくは約20〜約75m、最も好ましくは25〜50mの範囲である。反応ゾーン28は、典型的には円筒形本体46の最大内径に等しい最大直径(幅)Dを有する。反応ゾーン28の最大直径Dは好ましくは約1〜約12m、より好ましくは約2〜約10m、更に好ましくは約3.1〜約9m、最も好ましくは4〜8mの範囲である。本発明の好ましい実施態様において、反応ゾーン28は約6:1〜約30:1の長さ対直径比L:Dを有する。更に好ましくは、反応ゾーン28は約8:1〜約20:1の範囲のL:D比を有する。最も好ましくは、反応ゾーン28は9:1〜15:1の範囲のL:D比を有する。
前述のように、一次酸化反応器20中の反応ゾーン28は多相反応媒体36を受ける。反応媒体36は、反応ゾーン28の下端52と一致した下端と上面44に位置する上端を有する。反応媒体36の上面44は、反応ゾーン28の内容物が気相連続状態から液相連続状態に遷移する垂直位置において反応ゾーン28を横断する水平面に沿って規定される。上面44は、好ましくは反応ゾーン28の内容物の薄い水平スライスの局所的な時間平均ガス・ホールドアップが0.9である垂直位置に位置する。
反応媒体36は上端と下端との間で測定された最大高さHを有する。反応媒体36の最大幅Wは、典型的には円筒形本体46の最大直径Dに等しい。一次酸化反応器20中における液相酸化時には、Hは、好ましくはLの約60〜約120%、より好ましくは約80〜約110%、最も好ましくは85〜100%に保持する。本発明の好ましい実施態様において、反応媒体36は高さ対幅比H:Wが約3:1超である。より好ましくは、反応媒体36のH:W比は約7:1〜約25:1の範囲である。更に好ましくは、反応媒体36のH:W比は約8:1〜約20:1の範囲である。最も好ましくは、反応媒体36のH:W比は9:1〜15:1の範囲である。本発明の一実施態様においては、L=H及びD=Wであり、従って、ここでL及びDに関して示された種々の寸法又は比はH及びWにも適用され、逆の場合も同じである。
本発明の一実施態様に従って提供される比較的高いL:D及びH:W比は、本発明のシステムのいくつかの重要な利点に寄与することができる。以下に更に詳述するように、比較的高いL:D比及びH:W比と後述する他のいくつかの特徴が、反応媒体36中の分子状酸素及び/又は芳香族化合物(例えばp−キシレン)の濃度の有益な垂直方向勾配を促進できることを発見した。全体にわたって比較的均一な濃度を有する、充分に混合された反応媒体を好ましいとする従来の見識に反して、酸素濃度及び/又は芳香族化合物濃度の垂直方向における段階付けはより効率的で且つ経済的な酸化反応を容易にすることを発見した。反応媒体36の頂部近くにおいて酸素濃度及び芳香族化合物濃度を最小にすることは、上方の気体出口40からの未反応酸素及び未反応芳香族化合物の損失を回避するのに役立つことができる。しかし、芳香族化合物濃度及び未反応酸素濃度が反応媒体36の全体にわたって低い場合には、酸化の速度及び/又は選択率は減少する。従って、分子状酸素及び/又は芳香族化合物の濃度は、反応媒体36の頂部近くよりも反応媒体36の底部近くにおいて著しく高いのが好ましい。
更に、高いL:D比及びH:W比は、反応媒体36の底部における圧力を、反応媒体36の頂部における圧力よりもかなり大きくする。この垂直方向の圧力勾配は、反応媒体36の高さ及び密度によって生じるものである。この垂直方向の圧力勾配の1つの利点は、容器の底部における高圧が、浅い反応器中において同程度の温度及び塔頂圧において別の方法で達成され得るよりも大きい酸素溶解度及び物質移動を推進することである。従って、酸化反応は、より浅い容器中で必要とされるよりも低い温度で実施できる。一次酸化反応器20がp−キシレンの粗製テレフタル酸(CTA)への部分酸化に用いられる場合には、より低い反応温度において同じか又はより良好な酸素の物質移動速度で運転できることは多くの点で有利である。例えば、p−キシレンの低温酸化は、反応時に燃焼される溶媒の量を低減する。以下に詳述するように、低温酸化は、また、小さく、表面積が大きく、緩く結合した、溶解の容易なCTA粒子の形成に有利であり、このようなCTA粒子は、従来の高温酸化方法によって生成される、大きく、表面積が小さく、高密度のCTA粒子よりも経済的な精製法に供することができる。
反応器20中における一次酸化時には、反応媒体36の時間平均及び容量平均温度は、約125〜約200℃、より好ましくは約140〜約180℃、最も好ましくは150〜170℃の範囲に保持するのが望ましい。反応媒体36の上方の塔頂圧は、好ましくは約1〜約20バール・ゲージ(bar gauge;barg)、より好ましくは約2〜約12barg、最も好ましくは4〜8bargの範囲に保持する。好ましくは、反応媒体36の頂部と反応媒体36の底部の間の圧力差は、約0.4〜約5バール、より好ましくは約0.7〜約3バール、最も好ましくは1〜2バールの範囲である。反応媒体36の上方の塔頂圧は、比較的一定の値に保持するのが一般に好ましいが、本発明の一実施態様は、反応媒体36中における混合及び/又は物質移動の改善を促進するために塔頂圧を脈動させることを考慮に入れる。塔頂圧を脈動させる場合には、脈動圧は、ここに挙げた定常状態の塔頂圧の約60〜約140%、より好ましくは約85〜約115%、最も好ましくは95〜105%の範囲であるのが望ましい。
反応ゾーン28の高いL:D比の更なる利点は、それが反応媒体36の平均空塔速度の増加に寄与できることである。反応媒体36に関してここで使用する用語「空塔速度(superficial velocity)」及び「空塔気体速度(superficial gas velocity)」は、「(反応器中のある高度における反応媒体36の気相の体積流速)÷(その高度における反応器の水平断面積)」を意味するものとする。反応ゾーン28の高いL:Dによってもたらされる増大した空塔速度は、局所の混合を促進でき、また、反応媒体36のガス・ホールドアップを増大することができる。反応媒体36の1/4高さ、1/2高さ及び/又は3/4の高さにおける反応媒体の時間平均空塔速度は、好ましくは約0.3m/秒超、より好ましくは約0.4〜約5m/秒の範囲、更に好ましくは約0.8〜約4m/秒の範囲、最も好ましくは1〜3m/秒の範囲である。
再び図1を参照すると、一次酸化反応器20の離脱セクション26は単に、反応セクション24の真上に位置する容器シェル22の幅が広くなった部分である。気相が反応媒体36の上面44の上方に上昇し、気体出口40に近づくにつれて、離脱セクション26は一次酸化反応器20中の上向きに流れる気相の速度を減少させる。気相の上向き速度のこのような減少は、上向きに流れる気相中の同伴液体及び/又は固体の除去の促進に役立ち、その結果、反応媒体36の液相中に存在するいくつかの成分の不所望な損失を減少させる。
離脱セクション26は、好ましくは概ね円錐台形の遷移壁54、概ね円筒形の幅広い側壁56及び上部ヘッド58を含む。遷移壁54の狭い下端は、反応セクション24の円筒形本体46の頂部に連結されている。遷移壁54の幅の広い上端は、幅の広い側壁56の底部に連結されている。遷移壁54は、狭い下端から、垂線から、好ましくは約10〜約70°の範囲の角度で、より好ましくは垂線から約15〜約50°の範囲の角度で、最も好ましくは垂線から15〜45°の範囲の角度で上方外側に向かって広がる。幅の広い側壁56は反応セクション24の最大直径Dよりも一般に大きい最大直径Xを有するが、反応セクション24の上部が反応セクション24の全最大直径よりも小さい直径を有する場合には、Xは実際にはDよりも小さくてもよい。本発明の好ましい実施態様において、(幅の広い側壁56の直径)対(反応セクション24の最大直径)の比X:Dは約0.8:1〜約4:1、最も好ましくは1.1:1〜2:1の範囲である。上部ヘッド58は幅の広い側壁56の頂部に連結されている。上部ヘッド58は好ましくは、気体出口40を経て離脱ゾーン30から気体を逃散させる中央の開口部を規定する概ね楕円形のヘッド部材である。或いは、上部ヘッド58は、円錐形を含む任意の形状であることができる。離脱ゾーン30は、反応ゾーン28の頂部50から離脱ゾーン30の最上部まで測定された最大高さYを有する。(反応ゾーン28の長さ)対(離脱ゾーン30の高さ)の比L:Yは、好ましくは約2:1〜約24:1、より好ましくは約3:1〜約20:1、最も好ましくは4:1〜16:1の範囲である。
ここで図1〜5を参照して、酸化剤スパージャー34の位置及び構造についてより詳細に記載する。図2及び3は、酸化剤スパージャー34がリング部材60及び1対の酸化剤入口導管64a,bを含むことができることを示す。好都合なことには、図2に示されるように、これらの酸化剤入口導管64a,bはリング部材60の上方の高度で容器に入り、次いで下向きに転じることができる。或いは、酸化剤入口導管64a,bはリング部材60の下方で又はリング部材の60と概ね同じ水平面で容器に入ることができる。各酸化剤入口導管64a,bは、容器シェル22中に形成された、それぞれの酸化剤入口66a,bに連結される第1端と、リング部材60に流体連結される第2端を含む。リング部材60は、好ましくは導管から、より好ましくは複数の直導管部分から、最も好ましくは互いに堅固に連結されて複数の管状多角形リングを形成する複数の直管部分から形成される。リング部材60は、好ましくは少なくとも3個の、より好ましくは6〜10個の、最も好ましくは8個の直管部分から形成される。従って、リング部材60が8個の管部分から形成される場合には、それはほぼ八角形の形状を有する。酸化剤入口導管64a,b及びリング部材60を構成する管部分は、約0.1m超の、より好ましくは約0.2〜約2mの範囲の、最も好ましくは0.25〜1mの範囲の公称直径を有するのが望ましい。おそらく図3に最もよく示されるように、スパージャーリング60の上部には実質的に開口部が形成されないことが好ましい。
おそらく図4及び5に最もよく示すように、酸化剤スパージャーリング60の底部は多数の酸化剤用開口部68を提供する。酸化剤用開口部68は、好ましくは酸化剤用開口部68によって規定される総孔面積の少なくとも約1%がリング部材60の中心線64(図5)の下方に位置するように構成される。ここで、中心線64は、リング部材60の体積中心の高度に位置する。より好ましくは、全酸化剤用開口部68によって規定される総孔面積の少なくとも約5%が中心線64の下方に位置し、総孔面積の少なくとも約2%が、垂線の約30°以内のほぼ下向きに酸化剤流を排出する開口部68によって規定されている。更に好ましくは、全酸化剤用開口部68によって規定される総孔面積の少なくとも約20%が中心線64の下方に位置し、総孔面積の少なくとも約10%が、垂線の約30°以内のほぼ下向きに酸化剤流を排出する開口部68によって規定されている。最も好ましくは、全酸化剤用開口部68によって規定される総孔面積の少なくとも約75%が中心線64の下方に位置し、総孔面積の少なくとも約40%が、垂線の約30°以内のほぼ下向きに酸化剤流を排出する開口部68によって規定されている。中心線64の上方に位置する全酸化剤用開口部68によって規定される総孔面積の割合は、好ましくは約75%未満、より好ましくは約50%未満、更に好ましくは約25%未満、最も好ましくは5%未満である。
図4及び5に示すように、酸化剤用開口部68は、下向き開口部68a及び斜め開口部68bを含む。下向き開口部68aは、垂線の約30°以内の、より好ましくは垂線の約15°以内の、最も好ましくは垂線の5°以内の角度でほぼ下向きに酸化剤流を排出するように構成される。ここで図5を参照すると、斜め開口部68bは、垂線から約15〜75°の範囲の角度Aでほぼ外側下向きに酸化剤流を排出するように構成される。より好ましくは、角度Aは、垂線から約30〜約60°の範囲であり、最も好ましくは垂線から40〜50°の範囲である。
実質的に全ての酸化剤用開口部68がほぼ同一の直径を有するのが好ましい。酸化剤用開口部68の直径は、好ましくは約2〜約300mm、より好ましくは約4〜約120mm、最も好ましくは8〜60mmの範囲である。リング部材60中の酸化剤用開口部68の総数は、以下に詳述する低圧力降下基準を満たすように選択される。好ましくは、リング部材60中に形成される酸化剤用開口部68の総数は、少なくとも10個、より好ましくは約20〜約200個の範囲、最も好ましくは40〜100個の範囲である。
図1〜5は酸化剤スパージャー34の極めて特殊な構造を示すが、種々の酸化剤スパージャーの構造を用いて、ここに記載した利点を達成できることが注目される。例えば、酸化剤スパージャーは、図1〜5に示す八角形のリング部材の構造を必ずしも有する必要はない。もっと正確に言えば、酸化剤スパージャーは、酸化剤流を排出するための離間された複数の開口部を使用する任意の構造の流通導管から形成されることが可能である。流通導管中の酸化剤用開口部の大きさ、数及び排出方向は好ましくは前述の範囲内である。更に、酸化剤スパージャーは好ましくは、前述の分子状酸素の方位角及び半径方向分配を提供するように構成される。
酸化剤スパージャー34の具体的な構造にかかわらず、酸化剤スパージャーは、流通導管から出て酸化剤用開口部を通って反応ゾーンにいたる酸化剤流の排出に付随する圧力降下を最小限に抑えるように構成され、運転するのが好ましい。このような圧力降下は、「(酸化剤スパージャーの酸化剤入口66a、bにおける流通導管の内側の酸化剤流の時間平均静圧)−(酸化剤流の1/2がその垂直位置の上方に導入され且つ酸化剤流の1/2がその垂直位置の下方に導入される高度における反応ゾーン中の時間平均静圧)」として計算する。本発明の好ましい実施態様において、酸化剤スパージャーからの酸化剤流の排出に付随する時間平均圧力降下は、約0.3メガパスカル(MPa)未満、より好ましくは約0.2MPa未満、更に好ましくは約0.1MPa未満、最も好ましくは0.05MPa未満である。
場合によっては、酸化剤スパージャーの固体による汚染を防ぐために、酸化剤スパージャー34を液体(例えば酢酸、水及び/又はp−キシレン)で連続的に又は断続的にフラッシュすることができる。このような液体フラッシを用いる場合には、有効量の液体(即ち、酸化剤流中にもともと存在するかもしれない微量の液滴だけでない)が、毎日少なくとも1分超の期間、酸化剤用開口部から酸化剤スパージャーに通されるのが好ましい。液体が酸化剤スパージャー34から連続的又は定期的に排出される場合には、「(酸化剤スパージャーを通る液体の質量流速)対(酸化剤スパージャーを通る分子状酸素の質量流速)」の時間平均比は約0.05:1〜約30:1、又は約0.1:1〜約2:1、又は更には0.2:1〜1:1の範囲であるのが好ましい。
多相反応媒体を含む多くの従来型の気泡塔型反応器においては、酸化剤スパージャー(又は酸化剤流を反応ゾーン中に導入する他のメカニズム)より下に位置する反応媒体の実質的に全てが非常に低いガス・ホールドアップ値を有する。当業界で知られる通り、「ガス・ホールドアップ」は単に、気体状態の多相媒体の体積分率である。媒体中のガス・ホールドアップの低いゾーンは、「無通気」ゾーンと称することもできる。多くの従来型のスラリー気泡塔型反応器においては、反応媒体の総容量のかなりの部分が、酸化剤スパージャー(又は酸化剤流を反応ゾーン中に導入する他のメカニズム)より下に位置する。従って、従来型の気泡塔型反応器の底部に存在する反応媒体のかなりの部分が無通気である。
気泡塔型反応器中で酸化に供される反応媒体中の無通気ゾーンの量を最小限に抑えると、いくつかの型の不所望な不純物の発生を最小限に抑えることができることを発見した。反応媒体の無通気ゾーンに含まれる酸化剤気泡は比較的少ない。この低容積の酸化剤気泡は、反応媒体の液相中に溶解させるのに利用できる分子状酸素の量を減少させる。従って、反応媒体の無通気ゾーン中の液相中の分子状酸素は比較的低濃度である。反応媒体のこれらの酸素が不足した無通気ゾーンは、望ましい酸化反応ではなく、不所望な副反応を促進する傾向がある。例えばp−キシレンを部分酸化してテレフタル酸を生成させる場合には、反応媒体の液相中における不充分な酸素利用可能性のため、安息香酸及び共役芳香環、とりわけ、フルオレノン類及びアントラキノン類として知られる、非常に不所望な有色分子が不所望に多量に形成される可能性がある。
本発明の一実施態様によれば、液相酸化は、ガス・ホールドアップが低い反応媒体の体積分率を最小限に抑えられるように構成し且つ運転する気泡塔型反応中で実施する。このような無通気ゾーンの最小化は、反応媒体の全容積を均一容積の2,000個の別々の水平スライスに理論的に分割することによって定量化することができる。最上部及び最下部の水平スライスを除いて、各水平スライスは、側面で反応器の側壁と境界を接し且つ頂部及び底部で仮想水平面と境界を接する別々の容積である。最上部の水平スライスは、底部で仮想水平面と境界を接し且つ頂部で反応媒体の上面と境界を接する。最下部の水平スライスは、頂部で仮想水平面と境界を接し且つ底部で容器の下端と境界を接する。反応媒体を、等容積の2,000個の別々の水平スライスに理論的に分割すると、各水平スライスの時間平均及び体積平均ガス・ホールドアップを算出することができる。無通気ゾーンの量のこの定量化法を用いる場合には、時間平均及び体積平均ガス・ホールドアップが0.1未満である水平スライスの数は、30個未満、より好ましくは15個未満、更に好ましくは6個未満、更に好ましくは4個未満、最も好ましくは2個未満であるのが望ましい。ガス・ホールドアップが0.2未満である水平スライスの数は、80個未満、より好ましくは40個未満、更に好ましくは20個未満、更に好ましくは12個未満、最も好ましくは5個未満であるのが望ましい。ガス・ホールドアップが0.3未満である水平スライスの数は、120個未満、より好ましくは80個未満、更に好ましくは40個未満、更に好ましくは20個未満、最も好ましくは15個未満であるのが望ましい。
再び図1及び2を参照すると、反応器ゾーン28中のより下方への酸化剤スパージャー34の配置には、反応媒体36中の無通気ゾーンの量の減少を含むいくつかの利点があることを発見した。反応媒体36の高さをH、反応ゾーン28の長さをL、反応ゾーン28の最大直径をDとすると、酸化剤流の大部分(即ち、>50重量%)が、反応ゾーン28の下端52の約0.025H、0.022L及び/又は0.25D以内の反応ゾーン28中に導入されるのが好ましい。より好ましくは、酸化剤流の大部分は、反応器ゾーン28の下端52の約0.02H、0.018L及び/又は0.2D以内の反応ゾーン28中に導入する。最も好ましくは、酸化剤流の大部分は、反応器ゾーン28の下端52の0.015H、0.013L及び/又は0.15D以内の反応ゾーン28中に導入する。
図2に示す実施態様において、酸化剤流の実質的に全てが反応器ゾーン28の約0.25H、0.022L及び/又は0.25D以内の反応ゾーン28中に入るように、反応ゾーン28の下端52と酸化剤スパージャー34の上部酸化剤用開口部68の出口との間の垂直距離Y1は約0.25H、0.022L及び/又は0.25D未満である。より好ましくは、Y1は約0.02H、0.018L及び/又は0.2D未満である。最も好ましくは、Y1は0.015H、0.013L及び/又は0.15D未満であるが、0.005H、0.004L及び/又は0.06Dより大きい。図2は、容器シェル22の円筒形本体46の下縁部が容器シェル22の楕円形下部ヘッド48の上縁部と接する位置に接線72を示す。或いは、下部ヘッド48は、円錐形を含む任意の形状であることができ、接線はそれでも円筒形本体46の下縁部と定義される。接線72と酸化剤スパージャー34の頂部との間の垂直距離Y2は、好ましくは少なくとも約0.0012H、0.001L、及び/又は0.01D;より好ましくは少なくとも約0.005H、0.004L及び/又は0.05D;最も好ましくは少なくとも0.01H、0.008L及び/又は0.1Dである。反応ゾーン28の下端52と酸化剤スパージャー34の下部酸化剤用開口部70の出口との間の垂直距離Y3は、好ましくは約0.015H、0.013L及び/又は0.15D未満;より好ましくは約0.012H、0.01L及び/又は0.1D未満;最も好ましくは0.01H、0.008L及び/又は0.075D未満であるが0.003H、0.002L及び/又は0.025Dより大きい。
反応媒体36中の無通気ゾーン(即ち、ガス・ホールドアップの低いゾーン)を最小限に抑えることによって提供される利点に加えて、全反応媒体36のガス・ホールドアップを最大にすることによって酸化を増大できることを発見した。反応媒体36は時間平均及び体積平均ガス・ホールドアップが、好ましくは約0.4〜約0.9の範囲、より好ましくは約0.5〜約0.8の範囲、最も好ましくは0.55〜0.70の範囲である。一次酸化反応器20のいくつかの物理的な及び操作上の属性が、前述の高いガス・ホールドアップに寄与する。例えば、所与の反応器サイズ及び酸化剤流の流れに関しては、反応ゾーン28の高いL:D比がより短い直径を与え、それが反応媒体36中の空塔速度を増大させ、その結果、ガス・ホールドアップ値が増大する。更に、所与の一定空塔速度として考えても、気泡塔の実直径及びL:D比が平均ガス・ホールドアップに影響を及ぼすことがわかっている。また、無通気ゾーンの最小化(特に、反応ゾーン28の底部において)が、ガス・ホールドアップ値の増大に寄与する。更にまた、気泡塔型反応器の塔頂圧及び機械的構造が、ここに開示した高い空塔速度及びガス・ホールドアップ値において運転安定性に影響を及ぼす可能性がある。
再び図1を参照すると、反応媒体36中における芳香族化合物(例えばp−キシレン)の改善された分布は、垂直方向に離間された複数の位置で反応ゾーン28中に液相供給流を導入することによって提供することができることを発見した。好ましくは、液相供給流は、反応ゾーン28中に少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの供給開口部を経て導入する。ここで使用する用語「供給開口部(feed openings)」は、液相供給流が、反応媒体36との混合のために、反応ゾーン28中に排出される開口部を意味するものとする。少なくとも2つの供給開口部が、互いに垂直に少なくとも約0.5D、より好ましくは少なくとも約1.5D、最も好ましくは少なくとも3Dの間隔をあけて配置されるのが望ましい。しかし、最上部の供給開口部は、最下部の酸化剤用開口部から垂直に約0.75H、0.65L及び/又は8D以下;より好ましくは約0.5H、0.4L及び/又は5D以下;最も好ましくは0.4H、0.35L及び/又は4D以下の間隔をあけて配置されるのが望ましい。
液相供給流は複数の垂直位置において導入するのが望ましいが、反応媒体36中における芳香族化合物の改善された分布は、液相供給流の大部分を反応媒体36及び/又は反応ゾーン28の下半分に導入する場合に提供されることも発見した。好ましくは、液相供給流の少なくとも約75重量%を、反応媒体36及び/又は反応ゾーン28の下半分に導入する。最も好ましくは、液相供給流の少なくとも90重量%を、反応媒体36及び/又は反応ゾーン28の下半分に導入する。更に、液相供給流の少なくとも約30重量%を、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約1.5D以内において反応ゾーン28中に導入するのが好ましい。酸化剤流が反応ゾーン28に導入されるこの最も低い垂直位置は典型的には酸化剤スパージャーの底部であるが、酸化剤流を反応ゾーン28に導入するための種々の代替構造も、本発明の好ましい実施態様によって考慮される。好ましくは、液相供給流の少なくとも約50重量%を、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約2.5D以内に導入する。好ましくは、液相供給流の少なくとも約75重量%を、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約5D以内に導入する。
各供給開口部は、それを通して供給材料が排出される孔面積を規定する。全供給口の累積孔面積の少なくとも約30%が、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約1.5D以内に位置するのが好ましい。好ましくは、全供給口の累積孔面積の少なくとも約50%が、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約2.5D以内に位置する。好ましくは、全供給口の累積孔面積の少なくとも約75%が、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約5D以内に位置する。
再び図1を参照すると、本発明の一実施態様において、供給口32a、b、c、dは単に、容器シェル22の一側に沿って垂直方向に並べられた一連の開口部である。これらの供給開口部は好ましくは約7cm未満の、より好ましくは約0.25〜約5cmの範囲の、最も好ましくは0.4〜2cmの範囲の実質的に同様な直径を有する。一次酸化反応器20には、好ましくは各供給開口部から出る液相供給流の流速を調整するためのシステムが装着される。このような流量調整システムは好ましくは、個別の供給口32a、b、c、dのそれぞれに対して個別の流量調整弁74a、b、c、dを含む。更に、一次酸化反応器20中には、液相供給流の少なくとも一部を少なくとも約2m/秒の、より好ましくは約5m/秒の、更に好ましくは少なくとも約6m/秒の、最も好ましくは8〜20m/秒の範囲の高い入口空塔速度で反応ゾーン28に導入させる流量調整システムが装着されるのが望ましい。ここで使用する用語「入口空塔速度」は、(供給開口部から出る供給流の時間平均体積流速)÷(供給開口部の面積)を意味する。好ましくは、供給流の少なくとも約50重量%が高い入口空塔速度で反応ゾーン28に導入される。最も好ましくは、供給流の実質的に全てが高い入口空塔速度で反応ゾーン28に導入される。
ここで図6及び7を参照すると、液相供給流を反応ゾーン28に導入するための代替システムが示されている。この実施態様においては、供給流は4つの異なった高度で反応ゾーン28に導入される。各高度には、個別の供給分配システム76a、b、c、dが装着される。各供給分配システム76は、主供給導管78とマニホールド80を含む。各マニホールド80は容器シェル22の反応ゾーン28中に伸びる個別のインサート導管86、88に連結された少なくとも2つの出口82、84を具備する。各インサート導管86、88は、反応ゾーン28中に供給流を排出するための個別の供給開口部87、89を提供する。供給開口部87、89は好ましくは約7cm未満の、より好ましくは約0.25〜約5cmの範囲の、最も好ましくは0.4〜2cmの範囲の実質的に同様な直径を有する。各供給分配システム76a、b、c、dの供給開口部87、89は、供給流を反応ゾーン28中に反対の向きで導入するように直径に沿って向かい合って配置するのが好ましい。更に、隣接する供給分配システム76の直径に沿って向かい合って配置された供給開口部86、88は、互いに90°回転した位置に配向するのが好ましい。運転中には、液相供給流は主供給導管78に装入され、引き続いてマニホールド80に入る。マニホールド80は、供給開口部87、89を介して反応器20の正反対の2つの側において同時に導入するために、供給流を均等に分配する。
図8は、各供給分配システム76に、インサート導管86、88(図7に図示)ではなく、バヨネットチューブ(bayonet tube)90、92が装着された代替構造を示す。バヨネットチューブ90、92は反応ゾーン28中に突き出ており、液相供給材料を反応ゾーン28に排出するための多数の小さい供給開口部94、96を含む。バヨネットチューブ90、92のこの小さい供給開口部94、96は、約50mm未満、より好ましくは約2〜約25mmの、最も好ましくは4〜15mmの実質的に同一の直径を有するのが望ましい。
図9〜11は、代替供給分配システム100を示す。供給分配システム100は、一次酸化反応器20の側壁の多数の貫通を必要とせずに、垂直方向にも横方向にも離間された複数の位置で液相供給流を導入する。供給導入システム100は、一般に単一の入口導管102、ヘッダー104、複数の直立分配管106、横支持機構108及び縦支持機構110を含む。入口導管102は容器シェル22の本体46の側壁を貫通する。入口導管102はヘッダー104と流体連結される。ヘッダー104は入口導管102から受けた供給流を直立分配管106の間に均等に分配する。各分配管106は、供給流を反応ゾーン28に排出するための、垂直方向に離間された複数の供給開口部112a、b、c、dを有する。横支持機構108は、各分配管106に連結され、分配管106の横方向の相対運動を抑える。縦支持機構110は、好ましくは横支持機構108に及び酸化剤スパージャー34の頂部に連結される。縦支持機構110は、反応ゾーン28中の分配管106の縦方向の動きを実質的に抑える。供給開口部112は、約50mm未満、より好ましくは約2〜約25mm、最も好ましくは4〜15mmの実質的に同一の直径を有するのが望ましい。図9〜11に示された供給分配システム100の供給開口部112の垂直方向の間隔は、図1の供給分配システムに関して前述したのと実質的に同じであることができる。場合によっては、供給開口部は単純な孔ではなく、細長いノズルであることができる。場合によっては、1つ又はそれ以上の偏向装置が流通導管の外側及びそこから反応媒体中に出ていく流路中に存在することができる。場合によっては、流通導管の底部近くの開口部は、液相供給分配システムの中から固体を連続的又は断続的にパージする大きさにすることができる。場合によっては、フラッパーアセンブリ、逆止め弁、過流防止弁、動力操作弁などのような機械装置を、運転異常時に固体の進入を防ぐために又は液相供給分配システム内から蓄積固体を排出させるために、使用できる。
多くの気泡塔型反応器中の反応媒体のフローパターンは、芳香族化合物が主として反応媒体の一側に沿って導入される場合には特に、反応媒体中における芳香族化合物の不均一な方位角分配を可能できることが判明した。ここで使用する用語「方位角」は、反応ゾーンの直立延長軸の周囲の角又は間隔を意味する。ここで使用する「直立」は、垂線の45°以内を意味する。本発明の一実施態様において、芳香族化合物(例えばp−キシレン)を含む供給流は、方位角に離間された複数の供給開口部を経て反応ゾーンに導入する。これらの方位角に離間された供給開口部は、反応媒体中における過度に高い及び過度に低い芳香族化合物濃度の領域を防ぐのに役立つことができる。図6〜11に示された種々の供給導入システムは、供給開口部の適正な方位角間隔を提供するシステムの例である。
再び図7を参照すると、液相供給材料流の反応媒体中への、方位角に離間された導入を定量化するために、反応媒体を、ほぼ等容積の直立方位角クアドラント(quadrant)Q1、Q2、Q3、Q4に理論的に分割することができる。これらの方位角クアドラントQ1、Q2、Q3、Q4は、反応媒体の最大縦寸法及び最大半径方向寸法を越えて広がる1対の仮想上の直交する交差垂直面P1、P2によって規定される。反応媒体が円筒容器に含まれる場合には、仮想交差垂直面P1、P2の交線は円筒の垂直中心線とほぼ一致し、各方位角クアドラントQ1、Q2、Q3、Q4は、反応媒体の高さに等しい高さを有するほぼくさび形の垂直容積であろう。芳香族化合物の相当部分が、少なくとも2つの異なる方位角クアドラント中に位置する供給開口部を経て反応媒体中に排出されるのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、芳香族化合物の約80重量%以下が、単一の方位角クアドラント中に位置することができる供給開口部を通して反応媒体中に排出される。より好ましくは、芳香族化合物の約60重量%以下が、単一の方位角クアドラント中に位置することができる供給開口部を通して反応媒体中に排出される。最も好ましくは、芳香族化合物の40重量%以下が、単一の方位角クアドラント中に位置することができる供給開口部を通して反応媒体中に排出される。芳香族化合物の方位角分配に関するこれらのパラメーターは、芳香族化合物の最大可能量が方位角クアドラントの1つに排出されているような方位角に方位角クアドラントが向けられた場合に、測定する。例えば、全供給流が互いに方位角で89°の間隔をあけて配置された2つの供給開口部を経て反応媒体中に排出される場合には、方位角クアドラントを両方の供給開口部が単一の方位角クアドラントに位置するような方位角に配向させることができるので、4つの方位角クアドラントにおける方位角分配を測定するために供給液の100重量%を単一の方位角クアドラントの反応媒体中に排出させる。
供給開口部の適正な方位角間隔に関連する利点に加えて、気泡塔型反応器中の供給開口部の適正な半径方向間隔も重要であり得ることを発見した。反応媒体中に導入される芳香族化合物の相当部分が、容器の側壁から内側に向かって半径方向に離間された供給開口部を経て排出されるのが好ましい。従って、本発明の一実施態様において、芳香族化合物の相当部分は、反応ゾーンを規定する直立側壁から内側に向かって離間された「好ましい半径方向供給ゾーン」に位置する供給開口部を経て反応ゾーンに入る。
再び図7を参照すると、好ましい半径方向供給ゾーンFZは、反応ゾーン28中に中心がある、外径DOが0.9D(Dは反応ゾーン28の直径である)の理論的直立円筒の形をとることができる。従って、厚さ0.05Dの外環(outer annulus)OAが、好ましい半径方向供給ゾーンFZと反応ゾーン28を規定する側壁の内側との間に規定される。この外環OAに位置する供給開口部によっては、芳香族化合物が、ほとんど又は全く、反応ゾーン28に導入されないことが好ましい。
別の実施態様において、反応ゾーン28の中央には、芳香族化合物が、ほとんど又は全く導入されないのが好ましい。従って、図8に示すように、好ましい半径方向供給ゾーンFZは、反応ゾーン28に中心がある、外径DOが0.9Dで且つ内径DIが0.2Dの理論的直立環の形をとることができる。従って、この実施態様においては、直径が0.2Dの内筒ICが、好ましい半径方向供給ゾーンFZの中央から「切り取られる」。この内筒ICに位置する供給開口部によっては、芳香族化合物が、ほとんど又は全く、反応ゾーン28中に導入されないのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様において、好ましい半径方向供給ゾーンが前述の円筒又は環の形状を有するか否かにかかわらず、芳香族化合物の相当部分が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に導入される。より好ましくは、芳香族化合物の少なくとも約25重量%が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に排出される。更に好ましくは、芳香族化合物の少なくとも約50重量%が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に排出される。最も好ましくは、芳香族化合物の少なくとも75重量%が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に排出される。
