JP2009298011A - 容器用ポリエステル樹脂被覆金属板 - Google Patents

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Abstract

【課題】食品缶詰素材に要求される多くの特性に対応可能な、容器用ポリエステル樹脂被覆金属板を提供する。
【解決手段】金属板の両面にはポリエステルを主成分とする樹脂層を有する。そして、金属板を容器成形した後に容器外面側になる樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなり、該ポリエステル樹脂層の最上層を形成するポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物およびアルキレンビス脂肪酸アミドを含有する。この時、前記ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数は、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の1.0倍以上15.0倍以下が好ましい。また、前記アルキレンビス脂肪酸アミドは、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層に対し、1mass%〜10mass%含有することが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、食品缶詰の缶胴及び蓋等に用いられる容器用ポリエステル樹脂被覆金属板に関するものである。
従来、食缶に用いられる金属缶用素材であるティンフリースチール(TFS)、アルミニウム等の金属板には、耐食性・耐久性・耐候性などの向上を目的として、塗装が施されていた。しかし、この塗装を施す工程は、焼き付け処理が煩雑であるばかりでなく、多大な処理時間を要し、さらには多量の溶剤を排出するという問題を抱えていた。
そこで、これらの問題を解決するため、塗装鋼板に替わり、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板に積層してなるフィルムラミネート金属板が開発され、現在、食品缶詰用素材として工業的に用いられている。
食品缶詰用素材には、加工性、密着性などの基本特性のほか、2ピース缶用途であれば、深絞り成形性、加工・レトルト後密着性や耐食性、耐衝撃性など、多様な機能が求められる。
フィルムラミネート金属板を多機能化する方法としては、(1)フィルム内に、付加したい機能を有する改質剤を加え、フィルムそのものを多機能化する方法、(2)フィルムは改質せず、フィルム表面に、付加したい機能を有する改質剤もしくは改質剤を含む樹脂を、コーティングする方法、のいずれかが選択される。
上記(1)のフィルムに直接、改質剤を添加する方法は、一定の機能を有するフィルムを大量に生産する場合には、生産効率が高く、収益性の高い方法である。しかし、食品缶詰用途では、缶がバラエティに富み、缶の種類毎に、求められる機能が異なるため、この方法は適切でない。なぜならば、フィルムに付与する機能を変更する毎に、樹脂の押し出し装置や、キャスティングドラム、冷却ロールなどの洗浄が必要であるため、ラインを長時間停止しなければならず、生産効率が著しく低下してしまうためである。
一方、上記(2)のフィルムの表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法は、付加機能の変更が容易であるため、食品缶詰の多様なニーズに対応できる。改質剤を含むコーティング液の入ったタンクを、洗浄・交換することで、すばやく機能変更に対応できるからである。
このようなフィルム表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法としては、例えば、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1は、エポキシ樹脂を主成分とし、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、着色剤を含む樹脂層を、金属板とフィルムとの間に形成したものである。
しかしながら、エポキシ樹脂は、反応性に富み、金属板との密着性に優れるものの、深絞り成形性が劣るという欠点があるため、2ピース缶用素材として使用可能なフィルムを得ることはできない。特許文献1の樹脂被覆金属板を深絞り缶(DRD缶)に成形しようとしても、缶高さ方向の伸び変形にエポキシ樹脂が追随することができず素材の変形を拘束してしまい、絞り工程で素材が破断してしまう。
密着性向上を目的として、フィルムに樹脂コーティングを行う技術が、特許文献2〜5に記載されている。ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂の複合系、もしくはエポキシ樹脂を主成分とする構成であるため、特許文献1に記載の技術と同様、深絞り成形性に難があり、2ピース缶用途には適用できるものではない。また、特許文献2〜5に記載されている実施例の中には製缶加工性や深絞り成形性を評価した例が開示されていないことからも、これらの技術が、深絞り加工が要求される2ピース缶用途を考慮していないことが明らかである。
特開2007−185915号公報 特開平4−266984号公報 特開平8−199147号公報 特開平10−183095号公報 特開2002−206079号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、食品缶詰素材に要求される多くの特性に対応可能な、容器用ポリエステル樹脂被覆金属板を提供することを目的とするものである。
