JP2005003597A - 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法 - Google Patents
加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2005003597A JP2005003597A JP2003169336A JP2003169336A JP2005003597A JP 2005003597 A JP2005003597 A JP 2005003597A JP 2003169336 A JP2003169336 A JP 2003169336A JP 2003169336 A JP2003169336 A JP 2003169336A JP 2005003597 A JP2005003597 A JP 2005003597A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cooling water
- primary cooling
- exchange resin
- strongly acidic
- cation exchange
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E30/00—Energy generation of nuclear origin
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E30/00—Energy generation of nuclear origin
- Y02E30/30—Nuclear fission reactors
Abstract
【課題】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を導入して、当該単床式脱塩塔の出口の一次冷却水に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定することによる加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔の性能評価方法を提供する。
【解決手段】加圧水型原子力発電プラントの強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが充填された一次冷却水浄化用の混床式脱塩塔において、混床式脱塩塔に並列して設け且つ混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を導入し、当該単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量を測定することから成る加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の性能評価方法。
【選択図】 図1
【解決手段】加圧水型原子力発電プラントの強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが充填された一次冷却水浄化用の混床式脱塩塔において、混床式脱塩塔に並列して設け且つ混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を導入し、当該単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量を測定することから成る加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の性能評価方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔のイオン交換樹脂の性能評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
加圧水型原子力発電プラントの冷却水が流れる系統としては、一次冷却水系と二次冷却水系がある。そして、一次冷却水系においては、原子炉冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を除去するために、一次冷却水の一部を原子炉格納容器の外部に導き出して、化学体積制御系およびホウ酸回収系の混床式脱塩塔によって処理している。また、使用済み燃料ピット系においても、冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を混床式脱塩塔によって除去している。
【0003】
これらの混床式脱塩塔には、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂が使用されている。そして、強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法として、強酸性陽イオン交換樹脂に鉄イオンもしくは銅イオンおよび/または鉄イオンを吸着させた後、ヒドラジン水溶液を接触させて加速劣化させ、次いで、劣化した強酸性陽イオン交換樹脂に溶離液を接触させ、この際に、樹脂から溶出したポリスチレンスルホン酸量を測定する強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は、加圧水型原子力発電プラントの二次冷却水を浄化処理するための復水脱塩装置から強酸性陽イオン交換樹脂を少量サンプリングし、それから溶出するポリスチレンスルホン酸量を測定して、強酸性陽イオン交換樹脂の劣化度合の評価を行っている。
【0004】
【特許文献1】
特開9−210977号公報
【0005】
しかしながら、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系、ホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系の混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂は、放射性核種を高濃度で吸着しているため、強酸性陽イオン交換樹脂をサンプリングすることが出来ず、上述の評価方法を実施することは不可能である。
【0006】
加圧水型原子力発電プラントにおいては、その定期点検時に、放射線の作用により、原子炉内炉水に5ppm程度の濃度の過酸化水素が発生する。そのため、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂が充填された混床式脱塩塔では、過酸化水素により強酸性陽イオン交換樹脂が酸化され、ポリスチレンスルホン酸が溶出する。溶出するポリスチレンスルホン酸中、分子量5000以上の高分子量ポリスチレンスルホン酸は共存する強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されず、そのほとんどが一次冷却水中に残留するが、分子量5000未満の低分子量ポリスチレンスルホン酸は共存する強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着される。それ故、混床式脱塩塔の出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量の測定による強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価は、強酸性陽イオン交換樹脂から溶出したポリスチレンスルホン酸の全量を測定することが出来ないため、混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の劣化度合を評価するに十分な方法とは言えない。