図7及び8に示す理論的方位角クアドラント及び理論的な好ましい半径方向供給ゾーンを液相供給流の分配に関して説明したが、気相酸化剤流の適正な方位角及び半径方向分配もまた、いくつかの利点を有することを発見した。従って、本発明の一実施態様においては、前に示した、液相供給流の方位角及び半径方向分配の説明を、気相酸化剤流を反応媒体36中に導入する方法にも適用する。
ここで図12及び13を参照すると、反応器内反応器の構造を有する別の酸化気泡塔型反応器200が示されている。酸化反応器200は、外部反応器202及び内部反応器204を含み、内部反応器204は外部反応器202中に少なくとも一部分配設される。好ましい実施態様においては、外部反応器202と内部反応器204の両方が気泡塔型反応器である。好ましくは、外部反応器202は外部反応容器206と外部酸化剤スパージャー208を含み、内部反応器204は内部反応器210と内部酸化剤スパージャー212を含む。
図12及び13は内部反応容器210を、外部反応容器206中に完全に配設されたものとして示しているが、内部反応容器210は外部反応容器206中に一部分だけ配設することも可能である。しかし、内部反応容器210の高さの少なくとも約50、90、95又は100%が外部反応容器206中に位置するのが望ましい。更に、各反応容器の一部が他方の反応容器の一部よりも、外部反応容器の最大直径の少なくとも約0.01倍、0.2倍、1倍又は2倍高位置にあるのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様において、外部反応容器206及び内部反応容器210はそれぞれ、ほぼ円筒形の構造を有する個別の直立側壁を含む。好ましくは、外部反応容器206及び内部反応容器210の直立側壁は、実質的に同心であり、それらの間に環(アニュラス)を規定する。内部反応容器210は、好ましくは主に個別の容器の下部の間の直立支持材によって、外部反応容器206から垂直に支持する。更に、内部反応容器210は、外部反応容器206と内部反応容器210の直立側壁の間に伸長する複数の横支持部材214を介して外部反応容器206によって支持することができる。好ましくは、このような横支持部材214は、前に定義したような上向きの平面が最小である非汚染構造を有する。
内部反応容器210の直立側壁は実質的に円筒形であるのが好ましいが、内部反応容器210の直立側壁の一部は、第2反応ゾーン218の隣接部分に対して凹形であることもできる。好ましくは、第2反応ゾーン218の隣接部分に対して凹形である内部反応容器210の直立側壁の部分はいずれも、内部反応容器210の直立側壁の全表面積の約25、10、5又は0.1%未満を占める。好ましくは、(内部反応容器210の直立側壁の最大高さ)対(外部反応容器206の直立側壁の最大高さ)の比は好ましくは約0.1:1〜約0.9:1、より好ましくは約0.2:1〜約0.8:1、最も好ましくは0.3:1〜0.7:1の範囲である。
外部反応容器206は内部に第1反応ゾーン216を規定し、内部反応容器210は内部に第2反応ゾーン218を規定する。好ましくは、外部反応容器206及び内部反応容器210は、第2反応ゾーン218の体積中心が第1反応ゾーン216の体積中心から、第1反応ゾーン216の最大水平直径の約0.4倍、0.2倍、0.1倍又は0.01倍未満しか水平にずれないように垂直に合わせる。(第1反応ゾーン216の最大水平断面積)対(第2反応ゾーン218の最大水平断面積)の比は好ましくは約0.01:1〜約0.75:1、より好ましくは約0.03:1〜約0.5:1、最も好ましくは0.05:1〜0.3:1の範囲である。(第2反応ゾーン218の水性断面積)対(外部反応容器206と内部反応容器210との間に規定される環の水平断面積)の比は、第2反応ゾーン218の1/4高さ、1/2高さ及び/又は3/4高さにおいて断面積を測定した場合に、好ましくは少なくとも約0.02:1、より好ましくは約0.05:1〜約2:1、最も好ましくは約0.1:1〜約1:1の範囲である。好ましくは、第2反応ゾーン218の容積の少なくとも約50、70、90又は100%が外部反応容器206中に位置する。第1反応ゾーン216の容積対第2反応ゾーン218の容積の比は、好ましくは約1:1〜約100:1、より好ましくは約4:1〜約50:1、最も好ましくは8:1〜30:1の範囲である。第1反応ゾーン216は、最大垂直高さ対最大水平直径の比が、好ましくは約3:1〜約30:1、より好ましくは約6:1〜約20:1、最も好ましくは9:1〜15:1の範囲である。第2反応ゾーン218は、最大垂直高さ対最大水平直径の比が、好ましくは約0.3:1〜約100:1、より好ましくは約1:1〜約50:1、最も好ましくは3:1〜30:1の範囲である。第2反応ゾーン218の最大水平直径は、好ましくは約0.1〜約5m、より好ましくは約0.3〜約4m、最も好ましくは1〜3mの範囲である。第2反応ゾーン218の最大垂直高さは、好ましくは約1〜約100m、より好ましくは約3〜約50m、最も好ましくは10〜30mの範囲である。(第2反応ゾーン218の最大水平直径)対(第1反応ゾーン216の最大水平直径)の比は、好ましくは約0.05:1〜約0.8:1、より好ましくは約0.1:1〜約0.6:1、最も好ましくは0.2:1〜0.5:1の範囲である。(第2反応ゾーン218の最大垂直高さ)対(第1反応ゾーン216の最大垂直高さ)の比は、好ましくは約0.03:1〜約1:1、より好ましくは約0.1:1〜約0.9:1、最も好ましくは0.3:1〜0.8:1の範囲である。外部反応容器206及び付属品に関してここで明記した全てのパラメーター(例えば高さ、幅、面積、容積、相対的水平配置及び相対的垂直配置)は、外部反応容器206によって規定される第1反応ゾーン216にも当てはまるものと解釈され、逆もまた同様である。更に、内部反応容器210及び付属品に関してここで明記した全てのパラメーターは、内部反応容器210によって規定される第1反応ゾーン218にも当てはまるものと解釈され、逆もまた同様である。
酸化反応器200の運転時には、多相反応媒体220は、最初に第1反応ゾーン216中で酸化に供し、次いで第2反応ゾーン218中で酸化に供する。従って、通常運転時には、反応媒体の第1部分220aは第1反応ゾーン216中に位置し、反応媒体の第2部分200bは第2反応ゾーン218中に位置する。第2反応ゾーン218中で処理された後、反応媒体220bのスラリー相(即ち液相及び固相)は第2反応ゾーン218から回収され、その後の下流処理のためにスラリー出口222を経て酸化反応器200から排出される。
内部反応器204は好ましくは、追加の分子状酸素を第2反応ゾーン218中に排出させることができる少なくとも1つの内部気体用開口部を含む。好ましくは、複数の内部気体用開口部が内部酸化剤スパージャー212によって規定される。図1〜5の酸化剤スパージャーの開示は、導管のサイズ及び構造、開口部のサイズ及び構造、運転圧力降下及び液体のフラッシングに関して、内部酸化剤スパージャー212にも当てはまる。大きく異なるのは、内部反応容器210の下部を脱気ゾーンとして用いるために酸化剤スパージャー212を比較的高所に位置付けるのが好ましいことである。例えば、p−キシレンの酸化によるTPAの形成に関して本明細書中に開示した実施態様は、第2反応ゾーン218の底部近くにおいて大幅に減少した空時反応速度を生じ、これが不純物の形成に対する脱気の影響を緩和する。内部反応容器210は最大高さHiを有する。内部気体用開口部の全てによって規定される総孔面積の少なくとも約50%、75%、95%又は100%が、内部反応容器210の頂部から少なくとも0.05Hi、0.1Hi又は0.25Hi離間されていることが好ましい。また、内部気体用開口部の全てによって規定される総孔面積の少なくとも約50%、75%、95%又は100%が、内部反応容器210の底部から少なくとも0.5Hi、0.25Hi又は0.1Hi上方に離間されていることが好ましい。好ましくは、内部気体用開口部の全てによって規定される総孔面積の少なくとも約50%、75%、95%又は100%が、内部反応容器210の頂部から少なくとも1、5又は10m離間され且つ内部反応容器210の底部から少なくとも約0.5、1又は2m離間されている。内部気体用開口部の全てによって規定される総孔面積の少なくとも約50%、75%、95%又は100%が、第2反応ゾーン218と直接連通するが、第1反応ゾーン216とは直接は連通しないことが好ましい。ここで使用する用語「孔面積」は、開口部を閉鎖するであろう最小表面積(平面又は非平面)を意味する。
一般に、供給材料、酸化剤及び還流を外部反応器202に導入する方法及び外部反応器202を運転する方法は、図1〜11の一次酸化反応器20に関して前述したのと実質的に同じである。しかし、外部反応器202(図12及び13)と一次酸化反応器20(図1〜11)との1つの違いは、外部反応器202が、反応媒体220aのスラリー相を下流の処理のために外部反応容器206から直接排出させる出口を含まないことである。もっと正確に言えば、酸化反応器200は、反応媒体220aのスラリー相を最初に内部反応器204に通してから酸化反応器200から排出することが必要である。前述のように、内部反応器204の第2反応ゾーン218中で、反応媒体220bは、反応媒体220bの液相及び/又は固相の精製を助けるために、更なる酸化に供される。
p−キシレンを反応ゾーン216に供給する方法において、第1反応ゾーン216から出て第2反応ゾーン218に入る反応媒体220aの液相は典型的には少なくとも若干のp−トルイル酸を含む。第2反応ゾーン218に入るp−トルイル酸のかなりの部分が第2反応ゾーン218中で酸化されるのが好ましい。従って、第2反応ゾーン218から出る反応媒体220bの液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度は、第2反応ゾーン218に入る反応媒体220a/bの液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度より低いことが好ましい。好ましくは、第2反応ゾーン218から出る反応媒体220bの液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度は、第2反応ゾーン218に入る反応媒体220a/bの液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度の約50、10又は5%未満である。第2反応ゾーン218に入る反応媒体220a/bの液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度は、好ましくは少なくとも約250ppmw、より好ましくは約500〜約6,000ppmwの範囲、最も好ましくは1,000〜4,000ppmwの範囲である。好ましくは、第2反応ゾーン218から出る反応媒体220bの液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度は、約1,000、250又は50ppmw未満である。
内部反応容器210には、反応媒体220a/bを、反応ゾーン216と第2反応ゾーン218の間を直接通過させることができる少なくとも1つの直接開口部が装着される。内部反応容器210中の直接開口部の実質的に全てが反応容器210の頂部近くに位置付けられるのが好ましい。直接開口部の全てによって規定される全孔面積の少なくとも約50、75、90又は100%が、内部反応容器210の頂部から約0.5Hi、0.25Hi又は0.1Hi未満しか離間されていないのが好ましい。内部反応容器210中の直接開口部によって規定される総孔面積の約50、25、10又は1%未満が、内部反応容器210の頂部から約2.5Hi、0.25Hi又は0.1Hiより長く離間されているのが好ましい。内部反応容器210によって規定される直接開口部が、内部反応容器210の最上端に位置付けられる単一の上部開口部224であるのが最も好ましい。(上部開口部224の孔面積)対(第2反応ゾーン219の最大水平断面積)の比は好ましくは少なくとも約0.1:1、0.2:1又は0.5:1である。
酸化反応器200の通常運転時に、反応媒体220は、第1反応ゾーン216から、内部反応容器210中の直接開口部(例えば上部開口部224)を通って、第2反応ゾーン218に入る。第2反応ゾーン218において、反応媒体220bのスラリー相は、第2反応ゾーン218を通ってほぼ下向きに移動し、反応媒体220bの気相はほぼ上向きに移動する。好ましくは、内部反応容器210は、スラリー相が第2反応ゾーン218から出ることを可能にする少なくとも1つの排出開口部を規定する。内部反応容器210の排出開口部から出たスラリー相は、次にスラリー出口222を経て酸化反応器200から出る。排出開口部は内部反応容器210の底部又は底部近くに位置付けられるのが好ましい。内部反応容器210の全排出開口部によって規定される総孔面積の少なくとも50、75、90又は100%が、内部反応容器210の底部の約0.5Hi、0.25Hi又は0.1Hi以内に位置付けられるのが好ましい。
反応媒体220bは内部反応器204の第2反応ゾーン218中で処理するので、反応媒体220bのガス・ホールドアップは、反応媒体220bのスラリー相が第2反応ゾーン218を通って下向きに流れるにつれて低下するのが好ましい。好ましくは、(第2反応ゾーン218に入る反応媒体220a/bの時間平均ガス・ホールドアップ)対(第2反応ゾーン218から出る反応媒体220bの時間平均ガス・ホールドアップ)の比は少なくとも約2:1、10:1又は25:1である。第2反応ゾーン218に入る反応媒体220a/bの時間平均ガス・ホールドアップは、好ましくは約0.4〜約0.9、より好ましくは約0.5〜約0.8、最も好ましくは0.55〜0.7の範囲である。好ましくは、第2反応ゾーン218から出る反応媒体220bの時間平均ガス・ホールドアップは約0.1、0.05又は0.02未満である。(第1反応ゾーン216中の反応媒体220aの時間平均ガス・ホールドアップ)対(第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの時間平均ガス・ホールドアップ)の比は、ガス・ホールドアップ値が第1反応ゾーン216及び第2反応ゾーン218の任意の高さで、第1反応ゾーン216及び第2反応ゾーン218の任意の対応する高さで、第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の1/4高さで、第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の1/2高さで、第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の3/4高さで測定され且つ/又は第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の全高にわたる平均値である場合に、好ましくは約1:1より大きく、より好ましくは約1.25:1〜約5:1の範囲であり、最も好ましくは1.5:1〜4:1の範囲である。第1反応ゾーン216中の反応媒体220aの部分の時間平均ガス・ホールドアップは、ガス・ホールドアップ値が第1反応ゾーン216の任意の高さで、第1反応ゾーンの1/4高さで、第1反応ゾーン216の1/2高さで、第1反応ゾーン216の3/4高さで測定され且つ/又は第1反応ゾーン216の全高にわたる平均値である場合に、好ましくは約0.4〜約0.9、より好ましくは約0.5〜約0.8、最も好ましくは0.55〜0.70の範囲である。第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの部分の時間平均ガス・ホールドアップは、ガス・ホールドアップが第2反応ゾーン218の任意の高さで、第2反応ゾーン218の1/4高さで、第2反応ゾーン218の1/2高さで、第2反応ゾーン218の3/4高さで測定され且つ/又は第2反応ゾーン218の全高にわたる平均値である場合に、好ましくは約0.01〜約0.6、より好ましくは約0.03〜約0.3、最も好ましくは0.08〜0.2の範囲である。
反応媒体220の温度は好ましくは第1反応ゾーン216及び第2反応ゾーン218においてほぼ同じである。このような温度は好ましくは約125〜約200℃、より好ましくは約140〜約180℃、最も好ましくは150〜170℃の範囲である。しかし、図28に関連して本明細書中で開示したのと同じである第1反応ゾーン216内では温度差が形成されるのが好ましい。好ましくは、同じ大きさの温度差が第2反応ゾーン内にも、第1反応ゾーン216と第2反応ゾーン218の間にも存在する。これらの更なる温度勾配は、第1反応ゾーン216の場合と比較した、第2反応ゾーン218中で起こっている化学反応、第2反応ゾーン218への追加酸化剤の導入及び第2反応ゾーン218中の静圧に関係する。前に開示したように、気泡ホールドアップは好ましくは第2反応ゾーン218よりも第1反応ゾーン216中で大きい。従って、上部開口部224より下方の高度では、反応ゾーン216中の静圧は第2反応ゾーン218よりも大きい。この圧力差の大きさは、液体又はスラリーの密度の大きさ及び2つの反応ゾーン間の気泡ホールドアップの差によって決まる。この圧力差は、上部開口部224より更に下方の高度では増加する。
本発明の一態様において、酸化反応器200に供給される芳香族化合物(例えばp−キシレン)の一部は、内部反応器204の第2反応ゾーン218中に直接導入する。しかし、酸化反応器200に供給される総芳香族化合物の少なくとも約90、95、99又は100モル%は第1反応ゾーン216(第2反応ゾーン218ではなく)中に導入するのが好ましい。好ましくは、第1反応ゾーン216中に導入される芳香族化合物の量)対(第2反応ゾーン218中に導入される芳香族化合物の量)のモル比は少なくとも約2:1、4:1又は8:1である。
図12及び13は、酸化反応器200に供給される総分子状酸素の一部が内部酸化剤スパージャー212を経て内部反応器204の第2反応ゾーン218中に導入される構造を図示しているが、酸化反応器200に供給される総分子状酸素の大部分は第1反応ゾーン216中に導入し、残りは第2反応ゾーン218に導入するのが好ましい。好ましくは、酸化反応器200に供給される総分子状酸素の少なくとも約70、90、95又は98モル%が第1反応ゾーン216中に導入する。(第1反応ゾーン216中に導入される分子状酸素の量)対(第2反応ゾーン218中に導入される分子状酸素の量)のモル比は、好ましくは少なくとも約2:1、より好ましくは約4:1〜約200:1の範囲、最も好ましくは10:1〜100:1の範囲である。溶媒及び/又は芳香族化合物(例えばp−キシレン)は第2反応ゾーン218に直接供給されることもできるが、酸化反応器200に供給される溶媒及び/又は芳香族化合物の総量の約10、5又は1重量%未満が第2反応ゾーン218に直接供給されるのが好ましい。
外部反応容器206の第1反応ゾーン中の媒体220aの容積、滞留時間及び空時速度は好ましくは、内部反応容器210の第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの容積、滞留時間及び空時速度よりもかなり大きい。従って、酸化反応器200に供給される芳香族化合物(例えばp−キシレン)の大部分は好ましくは第1反応ゾーン216中で酸化される。好ましくは、酸化反応器200中で酸化される全芳香族化合物の少なくとも約80、90又は95重量%が第1反応ゾーン216中で酸化される。第1反応ゾーン216中の反応媒体220aの時間平均空塔気体速度(superficial gas velocity)は、空塔気体速度が第1反応ゾーン216の任意の高さ、第1反応ゾーン216の1/4高さ、第1反応ゾーン216の1/2高さ、第1反応ゾーンの3/4高さで測定され且つ/又は第1反応ゾーン216の全高にわたる平均値である場合に、少なくとも約0.2、0.4、0.8又は1m/秒であるのが好ましい。
第2反応ゾーン218中の反応媒体220bは第1反応ゾーン216中の反応媒体220aと同じ空塔気体速度を有することができるが、第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの時間平均空塔気体速度は第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの時間平均及び体積平均空塔気体速度よりも小さいのが好ましい。第2反応ゾーン218中のこの低下された空塔気体速度は、例えば、第1反応ゾーン216に比較して低下された、第2反応ゾーン218の分子状酸素の要求によって可能になる。好ましくは、第1反応ゾーン216中の反応媒体220aの時間平均空塔気体速度)対(第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの時間平均空塔気体速度)の比は、空塔気体速度が第1反応ゾーン216及び第2反応ゾーン218の任意の高さで、第1反応ゾーン216及び第2反応ゾーン218の任意の対応する高さで、第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の1/4高さで、第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の1/2高さで、第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の3/4高さで測定し且つ/又は第1反応ゾーン216及び/又は第2反応ゾーン218の全高にわたる平均値である場合に、少なくとも約1.25:1、2:1又は5:1である。好ましくは、第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの時間平均及び体積平均空塔気体速度は、空塔気体速度が第2反応ゾーン218の任意の高さで、第2反応ゾーン218の1/4高さで、第2反応ゾーン218の1/2高さで、第2反応ゾーン218の3/4高さで測定し且つ/又は第2反応ゾーン218の全高にわたる平均値である場合に、約0.2、0.1又は0.06m/秒未満である。これらのより低い空塔気体速度を用いると、第2反応ゾーン218中の反応媒体220bのスラリー相の下向きの流れが、栓流に向かって一方向に動かされることができる。例えば、p−キシレンの酸化によるTPAの形成の間に、p−トルイル酸の液相濃度の相対的垂直勾配が、第2反応ゾーン218中では第1反応ゾーン216中よりもはるかに大きくなることができる。これは、第2反応ゾーン218が液体及びスラリー組成物の軸方向の混合を有する気泡塔であっても起こる。第2反応ゾーン218中の反応媒体220bのスラリー相(固体+液体)及び液相の時間平均空塔速度は、空塔速度が第2反応ゾーン218の任意の高さで、第2反応ゾーン218の1/4高さで、第2反応ゾーン218の1/2高さで、第2反応ゾーン218の3/4高さで測定し且つ/又は第2反応ゾーン218の全高にわたる平均値である場合に、好ましくは約0.2、0.1又は0.06m/秒未満である。
本発明の一実施態様において、酸化反応器200は、内部反応器204中で固体を沈降することができる方法で運転する。固体の沈降が望ましい場合には、第2反応ゾーン218中の反応媒体220bの時間平均及び体積平均空塔気体速度は約0.05、0.03又は0.01m/秒未満であるのが好ましい。更に、固体の沈降が望ましい場合には、第2反応ゾーン218中の反応媒体220bのスラリー相及び液相の時間平均及び体積平均空塔速度は約0.01、0.005又は0.001m/秒未満であるのが好ましい。
内部反応器204から出るスラリー相の一部は、更に下流処理することなく、第1反応ゾーン216に直接再循環によって戻されることも可能であるが、第2反応ゾーンの下方の高度から第1反応ゾーン216への反応媒体220bの直接再循環は最小限に抑えるのが好ましい。好ましくは、第2反応ゾーン218の容積の下方25%から出て、更に下流処理することなく第1反応ゾーン216に直接再循環によって戻される反応媒体220b(固相、液相及び気相)の質量は、第2反応ゾーン218から出て、その後に下流処理に供される反応媒体220bの質量(固相、液相及び気相)の10、1又は0.1倍未満である。好ましくは、第2反応ゾーン218の容積の下方50%から出て、更に下流処理することなく第1反応ゾーン216に直接再循環によって戻される反応媒体220bの質量は、第2反応ゾーン218から出て、その後に下流処理に供される反応媒体220bの質量の20、2又は0.2倍未満である。好ましくは、第2反応ゾーン218の溶液の下方90、60、50又は5%に存在する開口部を経て第2反応ゾーン218から出る反応媒体220bの液相の約50、75又は90重量%未満が、第2反応ゾーン218を出てから60、20,5又は1分以内に第1反応ゾーン216中に導入される。第2反応ゾーン218中に位置する反応媒体220bの液相は、第2反応ゾーン218中の質量平均滞留時間が、好ましくは少なくとも約1分、より好ましくは約2〜約60分の範囲、最も好ましくは5〜30分の範囲である。好ましくは、第2反応ゾーン218中に導入される反応媒体220a/bの液相の約50、75又は90重量%未満が、第2反応ゾーン218の容積の下方90、60又は30%において第2反応ゾーン218に入る。好ましくは、第1反応ゾーン216中に液相供給流として導入される反応媒体220a/bの総液相の約50、75又は90重量%未満が、スラリー出口222を経て第2反応ゾーン218から回収されてから60、20、5又は1分以内に第1反応ゾーン216に入る。好ましくは、第2反応ゾーン218から回収される反応媒体220bの液相の少なくとも約75、90、95又は99重量%が、第2反応ゾーン218の容積の下方90、60、30又は5%に存在する開口部を経て第2反応ゾーン218から出る。
反応器内反応器の酸化反応器200の設計は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々に変化させることができる。例えば、内部反応容器210が外部反応容器206の下端より下方まで伸長する場合には、内部反応容器210は外部反応容器206よりも大きい高さを有することができる。外部反応容器206と内部反応容器210は、図示されるように円筒形であることもできるし、或いは別の形状を有することもできる。外部反応容器206と内部反応容器210は、軸対称であることも、軸方向に垂直であることも、同心であることも必要ない。内部反応器204から出た気相は、第1反応ゾーン216中の反応媒体220aと混合されることなく、酸化反応器200の外側に送られることができる。しかし、燃焼安全性のために、捕捉ガスポケットの容積を約10、2又は1m3に制限するのが望ましい。更に、内部反応器204から出るスラリー相は、内部容器210の底部にある単一のスラリー開口部を経て出る必要はない。スラリー相は、外部反応器202の耐圧側壁の側方出口を通って酸化反応器200から出ることができる。
ここで図14を参照すると、反応器内反応器及び段階的直径の構造を有する酸化反応器300が示されている。一次酸化反応器300は、外部反応器302と内部反応器304を含む。外部反応器302は、幅の広い下部セクション306aと幅の狭い上部セクション306bを有する外部反応容器306を含む。好ましくは、幅の狭い上部セクション306bの直径は、幅の広い下部セクション306aの直径よりも小さい。外部反応容器の段階的直径構造以外は、図14の酸化反応器300は、好ましくは、前述の図12及び13の酸化反応器200と実質的に同様に構成され、運転される。
ここで図15を参照すると、一次酸化反応器402及び二次酸化反応器404を含む反応システム400が示されている。一次酸化反応器402は好ましくは、図12及び13の外部反応器202と実質的に同様に構成され、運転される。二次酸化反応器404は好ましくは、図12及び13の内部反応器204と実質的に同様に構成され、運転される。しかし、図15の反応システム400と図12及び13の酸化反応器200の主な違いは、反応システム400の二次酸化反応器404が一次酸化反応器402の外側に位置付けられていることである。図15の反応システム400においては、入口導管405を使用して、一次酸化反応器402から二次酸化反応器404に反応媒体420の一部が移される。更に、出口導管407を使用して、二次酸化反応器404の頂部から一次酸化反応器402に塔頂気体が移される。
反応システム400の通常運転時には、多相反応媒体400は、最初に一次酸化反応器402の一次反応ゾーン416中で一次酸化を受ける。次いで、反応媒体420aを、一次反応ゾーン416から回収し、導管405を経て二次反応ゾーン418に移す。二次反応ゾーン418において、反応媒体420bの液相及び/又は固相は更なる酸化に供される。一次酸化反応ゾーン416から回収される液相及び/又は固相の少なくとも約50、75、95又は99重量%は、二次反応ゾーン416中で処理するのが好ましい。塔頂気体は、二次酸化反応器404の上部気体出口から出て、導管407を経て一次酸化反応器402に移し戻す。反応媒体420bのスラリー相は二次酸化反応器404の下部スラリー出口422から出て、その後に更なる下流処理に供される。
入口導管405は、一次酸化反応器402に任意の高さで取り付けられることができる。図15には、図示されていないが、反応媒体420は、所望ならば二次反応ゾーン418に機械的にポンプ輸送することができる。しかし、一次反応ゾーン416から入口導管405を通して二次反応ゾーン418中に反応媒体420を移すためには、位置水頭(elevation head)(重力)を用いるのがより好ましい。従って、入口導管405の一端を一次反応ゾーン416の全高及び/又は全容積の上方50、30、20又は10%に接続するのが好ましい。好ましくは、入口導管405の他端は二次反応ゾーン418の全高さ及び/又は全容積の上方30、20、10又は5%に取り付けられる。好ましくは、入口導管405は水平であり且つ/又は一次酸化反応器402から二次酸化反応器404に向かって下向きに傾斜している。出口導管407は二次酸化反応器の任意の高度に取り付けられることができるが、出口導管407は入口導管405の取り付け高度より上方で一次酸化反応器402に接続されるのが好ましい。より好ましくは、出口導管407は二次酸化反応器404の頂部に取り付けられる。出口導管407は好ましくは、入口導管405の取り付け高度より上方で一次酸化反応器に取り付けられる。より好ましくは、出口導管407は、一次反応ゾーン416の全高及び/又は全容積の上方30、20、10又は5%に取り付けられる。好ましくは、出口導管407は水平であり且つ/又は二次酸化反応器404から一次酸化反応器402に向かって上方に傾斜している。図15には図示されていないが、出口導管407はまた、一次酸化反応器402の頂部から気体流出物を回収する気体出口導管に直接取り付けられることもできる。二次反応ゾーン416の上限(upper extent)は、一次反応ゾーン418の上限より上方又は下方であることができる。より好ましくは、一次反応ゾーン416の上限は、二次反応ゾーン418の上限より10m上方から50m下方まで、2m下方から40m下方まで、又は5m下方から30m下方までの範囲内である。下部スラリー出口422は、二次酸化反応器404の任意の高度から出ることができるが、下部スラリー出口422は入口導管405の取り付け高度より下方で二次酸化反応器404に接続されるのが好ましい。下部スラリー出口422の取り付け点は、入口導管405の取り付け点とは高度が大きく隔たっているのがより好ましく、これらの2つの取り付け点は二次反応ゾーン418の高さの少なくとも約50、70、90又は95%隔てられる。最も好ましくは、下部スラリー出口422は、図15に示されるように、二次酸化反応器404の底部に結合される。二次反応ゾーン418の下限は、一次反応ゾーン416の下限より上方又は下方の高度であることができる。より好ましくは、一次反応ゾーン416の下限は二次酸化反応ゾーン418の下限より約40、20、5又は2m上方又は下方の範囲内の高度であることができる。
一次酸化反応器402及び付属品に関してここで明記したパラメーター(例えば高さ、幅、面積、容積、相対的水平配置及び相対的垂直配置)は、一次酸化反応器402によって規定される一次酸化ゾーン416にも当てはまるものと解釈され、逆もまた同様である。二次酸化反応器404及び付属品に関してここで明記した任意のパラメーターは、二次酸化反応器404によって規定される二次酸化反応ゾーン418にも当てはまるものと解釈され、逆もまた同様である。
前述のように、二次酸化反応器404は、一次酸化反応器402の外側に位置付けられるのが好ましい。好ましくは、二次酸化反応器404は、一次酸化反応器402に沿って位置付けられる(即ち、一次酸化反応器402及び二次酸化反応器404の少なくとも一部が共通の高度を共有する)。一次酸化反応器402の一次反応ゾーン416は最大直径Dpを有する。二次反応ゾーン218の体積中心は、好ましくは一次反応ゾーン416の体積中心から少なくとも約0.5Dp、0.75Dp又は1.0Dpであって約30Dp、10Dp又は3Dp未満だけ水平に離間されている。
ここで図16を参照すると、一次酸化反応器502及び二次酸化反応器504を含む反応システム500が示されている。一次酸化反応器は内部に一次酸化ゾーン516を規定し、二次酸化反応器504は内部に二次酸化ゾーン518を規定している。各反応ゾーン516及び518は反応媒体520の一部を受ける。
反応システム500(図16)の構成及び運転は、反応システム400(図15)の構成及び運転と実質的に同じであるのが好ましい。しかし、反応システム500において、一次酸化反応器502の直立側壁は、一次反応ゾーン516から二次反応ゾーン518に反応媒体520を移すことができると同時に、二次反応ゾーン518から一次反応ゾーン516に離脱気相を移すことができる少なくとも1つの拡大された開口部505を規定している。好ましくは、「(拡大開口部505の孔面積)÷(二次反応ゾーン218の直立部分の最大水平断面積)」は、約0.01〜2、0.02〜0.5又は0.04〜0.2の範囲である。一次酸化反応器502の一次反応ゾーン516は最大高さHpを有する。拡大開口部505の面積中心(areal center)は、一次反応ゾーン516の頂部及び/又は底部から少なくとも約0.1Hp、0.2Hp又は0.3Hpだけ垂直方向に離間されているのが好ましい。
