JP4938730B2 - 加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置および一次冷却水の浄化方法 - Google Patents

加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置および一次冷却水の浄化方法 Download PDF

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Description

本発明は加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置、および、一次冷却水の浄化方法に関する。
加圧水型原子力発電所(PWR型発電所)は、原子炉を有する一次冷却系と、蒸気発生器で発生させた水蒸気を用いてタービンを駆動することにより発電を行う二次冷却系とが、蒸気発生器を介して接続され、構成されている。一次冷却系で使用される一次冷却水は、原子炉を冷却して高温、高圧となる。蒸気発生器では、高温、高圧となった一次冷却水が、二次冷却系の二次冷却水と熱交換を行い、二次冷却水を蒸発させて高圧の水蒸気を得る。そして、二次冷却系では、蒸気発生器において発生した水蒸気によりタービン駆動することにより発電を行う。
一次冷却系においては、一次冷却水に含まれる塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物を除去するために、一次冷却水の一部を原子炉の外部に導き出して、化学体積制御(CVCS)系統およびホウ酸回収(BRS)系統の脱塩装置によって処理している。また、使用済燃料ピット水浄化冷却(SFPCS)系統においても、一次冷却水に含まれる塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物を除去することで、一次冷却水を浄化している。
このような一次冷却水の浄化を目的とし、CVCS系統、BRS系統、SFPCS系統には、混床式の脱塩装置が設置されている。従来、前記混床式の脱塩装置の運用に関する発明がなされ、例えば、特許文献1では、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混合比率についての発明が報告されている。なお、一次冷却系の脱塩装置には、陰イオン交換樹脂として、ゲル形のOH形陰イオン交換樹脂が使用されることが一般的である。
一次冷却水には、原子炉燃料の臨界状態の制御を目的としてホウ酸が添加されている。特に、定期点検や燃料の交換の際には、一次冷却水のホウ素濃度を上げ、燃料を未臨界状態に保っている。そして、PWR型発電所の運転再開にあたっては、一次冷却系の脱塩装置に、通常運転時よりも高いホウ素濃度の一次冷却水が通水され、ホウ酸置換が行われる。近年では、発電効率、稼働率の向上を図るため、高燃焼度燃料の使用が検討されている。かかる高燃焼度燃料を使用する場合には、PWR型発電所運転時および停止時における一次冷却水のホウ素濃度をさらに高くする必要がある。
特開2005−3598号公報
しかしながら、PWR型発電所の一次冷却系の脱塩装置に、例えば、ホウ素濃度として3000ppmを超えるようなホウ酸溶液を通液すると、充填された陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が生じると言う問題があった。陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が生じると、微細化された樹脂が脱塩装置から流出し、該脱塩装置よりも後段に配置されたフィルタ差圧が上昇し、フィルタ交換頻度が増加することで、交換作業に伴う作業員の労力の増大、フィルタ廃棄に伴う放射性廃棄物量の増加という問題があった。
そこで、本発明は、ホウ酸を含む一次冷却水を接触させても、陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が発生しない脱塩装置を目的とする。
本発明の加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置は、加圧水型原子力発電所の一次冷却水を浄化する脱塩装置であって、細孔容積が0.05〜0.50mL/g−乾燥樹脂(Cl形)、かつ、平均細孔半径が2〜50nm(Cl形)の、多孔形陰イオン交換樹脂に、一次冷却水を接触して浄化することを特徴とする。
本発明の一次冷却系の脱塩装置は、化学体積制御系統、ホウ酸回収系統、使用済燃料ピット水浄化冷却系統の少なくとも一箇所に設置されていることが好ましい。
