JP2008511665A - 最適化液相酸化 - Google Patents

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Abstract

被酸化性化合物の液相酸化をより効率的で且つ経済的に実施するための最適化方法及び装置が開示される。このような液相酸化は、比較的低温で高効率の反応を実現する気泡塔型反応器中で実施される。被酸化性化合物がp−キシレンであり且つ酸化反応からの生成物が粗製テレフタル酸(CTA)である場合には、このようなCTA生成物は、CTAが従来の高温酸化方法によって生成されたならば使用されたであろう方法よりも経済的な手法によって精製及び分離することができる。

Description

本発明は一般に芳香族化合物の液相接触酸化方法に関する。本発明の一態様は、ジアルキル芳香族化合物(例えばp−キシレン)の部分酸化による、その後に精製及び分離に供されることができる粗製芳香族ジカルボン酸(例えば粗製テレフタル酸)の製造に関する。本発明の別の態様は、より効率的且つ経済的な液相酸化方法を実現する、改良された気泡塔型反応器に関する。
液相酸化反応は従来の種々の既存の商業的方法において用いられている。例えば、液相酸化は、アルデヒドの酸への酸化(例えばプロピオンアルデヒドのプロピオン酸への酸化)、シクロヘキサンのアジピン酸への酸化及びアルキル芳香族炭化水素のアルコール、酸又は二酸への酸化のために現在使用されている。後者のカテゴリ(アルキル芳香族炭化水素の酸化)における特に重要な商業的酸化方法はp−キシレンのテレフタル酸への液相接触部分酸化である。テレフタル酸は種々の用途を有する重要な化合物である。テレフタル酸の主な用途はポリエチレンテレフタレート(PET)の製造における供給原料としての使用である。PETはボトル、繊維及びパッケージのような製品を製造するために世界中で多量に用いられている公知のプラスチックである。
p−キシレンのテレフタル酸への部分酸化を含む典型的な液相酸化方法においては、液相供給流及び気相酸化剤流を反応器中に導入し、反応器中に多相反応媒体を形成する。反応器中に導入される液相供給流は少なくとも1種の被酸化性(oxidizable)有機化合物(例えばp−キシレン)を含み、一方気相酸化剤流は分子状酸素を含む。反応器中に気体として導入される分子状酸素の少なくとも一部は、反応媒体の液相中に溶解して、液相反応に酸素利用可能性を提供する。多相反応媒体の液相が不充分な濃度の分子状酸素を含む場合には(即ち、反応媒体の或る部分が「酸素欠乏状態(oxygen-starved)である」場合には)、不所望な副反応が不純物を生じるおそれがあり且つ/又は目的とする反応が遅くなる可能性がある。反応媒体の液相に含まれる被酸化性化合物が少なすぎる場合には、反応速度は不所望に遅くなる可能性がある。更に、反応媒体の液相が過剰な濃度の被酸化性化合物を含む場合には、更なる不所望な副反応が不純物を生じるおそれがある。
従来の液相酸化反応器には、中に含まれる多相反応媒体を混合するための撹拌手段が装着される。反応媒体の撹拌は、反応媒体の液相への分子状酸素の溶解を促進し、反応媒体の液相中に比較的均一な濃度の溶存酸素を保持し、且つ反応媒体の液相中に比較的均一な濃度の被酸化性有機化合物を保持するために提供される。
液相酸化を受ける反応媒体の撹拌は、例えば連続撹拌槽型反応器(CSTR)のような容器中で機械的撹拌手段によって提供されることが多い。CSTRは反応媒体の充分な混合を提供するが、多くの欠点を有する。例えば、CSTRは、高価なモーター、流体シールベアリング及び駆動軸を必要とするため、比較的高い資本コストがかかる。更に、従来のCSTRの回転及び/又は振動する機械部品は定期保守を必要とする。このような保守に付随する労働力及び運転停止が、CSTRの運転コストを増加させる。しかし、定期保守を行ったとしても、CSTRに使用される機械的撹拌システムは、機械的に故障しやすく、比較的短い期間で交換が必要となる可能性がある。
気泡塔型反応器(bubble column reactor)は、CSTR及び他の機械的撹拌酸化反応器の魅力的な代替手段を提供する。気泡塔型反応器は、高価で信頼性の低い機械的装置を必要とせずに、反応媒体の撹拌を実現する。気泡塔型反応器は、典型的には、反応媒体を内部に含む細長い直立反応ゾーンを含む。反応ゾーン中における反応媒体の撹拌は主に反応媒体の液体相を通って上昇する気泡の自然浮揚性(natural buoyance)によってもたらされる。気泡塔型反応器中に生じるこの自然浮揚性撹拌は、機械的撹拌反応器に比較して資本コスト及び維持費を減少させる。更に、気泡塔型反応器には動く機械部品が実質的に関係しないため、機械的撹拌反応器よりも機械的に故障しにくい酸化システムが提供される。
p−キシレンの液相部分酸化を従来の酸化反応器(CSTR又は気泡塔)中で実施する場合には、反応器から回収された生成物は典型的には粗製テレフタル酸(CTA)及び母液を含むスラリーである。CTAは比較的高レベルの不純物(例えば4−カルボキシベンズアルデヒド、p−トルイル酸、フルオレノン類及び他の色素体)を含むので、PET製造用の供給原料としては不適当である。従って、従来の酸化反応器において製造されたCTAは典型的にはPETの製造に適した精製テレフタル酸(PTA)にCTAを転化する精製プロセスに供される。
CTAをPTAに転化するための1つの典型的な精製方法は以下の工程を含む:(1)CTA含有スラリーの母液を水で置換し;(2)CTA/水スラリーを加熱して、CTAを水中に溶解させ;(3)CTA/水溶液を接触水素化して、不純物をより望ましく且つ/又は分離し易い化合物に転化し;(4)得られたPTAを水素化溶液から多数の結晶化工程によって沈殿させ、そして(5)結晶化したPTAを残りの液体から分離する。この型の従来の精製方法は効果的ではあるが、非常に高価である可能性がある。従来のCTA精製方法の高いコストの一因となる個々の要因には、例えば、水中へのCTAの溶解を促進するのに必要な熱エネルギー、水素化に必要な触媒、水素化に必要な水素流、一部のテレフタル酸の水素化によって引き起こされる収率損失及び多段結晶化に必要な多数の容器がある。従って、水中への熱促進溶解、水素化及び/又は多段結晶化を必要とせずに、精製することができるCTA製品を提供できれば望ましいであろう。
従って、本発明の1つの目的は、より効率的で且つ経済的な液相酸化反応器及び方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、p−キシレンのテレフタル酸への液相接触部分酸化のためのより効率的で且つ経済的な反応器及び方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、改良された液相酸化反応を促進すると共に不純物の形成を減少させる気泡塔型反応器を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、p−キシレンの液相酸化による粗製テレフタル酸(CTA)の生成とそれに続くCTAのPTAへの精製によって純粋なテレフタル酸(PTA)を製造するための、より効率的で且つ経済的なシステムを提供することにある。
本発明の更に別の目的は、p−キシレンを酸化し、そしてCTAの水への熱促進溶解、溶解CTAの水素化及び/又は水素化PTAの多段結晶化を必要とせずに、精製することができるCTA製品を製造するための気泡塔型反応器を提供することにある。
添付した「特許請求の範囲」において規定される本発明の範囲は、前記の目的の全てを実現できる方法又は装置に限定するのではないことに留意されたい。むしろ、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲は、前記目的の全て又はいずれかを達成しない種々の系を包含できる。本発明のその他の目的及び利点は、以下の詳細な説明及び関連した図面を見れば、当業者により明白になるであろう。
本発明の一実施態様は、以下の工程:(a)p−キシレンを含む供給流を初期酸化反応器の反応ゾーン中に導入し(ここで前記供給流は、以下の特性:(i)前記p−キシレンの約20〜約800重量百万分率(ppmwpX)の範囲の量のm−キシレンを含み、(ii)約20〜約200ppmwpXの範囲の量のo−キシレンを含み、(iii)約50〜約900ppmwpXの範囲の量の、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの組合せを含むことの1つ又はそれ以上を有する);そして(b)前記反応ゾーンに含まれる多相反応媒体の液相中において前記p−キシレンの少なくとも一部を酸化させることを含む方法に関する。
本発明の別の実施態様は、以下の工程:(a)p−キシレンを含む供給流を気泡塔型反応器医の反応ゾーン中に導入し(ここで前記供給流はp−キシレンの約800重量百万分率(ppmwpX)未満の量のm−キシレンを含み、前記供給流は約10〜約200ppmwpXの範囲の量のo−キシレンを含み、前記供給流は約1,600ppmwpX未満の量の、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの組合せを含む);(b)前記反応ゾーン中に含まれる三相反応媒体の液相中で前記p−キシレンの少なくとも一部を酸化させることによって粗製テレフタル酸を生成させ;そして(c)二次酸化反応器中で前記粗製テレフタル酸の少なくとも一部を酸化させることによって、より純粋なテレフタル酸を生成させることを含む方法に関する。
本発明の好ましい実施態様を、添付図面の図に関して以下に詳細に記載する。添付図面中において、
図1は、本発明の一実施態様に従って構築された酸化反応器の側面図であり、反応器中への供給流、酸化剤流及び還流の導入、反応器中における多相反応媒体の存在並びに反応器の頂部(top)及び底部(bottom)のそれぞれからの気体及びスラリーの回収を特に示し;
図2は、図3のライン2−2に沿った気泡塔型反応器の底部の拡大側断面図であり、反応器への酸化剤流の導入に使用される酸化剤スパージャーの位置及び構造を特に示し;
図3は、図2の酸化剤スパージャーの上面図であり、酸化剤スパージャー頂部の酸化剤用開口部を特に示し;
図4は、図2の酸化剤スパージャーの底面図であり、酸化剤スパージャーの底部の開口部を特に示し;
図5は、図3のライン5−5に沿った酸化剤スパージャーの側断面図であり、酸化剤スパージャーの頂部及び底部の酸化剤用開口部の幾何学的配置を特に示し;
図6は、気泡塔型反応器の底部の拡大側面図であり、垂直方向に間隔をあけられた複数の位置において反応器中へ供給流を導入するためのシステムを特に示し;
図7は、図6のライン7−7に沿った上断面図であり、図6に示される供給材料導入システムが好ましい半径方向供給ゾーン(FZ)及び方位角の1つより多いクアドラント(Q1、Q2、Q3、Q4)に供給流を分配する様子を特に示し;
図8は、図7と同様な上断面図であるが、多数の小さい供給開口部をそれぞれ有するバヨネットチューブを用いて反応器中に供給流を排出するための代替手段を示し;
図9は、多数の容器貫通を必要とせずに垂直方向に間隔をあけられた複数の位置において反応ゾーン中に供給流を導入するための代替システムの等角図であり、供給材料分配システムが酸化剤スパージャー上で少なくとも部分的に支持され得ることを示し;
図10は、図9に示された貫通が1つの供給材料分配システム及び酸化剤スパージャーの側面図であり;
図11は、酸化剤スパージャー上において支持された貫通が1つの供給材料分配系を更に示す、図10のライン11−11に沿った上断面図であり;
図12は、酸化剤用開口部の全てがリング部材の底部に配置された代替酸化剤スパージャーの等角図であり;
図13は、図12の代替酸化剤スパージャーの上面図であり;
図14は、図12の代替酸化剤スパージャーの底面図であり、反応ゾーン中に酸化剤流を導入するための底部開口部の位置を特に示し;
図15は、図13のライン15−15に沿った酸化剤スパージャーの側断面図であり、下方の酸化剤用開口部の幾何学的配置を特に示し;
図16は、反応器の底部出口近くに内部脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図17は、図18のライン17−17に沿った図16の気泡塔型反応器の下部(lower portion)の拡大側断面図であり、気泡塔型反応器の底部出口に配置された内部脱気容器の形状を特に示し;
図18は、図16のライン18−18に沿った上断面図であり、脱気容器中に配設されたボルテックスブレーカーを特に示し;
図19は、外部脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり、脱気容器の底部から出る脱気されたスラリーの一部が、反応器の底部に連結されたデ−インベントリー・ライン(de-inventorying line)を流し出すのに用いられる様子を示し;
図20は、反応器の側部の高い位置から回収される反応媒体の気相を離脱させるための内部/外部複合型脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図21は、反応器の底部近くに代替複合型脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図であり;
図22は、図21の気泡塔型反応器の下部の拡大側断面図であり、反応器の底部ヘッドを通して酸化剤流を受ける入口導管を用いる代替酸化剤スパージャーの使用を特に示し;
図23は、図22と同様な拡大側断面図であり、反応器中において酸化剤流をより均一に分配するための衝突板を場合によっては用いて、反応器の下部ヘッド中の多数の開口部を経て反応器中に酸化剤流を導入するための代替手段を特に示し;
図24は、反応器の上部(upper portion)から反応器の下部に反応媒体の一部を循環させることによって被酸化性化合物の分散の改善に役立つ内部流通導管を用いる気泡塔型反応器の側面図であり;
図25は、反応器の上部から反応器の下部に反応媒体の一部を循環させることによって被酸化性化合物の分散の改善に役立つ外部流通導管を用いる気泡塔型反応器の側面図であり;
図26は、酸化反応器内における被酸化性化合物の分散を改良するために使用できる横型エダクターの側断面図であり、反応媒体をエダクター中に引き込むために流入液体供給材料を用い且つ供給材料と反応媒体との混合物を高速で反応ゾーン中に排出するエダクターを特に示し;
図27は、酸化反応器中における被酸化性化合物の分散を改良するために使用できる縦型エダクターの側断面図であり、液体供給材料と流入ガスを合し、そして合した二相流体を用いて、反応媒体をエダクター中に引き込み且つ液体供給材料、流入気体及び反応媒体の混合物を高速で反応ゾーン中に排出するエダクターを特に示し;
図28は、多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図であり、反応媒体中のいくつかの勾配を定量化するために等容積の30個の水平スライスに理論的に分割されている反応媒体を特に示し;
図29は、多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図であり、かなり異なる酸素濃度及び/又は酸素消費速度を有する、第1及び第2の独立した20%連続容量の反応媒体を特に示し;
図30は、任意の機械的撹拌を用いる又は用いない、多相反応媒体を含む2つの積み重ね反応器の側面図であり、反応器が、かなり異なる酸素濃度及び/又は酸素消費速度を有する、独立した20%連続容量の反応媒体を含むことを特に示し;
図31は、任意の機械的撹拌を用いる又は用いない、多相反応媒体を含む3つの並列反応器の側面図であり、反応器が、かなり異なる酸素濃度及び/又は酸素消費速度を有する、独立した20%連続容量の反応媒体を含むことを特に示し;
図32A及び32Bは、本発明の一実施態様に従って製造された粗製テレフタル酸(CTA)粒子の拡大図であり、各CTA粒子が、多数の緩く結合したCTA子粒子から成る低密度高表面積の粒子であることを特に示し;
図33A及び33Bは、常法に従って製造されたCTAの拡大図であり、従来のCTA粒子は、図32A及び32Bの本発明のCTA粒子よりも粒度が大きく、密度が低く且つ表面積が小さいことを特に示し;
図34は、先行技術の精製テレフタル酸(PTA)の製造方法の簡略化した工程系統図であり;そして
図35は、本発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図である。
本発明の一実施態様は被酸化性化合物の液相部分酸化に関する。このような酸化は、好ましくは1つ又はそれ以上の撹拌反応器中に含まれる多相反応媒体の液相中で行う。適当な撹拌反応器としては、例えば気泡撹拌反応器(例えば気泡塔型反応器)、機械的撹拌反応器(例えば連続撹拌漕型反応器)及び流動撹拌反応器(例えばジェット反応器)が挙げられる。本発明の一実施態様において液相酸化は単一の気泡塔型反応器中で実施する。
本明細書中で使用する用語「気泡塔型反応器」は、反応撹拌が、主に反応媒体を通る気泡の上向きの移動によって提供される、多相反応媒体中で化学反応を促進するための反応器を意味するものとする。本明細書中で使用する用語「撹拌」は、流体の流れ及び/又は混合を引き起こす反応媒体中に放散される仕事を意味するものとする。本明細書中で使用する用語「大部分」、「主に」及び「主として」は、50%超を意味するものとする。本明細書中で使用する用語「機械的撹拌」は、反応媒体に逆らう又は反応媒体内部における1つ又は複数の硬質又は軟質要素の物理的移動によって引き起こされる反応媒体の撹拌を意味するものとする。例えば、機械的撹拌は、反応媒体中に配置された内部撹拌機、パドル、バイブレーター又は音響振動板の回転、往復運動(oscillation)及び/又は振動(vibration)によって提供されることができる。本明細書中で使用する用語「流動撹拌」は、反応媒体中の1種又はそれ以上の流体の高速噴射及び/又は再循環によって引き起こされる反応媒体の撹拌を意味するものとする。例えば、流動撹拌は、ノズル、エジェクター及び/又はエダクターによって提供されることができる。
本発明の好ましい実施態様においては、酸化の間における気泡塔型反応器中の反応媒体の撹拌の約40%未満、より好ましくは約20%未満、最も好ましくは5%未満が、機械的及び/又は流動撹拌によって提供される。好ましくは、酸化の間に多相反応媒体に与えられる機械的及び/又は機械的撹拌の量は、反応媒体立方メートル当たり約3キロワット未満、より好ましくは反応媒体立方メートル当たり約2キロワット未満、最も好ましくは反応媒体立方メートル当たり1キロワット未満である。
図1を参照すると、好ましい気泡塔型反応器20が、反応セクション24及び離脱セクション(disengagement section)26を有する容器シェル22を含むものとして示されている。反応セクション24は内部反応ゾーン28を規定し、離脱セクション26は内部離脱ゾーン30を規定する。主として液相の供給流は、供給口32a、b、c及びdを経て反応ゾーン28に導入される。主として気相の酸化剤流は、反応ゾーン28の下部部分に配置された酸化剤スパージャー34を経て反応ゾーン28に導入される。液相供給材料流及び気相酸化剤流は共同で反応ゾーン28内に多相反応媒体36を形成する。多相反応媒体36は、液相と気相を含む。より好ましくは多相反応媒体36は、固相、液相及び気相成分を有する三相媒体を含む。反応媒体36の固相成分は好ましくは、反応媒体36の液相中で行われる酸化反応の結果として反応ゾーン28内に沈殿する。気泡塔型反応器20は、反応ゾーン28の底部近くに配置されたスラリー出口38及び離脱ゾーン30の頂部近くに配置された気体出口40を含む。反応媒体36の液相成分及び固相成分を含むスラリー流出物は、スラリー出口38を経て反応ゾーン28から回収され、主として気体の流出物は気体出口40を経て離脱ゾーン30から回収される。
供給口32a、b、c及びdを経て気泡塔型反応器20中に導入される液相供給流は好ましくは、被酸化性化合物、溶媒及び触媒系を含む。
液相供給流中に存在する被酸化性化合物は好ましくは、少なくとも1個のヒドロカルビル基を含む。より好ましくは、被酸化性化合物は芳香族化合物である。更に好ましくは、被酸化性化合物は、少なくとも1個の結合したヒドロカルビル基又は少なくとも1個の結合した置換ヒドロカルビル基又は少なくとも1個の結合したヘテロ原子又は少なくとも1個の結合したカルボン酸基(−COOH)を有する芳香族化合物である。更に好ましくは、被酸化性化合物は、少なくとも1個の結合したヒドロカルビル基又は少なくとも1個の結合した置換ヒドロカルビル基を有し且つ各結合基が1〜5個の炭素原子を有する芳香族化合物である。更に好ましくは、被酸化性化合物は、ちょうど2個の結合基を有する芳香族化合物であって、各結合基は、ちょうど1個の炭素原子を含み且つメチル基及び/又は置換メチル基及び/又は最大限でも1個のカルボン酸基を含む。更に好ましくは、被酸化性化合物は、p−キシレン、m−キシレン、p−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルイル酸、m−トルイル酸及び/又はアセトアルデヒドである。最も好ましくは、被酸化性化合物はp−キシレンである。
ここで定義する「ヒドロカルビル基」は、水素原子又は他の炭素原子にのみ結合した少なくとも1個の炭素原子である。ここで定義する「置換ヒドロカルビル基」は、少なくとも1個のヘテロ原子及び少なくとも1個の水素原子に結合した少なくとも1個の炭素原子である。ここで定義する「ヘテロ原子」は、炭素及び水素原子以外の全ての原子である。ここで定義する芳香族化合物は芳香環、好ましくは環の一部として少なくとも6個の炭素原子を有する、より好ましくは炭素原子のみを有する芳香環を含む。このような芳香環の適当な例としては、例えばベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン及び他の炭素系縮合芳香環が挙げられるが、これらに限定するものではない。
被酸化性化合物の適当な例は以下のものを含む。脂肪族炭化水素(例えばアルカン、分岐鎖アルカン、環状アルカン、脂肪族アルケン、分岐鎖アルケン及び環状アルケン);脂肪族アルデヒド(例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド及びn−ブチルアルデヒド);脂肪族アルコール(例えばエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、及びイソブタノール);脂肪族ケトン(例えばジメチルケトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン及びイソプロピルメチルケトン);脂肪族エステル(例えば蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル);脂肪族過酸化物、過酸及びヒドロペルオキシド(例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、過酢酸及びジ−t−ブチルヒドロペルオキシド);前記脂肪族種と他のヘテロ原子との組合せである基を有する脂肪族化合物(例えば炭化水素、アルデヒド、アルコール、ケトン、エステル、ペルオキシド、過酸及び/又はヒドロペルオキシドの1個又はそれ以上の分子セグメントを、ナトリウム、臭素、コバルト、マンガン及びジルコニウムと共に含む脂肪族化合物);1個又はそれ以上の結合したヒドロカルビル基を有する種々のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、テルフェニル及び他の芳香族基(例えばトルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、ネオペンチルベンゼン、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、トリメチルベンゼンの全ての異性体、テトラメチルベンゼンの全ての異性体、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、エチル−メチルベンゼンの全ての異性体、ジエチルベンゼンの全ての異性体、エチル−ジメチルベンゼンの全ての異性体、ジメチルナフタレンの全ての異性体、エチル−メチルナフタレンの全ての異性体、ジエチルナフタレンの全ての異性体、ジメチルビフェニルの全ての異性体、エチル−メチルビフェニルの全ての異性体、並びにスチルベン及び1個又はそれ以上の結合ヒドロカルビル基を有するスチルベン、フルオレン及び1個又はそれ以上の結合ヒドロカルビル基を有するフルオレン、アントラセン及び1個又はそれ以上の結合ヒドロカルビル基を有するアントラセン並びにジフェニルエタン及び1個又はそれ以上の結合ヒドロカルビル基を有するジフェニルエタン);他の原子又は原子の基に接続できる、1個若しくはそれ以上の結合ヒドロカルビル基及び/又は1個若しくはそれ以上の結合ヘテロ原子を有する種々のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、テルフェニル及び他の芳香族基(例えばフェノール、メチルフェノールの全ての異性体、ジメチルフェノールの全ての異性体、ナフトールの全ての異性体、ベンジルメチルエーテル、ブロモフェノールの全ての異性体、ブロモベンゼン、α―ブロモトルエンを含むブロモトルエンの全ての異性体、ジブロモベンゼン、コバルトナフタレン及びブロモビフェニルの全ての異性体);1個若しくはそれ以上の結合したヒドロカルビル基及び/又は1個若しくはそれ以上の結合したヘテロ原子及び/又は1個若しくはそれ以上の結合した置換ヒドロカルビル基を有する種々のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、テルフェニル及び他の芳香族基(例えばベンズアルデヒド、ブロモベンズアルデヒドの全ての異性体、α−ブロモトルアルデヒドの全ての異性体を含む臭素化トルアルデヒドの全ての異性体、ヒドロキシベンズアルデヒドの全ての異性体、ブロモ−ヒドロキシベンズアルデヒドの全ての異性体、ベンゼンジカルボキシアルデヒドの全ての異性体、ベンゼントリカルボキシアルデヒドの全ての異性体、p−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、o−トルアルデヒド、トルエンジカルボキシアルデヒドの全ての異性体、トルエントリカルボキシアルデヒドの全ての異性体、トルエンテトラカルボキシアルデヒドの全ての異性体、ジメチルベンゼンジカルボキシアルデヒドの全ての異性体、ジメチルベンゼントリカルボキシアルデヒドの全ての異性体、ジメチルベンゼンテトラカルボキシアルデヒドの全ての異性体、トリメチルベンゼントリカルボキシアルデヒドの全ての異性体、エチルトルアルデヒドの全ての異性体、トリメチルベンゼンジカルボキシアルデヒドの全ての異性体、テトラメチルベンゼンジカルボキシアルデヒド、ヒドロキシメチル−ベンゼン、ヒドロキソメチル−トルエンの全ての異性体、ヒドロキシメチル−ブロモトルエンの全ての異性体、ヒドロキシメチル−トルアルデヒドの全ての異性体、ヒドロキシメチル−ブロモトルアルデヒドの全ての異性体、ベンジルヒドロペルオキシド、ベンゾイルヒドロペルオキシド、トリルメチル−ヒドロペルオキシドの全ての異性体及びメチルフェノールメチル−ヒドロペルオキシドの全ての異性体);1個若しくはそれ以上の結合された選択基(選択基とは、ヒドロカルビル基及び/又は結合されたヘテロ原子及び/又は置換ヒドロカルビル基及び/又はカルボン酸基及び/又はペルオキシ酸基を意味する)を有する種々のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、テルフェニル及び他の芳香族基(例えば安息香酸、p−トルイル酸、m−トルイル酸、o−トルイル酸、エチル安息香酸の全ての異性体、プロピル安息香酸の全ての異性体、ブチル安息香酸の全ての異性体、ペンチル安息香酸の全ての異性体、ジメチル安息香酸の全ての異性体、エチルメチル安息香酸の全ての異性体、トリメチル安息香酸の全ての異性体、テトラメチル安息香酸の全ての異性体、ペンタメチル安息香酸、ジエチル安息香酸の全ての異性体、ベンゼンジカルボン酸の全ての異性体、ベンゼントリカルボン酸の全ての異性体、メチルベンゼンジカルボン酸の全ての異性体、ジメチルベンゼンジカルボン酸の全ての異性体、メチルベンゼントリカルボン酸の全ての異性体、ブロモ安息香酸の全ての異性体、ジブロモ安息香酸の全ての異性体、α−ブロモトルイル酸を含むブロモトルイル酸の全ての異性体、トリル酢酸、ヒドロキシ安息香酸の全ての異性体、ヒドロキシメチル−安息香酸の全ての異性体、ヒドロキシトルイル酸の全ての異性体、ヒドロキシメチル−トルイル酸の全ての異性体、ヒドロキシメチル−ベンゼンジカルボン酸の全ての異性体、ヒドロキシブロモ安息香酸の全ての異性体、ヒドロキシブロモトルイル酸の全ての異性体、ヒドロキシメチル−ブロモ安息香酸の全ての異性体、カルボキシベンズアルデヒドの全ての異性体、ジカルボキシベンズアルデヒドの全ての異性体、過安息香酸、ヒドロペルオキシメチル−安息香酸の全ての異性体、ヒドロペルオキシメチル−ヒドロキシ安息香酸の全ての異性体、ヒドロペルオキシカルボニル−安息香酸の全ての異性体、ヒドロペルオキシカルボニル−トルエンの全ての異性体、メチルビフェニルカルボン酸の全ての異性体、ジメチルビフェニルカルボン酸の全ての異性体、メチルビフェニルジカルボン酸の全ての異性体、ビフェニルトリカルボン酸の全ての異性体、1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するスチルベンの全ての異性体、1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するフルオレノンの全ての異性体、1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するナフタレンの全ての異性体、ベンジル、1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するベンジルの全ての異性体、ベンゾフェノン、1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するベンゾフェノンの全ての異性体、アントラキノン、1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するアントラキノンの全ての異性体、1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するジフェニルエタンの全ての異性体、ベンゾクマリン及び1個若しくはそれ以上の結合した選択基を有するベンゾクマリンの全ての異性体)。
液相供給流中に存在する被酸化性化合物が、常態では固体の(即ち標準温度及び圧力で固体の)化合物である場合には、被酸化性化合物は、反応ゾーン28に導入されると、溶媒中に実質的に溶解されるのが好ましい。大気圧における被酸化性化合物の沸点は少なくとも約50℃であるのが好ましい。より好ましくは、被酸化性化合物の沸点は、約80〜約400℃、最も好ましくは125〜155℃の範囲である。液相供給材料中に存在する被酸化性化合物の量は、好ましくは約2〜約40重量%、より好ましくは約4〜約20重量%、最も好ましくは6〜15重量%の範囲である。
液相供給材料中に存在する被酸化性化合物は2種又はそれ以上の異なる被酸化性化学物質の組合せを含むことが注目される。これらの2種又はそれ以上の異なる化学物質は、液相供給流中に混ぜ合わせて供給することもできるし、或いは複数の供給流で別々の供給することもできる。例えば、p−キシレン、m−キシレン、p−トルアルデヒド、p−トルイル酸及びアセトアルデヒドを含む被酸化性化合物は、単一の入口又は複数の別々の入口を経て反応器に供給することができる。
