機械的負荷が加えられた場合においてもバリスタブロック相互の良好な接触を確実にするために、積層は加圧下で一体的に保持されなければならない。かご型の避雷器の場合において、これは二つの端部取付け部材に張力をかけて保持された、通常はロッド又はケーブル、好ましくはガラス繊維強化プラスチックのロッド(GFCロッド)よりなる補強要素を用いて達成される。
その様な避雷器の一つの課題は、野外に避雷器が設置された場合に生じる機械的負荷に対しても必要な強度が維持されるように、補強要素を端部取付け部材に確実に取り付けることである。
前述の日本国特許出願において、補強要素が挿入される溝をバリスタブロックの積層方向へ端部取付け部材に設け、そして補強要素の端部に、端部取付け部材の溝より直径が大きいナットをネジ締めするネジ山を備えることにより、基本的にかみ合い接続を用いて補強要素を保持することで、この課題が解決されている。
この解決方法は避雷器を効果的な方法で設計することを可能にするが、補強要素として用いられるGFCロッドへの損傷を与えないネジ切りという問題をもたらす。そのネジ切りは、非常に複雑で高価なものである。
欧州特許出願第93915343.3号は、補強要素を避雷器の端部取付け部材に固定できる、更に可能な方法を開示している。特に、この文献において、補強要素の長手方向に直角に延在して、ロッドを通るネジなし穴を貫通するピン又はネジを用いて補強要素が堅固に保持された避雷器が提案されている。そのピン及びネジは、端部取付け部材の対応する凹部又はネジ穴に保持される。
ガラス補強要素として用いられるGFCロッドにその長手方向に対して直角に穴を形成することは、GFCロッドにネジ切りするより相当容易であるが、この長手方向に対して直角に穴を形成した構造は、補強要素が穴の部分で弱くなり、それにより補強要素が裂けてしまう危険性を生じる。
前述の欧州特許出願では更に、くさびを用いて補強要素を端部取付け部材内に固定する選択肢も開示している。このために、バリスタブロックの積層の中央に向かって先細になっているくさびが、各補強要素と端部取付け部材の対応する傾斜面との間に配置され、そしてその二つ、補強要素と端部取付け部材の対応する傾斜面とは端部取付け部材の外側部分からの半径方向への圧力により一体的に保持される。もし、引張荷重が補強要素に加えられると、静止摩擦がくさびを一緒に引き出すようにし、このことは、その関連するくさびと端部取付け部材との間の摩擦係止又は圧力嵌めにより補強要素が保持されるのを確実にする。
この提案された避雷器において、補強要素は好ましくは断面が円形形状である細長い一片であり、この一片はガラス繊維強化補強要素の曲率がバリスタブロックの曲率の半径に精密に対応するようにガラス繊維強化プラスチック材料から構成されている。
本発明は添付図面を参照して以下に詳細に記載される。
図1に示されるようなかご型避雷器は、少なくとも一つのバリスタブロック1を含んでいる。既知の、電気依存抵抗を有するセラミックディスク(可変抵抗器)は、バリスタブロック1として用いられる。電圧が低いときには、バリスタブロック1は実質的に完全な絶縁体のように働き、一方で、バリスタブロック1は高電圧では高い導電性を有する。従来市販されているバリスタブロックは、酸化亜鉛(ZnO)を主成分として製造されている。しかし本発明は、そのような酸化亜鉛を用いた形式の避雷器に限定されず、例えば、他の金属酸化物も炭化ケイ素と同様にバリスタブロックに使用することができる。更に、追加のブロック、例えば金属ブロック又は放電ブロックも、バリスタブロック1に加えて積層中に含めることができ、この方法により避雷器の長さを各用途の要求に適合できる。
従来市販されているバリスタブロック1は、円柱形状で、例えば直径が5cm、高さが約4cmである。詳細が示されていないアルミニウム電極は、バリスタブロック1の両側に用いられ、より良好な接触を確実にする。接触を更に向上するために、同様に示されない薄いアルミニウムディスクや代わりのバネ要素をバリスタブロック1の間に設置することも同様に通常のことである。
図1に示される避雷器において、このようなバリスタブロック1及び場合によって他のバリスタブロック1の表面にある金属ブロックが積層されたことにより形成される積層は二つの端部取付け部材3の間に保持される。この端部取付け部材3は、一般的にアルミニウム又はステンレス鋼により形成され、例えば避雷器の外側に突出しかつバリスタブロック1と良好な電気接触をなす中央ネジ4を用いて既存の電気設備又は電力供給グリッドシステムに容易に組み込むことができるように設計されている。
