JP2009511906A - 電子部品および電子組立品における6価クロムを測定する方法 - Google Patents
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Abstract
基材を識別するために、X線蛍光分光法を用いて試料を分析し、電子部品および電子組立品における6価クロムを測定する。確認された基材に基づき、様々な抽出および分析の手順から手順を選択し、選択した手順を用いて6価クロムを試料から抽出する。抽出された6価クロムを1,5−ジフェニルカルバジドと反応させ、各種類の識別された基材に対し独自の校正曲線を用いて、紫外分光法を用いて測定する。測定された6価クロムの量に基づき、試料の単位面積の関数として6価クロムの濃度を算出する。
Description
本発明はクロムを測定する方法に関する。より詳細には、本発明は、X線蛍光分光法および紫外分光法を用いて、電子部品または電子組立品における6価クロムの量を測定する方法に関する。
環境中の有害な化学物質の濃度を低減するため、欧州連合(EU)において法令が制定されている。特定有害物質使用制限(RoHS)指令は、電子装置に用いられるクロム(VI)(6価クロムとも呼ばれる)などの材料を対象としている。制定された規則に準拠するために、電子装置においてこの材料を検出および識別する方法が必要である。世界的電子産業の「製品化までの時間」の要件に合うように迅速な検査と短い納期とを可能とするには、そのような方法は、高速、費用効果的、かつ正確である必要がある。めっき浴、廃水、飲料水および大気などの試料におけるクロム(VI)の分析方法は充分に報告されており、非常に正確な結果を与えているが、しかしながら、電子組立品および電子部品などの複合材料におけるクロム(VI)の分析は、困難かつ不正確なままである。これは、通常の電子製品における干渉材料が、高度に複合的であり、また多様なためである。従来技術の方法は正確さの欠如という欠点を有するので、電子部品および電子組立品におけるクロム(VI)の量を分析するための改良された方法は、本技術分野における充分な改良となる。
開示の実施形態では、電子部品および電子組立品における6価クロムを測定するために、検出方法としてX線蛍光分光法(XRF)および紫外(UV)分光法を用いる。検査中の試料(電子部品もしくは電子組立品または均等物)は、基材を確認するために、X線蛍光分光法を用いて分析される。次いで、識別された基材(すなわち、試料の組成)に基づき、試料を処理する方法に関する決定が行われる。基材がアルミニウムである場合、6価クロムの量を決定するために、試料は第1のパラメータの組を用いて抽出および分析される。基材が亜鉛である場合、6価クロムの量を決定するために、試料は第2のパラメータの組を用いて抽出および分析される。基材が皮革である場合、6価クロムの量を決定するために、試料は第3のパラメータの組を用いて抽出および分析される。基材がメッキ鋼である場合、6価クロムの量を決定するために、試料は第4のパラメータの組を用いて抽出および分析される。基材がプリント配線板またはプリント配線組立品である場合、6価クロムの量を決定するために、試料は第5のパラメータの組を用いて抽出および分析される。分析された6価クロムの量に基づき、試料の単位面積の関数として6価クロムの濃度が算出される。
以下の記載では、便宜上、「プリント配線組立品」(PWA)および「プリント回路基板」(PCB)の用語を利用するが、このような利用は限定を意図するものではなく、これらに加え、次に限定されないが、モータ、ケーブル組立品、ディスプレイ、スイッチ、ノブ、ハウジング、スピーカ、トランスデューサなど、現在および将来の電子装置において用いられる他の種類の複合組立品を含むことが意図される。PCBは本産業において周知であり、従来的には、その上に取り付けられた電子部品を相互接続する導電性経路を含む、平面積層された構造である。PWAは、従来的には、その上に取り付けられたPCBおよび部品を含む組立品を指す。ここで本発明の一実施形態を示すフローチャートである図1を参照すると、6価クロムの存在が分析される標本または試料が、XRF分析装置(100)のチャンバに直接配置される。この方法では、他の環境上危険な材料を用いる場合があるスパッタリングなどの試料調製は存在しないので、高速な検出および識別が可能となる。電子機器において一般に見出される分析可能な材料の例は、皮革(ホルスターおよびキャリングケースに用いられる)、耐食コーティング、めっき鋼、めっきアルミニウム、亜鉛および亜鉛合金、PCB、PWB、ならびに他の部品である。この一覧は、遭遇され得る一般的な材料のうちの一部を例示することを目的としており、限定することを意図するものではなく、電子組立品において一般に用いられる他の材料も、我々の手順を用いて分析することが可能である。XRF分析では、どの種類の材料が試料中に存在するかが示され、この情報に基づき、次いで、試料の処理のための温浸(digestion)パラメータおよび抽出パラメータの適切な組が選択される(110)。試料がXRF分析装置から取り除かれ、次いで、基材の種類にしたがって試料の温浸が行われる。以下は、いくつかの種類の材料の温浸手順である。各場合において、6価クロムの酸化状態の変化を防止するため、容器および溶液はすべて、使用前および使用中に、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスによってパージが行われ、反応器は不活性なガスで覆われる。溶媒は超音波処理され、使用前に不活性ガスによってパージが行われる。
