以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<光学ヘッド>
本発明を適用した適用した記録再生装置を構成する光学ヘッドの一例を図1に示す。この光学ヘッド1は、相変化型の光ディスク2に対して記録再生を行う際に使用される光学ヘッドである。なお、ここでは、相変化型の光ディスク2に対して記録再生を行う光学ヘッド1を例に挙げるが、本発明は、情報信号が記録される記録層上に光透過層を有する情報記録媒体用の光学ヘッドに対して広く適用可能であり、記録及び/又は再生の対象となる情報記録媒体は、再生専用光ディスク、光磁気ディスク又は光カード等であってもよい。
この光学ヘッド1によって記録再生がなされる光ディスク2は、厚さdが例えば約1.2mm又は約0.6mmとされた基板3の上に、相変化によって情報信号を記録する記録層が形成されるとともに、この記録層上に、厚さtが例えば約0.1mmとされた光透過層4が形成されてなる。ここで、光透過層4は、記録層を保護する保護層となるものである。そして、この光ディスク2は、基板3の側からではなく、基板3よりも遥かに膜厚が薄い光透過層4の側から光を入射させて、記録再生を行うようになっている。
このように、記録層に至るまでの厚さが薄い方の側から光を入射するようにすることで、収差の発生を抑制することができ、従来のCDやDVD以上の高記録密度化及び大容量化を図ることができる。ただし、本発明は、基板側から光を入射させて記録及び/又は再生を行う情報記録媒体を用いる場合にも適用可能である。
そして、この光学ヘッド1は、図1に示すように、光源10と、回折格子11と、偏光ビームスプリッタ12と、コリメータレンズ13と、コリメータレンズ用アクチュエータ14と、1/4波長板15と、対物レンズ16と、対物レンズ用2軸アクチュエータ17と、マルチレンズ18と、光検出器19とを備えている。
上記光源10は、記録再生時に光ディスク2に向けて光を出射するものであり、例えば、波長λが650nmの直線偏光レーザ光を出射する半導体レーザからなる。この光源10は、光ディスク2から情報信号を再生する際は、一定の出力のレーザ光を出射し、光ディスク2に情報信号を記録する際は、記録する信号に応じて、出射するレーザ光の強度を変調する。
なお、本発明において、光源10から出射されるレーザ光の波長λは、特に限定されるものではない。例えば、650nmよりも短波長のレーザ光を出射する半導体レーザが実用化された場合には、より短波長のものを用いたほうが、更なる高記録密度化及び大容量化を図る上で好適である。
そして、光源10から出射されたレーザ光は、先ず、回折格子11に入射し、この回折格子11によって回折される。この回折格子11は、いわゆる3スポット法によるトラッキングサーボを可能とするために、レーザ光を少なくとも3つに分割するためのものである。
そして、回折格子11によって回折されてなる0次光及び±1次光(以下、これらをまとめて「入射レーザ光」と称する。)は、偏光ビームスプリッタ12を透過して、コリメータレンズ13に入射する。ここで、コリメータレンズ13は、例えば、2枚の球面レンズ13a,13bを貼り合わせてなる。
コリメータレンズ13に入射した入射レーザ光は、光ディスク2の光透過層4の厚さtが規定値通りの場合には、コリメータレンズ13によって平行光とされる。換言すれば、コリメータレンズ13は、所定の屈折力を有する光学素子であり、光ディスク2の光透過層4の厚さtが規定値通りの場合には入射レーザ光を平行光にするように配置されている。
なお、このコリメータレンズ13は、コリメータレンズ用アクチュエータ14に搭載されており、このコリメータレンズ用アクチュエータ14によって、入射レーザ光の光軸に沿って前後に移動可能とされている。そして、このコリメータレンズ13は、光ディスク2の光透過層4の厚さtが規定値から外れている場合には、当該光透過層4の厚み誤差に起因する球面収差を補正するように、コリメータレンズ用アクチュエータ14によって移動操作される。すなわち、光ディスク2の光透過層4の厚さtが規定値から外れている場合、入射レーザ光は、光透過層4の厚み誤差に起因する球面収差を補正するように、コリメータレンズ13によって発散光或いは収束光とされる。
そして、コリメータレンズ13から出射された入射レーザ光は、1/4波長板15を介して、対物レンズ16に入射する。ここで、入射レーザ光は、1/4波長板15を透過する際に円偏光状態となされ、この円偏光光束が、対物レンズ16に入射する。
対物レンズ16は、入射レーザ光を、光ディスク2の記録層上に集光するためのものである。すなわち、1/4波長板15によって円偏光状態とされた入射レーザ光は、対物レンズ16によって集光されて、光ディスク2の光透過層4を介して、光ディスク2の記録層に入射する。