【0007】
一次冷却水の浄化処理に係わる混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂にどのくらいの無機イオンおよび陽イオン放射性核種量が吸着しているか、あとどのくらい使用可能かについての評価方法は確立されていないのが現状である。また、加圧水型原子力発電プラントにおける一次冷却水系脱塩塔に使用されるイオン交換樹脂は、非再生運用(再生剤によるイオン交換樹脂の交換能力の回復をさせない運用)とされており、使用限界に達していなくても所定量の一次冷却水を浄化処理した後、定期点検ごとに新品のイオン交換樹脂と交換されている。そして、交換された使用済みのイオン交換樹脂は、放射性核種を高濃度で吸着しているため、原子力発電所の敷地内の貯蔵施設に保管される。近年、その貯蔵施設の容量狭隘化が問題化しており、使用済みのイオン交換樹脂の減量化が求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔を当該混床式脱塩塔と並列して設け、混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を導入して、当該単床式脱塩塔の出口の一次冷却水に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定することにより、混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を正確に評価することの出来る加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、加圧水型原子力発電プラントの強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが混合充填された一次冷却水浄化用混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を評価するに当り、混床式脱塩塔に並列して設け且つ混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を分岐導入し、単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定することにより、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を正確に評価することが出来ることを見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、加圧水型原子力発電プラントの化学体積制御系とホウ酸回収系と使用済み燃料ピット系とに夫々配置された且つ強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが充填された一次冷却水浄化用の混床式脱塩塔において、充填された強酸性陽イオン交換樹脂の性能を評価するに当り、混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔を当該混床式脱塩塔と並列して設け、当該単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を分岐導入し、当該単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれている強酸性陽イオン交換樹脂から溶出するポリスチレンスルホン酸量を測定して強酸性陽イオン交換樹脂の性能を評価することを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図である。尚、本発明の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔は、基本的には従来公知の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系、ホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系で使用されている混床式脱塩塔と同じである。
【0012】
一次冷却水は、原子炉(12)を冷却して高温、高圧(例えば、温度322℃、圧力15.4MPa)になっている。その様な高温、高圧の一次冷却水は、ポンプ(13p)によって一次冷却水循環ライン(13)を矢印で示す方向に循環しており、当該循環ライン(13)に設けられている蒸気発生器(14)で、二次冷却水との熱交換により発電用二次冷却水の蒸気を発生させる。
【0013】
一次冷却水を化学的に浄化すると共にその体積を一定に維持するための化学体積制御系において、循環する一次冷却水の一部は、一次冷却水抽出ライン(30)を経由して再生熱交換器(32)で冷却した後、原子炉格納容器の外部に取出される。次いで、取出された一次冷却水は、化学体積制御ライン(31)を経由して強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔(33)および必要に応じて、強酸性陽イオン交換樹脂を充填したリチウム除去塔(34)に供給されて含有する無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去される。次いで、無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、化学体積制御ライン(31)を経由して体積制御タンク(35)に供給された後、ポンプ(31p)によって再生熱交換器(32)を経由して一次冷却水循環ライン(13)へ戻される。
【0014】
一次冷却水中のホウ酸濃度を制御するためのホウ酸回収系において、無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、体積制御タンク(35)に供給される前に、一次冷却水の一部は、ホウ酸回収ライン(41)を経由してホールドアップタンク(42)に間欠的に供給される。次いで、ホールドアップタンク(42)の一次冷却水は、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔(43)で浄化処理された後、ホウ酸濃縮装置(44)で濃縮され、ホウ酸濃縮タンク(45)に供給される。ホウ酸濃縮タンク(45)のホウ酸濃縮溶液は、燃料棒燃焼制御の必要に応じて、ホウ酸・純水注入ライン(46)を経由した後、ポンプ(31p)によって再生熱交換器(32)を経由して一次冷却水循環ライン(13)に供給される。また、ホウ酸濃縮装置(44)で発生した蒸気は、熱交換器(52)で復水となった後、復水ライン(51)を経由して強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔(53)に供給されて浄化処理し、次いで、純水タンク(54)に供給される。純水タンク(54)の純水は、一次冷却水中のホウ酸濃度が高い場合、希釈水として、ホウ酸・純水注入ライン(46)を経由した後、ポンプ(31p)によって再生熱交換器(32)を経由して一次冷却水循環ライン(13)に供給される。