本発明者らが課題解決のため鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
容器用ポリエステル樹脂被覆金属板の、容器成形した後の容器外面側となる樹脂層に着目した。この容器外面側となる樹脂層を複層構造とし、最上層を形成するポリエステル樹脂層にブロックフリーイソシアネート化合物およびアルキレンビス脂肪酸アミドを含有させることで、優れた加工性、密着性などの基本特性に加え、レトルト処理環境下での、オリゴマーの析出による白粉現象の抑制等の意匠性に関わる性能等、多くの機能を有する容器用ポリエステル樹脂被覆金属板を得ることができる。
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]ポリエステルを主成分とする樹脂層を両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、該金属板を容器成形した後に容器外面側になる樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなり、該ポリエステル樹脂層の最上層を形成するポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物およびアルキレンビス脂肪酸アミドを含有することを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[2]前記[1]において、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層の膜厚が、0.5μm以上3.0μm以下であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[3]前記[1]または[2]において、前記ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数は、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の1.0倍以上15.0倍以下であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記アルキレンビス脂肪酸アミドを、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層に対し、1質量%〜10質量%を含有することを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記アルキレンビス脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかにおいて、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層中に、着色剤を含むことを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかにおいて、金属板の上層に形成される密着層はポリエステルフィルムから形成され、該ポリエステルフィルムは、ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmで、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下で、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10質量%含有することを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
Figure 2009298011
本発明によれば、食品缶詰素材に要求される多くの特性に対応可能な、容器用ポリエステル樹脂被覆金属板が得られる。
そして、食品缶詰に要求される多くの機能を容易に付加できる新たな容器用ポリエステル樹脂被覆金属板として、産業上有益な発明である。
以下、本発明の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板について詳細に説明する。
まず、本発明で用いる金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m、クロム水酸化物層は10〜30mg/mの範囲とすることが望ましい。
そして、本発明では上記金属板の両面にポリエステルを主成分とする樹脂層を被覆し容器用ポリエステル樹脂被覆金属板とする。ポリエステルを主成分とする樹脂層とは、ポリエステルを50質量%以上100質量%以下含む樹脂であり、ポリエステル以外の樹脂を含む場合には、ポリオレフィンなどの樹脂を含有することができる。
次いで、金属板の両面に被覆するポリエステルを主成分とする樹脂層について説明する。
まず、金属板を容器成形した後に容器外面側になる樹脂層について説明する。
容器外面側になる樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなる。そして、ポリエステル樹脂層の最上層を形成するポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物およびアルキレンビス脂肪酸アミドを含有する。
アルキレンビス脂肪酸アミドを添加する目的は、ポリエステル樹脂を金属板表面に熱融着法にてラミネートする際の、ラミネートロール(圧着ロール)への付着防止と、白粉現象の抑制である。
アルキレンビス脂肪酸アミドは、界面活性剤であるため、熱融着法によるラミネートの際、ポリエステル樹脂の熱流動とともに、樹脂の最表面に濃化する。最表面に濃化したアルキレンビス脂肪酸アミドは、疎水基である炭化水素基を外側(空気側)に、親水基を樹脂層の内側に向けて配列する性質がある。これにより、ポリエステル樹脂の表面エネルギーが大幅に低下し、ラミネートロールへの付着を抑制することができる。