ここで図17を参照すると、一次酸化反応器中における酸化の間に一次反応媒体中に存在する反応体濃度勾配を定量化するために、一次反応媒体の全容積は、等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割することができる。図17は、一次反応媒体を等容積の30個の別々の水平スライスに分割する概念を示す。最上部及び最下部の水平スライスを除いて、各水平スライスは、頂部及び底部で仮想水平面と境界を接し且つ側面で反応器の壁と境界を接する別々の容積である。最上部の水平スライスは、底部で仮想水平面と境界を接し且つ頂部で一次反応媒体の上面と境界を接する。最下部の水平スライスは、頂部で仮想水平面と境界を接し且つ底部で容器シェルの底部と境界を接する。一次反応媒体を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割すると、各水平スライスの時間平均及び容積平均濃度を算出することができる。30個の全水平スライスの最大濃度を有する単一の水平スライスを、「C−max水平スライス」とすることができる。C−max水平スライスの上方に位置し且つC−max水平スライスの上方に位置する全水平スライスの最小濃度を有する単一の水平スライスを、「C−min水平スライス」とすることができる。次いで、垂直方向の濃度勾配を、(C−max水平スライス中の濃度)対(C−min水平スライス中の濃度)の比として計算することができる。
酸素濃度勾配の定量化に関しては、一次反応媒体を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割する場合に、O2−max水平スライスを、30個の全水平スライスの最大酸素濃度を有するものと見なし;O2−min水平スライスを、O2−max水平スライスの上方に位置する水平スライスの最小酸素濃度を有するものと見なす。水平スライスの酸素濃度は、一次反応媒体の気相中で、時間平均及び容積平均モル湿潤ベースで測定される。(O2−max水平スライスの酸素濃度)対(O2−min水平スライスの酸素濃度)の比は、約2:1〜約25:1、より好ましくは約3:1〜約15:1、最も好ましくは4:1〜10:1の範囲であるのが望ましい。
典型的には、O2−max水平スライスは一次反応媒体の底部近くに位置し、O2−min水平スライスは一次反応媒体の頂部近くに位置するであろう。好ましくは、O2−min水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も上の5個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、O2−min水平スライスは、図17に示されるように、30個の別々の水平スライスのうち最も上の1つである。好ましくは、O2−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の10個の水平スライスのうちの1つである。最も好ましくは、O2−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の5個の水平スライスのうちの1つである。例えば、図26は、O2−maxスライスを、反応器の底部から3つめの水平スライスとして示している。O2−min水平スライスとO2−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約2W、より好ましくは少なくとも約4W、最も好ましくは少なくとも6Wであるのが望ましい。O2−min水平スライスとO2−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約0.2H、より好ましくは少なくとも約0.4H、最も好ましくは少なくとも0.6Hであるのが望ましい。
O2−min水平スライスの湿潤ベースでの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約0.1〜約3モル%、より好ましくは約0.3〜約2モル%、最も好ましくは0.5〜1.5モル%の範囲である。O2−max水平スライスの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約4〜約20モル%、より好ましくは約5〜約15モル%、最も好ましくは6〜12モル%の範囲である。気体出口を経て反応器から排出される気体流出物中の酸素の、乾燥ベースでの時間平均濃度は、好ましくは約0.5〜約9モル%、より好ましくは約1〜約7モル%、最も好ましくは1.5〜5モル%の範囲である。
酸素濃度は一次反応媒体の頂部に向かって非常に著しく減衰するので、酸素要求量は一次反応媒体の頂部において減少するのが望ましい。一次反応媒体の頂部近くにおける酸素要求量のこのような減少は、芳香族化合物(例えばp−キシレン)の最小濃度が一次反応媒体の頂部近くに位置する、芳香族化合物濃度の垂直勾配を作り出すことによって達成されることができる。
芳香族化合物(p−キシレン)の濃度勾配の定量化に関しては、一次反応媒体を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割する場合に、AR−max水平スライスを、30個の全水平スライスの最大芳香族化合物濃度を有するものと見なし;AR−min水平スライスを、AR−max水平スライスの上方に位置する水平スライスの最小芳香族化合物濃度を有するものと見なす。水平スライスの芳香族化合物濃度は、液相中で時間平均及び容積平均質量分率ベースで測定される。(AR−max水平スライスの芳香族化合物濃度)対(AR−min水平スライスの芳香族化合物濃度)の比は、約5:1超、より好ましくは約10:1超、更に好ましくは約20:1超、最も好ましくは40:1〜1000:1の範囲であるのが望ましい。
典型的には、AR−max水平スライスは一次反応媒体の底部近くに位置し、AR−min水平スライスは一次反応媒体の頂部近くに位置するであろう。好ましくは、AR−min水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も上の5個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、AR−min水平スライスは、図17に示されるように、30個の別々の水平スライスの最も上の1つである。好ましくは、AR−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の10個の水平スライスのうち1つである。最も好ましくは、AR−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の5個の水平スライスの1つである。例えば、図26は、AR−maxスライスを、反応器の底部から5つめの水平スライスとして示す。AR−min水平スライスとAR−max水平スライスとの間の垂直間隔は少なくとも約2W(Wは一次反応媒体の最大幅である)であるのが好ましい。より好ましくは、AR−min水平スライスとAR−max水平スライスとの間の垂直間隔は少なくとも約4W、最も好ましくは少なくとも6Wである。一次反応媒体の高さをHとすると、AR−min水平スライスとAR−max水平スライスとの間の垂直間隔は、好ましくは少なくとも約0.2H、より好ましくは少なくとも約0.4H、最も好ましくは少なくとも0.6Hである。
ARmin水平スライスの液相中の時間平均及び容積平均芳香族化合物(例えばp−キシレン)濃度は、好ましくは約5,000ppmw未満、より好ましくは約2,000ppmw未満、更に好ましくは約400ppmw未満、最も好ましくは1〜100ppmwの範囲である。AR−max水平スライスの液相中の時間平均及び容積平均芳香族化合物濃度は、好ましくは約100〜約10,000ppmw、より好ましくは約200〜約5,000ppmw、最も好ましくは500〜3,000ppmwの範囲である。
一次酸化反応器は、芳香族化合物の濃度に垂直勾配を与えるのが好ましいが、液相中の芳香族化合物濃度が1,000ppmw超である一次反応媒体の容量%を最小にするのも好ましい。液相中の芳香族化合物濃度が1,000ppmw超である一次反応媒体の時間平均容量%は、好ましくは約9%未満、より好ましくは約6%未満、最も好ましくは3%未満である。液相中の芳香族化合物濃度が2,500ppmw超である一次反応媒体の時間平均容量%は、好ましくは約1.5%未満、より好ましくは約1%未満、最も好ましくは0.5%未満である。液相中の芳香族化合物濃度が10,000ppmw超である一次反応媒体の時間平均容量%は、好ましくは約0.3%未満、より好ましくは約0.1%未満、最も好ましくは0.03%未満である。液相中の芳香族化合物濃度が25,000ppmw超である一次反応媒体の時間平均容量%は、好ましくは約0.03%未満、より好ましくは約0.015%未満、最も好ましくは0.007%未満である。本発明者らは、高レベルの芳香族化合物を有する一次反応媒体の容積が単一の連続した容積中に存在する必要がないことを確認している。多くの時間において、一次酸化反応容器中のカオス的フローパターン(chaotic flow pattern)が、高レベルの芳香族化合物を有する一次反応媒体の1つ又はそれ以上の連続しているが差別される(segregated)部分を同時に生じる。時間平均に用いられる各時間において、総一次反応媒体の0.0001容量%より大きい、このような連続しているが差別される全ての容積が、液相中に高レベルの芳香族化合物濃度を有する総容積の測定のために合計される。
前述の、酸素及び芳香族化合物の濃度勾配に加えて、温度勾配が一次反応媒体中に存在するのが好ましい。再び図17を参照すると、この温度勾配は、濃度勾配と同様にして、一次反応媒体を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割し且つ各スライスの時間平均及び体積平均温度を測定することによって定量化できる。最も下の15個の水平スライスのうち最低温度を有する水平スライスを次に「T−min水平スライス」とすることができ、T−min水平スライスの上方に位置し且つT−min水平スライスの上方の全スライスの最大温度を有する水平スライスを次に「T−max水平スライス」とすることができる。T−max水平スライスの温度は、T−min水平スライスの温度よりも少なくとも約1℃高いのが好ましい。より好ましくは、T−max水平スライスの温度は、T−min水平スライスの温度よりも約1.25〜約12℃高い範囲である。最も好ましくは、T−max水平スライスの温度は、T−min水平スライスの温度よりも2〜8℃高い範囲である。T−max水平スライスの温度は、好ましくは約125〜約200℃、より好ましくは約140〜約180℃、最も好ましくは150〜170℃の範囲である。
典型的には、T−max水平スライスは一次反応媒体の中央近くに位置し、T−min水平スライスは一次反応媒体の底部近くに位置するであろう。好ましくは、T−min水平スライスは、15個の最も低い水平スライスのうち最も下の10個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、T−min水平スライスは、15個の最も低い水平スライスのうち最も下の5個の水平スライスの1つである。例えば、図17は、T−min水平スライスを、反応器の底部から2番目の水平スライスとして示している。好ましくは、T−max水平スライスは30個の別々の水平スライスのうち中央の20個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、T−min水平スライスは30個の別々の水平スライスのうち中央の14個の水平スライスの1つである。例えば、図17は、T−max水平スライスを反応器20の底部から20番目の水平スライス(即ち中央の10個の水平スライスの1つ)として示す。T−min水平スライスとT−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約2W、より好ましくは少なくとも約4W、最も好ましくは少なくとも6Wであるのが望ましい。T−min水平スライスとT−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約0.2H、より好ましくは少なくとも約0.4H、最も好ましくは少なくとも0.6Hであるのが望ましい。
前述のように、垂直温度勾配が一次反応媒体中に存在する場合には、一次反応媒体の温度が最も高い高位置において一次反応媒体を回収するのが、回収生成物が比較的高温の更なる下流処理に供される場合には特に、有利であることができる。従って、図15及び16に示されるように、一次反応媒体36が1個又はそれ以上の高位置出口を経て反応ゾーンから回収される場合には、高位置出口はT−max水平スライスの近くに位置するのが好ましい。高位置出口は、好ましくはT−max水平スライスの10水平スライス以内、より好ましくはT−max水平スライスの5水平スライス以内、最も好ましくはT−max水平スライスの2水平スライス以内に位置する。
ここに記載した本発明の特徴の多くは、単一の一次酸化反応器を用いるシステムだけでなく、多重酸化反応器システムにおいて使用できることを確認している。更に、ここに記載した本発明のいくつかの特徴は、気泡撹拌反応器(即ち気泡塔型反応器)だけでなく、機械的撹拌酸化反応器及び/又は流動撹拌酸化反応器にも使用できる。例えば、本発明者らは、一次反応媒体全体にわたる酸素濃度及び/又は酸素消費速度の段階付け/変動に関連したいくつかの利点を発見した。一次反応媒体における酸素濃度/消費の段階付けによって実現される利点は、反応媒体の総容積が単一容器又は複数の容器いずれに含まれていても実現させることができる。更に、一次反応媒体中の酸素濃度/消費の段階付けによって実現される利点は、反応容器が機械的撹拌、流動撹拌及び/又は気泡撹拌のいずれがなされても、実現させることができる。
一次反応媒体中の濃度及び/又は消費速度の段階付けの程度を定量化する1つの方法は、一次反応媒体の2つ又はそれ以上の別個の20%連続容積を比較することである。これらの20%連続容積は、特定の形状によって規定される必要はない。しかし、各20%連続容積は、一次反応媒体の連続した容積から形成されなければならず(即ち各容積は「連続的」である)、20%連続容積は互いに重なり合ってはならない(即ち容積は「別個である」)。これらの別個の20%連続溶液は同一反応器中又は複数の反応器中に位置することができる。
ここで図18を参照すると、一次酸化気泡塔型反応器は、第1の別個の20%連続容積37と第2の別個の20%連続容積39を含む一次反応媒体を含むものとして示されている。一次反応媒体中の酸素利用可能性の段階付けは、気相中に最も豊富な酸素モル分率を有する一次反応媒体の20%連続溶積を参照し且つ気相中に最も欠乏した酸素モル分率を有する一次反応媒体の20%連続容積を参照することによって、定量化させることができる。気相中に最高酸素濃度を含む一次反応媒体の別個の20%連続容積の気相中において、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約3〜約18モル%、より好ましくは約3.5〜約14モル%、最も好ましくは4〜10モル%の範囲である。気相中に最低酸素濃度を含む一次反応媒体の別個の20%連続容積の気相中において、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約0.3〜約5モル%、より好ましくは約0.6〜約4モル%、最も好ましくは0.9〜3モル%の範囲である。更に、(一次反応媒体の最も豊富な20%連続容積中の、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度)対(一次反応媒体の最も欠乏した20%連続容積中の、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度)の比は、好ましくは約1.5:1〜約20:1、より好ましくは約2:1〜約12:1、最も好ましくは3:1〜9:1の範囲である。
一次反応媒体中の酸素消費速度の段階付けは、最初に前述した酸素−STRに換算して定量化することができる。酸素−STRは前には全体的な意味で(即ち全一次反応媒体の平均酸素−STRの観点から)記載したが;一次反応媒体全体にわたる酸素消費速度の段階付けを定量化するために、酸素−STRは局所的な意味でも(即ち一次反応媒体の一部分)考慮されることができる。
本発明者らは、一次反応媒体中の圧力及び一次反応媒体の気相中の分子状酸素のモル分率に関して本明細書中に開示した望ましい勾配とほぼ調和して、一次反応媒体全体にわたって酸素−STRを変動させることが非常に有用であることを発見した。従って、(一次反応媒体の第1の別個の20%連続容積の酸素−STR)対(一次反応媒体の第2の別個の20%連続容積の酸素−STR)の比は、約1.5:1〜約20:1、より好ましくは約2:1〜約12:1、最も好ましくは3:1〜9:1の範囲であるのが望ましい。一実施態様において、「第1の別個の20%連続容積」は、「第2の別個の20%連続容積」よりも、分子状酸素が一次反応媒体中に最初に導入される位置の近くに位置する。部分酸化一次反応媒体が気泡塔型酸化反応器中に含まれるにせよ、一次反応媒体中の気相中において圧力及び/又は分子状酸素のモル分率に勾配が生じる任意の他の型の反応容器(例えば、ほぼ水平のバッフルアセンブリによって場合によっては増大される、強力な半径方向流を有する複数のインペラーを用いて達成される複数の垂直に配置された撹拌ゾーンを有する機械的撹拌容器:垂直に配置された各撹拌ゾーン内に酸化剤流のかなりの逆混合が起こり得るのにもかかわらず、また、垂直に配置された隣接撹拌ゾーン間で酸化剤流の多少の逆混合が起こり得るのにもかかわらず、酸化剤流は反応容器の下部近くの供給材料からほぼ上向きに上昇する)に含まれるにせよ、酸素−STRのこれらの大きい勾配は望ましい。即ち、一次反応媒体の気相中において圧力及び/又は分子状酸素のモル分率に勾配が存在する場合には、本発明者らは、ここに開示した手段によって、溶存酸素の化学的要求量に同様な勾配を作り出すことが望ましいことを発見した。
局所的酸素−STRを変動させるための好ましい手段は、本発明の他の開示に従って芳香族化合物の濃度勾配を制御するために一次反応媒体の液相の混合を制御すること及び芳香族化合物の供給位置を制御することである。局所的酸素−STRを変動させるための他の有用な手段は、局所的な温度差を生じることによって及び触媒及び溶媒成分の局所的混合物を変化させることによって(例えば、一次反応媒体の特定部分に蒸発冷却を引き起こすために追加気体を導入することによって、及び一次反応媒体の特定部分の活性を低下させるために比較的多量の水を含む溶媒流を添加することによって)、反応活性の差を生じることを含む。
酸化反応器が、図12〜14に関して前述したように、反応器内反応器の構造を有する場合には、図17〜18に関してここに記載した濃度勾配、温度勾配及び酸素−STR勾配が、外部反応器の内側及び内部反応器の外側に位置する反応媒体の部分(例えば図12の反応媒体220a)に当てはまるのが好ましい。
本発明の一実施態様によれば、一次酸化供給材料の溶媒部分(即ち「溶媒供給材料」)の純度及び一次酸化供給材料の芳香族化合物部分(即ち「芳香族化合物供給材料」)の純度が以下に明記する一定範囲以内に制御される。本発明の他の実施態様と共に、これは、一次酸化反応媒体の液相の純度並びに存在するならば、固相及び複合スラリー(即ち固体+液体)の純度を、以下に概説する一定の好ましい範囲内で制御できるようにする。
溶媒供給材料に関しては、反応媒体中に導入される溶媒供給材料が実験室規模及びパイロット規模でよく用いられる分析用純度の酢酸及び水の混合物である、一次酸化反応器/ゾーン中での1種又は複数の芳香族化合物の酸化によるポリカルボン酸の生成が知られている。同様に、反応媒体から出る溶媒(即ち初期液体)が生成ポリカルボン酸(即ち初期固体)から分離され、次に主に製造コストの理由から、供給材料とし一次酸化反応器/ゾーンに再循還される一次酸化の実施が知られている。この溶媒再循還は、ある種の供給材料の不純物及びプロセスの副生成物を再循還溶媒中に徐々に蓄積させる。反応媒体中への再導入の前に再循還溶媒の精製を助けるための種々の手段が当業界で知られている。一般に、再循還溶媒のより高度の精製は、同様な手段による、より低度の精製よりも著しく高い製造コストをもたらす。本発明の一実施態様は、全体的製造コストと全体的生成物純度との最適バランスを見つけるために、溶媒供給材料内の多数の不純物(従来はその多くはほとんど差し障りがないと考えられていた)を熟知し且つその好ましい範囲を規定することに関する。
「再循還溶媒供給材料」はここでは、一次酸化ゾーン/反応器中で一次酸化に供される反応媒体の以前は一部であり且つ初期スラリー生成物の一部として一次酸化ゾーン/反応器から出る溶媒供給材料と定義する。例えば、p−キシレンの酸化によるTPAの形成のための部分酸化反応媒体への再循還溶媒供給材料は、最初は部分酸化反応媒体の一部を形成し、反応媒体からTPAスラリーの液相として除去され、ほとんどの固体TPA塊から分離され且つ次に部分酸化反応媒体に戻される溶媒である。前述のように、このような再循還溶媒供給材料は、溶媒の精製のためにかなりの資本コスト及び運転コストをかけて特殊な補助プロセス工程を設けなければ、種々の不所望の不純物を蓄積する傾向がある。経済的な理由から、好ましくは本発明の一次反応媒体への溶媒供給材料の少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%、更に好ましくは少なくとも約80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%が再循還溶媒である。製造ユニットにおける溶媒インベントリー及び稼働時間のため、再循還溶媒の一部が、好ましくは運転1日当たり少なくとも1回、より好ましくは少なくとも7日の連続する運転の間に1日当たり少なくとも1回、最も好ましくは少なくとも30日の連続する運転の間に1日当たり少なくとも1回、一次反応媒体を通過させる。
本発明者らは、反応活性のため及びポリカルボン酸生成物中に残される金属不純物を考慮して、再循還溶媒供給材料内の特定の多価金属の濃度は、すぐ下に明記した範囲であるのが好ましいことを発見した。再循還溶媒中の鉄濃度は、好ましくは約150ppmw未満、より好ましくは約40ppmw未満、最も好ましくは0〜8ppmwである。再循還溶媒中のニッケル濃度は、好ましくは約150ppmw未満、より好ましくは約40ppmw未満、最も好ましくは0〜8ppmwである。再循還溶媒中のクロム濃度は、好ましくは約150ppmw未満、より好ましくは約40ppmw未満、最も好ましくは0〜8ppmwである。再循還溶媒中のモリブデン濃度は、好ましくは約75ppmw未満、より好ましくは約20ppmw未満、最も好ましくは0〜4ppmwである。再循還溶媒中のチタン濃度は、好ましくは約75ppmw未満、より好ましくは約20ppmw未満、最も好ましくは0〜4ppmwである。再循還溶媒中の銅濃度は、好ましくは約20ppmw未満、より好ましくは約4ppmw未満、最も好ましくは0〜1ppmwである。他の金属不純物も代表的には再循還溶媒中に存在し、それは一般には、前に列挙した金属の1つ又はそれ以上に比例してより低いレベルで変動する。前記金属を前記の好ましい範囲に制御すると、他の金属不純物が適当なレベルに保たれるであろう。
これらの金属は、入ってくる全てのプロセス供給材料中の(即ち、入ってくる芳香族化合物、溶媒、酸化剤及び触媒化合物中の)不純物から生じる可能性がある。或いは、金属は、反応媒体と接触する且つ/又は再循還溶媒と接触する全てのプロセスユニットから腐蝕生成物として生じる可能性がある。開示された濃度範囲に金属を制御する手段には、種々の供給材料の純度の適正な規格及び監視、更にチタンの多くの商用銘柄並びに二相ステンレス鋼及び高モリブデンステンレス鋼として知られる銘柄を含むステンレス鋼の多くの商用銘柄(これらに限定するものではない)を含む構成材料の適正な使用法がある。
本発明者らはまた、再循還溶媒中における、特定の芳香族化合物の好ましい範囲を発見した。これらは、再循還溶媒内の沈澱及び溶解芳香族化合物をいずれも含む。
意外なことに、p−キシレンの部分酸化からの沈澱生成物(例えばTPA)でさえ、再循還溶媒中では管理すべき汚染物質である。一次反応媒体内の固体のレベルに関しては、意外にも好ましい範囲があるので、溶媒供給材料中の全ての沈澱生成物は、共に供給することができる芳香族化合物の量をそのまま減ずる。更に、再循還溶媒中の沈澱TPA固体の高レベルでの供給は、沈澱酸化媒体内で形成される粒子の特性に悪影響を及ぼし、それが下流操作(例えば、生成物の濾過、溶媒洗浄、粗製生成物の酸化的蒸解、更なる処理のための粗製生成物の溶解など)における不所望な特性につながることを発見した。再循還溶媒供給材料中の沈澱固体の別の不所望な特性は、これらが、多くの再循還溶媒の源となるTPAスラリー内の大部分の固体内の不純物濃度に比べて非常に高いレベルの沈澱不純物を含むことである。再循還溶媒中に懸濁された固体において観察される不純物のこのような高レベルは、再循還溶媒からのある種の不純物の沈澱のための核生成時間及び/又は意図的であるか周囲損失によるかにかかわらず、再循還溶媒の冷却に関係する可能性がある。例えば、色の濃い、不所望な2,6−ジカルボキシフルオレノンの濃度は、80℃の再循還溶媒中に存在する固体中では、160℃の再循還溶媒から分離されたTPA固体中で観察されるよりも高レベルで観察された。同様に、イソフタル酸の濃度は、再循還溶媒中に存在する固体中では、一次反応媒体からのTPA固体中で観察されるレベルに比べてはるかに高いレベルで観察された。一次反応媒体中に再導入される場合における、再循還溶媒内に同伴される特定の沈澱不純物の正確な挙動の仕方は変動するようである。これは、おそらくは一次反応媒体の液相内の不純物の相対溶解度に、おそらくは沈澱不純物が沈澱固体内でどのように層状になっているかに、また、おそらくは固体が最初に一次反応媒体中に入る際の局所的なTPA沈澱速度に左右されるであろう。従って、本発明者らは、再循還溶媒中のある種の不純物のレベルを、これらの不純物が溶解された形態で再循還溶媒中に存在するか又はその中に同伴された粒状物質であるかに関わらず、以下に開示したように制御することが有用であることに見出した。
再循還溶媒中に存在する沈澱固体の量は、以下のようにして重量法によって求める。溶媒が一次反応媒体に向かって導管中を流れている間に、一次反応媒体への溶媒供給材料から代表的なサンプルを回収する。有用なサンプルサイズは、約250mlの内部容積を有するガラス容器中に捕捉される約100gである。大気圧に放出される前ではあるが、サンプル容器に向かって連続的に流れている間に、再循還溶媒を100℃未満に冷却する;この冷却は、シールされてガラス容器中に閉じこめられる前の短時間における溶媒の蒸発を制限するためである。大気圧においてサンプルを捕捉した後、直ちに、ガラス容器をシールして閉じる。次いで、サンプルを、約20℃の空気で取り囲みながら、強制対流を用いずに、約20℃まで冷却させる。約20℃に達した後、サンプルをこの条件に少なくとも約2時間保持する。次に、目視によって均一な固体分布が得られるまで、シールされた容器を激しく振盪する。その直後に、電磁撹拌子をサンプル容器中に加え、固体の均一分布を効果的に保持するのに充分な速度で回転させる。懸濁された固体を含む混合液の10milのアリコートを、ピペットによって回収し、秤量する。次に、このアリコートからの液相の大部分を真空濾過によって、やはり約20℃において、固形分を損失させずに効果的に分離する。このアリコートから濾過された湿った固体を次に、固体を昇華させることなく効果的に乾燥させ、これらの乾燥固体を秤量する。(乾燥固体の重量)対(スラリーの元のアリコートの重量)の比は、典型的には百分率で表される固体の割合であり、ここでは溶媒供給材料中の「20℃における沈澱固形分」の量と称する。
本発明者らは、反応媒体の液相中に溶解された、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族カルボン酸(例えばイソフタル酸、安息香酸、フタル酸、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル)を含む芳香族化合物が驚くほど有害な成分であることを発見した。これらの化合物は、非芳香族ヒドロカルビル基を有する芳香族化合物に比較して、対象反応媒体中においては化学活性が非常に低いが、本発明者らは、これらの化合物はそれにもかかわらず、多数の有害な反応を受けることを発見した。従って、これらの化合物の含量を反応媒体の液相中で好ましい範囲に制御するのが有利である。これは、再循還溶媒供給材料中の特定の化合物の好ましい範囲につながり、また、被酸化性芳香族化合物供給材料中の特定の前駆体の好ましい範囲をつながる。
例えば、p−キシレンのテレフタル酸(TPA)への液相部分酸化において、本発明者らは、m−置換された芳香族化合物が反応媒体中で非常に低レベルである場合には、色の濃い、不所望な不純物2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)が反応媒体及び生成物オフテイク中にほとんど検出されないことを発見した。本発明者らは、イソフタル酸不純物が溶媒供給材料中に次第に増大するレベルで存在する場合には、2,7−DCFの形成がほとんど正比例して上昇することを発見した。本発明者らはまた、m−キシレン不純物がp−キシレンの供給材料中に存在する場合には、この場合もやはり、2,7−DCFの形成がほとんど正比例して上昇することを発見した。更に、溶媒供給材料及び芳香族化合物供給材料がm−置換芳香族化合物を含んでいないとしても、本発明者らは、反応媒体の液相中に安息香酸が存在する場合には特に、極めて純粋なp−キシレンの典型的な部分酸化の間に若干のイソフタル酸が形成されることを発見した。この自己生成したイソフタル酸は、酢酸及び水を含む溶媒中への溶解度がTPAよりも大きいので、再循還溶媒を使用する商用ユニット中に徐々に蓄積する可能性がある。従って、溶媒供給材料内のイソフタル酸の量、芳香族芳香族化合物供給材料内のm−キシレンの量及び反応媒体内のイソフタル酸の自己生成速度は、全て、相互のバランスで、また、イソフタル酸を消費する全ての反応とのバランスで、適切に考慮する。イソフタル酸は、以下に開示するような、2,7−DCFの形成以外の他の消費反応を受けることを発見した。更に、本発明者らは、p−キシレンのTPAへの部分酸化においてm−置換芳香族化合物種に適切な範囲を設定する場合には他の問題を考えなければならないことを発見した。2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)のような、他の色の濃い、不所望な不純物が、液相酸化へのp−キシレン供給材料と共に常に存在する溶解p−置換芳香族化合物種に非常に関連しているようである。従って、2,7−DCFの抑制は、生成される他の有色不純物のレベルとの相関関係において最も考慮される。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、反応媒体内において、イソフタル酸及びフタル酸のレベルが増加するにつれて、トリメリット酸の形成が増加することを発見した。トリメリット酸は、TPAからのPETの製造の間にポリマー鎖の分岐をもたらす三官能価カルボン酸である。多くのPET用途において、分岐レベルは低レベルに制御しなければならず、従って、精製TPA中においてトリメリット酸は低レベルに制御しなければならない。トリメリット酸を生じる他に、反応媒体中のm−置換種及びp−置換種の存在はまた、他のトリカルボン酸(例えば1,3,5−トリカルボキシベンゼン)を生じさせる。更に、反応媒体中のトリカルボン酸の存在が増加すると、テトラカルボン酸(例えば1,2,4,5−テトラカルボキシベンゼン)の生成量が増加する。2個より多いカルボン酸基を有する全ての芳香族カルボン酸の生成をまとめて制御することが、本発明に従って再循還供給材料中、芳香族化合物供給材料中及び反応媒体中のm−置換種及びo−置換種の好ましいレベルを設定する上での1つの要因である。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、いくつかの溶解された、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族カルボン酸の反応媒体液相中レベルの増加が、一酸化炭素及び二酸化炭素の生成の増加に直接つながることを発見した。炭素酸化物の生成のこのような増加は、酸化剤及び芳香族化合物の両方の収率損失になる(後者は、一方では不純物と見なされる場合がある共生成芳香族カルボン酸の多くが、他方では、商業的価値を有するためである)。従って、比較的可溶性の、非芳香族ヒドロカルビル基を持たないカルボン酸を、再循還溶媒から適切に除去することは、種々のフルオレノン類及びトリメリット酸のような、非常に不所望な不純物の発生を抑制することに加えて、被酸化性芳香族化合物及び酸化剤の収率損失の防止において経済的価値がある。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、2,5,4’−トリカルボキシビフェニルの形成は避けられないように見えることを発見した。2,5,4’−トリカルボキシビフェニルは、2つの芳香環のカップリングによって、おそらくは溶解p−置換芳香族化合物種とアリール基(おそらくはp−置換芳香族化合物種の脱カルボキシル化又は脱カルボニル化によって形成されるアリール基)とのカプリングによって形成される芳香族トリカルボン酸である。幸いなことに、2,5,4’−トリカルボキシビフェニルは典型的には、トリメリット酸よりも低レベルで生成され、PETの製造時におけるポリマー分子の分岐の問題を通常はそれほど増加させない。しかし、本発明者らは、本発明の好ましい実施態様に係るアルキル芳香族化合物の酸化を構成する反応媒体中における高レベルの2,5,4’−トリカルボキシビフェニルは、色の濃い、不所望な2,6−DCFのレベルを増加させることを発見した。増加した2,6−DCFは、2,5,4’−トリカルボキシビフェニルから閉環によって水1分子を失って生成される可能性があるが、正確な反応メカニズムは確実にはわかっていない。酢酸及び水を含む溶媒中にTPAよりも可溶な2,5,4’−トリカルボキシビフェニルは、再循還溶媒内で過度に高く蓄積させられると、2,6−DCFへの転化速度が不所望に大きくなる可能性がある。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族カルボン酸(例えばイソフタル酸)は一般に、充分な濃度で液相中に存在する場合には反応媒体の化学活性を少し抑制することを発見した。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、固相及び液相中の種々の化学種の相対濃度に関して沈澱は非理想的(即ち非平衡)であることが非常に多いことを発見した。おそらくは、これは、ここで好ましいとされる時空反応速度において沈澱が非常に速く、それが不純物の非理想的共沈又は閉塞すら引き起こすためである。従って、下流ユニット運転の構造のために、粗製TPA内のある種の不純物(例えばトリメリット酸及び2,6−DCF)の濃度を制限することが要求される場合には、溶媒供給材料中のそれらの濃度と反応媒体中のそれらの生成速度を制限するのが好ましい。