【0015】
原子炉で使用された使用済み燃料棒を浸漬する使用済み燃料ピット系においては、使用済みの燃料棒は、放射線レベルが低下する間、燃料ピット内に貯められた冷却水中に保管される。そして、この冷却水は、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔に循環通液して浄化処理される。
【0016】
本発明における加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の性能評価は、次の方法によって行う。混床式脱塩塔(33、43)に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔(36、47)を混床式脱塩塔(33、43)に並列して設け、混床式脱塩塔(33、43)入口の一次冷却水の一部を分岐して、単床式脱塩塔(36、47)に導入する。その際、単床式脱塩塔(36、47)に分岐導入する一次冷却水の通液条件は、混床式脱塩塔(33、43)と同一である。また、単床式脱塩塔(36、47)のサイズは、混床式脱塩塔(33、43)の通常1/10〜1/100である。そして、ポリスチレンスルホン酸量の測定装置、例えば、分光光度計を使用して、単床式脱塩塔(36、47)出口の一次冷却水中のポリスチレンスルホン酸量を紫外線吸収値として測定し、それにより混床式脱塩塔(33、43)に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を評価する。
【0017】
特に、単床式脱塩塔(36、47)出口の一次冷却水中のポリスチレンスルホン酸量の測定においては、単床式脱塩塔(36、47)の出口配管に設けられた取出口からバルブおよび導出出口(37、48)を経由して、管理区域内の試料採取室にあるサンプルフード内に一次冷却水を導き、ポリスチレンスルホン酸の測定装置、例えば、分光光度計を使用して、紫外線吸収値として、ポリスチレンスルホン酸量を測定する方法が好ましい。
【0018】
一次冷却水の紫外線吸収値の測定としては、例えば、採取した一次冷却水4mlを10mmの石英セル叉は一次冷却水10mlを50mmの石英セルに入れて、分光光度計によりUV225nmの吸収値を測定する方法がある。そして、既知のポリスチレンスルホン酸濃度の溶液を使用して求めた吸光度検量線により、得られた紫外線吸収値のポリスチレンスルホン酸量を求める。
【0019】
本発明で使用される分光光度計として、市販の分光光度計が使用でき、例えば、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」、紫外可視分光光度計「UV−1600」および日本分光(株)製紫外可視分光光度計「V−530」が挙げられる。
【0020】
本発明者らは、数多くの実験により、強酸性陽イオン交換樹脂の酸化程度の増加に伴い、強酸性陽イオン交換樹脂から溶出されるポリスチレンスルホン酸量が増加すると共に、強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量が減少すること、更に、イオン交換容量とポリスチレンスルホン酸量から算出したポリスチレンスルホン酸溶出速度とが一定の関係にあることを見出した。
【0021】
そして、イオン交換容量とポリスチレンスルホン酸溶出速度との予め実験的に求められた関係式に基づき、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に使用されている強酸性陽イオン交換樹脂の残存するイオン交換容量が、混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量の測定値から予測することが出来る。そして、得られたイオン交換容量から混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂の使用限界を予測することが出来るため、従来よりも長期間の通水を可能とすることが出来ると共に使用済みの強酸性陽イオン交換樹脂などの放射性廃棄物量の減量化が可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、特に、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔出口の一次冷却水の一部を試料採取室のサンプルフード内に移送して、当該一次冷却水に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定する場合、放射性核種が高濃度で吸着している強酸性陽イオン交換樹脂の劣化度合を正確に評価することが容易になる。そして、ポリスチレンスルホン酸量を測定する分析装置の保守および点検も容易になる。
【0023】
【実施例】
以下、強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量とそれから溶出したポリスチレンスルホン酸量の測定により、本発明で使用する強酸性陽イオン交換樹脂の効果を明らかにする。以下の諸例におけるポリスチレンスルホン酸量およびイオン交換容量の測定は、次の方法で行った。
【0024】
<ポリスチレンスルホン酸量の測定>
サンプル液4mlを10mm石英セルに入れて、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」によりUV225nmにおける紫外線吸収値を測定した。既知のポリスチレンスルホン酸濃度の溶液を使用して得た吸光度検量線により、ポリスチレンスルホン酸量を求めた。
【0025】
<イオン交換容量の測定>
ガラス製カラムより抜出した強酸性陽イオン交換樹脂10mlを正確に計り取り、再びガラス製カラム充填し、2N−HCl溶液280mlをSV70の流量で通液して再生し、脱塩水1LをSV70の流量で通水して洗浄した。次いで、5%NaCl溶液をSV70の流量で通液して250mlメスフラスコに受容した。250mlメスフラスコから得られた溶液を50ml正確に計り取り、メチルレッド−メチレンブルー混合指示薬を用いて0.1N−NaOH溶液で滴定し、使用した0.1N−NaOH溶液量をもとに、式:(0.1N−NaOH溶液(ml)×NaOHの力価×0.1×250/50)/10によりイオン交換容量を求めた。
【0026】
試験例1
