JP2009300163A - 加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置およびホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法ならびに一次冷却水の浄化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の一次冷却系8の脱塩装置は、加圧水型原子力発電所の一次冷却水を浄化する脱塩装置であって、ホウ酸形陰イオン交換樹脂が充填された浄化手段を有することよりなる。本発明の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法は、OH形陰イオン交換樹脂を充填した浄化手段に、ホウ酸溶液の通液量に従ってホウ素濃度を高めて通液することよりなる。本発明の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法は、空間速度SV=15L/L−R・h−1以下で、ホウ酸溶液をOH形陰イオン交換樹脂を充填した浄化手段に通液させることよりなる。
【選択図】図1
Description
一次冷却系においては、一次冷却水に含まれる塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物を除去するために、一次冷却水の一部を原子炉の外部に導き出して、化学体積制御(CVCS)系統およびホウ酸回収(BRS)系統の脱塩装置によって処理している。また、使用済燃料ピット水浄化冷却(SFPCS)系統においても、一次冷却水に含まれる塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物を除去することで、一次冷却水を浄化している。
このような一次冷却水の浄化を目的とし、CVCS系統、BRS系統、SFPCS系統には、混床式の脱塩装置が設置されている。従来、前記混床式の脱塩装置の運用に関する発明がなされ、例えば、特許文献1では、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混合比率についての発明が報告されている。なお、一次冷却系の脱塩装置には、陰イオン交換樹脂として、OH形のゲル形陰イオン交換樹脂が使用されることが一般的である。
そこで、本発明は、ホウ酸を含む一次冷却水を接触させても、陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が発生しない脱塩装置を目的とする。
「一次冷却系の脱塩装置」は、本実施形態におけるCVCS系統30の混床式脱塩塔33、BRS系統60の混床式脱塩塔62、SFPCS系統100の混床式脱塩塔110である。また、「浄化手段」とは、一次冷却系の脱塩装置における、ホウ酸形陰イオン交換樹脂の充填層を意味する。
一次冷却水循環ライン10は、原子炉12で発生した熱を、一次冷却水を介して、蒸気発生器14の熱源として供給するものである。一次冷却水循環ライン10は、原子炉12と蒸気発生器14と、一次冷却水ポンプ16と、再生熱交換器18と配管20、21、22、24とで構成されている。原子炉12は配管20により蒸気発生器14と接続され、蒸気発生器14は配管21により一次冷却水ポンプ16と接続され、一次冷却水ポンプ16は、配管22により原子炉12と接続されている。配管21の分岐23で分岐した配管24は、再生熱交換器18に接続されている。
蒸気発生器14は、原子炉12で高温、高圧となった一次冷却水を熱媒体とし、二次冷却水との熱交換により、水蒸気を発生させる装置である。
再生熱交換器18は、蒸気発生器14で熱交換を行った一次冷却水と、CVCS系統30から供給される一次冷却水との熱交換を行う装置である。
CVCS系統30は、一次冷却系8内における核分裂生成物、腐食生成物の除去による一次冷却水の浄化、および、一次冷却水の量、ホウ素濃度、腐食抑制剤の調整を行うものである。CVCS系統30は、非再生冷却器31と、混床式脱塩塔入口フィルタ32と、混床式脱塩塔33と、陽イオン脱塩塔35と、ホウ素除去脱塩塔37と、冷却水フィルタ38と、体積制御タンク39と、純水タンク80と、薬品タンク82と、配管40、41、43、44、46、47、49、50、51、53、55、57、58、81、83と、バルブ34、36とで構成されている。
冷却水フィルタ38と体積制御タンク39とは、配管53により接続されている。配管53は、分岐54で配管70が分岐している。また、配管53には、配管58の分岐56で分岐した配管55が接続されている。体積制御タンク39は、配管57により再生熱交換器18と接続されている。配管58には、純水タンク80の配管81が接続されている。配管57には、薬品タンク82の配管83が接続されている。
混床式脱塩塔入口フィルタ32は、微粒子等の、イオン交換樹脂で除去できない成分を除去する装置であり、例えば、ポリプロピレン製不織布を用いたプリーツフィルタを挙げることができる。
混床式脱塩塔33に充填される陰イオン交換樹脂は、ホウ酸形陰イオン交換樹脂である。ここで、ホウ酸形陰イオン交換樹脂とは、混床式脱塩塔33に充填される前に、ホウ酸形に置換(ホウ酸置換)した陰イオン交換樹脂のみならず、OH形陰イオン交換樹脂を混床式脱塩塔33に充填した後、ホウ酸溶液を接触させて、イオン交換基の対イオンをホウ酸に置換した陰イオン交換樹脂を含む。また、OH形陰イオン交換樹脂に、ホウ酸を含む一次冷却水を接触させて、ホウ酸形陰イオン交換樹脂としても良い。