例えば、本発明者らは、p−キシレンの部分酸化の間に生成されたベンゾフェノン化合物(例えば4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン及び2,5,4’−トリカルボキシベンゾフェノン)は、TPA自体中ではフルオレノン類及びアントラキノン類ほど濃く着色していないとしても、それらはPET反応媒体中で不所望な影響をもたらすことを発見した。従って、再循還溶媒及び芳香族化合物供給材料中におけるベンゾフェノン類及び特定の前駆体の存在を制限するのが望ましい。更に、本発明者らは、再循還溶媒中に入れられるか又は反応媒体内で形成されるかにかかわらず、高レベルの安息香酸の存在は4.4’−ジカルボキシベンゾフェノンの生成速度の増加をもたらすことを発見した。
ここまでを概説すると、本発明者らは、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において存在する、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物に関する驚くほどたくさんの反応を発見し、充分に定量化した。安息香酸の例1つだけをとってみても、本発明者らは、本発明のいくつかの実施態様の反応媒体中の安息香酸レベルの増加が、色の濃い、不所望な9−フルオレノン−2−カルボン酸の生成の著しい増加、4,4’−ジカルボキシビフェニルのレベルの著しい増加、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノンのレベルの増加、目的とするp−キシレン酸化の化学活性のわずかな抑制並びに炭素酸化物と付随する収率損失のレベルの増加をもたらすことを発見した。本発明者らは、反応媒体中の安息香酸のレベルの増加が、またイソフタル酸及びフタル酸の生成を増加させることを発見した。そのレベルは、望ましくは本発明の同様な態様に従って低い範囲に制御する。安息香酸を含む反応の数及び重要性はおそらく更に驚くべきものであり、それは、最近の一部の発明者が溶媒の主成分として酢酸の代わりに安息香酸を用いることを検討しているためである(例えば米国特許第6,562,997号参照)。更に、本発明者らは、p−キシレンの酸化の間に、安息香酸が、商用純度のp−キシレンを含む芳香族化合物中によく見られるトルエン及びエチレンのような不純物からのその生成に比べて、非常に重要な速度で自己生成されることを観察した。
他方、本発明者らは、被酸化性芳香族化合物の存在に関しては、そして非芳香族ヒドロカルビル基を保持し且つまた再循還溶媒中に比較的可溶である芳香族反応中間体に関しては、再循還溶媒組成の付加的な制限からほとんど意義を見出せなかった。一般に、これらの化合物は、再循還溶媒中におけるそれらの存在よりもかなり大きい割合で反応媒体内に供給されるか、反応媒体内で生成され;これらの化合物は1個又はそれ以上の非芳香族ヒドロカルビル基を保持していながら、一次反応媒体内におけるこれらの化合物の消費速度は、再循還溶媒内におけるそれらの沈着を適切に制限するのに充分大きい。例えば多相反応媒体中におけるp−キシレンの部分酸化の間に、p−キシレンは多量の溶媒と共にわずかに蒸発する。この蒸発溶媒が排ガスの一部として反応器から出て、再循還溶媒としての回収のために凝縮される場合には、蒸発p−キシレンの相当部分がその中で同様に凝縮される。このp−キシレンの再循還溶媒中濃度を制限することは必要ない。例えばスラリーがp−キシレン酸化反応媒体から出る際に溶媒が固体から分離される場合には、この回収溶媒は、反応媒体からの除去点に存在するのと同様な濃度の溶解p−トルイル酸を含むであろう。反応媒体の液相内のp−トルイル酸の定常濃度を制限することが重要な場合もある(下記参照)が、この部分の再循還溶媒中のp−トルイル酸は、比較的良好な溶解度を有し且つ反応媒体内におけるp−トルイル酸の生成に比べて質量流速が低いため、別個に制限することは必要ない。同様に、本発明者らは、メチル置換基を有する芳香族化合物(例えばトルイル酸)、芳香族アルデヒド(例えば、テレフタルアルデヒド)、ヒドロキシ−メチル置換基を有する芳香族化合物(例えば4−ヒドロキシメチル安息香酸)及び少なくとも1個の非芳香族ヒドロカルビル基を保持する臭素化芳香族化合物(例えばα−ブロモ−p−トルイル酸)の、再循還溶媒中濃度を、本発明に好ましい実施態様に係るキシレンの部分酸化中に存在する反応媒体から出て行く液体中にもともと見られる濃度未満に制限する理由をほとんど見出せなかった。意外なことに、本発明者らは、また、キシレンの部分酸化の間に元来生成される特定のフェノール類が再循還溶媒中におけるそれらの存在よりもはるかに大きい割合で一次反応媒体内で生成及び破壊されるため、これらの化合物の濃度を再循還溶媒中で制限することは必要ないことを発見した。例えば、本発明者らは、同様な反応媒体中においてかなり有害であると他者によって報告されている(例えば、W.Partenheimer,Catalysis Today 23(1995)p.81参照)にもかかわらず、再循還溶媒中にもともと存在するよりもはるかに高い、p−キシレン1kg当たり2gを越える割合で4−ヒドロキシ安息香酸が同時供給される場合には、4−ヒドロキシ安息香酸は本発明の好ましい実施態様において化学活性に比較的小さい影響しか及ばさないことを発見した。
従って、今開示した、溶媒供給材料中の種々の芳香族不純物の好ましい範囲の設定においては多くの反応及び多くの考慮すべき事項がある。これらの発見を、設定期間、好ましくは1日、より好ましくは1時間、最も好ましくは1分の間に一次反応媒体に供給される全ての溶媒流の総重量平均組成に関して記載する。例えば、1つの溶媒供給材料が7kg/分の流速でイソフタル酸40ppmwの組成で実質的に連続的に流れ、第2の溶媒供給材料が10kg/分の流速でイソフタル酸2,000ppmwの組成で実質的に連続的に流れ、且つ一次反応媒体に入る溶媒供給材料流が他にない場合には、溶媒供給材料の総重量平均組成は、イソフタル酸(40×7+2,000×10)/(7+10)=1,193ppmwとして計算される。一次反応媒体に入る前に溶媒供給材料とおそらく混ぜ合わされるであろう任意の芳香族化合物供給材料の重量又は任意の酸化剤供給材料の重量は、溶媒供給材料の総重量平均組成の計算においては考慮しないことは注目に値する。
以下の表Iは、一次反応媒体中に導入される溶媒供給材料中の一部の成分に関して好ましい値を記載する。表Iに記載した溶媒供給材料成分は以下の通りである:4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、4,4’−ジカルボキシスチルベン(4,4’−DCS)、2,6−ジカルボキシアントラキノン(2,6−DCA)、2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)、2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)、3,5−ジカルボキシフルオレノン(3,5−DCF)、9−フルオレノン−2−カルボン酸(9F−2CA)、9−フルオレノン−4−カルボン酸(9F−4CA)、個別には記載していない他のフルオレノン類を含む総フルオレノン類(総フルオレノン類)、4,4’−ジカルボキシビフェニル(4,4’−DCB)、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル(2,5,4’−TCB)、フタル酸(PA)、イソフタル酸(IPA)、安息香酸(BA)、トリメリット酸(TMA)、2,6−ジカルボキシベンゾクマリン(2,6−DCBC)、4,4’−ジカルボキシベンジル(4,4’−DCBZ)、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン(4,4’−DCBP)、2,5,4’−トリカルボキシベンゾフェノン(2,5,4’−TCBP)、テレフタル酸(TPA)、20℃における沈澱固体、及び非芳香族ヒドロカルビル基を持たない総芳香族カルボン酸。以下の表Iは、本発明の一実施態様に係る一次酸化反応への溶媒供給材料中のこれらの不純物の好ましい量を示す。
多くの他の芳香族不純物もまた、再循還溶媒中に典型的に存在するが、それらは一般的に更に低いレベルで且つ/又はここに開示した1種又はそれ以上の芳香族化合物に比例して変動する。開示した芳香族化合物を好ましい範囲に制御するための方法は典型的には他の芳香族不純物を適当なレベルに保つであろう。
臭素が反応媒体中で用いられる場合には、多数のイオン型及び有機型の臭素がダイナミックバランスで存在することがわかっている。これらの種々の型の臭素は、反応媒体から離れ且つ再循還溶媒に関連する種々のユニット操作を経た後には異なる安定特性を有する。例えば、α−ブロモ−p−トルイル酸はある条件ではそのまま存在し続ける可能性があり、或いは他の条件では急速に加水分解して、4−ヒドロキシメチル安息香酸及び臭化水素を形成する可能性がある。本発明においては、一次反応媒体への総溶媒供給材料中に存在する臭素の総質量の少なくとも約40重量%が以下の化学種:イオン状臭素、α―ブロモ−p−トルイル酸及びブロモ酢酸のうちの1種又はそれ以上であるのが好ましく、少なくとも約60重量%がこのような化学種であるのがより好ましく、少なくとも約80重量%がこのような化学種であるのが最も好ましい。
溶媒供給材料の総重量平均純度を開示した、本発明の望ましい範囲内に制御する重要性及び意義を発見し且つ/又は開示したが、溶媒供給材料の純度を制御するための適当な手段は、当業界で既に知られている種々の方法から集めることができる。第一に、一次反応媒体から蒸発した任意の溶媒は典型的には、一次反応媒体からの液体又は固体が蒸発溶媒に同伴されないならば、適当な純度である。本明細書中に開示した、一次反応媒体の上方の排ガス離脱空間への還流溶媒液滴の供給はこのような同伴を適切に制限し;芳香族化合物に関して適当な純度の再循還溶媒が、このような排ガスから凝縮されることができる。第二に、再循還溶媒供給材料の比較的困難で且つコストのかかる精製は典型的には、液体の形態で一次反応媒体から取り出される溶媒に、及び一次反応容器から回収される反応媒体の液相及び/又は固相とその後に接触する溶媒(例えば、固形分が濃縮され且つ/又は洗浄されるフィルターから得られる再循還溶媒;固体が濃縮され且つ/又は洗浄される遠心分離機から得られる再循還溶媒;結晶化操作から回収される再循還溶媒など)に関連する。しかし、1つ又はそれ以上の以前の開示を用いてこれらの再循還溶媒流に必要な精製を行うための手段もまた当業界で知られている。再循還溶媒中の沈澱固体の、特定の範囲内への制御に関しては、適当な制御手段としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:重量沈降;回転式ベルトフィルター及び回転式ドラムフィルター上のフィルタークロスを用いる機械的濾過;圧力容器内において静止した濾材を用いる機械的濾過;ハイドロサイクロン;及び遠心分離機。再循還溶媒中の溶解芳香族種の、特定の範囲内への制御に関しては、制御手段は、米国特許第4,939,297号及び米国特許出願公開第2005−0038288号(引用することによってここに組み入れる)に開示されたものが挙げられるが、これらに限定するものではない。しかし、これらの以前の発明はいずれも、本明細書中に開示したような総溶媒供給材料中の好ましい純度レベルを発見も開示もしていない。それどころか、これらの以前の発明は、再循還溶媒の特定の一部分の流れを精製する手段を提供しただけであって、一次反応媒体への総重量平均溶媒供給材料の組成についての本発明の最適値を推論すらしていない。
ここで芳香族化合物の供給材料の純度に目を向けると、ポリマー製造に使用される精製TPA中には、ある程度のレベルのイソフタル酸、フタル酸及び安息香酸が存在するが、それは低レベルで許容され得るものであることが知られている。更に、これらの種は多くの溶媒中に比較的可溶性であり、精製TPAから結晶化方法によって除去できることが知られている。しかし、本明細書中に開示した本発明の一実施態様からは、一次酸化反応媒体の液相中において、いくつかの比較的可溶性の芳香族種、特に、イソフタル酸、フタル酸及び安息香酸のレベルを制御することは、反応媒体中で生成される有色多環式芳香族化合物のレベルの制御のために、分子当たり2個より多くのカルボン酸官能基を有する化合物の制御のために、部分酸化反応媒体内における反応活性の制御のために、並びに酸化剤及び芳香族化合物の収率損失の制御のために、驚くほど重要であることがわかっている。
イソフタル酸、フタル酸及び安息香酸は反応媒体中で以下のようにして形成されることが当業界において知られている。m−キシレン供給材料不純物は、良好な転化率及び収率で酸化してIPAになる。o−キシレン供給材料不純物は良好な転化率及び収率で酸化してフタル酸になる。エチルベンゼン及びトルエン供給材料不純物は良好な転化率及び収率で酸化して安息香酸になる。しかし、本発明者らは、p−キシレンを含む反応媒体内で、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの酸化以外の手段によっても、かなりの量のイソフタル酸、フタル酸及び安息香酸が生成されることを観察した。これらの他の固有の化学経路は、脱カルボニル化、脱カルボキシル化、遷移状態の再編成並びに芳香環へのメチル基及びカルボニル基の付加を含むと思われる。
芳香族化合物の供給材料中の不純物の好ましい範囲の決定には、多くの要因が関連する。酸化生成物の純度要件が充分に厳しい場合には、供給材料中の任意の不純物が直接的な収率損失及び生成物精製コストとなると考えられる(例えば、p−キシレンの部分酸化のための反応媒体においては、商用純度のp−キシレン中に典型的に見られるトルエン及びエチルベンゼンは安息香酸を生じ、この安息香酸は大部分が、ほとんどの市販TPAから除去される)。供給材料不純物の部分酸化生成物がその他の反応に関与する場合には、どの程度の供給材料精製コストを負担すべきかを検討する際に、単純な収率損失及び除去以外の要因がふさわしくなる(例えば、p−キシレンの部分酸化のための反応媒体においては、エチルベンゼンが安息香酸を生じ、次に安息香酸が色の濃い9−フルオレノン−2−カルボン酸、イソフタル酸、フタル酸を生じ、とりわけ炭素酸化物を増加させる)。反応媒体が、供給材料不純物に直接関係しない化学メカニズムによって更なる量の不純物を自己生成する場合には、分析は更に複雑になる(例えばp−キシレンの部分酸化のための反応媒体においては、安息香酸は、また、p−キシレン自体から自己生成する)。更に、粗製ポリカルボン酸生成物の下流処理が、好ましい供給材料純度の考慮事項に影響を与える可能性がある。例えば、直接的な不純物(安息香酸)及びその後生じる不純物(イソフタル酸、フタル酸、9−フルオレノン−2−カルボン酸など)を適当なレベルまで除去するコストは同一である場合もあるし、互いに異なる場合もあるし、ほとんど関係ない不純物(例えば、p−キシレンのTPAへの酸化における不完全酸化生成物4−CBA)の除去要件とは異なる場合がある。
p−キシレンに関する以下に開示する供給材料純度範囲は、p−キシレンが溶媒及び酸化剤と共に、TPAを生成するための部分酸化のための反応媒体に供給される場合に好ましい。これらの範囲は、酸化剤及び溶媒以外の不純物(例えば触媒金属)を反応媒体から除去するための後酸化工程を有するTPA製造方法においてより好ましい。これらの範囲は、CTAから余計な4−CBAを除去する[例えば、CTAの、テレフタル酸ジメチル+不純物エステルへの転化と、それに続く、蒸留、4−CBAのTPAへの酸化的蒸解法、4−CBAのp−トルイル酸(次に部分結晶化法によって分離する)への水素化方法による、4−CBAのメチルエステルの除去による]TPA製造方法において更にいっそう好ましい。これらの範囲は、4−CBAをTPAに転化する酸化的蒸解方法によってCTAから余計な4−CBAの除去するTPA製造法において最も好ましい。
再循還芳香族化合物の好ましい範囲及び供給材料不純物の酸化によって直接的に形成される芳香族化合物の好ましい量についての新しい知識を用いて、他の固有の化学経路に比較して改善された不純物の範囲を、TPA製造のための部分的酸化プロセスに供給される不純なp−キシレンに関して、発見した。以下の表IIは、p−キシレン供給材料中のm−キシレン、o−キシレン、及びエチルベンゼン+トルエンの量に関する好ましい値(p−キシレンの百万分率(ppm)で表してある)を示す。
当業者ならば、不純なp−キシレン内の前記不純物が、それらの部分酸化生成物が再循還溶媒中に蓄積された後に、最も大きな影響を及ぼし得ることがわかるであろう。例えば、反応媒体中の固形分約33重量%で操作する場合には、m−キシレンの最も好ましい範囲の上限量である400ppmwが供給されると、反応媒体の液相内に直ちに約200ppmwのイソフタル酸が生成されるであろう。これは、再循還溶媒中のイソフタル酸の最も好ましい範囲の上限量400pmwからの入力に匹敵し、これは、反応媒体を冷却するための典型的な溶媒蒸発を見越した後では結果的に反応媒体の液相内でイソフタル酸約1,200ppmwに相当する。従って、不純なp−キシレン供給材料中のm−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエン不純物の考えられる最大の影響となるのは、再循還溶媒内における部分酸化生成物の長期にわたる蓄積である。それ故に、不純なp−キシレン供給材料中の不純物に関する前記範囲が、個々の製造ユニット中の任意の部分酸化反応媒体の各運転日の少なくとも1/2の期間、保持するのが好ましく、より好ましくは少なくとも7日の連続運転期間中、各日の少なくとも3/4の期間、保持するのがより好ましく、不純なp−キシレン供給材料組成の質量加重平均が少なくとも30日の連続運転期間中、好ましい範囲内にある場合に最も好ましい。
好ましい純度の不純p−キシレンを得るための手段は当業界において既に知られており、その例としては、蒸留、周囲温度以下における部分結晶化及び選択的孔径吸着(selective pore-size adsorption)を用いた分子篩法が挙げられるが、これらに限定するものではない。しかし、ここで特定された好ましい純度範囲は、ハイエンドではp−キシレンの商業的供給者によって特徴的に実施されるよりも要求が厳しく且つ費用がかかるが;ローエンドでは、好ましい範囲は、p−キシレン自体からの不純物の自己生成及び反応媒体内における不純物消費反応の合わさった影響が不純p−キシレン内の不純物の供給量よりも重要になるのがどこであるかを発見し且つ開示することによって、部分酸化反応媒体に供給するためのp−キシレンの過度にコストのかかる精製を回避する。
キシレン含有供給流がエチル−ベンゼン及び/又はトルエンのような特定の不純物を含む場合には、これらの不純物の酸化によって安息香酸が生成する可能性がある。ここで使用する用語「不純物生成安息香酸」は、キシレン酸化の間にキシレン以外の全ての供給源から導かれる安息香酸を意味するものとする。
ここで開示する通り、キシレン酸化の間に生成される安息香酸の一部は、キシレン自体に由来する。このようなキシレンからの安息香酸の生成は、不純物生成安息香酸であるかもしれない安息香酸生成物の部分に区別して加えられる。理論にとらわれずに、キシレンの種々の中間酸化生成物が自然に脱カルボニル化(一酸化炭素を失う)又は脱カルボキシル化(二酸化炭素を失う)し、その結果としてアリール基を生成する場合には、安息香酸は反応媒体中のキシレンに由来すると考えられる。これらのアリール基は次に、反応媒体中の多くの利用可能な供給源の1つから水素原子を引き抜き、自己生成安息香酸を生成することができる。化学メカニズムがどのようなものであっても、ここで使用する用語「自己生成安息香酸」は、キシレン酸化の間にキシレンから導かれる安息香酸を意味するものとする。
ここでまた開示されるように、p−キシレンの酸化によってテレフタル酸(TPA)を生成する場合には、自己生成安息香酸の生成は、p−キシレン収率損失及び酸化剤収率損失を引き起こす。更に、反応媒体の液相中における自己生成安息香酸の存在は、多くの不所望な副反応の増加、特に、モノ−カルボキシ−フルオレノン類と称される色の濃い化合物の発生の増加と相関する。自己生成安息香酸は、また、安息香酸の再循還溶媒中への不所望な蓄積をもたらし、それが更に、反応媒体の液相中の安息香酸濃度を高める。従って、自己生成安息香酸の形成は最小限に抑えるのが望ましいが、これは、また、不純物生成安息香酸、安息香酸の消費に影響を与える要因、反応選択性の他の問題に関連する要因及び全体的な経済性と同時に考慮するのが適当である。
本発明者らは、安息香酸の自己生成は、例えば酸化時の反応媒体内における温度、キシレン分布及び酸素利用可能性を適切に選択することによって低レベルに制御できることを発見した。理論によって拘束するつもりはないが、比較的低い温度及び改善された酸素利用可能性が、脱カルボニル化及び/又は脱カルボキシル化速度を抑制し、従って、自己生成安息香酸の収率損失の面を回避するようである。充分な酸素利用性は、アリール基を他のより無害な生成物、特にヒドロキシ安息香酸に向かって誘導するようである。反応媒体中のキシレンの分配は、また、安息香酸又はヒドロキシ安息香酸へのアリール基の転化の間のバランスに影響を及ぼす可能性がある。化学メカニズムがどのようなものであっても、本発明者らは、安息香酸の生成を減少させるのに充分に穏やかであるが、高比率のヒドロキシ安息香酸生成物を、ポリカルボン酸生成物からの除去の容易な一酸化炭素及び/又は二酸化炭素へと酸化するのには充分に厳しい反応条件を発見した。
本発明の好ましい一実施態様において、酸化反応器は、自己生成安息香酸の形成が最小限に抑えられ且つヒドロキシ安息香酸の一酸化炭素及び/又は二酸化炭素への酸化が最大化にされるように構成及び運転する。酸化反応器がp−キシレンのテレフタル酸への酸化に用いられる場合には、p−キシレンは、反応器に導入される供給流中の総キシレンの少なくとも約50重量%を構成するのが好ましい。より好ましくは、p−キシレンは、供給流中の総キシレンの少なくとも約75重量%を構成する。更に好ましくは、p−キシレンは、供給流中の総キシレンの少なくとも95重量%を構成する。最も好ましくは、p−キシレンは、供給流中の総キシレンの実質的に全てを構成する。
反応器がp−キシレンのテレフタル酸への酸化に用いられる場合には、自己生成安息香酸の生成速度を最小限に抑えながら、テレフタル酸の生成速度が最大化されるのが好ましい。テレフタル酸の生成(重量による)速度対自己生成安息香酸の生成(重量による)速度の比は、好ましくは少なくとも約500:1、より好ましくは少なくとも1,000:1、最も好ましくは少なくとも1,500:1である。以下からわかるように、自己生成安息香酸の生成速度は、反応媒体の液相中の安息香酸濃度が2,000ppmw未満である場合に測定するのが好ましく、1,000ppmw未満である場合に測定するのがより好ましく、500ppmw未満の場合に測定するのが最も好ましい。これは、このような低濃度が、安息香酸を他の化合物に転化する反応を適当に低い速度に抑えるためである。
自己生成安息香酸と不純物生成安息香酸とを合する場合には、テレフタル酸の生成(重量による)速度対総(自己生成及び不純物生成)安息香酸の生成(重量による)速度の比は、好ましくは少なくとも約400:1、より好ましくは少なくとも約700:1、最も好ましくは少なくとも1,100:1である。以下からわかるように、自己生成安息香酸の生成+不純物生成安息香酸の生成の合計速度は、反応媒体の液相中の安息香酸濃度が500ppmw未満の場合に測定するのが好ましい。これは、これらの低濃度が、安息香酸を他の化合物に転化する反応を適当に低い速度に抑えるためである。
ここに開示するように、酸化的蒸解反応媒体の液相中の高濃度の安息香酸は、多くの他の芳香族化合物の形成を増加させ、それらの化合物のいくつかはTPA中で有害な不純物である。ここで開示されるように、反応媒体の液相中の高濃度の安息香酸は、炭素酸化物ガスの形成を増加させ、その形成は酸化剤及び芳香族化合物並びに/又は溶媒の収率損失になる。更に、本発明者らは、他の芳香族化合物及び炭素酸化物のこのような増加された形成のかなりの部分が、安息香酸がそれ自体が消費されずに他の反応を触媒するではなく、安息香酸分子自体の一部を転化する反応から導かれることを発見した。従って、「安息香酸の正味生成」は、ここでは、「(反応媒体から出る全安息香酸の時間平均重量)−(同じ期間に反応媒体に入る全安息香酸の時間平均重量)」と定義する。この、安息香酸の正味重量は多くの場合、正の値であり、不純物生成安息香酸の形成速度及び自己生成安息香酸の形成速度によって決定される。しかし、本発明者らは、温度、酸素利用可能性、STR及び反応活性を含む他の反応条件が適切に一定に保持される場合に測定する、炭素酸化物及びいくつかの他の化合物への安息香酸の転化速度は、安息香酸濃度が反応媒体の液相中で増加するにつれてほぼ直線的に増加するようであることを発見した。従って、反応媒体の液相中の安息香酸濃度が充分に高い場合(おそらく再循還溶媒中の安息香酸の高濃度による)には、安息香酸分子の、炭素酸化物を含む他の化合物への転化は、新しい安息香酸分子の化学的生成に等しいか又はそれより多くなる可能性がある。この場合には、安息香酸の正味生成は、ゼロ近く又は負の値でバランスされる可能性がある。本発明者らは、安息香酸の正味生成が正の値である場合には、[反応媒体中のテレフタル酸の生成(重量による)速度]対[反応媒体中の安息香酸の正味生成速度]の比は、好ましくは約700:1超、より好ましくは約1,100:1超、最も好ましくは4,000:1超であることを発見した。本発明者らは、安息香酸の正味生成が負の値である場合には、[反応媒体中のテレフタル酸の生成(重量による)速度]対[反応媒体中の安息香酸の正味生成速度]の比は、好ましくは約200:(−1)超、より好ましくは約1,000:(−1)超、最も好ましくは5,000:(−1)超であることを発見した。
本発明の別の実施態様は、一方での有害な芳香族不純物の抑制を、他方での二酸化炭素及び一酸化炭素[総称して炭素酸化物(COx)]に適切にバランスさせながら、芳香族化合物を部分酸化させることに関する。これらの炭素酸化物は典型的には反応容器から排ガス中に出る。これらは、溶媒の破壊損失、及び最終的に好ましい酸化された誘導体(例えば、酢酸、p−キシレン及びTPA)を含む芳香族化合物の破壊損失に相当する。本発明者らは、炭素酸化物生成の下限を発見した。その下限未満では、それは有害な芳香族不純物(下記)の多量の生成のように見え、また、その低い転化レベルは必然的に低すぎて経済的に有用でない。本発明者らは、また、炭素酸化物の上限を発見した。その上限より上では、炭素酸化物の発生が増加し続け、有害な芳香族不純物の発生の減少によってもたらされる更なる意義はほとんどない。
本発明者らは、反応媒体内の芳香族化合物供給材料及び芳香族中間体種の液相濃度を低下させると、芳香族化合物の部分酸化の間の有害な不純物の生成速度が低下することを発見した。これらの有害な不純物としては、カップリングされた芳香環及び/又は所望の数より多いカルボン酸基を含む芳香族分子が挙げられる(例えば、p−キシレンの酸化においては、有害な不純物には、2,6−ジカルボキシアントラキノン、2,6−ジカルボキシフルオレノン、トリメリット酸、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル、及び2,5,4’−ベンゾフェノンがある)。芳香族中間体種としては、被酸化性芳香族化合物の供給材料から派生し且つ依然として非芳香族ヒドロカルビル基を保持する芳香族化合物が挙げられる(例えば、p−キシレンの酸化においては、芳香族中間体種はp−トルアルデヒド、テレフタルデヒド、p−トルイル酸、4−CBA、4−ヒドロキシメチル安息香酸及びα−ブロモ−p−トルイル酸を含む)。芳香族化合物供給材料及び非芳香族ヒドロカルビル基を保持する芳香族中間体種は、反応媒体の液相中に存在する場合には、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない溶解芳香族化合物種(例えば、イソフタル酸)に関して本明細書中で既に記載したのと同様にして有害な不純物を生じるようである。
被酸化性芳香族化合物の部分酸化の間における有害な芳香族不純物の形成を抑制するには比較的高い反応活性がこのように必要であるのに対して、本発明者らは、炭素酸化物の生成の増加が不所望に付随して起こることを発見した。これらの炭素酸化物は、溶媒だけでなく芳香族化合物及び酸化剤の収率損失に相当することを理解することが重要である。明白なことは、炭素酸化物の相当部分、場合によっては主な部分が、溶媒ではなく芳香族化合物及びその誘導体に由来し;多くの場合芳香族化合物は炭素単位当たりのコストが溶媒よりも多くかかることである。更に、目的生成物であるカルボン酸(例えばTPA)もまた、反応媒体の液相中に存在する場合には、炭素酸化物への過剰酸化を受けやすいことを理解することが重要である。
本発明は、また、反応媒体の液相中の反応及び液相内の反応体濃度に関連することを理解することが重要である。これは、非芳香族ヒドロカルビル基を保持する芳香族化合物の沈殿固体の形態での生成に直接関連するいくつかの以前の発明とは異なる。具体的には、p−キシレンのTPAへの部分酸化に関しては、いくつかの以前の発明は、CTAの固相中に沈殿された4−CBAの量に関連する。しかし、本発明者らは、同じ仕様の温度、圧力、触媒反応、溶媒組成及びp−キシレンの空時反応速度を用いて、よく混合されたオートクレーブ中で部分酸化が行われるか又は本発明に従って酸素及びp−キシレンが段階的である反応媒体中で部分酸化が行われるかに応じて、(固相中の4−CBA)対(液相中の4−CBA)の比に関して2:1より大きい変動を発見した。更に、本発明者らは、(固相中の4−CBA)対(液相中の4−CBA)の比がまた、よく混合された反応媒体又は段階付けられた反応媒体のいずれの中でも、p−キシレンの空時反応速度に応じて、他の点では同様な仕様の温度、圧力、触媒反応及び溶媒組成において、2対1より大きく変動できることを観察した。更に、固相中CTA中の4−CBAは、有害な不純物の形成の原因とはならないと考えられ、固相中の4−CBAは回収され且つ簡単に高収率でTPAに酸化されることができる(例えば、本明細書中に記載したような初期スラリーの酸化的蒸解によって)のに対し;有害な不純物の除去は、固相4−CBAの除去よりはるかに困難で且つコストがかかり、炭素酸化物の生成は永続的な収率損失に相当する。従って、本発明のこの態様は反応媒体中の液相組成に関連することを識別することが重要である。
溶媒又は芳香族化合物のいずれに由来するのであっても、本発明者らは、商業的に有用な転化率においては、炭素酸化物の生成は、温度、金属、ハロゲン、温度、pHによって測定される反応媒体の酸性度、全反応活性のレベルを得るのに使用された水濃度の具体的な組合せが大きく異なっても、全反応活性のレベルに強く関連することを発見した。本発明者らは、反応媒体の中央高さ、反応媒体の底部及び反応媒体の頂部におけるトルイル酸の液相濃度を用いて全反応活性のレベルを評価することが、キシレンの部分酸化に有用であることを見出した。
従って、反応活性を増加させることによって有害な不純物の生成を最小限に抑え、またその一方で反応活性を低下させることによって炭素酸化物の生成を最小限に抑える、重要な同時バランスが生じる。即ち、炭素酸化物の全生成を過度に低く抑えると、過剰なレベルの有害不純物が形成され、逆の場合も同じである。
更に、本発明者らは、目的とするカルボン酸(例えばTPA)の溶解度及び相対反応性並びに非芳香族ヒドロカルビル基を持たない他の溶解芳香族化合物種の存在が、炭素酸化物と有害不純物とのこのようなバランスに非常に重要な支点をもたらすことを発見した。目的生成物のカルボン酸は典型的には、それがまた固体の形態で存在する場合であっても、反応媒体の液相中に溶解される。例えば、好ましい範囲の温度においては、TPAは酢酸及び水を含む反応媒体中に、約1,000ppmw〜1重量%超の範囲のレベルで溶解でき、溶解度は温度の増加と共に増加する。被酸化性芳香族化合物供給材料(例えばp−キシレン)から、芳香族反応中間体(例えばp−トルイル酸)から、目的生成物である芳香族カルボン酸(例えばTPA)から及び非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物種(例えばイソフタル酸)から種々の有害不純物を形成する方向に向かう反応速度には差があるのにもかかわらず、後者の2つの群の存在及び反応性は、前者の2つの群、即ち、被酸化性芳香族供給材料及び芳香族反応中間体種のさらなる抑制に関する戻り減少の領域を決定する。例えば、p−キシレンのTPAへの部分酸化において、溶解TPAが所定の条件において反応媒体の液相中で7,000ppmwに、溶解安息香酸が8,000ppmwに、溶解イソフタル酸が6,000ppmwに且つ溶解フタル酸が2,000ppmwに達する場合には、反応活性が増加されてp−トルイル酸及び4−CBAの液相濃度が同様なレベル未満に抑えられるにつれて、総有害化合物を更に低下させる方向への値は低下し始める。即ち、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物種の、反応媒体の液相中における存在及び濃度は、反応活性の増加によってほとんど変化せず、それらの存在は、有害不純物の形成を抑制するために反応中間体の濃度低下の戻り減少の領域を上方に拡大する働きをする。