なお、この対物レンズ16は、1枚のレンズからなるものであってもよいが、図1に示すように、2枚のレンズ16a,16bを組み合わせて構成することが好ましい。対物レンズ16を2枚のレンズ16a,16bによって構成した場合には、開口数NAを大きくしても、各レンズ面の曲率をあまりきつくする必要がなく作製が容易である。したがって、対物レンズ16を2枚のレンズ16a,16bによって構成することにより、開口数NAをより大きくすることが容易に可能となり、更なる高記録密度化及び大容量化を実現できる。
なお、対物レンズ16は、3枚以上のレンズから構成するようにしてもよい。3枚以上のレンズから構成することにより、各レンズ面の曲率をより緩やかなものとすることができる。しかしながら、レンズの数が多すぎると、各レンズを精度良く組み合わせることが難しくなるので、実際には2枚のレンズで構成することが好ましい。
上述のように対物レンズ16によって集光され光ディスク2の記録層に入射した入射レーザ光は、記録層で反射されて戻り光となる。この戻り光は、元の光路を辿って対物レンズ16を透過した後、1/4波長板15に入射する。そして、この戻り光は、1/4波長板15を透過することにより、往きの偏光方向に対して90度回転された直線偏光となり、その後、この戻り光は、コリメータレンズ13によって収束光とされた後、偏光ビームスプリッタ12に入射し、この偏光ビームスプリッタ12によって反射される。
偏光ビームスプリッタ12によって反射された戻り光は、マルチレンズ18を介して光検出器19に入射し、当該光検出器19によって検出される。ここで、マルチレンズ18は、光入射面が円筒面となされ、光出射面が凹面となされたレンズである。このマルチレンズ18は、戻り光に対して、いわゆる非点収差法によるフォーカスサーボを可能とするための非点収差を与えるためのものである。
マルチレンズ18によって非点収差が与えられた戻り光を検出する光検出器19は、例えば6つのフォトダイオードを備えてなる。そして、光検出器19は、各フォトダイオードに入射した戻り光の光強度に応じた電気信号をそれぞれ出力するとともに、それらの電気信号に対して所定の演算処理を施して、フォーカスサーボ信号やトラッキングサーボ信号等の信号を生成し出力する。
具体的には、光検出器19は、マルチレンズ18によって非点収差が与えられた戻り光を検出して、いわゆる非点収差法によってフォーカスサーボ信号を生成し出力する。そして、この光学ヘッド1は、このフォーカスサーボ信号に基づいて、対物レンズ16が搭載された対物レンズ用2軸アクチュエータ17を駆動することで、フォーカスサーボを行う。
また、光検出器19は、回折格子11によって回折されてなる0次光及び±1次光について、それらの戻り光をそれぞれ検出して、いわゆる3ビーム法によってトラッキングサーボ信号を生成し出力する。そして、この光学ヘッド1は、このトラッキングサーボ信号に基づいて、対物レンズ16が搭載された対物レンズ用2軸アクチュエータ17を駆動することで、トラッキングサーボを行う。
更に、光検出器19は、光ディスク2から情報信号を再生する際に、各フォトダイオードに入射した戻り光の光強度に応じた電気信号に対して所定の演算処理を施して、光ディスク2からの再生信号を生成し出力する。
なお、この光学ヘッド1では、対物レンズ16を対物レンズ用2軸アクチュエータ17に搭載し、この対物レンズ用2軸アクチュエータ17により、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うようにしているが、本発明に係る光学ヘッドでは、例えば、対物レンズをアクチュエータによって移動操作することにより行うサーボをフォーカスサーボだけにして、トラッキングサーボについては、光学ヘッド全体を動かすことにより行うようにしてもよい。
上記光学ヘッド1を用いて光ディスク2の記録層上に光を集光して記録再生を行うとき、光ディスク2の光透過層4の厚み誤差によって発生する主な収差は、デフォーカスによるものと、球面収差によるものとである。
デフォーカスについては、フォーカスサーボにより補正される。すなわち、光検出器19からのフォーカスサーボ信号に基づいて、対物レンズ用2軸アクチュエータ17により対物レンズ16を光軸方向に沿って前後に動かすことで、デフォーカスが補正され、記録層上に焦点が合わされる。なお、このようなデフォーカスについての補正は、従来の光学ヘッドにおいても行われていることである。
一方、球面収差については、対物レンズ16を光軸方向に沿って前後に移動しても、補正することができない。この球面収差は、例えば、光透過層4の厚さtに応じて対物レンズ16を交換したり、或いは、光透過層4の厚さtに応じて対物レンズ16を構成する光学媒質の屈折率を変化させたりすれば、補正することができる。しかしながら、これらの手法は、あまり現実的ではない。
そこで、本発明を適用した光学ヘッド1では、光透過層4の厚さtに応じて、コリメータレンズ用アクチュエータ14により、コリメータレンズ13を光軸方向に沿って前後に動かすことで、光透過層4の厚み誤差に起因する球面収差を補正するようにしている。すなわち、この光学ヘッド1において、コリメータレンズ用アクチュエータ14は、光ディスク2の光透過層4の厚さtに応じて、球面収差を打ち消すようにコリメータレンズ13を移動させる移動手段となっている。