液相供給流中に存在する溶媒は、好ましくは酸成分及び水成分を含む。溶媒は、好ましくは液相供給流中に約60〜約98重量%、より好ましくは約80〜約96重量%、最も好ましくは85〜94重量%の範囲の濃度で存在する。溶媒の酸成分は、好ましくは主に、炭素数1〜6の、より好ましくは炭素数2の有機低分子量モノカルボン酸である。最も好ましくは、溶媒の酸成分は主に酢酸である。好ましくは、酸成分は溶媒の少なくとも約75重量%、より好ましくは溶媒の少なくとも約80重量%、最も好ましくは溶媒の85〜98重量%を構成し、残りは主に水である。気泡塔型反応器20に導入される溶媒は、少量の不純物、例えばp−トルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、安息香酸、p−トルイル酸、p−トルイル酸アルデヒド、α−ブロモ−p−トルイル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、多環芳香族炭化水素及び/又は浮遊粒子を含むことができる。気泡塔型反応器20中に導入される溶媒中の不純物の総量は約3重量%未満であるのが好ましい。
液相供給流中に存在する触媒系は、好ましくは被酸化性化合物の酸化(部分酸化を含む)を促進できる均一液相触媒系である。より好ましくは、触媒系は、少なくとも1種の多価遷移金属を含む。更に好ましくは、多価遷移金属はコバルトを含む。更に好ましくは、触媒系はコバルト及び臭素を含む。最も好ましくは、触媒系はコバルト、臭素及びマンガンを含む。
コバルトが触媒系中に存在する場合には、液相供給流中に存在するコバルトの量は、反応媒体36の液相中のコバルト濃度が約300〜約6,000重量百万分率(ppmw)、より好ましくは約700〜約4,200ppmw、最も好ましくは1,200〜3,000ppmwの範囲に保持されるような量であるのが好ましい。臭素が触媒系中に存在する場合には、液相供給流中に存在する臭素の量は、反応媒体36の液相中の臭素濃度が約300〜約5,000ppmw、より好ましくは約600〜約4,000ppmw、最も好ましくは900〜3,000ppmwの範囲に保持されるような量であるのが好ましい。マンガンが触媒系中に存在する場合には、液相供給流中に存在するマンガンの量は、反応媒体36の液相中のマンガン濃度が約20〜約1,000ppmw、より好ましくは約40〜約500ppmw、最も好ましくは50〜200ppmwの範囲に保持されるような量であるのが好ましい。
前に示した、反応媒体36の液相中のコバルト、臭素及び/又はマンガンの濃度は、時間平均及び容量平均で表されている。ここで使用する用語「時間平均」は、少なくとも100秒の連続期間にわたって同様に取られた少なくとも10個の測定値の平均を意味するものとする。ここで使用する「容量平均」は、ある容量全体にわたって均一な三次元間隔で取られた少なくとも10個の平均を意味するものとする。
反応ゾーン28中に導入される触媒系中のコバルト対臭素の重量比(Co:Br)は好ましくは約0.25:1〜約4:1、より好ましくは約0.5:1〜約3:1、最も好ましくは0.75:1〜2:1の範囲である。反応ゾーン28中に導入される触媒系中のコバルト対マンガンの重量比(Co:Mn)は好ましくは約0.3:1〜約40:1、より好ましくは約5:1〜約30:1、最も好ましくは10:1〜25:1の範囲である。
気泡塔型反応器20に導入される液相供給流は少量の不純物、例えばトルエン、エチルベンゼン、p−トルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、安息香酸、p−トルイル酸、p−トルアルデヒド、α−ブロモ−p−トルイル酸、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、多環芳香族炭化水素、及び/又は浮遊粒子を含むことができる。気泡塔型反応器20をテレフタル酸の製造に用いる場合には、m−キシレン及びo−キシレンも不純物と見なされる。気泡塔型反応器20中に導入される液相供給流中の不純物の総量は約3重量%未満であるのが好ましい。
図1は、被酸化性化合物、溶媒及び触媒系を一緒に混合して、単一供給流として気泡塔型反応器20に導入する一態様を示すが、本発明の別の実施態様においては、被酸化性化合物、溶媒及び触媒は気泡塔型反応器20中に別々に導入することができる。例えば純粋なp−キシレン流は溶媒及び触媒の入口とは別の入口を介して気泡塔型反応器20中に供給できる。
酸化剤スパージャー34を経て気泡塔型反応器20中に導入される、主として気相の酸化剤流は、分子状酸素(O2)を含む。好ましくは、酸化剤流は約5〜約40モル%、より好ましくは約15〜約30モル%、最も好ましくは18〜24モル%の範囲の酸素分子を含む。酸化剤流の残りは、酸化に不活性な窒素のような1種又はそれ以上の気体から主になるのが好ましい。より好ましくは、酸化剤流は分子状酸素及び窒素から本質的になる。最も好ましくは、酸化剤流は、約21モル%の分子状酸素及び約78〜約81モル%の窒素を含む乾燥空気である。本発明の別の実施態様において、酸化剤流は、実質的に純粋な酸素を含むことができる。
再び図1を参照すると、気泡塔型反応器20には、好ましくは反応媒体36の上面44の上方に還流分配器42が装着される。還流分配器42は、公知の任意の液滴形成手段によって離脱ゾーン30中に主として液相の還流の液滴を導入する働きをする。より好ましくは、還流分配器42は、反応媒体36の上面44に向かって下方に向けられた液滴の噴霧を生じる。好ましくは、この下向きの液滴噴霧は、離脱ゾーン30の最大水平断面積の少なくとも約50%に作用する(即ち、関与して、影響を与える)。より好ましくは、液滴噴霧は離脱ゾーン30の最大水平断面積の少なくとも約75%に作用する。最も好ましくは、液滴噴霧は離脱ゾーン30の最大水平断面積の少なくとも90%に作用する。この下向きの液体還流噴霧は、反応媒体36の上面44又はその上方における泡立ちを防止するのに役立つことができ、更に、気体出口40に向かって流れる上方に移動する気体に同伴される任意の液体又はスラリー液滴の離脱を助けることができる。更に、液体還流は、気体出口40を経て離脱ゾーン30から回収される気体流出物中に存在する粒子状物質及び沈殿する可能性のある化合物(例えば溶解されている安息香酸、p−トルイル酸、4−CBA、テレフタル酸、触媒金属塩)の量を減少させる働きをすることができる。更に、離脱ゾーン30中への還流液滴の導入は、蒸留作用によって、気体出口40を経て回収される気体流出物の組成を調整するのに用いることができる。
還流分配器42を経て気泡塔型反応器20中に導入される液体還流は、好ましくは供給口32a、b、c及びdを経て気泡塔型反応器20中に導入される液相供給流の溶媒成分と概ね同じ組成を有する。従って、液体還流は酸成分及び水を含むのが好ましい。還流の酸成分は好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数2の低分子量有機モノカルボン酸である。最も好ましくは、還流の酸成分は酢酸である。好ましくは、酸成分は還流の少なくとも約75重量%、より好ましくは少なくとも約80重量%、最も好ましくは85〜98重量%を構成し、残りは水である。還流は典型的には、液相供給流中の溶媒と実質的に同じ組成を有するので、この記載が反応器に導入される「総溶媒」に言及する場合には、このような「総溶媒」は、還流と供給流の溶媒部分の両方を含むものとする。
気泡塔型反応器20中の液相酸化の間には、気体及びスラリー流出物流が反応器ゾーン28から実質的に連続的に回収されながら、供給材料、酸化剤及び還流が、反応ゾーン28に実質的に連続的に導入されるのが好ましい。ここで使用する用語「実質的に連続的に」は、10分未満しか中断されない少なくとも10時間の期間を意味する。酸化の間において、被酸化性化合物(例えば、p−キシレン)は少なくとも約8,000kg/時、より好ましくは約13,000〜約80,000kg/時の範囲、更に好ましくは約18,000〜約50,000kg/時の範囲、最も好ましくは22,000〜30,000kg/時の範囲の速度で反応ゾーン28に実質的に連続的に導入されるのが好ましい。入ってくる供給材料、酸化剤及び還流の流速は実質的に定常であるのが一般に好ましいが、本発明の一実施態様は、混合及び物質移動を改善するために、入ってくる供給材料、酸化剤及び/又は還流を脈動させることを考慮していることが注目される。入ってくる供給材料、酸化剤及び/又は還流がパルスで導入される場合には、それらの流速は、ここに挙げた定常状態の流速の約0〜約500%の範囲内で、より好ましくは約30〜約200%の範囲内で、最も好ましくは80〜120%の範囲内で変動するのが望ましい。
気泡塔型反応器20中における平均空時反応速度(average space-time rate of reaction:STR)を、供給される被酸化性化合物の質量/反応媒体36の単位容量/単位時間(例えばp−キシレンのkg/m3/時)と定義する。慣例的用法では、生成物に転化されない被酸化性化合物の量は、典型的にはSTRの計算前に供給流中の被酸化性化合物の量から差し引かれるであろう。しかし、ここで好ましい被酸化性化合物の多く(例えばp−キシレン)の場合には転化率及び収率が典型的には高く、ここでは前述のようにこの用語を定義するのが都合よい。資本コスト及び運転インベントリーのために、特に反応は高STRで行うのが一般に好ましい。しかし、STRを次第に増加させながら反応を実施すると、部分酸化の質又は収率が影響される可能性がある。気泡塔型反応器20は、被酸化性化合物(例えばp−キシレン)のSTRが約25〜約400kg/m3/時、より好ましくは約30〜約250kg/m3/時、更に好ましくは約35〜約150kg/m3/時、最も好ましくは40〜100kg/m3/時の範囲である場合に特に有用である。
気泡塔型酸化反応器20の酸素−STRは、消費される分子状酸素の重量/反応媒体36の単位容量/単位時間(例えば、消費される分子状酸素のkg/m3/時)と定義する。資本コスト及び溶媒の酸化的消費のために、特に反応は高酸素−STRで行うのが一般に好ましい。しかし、酸素−STRを次第に増加させながら反応を実施すると、部分酸化の質又は収率が最終的に低下する。理論によって拘束されないが、これは、界面領域における気相から液体への、従ってバルク液体中への分子状酸素の移動速度に関係する可能性があるようである。酸素−STRが速すぎると、反応媒体のバルク液相中の溶存酸素量が過度に低くなる。
全体(global)平均酸素−STRは、ここでは単位時間に反応媒体36の全容量において消費される全酸素の重量(例えば、消費される分子状酸素のkg/m3/時)と定義する。気泡塔型反応器20は、全体平均酸素−STRが約25〜約400kg/m3/時、より好ましくは約30〜約250kg/m3/時、更に好ましくは約35〜約150kg/m3/時、最も好ましくは40〜100kg/m3/時の範囲である場合に特に有用である。
気泡塔型反応器20中における酸化の間において、[反応ゾーン28に入る総溶媒(供給材料及び還流の両方からの溶媒)の質量流速]対[反応ゾーン28に入る被酸化性化合物の質量流速]の比は、約2:1〜約50:1、より好ましくは約5:1〜約40:1、最も好ましくは7.5:1〜25:1の範囲に保持するのが望ましい。(供給流の一部として導入される溶媒の質量流速)対(還流の一部として導入される溶媒の質量流速)の比は、約0.5:1〜還流ゼロ、より好ましくは約0.5:1〜約4:1、更に好ましくは約1:1〜約2:1、最も好ましくは1.25:1〜1.5:1の範囲に保持するのが望ましい。
気泡塔型反応器20中における液相酸化の間において、酸化剤流は、化学量論的酸素要求量を若干上回る分子状酸素を提供する量で気泡塔型反応器20中に導入するのが好ましい。個々の被酸化性化合物に関して最良の結果を得るのに必要な過剰の分子状酸素の量は、液相酸化の全体的経済性に影響を及ぼす。気泡塔型反応器20中における液相酸化の間において、[反応器20に入る酸化剤流の質量流速]対[反応器20に入る被酸化性有機化合物(例えば、p−キシレン)の質量流速]の比は、約0.5:1〜約20:1、より好ましくは約1:1〜約10:1、最も好ましくは2:1〜6:1の範囲に保持するのが好ましい。
再び図1を参照すると、気泡塔型反応器20中に導入される供給材料、酸化剤及び還流は共同で多相反応媒体36の少なくとも一部を形成する。反応媒体36は、好ましくは固相、液相及び気相を含む三相媒体である。前述のように、被酸化性化合物(例えばp−キシレン)の酸化は、主として反応媒体36の液相で起こる。従って、反応媒体36の液相は、溶存酸素及び被酸化性化合物を含む。気泡塔型反応器20中で起こる酸化反応の発熱性が、供給口32a、b、c及びdを経て導入される溶媒(例えば酢酸及び水)の一部を沸騰/揮発させる。従って、反応器20中の反応媒体36の気相は、揮発された溶媒及び酸化剤流の溶解していない未反応部分から主として形成される。先行技術のいくつかの反応器は、反応媒体の加熱又は冷却に熱交換管/フィンを使用する。しかし、このような熱交換構造は、本明細書中に記載した本発明の反応器及び方法においては望ましくない可能性がある。従って、気泡塔型反応器20は、反応媒体36と接触する表面を実質的に含まず且つ30,000ワット/m2より大きい時間平均熱流束を示すのが好ましい。
反応媒体36の液相中の溶存酸素の濃度は、気相からの質量移動の速度と液相内の反応による消費速度との動的バランスである(即ち、それは供給気相中の分子状酸素の分圧だけで決められるのではなく、これは溶存酸素の供給速度の1つの要因であり且つ溶存酸素の上限濃度に影響を与える)。溶存酸素の量は局所的に変化し、気泡界面近くでより高くなる。全体的には、溶存酸素の量は、反応媒体36の種々の領域における供給要因と要求要因とのバランスによって決まる。時間的には、溶存酸素の量は、化学的消費速度に関連した気液混合の均一性によって決まる。反応媒体36の液相中の溶存酸素の供給と要求を適切に釣り合わせるためには、反応媒体36の液相中の時間平均及び容量平均酸素濃度は、約1モルppm(ppm molar)超、より好ましくは約4〜約1,000モルppm、更に好ましくは約8〜約500モルppm、最も好ましくは12〜120モルppmの範囲に保持するのが好ましい。
気泡塔型反応器20中で実施される液相酸化反応は、好ましくは固体を生じる沈澱反応である。より好ましくは、気泡塔型反応器20中で実施される液相酸化反応は、反応ゾーン28中に導入される被酸化性化合物(例えばp−キシレン)の少なくとも約10重量%に、反応媒体36中で固体化合物(例えば粗製テレフタル酸粒子)を形成させる。更に好ましくは、液相酸化は反応媒体36中で被酸化性化合物の少なくとも約50重量%に固体化合物を形成させる。最も好ましくは、液相酸化は反応媒体36中で被酸化性化合物の少なくとも90重量%に固体化合物を形成させる。反応媒体36中の固体の総量は、時間平均及び容量平均ベースで約3重量%超であるのが好ましい。より好ましくは、反応媒体36中の固体の総量は、約5〜約40重量%、更に好ましくは約10〜約35重量%、最も好ましくは15〜30重量%の範囲に保持される。気泡塔型反応器20中において生成される酸化生成物(例えばテレフタル酸)の相当量が、反応媒体36の液相中に溶解したままではなく、反応媒体36中に固形分として存在するのが好ましい。反応媒体36中に存在する固相酸化生成物の量は、好ましくは反応媒体36中の総酸化生成物(固相及び液相)の少なくとも約25重量%、より好ましくは少なくとも約75重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%である。反応媒体36中の固体の量に関する前述の数値範囲は、実質的に連続的な期間における気泡塔20の実質的に定常状態の運転に適用し、気泡塔型反応器20の始動、運転停止又は次善運転(sub-optimal operation)には適用しない。反応媒体36中の固体の量は重量法で測定する。この重量法においては、スラリーの代表的な部分を反応媒体から回収して、重さを量る。反応媒体内に存在する全体的な固液分配を効率的に保持する条件において、遊離液体は固体部分から沈降又は濾過によって、沈殿固体の損失を伴わず且つ最初の液体質量の約10%未満を固形分部分と共に残して効率的に除去する。固体上に残っている液体は、固体の昇華を伴わずに効率的に蒸発乾固する。固体の残りの部分を量る。固体部分の重量対最初のスラリー部分の重量の比は、典型的には百分率として表される固体の割合である。
気泡塔型反応器20中において実施される沈澱反応は、反応媒体36と接触する一部の硬質構造の表面に汚染(即ち、固形の沈着)を生じる可能性がある。従って、本発明の一実施態様において、気泡塔型反応器20は、反応ゾーン28中に内部熱交換、撹拌又はバフリング構造を含まないのが好ましい。これは、このような構造が汚染を生じやすいためである。内部構造が反応ゾーン28中に存在する場合には、かなりの量の上向き平面領域を含む外面を有する内部構造は避けるのが望ましい。これは、このような上向き表面は汚染を非常に生じやすいためである。従って、内部構造が反応ゾーン28中に存在する場合には、傾斜が水平から約15°未満の実質的に平面である面によって形成されるのは、このような内部構造の上向き露出外面領域全体の約20%未満であるのが好ましい。
再び図1を参照すると、気泡塔型反応器20の物理的構造は、不純物の生成を最小限に抑えた被酸化性化合物(例えばp−キシレン)の最適化酸化を実現するのに役立つ。容器シェル22の細長い(elongated)反応部24は、実質的に円筒形の本体46と下部ヘッド48を含むのが好ましい。反応ゾーン28の上端は、円筒形本体46の頂部の直径方向に広がる水平面50によって規定される。反応ゾーン28の下端52は、下部ヘッド48の最低内面によって規定される。典型的には、反応ゾーン28の下端52は、スラリー出口38の開口部の近傍に位置する。従って、気泡塔型反応器20内に規定される細長い反応ゾーン28は、円筒形本体46の延長軸に沿って反応ゾーン28の上端50から下端52まで測定された最大長さLを有する。反応ゾーン28の長さLは好ましくは約10〜約100m、より好ましくは約20〜約75m、最も好ましくは25〜50mの範囲である。反応ゾーン28は、典型的には円筒形本体46の最大内径に等しい最大直径(幅)Dを有する。反応ゾーン28の最大直径Dは好ましくは約1〜約12m、より好ましくは約2〜約10m、更に好ましくは約3.1〜約9m、最も好ましくは4〜8mの範囲である。本発明の好ましい実施態様において、反応ゾーン28は約6:1〜約30:1の長さ対直径比L:Dを有する。更に好ましくは、反応ゾーン28は、約8:1〜約20:1の範囲のL:D比を有する。最も好ましくは、反応ゾーン28は9:1〜15:1の範囲のL:D比を有する。
前述のように、気泡塔型反応器20中の反応ゾーン28は多相反応媒体36を受ける。反応媒体36は、反応ゾーン28の下端52と一致した下端と上面44に位置する上端を有する。反応媒体36の上面44は、反応ゾーン28の内容物が気相連続状態から液相連続状態に遷移する垂直位置において反応ゾーン28を横断する水平面に沿って規定される。上面44は、好ましくは反応ゾーン28の内容物の薄い水平スライスの局所的な時間平均ガスホールドアップが0.9である垂直位置に位置する。
反応媒体36は上端と下端との間で測定された最大高さHを有する。反応媒体36の最大幅Wは、典型的には円筒形本体46の最大直径Dに等しい。気泡塔型反応器20中における液相酸化時には、Hは、Lの約60〜約120%、より好ましくは約80〜約110%、最も好ましくは85〜100%であるのが好ましい。本発明の好ましい実施態様において、反応媒体36は高さ対幅比H:Wが約3:1超である。より好ましくは、反応媒体36のH:W比は約7:1〜約25:1の範囲である。更に好ましくは、反応媒体36のH:W比は約8:1〜約20:1の範囲である。最も好ましくは、反応媒体36のH:W比は9:1〜15:1の範囲である。本発明の一実施態様においては、L=H及びD=Wであり、従って、ここでL及びDに関して示された種々の寸法又は比はH及びWにも適用され、逆の場合も同じである。
本発明の実施態様に従って提供される比較的高いL:D及びH:W比は、本発明のシステムのいくつかの重要な利点に寄与することができる。以下に更に詳述するように、比較的高いL:D比及びH:W比と後述する他のいくつかの特徴が、反応媒体36中の分子状酸素及び/又は被酸化性化物(例えばp−キシレン)の濃度の有益な垂直方向勾配を促進できることを発見した。全体にわたって比較的均一な濃度を有する、充分に混合された反応媒体を好ましいとする従来の見識に反して、酸素濃度及び/又は被酸化性化合物濃度の垂直方向における段階付けはより効率的で且つ経済的な酸化反応を容易にすることを発見した。反応媒体36の頂部近くにおいて酸素濃度及び被酸化性化合物濃度を最小にすることは、上方の気体出口40からの未反応酸素及び未反応被酸化性化合物の損失を回避するのに役立つことができる。しかし、被酸化性化合物濃度及び未反応酸素濃度が反応媒体36の全体にわたって低い場合には、酸化の速度及び/又は選択率は減少する。従って、分子状酸素及び/又は被酸化性化合物の濃度は、反応媒体36の頂部近くよりも反応媒体36の底部近くにおいて著しく高いのが好ましい。
更に、高いL:D比及びH:W比は、反応媒体36の底部における圧力を、反応媒体36の頂部における圧力よりもかなり大きくする。この垂直方向の圧力勾配は、反応媒体36の高さ及び密度によって生じるものである。この垂直方向の圧力勾配の1つの利点は、容器の底部における高圧が、浅い反応器中において同程度の温度及び塔頂圧において別の方法で達成され得るよりも大きい酸素溶解度及び物質移動を推進することである。従って、酸化反応は、より浅い容器中で必要とされるよりも低い温度で実施できる。気泡塔型反応器20がp−キシレンの粗製テレフタル酸(CTA)への部分酸化に用いられる場合には、より低い反応温度において同じか又はより良好な酸素物質移動速度で運転できることは多くの点で有利である。例えば、p−キシレンの低温酸化は、反応時に燃焼される溶媒の量を低減する。以下に詳述するように、低温酸化はまた、小さく、表面積が大きく、緩く結合した、溶解の容易なCTA粒子の形成に有利であり、このようなCTA粒子は、従来の高温酸化方法によって生成される大きく、表面積が小さく、高密度のCTA粒子よりも経済的な精製法に供することができる。
反応器20中における酸化時には、反応媒体36の時間平均及び容量平均温度は、約125〜約200℃、より好ましくは約140〜約180℃、最も好ましくは150〜170℃の範囲に保持するのが望ましい。反応媒体36の上方の塔頂圧は、好ましくは約1〜約20バール・ゲージ(bar gauge;barg)、より好ましくは約2〜約12barg、最も好ましくは4〜8bargの範囲に保持する。好ましくは、反応媒体36の頂部と反応媒体36の底部の間の圧力差は、約0.4〜約5バール、より好ましくは約0.7〜約3バール、最も好ましくは1〜2バールの範囲である。反応媒体36の上方の塔頂圧は、比較的一定の値に保持するのが一般に好ましいが、本発明の一実施態様は、反応媒体36中における混合及び/又は物質移動の改善を促進するために塔頂圧を脈動させることを考慮に入れる。塔頂圧を脈動させる場合には、脈動圧は、ここに挙げた定常状態の塔頂圧の約60〜約140%、より好ましくは約85〜約115%、最も好ましくは95〜105%の範囲であるのが望ましい。
反応ゾーン28の高いL:D比の更なる利点は、それが反応媒体36の平均空塔速度の増加に寄与できることである。反応媒体36に関してここで使用する用語「空塔速度(superficial velocity)」及び「空塔気体速度(superficial gas velocity)」は、(反応器中のある高さにおける反応媒体36の気相の体積流速)÷(その高さにおける反応器の水平断面積)を意味するものとする。反応ゾーン28の高いL:Dによってもたらされる増大した空塔速度は、局所の混合を促進でき、また、反応媒体36のガス・ホールドアップを増大することができる。反応媒体36の1/4高さ、1/2高さ及び/又は3/4の高さにおける反応媒体の時間平均空塔速度は、好ましくは約0.3m/秒超、より好ましくは約0.8〜約5m/秒の範囲、更に好ましくは約0.9〜約4m/秒の範囲、最も好ましくは1〜3m/秒の範囲である。
再び図1を参照すると、気泡塔型反応器20中の離脱セクション26は単に、反応セクション24の真上に位置する容器シェル22の幅が広くなった部分である。気相が反応媒体36の上面44の上方に上昇し、気体出口40に近づくにつれて、離脱セクション26は気泡塔型反応器20中の上向きに流れる気相の速度を減少させる。気相の上向き速度のこのような減少は、上向きに流れる気相中の同伴液体及び/又は固体の除去の促進に役立ち、その結果、反応媒体36の液相中に存在するいくつかの成分の不所望な損失を減少させる。
離脱セクション26は、好ましくは概ね円錐台系の遷移壁54、概ね円筒形の幅広い側壁56及び上部ヘッド58を含む。遷移壁54の狭い下端は、反応セクション24の円筒形本体46の頂部に連結されている。遷移壁54の幅の広い上端は、幅の広い側壁56の底部に連結されている。遷移壁54は、狭い下端から、垂線から約10〜約70°の範囲の角度で、より好ましくは垂線から約15〜約50°の範囲の角度で、最も好ましくは垂線から15〜45°の範囲の角度で上方外側に向かって広がるのが望ましい。幅の広い側壁56は反応セクション24の最大直径Dよりも一般に大きい最大直径Xを有するが、反応セクション24の上部が反応セクション24の全最大直径よりも小さい直径を有する場合には、Xは実際にはDよりも小さくてもよい。本発明の好ましい実施態様において、(幅の広い側壁56の直径)対(反応セクション24の最大直径)の比X:Dは約0.8:1〜約4:1、最も好ましくは1.1:1〜2:1の範囲である。上部ヘッド58は幅の広い側壁56の頂部に連結されている。上部ヘッド58は好ましくは、気体出口40を経て離脱ゾーン30から気体を逃散させる中央の開口部を規定する概ね楕円形のヘッド部材である。或いは、上部ヘッド58は、円錐形を含む任意の形状であることができる。離脱ゾーン30は、反応ゾーン28の頂部50から離脱ゾーン30の最上部まで測定された最大高さYを有する。(反応ゾーン28の長さ)対(離脱ゾーン30の高さ)の比L:Yは、好ましくは約2:1〜約24:1、より好ましくは約3:1〜約20:1、最も好ましくは4:1〜16:1の範囲である。
図1〜5を参照して、酸化剤スパージャー34の位置及び構造についてより詳細に記載する。図2及び3は、酸化剤スパージャー34がリング部材60、クロス部材62及び1対の酸化剤入口導管64a,bを含むことができることを示す。好都合なことには、図2及び3に示されるように、これらの酸化剤入口導管64a,bはリング部材60の上方の高さで容器に入り、次いで下向きに転じる。或いは、酸化剤入口導管64a,bはリング部材60の下方で又はリング部材の60と概ね同じ水平面で容器に入ることができる。各酸化剤入口導管64a,bは、容器シェル22中に形成された、それぞれの酸化剤入口66a,bに連結される第1端と、リング部材60に流体連結される第2端を含む。リング部材60は、好ましくは導管から、より好ましくは複数の直導管部分から、最も好ましくは互いに堅固に連結されて複数の管状多角形リングを形成する複数の直導管部分から形成される。好ましくはリング部材60は、少なくとも3個の、より好ましくは6〜10個の、最も好ましくは8個のまっすぐなパイプ部分から形成される。従って、リング部材60が8個のパイプ部分から形成される場合には、それはほぼ八角形の形状を有する。クロス部材62は好ましくは、リング部材60の対向するパイプ部分の間において対角線上に伸び且つそれらに流体連結される実質的にまっすぐなパイプ部分から形成される。クロス部材62に用いられるパイプ部分は、リング部材60を形成するのに用いられるパイプ部分と実質的に同じ直径を有するのが好ましい。酸化剤入口導管64a,b、リング部材60及びクロス部材62を構成するパイプ部分は、約0.1m超の、より好ましくは約0.2〜約2mの範囲の、最も好ましくは0.25〜1mの範囲の公称直径を有するのが望ましい。おそらく図3に最もよく示されるように、リング部材60及びクロス部材62はそれぞれ、酸化剤流を反応ゾーン28に上向きに排出するための複数の上部酸化剤用開口部68を提供する。おそらく図4に最もよく示されるように、リング部材60及び/又はクロス部材62は、酸化剤流を反応ゾーン28に下向きに排出するための1個又はそれ以上の下部酸化剤用開口部70を提供することができる。下部酸化剤用開口部70は、リング部材60及び/又はクロス部材62内に浸入するかもしれない液体及び/又は固体を排出するのに用いることもできる。固体が酸化剤スパージャー34の内側に沈着するのを防ぐために、液体流を、連続的又は定期的にスパージャー34に通して、堆積した固体を全て流し出すことができる。
再び図1〜4を参照すると、気泡塔型反応器20中における酸化の間に、酸化剤流は酸化剤入口66a,bを通してそれぞれ酸化剤入口導管64a,b中に押し込まれる。次いで、酸化剤流は、酸化剤入口導管64a,bを経てリング部材60に運搬される。酸化剤流がリング部材60に入ったら、酸化剤流はリング部材60及びクロス部材62の内部容積全体に分配される。次に、酸化剤流は、リング部材60及びクロス部材62の上部及び下部酸化剤用開口部68,70を経て酸化剤スパージャー34から出て反応ゾーン28中に押し込まれる。
上部酸化剤用開口部の出口68は、互いに横方向に間隔をあけて、反応ゾーン28の実質的に同じ高さに配置される。従って、上部酸化剤用開口部68の出口は、一般に酸化剤スパージャー34の頂部によって規定される実質的に水平な面に沿って位置する。下部酸化剤用開口部70の出口は、互いに横方向に間隔をあけて、反応ゾーン28の実質的に同じ高さに配置される。従って、下部酸化剤用開口部70の出口は、一般に酸化剤スパージャー34の底部によって規定される実質的に水平な面に沿って位置する。
本発明の一実施態様において、酸化剤スパージャー34には、少なくとも約20個の上部酸化剤用開口部が形成されている。より好ましくは、酸化剤スパージャー34には、約40〜約800個の範囲の上部酸化剤用開口部68が形成されている。最も好ましくは、酸化剤スパージャー34には、60〜400個の範囲の上部酸化剤用開口部68が形成されている。酸化剤スパージャー34には、好ましくは少なくとも約1個の下部酸化剤用開口部70が形成されている。より好ましくは、酸化剤スパージャー34には、約2〜約40個の範囲の下部酸化剤用開口部70が形成されている。最も好ましくは、酸化剤スパージャー34には、8〜20個の範囲の下部酸化剤用開口部70が形成されている。酸化剤スパージャー34における上部酸化剤用開口部68対下部酸化剤用開口部70の数の比は、好ましくは約2:1〜約100:1、より好ましくは約5:1〜約25:1、最も好ましくは8:1〜15:1の範囲である。上部及び下部酸化剤用開口部68、70から出る酸化剤流の体積流速の比が上部及び下部酸化剤用開口部68、70の相対数に関する前述の比と実質的に同じとなるように、実質的に全ての上部及び且つ酸化剤用開口部68、70の直径は好ましくは実質的に同じである。