本発明の加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化方法は、細孔容積が0.05〜0.50mL/g−乾燥樹脂(Cl形)、かつ、平均細孔半径が2〜50nm(Cl形)の多孔形陰イオン交換樹脂に、加圧水型原子力発電所の一次冷却水を接触させることを特徴とする。
本発明の加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置によれば、ホウ酸を含む一次冷却水を接触させても、充填された陰イオン交換樹脂の割れや亀裂を防止することができる。
本発明は、細孔容積が0.05〜0.50mL/g−乾燥樹脂(Cl形)で、かつ、平均細孔半径が2〜50nm(Cl形)の多孔形陰イオン交換樹脂(以下、多孔形陰イオン交換樹脂ということがある)に一次冷却水を接触させて浄化する一次冷却系の脱塩装置である。本発明の実施形態の一例について、図1を用いて説明する。図1は、PWR型発電所の一次冷却系8を示す模式図である。図1に示すとおり、一次冷却系8は、一次冷却水循環ライン10と、CVCS系統30と、BRS系統60と、SFPCS系統100とを有する。
「一次冷却系の脱塩装置」は、本実施形態におけるCVCS系統30の混床式脱塩塔33、ホウ素除去脱塩塔37、BRS系統60の混床式脱塩塔62、SFPCS系統100の混床式脱塩塔110である。また、「浄化手段」とは、一次冷却系の脱塩装置における、多孔形陰イオン交換樹脂の充填層を意味する。
(一次冷却水循環ライン)
一次冷却水循環ライン10は、原子炉12で発生した熱を、一次冷却水を介して、蒸気発生器14の熱源として供給するものである。一次冷却水循環ライン10は、原子炉12と蒸気発生器14と、一次冷却水ポンプ16と、再生熱交換器18と配管20、21、22、24とで構成されている。原子炉12は配管20により蒸気発生器14と接続され、蒸気発生器14は配管21により一次冷却水ポンプ16と接続され、一次冷却水ポンプ16は、配管22により原子炉12と接続されている。配管21の分岐23で分岐した配管24は、再生熱交換器18に接続されている。
原子炉12は、PWR型発電所で通常用いられる原子炉を用いることができる。
蒸気発生器14は、原子炉12で高温、高圧となった一次冷却水を熱媒体とし、二次冷却水との熱交換により、水蒸気を発生させる装置である。
再生熱交換器18は、蒸気発生器14で熱交換を行った一次冷却水と、CVCS系統30から供給される一次冷却水との熱交換を行う装置である。
(化学体積制御系統:CVCS系統)
CVCS系統30は、一次冷却系8内における核分裂生成物、腐食生成物の除去による一次冷却水の浄化、および、一次冷却水の量、ホウ素濃度、腐食抑制剤の調整を行うものである。CVCS系統30は、非再生冷却器31と、混床式脱塩塔入口フィルタ32と、混床式脱塩塔33と、陽イオン脱塩塔35と、ホウ素除去脱塩塔37と、冷却水フィルタ38と、体積制御タンク39と、純水タンク80と、薬品タンク82と、配管40、41、43、44、46、47、49、50、51、53、55、57、58、81、83と、バルブ34、36とで構成されている。
再生熱交換器18と非再生熱交換器31とは、配管40により接続されている。非再生熱交換器31と混床式脱塩塔入口フィルタ32とは、配管41で接続されている。配管41は、分岐42で配管51に分岐し、配管51は、冷却水フィルタ38と接続されている。混床式脱塩塔入口フィルタ32と混床式脱塩塔33とは、配管43で接続され、混床式脱塩塔33に接続された配管44は、分岐52で配管51と接続されている。また、配管44は、分岐45で配管46に分岐し、配管46はバルブ34を経由して、陽イオン脱塩塔35と接続されている。陽イオン脱塩塔35には配管47が接続され、配管47は配管44と接続されている。配管44は、分岐48で配管49に分岐し、配管49はバルブ36を経由してホウ素除去脱塩塔37と接続されている。ホウ素除去脱塩塔37には配管50が接続され、配管50は配管44と接続されている。
冷却水フィルタ38と体積制御タンク39とは、配管53により接続されている。配管53は、分岐54で配管70が分岐している。また、配管53には、配管58の分岐56で分岐した配管55が接続されている。体積制御タンク39は、配管57により再生熱交換器18と接続されている。配管58には、純水タンク80の配管81が接続されている。配管57には、薬品タンク82の配管83が接続されている。
非再生冷却器31は、再生熱交換器18を経由した一次冷却水の温度をさらに低下させる装置である。