つぎに、光透過層4の厚み誤差により発生する球面収差、並びにその補正の方法について詳細に説明する。
光透過層4に厚み誤差があると、上述したように、式(1)で表されるような3次の球面収差W40が発生する。なお、以下に挙げる式において、Δtは光透過層4の厚み誤差、nは光透過層4の屈折率、NAは対物レンズ16の開口数である。
W40={Δt(n2−1)/(8n3)}NA4 ・・・(1)
この式(1)は、縦収差量を対物レンズの開口数NAでテイラー展開し、波面収差に換算したものである。すなわち、開口数NAを正弦関数で表し展開すると下記式(3)で表され、この式(3)の右辺第2項より求めた波面収差が、上記式(1)で表される3次の球面収差である。
sin(θ)=x−x3/6+x5/120−x7/5040+ο(x)8 ・・・(3)
しかしながら、上記式(3)からも分かるように、実際には更に高次の収差が存在する。そして、上記式(3)の右辺第3項より求めた波面収差量は、5次の球面収差W60と呼ばれる量であり、下記式(4)で表される。
W60={Δt(n2−1)(n2+3)/48n5}NA6 ・・・(4)
そして、光透過層4の厚み誤差によって発生する3次の球面収差W40と5次の球面収差W60との合計は、上記式(1)と上記式(4)の合計であり、下記式(5)で表される。
W≒W40[1+{(n2+3)/6n2}NA2] ・・・(5)
なお、縦収差量は、上記式(5)を開口数NAで微分することにより求まり、下記式(6)で表される。
δS={Δt(n2−1)/2n3}NA3[1+{(n2+3)/4n2}NA2]
・・・(6)
上記式(1)で表される3次の球面収差W40は、各光学面で発生する収差の和で表すことができる。したがって、3次の球面収差W40だけならば、光源10から光透過層4までのどこかに反対符号の球面収差を発生する光学素子を配置することで補正することが可能である。しかしながら、上記式(5)から分かるように、光透過層4の屈折率nが小さいほど、また対物レンズ16の開口数NAが大きいほど、光透過層4の厚み誤差Δtによって発生する球面収差において、5次の球面収差W60の寄与が大きくなり、3次の球面収差W40を補正するだけでは済まなくなってしまう。
ここで、3次の球面収差W40は、光透過層4の屈折率nが31/2(≒1.732)のときに最大となり、光透過層4の屈折率nがこれよりも小さくなると急激に減少する。そして、通常、光透過層4の屈折率nは1.5程度である。したがって、光透過層4の屈折率nが小さくなることにより、5次の球面収差W60の寄与が大きくなったとしても、この5次の球面収差W60は、全体の収差量の減少に隠れて、あまり問題とはならない。
一方、上述したように、対物レンズ16の開口数NAが大きくなった場合にも、5次の球面収差W60の寄与が大きくなるが、このときの5次の球面収差W60の増大は無視できない。例えば、開口数NAが大きくなり、球面収差全体における5次の球面収差W60の割合が最大となった場合には、5次の球面収差W60が球面収差全体の40%程度まで占めることがあり得る。したがって、特に、開口数NAの大きな系では、5次の球面収差W60の影響を十分に考慮する必要がある。
具体的には、例えば、開口数NA=0.6、光透過層4の屈折率n=1.5のとき、光透過層4の厚み誤差Δtが30μmであったとする。このとき、当該厚み誤差Δtに起因する縦収差量を、5次の球面収差W60を考慮した上記式(6)より求めると、約1.452μmとなる。一方、開口数NA=0.85、光透過層4の屈折率n=1.5のとき、光透過層4の厚み誤差Δtが30μmであったとする。このとき、当該厚み誤差Δtに起因する縦収差量を、同様に上記式(6)より求めると、約4.850μmとなる。すなわち、光透過層4の厚み公差を±0.03mmとしたとき、開口数NAが0.6ならば、光透過層4の厚み誤差Δtに起因する縦収差量は1.452μm以下となるが、開口数NAを0.85とすると、特に5次の球面収差W60が大きくなり、当該縦収差量が最大で4.850μmにもなってしまう。
さて、以上のような球面収差を補正する場合には、上記式(6)で表される球面収差と同じ大きさで逆符号の収差を発生させればよい。一番単純な方法としては、光源10とコリメータレンズ13との間に、平行平板を入れて補正する方法が考えられる。この場合は、下記式(7)及び式(8)が成り立てば、5次の球面収差W60までの補正が可能である。なお、下記式(7)及び式(8)において、NA0はコリメータレンズ13の光入射側の開口数、n0は挿入する平行平板の屈折率、n1は光透過層4の屈折率、NA1は対物レンズ16の開口数である。
{(n1 2+3)/n1 2}NA1 2={(n0 2+3)/n0 2}NA0 2 ・・・(7)
{(n1 2−1)/n1 3}NA1 4={(n0 2−1)/n0 3}NA0 4 ・・・(8)