架橋度が8%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン SKN1」、イオン交換容量:1.8meq/ml−樹脂)300mlを水切りした状態で夫々ガラスビーカーに入れ、これに4倍量の純水を加えた。次いで、強酸性陽イオン交換樹脂1リットル当り10mgのFe3+負荷量となるように0.01N−塩化鉄溶液を添加し、Fe3+負荷形の強酸性陽イオン交換樹脂とした。この強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムに充填し、50ppmの過酸化水素溶液50リットルが入っている循環タンクと閉ループ循環ラインを形成した。閉ループ循環ラインに定量ポンプによりSV30の流量で過酸化水素溶液を通液した。そして、168時間、335時間、502時間および670時間経過後の循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量を測定した。別に、過酸化水素溶液を通液した後の強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムから取出し、イオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0027】
試験例2
架橋度が12%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK112」(試作品)、イオン交換容量:2.3meq/ml−樹脂)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0028】
試験例3
架橋度が14%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK114」(試作品)、イオン交換容量:2.5meq/ml−樹脂)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0029】
試験例4
架橋度が16%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK116」、イオン交換容量:2.5meq/ml−樹脂)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
上述の表1および表2から、通液時間が長い程、即ち、強酸性陽イオン交換樹脂の酸化程度が大きくなる程、ポリスチレンスルホン酸量は増加し、且つ、残存する強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量が徐々に減少することが判る。
【0033】
また、図2は、縦軸をイオン交換容量および横軸をポリスチレンスルホン酸溶出速度として、上述の試験結果のポリスチレンスルホン酸量(g/m3)から算出したポリスチレンスルホン酸溶出速度(g/m3−樹脂・時間)におけるイオン交換容量(meq/ml−樹脂)をプロットした図である。図2から明らかな通り、イオン交換容量とポリスチレンスルホン酸溶出速度とが一定の関係にあり、それは、式:Y=−0.552Ln(x)+3.769で表される。従って、一次冷却水を浄化する混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填したポリスチレンスルホン酸量測定用の単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量を測定することによって、混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂の残存するイオン交換容量を計算することが出来る。
【0034】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量を測定することにより、混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を正確に評価でき、混床式脱塩塔の使用限界を予測することの出来る性能評価方法が提供され、本発明の工業的な価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図
【図2】イオン交換能容量とポリスチレンスルホン酸溶出速度の関係を示す図
【符号の説明】
12:原子炉
13:一次冷却水循環ライン
14:蒸気発生器
31:化学体積制御ライン
33:混床式脱塩塔
34:リチウム除去塔
35:体積制御タンク
36:単床式脱塩塔
37:分光光度計
41:ホウ酸回収ライン
43:混床式脱塩塔
44:ホウ酸濃縮装置
45:ホウ酸濃縮タンク
46:ホウ酸・純水注入ライン
47:単床式脱塩塔
48:分光光度計
53:混床式脱塩塔
54:純水タンク
【発明の属する技術分野】
本発明は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔のイオン交換樹脂の性能評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
加圧水型原子力発電プラントの冷却水が流れる系統としては、一次冷却水系と二次冷却水系がある。そして、一次冷却水系においては、原子炉冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を除去するために、一次冷却水の一部を原子炉格納容器の外部に導き出して、化学体積制御系およびホウ酸回収系の混床式脱塩塔によって処理している。また、使用済み燃料ピット系においても、冷却水に含まれる無機イオンおよび陽イオン放射性核種を混床式脱塩塔によって除去している。
【0003】
これらの混床式脱塩塔には、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂および強塩基性陰イオン交換樹脂が使用されている。そして、強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法として、強酸性陽イオン交換樹脂に鉄イオンもしくは銅イオンおよび/または鉄イオンを吸着させた後、ヒドラジン水溶液を接触させて加速劣化させ、次いで、劣化した強酸性陽イオン交換樹脂に溶離液を接触させ、この際に、樹脂から溶出したポリスチレンスルホン酸量を測定する強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法は、加圧水型原子力発電プラントの二次冷却水を浄化処理するための復水脱塩装置から強酸性陽イオン交換樹脂を少量サンプリングし、それから溶出するポリスチレンスルホン酸量を測定して、強酸性陽イオン交換樹脂の劣化度合の評価を行っている。
【0004】
【特許文献1】
特開9−210977号公報
【0005】
しかしながら、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系、ホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系の混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂は、放射性核種を高濃度で吸着しているため、強酸性陽イオン交換樹脂をサンプリングすることが出来ず、上述の評価方法を実施することは不可能である。