また、金属板とのラミネート終了後、ラミネート金属板をポリエステル樹脂のTg以下にクエンチ(急冷)することで、アルキレンビス脂肪酸アミドが樹脂最表面に濃化した状態を維持することができる。これにより、レトルト処理時の白粉現象を抑制することができる。白粉化現象とは、ポリエステル樹脂中に存在する低分子量成分がレトルト時の熱によって樹脂表面に拡散・析出する現象である。析出する低分子量成分は、主にPETの環状三量体であり、結晶化することで、白い粉状の物質となる。これが、容器外面側の樹脂層表面に析出すると、白濁した外観を呈し、意匠性を大きく損なわせる。
アルキレンビス脂肪酸アミドが、ポリエステル樹脂層の表面近傍に濃化することで、ポリエステル分子鎖間の隙間が脂肪酸アミドにより充填される。これにより、PETの低分子量成分(環状三量体)の、樹脂層表面への拡散経路が閉ざされ、析出量が大幅に低減することとなる。ゆえに、アルキレンビス脂肪酸アミドの添加は、白粉減少の抑制に有効なのである。
アルキレンビス脂肪酸アミドの添加量は、最上層を形成するポリエステル樹脂層(アルキレンビス脂肪酸アミドを添加した樹脂層)に対し、1質量%〜10質量%、好ましくは、2質量%〜8質量%である。アルキレンビス脂肪酸アミドの添加量が1質量%未満であると、ポリエステル樹脂層表面におけるアルキレンビス脂肪酸アミドの存在密度が不足してしまう。これにより、ポリエステル樹脂層表面の疎水基密度が低下し、ポリエステル樹脂の表面エネルギーが低下せず、ラミネートロールへ付着し、樹脂層が破壊されてしまう。また、白粉現象の抑制効果も疎水基密度が低下するため、期待できない。一方、アルキレンビス脂肪酸アミドの添加量が10質量%超となると、アルキレンビス脂肪酸アミドが、ポリエステル樹脂層と、その下のポリエステル樹脂層との界面に偏在するようになる。アルキレンビス脂肪酸アミドは、界面エネルギーを低下させ、樹脂層間の密着性を劣化させる。容器成形時など、樹脂に大きな応力が加わると、樹脂層間で剥離し、成形性を大きく劣化させてしまう。したがって、アルキレンビス脂肪酸アミドの添加量は、1質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは2質量%〜8質量%である。
またアルキレンビス脂肪酸アミドとしては、融点が120℃以上のものが好ましく、より好ましくは130℃以上のものである。これにより、長時間のレトルト殺菌処理においても、ポリエステル樹脂層表面に安定して存在することが可能となる。このようなアルキレンビス脂肪酸アミドとしては、特にエチレンビスステアリン酸アミドの適用が、食品安全性の観点から最も望ましい。
最上層を形成するポリエステル樹脂層に添加するイソシアネート化合物として、本発明では、ブロックフリーイソシアネートを適用する。ブロック化剤を用いないことで、フリーのイソシアネート基は、ポリエステル樹脂の末端の官能基や、基材であるポリエステルフィルムの表面の官能基と、速やかに反応することができる。これにより、熱融着ラミネート法などの、極めて短時間(1秒未満)の熱処理においても、イソシアネート架橋反応による高分子化が可能となる。そして、ポリエステル樹脂層の強度と加工性を大幅に向上させるとともに、基材フィルムとの強固な密着性を得ることができる。
また、イソシアネート架橋反応により、分子鎖の三次元ネットワークが形成され、白粉化現象の抑制への効果も期待できる。イソシアネート架橋反応による三次元ネットワークは、樹脂表面に拡散しようとするオリゴマーを捕捉する効果があると考えられる。その結果、レトルト処理時にオリゴマーが析出するのを抑制するものと考えられる。
適用するイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンイソシアネートなどが挙げられ、中でも、キシリレンイソシアネート化合物が、密着性、耐久性などの観点から、最も好適である。
ここで、ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基(イソシアネート基)のモル数は、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の1.0倍以上とすることが望ましい。1.0倍未満のモル数であると、ポリエステル樹脂の末端官能基との架橋反応、もしくは下層となるポリエステル樹脂層の表面官能基との架橋反応のいずれかが不十分となり、製缶加工時に、フィルムが剥離したり、素材が断裂してしまう場合がある。また、オリゴマー析出を抑制する効果も乏しい。一方、NCO基のモル数の上限としては、15.0倍以下とすることが望ましい。15.0倍を超える場合、ポリエステル樹脂層の加工性や耐水性が低下してしまう。そのため、製缶時に、ポリエステル樹脂層が破断して素材の断裂を招いたり、レトルト処理時等にフィルムが缶から剥離してしまうおそれがある。より好ましくは、5.0倍以上10.0倍以下の範囲であり、加工性・密着性などの諸性能を最適にバランスさせることができる。
最上層を形成するポリエステル樹脂層は、ガラス転移点が30℃以上が好ましく、樹脂層が非晶性樹脂からなる場合は軟化点が、結晶性樹脂からなる場合は融点が、各々130℃以上が好ましい。樹脂被覆金属板が保管・運搬される際、40℃程度の温度で長時間保持される可能性があるため、ガラス転移点は、30℃以上であることが必要である。また、食缶用のレトルト殺菌処理は、120℃以上の高温で1時間以上に及ぶことがあり、十分な耐熱性を有することが求められるため、樹脂層が非晶性樹脂の場合は、JIS K2425に定める軟化点が130℃以上とする必要があり、樹脂層が結晶性樹脂の場合は、JIS K7121に定める融点が130℃以上である必要があり、150℃以上であれば更に好適である。