混床式脱塩塔33における、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合比率は特に限定されないが、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とは、イオン交換容量比で1:1とすることが好ましい。
体積制御タンク39は特に限定されず、通常のPWR式発電所で使用されるものを用いることができる。
BRS系統60は、一次冷却水中のホウ酸を分離回収し、再利用するものである。BRS系統60は、冷却水貯蔵タンク61と、混床式脱塩塔62と、冷却水フィルタ63と、ホウ酸回収装置64と、冷却器65と、混床式脱塩塔66と、ホウ酸タンク67と、ホウ酸フィルタ68と、配管70、71、72、73、74、76、77とで構成されている。
冷却水フィルタ63は、微粒子のようなイオン交換樹脂で除去できない成分を除去する装置であり、混床式脱塩塔入口フィルタ32と同様である。
ホウ酸フィルタ68は、ホウ酸濃縮液中に含まれる微粒子等を除去する装置である。
冷却器65は、ホウ酸回収装置64で分離された水を凝縮する装置である。
混床式脱塩装置66に充填される陽イオン交換樹脂は特に限定されず、混床式脱塩塔33と同様のものを用いることができる。
SFPCS系統100は、ピットに貯蔵されている使用済み燃料の崩壊熱除去、および、ピット水の浄化を行う系統である。SFPCS系統100は、燃料ピット104と、混床式脱塩塔110と、使用済燃料ピットフィルタ111と、冷却器112と、配管120、122、123、124、125とで構成されている。
原子炉12の上部には原子炉ウェル101が設置され、原子炉ウェル101と隔壁103を介して使用済燃料ピット102が設置されている。使用済燃料ピット102と冷却器112とは、配管120により接続されている。冷却器112は、配管125により、配管124と接続されている。配管120は、分岐121で配管122に分岐し、配管122は、混床式脱塩塔110と接続されている。混床式脱塩塔110と使用済燃料ピットフィルタ111とは、配管123により接続されている。使用済燃料ピットフィルタ111には配管124が接続され、配管124は、使用済燃料ピット102と接続されている。
混床式脱塩塔110は、混床式脱塩塔33と同様である。
使用済燃料ピットフィルタ111は、微粒子のようなイオン交換樹脂で除去できない成分を除去する装置であり、混床式脱塩塔入口フィルタ32と同様である。
冷却器112は、使用済燃料により発生した崩壊熱を除去するものである。
以下、一次冷却水の浄化方法について、説明する。
なお、本発明における「浄化」とは、一次冷却水から、塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物を取り除くことを言う。
一次冷却水は、一次冷却水ポンプ16により、一次冷却水循環ライン10内を循環する。一次冷却水は、原子炉12を冷却して、高温、高圧(例えば、温度322℃、圧力15.4MPa)となる。高温、高圧となった一次冷却水は、配管20を経由して蒸気発生器14に送られる。蒸気発生器14に送られた一次冷却水は、蒸気発生器14の熱交換器を介して、二次冷却水との熱交換により、発電用の蒸気を発生させる。蒸気発生器14で熱交換をした一次冷却水は、配管21を経由して一次冷却水ポンプ16に送られ、一次冷却水ポンプ16から配管22を経由して原子炉12へ至る。一方、蒸気発生器14で熱交換をした一次冷却水の一部は、配管21の分岐23から配管24を経由して、再生熱交換器18へ送られる。再生熱交換器18に送られた配管24を経由した一次冷却水は、CVCS系統30から送られる一次冷却水と熱交換が行われた後、非再生型熱交換器31に送られる。
まず、最初に、OH形陰イオン交換樹脂を充填層に充填する。次いで、最終的に通液する一次冷却水よりも、ホウ素濃度の低いホウ酸溶液を前記樹脂層に通液し、OH形陰イオン交換樹脂のOH基をホウ酸イオンで置換する。そして、一次冷却水と同じホウ素濃度のホウ酸溶液、または、一次冷却水そのものを樹脂層に通液することにより、ホウ酸置換工程を行うことができる。例えば、最終的に通液する一次冷却水のホウ素濃度が5000ppmである場合、ホウ酸置換工程では、ホウ素濃度2500ppmのホウ酸溶液を充填層に通液した後、ホウ素濃度5000ppmの一次冷却水を通液する方法を挙げることができる。
なお、SVは、イオン交換樹脂の単位体積(L−R)に対して1時間に流通させる流量(L)であるL/L−R・h−1で表される(以降において同じ)。
任意の樹脂300個について顕微鏡観察(25倍)を行い、割れ、ヒビ等の破損が生じている破損樹脂の個数を計測した。破損率は、下記(1)式で求められる百分率で表した。
破損率(%)=破損樹脂の個数÷300個×100% ・・・(1)
OH形ゲル形陰イオン交換樹脂であるアンバーライト(商品名)PCA1(ローム・アンド・ハース社製)15mLを内径21mmのガラス製カラムに充填し、ホウ素濃度3000ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L−R・h−1で1時間通液して、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aを製造した。
OH形多孔形陰イオン交換樹脂であるアンバージェット(商品名)9090(ローム・アンド・ハース社製)15mLを内径21mmのガラス製カラムに充填し、ホウ素濃度3000ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L−R・h−1で1時間通液して、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Bを製造した。