環境からの保護のため、これらの避雷器は外側ハウジング5により囲繞され、そのハウジング5は大抵シリコーンからなる。このハウジングは、注型又は吹き付けにより形成され得る。
電流の沿面距離を増加するために、ハウジング5の外側に仕切り(スクリーン)7が形成されている。
このような避雷器は、野外環境で用いられた場合にそれらに連結する電線を通して送られる力の結果として相当な曲げモーメントを受ける。従って、比較的大きい機械的負荷が加えられた場合でさえバリスタブロック1と端部取付け部材との間での接触が維持されること、及び二つの隣接するバリスタブロック間で傾いたことにより生じるバリスタブロックの縁の破損が避けられることを確実にすることが必要である。これを達成するために、ガラス繊維強化プラスチックのロッド又はケーブル9が、補強要素として二つの端部取付け部材3の間に挟持される。これらは、バリスタブロック1を二つの端部取付け部材3の間に引張荷重を用いて一体的に保持する。更に、バネ要素がバリスタブロック1の積層へ挿入されることもあり、この方法によれば、気温の変動等が起きた場合でも接触を確実にすることができる。
以下の記載において、本発明へのいかなる限定ともみなされることなく、補強要素はロッド9と称される。
図2は、本発明による避雷器の端部取付け部材の平面図を示す。端部取付け部材3は、本質的に円柱形状であり、その直径はバリスタブロックのそれよりも大きい。積層方向における端部取付け部材の円周に沿った貫通孔11は、端部取付け部材の半径領域内に形成され、バリスタブロックを超えて張り出している。中央ネジ4のための更なる貫通孔25は、好ましくは内部にネジ山を有し、端部取付け部材の中心に形成される。
少なくとも一つの小区分において、貫通孔11の断面は円形でなく、好ましくは端部取り付け部材のバリスタブロックから離れて面する側における端部取付け部材の接線方向に広くなっている。
図示した実施形態は八つの貫通孔を示しているが、異なる数、例えば三つ又は四つの貫通孔11でも可能である。
図3は、図2におけるA−A線に沿う端部取付け部材3の断面図を示す。
図4は、図2におけるB−B線に沿う断面図におけるこのような貫通孔11の詳細を示す。
ここに見られるように、貫通孔11は、直線に通っている第一の円錐形部分11bと第二の部分11aを有する。直線部分11aの形状は、精密に適合してロッドを囲むためにガラス繊維強化ロッド9に適合するように設計される。貫通孔は第二の部分の領域において好ましくは円形の断面を有している。
第一の部分11bは一方向に円錐形に広くなっている。円錐形の表面の傾斜角として約5°の角度が好ましい。
図4に示すように、ガラス繊維強化プラスチックロッド9は、貫通孔11内に保持され、くさび13はロッド9中にこれを割るために打ち込まれている。
複数のガラス繊維強化プラスチックロッドは、このようにしてくさび13とともにバリスタブロックの円周に沿ってバリスタブロック積層の両側の端部取付け部材3に取り付けられる。
くさびの挿入をより容易にするために、製造においてくさびを打ち込む際にガラス繊維強化ロッドの端部表面にV字型の切り込みを設けることが可能である。
貫通孔11付の端部取付け部材3、及びくさび13とガラス繊維強化ロッド9と結合した円錐形部分11bからなる本発明による設計から、ロッド9が分割された領域における円錐形部分11bの側壁を斜めに通り、堅固に押圧するガラス強化ロッド9を半分にしたものが二つ、結果として得られる。このくさび連結は、端部取付け部材3を通る穴11内に力で適合させて保持されているガラス繊維強化ロッドにより、ガラス繊維強化プラスチックロッド9への引張荷重を適用して常に張らせることによりなる。ガラス繊維強化ロッド9がそれらの破壊点に達するまでしっかりとこれらが保持されることを確実にするために、ガラス繊維強化ロッド9が端部取付け部材3内に取り付けられることが可能であることを、試験が示している。
くさび13とガラス繊維強化ロッド9との間の連結を高めるために、荷重がかかるときにガラス繊維強化ロッドに切り込み、ガラス繊維強化プラスチックロッド9のロッドの方向に対して直角な、刃先形状をくさび13表面に形成することが可能である。
くさびの連結及び湿気に対する避雷器全体を保護するために、ロッドとくさびの挿入の後、シリコーン化合物で貫通孔11を密閉することが可能である。