前記最上層を形成するポリエステル樹脂層の組成としては、カルボン酸成分としてテレフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールよりなるポリエチレンテレフタレートに代表されるが、他のカルボン酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸等と、また他のグリコール成分としてジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等と成分を置き換えた共重合樹脂等も含まれる。酸成分として、テレフタル酸は、機械的強度、耐熱性、化学的耐性などから必須であるが、更に、イソフタル酸と共重合させることで、柔軟性、引き裂き強度などが向上する。イソフタル酸成分を、10.0mol%以上60.0mol%以下の範囲でテレフタル酸成分と共重合させることで、本提案に規定する熱物性の確保が容易になるとともに、深絞り成形性、加工後密着性を向上させるよう機能するため、好適である。グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパンジオールなどの柔軟性に優れる低Tg(Tg=ガラス転移温度)成分と、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの環構造を有する剛直な高Tg成分とを共重合させることが望ましい。本発明で規定する熱物性の確保が容易であるとともに、強度と柔軟性をバランスできるためである。好適な例としては、酸成分がイソフタル酸10〜30mol%、テレフタル酸70〜90mol%で構成され、グリコール成分がエチレングリコール30〜50mol%、プロパンジオール50〜70mol%で構成されるポリエステル樹脂を挙げることができる。
最上層を形成するポリエステル樹脂の質量平均分子量は、10000以上40000以下が好ましく、15000以上20000以下がさらに好ましい。このような範囲の質量平均分子量を有するポリエステル樹脂は、加工性と強度のバランスに優れ、深絞り成形性及び成形加工後の密着性が良好となる。分子量10000以上とすることで樹脂の強度がアップし、深絞り成形時に樹脂が断裂することなく変形に追随する。その後のレトルト処理においても、上層に形成したフィルムの熱収縮に対抗して、トリム端等からのデラミを抑制することができる。また、製缶後の耐衝撃性についても、欠陥の発生を抑制し、良好な性能を得ることができようになる。一方、分子量が40000超となると、樹脂の強度が過大となり、逆に柔軟性を損なうおそれがある。40000以下とすることで、強度と柔軟性のバランスを維持することができる。
前記最上層を形成するポリエステル樹脂層の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲が好ましい。0.5μm未満では、下層の樹脂層表面を均一に被覆することができず、本発明に規定する効果が期待できない場合がある。一方、3.0μm超すると、樹脂の凝集力が不十分となり、樹脂層の強度が低下してしまう場合がある。その結果、製缶加工時に、樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうこととなる。よって、樹脂層の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、1.0μm以上2.0μmの範囲である。
最上層の耐水性を更に向上させるためには、脂肪酸由来の疎水性ポリオール樹脂を5PHR以上20PHR以下の範囲で含むことが好ましい。疎水性ポリオール樹脂としては、ダイマー酸系ポリオール、ポリジエン系ポリオール、ポリイソプレン系ポリオール等が挙げられる。中でも、長鎖アルキル基の炭素数20〜50のものを適用することで、エステル結合部を水から遮蔽し、レトルト処理等の湿潤環境下におけるフィルム剥離を効果的に防止することができる。
疎水性ポリオール樹脂の添加量は5PHR以上20PHR以下であることが望ましい。5PHR未満では、十分な耐水性を得ることができない。一方、20PHR超となると、ポリエステル樹脂の表面自由エネルギーが過度に低下するため、ポリエステルフィルム及び金属板との密着性が阻害されてしまう場合がある。5PHR以上20PHR以下の範囲に規定することで、耐水性及び密着性の両立が可能となる。更に好ましくは、7PHR以上15PHR以下の範囲である。
また、疎水性を阻害しない範囲で、ポリエステルポリオールを添加することができる。この場合、疎水性ポリオールとして、全ポリオール質量の50%以上の範囲が好適である。ポリエステルポリオールとしては、1、6ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール成分と、マレイン酸、アジピン酸、オレイン酸、これらのダイマー酸等のエステルを用いることができる。特に好ましくは、オレイン酸のダイマー酸を用いたポリエステルポリオールである。
更に、最上層を形成するポリエステル樹脂層中に、染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の金属色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。カーボンブラックの添加量は、5PHR以上40PHR以下が望ましい。5PHR未満では黒色度が不十分であるとともに下地金属の色調が隠蔽できず、高級感のある意匠性を付与できない場合がある。一方、40PHR超としても、黒色度は変化しないため意匠性の改善効果は得られないばかりか、ポリエステル樹脂の構造が脆弱となるため、製缶加工時に樹脂層が容易に破壊してしまう場合がある。添加量を5PHR以上40PHR以下の範囲とすることで、意匠性と他の要求特性との両立が可能となる。