製造例1で得られたホウ酸形陰イオン交換樹脂Aについて、樹脂の破損率を求めた(通液前の破損率)。次いで、ホウ酸形陰イオン交換樹脂A15mLを内径21mmのガラス製カラムに充填し、陰イオン交換塔Aを作製した。得られた陰イオン交換塔Aに、ホウ素濃度4700ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L−R・h−1で1時間通液した。通液後、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aを取り出し、樹脂の破損率を求めた(通液後の破損率)。得られた結果を表1に示す。
(実施例2)
ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aを製造例2で得られたホウ酸形陰イオン交換樹脂Bとした以外は、実施例1と同様にして、通液前の破損率と通液後の破損率を求めた。得られた結果を表1に示す。
ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aをホウ酸置換しないアンバーライト(商品名)PCA1とした以外は実施例1と同様にして、通液前の破損率と通液後の破損率を求めた。得られた結果を表1に示す。
OH形ゲル形陰イオン交換樹脂であるアンバーライト(商品名)PCA1の破損率を求めた(置換前の破損率)。次いで、アンバーライトPCA1を内径21mmのガラス製カラムに15mL充填し、陰イオン交換塔Dを作製した。得られた陰イオン交換塔Dに、ホウ素濃度1000ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L−R・h−1で1時間通液した。その後、ホウ素濃度として3300ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L−R・h−1で1時間通液し(段階式)、ホウ酸置換を行った。ホウ酸形となった陰イオン交換樹脂を取り出し、樹脂の破損率を求めた(置換後の破損率)。得られた結果を表2に示す。
アンバーライト(商品名)PCA1の破損率を求めた(置換前の破損率)。次いで、アンバーライト(商品名)PCA1を内径21mmのガラス製カラムに15mL充填し、陰イオン交換塔Eを作製した。得られた陰イオン交換塔Eに、ホウ素濃度3300ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L−R・h−1で1時間通液し(一回式)、ホウ酸置換を行った。ホウ酸形となった陰イオン交換樹脂を取り出し、樹脂の破損率を求めた(置換後の破損率)。得られた結果を表2に示す。
アンバーライト(商品名)PCA1の破損率を求めた(置換前の破損率)。次いで、アンバーライト(商品名)PCA1を内径21mmのガラス製カラムに15mL充填し、陰イオン交換塔Fを作製した。得られた陰イオン交換塔Fに、ホウ素濃度3300ppmのホウ酸水溶液をSV=12L/L−R・h−1で1時間通液し、ホウ酸置換を行った。ホウ酸形となった陰イオン交換樹脂を取り出し、樹脂の破損率を求めた(置換後の破損率)。得られた結果を表2に示す。
ホウ素濃度3300ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L−R・h−1で1時間通液した以外は、実施例4と同様にして、置換前の破損率と置換後の破損率を求めた。得られた結果を表3に示す。
30 化学体積制御系統
33、62、110 混床式脱塩塔
60 ホウ酸回収系統
100 使用済燃料ピット水浄化冷却系統
Claims (6)
- 加圧水型原子力発電所の一次冷却水を浄化する脱塩装置であって、
ホウ酸形陰イオン交換樹脂が充填された浄化手段を有する、加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置。 - 化学体積制御系統、ホウ酸回収系統、使用済燃料ピット水浄化冷却系統の少なくとも一箇所に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置。
- OH形陰イオン交換樹脂を浄化手段に充填する充填工程と、
前記浄化手段にホウ酸溶液を通液してホウ酸置換を行うホウ酸置換工程とを有し、
前記ホウ酸置換工程は、前記ホウ酸溶液の通液量に従って、ホウ素濃度を高めてホウ酸溶液を通液することを特徴とする、加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法。 - 前記ホウ酸置換工程は、前記浄化手段に、最初に接触させるホウ酸溶液のホウ素濃度が、3000ppm以下であることを特徴とする、請求項3に記載の加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法。
- OH形陰イオン交換樹脂を浄化手段に充填する充填工程と、
前記浄化手段にホウ酸溶液を通液してホウ酸置換を行うホウ酸置換工程とを有し、
前記ホウ酸置換工程は、空間速度SVを15L/L−R・h−1以下で、ホウ酸溶液を前記浄化手段に通液することを特徴とする、加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法。 - 予めホウ酸形に調整した陰イオン交換樹脂に、加圧水型原子力発電所の一次冷却水を接触させる、加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化方法。
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