JP2009528080A - 硬化性骨セメント - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硬化性高分子結合剤及び充填材を含んでなる硬化性骨セメントであって、当該セメントが、硬化剤への暴露の際に、顕著な発熱を伴わずに硬化可能であり、前記結合剤が、反応によりセメントを硬化させることができるフェノール基を含んでなる、前記硬化性骨セメント。
【選択図】図5
Description
−ヒアルロン酸と、チラミン、カテキン、エピカテキン、没食子酸及びエピガロカテキンガレート、並びにそれらの2つ以上の化合物を含有する混合物からなる群から選択されるコンジュゲートと、
−アパタイト充填材を含んでなり、当該セメントは、過酸化物及びペルオキシダーゼ酵素への暴露により、顕著な発熱を生じさせずに硬化しうることを特徴とする。
−ポリアミン、又はゼラチン及び/若しくはコラーゲンなどのポリペプチドと、チラミン、カテキン、エピカテキン、没食子酸及びエピガロカテキンガレート、並びにそれらの2つ以上を含有する混合物からなる群から選択される化合物とのコンジュゲートと、
−アパタイト充填材を含んでなり、
それにより、当該セメントは、過酸化水素及び西洋ワサビペルオキシダーゼへの暴露の後、顕著な発熱を生じさせずに硬化しうる。
−フェノール性物質とポリマー性物質をカップリングさせて硬化性結合剤を形成させるステップと、
−当該硬化性結合剤の溶液を充填材、及び任意にコラーゲン、ケイ酸塩、タンパク質(例えば成長因子)及び血小板などの1つ以上の更なる成分と混合するステップを含んでなり、前記結合剤は、反応によりセメントを硬化させるフェノール基を含んでなる。
−当該硬化性骨を硬化剤に暴露して、触媒作用を及ぼされた骨セメントを形成させるステップと、
−当該触媒作用を及ぼされた骨セメントを、顕著な発熱を生じさせずに硬化させるステップを含んでなる。
−硬化性結合剤及び充填材を含有する硬化性骨セメントを、硬化剤と混合して、触媒作用を及ぼされた骨セメントを形成させるステップであって、前記結合剤が、反応によりセメントを硬化させることができるフェノール基を含んでなるステップと、
−前記触媒作用を及ぼされた骨セメントを、前記の骨の表面、及び/又は骨の内部に注入するステップと、
−顕著な発熱を生じさせずに、当該骨の表面、及び/又は骨の内部において、当該触媒作用を及ぼされた骨セメントを硬化させるステップを含んでなる。
(i)は外科的なインプラント操作が不要になる、
(ii)組織の損傷が防止できる、
(iii)成長因子の生物学的活性の損傷が最小化される、
(iv)生体適合性が改善される、などの利点が挙げられる。
ヒドロキシアパタイト(HAP)及び炭酸アパタイト(CAP)を、塩基を用いた沈殿法により、硝酸カルシウム、リン酸アンモニウム及び炭酸アンモニウムから合成した。コラーゲンはネズミから抽出し、40mg/mlの濃度となるように、0.05Mのリン酸溶液中に溶解させた。4つの異なる注射可能なペースト状の調製物に関して試験した:
1.HA−Tyr溶液のみ(コントロール);
2.HA−Tyr溶液及びアパタイト粉末;
3.HA−Tyr溶液及びアパタイト粉末、並びにコラーゲン溶液;
4.HA−Tyr溶液及び予備的に混合したコラーゲン−アパタイト溶液。
(i)0.5mlのコラーゲンを含有する、HA−Tyr及びアパタイトのペースト状溶液、及び
(ii)コラーゲン及びアパタイトの予備混合溶液1mlを含有するHA−Tyr溶液。
注入後5週目において、以下の結果が得られた。H及びE染色では、好ましい細胞増殖、血液供給及び組織内への成長が全てのサンプルにおいて示され、また壊死は存在しなかった(図1(a)、2(a)、3(a)及び4(a))。H及びEとは、ヘマトキシリン及びエオシンによる、組織切片の組織学的な染色のことを指す。細胞核は、幾つかの異染色も存在するが、青色に染色される。細胞質はピンクの様々な色合いで染色され、それらは異なる組織構成成分を示す。ALPとは、組織切片のアルカリホスファターゼクロモゲン染色(BCIP/NBTともいう。BCIP:5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート、NBT:塩化p−ニトロブルーテトラゾリウム)のことを指す。アルカリホスファターゼ活性が見られる領域は、濃い紫色に染色される。アルカリホスファターゼは、主に肝臓(イソ酵素ALP−1)及び骨(イソ酵素ALP−2)に存在する酵素群である。NFRとは、ヌクレアファストレッド染色(組織切片用の対比染色剤)のことを指す。細胞核が赤く染色され、細胞質がピンクに染色される。VKとは、カルシウムに関する、組織切片のVon Kossa染色を指す。この方法は、カルシウム又はカルシウム塩の堆積を観察する方法であり、それはカルシウムイオン自体に対しては特異性を有さない。