カーボンブラックの粒子径としては、5〜50nmの範囲のものを使用できるが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲が好適である。
黒色顔料以外にも、白色顔料を添加することで下地の金属光沢を隠蔽するとともに、印刷面を鮮映化することができ、良好な外観を得ることができる。添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、係る観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料を使用できる。着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。二酸化チタンの添加量は、対象樹脂層に対して、5〜30質量%であることが望ましい。5質量%以上であれば、充分な白色度が得られ、良好な意匠性が確保できる。一方、30質量%を超えて添加しても、白色度が飽和するため、経済上の理由で30質量%以下とすることが望ましい。より好ましくは、10〜20質量%の範囲である。なお、着色剤の添加量とは、着色剤を添加した樹脂層に対する割合である。
容器表面に光輝色を望む場合には、アゾ系顔料の使用も好適である。透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、容器成形後も光輝色のある外観が得られる。本発明で使用できるアゾ系顔料としては、カラーインデックス(C.I.登録の名称)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、139、180、181のうちの少なくとも1種類を挙げることができる。特に、色調(光輝色)の鮮映性、レトルト殺菌処理環境での耐ブリーディング性(顔料がフィルム表面に析出する現象に対する抑制能)などの観点から、分子量が大きく、PET樹脂への溶解性が乏しい顔料が望ましい。例えば、分子利用が700以上の、ベンズイミダゾロン構造を有するC.I.ピグメントイエロー180がより好ましく用いられる。
アゾ系顔料の添加量は、対象樹脂層に対して、10〜40PHRとすることが望ましい。添加量が10PHR以上であれば、発色に優れるので好適である。40PHR以下の方が、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
次に、金属板の上層に形成する密着層について説明する。本発明の密着層はポリエステル樹脂層からなり、本発明で使用するポリエステル樹脂層として、ポリエステルフィルムであることが望ましい。ポリエステルフィルムとしては、製缶工程での摩耗粉の発生を抑制する点から、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。すなわち、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であるポリエステルである。さらに好ましくは95質量%以上である。このような構成成分とすることで製缶工程での磨耗粉を完全に抑制できる。
一方、上記特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
一方、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
さらに、密着層となる該ポリエステル樹脂層は、粒子:面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであり、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であり、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10質量%含有することが好ましい。
本発明で用いるポリエステルフィルムにおける粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではない。
耐摩耗性、加工性等の点から面積換算平均粒子径は0.005〜5.0μmであることが好ましい。さらに好ましくは0.01〜3.0μmである。
また、耐摩耗性等の点から、下記式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.3以下である。
Figure 2009298011
粒子の長径/短径比としては、フィルムに成形したときの突起形状、耐摩耗性などの点から、1.0〜1.2であることが好ましい。
モース硬度としては、突起硬さ、耐摩耗性などの点から7未満であることが好ましい。
そして、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10質量%含有することが好ましい。
具体的には、無機粒子として、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー等が挙げられる。中でも、粒子表面の官能基とポリエステルとが反応してカルボン酸金属塩を生成するものが好ましく、具体的には、粒子1gに対し、10−5mol以上有するものが、ポリエステルとの親和性、耐摩耗性などの点で好ましく、さらには2×10−5mol以上であることが好ましい。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であれば、いかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などを使用することができるが、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