図5は、上部及び下部酸化剤用開口部68、70からの酸化剤排出の方向を示す。上部酸化剤用開口部68に関しては、上部酸化剤用開口部68の少なくとも一部が、垂線から斜めに角度Aで酸化剤流を排出するのが好ましい。垂線から角度Aだけ傾斜している上部酸化材料開口部68の百分率は、約30〜約90%の範囲、より好ましくは約50〜約80%の範囲、更に好ましくは60〜75%の範囲、最も好ましくは67%であるのが望ましい。角度Aは、好ましくは約5〜約60°、より好ましくは約10〜約45°、最も好ましくは15〜30°の範囲である。下部酸化剤用開口部70に関しては、下部酸化剤用開口部70の実質的に全てがリング部材60及び/又はクロス部材62の最下部近くに位置する。従って、酸化剤スパージャー34中に誤って入る可能性がある全ての液体及び/又は固体は、下部酸化剤用開口部70を経て酸化剤スパージャー34から容易に排出させることができる。好ましくは、下部酸化剤用開口部70は、酸化剤流を実質的に垂直な角度で下向きに排出する。この説明のためには、上部酸化剤用開口部は、酸化剤流を概ね上向きに(即ち、水平面より上の角度で)排出する任意の開口部であることができ、下部酸化剤用開口部は、酸化剤流を概ね下向きに(即ち、水平より下の角度で)排出する任意の開口部であることができる。
多相反応媒体を含む多くの従来型の気泡塔型反応器においては、酸化剤スパージャー(又は酸化剤流を反応ゾーン中に導入する他のメカニズム)より下に位置する反応媒体の実質的に全てが非常に低いガス・ホールドアップ値を有する。当業界で知られる通り、「ガス・ホールドアップ」は単に、気体状態の多相媒体の体積分率である。媒体中のガス・ホールドアップの低いゾーンは、「無通気」ゾーンと称することもできる。多くの従来型のスラリー気泡塔型反応器においては、反応媒体の総容量のかなりの部分が、酸化剤スパージャー(又は酸化剤流を反応ゾーン中に導入する他のメカニズム)より下に位置する。従って、従来型の気泡塔型反応器の底部に存在する反応媒体のかなりの部分が無通気である。
気泡塔型反応器中で酸化に供される反応媒体中の無通気ゾーンの量を最小限に抑えると、いくつかの型の不所望な不純物の発生を最小限に抑えることができることを発見した。反応媒体の無通気ゾーンに含まれる酸化剤気泡は比較的少ない。この低容積の酸化剤気泡は、反応媒体の液相中に溶解させるのに利用できる分子状酸素の量を減少させる。従って、反応媒体の無通気ゾーン中の液相中の分子状酸素は比較的低濃度である。反応媒体のこれらの酸素が不足した無通気ゾーンは、望ましい酸化反応ではなく、不所望な副反応を促進する傾向がある。例えばp−キシレンを部分酸化してテレフタル酸を生成させる場合には、反応媒体の液相中における不充分な酸素利用可能性のため、安息香酸及び共役芳香環、とりわけ、フルレオノン類及びアントラキノン類として知られる、非常に不所望な有色分子が不所望に多量に形成される可能性がある。
本発明の一実施態様によれば、液相酸化は、ガス・ホールドアップが低い反応媒体の体積分率を最小限に抑えられるように構成し且つ運転する気泡塔型反応中で実施する。このような無通気ゾーンの最小化は、反応媒体の全容積を均一容積の2,000個の水平スライスに理論的に分割することによって定量化することができる。最上部及び最下部の水平スライスを除いて、各水平スライスは、側面で反応器の側壁と境界を接し且つ頂部及び底部で仮想水平面と境界を接する別々の容積である。最上部の水平スライスは、底部で仮想水平面と境界を接し且つ頂部で反応媒体の上面と境界を接する。最下部の水平スライスは、頂部で仮想水平面と境界を接し且つ底部で容器の下端と境界を接する。反応媒体を、等容積の2,000個の別々の水平スライスに理論的に分割すると、各水平スライスの時間平均及び体積平均ガス・ホールドアップを算出することができる。無通気ゾーンの量のこの定量化法を用いる場合には、時間平均及び体積平均ガス・ホールドアップが0.1未満である水平スライスの数は、30個未満、より好ましくは15個未満、更に好ましくは6個未満、更に好ましくは4個未満、最も好ましくは2個未満であるのが望ましい。ガス・ホールドアップが0.2未満である水平スライスの数は、80個未満、より好ましくは40個未満、更に好ましくは20個未満、更に好ましくは12個未満、最も好ましくは5個未満であるのが望ましい。ガス・ホールドアップが0.3未満である水平スライスの数は、120個未満、より好ましくは80個未満、更に好ましくは40個未満、更に好ましくは20個未満、最も好ましくは15個未満であるのが望ましい。
再び図1及び2を参照すると、反応器ゾーン28中におけるより下方への酸化剤スパージャー34の配置には、反応媒体36中の無通気ゾーンの量の減少を含むいくつかの利点があることを発見した。反応媒体36の高さをH、反応ゾーン28の長さをL、反応ゾーン28の最大直径をDとすると、酸化剤流の大部分(即ち、>50重量%)が、反応ゾーン28の下端52の約0.025H、0.022L及び/又は0.25D以内の反応ゾーン28中に導入されるのが好ましい。より好ましくは、酸化剤流の大部分は、反応器ゾーン28の下端52の約0.02H、0.018L及び/又は0.2D以内の反応ゾーン28中に導入する。最も好ましくは、酸化剤流の大部分は、反応器ゾーン28の下端52の0.015H、0.013L及び/又は0.15D以内の反応ゾーン28中に導入する。
図2に示される実施態様において、酸化剤流の実質的に全てが反応器ゾーン28の約0.25H、0.022L及び/又は0.25D以内の反応ゾーン28中に入るように、反応ゾーン28の下端52と酸化剤スパージャー34の上部酸化剤用開口部68の出口との間の垂直距離Y1は約0.25H、0.022L及び/又は0.25D未満である。より好ましくは、Y1は約0.02H、0.018L及び/又は0.2D未満である。最も好ましくは、Y1は0.015H、0.013L及び/又は0.15D未満であるが、0.005H、0.004L及び/又は0.06Dより大きい。図2は、容器シェル22の円筒形本体46の下縁部が容器シェル22の楕円形下部ヘッド48の上縁部と接する位置に接線72を示す。或いは、下部ヘッド48は、円錐形を含む任意の形状であることができ、接線はそれでも円筒形本体46の下縁部と定義される。接線72と酸化剤スパージャー34の頂部との間の垂直距離Y2は、好ましくは少なくとも約0.0012H、0.001L、及び/又は0.01D;より好ましくは少なくとも約0.005H、0.004L及び/又は0.05D;最も好ましくは少なくとも0.01H、0.008L及び/又は0.1Dである。反応ゾーン28の下端52と酸化剤スパージャー34の下部酸化剤用開口部70の出口との間の垂直距離Y3は、好ましくは約0.015H、0.013L及び/又は0.15D未満;より好ましくは約0.012H、0.01L及び/又は0.1D未満;最も好ましくは0.01H、0.008L及び/又は0.075D未満であるが0.003H、0.002L及び/又は0.025Dより大きい。
本発明の好ましい実施態様において、酸化剤流及び供給材料流を反応ゾーン中に排出する開口部は、開口部から排出される酸化剤又は供給材料流の量(重量基準で)が開口部の孔面積に正比例するように構成する。従って、例えば全ての酸化剤用開口部によって規定される累積孔面積の50%が反応ゾーンの底部の0.15D以内に位置する場合には、酸化剤流の50重量%が反応ゾーンの底部の0.15D以内の反応ゾーンに入り、逆の場合も同じである。
反応媒体36中の無通気ゾーン(即ち、ガス・ホールドアップの低いゾーン)を最小限に抑えることによって提供される利点に加えて、全反応媒体36のガス・ホールドアップを最大にすることによって酸化を増大できることを発見した。反応媒体36は時間平均及び体積平均ガス・ホールドアップが、好ましくは少なくとも約0.4、より好ましくは約0.6〜約0.9の範囲、最も好ましくは0.65〜0.85の範囲である。気泡塔型反応器20のいくつかの物理的な及び操作上の属性が、前述の高いガス・ホールドアップに寄与する。例えば、所与の反応器サイズ及び酸化剤流の流れに関しては、反応ゾーン28の高いL:D比がより短い直径を与え、それが反応媒体36中の空塔速度を増大させ、その結果、ガス・ホールドアップが増大する。更に、所与の一定空塔速度として考えても、気泡塔の実直径及びL:D比が平均ガス・ホールドアップに影響を及ぼすことがわかっている。また、無通気ゾーンの最小化(特に、反応ゾーン28の底部において)が、ガス・ホールドアップの増大に寄与する。更にまた、気泡塔型反応器の塔頂圧及び機械的構造が、ここに開示した高い空塔速度及びガス・ホールドアップ値において運転安定性に影響を及ぼす可能性がある。
更に、本発明者らは、ガス・ホールドアップ及び物質移動を増加させるには、最適化された塔頂圧で運転することが重要であることを発見した。より低い塔頂圧での運転は、ヘンリーの法則の作用に従って、分子状酸素の溶解度を減少させるので、気体から液体への分子状酸素の物質移動速度を低下させように見えるかもしれない。機械的撹拌容器の場合には、通気レベル及び物質移動速度が撹拌機の設計及び塔頂圧によって左右されるので典型的にそうである。しかし、本発明の好ましい実施態様に係る気泡塔型反応器においては、より低い塔頂圧を用いて一定の質量の気相酸化剤流により大きい容積を占めさせることによって、反応媒体36中の空塔速度を増加させ、更にはガス・ホールドアップ及び分子状酸素の移動速度を増加させる方法が発見された。
気泡の融合と分割とのバランスは極めて複雑な現象である。この現象は、一方では、泡立つ傾向につながり、それは液相の内部循環速度を低下させると共に、極めて大きい離脱ゾーンが必要とする可能性があり、他方では、数の少ない非常に大きい気泡を生じる傾向につながり、それはガス・ホールドアップを低下させ且つ酸化剤流から液相への物質速度を低下させる。液相に関しては、中でも、その組成、密度、粘度及び表面張力が非常に複雑な方法で相互作用して、固相がない場合でさえ非常に複雑な結果を生じることが知られている。例えば、実験室の研究者は、簡単な水−空気気泡塔の場合でさえ、観察結果を報告及び評価する場合に、「水」が水道水、蒸留水又は脱イオン水のいずれであるかを限定することが有用であることに気付いている。液相中の複雑な混合物に関して及び固相の添加に関しては、複雑さの程度が更に増す。どのような泡立ち挙動及び自然対流のフローパターンが起こるかを立証する上で、とりわけ、固体の個々の粒子の表面不整、固体の平均サイズ、粒度分布、液相に対する固体の量及び液体が固体表面を湿潤させる能力の全てが、液相及び酸化剤流との相互作用で重要である。
従って、気泡塔型反応器が、ここに開示した高い空塔速度及び高いガス・ホールドアップで有効に機能できるか否かは、例えば、以下を適切に選択することにかかっている:(1)反応媒体の液相の組成;(2)沈殿固体の量及び型(いずれも、反応条件によって調整できる);(3)反応器に供給される酸化剤流の量;(4)酸化剤流の体積流量、気泡の安定性及び(エネルギー収支による)反応温度に影響を及ぼす塔頂圧;(5)流体の性質、沈澱固体の性質及び酸化剤流の比体積に影響を及ぼす反応温度自体;並びに(6)L:D比を含む、反応器の形状寸法及び機械的細部。
再び図1を参照すると、反応媒体36中における被酸化性化合物(例えばp−キシレン)の改善された分布は、垂直方向に間隔をあけて配置された複数の位置で反応ゾーン28中に液相供給流を導入することによって提供することができることを発見した。好ましくは、液相供給流は、反応ゾーン28中に少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの供給開口部を経て導入する。ここで使用する用語「供給開口部(feed openings)」は、液相供給流が、反応媒体36との混合のために、反応ゾーン28中に排出される開口部を意味するものとする。少なくとも2つの供給開口部が、互いに垂直に少なくとも約0.5D、より好ましくは少なくとも約1.5D、最も好ましくは少なくとも3Dの間隔をあけて配置されるのが望ましい。しかし、最上部の供給開口部は、最下部の酸化剤用開口部から垂直に約0.75H、0.65L及び/又は8D以下;より好ましくは約0.5H、0.4L及び/又は5D以下;最も好ましくは0.4H、0.35L及び/又は4D以下の間隔をあけて配置されるのが望ましい。
液相供給流を複数の垂直位置において導入するのが望ましいが、反応媒体36中における被酸化性化合物の改善された分布は、液相供給流の大部分が反応媒体36及び/又は反応ゾーン28の下半分に導入する場合に提供されることも発見した。好ましくは、液相供給流の少なくとも約75重量%を、反応媒体36及び/又は反応ゾーン28の下半分に導入する。最も好ましくは、液相供給流の少なくとも90重量%を、反応媒体36及び/又は反応ゾーン28の下半分に導入する。更に、液相供給流の少なくとも約30重量%を、酸化剤流が反応ゾーン28に供給される最も低い垂直位置の約1.5D以内において反応ゾーン28中に導入するのが好ましい。酸化剤流が反応ゾーン28に導入されるこの最も低い垂直位置は典型的には酸化剤スパージャーの底部であるが、酸化剤流を反応ゾーン28に導入するための種々の代替構造も、本発明の好ましい実施態様によって考慮される。好ましくは、液相供給流の少なくとも約50重量%を、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約2.5D以内に導入する。好ましくは、液相供給流の少なくとも約75重量%を、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約5D以内に導入する。
各供給開口部は、それを通して供給材料が排出される孔面積を規定する。全供給口の累積孔面積の少なくとも約30%が、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約1.5D以内に位置するのが好ましい。好ましくは、全供給口の累積孔面積の少なくとも約50%が、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約2.5D以内に位置する。好ましくは、全供給口の累積孔面積の少なくとも約75%が、酸化剤流が反応ゾーン28に導入される最も低い垂直位置の約5D以内に位置する。
再び図1を参照すると、本発明の一実施態様において、供給口32a、b、c、dは単に、容器シェル22の一側に沿って垂直方向に並べられた開口部である。これらの供給開口部は好ましくは約7cm未満の、より好ましくは約0.25〜約5cmの範囲の、最も好ましくは0.4〜2cmの範囲の実質的に同様な直径を有する。気泡塔型反応器20には、好ましくは各供給開口部から出る液相供給流の流速を調整するためのシステムが装着される。このような流量調整システムは好ましくは、個別の供給口32a、b、c、dのそれぞれに対して個別の流量調整弁74a、b、c、dを含む。更に、気泡塔型反応器20中には、液相供給流の少なくとも一部を少なくとも約2m/秒の、より好ましくは約5m/秒の、更に好ましくは少なくとも約6m/秒の、最も好ましくは8〜20m/秒の範囲の高い入口空塔速度で反応ゾーン28に導入させる流量調整システムが装着されるのが望ましい。ここで使用する用語「入口空塔速度」は、(供給開口部から出る供給流の時間平均体積流速)÷(供給開口部の面積)を意味する。好ましくは、供給流の少なくとも約50重量%が高い入口空塔速度で反応ゾーン28に導入される。最も好ましくは、供給流の実質的に全てが高い入口空塔速度で反応ゾーン28に導入される。
図6〜7を参照すると、液相供給流を反応ゾーン28に導入するための代替システムが示されている。この実施態様においては、供給流は4つの異なった高さで反応ゾーン28に導入される。各高さには、個別の供給分配システム76a、b、c、dが装着される。各供給分配システム76は、主供給導管78とマニホールド80を含む。各マニホールド80は容器シェル22の反応ゾーン28中に伸びる個別のインサート導管86、88に連結された少なくとも2つの出口82、84を具備する。各インサート導管86、88は、反応ゾーン28中に供給流を排出するための個別の供給開口部87、89を提供する。供給開口部87、89は好ましくは約7cm未満の、より好ましくは約0.25〜約5cmの範囲の、最も好ましくは0.4〜2cmの範囲の実質的に同様な直径を有する。各供給分配システム76a、b、c、dの供給開口部87、89は、供給流を反応ゾーン28中に反対の向きで導入するように対角線上に配置するのが好ましい。更に、隣接する供給分配システム76の対角線上に配置された供給開口部86、88は、互いに90°回転した位置に配置するのが好ましい。運転中には、液相供給流は主供給導管78に装入され、引き続いてマニホールド80に入る。マニホールド80は、供給開口部87、89を介して反応器20の正反対の2つの側において同時に導入するために、供給流を均等に分配する。
図8は、各供給分配システム76に、インサート導管86、88(図7に図示)ではなく、バヨネットチューブ(bayonet tube)90、92が装着された代替構造を示す。バヨネットチューブ90、92は反応ゾーン28中に突き出ており、液相供給材料を反応ゾーン28に排出するための多数の小さい供給開口部94、96を含む。バヨネットチューブ90、92のこの小さい供給開口部94、96は、約50mm未満、より好ましくは約2〜約25mmの、最も好ましくは4〜15mmの実質的に同一の直径を有するのが望ましい。
図9〜11は、代替供給分配システム100を示す。供給分配システム100は、気泡塔型反応器20の側壁の多数の貫通を必要とせずに、垂直方向にも横方向にも間隔をあけられた複数の位置で液相供給流を導入する。供給導入システム100は、一般に単一の入口導管102、ヘッダー104、複数の直立分配管106、横支持機構108及び縦支持機構110を含む。入口導管102は容器シェル22の本体46の側壁を貫通する。入口導管102はヘッダー104と流体連結される。ヘッダー104は入口導管102から受けた供給流を直立分配管106の間に均等に分配する。各分配管106は、供給流を反応ゾーン28に排出するための、垂直方向に間隔をあけて配置された複数の供給開口部112a、b、c、dを有する。横支持機構108は、各分配管106に連結され、分配管106の横方向の相対運動を抑える。縦支持機構110は、好ましくは横支持機構108に及び酸化剤スパージャー34の頂部に連結される。縦支持機構110は、反応ゾーン28中の分配管106の縦方向の動きを実質的に抑える。供給開口部112は、約50mm未満、より好ましくは約2〜約25mm、最も好ましくは4〜15mmの実質的に同一の直径を有するのが望ましい。図9〜11に示された供給分配システム100の供給開口部112の垂直方向の間隔は、図1の供給分配システムに関して、前述したのと実質的に同じであることができる。
多くの気泡塔型反応器中の反応媒体のフローパターンは、被酸化性化合物が主として反応媒体の一側に沿って導入される場合には特に、反応媒体中における被酸化性化合物の不均一な方位角分配を可能できることが判明した。ここで使用する用語「方位角」は、反応ゾーンの直立延長軸の周囲の角又は間隔を意味する。ここで使用する「直立」は、垂線の45°以内を意味する。本発明の一実施態様において、被酸化性化合物(例えばp−キシレン)を含む供給流は、方位角に間隔をあけて配置された複数の供給開口部を経て反応ゾーンに導入する。これらの方位角に間隔をあけて配置された供給開口部は、反応媒体中における過度に高い及び過度に低い被酸化性化合物濃度の領域を防ぐのに役立つことができる。図6〜11に示された種々の供給導入システムは、供給開口部の適正な方位角間隔を提供するシステムの例である。
再び図7を参照すると、液相供給材料流の反応媒体中への、方位角に間隔をあけられた導入を定量化するために、反応媒体を、ほぼ等容積の直立方位角クアドラント(quadrant)Q1、Q2、Q3、Q4に理論的に分割することができる。これらの方位角クアドラントQ1、Q2、Q3、Q4は、反応媒体の最大縦寸法及び最大半径方向寸法を越えて広がる1対の仮想上の直交する交差垂直面P1、P2によって規定される。反応媒体が円筒容器に含まれる場合には、仮想交差垂直面P1、P2の交線は円筒の垂直中心線とほぼ一致し、各方位角クアドラントQ1、Q2、Q3、Q4は、反応媒体の高さに等しい高さを有するほぼくさび形の垂直容積であろう。被酸化性化合物の相当部分が、少なくとも2つの異なる方位角クアドラント中に位置する供給開口部を経て反応媒体中に排出されるのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様においては、被酸化性化合物の約80重量%以下が、単一の方位角クアドラント中に位置することができる供給開口部を通して反応媒体中に排出される。より好ましくは、被酸化性化合物の約60重量%以下が、単一の方位角クアドラント中に位置することができる供給開口部を通して反応媒体中に排出される。最も好ましくは、被酸化性化合物の40重量%以下が、単一の方位角クアドラント中に位置することができる供給開口部を通して反応媒体中に排出される。被酸化性化合物の方位角分配に関するこれらのパラメーターは、方位角クアドラントが被酸化性化合物の最大化可能量が方位角クアドラントの1つに排出されているような方位角に向けられた場合に、測定する。例えば、全供給流を、互いに方位角で89°の間隔をあけて配置された2つの供給開口部を経て反応媒体中に排出される場合には、4つの方位角クアドラントにおける方位角分配を測定するために、供給液の100重量%が単一の方位角クアドラントの反応媒体中に排出させる。これは、方位角クアドラントが、両方の供給開口部が単一の方位角クアドラントに位置するような方位角に向けることができるためである。
供給開口部の適正な方位角間隔に関連する利点に加えて、気泡塔型反応器中の供給開口部の適正な半径方向間隔も重要であり得ることを発見した。反応媒体中に導入される被酸化性化合物の相当部分が、容器の側壁から内側に向かって半径方向に間隔をあけて配置された供給開口部を経て排出されるのが好ましい。従って、本発明の一実施態様において、被酸化性化合物の相当部分は、反応ゾーンを規定する直立側壁から内側に向かって間隔をあけて配置された「好ましい半径方向供給ゾーン」に位置する供給開口部を経て反応ゾーンに入る。
再び図7を参照すると、好ましい半径方向供給ゾーンFZは、反応ゾーン28中に中心がある、外径DOが0.9D(Dは反応ゾーン28の直径である)の理論的直立円筒の形をとることができる。従って、厚さ0.05Dの外環OAが、好ましい半径方向供給ゾーンFZと反応ゾーン28を規定する側壁の内側との間に規定される。この外環OAに位置する供給開口部によっては、被酸化性化合物が、ほとんど又は全く、反応ゾーン28に導入されないことが好ましい。
別の実施態様において、反応ゾーン28の中央には、被酸化性化合物が、ほとんど又は全く導入されないのが好ましい。従って、図8に示されるように、好ましい半径方向供給ゾーンFZは、反応ゾーン28に中心がある、外径DOが0.9Dで且つ内径DIが0.2Dの理論的直立環の形をとることができる。従って、この実施態様においては、直径が0.2Dの内筒ICが、好ましい半径方向供給ゾーンFZの中央から「切り取られる」。この内筒ICに位置する供給開口部によっては、被酸化性化合物が、ほとんど又は全く、反応ゾーン28中に導入されないのが好ましい。
本発明の好ましい実施態様において、好ましい半径方向供給ゾーンが前述の円筒又は環の形状を有するか否かにかかわらず、被酸化性化合物の相当部分が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に導入される。より好ましくは、被酸化性化合物の少なくとも約25重量%が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に排出される。更に好ましくは、被酸化性化合物の少なくとも約50重量%が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に排出される。最も好ましくは、被酸化性化合物の少なくとも75重量%が、好ましい半径方向供給ゾーン中に位置する供給開口部を経て反応媒体36中に排出される。
図7及び8に示される理論的方位角クアドラント及び理論的な好ましい半径方向供給ゾーンを液相供給流の分配に関して説明したが、気相酸化剤流の適正な方位角及び半径方向分配もまた、いくつかの利点を有することを発見した。従って、本発明の一実施態様においては、前に示した、液相供給流の方位角及び半径方向分配の説明を、気相酸化剤流が反応媒体36中に導入する方法にも適用する。
図12〜15を参照すると、代替酸化剤スパージャー200が、リング部材202及び1対の酸化剤入口導管204、206を一般に含むものとして示されている。図12〜15の酸化剤スパージャー200は、図1〜11の酸化剤スパージャー34と同様であるが、以下の3つの主な違いがある:(1)酸化剤スパージャー200は対角線のクロス部材を含まない;(2)リング部材202の上部は、酸化剤を上向きに排出する開口部を有さない;(3)酸化剤スパージャー200は、リング部材202の下部にはるかに多くの開口部を有する。
おそらく図14及び15に最もよく示されるように、酸化剤スパージャーリング202の底部は多数の酸化剤用開口部208を提供する。酸化剤用開口部208は、好ましくは酸化剤用開口部208によって規定される総孔面積の少なくとも約1%がリング部材202の中心線210(図15)の下方に位置するように構成される。ここで、中心線210は、リング部材202の体積中心の高さに位置する。より好ましくは、全酸化剤用開口部208によって規定される総孔面積の少なくとも約5%が中心線210の下方に位置し、総孔面積の少なくとも約2%が、垂線の約30°以内のほぼ下向きに酸化剤流を排出する開口部208によって規定されている。更に好ましくは、全酸化剤用開口部208によって規定される総孔面積の少なくとも約20%が中心線210の下方に位置し、総孔面積の少なくとも約10%が、垂線の約30°以内のほぼ下向きに酸化剤流を排出する開口部208によって規定されている。最も好ましくは、全酸化剤用開口部208によって規定される総孔面積の少なくとも約75%が中心線210の下方に位置し、総孔面積の少なくとも約40%が、垂線の約30°以内のほぼ下向きに酸化剤流を排出する開口部208によって規定されている。中心線210の上方に位置する全酸化剤用開口部208によって規定される総孔面積の割合は、好ましくは約75%未満、より好ましくは約50%未満、更に好ましくは約25%未満、最も好ましくは5%未満である。
図14及び15に示されるように、酸化剤用開口部208は、下向き開口部208a及び斜め開口部208bを含む。下向き開口部208aは、垂線の約30°以内の、より好ましくは垂線の約15°以内の、最も好ましくは垂線の5°以内の角度でほぼ下向きに酸化剤流を排出するように構成される。斜め開口部208bは、垂線から約15〜75°の範囲の角度Aでほぼ外側下向きに酸化剤流を排出するように構成される。より好ましくは、角度Aは、垂線から約30〜約60°の範囲であり、最も好ましくは角度Aは、垂線から40〜50°の範囲である。
実質的に全ての酸化剤用開口部208がほぼ同一の直径を有するのが好ましい。酸化剤用開口部208の直径は、好ましくは約2〜約300mm、より好ましくは約4〜約120mm、最も好ましくは8〜60mmの範囲である。リング部材202中の酸化剤用開口部208の総数は、以下に詳述する低圧力降下基準を満たすように選択される。好ましくは、リング部材202中に形成される酸化剤用開口部208の総数は、少なくとも10個、より好ましくは酸化剤用開口部208の総数は約20〜約200個の範囲、最も好ましくは酸化剤用開口部208の総数は40〜100個の範囲である。
図12〜15は酸化剤スパージャー200の極めて特殊な構造を示すが、種々の酸化剤スパージャーの構造を用いて、ここに記載した利点を達成できることが注目される。たとえば、酸化剤スパージャーは、図12〜13に示される八角形のリング部材の構造を必ずしも有する必要はない。正しくは、酸化剤スパージャーは、酸化剤流を排出するための間隔をあけて配置された複数の開口部を使用する任意の構造の流通導管から形成されることが可能である。流通導管中の酸化剤用開口部の大きさ、数及び排出方向は好ましくは前述の範囲内である。更に、酸化剤スパージャーは好ましくは、前述の分子状酸素の方位角及び半径方向分配を提供するように構成される。
酸化剤スパージャーの具体的な構造にかかわらず、酸化剤スパージャーは、流通導管から出て酸化剤用開口部を通って反応ゾーンにいたる酸化剤流の排出に付随する圧力降下を最小限に抑えるように構成され、運転するのが好ましい。このような圧力降下は、(酸化剤スパージャーの酸化剤入口66a、bにおける流通導管の内側の酸化剤流の時間平均静圧)−(酸化剤流の1/2がその垂直位置の上方に導入され且つ酸化剤流の1/2がその垂直位置の下方に導入される高さにおける反応ゾーン中の時間平均静圧)として計算される。本発明の好ましい実施態様において、酸化剤スパージャーからの酸化剤流の排出に付随する時間平均圧力降下は、約0.3メガパスカル(MPa)未満、より好ましくは約0.2MPa未満、更に好ましくは約0.1MPa未満、最も好ましくは0.05MPa未満である。ここに記載する気泡塔型反応器の好ましい運転条件下では、酸化剤スパージャーの流通導管の内側における酸化剤流の圧力は、好ましくは約0.35〜約1MPa、より好ましくは約0.45〜約0.85MPa、最も好ましくは0.5〜0.7MPaの範囲である。
図2〜5に示される酸化剤スパージャーの構造に関して前に言及したように、酸化剤スパージャーの固体による汚染を防ぐために、酸化剤スパージャーを液体(例えば酢酸、水及び/又はp−キシレン)で連続的に又は定期的にフラッシするのが望ましい場合がある。このような液体フラッシを用いる場合には、有効量の液体(即ち、酸化剤中にもともと存在するかもしれない微量の液滴だけでない)が、毎日少なくとも1分超の期間、酸化剤用開口部から酸化剤スパージャーに通すのが好ましい。液体が酸化剤スパージャーから連続的又は定期的に排出される場合には、(酸化剤スパージャーを通る液体の質量流速)対(酸化剤スパージャーを通る分子状酸素の質量流速)の時間平均比は約0.05:1〜約30:1、又は約0.1:1〜約2:1、又は更には0.2:1〜1:1の範囲であるのが好ましい。
本発明の一実施態様において、被酸化性化合物(例えばp−キシレン)の相当部分は、酸化剤スパージャーを通して反応ゾーン中に導入することができる。このような構造において、被酸化性化合物及び分子状酸素は、酸化剤スパージャー中の同じ開口部を通して酸化剤スパージャーから排出されるのが好ましい。前述のように、被酸化性化合物は典型的にはSTPにおいて液体である。従って、この実施態様において、液相が被酸化性化合物を含み且つ気相が分子状酸素を含む二相流を、酸化剤スパージャーから排出することができる。しかし、被酸化性化合物の少なくとも一部が、酸化剤スパージャーから排出される際に気体状態である可能性があることを認識しなければならない。一実施態様においては、酸化剤スパージャーから排出される液相は、主として被酸化性化合物から形成される。別の実施態様においては、酸化剤スパージャーから排出される液相は、前述の供給流と実質的に同一の組成を有する。酸化剤スパージャーから排出される液相が供給流と実質的に同一の組成を有する場合には、このような液相は溶媒及び/又は触媒系を、供給流の組成に関して前述した量及び比で含むことができる。
本発明の一実施態様において、反応ゾーン中に導入される全被酸化性化合物の少なくとも10重量%が酸化剤スパージャーを経て反応ゾーン中に導入されるのが好ましく、より好ましくは、被酸化性化合物の少なくとも約40重量%が酸化剤スパージャーを経て反応ゾーン中に導入され、最も好ましくは、被酸化性化合物の少なくとも80重量%が酸化剤スパージャーを経て反応ゾーン中に導入される。被酸化性化合物の全て又は一部が酸化剤スパージャーを経て反応ゾーン中に導入される場合には、反応ゾーン中に導入される全分子状酸素の少なくとも約10重量%が、同一酸化剤スパージャーを経て導入されるのが好ましく、より好ましくは、被酸化性化合物の少なくとも約40重量%が同一酸化剤スパージャーを経て反応ゾーン中に導入され、最も好ましくは、被酸化性化合物の少なくとも80重量%が同一酸化剤スパージャーを経て反応ゾーン中に導入される。被酸化性化合物のかなりの量が酸化剤スパージャーを経て反応ゾーン中に導入される場合には、1つ又はそれ以上の温度感知装置(例えば熱電対)が、酸化剤スパージャー中に配設されるのが好ましい。これらの温度センサーは、酸化剤スパージャー中の温度が危険なほど高くならないことを確実にするのを助けるために使用できる。