めっきアルミニウム試料の温浸
25mlの脱気した水を用いて、約50cm2のめっきと等しい量の試料を加え、溶液が温度に達したら60分間、ホットプレート上で沸騰させる。室温まで冷やし、500マイクロリットルのリン酸を加える。25mlの体積まで水を加える。
25mlの脱気した水を用いて、約50cm2のめっきと等しい量の試料を加え、溶液が温度に達したら60分間、ホットプレート上で沸騰させる。室温まで冷やし、500マイクロリットルのリン酸を加える。25mlの体積まで水を加える。
亜鉛試料の温浸
1gのNaOH、0.1gのNaCO3、0.1gのMgCl2・6H2Oを、50mlの脱気した水に加える。約50cm2と等しい量の試料を加え、ホットプレート上で加熱し、溶液が温度に達したら10分間、90〜100℃にて加熱する。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて25mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
1gのNaOH、0.1gのNaCO3、0.1gのMgCl2・6H2Oを、50mlの脱気した水に加える。約50cm2と等しい量の試料を加え、ホットプレート上で加熱し、溶液が温度に達したら10分間、90〜100℃にて加熱する。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて25mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
皮革試料の温浸
pH=8のリン酸緩衝液を用いる。250mlのエルレンマイヤーフラスコへ1.42gのNaH2Po4(0.1モル/リットル)を秤量し、100mlの脱気した水を加える。アルゴンガスを用いてパージを行い、1〜5滴のリン酸を加える。pH試験紙を用いてpHを検査する。これにしたがって、pHが8になるまで調整する。100mgの皮革試料を加える。ホットプレート上で加熱し、溶液が温度に達したら10分間、90〜100℃にて加熱する。体積を40mlまで減少させる。pH<2になるまでリン酸を加える。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて50mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
pH=8のリン酸緩衝液を用いる。250mlのエルレンマイヤーフラスコへ1.42gのNaH2Po4(0.1モル/リットル)を秤量し、100mlの脱気した水を加える。アルゴンガスを用いてパージを行い、1〜5滴のリン酸を加える。pH試験紙を用いてpHを検査する。これにしたがって、pHが8になるまで調整する。100mgの皮革試料を加える。ホットプレート上で加熱し、溶液が温度に達したら10分間、90〜100℃にて加熱する。体積を40mlまで減少させる。pH<2になるまでリン酸を加える。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて50mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
めっき鋼試料の温浸
1gのKOH、0.1gのNaCO3、0.1gのMgCl2・6H2Oを、50mlの脱気した水に加える。約50cm2と等しい量の試料を加え、ホットプレート上で加熱し、溶液が温度に達したら5分間、90〜100℃にて加熱する。体積を20mlまで減少させ、pHが2±1になるまでリン酸を1滴ずつ加える。沈殿が発生する場合がある。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて25mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
1gのKOH、0.1gのNaCO3、0.1gのMgCl2・6H2Oを、50mlの脱気した水に加える。約50cm2と等しい量の試料を加え、ホットプレート上で加熱し、溶液が温度に達したら5分間、90〜100℃にて加熱する。体積を20mlまで減少させ、pHが2±1になるまでリン酸を1滴ずつ加える。沈殿が発生する場合がある。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて25mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