混床式脱塩塔入口フィルタ32は、微粒子等の、イオン交換樹脂で除去できない成分を除去する装置であり、例えば、ポリプロピレン製不織布を用いたプリーツフィルタを挙げることができる。
混床式脱塩塔33は、一次冷却水中の塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物の除去を行う装置である。混床式脱塩塔33には、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とを混合したイオン交換樹脂が充填されている。
混床式脱塩塔33に充填される陰イオン交換樹脂の構造は、多孔形であれば、ポーラス形であっても、マクロポーラス(MR)形であっても良い。多孔形を用いることで、高濃度のホウ酸との接触による割れや亀裂を防止できる。
多孔形陰イオン交換樹脂の細孔容積は、0.05〜0.50mL/g−乾燥樹脂(Cl形)であり、0.25〜0.45mL/g−乾燥樹脂(Cl形)であることが好ましい。細孔容積が0.05mL/g−乾燥樹脂(Cl形)未満であるとホウ酸を接触させた際に、多孔形陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が生じる場合がある。0.50mL/g−乾燥樹脂(Cl形)を超えると、荷重強度が低下するためである。
また、多孔形陰イオン交換樹脂の平均細孔半径は、2〜50nm(Cl形)であることが好ましく、5〜30nm(Cl形)であることがより好ましい。2nm(Cl形)未満であると、ホウ酸を接触させた際に、多孔形陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が生じる場合がある。50nm(Cl形)を超えると、イオン交換容量が低下するためである。
ここで、細孔容積および平均細孔半径とは、以下の測定方法により求められる。
陰イオン交換樹脂15mLに対して、塩酸水溶液(1mol/L)を9〜10mL/minで接触させて、塩化物イオン形とする。その後、メタノール、トルエン、イソオクタンの順に置換し、真空乾燥機を用い、60℃、8時間乾燥させる。乾燥させた陰イオン交換樹脂を測定セルに入れ、水銀を充填し、セル内部を加圧して、細孔に水銀を進入させる。この時の圧力と水銀進入量を測定し、細孔容積を求める。また、細孔を円筒形と仮定して、細孔半径を求める。加えられた圧力と、その圧力で水銀が進入可能な細孔径の関係は下記(1)式(Washburnの式)で表される。細孔容積および平均細孔半径の測定機器としては、例えば、水銀ポロシメータ(オートポアIV9520、株式会社島津製作所製)を挙げることができる。
−4σcosθ=PD ・・・(1)
σ:水銀の表面張力(0.475N/m)
θ:接触角(140°)
D:細孔直径(m)
P:圧力(Pa)
前記陰イオン交換樹脂は強塩基性陰イオン交換樹脂であっても、弱塩基性陰イオン交換樹脂であっても良いが、強塩基性陰イオン交換樹脂であることが好ましい。
このような多孔形陰イオン交換樹脂としては、アンバーライト(商品名)IRA900、アンバージェット(商品名)9090(以上、ローム・アンド・ハース社製)等を挙げることができる。
混床式脱塩塔33に充填されている陽イオン交換樹脂は、イオン形がLi形の陽イオン交換樹脂である。前記Li形の陽イオン交換樹脂の構造は特に限定されず、ゲル形であっても、多孔形であっても良い。また、強酸性陽イオン交換樹脂であっても、弱酸性陽イオン交換樹脂であっても良いが、強酸性陽イオン交換樹脂であることが好ましい。
混床式脱塩塔33における、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合比率は特に限定されないが、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂とは、イオン交換容量比で1:1とすることが好ましい。
陽イオン脱塩塔35は、主に一次冷却水中のリチウム濃度の制御と、混床式脱塩塔33では除去困難なセシウム濃度の低減を目的とする装置である。陽イオン脱塩塔35には、陽イオン交換樹脂が充填されている。陽イオン脱塩塔35に充填されている陽イオン交換樹脂は、H形の陽イオン交換樹脂である。
ホウ素除去脱塩塔37は、主に一次冷却水中のホウ酸を除去し、濃度を調製する装置である。ホウ素除去脱塩塔37には、多孔形陰イオン交換樹脂が充填されている。ホウ素除去脱塩塔37に充填されている陰イオン交換樹脂は、混床式脱塩塔33に充填されている陰イオン交換樹脂と同様である。
冷却水フィルタ38は、イオン交換樹脂で除去できない金属腐食生成物等の懸濁物や、混床式脱塩塔33、陽イオン脱塩塔35、ホウ素除去脱塩塔37から漏洩した微粒子を除去する装置である。冷却水フィルタ38は、混床式脱塩塔入口フィルタ32と同様である。