このような無機粒子および有機高分子粒子は、単独で用いても構わないが、2種以上を併用して用いることが好ましく、粒度分布、粒子強度など物性の異なる粒子を組み合わせることにより、さらに機能性の高いポリエステル樹脂を得ることができる。
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を添加しても構わない。
更に、ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムであると、耐熱性・味特性の観点から、好ましい。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよいが、延伸条件、熱処理条件を特定化し、フィルムの厚さ方向の屈折率が1.50以上であることが、ラミネート性、成形性を良好とする点で好ましい。さらに厚さ方向屈折率が1.51以上、特に1.52以上であると、ラミネート時に多少のばらつきがあっても成形性、耐衝撃性を両立させる上で面配向係数を特定の範囲に制御することが可能となるので好ましい。
また、二軸延伸ポリエステルフィルムは、製缶工程における絞り成形後に、200〜230℃程度の熱履歴を受けた後にネック部を加工する際の加工性、耐衝撃性の点で固体高分解能NMRによる構造解析におけるカルボニル部の緩和時間が270msec以上であることが好ましい。さらに好ましくは、280msec以上、特に好ましくは300msec以上である。本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を用いても構わない。
なお、本発明に規定する複層構造のポリエステル樹脂層の合計の厚みとしては、5μm以上100μm以下であることが好ましく、更には8μm以上50μm以下、特に10μm以上25μm以下の範囲であることが好ましい。
次に、金属板を容器成形した後に容器内面側になる樹脂層について説明する。
本発明の容器内面側となる樹脂層はポリエステル樹脂層からなり、本発明で使用するポリエステル樹脂層として、ポリエステルフィルムであることが望ましい。ポリエステルフィルムとしては、レトルト後の味特性を良好とする点から、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。すなわち、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの構成単位の95質量%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であるポリエステルである。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
一方、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
次に上記からなる容器用ポリエステル樹脂被覆金属板の製造方法について説明する。
本発明の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板は、まず、最上層となるポリエステル樹脂層を密着層となるポリエステルフィルムの表面に形成する。次いで、複層構造となったポリエステルフィルムを金属板表面にラミネートする。
最上層となるポリエステル樹脂層をフィルム表面に形成する方法について説明する。本発明で規定する樹脂組成を有するポリエステル樹脂を、有機溶剤中に溶解させコーティング液とする。次いで、前記コーティング液を、ポリエステルフィルム成膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥する。形成方法は特に限定しないが、前述した方法が、本発明の目的・用途に適合しており好ましい。
本発明に規定するポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
また、本発明で規定するブロックフリーイソシアネート化合物や、長鎖アルキル基を側鎖に有する疎水性ポリオール樹脂、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤は、有機溶剤中に分散させて使用するのが望ましい。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため、好適である。
上記により作製したコーティング液を、ポリエステルフィルム成膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥する。
コーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で20〜180秒間、特に80℃〜120℃で60〜120秒間が好ましい。乾燥後のポリエステル樹脂層の膜厚は、本発明に規定する0.5μm以上3.0μm以下の範囲が好ましい。
次に、複層構造となったポリエステルフィルムを金属板表面にラミネートする。
本発明では、例えば、金属板を加熱装置(例えば、図1中、金属帯加熱装置2)にて一定温度以上に昇温し、その表面にポリエステルフィルムを圧着ロール(以後、ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いることができる。このとき、コーティングした面を圧着ロール(以後ラミネートロールと称す)を用いて金属板に接触させ熱融着させることが必要である。以下、ラミネート条件の詳細について記す。