この方法では、組織切片を硝酸銀溶液で処理し、強い光によって還元されたカルシウムを置換させることによって銀を堆積させ、カルシウム塩を有する領域を黒又は暗い茶色で染色する。コントロール(図1(b))と比較し、原料調製物へのアパタイトの添加により、ALP染色において陽性であり、また骨芽細胞活性を示す領域が、黒紫色による染色部位として示された(図2(b)、図3(b)及び図4(b))。また、アパタイトを含有するサンプルにおいてもVK染色において陽性(暗褐色)であり(図2(c)、図3(c)及び図4(c))すなわちアパタイトに存在するか又は骨芽細胞の活性により放出されるカルシウムに起因するものと考えられる。以上より、当該材料は毒性を有さず、また生物学的適合性を有することも示された。更に、ALP活性が異所領域への注入の後にも観察されたため、アパタイトを含む調製物また骨形成を促進するものと考えられる。
発明者らは、発熱又は周囲組織の損傷を伴わずに、注射可能であり、またin vivoでの迅速な固化性能を有する骨セメント材を開発した。酵素によるの酸化的カップリング反応を応用することにより、単純かつ非毒性の、注射可能な、in situ骨セメントシステムの開発に至った。この注射可能な骨セメントシステムは、生体適合性を有し、また使用が簡便であるため、骨欠損の治療及び再生に非常に有効である。
コンジュゲート(1)は、図6に示す、一般のプロトコルに従い合成した。HA(1g、2.5mmol)を100mlの蒸留水に溶解させた。この溶液に、アミノアセトアルデヒドジエチルアセタール(1.2g、9mmol)を添加した。反応混合物のpHを、0.1MのHCl N−ヒドロキシスクシニミド(0.34g、3.0mmol)を添加して4.7に調整し、1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド塩酸(EDC)(0.575g、3.0mmol)を溶液に添加した。混合後、反応のpHはを4.7に維持した。溶液を穏やかに撹拌しながら、24時間室温に保持した。混合物を透析(分子量=1000のカットオフ)して精製した。
HA−EGCGコンジュゲートを、図7に示すプロトコルにより合成した。1gのコンジュゲート(1)を、60mlの蒸留水に溶解させた。更に、HCl溶液を添加して溶液のpHを1に調整した。この溶液に、DMSO中に溶解させた5mlのEGCG溶液(0.2g/mL)を添加した。溶液を穏やかに撹拌しながら、24時間室温に保持した。混合物を透析(分子量=1000のカットオフ)して精製した。
Claims (30)
- 硬化性高分子結合剤及び充填材を含んでなる硬化性骨セメントであって、当該セメントが、硬化剤への暴露の際に、顕著な発熱を伴わずに硬化可能であり、前記結合剤が、反応によりセメントを硬化させることができるフェノール基を含んでなる、前記硬化性骨セメント。
- 前記フェノール基が−C6R’4OR基を含んでなり、式中、R及び各R’が各々独立に水素、アルキル基、アリール基又はアシル基であり、またR’がOHであってもよく、各R’が同じでもよく、又は各R’が異なってもよく、但し、OR基に対してオルト位の少なくとも1つのR’が水素であり、R及びR’が、1つの−C6R’4OR基が酸化的にもう1つの−C6R’4OR基とカップリングさせることができるものである、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 少なくとも幾つかの−C6R’4OR基が−C6H4OH基である、請求項2記載の硬化性骨セメント。
- 前記硬化性高分子結合剤が、多糖類、ポリアミン又はポリペプチドと、チラミン、カテキン、エピカテキン、没食子酸及びエピガロカテキンガレート(EGCG)、並びにそれらの2つ以上を含むあらゆる混合物からなる群から選択される化合物とのコンジュゲートを含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 前記多糖類がヒアルロン酸である、請求項4記載の硬化性骨セメント。
- 前記硬化剤が酸化剤を含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント
- 前記硬化剤が酵素を含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 前記酵素がペルオキシダーゼ酵素である、請求項7記載の硬化性骨セメント。
- 前記硬化剤が更に過酸化物を含んでなる、請求項7記載の硬化性骨セメント。
- 前記硬化剤が過酸化水素及び西洋ワサビペルオキシダーゼを含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 請求項1記載の硬化性骨セメントであって、当該セメントが、当該セメントを硬化させる患者の体温において、硬化剤への暴露の際に、顕著な発熱を伴わずに約10秒〜約30分で固体に硬化されうる、前記硬化性骨セメント。