上記式(7)及び(8)が成立するようにするためには、実際に実現可能な屈折率を考慮すると、対物レンズ16の開口数NA1と、コリメータレンズ13の光入射側の開口数NA0とを同じ程度の値にすることが必要であり、具体的には、少なくとNA1/NA0≦2を満たすようにする必要がある。しかしながら、対物レンズ16の開口数NA1を大きくした場合に、それに合わせて、コリメータレンズ13の光入射側の開口数NA0を大きくすることは、あまり現実的ではない。したがって、光源10とコリメータレンズ13との間に平行平板を入れる方法では、球面収差をある程度補正することは可能であっても、完全に補正することはできない。
更に、平行平板以外の光学素子を用いたとしても、単に光学素子を光軸上に配するだけでは、全ての球面収差を完全に補正することは困難である。なぜなら、上記式(1)及び式(4)からも分かるように、3次の球面収差W40の発生量と、5次の球面収差W60の発生量とが、開口数NAによって異なるからである。したがって、現実的には、光透過層4の厚み公差等を考慮して、収差が許容範囲内に納まるように、バランス良く補正を行うことが望まれる。
そこで、本発明を適用した上記光学ヘッド1では、コリメータレンズ用アクチュエータ14によってコリメータレンズ13を光軸方向に沿って移動操作することで、バランスの良い補正を実現している。コリメータレンズ13を前後に動かすことで、対物レンズ16の光入射側の開口数NAが変化し、これにより、球面収差を補正することができる。
なお、上記光学ヘッド1において、コリメータレンズ13の射出瞳径は、対物レンズ16の入射瞳径よりも十分に大きくしておくことが好ましい。これにより、対物レンズ16の光入射側の開口数NAが変化したとしても、対物レンズ16の光出射側の開口数NAはほぼ一定に保持され、安定な記録再生が可能となる。
ところで、上記光学ヘッド1において、コリメータレンズ13の光入射側の開口数NAは、主に光源10から出射された入射レーザ光とのカップリング効率を上げるという観点から設定され、具体的には、0.3程度以下に設定することが好ましい。一方、対物レンズ16の光出射側の開口数NAは、記録層上に集光される光の小径化を図るために大きい方が好ましく、具体的には、DVDを越えるような高記録密度化及び大容量化を図ろうとする場合、この開口数NAを0.65程度以上に設定することが好ましい。
このように、上記光学ヘッド1では、コリメータレンズ13の光入射側の開口数NAを、対物レンズ16の光出射側の開口数NAに比較してかなり小さく設定することが好ましく、このように設定した場合、コリメータレンズ13の光軸方向の移動により発生する球面収差は、主に3次の球面収差W40である。したがって、コリメータレンズ13の移動によって、光透過層4の厚み誤差Δtに起因する球面収差の全てを完全に除去することはできない。
そこで、コリメータレンズ13を移動操作する際は、収差の二乗平均値が最小となるように、コリメータレンズ13の移動先の位置を設定する。具体的には、例えば、主光線と周辺光線の光路差を光線追跡法により計算し、それらのずれ(すなわち波面収差)の二乗平均が最小となるようなコリメータレンズ位置を予め算出しておく。そして、光ディスク2に対して記録再生を行う際に、光透過層4の厚さtを検出し、その誤差Δtに応じて、予め算出しておいた位置にコリメータレンズ用アクチュエータ14によってコリメータレンズ13を移動させる。
なお、上記光学ヘッド1では、コリメータレンズ13の焦点距離に比べて、コリメータレンズ13の移動距離が十分に小さくなるようにし、コリメータレンズ13の移動により発生する波面収差Wrmsが0.1λ程度となるようにすることが好ましい。このようにした場合には、コリメータレンズ13の移動量と、当該コリメータレンズ13の移動によって生じる球面収差の発生量とが、ほぼ線形比例するようになるので、コリメータレンズ用アクチュエータ14の構成並びにその駆動方法等を簡略なものとすることができる。換言すれば、コリメータレンズ13の焦点距離に比べて、コリメータレンズ13の移動距離が十分に小さくなるようにすることは、サーボ機構を構成する上で非常に有利である。
なお、上記光学ヘッド1では、コリメータレンズ13を移動操作することで、光透過層4の厚み誤差Δtに起因する球面収差を補正するようにしたが、光透過層4の厚み誤差Δtに起因する球面収差の補正に用いる光学素子は、コリメータレンズでなくてもよい。
すなわち、本発明において、光透過層4の厚み誤差Δtに起因する球面収差の補正に用いる光学素子は、光源10と対物レンズ16との間に配されていればよく、例えば、光源10とコリメータレンズ13との間にレンズを配置して、このレンズを光軸に沿って前後に移動操作するようにしても良いし、また、コリメータレンズ13と対物レンズ16との間にレンズを配置して、このレンズを光軸に沿って前後に移動操作するようにしても良い。或いは、コリメータレンズ13を用いずに、光源10から出射された光が、発散光のまま対物レンズ16に入射するようにしてもよく、この場合には、対物レンズ16に入射する発散光の光路中にレンズを配置して、このレンズを光軸に沿って前後に移動操作するようにすればよい。