熱融着開始時の金属板の温度は、ポリエステルフィルムの融点+5℃〜+30℃の範囲とすることが望ましい。熱融着法によって、金属板−ポリエステルフィルムの層間密着性を確保するためには、密着界面における樹脂の熱流動が必要である。金属板の温度を、ポリエステルフィルムの融点+5℃以上の温度範囲とすることで、各層間における樹脂が熱流動し、界面における濡れが相互に良好となって、優れた密着性を得ることができる。一方、+30℃超としても、更なる密着性の改善効果が期待できないことと、フィルムの溶融が過度となり、ラミロール表面の型押しによる表面荒れ、圧着ロールへの溶融物の転写などの問題が生じる懸念がある。
ラミネート時にフィルムが受ける熱履歴としては、ポリエステルフィルムの融点以上で、相互に接している時間が5msec.以上であることが望ましい。界面における濡れが良好となるためである。なお、時間の増加とともに濡れ性は良好となるものの、40msec.超では、ほぼ一定の性能を呈すようになり、効果が認められなくなる。生産性の低下を招く懸念もあるため、40msec以下とすることが望ましい。よって、5〜40msecの範囲が好適である。
このようなラミネート条件を達成するためには、150mpm以上の高速操業に加え、熱融着中の冷却も必要である。例えば、図1中ラミネートロール3は内部水冷式であり、冷却水を通過させることで、フィルム及び密着樹脂層が過度に加熱されるのを抑制することができる。更に、冷却水の温度を変化させることで、ポリエステルフィルム及び密着樹脂層の熱履歴をコントロールできるため、好適である。
ラミネートロールの加圧は、面圧として9.8〜294N/cm2(1〜30kgf/cm)が望ましい。9.8N/cm2未満の場合、たとえ熱融着開始時の温度がフィルムの融点+5℃以上であって、十分な流動性が確保できていたとしても、金属表面に樹脂を押し広げる力が弱いため十分な被覆性が得られず、結果として密着性、耐食性などの性能に影響を及ぼす可能性がある。また、294N/cm2超となると、ラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。よって、ラミネートロールの加圧は、好適には9.8〜294N/cm2である。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、金属板の上層を形成する形成するポリエステルフィルムを製造する。ジオール成分とジカルボン酸成分を、表1および表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂を乾燥、溶融、押し出しし、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
Figure 2009298011
Figure 2009298011
次いで、最上層を形成するポリエステル樹脂層を上記にて作製したポリエステルフィルムの表面に形成する。
ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂とイソシアネート化合物などの各種添加剤を、表1および表2に示す質量比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。このコーティング液を前記にて得られたポリエステルフィルムの片側の面に、グラビアロールコーターで用いて塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層の膜厚を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。なお、表1は容器内面側となる樹脂層成分を示し、表2では容器外面側となる樹脂層の成分を示す。
金属板としては、クロムめっき鋼板を用いた。厚さ0.18mm、幅977mmの冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した鋼板を、脱脂、酸洗後、クロムめっきを行い製造した。クロムめっきは、CrO、F、SO 2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO、Fを含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m、15mg/mに調整した。
次いで、図1に示す金属帯のラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板1を金属帯加熱装置2で加熱し、ラミネートロール3で前記クロムめっき鋼帯1の一方の面に、容器成形後に容器内面側になるポリエステルフィルムとして、表1から作製したフィルム4aをラミネート(熱融着)し、他方の面に、容器成形後に容器外面側となるポリエステルフィルムとして、表2から作製したフィルム4bをラミネート(熱融着)した。その後、金属帯冷却装置5にて水冷を行い、ポリエステル樹脂被覆金属板を製造した。図2に、ポリエステル樹脂被覆金属板の断面構造を示す。
ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
以上の方法で得られた容器用ポリエステル樹脂被覆金属板及び金属板上に有する樹脂層の特性について、下記の(1)〜(6)の方法によりそれぞれ測定、評価した。
(1)粒径比、面積換算平均粒子径、数平均粒子径、粒子径の測定及び相対標準偏差σの計算
粒子をポリエステルに配合し、0.2μmの厚みの超薄片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で、少なくとも50個の粒子について観察し粒子径の測定を行なった。相対標準偏差σ、数平均粒子径の計算式は下記の通りである。
Figure 2009298011
(2)モース硬度の測定