- 前記充填剤がミネラル質充填剤を含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 前記充填材がアパタイト又は2つ以上のアパタイトの混合物を含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 前記充填材が、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、フルオロアパタイト、修飾アパタイト、シリカ、リン酸カルシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、タルク、雲母及びそれらの混合物からなる群から選択される材料を含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 更に、コラーゲン、ケイ酸塩、タンパク質及び血小板からなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を含んでなる、請求項1記載の硬化性骨セメント。
- 前記タンパク質が成長因子である、請求項15記載の硬化性骨セメント。
- 硬化剤と組み合わされた請求項1記載の硬化性骨セメントを含んでなる、触媒作用を及ぼされた骨セメント。
- 注射可能である、請求項17記載の骨セメント。
- ペースト状である、請求項17記載の骨セメント。
- 硬化性骨セメントの調製方法であって、硬化性高分子結合剤の溶液と充填材を混合することを含んでなり、前記結合剤が、反応により前記セメントを硬化させることができるフェノール基を含んでなり、それにより、当該セメントが、当該セメントを硬化させる患者の体温において、硬化剤への暴露の際に、顕著な発熱を伴わずに硬化されうる、前記方法。
- 前記フェノール基が−C6R’4OR基を含んでなり、式中、R及び各R’が各々独立に水素、アルキル基、アリール基又はアシル基であり、またR’がOHであってもよく、各R’が同じでもよく、又は各R’が異なってもよく、但し、OR基に対してオルト位の少なくとも1つのR’が水素であり、R及びR’が、1つの−C6R’4OR基が酸化的にもう1つの−C6R’4OR基とカップリングさせることができるものである、請求項20記載の方法。
- 前記硬化性高分子結合剤が、多糖類、ポリアミン又はポリペプチドと、チラミン、カテキン、エピカテキン、没食子酸及びエピガロカテキンガレート(EGCG)、並びにそれらの2つ以上を含むあらゆる混合物からなる群から選択される化合物とのコンジュゲートを含んでなる、請求項20記載の方法。
- 前記充填材が、アパタイト、アパタイトの混合物、シリカ、リン酸カルシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、タルク、雲母又はこれらのうちの2つ以上の混合物を含んでなり、前記硬化剤が酵素を含んでなる、請求項20記載の方法。
- 前記酵素がペルオキシダーゼ酵素である、請求項23記載の方法。
- 前記硬化剤が更に過酸化物を含んでなる、請求項23記載の方法。
- コラーゲン、ケイ酸塩、タンパク質及び血小板からなる群から選択される少なくとも1つの更なる成分を添加することを含んでなる、請求項20記載の方法。
- 硬化性骨セメントを硬化させる方法であって、
−硬化性骨を硬化剤に暴露させ、触媒作用を及ぼされた骨セメントを形成させるステップと、
−顕著な発熱を生じさせずに、前記触媒作用を及ぼされた骨セメントを硬化させるステップを含んでなり、
前記骨セメントが、硬化性高分子結合剤及び充填材を含んでなり、前記セメントが、前記セメントを硬化させる患者の体温で、硬化剤への暴露の際に、顕著な発熱を生じさせずに硬化されることができ、前記結合剤が、反応によりセメントを硬化させることができるフェノール基を含んでなる、前記方法。 - 前記硬化剤が酵素を含んでなる、請求項27記載の方法。
- 前記触媒作用を及ぼされた骨セメントを硬化させるステップの前に、更に、患者に骨セメントを注射するステップを含んでなる、請求項27記載の方法。
- 少なくとも部分的に患者の骨を修復する方法であって、
−硬化性骨セメントを硬化剤と混合して、触媒作用を及ぼされた骨セメントを形成させるステップと、
−前記触媒作用を及ぼされた骨セメントを、前記骨の表面及び/又は内部に注入するステップと、
−前記触媒作用を及ぼされた骨セメントを、顕著な発熱を生じさせずに、前記骨の表面及び/又は内部で硬化させるステップを含んでなり、
前記骨セメントが、硬化性高分子結合剤及び充填材を含んでなり、前記セメントが、患者の体温で、硬化剤への暴露の際に、顕著な発熱を生じさせずに硬化されることができ、前記結合剤が、反応によりセメントを硬化させることができるフェノール基を含んでなる、前記方法。
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