製造において、一つの端部取付け部材3はガラス繊維強化ロッド9とともに全ての一番初めに用意され、くさび13が挿入される。バリスタブロック1はこのようにして形成された「かご」へ開放されている側から挿入され、「かご」が形成される際には、バリスタブロックが中心に配置されること、及びバリスタブロックの外側表面とガラス繊維強化プラスチックロッド9との間に一定の距離が維持されることを確実にするために、製造工程での配慮がなされなければならない。一以上の皿ばねがバリスタブロックの積層に挿入されうる。同様に、はさみ金及びアルミニウムブロックが、設計された目的に適切な積層の長さに適合させるために用いられ得る。
バリスタディスクと皿ばねが挿入されると、ガラス繊維強化ロッド9が適切な貫通孔11を通るようにして二番目の端部取付け部材3が適合される。外部の力により一体的に押圧された積層全体とともに、くさび13はロッドに打ち込まれ、端部取付け部材3がバリスタブロック1と接触するためにネジ4は端部取付け部材3を通って挿入される。
このようにしてその中に適合させられたバリスタブロック1とともに形成されたかごは、外側ハウジング5及び適切な場合には仕切り7を形成するために、モールドの中に置かれ、低粘度シリコーンを押し出しコーティング又は吹き付けされて形成される。示したように、本発明によるガラス繊維強化ロッドは好ましくは円形の断面を有している。これは、ロッド9が比較的容易にかつ完全に低粘度シリコーンで囲まれ得ること、及び、低粘度シリコーンがガラス繊維強化ロッド9とバリスタブロック1の外側表面との間の空間にも浸透することを意味する。従来技術の円形片の形状における断面と比較すると、円形断面は、ロッド9とバリスタブロック1との間の距離を最小とするただとても小さな領域が存在するという大きな利点を提供する。この小さな領域は、従来の低粘度シリコーン及び既知の吹き付け及び注型技術の補助により問題なく満たされる。
円形の断面を有するガラス繊維強化プラスチックロッド9は、市販されており、安価に製造できる。
図5は、本発明による第二実施形態を示す。この実施形態において、貫通孔11は、全ての位置においてこれを通る楕円形の断面を有する。しかしながら、直線部分11aと円錐形部分11bへの貫通孔の分割は、保持されている。この実施形態における貫通孔の二つの部分11aと11bは、楕円形の中軸の大きさのみにおいて異なる。
第二実施形態によると、二つの半円形のガラス繊維強化プラスチックロッド9は、各貫通孔11に挿入される。一つの貫通孔内の二つのロッド9間で避雷器の全体の長さを超えて、空隙が残る。この空隙の大きさは約5mmであり、より大きな又はより小さな空隙幅も可能である。
このような半円形の断面を有するガラス繊維強化ロッド9は、ロッドの製造のための適切な道具を選択し引き出して成形することにより、比較的容易に形成できる。本発明によると、この実施形態では、一つの貫通孔11内の二つのロッド9間の空隙がバリスタブロック1の積層について放射状に通るように、ロッド9及び結合するくさび13は配置される。
これは、外側ハウジングを形成する際、低粘度シリコーンがより良好にかつより効果的にロッド9とバリスタブロック1との間の空間に浸透するという利点がある。
第一実施形態の場合のように、くさび13とガラス繊維強化ロッド9の間の連結力を向上させるために、対応する切り込み縁のあるくさび13を提供することが、この実施形態の場合においても可能である。
再度となるが、この実施形態の試験は、ガラス繊維強化プラスチックロッド9の端部取付け部材3へのくさび連結が、ガラス繊維強化ロッド9の破壊点で維持されることを示した。予めの二つの半円形のガラス繊維強化プラスチックロッド9の形成による構成は、第一実施形態によるくさびを有する単一のロッド9を分割することと比較すると、ロッド9に対する損傷を避けることを可能にするという利点を有する。
本発明の好ましい実施形態を上述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。特に、同様の方法で二つの端部取付け部材3内にガラス繊維強化プラスチックロッド9を確保する必要はない。例えば、ガラス繊維強化ロッド9の代わりに、ケーブルが一の端部取付け部材の肩を越えて導かれて端部取り付け部材を固定し、かつ、逆側の端部取付け部材のみにおいて本発明による固定要素が取り付けられる場合の「ケーブル」を使用することも可能である。