図16〜18を参照すると、気泡塔型反応器20が、スラリー出口38近くの反応ゾーン28の底部に配設された内部脱気容器300を含むものとして示されている。反応媒体36の脱気時には比較的速い速度で不純物形成副反応が起こることを発見した。ここで使用する用語「脱気」は、多相反応媒体からの気相の離脱を意味するものとする。反応媒体36が非常によく通気されている(ガス・ホールドアップ>0.3)場合には、不純物の形成はごく少ない。反応媒体36が非常に無通気である(<ガス・ホールドアップ<0.01)場合には、不純物の形成はやはりごく少ない。しかし、反応媒体が部分通気される(ガス・ホールドアップ0.01〜0.3)場合には、不所望な副反応が促進され、不純物の発生が増加する。脱気容器300は、部分通気された状態にある反応媒体36の容量を最小限に抑えることによって、また、反応媒体36の脱気に要する時間を最小限に抑えることによって、この問題及び他の問題に対処する。実質的に脱気されたスラリーが、脱気容器300の底部から生成され、スラリー出口38を経て反応器20から出る。実質的に脱気されたスラリーは、好ましくは約5容量%未満、より好ましくは約2容量%、最も好ましくは1容量%の気相を含む。
図16において、気泡塔型反応器20は、液面調節器302及び流量調節弁304を含むものとして示されている。液面調節器302及び流量調節弁304は協力して、反応媒体36を反応ゾーン28中の実質的に一定の高さに保持する。液面調節器302は、反応媒体36の上面44の高さを感知し(例えば差圧レベル式液面感知又は核(nuclear)液面感知による)、反応媒体36の高さに応答して調節信号306を生じるように作動する。流量調節弁304は、調節信号306を受けて、スラリー出口導管308を通るスラリーの流量を調節する。従って、スラリー出口38から出るスラリーの流速は、反応媒体36の高さが高すぎる場合の最大スラリー体積流速(Fmax)と反応媒体36の高さが低すぎる場合の最小スラリー体積流速(Fmin)との間で変動することができる。
反応ゾーン28から固相酸化生成物を除去するためには、一部分を最初に脱気容器300に通す必要がある。脱気容器300は、液体及び固体がスラリー出口38に向かって下向きに流れるにつれて、反応媒体36の気相を反応媒体36の液相及び固相から自然に上昇させる低乱流の内容積を生じる。液相及び固相からの気相の上昇は、液相及び固相の気相の自然の上向き浮揚性による。脱気容器300が用いられる場合には、充分に通気された三相媒体から充分に脱気された二相スラリーへの反応媒体36の遷移が速く且つ効率的である。
図17及び18を参照すると、脱気容器300は、間の脱気ゾーン312を規定するほぼ直立の側壁308を含む。好ましくは、側壁308は、垂線の約30°以内で、より好ましくは垂線の約10°以内で上向きに伸びる。最も好ましくは、側壁308は実質的に垂直である。脱気ゾーン312は、反応ゾーンとは分かれており、高さh及び直径dを有する。側壁308の上端310は、反応ゾーン28から内容積312中に反応媒体を受けるように開かれている。側壁308の下端は、遷移部314を経てスラリー出口38に液体連結されている。スラリー出口38の開口部が大きい場合又は側壁308の直径dが小さい場合のようないくつかの場合には、遷移部314は排除されることができる。おそらく図18に最もよく示されるように、脱気容器300はまた、脱気ゾーン312に配設されたボルテックスブレーカー316を含むことができる。ボルテックスブレーカー316は、固相及び液相がスラリー出口38に向かって下向きに流れる際の渦の形成を妨ぐように作動する。
脱気容器300中における固相及び液相からの気相の適切な離脱を可能にするためには、内部脱気ゾーン312の高さh及び水平断面積が慎重に選ばれる。スラリーの最大量が回収されている場合(即ち、スラリーがFmaxで回収されている場合)であっても、気泡が脱気容器300の底部出口に達する前に気泡容積の実質的に全てが固相及び気相から上昇できるように、内部脱気ゾーン312の高さh及び水平断面積は充分な距離及び時間を提供しなければならない。従って、脱気ゾーン312の断面積は、脱気ゾーン312を通る液相及び固相の最大下向き速度(Vdmax)が、液相及び固相を通る気相気泡の自然上昇速度(Vu)よりもかなり小さいのが好ましい。脱気ゾーン312を通る液相及び固相の最大下向き速度(Vdmax)は、前述の最大スラリー体積流量(Fmax)において起こる。液相及び固相を通る気泡の自然上昇速度(Vu)は、気泡の大きさによって異なるが;液相及び固相を通る直径0.5cmの気泡の自然上昇速度(Vu0.5)を、カットオフ値として使用できる。これは、反応媒体36中に最初に存在する気泡容積の実質的に全てが0.5cmより大きいためである。脱気ゾーン312の断面積は、VdmaxがVu0.5の約75%未満であるようにするのが好ましく、VdmaxがVu0.5の約40%未満であるようにするのがより好ましく、VdmaxがVu0.5の20%未満であるようにするのが最も好ましい。
脱気容器300の脱気ゾーン312中の液相及び固相の下向き速度は、(スラリー出口38を通る脱気スラリーの体積流速)÷(脱気ゾーン312の最小断面積)として計算される。脱気容器300の脱気ゾーン312中の液相及び固相の下向き速度は好ましくは約50cm/秒未満、より好ましくは約30cm/秒未満、最も好ましくは10cm/秒未満である。
脱気容器300の直立側壁308は円筒の形状を有するものとして示されているが、側壁308は、それが適当な容積、断面積、幅d及び高さhを有する内容積を規定するならば、種々の形状(例えば三角形、正方形又は楕円形)をなす多数の側壁を含むことができるであろうことがわかる。本発明の好ましい実施態様において、dは、約0.2〜約2m、より好ましくは約0.3〜約1.5m、最も好ましくは0.4〜1.2mの範囲である。本発明の好ましい実施態様において、hは、約0.3〜約5m、より好ましくは約0.5〜約3m、最も好ましくは0.75〜2mの範囲である。
本発明の好ましい実施態様において、脱気ゾーン312の水平断面積積が脱気ゾーン312の全高hに沿って実質的に一定であるように、側壁308は実質的に垂直である。好ましくは、脱気ゾーン312の最大水平断面積は、反応ゾーン28の最大水平断面積の約25%未満である。より好ましくは、脱気ゾーン312の最大水平断面積は、反応ゾーン28の最大水平断面積の約0.1〜約10%の範囲である。最も好ましくは、脱気ゾーン312の最大水平断面積は、反応ゾーン28の最大水平断面積の0.25〜4%の範囲である。脱気ゾーン312の最大水平断面積は、好ましくは約0.02〜約3m2、より好ましくは約0.05〜約2m2、最も好ましくは0.1〜1.2m2の範囲である。脱気ゾーン312の容積は、好ましくは反応媒体36又は反応ゾーン28の総容積の約5%未満である。より好ましくは、脱気ゾーン312の容積は、反応媒体36又は反応ゾーン28の総容積の約0.01〜約2%の範囲である。最も好ましくは、脱気ゾーン312の容積は、反応媒体36又は反応ゾーン28の総容積の0.05〜約1%の範囲である。脱気ゾーン312の容積は、好ましくは約2m3未満、より好ましくは約0.01〜約1m3の範囲、最も好ましくは0.05〜0.5m3の範囲である。
図19を参照すると、気泡塔型反応器20は、外部脱気容器400を含むのとして示されている。この構造においては、通気された反応媒体36が、容器シェル22の側部の高置開口部を経て反応ゾーン28から回収される。回収された通気媒体は、固相及び液相からの気相の離脱のために、外部導管402を経て外部脱気容器400に運搬される。離脱気相が導管404を経て脱気容器400から出る一方、実質的に脱気されたスラリーは導管406を経て脱気容器400から出る。
図19において、出口導管402は、ほぼまっすぐで、水平で、容器シェル22に直交するものとして示されている。これは単に1つの都合のよい構造に過ぎず;出口導管402は、気泡塔型反応器20を外部脱気容器400に有効に接続するのであれば、いずれの点においても異なっていてもよい。導管404に目を転ずると、被酸化性化合物及び酸化剤を含む、淀んだガスポケットに関する安全性の問題をコントロールするために、この導管は、脱気容器400の頂部又はその近くで接続されるのが有益である。更に、導管402及び404は、バルブのような流れ分離手段を有効に含むことができる。
図19に示されるように、反応媒体36が高い位置の出口(elevated outlet)を経て反応器20から回収される場合には、気泡塔型反応器20には、反応ゾーン28の底部52近くに下部出口408が装着されるのが好ましい。下部出口408及びこれに連結された下部導管410は、運転停止の間に反応器20をデインベントリーする(deinnventory)(即ち、空にする)のに使用できる。好ましくは、1つ又はそれ以上の下部出口408が、反応媒体36の高さの下1/3に、より好ましくは反応媒体36の下1/4に、最も好ましくは反応媒体の最も低い点に設けられる。
図19に示される高い位置のスラリー回収及び脱気システムの場合には、下部導管410及び出口408は、酸化の間に反応ゾーン28からスラリーを回収するのには用いられない。淀んだ流通導管を含む、スラリーの無通気及びそうでなければ撹拌されていない部分において、固形分は重力によって沈降する傾向があることが当業界で知られている。更に、沈降固体(例えばテレフタル酸)は、沈澱及び/又は結晶再編成を続けることによって大きい凝集塊の状態に固まる傾向があり得る。従って、下部流通導管410の目詰まりを回避するために、反応器20の通常運転の間に、脱気容器400の底部からの脱気スラリーをわずかに用いて、下部導管410が連続的に又は断続的にフラッシされることができる。導管410にこのようなフラッシを提供するための好ましい手段は、導管410中のバルブ412を定期的に開き、ごくわずかの脱気スラリーを導管410を通して下部開口部408を経て反応ゾーン28まで流すことである。バルブ412が完全に又は部分的に開かれている場合であっても、下部導管410を通って流れて反応ゾーン28に戻る脱気スラリーはごくわずかである。下部導管410のフラッシに用いられない脱気スラリーの残りの部分は、更に下流の処理(例えば精製)のために反応器20から離れて導管414を経て運搬される。
相当期間にわたる(例えば、>100時間)気泡塔型反応器20の通常運転の間において、下部導管410のフラッシに使用される脱気スラリーの量は、脱気容器400の底部からの生成された総脱気スラリーの50重量%未満、より好ましくは約20重量%未満、最も好ましくは5重量%未満であるのが望ましい。更に、相当期間にわたって、下部導管410のフラッシに用いられる脱気スラリーの平均質量流速は、反応ゾーン28への被酸化性化合物の平均質量流速の約4倍未満、より好ましくはその平均質量流速の約2倍未満、更に好ましくはその平均質量流速未満、最も好ましくはその平均質量流速の0.5倍未満であるのが望ましい。
再び図19を参照すると、脱気容器400は、脱気ゾーン418を規定する実質的に直立の、好ましくは円筒形の側壁416を含む。脱気ゾーン418は、直径d及び高さhを有する。高さhは、通気された反応媒体が脱気容器400に入る位置と側壁の416の底部との間の垂直距離として測定される。脱気ゾーン418の高さh、直径d、面積及び容積は、好ましくは図16〜18に示された脱気容器300の脱気ゾーン312に関して前述したのと実質的に同じである。更に、脱気ゾーン400は、側壁416を脱気ゾーン418の上方に延長することによって形成される上部セクション420を含む。脱気容器400の上方部分420は任意の高さを有することができるが、好ましくは反応ゾーン28中の反応媒体36の液面に向かって上方向に又はその液面の上方まで伸びる。上部セクション420は、導管404を経て脱気容器400から出る前に気相が液体及び固相から適正に離脱する空間を有することを保証する。導管404は離脱された気相を反応器20の離脱ゾーンに戻すものとして示されているが、導管404は別法として出口導管402の上方の任意の高さにおいて容器シェル22に連結させることもできるであろうこともわかっている。場合によっては、脱気容器400からの離脱気相を、導管40中の除去された塔頂蒸気流と一緒にし且つ、更なる処理のために、下流に送るように、導管404は気体出口導管40に連結させることができるであろう。
図20に目を転ずると、気泡塔型反応器20は、内部−外部混成型脱気容器500を含むものとして示されている。この構造においては、反応媒体36の一部が、容器シェル22の側壁中の非常に大きい高置開口部502を通して反応ゾーン28から回収される。次いで、回収された反応媒体36は、直径が比較的大きいエルボ導管504を通して運搬され、脱気容器500の頂部に入る。図20において、エルボ導管504は、容器シェル22の側壁に直角に接続されるものとして且つ約90°の角度のなだらかな湾曲部を含むものとして示されている。これは単なる1つの都合のよい構造であり;エルボ導管504は、前述のように気泡塔型反応器20を外部脱気容器500に有効に接続するのであれば、全ての点で異なっていてもよい。更に、エルボ導管504はバルブのような流れ分離手段を有効に含むことができる。
脱気容器500において、気相は上向きに移動するのに対し、固相及び液相は下向きに移動する。上向きに移動する気相は、エルボ導管504に再び入り、次いで開口部502を通って反応ゾーン28中に戻る。従って、入ってくる反応媒体36と出て行く離脱気体との向流が開口部502において起こり得る。脱気されたスラリーは導管506を経て脱気容器500から出る。脱気容器500は、脱気ゾーン510を規定する実質的に直立の、好ましくは円筒形の側壁508を含む。脱気ゾーン510は、高さh及び直径dを有する。高置開口部502及びエルボ導管504は、脱気ゾーン510の直径dと同じか又はそれより大きい直径を有するのが好ましい。脱気ゾーン510の高さh、直径d、面積及び容積は好ましくは、図16〜18に示された脱気容器300の脱気ゾーン312に関して前述したのと実質的に同一である。
図19及び20は、反応ゾーン28において生成された固体生成物(例えば粗製テレフタル酸)が高位置出口を経て反応ゾーン28から回収される気泡塔型反応器20の一実施態様を示す。気泡塔型反応器20の底部より上方の高い位置からの通気反応媒体36の回収は、反応ゾーン28の底部52における通気が不充分な反応媒体36の体積及びよどみの回避を助けることができる。本発明の他の態様によれば、反応媒体36の頂部近くにおける反応媒体36中の酸素及び被酸化性化合物(例えばp−キシレン)の濃度は好ましくは、底部近くよりも低い。従って、高い位置における反応媒体36の回収は、反応器20から回収される未反応の反応体の量を減少させることによって収率を増大することができる。また、ここに開示されたような高STR及び化学組成の勾配で気泡塔型反応器20を運転する場合には、反応媒体36の温度は垂直方向においてかなり変動する。このような条件下では、反応媒体36の温度は、典型的には反応ゾーン28の下端及び上端近くに極小を有する。下端近くでは、この極小は、酸化剤の全て又は一部が入る場所の近くにおける溶媒の蒸発に関連する。上端近くでは、この極小もやはり、溶媒の蒸発によるが、ここでは、反応媒体の下降圧力による。更に、追加の供給材料又は酸化剤が反応媒体に入れられる場所がどこであっても、上端と下端の間に他の極小が存在し得る。従って、酸化反応の発熱によって決定される1つ又はそれ以上の温度極大が反応ゾーン28の下端と上端の間に存在する。比較的高温の高い位置における反応媒体36の回収は下流の処理が比較的高温で行われる場合に特に有利であることができる。これは、下流の処理のための回収媒体の加熱に付随するエネルギーコストが減少するためである。
従って、本発明の好ましい実施態様において、下流の処理が比較的高温で行われる場合には、特に反応媒体36は液相供給流及び/又は気相酸化剤流の少なくとも50重量%が反応ゾーン28に入る位置より上方に配置された1つ又は複数の高位置出口を経て気泡塔型反応器20から回収される。より好ましくは、反応媒体36は、液相供給流及び/又は気相酸化剤流の実質的に全てが反応ゾーン28に入る位置より上方に配置された1つ又は複数の高位置出口を経て気泡塔型反応器20から回収される。好ましくは、気泡塔型反応器20から回収される固相成分及び液相成分の少なくも50重量%が1つ又は複数の高位置出口を経て回収される。より好ましくは、気泡塔型反応器20から回収される固相及び液相の実質的に全てが1つ又は複数の高位置出口を経て回収される。好ましくは、1つ又は複数の高位置出口は、反応ゾーン28の下端52より上方に少なくとも約1Dに位置する。より好ましくは、1つ又は複数の高位置出口は、反応ゾーン28の下端52より上方に少なくとの約2Dに位置する。最も好ましくは、1つ又は複数の高位置出口は、反応ゾーン28の下端52より上方に少なくとも3Dに位置する。反応媒体36の高さをHとすると、1つ又は複数の高位置出口は、垂直方向に約0.2H〜約0.8Hに、より好ましくは約0.3H〜約0.7Hに、最も好ましくは0.4H〜0.6Hに位置するのが好ましい。更に、反応ゾーンからの高位置出口における反応媒体の温度は、反応ゾーン28の下端52における反応媒体36の温度よりも少なくとも1℃高いのが好ましい。より好ましくは、反応ゾーン28の高位置出口における反応媒体36の温度は、反応ゾーン28の下端52における反応媒体36の温度よりも約1.5〜約16℃高い範囲である。最も好ましくは、反応ゾーン28の高位置出口における反応媒体36の温度は、反応ゾーン28の下端52における反応媒体36の温度よりも2〜12℃高い範囲である。
図21を参照すると、気泡塔型反応器20は、反応器20の底部に配置された代替の混成型脱気容器600を含むものとして示されている。この構造においては、通気された反応媒体36は、容器シェル22の下端52の比較的多き開口部602を通して反応ゾーン28から回収される。開口部602は、脱気容器600の開口した上端を規定する。脱気容器600において、気相は上向きに移動し、固相及び液相は下向きに移動する。下向きに移動する気相は、開口部602を通って反応ゾーン28に入る。従って、入っていく反応媒体36と出て行く離脱気体との向流が開口部602に発生する可能性がある。脱気されたスラリーは、導管604を経て脱気容器600から出る。脱気容器600は、脱気ゾーン608を規定する実質的に直立の、好ましくは円筒形の側壁606を含む。脱気ゾーン608は、高さh及び直径dを有する。開口部602は、脱気ゾーン608の直径dと同じか又はそれより大きい直径を有するのが好ましい。脱気ゾーン608の高さh、直径d、面積及び容積は好ましくは、図16〜18に示された脱気容器300の脱気ゾーン312に関して前述したのと実質的に同じである。
図22を参照すると、図21の気泡塔型反応器20が、代替酸化剤スパージャー620を含むものとして示されている。酸化剤スパージャー620は、リング部材622及び1対の入口導管624、626を含む。リング部材622は、好ましくは図12〜15に関して前述したリング部材202と実質的に同じ構造を有する。入口導管624、626は、容器シェル22の下部ヘッド48の開口部を通って下方に伸び、酸化剤流をリング部材622に酸化剤流を供給する。
図23を参照すると、図21の気泡塔型反応器20が、反応ゾーン28中に酸化剤流を導入するためのスパージャーを含まない手段を含むものとして示されている。図23の構造においては、酸化剤流は、酸化剤用導管630、632を経て反応器20に供給される。酸化剤用導管630、632は、容器シェル22の下部ヘッド48中の個別の酸化剤用開口部634、636に連結される。酸化剤流は、酸化剤用開口部634、636を経て反応ゾーン28中に直接導入される。任意の衝突板638、640を、酸化剤流の流れを、それが反応ゾーン28に最初に入ってすぐにそらすように設けることができる。
前述のように、反応媒体中の高濃度の被酸化性化合物のゾーンは不純物を形成するおそれがあるので、酸化反応器は、このようなゾーンを回避するように構成され且つ運転されるのが好ましい。反応媒体中における被酸化性化合物(例えばp−キシレン)の初期分散を改善する1つの方法は、液体による被酸化性化合物の稀釈である。被酸化性化合物の稀釈に用いられる液体は、被酸化性化合物が反応ゾーンに供給される位置から相当離れた位置の反応媒体の一部を源とすることができる。反応媒体の離れた部分からのこの液体は、主反応器にその内部及び/又は外部で配設された流通導管を経て被酸化性化合物の入口の位置の近傍の位置に再循環させることができる。
図24及び25は、内部導管(図24)又は外部導管(図25)を用いて、反応媒体の離れた部分から、被酸化性化合物の入口近くの位置に液体を循環させる2つの好ましい方法を示す。入口(即ち、液体が導管に入る1つ又は複数の開口部)から出口(即ち、液体が導管から排出される1つ又は複数の開口部)までの流通導管の長さは、好ましくは約1m超、より好ましくは約3m超、更に好ましくは約6m超、最も好ましくは9m超である。しかし被酸化性化合物供給材料が最初に放出される容器の真上又はすぐ横におそらく位置するであろう別の容器から液体が得られる場合には、導管の実際の長さはそれほど関係なくなる。反応媒体の少なくとも一部を含む任意の別個の容器からの液体は、被酸化性化合物の初期稀釈のための好ましい供給源である。
供給源がどのようなものであっても、導管を通って流れる液体は、導管の少なくとも1つの出口に直接隣接した反応媒体よりも低い定常濃度の被酸化性化合物を有するのが好ましい。更に、導管を通って流れる液体は、液相中の被酸化性化合物の濃度が約100,000ppmw未満、より好ましくは約10,000ppmw未満、更に好ましくは約1,000ppmw未満、最も好ましくは100ppmw未満であるのが望ましい。この場合、濃度は、被酸化性化合物供給材料のインクレメント(increment)及び任意の任意的な別の溶媒供給材料を導管に添加する前に測定される。被酸化性化合物供給材料のインクレメント及び任意の溶媒供給材料の添加後に測定される場合には、反応媒体に入る、一緒になった流体流は、液相中の被酸化性化合物の濃度が約300,000ppmw未満、より好ましくは約50,000ppmw未満、最も好ましくは10,000ppmw未満であるのが望ましい。
循環される液体が反応媒体内における被酸化性化合物の望ましい全勾配を抑えるように、導管中の流れを充分に低い速度に保持するのが望ましい。これに関連して、(被酸化性化合物のインクレメントが最初に放出される反応ゾーン中の液相の質量)対(導管を通って流れる液体の質量流速)の比は約0.3分超、より好ましくは約1分超、更に好ましくは約2〜約120分、最も好ましくは3〜60分であるのが望ましい。
液体を導管を通して強制的に流すための多くの手段がある。好ましい手段には、重力、駆動流体として気体若しくは液体又は両者を用いる全ての型のエダクター、全ての型の機械ポンプがある。エダクターを用いる場合には、本発明の一実施態様は、駆動流体として、被酸化性化合物の供給材料(液体又は気体)、酸化剤の供給材料(気体)、溶媒の供給材料(液体)及びポンプ輸送される反応媒体の源(スラリー)からなる群から選ばれた少なくとも1種の流体を用いる。別の実施態様は、駆動流体として、被酸化性化合物の供給材料、酸化剤の供給材料及び溶媒の供給材料からなる群から選ばれた少なくとも2種の流体を用いる。更に別の実施態様は、駆動流体として、被酸化性化合物の供給材料、酸化剤の供給材料及び溶媒の供給材料の組合せを用いる。
循環導管の適当な直径は、搬送される材料の量及び性質、流れを強制的に動かすのに利用できるエネルギー及び資本コストの検討によって変動できる。このような導管の最小直径は、約0.02m超、より好ましくは約0.06〜約2m、最も好ましくは0.12〜0.8mであるのが望ましい。
前述のように、導管を通る流れは、特定の好ましい範囲に制御することが望ましい。流通導管を造る間に適当な一定の形状寸法を決めることによってこの制御に影響を与える多くの手段が当業界で知られている。別の好ましい実施態様は、特に全ての種類及び銘柄のバルブ、任意の手段による手動運転及び電動運転、センサーからの又はセンサーを用いないフィードバック制御ループを含む、運転中に可変である形状寸法の使用である。稀釈液体の流れを制御するための別の好ましい手段は、導管の入り口と出口の間のエネルギー入力を変動させることである。好ましい手段には、エダクターへの1種又はそれ以上の駆動流体の流速の変更、ポンプ駆動機構へのエネルギー入力の変更及び重量を用いる場合には密度差又は高度差の変更がある。これらの好ましい手段は、また、あらゆる組合せで使用できる。
反応媒体からの液体の循環に使用される導管は、当業界で知られた任意の型であることができる。一実施態様は、全部又は一部が従来の配管材料を用いて造られた導管を使用する。別の実施態様は、全部又は一部が反応器壁を導管の一部分として用いて造られた導管を用いる。導管は、反応器の境界線内に全て閉じこめられた構造である(図24)こともできるし、或いは全てが反応器の外に造られる(図25)こともできるし、或いは反応器の内部と外部の両方の部分を含むこともできる。
本発明者らは、比較的大きい反応器においては、特に導管を通して液体を移動させるために種々の設計の複数の導管を有することが望ましい場合があることを考慮している。更に、導管の1つ又は全てに対して複数の位置で複数の導管を設けるのが望ましい場合がある。本発明の他の態様によれば、設計の詳細が、被酸化性化合物の定常濃度の望ましい全勾配を、被酸化性化合物供給材料の望ましい初期稀釈とバランスさせるであろう。
図24及び25は共に、導管に連結された脱気容器を使用する設計を示す。この脱気容器は、入ってくる被酸化性化合物の稀釈に用いられる反応媒体の部分が、実質的に脱気されたスラリーであることを保証する。しかし、入ってくる被酸化性化合物の稀釈に用いられる液体又はスラリーは、脱気された形態だけでなく通気された形態であることもできることがわかっている。
被酸化性化合物供給材料の稀釈を生じるために、導管を通って流れる液体を用いることは、気泡塔型反応器において特に有用である。更に、気泡塔型反応器においては、導管の出口が被酸化性化合物の添加位置の充分近くに存在するならば、被酸化性化合物供給材料を導管中に直接添加しなくても、被酸化性化合物の初期稀釈に充分なメリットが達成されることができる。このような実施態様において、導管の出口は、被酸化性化合物の最も近い添加位置の約27導管出口直径以内、より好ましくは約9導管出口直径以内、更に好ましくは約3導管出口直径以内、最も好ましくは1導管出口直径以内に位置するのが望ましい。
また、フローエダクターは、反応媒体の離れた部分から稀釈液体を得るための導管を用いなくても、本発明の一実施態様に係る気泡塔型酸化反応器中における被酸化性化合物供給材料の初期稀釈に有用であることができることを発見した。このような場合には、エダクターは反応媒体内部に位置し、反応媒体からエダクターのスロート中への開放通路を有する。エダクターのスロートにおいては、低い圧力が隣接反応媒体を吸い込む。2つの可能なエダクター構造の例が図26及び27に示される。これらのエダクターの好ましい実施態様において、被酸化性化合物の最も近い供給位置は、エダクターのスロートの約4m以内、より好ましくは約1m以内、最も好ましくは0.3m以内である。別の実施態様において、被酸化性化合物は加圧下で駆動流体として供給される。更に別の実施態様においては、溶媒又は酸化剤が、加圧下で被酸化性化合物と共に追加駆動流体として供給される。更に別の実施態様においては、溶媒及び酸化剤の両方が、加圧下で被酸化性化合物と共に追加駆動流体として供給される。
本発明者らは、比較的大きい反応器においては、特に反応媒体内部の種々の位置に配置された種々の設計の複数のエダクターを有するのが望ましい場合があることを考慮している。本発明の他の態様によれば、設計の詳細が、被酸化性化合物の定常濃度中の望ましい全勾配と、被酸化性化合物供給材料の望ましい初期稀釈とをバランスさせるであろう。更に、本発明者らは、エダクターから出るフロープルームは任意の方向に向けられることができることを考慮している。複数のエダクターを用いる場合には、各エダクターは独立して、これもやはり任意の方向に向けられることができる。
前述のように、図1〜27に関して前述した、気泡塔型反応器20のいくつかの物理的特徴及び操作上の特徴は、反応媒体36の圧力、温度及び反応体(即ち、酸素及び被酸化性化合物)濃度の垂直勾配を実現する。前述の通り、これらの垂直勾配は、全体にわたって比較的均一な圧力、温度及び反応体濃度のよく混合された反応媒体を好む従来の酸化方法に比較して、より効率的且つ経済的な酸化方法を実現できる。本発明の一実施態様に係る酸化系を用いることによって可能となる酸素、被酸化性化合物(例えばp−キシレン)及び温度の垂直勾配について、これからより詳細に記載する。
図28を参照すると、気泡塔型反応器20中における酸化の間に反応媒体36中に存在する反応体濃度勾配を定量化するために、反応媒体36の全容積は、等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割することができる。図28は、反応媒体36を等容積の30個の別個の水平スライスに分割する概念を示す。最上部及び最下部の水平スライスを除いて、各水平スライスは、頂部及び底部で仮想水平面と境界を接し且つ側面で反応器20の壁と境界を接する別々の容積である。最上部の水平スライスは、底部で仮想水平面と境界を接し且つ頂部で反応媒体36の上面と境界を接する。最下部の水平スライスは、上端で仮想水平面と境界を接し且つ底部で容器シェルの底部と境界を接する。反応媒体36を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割すると、各水平スライスの時間平均及び容積平均濃度が算出することができる。30個の全水平スライスの最大濃度を有する単一の水平スライスを、「C−max水平スライス」とすることができる。C−max水平スライスの上方に位置し且つC−max水平スライスの上方に位置する全水平スライスの最小濃度を有する単一の水平スライスを、「C−min水平スライス」とすることができる。次いで、垂直方向の濃度勾配が、(C−max水平スライス中の濃度)対(C−min水平スライス中の濃度)の比として計算することができる。
酸素濃度勾配の定量化に関しては、反応媒体36を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割する場合に、O2−max水平スライスを、30個の全水平スライスの最大酸素濃度を有するものと見なし;O2−min水平スライスを、O2−max水平スライスの上方に位置する水平スライスの最小酸素濃度を有するものと見なす。水平スライスの酸素濃度は、反応媒体36の気相中で、時間平均及び容積平均モル湿潤ベースで測定される。(O2−max水平スライスの酸素濃度)対(O2−min水平スライスの酸素濃度)の比は、約2:1〜約25:1、より好ましくは約3:1〜約15:1、最も好ましくは4:1〜10:1の範囲であるのが望ましい。