PWBまたはPWAの試料の温浸
1gのKOH、0.1gのNaCO3、0.1gのMgCl2・6H2Oを、50mlの脱気した水に加える。約100mgのPWB材料と等しい量の試料を加え、溶液が温度に達したら5分間、90〜100℃にて、ホットプレート上で加熱する。体積を20mlまで減少させ、pHが2±1になるまでリン酸を1滴ずつ加える。沈殿が発生する場合がある。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて25mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
1gのKOH、0.1gのNaCO3、0.1gのMgCl2・6H2Oを、50mlの脱気した水に加える。約100mgのPWB材料と等しい量の試料を加え、溶液が温度に達したら5分間、90〜100℃にて、ホットプレート上で加熱する。体積を20mlまで減少させ、pHが2±1になるまでリン酸を1滴ずつ加える。沈殿が発生する場合がある。pH試験紙を用いてpHを検査する。濾紙を通じて25mlのフラスコへ濾過する。体積まで水を加える。
適切な手順が選択された(110)後、試料は、めっきアルミニウム(121)、亜鉛および亜鉛合金(122)、皮革(123)、めっき鋼(124)、PCBもしくはPWB(125)、または他の部品(126)のうちの1つに対する温浸方法にしたがって処理される。温浸および抽出された試料における6価クロムは、次いで、1,5−ジフェニルカルバジドとの反応によって1,5−ジフェニルカルバゾンに変換され(130)、紫外分光法によって分析される(140)。赤紫色の錯体の量は、例えば、従来の内部標準較正方法を用いて、543ナノメートルの分析波長により、470ナノメートル〜600ナノメートルにて測定される。各種類の基材に対する処理方法が異なるので、最高水準の正確性および再現性を保証するために、各基材の種類に対し独自の校正曲線が調製される。例えば、廃水における6価クロムの分析法とは対照的に、図2〜7に示すように、各基材は強度対濃度の独自の校正曲線を有する必要がある。単一の曲線を利用する従来技術の方法では、我々の新規な方法による正確な結果は得られない。図2は、アルミニウム基材における6価Crに対する、543nmにおけるバックグラウンド補正吸収(%)の関数として、Cr(VI)の濃度(mg/L)を示す校正曲線である。また、図3〜6は、それぞれ、亜鉛基材、皮革基材、めっき鋼基材およびPCB/PWA基材における6価Crに対する校正曲線である。図7は、追加の材料と共に用いられた校正曲線である。
溶質のリットル当たり6価クロム濃度が決定されると、次いで、試料の単位面積当たりの6価クロムの量を算出する追加の工程が実行される(150)。電子部品および付属品における6価クロムは、多くの場合、例えば、耐腐食性のコーティングおよび化粧表面処理においてなど、部品または組立品の表面に見出されるので、この工程は重要である。次いで、試料における6価クロムの面積濃度は、マイクログラム/平方センチメートルで報告される。報告する国の数的慣習と一致して、他の質量/単位面積の測定方式も用いることが可能である。
要約すると、基材を識別するために、X線蛍光分光法を用いて試料の少なくとも一部を分析し、電子部品および電子組立品における6価クロムを測定することが可能である。確認された基材に基づき、様々な抽出および分析の手順から手順を選択し、選択した手順を用いて6価クロム(存在する場合)を試料から抽出する。抽出された6価クロムを1,5−ジフェニルカルバジドと反応させ、各種類の識別された基材に対し独自の校正曲線を用いて、紫外分光法を用いて測定する。測定された6価クロムの量に基づき、試料の単位面積の関数として6価クロムの濃度を算出する。
特定の実施形態に関連して本発明について記載したが、上述の記載から、多くの代替、修正、置換および変形が当業者に明らかとなることは明白である。例えば、プラスチック、ガラスディスプレイなど本明細書において言及されていない他の種類の材料に対し、追加の温浸および抽出の手順を用いることができる。したがって、本発明が添付の特許請求の範囲内にあるそのような代替、修正および変形のすべてを含むことが意図される。
Claims (17)
- 電子部品および電子組立品における6価クロムを測定する方法であって、
電子部品または電子組立品を含む試料を用意する工程と、
基材を確認するために、X線蛍光分光法を用いて試料の少なくとも一部を分析する工程と、
基材がアルミニウムである場合、第1のパラメータの組を用いて抽出し、6価クロムの量を分析する工程と、
基材が亜鉛である場合、第2のパラメータの組を用いて抽出し、6価クロムの量を分析する工程と、
基材が皮革である場合、第3のパラメータの組を用いて抽出し、6価クロムの量を分析する工程と、