従って、本発明の一実施態様は、好ましい炭素酸化物(一酸化炭素及び二酸化炭素)の範囲を提供する。この範囲は、下限で低反応活性及び有害不純物の過剰形成と境界を接し且つ上限で過剰な炭素損失と境界を接するが、商業的に有用であると以前に発見され且つ開示されたよりも低いレベルである。従って、炭素酸化物の形成は好ましくは以下のようにして制御される。(生成される総炭素酸化物のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は、好ましくは約0.02:1〜約0.25:1、より好ましくは約0.04:1〜約0.22:1、更に好ましくは約0.05:1〜約0.19:1、最も好ましくは0.06:1〜0.15:1の範囲である。(生成される二酸化炭素のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は、好ましくは約0.01:1〜約0.21:1、より好ましくは約0.03:1〜約0.19:1、更に好ましくは約0.04:1〜約0.16:1、最も好ましくは0.05:1〜0.11:1である。(生成される一酸化炭素のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は、好ましくは約0.005:1〜約0.09:1、より好ましくは約0.01:1〜約0.07:1、更に好ましくは約0.015:1〜約0.05:1、最も好ましくは0.02:1〜0.04である。
酸化反応器からの乾燥排ガス中の二酸化炭素含量は、好ましくは約0.1〜約1.5モル%、より好ましくは約0.20〜約1.2モル%、更に好ましくは約0.25〜約0.9モル%、最も好ましくは0.30〜0.8モル%の範囲である。酸化反応器からの乾燥排ガス中の一酸化炭素含量は、好ましくは約0.05〜約0.6モル%、より好ましくは約0.10〜約0.5モル%、更に好ましくは約0.15〜約0.35モル%、最も好ましくは0.18〜0.28モル%の範囲である。
本発明者らは、これらの好ましい範囲まで炭素酸化物の生成を減少させるのに重要な要因が、本発明の開示に係る、再循還溶媒の純度及び芳香族化合物の供給材料の純度の改善による非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物の濃度の低下(これが同時に、炭素酸化物及び有害不純物の形成を減少させる)であることを発見した。別の要因は、本発明に開示に係る、反応容器内におけるp−キシレン及び酸化剤の分配の改善である。炭素酸化物の前記の好ましいレベルを可能にする他の要因は、圧力に関して、温度に関して、液相中の芳香族化合物の濃度に関して及び気相中の酸化剤に関して本明細書中に開示したような、反応媒体中の勾配で運転することである。炭素酸化物の前記の好ましい範囲を可能にする他の要因は、時空反応速度、圧力、温度、溶媒組成、触媒組成及び反応容器の機械形状寸法に関して好ましい、本明細書中の開示内で運転することである。
好ましい一酸化炭素形成範囲内における運転の1つの考えられるメリットは、分子状酸素の使用を、化学量論値までではないが減少できることである。本発明に従って酸化剤及び芳香族化合物の良好な段階付けがなされたとしても、炭素酸化物への若干の損失を考慮するために、そして有害不純物の形成を制御するための過剰な分子状酸素を供給するために、過剰の酸素は、芳香族化合物の供給材料単独に関して計算された化学量論値よりも高い値に保持しなければならない。キシレンが芳香族性化合物の供給材料である場合に関して、具体的には、分子状酸素の重量対キシレンの重量の供給比は好ましくは約0.91:1〜約1.5:1、より好ましくは約0.95:1〜約1.3:1、最も好ましくは1:1〜1.15:1の範囲である。キシレン材料に関して具体的には、酸化反応器からの乾燥排ガス中の分子状酸素の時間平均含量は、好ましくは約0.1〜約6モル%、より好ましくは約1〜約2モル%、最も好ましくは1.5〜3モル%の範囲である。
好ましい一酸化炭素形成範囲内における運転の別の考えられるメリットは、炭素酸化物及び他のそれほど有用でない形態に転化される芳香族化合物がより少ないことである。このメリットは、(連続期間にわたる、好ましくは1時間にわたる、より好ましくは1日にわたる、最も好ましくは連続した30日わたる、反応媒体から出る全芳香族化合物のモル数の和)÷(同期間における、反応媒体に入る全芳香族化合物のモル数の和)を用いて評価する。この比を以下、反応媒体を通る芳香族化合物に関する「モル残存率」と称し、パーセント値で表す。入ってくる全ての芳香族化合物が芳香族化合物として反応媒体から出て行くとすると、それがほとんど、入ってくる芳香族化合物の酸化された形態であったとしても、モル残存率はその最大値100%を有する。入ってくる芳香族分子100個当たりちょうど1個が、反応媒体を通過しながら、炭素酸化物及び/又は他の非芳香族分子(例えば酢酸)に転化されるとすると、モル残存率は99%である。キシレンが主な被酸化性芳香族化合物供給材料である場合に関しては、具体的には、反応媒体を通る芳香族化合物に関するモル残存率は、好ましくは約98〜約99.9%、より好ましくは約98.5〜約99.8%、最も好ましくは99.0〜99.7%の範囲である。
本発明の別の態様は、酢酸及び1種又はそれ以上の被酸化性芳香族化合物を含む反応媒体中における酢酸メチルの生成を含む。この酢酸メチルは、水及び酢酸に比べて比較的に揮発性であり、従って、更なる冷却又は他のユニット操作を用いてそれを回収及び/又は破壊してから排ガスを放出して環境にもどす場合を除いて、排ガスに随伴する傾向がある。従って、酢酸メチルの生成は運転コスト、更には資本コストとなる。おそらく、酢酸メチルは、最初にメチル基(おそらく、酢酸の分解からの)を酸素と結合させてメチルヒドロペルオキシドを生成し、次に分解してメタノールを生成し、最後に生成メタノールを残りの酢酸と反応させて酢酸メチルを生成することによって、生成される。化学経路がどのようなものであるとしても、本発明者らは、酢酸メチルの生成速度が遅すぎる場合には、常に、炭素酸化物の生成も少なすぎ、有害芳香族不純物の生成が多すぎることを発見した。酢酸メチルの生成速度が速すぎる場合には、炭素酸化物の生成は必要以上に高くなり、溶媒、芳香族化合物及び酸化剤の収率損失を招く。本明細書中に開示された好ましい実施態様を用いる場合には、(生成される酢酸メチルのモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の生成比は好ましくは約0.005:1〜約0.09:1、より好ましくは約0.01:1〜約0.07:1、最も好ましくは0.02:1〜約0.04:1の範囲である。
二酸化炭素、一酸化炭素、それらの合計及び/若しくは酢酸メチルの生成がここに開示した好ましい範囲未満である場合、又は芳香族化合物のモル残存率がここに開示した範囲を上回る場合には、反応活性を増加させるか又はSTRを低下させなければならない。1つの活性促進因子は温度の増加であり、好ましい範囲は本明細書中に開示されている。もう1つの活性促進因子は、触媒化学物質と溶媒の混合物によって提供される触媒活性の増大である。一般に、コバルト及び/又は臭素濃度を増大させると、これらがここに開示した好ましい範囲内で使用されているならば、反応活性は促進されるであろう。他の触媒成分及び水の反応媒体内濃度の調整も、反応活性の促進に使用できる。STRは、芳香族化合物の供給速度を低下させることによって且つ/又は反応媒体の容量を増加させることによって、低下させる。
二酸化炭素、一酸化炭素、それらの合計及び/若しくは酢酸メチルの生成がここに開示した好ましい範囲より大きい場合且つ/又は芳香族化合物のモル残存率がここに開示した好ましい範囲未満である場合には、好ましい制御操作は前記操作の逆を含み、好ましい範囲はこの場合も本明細書中に開示されている。本発明者らは、CTA中及び反応媒体の有害不純物によって測定される酸化の良好な質を保持しながら、STRを可能な限りこの範囲内までに上昇させることが特に有益であることを確認している。本発明者らは、このような高いSTRにおいて酸化のこの質を保持することは困難であること、並びに以下:反応媒体に入る際の供給分配、反応媒体全体にわたる通気の質、反応媒体から出る際の脱気、反応媒体全体にわたる酸素−STR及び溶存酸素、反応媒体から出る過剰の酸化剤、酸素−STRの望ましい空間的勾配、芳香族化合物の望ましい空間的勾配、酸化剤濃度の望ましい空間的勾配、塔頂圧、圧力の望ましい空間的勾配及び反応媒体の中央高さにおける好ましい温度(これらは全て本明細書中に開示されている)に関しては細心の注意が必要であることも確認している。更にその上、二酸化炭素、一酸化炭素及び/若しくはそれらの合計をより低下させるために且つ/又は芳香族化合物に関するモル残存率を増加させるためには、本発明者らは、反応媒体内において、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない可溶性芳香族化合物(例えばイソフタル酸、フタル酸及び安息香酸)の濃度を抑制することが有用であることを発見した。この抑制は、芳香族化合物及び/又はより純粋な溶媒(特に、それぞれについてここに開示された好ましい範囲内の)を用いることによって実施できる。
ここに開示した好ましいSTRにおいてp−キシレンをテレフタル酸に連続的に酸化させる反応媒体中において、反応媒体の液相中のp−トルイル酸の量は約200〜約10,000ppmw、より好ましくは約800〜約8,000ppmw、最も好ましくは1,600〜6,000ppmwの範囲に保持するのが望ましい。更に、反応媒体内におけるp−キシレンのテレフタル酸への転化は、好ましくは約50モル%超、より好ましくは約90モル%超、更に好ましくは約95モル%超、最も好ましくは97モル%超に保持する。
前述の通り、本明細書中に記載した1つ又はそれ以上の実施態様に従って実施される一次酸化を経て生成される初期スラリーは、驚くほど優れ且つ有用である。例えば、好ましい初期スラリーは、重要な不純物の濃度が比較的低い初期液体を含み、重要なことには、これはここに開示された他の更に望ましくない不純物の生成を減少させる。更に、初期スラリー組成物は、重要なことには、初期液体がその後の処理によって適当に純粋な再循還溶媒となるのを助ける。更に、本明細書中に記載した改良一次酸化システムを用いてp−キシレンの粗製テレフタル酸(CTA)への液相部分酸化を実施する場合には、局所的反応強度、局所的蒸発強度及び局所温度の空間プロフィールが、反応媒体内の液体フローパターン及び好ましい比較的低い酸化温度と相まって、独特で有利な性質を有するCTA粒子の形成に貢献する。
図19A及び19Bは、ここに記載された改良一次酸化システムによって製造されたベースCTA粒子を示す。図19Aは、ベースCTA粒子を倍率500倍で示し、図19BはベースCTA粒子の1つをズームインして、その粒子を倍率2,000倍で示す。おそらく図19Bに最もよく示されるように、各ベースCTA粒子は典型的には、多数の小さい凝集CTA子粒子から形成され、その結果、ベースCTA粒子に比較的大きい表面積、高い空隙率、低い密度及び良好な溶解性を与える。特に断らない限り、以下に記載する本発明のCTAの種々の性質は、CTAの代表的なサンプルを用いて測定する。この代表的なサンプルは少なくとも1gの重量を有し且つ/又は少なくとも10,000個の個々のCTA粒子から形成される。ベースCTA粒子は典型的には、約20〜約150ミクロン、より好ましくは約30〜約120ミクロン、最も好ましくは40〜90ミクロンの範囲の平均粒度を有する。CTA子粒子は、典型的には、約0.5〜約30ミクロン、より好ましくは約1〜約15ミクロン、最も好ましくは2〜5ミクロンの範囲の平均粒度を有する。図19A及び19Bに示されるベースCTA粒子の比較的高い表面積は、Braunauer−Emmett−Teller(BET)表面積測定法を用いて定量化することができる。好ましくは、ベースCTA粒子は、少なくとも約0.6m2/gの平均BET表面積をする。より好ましくは、ベースCTA粒子は約0.8〜約4m2/gの範囲の平均BET表面積をする。最も好ましくは、ベースCTA粒子は0.9〜2m2/gの範囲の平均BET表面積をする。本発明の好ましい実施態様の最適化酸化方法によって形成されるベースCTA粒子の物理的性質(例えば、粒度、BET表面積、空隙率及び溶解性)は、図22〜26に関して以下に更に詳述するように、より効率的で且つ/又は経済的な方法によるCTA粒子の精製を可能にする。
前に示した平均粒度値は、偏光顕微鏡及び画像解析を用いて算出した。粒度分析に使用した装置は、4xPlan Flour N.A,0.13対物レンズの付いたNikon E800光学顕微鏡、Spot RT(登録商標)デジタルカメラ、及びパーソナルコンピューターで実行するImage Pro Plus(登録商標)V4.5.0.19画像解析ソフトウェアを含んでいた。粒度分析法は以下の主な工程を含んでいた:(1)CTA粉末を鉱油中に分散させ;(2)この分散液の顕微鏡用スライド/カバースリップ(cover slip)を作成し;(3)偏光顕微鏡(直交ポーラー条件−粒子は黒い背景に鮮やかな物体として現れる)を用いてこのスライドを検査し;(4)各サンプル標本について異なる画像を取り込み(フィールドサイズ=3×2.25mm;ピクセルサイズ=1.84ミクロン/ピクセル);(5)Image Pro Plus(登録商標)ソフトフェアを用いて画像解析を実施し;(6)粒子の寸法を表計算ソフトにエクスポートし;そして(7)表計算ソフトにおいて統計に基づく特性決定を行う。「Image Pro Plus(登録商標)ソフトフェアを用いて画像解析を実施する」工程(5)は、以下の下位工程を含んでいた:(a)暗い背景上において白色の粒子を検出するための画像閾値を設定し;(b)二値画像を作成し;(c)ピクセルノイズを除去するためにシングルパス・オープンフィルターを走らせ;(d)画像中の全粒子を測定し;そして(e)各粒子に関して測定した平均直径を記録する。Image Pro Plus(登録商標)ソフトフェアは、個々の粒子の平均直径を、2°の間隔で粒子の質量中心を通して測定した粒子の直径の数平均長さと定義する。「表計算ソフトにおいて統計に基づく特性決定を行う」工程7は、体積加重平均粒度を以下のようにして計算することを含む。サンプル中のn個の粒子のそれぞれの体積を、粒子を球形であると仮定して、pi/6*Di ∧3を用いて計算し;各粒子の体積にその直径をかけて、pi/6*Di ∧4を求め;サンプル中の全粒子についてpi/6*Di ∧4の値を合計し;サンプル中の全粒子の体積を合計し;そして[サンプル中のn個の全粒子についての(pi/6*Di ∧4)の和]÷[サンプル中のn個の全粒子についての(pi/6*Di ∧3)の和]として体積加重粒径を算出する。ここで使用する「平均粒度」は、前記試験方法に従って算出された体積加重平均粒度を意味し、それはまた、D(4,3)と称する。
更に、工程7は、総サンプル体積の種々の割合がより小さい粒度を求めることを含む。例えば、D(v,0.1)は、総サンプル体積の10%がより小さく且つ90%がより大きい粒度であり;D(v,0.5)は、サンプル体積の1/2がより大きく且つ1/2がより小さい粒度であり;D(v,0.9)は、総サンプル体積の90%がより小さい粒度などである。更に、工程7は、D(v,0.9)−D(v,0.1)[ここでは、「粒度スプレッド」と定義する]を算出することを含み;また、工程7は、粒度スプレッド値÷D(4,3)[ここでは、「粒度相対スプレッド」と定義する]を算出することを含む。
更に、前述のように測定したCTA粒子のD(v,0.1)は、約5〜約65ミクロン、より好ましくは約15〜約55ミクロン、最も好ましくは25〜45ミクロンの範囲であるのが望ましい。前述のように測定したCTA粒子のD(v,0.5)は、約10〜約90ミクロン、より好ましくは約20〜約80ミクロン、最も好ましくは30〜70ミクロンの範囲であるのが望ましい。前述のように測定したCTA粒子のD(v,0.9)は、約30〜約150ミクロン、より好ましくは約40〜約130ミクロン、最も好ましくは50〜110ミクロンの範囲であるのが望ましい。粒度相対スプレッドは、約0.5〜約2.0、より好ましくは約0.6〜約1.5、最も好ましくは0.7〜1.3の範囲であるのが望ましい。
前に示したBET表面積値は、Micromeritics ASAP2000(Micromeritics Instrument Corporation of Norcross,GA)で測定した。測定方法の第1工程において、粒子のサンプル2〜4gを秤量し、真空下で50℃において乾燥させた。次いで、サンプルを分析ガスマニホールド上に置き、77°Kまで冷却した。サンプルを既知体積の窒素ガスに暴露し且つ圧力減少を測定することによって、窒素吸着等温線を最小値5平衡圧において測定した。平衡圧は適当にはP/P0=0.01−0.20[Pは平衡圧であり、P0は液体窒素の77°Kにおける蒸気圧である]の範囲であった。得られた等温線を、以下のBET式に従ってプロットした:
[式中、VaはPにおいてサンプルによって吸収される気体の体積であり、Vmはサンプルの全表面を気体の単層で覆うのに必要な気体の体積であり、そしてCは定数である]。
このプロットから、Vm及びCを求めた。次に、77°Kにおける窒素の断面積を用いて下記式によってVmを表面積に変換した:
このプロットから、Vm及びCを求めた。次に、77°Kにおける窒素の断面積を用いて下記式によってVmを表面積に変換した:
[式中、σは77°Kにおける窒素の断面積であり;Tは77°Kであり;Rは気体定数である]。
前に言及したように、ここに記載した改良一次酸化システムによって製造される本発CTAは、他の方法によって製造される従来のCTAに比較して優れた溶解特性を示す。この増大された溶解速度により、本発明のCTAはより効率的且つ/又はより効果的な精製方法によって精製されることが可能になる。以下の説明は、CTAの溶解速度を定量化できる方法に関する。
撹拌混合物中における既知量の溶媒への既知量の固体の溶解速度は、種々のプロトコールによって測定できる。ここで使用する「時限(timed)溶解試験」と称する測定方法は以下のように定義される。約0.1メガパスカルの周囲圧力をこの時限溶解試験の全体を通して用いる。時限溶解試験全体を通して用いる周囲温度は約22℃である。更に、固体、溶媒及び全ての溶解装置は、試験開始前にこの温度において熱的に充分に平衡化させ、溶解期間の間にビーカー又はその内容物の無視できないほどの加熱又は冷却はない。新鮮な、HPLC分析グレードのテトラヒドロフラン(純度>99.9%)(以下、THF)の溶媒部分250gを、断熱されておらず、滑らかな側面を有し且つほぼ円筒形を有する、清浄にされたKIMAXトール形400mlガラスビーカー(Kimble(登録商標)品番14020,Kimble/Kontes,Vineland,NJ)中に入れる。テフロン(登録商標)加工の電磁撹拌子(VWR品番58948−230;長さ約1インチ,直径3/8インチ;断面−八角形;VWR International,West Chester,PA 19380)をビーカー中に入れ、それが自然に底部まで沈降する。サンプルは、Variomag(登録商標)マルチポイント15電磁撹拌機(H&P Labortechnik AG,Oberschleissheim,Germany)を用いて800回転/分の設定で撹拌される。この撹拌は、固体添加前5分以内に始まり、固体の添加後少なくとも30分間間断なく続く。合計250mgの粗製又は精製TPA粒子状物質の固体サンプルを、不粘着性サンプル秤量皿中に量り入れる。t=0と表される出発時間において、秤量固体を撹拌THF中に全て同時に量り入れ、同時にタイマーをスタートさせる。適正になされると、THFは、固体を非常に急速に湿潤させ、5秒以内に稀釈され且つよく撹拌されたスラリーを形成する。引き続いて、この混合物のサンプルを、t=0から測定された以下の時間(分)で得る:0.08、0.25、0.50、0.75、1.00、1.50、2.50、3.00、4.00、5.00、6.00、8.00、10.00、15.00及び30.00。新しい使い捨てシリンジ(Becton,Dickinson and Co,5ml,REF 30163,Franklin Lakes,NJ 07417)を用いて、稀釈され且つよく撹拌された混合物から回収する。ビーカーからの回収直後に、透明な液体サンプル約2mlを新しい未使用のシリンジフィルター(直径25mm,0.45ミクロン,Gelman GHP Acrodisc GF(登録商標),Pall Corporation,East Hills,NY 11548)を通して新しいラベル付きガラスサンプルバイアル中に迅速に排出する。各シリンジ充填、フィルター装着及びサンプルバイアル中への排出の持続時間は適正には約5秒未満であり、この期間の開始及び終了は適切には、各目標サンプリング時間の前後約3秒以内である。各充填の約5分以内に、サンプルバイアルを蓋締めして閉じ、以下の化学分析を行うまでほぼ一定温度に保持する。最終サンプルをt=0から30分で採取した後、16個全てのサンプルを、HPLC−DAD法を用いて本明細書中の他の場所で記載したのとほぼ同様にして、溶解TPAの量に関して分析する。しかし、この試験では、較正基準及び記録した結果はいずれも、THF溶媒g当たりの溶解TPAのmg数(以下、「THF中のppm」)に基づく。例えば、固体250g全てが非常に純粋なTPAであって且つ個々のサンプルの採取前にこの全量がTHF250g中に完全に溶解しているとすれば、正しく測定される濃度はTHF中約1,000ppmとなるであろう。
ここに記載した改良一次酸化システムよって製造されたCTAを前記時限溶解試験に供する場合には、t=0から1分で採取したサンプルは、好ましくはTHF中少なくとも約500ppmの濃度まで、より好ましくはTHF中少なくとも600ppmまで溶解する。t=0から2分で採取したサンプルについては、本発明に係るCTAは、好ましくはTHF中少なくとも約700ppmの濃度まで、より好ましくはTHF中少なくとも750ppmまで溶解する。t=0から4分で採取したサンプルについては、本発明に係るCTAは、好ましくはTHF中少なくとも約840ppmの濃度まで、より好ましくはTHF中少なくとも少なくとも880ppmまで溶解する。
本発明者らは、粒子状サンプルの及び溶解プロセスの複雑さにかかわらず、完了した時限溶解試験からのデータ一式全ての時間依存性を説明するためには、比較的単純な負の指数関数的増加モデルが有用であることを見出した。以下「時限溶解モデル」とする方程式は以下の通りである:
S=A+B*(1−exp(−C*t))
[式中、t=時間(単位:分);
S=時間tにおける溶解度(単位:THF中ppm);
exp=2の自然対数の底における指数関数;
A,B=回帰定数(regressed constant)(単位:THF中のppm)(Aは、非常に短い時間における比較的小さい粒子の急速な溶解に主に関連し;A+Bの和は、指定された試験期間の終わり近くにおける全溶解量に主に関連する);
C=回帰時定数(regressed time constan)(単位:レシプロカル分)]。
S=A+B*(1−exp(−C*t))
[式中、t=時間(単位:分);
S=時間tにおける溶解度(単位:THF中ppm);
exp=2の自然対数の底における指数関数;
A,B=回帰定数(regressed constant)(単位:THF中のppm)(Aは、非常に短い時間における比較的小さい粒子の急速な溶解に主に関連し;A+Bの和は、指定された試験期間の終わり近くにおける全溶解量に主に関連する);
C=回帰時定数(regressed time constan)(単位:レシプロカル分)]。
回帰定数は、実際のデータ点と対応するモデル値との間の誤差の平方和を最小にするために調整する。この方法を一般に「最小二乗法」という。このデータ回帰を実行するのに好ましいソフトウェア・パッケージは、JMP Release 5.1.2(SASA Institute Inc.,JMP Software,SAS Campus Drive,Cary,NC 27513)である。
本明細書中に記載された改良一次酸化システムによって製造されたCTAを時限溶解試験によって試験し且つ前記の時限溶解モデルに当てはめる場合には、CTAは、約0.5レシプロカル分よりも大きい、より好ましくは約0.6レシプロカル分よりも大きい、最も好ましくは0.7レシプロカル分よりも大きい時定数Cを有するのが望ましい。
図20A及び20Bは、連続撹拌槽型反応器(CSTR)中で従来の高温酸化方法によって製造された従来のCTA粒子を示す。図20Aは、従来のCTA粒子を倍率500倍で示し、図20Bは従来のCTA粒子をズームインし、倍率2,000倍で示す。図19A及び19Bに示される本発明のCTA粒子を図20A及び20Bに示される従来のCTA粒子と目視比較すると、従来のCTA粒子は、本明細書中に記載した改良一次酸化システムによって製造されたCTA粒子よりも高い密度、小さい表面積、低い空隙率及び大きい粒度を有することがわかる。実際に、図20A及び20Bに示される従来のCTAは、約205ミクロンの平均粒度及び約0.57m2/gのBET表面積を有する。
本発明の一実施態様に従って一次酸化によって生成されるCTAは、従来の方法及び装置、特に再循還溶媒を用いる従来の方法及び装置によって生成されるCTAよりも、特定の型の不純物を少なく含む。CTA中に存在する可能性のある不純物を以下に挙げる:4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、4,4’−ジカルボキシスチルベン(4,4’−DCS)、2,6−ジカルボキシアントラキノン(2,6−DCA)、2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)、2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)、3,5−ジカルボキシフルオレノン(3,5−DCF)、9−フルオレノン−2−カルボン酸(9F−2CA)、9−フルオレノン−4−カルボン酸(9F−4CA)、個別には記載していない他のフルオレノン類を含む総フルオレノン類(総フルオレノン類)、4,4’−ジカルボキシビフェニル(4,4’−DCB)、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル(2,5,4’−TCB)、フタル酸(PA)、イソフタル酸(IPA)、安息香酸(BA)、トリメリット酸(TMA)、p−トルイル酸(PTAC)、2,6−ジカルボキシベンゾクマリン(2,6−DCBC)、4,4’−ジカルボキシベンジル(4,4’−DCBZ)、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン(4,4’−DCBP)、2,5,4’−トリカルボキシベンゾフェノン(2,5,4’−TCBP)。以下の表IIIは、本発明の一実施態様に従って生成されたCTA中のこれらの不純物の好ましい量を示す。
更に、本発明の一実施態様に従って生成されるCTAは、従来の方法及び装置によって、特に再循還溶媒を用いる従来の方法及び装置によって生成されるCTAに比較して低い色量(color content)を有するのが好ましい。従って、本発明の一実施態様に従って生成されるCTAは、340ナノメーター(nm)におけるパーセント透過率が少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、更に好ましくは少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも70%であるのが望ましい。更に、本発明の一実施態様に従って生成するCTAは、400ナノメーター(nm)におけるパーセント透過率が少なくも約88%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも92%であるのが望ましい。
パーセント透過率に関する試験は、TPA又はCTA内に存在する有色の光吸収性不純物の割合を提供する。ここで使用する「試験」は、乾燥固体TPA又はCTA 2.00gを、分析用グレード又はそれ以上のグレードのジメチルスルホキシド(DMSO)20.0ml中に溶解させることによって調製される溶液の一部分について行われる測定を意味する。次いで、この溶液の一部分を、1.0cmの光路長及び0.39mlの容積を有する石英製のHellmaセミミクロフローセル,PN 176.700(Hellma USA,80 Skyline Drive,Plainview,NY 11803)中に入れる。Agilent 8453 Diode Array Spectrophtometerを用いて、この充填フローセルを通して種々の波長の光の透過率を測定する(Agilent Technologies,395 Page Mill Road,Palo Alto,CA 94303)。セル及び使用溶媒を含む(これらに限定するものではないが)バックグラウンドから吸光度を補正後、溶液を透過する入射光線の割合を特徴付けるパーセント透過率の結果を、機械によって直接的に記録する。波長340nm及び400nmにおけるパーセント透過率値は、純粋なTPAを、その中に典型的によく見られる多くの不純物と識別するのに特に有用である。
一次酸化反応器/ゾーンから回収される初期スラリー(初期固体+初期液体)中の種々の芳香族不純物の好ましい範囲を以下の表IVに示す。
初期スラリーに関するこれらの好ましい組成は、反応媒体からのサンプリング時、液体及び固体の分離時並びに分析条件への移行時における、反応媒体から固相成分中へ余分な液相成分の沈澱に関連する実験の問題を有効に避けながら、反応媒体の液相の好ましい組成を具体化する。
多くの他の芳香族不純物もまた典型的には、反応媒体のスラリー相中及び反応媒体のCTA中に存在し、それらは一般的に更に低いレベルで且つ/又はここに開示された1種若しくはそれ以上の芳香族化合物に比例して変動する。開示された芳香族化合物の、好ましい範囲への制御は、他の芳香族不純物を適当なレベルに保つであろう。初期スラリー及び初期スラリーから直接回収される固体CTAに関するこれらの有利な組成は、p−キシレンのTPAへの部分酸化に関して本明細書中で開示された本発明の実施態様によって操作することによって可能にされる。
本発明の好ましい実施態様において、初期スラリーの液体成分(即ち初期液体)中の(PTALの時間平均濃度)対(p−キシレンの時間平均濃度)の重量比は、少なくとも約3、4、5又は6である。好ましくは、初期液体中のp−トルイル酸PTACの時間平均濃度対p−キシレンの時間平均濃度の重量比は、少なくとも約20、30、40又は60である。好ましくは、初期液体中の4−CBAの時間平均濃度対p−キシレンの時間平均濃度の重量比は、少なくとも約6、8、10又は12である。好ましくは、全ての酸化反応生成物スラリー(例えば、一次酸化反応からの初期スラリー及び/又は酸化的蒸解の全ての段階からのスラリー生成物)の液相及び/又は全ての酸化反応媒体中の全ての溶解芳香族化合物の総濃度は約16、10、6又は4重量%未満である。
溶媒、再循還溶媒、CTA、初期スラリー及びPTA中の低レベル成分の濃度の測定は、液体クロマトグラフィー法を用いて実施する。ここでは2つの互換性のある実施態様を記載する。
ここでHPLC−DADと称する方法は、所定のサンプル内の種々の分子種の分離及び定量化のための、ダイオードアレイ検出器(DAD)と一体化された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。この測定に使用される機器は、Agilent Technologies(Palo Alto,CA)によって提供される、DADを装着したモデル1100 HPLCであるが、他の適当な機器も他の供給業者から市販されている。当業界で知られるように、溶離時間及び検出器応答性は共に、既知量で存在する既知化合物(実際の未知サンプル中に存在するものにふさわしい化合物及び量)を用いて較正する。
ここでHPLC−MSと称する方法は、所定のサンプル内の種々の分子種の分離、同定及び定量のための、質量分析装置(MS)と一体化された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を意味する。この測定において使用する機器は、Waters Corp.(Milford,MA)によって提供されるAlliance HPLC及びZQ MSであるが、他の適当な機器もまた、他の供給業者から市販されている。当業界で知られるように、溶離時間及び質量分析装置の応答性は、既知量で存在する既知化合物(実際の未知サンプル中に存在するものにふさわしい化合物及び量)を用いて較正する。
図21は、精製テレフタル酸(PTA)を製造するための従来の方法を示す。従来のPTA法においては、p−キシレンが、機械撹拌高温一次酸化反応器700において、部分酸化される。CTAを含む初期スラリーは、反応器700から回収し、次いで精製システム702において精製する。精製システム702のPTA生成物は、PTA粒子の分離及び乾燥のために、分離システム706中に導入する。精製システム702は、従来の方法によるPTA粒子の製造に付随するコストの大部分を生ずる。精製システム702は一般に、水添加/交換システム708、溶解システム710、水素化システム712及び3つの独立した結晶化容器704a、b、cを含む。水添加/交換システム708において、母液の相当部分が水と置換される。水添加後、水/CTAスラリーは、溶解システム710に導入し、そこで、CTA粒子が水中に完全に溶解するまで水/CTA混合物を加熱する。CTAの溶解後、CTA水溶液が水素化システム712において水素化に供される。水素化システム712からの水素化流出物が、次に結晶化容器704a、b、cにおける3つの結晶化工程に供され、その後に分離システム706においてPTAを分離する。
図22は、本発明の一実施態様に従って構成された且つ運転される一次酸化反応器800を用いる改良されたPTA製造方法を示す。固体のCTA粒子及び液体の母液を含む初期スラリーを反応器800から回収する。典型的には、初期スラリーは約10〜約50重量%の範囲の固体CTA粒子を含むことができ、残りは液体の母液である。初期スラリー中に存在する固体CTA粒子は、典型的には少なくとも約400ppmwの、より典型的には少なくとも約800ppmwの、最も典型的には1,000〜15,000ppmwの範囲の4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)を含む。反応器800から回収される初期スラリーは、精製システム802中に導入して、CTA中に存在する4−CBA及び他の不純物の濃度を減少させる。より純粋な/精製されたスラリーが精製システム802から生成され、それが分離システム804において分離及び乾燥に供されて、その結果、約400ppmw未満の、より好ましくは約250ppmw未満の、最も好ましくは10〜200ppmwの範囲の4−CBAを含む、より純粋な固体テレフタル酸粒子を生成させる。