ダイアモンド・砥石などで平滑な平面に仕上げた順位にある標準鉱石を用意する。各々の面を合わせ、その間に、粒子を挟んで擦り動かし、下位の基準鉱石にキズがつき、上位の基準鉱石にキズがつかない場合、その粒子の硬さは両基準鉱石の中間にあるものとした。
(3)成形性
上述の製法にて作製したポリエステル樹脂被覆金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比2.00で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で加工し、更に、絞り比2.50となるよう、再度、絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、樹脂層の損傷程度を目視観察した。
(評点について)
◎:成形後、樹脂層に損傷が認められない状態
○:成形後、樹脂層に損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
△:成形可能であるが、部分的に樹脂層の損傷が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(4)成形後密着性
上記(3)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(5)耐白粉化性
該樹脂被覆金属板の容器成形後に容器外面側となる面を対象とした。レトルト殺菌炉内に、該樹脂被覆金属板を配置し、125℃、90分間のレトルト処理をおこなった。処理後、該樹脂被覆金属板の表面に析出したオリゴマー量を、以下の方法により測定し、耐白粉化性を評価した。
4×4cmに切断した樹脂被覆金属板の表面を、メタノールを所定量含浸させた脱脂綿により拭き取り、この脱脂綿をアセトニトリル10mlで洗浄した。この洗浄液の一部をフィルターでろ過し、ろ液を逆相高速液体クロマトグラフィーによりエチレンテレフタレートの環状三量体を定量した。
(評点について)
○:環状三量体の析出量が、0.5μg/cm2未満(肉眼では、環状三量体の析出が確認できないレベル)
△:環状三量体の析出量が、0.5μg/cm2以上1.0μg/cm2未満(肉眼で、環状三量体の析出が確認できるレベル)
×:環状三量体の析出量が、1.0μg/cm2以上(環状三量体の析出が顕著で、表面が白粉化)
以上により得られた結果を表3および表4に示す。
Figure 2009298011
Figure 2009298011
表3、表4より、本発明例は、容器用素材に要求される成形性、成形後密着性、耐白粉化性について、良好な性能を有することがわかる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれかの特性が劣っている。
食品缶詰の缶胴及び蓋等を中心に、容器用途、包装用途として好適な素材である。
金属板のラミネート装置の要部を示す図である。(実施例1) 樹脂被覆金属板の断面構造を示す図である。(実施例1)
符号の説明
1 金属板(クロムめっき鋼板)
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置

Claims (7)

  1. ポリエステルを主成分とする樹脂層を金属板の両面に有する容器用樹脂被覆金属板であって、該金属板を容器成形した後に容器外面側になる樹脂層は、複層構造のポリエステル樹脂層からなり、該ポリエステル樹脂層の最上層を形成するポリエステル樹脂層は、ブロックフリーイソシアネート化合物およびアルキレンビス脂肪酸アミドを含有することを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
  2. 前記最上層を形成するポリエステル樹脂層の膜厚は、0.5μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
  3. 前記ブロックフリーイソシアネート化合物中に含まれるNCO基のモル数は、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層に含まれるOH基のモル数の1.0倍以上15.0倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
  4. 前記アルキレンビス脂肪酸アミドを、前記最上層を形成するポリエステル樹脂層に対し、1mass%〜10mass%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
  5. 前記アルキレンビス脂肪酸アミドが、エチレンビスステアリン酸アミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
  6. 前記最上層を形成するポリエステル樹脂層中に、着色剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
  7. 金属板の上層に形成される密着層はポリエステルフィルムから形成され、該ポリエステルフィルムは、ポリエステルの構成単位の93質量%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であり、かつ、面積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmで、式(1)に示される相対標準偏差が0.5以下で、粒子の長径/短径比が1.0〜1.2で、モース硬度が7未満である粒子を0.005〜10質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
    Figure 2009298011
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