体積制御タンク39は特に限定されず、通常のPWR式発電所で使用されるものを用いることができる。
純水タンク80は、一次冷却水に使用する純水を貯水するものである。薬品タンク82は、一次冷却水のpH調整のためのリチウム添加、および、起動時の酸素除去のためのヒドラジン添加、ならびに、停止時の過酸化水素添加に使用する。
(ホウ酸回収系統:BRS系統)
BRS系統60は、一次冷却水中のホウ酸を分離回収し、再利用するものである。BRS系統60は、冷却水貯蔵タンク61と、混床式脱塩塔62と、冷却水フィルタ63と、ホウ酸回収装置64と、冷却器65と、混床式脱塩塔66と、ホウ酸タンク67と、ホウ酸フィルタ68と、配管70、71、72、73、74、76、77とで構成されている。
CVCS系統30の配管53の分岐54で分岐した配管70は、冷却水貯蔵タンク61に接続されている。冷却水貯蔵タンク61と混床式脱塩塔62とは配管71により接続され、混床式脱塩塔62と冷却水フィルタ63とは配管72により接続され、冷却水フィルタ63とホウ酸回収装置64とは配管73により接続されている。ホウ酸回収装置64には、配管74と配管76とが接続されている。配管74は、冷却器65を経由して混床式脱塩塔66と接続されている。配管76は、ホウ酸タンク67と接続され、ホウ酸タンク67とホウ酸フィルタ68とは配管77により接続されている。ホウ酸フィルタ68は、配管58により、配管57と接続されている。
混床式脱塩塔62は、混床式脱塩塔33と同様である。
冷却水フィルタ63は、微粒子のようなイオン交換樹脂で除去できない成分を除去する装置であり、混床式脱塩塔入口フィルタ32と同様である。
ホウ酸回収装置64は、一次冷却水中のホウ酸を濃縮して、ホウ酸濃縮液と水とに分離する装置である。
冷却器65は、ホウ酸回収装置64で分離された水を凝縮する装置である。
混床式脱塩塔66は、ホウ酸回収装置64で分離された水を除去して浄化する装置である。混床式脱塩塔66に充填される陰イオン交換樹脂の構造は特に限定されず、ゲル形であっても多孔形であっても良い。また、陰イオン交換樹脂の種類は、強塩基性陰イオン交換樹脂であっても良いし、弱塩基性陰イオン交換樹脂であっても良い。混床式脱塩装置66に充填される陽イオン交換樹脂は特に限定されず、混床式脱塩塔33と同様のものを用いることができる。
ホウ酸フィルタ68は、ホウ酸濃縮液中に含まれる微粒子等を除去する装置である。
(使用済燃料ピット水浄化冷却系統:SFPCS系統)
SFPCS系統100は、ピットに貯蔵されている使用済み燃料の崩壊熱除去、および、ピット水の浄化を行う系統である。SFPCS系統100は、燃料ピット104と、混床式脱塩塔110と、使用済燃料ピットフィルタ111と、冷却器112と、配管120、122、123、124、125とで構成されている。
燃料ピット104は、原子炉ウェル101と、隔壁103と、使用済燃料ピット102とで構成されている。原子炉ウェル101と使用済燃料ピット102には、一次冷却水が貯留されている。
原子炉12の上部には原子炉ウェル101が設置され、原子炉ウェル101と隔壁103を介して使用済燃料ピット102が設置されている。使用済燃料ピット102と冷却器112とは、配管120により接続されている。冷却器112は、配管125により、配管124と接続されている。配管120は、分岐121で配管122に分岐し、配管122は、混床式脱塩塔110と接続されている。混床式脱塩塔110と使用済燃料ピットフィルタ111とは、配管123により接続されている。使用済燃料ピットフィルタ111には配管124が接続され、配管124は、使用済燃料ピット102と接続されている。
燃料ピット104は特に限定されず、PWR型発電所で通常使用されるものを用いることができる。
混床式脱塩塔110は、混床式脱塩塔33と同様である。
使用済燃料ピットフィルタ111は、微粒子のようなイオン交換樹脂で除去できない成分を除去する装置であり、混床式脱塩塔入口フィルタ32と同様である。
冷却器112は、使用済燃料により発生した崩壊熱を除去するものである。
以下、一次冷却水の浄化方法について、説明する。
なお、本発明における「浄化」とは、一次冷却水から、塩化物イオン、フッ化物イオン等の不純物や、131I等の核分裂生成物、および、58Co、60Co、ニッケル、鉄等の腐食生成物を取り除くことを言う。