図22に示されるPTA製造システムの精製システム802は、図21に示される先行技術のPTA製造システムの精製システム802より優れた多くの利点を提供する。好ましくは、精製システム802は一般に液交換システム806、蒸解がま808及び単一の晶析装置810を含む。液交換システム806において、初期スラリー中に存在する母液の少なくとも約50重量%を新鮮な置換溶媒で置換し、その結果、CTA粒子及び置換溶媒を含む溶媒置換スラリーを生成させる。液交換システム806から出た溶媒置換スラリーは、蒸解がま(又は二次酸化反応器)808中に導入する。蒸解がま808において、気泡塔型反応器800において実施される初期/一次酸化反応で用いられた温度よりもわずかに高い温度で二次酸化反応を行う。前述のように、一次酸化反応器800において生成されるCTA粒子の大きい表面積、小さい粒度及び低い密度のために、CTA粒子中に捕捉された若干の不純物は、蒸解がま808においてCTA粒子を完全に溶解させる必要なしに、蒸解がま808における酸化に利用できるようになる。従って、蒸解がま808中の温度は、多くの同様な先行技術の方法よりも低くすることができる。蒸解がま808中において行われる二次酸化は、CTA中の4−CBAの濃度を好ましくは少なくとも200ppmw、より好ましくは少なくとも約400ppmw、最も好ましくは600〜6,000ppmw低下させる。蒸解がま808中の二次酸化温度は、気泡塔型反応器800中の一次酸化温度よりも好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは約20〜約80℃、最も好ましくは30〜50℃高い。二次酸化温度は好ましくは約160〜約240℃、より好ましくは約180〜約220℃、最も好ましくは190〜210℃の範囲である。蒸解がま808からの精製生成物は、分離システム804における分離の前には、晶析装置810中おける単一の結晶化工程を必要とするだけである。
ここに開示された好ましい形態を有するCTA粒子は、4−CBA含量を低下させるための前記酸化的蒸解プロセスにおいて特に有用である。更に、これらの好ましいCTA粒子は、粒子の溶解及び/又は化学反応を含む広範な他の後工程において有利である。これらの追加後工程としては、例えば、少なくとも1種のヒドロキシル含有化合物との反応によるエステル化合物の形成、特にCTAとメタノールとの反応によるテレフタル酸ジメチル及び不純物エステルの形成;少なくとも1種のジオールとの反応によるエステルモノマー及び/又はポリマー化合物の形成、特にCTAとエチレングリコールとの反応によるポリエチレンテレフタレート(PET)の形成;並びに溶媒、例えば水、酢酸及びN−メチル−2−ピロリドン(これらに限定するものではないが)中への全溶解又部分溶解[更なる処理、例えばより純粋なテレフタル酸の再沈澱及び/又はカルボン酸基以外のカルボニル基の選択的化学的還元(これらに限定するものではないが)を含むことができる]が挙げられるが、これらに限定するものではない。特に挙げられるのは、アルデヒド、特に4−CBA、フルオレノン類、フェノン類及び/又はアントラキノン類の量を減少させる部分水素化と連結された、水を含む溶媒中へのCTAの実質的な溶解である。
前述の通り、前述の一次酸化システムによって製造された初期スラリーの改善された純度は、新規方法を用いた初期スラリーの処理を可能にする。詳細には、図23〜26が、本発明の1つ又はそれ以上の実施態様を用いるTPA製造システムを図示している。図23〜26に示されたTPA製造システムはそれぞれ、一次酸化段階、少なくとも1つの酸化的蒸解段階、任意の冷却段階、分離段階及び任意の乾燥段階を含む。本発明者らは、図23〜26に示された種々の工程/段階が互いに置き換え可能なこと又は互いに追加できることを確認している。例えば、図23の一次酸化段階900は図25の一次酸化段階930によって置き換えることができる。更なる例として、図26の加熱段階956を、図24の初期酸化的蒸解段階912と後期酸化的蒸解段階914の間に加えることができるであろう。
図23及び24に示す実施態様において、一次酸化段階900及び910は、図1〜11に示す酸化反応器の構成に関して前に示した記載に従って構成し且つ運転するのが好ましい。図25の一次酸化段階930は好ましくは、図12〜14に示される反応器システムの構成に関して前に示した記載に従って構成し且つ運転される反応器を使用する。図26の一次酸化段階950及び側部抜出し酸化的蒸解段階952は好ましくは、図15及び16に関して前に示した記載に従って構成し且つ運転される反応システム中で実施する。
図23〜26に示すTPA製造システムは、それぞれ、一次酸化によって生成された初期スラリーの少なくとも一部が酸化的蒸解による精製に供される酸化的蒸解の少なくとも1つの段階を使用する。ここで使用する用語「酸化的蒸解」は、一次酸化を経て生成されたポリカルボン酸を含むスラリーの酸化を意味する。好ましくは、酸化的蒸解は、ポリカルボン酸粒子の連続溶解及び再沈澱を可能にする条件下で実施される。以下により詳細に説明する本発明の一実施態様において、酸化的蒸解は単一の蒸解反応器/ゾーン(例えば図23の酸化的蒸解段階902)中で実施される。以下により詳細に説明する本発明の別の実施態様において、酸化的蒸解は2つの蒸解反応器/ゾーン(例えば図24の酸化的蒸解段階912及び914、図25の酸化的蒸解段階934及び938/940並びに図26の酸化的蒸解段階952及び954)中で実施される。本発明の別に実施態様においては、酸化的蒸解の1つ又はそれ以上の段階を結晶化の1つ又はそれ以上の段階で置き換えることができる(例えば、図24においては、結晶化工程916が後期酸化的蒸解段階914に取って代わることができるであろう)。これらの結晶化段階は好ましくは、分子状酸素が1つ又はそれ以上の結晶化段階に加えられない以外は、置き換えられる酸化的蒸解段階と同様にして実施される。典型的には、1つ又はそれ以上の結晶化段階の蒸気空間及び気体流出物(もしあれば)は約0.001モル%未満の分子状酸素を含む。
本発明の一実施態様においては、一次酸化から回収される初期固体の少なくとも約10、50、90又は95重量%が、初期酸化から回収されてから約32、8、2又は0.5分未満以内に酸化的蒸解に供給されるのが好ましい。本発明者らは、酸化的蒸解への初期固体の供給の遅延が、酸化的蒸解から回収される固体TPA中に保持される4−CBAの量を増加させることを発見した。更に、すぐ後に行う(酸化的蒸解を一次酸化のすぐ後に行う)ことの重要性は、一次酸化から回収される初期スラリーの温度が約165、175、175又は190℃より高い場合にはより大きくなる。
図23〜26に示すTPA製造システムにおいて、一次酸化から出る生成物(即ち初期スラリー)の少なくとも一部はその後に、初期液体を実質的に回収することなく且つ/又はより清浄な溶媒を実質的に添加することなく、酸化的蒸解に導入される。従って、本発明の一実施態様においては、一次酸化と酸化的蒸解との間の液交換は実質的に排除される。
本発明者らは、ここに記載した改良一次酸化システムの生成物をその後に本発明のいくつかの実施態様に従って処理する場合には、酸化的蒸解中の炭素焼失(carbon burn)の制御のために酸化的蒸解より上流における触媒化合物の完全又は部分除去が必要ないことを発見した。ここで使用する用語「炭素焼失」は、有機化合物からの一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の形成を意味する。有機化合物の例としては、p−キシレン、TPA、反応中間体、芳香族不純物及び酢酸が挙げられる。更に、本発明者らは、再循還溶媒を用いた連続法(前に明示)においてさえ、不純物を含む液の回収による固体TPAからの可溶性有害芳香族不純物の分離が、分子量が高く、色が薄く且つ品質全般が良好であるPETポリマーの形成に適した固体TPA生成物を形成するのに必要がないことを発見した。それどころか、以下の更に詳細に開示するように、他のプロセス工程の適切な組合せを前提とすれば、増加した比率の比較的非反応性の芳香族不純物(着色しているものとしていないものの両方)の保持及びその結果としての沈殿は、意外にも好ましいやり方である。
ここで用いる用語「有害(な)芳香族不純物」は、着色(有色)芳香族不純物及び2つより多い又は2つより少ないカルボン酸官能基を含むそれらの芳香族化合物(例えばBA、PTAC、4−CBA、TMA及び2,5,4’−トリカルボキシビフェニル)を意味する。ここで使用する用語「比較的非反応性の芳香族不純物」は、非芳香族ヒドロカルビル基又は別の酸素原子に供給結合した酸素原子の少なくとも一方を持たない芳香族不純物を意味する。ここで使用する用語「芳香族不純物」は、p−キシレン及びTPA以外の芳香族化合物を意味する。ここで使用する用語「着色(有色)芳香族不純物」は、典型的な周囲照明条件下でヒトの眼には昼白色(neutrally white)には見えない芳香族不純物(例えば種々のスチルベン類、フルオレノン類、アントラキノン類及びテルフェニル類)を意味する。ここで使用する用語「芳香族反応中間体」は、少なくとも1種の非芳香族ヒドロカルビル基又は別の酸素原子に共有結合した少なくとも1つの酸素原子を含む、p−キシレン以外の芳香族化合物を意味する。
一次酸化と酸化的蒸解の間の液交換が本発明の一実施態様に従って実質的に排除される場合には、一次酸化から回収される初期スラリー中にもともと存在する初期液体の少なくとも約30、60、80又は95%が、酸化的蒸解に供されるスラリー中に保持されるのが好ましい。好ましくは、(酸化的蒸解に入るスラリー中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸)対(一次酸化から生成される初期スラリー中の同一化合物)の重量比は、少なくとも約0.3、0.6、0.8又は0.95である。より好ましくは、(酸化的蒸解から出るスラリー中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸)対(一次酸化から生成される初期スラリー中の同一化合物)の重量比は、少なくとも約0.3、0.6、0.8又は0.95である。酸化的蒸解が多段階で実施される場合には、このパラグラフの説明は酸化的蒸解の任意の又は全ての段階に、最も好ましくは酸化的蒸解の最終段階に適用できる。
一次酸化と酸化的蒸解の間の液交換が実質的に排除される場合には、初期スラリーへのより清浄な溶媒の添加が減少又は排除される。ここで使用する用語「より清浄な溶媒(cleaner solvent」は、より清浄な溶媒が添加されるスラリーの液相中の総触媒化合物の濃度より低い液相濃度の総触媒化合物を有する溶媒を意味する。好ましくは、より清浄な溶媒は、より清浄な溶媒が添加されるスラリーの液相に比較して、少なくとも約90、50、10又は2%未満の液相濃度の総触媒化合物及び/又は約90、50、10又は2%未満の液相濃度の総芳香族化合物を含む。より清浄な溶媒の添加の減少及び/排除によって、液圧及び熱の負荷及びコストが、固体TPA生成物を形成するための全プロセスにおいて最小限に抑えられる。更に、より清浄な溶媒の添加の減少及び/排除によって、以下により詳細に解説するように、その後のプロセス工程において固体TPAと難溶性芳香族不純物の驚くほどに好ましい沈澱が増加する。
本発明の好ましい実施態様において、酸化的蒸解に供されるスラリーに添加される、より清浄な溶媒の質量は、一次酸化から生成される初期スラリーの質量の約50、35、20又は10重量%未満である。好ましくは、(酸化的蒸解に入るスラリーの固体分率)対(一次酸化から出る初期スラリーの固体分率)の比は、重量分率に基づき、少なくとも約0.5、0.80又は0.90である。好ましくは、(酸化的蒸解に供されるスラリーの液相中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の時間平均濃度)対(初期スラリーの初期液体中の同一化合物の時間平均濃度)の比は少なくとも約0.5、0.65、0.80又は0.90である。好ましくは、酸化的蒸解に供されるスラリーに添加される、より清浄な溶媒の質量は、初期スラリーの質量の約50、35、20又は10重量%未満である。好ましくは、(酸化的蒸解から出るスラリーの固体分率)対(初期スラリー中の固体分率)の比は、重量分率に基づき、少なくとも約0.5、0.65、0.80又は0.90である。好ましくは、(酸化的蒸解から出るスラリーの液相中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の時間平均濃度)対(初期スラリー中の同一化合物の時間平均濃度)の比は少なくとも約0.5,0.65、0.80又は0.90である。酸化的蒸解が多段階で実施される場合には、このパラグラフの説明は酸化的蒸解の任意の又は全ての段階に、最も好ましくは酸化的蒸解の最終段階に適用できる。
図23〜26に示すTPA製造システムはそれぞれ、場合によっては、酸化的蒸解より下流に少なくとも1つの冷却段階を使用することができる(図23、24、25及び26中の冷却段階904、918、942、958をそれぞれ参照)。一次酸化と酸化的蒸解の間の液交換が実質的に排除される場合には、酸化的蒸解から生成されるスラリーは、飽和濃度又は過飽和濃度の溶解芳香族化合物を有することができる。飽和又は過飽和濃度の溶解芳香族化合物を有する後蒸解スラリーの冷却は、固体TPAと難溶性芳香族不純物(着色しているものと着色していないものの両方)の沈澱の増大を促進する。従って、より大きい割合の有害芳香族不純物が固体TPAと共に残り、より少ない割合が再循還溶媒と共に送られる。しかし、本発明者らは、良好な色及び品質の固体TPA生成物が意外なことにそれによって形成され得る(前述の本発明の実施態様に従って生成される、より純粋な初期スラリーを用いる場合には特に)ことを発見した。更に、このような冷却は、以下により詳細に解説するように、補助プロセス工程を用いる再循還溶媒の精製の要件を有益に減らす。
本発明の一実施態様によれば、後蒸解冷却段階が用いられる場合には、一次酸化と後蒸解冷却との間の及び/又は酸化的蒸解と後蒸解冷却との間の液交換が実質的に排除されるのが好ましい。従って、酸化反応工程(例えば一次酸化及び/又は酸化的蒸解)から出る液体の少なくとも約30、60、80又は95%が、スラリーが酸化反応工程内の最も高い支配的温度(prevailing temperature)よりも少なくとも約40℃、60℃、80℃、100℃又は130℃低い温度に冷却されるまで、酸化反応工程から生成されるスラリーと共に保持されるのが好ましい。酸化反応工程から出る液体の少なくとも約30、60、80又は95%が、スラリーが約145、110、80又は55℃未満の温度まで冷却されるまで、酸化反応工程から生成されるスラリーと共に保持されるのが好ましい。酸化反応工程から生成されるスラリー中に存在するコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の少なくとも約30、60、80又は95%が、スラリーが酸化反応工程内の最も高い支配的温度よりも少なくとも約40、60、80又は100℃低い温度に冷却されるまで、スラリー中に保持されるのが好ましい。酸化反応工程から生成されるスラリー中に存在するコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の少なくとも約30、60、80又は95%が、スラリーが約145、110、80又は55℃未満の温度まで冷却されるまで、スラリー中に保持されるのが好ましい。このパラグラフに記載した酸化反応工程は一次酸化又は酸化的蒸解であることができる。多段酸化的蒸解が使用される場合には、このパラグラフに記載した酸化反応工程は一次酸化又は酸化的蒸解の任意の段階、好ましくは酸化的蒸解の最終段階であることができる。
本発明の一実施態様において、少なくとも1つの酸化反応工程(例えば一次酸化及び/又は酸化的蒸解)から生成されるスラリーに添加される、より清浄な溶媒の質量は、スラリーが酸化反応工程の最も高い支配的温度よりも少なくとも40、60、80又は100℃低い温度に冷却される前に酸化反応工程によって生成されるスラリーの質量の約50、35、20又は10重量%未満であるのが好ましい。酸化反応工程によって生成されるスラリーに添加される、より清浄な溶媒の質量は、スラリーが約145、110、80又は55℃未満の温度まで冷却される前に酸化反応工程によって生成されるスラリーの質量の約50、35、20又は10重量%未満であるのが好ましい。酸化反応工程によって生成されるスラリー中に存在するコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の少なくとも約50、65、80又は90%が、スラリーが酸化反応工程の最も高い支配的温度よりも少なくとも40、60、80又は100℃低い温度に冷却されるまで、スラリー中に保持されるのが好ましい。酸化反応工程によって生成されるスラリー中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の少なくとも約50、65、80又は90%が、スラリーが約145、110、80又は55℃未満の温度まで冷却されるまで、スラリー中に保持されるのが好ましい。このパラグラフに記載した酸化反応工程は、一次酸化又は酸化的蒸解の任意の段階であることができる。好ましい実施態様において、このパラグラフに記載した酸化反応工程は一次酸化である。
本発明の一実施態様によれば、酸化的蒸解の少なくとも1つの段階は、一次酸化段階の温度及び/又は初期酸化的蒸解段階の温度より高い温度で実施されるのが好ましい。このようなケースでは、スラリーを蒸解反応器/ゾーンへの導入前に加熱するか又は反応媒体を蒸解反応器/ゾーン中で加熱するのが必要な場合がある。酸化的蒸解に供される反応媒体の温度は、公知の任意の手段によって前の酸化反応工程(例えば一次酸化及び/又は初期酸化的蒸解段階)の温度より高温まで増大されることができる。
本発明の一実施態様において、前の酸化反応工程からの反応媒体(以下、「前反応媒体」)に比較して、その後の酸化蒸解に供される反応媒体(以下、「後反応媒体」)の温度及び/又はエンタルピーを増加させる手段は、少なくとも現場(in situ)化学反応(即ち、後反応媒体内で起こる化学反応)の反応熱を使用する。この種の加熱構成については、図24の後期酸化的蒸解段階914に図示されている。図24は、蒸解反応器/ゾーン中に化学反応体が直接導入される一態様を示しているが、化学反応体は、蒸解反応器/ゾーンに供給されるスラリー中への添加によって蒸解反応器/ゾーンより上流に注入されることもできるであろう。現場化学反応は好ましくは、前反応媒体に比較して後反応媒体の温度及び/又はエンタルピーを少なくとも約10、20、40又は80%増加させる反応熱を有する。現場反応は好ましくは、後反応媒体の温度を前反応媒体の温度より少なくとも約4、8、12又は16℃増加させるのに充分な反応熱を有する。現場反応は好ましくは、後反応媒体のエンタルピーを前反応媒体のエンタルピーより少なくとも約2、4、6又は8kcal/kg増加させるのに充分な反応熱を有する。本発明の一実施態様において、添加される化学反応体は無水酢酸であり、無水酢酸と水との反応によって酢酸を形成する現場反応熱が、後反応媒体の温度及び/又はエンタルピーの前記増加を提供する。このような実施態様において、一次酸化に供給されるp−キシレンの重量の百分率としての、後反応媒体に供給される無水酢酸の重量は、約0.1〜約12、約0.2〜約10、約0.4〜約8又は1〜6%の範囲であるのが好ましい。
本発明の別の実施態様において、後反応媒体の温度を増加させる手段は、少なくとも1種の被酸化性化合物の、分子状酸素による現場酸化から(即ち酸化的蒸解段階の反応媒体内の)の反応熱を使用する。好ましくは、現場酸化された化合物は溶媒の成分、エタノール、アセトアルデヒド、キシレン、芳香族反応中間体、芳香族不純物及び/又はTPAを含む。アセトアルデヒドが現場酸化化合物として使用される場合には、一次酸化に供給されるp−キシレンの重量の百分率としての、その後の酸化的蒸解に供給されるアセトアルデヒドの重量は、約0.1〜約12、約0.2〜約10、約0.4〜約8又は1〜6%の範囲であるのが好ましい。エタノールが現場酸化化合物として使用される場合には、一次酸化に供給されるp−キシレンの重量の百分率としての、その後の酸化的蒸解に供給されるエタノールの重量は、約0.1〜約12、約0.2〜約10、約0.4〜約8又は1〜6%の範囲であるのが好ましい。現場酸化化合物は好ましくはp−キシレン及び/又は芳香族反応中間体を含む。p−キシレンが現場酸化化合物として使用される場合には、一次酸化に供給されるp−キシレンの重量の百分率としてのその後の酸化的蒸解に供給されるp−キシレンの重量は、約0.1〜約16、約0.5〜約12、約1〜約10又は2〜8%の範囲であるのが好ましい。
本発明の一実施態様において、後反応媒体の温度を増加させる手段は、少なくとも1種の被酸化性化合物を分子状酸素によって現場外で(ex situ)(例えば蒸解反応媒体外で)燃焼させ、それからの加熱反応生成物の少なくとも一部を供給して、蒸解反応媒体の液相と接触させ且つ/又は凝縮させて蒸解反応媒体の液相とすることによって生じる反応熱を用いる。好ましくは、現場外燃焼の加熱反応生成物は、少なくとも約2個、4個、16個又は64個の別々の開口部を含む複数の位置で蒸解反応器/ゾーンに供給される。好ましくは、加熱化合物の少なくとも一部は、後反応媒体の全高の下方50%、30%、10%又は5%に存在する少なくとも1つの開口部を経て後反応媒体に供給される。好ましくは、加熱反応生成物は少なくとも約250、300、400又は500℃の初期温度(即ち加熱に使用される前の温度)を有する。好ましくは、加熱反応生成物は二酸化炭素及び/水、より好ましくはその両者を含む。好ましくは、加熱反応生成物は、約8、6、4又は2モル%未満の分子状酸素を含む。好ましくは、加熱反応生成物の圧力はその後の酸化的蒸解の圧力より高い。現場外被酸化性化合物は、溶媒の成分、キシレン、芳香族反応中間体、芳香族不純物、メタン、市販燃料油及び/又はTPAを含むことができる。好ましくは、現場外被酸化性化合物は少なくとも1種の芳香族不純物及び少なくとも1種のメタン又は燃料油を含む。
本発明の別の実施態様において、後反応媒体の温度を増加させる手段は、少なくとも1種の化合物(それ自体は現場外燃焼反応の反応生成物ではない)を加熱して加熱化合物を形成し、加熱化合物の少なくとも一部を供給して、後反応媒体の液相と接触させ且つ/又は凝縮させて後反応媒体の液相にすることを含む。好ましくは、加熱化合物の少なくとも一部は、少なくとも約2、4、16又は64個の別々の開口部を経て複数の位置で後反応媒体に供給される。好ましくは、加熱化合物の少なくとも一部は、後反応媒体の全高の下方50、30、10又は5%に存在する少なくとも1つの開口部を経て後反応媒体に供給される。好ましくは、加熱化合物の少なくとも一部は、後反応媒体の全高の上方50、30、10又は5%に存在する少なくとも1つの開口部を経て後反応媒体に供給される。加熱化合物を加熱するエネルギー源は、熱媒流体から固体表面を越えて(例えば間接的な熱交換装置を介して)移される電気エネルギー及び/又は熱エネルギーを含むことができる。好ましくは、熱媒流体は本質的に加熱有機化合物又は実質的に気化された水を含む。好ましくは、加熱有機化合物の少なくとも一部は再循環され、その少なくとも一部はまた、本質的にエチレングリコールからなるプロセス流への熱エネルギーの提供を含む(これに限定するものではないが)PET形成プロセスへの熱エネルギーの提供にも使用される。好ましくは、加熱化合物の温度は、酸化的蒸解段階において支配的な温度よりも少なくとも約20、40,60又は80℃高い。好ましくは、加熱化合物の温度は少なくとも約200、220、240又は260℃である。加熱化合物は好ましくは空気、溶媒の成分又は溶媒を含むスラリー、芳香族反応中間体及び固体TPAを含む。
本発明の一実施態様において、加熱化合物は、前の酸化反応工程(例えば一次酸化及び/又は初期酸化的蒸解)からの塊(mass)を含むスラリーを含む。この種の構成は、図25の任意加熱工程936のよって図示されている。好ましくは、前の酸化反応工程からの加熱スラリーの少なくとも約10、50、90又は95重量%が、加熱の約32、8、2又は0.5分未満以内にその後の酸化的蒸解に供給される。本発明者らは、加熱直後における加熱スラリーの酸化的蒸解への供給が、加熱スラリーの遅延供給よりもかなり有利であることを発見した。蒸解反応媒体への加熱スラリーの遅延供給は、その後の蒸解反応媒体から回収される固体TPA中に保持される4−CBAの量を著しく増加させる。更に、すぐ後に行う(即ち酸化的蒸解をスラリー加熱のすぐ後に行う)ことの重要性は、加熱スラリーの温度が約170、180、190又は200℃より高い場合には、拡大される。理論によって拘束されないが、本発明者らは、結晶再配列(crystalline rearrangement)速度が、好ましい温度増加によって加速されることを示唆する。反応媒体を形成するための分子状酸素の供給の遅延はおそらく、固体TPAの再配列された、より完成された結晶構造の一部に4−CBAの一部がより多く組み入れられるようにし、4−CBAのこの部分はその後の酸化的蒸解時に利用するのが困難になるであろう。
本発明の一実施態様において、加熱化合物は少なくとも1種の気化化合物を含む。この種の構成は、図26の任意加熱工程956に図示されている。気化化合物は好ましくは溶媒(即ち酢酸及び水)、より好ましくは再循還溶媒の一部を含む。好ましくは、気化化合物は、総芳香族化合物の約4、2、1又は0.2重量%未満及び/又は混ぜられる全触媒化合物の約400、200、100又は50ppmw未満を含む再循環溶媒から形成される。好ましくは、気化溶媒は、約20、17、14又は11重量%未満の水を含む酢酸又は約60、20、10又は2重量%の酢酸を含む水からなる。好ましくは、気化溶媒中の水の少なくとも約20、40、60又は80重量%は、一次酸化における芳香族化合物の酸化によって形成される。より好ましくは、気化溶媒は、再循還溶媒の一部を形成するのにも用いられる、非抽出蒸留工程から回収される流れの一部を含む。好ましくは、気化溶媒の少なくとも一部は、酸化的蒸解に供給される前に、酸化剤流の少なくとも一部と混合されて混合加熱流を形成する。
本発明の一実施態様において、酸化剤流はより低い圧力から、少なくとも1つの酸化反応工程(例えば一次酸化及び/又は酸化的蒸解の1つの段階)の圧力より高い圧力まで加圧される。酸化剤流は好ましくは、図1〜11の一次酸化反応器20中に導入されるものとして前述した酸化剤流の組成を有する。好ましくは、酸化剤流は、機械装置、例えば往復ピストン型圧縮装置、回転スクリュー型圧縮装置及び/又は回転遠心型圧縮装置によって圧縮される。好ましい実施態様において、酸化剤流は一次酸化よりも高い圧力まで圧縮され、その後に一次酸化に供される。
別の実施態様において、酸化剤流は一次酸化の圧力より高く且つ酸化的蒸解の少なくとも1つの段階よりも高い圧力まで圧縮される。圧縮された酸化剤はその後に分割され、一次酸化と酸化的蒸解の少なくとも1つの段階に供給される。このような共通圧縮機による分割供給の構成においては、酸化剤流の大部分が一次酸化に供給され、酸化剤流の少量部分が酸化的蒸解に供給されるのが好ましい。従って、単一の圧縮機を用いて、一次酸化と酸化的蒸解の両方に供給される酸化剤流を圧縮することができる。
酸化的蒸解を実施するために、分子状酸素を含む二次酸化剤流が蒸解反応器/ゾーンに直接添加される(図23、24及び26)。或いは、酸化的蒸解ゾーンのすぐ上流の供給スラリーに添加することもできる(図25)。好ましくは、酸化的蒸解に供給される二次酸化剤流中の分子状酸素の、乾燥ベースでのモル分率は、約1〜約100モル%、約4〜約50モル%、約10〜約30モル%の範囲又は大気とほぼ同じである。好ましくは、(一次酸化に供給される分子状酸素)対(酸化的蒸解に供給される分子状酸素)のモル比は少なくとも約2:1、約4:1〜約200:1又は10:1〜100:1である。好ましくは、分子状酸素は、少なくとも2、4、16又は64個の別々の開口部を経て複数の位置で蒸解反応器/ゾーンに供給される。好ましくは、蒸解に供給される分子状酸素の少なくとも約20、40、60又は80モル%が、蒸解反応媒体の全高の下方50、30、10又は5%にある少なくとも1つの開口部を経て供給される。好ましくは、分子状酸素は、一次酸化気泡塔型反応器中の気体分配器に関してここに開示した種々の実施態様に適合する少なくとも1つの気体分配器によって供給される。好ましくは、分子状酸素は、少なくとも2、3、4又は5個の別々の高度を含む複数の高度で蒸解に供給される。一実施態様において、分子状酸素を蒸解に供給するための別々の高度は、蒸解反応媒体の上半分の少なくとも1つの開口部及び蒸解反応媒体の下半分の少なくとも1つの開口部を含む。
主に気体の流出物は、蒸解反応器/ゾーン中の反応媒体の運転液面より上方に設けられた離脱空間と連通している少なくとも1つの開口部を通して酸化的蒸解から回収される。主に気体の流出物は好ましくは、蒸解反応器/ゾーンの全高の上方50、30、10又は5%にある少なくとも1つの開口部を通して蒸解反応器/ゾーンから回収される。多段酸化的蒸解が使用される(図24〜26)場合には、初期酸化的蒸解段階から回収される気体流出物中の分子状酸素の、乾燥ベースでのモル分率は、約0.01〜約8、約0.1〜約5又は1〜3モル%の範囲であるのが好ましく、後期酸化的蒸解段階から回収される気体流出物中の分子状酸素の、乾燥ベースでのモル分率は約0.001〜約8、約0.01〜約2又は0.05〜0.5モル%の範囲である。
本発明の一実施態様において、酸化的蒸解の間における炭素焼損は、異なる条件下で別々の蒸解反応器/ゾーン中で実施される少なくとも2つの蒸解段階を用いることによって、初期スラリー中の触媒化合物の高い液相濃度を保持しているにもかかわらず、減少される。好ましくは、酸化的蒸解は、(全ての酸化的蒸解段階で生成される総炭素酸化物のモル数の合計)÷(それらの段階から回収されたTPAのモル数)が約0.0001〜約0.12:1、より好ましくは約0.0005〜約0.08、更に好ましくは約0.001〜約0.06、最も好ましくは0.006〜0.04の範囲となるような方法で実施される。好ましくは、「(全ての酸化的蒸解段階で生成される二酸化炭素のモル数の合計)÷(それらの段階から回収されたTPAのモル数)」は約0.00008〜約0.08、より好ましくは約0.0004:1〜約0.05、更に好ましくは約0.0008:1〜約0.04、最も好ましくは0.004〜0.03の範囲である。好ましくは、「(全ての酸化的蒸解段階で生成される一酸化炭素のモル数の合計)÷(それらの段階から回収されたTPAのモル数)」は約0.00005〜約0.06、より好ましくは約0.0002〜約0.04、更に好ましくは約0.0005〜約0.03、最も好ましくは0.002〜0.02の範囲である。
多段酸化的蒸解を使用する場合には、初期酸化的蒸解段階と後期酸化的蒸解段階は、互いに実質的に異なる温度、圧力、滞留時間及び/又は酸素量を使用するのが好ましい。酸化的蒸解の初期段階は好ましくは一次酸化の温度に近い温度で実施されるが、酸化的蒸解の後期段階は一次酸化の温度及び初期酸化的蒸解段階の温度よりも高い温度で実施される。好ましくは、酸化的蒸解の後期段階は、気体流出物中に非常に低濃度の分子状酸素が存在する「酸素欠乏(oxygen-starved)」条件下で実施される。
図24〜26は、多段酸化的蒸解の種々の構成を開示している。図24は、一次酸化段階910に続く初期酸化的蒸解段階912と、初期酸化的蒸解段階912に続く後期酸化的蒸解段階914を図示している。図25は、一次酸化反応容器中に含まれる蒸解反応器/ゾーン中で実施される初期酸化的蒸解段階934(例えば、図12〜13及びこれらに関連する説明に開示されような)を図示している。図25においては、後期酸化的蒸解段階938が初期酸化的蒸解段階934に続き、これらの間に任意の加熱工程936が位置付けられている。図26は、一次酸化段階950に続く気泡塔初期酸化的蒸解段階952(例えば、図15〜16及びこれらに関連する説明に開示されるような)を図示している。図26においては、後期酸化的蒸解段階954が気泡塔初期酸化的蒸解段階952に続き、これらの間に任意の加熱工程956が使用される。
多段酸化的蒸解を使用する場合には、初期酸化的蒸解段階から回収される固体の少なくとも約10、50、90又は95重量%が、回収の約32、8、2又は0.5分未満以内に後期酸化的蒸解段階に供給されるのが好ましい。初期酸化的蒸解と後期酸化的蒸解の間の遅延を最小限に抑えることの重要性は、回収される固体の温度が少なくとも約170、180、190又は200℃の場合により重要になる。
それぞれのスラリーが主として一次酸化及び初期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、一次酸化の温度に比較した初期酸化的蒸解段階の温度は、好ましくは約10℃低い〜約30℃高い、約5℃低い〜約20℃高い、又はほぼ同じ〜約10℃高い範囲の温度である。好ましくは、それぞれのスラリーが主として一次酸化及び後期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、一次酸化の温度に比較した後期酸化的蒸解段階の温度は、約10℃高い〜約100℃高い、約15℃高い〜約70℃高い、又は約20℃高い〜約50℃高い範囲の温度である。好ましくは、それぞれのスラリーが主として初期酸化的蒸解段階及び後期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、初期酸化的蒸解段階の温度に比較した後期酸化的蒸解段階の温度は、約5℃高い〜約90℃高い、約10℃高い〜約60℃高い、又は約15℃高い〜約40℃高い範囲の温度である。好ましくは、スラリーが主として初期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された初期酸化的蒸解段階の温度は約125〜約200℃、約140〜約185℃又は約150〜約175℃の範囲である。好ましくは、スラリーが主として後期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された後期酸化的蒸解段階の温度は約150〜約280℃、約160〜約240℃又は約170〜約210℃の範囲である。酸化段階が1つしか用いられない場合には、後期酸化的蒸解段階に関してここに記載した条件下で運転するのが好ましい。