【0006】
加圧水型原子力発電プラントにおいては、その定期点検時に、放射線の作用により、原子炉内炉水に5ppm程度の濃度の過酸化水素が発生する。そのため、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂が充填された混床式脱塩塔では、過酸化水素により強酸性陽イオン交換樹脂が酸化され、ポリスチレンスルホン酸が溶出する。溶出するポリスチレンスルホン酸中、分子量5000以上の高分子量ポリスチレンスルホン酸は共存する強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着されず、そのほとんどが一次冷却水中に残留するが、分子量5000未満の低分子量ポリスチレンスルホン酸は共存する強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着される。それ故、混床式脱塩塔の出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量の測定による強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価は、強酸性陽イオン交換樹脂から溶出したポリスチレンスルホン酸の全量を測定することが出来ないため、混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の劣化度合を評価するに十分な方法とは言えない。
【0007】
一次冷却水の浄化処理に係わる混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂にどのくらいの無機イオンおよび陽イオン放射性核種量が吸着しているか、あとどのくらい使用可能かについての評価方法は確立されていないのが現状である。また、加圧水型原子力発電プラントにおける一次冷却水系脱塩塔に使用されるイオン交換樹脂は、非再生運用(再生剤によるイオン交換樹脂の交換能力の回復をさせない運用)とされており、使用限界に達していなくても所定量の一次冷却水を浄化処理した後、定期点検ごとに新品のイオン交換樹脂と交換されている。そして、交換された使用済みのイオン交換樹脂は、放射性核種を高濃度で吸着しているため、原子力発電所の敷地内の貯蔵施設に保管される。近年、その貯蔵施設の容量狭隘化が問題化しており、使用済みのイオン交換樹脂の減量化が求められている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔を当該混床式脱塩塔と並列して設け、混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を導入して、当該単床式脱塩塔の出口の一次冷却水に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定することにより、混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を正確に評価することの出来る加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、加圧水型原子力発電プラントの強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが混合充填された一次冷却水浄化用混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を評価するに当り、混床式脱塩塔に並列して設け且つ混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を分岐導入し、単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定することにより、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を正確に評価することが出来ることを見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、加圧水型原子力発電プラントの化学体積制御系とホウ酸回収系と使用済み燃料ピット系とに夫々配置された且つ強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが充填された一次冷却水浄化用の混床式脱塩塔において、充填された強酸性陽イオン交換樹脂の性能を評価するに当り、混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔を当該混床式脱塩塔と並列して設け、当該単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を分岐導入し、当該単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれている強酸性陽イオン交換樹脂から溶出するポリスチレンスルホン酸量を測定して強酸性陽イオン交換樹脂の性能を評価することを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。図1は、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図である。尚、本発明の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔は、基本的には従来公知の加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水が流れる化学体積制御系、ホウ酸回収系および使用済み燃料ピット系で使用されている混床式脱塩塔と同じである。
【0012】
一次冷却水は、原子炉(12)を冷却して高温、高圧(例えば、温度322℃、圧力15.4MPa)になっている。その様な高温、高圧の一次冷却水は、ポンプ(13p)によって一次冷却水循環ライン(13)を矢印で示す方向に循環しており、当該循環ライン(13)に設けられている蒸気発生器(14)で、二次冷却水との熱交換により発電用二次冷却水の蒸気を発生させる。
【0013】
一次冷却水を化学的に浄化すると共にその体積を一定に維持するための化学体積制御系において、循環する一次冷却水の一部は、一次冷却水抽出ライン(30)を経由して再生熱交換器(32)で冷却した後、原子炉格納容器の外部に取出される。次いで、取出された一次冷却水は、化学体積制御ライン(31)を経由して強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔(33)および必要に応じて、強酸性陽イオン交換樹脂を充填したリチウム除去塔(34)に供給されて含有する無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去される。次いで、無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、化学体積制御ライン(31)を経由して体積制御タンク(35)に供給された後、ポンプ(31p)によって再生熱交換器(32)を経由して一次冷却水循環ライン(13)へ戻される。