典型的には、O2−max水平スライスは反応媒体36の底部近くに位置し、O2−min水平スライスは反応媒体の頂部近くに位置するであろう。好ましくは、O2−min水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も上の5個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、O2−min水平スライスは、図28に示されるように、30個の別々の水平スライスのうち最も上の1つである。好ましくは、O2−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の10個の水平スライスのうちの1つである。最も好ましくは、O2−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の5個の水平スライスのうちの1つである。例えば、図28は、O2−maxスライスを、反応器20の底部から3つめの水平スライスとして示している。O2−min水平スライスとO2−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約2W、より好ましくは少なくとも約4W、最も好ましくは少なくとも6Wであるのが望ましい。O2−min水平スライスとO2−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約0.2H、より好ましくは少なくとも約0.4H、最も好ましくは少なくとも0.6Hであるのが望ましい。
2−min水平スライスの湿潤ベースでの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約0.1〜約3モル%、より好ましくは約0.3〜約2モル%、最も好ましくは0.5〜1.5モル%の範囲である。O2−max水平スライスの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約4〜約20モル%、より好ましくは約5〜約15モル%、最も好ましくは6〜12モル%の範囲である。気体出口40を経て反応器20から排出される気体流出物中の酸素の、乾燥ベースでの時間平均濃度は、好ましくは約0.5〜約9モル%、より好ましくは約1〜約7モル%、最も好ましくは1.5〜5モル%の範囲である。
酸素濃度は反応媒体36の頂部に向かって非常に著しく減衰するので、酸素要求量は反応媒体36の頂部において減少するのが望ましい。反応媒体36の頂部近くにおける酸素要求量のこのような減少は、被酸化性化合物の最小濃度が反応媒体36の頂部近くに位置する、被酸化性化合物(例えばp−キシレン)濃度の垂直勾配を作り出すことによって達成されることができる。
被酸化性化合物(p−キシレン)の濃度勾配の定量化に関しては、反応媒体36を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割する場合に、OC−max水平スライスを、30個の全水平スライスの最大被酸化性化合物濃度を有するものと見なし;OC−min水平スライスを、OC−max水平スライスの上方に位置する水平スライスの最小被酸化性化合物濃度を有するものと見なす。水平スライスの被酸化性化合物濃度は、液相中で時間平均及び容積平均質量分率ベースで測定される。(OC−max水平スライスの被酸化性化合物濃度)対(OC−min水平スライスの被酸化性化合物濃度)の比は、約5:1超、より好ましくは約10:1超、更に好ましくは約20:1超、最も好ましくは40:1〜1000:1の範囲であるのが望ましい。
典型的には、OC−max水平スライスは反応媒体36の底部近くに位置し、OC−min水平スライスは反応媒体36の頂部近くに位置するであろう。好ましくは、OC−min水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も上の5個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、OC−min水平スライスは、図28に示されるように、30個の別々の水平スライスの最も上の1つである。好ましくは、OC−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の10個の水平スライスのうち1つである。最も好ましくは、OC−max水平スライスは、30個の別々の水平スライスのうち最も下の5個の水平スライスの1つである。例えば、図28は、OC−maxスライスを、反応器20の底部から5つめの水平スライスとして示す。OC−min水平スライスとOC−max水平スライスとの間の垂直間隔は少なくとも約2W(Wは反応媒体36の最大幅である)であるのが好ましい。より好ましくは、OC−min水平スライスとOC−max水平スライスとの間の垂直間隔は少なくとも約4W、最も好ましくは少なくとも6Wである。反応媒体36の高さをHとすると、OC−min水平スライスとOC−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約0.2H、より好ましくは少なくとも約0.4H、最も好ましくは少なくとも0.6Hであるのが望ましい。
OC−min水平スライスの液相中の時間平均及び容積平均被酸化性化合物(例えばp−キシレン)濃度は、好ましくは約5,000ppmw未満、より好ましくは約2,000ppmw未満、更に好ましくは約400ppmw未満、最も好ましくは1〜100ppmwの範囲である。OC−max水平スライスの液相中の時間平均及び容積平均被酸化性化合物濃度は、好ましくは約100〜約10,000ppmw、より好ましくは約200〜約5,000ppmw、最も好ましくは500〜3,000ppmwの範囲である。
気泡塔型反応器20は、被酸化性化合物の濃度に垂直勾配を与えるのが好ましいが、液相中の被酸化性化合物濃度が1,000ppmw超である反応媒体36の容量%を最小にするのも好ましい。液相中の被酸化性化合物濃度が1,000ppmw超である反応媒体36の時間平均容量%は、好ましくは約9%未満、より好ましくは約6%未満、最も好ましくは3%未満である。液相中の被酸化性化合物濃度が2,500ppmw超である反応媒体36の時間平均容量%は、好ましくは約1.5%未満、より好ましくは約1%未満、最も好ましくは0.5%未満である。液相中の被酸化性化合物濃度が10,000ppmw超である反応媒体36の時間平均容量%は、好ましくは約0.3%未満、より好ましくは約0.1%未満、最も好ましくは0.03%未満である。液相中の被酸化性化合物濃度が25,000ppmw超である反応媒体36の時間平均容量%は、好ましくは約0.03%未満、より好ましくは約0.015%未満、最も好ましくは0.007%未満である。本発明者らは、高レベルの被酸化性化合物を有する反応媒体36の容積が単一の連続した容積中に存在する必要がないことを考慮している。多くの時間において、気泡塔型反応器中のカオス的フローパターン(chaotic flow pattern)が、高レベルの被酸化性化合物を有する反応媒体36の2つ又はそれ以上の連続しているが差別される部分を同時に生じる。時間平均において用いられる各時間において、総反応媒体の0.0001容量%より大きい、このような連続しているが差別される全ての容積が、液相中に高レベルの被酸化性化合物濃度を有する総容積の測定のために合計される。
前述の、酸素及び被酸化性化合物の濃度勾配に加えて、温度勾配が反応媒体36中に存在するのが好ましい。再び図28を参照すると、この温度勾配は、濃度勾配と同様にして、反応媒体36を等容積の30個の別々の水平スライスに理論的に分割し且つ各スライスの時間平均及び体積平均温度を測定することによって定量化できる。最も下の15個の水平スライスのうち最低温度を有する水平スライスを次に「T−min水平スライス」とすることができ、T−min水平スライスの上方に位置し且つT−min水平スライスの上方の全スライスの最大温度を有する水平スライスを次に「T−max水平スライス」とすることができる。T−max水平スライスの温度は、T−min水平スライスの温度よりも少なくとも約1℃高いのが好ましい。より好ましくは、T−max水平スライスの温度は、T−min水平スライスの温度よりも約1.25〜約12℃高い範囲である。最も好ましくは、T−max水平スライスの温度は、T−min水平スライスの温度よりも2〜8℃高い範囲である。T−max水平スライスの温度は、好ましくは約125〜約200℃、より好ましくは約140〜約180℃、最も好ましくは150〜170℃の範囲である。
典型的には、T−max水平スライスは反応媒体36の中央近くに位置し、T−min水平スライスは反応媒体36の底部近くに位置するであろう。好ましくは、T−min水平スライスは、15個の最も低い水平スライスのうち最も下の10個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、T−min水平スライスは、15個の最も低い水平スライスのうち最も下の5個の水平スライスの1つである。例えば、図28は、T−min水平スライスを、反応器20の底部から2番目の水平スライスとして示している。好ましくは、T−max水平スライスは30個の別々の水平スライスのうち中央の20個の水平スライスの1つである。最も好ましくは、T−min水平スライスは30個の別々の水平スライスのうち中央の14個の水平スライスの1つである。例えば、図28は、T−max水平スライスを反応器20の底部から20番目の水平スライス(即ち中央の10個の水性スライスの1つ)として示す。T−min水平スライスとT−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約2W、より好ましくは少なくとも約4W、最も好ましくは少なくとも6Wであるのが望ましい。T−min水平スライスとT−max水平スライスとの間の垂直間隔は、少なくとも約0.2H、より好ましくは少なくとも約0.4H、最も好ましくは少なくとも0.6Hであるのが望ましい。
前述のように、垂直温度勾配が反応媒体36中に存在する場合には、反応媒体の温度が最も高い高位置において反応媒体36を回収するのが、回収生成物が比較的高温の更なる下流処理に供される場合には特に、有利であることができる。従って、図19及び20に示されるように、反応媒体36が1個又はそれ以上の高置出口を経て反応ゾーン28から回収される場合には、高置出口はT−max水平スライスの近くに位置するのが好ましい。高置出口は、好ましくはT−max水平スライスの10水平スライス以内、より好ましくはT−max水平スライスの5水平スライス以内、最も好ましくはT−max水平スライスの2水平スライス以内に位置する。
ここに記載した本発明の特徴の多くは、単一酸化反応器を用いるシステムだけでなく、多重酸化反応器システムにおいて使用できることを考慮している。更に、ここに記載した本発明のいくつかの特徴は、気泡撹拌反応器(即ち気泡塔型反応器)だけでなく、機械的撹拌酸化反応器及び/又は流動撹拌酸化反応器にも使用できる。例えば、本発明者らは、反応媒体全体にわたる酸素濃度及び/又は酸素消費速度の段階付け/変動に関連したいくつかの利点を発見した。反応媒体における酸素濃度/消費の段階付けによって実現される利点は、反応媒体の総容積が単一容器又は複数の容器いずれに含まれていても実現させることができる。更に、反応媒体中温酸素濃度/消費の段階付けによって実現される利点は、反応器が機械的撹拌、流動撹拌及び/又は気泡撹拌のいずれであっても、実現させることができる。
反応媒体中の濃度及び/又は消費速度の段階付けの程度を定量化する1つの方法は、反応媒体の2つ又はそれ以上の別個の20%連続容積を比較することである。これらの20%連続容積は、特定の形状によって規定される必要はない。しかし、各20%連続容積は、反応媒体の連続した容積から形成されなければならず(即ち各容積は「連続的」である)、20%連続容積は互いに重なり合ってはならない(即ち容積は「別個である」)。図29〜31は、これらの別個の20%連続容積が同一反応器中に位置する(図29)こともできるし、或いは複数の反応器中に位置する(図30及び31)こともできることを示す。図29〜31に示される反応器は機械的撹拌反応器、流動撹拌反応器及び/又は気泡撹拌反応器であることができることが考慮される。一実施態様において、図29〜31に示される反応器は、気泡撹拌反応器(即ち気泡塔型反応器)であるのが好ましい。
図29を参照すると、反応器20は反応媒体36を含むものとして示されている。反応媒体36は、第1の別個の20%連続容積37と第2の別個の20%連続容積39を含む。
図30を参照すると、多重反応器スステムが、第1反応器720a及び第2反応器720bを含むものとして示されている。反応器720a,bは協力して反応媒体736の総容積を含む。第1反応器720aは第1反応媒体部分736aを含み、第2反応器720bは第2反応媒体部分736bを含む。反応媒体736の第1の別個の20%連続容積737は第1反応器720a内に規定されるものとして示されており、反応媒体736の第2の別個の20%連続溶積739は第2反応器720b内に規定されるものとして示されている。
図31を参照すると、多重反応器システムが第1反応器820a、第2反応器820b及び第3反応器820cを含むものとして示されている。反応器820a、b、cは協力して反応媒体836の総容積を含む。第1反応器820aは第1反応媒体部分836aを含み;第2反応器820bは第2反応媒体部分836bを含み;第3反応器820cは第3反応媒体部分836cを含む。反応媒体836の第1の別個の20%連続容積837は、第1反応器820a内に規定されるものとして示され;反応媒体836の第2の別個の20%連続容積839は第2反応器820b内に規定されるものとして示され;反応媒体836の第3の別個の20%連続容積841は第3反応器820c内に規定されものとして示されている。
反応媒体中の酸素利用可能性の段階付けは、気相中に最も豊富な酸素モル分率を有する反応媒体の20%連続溶積を参照し且つ気相中に最も欠乏した酸素モル分率を有する反応媒体の20%連続容積を参照することによって、定量化させることができる。気相中に最高酸素濃度を含む反応媒体の別個の20%連続容積の気相中において、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約3〜約18モル%、より好ましくは約3.5〜約14モル%、最も好ましくは4〜10モル%の範囲である。気相中に最低酸素濃度を含む反応媒体の別個の20%連続容積の気相中において、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度は、好ましくは約0.3〜約5モル%、より好ましくは約0.6〜約4モル%、最も好ましくは0.9〜3モル%の範囲である。更に、(反応媒体の最も豊富な20%連続容積中の、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度)対(反応媒体の最も欠乏した20%連続容積中の、湿潤ベースの時間平均及び容積平均酸素濃度)の比は、好ましくは約1.5〜約20:1、より好ましくは約2:1〜約12:1、最も好ましくは3:1〜9:1の範囲である。
反応媒体中の酸素消費速度の段階付けは、最初に前述した酸素−STRに換算して定量化することができる。酸素−STRは前には全体的な意味で(即ち全反応媒体の平均酸素−STRの観点から)記載したが;反応媒体全体にわたる酸素消費速度の段階付けを定量化するために、酸素−STRは局所的な意味でも(即ち反応媒体の一部分)考慮されることができる。
本発明者らは、反応媒体中の圧力及び反応媒体の気相中の分子状酸素のモル分率に関して本明細書中に開示した望ましい勾配とほぼ調和して、反応媒体全体にわたって酸素−STRを変動させることが非常に有用であることを発見した。従って、(反応媒体の第1の別個の20%連続容積の酸素−STR)対(反応媒体の第2の別個の20%連続容積の酸素−STR)の比は、約1.5:1〜約20:1、より好ましくは約2:1〜約12:1、最も好ましくは3:1〜9:1の範囲であるのが望ましい。一実施態様において、「第1の別個の20%連続容積」は、「第2の別個の20%連続容積」よりも、分子状酸素が反応媒体中に最初に導入される位置の近くに位置する。部分酸化反応媒体が気泡塔型酸化反応器中に含まれるにせよ、反応媒体中の気相中において圧力及び/又は分子状酸素のモル分率に勾配が生じる任意の他の型の反応器(例えば、ほぼ水平のバッフルアセンブリによって場合によっては増大される、強力な半径方向流を有する複数のインペラーを用いて達成される複数の垂直に配置された撹拌ゾーンを有する機械的撹拌容器:垂直に配置された各撹拌ゾーン内に酸化剤流のかなりの逆混合が起こり得るのにもかかわらず、また、垂直に配置された隣接撹拌ゾーン間で酸化剤流の多少の逆混合が起こり得るのにもかかわらず、酸化剤流は反応器の下部近くの供給材料からほぼ上向きに上昇する)に含まれるにせよ、酸素−STRのこれらの大きい勾配は望ましい。即ち、反応媒体の気相中において圧力及び/又は分子状酸素のモル分率に勾配が存在する場合には、本発明者らは、ここに開示した手段によって、溶存酸素の化学的要求量に同様な勾配を作り出すことが望ましいことを発見した。
局所的酸素−STRを変動させるための好ましい手段は、本発明の他の開示に従って被酸化性化合物の濃度勾配を制御するために反応媒体の液相の混合を制御すること及び被酸化性化合物の供給位置を制御することである。局所的酸素−STRを変動させるための他の有用な手段は、局所的な温度差を生じることによって及び触媒及び溶媒成分の局所的混合物を変化させることによって(例えば、反応媒体の特定部分に蒸発冷却を引き起こすために追加気体を導入することによって、及び反応媒体の特定部分の活性を低下させるために比較的多量の水を含む溶媒流を添加することによって)、反応活性の差を生じることを含む。
図30及び31に関して前述したように、部分酸化反応を、多重反応器中で有効に実施することができる。この多重反応器中においては、第1反応器から出る分子状酸素の少なくとも一部分が、好ましくは少なくとも25%が、より好ましくは少なくとも50%が、最も好ましくは少なくとも75%が、第1/上流反応器を出る分子状酸素の追加インクレメントを、好ましくは10モル%超を、より好ましくは20%超を、最も好ましくは40%超を消費するために、1つ又はそれ以上のその後の反応器に導かれる。1つの反応器から他の反応器への分子状酸素のこのような連続流れを用いる場合には、第1反応器は、その後の反応器の少なくとも1つよりも高い反応強度で、好ましくは(第1反応器内の容器平均酸素−STR)対(その後の反応器内の容器平均酸素−STR)の比を約1.5:1〜約20:1の範囲、より好ましくは約2:1〜約12:1の範囲、最も好ましくは3:1〜9:1の範囲として運転するのが望ましい。
前述のように、本発明によれば、全ての型の第1反応器(例えば気泡塔型反応器、機械的撹拌反応器、逆混合反応器、内部段階的(internally staged)反応器、プラグフロー型反応器など)及び第1反応器と異なる型であってもなくてもよい、全ての型のその後の反応器が、その後の反応器への分子状酸素の連続流れに有用である。容器平均酸素−STRをその後の反応器内で低下させるための手段は、低温、低濃度の被酸化性化合物及び触媒成分と溶媒との特定の混合物(例えば、低濃度のコバルト、増大された濃度の水及び少量のイオン性銅のような触媒抑制剤の添加)の低反応活性を有効に含む。
第1反応器からその後の反応器への流れる際には、酸化剤流は、圧縮若しくは減圧、冷却若しくは加熱及び任意の量若しくは任意の種類の質量付加若しくは質量除去のような、当業界で知られた任意の手段によって処理することができる。しかし、第1反応器の頂部の絶対圧力が約2.0メガパスカル未満、より好ましくは約1.6メガパスカル未満、最も好ましくは1.2メガパスカル未満である場合には、その後の反応器中の低下した容器平均酸素−STRの使用が特に有用である。更に、その後の反応器中の低下していく容器平均酸素−STRの使用は、(第1反応器の上部の絶対圧力)対(少なくとも1つのその後の反応器の上部の絶対圧力)の比が約0.5:1〜6:1、より好ましくは約0.6〜約4:1、最も好ましくは0.7:1〜2:1の範囲である場合に特に有用である。その後の反応器のおけるこれらの下限未満への圧力低下は分子状酸素の利用可能性を過度に低下させ、これらの上限を超える圧力上昇は、酸化剤の新規供給の使用に比較してますますコストが高くなる。
容器平均酸素−STRが低下していく、その後の反応器への分子状酸素の連続流れを用いる場合には、被酸化性化合物、溶媒及び酸化剤の新規供給流がその後の反応器中及び/又は第1反応器中に流入することができる。反応媒体に液相及び固相が存在するならば、反応媒体の液相及び固相の流れは反応器間で任意の向きに流れることができる。第1反応器を出て次の反応器に入る気相の全て又は一部は、第1反応器からの反応媒体に液相又は固相が存在するならば、第1反応器からの反応媒体の液相又は固相の一部から分離されて又はそれと混合されて流れることができる。液相及び固相が存在するならば、液相及び固相を含む生成物流の流れを、システム中の任意の反応器中の反応媒体から回収することができる。
再び、図1〜29を参照すると、酸化は、好ましくは気泡塔型反応器中で、本明細書に開示した好ましい実施態様に従って、従来の酸化反応器とは著しく異なる条件下で実施する。本明細書に開示した好ましい実施態様に従って気泡塔型反応器20を用いてp−キシレンの粗製テレフタル酸(CTA)への液相部分酸化を行う場合には、局所反応強度の空間分布、局所蒸発強度の空間分布(spatial profile)及び局所温度の空間分布が、反応媒体内の液体のフローパターン及び好ましい比較的低い酸化温度と組合さって、独特で且つ有利な性質を有するCTA粒子の形成に寄与する。
図32A及び32Bは、本発明の一実施態様に従って製造されたベースCAT粒子を示す。図32Aは、ベースCTA粒子を倍率500倍で示し、図32BはベースCTA粒子の1つを拡大して、その粒子を倍率2,000倍で示す。おそらく図32Bに最もよく示されるように、各ベースCTA粒子は、典型的には、多数の小さい凝集CTA子粒子から形成され、従って、ベースCTA粒子に比較的大きい表面積、高い空隙率、低い密度及び良好な溶解性を与える。特に断らない限り、以下に記載する本発明のCTAの種々の性質は、CTAの代表的なサンプルを用いて測定する。この代表的なサンプルは、重さが少なくとも1gであり、且つ/又は少なくとも10,000個の個別のCTA粒子から形成される。ベースCTA粒子は典型的には約20〜約150ミクロン、より好ましくは約30〜約120ミクロン、最も好ましくは40〜90ミクロンの範囲の平均粒度を有する。CTA子粒子は典型的には約0.5〜約30ミクロン、より好ましくは約1〜約15ミクロン、最も好ましくは2〜5ミクロンの範囲の平均粒度を有する。図32A及び32Bに示されるベースCTA粒子比較的高い表面積は、Braunauer−Emmett−Teller(BET)表面積測定法を用いて定量化することができる。好ましくは、ベースCTA粒子は、少なくとも約0.6m2/gの平均BET表面積をする。より好ましくは、ベースCTA粒子は約0.8〜約4m2/gの範囲の平均BET表面積をする。最も好ましくは、ベースCTA粒子は0.9〜2m2/gの範囲の平均BET表面積をする。本発明の好ましい実施態様の最適化酸化方法によって形成されるベースCTA粒子の物理的性質(例えば粒度、BET表面積、空隙率及び溶解性)は、図35に関して以下に更に詳述するように、より効率的で且つ/又は経済的な方法によるCTA粒子の精製を可能にする。
前に示した平均粒度値は、偏光顕微鏡及び画像解析を用いて算出した。粒度分析に使用した装置は、4xPlan Flour N.A,0.13対物レンズの付いたNikon E800光学顕微鏡、Spot RT(登録商標)デジタルカメラ、及びバー粗なるコンピューターで実行するImage Pro Plus(登録商標)V4.5.0.19画像解析ソフトウェアを含んでいた。粒度分析法は以下の主な工程を含んでいた:(1)CTA粉末を鉱油中に分散させ;(2)この分散液の顕微鏡用スライド/カバースリップ(slip)を作成し;(3)偏光顕微鏡(直交ポーラー条件−粒子は黒い背景に鮮やかな物体として現れる)を用いてこのスライドを検査し;(4)各サンプル標本について異なる画像を取り込み(フィールドサイズ=3×2.25mm;ピクセルサイズ=1.84ミクロン/ピクセル);(5)Image Pro Plus(登録商標)ソフトフェアを用いて画像解析を実施し;(6)粒子の寸法を表計算ソフトにエクスポートし;そして(7)表計算ソフトにおいて統計に基づく特性決定を行う。「Image Pro Plus(登録商標)ソフトフェアを用いて画像解析を実施する」工程(5)は、以下の下位工程を含んでいた:(a)暗い背景上において白色の粒子を検出するために画像閾値を設定し;(b)二値画像を作成し;(c)ピクセルノイズを除去するためにシングルパス・オープンフィルターを走らせ;(d)画像中の全粒子を測定し;そして(e)各粒子に関して測定した平均直径を記録する。Image Pro Plus(登録商標)ソフトフェアは、個々の粒子の平均直径を、2°の間隔で粒子の質量中心を通して測定した粒子の直径の数平均長さと定義する。「表計算ソフトにおいて統計に基づく特性決定を行う」工程7は、体積加重平均粒度を以下のようにして計算することを含む。サンプル中のn個の粒子のそれぞれの体積を、粒子を球形であると仮定して、pi/6*Di 3を用いて計算し;各粒子の体積にその直径をかけて、pi/6*Di 4を求め;サンプル中の全粒子についてpi/6*Di 4の値を合計し;サンプル中の全粒子の体積を合計し;そして[サンプル中のn個の全粒子についての(pi/6*Di 4)の和]÷[サンプル中のn個の全粒子についての(pi/6*Di 3)の和]として体積加重粒径を算出する。ここで使用する「平均粒度」は、前記試験方法に従って算出された体積平均粒度を意味し、それはまた、D(4,3)と称する。
Figure 2008511665
更に、工程7は、総サンプル体積の種々の割合がより小さい粒度を求めることを含む。例えば、D(v,0.1)は、総サンプル体積の10%がより小さく且つ90%がより大きい粒度であり;D(v,0.5)は、サンプル体積の1/2がより大きく且つ1/2がより小さい粒度であり;D(v,0.9)は、総サンプル体積の90%がより小さい粒度などである。更に、工程7は、D(v,0.9)−D(v,0.1)[ここでは、「粒度スプレッド」と定義する]を算出することを含み;また、工程7は、粒度スプレッド値÷D(4,3)[ここでは、「粒度相対スプレッド」と定義する]を算出することを含む。
更に、前述のように測定したCTA粒子のD(v,0.1)は、約5〜約65ミクロン、より好ましくは約15〜約55ミクロン、最も好ましくは25〜45ミクロンの範囲であるのが望ましい。前述のように測定したCTA粒子のD(v,0.5)は、約10〜約90ミクロン、より好ましくは約20〜約80ミクロン、最も好ましくは30〜70ミクロンの範囲であるのが望ましい。前述のように測定したCTA粒子のD(v,0.9)は、約30〜約150ミクロン、より好ましくは約40〜約130ミクロン、最も好ましくは50〜110ミクロンの範囲であるのが望ましい。粒度相対スプレッドは、約0.5〜約2.0、より好ましくは約0.6〜約1.5、最も好ましくは0.7〜1.3の範囲であるのが望ましい。
前に示したBET表面積値は、Micromeritics ASAP2000(Micromeritics Instrument Corporation of Norcross,GA)で測定した。測定方法の第1工程において、粒子のサンプル2〜4gを秤量し、真空下で50℃において乾燥させた。次いで、サンプルを分析ガスマニホールド上に置き、77°Kまで冷却した。サンプルを既知体積の窒素ガスに暴露し且つ圧力減少を測定することによって、窒素吸着等温線を最小値5平衡圧において測定した。平衡圧は適当にはP/P0=0.01−0.20[Pは平衡圧であり、P0は液体窒素の77°Kにおける蒸気圧である]の範囲であった。得られた等温線を、以下のBET式に従ってプロットした:
Figure 2008511665
[式中、VaはPにおいてサンプルによって吸収される気体の体積であり、Vmはサンプルの全表面を気体の単層で覆うのに必要な気体の体積であり、そしてCは定数である]。
このプロットから、Vm及びCを求めた。次に、77°Kにおける窒素の断面積を用いて下記式によってVmを表面積に変換した:
Figure 2008511665
[式中、σは77°Kにおける窒素の断面積であり;Tは77°Kであり;Rは気体定数である]。
前に言及したように、本発明の一実施態様に従って形成されるCTAは、他の方法によって製造される従来のCTAに比較して優れた溶解特性を示す。この増大された溶解速度により、本発明のCTAはより効率的且つ/又はより効果的な精製方法によって精製されることが可能になる。以下の説明は、CTAの溶解速度を定量化できる方法に関する。
撹拌混合物中における既知量の溶媒への既知量の固体の溶解速度は、種々のプロトコールによって測定できる。ここで使用する「時限(timed)溶解試験」と称する測定方法は以下のように定義される。約0.1メガパスカルの周囲圧力をこの時限溶解試験の全体を通して用いる。時限溶解試験全体を通して用いる周囲温度は約22℃である。更に、固体、溶媒及び全ての溶解装置は、試験開始前にこの温度において熱的に充分に平衡化させ、溶解期間の間にビーカー又はその内容物の無視できないほどの加熱又は冷却はない。新鮮な、HPLCグレードのテトラヒドロフラン(純度>99.9%)(以下、THF)の溶媒部分250gを、断熱されておらず、滑らかな側面を有し且つほぼ円筒形を有する、清浄にされたKIMAXトール形400mlガラスビーカー(Kimble(登録商標)品番14020,Kimble/Kontes,Vineland,NJ)中に入れる。テフロン(登録商標)加工の電磁撹拌子(VWR品番58948−230;長さ約1インチ,直径3/8インチ;断面−八角形;VWR International,West Chester,PA 19380)をビーカー中に入れ、それが自然に底部まで沈降する。サンプルは、Variomag(登録商標)マルチポイント15電磁撹拌機(H&P Labortechnik AG,Oberschleissheim,Germany)を用いて800回転/分の設定で撹拌される。この撹拌は、固体添加前5分以内に始まり、固体の添加後少なくとも30分間間断なく続く。合計250mgの粗製又は精製TPA粒子状物質の固体サンプルを、不粘着性サンプル秤量皿中に量り入れる。t=0と表される出発時間において、秤量固体を撹拌THF中に全て同時に量り入れ、同時にタイマーをスタートさせる。適正になされると、THFは、固体を非常に急速に湿潤させ、5秒以内に稀釈され且つよく撹拌されたスラリーを形成する。引き続いて、この混合物のサンプルを、t=0から測定された以下の時間(分)で得る:0.08、0.25、0.50、0.75、1.00、1.50、2.50、3.00、4.00、5.00、6.00、8.00、10.00、15.00及び30.00。新しい使い捨てシリンジ(Becton,Dickinson and Co,5ml,REF 30163,Franklin Lakes,NJ 07417)を用いて、稀釈され且つよく撹拌された混合物から回収する。ビーカーからの回収直後に、透明な液体サンプル約2mlを新しい未使用のシリンジフィルター(直径25mm,0.45ミクロン,Gelman GHP Acrodisc GF(登録商標),Pall Corporation,East Hills,NY 11548)を通して新しいラベル付きガラスサンプルバイアル中に迅速に排出する。各シリンジ充填、フィルター装着及びサンプルバイアル中への排出の持続時間は適正には約5秒未満であり、この期間の開始及び終了は適切には、各目標サンプリング時間の前後約3秒以内である。各充填の約5分以内に、サンプルバイアルを蓋締めして閉じ、以下の化学分析を行うまでほぼ一定温度に保持する。最終サンプルをt=0から30分で採取した後、16個全てのサンプルを、HPLC−DAD法を用いて本明細書中の他の場所で記載したのとほぼ同様にして、溶解TPAの量に関して分析する。しかし、この試験では、較正基準及び記録した結果は、THF溶媒g当たりの溶解TPAのmg数(以下、「THF中のppm」)に基づく。例えば、固体250mgが非常に純粋なTPAであって且つ個々のサンプルの採取前にこの全量がTHF溶媒250g中に完全に溶解しているとすれば、正しく測定される濃度はTHF中約1,000ppmとなるであろう。