一次冷却水は、一次冷却水ポンプ16により、一次冷却水循環ライン10内を循環する。一次冷却水は、原子炉12を冷却して、高温、高圧(例えば、温度322℃、圧力15.4MPa)となる。高温、高圧となった一次冷却水は、配管20を経由して蒸気発生器14に送られる。蒸気発生器14に送られた一次冷却水は、蒸気発生器14の熱交換器を介して、二次冷却水との熱交換により、発電用の蒸気を発生させる。蒸気発生器14で熱交換をした一次冷却水は、配管21を経由して一次冷却水ポンプ16に送られ、一次冷却水ポンプ16から配管22を経由して原子炉12へ至る。一方、蒸気発生器14で熱交換をした一次冷却水の一部は、配管21の分岐23から配管24を経由して、再生熱交換器18へ送られる。再生熱交換器18に送られた配管24を経由した一次冷却水は、CVCS系統30から送られる一次冷却水と熱交換が行われた後、非再生型熱交換器31に送られる。
次いで、バルブ34、36を閉とした状態で、非再生型熱交換器31で冷却された一次冷却水は、配管41、混床式脱塩塔入口フィルタ32、配管43を経由して、混床式脱塩塔33に送られる。一次冷却水は、混床式脱塩塔33中の多孔形陰イオン交換樹脂に接触して、塩化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン等の陰イオンが除去される。また、陽イオン交換樹脂と接触して、ニッケルイオン、鉄イオン、コバルトイオン等の陽イオンが除去される。その後、一次冷却水は、配管44を経由して、分岐52で、配管51に至る。
一次冷却水中のリチウム濃度、セシウム濃度の調整を行なう場合には、バルブ34を開、バルブ36を閉とし、混床式脱塩塔33を流通した一次冷却水を陽イオン脱塩塔35に流通させる。さらに、PWR型発電所の運転停止からの再開時等、一次冷却水中のホウ素濃度を低下させる場合には、バルブ36を開として、ホウ素除去脱塩塔37を流通させ、一次冷却水中のホウ酸を除去する。このようにして一次冷却水の浄化が行なわれる。
浄化された一次冷却水は、配管44、分岐52、配管51、冷却水フィルタ38、配管53を順に経由して、体積制御タンク39に貯留される。そして、体積制御タンク39に貯留された一次冷却水は、薬品タンク82から任意の薬品濃度となるように薬品の供給を受け、また、純水タンク80の純水、BRS系統60で回収されたホウ酸の供給を受け、配管57、再生熱交換器18を経由して、一次冷却水循環ライン10に至る(以上、CVCS系統30)。
また、核分裂生成物や腐食生成物等が除去された一次冷却水の一部は、配管53の分岐54から、配管70を経由して冷却水貯蔵タンク61に貯留される。冷却水貯蔵タンク61の一次冷却水は、配管71を経由して混床式脱塩塔62を流通する。この間、一次冷却水中の核分裂生成物や腐食生成物等が、さらに除去される。その後、配管72、冷却水フィルタ63、配管73を経由して、ホウ酸回収装置64に送られる。ホウ酸回収装置64で濃縮されたホウ酸濃縮液は、配管76を経由してホウ酸タンク67に貯留される。その後、配管77、ホウ酸フィルタ68、配管58を経由し、純水タンク80の純水で適宜希釈されて、配管57に至る。また、純水で希釈されたホウ酸濃縮液の一部は、配管58の分岐56から、配管55を経由して、体積制御タンク39の一次側に送られる。一方、ホウ酸回収装置64で分離された水は、配管74、冷却器65を経由して混床式脱塩塔66を流通し、さらに浄化される(以上、BRS系統60)。
原子炉12で使用済となった燃料は、原子炉12から原子炉ウェル101に取り出され、燃料ピット104の隔壁103を開き、原子炉ウェル101から使用済燃料ピット102に移される。使用済燃料は使用済燃料ピット102で、一次冷却水に浸漬される。使用済燃料ピット102の一次冷却水は、配管120により冷却器112に送られ、冷却された後、配管125、124を経由して使用済燃料ピット102に送られる。一次冷却水の一部は、配管120、分岐121、配管122を経由して混床式脱塩塔110に送られ、浄化される。そして、配管123、使用済燃料ピットフィルタ111、配管124を経由して、使用済燃料ピット102に送られる。こうして、浄化と冷却がなされた一次冷却水を使用済燃料ピット102に供給する(以上、SFPCS系統100)。
一次冷却系8の脱塩装置の、ホウ酸形陰イオン交換樹脂に接触させる一次冷却水のホウ素濃度は特に限定されず、例えば、500〜10000ppmの範囲で運用される。本発明は3000ppm以上のホウ素濃度で運用される場合がより有効であり、3500ppm以上のホウ素濃度で運用される場合が特に有効である。