基材がめっき鋼である場合、第4のパラメータの組を用いて抽出し、6価クロムの量を分析する工程と、
基材がプリント配線板またはプリント配線組立品である場合、第5のパラメータの組を用いて抽出し、6価クロムの量を分析する工程と、
基材がアルミニウム、亜鉛、皮革、めっき鋼、プリント配線板またはプリント配線組立品以外の材料である場合、第6のパラメータの組を用いて抽出し、6価クロムの量を分析する工程と、
分析された6価クロムの量に基づき、試料の単位面積の関数として6価クロムの濃度を算出する工程と、からなる方法。 - 第1のパラメータの組を用いて抽出する工程は、90℃より高温、かつ、約7のpHにおいて、水により抽出する工程を含む請求項1に記載の方法。
- 第2のパラメータの組を用いて抽出する工程は、90℃より高温、かつ、約11のpHにおいて、水により抽出する工程を含む請求項1に記載の方法。
- 第3のパラメータの組を用いて抽出する工程は、90℃より高温、かつ、約8のpHにおいて、リン酸緩衝液により抽出する工程を含む請求項1に記載の方法。
- 第4のパラメータの組を用いて抽出する工程は、90℃より高温において、KOHまたはNaOHの水溶液により抽出する工程を含む請求項1に記載の方法。
- 第5のパラメータの組を用いて抽出する工程は、90℃より高温、かつ、約2のpHにおいて、水により抽出する工程を含む請求項1に記載の方法。
- 第1乃至第6のパラメータの組の各々は、分析用の独自の校正曲線を含む請求項1に記載の方法。
- 6価クロムは、抽出された6価クロムを1,5−ジフェニルカルバジドと反応させ、紫外分光法により分析することによって、各分析手順において測定される請求項7に記載の方法。
- 抽出は不活性雰囲気下において実行される請求項1に記載の方法。
- 電子部品および電子組立品における6価クロムを測定する方法であって、
電子部品または電子組立品を含む試料を用意する工程と、
基材を確認するために、X線蛍光分光法を用いて試料の少なくとも一部を分析する工程と、
確認された基材に基づき、アルミニウム抽出および分析手順、亜鉛抽出および分析手順、皮革抽出および分析手順、鋼抽出および分析手順、プリント配線板抽出および分析手順、ならびにプリント配線組立品抽出および分析手順からなる群から、手順を選択する工程と、
選択された手順を用いて試料を処理し、6価クロムを抽出して6価クロムの量を測定する工程と、
測定された6価クロムの量に基づき、試料の単位面積の関数として6価クロムの濃度を算出する工程と、からなる方法。 - 6価クロムは、抽出された6価クロムを1,5−ジフェニルカルバジドと反応させ、紫外分光法により分析することによって、各分析手順において測定される請求項10に記載の方法。
- アルミニウム抽出および分析手順は、90℃より高温、かつ、約7のpHにおいて、水により試料を抽出することと、アルミニウム校正曲線を用いて6価クロムの量を測定することとを含む請求項10に記載の方法。
- 亜鉛抽出および分析手順は、90℃より高温、かつ、約11のpHにおいて、水により試料を抽出することと、亜鉛校正曲線を用いて6価クロムの量を測定することとを含む請求項10に記載の方法。
- 皮革抽出および分析手順は、90℃より高温、かつ、約8のpHにおいて、リン酸緩衝液により試料を抽出することと、皮革校正曲線を用いて6価クロムの量を測定することとを含む請求項10に記載の方法。
- 鋼抽出および分析手順は、90℃より高温において、KOHまたはNaOHの水溶液により試料を抽出することと、鋼校正曲線を用いて6価クロムの量を測定することとを含む請求項10に記載の方法。
- プリント配線板抽出および分析手順ならびにプリント配線組立品抽出および分析手順は各々、90℃より高温、かつ、約7のpHにおいて、水により試料を抽出することと、プリント配線板校正曲線を用いて6価クロムの量を測定することとを含む請求項10に記載の方法。
- 電子部品および電子組立品における6価クロムを測定する方法であって、
電子部品または電子組立品を含む試料を用意する工程と、
基材を確認するために、X線蛍光分光法を用いて試料の少なくとも一部を分析する工程と、
確認された基材に基づき、アルミニウム抽出および分析手順、亜鉛抽出および分析手順、皮革抽出および分析手順、鋼抽出および分析手順、プリント配線板抽出および分析手順、ならびにプリント配線組立品抽出および分析手順からなる群から、手順を選択する工程と、
選択された手順を用いて試料から6価クロムを抽出する工程と、
抽出された6価クロムを1,5−ジフェニルカルバジドと錯体形成させ、紫外分光法を用いて同錯体を測定することによって、抽出された6価クロムを分析する工程と、
測定された6価クロムの量に基づき、試料の単位面積の関数として6価クロムの濃度を算出する工程と、からなる方法。
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