本発明に係るCTAを前記時限溶解試験に供する場合には、t=0から1分で採取しサンプルは、好ましくはTHF中少なくとも約500ppmの濃度まで、より好ましくはTHF中少なくとも600ppmまで溶解する。t=0から2分で採取したサンプルについては、本発明に係るCTAは、好ましくはTHF中少なくとも約700ppmの濃度まで、より好ましくはTHF中少なくとも少なくとも750ppmまで溶解する。t=0から4分で採取したサンプルについては、本発明に係るCTAは、好ましくはTHF中少なくとも約840ppmの濃度まで、より好ましくはTHF中少なくとも880ppmまで溶解する。
本発明者らは、粒子状サンプルの及び溶解プロセスの複雑さにかかわらず、完了した時限溶解試験からのデータ一式全ての時間依存性を説明するためには、比較的単純な負の指数関数的増加モデルが有用であることを見出した。以下「時限溶解モデル」とする式の形は以下の通りである:
S=A+B*(1−exp(−C*t))
[式中、t=時間(単位:分);
S=時間tにおける溶解度(単位:THF中ppm);
exp=2の自然対数の底における指数関数;
A,B=回帰定数(regressed constant)(単位:THF中のppm)(Aは、非常に短い時間における比較的小さい粒子の急速な溶解に主に関連し;A+Bの和は、指定された試験期間の終わり近くにおける全溶解量に主に関連する);
C=回帰時定数(regressed time constant)(単位:レシプロカル分)]。
回帰定数は、実際のデータ点と対応するモデル値との間の誤差の平方和を最小にするために調整する。この方法を一般に「最小二乗法」という。このデータ回帰を行うのに好ましいソフトウェア・パッケージは、JMP Release 5.1.2(SAS Institute Inc.,JMP Software,SAS Campus Drive,Cary,NC 27513)である。
本発明に係るCTAを時限溶解試験によって試験し且つ前記の時限溶解モデルに当てはめる場合には、CTAは、約0.5レシプロカル分よりも大きい、より好ましくは約0.6レシプロカル分よりも大きい、最も好ましくは0.7レシプロカル分よりも大きい時定数Cを有するのが望ましい。
図33A及び33Bは、連続撹拌槽型反応器(CSTR)中で従来の高温酸化方法によって製造された従来のCTA粒子を示す。図33Aは、従来のCTA粒子を倍率500倍で示し、図33Bは従来のCTA粒子を倍率2,000倍で示す。図32A及び32Bに示される本発明のCTA粒子を図33A及び33Bに示される従来のCTA粒子と目視比較すると、従来のCTA粒子は本発明のCTA粒子よりも高い密度、小さい表面積、低い空隙率及び大きい粒度を有することがわかる。実際に、図33A及び33Bに示される従来のCTAは、約205ミクロンの平均粒度及び約0.57m2/gのBET表面積を有する。
図34は、精製テレフタル酸(PTA)を製造するための従来の方法を示す。従来のPTA法においては、p−キシレンが、機械撹拌高温酸化反応器700において、部分酸化される。CTAを含むスラリーは、反応器700から回収し、次いで精製システム702において精製する。精製システム702のPTA生成物は、PTA粒子の分離及び乾燥のために、分離システム706中に導入する。精製システム702は、従来の方法によるPTA粒子の製造に付随するコストの大部分を生ずる。精製システム702は一般に、水添加/交換システム708、溶解システム710、水素化システム712及び3つの独立した結晶化容器704a、b、cを含む。水添加/交換システム708において、母液の相当部分が水と置換される。水添加後、水/CTAスラリーは、溶解システム710に導入し、そこで、CTA粒子が水中に完全に溶解するまで水/CTA混合物が加熱する。CTAの溶解後、CTA水溶液が水素化システム712において水素化に供される。水素化システム712からの水素化流出物が、次に結晶化容器704a、b、cにおける3つの結晶化工程に供され、その後に分離システム706においてPTAを分離する。
図35は、本発明の一実施態様に従って構成された気泡塔型酸化反応器800を用いる改良されたPTA製造方法を示す。固体のCTA粒子及び液体の母液を含む最初のスラリーを反応器800から回収する。典型的には、最初のスラリーは約10〜約50重量%の範囲の固体CTA粒子を含むことができ、残りは液体の母液である。最初のスラリー中に存在する固体CTA粒子は、典型的には少なくとも約400ppmwの、より典型的には少なくとも約800ppmwの、最も典型的には1,000〜15,000ppmwの範囲の4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)を含む。反応器800から回収される最初のスラリーは、精製システム802中に導入して、CTA中に存在する4−CBA及び他の不純物の濃度を減少させる。より純粋な/精製されたスラリーが精製システム802から生成され、それが分離システム804において分離及び乾燥に供されて、その結果、約400ppmw未満の、より好ましくは約250ppmw未満の、最も好ましくは10〜200ppmwの範囲の4−CBAを含む、より純粋な固体テレフタル酸粒子を生成させる。
図35に示されるPTA製造システムの精製システム802は、図34に示される先行技術のPTA製造システムの精製システム802より優れた多くの利点を提供する。好ましくは、精製システム802は一般に液交換システム806、蒸解がま808及び単一の晶析装置810を含む。液交換システム806において、最初のスラリー中に存在する母液の少なくとも約50重量%を新鮮な置換溶媒で置換し、その結果、CTA粒子及び置換溶媒を含む溶媒置換スラリーを生成させる。液交換システム806から出た溶媒置換スラリーは、蒸解がま(又は二次酸化反応器)808中に導入する。蒸解がま808において、気泡塔型反応器800において実施される初期/一次酸化反応で用いられた温度よりもわずかに高い温度で二次酸化反応を行なう。前述のように、反応器800において生成されるCTA粒子の大きい表面積、小さい粒度及び低い密度のために、CTA粒子中に捕捉された若干の不純物は、蒸解がま808においてCTA粒子を完全に溶解させる必要なしに、蒸解がま808における酸化に利用できるようになる。従って、蒸解がま808中の温度は、多くの同様な先行技術の方法よりも低くすることができる。蒸解がま808中において行われる二次酸化は、CTA中の4−CBAの濃度を好ましくは少なくとも200ppmw、より好ましくは少なくとも約400ppmw、最も好ましくは600〜6,000ppmw低下させる。蒸解がま808中の二次酸化温度は、気泡塔型反応器800中の一次酸化温度よりも好ましくは少なくとも約10℃、より好ましくは約20〜約80℃、最も好ましくは30〜50℃高い。二次酸化温度は好ましくは約160〜約240℃、より好ましくは約180〜約220℃、最も好ましくは190〜210℃の範囲である。蒸解がま808からの精製生成物は、分離システム804における分離の前には、晶析装置810中における単一の結晶化工程を必要とするだけである。適当な二次酸化/蒸解法は、米国特許出願公開第2005/0065373号により詳細に記載されており、その開示全体を引用することよって本明細書中に組み入れる。
図35に示されるシステムによって生成されるテレフタル酸(例えばPTA)は、好ましくは少なくとも約40ミクロンの、より好ましくは約50〜約2,000ミクロンの範囲の、最も好ましくは60〜200ミクロンの範囲の平均粒度を有するPTA粒子から形成される。PTA粒子は、好ましくは約0.25m2/g未満の、より好ましくは約0.005〜約0.2m2/gの範囲の、最も好ましくは0.01〜0.18m2/gの範囲の平均BET表面積を有する。図35に示されるシステムによって生成されるPTAは、PETの製造において供給原料として使用するのに適当である。典型的には、PETは、エチレングリコールによるテレフタル酸のエステル化とそれに続く重縮合によって製造される。好ましくは、テレフタル酸は、2001年12月7日に出願された米国特許出願第10/013,318号に記載されたパイプ型反応器PETプロセスへの供給材料として使用される。この特許出願の開示全体を引用することによって本明細書中に組み入れる。
ここに開示された好ましい形態を有するCTA粒子は、4−CBA含量を低下させるための前記酸化的蒸解プロセスにおいて特に有用である。更に、これらの好ましいCTA粒子は、粒子の溶解及び/又は化学反応を含む広範な他の後工程において有利である。これらの追加後工程としては、例えば、少なくとも1種のヒドロキシル含有化合物との反応によるエステル化合物の形成、特にCTAとメタノールとの反応によるテレフタル酸ジメチル及び不純物エステルの形成;少なくとも1種のジオールとの反応によるエステルモノマー及び/又はポリマー化合物の形成、特にCTAとエチレングリコールとの反応によるポリエチレンテレフタレート(PET)の形成;並びに溶媒、例えば水、酢酸及びN−メチル−2−ピロリドン(これらに限定するものではない)中への全溶解又部分溶解[更なる処理、例えば、より純粋なテレフタル酸の再沈澱及び/又はカルボン酸基以外のカルボニル基の選択的化学的還元(これらに限定するものではない)を含むことができる]が挙げられるが、これらに限定するものではない。特に挙げられるのは、アルデヒド、特に4−CBA、フルオレノン類、フェノン類及び/又はアントラキノン類の量を減少させる部分水素化と連結された、水を含む溶媒中におけるCTAの実質的な溶解である。
本発明者らはまた、ここに開示された好ましい性質を有するCTA粒子は、ここに開示された好ましい性質に適合しないCTA粒子(不適合CTA粒子)から、不適合CTA粒子の機械的粉砕及び不適合CTA粒子の全溶解又は部分溶解とそれに続く全再沈澱又は部分再沈澱を含む(これらに限定するものではない)手段によって生成できることを考慮する。
本発明の一実施態様によれば、被酸化性芳香族化合物を1つ又はそれ以上の型の芳香族カルボン酸に部分酸化するための方法が提供される。この方法においては、供給材料の溶媒部分(即ち「溶媒供給材料」)の純度及び供給材料の被酸化性化合物部分(即ち「被酸化性化合物供給材料」)の純度が以下に明記する一定範囲以内に制御される。本発明の他の実施態様と共に、これは、液相の純度並びに存在するならば、固相及び反応媒体の複合スラリー(即ち固体+液体)の純度を、以下に概説する一定の好ましい範囲内で制御できるようにする。
溶媒供給材料に関しては、反応媒体に導入される溶媒供給材料が実験室規模及びパイロット規模でよく用いられる分析用純度の酢酸及び水の混合物である、1種又は複数の被酸化性芳香族化合物の酸化による芳香族カルボン酸の生成が知られている。同様に、反応媒体から出る溶媒が生成芳香族カルボン酸から分離され、次に主に製造コストの理由から、供給材料として反応媒体に再循還される被酸化性芳香族化合物の芳香族カルボン酸への酸化が知られている。この溶媒再循還は、ある種の供給材料の不純物及びプロセスの副生成物を再循還溶媒中に徐々に蓄積させる。反応媒体中への再導入の前に再循還溶媒の精製を助けるための手段が当業界で知られている。一般に、再循還溶媒のより高度の精製は、同じ手段によるより低度の精製よりも著しく高い製造コストをもたらす。本発明の一実施態様は、全体的製造コストと全体的生成物純度との最適バランスを見つけるために、溶媒供給材料内の多数の不純物(従来はその多くはほとんど差し障りがないと考えられていた)を熟知し且つその好ましい範囲を規定することに関する。
「再循還溶媒供給材料」はここでは、部分酸化を受ける1種又はそれ以上の被酸化性芳香族化合物を含む反応媒体を既に通過した少なくとも約5重量%の質量を含む溶媒供給材料と定義する。製造ユニットにおける溶媒インベントリー及び稼働時間のため、再循還溶媒の部分は、運転1日当たり少なくとも1回、より好ましくは少なくとも7日の連続運転の間に1日当たり少なくとも1回、最も好ましくは少なくとも30日の連続運転の間に1日当たり少なくとも1回、反応媒体を通過するのが好ましい。経済的な理由から、本発明の反応媒体への溶媒供給材料の、好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%が、更に好ましくは少なくとも約80重量%が、最も好ましくは少なくとも90重量%が再循還溶媒である。
本発明者らは、反応活性のため及び酸化生成物中に残される金属不純物を考慮して、再循還溶媒供給材料内の特定の多価金属の濃度は、すぐ下に明記した範囲が好ましいことを発見した。再循還溶媒中の鉄濃度は、好ましくは約150ppmw未満、より好ましくは約40ppmw未満、最も好ましくは0〜8ppmwである。再循還溶媒中のニッケル濃度は、好ましくは約150ppmw未満、より好ましくは約40ppmw未満、最も好ましくは0〜8ppmwである。再循還溶媒中のクロム濃度は、好ましくは約150ppmw未満、より好ましくは約40ppmw未満、最も好ましくは0〜8ppmwである。再循還溶媒中のモリブデン濃度は、好ましくは約75ppmw未満、より好ましくは約20ppmw未満、最も好ましくは0〜4ppmwである。再循還溶媒中のチタン濃度は、好ましくは約75ppmw未満、より好ましくは約20ppmw未満、最も好ましくは0〜4ppmwである。再循還溶媒中の銅濃度は、好ましくは約20ppmw未満、より好ましくは約4ppmw未満、最も好ましくは0〜1ppmwである。他の金属不純物も典型的には再循還溶媒中に存在し、それは典型的には、前に列挙した金属の1つ又はそれ以上に比例してより低いレベルで変動する。前記金属を前記の好ましい範囲に制御すると、他の金属不純物が適当なレベルに保たれるであろう。
これらの金属は、入ってくる全てのプロセス供給材料中の(即ち、入ってくる被酸化性化合物、溶媒、酸化剤及び触媒化合物中の)不純物から生じる可能性がある。或いは、金属は、反応媒体と接触する且つ/又は再循還溶媒と接触する全てのプロセスユニットから腐蝕生成物として生じる可能性がある。開示された濃度範囲に金属を制御する手段には、種々の供給材料の純度の適正な規格及び監視、更にチタンの多くの商用銘柄並びに二相ステンレス鋼及び高モリブデンステンレス鋼として知られる銘柄を含むステンレス鋼の多くの商用銘柄(これらに限定するものではない)を含む構成材料の適正な使用法がある。
本発明者らはまた、再循還溶媒中における、特定の芳香族化合物の好ましい範囲を発見した。これらは、再循還溶媒内の沈澱及び溶解芳香族化合物をいずれも含む。
意外なことに、p−キシレンの部分酸化からの沈澱生成物(例えばTPA)でさえ、再循還溶媒中では管理すべき汚染物質である。反応媒体内の固体のレベルに関しては、意外にも好ましい範囲があるので、溶媒供給材料中の全ての沈澱生成物は、共に供給されることができる被酸化性化合物の量をそのまま減ずる。更に、再循還溶媒中の沈澱TPA固体の高レベルでの供給は、沈澱酸化媒体内で形成される粒子の特性に悪影響を及ぼし、それが下流の操作(例えば、生成物の濾過、溶媒洗浄、粗製生成物の酸化的蒸解、更なる処理のための粗製生成物の溶解など)における不所望な特性につながることを発見した。再循還溶媒供給材料中の沈澱固体の別の不所望な特性は、これらが、多くの再循還溶媒の源となるTPAスラリー内の大部分の固体内の不純物濃度に比べて非常に高いレベルの沈澱不純物を含むことである。再循還濾液中に懸濁された固体中に観察される不純物のこのような高レベルは、再循還溶媒からのある種の不純物の沈澱のための核生成時間と、意図的であるか周囲損失によるかにかかわらず、再循還溶媒の冷却に関係する可能性がある。例えば、色の濃い、不所望の2,6−ジカルボキシフルオレノンの濃度は、80℃の再循還溶媒中に存在する固体中では、160℃において再循還溶媒から分離されたTPA固体中で観察されるよりも高レベルで観察された。同様に、イソフタル酸の濃度は、再循還溶媒中での存在する固体中では、反応媒体からのTPA固体中で観察されるレベルに比べてはるかに高いレベルで観察された。正確には、再循還溶媒内に連行される特定の沈澱不純物が、反応媒体中に再導入される場合にどのような挙動をするかは変動するようである。これは、おそらくは反応媒体の液相内の不純物の相対溶解度に、おそらくは沈澱不純物が沈澱固体内でどのように層状になっているかに、また、おそらくは固体が最初に沈澱媒体中に入る際の局所的なTPA沈澱速度に左右されるであろう。従って、本発明者らは、これらの不純物が溶解された形態で再循還溶媒中に存在するか又はその中に同伴された粒状物質であるかに関わらず、以下に開示したように、再循還溶媒中のある種の不純物のレベルを制御することが有用であることに見出した。
再循還濾液中に存在する沈澱固体の量は、以下のようにして重量法によって求める。溶媒が反応媒体に向かって導管中を流れている間に、反応媒体への溶媒供給材料から代表的なサンプルを回収する。有用なサンプルサイズは、約250mlの内部容積を有するガラス容器中に捕捉される約100gである。大気圧に放出される前ではあるが、サンプル容器に向かって連続的に流れている間に、再循還濾液を100℃未満に冷却する;この冷却は、シールされてガラス容器中に閉じこめられる前の短時間における溶媒の蒸発を制限するためである。大気圧においてサンプルを捕捉した後、直ちに、ガラス容器をシールして閉じる。次いで、サンプルを、約20℃の空気で取り囲みながら、強制対流を用いずに、約20℃まで冷却させる。約20℃に達した後、サンプルをこの条件に少なくとも約2時間保持する。次に、目視によって均一な固体分布が得られるまで、シールされた容器を激しく振盪する。その直後に、電磁撹拌子をサンプル容器中に加え、固体の均一分布を効果的に保持するのに充分な速度で回転させる。懸濁された固体を含む混合液の10mlのアリコートを、ピペットによって回収し、秤量する。次に、このアリコートからの液相の大部分を真空濾過によって、やはり約20℃において、固形分を損失させずに効果的に分離する。このアリコートから濾過された湿った固体を次に、固体を昇華させることなく効果的に乾燥させ、これらの乾燥固体を秤量する。(乾燥固体の重量)対(スラリーの元のアリコートの重量)の比は、典型的に百分率で表される固体の割合であり、ここでは溶媒供給材料中の「20℃における再沈澱固形分」の量と称する。
本発明者らは、反応媒体の液相中に溶解された、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族カルボン酸(例えばイソフタル酸、安息香酸、フタル酸、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル)を含む芳香族化合物が驚くほど有害な成分であることを発見した。これらの化合物は、非芳香族ヒドロカルビル基を有する被酸化性化合物に比較して、対象反応媒体中においては化学反応性が非常に低いが、本発明者らは、これらの化合物はそれにもかかわらず、多数の有害な反応を受けることを発見した。従って、これらの化合物の含量を反応媒体の液相中で好ましい範囲に制御することは有利である。これは、再循還溶媒供給材料中の特定の化合物の好ましい範囲につながり、また、被酸化性芳香族化合物供給材料中の特定の前駆体の好ましい範囲をつながる。
例えば、p−キシレンのテレフタル酸(TPA)への液相部分酸化において、本発明者らは、m−置換された芳香族化合物が反応媒体中で非常に低レベルである場合には、色の濃い、不所望な不純物2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)が反応媒体及び生成物オフテイク中にほとんど検出されないことを発見した。本発明者らは、イソフタル酸不純物が溶媒供給材料中に次第に増大するレベルで存在する場合には、2,7−DCFの形成がほとんど正比例して上昇することを発見した。本発明者らはまた、m−キシレン不純物がp−キシレンの供給材料中に存在する場合には、この場合もやはり、2,7−DCFの生成がほとんど正比例して上昇することを発見した。更に、溶媒供給材料及び被酸化性化合物供給材料がm−置換芳香族化合物を含んでいないとしても、本発明者らは、反応媒体の液相中に安息香酸が存在する場合には、特に極めて純粋なp−キシレンの典型的な部分酸化の間に若干のイソフタル酸が生成することを発見した。この自己生成したイソフタル酸は、酢酸及び水を含んでなる溶媒中への溶解度がTPAよりも大きいので、再循還溶媒を使用する商用ユニット中に徐々に蓄積する可能性がある。従って、溶媒供給材料内のイソフタル酸の量、被酸化性芳香族化合物供給材料内のm−キシレンの量及び反応媒体内のイソフタル酸の自己生成速度は、全て、相互のバランスで、また、イソフタル酸を消費する全ての反応とのバランスで、適切に考慮する。イソフタル酸は、以下に開示するような、2,7−DCFの形成以外の他の消費反応を受けることを発見した。更に、本発明者らは、p−キシレンのTPAへの部分酸化においてm−置換芳香族化合物種に適切な範囲を設定する場合には他の問題を考えなければならないことを発見した。2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)のような、他の色の濃い、不所望な不純物が、液相酸化へのp−キシレン供給材料と共に常に存在する溶解p−置換芳香族化合物種に非常に関連しているようである。従って、2,7−DCFの抑制は、生成される他の有色不純物のレベルとの相関関係において最も考慮される。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、反応媒体内において、イソフタル酸及びフタル酸のレベルが増加するにつれて、トリメリット酸の形成が増加することを発見した。トリメリット酸は、TPAからのPETの製造の間にポリマー鎖の分岐をもたらす三官能価カルボン酸である。多くのPET用途において、分岐レベルは低レベルに制御しなければならず、従って、精製TPA中においてトリメリット酸は低レベルに制御しなければならない。トリメリット酸を生じる他に、反応媒体中のm−置換種及びp−置換種の存在はまた、他のトリカルボン酸(例えば1,3,5−トリカルボキシベンゼン)を生じさせる。更に、反応媒体中のトリカルボン酸の存在が増加すると、テトラカルボン酸(例えば1,2,4,5−テトラカルボキシベンゼン)の生成量が増加する。2個より多いカルボン酸基を有する全ての芳香族カルボン酸の生成をまとめて制御することが、本発明に従って再循還供給材料中、被酸化性化合物供給材料中及び反応媒体中のm−置換種及びo−置換種の好ましいレベルを設定する上で1つの要因である。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、いくつかの溶解された、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族カルボン酸の反応媒体液相中レベルの増加が、一酸化炭素及び二酸化炭素の生成の増加に直接つながることを発見した。炭素酸化物の生成のこのような増加は、後になって、酸化剤及び被酸化性化合物の両方の収率損失になる。これは、一方では不純物と見なされる場合がある、共生成芳香族カルボン酸の多くが、他方では、商業的価値を有するためである。従って、比較的可溶性の、非芳香族ヒドロカルビル基を持たないカルボン酸を、再循還溶媒から適切に除去することは、種々のフルオレノン類及びトリメリット酸のような、非常に不所望な不純物の発生を抑制することに加えて、被酸化性芳香族化合物及び酸化剤の収率損失の防止において経済的価値がある。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、2,5,4’−トリカルボキシビフェニルの形成は避けられないように見えることを発見した。2,5,4’−トリカルボキシビフェニルは、2つの芳香環のカップリングによって、おそらくは溶解p−置換芳香族化合物種とアリール基(おそらくはp−置換芳香族化合物種の脱カルボキシル化又は脱カルボニル化によって形成されるアリール基)とのカプリングによって形成される芳香族トリカルボン酸である。幸いなことに、2,5,4’−トリカルボキシビフェニルは典型的には、トリメリット酸よりも低レベルで生成し、PETの製造時におけるポリマー分子の分岐の問題を通常はそれほど増加させない。しかし、本発明者らは、本発明の好ましい実施態様に係るアルキル芳香族化合物の酸化を構成する反応媒体中における高レベルの2,5,4’−トリカルボキシビフェニルは、色の濃い、不所望な2,6−DCFのレベルを増加させることを発見した。増加した2,6−DCFは、2,5,4’−トリカルボキシビフェニルから閉環によって水1分子を失って生成される可能性があるが、正確な反応メカニズムは確実にはわかっていない。酢酸及び水を含む溶媒中にTPAよりも可溶な2,5,4’−トリカルボキシビフェニルが、再循還溶媒内で過度に高く蓄積させられると、2,6−DCFへの転化速度が不所望に大きくなる可能性がある。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族カルボン酸(例えばイソフタル酸)は一般に、充分な濃度で液相中に存在する場合には反応媒体の化学活性を少し抑制することを発見した。
例えば、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において、本発明者らは、固相及び液相中の種々の化学種の相対濃度に関して沈澱は非理想的(即ち非平衡)であることが非常に多いことを発見した。おそらくは、これは、ここで好ましいとされる時空反応速度において沈澱が非常に速く、それが不純物の非理想的共沈又は閉塞すら引き起こすためである。従って、下流ユニット運転の構造のために、粗製TPA内のある種の不純物(例えばトリメリット酸及び2,6−DCF)の濃度を制限することが要求される場合には、溶媒供給材料中のそれらの濃度と反応媒体中のそれらの生成速度を制限するのが好ましい。
例えば、本発明者らは、p−キシレンの部分酸化の間に生成されたベンゾフェノン化合物(例えば4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン及び2,5,4’−トリカルボキシベンゾフェノン)はTPA自体中ではフルオレノン類及びアントラキノン類ほど濃く着色していないとしても、それらはPET反応媒体中で不所望な影響をもたらすことを発見した。従って、再循還溶媒及び被酸化性化合物供給材料中におけるベンゾフェノン類及び特定の前駆体の存在を制限するのが望ましい。更に、本発明者らは、再循還材料中に入れられるか又は反応媒体内で形成されるかにかかわらず、高レベルの安息香酸の存在は4,4’−ジカルボキシベンゾフェノンの生成速度の増加をもたらすことを発見した。
ここまでを概説すると、本発明者らは、p−キシレンのTPAへの液相部分酸化において存在する、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物に関する驚くほどたくさんの反応を発見し、充分に定量化した。安息香酸の例1つだけをとってみても、本発明者らは、本発明のいくつかの実施態様の反応媒体中の安息香酸レベルの増加が、色の濃い、不所望な9−フルオレノン−2−カルボン酸の生成の著しい増加、4,4’−ジカルボキシビフェニルのレベルの著しい増加、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノンのレベルの増加、目的とするp−キシレン酸化の化学活性のわずかな抑制並びに炭素酸化物と付随する収率損失のレベルの増加をもたらすことを発見した。本発明者らは、反応媒体中の安息香酸のレベルの増加が、またイソフタル酸及びフタル酸の生成を増加させることを発見した。そのレベルは、望ましくは本発明の同様な態様に従って低い範囲に制御する。安息香酸を含む反応の数及び重要性はおそらく更に驚くべきものであり、それは、最近の一部の発明者が溶媒の主成分として酢酸の代わりに安息香酸を用いることを検討しているためである(例えば米国特許第6,562,997号参照)。更に、本発明者らは、p−キシレンの酸化の間に、安息香酸が、商用純度のp−キシレンを含む被酸化性化合物中によく見られるトルエン及びエチレンのような不純物からのその生成に関して非常に重要な速度で自己生成されることを観察した。
他方、本発明者らは、被酸化性芳香族化合物の存在に関しては、そして非芳香族ヒドロカルビル基を保持し且つまた再循還溶媒中に比較的可溶である芳香族反応中間体に関しては、再循還溶媒組成の付加的な制限からほとんど意義を見出せなかった。一般に、これらの化合物は、再循還溶媒中におけるそれらの存在よりもかなり大きい割合で反応媒体内に供給されるか、反応媒体内で生成し;これらの化合物は、1個又はそれ以上の非芳香族ヒドロカルビル基を保持していながら、反応媒体内におけるこれらの化合物の消費速度は、再循還溶媒内におけるそれらの沈着を適切に制限するのに充分大きい。例えば多相反応媒体中におけるp−キシレンの部分酸化の間に、p−キシレンは多量の溶媒と共にわずかに蒸発する。この蒸発溶媒が排ガスの一部として反応器から出て、再循還溶媒としての回収のために凝縮される場合には、相当量の蒸発p−キシレンがその中に凝縮される。このp−キシレンの再循還溶媒中濃度を制限することは必要ない。例えばスラリーがp−キシレン酸化反応媒体から出る際に溶媒が固体から分離される場合には、この回収溶媒は、反応媒体からの除去点において存在するのと同様な、溶解p−トルイル酸濃度を含むであろう。反応媒体の液相内のp−トルイル酸の定常濃度を制限することが重要な場合もあるが、再循還溶媒のこの部分におけるp−トルイル酸は、比較的良好な溶解度を有し且つ反応媒体内におけるp−トルイル酸の生成に比べて質量流速が低いため、別個に制限することは必要ない。同様に、本発明者らは、メチル置換基を有する芳香族化合物(例えばトルイル酸)、芳香族アルデヒド(例えばテレフタルアルデヒド)、ヒドロキシ−メチル置換基を有する芳香族化合物(例えば4−ヒドロキシメチル安息香酸)及び少なくとも1個の非芳香族ヒドロカルビル基を保持する臭素化芳香族化合物(例えばα−ブロモ−p−トルイル酸)の、再循還溶媒中濃度を、本発明に好ましい実施態様に係るキシレンの部分酸化中に存在する反応媒体から出て行く液体中にもともと見られる濃度未満に制限する理由をほとんど見出せなかった。意外なことに、本発明者らは、また、キシレンの部分酸化の間に元来生成される特定のフェノール類が再循還溶媒中におけるそれらの存在よりもはるかに大きい割合で反応媒体内で生成及び破壊されるため、これらの化合物の濃度を再循還溶媒中で制限することは必要ないことを発見した。例えば、本発明者らは、同様な反応媒体中においてかなり有害であると他者によって報告されている(例えば、W.Partenheimer,Catalysis Today 23(1995)p.81参照)にもかかわらず、再循還溶媒中にもともと存在するよりもはるかに高い、p−キシレン1kg当たり2gを越える割合で4−ヒドロキシ安息香酸が同時供給される場合には、4−ヒドロキシ安息香酸は本発明の好ましい実施態様において化学活性に比較的小さい影響しか及ばさないことを発見した。