ただし、上記光学ヘッド1のように、コリメータレンズ13によって球面収差を補正するようにした場合、上記光透過層4の厚さtが規定値通りであれば、対物レンズ16に入射する入射レーザ光が平行光となるので、対物レンズ16を取り扱いが容易な無限系のレンズとして扱うことができる。したがって、実際には、上記光学ヘッド1のように、コリメータレンズ13を球面収差補正用の光学素子として用いることが好ましい。
また、以上の説明では、光透過層4の厚み誤差Δtに起因する球面収差を補正する場合を例に挙げたが、更に、温度変化等の環境の変化や、光ディスク2の径方向における傾きや、光透過層4の屈折率nのばらつきや、光学ヘッド1を構成する光学部材のアライメントミスなどを検出し、それらによって生じる収差を補正するように、収差の補正のために配された光学素子を動かすようにしてもよい。
ところで、上記光学ヘッド1において、対物レンズ16の開口数NAは、更なる高記録密度化を図るために、DVDの場合よりも更に大きくすることが望まれており、上述したように、開口数NAを0.65以上とすることが望ましい。
しかしながら、対物レンズ16の開口数NAを大きくすると、上述したような球面収差の問題ほかに、コマ収差が大きくなるという問題も生じる。コマ収差は、例えば、光ディスク2の径方向における傾き(以下、ラジアルスキューと称する。)によって発生するものであり、対物レンズ16の開口数NAの3乗に比例して大きくなる。したがって、開口数NAが大きくなるに従い、コマ収差を抑えることが、より重要となってくる。
コマ収差を抑えるためには、光透過層4の厚さtを薄くすることが効果的である。例えば、DVDにおいてラジアルスキューの公差は±0.4°とされており、それと同じ公差を維持するには、光透過層4の厚さtを下記式(9)を満たすように設定すればよい。
t≦0.1296/NA3 ・・・(9)
そして、例えば、NA≧0.65のとき、上記式(9)を満たすのは、t≦0.47mmのときである。したがって、例えば、上記光学ヘッド1において、対物レンズ16の開口数NAを0.65以上とする場合には、光透過層4の厚さtを0.47mm以下とすることが望ましい。これにより、対物レンズ16の開口数NAを0.65以上として高記録密度化を図ったとしても、光透過層4の厚さtの公差を従来のDVDと同程度に確保することができる。
また、上記式(9)から分かるように、対物レンズ16の開口数NAを更に大きくして、NA≧0.7としたときには、t≦0.37mmとすることが望ましく、また、対物レンズ16の開口数NAを更に大きくして、NA≧0.85としたときには、t≦0.21mmとすることが望ましい。
一般に、ラジアルスキューの公差を厳しくすることは困難であり、たとえ実現したとしても、大幅なコストアップを招いてしまう。しかしながら、上述のように、開口数NAの増大に合わせて光透過層4の厚さtを十分に薄くすることで、対物レンズ16の開口数NAを大きくして高記録密度化を図ったとしてもラジアルスキューの公差をDVDと同程度に確保することができる。したがって、上述のように、開口数NAの増大に合わせて光透過層4の厚さtを十分に薄くすることにより、ラジアルスキューの公差を厳しくすることなく(すなわち大幅なコストアップを招くことなく)、更なる高記録密度化を実現することができる。
<記録及び/又は再生装置>
つぎに、本発明を適用した記録及び/又は再生装置の実施の形態について、図2に示すように、上述した光学ヘッド1を備え、上述した光ディスク2に対して記録再生を行う記録再生装置30を例に挙げて説明する。
なお、ここでは、相変化型の光ディスク2に対して記録再生を行う記録再生装置30を例に挙げるが、本発明は、光学ヘッドを備えた記録及び/又は再生装置に対して広く適用可能であり、記録及び/又は再生の対象となる情報記録媒体は、再生専用光ディスク、光磁気ディスク又は光カード等であってもよい。
この記録再生装置30は、光ディスク2を回転駆動させるスピンドルモータ31と、情報信号の記録再生を行う際に使用される上記光学ヘッド1と、光学ヘッド1を動かすための送りモータ32と、所定の変復調処理を行う変復調回路33と、光学ヘッド1のサーボ制御等を行うサーボ制御回路34と、システム全体の制御を行うシステムコントローラ35とを備えている。
スピンドルモータ31は、サーボ制御回路34により駆動制御され、所定の回転数で回転駆動される。すなわち、記録再生の対象となる光ディスク2は、スピンドルモータ31にチャッキングされ、サーボ制御回路34により駆動制御されるスピンドルモータ31によって、所定の回転数で回転駆動される。
光学ヘッド1は、情報信号の記録再生を行う際、上述したように、回転駆動される光ディスク2に対してレーザ光を照射し、その戻り光を検出する。この光学ヘッド1は、変復調回路33に接続されている。そして、情報信号の記録を行う際、外部回路36から入力され変復調回路33によって所定の変調処理が施された信号が光学ヘッド1に供給され、光学ヘッド1は、変復調回路33から供給された信号に基づいて、光ディスク2に対して、光強度変調が施されたレーザ光を照射する。また、情報信号の再生を行う際、光学ヘッド1は、回転駆動される光ディスク2に対して、一定出力のレーザ光を照射し、その戻り光から再生信号を生成し、当該再生信号を変復調回路33に供給する。