上述のように、一次冷却系8の脱塩装置に、多孔形陰イオン交換樹脂を用いることで、高い濃度のホウ酸溶液を接触させても、該陰イオン交換樹脂に割れや亀裂等の破損が生じない。このため、脱塩装置から陰イオン交換樹脂由来の粒子の漏洩を極めて少なくすることができ、各脱塩装置の後段に設置したフィルタ等を早期に閉塞させるようなことを防止することができる。従来使用されているゲル形の陰イオン交換樹脂では、高い濃度のホウ酸溶液を接触させると、イオン形の変化、および、浸透圧差により樹脂が急激に収縮するために、体積変化に樹脂が耐えられず、割れや亀裂が生じると考えられる。一方、多孔形の樹脂は急激な収縮時に、樹脂が有する孔により緩衝されるため、割れや亀裂の発生が防止できると考えられる。
上述の一次冷却系8では、混床式脱塩塔33、ホウ素除去脱塩塔37、混床式脱塩塔62、混床式脱塩塔110の全ての脱塩装置に、多孔形陰イオン交換樹脂が充填されている。しかし、本発明は、これに限られることはなく、各脱塩装置の一部に多孔形陰イオン交換樹脂が充填されていても良い。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
多孔形陰イオン交換樹脂であるアンバージェット(商品名)9090(細孔容積:0.16mL/g−乾燥樹脂(Cl形)、平均細孔半径:17nm(Cl形)、ローム・アンド・ハース社製)の破損率を測定した(通水前の破損率)。次いで、15mLのアンバージェット(商品名)9090を内径21mmのガラス製カラムに充填し、陰イオン交換塔Aを作製した。得られた陰イオン交換塔Aに、ホウ素として4700ppmのホウ酸水溶液をSV(空間速度)=20で1時間通液した。通水後、多孔形陰イオン交換樹脂Aを取り出し、樹脂の破損率を測定した(通水後の破損率)。測定した結果を表1に示す。
(比較例1)
陰イオン交換樹脂をOH形のゲル形陰イオン交換樹脂であるアンバーライト(商品名)PCA1(ローム・アンド・ハース社製)とした以外は、実施例1と同様にして、通水前の樹脂の破損率と通水後の樹脂の破損率とを測定した。測定した結果を表1に示す。
(比較例2)
陰イオン交換樹脂をOH形のゲル形陰イオン交換樹脂であるダイヤイオン(商品名)SAN1(三菱化学株式会社製)とした以外は、実施例1と同様にして、通水前の樹脂の破損率と通水後の樹脂の破損率とを測定した。測定した結果を表1に示す。
(破損率の測定)
任意の樹脂300個について顕微鏡観察(25倍)を行い、割れ、ヒビ等の破損が生じている破損樹脂の個数を計測した。破損率は、下記(2)式で求められる百分率で表した。
破損率(%)=破損樹脂の個数÷300個×100% ・・・(2)
Figure 0004938730
表1に示すとおり、多孔形陰イオン交換樹脂を用いた実施例1では、通水前の破損率および通水後の破損率が1%未満であった。これに対し、OH形のゲル形陰イオン交換樹脂を用いた比較例1、および比較例2では、通水前の破損率が1%未満であったのに対し、通水後の破損率が20%を超えていた。このことから、多孔形陰イオン交換樹脂は、ホウ酸の接触による破損が発生しにくいことが判った。
本発明の実施形態の一例であるPWR型発電所の一次冷却系を示す模式図である。
符号の説明
8 一次冷却系
30 化学体積制御系統
33、62、110 混床式脱塩塔
37 ホウ素除去脱塩塔
60 ホウ酸回収系統
100 使用済燃料ピット水浄化冷却系統

Claims (2)

  1. 化学体積制御系統、ホウ酸回収系統、使用済燃料ピット水浄化冷却系統の少なくとも一箇所に設置され、加圧水型原子力発電所の一次冷却水を浄化する脱塩装置であって、
    細孔容積が0.05〜0.50mL/g−乾燥樹脂(Cl形)、かつ、平均細孔半径が2〜50nm(Cl形)の、多孔形陰イオン交換樹脂が充填された浄化手段を有し、前記多孔形陰イオン交換樹脂に接触させる一次冷却水は、ホウ素濃度3000〜10000ppmである、加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置。
  2. 化学体積制御系統、ホウ酸回収系統、使用済燃料ピット水浄化冷却系統の少なくとも一箇所で、細孔容積が0.05〜0.50mL/g−乾燥樹脂(Cl形)、かつ、平均細孔半径が2〜50nm(Cl形)の多孔形陰イオン交換樹脂に、加圧水型原子力発電所の一次冷却水を接触させる、加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化方法であって、
    前記多孔形陰イオン交換樹脂に接触させる一次冷却水は、ホウ素濃度3000〜10000ppmである加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化方法

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