従って、今開示した、溶媒供給材料中の種々の芳香族不純物の好ましい範囲の設定においては多くの反応及び多くの考慮すべき事項がある。これらの発見を、設定期間、好ましくは1日、より好ましくは1時間、最も好ましくは1分の間に反応媒体に供給される全ての溶媒流の総重量平均組成に関して記載する。例えば、1つの溶媒供給材料が7kg/分の流速でイソフタル酸40ppmwの組成で実質的に連続的に流れ、第2の溶媒供給材料が10kg/分の流速でイソフタル酸2,000ppmwの組成で実質的に連続的に流れ、且つ反応媒体に入る溶媒供給材料流が他にない場合には、溶媒供給材料の総重量平均組成は、イソフタル酸(40*7+2,000*10)/(7+10)=1,193ppmwとして計算される。反応媒体に入る前に溶媒供給材料とおそらく混ぜ合わされるであろう任意の被酸化性化合物供給材料の重量又は任意の酸化剤供給材料の重量は、溶媒供給材料の総重量平均組成の計算においては考慮しないことは注目に値する。
以下の表Iは、反応媒体中に導入される溶媒供給材料中の一部の成分に関して好ましい値を記載する。表Iに記載した溶媒供給材料成分は以下の通りである:4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、4,4’−ジカルボキシスチルベン(4,4’−DCS)、2,6−ジカルボキシアントラキノン(2,6−DCA)、2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)、2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)、3,5−ジカルボキシフルオレノン(3,5−DCF)、9−フルオレノン−2−カルボン酸(9F−2CA)、9−フルオレノン−4−カルボン酸(9F−4CA)、個別には記載していない他のフルオレノン類を含む総フルオレノン類(総フルオレノン類)、4,4’−ジカルボキシビフェニル(4,4’−DCB)、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル(2,5,4’−TCB)、フタル酸(PA)、イソフタル酸(IPA)、安息香酸(BA)、トリメリット酸(TMA)、2,6−ジカルボキシベンゾクマリン(2,6−DCBC)、4,4’−ジカルボキシベンジル(4,4’−DCBZ)、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン(4,4’−DCBP)、2,5,4’−トリカルボキシベンゾフェノン(2,5,4’−TCBP)、テレフタル酸(TPA)、20℃における沈澱固体、及び非芳香族ヒドロカルビル基を持たない総芳香族カルボン酸。以下の表Iは、本発明の一実施態様に従って生成されたCTA中のこれらの不純物の好ましい量を示す。
Figure 2008511665
多くの他の芳香族不純物もまた、再循還溶媒中に典型的に存在するが、それらは一般的に更に低いレベルで且つ/又はここに開示した1種又はそれ以上の芳香族化合物に比例して変動する。開示した化合物を好ましい範囲に制御するための方法は典型的には他の芳香族不純物を適当なレベルに保つであろう。
臭素が反応媒体中で用いられる場合には、多数のイオン型及び有機型の臭素がダイナミックバランスで存在することがわかっている。これらの型の臭素は、反応媒体から離れ且つ再循還溶媒に関連する種々のユニット操作を経た後には異なる安定特性を有する。例えば、α−ブロモ−p−トルイル酸はある条件ではそのまま存続する可能性があり、或いは他の条件では急速に加水分解して、4−ヒドロキシメチル安息香酸及び臭化水素を形成する可能性がある。本発明においては、反応媒体への総溶媒供給材料中に存在する臭素の総質量の少なくとも約40重量%が以下の化学種:イオン状臭素、α―ブロモ−p−トルイル酸及びブロモ酢酸のうちの1種又はそれ以上であるのが好ましく、少なくとも約60重量%がこのような化学種であるのがより好ましく、少なくとも約80重量%がこのような化学種であるのが最も好ましい。
溶媒供給材料の総重量平均純度を開示した、本発明の望ましい範囲内に制御する重要性及び意義はを発見し且つ/又は開示したが、溶媒供給材料の純度を制御するための適当な手段は、当業界で既に知られている種々の方法から集めることができる。第一に、反応媒体から蒸発した任意の溶媒は典型的には、反応媒体からの液体又は固体が蒸発溶媒に同伴されないならば、適当な純度である。反応媒体の上方の排ガス離脱空間への還流溶媒液滴の供給はこのような同伴を適切に制限し;芳香族化合物に関して適当な純度の再循還溶媒が、このような排ガスから凝縮されることができる。第二に、再循還溶媒供給材料の比較的困難で且つコストのかかる精製は典型的には、液体の形態の反応媒体からの溶媒に、及び反応容器から回収される反応媒体の液相及び/又は固相とその後に接触する溶媒(例えば、固形分が濃縮され且つ/洗浄されるフィルターから得られる再循還溶媒;固体が濃縮され且つ/又は洗浄される遠心分離機から得られる再循還溶媒;結晶化操作から回収される再循還溶媒など)に関連する。しかし、1つ又はそれ以上の以前の開示を用いてこれらの再循還溶媒流に必要な精製を行うための手段もまた当業界で知られている。再循還溶媒中の沈澱固体の、特定の範囲内への制御に関しては、適当な制御手段としては以下のものが挙げられるが、これらに限定するものではない:重量沈降;回転式ベルトフィルター及び回転式ドラムフィルター上のフィルタークロスを用いる機械的濾過;圧力容器内において静止した濾材を用いる機械的濾過;ハイドロサイクロン;及び遠心分離機。再循還溶媒中の溶解芳香族種の、特定の範囲内への制御に関しては、制御手段は、米国特許第4,939,297号及び米国特許出願公開第2005−0038288号(引用することによってここに組み入れる)に開示されたものが挙げられるが、これらに限定するものではない。しかし、これらの以前の発明はいずれも、本明細書中に開示したような総溶媒供給材料中の好ましい純度レベルを発見も開示もしていない。それどころか、これらの以前の発明は、再循還溶媒の特定の一部分の流れを精製する手段を提供しただけであって、反応媒体への総重量平均溶媒供給材料の組成についての本発明の最適値を推論すらしていない。
被酸化性化合物の供給材料の純度に目を向けると、ある程度のイソフタル酸、フタル酸及び安息香酸が存在するが、それはポリマー製造に使用される精製TPA中において低レベルで許容され得るものであることが知られている。更に、これらの種は多くの溶媒中に比較的可溶性であり、精製TPAから結晶化方法に除去できることが知られている。しかし、本明細書中に開示した本発明の一実施態様からは、反応媒体の液相中において、いくつかの比較的可溶性の芳香族種、特に、イソフタル酸、フタル酸及び安息香酸のレベルを制御することは、反応媒体中で生成される有色多環式芳香族化合物のレベルの制御にとって、分子当たり2個より多くのカルボン酸官能基を有する化合物の制御にとって、部分酸化反応媒体内における反応活性の制御にとって、並びに酸化剤及び芳香族化合物の収率損失の制御にとって驚くほど重要であることがわかっている。
イソフタル酸、フタル酸及び安息香酸は反応媒体中で以下のようにして形成されることが当業界において知られている。m−キシレン供給材料不純物は、良好な転化率及び収率で酸化してIPAになる。o−キシレン供給材料不純物はかなりの転化率及び収率で酸化してフタル酸になる。エチルベンゼン及びトルエン供給材料不純物は良好な転化率及び収率で酸化して安息香酸になる。しかし、本発明者らは、p−キシレンを含む反応媒体内で、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの酸化以外の手段によって、かなりの量のイソフタル酸、フタル酸及び安息香酸がまた生成することを観察した。これらの他の固有の化学経路は、脱カルボニル化、脱カルボキシル化、遷移状態の再編成並びに芳香環へのメチル基及びカルボニル基の付加を含むと思われる。
被酸化性化合物の供給材料中の不純物の好ましい範囲の決定には、多くの要因が関連する。酸化生成物の純度要件が充分に厳しい場合には、供給材料中の任意の不純物が直接的な収率損失及び生成物精製コストとなると考えられる(例えば、p−キシレンの部分酸化のための反応媒体においては、商用純度のp−キシレン中に一般に見られるトルエン及びエチルベンゼンは安息香酸を生じ、この安息香酸は大部分が、ほとんどの市販TPAから除去される)。供給材料不純物の部分酸化生成物がその他の反応に関与する場合には、どの程度の供給材料精製コストを負担すべきかを検討する際に、単純な収率損失及び除去以外の要因がふさわしくなる(例えば、p−キシレンの部分酸化のための反応媒体においては、エチルベンゼンが安息香酸を生じ、次に安息香酸が色の濃い9−フルオレノン−2−カルボン酸、イソフタル酸、フタル酸を生じ、とりわけ炭素酸化物を増加させる)。反応媒体が、供給材料不純物に直接関係しない化学メカニズムによって更なる量の不純物を自己生成する場合には、分析は更に複雑になる(例えば、p−キシレンの部分酸化のための反応媒体においては、安息香酸は、また、p−キシレン自体から自己生成する)。更に、粗製酸化生成物の下流処理が、好ましい供給材料純度の考慮事項に影響を与える可能性がある。例えば、直接的な不純物(安息香酸)及びその後生じる不純物(イソフタル酸、フタル酸、9−フルオレノン−2−カルボン酸など)を適当なレベルまで除去するコストは同一である場合もあるし、互いに異なる場合もあるし、ほとんど関係ない不純物(例えば、p−キシレンのTPAへの酸化における不完全酸化生成物4−CBA)の除去要件とは異なる場合がある。
p−キシレンに関する以下に開示する供給材料純度範囲は、p−キシレンが溶媒及び酸化剤と共に、TPAを生成するための部分酸化のための反応媒体に供給される場合に好ましい。これらの範囲は、酸化剤及び溶媒以外の不純物(例えば触媒金属)を反応媒体から除去するための後酸化工程を有するTPA製造方法においてより好ましい。これらの範囲は、CTAから余計な4−CBAを除去する[例えば、CTAの、テレフタル酸ジメチル+不純物エステルへの転化と、それに続く、蒸留、4−CBAのTPAへの酸化的蒸解法、4−CBAのp−トルイル酸(次に部分結晶化法によって分離する)への水素化方法による、4−CBAのメチルエステルの除去による]TPA製造方法において更にいっそう好ましい。これらの範囲は、4−CBAをTPAに転化する酸化的蒸解方法によってCTAから余計な4−CBAの除去するTPA製造法において最も好ましい。
再循還芳香族化合物の好ましい範囲及び供給材料不純物の酸化によって直接的に形成される芳香族化合物の好ましい量についての新しい知識を用いて、他の固有の化学経路に比較して改善された不純物の範囲が、TPA製造のための部分的酸化プロセスに供給される不純なp−キシレンに関して、発見した。以下の表IIは、p−キシレン供給材料中のm−キシレン、o−キシレン、及びエチルベンゼン+トルエンの量に関する好ましい値(p−キシレン重量百万部当りの重量部で表す)を示す。
Figure 2008511665
当業者ならば、不純なp−キシレン内の前記不純物が、それらの部分酸化生成物が再循還溶媒中に蓄積された後に、最も大きな影響を及ぼし得ることがわかるであろう。例えば、反応媒体中の固形分約33重量%で操作する場合には、m−キシレンの最も好ましい範囲の上限量である400ppmwが供給されると、反応媒体の液相内に直ちに約200ppmwのイソフタル酸が生成されるであろう。これは、再循還溶媒中のイソフタル酸の最も好ましい範囲の上限量400pmwからの入力に匹敵し、これは、反応媒体を冷却するための典型的な溶媒蒸発を見越した後では結果的に反応媒体の液相内でイソフタル酸約1,200ppmwに相当する。従って、不純なp−キシレン供給材料中のm−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエン不純物の考えられる最大の影響となるのは、再循還溶媒内における部分酸化生成物の長期にわたる部分酸化生成物の蓄積である。それ故に、不純なp−キシレン供給材料中の不純物に関する前記範囲が、個々の製造ユニット中の任意の部分酸化反応媒体の各運転日の少なくとも1/2の期間、保持されるのが好ましく、より好ましくは少なくとも7日の連続運転期間中、各日の少なくとも3/4の期間、保持されるのがより好ましく、不純なp−キシレン供給材料組成の質量加重平均が少なくとも30日の連続運転期間中、好ましい範囲内にある場合に最も好ましい。
好ましい純度の不純p−キシレンを得るための手段は当業界において既に知られており、その例としては、蒸留、周囲温度以下における部分結晶化及び選択的孔径吸着(selective pore-size adsorption)を用いた分子篩法が挙げられるが、これらに限定するものではない。しかし、ここで特定された好ましい純度範囲は、ハイエンドではp−キシレンの商業的供給者によって特徴的に実施されるよりも要求が厳しく且つ費用がかかるが;ローエンドでは、好ましい範囲は、p−キシレン自体からの不純物の自己生成及び反応媒体内における不純物消費反応の合わさった影響が不純p−キシレン内の不純物の供給量よりも重要になるのがどこであるかを発見し且つ開示することによって、部分酸化反応媒体に供給するためのp−キシレンの過度にコストのかかる精製を回避する。
キシレン含有供給流がエチル−ベンゼン及び/又はトルエンのような特定の不純物を含む場合には、これらの不純物の酸化によって安息香酸が生成する可能性がある。ここで使用する用語「不純物生成安息香酸」は、キシレン酸化の間にキシレン以外の全ての供給源から導かれる安息香酸を意味するものとする。
ここで開示する通り、キシレン酸化の間に生成される安息香酸の一部は、キシレン自体に由来する。このようなキシレンからの安息香酸の生成は、不純物生成安息香酸であるかもしれない安息香酸生成物の部分に区別して加えられる。理論にとらわれずに、キシレンの種々の中間酸化生成物が自然に脱カルボニル化(一酸化炭素を失う)又は脱カルボキシル化(二酸化炭素を失う)し、その結果としてアリール基を生成する場合には、安息香酸は反応媒体中のキシレンに由来すると考えられる。これらのアリール基は次に、反応媒体中の多くの利用可能な供給源の1つから水素原子を引き抜き、自己生成安息香酸を生成することができる。化学メカニズムがどのようなものであっても、ここで使用する用語「自己生成安息香酸」は、キシレン酸化の間にキシレンから導かれる安息香酸を意味するものとする。
ここでまた開示されるように、p−キシレンの酸化によってテレフタル酸(TPA)が生成する場合には、自己生成安息香酸の生成は、p−キシレン収率損失及び酸化剤収率損失を引き起こす。更に、反応媒体の液相中における自己生成安息香酸の存在は、多くの不所望な副反応の増加、特に、モノ−カルボキシ−フルオレノン類と称される色の濃い化合物の発生の増加と相関する。自己生成安息香酸は、また、安息香酸の再循還濾液中への不所望な蓄積をもたらし、それが更に、反応媒体の液相中の安息香酸濃度を高める。従って、自己生成安息香酸は最小限に抑えるのが望ましいが、これは、また、不純物生成安息香酸、安息香酸の消費に影響を与える要因、反応選択性の他の問題に関連する要因及び全体的な経済性と同時に考慮するのが適当である。
本発明者らは、安息香酸の自己生成は、例えば、酸化時の反応媒体内における温度、キシレン分布及び酸素利用可能性を適切に選択することによって低レベルに制御できることを発見した。理論によって拘束するつもりはないが、比較的低い温度及び改善された酸素利用可能性が、脱カルボニル化及び/又は脱カルボキシル化速度を抑制し、従って、自己生成安息香酸の収率損失の面を回避するようである。充分な酸素利用性は、アリール基を他のより無害な生成物、特にヒドロキシ安息香酸に向かって誘導するようである。反応媒体中のキシレンの分配は、また、安息香酸又はヒドロキシ安息香酸へのアリール基の転化の間のバランスに影響を及ぼす可能性がある。化学メカニズムがどのようなものであっても、本発明者らは、安息香酸の生成を減少させるのに充分に穏やかであるが、高比率のヒドロキシ安息香酸生成物を、酸化生成物からの除去の容易な一酸化炭素及び/又は二酸化炭素へと酸化するのには充分に厳しい反応条件を発見した。
本発明の好ましい一実施態様において、酸化反応器は、自己生成安息香酸の形成が最小限に抑えられ且つヒドロキシ安息香酸の一酸化炭素及び/又は二酸化炭素への酸化が最大化にされるように構成及び運転する。酸化反応器がp−キシレンのテレフタル酸への酸化に用いられる場合には、p−キシレンは、反応器に導入される供給流中の総キシレンの少なくとも約50重量%を構成するのが好ましい。より好ましくは、p−キシレンは、供給流中の総キシレンの少なくとも約75重量%を構成する。更に好ましくは、p−キシレンは、供給流中の総キシレンの少なくとも95重量%を構成する。最も好ましくは、p−キシレンは、供給流中の総キシレンの実質的に全てを構成する。
反応器がp−キシレンのテレフタル酸への酸化に用いられる場合には、自己生成安息香酸の生成速度を最小限に抑えながら、テレフタル酸の生成速度が最大化されるのが好ましい。テレフタル酸の生成(重量による)速度対自己生成安息香酸の生成(重量による)速度の比は、好ましくは少なくとも約500:1、より好ましくは少なくとも約1,000:1、最も好ましくは少なくとも1,500:1である。以下からわかるように、自己生成安息香酸の生成速度は、反応媒体の液相中の安息香酸濃度が2,000ppmw未満である場合に測定するのが好ましく、1,000ppmw未満である場合に測定するのがより好ましく、500ppmw未満の場合に測定するのが最も好ましい。これは、このような低濃度が、安息香酸を他の化合物に転化する反応を適当に低い速度に抑えるためである。
自己生成安息香酸と不純物生成安息香酸とを合する場合には、テレフタル酸の生成(重量による)速度対総(自己生成及び不純物生成)安息香酸の生成(重量による)速度の比は、好ましくは少なくとも約400:1、より好ましくは少なくとも約700:1、最も好ましくは少なくとも1,100:1である。以下からわかるように、自己生成安息香酸の生成+不純物生成安息香酸の生成の合計速度は、反応媒体の液相中の安息香酸濃度が500ppmw未満の場合に測定するのが最も好ましい。これは、このような低濃度が、安息香酸を他の化合物に転化する反応を適当に低い速度に抑えるためである。
ここに開示するように、反応媒体の液相中の安息香酸の高濃度は、多くの他の芳香族化合物をの形成を増加させ、それらの化合物のいくつかはTPA中で有害な不純物である。ここで開示されるように、反応媒体の液相中の安息香酸の高濃度は、炭素酸化物ガスの形成を増加させ、その形成は酸化剤及び芳香族化合物並びに/又は溶媒の収率損失になる。更に、本発明者らは、他の芳香族化合物及び炭素酸化物のこのような増加された形成のかなりの部分が、安息香酸がそれ自体が消費されずに他の反応を触媒するではなく、安息香酸分子自体の一部を転化する反応から導かれることを発見した。従って、「安息香酸の正味生成」は、ここでは、(反応媒体から出る全安息香酸の時間平均重量)−(同じ期間に反応媒体に入る全安息香酸の時間平均重量)と定義する。この、安息香酸の正味重量は多くの場合、正の値であり、不純物生成安息香酸の形成速度及び自己生成安息香酸の形成速度によって決定される。しかし、本発明者らが、温度、酸素利用可能性、STR及び反応活性を含む他の反応条件が適切に一定に保持される場合に測定する、炭素酸化物及びいくつかの他の化合物への安息香酸の転化速度は、安息香酸濃度が反応媒体の液相中で増加するにつれてほぼ直線的に増加するようであることを発見したことが開示される。従って、反応媒体の液相中の安息香酸濃度が充分に高い場合(おそらく再循還溶媒中の安息香酸の高濃度による)には、安息香酸分子の、炭素酸化物を含む他の化合物への転化は、新しい安息香酸分子の化学的生成に等しいか又はそれより多くなる可能性がある。この場合には、安息香酸の正味生成は、ゼロ近く又は負の値でバランスされる可能性がある。本発明者らは、安息香酸の正味生成が正の値である場合には、[反応媒体中のテレフタル酸の生成(重量による)速度]対[反応媒体中の安息香酸の正味生成速度]の比は、好ましくは約700:1超、より好ましくは約1,100:1超、最も好ましくは4,000:1超であることを発見した。本発明者らは、安息香酸の正味生成が負の値である場合には、[反応媒体中のテレフタル酸の生成(重量による)速度]対[反応媒体中の安息香酸の正味生成速度]の比は、好ましくは約200:(−1)超、より好ましくは約1,000:(−1)超、最も好ましくは5,000:(−1)超であることを発見した。
本発明者らはまた、反応媒体から回収されるスラリー(液体+固体)の組成及びスラリーの固体CTA部分に関して好ましい範囲を発見した。好ましいスラリー組成及び好ましいCTA組成は、驚くほど優れ且つ有用である。例えば、この好ましいCTAから酸化的蒸解によって生成される精製TPAは、余分な4−CBA及び/又は有色不純物を水素化しなくても、精製TPAがPET繊維及びPET包装用途における広範囲の利用例に適当であるような充分に低レベルの総不純物及び有色不純物を有する。例えば、好ましいスラリー組成物は、考慮すべき不純物の濃度が比較的低い反応媒体の液相を提供し、重要なことには、これが、ここに開示された他の更に多くの不所望な不純物の生成を減少させる。更に、好ましいスラリー組成物は重要なことに、本発明の他の実施態様に係る、適切に純粋な再循還材料となるようにするための、スラリーからの液体のその後の処理を助ける。
本発明の一実施態様に従って生成されるCTAは、従来の方法及び装置、特に再循還溶媒を用いる従来の方法及び装置によって生成されるCTAよりも、特定の型の不純物を少なく含む。CTA中に存在する可能性のある不純物を以下に挙げる:4−カルボキシベンズアルデヒド(4−CBA)、4,4’−ジカルボキシスチルベン(4,4’−DCS)、2,6−ジカルボキシアントラキノン(2,6−DCA)、2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)、2,7−ジカルボキシフルオレノン(2,7−DCF)、3,5−ジカルボキシフルオレノン(3,5−DCF)、9−フルオレノン−2−カルボン酸(9F−2CA)、9−フルオレノン−4−カルボン酸(9F−4CA)、個々には記載していない他のフルオレノン類を含む総フルオレノン類(総フルオレノン類)4,4’−ジカルボキシビフェニル(4,4’−DCB)、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル(2,5,4’−TCB)、フタル酸(PA)、イソフタル酸(IPA)、安息香酸(BA)、トリメリット酸(TMA)、p−トルイル酸(PTAC)、2,6−ジカルボキシベンゾクマリン(2,6−DCBC)、4,4’−ジカルボキシベンジル(4,4’−DCBZ)、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン(4,4’−DCBP)、2,5,4’−トリカルボキシベンゾフェノン(2,5,4’−TCBP)。以下の表IIIは、本発明の一実施態様に従って生成されたCTA中のこれらの不純物の好ましい量を示す。
Figure 2008511665
更に、本発明の一実施態様に従って生成されるCTAは、従来の方法及び装置によって、特に再循還溶媒を用いる従来の方法及び装置によって生成されるCTAに比較して低い色量(color content)を有するのが好ましい。従って、本発明の一実施態様に従って生成されるCTAは、340ナノメーター(nm)におけるパーセント透過率が少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも60%であるのが望ましい。更に、本発明の一実施態様に従って生成するCTAは、400ナノメーター(nm)におけるパーセント透過率が少なくも約88%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも92%であるのが望ましい。
パーセント透過率に関する試験は、TPA又はCTA内に存在する有色の光吸収性不純物の割合を提供する。ここで使用する「試験」は、乾燥固体TPA又はCTA 2.00gを、分析用グレード又はそれ以上のグレードのジメチルスルホキシド(DMSO)20.0ml中に溶解させることによって調製される溶液の一部分について行われる測定を意味する。次いで、この溶液の一部分を、1.0cmの光路長及び0.39mlの容積を有する石英製のHellmaセミミクロフローセル,PN 176.700(Hellma
USA,80 Skyline Drive,Plainview,NY 11803)。中に入れる。Agilent 8453 Diode Array Spectrophtometerを用いて、この充填フローセルを通して種々の波長の光の透過率を測定する(Agilent Technologies,395 Page Mill Raod,Palo Alto,CA 94303)。セル及び使用溶媒を含む(これらに限定するものではない)バックグラウンドから吸光度を補正後、溶液を透過する入射光線の割合を表すパーセント透過率の結果を、機械によって直接的に記録する。波長340nm及び400nmにおけるパーセント透過率値は、純粋なTPAを、その中に典型的によく見られる多くの不純物と識別するのに特に有用である。
反応媒体のスラリー(固体+液体)相中の種々の芳香族不純物の好ましい範囲を以下の表IVに示す。
Figure 2008511665
スラリーに好ましいこれらの組成は、反応媒体からのサンプリング時、液体及び固体の分離時並びに分析条件への移行時における、反応媒体から固相成分中へ余分な液相成分の沈澱に関連する実験の問題を有効に避けながら、反応媒体の液相の好ましい組成を具体化する。
多くの他の芳香族不純物もまた典型的には、反応媒体のスラリー相中及び反応媒体のCTA中に存在し、それらは一般的に更に低いレベルで且つ/又はここに開示された1種若しくはそれ以上の芳香族化合物に比例して変動する。開示された芳香族化合物の、好ましい範囲への制御は、他の芳香族不純物を適当なレベルに保つであろう。反応媒体中のスラリー相及びスラリーから直接回収される固体CTAに関するこれらの有利な組成は、p−キシレンのTPAへの部分酸化に関して本明細書中で開示された本発明の実施態様によって操作することによって可能にされる。
溶媒、再循還溶媒、CTA、反応媒体からのスラリー及びPTA中の低レベル成分の濃度の測定は、液体クロマトグラフィー法を用いて実施する。2つの互換性のある実施態様を記載する。
HPLC−DADとしてここで称する方法は、所定のサンプル内の種々の分子種の分離及び定量化のための、ダイオードアレイ検出器(DAD)と一体化された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。この測定に使用される機器は、Agilent Technologies(Palo Alto,CA)によって提供される、DADを装着したモデル1100 HPLCであるが、他の適当な機器も他の供給業者から市販されている。当業界で知られるように、溶離時間及び検出器応答性は共に、既知量で存在する既知化合物(実際の未知サンプル中に存在するものにふさわしい化合物及び量)を用いて較正する。
ここでHPLC−MSと称する方法は、所定のサンプル内の種々の分子種の分離、同定及び定量のための、質量分析装置(MS)と一体化された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を意味する。この測定において使用する機器は、Waters Corp.(Milford,MA)によって提供されるAlliance HPLC及びZQ MSであるが、他の適当な機器もまた、他の供給業者から市販されている。当業界で知られるように、溶離時間及び質量分析装置の応答性は、既知量で存在する既知化合物(実際の未知サンプル中に存在するものにふさわしい化合物及び量)を用いて較正する。
本発明の別の実施態様は、一方では有害な芳香族不純物の抑制を、他方では二酸化炭素及び一酸化炭素[総称して炭素酸化物(COx)]の生成に逆らって適切にバランスさせながら、芳香族被酸化性化合物を部分酸化させることに関する。これらの炭素酸化物は典型的には反応容器から排ガス中に出る。これらは、溶媒の破壊損失、及び最終的には好ましい酸化された誘導体(例えば、酢酸、p−キシレン及びTPA)を含む被酸化性化合被酸化性化合物の破壊損失に対応する。本発明者らは、炭素酸化物生成の下限を発見した。その下限未満では、炭素酸化物生成は有害な芳香族不純物(下記)の多量の生成のように見え、またその下限未満では、その低い転化レベルは必然的に低すぎて経済的に有用でない。本発明者らは、また、炭素酸化物の上限を発見した。その上限より上では、炭素酸化物の発生が増加し続け、有害な芳香族不純物の発生の減少によってもたらされる更なる意義はほとんどない。
本発明者らは、芳香族被酸化性化合物の部分酸化の間に、芳香族被酸化性化合物供給材料及び反応媒体内の芳香族中間体種の液相濃度を低下させると、有害な不純物の生成速度が低下することを発見した。これらの有害な不純物としては、カップリングされた芳香環及び/又は所望の数より多いカルボン酸基を含む芳香族分子が挙げられる(例えば、p−キシレンの酸化においては、有害な不純物には、2,6−ジカルボキシアントラキノン、2,6−ジカルボキシフルオレノン、トリメリット酸、2,5,4’−トリカルボキシビフェニル、及び2,5,4’−ベンゾフェノンがある)。芳香族中間体種としては、被酸化性芳香族化合物の供給材料から派生し且つ依然として非芳香族ヒドロカルビル基を保持する芳香族化合物が挙げられる(例えば、p−キシレンの酸化においては、芳香族中間体種はp−トルアルデヒド、テレフタルデヒド、p−トルイル酸、4−CBA、4−ヒドロキシメチル安息香酸及びα−ブロモ−p−トルイル酸を含む)。芳香族被酸化性化合物供給材料及び非芳香族ヒドロカルビル基を保持する芳香族中間体種は、反応媒体の液相中に存在する場合には、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない溶解芳香族化合物種(例えばイソフタル酸)に関して本明細書中で既に記載したのと同様にして有害な不純物を生じるようである。
被酸化性芳香族化合物の部分酸化の間における有害な芳香族不純物の形成を抑制するには比較的高い反応活性がこのように必要であるのに対して、本発明者らは、炭素酸化物の生成の増加が不所望に付随して起こることを発見した。これらの炭素酸化物は、溶媒だけでなく被酸化性化合物及び酸化剤の収率損失に相当することを理解することが重要である。明白なことは、炭素酸化物の相当部分、場合によっては主な部分が、溶媒ではなく被酸化性化合物及びその誘導体に由来し;多くの場合被酸化性化合物は炭素当たりのコストが溶媒よりも多くかかることである。更に、目的生成物であるカルボン酸(例えばTPA)もまた、反応媒体の液相中に存在する場合には、炭素酸化物への過剰酸化を受けやすいことを理解することが重要である。
本発明は、また、反応媒体の液相中の反応及び液相内の反応体濃度に関連することを理解することが重要である。これは、非芳香族ヒドロカルビル基を保持する芳香族化合物の沈殿固体の形態での生成に直接関連するいくつかの以前の発明とは異なる。具体的には、p−キシレンのTPAへの部分酸化に関しては、いくつかの以前の発明は、CTAの固相中に沈殿された4−CBAの量に関連する。しかし、本発明者らは、同じ仕様の温度、圧力、触媒反応、溶媒組成及びp−キシレンの空時反応速度を用いて、よく混合されたオートクレーブ中で部分酸化が行われるか又は本発明に従って酸素及びp−キシレンが段階的である反応媒体中で部分酸化が行われるかに応じて、(固相中の4−CBA)対(液相中の4−CBA)の比に関して2:1より大きい変動を発見した。更に、本発明者らは、(固相中の4−CBA)対(液相中の4−CBA)の比がまた、よく混合された反応媒体又は段階付けられた反応媒体のいずれの中でも、p−キシレンの空時反応速度に応じて、他の点では同様な仕様の温度、圧力、触媒反応及び溶媒組成において、2対1より大きく変動できることを観察した。更に、固相中CTA中の4−CBAは、有害な不純物の形成の原因とはならないと考えられ、固相中の4−CBAは回収され且つ簡単に高収率でTPAに酸化されることができる(例えば、本明細書中に記載したようなCTAスラリーの酸化的蒸解によって)のに対し;有害な不純物の除去は、固相4−CBAの除去よりはるかに困難で且つコストがかかり、炭素酸化物の生成は永続的な収率損失に相当する。従って、本発明のこの態様は反応媒体中の液相組成に関連することを識別することが重要である。