また、この光学ヘッド1は、サーボ制御回路34にも接続されている。そして、情報信号の記録再生時に、回転駆動される光ディスク2によって反射されて戻ってきた戻り光から、上述したように、フォーカスサーボ信号及びトラッキングサーボ信号を生成し、それらのサーボ信号をサーボ制御回路34に供給する。
変復調回路33は、システムコントローラ35及び外部回路36に接続されている。そして、この変復調回路33は、情報信号を光ディスク2に記録する際は、システムコントローラ35による制御のもとで、光ディスク2に記録する信号を外部回路36から受け取り、当該信号に対して所定の変調処理を施す。そして、変復調回路33によって変調された信号は、光学ヘッド1に供給される。また、この変復調回路33は、情報信号を光ディスク2から再生する際は、システムコントローラ35による制御のもとで、光ディスク2から再生された再生信号を光学ヘッド1から受け取り、当該再生信号に対して所定の復調処理を施す。そして、変復調回路33によって復調された信号は、変復調回路33から外部回路36へ出力される。
送りモータ32は、情報信号の記録再生を行う際、光学ヘッド1を光ディスク2の径方向の所定の位置に送るためのものであり、サーボ制御回路34からの制御信号に基づいて駆動される。すなわち、この送りモータ32は、サーボ制御回路34に接続されており、サーボ制御回路34により制御される。
サーボ制御回路34は、システムコントローラ35による制御のもとで、光学ヘッド1が光ディスク2に対向する所定の位置に送られるように、送りモータ32を制御する。また、サーボ制御回路34は、スピンドルモータ31にも接続されており、システムコントローラ35による制御のもとで、スピンドルモータ31の動作を制御する。すなわち、サーボ制御回路34は、情報信号の記録再生時に、光ディスク2が所定の回転数で回転駆動されるように、スピンドルモータ31を制御する。また、サーボ制御回路34は、光学ヘッド1にも接続されており、情報信号の記録再生時に、光学ヘッド1からサーボ信号を受け取り、当該サーボ信号に基づいて、光学ヘッド1に搭載された対物レンズ用2軸アクチュエータ17によるフォーカスサーボ及びトラッキングサーボの制御を行う。
更に、本発明を適用した記録再生装置30において、サーボ制御回路34は、フォーカスサーボ信号に基づいて光ディスク2の光透過層4の厚さtを検出する厚さ検出手段としても機能する。以下、サーボ制御回路34による光透過層4の厚さ検出方法について説明する。
光学ヘッド1の光検出器19からサーボ制御回路34に送られるフォーカスサーボ信号には、フォーカス引き込み信号と、フォーカスエラー信号とがある。フォーカス引き込み信号は、光ディスク2によって反射された戻り光全体の光量を示す信号であり、対物レンズ16をフォーカス位置近傍に移動させるために使用される。一方、フォーカスエラー信号は、フォーカス引き込み信号に基づいて対物レンズ16がフォーカス位置近傍に移動された後、対物レンズ16をジャストフォーカス位置に保持するための信号である。
なお、上記記録再生装置30では、非点収差法によりフォーカスエラー信号を得ている。非点収差法は、戻り光の集束光路中に、ガラス材等からなる平行平板や円筒レンズ等の光学素子を配し、意図的に大きな非点収差を発生させ、最小錯乱円前後のビーム形状を検出し、フォーカスエラー信号を得る方法である。
ここで、非点収差法について、図3に示すように、非点収差を発生させる光学素子として平行平板20を用いた場合を例に挙げて説明する。なお、図1に示した光学ヘッド1では、非点収差を発生させる光学素子としてマルチレンズ18を用いているが、ここでは、簡単のために、非点収差を発生させる光学素子として平行平板20を用いた場合を例に挙げる。
図3に示すように、非点収差を発生させる光学素子として平行平板20を用いた場合の非点収差量δyは、光学戻りの開口の角度をθとし、有限光中に配置された平行平板20の屈折率をn、その厚さをtとしたとき、下記式(10)のように表される。
δy={(n2−1)sin2θ×t}/(n2−sin2θ)3/2 ・・・(10)
そして、非点収差法によりフォーカスエラー信号を検出する際は、このように非点収差が与えられた光を、光検出器によって検出する。図4乃至図6に、非点収差法によりフォーカスエラー信号を検出する光検出器の受光部を示す。この受光部21は、矩形状とされ、互いに直交する2本の分割線によって4分割されている。レーザ光が光ディスクの記録層上にジャストフォーカスしている場合に、受光部21上のビームスポット22が最小錯乱円となるように光検出器をセットすると、非合焦状態では、受光部21上のビームスポット22が楕円形状に変わる。したがって、受光部21の4分割された領域をそれぞれA,B,C,Dとすると、フォーカスエラー信号FEは、受光部21が受けた光量を電流−電圧変換増幅器によって増幅演算することにより、FE=(A+C)−(B+D)の電圧信号として得られる。