【0014】
一次冷却水中のホウ酸濃度を制御するためのホウ酸回収系において、無機イオンおよび陽イオン放射性核種が除去された一次冷却水は、体積制御タンク(35)に供給される前に、一次冷却水の一部は、ホウ酸回収ライン(41)を経由してホールドアップタンク(42)に間欠的に供給される。次いで、ホールドアップタンク(42)の一次冷却水は、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔(43)で浄化処理された後、ホウ酸濃縮装置(44)で濃縮され、ホウ酸濃縮タンク(45)に供給される。ホウ酸濃縮タンク(45)のホウ酸濃縮溶液は、燃料棒燃焼制御の必要に応じて、ホウ酸・純水注入ライン(46)を経由した後、ポンプ(31p)によって再生熱交換器(32)を経由して一次冷却水循環ライン(13)に供給される。また、ホウ酸濃縮装置(44)で発生した蒸気は、熱交換器(52)で復水となった後、復水ライン(51)を経由して強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔(53)に供給されて浄化処理し、次いで、純水タンク(54)に供給される。純水タンク(54)の純水は、一次冷却水中のホウ酸濃度が高い場合、希釈水として、ホウ酸・純水注入ライン(46)を経由した後、ポンプ(31p)によって再生熱交換器(32)を経由して一次冷却水循環ライン(13)に供給される。
【0015】
原子炉で使用された使用済み燃料棒を浸漬する使用済み燃料ピット系においては、使用済みの燃料棒は、放射線レベルが低下する間、燃料ピット内に貯められた冷却水中に保管される。そして、この冷却水は、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合充填した混床式脱塩塔に循環通液して浄化処理される。
【0016】
本発明における加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の性能評価は、次の方法によって行う。混床式脱塩塔(33、43)に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔(36、47)を混床式脱塩塔(33、43)に並列して設け、混床式脱塩塔(33、43)入口の一次冷却水の一部を分岐して、単床式脱塩塔(36、47)に導入する。その際、単床式脱塩塔(36、47)に分岐導入する一次冷却水の通液条件は、混床式脱塩塔(33、43)と同一である。また、単床式脱塩塔(36、47)のサイズは、混床式脱塩塔(33、43)の通常1/10〜1/100である。そして、ポリスチレンスルホン酸量の測定装置、例えば、分光光度計を使用して、単床式脱塩塔(36、47)出口の一次冷却水中のポリスチレンスルホン酸量を紫外線吸収値として測定し、それにより混床式脱塩塔(33、43)に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を評価する。
【0017】
特に、単床式脱塩塔(36、47)出口の一次冷却水中のポリスチレンスルホン酸量の測定においては、単床式脱塩塔(36、47)の出口配管に設けられた取出口からバルブおよび導出出口(37、48)を経由して、管理区域内の試料採取室にあるサンプルフード内に一次冷却水を導き、ポリスチレンスルホン酸の測定装置、例えば、分光光度計を使用して、紫外線吸収値として、ポリスチレンスルホン酸量を測定する方法が好ましい。
【0018】
一次冷却水の紫外線吸収値の測定としては、例えば、採取した一次冷却水4mlを10mmの石英セル叉は一次冷却水10mlを50mmの石英セルに入れて、分光光度計によりUV225nmの吸収値を測定する方法がある。そして、既知のポリスチレンスルホン酸濃度の溶液を使用して求めた吸光度検量線により、得られた紫外線吸収値のポリスチレンスルホン酸量を求める。
【0019】
本発明で使用される分光光度計として、市販の分光光度計が使用でき、例えば、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」、紫外可視分光光度計「UV−1600」および日本分光(株)製紫外可視分光光度計「V−530」が挙げられる。
【0020】
本発明者らは、数多くの実験により、強酸性陽イオン交換樹脂の酸化程度の増加に伴い、強酸性陽イオン交換樹脂から溶出されるポリスチレンスルホン酸量が増加すると共に、強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量が減少すること、更に、イオン交換容量とポリスチレンスルホン酸量から算出したポリスチレンスルホン酸溶出速度とが一定の関係にあることを見出した。
【0021】
そして、イオン交換容量とポリスチレンスルホン酸溶出速度との予め実験的に求められた関係式に基づき、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に使用されている強酸性陽イオン交換樹脂の残存するイオン交換容量が、混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量の測定値から予測することが出来る。そして、得られたイオン交換容量から混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂の使用限界を予測することが出来るため、従来よりも長期間の通水を可能とすることが出来ると共に使用済みの強酸性陽イオン交換樹脂などの放射性廃棄物量の減量化が可能となる。
【0022】
また、本発明によれば、特に、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔出口の一次冷却水の一部を試料採取室のサンプルフード内に移送して、当該一次冷却水に含まれるポリスチレンスルホン酸量を測定する場合、放射性核種が高濃度で吸着している強酸性陽イオン交換樹脂の劣化度合を正確に評価することが容易になる。そして、ポリスチレンスルホン酸量を測定する分析装置の保守および点検も容易になる。
【0023】
【実施例】
以下、強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量とそれから溶出したポリスチレンスルホン酸量の測定により、本発明で使用する強酸性陽イオン交換樹脂の効果を明らかにする。以下の諸例におけるポリスチレンスルホン酸量およびイオン交換容量の測定は、次の方法で行った。
【0024】
<ポリスチレンスルホン酸量の測定>
サンプル液4mlを10mm石英セルに入れて、(株)島津製作所製分光光度計「UV−160A」によりUV225nmにおける紫外線吸収値を測定した。既知のポリスチレンスルホン酸濃度の溶液を使用して得た吸光度検量線により、ポリスチレンスルホン酸量を求めた。
【0025】
<イオン交換容量の測定>