溶媒又は被酸化性化合物のいずれに由来するのであっても、本発明者らは、商業的に有用な転化率においては、炭素酸化物の生成は、温度、金属、ハロゲン、温度、pHによって測定される反応媒体の酸性度、全反応活性のレベルを得るのに使用された水濃度の具体的な組合せが大きく異なっても、全反応活性のレベルに強く関連することを発見した。本発明者らは、反応媒体の中央高さ、反応媒体の底部及び反応媒体の頂部におけるトルイル酸の液相濃度を用いて全反応活性のレベルを評価することが、キシレンの部分酸化に有用であることを見い出した。
従って、反応活性を増加させることによって有害な不純物の生成を最小限に抑え、またその一方で反応活性を低下させることによって炭素酸化物の生成を最小限に抑える、重要な同時バランスが生じる。即ち、炭素酸化物の全生成を過度に低く抑えると、過剰なレベルの有害不純物が形成され、逆の場合も同じである。
更に、本発明者らは、目的とするカルボン酸(例えば、TPA)の溶解度及び相対反応性並びに非芳香族ヒドロカルビル基を持たない他の溶解芳香族化合物種の存在が、炭素酸化物と有害不純物とのこのようなバランスに非常に重要な支点をもたらすことを発見した。目的生成物のカルボン酸は典型的には、それが固体の形態で存在する場合であっても、反応媒体の液相中に溶解される。例えば、好ましい範囲の温度においては、TPAは酢酸及び水を含む反応媒体中に、約1,000ppmw〜1重量%超の範囲のレベルで溶解でき、溶解度は温度の増加と共に増加する。被酸化性芳香族化合物供給材料(例えばp−キシレン)から、芳香族反応中間体(例えばp−トルイル酸)から、目的とする芳香族カルボン酸(例えばTPA)から及び非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物種(例えばイソフタル酸)から種々の有害不純物を形成する方向に向かう反応速度には差があるのにもかかわらず、後の2つの群の存在及び反応性は、前の2つの群、即ち、被酸化性芳香族供給材料及び芳香族反応中間体種の更なる抑制に関する戻り減少の領域を決定する。例えば、p−キシレンのTPAへの部分酸化において、溶解TPAが所定の条件において反応媒体の液相中で7,000ppmwに、溶解安息香酸が8,000ppmwに、溶解イソフタル酸が6,000ppmwに、溶解フタル酸が2,000ppmwに達する場合には、反応活性が増加されてp−トルイル酸及び4−CBAの液相濃度が同様なレベル未満に抑えられるにつれて、総有害化合物を更に低下させる方向への値は低下し始める。即ち、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物種の、反応媒体の液相中における存在及び濃度は、反応活性の増加によってほとんど変化せず、それらの存在は、有害不純物の形成を抑制するために反応中間体の濃度低下の戻り減少の領域を上方に拡大する働きをする。
従って、本発明の一実施態様は、好ましい炭素酸化物の範囲を提供する。この範囲は、下限で低反応活性及び有害不純物の過剰形成と境界を接し且つ上限で過剰な炭素損失と境界を接するが、商業的に有用であると以前に発見され且つ開示されたよりも低いレベルである。従って、炭素酸化物の形成は好ましくは以下のようにして制御される。(生成される総炭素酸化物のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は好ましくは約0.02:1超、より好ましくは約0.04:1超、更に好ましくは約0.05:1超、最も好ましくは0.06:1超である。同時に、(生成される総炭素酸化物のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は好ましくは約0.24:1未満、より好ましくは約0.22:1未満、更に好ましくは約0.19:1未満、最も好ましくは0.15:1未満である。(生成される二酸化炭素のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は、好ましくは約0.01:1超、より好ましくは約0.03:1超、更に好ましくは約0.04:1超、最も好ましくは0.05:1超である。同時に、(生成される二酸化炭素のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は好ましくは約0.21:1未満、より好ましくは約0.19:1未満、更に好ましくは約0.16:1未満、最も好ましくは0.11:1未満である。
(生成される一酸化炭素のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は、好ましくは約0.005:1超、より好ましくは約0.010:1超、更に好ましくは約0.015:1超、最も好ましくは0.020:1超である。同時に、(生成される一酸化炭素のモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の比は好ましくは約0.09:1未満、より好ましくは約0.07:1未満、更に好ましくは約0.05:1未満、最も好ましくは0.04:1未満である。
酸化反応器からの乾燥排ガス中の二酸化炭素含量は、好ましくは約0.10モル%超、より好ましくは約0.20モル%超、更に好ましくは約0.25モル%超、最も好ましくは0.30モル%超である。同時に、酸化反応器からの乾燥排ガス中の二酸化炭素含量は好ましくは約1.5モル%未満、より好ましくは約1.2モル%未満、更に好ましくは約0.9モル%未満、最も好ましくは0.8モル%未満である。酸化反応器からの乾燥排ガス中の一酸化炭素含量は好ましくは約0.05モル%超、より好ましくは約0.10モル%超、更に好ましくは約0.15モル%超、最も好ましくは0.18モル%超である。同時に、酸化反応器からの乾燥排ガス中の一酸化炭素含量は、好ましくは約0.60モル%未満、より好ましくは約0.50モル%未満、更に好ましくは約0.35モル%未満、最も好ましくは0.28モル%未満である。
本発明者らは、これらの好ましい範囲まで炭素酸化物の生成を減少させるのに重要な要因が、本発明の開示に係る、再循還濾液の純度及び被酸化性化合物の供給材料の純度の改善による非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族化合物の濃度の低下(これが同時に、炭素酸化物及び有害不純物の形成を減少させる)であることを発見した。別の要因は、本発明に開示に係る、反応器内におけるp−キシレン及び酸化剤の分配の改善である。炭素酸化物の前記の好ましいレベルを可能にする他の要因は、圧力に関して、温度に関して、液相中の被酸化性化合物の濃度に関して及び気相中の酸化剤に関して本明細書中に開示したような、反応媒体中の勾配で運転することである。炭素酸化物の前記の好ましい範囲を可能にする他の要因は、時空反応速度、圧力、温度、溶媒組成、触媒組成及び反応器の機械形状寸法に関して好ましい、本明細書中の開示内で運転することである。
好ましい一酸化炭素形成範囲内における運転によって得られる重要なメリットは、分子状酸素の使用を、化学量論値までではないが減少できることである。本発明に従って酸化剤及び被酸化性化合物の良好な段階付けがなされたとしても、炭素酸化物への若干の損失を考慮するために、そして有害不純物の形成を制御するための過剰な分子状酸素を供給するために、過剰の酸素は、被酸化性化合物の供給材料単独に関して計算された化学量論値よりも高い値に保持しなければならない。キシレンが被酸化性化合物の供給材料である場合に関して、具体的には、分子状酸素の重量対キシレンの重量の供給比は好ましくは約0.91:1.00超、より好ましくは約0.95:1.00超、最も好ましくは0.99:1.00超である。同時に、分子状酸素の重量対キシレンの重量の供給比は好ましくは約1.20:1.00未満、より好ましくは約1.12:1.00未満、最も好ましくは1.06:1.00未満である。キシレン材料に関して具体的には、酸化反応器からの乾燥排ガス中の分子状酸素の時間平均含量は、好ましくは約0.1モル%超、より好ましくは約1モル%超、最も好ましくは1.5モル%超である。同時に、酸化反応器からの乾燥排ガス中の分子状酸素の時間平均含量は、好ましくは約6モル%未満、より好ましくは約4モル%未満、最も好ましくは3モル%未満である。
好ましい一酸化炭素形成範囲内における運転によって得られる別の重要なメリットは、炭素酸化物及び他のそれほど有用でない形態に転化される芳香族化合物がより少ないことである。このメリットは、(連続期間にわたる、好ましくは1時間にわたる、より好ましくは1日にわたる、最も好ましくは連続した30日にわたる、反応媒体から出る全芳香族化合物のモル数の和)÷(同期間における、反応媒体に入る全芳香族化合物のモル数の和)を用いて評価する。この比を以下、反応媒体を通る芳香族化合物に関する「モル残存率」と称し、パーセント値で表す。入ってくる全ての芳香族化合物が芳香族化合物として反応媒体から出て行くとすると、それがほとんど、入ってくる芳香族化合物の酸化された形態であったとしても、モル残存率はその最大値100%を有する。入ってくる芳香族分子100個当たりちょうど1個が、反応媒体を通過しながら、炭素酸化物及び/又は他の非芳香族分子(例えば酢酸)に転化されるとすると、モル残存率は99%である。キシレンが主な被酸化性化合物供給材料である場合に関しては、具体的には、反応媒体を通る芳香族化合物に関するモル残存率は、好ましくは約98%超、より好ましくは約98.5%超、最も好ましくは99.0%超である。同時に、また、充分な全反応活性が存在するように、キシレンが主な被酸化性芳香族化合物供給材料である場合には、反応媒体を通る芳香族化合物に関するモル残存率は、好ましくは約99.9%未満、より好ましくは約99.8%未満、最も好ましくは99.7%未満である。
本発明の別の態様は、酢酸及び1種又はそれ以上の被酸化性芳香族化合物を含む反応媒体中における酢酸メチルの生成を含む。この酢酸メチルは、水及び酢酸に比べて比較的に揮発性であり、従って、更なる冷却又は他のユニット操作を用いてそれを回収及び/又は破壊してから排ガスを放出して環境にもどす場合を除いて、排ガスに随伴する傾向がある。従って、酢酸メチルの生成は運転コスト及び資本コストにも相当する。おそらく、酢酸メチルは、最初にメチル基(おそらく、酢酸の分解からの)を酸素と結合させてメチルヒドロペルオキシド生成し、次に分解してメタノールを生成し、最後に生成メタノールを残りの酢酸と反応させて酢酸メチルを生成することによって、生成される。化学経路がどのようなものであるとしても、本発明者らは、酢酸メチルの生成速度が遅すぎる場合には、常に、炭素酸化物の生成も少なすぎ、有害芳香族不純物の生成が多すぎることを発見した。酢酸メチルの生成速度が速すぎる場合には、炭素酸化物の生成は必要以上に高くなり、溶媒、被酸化性化合物及び酸化剤の収率損失を招く。本明細書中に開示された好ましい実施態様を用いる場合には、(生成される酢酸メチルのモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の生成比は好ましくは約0.005:1超、より好ましくは約0.010:1超、最も好ましくは0.020:1超である。同時に、(生成される酢酸メチルのモル数)対(供給される被酸化性芳香族化合物のモル数)の生成比は好ましくは約0.09:1未満、より好ましくは約0.07:1未満、更に好ましくは約0.05:1未満、最も好ましくは0.04:1未満である。
本発明者らは、ここに示した全ての数値範囲に関して、これらの範囲の上端及び下端が互いに独立することができることを確認している。例えば、数値範囲10〜100は、10より大きく且つ/又は100より小さいことを意味する。従って、範囲10〜100は、10超(上限なし)の「特許請求の範囲」の限定(クレーム限定)、100未満(下限なし)の「特許請求の範囲」の限定、そして10〜100の全範囲(上限と下限の両方を有する)に対するサポートを提供する。
本発明のいくつかの実施態様を、以下の実施例によって更に説明することができるが、これらの実施例は単に説明のために記載するのであって、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
例1〜4は、機械撹拌型の、熱油ジャケット付き2ガロン・チタン反応器の周囲に取り付けたパイロット規模のシステム中で行った、p−キシレンのテレフタル酸へのパイロット規模の酸化に関する。反応器内の気体分散型撹拌機を約1,500回転/分(rpm)で回転させ、撹拌機のパワードロー(power draw)を約220ワットとした。パイロット規模のシステムには、反応器内の圧力及び温度を制御するための、並びに反応器に入る気体流速及び液体流束を制御するための、手段を装着した。p−キシレン供給材料は、シリンジポンプによって約0.28kg/時の効果的な定常速度で供給した。触媒供給材料溶液は、約3.2kg/時の効果的な定常速度で触媒供給タンクから反応器中にポンプ輸送した。p−キシレン及び触媒供給溶液は、いずれも、反応器内の通気スラリーのレベルより下方に末端を有する浸漬管を通して反応媒体中に放出した。核(nuclear)液面測定システムを用いて、反応器中の反応マスを、反応器の底部近くに配置されたドレン弁の自動運転によって約40%の表示値に保持した。較正によって、この表示値は反応媒体約3kgに相当した。圧縮空気を、反応器内の気体分散インペラーのレベルより下方に末端を有する管を通して効果的に連続的に供給した。反応器からの排ガスに、排ガスからのほとんどの有機蒸気を凝縮するように設計された凝縮器システムを取り付けた。排ガスからの凝縮液は、約1.3kg/時の速度でプロセスから除去し、排ガス凝縮液の残りを反応器に戻した。空気供給速度は、排ガス凝縮器後に出ていく気体中の酸素濃度を、乾燥基準で約3〜4モル%に保持するように調整した。反応器から出ていく気体は、インラインのガス分析装置を用いて酸素、二酸化炭素及び一酸化炭素について連続的に監視した。粗製テレフタル酸(CTA)固体を含む生成物スラリーを無通気撹拌受けタンク中に回収し、それを第2の無通気受けタンク中に4時間毎に回分的に排出させ、第2の無通気受けタンク中でスラリーを約40℃に冷却することによって更なる溶解生成物を結晶化させた。得られた冷却スラリーを濾過した。濾液を回収し、秤量し、そして低レベル有機化合物に関してはHPLC−MSによって、金属に関してはX線によって、酢酸メチル及びキシレンに関してはガスクロマトグラフィーによって、水に関しては近赤外線によって分析した。湿った固体を秤量し、サンプルを含水量に関して分析した。残りの固体の一部を酢酸で洗浄し、乾燥させ、特定の検体についてHPLC−MSによって分析した。反応凝縮液を秤量し、既知濃度の特定の検体を用いて較正されたガスクロマトグラフィー法によって分析した。
各酸化ランについて、触媒供給材料溶液を撹拌型触媒供給タンク中で製造した。触媒供給材料溶液には氷酢酸及び脱イオン水を含ませた。触媒供給材料溶液中のコバルトは、酢酸第一コバルト四水和物として添加し、マンガンは酢酸第一マンガン四水和物として添加し、臭素は48%臭化水素酸水溶液として添加した。触媒供給材料溶液中の各成分の量は、以下に示す反応スラリー組成を与えるように選択した。始動のために、反応器に触媒供給溶液及びキシレンを装入し、加熱油ジャケット及び圧力を用いて反応温度に至らせ、蒸発によって約1/2の容量まで濃縮した。発熱が観察されるまで、窒素で稀釈された空気を混合物中に導入した。反応が開始されたら、p−キシレン及び触媒供給材料溶液を前に示した速度で反応に供給した。反応をその条件において約8時間持続してから、生成物を貯留した。その後、スラリー生成物を、実験期間中は約4時間間隔で採取し、前述のようにして分析を行った。気体流、温度及び圧力に関する値を10分毎に記録し、各ランについて平均した。
以下に開示するいくつかの反応については、入手したままのクロマトグラフィー(HPLC)グレードのp−キシレンを、2サイクルの部分凍結融解結晶化によって更に精製した。ガスクロマトグラフィー分析によって測定した、供給材料p−キシレン中のいくつかの不純物のレベルは、表Vに示した通りである。
Figure 2008511665
例1及び2は、不純なp−キシレン中に典型的に見られる不純物から若干の安息香酸(BA)が生じること及び非常によく撹拌され且つ非常によく通気された反応媒体中でさえも、部分酸化の間にp−キシレン自体から若干の安息香酸が生成されることを示している。例1及び2に関するデータを表VIに示す。
Figure 2008511665
表VIからわかるように、安息香酸の正味生成に比較したTPA生成の比は、HPLCグレードの不純p−キシレンを用いて運転した場合にはわずか720であった。この比は、更に精製したp−キシレンを用いた例2に関しては1,180まで上昇した。しかし、これらの反応条件においては、一置換ベンゼン環を本質的に持たない、更に精製したp−キシレンを供給した場合でさえ、若干の安息香酸が内在的に生成されたことは重要である。すなわち、自己生成安息香酸は、おそらくはp−キシレン自体の酸化の間に1つのアルキル又はアシル置換基を失うことによって形成されたのであろう。更に、自己生成安息香酸の量は、HPLCグレードのp−キシレン又は更に精製されたp−キシレンのいずれを用いても、実験精度内でほぼ同じであった。すなわち、表IIのデータは、HPLCグレードのp−キシレンを用いて生成された安息香酸の総量は、実験精度内で、[自己生成安息香酸]+[該当する非キシレン不純物(特にトルエン及びエチルベンゼン)の酸化によって生成された安息香酸]の和であったことを示す。
引き続いて例3及び4に進むと、これらは、反応媒体の液相中における安息香酸の液相濃度の増加が、TPAの生成速度に比較していくつかの不所望な反応の速度を増加させることを示している。例4においては、安息香酸の液相濃度は、触媒供給材料溶液内において所望の量の安息香酸を意図的に溶解させることによって上昇させた。酢酸、水、コバルト、臭素、マンガン及び分析グレードの安息香酸を含む、例4のこの溶液は、購入した分析グレードの安息香酸と共に混合物に入った可能性が最も高い、低レベルの芳香族不純物に関してHPLC−MSによって分析した。例3及び4の両方について、表VIIに記載した芳香族不純物の正味生成は、反応媒体から出る全流れ中の各不純物の質量流量を合計し、次いで、反応媒体に入る全流れ中の同一不純物の質量流量を差し引くことによってコンピューターで計算した。便宜上、不純物の正味生成速度は、[生成された不純物の重量]÷[p−キシレン供給材料の重量に166/106(TPA対p−キシレンの分子量比)を掛けることによって算出された生成TPAの理論重量]として表す。次に、これらの値を1,000,000倍することによって、ppmwで表される重量比を示す。
Figure 2008511665
例3の結果と例4の結果を比較すると、フタル酸の形成が、反応媒体の液相中の安息香酸の存在によって際だって上昇したことがわかる。例4におけるフタル酸の生成速度は約189ppmwであり、この量は、開示した好ましい範囲内のp−キシレン中に存在するo−キシレン不純物から生成されたものに相当する。
例3の結果と例4の結果を更に比較すると、反応媒体の液相中の安息香酸の存在は、1つの有色不純物、9−フルオレノン−2−カルボン酸の生成に非常に影響を及ぼしたが、別の有色不純物、2,7−ジカルボキシフルオレノンの生成には影響を及ぼさなかったことがわかる。4,4’−ジカルボキシビフェニルの生成は、例4においては大きく増加したこと及び4,4’−ジカルボキシベンゾフェノンが著しく増加したこともわかる。
本発明者らは、また、他の同様な実験において反応媒体の液相にイソフタル酸又はフタル酸を混ぜた場合にも同様な結果が観察されたことを開示する。例えば、トリメリット酸の生成速度は、イソフタル酸又はフタル酸の濃度が上昇した場合に増加した。例えば、色の濃い2,7−ジカルボキシフルオレノンを含む特定の型のポリ芳香族種は、反応媒体の液相にイソフタル酸を添加した場合には一貫して且つ比例して上昇した。
例3の結果と例4の結果を更に比較すると、例4においては、二酸化炭素の量の実質的な増加、一酸化炭素のわずかな減少及び芳香族供給源及び酢酸の両方に由来するこれらの2種の気体の比率の著しい変化がわかる。簡略化して見ると、例4における炭素酸化物への全炭素損失は、例3の場合よりも6%大きい。本発明者らは、また、他の実験において反応媒体の液相中のイソフタル酸又はフタル酸の濃度を増加させた場合に及び反復実験において安息香酸を用いた場合に、炭素酸化物損失の上昇という同様な結果が観察されたことを開示する。反応媒体の液相中のp−トルイル酸の濃度が例4においては例3に比較して上昇していることもわかり、これは、反応性のレベルが若干低いことを示す。この反応性抑制の原因は、水の又は触媒成分の濃度にも、反応温度又は過剰な酸素の量にも認められない。本発明者らは、また、他の実験において反応媒体の液相中のイソフタル酸又はフタル酸の濃度を増加させた場合に及び反復実験において安息香酸を用いた場合に、より低い反応性という同様な結果が観察されたことを開示する。
従って、TPA中において望ましくない不純物の生成の増加、炭素酸化物の損失及び反応性の抑制は、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない多くの芳香族化合物が反応媒体の液相中に高レベルで存在する場合に起こるようである。従って、p−キシレン供給材料中の特定の不純物、再循還溶媒中の特定の不純物及び特定の不純物の自己生成を制御することが望ましい。
本発明を特にその好ましい実施態様に関して詳述したが、本発明の精神及び範囲内で変動及び変更が可能なことを理解されたい。
本発明の一実施態様に従って構築された酸化反応器の側面図である。 図3のライン2−2に沿った気泡塔型反応器の底部の拡大側断面図である。 図2の酸化剤スパージャーの上面図である。 図2の酸化剤スパージャーの底面図である。 図3のライン5−5に沿った酸化剤スパージャーの側断面図である。 気泡塔型反応器の底部部分の拡大側面図である。 図6のライン7−7に沿った上断面図である。 図7と同様な上断面図である。 多数の容器貫通を必要とせずに垂直方向に間隔をあけられた複数の位置において反応ゾーン中に供給流を導入するための代替システムの等角図である。 図9に示された貫通が1つの供給材料分配システム及び酸化剤スパージャーの側面図である。 図10のライン11−11に沿った上断面図である。 酸化剤用開口部の全てがリング部材の底部に配置された代替酸化剤スパージャーの等角図である。 図12の代替酸化剤スパージャーの上面図である。 図12の代替酸化剤スパージャーの底面図である。 図13のライン15−15に沿った酸化剤スパージャーの側断面図である。 反応器の底部出口近くに内部脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図である。 図18のライン17−17に沿った図16の気泡塔型反応器の下部の拡大側断面図である。 図16のライン18−18に沿った上断面図である。 外部脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図である。 反応器の側部の高い位置から回収される反応媒体の気相を離脱させるための内部/外部複合型脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図である。 反応器の底部近くに代替複合型脱気容器を装着した気泡塔型反応器の側面図である。 図21の気泡塔型反応器の下部の拡大側断面図である。 図22と同様な拡大側断面図である。 反応器の上部から反応器の下部に反応媒体の一部を循環させることによって被酸化性化合物の分散の改善に役立つ内部流通導管を用いる気泡塔型反応器の側面図である。 反応器の上部から反応器の下部に反応媒体の一部を循環させることによって被酸化性化合物の分散の改善に役立つ外部流通導管を用いる気泡塔型反応器の側面図である。 酸化反応器内における被酸化性化合物の分散を改良するために使用できる横型エダクターの側断面図である。 酸化反応器中における被酸化性化合物の分散を改良するために使用できる縦型エダクターの側断面図である。 多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図である。 多相反応媒体を含む気泡塔型反応器の側面図である。 任意の機械的撹拌を用いる又は用いない、多相反応媒体を含む2つの積み重ね反応器の側面図である。 任意の機械的撹拌を用いる又は用いない、多相反応媒体を含む3つの並列反応器の側面図である。 本発明の一実施態様に従って製造された粗製テレフタル酸(CTA)粒子の拡大図である。 本発明の一実施態様に従って製造された粗製テレフタル酸(CTA)粒子の拡大図である。 常法に従って製造されたCTA粒子の拡大図である。 常法に従って製造されたCTA粒子の拡大図である。 先行技術の精製テレフタル酸(PTA)製造方法の簡略化した工程系統図である。 発明の一実施態様に係るPTA製造方法の簡略化した工程系統図である。

Claims (20)

  1. (a)p−キシレンを含む供給流を初期酸化反応器の反応ゾーン中に導入し(ここで前記供給流は、以下の特性:
    (i)前記p−キシレンの約20〜約800重量百万分率(ppmwpX)の範囲の量のm−キシレンを含み、
    (ii)約10〜約300ppmwpXの範囲の量のo−キシレンを含み、
    (iii)約50〜約900ppmwpXの範囲の量の、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの組合せを含む
    の1つ又はそれ以上を有する);そして
    (b)前記反応ゾーンに含まれる多相反応媒体の液相中において前記p−キシレンの少なくとも一部を酸化させる
    ことを含んでなる方法。
  2. 前記供給流が約20〜約800ppmwpXの範囲の量のm−キシレンを含む請求項1に記載の方法。
  3. 前記供給流が約10〜約300ppmwpXの範囲の量のo−キシレンを含む請求項1に記載の方法。
  4. 前記供給流がm−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの組合せを約50〜約900ppmwpXの範囲の量で含む請求項1に記載の方法。
  5. 前記供給流が約20〜約800ppmwpXの範囲の量のm−キシレンを含み、前記供給流が約10〜約300ppmwpXの範囲の量のo−キシレンを含む請求項1に記載の方法。
  6. 前記供給流が約20〜約800ppmwpXの範囲の量のm−キシレンを含み、前記供給流が約50〜約900ppmwpXの範囲の量の、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの組合せを含む請求項1に記載の方法。
  7. 前記供給流が約10〜約300ppmwpXの範囲の量のo−キシレンを含み、前記供給流が約50〜約900ppmwpXの範囲の量の、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの組合せを含む請求項1に記載の方法。
  8. 前記供給流が約20〜約800ppmwpXの範囲の量のm−キシレンを含み、前記供給流が約10〜約300ppmwpXの範囲の量のo−キシレンを含み、前記供給流が約50〜約900ppmwpXの範囲の量の、m−キシレン、o−キシレン、エチルベンゼン及びトルエンの組合せを含む請求項1に記載の方法。
  9. 前記初期酸化反応器が気泡塔型反応器である請求項1に記載の方法。
  10. 前記反応媒体を約125〜約200℃の範囲の温度に保持する請求項1に記載の方法。
  11. 前記方法が前記反応ゾーン中に溶媒供給材料を導入することを更に含み、前記溶媒供給材料の少なくとも約20重量%が再循還溶媒であり、前記溶媒供給材料が以下の特性:
    (iv)約300〜約9,000ppmwの範囲の、非芳香族ヒドロカルビル基を持たない芳香族カルボン酸を含み、
    (v)約40〜約1,200ppmwの範囲のイソフタル酸(IPA)を含み、
    (vi)約20ppmw未満の総フルオレノン類を含み、
    (vii)約0.1〜約10ppmwの範囲の2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)を含む
    の1つ又はそれ以上を有する請求項1に記載の方法。
  12. 前記初期酸化反応器中における前記酸化が前記反応媒体中においてテレフタル酸を生成させ、前記方法が前記テレフタル酸の少なくとも一部を二次酸化反応器中における酸化に供することを更に含む請求項1に記載の方法。
  13. 前記二次酸化反応器中における前記酸化を、前記初期酸化反応器中における前記酸化よりも少なくとも約10℃高い平均温度で実施する請求項12に記載の方法。
  14. 前記二次酸化反応器中における前記酸化を、前記初期酸化反応器の平均温度よりも約20〜約80℃高い範囲の平均温度において、実施し、前記初期酸化反応器中における前記酸化を約140〜約180℃の範囲の平均温度において実施し、前記二次酸化反応器中における前記酸化を、約180〜約220℃の範囲の平均温度において、実施する請求項12に記載の方法。
  15. 前記酸化が前記反応媒体中において粗製テレフタル酸粒子を生成させ、前記粗製テレフタル酸粒子の代表的なサンプルが以下の特性:
    (viii)約12ppmw未満の4,4−ジカルボキシスチルベン(4,4−DCS)を含み、
    (ix)約800ppmw未満のイソフタル酸(IPA)を含み、
    (x)約100ppmw未満の2,6−ジカルボキシフルオレノン(2,6−DCF)を含み、
    (xi)340nmにおけるパーセント透過率(%T340)が約25より大きい
    の1つ又はそれ以上を有する請求項1に記載の方法。
  16. 前記酸化が前記反応媒体において粗製テレフタル酸を生成させ、前記粗製テレフタル酸粒子の代表サンプルが、本明細書中に定義した時限溶解試験(timed dissolution test)に供した場合に、1分でTHF中に少なくとも約500ppmの濃度まで溶解する請求項1に記載の方法。
  17. 前記酸化が前記反応媒体中において粗製テレフタル酸を生成させ、前記粗製テレフタル酸粒子の代表サンプルが、本明細書中で定義した時限溶解モデル(timed dissolution model)によって算出した場合に、約0.5レシプロカル分より大きい時定数Cを有する請求項1に記載の方法。
  18. 前記酸化が前記反応媒体中において粗製テレフタル酸を生成させ、前記粗製テレフタル酸粒子の代表サンプルが約0.6m2/gより大きい平均BET表面積を有する請求項1に記載の方法。
  19. 前記酸化が前記反応媒体中において粗製テレフタル酸を生成させ、前記粗製テレフタル酸粒子の代表サンプルが約20〜約150ミクロンの範囲の平均粒度を有する請求項1に記載の方法。
  20. 前記酸化が前記反応媒体中において粗製テレフタル酸を生成させ、前記粗製テレフタル酸粒子の代表サンプルが約30〜約150ミクロンの範囲のD(v,0.9)粒度を有する請求項1に記載の方法。
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