少なくとも2つの段階の酸化的蒸解を用いる場合には、それぞれの気体流出物が主として一次酸化及び初期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、一次酸化の圧力に比較した初期酸化的蒸解段階の圧力は、約0.2MPa低い〜約2MPa高い、約0.1MPa低い〜約1MPa高い、又はほぼ同じ〜約0.2MPa高い範囲の圧力であるのが好ましい。好ましくは、それぞれの気体流出物が主として一次酸化及び初期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、一次酸化の圧力に比較した後期酸化的蒸解段階の圧力は、ほぼ同じ〜約8MPa高い、約0.5MPa高い〜約4MPa高い、又は約1MPa高い〜約2MPa高い範囲の圧力である。好ましくは、それぞれの気体流出物が主として初期酸化的蒸解段階及び後期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、初期酸化的蒸解段階の圧力に比較した後期酸化的蒸解段階の圧力は、ほぼ同じ〜約4MPa高い、約0.5MPa高い〜3MPa高い、又は約1MPa高い〜約2MPa高い範囲の圧力である。好ましくは、気体流出物が主として初期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、初期酸化的蒸解段階の圧力は、約0.2〜約3MPa、約0.3〜約2MPa又は約0.4〜約1MPaの範囲である。好ましくは、気体流出物が主として後期酸化的蒸解段階から出る場所で測定された、後期酸化的蒸解段階の圧力は、約0.4〜約8MPa、約0.5〜約4MPa又は1〜2MPaの範囲である。
本発明の一実施態様において、初期酸化的蒸解段階中のスラリー相の質量平均滞留時間は、少なくとも約1分、約2〜約60分又は5〜30分であるのが好ましい。好ましくは、第1酸化的蒸解段階以外の酸化的蒸解段階に関するスラリー相の質量平均滞留時間は約10〜約480、約20〜約360又は40〜120分の範囲である。好ましくは、第1酸化的蒸解段階以外の全ての酸化的蒸解段階に関するスラリー相の質量平均滞留時間は合計で約10〜約480、約20〜約360又は40〜120分の範囲になる。
本発明の一実施態様においては、酸化的蒸解の前に固体TPAの機械的微粉砕のために、少なくとも1つのプロセス工程を用いる。好ましくは、機械的微粉砕は固体TPAの平均粒度を少なくとも約5、10、20又は40%減少させる。好ましくは、機械的微粉砕は、遠心ポンプによって且つ/又は公知の任意の手段によって提供される。
本発明の一実施態様においては、少なくとも約2、3、4又は6個の酸化的蒸解段階が、隣接コンパートメント中の反応媒体間で化学組成が実質的に差別されるコンパートメントを形成する機械的パーティションを有する1つの耐圧エンクロージャー(例えば容器又は導管)内で実質的に実施する。このタイプの構造は、図26の後期酸化的蒸解段階954によって図示されている。コンパートメントの実質的な化学的差別(chemical segregation)は、少なくとも1つのコンパートメント中のスラリーの4−CBAの時間平均固相濃度が直接隣接するコンパートメント中のスラリーの4−CBAの時間平均固相濃度とは少なくとも約5、10、20又は30%異なる状態を作り出す。本発明の一実施態様において、耐圧エンクロージャーは、実質的に水平な円筒形部分を含む。好ましくは、実質的に水平な円筒形エンクロージャー部分は少なくとも1つの実質的に直立した機械的パーティションを含み、隣接コンパートメント中の反応媒体の質量中心は互いにそれらの垂直方向のずれに等しい又はそれより大きい距離だけ水平方向にずれている。好ましくは、実質的に直立した機械的パーティションは、形状が実質的に平らな表面を示す。本発明の別の実施態様において、耐圧エンクロージャーは実質的に直立した円筒形部分を含む。好ましくは、実質的に直立した円筒形エンクロージャー部分は少なくとも1つの実質的に水平な機械的パーティションを含み、隣接コンパートメント中の反応媒体の質量中心は互いにそれらの水平方向のずれに等しい又はそれより大きい距離だけ垂直方向にずれている。好ましくは、実質的に水平の機械的パーティションは、形状が実質的に平らな、楕円の且つ/又は円錐形の表面を示す。
本発明の一実施態様によれば、酸化的蒸解は、酸化的蒸解に供される反応媒体の固相及び/又は液相の滞留時間分布(RTD)を制御することによって最適化される。図27の顕微鏡写真は、蒸解反応器/ゾーン中の適切な滞留時間分布の重要性を示している。詳細には、図27は、常法に従って蒸解されたTPA粒子を示す。この顕微鏡写真の右下隅の粒子は、酸化的蒸解における滞留時間が充分でなかった粒子である。従って、適切に蒸解されたTPA粒子に比較して、この粒子はより多くの不純物を含み、粒度がより小さく、表面積がより大きく、密度がより小さく且つ溶解性がより高い。
化学反応器を通る質量流のRTDの原理並びに化学反応器の設計及び運転におけるそれらの実用性は充分に確証されている。例えば、Chemical Engineering Kinetics,J.M.Smith,second edition 1970(McGraw−Hill)、特にchapter6の”Deviations from Ideal Reactor Performance”を参照。滞留時間分布(RTD)関数は、その中の246ページ以降に定義され、記載されている。連続流撹拌槽型反応器(CSTR)とも称される、完全混合単槽型反応器は1つの理想的なケースである。流れ特性に関して理想的な別のケースは、管状流又はピストン流と称することもある栓流である。栓流においては、反応ゾーンを通って流れる間の、周囲の塊との対流による塊の混合がごくわずかである。実際の物理的反応ゾーンに対する滞留時間分布関数を実験的に求める方法は、Smithの文献の248ページ以降に定義され、記載されている。この方法は、反応ゾーンに入る流れに不活性トレーサー化合物のステップ入力及び/又はパルス入力を導入し、次いで反応ゾーンから出るトレーサーの質量を時間の関数として測定することを含む。近年、放射性トレーサー物質のステップ入力及び/又はパルス入力の使用が特に有用であることがわかってきた。これは一つには、出ていく流れについての放射性測定が出ていくトレーサーの質量の連続的な非侵襲的測定を時間の関数として提供するためである。放射性トレーサー法を用いた、このようなデータの収集と、質量平均滞留時間の計算を含むRTD関数の再構成は、例えばTracerco(Houston,TX)及びQuest TruTec(La Porte,TX)を含む複数の契約者から商業的契約に基づいて使用できる。
以下の開示において、採用する表記は以下の通りである:
「t」は時間であり:時間「J(t)」の滞留分布関数は、時間t=0において反応ゾーンの相に最初に供給され、次に時間tの前に反応ゾーンから出る質量の積算分率であり;「tavg」はJ(t)から求められた質量平均滞留時間であり:「t/tavg」は、時間÷質量平均滞留時間を意味する換算時間(reduced time)であり;「CMF(t/tavg)」は換算時間の滞留分布関数である。例えば、CMF(0.2)は、時間t=0において反応ゾーンの相に最初に供給され、次に0.2の換算時間より前にその反応ゾーンから出る積算質量分率である。時間t=0においてエンクロージャーに最初に供給される質量のアリコートの質量平均滞留時間は、時間ゼロから、アリコートの質量の少なくとも約99.9%がエンクロージャーから出ていくまで積分された[(t)×(時間tに出ていくアリコートの質量)]/(アリコートの総質量)]として計算される。tavgの単位は単純に任意の単位時間である。
「t」は時間であり:時間「J(t)」の滞留分布関数は、時間t=0において反応ゾーンの相に最初に供給され、次に時間tの前に反応ゾーンから出る質量の積算分率であり;「tavg」はJ(t)から求められた質量平均滞留時間であり:「t/tavg」は、時間÷質量平均滞留時間を意味する換算時間(reduced time)であり;「CMF(t/tavg)」は換算時間の滞留分布関数である。例えば、CMF(0.2)は、時間t=0において反応ゾーンの相に最初に供給され、次に0.2の換算時間より前にその反応ゾーンから出る積算質量分率である。時間t=0においてエンクロージャーに最初に供給される質量のアリコートの質量平均滞留時間は、時間ゼロから、アリコートの質量の少なくとも約99.9%がエンクロージャーから出ていくまで積分された[(t)×(時間tに出ていくアリコートの質量)]/(アリコートの総質量)]として計算される。tavgの単位は単純に任意の単位時間である。
図28は、1個のCSTR、2個のCSTR、3個のCSTR、4個のCSTR、5個のCSTR、6個のCSTR、7個のCSTR及び8個のCSTR並びに栓流に関するRTD関数を示す。より多くのCSTRを直列で使用するにつれて、RTDは理想的な栓流に近づくことがわかる。本発明者らは、酸化的蒸解が好ましくは、理想的な栓流にも理想的なCSTR流にも近づかない条件下で実施されることを発見した。他方、液相に関しては、芳香族反応中間体の液相濃度が酸化的蒸解に入るときに迅速に低濃度まで低減されるようなCSTRの混合及びRTDが好ましい。詳細には、粒子が再配列され且つ構造が平均してより大きく、より結晶性になるので、これは4−CBAの固体TPA生成物への組み入れの減少を促進する。他方、栓流の流れ特性は、反応媒体の固相に関して好ましい。CSTRのRTDに関しては、固体TPAの多くの個別粒子が1つの酸化的蒸解的蒸解工程又は一連の工程において比較的短い滞留を有し、これらの粒子は、平均して固相4−CBAが不所望に高く且つ粒度が不所望に小さいそれらの流入時の特性の多くを保持する傾向がある。
この発見によって、本発明者らは、初期固体及び/又は初期スラリーを処理する少なくとも1つの酸化的蒸解段階及び/又は一連の酸化的蒸解段階に関するRTDの好ましい範囲をここで特定できる。本発明者らは、液相、固相及び気相を、蒸解反応器/ゾーンの特定の機械設計によって異なる速度で酸化的蒸解に通るように誘導できることを確認している。このような場合、固体不活性トレーサーを用いて、別個に液体不活性トレーサー用いて、また、別個に気体不活性トレーサーを用いてRTDを試験すると、各相のJ(t)について別個にはっきりと異なった結果が得られるであろう。以下の開示は、固相単独に、液相単独に且つ/又はそれらのスラリー組合せに関する。
ここで図29を参照すると、本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1つの酸化的蒸解段階及び/又は一連の酸化的蒸解段階が、CMF(0.5)が少なくとも約0.15、0.20又は0.25となるように初期固体及び/又は初期スラリーを処理する。更に、CMF(0.2)は約0.10、0.05又は0.01未満であるのが好ましい。酸化的蒸解段階及び/又は一連の酸化的蒸解段階は単一の流体エンクロージャー又は流体接続している複数のエンクロージャー中で実施することができる。
RTDパラメーターの好ましいバランスを達成するためには、無数の機械構成を使用でき、そのうちのいくつかの例を以下に記載する。このような実施態様は、TPAプロセスに存在する全ての酸化的蒸解段階の反応媒体の塊が、3つのほぼ同一の耐圧エンクロージャー内に配置された3つの部分に本質的に等しく分割されるものである。それぞれは、その中の液相及び固体組成に関してよく混合されるように充分な機械的撹拌を含む。スラリーは最初から最後まで順序通りにそれぞれを通って流れる。最初の2つの容器の1つから次にスラリーを直列で接続する各導管は、単一容器中のスラリーの質量の約0.01、0.006、0.003又は0.001倍未満のスラリー質量を含み;それらの導管は、それらの個別長さ対それらの個別最大直径の伸長比(eleongated ratio)が少なくとも約5:1、10:1、20:1又は40:1である。このような場合には、CMF(0.2)は約0.04に等しく、CMF(0.5)は約0.19に等しいであろう。これは、好ましい範囲内で逆混合を提供し、また、より好ましい範囲内で短い滞留時間を抑制する。別の実施態様は、酸化的蒸解段階中の反応媒体の塊が、よく混合された3つの部分に本質的に等しく分割される直前の実施態様と同様である。しかし、等しい部分は、単一の水平に配置された耐圧エンクロージャー内に配置される。等しい部分は、直立する機械的パーティションによって互いに差別され、塊をほとんど含まず且つ前方へ流れる塊の逆混合もほとんどない導管によって接続され、これは、従来の流体力学的モデル化法を用いて設計され且つ従来の製作方法を用いて構成されることができる。このような場合、CMF(0.2)はこの場合もまた約0.04に等しく、CMF(0.5)はこの場合もまた約0.19に等しいであろう。別の実施態様は、酸化的蒸解段階中の反応媒体の塊が、よく混合された3つの部分に本質的に等しく分割される直前の2つの実施態様と同様である。しかし、等しい部分は、単一の直立する円筒形の耐圧エンクロージャー内に配置される。等しい部分は、水平の機械的パーティションによって互いに差別され、塊をほとんど含まず且つ前方へ流れる塊の逆混合もほとんどない導管によって接続され、これは、従来の流体力学的モデル化法を用いて設計され且つ従来の製作方法を用いて構成されることができる。このような場合、CMF(0.2)はこの場合もまた約0.04に等しく、CMF(0.5)はこの場合もまた約0.19に等しいであろう。
蒸解反応器/ゾーンの全く異なる実施態様は、栓流蒸解反応器/ゾーンをCSTRゾーンと併用する。このような構成は、図25の後期酸化的蒸解段階938(CSTR)及び940(栓流)によって図示されている。この実施態様において、酸化的蒸解に供される反応媒体の塊は、栓流に非常に近づくように設計された初期蒸解反応器/ゾーン中に約25%含まれ、続いて残りの約75%が単一のよく混合された最終蒸解反応器/ゾーン中に含まれるように、分割される。このような場合には、CMF(0.2)は本質的にゼロであり、CMF(0.5)は約0.28に等しく、開示されたようなRTDの望ましいバランスが得られるであろう。
本発明の特に好ましい実施態様は、酸化的蒸解に供される反応媒体の塊が、単一のよく混合された初期反応器/ゾーン中に約75%を且つ栓流に非常に近くなるように設計された最終蒸解反応器/ゾーン中に残りの約25%を含むように分割される直前の実施態様と類似するが;スラリーは最初に、よく混合された蒸解反応器/ゾーンを通って流れてから、栓流蒸解反応器/ゾーンに入る。図30は、75%がCSTRで、それに続いて25%が栓流蒸解反応器であるこのような場合のRTD関数を示す。このような場合には、CMF(0.2)はこの場合もまた本質的にゼロであり、CMF(0.5)はこの場合もまた約0.28に等しくなり、開示されたようなRTDの望ましいバランスが得られるであろう。より一般的には、本発明の特に好ましい実施態様は、(a)酸化的蒸解反応媒体の実質的によく混合された部分を含む少なくとも1つの酸化的蒸解段階(その段階単独のCMF(0.2)は少なくとも約0.12である)を含み;(b)それに続いて、酸化的蒸解反応媒体の実質的に栓流の部分を含む少なくとも1つの酸化的蒸解段階(その段階単独のCMF(0.2)は約0.01未満である)を含み;且つ(c)組合せに関して開示されるRTDが開示された好ましい範囲のCMF(0.2)及びCMF(0.5)の値を示す。
本発明の一実施態様において、実質的に栓流の蒸解反応器/ゾーンは、(反応媒体の最大垂直高さ)÷(任意の水平面で測定された反応媒体の最大寸法)が少なくとも約3、5、7又は9となるように実質的に直立して配向される。好ましくは、直立した栓流蒸解反応器/ゾーン中を流れるスラリーの支配的な空塔速度は約1、0.3、0.1又は0.03m/秒未満である。本発明の別の実施態様において、実質的に栓流の蒸解反応器/ゾーンは、(反応媒体の最大水平寸法)÷(任意の垂直面で測定された反応媒体の最大寸法)が少なくとも約3、5、7又は9となるように実質的に水平に配向される。好ましくは、実質的に水平の栓流蒸解反応器/ゾーン中を流れるスラリーの支配的な空塔速度は少なくとも約0.5、1、2又は3m/秒である。本発明の別の実施態様においては、少なくとも2つの実質的に直立した栓流蒸解反応器/ゾーンが、少なくとも1つの実質的に水平な栓流蒸解反応器/ゾーンによって直列に接続される。このような構成においては、「(接続される直立栓流蒸解反応器/ゾーンの容積)÷(接続する水平栓流蒸解反応器/ゾーンの容積)」は少なくとも約50、100、200又は400であるのが好ましい。
酸化的蒸解が、蒸解反応媒体の実質的によく混合された部分とそれに続く蒸解反応媒体の実質的に栓流部分を使用する場合には、後に続く栓流蒸解反応媒体の質量平均滞留時間は約1〜約60、約2〜約40又は4〜30分の範囲であるのが好ましい。好ましくは、「(実質的によく混合された蒸解反応器/ゾーンの容積)÷(後に続く実質的に栓流の蒸解反応器/ゾーンの容積)」は約1.5〜約40、約2〜約12、約2.5〜約10又は3〜8の範囲である。
多段酸化的蒸解を使用する本発明の好ましい実施態様において、初期酸化的蒸解段階は、反応媒体中の少なくとも1種の芳香族反応中間化合物の量を実質的に減少させる。好ましくは、初期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの液相中のPTACの時間平均濃度は、初期酸化的蒸解段階に導入されるスラリーの液相中のPTACの時間平均濃度の約50、10又は5%未満である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階中に導入されるスラリーの液相中のPTACの時間平均濃度は約50〜約10,000、約100〜約6,000又は500〜5,000ppmwの範囲である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの液相中のPTACの時間平均濃度は約1,000、200又は60ppmw未満である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの液相中の4−CBAの時間平均濃度は、初期酸化的蒸解段階に導入されるスラリーの液相中の4−CBAの時間平均濃度の約50、10又は5%未満である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階に導入されるスラリーの液相中の4−CBAの時間平均濃度は約100〜約6,000、約200〜約4,000又は400〜3,500ppmwの範囲である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの液相中の4−CBAの時間平均濃度は約500、100又は30ppmw未満である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの固相中の4−CBAの時間平均濃度は、初期酸化的蒸解段階に導入されるスラリーの固相中の4−CBAの時間平均濃度の約5〜約95、約10〜約90、約20〜約80又は30〜70%の範囲である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階に導入されるスラリーの固相中の4−CBAの時間平均濃度は約100〜約15,000、約400〜約8,000又は1,000〜6,000ppmwの範囲である。好ましくは、初期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの固相中の4−CBAの時間平均濃度は約100〜約12,000、約300〜約8,000又は800〜4,000ppmwの範囲である。
本発明の一実施態様において、後期酸化的蒸解段階は、少なくとも1種の芳香族反応中間化合物の量を実質的に減少させるのが好ましい。好ましくは、後期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの液相中のPTACの時間平均濃度は約50、10又は2ppmw未満である。好ましくは、後期酸化的蒸解段階から回収されるスラリーの液相中の4−CBAの時間平均濃度は約50、10又は2ppmw未満である。好ましくは、後期酸化的蒸解段階から回収される固体TPA生成物中のPTACの時間平均濃度は約1〜約1,000、約1〜約500、約5〜約125又は10〜60ppmwの範囲である。好ましくは、後期酸化的蒸解段階から回収される固体TPA生成物中の4−CBAの時間平均濃度は約1〜約1,000、約1〜約500、約10〜約250又は20〜125ppmwの範囲である。好ましくは、固体TPA生成物中の4,4’−DCSの時間平均濃度は約6、4又は2ppmw未満である。
本発明の一実施態様において、酸化的蒸解は、蒸解反応媒体を含む反応ゾーンを規定する撹拌反応器中で実施される。好ましくは、「(蒸解反応媒体の最大高さ)÷(蒸解反応媒体の最大直径)」は少なくとも約1.5、2、3又は4である。好ましくは、蒸解反応器/ゾーンには、蒸解反応媒体内に配置されるインペラーを有する少なくとも1つの機械撹拌機が装着される。好ましくは、機械的撹拌機は、蒸解反応媒体内に配置される少なくとも約2,3、4又は6個の異なる高度の機械的撹拌インペラーを有する。好ましくは、機械的撹拌機は、蒸解反応媒体内に配置される少なくとも2つの異なるタイプの機械的撹拌インペラーを含む。機械的撹拌機は、気体分散に特にふさわしいものとして当業界で知られた任意の型のインペラー、流体ポンピングに特にふさわしいものとして当業界で知られた任意の型のインペラー、及び/又は流体ポンピングによる固体の懸濁化に特にふさわしいものとして当業界で知られた任意の型のインペラーを使用できる。好ましくは、流体ポンピングによって固体を懸濁させるのに特にふさわしい少なくとも1つのインペラーは、気体分散に特にふさわしい少なくとも1つのインペラーの下方に配置される。好ましくは、流体ポンピングによって固体を懸濁させるのに特にふさわしい少なくとも1つのインペラーは、蒸解反応媒体の最低高度から、蒸解反応媒体の最大直径の約4、2、1又は0.5倍未満上方に配置される。好ましくは、撹拌インペラーの少なくとも2つは、蒸解反応媒体の最大直径の少なくとも約0.5,1、2又は4倍だけ高度が離される。酸化的蒸解反応器が前述のようにコンパートメント化される場合には、少なくとも1つのインペラーが各コンパートメント中に配置されるのが好ましい。好ましくは、撹拌インペラーは少なくとも1つの回転撹拌軸上に配置される。それは任意の向きで配向されることができるが、好ましくは、回転軸は直立しており、酸化的蒸解反応媒体の質量中心又はその近くを通る。好ましくは、機械軸の少なくとも1つは、蒸解反応器/ゾーンの内側の少なくとも1つの機械軸受けによって支持される。
本発明の好ましい実施態様において、回転撹拌軸は、ここで「撹拌機駆動部」と称する、少なくとも1つの電動機及び機械的連結器を有する任意のギアボックスによって駆動される。好ましくは、撹拌機駆動部は、蒸解反応器/ゾーンの耐圧境界(pressure containing boundary)の外側に配置される。トルク及び動力は、電磁又は非電磁連結装置を経て外部撹拌機駆動部から回転撹拌軸に伝えられる。好ましくは、少なくとも1つの回転撹拌軸が貫通する(即ち、蒸解反応器の耐圧境界を通る)。少なくとも1つの軸貫通を、蒸解反応媒体の質量中心の高度より下方に、より好ましくは蒸解反応媒体の質量中心の高度の情報に、最も好ましくは蒸解反応器の頂部近くに配置できる。一実施態様においては、複数の回転撹拌軸が、蒸解反応媒体の最大直径の少なくとも0.5、1、2又は4倍隔てられた複数の高度で酸化的蒸解反応器の耐圧境界を貫通する。好ましくは、少なくとも1つの回転撹拌軸は、回転メカニカルシールを用いて蒸解反応器の耐圧境界にシールされる。回転メカニカルシールは好ましくは、シールの冷却及び/又はフラッシに用いられるシール流体を含むダブルメカニカルシールである。シール流体は好ましくは、その他の場合にTPA及び/又はPETプロセス内に見られる少なくとも1種の化合物(例えば水、酢酸、キシレン、エチレングリコール及び/又はジエチレングリコール)を含む。
本発明の好ましい実施態様において、酸化剤流、スラリー、被酸化性化合物又は加熱化合物の少なくとも1つを蒸解反応器/ゾーン中に供給する少なくとも1つの開口部は、動いている機械的撹拌機軸又はインペラーの一部に最も近傍の点から、蒸解反応媒体の最大直径の約1/4、1/8、1/16又は1/32倍未満の距離だけ離して配置される。好ましくは少なくとも1つの機械的撹拌蒸解反応器/ゾーンは、主に、より好ましくは完全に反応媒体内に配置され且つ蒸解反応器の壁に隣接した、より好ましくは蒸解反応器の壁によって支持された少なくとも約1、2、4又は8個の細長い構造を含む。この構造は「壁バッフル」として一般に知られ、ここでもそう称する。壁バッフルの重要な働きは、機械的に撹拌される反応媒体内の混合に影響を与えることである。好ましくは、少なくとも1つの壁バッフルが、それが隣接した、より好ましくはそれが支持される反応器壁にほぼ垂直に配向される。壁バッフルは好ましくは直立しており、より好ましくはほぼ垂直である。この直立壁バッフルは好ましくは、蒸解反応器の直立壁に隣接し且つそれから支持される。好ましくは、直立壁バッフルとそれが支持される直立壁との支配的な距離は、蒸解反応媒体の最大直径の約0〜約0.20、約0.01〜約0.17、約0.02〜約0.125又は0.03〜0.10倍の範囲である。好ましくは、直立壁バッフルの最大高さは、蒸解反応媒体の最大高さの約0.1〜約1.2、約0.2〜約1.0又は0.4〜0.8倍の範囲である。好ましくは、直立壁バッフルの最大幅は、蒸解反応媒体の最大直径の約0.01〜約0.25、約0.02〜約0.17、約0.02〜約0.125又は0.04〜0.10倍の範囲である。好ましくは、直立壁バッフルの平均厚さは、蒸解反応媒体の最大直径の約0.04、0.02又は0.01倍未満である。
本発明の好ましい実施態様において、蒸解反応器の定常状態運転の間に機械的撹拌システムによって消費される総動力は、約0.05〜約1.5、約0.1〜約0.9又は0.2〜0.8kW/m3(蒸解反応媒体)の範囲である。好ましくは、定常状態運転の間のインペラーの平均回転速度は約20〜約120又は30〜約90回転/分(rpm)の範囲である。
本発明の別の実施態様において、蒸解反応媒体は、少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有するが可動部を有さない少なくとも1つの機械装置によって撹拌されるが、プロセス流体はそれを通って流れる。このような装置は一般に、管(パイプ)又は他の流通導管の内部に入れられた少なくとも1つの静止エレメントを含み、このような装置は、モーションレスミキサー及びスタティックミキサーを含む種々の名称によって当業界で知られている。好ましくは、モーションレスミキサーは多くの静止エレメントを含む。好ましくは、モーションレスミキサーは、気体分散に特にふさわしいものとして当業界で知られた少なくとも1つのエレメント又は固体の懸濁化に特にふさわしいものとして当業界で知られた少なくとも1つのエレメントを含む。モーションレスミキサーは、任意の向きで配向されることができるが、直立で配向される。
図26に図示するように、酸化的蒸解(例えば、初期酸化的蒸解段階952及び後期酸化的蒸解段階954)から回収された気体流出物の少なくとも一部は、少なくとも1つの任意の分離/処理工程964で処理されて、少なくとも1つの液体流及び少なくとも1つの処理気体流出物を形成することができる。好ましくは、分離/処理工程964は、少なくとも1つの流れは水を多く含み且つ少なくとも1つの流れは有機化合物を多く含む少なくとも2つの液体流を形成する。水を多く含む流れは好ましくは、時間平均ベースで、少なくとも50重量%の水及び2、1、0.7又は0.5重量%未満の酢酸を含む。この水を多く含む流れをここでは「除去水流」と称する。有機化合物を多く含む流れは、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは約80〜約98、84〜約95又は88〜約92重量%の範囲の酢酸を含む。より好ましくは、分離/処理工程964は少なくとも1つの蒸留工程を、更に好ましくは非抽出蒸留を含む。有機化後物を多く含む流れは、再循還溶媒の一部を形成するのに使用されることができる。好ましくは、分離/処理工程964はまた、一次酸化からの気体流出物の少なくとも一部を処理する。
図26に図示するように、本発明の一実施態様において、エネルギーは、分離/処理工程964において形成される少なくとも1つの流れの少なくとも一部分から回収される。好ましくは、このようなエネルギーは、分離/処理工程964において形成される処理気体流出物の少なくとも一部分から、少なくとも1つのターボエキスパンダーを用いて回収される。好ましくは、処理気体流出物の少なくとも一部分及び/又は除去水の少なくとも一部分が次の環境プロセス工程966で処理されて、環境への最終的な放出の環境に対する影響を更に低減する。環境プロセス工程966は、触媒による酸化、再生熱酸化、スクラバー(気体洗浄装置)中での処理、焼却、好気性生物廃棄物処理、嫌気性生物廃棄物処理、廃水の逆浸透精製、pHの調整及び/又は当業界で知られた任意の他の方法を使用できる。
本発明の好ましい実施態様において、スラリーは、蒸解反応器中の少なくとも1つの開口部を通して酸化蒸解から回収される。好ましくは、蒸解反応器から回収されるスラリーの少なくとも約10、20、40又は99重量%が、蒸解反応器中の蒸解反応媒体の全高の下方50、30、10又は5%にある開口部を経て回収される。別の実施態様においては、蒸解反応器から回収されるスラリーの少なくとも約10、20、40又は99重量%が、蒸解反応器中の蒸解反応媒体の全高の上方50、30、10又は5%にある開口部を経て回収される。
図23〜26に示すように、酸化的蒸解の最終段階から出るスラリーは好ましくは、固相と液相の分離の前に冷却工程に供される。本発明の好ましい実施態様において、スラリーは、液相の少なくとも一部が蒸発される蒸発冷却工程によって冷却される。このような蒸発は、スラリーの圧力を低下させ且つ/又はスラリーを通して気体をスパージすることによって行われることができる。液体の一部分の蒸発は残りの液体を冷却し、ひいては固体及び合わされたスラリーを冷却する。流出物中の蒸発溶媒は、熱交換装置中における冷却及び凝縮を含む当業界で知られた任意の手段によって回収されることができる。蒸発冷却が直接液体冷却よりも優れている点は、固体を沈澱させることによる熱交換表面の汚染が大幅に減少することである。ほとんどの芳香族種の蒸気圧は酸化反応後にはかなり低いので、これらの芳香族種は、蒸気相中に位置する冷却熱交換表面をそれほど汚染しない。
スラリー冷却工程の入り口スラリーと出口スラリーの間に大きい温度差がある場合には(これが蒸発冷却を用いる連続冷却工程である場合には特に)、本発明者らは、スラリー冷却工程が好ましくは、より小さい温度変化下位工程で実行されることを確認している。このような段階的冷却は微細な固体粒子の形成を減少させるようである。例えば、少なくとも1つの下位工程の、より好ましくは全ての下位工程の入口と出口の最大温度差が約80℃、65℃、55℃又は45℃未満である下位工程を用いて最適化冷却工程を実施するのが有用である。これは、酸化的蒸解内において支配的な最高温度が約175、185、195又は210℃より高い場合に、ますます重要になる。
本発明の実施態様において、規定量の後蒸解スラリー液相が蒸発によって除去される。スラリーの液相からの溶媒蒸気の蒸発除去は、本明細書中に開示した他の実施態様に記載された液体としての液相の回収と混同してはらない。多くの芳香族不純物及び触媒化合物の揮発度は水、酢酸及び他の溶媒成分の揮発度に比較してはるかに低いので、後蒸解スラリーの液相の蒸発除去は、スラリー中の芳香族不純物の濃度を実質的に増加させるのに役立つ。所定の温度において、これは、固体TPAと共に、難溶性芳香族不純物(着色しているものといないものの両方)の沈澱の増加を促進する。より大きい割合の色の濃い芳香族不純物が固体TPAと共に残存し且つより少ない割合が再循還溶媒中に含まれるが、本発明者らは、良好な色及び品質を有する固体TPA生成物が意外にもそれによって形成されることができることを発見した。更に、このような蒸発除去は、補助プロセス工程を用いる再循還溶媒の精製の要件を有益に減少させる。
本発明の一実施態様においては、酸化反応工程(例えば一次酸化及び/又は酸化的蒸解)から出るスラリー中に含まれる液体の質量の少なくとも約10、20、25又は30%が、スラリーの実質的な脱水の前に蒸発によって除去するのが好ましい。好ましくは、蒸発によって除去される液体は、後蒸解冷却工程の一部として除去する。好ましくは、(一次酸化から生成される初期スラリーの液相中の同一化合物の時間平均濃度)に対する(酸化的蒸解から生成されるスラリーの液相中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の時間平均濃度)の比は、少なくとも0.9、1.0、1.1又は1.2である。好ましくは、(酸化的蒸解で生成される初期スラリーの液相中の同一化合物の時間平均濃度)に対する(後蒸解冷却後のスラリーの液相中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の時間平均濃度)の比は少なくとも約0.9、1.0、1.1又は1.2である。好ましくは、蒸発除去工程から回収されるスラリーの固体分率は総スラリーの約10〜約65、約20〜約55又は30〜45重量%の範囲である。好ましくは、「(蒸発除去工程から回収されるスラリーの固体分率)÷(蒸発除去工程に供給されるスラリーの固体分率)」の比は少なくとも約1.05、1.10、1.15又は1.20である。
本発明者らは、溶媒の蒸発除去前における液回収及び/又はより清浄な溶媒の添加を最小限に抑え且つ/又は排除する一方で、一次酸化からの初期液体を高比率で含む溶媒の蒸発除去を用いることが有利であり得ることを発見した。この方法が適用されると、溶媒の蒸発除去は液相中の難溶性芳香族不純物の比率を更に増加させ、なおその上に、固体TPAから分離されることができる難溶性芳香族不純物の量を減少させ、より純粋でない生成物を生成する。更に異なるのは、本発明のいくつかの実施態様が、溶けやすい触媒残渣を除去するための洗浄後に分子量が高く、色が薄く且つ品質全般が良好なPETポリマーの形成にそのまま適する(即ち、溶解、水素化及び/又は再結晶のような方法によって更に精製処理することなしに適する)固体TPA生成物を形成することである。
本発明者らはまた、後蒸解冷却の後であって且つ得られるスラリーのその後の脱水の前の保持時間の好ましい範囲を発見した。好ましくは、ここに開示した、後蒸解冷却工程温度に達した後のスラリーの質量平均滞留時間は約1〜約480、約2〜約120、約4〜約60又は8〜30分である。この保持時間をここでは「エイジング工程」と称する。好ましくは、少なくとも1つの冷却工程を少なくとも1つのエイジング工程と組合せ、これをここでは「冷却−エイジング工程」と称する。