ガラス製カラムより抜出した強酸性陽イオン交換樹脂10mlを正確に計り取り、再びガラス製カラム充填し、2N−HCl溶液280mlをSV70の流量で通液して再生し、脱塩水1LをSV70の流量で通水して洗浄した。次いで、5%NaCl溶液をSV70の流量で通液して250mlメスフラスコに受容した。250mlメスフラスコから得られた溶液を50ml正確に計り取り、メチルレッド−メチレンブルー混合指示薬を用いて0.1N−NaOH溶液で滴定し、使用した0.1N−NaOH溶液量をもとに、式:(0.1N−NaOH溶液(ml)×NaOHの力価×0.1×250/50)/10によりイオン交換容量を求めた。
【0026】
試験例1
架橋度が8%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン SKN1」、イオン交換容量:1.8meq/ml−樹脂)300mlを水切りした状態で夫々ガラスビーカーに入れ、これに4倍量の純水を加えた。次いで、強酸性陽イオン交換樹脂1リットル当り10mgのFe3+負荷量となるように0.01N−塩化鉄溶液を添加し、Fe3+負荷形の強酸性陽イオン交換樹脂とした。この強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムに充填し、50ppmの過酸化水素溶液50リットルが入っている循環タンクと閉ループ循環ラインを形成した。閉ループ循環ラインに定量ポンプによりSV30の流量で過酸化水素溶液を通液した。そして、168時間、335時間、502時間および670時間経過後の循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量を測定した。別に、過酸化水素溶液を通液した後の強酸性陽イオン交換樹脂をガラス製カラムから取出し、イオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0027】
試験例2
架橋度が12%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK112」(試作品)、イオン交換容量:2.3meq/ml−樹脂)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0028】
試験例3
架橋度が14%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK114」(試作品)、イオン交換容量:2.5meq/ml−樹脂)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0029】
試験例4
架橋度が16%の強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)「ダイヤイオン USK116」、イオン交換容量:2.5meq/ml−樹脂)を使用した以外は試験例1と同様にして、循環タンク内の循環液中のポリスチレンスルホン酸量および強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
上述の表1および表2から、通液時間が長い程、即ち、強酸性陽イオン交換樹脂の酸化程度が大きくなる程、ポリスチレンスルホン酸量は増加し、且つ、残存する強酸性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量が徐々に減少することが判る。
【0033】
また、図2は、縦軸をイオン交換容量および横軸をポリスチレンスルホン酸溶出速度として、上述の試験結果のポリスチレンスルホン酸量(g/m3)から算出したポリスチレンスルホン酸溶出速度(g/m3−樹脂・時間)におけるイオン交換容量(meq/ml−樹脂)をプロットした図である。図2から明らかな通り、イオン交換容量とポリスチレンスルホン酸溶出速度とが一定の関係にあり、それは、式:Y=−0.552Ln(x)+3.769で表される。従って、一次冷却水を浄化する混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填したポリスチレンスルホン酸量測定用の単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量を測定することによって、混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂の残存するイオン交換容量を計算することが出来る。
【0034】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系の混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれているポリスチレンスルホン酸量を測定することにより、混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の酸化劣化度合を正確に評価でき、混床式脱塩塔の使用限界を予測することの出来る性能評価方法が提供され、本発明の工業的な価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水の浄化ラインを示す概略図
【図2】イオン交換能容量とポリスチレンスルホン酸溶出速度の関係を示す図
【符号の説明】
12:原子炉
13:一次冷却水循環ライン
14:蒸気発生器
31:化学体積制御ライン
33:混床式脱塩塔
34:リチウム除去塔
35:体積制御タンク
36:単床式脱塩塔
37:分光光度計
41:ホウ酸回収ライン
43:混床式脱塩塔
44:ホウ酸濃縮装置
45:ホウ酸濃縮タンク
46:ホウ酸・純水注入ライン
47:単床式脱塩塔
48:分光光度計
53:混床式脱塩塔
54:純水タンク
Claims (2)
- 加圧水型原子力発電プラントの化学体積制御系とホウ酸回収系と使用済み燃料ピット系とに夫々配置され且つ強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とが充填された一次冷却水浄化用の混床式脱塩塔において、充填された強酸性陽イオン交換樹脂の性能を評価するに当り、混床式脱塩塔に充填されている強酸性陽イオン交換樹脂と同じ樹脂を充填した単床式脱塩塔を当該混床式脱塩塔に並列して設け、当該単床式脱塩塔に混床式脱塩塔入口の一次冷却水の一部を分岐導入し、当該単床式脱塩塔出口の一次冷却水に含まれている強酸性陽イオン交換樹脂から溶出するポリスチレンスルホン酸量を測定して強酸性陽イオン交換樹脂の性能を評価することを特徴とする加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法。
- ポリスチレンスルホン酸量とイオン交換容量との関係式を使用して、測定されたポリスチレンスルホン酸量から残存するイオン交換容量を求めることから成る請求項1記載の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003169336A JP2005003597A (ja) | 2003-06-13 | 2003-06-13 | 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003169336A JP2005003597A (ja) | 2003-06-13 | 2003-06-13 | 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2005003597A true JP2005003597A (ja) | 2005-01-06 |