例えば、レーザ光が光ディスクの記録層上に合焦している場合、図4に示すように、受光部21上のビームスポット22の形状は略円形状である。そして、受光部21の各領域における受光光量は(A+C)=(B+D)となり、FE=0となる。
また、光ディスクの記録層がレーザ光の合焦点よりも近い位置にある場合、図5に示すように、受光部21上のビームスポット22の形状は楕円形となる。そして、受光部の各領域における受光光量は(A+C)<(B+D)となり、FE<0となる。
また、光ディスクの記録層がレーザ光の合焦点よりも遠い位置にある場合、図6に示すように、受光部21上のビームスポット22の形状は楕円形となる。そして、受光部21の各領域における受光光量は(A+C)>(B+D)となり、FE>0となる。
このようにして得られるフォーカスエラー信号は、横軸にフォーカスずれ量をとり、縦軸に当該フォーカスエラー信号の出力をとると、一般に図7に示すようなS字状の曲線となる。そして、このS字曲線の中心に位置するゼロ点がジャストフォーカス点となる。なお、このS字曲線の一方のピークPaから他方のピークPbまでの範囲Waは、一般にフォーカス引き込み範囲と称される。
そして、上記光学ヘッド1において、フォーカスサーボを行うときには、先ず、フォーカス引き込み信号を検出しながら、対物レンズ用2軸アクチュエータ17を駆動して、対物レンズ16を光軸に沿って前後に移動させる。そして、フォーカス引き込み信号に基づいて、対物レンズ16の焦点が記録層の近傍に位置するようにする。そして、対物レンズ16の焦点が記録層の近傍に位置し、対物レンズ16の位置がフォーカス引き込み範囲に入ったら、その後は、フォーカスエラー信号に基づいて、常にジャストフォーカス位置となるように(すなわち、フォーカスエラー信号が常にゼロ点となるように)、対物レンズ用2軸アクチュエータ17によって対物レンズ16を光軸に沿って前後に移動させる。これにより、常に記録層に焦点が合った状態となる。
以上がフォーカスサーボの原理である。そして、従来の記録再生装置では、以上のようなフォーカスサーボを行うために、記録層によって反射された戻り光によるフォーカスエラー信号を用いている。しかしながら、入射レーザ光は、記録層で反射されるだけでなく、光ディスク2の表面、すなわち光透過層4の表面でも、若干反射する。そして、フォーカスエラー信号には、光透過層4の表面で反射された戻り光によっても、図7に示したようなS字曲線が現れる。なお、以下の説明では、フォーカスエラー信号に現れるS字曲線のうち、光ディスク2の光透過層4の表面で反射された戻り光によるものを第1のS字曲線と称し、光ディスク2の記録層で反射された戻り光によるものを第2のS字曲線と称する。
そして、本発明を適用した記録再生装置30では、このような第1のS字曲線と第2のS字曲線とが現れるフォーカスエラー信号に基づいて、光透過層4の厚さtを検出する。すなわち、本発明を適用した記録再生装置30では、記録再生を行う前に、対物レンズ16の焦点位置が光透過層4の表面から記録層に至るまで、対物レンズ用2軸アクチュエータ17によって対物レンズ16を光軸に沿って前後に動かし、このときの対物レンズ16の移動速度とフォーカスエラー信号に現れる第1及び第2のS字曲線とに基づいて、光透過層4の厚さtを検出する。
具体例を図8を用いて説明する。なお、図8は、対物レンズ16を光軸に沿って光ディスク2に近づける方向に移動させたときのフォーカスエラー信号の出力を示しており、横軸は時間、縦軸はフォーカスエラー信号の出力を示している。
また、図8において、W1は、対物レンズ16が第1のS字曲線におけるフォーカス引き込み範囲を通過するのに要した時間である。すなわち、W1は、対物レンズ16の移動によって、フォーカスエラー信号が第1のS字曲線における最大値から最小値に至るまでに要した時間である。また、P1は、光ディスク2の光透過層4の表面に焦点が合っているポイント、すなわち光透過層4の表面に対するジャストフォーカス点である。
また、図8において、W2は、対物レンズ16が第2のS字曲線におけるフォーカス引き込み範囲を通過するのに要した時間である。すなわち、W2は、対物レンズ16の移動によって、フォーカスエラー信号が第2のS字曲線における最大値から最小値に至るまでに要した時間である。また、P2は、光ディスク2の記録層に焦点が合っているポイント、すなわち記録層に対するジャストフォーカス点である。
また、図8において、W3は、光ディスク2の光透過層4の表面に焦点が合っているポイントP1から、光ディスク2の記録層に焦点が合っているポイントP2に至るまでに要した時間である。
このとき、フォーカス引き込み範囲の長さをAとすると、光透過層4の厚さtは、下記式(11)で表される。なお、フォーカス引き込み範囲の長さAは、現在の多くの光学ヘッドでは、20μm程度に設定されている。
t=W3×{(A/W1)2+(A/W2)2}1/2 ・・・(11)