本発明者らは、固体TPA生成物と共に沈澱される芳香族不純物の増加した比率を保持すると、再循還溶媒を用いて連続的に運転される場合の有害芳香族不純物の形成速度を驚くほど減少させることができることを発見した。従って、本発明の一実施態様では、より高い比率の、おそらくはより多い総質量の比較的非反応性の芳香族不純物が最終的に固体TPAと共に残るという事実にもかかわらず、固体TPA生成物と共に含まれる有害芳香族不純物の総質量は許容できるほどに低い。即ち、本発明者らは、比較的害のない形態である間であって、且つ再循還溶媒によってその後に酸化反応工程を通って流される間に有害な芳香族不純物に転化される前に、溶媒からある種の芳香族不純物をより多く沈殿させるのが好ましい可能性があることを発見した。例えば、スラリーを160℃より高温から80℃未満まで冷却すると、IPAの溶解度が大幅に低下され、固体TPA生成物と共にIPA固体の除去が促進されるが;IPAが再循還溶媒中に保持され且つ酸化反応工程に戻されるならば、色の濃い2,7−DCFの形成が著しく増加する。再循還溶媒を含む同様なフィードバックループが、IPAとPETポリマー中の三官能価分岐鎖モノマーであるTMAの形成について;PAとTMAの形成について;IPA及びPAと種々の他の着色フルオレノン異性体の形成について;安息香酸とIPA及びPAの形成について;並びに安息香酸と種々の更なる着色フルオレノン異性体の形成について存在する。
再循還溶媒から広範囲の芳香族不純物を除去し、その結果として有害芳香族不純物の形成速度を減少させ且つまた、固体TPA生成物と一緒にされるそれらの比率も減少させる先行技術が存在する。しかし、先行技術は、再循還溶媒の一部を精製するための補助システムに向けられている。これとは異なり、本発明の種々の実施態様は、補助システム中においてではなく、固体TPAの主なプロセス流を経て、より大きい比率の芳香族不純物を排除する、より経済的な方法を提供する。さらに異なるのは、本発明の種々の実施態様が、廃棄物流中ではなく固体TPA生成物中の芳香族不純物を排除することである。IPAのようないくつかの芳香族不純物の濃度が高いにもかかわらず、本発明の1つ又はそれ以上の実施態様によって生成される固体TPAは有害芳香族不純物を少量しか含まず、また、分子量が高く、色が薄く且つ品質全般の良好なPETポリマーの形成に適している。
本発明者らは、本発明の実施態様と再循還溶媒の既存純度との間に関連があることを確認している。比較的非反応性の芳香族不純物の濃度が再循還溶媒中に蓄積された場合には、その中での本発明の適用時の初期応答は、固体TPA生成物上の比較的非反応性の芳香族不純物の過剰量である可能性が非常に高く、高品質のPETの形成への直接使用には不適当となる。この応答は典型的には、増大された比率の蓄積された比較的非反応性の芳香族不純物が再循還溶媒からデインベントリー(de-inventory)されて固体TPA生成物と共に出ていく間の数日間又は更には数週間続くであろう。最終的には、新しい定常状態運転に達するが、再平衡時間は典型的には、検討されている個々の芳香族不純物種に応じて継続時間が異なるであろう。更に、再平衡時間は、種々のプロセス工程の個々の質量インベントリー、商業純度のp−キシレン供給材料中に存在する不純物及びそれらの経時的安定性、酸化反応工程の質、並びに再循還溶媒を精製するための補助システムの範囲によって決まる。従って、再循還溶媒を用いる既存の運転に、ここに開示した本発明の実施態様を適用しても、長期間にわたって持続する非常にがっかりさせる結果をもたらす可能性があり、それは、本発明が自明でないことの大きい要因である。従って、ここに開示した本発明の実施態様は、再循還溶媒を用いた固体TPA生成物の製造方法の運転の各日の少なくとも1/2の間、より好ましくは連続する少なくも7日間の運転期間の各日の少なくとも3/4の間、最も好ましくは連続する少なくとも約30日の運転期間の間に連続して、持続されるのが望ましい。
一般的に図23〜26を参照すると、酸化的蒸解の最終段階から回収されるスラリーは、(1)スラリーを脱水して、固体カルボン酸(例えばTPA)粒子の初期湿潤ケーク及び除去液体を形成し;(2)より清浄な溶媒で前記初期湿潤ケークを洗浄して触媒化合物を除去し、それによって洗浄湿潤ケークを形成し;(3)前記洗浄湿潤ケークを脱水して湿った洗浄ケークを形成して、更に多くの触媒化合物及び溶媒を除去し;且つ/又は(4)前記の湿った洗浄ケークを乾燥させて、乾燥固体ポリカルボン酸(例えばTPA)生成物を形成する追加工程の1つ又はそれ以上で更に処理されることができる。本発明の一実施態様において、スラリー脱水工程からの除去液体の少なくとも一部は、少なくとも1種の比較的非反応性の芳香族不純物化合物(例えばIPA)の少なくとも一部を除去するための補助プロセス工程に供給される。ここで使用する用語「脱水」は、それらの相対的揮発度ではなくそれらの密度及び/又はそれらの流動性の差を主に含む手段による、固体からの液体の回収を意味する。
ほとんどの溶媒、溶解芳香族不純物及び触媒化合物を固体TPAから分離するために、スラリー脱水工程を用いて、酸化的蒸解からの、より好ましくはここに開示した冷却及びエイジング工程からの後蒸解スラリーを処理するのが望ましい。図23〜26は、スラリー脱水を、分離工程906(図23)、920(図24)、944(図25)及び960(図26)の初期下位工程として図示している。スラリー脱水は、固体TPAを本質的に含む固体を多く含む少なくとも1つの流れ(ここでは、「初期湿潤ケーク」と称する)並びに溶媒、溶解芳香族不純物及び触媒化合物を本質的に含む液体を多く含む少なくとも1つの流れ(ここでは、「初期脱水用液体」と称する)を形成する。
重量沈降(gravimetric sedimentation)、遠心分離及び機械的濾過が好ましい脱水方法であり、多くの適当な機械装置が市販されている。これらは、ハイドロクローン(hydroclone)並びに多くの型の遠心分離機、例えばディスクパック遠心分離機、円筒型遠心分離機(tubular bowl centrifuge)、デカンター遠心機及びスクリーンボウル遠心分離機(これらに限定するものではないが)を含む。より好ましくは、連続的に排出する回転フィルター、特に回転円形ドラム及び/又は回転長尺ベルトが使用される。加圧フィルター及び真空フィルターも共に有用であり、約120℃より高い運転温度には圧力フィルターがより好ましい。多くの適当な機械装置が市販されている。最も好ましくは、スラリーの脱水には連続的に排出し、回転する長尺ベルトフィルターが使用され、適当な機械装置が市販されている[例えば、Larox Corporation(P.O.Box 29,53101 Lappeenranta,Finland,www.larox.com)製のPnnevis水平ベルトフィルター及びBHS−Filtration Inc.(9123−115 Monroe Road,Charlotte,NC 28270,www.bhs−filtration.com)製のBHS水平ベルトフィルター]。好ましくは、「(初期湿潤ケーク中の液体の質量)÷(初期湿潤ケーク中の固体の質量)」は約0.4、0.3又は0.2未満である。好ましくは、「(初期湿潤ケーク中のコバルト、他の触媒化合物及び/又は安息香酸の質量)÷(脱水工程に供給されるスラリー中の同一化合物の質量)」は約0.4、0.3又は0.2未満である。
初期湿潤ケークの形成後、分離の最終下位工程で初期湿潤ケークを洗浄液体で洗浄して、固体TPAを本質的に含む洗浄湿潤ケークを形成するのが好ましい。これは、ほとんどのTPA固体を保持しながら、初期湿潤ケークから更なる触媒化合物を除去するのに役立つ。好ましくは、触媒化合物の除去は、ここに開示したように、比較的非反応性の芳香族不純物の驚くほど好ましい保持に対して最適化される。洗浄工程は好ましくは、スラリー脱水工程に用いられる好ましいフィルタータイプ内に組み込まれた別のゾーンを用いて実施される。より好ましくは、洗浄工程は、連続的に排出し、回転する長尺ベルトフィルター内に組み込まれた別のゾーンを用いて実施される。洗浄液体は好ましくは、TPA及び/又はPETの製造プロセスの他の場所から発生する化合物を含む。このような洗浄液体化合物の典型的な例としては、酢酸、水、酢酸メチル、p−キシレン及びエチレングリコールが挙げられる。好ましくは、洗浄液体は酢酸及び水を含む。より好ましくは、洗浄液体は、再循還溶媒の一部を形成するのにも使用されている非抽出蒸留工程から回収された流れの一部を含む。洗浄液体は好ましくは、総芳香族化合物の約4、2、1又は0.2重量%未満及び/又は総触媒化合物の約40、20、10又は5ppmw未満を含む。好ましくは、洗浄液体は少なくとも約60、70、80又は85重量%の酢酸を含み、残りは水と微量濃度の不純物である。好ましくは、洗浄液体の流入温度は約145、110、80又は55℃未満である。「(洗浄工程を通る洗浄液体の質量流量)÷(洗浄工程を通る固体の質量流量)」は好ましくは約0.1〜約4、約0.2〜約2又は0.3〜1の範囲である。好ましくは、「[洗浄湿潤ケーク中に残る個々の触媒化合物(例えばコバルト、マンガン及び臭素)の質量]÷[スラリー脱水工程に供給されるスラリー中の同一触媒化合物の質量]」は約0.02、0.01、0.005又は0.003未満である。好ましくは、「(洗浄湿潤ケーク中のTPAの質量)÷((スラリー脱水工程に供給されるスラリー中のTPAの質量)」は少なくとも約0.96、0.98、0.99又は0.995である。好ましくは、「(洗浄湿潤ケーク中の少なくとも1種の比較的非反応性の無害な芳香族不純物の質量)÷(スラリー脱水工程に供給されるスラリー中の不純物の質量)」、又は「(洗浄湿潤ケーク中の少なくとも1種の比較的非反応性の無害な芳香族不純物の質量)÷(初期スラリー中の不純物の質量)」は少なくとも約0.05、0.10、0.20又は0.30である。好ましくは、「(洗浄湿潤ケーク中のIPAの質量)÷(スラリー脱水工程に供給されるスラリー中のIPAの質量)」、又は「(洗浄湿潤ケーク中のIPAの質量)÷(初期スラリー中のIPAの質量)」は少なくとも約0.05、0.10、0.20又は0.30である。好ましくは、「(洗浄湿潤ケーク中の4,4’−DCBの質量)÷(スラリー脱水工程に供給されるスラリー中の4,4’−DCBの質量)」、又は「(洗浄湿潤ケーク中の4,4’−DCBの質量)÷(初期スラリー中の4,4’−DCBの質量)」は少なくとも約0.10、0.20、0.40又は0.60である。好ましくは、「(洗浄湿潤ケーク中の液体の質量)÷(洗浄湿潤ケーク中の固体の質量)」は約0.4、0.3又は0.2未満である。好ましくは、洗浄湿潤ケークは約100、40、20又は10重量ppm未満の総触媒残渣を含む。好ましくは、洗浄湿潤ケークは約20、15、10又は5重量ppm未満のコバルトを含む。好ましくは、洗浄湿潤ケークは約20、15、10又は5重量ppm未満の臭素を含む。
洗浄後、洗浄湿潤ケーク中の液体の質量は追加脱水工程によって低減されて、固体TPA生成物を本質的に含む湿った洗浄ケークを形成するのが好ましい。この脱水工程は、残留濃度の触媒化合物を含む更なる液体を除去し、その後の任意乾燥操作を用いて乾燥固体TPA生成物を形成する場合の必要資本及び必要ネルギーを減少させる。好ましくは、追加脱水工程は、スラリー脱水工程に使用される好ましいフィルタータイプ内に組み込まれた別のゾーンを用いて実施される。より好ましくは、追加脱水工程は、スラリー脱水及び洗浄工程に使用される、連続的に排出し、回転する長尺ベルトフィルター内に組み込まれた別のゾーンを用いて実施される。好ましくは、(湿ったー洗浄ケーク中の液体の質量)÷(湿った洗浄ケーク中の固体の質量)は約0.30、0.20、0.15又は0.07未満である。好ましくは、湿った洗浄ケークは約100、40、20又は10重量ppm未満の触媒総残渣を含む。好ましくは、湿った洗浄ケークは約20、15、10又は5重量ppm未満のコバルトを含む。好ましくは、湿った洗浄ケークは約20、15、10又は5重量ppm未満の臭素を含む。
場合によっては、洗浄湿潤ケーク及び/又は湿った洗浄湿潤ケークは溶媒の蒸発によって乾燥させて、約0.5、0.2、0.1又は0.05重量%未満の残留揮発分を含む実質的に乾燥した固体TPA生成物を形成する。このような乾燥工程は図23には任意乾燥工程908として、図24には任意乾燥工程922として、図25には任意乾燥工程946として、図26には任意乾燥工程962として示されている。このような乾燥後の揮発分の含量は常法に従って、直径5cmのサンプル皿中に均一に広げられたTPA生成物の100gのサンプルを、空気の充分な循環を有するオーブン中でほぼ大気圧で105℃の温度において1時間加熱したときの減量によって測定される。サンプルの揮発分パーセントは、100×[(初期重量−最終重量)/(初期重量)]として計算される。
好ましくは、「(乾燥固体TPA生成物中の少なくとも1種の比較的非反応性の無害芳香族不純物の質量)÷(スラリー脱水工程に供給されるスラリー中の不純物の質量)」又は「(乾燥固体TPA生成物中の少なくとも1種の比較的非反応性の無害芳香族不純物の質量)÷(初期スラリー中の不純物の質量)」は、少なくとも約0.05、0.10、0.20又は0.30である。好ましくは、「(乾燥固体TPA生成物中のIPAの質量)÷(スラリー脱水工程に供給されるスラリー中のIPAの質量)」又は「(乾燥固体TPA生成物中のIPAの質量)÷(初期スラリー中のIPAの質量)」は少なくとも約0.05、0.10,0.20又は0.30である。好ましくは、「(乾燥固体TPA生成物中の4,4’−DCBの質量)÷(スラリー脱水工程に供給されるスラリー中の4,4’−DCBの質量)」又は「(乾燥固体TPA生成物中の4,4’−DCBの質量)÷(初期スラリー中の4,4’−DCBの質量)」は少なくとも約0.10,0.20、0.40又は0.60である。
好ましくは、本明細書中の開示の実施態様によって生成された乾燥固体TPA生成物の色は、約3.5、3.0、2.5又は2.0b*単位未満である。ここで使用されるb*値は、Hunter Ultrascan XE計測器(Hunter Associates Laboratory,Inc.,11491 Sunset Hills Road,Reston,VA 20190−5280,www.hunderlab.com)のような分光装置上で反射モードで測定される1つのカラー属性である。プラスの読み取り値は黄色度(又は青色の吸収度)を表し、マイナスの読み取り値は青色度(又は黄色の吸収度)を表す。好ましくは、本明細書中の開示の実施態様によって生成された固体TPAのパーセント透過率は、340nmの光波長において少なくとも約70、80、90又は92%である。
好ましくは、ここに開示した本発明の実施態様の1つ又はそれ以上によって形成された固体TPA生成物は、D(4,3)である平均粒度が少なくとも約30ミクロン、より好ましくは約35〜約400ミクロンの範囲、更に好ましくは約40〜約200ミクロンの範囲、最も好ましくは45〜120ミクロンの範囲である粒子を本質的に含む。好ましくは、固体TPA生成物は、D(V,0.1)の測定値が約5〜約65ミクロン、より好ましくは約10〜約55ミクロン、最も好ましくは15〜45ミクロンの範囲である粒子を本質的に含む。好ましくは、固体TPA生成物は、D(v,0.5)であるメジアン粒度の測定値が約25〜約200ミクロン、より好ましくは約30〜約120ミクロン、最も好ましくは35〜100ミクロンの範囲である粒子を本質的に含む。好ましくは、固体TPA生成物は、D(v,0.9)の測定値が約40〜約500ミクロン、より好ましくは約60〜約300ミクロン、最も好ましくは80〜200ミクロンの範囲である粒子を本質的に含む。好ましくは、固体TPA生成物は、粒度相対スプレッド(particle size relative spread)の測定値が約0.6〜約5.0、より好ましくは約0.9〜約4.0、最も好ましくは1.2〜2.5の範囲にある粒子を本質的に含む。好ましくは、固体TPA生成物は、平均BET表面積が約0.25m2/g未満、より好ましくは約0.005〜約0.2m2/gの範囲、最も好ましくは0.01〜0.18m2/gの範囲である粒子を本質的に含む。
本発明の一実施態様において、スラリー脱水工程から回収される液体の少なくとも一部は、ここで「再循還溶媒精製工程」と称する、少なくとも1つの補助工程に液体供給材料の少なくとも一部として供給される。好ましくは、再循還溶媒精製工程は、少なくとも1種の比較的非反応性の芳香族不純物の少なくとも約20、40、60若しくは80重量%を再循還溶媒から除去する一方で、液体供給材料中の少なくとも約50、70、90若しくは95重量%の酢酸並びに/又は少なくとも約80、90、95若しくは99重量%のコバルト及び/若しくは他の有益な触媒化合物も回収する。多くのこのような補助工程が先行技術において開示されている。多くの場合、再循還溶媒精製の初期工程は、液体供給材料を加熱して、冷却及び凝縮による回収のために高比率の有益な酢酸を頂部で蒸発させることである。芳香族不純物及び触媒化合物は酢酸より揮発性でなく、これらは、ここで「スラッジ」と称する残りの液相中に濃縮される。スラッジに関しては、触媒化合物を回収すると同時に芳香族不純物を回収又は処分するための種々の選択肢がこれまで開示されている。簡単な方法は、スラッジを焼却して、灰を回収することである。次に、灰中のコバルトを、例えばシュウ酸を使用して、溶液中に再溶解させる。別のスラッジ処理方法は酢酸n−プロピル及び水を抽出剤として用いて、芳香族不純物からコバルトを分離する。分離された芳香族不純物は、BA、IPA及び/若しくは他の芳香族種の回収のための次のプロセスへの供給を含む種々の方法によって又は環境に優しい廃水処理及び/又は灰化によって、処分されることができる。更に別のスラッジ処理方法は、例えば苛性アルカリによって、pHを中和し、次に濾過による回収のために、例えば炭酸ナトリウム及び/又は炭酸水素ナトリウムを用いて、コバルトを沈殿させる。溶解されている芳香族不純物は次に、環境に優しい廃水処理及び/又は焼却を含む種々の方法によって処分される。適当な再循還溶媒精製工程の例としては、米国特許第4,356,319号及び第4,939,297号;米国特許出願公開第2005/0038288号及び第20050084432号;PCT WO98/008605及びWO2005/049873;EP121438;並びに特開平09−15214、特開平05−015788、特開昭54−025292及び特開昭52−004277に開示されたものが挙げられるが、これらに限定するものではない。
本明細書中に開示した実施態様によって好ましくは範囲が狭められるが、再循還溶媒精製工程の必要性及び範囲は、商業用純度のp−キシレン中の不純物及び種々の酸化工程の質を含む(これらに限定するものではないが)非常に多数の項目によって決まる。再循還溶媒精製工程が設けられる場合には、溶媒精製供給材料の選択が工程の経済性に大きな影響を及ぼす可能性がある。比較的非反応性の芳香族不純物(着色しているものと着色していないものの両方)はこの工程の重要な対象であり、それらの比較的高い濃度がこの工程の分級コスト及び運転コストを減少させる。更に、p−キシレン、TPA及び芳香族反応中間体は、比較的多い量で工程に供給される場合には、収率損失及び運転コストを生じる可能性がある。
溶媒精製供給材料は、一次酸化において前に処理され且つ次に酸化的蒸解において処理された液体からその総質量流量の少なくとも約20、40、80又は95重量%を含むのが好ましい。より好ましくは、一次酸化において前に処理され且つ次に、前述のようなより清浄な溶媒の添加を低減及び/又は排除した酸化的蒸解において処理された液体からその総質量流量の少なくとも約20、40、80又は95重量%を含む。更に好ましくは、溶媒精製供給材料は、一次酸化において前に処理され、次により清浄な溶媒の添加を低減及び/又は排除した酸化的蒸解において処理され、次いで更に、より清浄な溶媒の添加を低減及び/又は排除した少なくとも1つの後蒸解冷却工程で処理された液体からその総質量流量の少なくとも約20、40、80又は95重量%を含む。更に好ましくは、溶媒精製供給材料は、一次酸化において処理され、次により清浄な溶媒の添加を低減及び/又は排除した酸化的蒸解において処理され、次いで更に、より清浄な溶媒の添加を低減及び/又は排除した少なくとも1つの後蒸解冷却−エイジング工程で処理された液体からその総質量流量の少なくとも約20、40、80又は95重量%を含む。最も好ましくは、溶媒精製供給材料は、一次酸化において処理され、次に酸化的蒸解において処理され、次いで前述のような溶媒蒸気の蒸発除去を用いた少なくとも1つの後蒸解冷却−エイジング工程で処理された液体からその総質量流量の少なくとも約20、40、80又は95重量%を含む。
好ましくは、溶媒精製供給材料は、溶解TPA及び沈澱固体TPAを含むTPA濃度が約1、0.5、0.1又は0.05重量%未満である。好ましくは、溶媒精製供給材料は、沈澱固体の濃度が約1、0.5、0.1又は0.05重量%未満である。好ましくは、沈澱固体は約1,000ppmw未満、約1〜約600ppmw、約5〜約400ppmw又は10〜200ppmwの固体PTAC濃度を有する。好ましくは、沈澱固体は約1,200ppmw未満、約1〜約800ppmw、約10〜約600ppmw又は20〜400ppmwの固体4−CBA濃度を有する。好ましくは、溶媒精製供給材料は、溶解PTAC及び沈澱固体PTACを含むPTACの濃度が約30、20、10又は2ppmw未満である。好ましくは、溶媒精製供給材料は、溶解4−CBA及び沈澱固体4−CBAを含む4−CBAの濃度が約50、30、10又は2ppmw未満である。好ましくは、前記開示のそれぞれの溶媒精製供給材料は、これに関する全ての開示によれば、好ましいスラリー脱水工程中のスラリーから回収される液体から少なくとも20、40、80又は95重量%を有する。好ましくは、「(溶媒精製供給材料の質量)÷(初期液体の質量)」は約0〜約20、約0.1〜約15、約0.5〜約10又は1〜5%の範囲である。好ましくは、「(溶媒精製供給材料の質量)÷(初期固体の質量)」は約0〜約70、約0.2〜約40、約1〜約25又は2〜15%の範囲である。
本発明の一実施態様において、ここに開示した運転パラメーター(数値定量化された運転パラメーターを含む)の1つ又はそれ以上が、商業的に意味のある期間保持されるのが好ましい。前記運転パラメーターの1つ又はそれ以上に従った運転は、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも約12時間、更に好ましくは少なくとも約36時間、最も好ましくは少なくとも96時間持続される。従って、本明細書中で特に断らない限り、本明細書に記載した運転パラメーターは、定常状態の最適/商業的運転(始動、運転停止又は次善運転ではなく)に適用するためのものである。
本発明者らは、本明細書中に開示した全ての数値範囲に関して、範囲の上限及び下限が互いに独立できることを確認している。例えば、10〜100の数値範囲は、10より大きく且つ/又は100未満であることを意味する。従って、10〜100の範囲は、10より大きいクレーム限定(上限がない)、100未満のクレーム限定(下限がない)及び10〜100の全範囲(上限と下限を有する)をサポートする。更に、用語「約」を用いて数値が修飾される場合には、一実施態様においては数値は正確な数値であることを理解すべきである。
本発明を特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内において変動及び変更が可能なことがわかるであろう。
Claims (50)
- (a)一次酸化ゾーンにおいて多相反応媒体を酸化に供することによって初期スラリーを生成せしめ;
(b)蒸解ゾーンにおいて前記初期スラリーの少なくとも一部を酸化的蒸解に供することによって蒸解生成物スラリーを生成せしめ;
(c)冷却ゾーンにおいて前記蒸解生成物スラリーの少なくとも一部を冷却することによって冷却液相及び固相を含む冷却スラリーを生成せしめ;そして
(d)溶媒精製システムを用いて、それに導入された溶媒精製供給材料中に存在する少なくとも1種の芳香族不純物を除去する(ここで前記冷却スラリーの冷却液相が前記溶媒精製供給材料の少なくとも約20重量%を形成する)
工程を含んでなるポリカルボン酸組成物の製造方法。 - 前記冷却液体が前記溶媒精製供給材料の少なくとも約40重量%を形成する請求項1に記載の方法。
- 前記冷却液体が前記溶媒精製供給材料の少なくとも約80重量%を形成する請求項1に記載の方法。
- 前記蒸解ゾーンから出る前記冷却スラリーの温度が、前記蒸解ゾーンから出る前記蒸解生成物スラリーの温度より少なくとも約40℃低い請求項1に記載の方法。
- 前記蒸解ゾーンから出る前記蒸解生成物スラリーの温度が少なくとも約160℃であり且つ前記蒸解ゾーンから出る前記冷却スラリーの温度が約145℃未満である請求項4に記載の方法。
- 前記冷却が前記蒸解生成物スラリーの質量の少なくとも約10%を蒸発させることを含む請求項1に記載の方法。
- 前記酸化を約125〜約200℃の範囲の温度で実施し、前記酸化的蒸解を前記酸化の実施温度より少なくとも約10℃高い温度で実施する請求項1に記載の方法。
- 前記酸化的蒸解を約160〜約240℃の範囲の温度で実施する請求項7に記載の方法。
- 前記冷却スラリーの少なくとも一部を脱水することによって初期湿潤ケーク及び除去液体を生成せしめることを更に含む請求項1に記載の方法。
- 前記冷却と前記脱水の間の前記冷却スラリーの質量平均滞留時間が約2〜約120分の範囲である請求項9に記載の方法。
- 前記溶媒精製供給材料が前記除去液体の少なくとも一部を含む請求項9に記載の方法。
- [(前記初期湿潤ケーク中の液体の質量)÷(前記初期湿潤ケーク中の固体の質量)]が約0.4未満である請求項9に記載の方法。
- 前記一次酸化ゾーンに溶媒供給材料を導入することを更に含み、前記溶媒供給材料の少なくとも約20重量%が再循還溶媒である請求項1に記載の方法。
- 前記再循還溶媒が前記溶媒精製システムの精製された生成物を含む請求項13に記載の方法。
- 再循還溶媒を用いるテレフタル酸の製造プロセスにおいて、前記酸化を1日の運転の少なくとも1/2の間継続させる請求項1に記載の方法。
- 前記初期スラリーの少なくとも一部を前記蒸解ゾーンに導入する前に、前記初期スラリーの液相の約70重量%未満を前記初期スラリーから除去する請求項1に記載の方法。
- 場合によっては、前記蒸解ゾーン中に初期スラリーを導入する前に、前記初期スラリーにより清浄な液体を添加することを更に含み、前記蒸解ゾーン中に前記初期スラリーを導入する前に前記初期スラリーに添加する前記のより清浄な液体の量が前記初期スラリーの約50重量%未満である請求項1に記載の方法。
- 前記のより清浄な液体中の総触媒化合物及び/又は総芳香族化合物の液相濃度が、重量ベースで、前記初期スラリーの液相中の同一化合物の液相濃度の約50%未満である請求項17に記載の方法。
- 前記溶媒精製供給材料の質量が前記初期スラリーの液相の質量の約0〜約20%の範囲であり且つ/又は前記溶媒精製供給材料の質量が前記初期スラリーの固相の質量の約0〜約70%の範囲である請求項1に記載の方法。
- 前記溶媒精製供給材料が、約30ppmw未満のp−トルイル酸(PTAC)の総液相+固相濃度及び/又は約50ppmw未満の4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)の総固相+液相濃度を有する請求項1に記載の方法。
- 前記溶媒精製供給材料がテレフタル酸から本質的に成る沈澱固体を含み、前記沈澱固体が約1,000ppmw未満のPTAC濃度及び/又は約1,200ppmw未満の4−CBA濃度を有する請求項1に記載の方法。
- (前記初期スラリー中に存在する同一成分の量)に対する(前記蒸解ゾーンに入る蒸解供給材料スラリー中に存在する安息香酸及び/又はコバルトの量)の重量比が少なくとも約0.3である請求項1に記載の方法。
- (前記初期液体中の同一成分の時間平均濃度)に対する(前記蒸解ゾーンに入る蒸解供給材料スラリーの液相中のコバルト及び/又は安息香酸の時間平均濃度)の比が少なくとも約0.5である請求項1に記載の方法。
- 前記蒸解生成物スラリーの液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度が、前記蒸解ゾーン中に導入される蒸解供給材料の液相中のp−トルイル酸の時間平均濃度の約50重量%未満であり;前記蒸解生成物スラリーの液相中の4−CBAの時間平均濃度が、前記蒸解供給材料の液相中の4−CBAの時間平均濃度の約50重量%未満であり;且つ/又は前記蒸解生成物スラリーの固相中の4−CBAの時間平均濃度が、前記蒸解供給材料の固相中の4−CBAの時間平均濃度の約95重量%未満である請求項1に記載の方法。
- 前記蒸解生成物スラリーの代表的サンプルが、固体成分及び液体成分の合計に基づいて、(i)約9,000ppmw未満のイソフタル酸(IPA)を含む、(ii)約15,000ppmw未満の安息香酸(BA)を含む、(iii)約64ppmw未満の4,4’−ジカルボキシビフェニル(4,4’−DCB)を含む、(iv)約70ppmw未満の2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)を含む、(v)約12ppmw未満の2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)を含む、(vi)約12ppmw未満の9−フルオレノン−2−カルボン酸(9F−2CA)を含む、(vii)約4ppmw未満の4,4’−ジカルボキシスチルベン(4,4’−DCS)を含む、(viii)約6ppmw未満の4,4’−ジカルボキシアントラキノン(4,4’−DCA)を含むという特性のうち少なくとも3つを有する請求項1に記載の方法。
- 前記一次酸化ゾーンにおける前記酸化を、前記多相反応媒体が等容積の30個の水平スライスに理論的に分割され、pX−max水平スライスが前記30個全ての水平スライスの最大p−キシレン濃度を有し且つpX−min水平スライスが前記pX−max水平スライスの上方に位置する全ての水平スライスの最小p−キシレン濃度を有し、前記p−キシレン濃度を前記多相反応媒体の液相中で時間平均及び容積平均重量ベースで測定され、(前記pX−min水平スライスのp−キシレン濃度)に対する(前記pX−max水平スライスのp−キシレン濃度)の比が少なくとも約5:1である請求項1に記載の方法。
- 前記一次酸化ゾーンを気泡塔型反応器内に規定する請求項1に記載の方法。
- 前記蒸解ゾーンを連続撹拌槽型反応器内に規定する請求項27に記載の方法。
- 前記の少なくとも1種の芳香族不純物が少なくとも1種の有害芳香族不純物を含む請求項1に記載の方法。
- 前記の少なくとも1種の有害芳香族不純物が安息香酸(BA)、p−トルイル酸(PTAC)、4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)及び/又はトリメリット酸(TMA)を含む請求項29に記載の方法。
- (a)一次酸化ゾーンにおいて多相反応媒体を酸化に供することによって初期スラリーを生成せしめ;
(b)蒸解ゾーンにおいて前記初期スラリーの少なくとも一部を酸化的蒸解に供することによって蒸解生成物スラリーを生成せしめ(ここで前記酸化的蒸解は前記一次酸化の温度より少なくとも約10℃高い温度において実施する);そして
(c)溶媒精製システムを用いて、それに導入された溶媒精製供給材料中に存在する少なくとも1種の芳香族不純物を除去する(ここで前記蒸解生成物スラリーの液相が前記溶媒精製供給材料の少なくとも約20重量%を形成する)
工程を含んでなるポリカルボン酸組成物の製造方法。 - 前記蒸解生成物スラリーの液相が前記溶媒精製供給材料の少なくとも約40重量%を形成する請求項31に記載の方法。
- 前記蒸解生成物スラリーの液相が前記溶媒精製供給材料の少なくとも約80重量%を形成する請求項31に記載の方法。
- 冷却ゾーン中において前記蒸解生成物スラリーの少なくとも一部を冷却することによって冷却液相及び固相を含む冷却スラリーを生成せしめることを更に含む請求項31に記載の方法。
- 前記冷却ゾーンから出る前記冷却スラリーの温度が、前記蒸解ゾーンから出る前記蒸解生成物スラリーの温度よりも少なくとも約40℃低い請求項34に記載の方法。
- 前記冷却が、前記蒸解生成物スラリーの質量の少なくとも約10%を蒸発させることを含む請求項34に記載の方法。
- 前記冷却スラリーの少なくとも一部を脱水することによって初期湿潤ケーク及び除去液体を生成することを更に含む請求項34に記載の方法。
- 前記冷却と前記脱水の間の前記冷却スラリーの質量平均滞留時間が約2〜約120分の範囲である請求項37に記載の方法。
- 前記酸化を約125〜約200℃の範囲の温度で実施し且つ前記酸化的蒸解を約160〜約240℃の範囲の温度で実施する請求項31に記載の方法。
- 前記一次酸化ゾーン中に溶媒供給材料を導入することを更に含み、前記溶媒供給材料の少なくとも約20重量%が再循還溶媒である請求項31に記載の方法。
- 前記再循還溶媒が前記溶媒精製システムの精製された生成物を含む請求項40に記載の方法。
- 再循還溶媒を用いるテレフタル酸の製造プロセスにおいて、前記酸化を1日の運転の少なくとも1/2の間継続させる請求項31に記載の方法。
- 前記初期スラリーの少なくとも一部を前記蒸解ゾーンに導入する前に、前記初期スラリーの液相の約70重量%未満を前記初期スラリーから除去する請求項31に記載の方法。
- 場合によっては、前記蒸解ゾーン中に初期スラリーを導入する前に、前記初期スラリーにより清浄な液体を添加することを更に含み、前記蒸解ゾーン中に前記初期スラリーを導入する前に前記初期スラリーに添加する前記のより清浄な液体の量が前記初期スラリーの約50重量%未満である請求項31に記載の方法。
- 前記溶媒精製供給材料が、約30ppmw未満のp−トルイル酸(PTAC)の総液相+固相濃度及び/又は約50ppmw未満の4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)の総固相+液相濃度を有する請求項31に記載の方法。
- 前記溶媒精製供給材料がテレフタル酸から本質的に成る沈澱固体を含み、前記沈澱固体が約1,000ppmw未満のPTAC濃度及び/又は約1,200ppmw未満の4−CBA濃度を有する請求項31に記載の方法。
- (前記初期スラリー中に存在する同一成分の量)に対する(前記蒸解ゾーンに入る蒸解供給材料スラリー中に存在する安息香酸及び/又はコバルトの量)の重量比が少なくとも約0.3である請求項31に記載の方法。
- (前記初期液体中の同一成分の時間平均濃度)に対する(前記蒸解ゾーンに入る蒸解供給材料スラリーの液相中のコバルト及び/又は安息香酸の時間平均濃度)の比が少なくとも約0.5である請求項31に記載の方法。
- 前記一次酸化ゾーンを気泡塔型反応器内に規定する請求項31に記載の方法。
- 前記蒸解ゾーンを連続撹拌槽型反応器内に規定する請求項49に記載の方法。
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