Family
ID=34094500
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003169336A Withdrawn JP2005003597A (ja) | 2003-06-13 | 2003-06-13 | 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2005003597A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009300162A (ja) * | 2008-06-11 | 2009-12-24 | Japan Organo Co Ltd | 加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置および一次冷却水の浄化方法 |
US9115010B2 (en) | 2008-06-11 | 2015-08-25 | Organo Corporation | Demineralizer of primary coolant system in pressurized-water reactor power plant and method for purifying primary cooling water in pressurized-water reactor power plant |
CN108489544A (zh) * | 2018-03-23 | 2018-09-04 | 江苏国信靖江发电有限公司 | 高速混床的运行性能测评方法、装置、设备及存储介质 |
-
2003
- 2003-06-13 JP JP2003169336A patent/JP2005003597A/ja not_active Withdrawn
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009300162A (ja) * | 2008-06-11 | 2009-12-24 | Japan Organo Co Ltd | 加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置および一次冷却水の浄化方法 |
US9115010B2 (en) | 2008-06-11 | 2015-08-25 | Organo Corporation | Demineralizer of primary coolant system in pressurized-water reactor power plant and method for purifying primary cooling water in pressurized-water reactor power plant |
CN108489544A (zh) * | 2018-03-23 | 2018-09-04 | 江苏国信靖江发电有限公司 | 高速混床的运行性能测评方法、装置、设备及存储介质 |
CN108489544B (zh) * | 2018-03-23 | 2020-09-29 | 江苏国信靖江发电有限公司 | 高速混床的运行性能测评方法、装置、设备及存储介质 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4943378B2 (ja) | 復水脱塩方法及び復水脱塩装置 | |
WO2012009781A1 (en) | Reactor decontamination process and reagent | |
JP2001215294A (ja) | 復水脱塩装置 | |
JP2005003598A (ja) | 加圧水型原子力発電プラントにおける混床式脱塩塔およびその運転方法 | |
US20090294367A1 (en) | Method and apparatus for condensate demineralization | |
JP2005003597A (ja) | 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系混床式脱塩塔の強酸性陽イオン交換樹脂の性能評価方法 | |
KR102004396B1 (ko) | 계통 제염 설비 | |
JP2006194738A (ja) | 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔のスルホン酸型陽イオン交換樹脂の性能評価方法 | |
JP3526172B2 (ja) | 水質評価方法及び装置 | |
JP5038232B2 (ja) | 復水脱塩方法及び復水脱塩装置 | |
JPH102890A (ja) | カチオン交換樹脂の性能評価方法 | |
JPH055077B2 (ja) | ||
JP2009281873A (ja) | 復水脱塩方法及び復水脱塩装置 | |
JP2004330154A (ja) | 復水脱塩装置およびその装置へのイオン交換樹脂の充填方法 | |
KR100290643B1 (ko) | 원자력발전소 증기발생기 몰비 조절을 위한 복수탈염방법 및 그 장치 | |
CN101313367A (zh) | 碘物质到碘化物的快速还原 | |
JP4264702B2 (ja) | イオン交換樹脂のイオン組成測定方法 | |
RU2738692C1 (ru) | Способ идентификации блока, служащего причиной утечки неочищенной воды в конденсаторе тепловой электростанции | |
TWI825540B (zh) | 化學除汙方法及化學除汙裝置 | |
Muller | Water Treatment at Indian Point Nuclear Power Plant | |
RU2164714C2 (ru) | Способ удаления ртути из первого контура ядерного реактора с водным теплоносителем | |
JP3610390B2 (ja) | 復水脱塩装置におけるイオン交換樹脂の充填方法 | |
JP2004309268A (ja) | 加圧水型原子力発電プラントの一次冷却水系脱塩塔 | |
JP2003001252A (ja) | 復水脱塩装置の運転方法 | |
JP2002071874A (ja) | 沸騰水型原子力発電プラントとイオン交換樹脂劣化高分子不純物測定方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060905 |