そして、本発明を適用した記録再生装置30において、サーボ制御回路34は、上記式(11)に基づいて光透過層4の厚さtを求める。これにより、上記記録再生装置30において、サーボ制御回路34は、光ディスク2の光透過層4の厚さtを検出する厚さ検出手段として機能することとなる。
なお、このような光透過層4の厚さtの検出は、1回だけ行うようにしてもよいが、複数回繰り返し行い、それらの平均を求めるようにすることが好ましい。すなわち、光透過層4の厚さtを検出する際は、対物レンズ用2軸アクチュエータ17を所定の周波数(例えば100〜200Hz程度)にて繰り返し前後に移動させて、繰り返し光透過層4の厚さtを求め、それらの平均を求めるようにすることが好ましい。これにより、光透過層4の厚さtの検出をより精度良く行うことができる。
そして、以上のように光透過層4の厚さtを検出したサーボ制御回路34は、コリメータレンズ用アクチュエータ14によってコリメータレンズ13を移動させて光透過層4の厚み誤差に起因する球面収差を最小とするように、光学ヘッド1に制御信号を送出する。そして、光学ヘッド1は、この制御信号に基づいて、光透過層4の厚み誤差に起因する球面収差が最小となるように、コリメータレンズ用アクチュエータ14によってコリメータレンズ13を移動させる。そして、記録再生装置30は、以上のように光透過層3の厚み誤差に起因する球面収差を補正した上で、従来の記録再生装置と同様に記録再生動作を行う。
以上のように、本発明を適用した記録再生装置30では、記録再生を行う前に、光透過層4の厚さtを測定し、その厚み誤差に起因する球面収差を補正するようにしている。したがって、光ディスク2の光透過層4に厚み誤差があったとしても、球面収差の発生が抑えられ、良好な状態で記録再生を行うことができる。
<光学ヘッドの他の構成例>
本発明を適用した光学ヘッドは、光透過層の厚さに応じて、所定の屈折力を有する光学素子を、球面収差を打ち消すように移動させるようになされていれば良く、図1に示した構成に限定されるものではない。以下、本発明を適用した光学ヘッドの他の構成例を、図9乃至図11を参照して説明する。
図9に示す光学ヘッド100は、相変化型の光ディスク101に対して記録再生を行う際に使用される光学ヘッドである。この光学ヘッド100によって記録再生がなされる光ディスク101は、基板102の上に、相変化によって情報信号を記録する記録層が形成されるとともに、この記録層上に、光透過層103が形成されてなる。そして、この光ディスク101は、光透過層103の側から光を入射させて、記録再生を行うようになっている。
この光学ヘッド100は、光ディスク101の光透過層103の厚みを検出する第1の光学系104と、光ディスク101に情報の記録再生を行う第2の光学系105とを備えている。そして、第2の光学系105は、光ディスク101に情報の記録再生を行う際に、第1の光学系104で検出された光ディスク101の光透過層103の厚みに基づいて、光ディスク101の光透過層103の厚み誤差に起因する球面収差を補正する。
第1の光学系104は、光源106と、偏光ビームスプリッタ107と、コリメータレンズ108と、対物レンズ109と、光検出器110とを備えている。
光源106は、光ディスク101に向かって光を出射する。この光源106には、波長が635nm〜650nm程度の短波長レーザを発する半導体レーザが用いられる。光源106から出射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ107で反射され、コリメータレンズ108に入射する。
コリメータレンズ108に入射したレーザ光は、当該コリメータレンズ108によって平行光とされる。このコリメータレンズ108は、例えば、2枚の球面レンズ108a,108bが貼り合わされてなる。そして、コリメータレンズ108で平行光とされたレーザ光は、対物レンズ109に入射する。
対物レンズ109に入射したレーザ光は、当該対物レンズ109によって集光され、光透過層103を介して光ディスク101の記録層上に入射する。また、この対物レンズ109は、2軸アクチュエータ111に搭載されており、光軸方向及び光軸に垂直な方向に沿って移動可能となされている。
上述のように対物レンズ109によって集光され光ディスク101の記録層に入射したレーザ光は、記録層で反射されて戻り光となる。この戻り光は、元の光路を辿って対物レンズ109を透過した後、コリメータレンズ108によって収束光とされる。そして、偏光ビームスプリッタ107を透過して光検出器110に入射し、この光検出器110によって検出される。
このような第1の光学系104では、上述したように、光ディスク101の光透過層103の表面及び記録層におけるフォーカスエラー信号から、光ディスク101の光透過層103の厚さを検出する。
また、第2の光学系105は、光源112と、シリンドリカルレンズ113と、偏光ビームスプリッタ114と、コリメータレンズ115と、回折格子116と、立ち上げミラー117と、1/4波長板118と、2群対物レンズ119と、光検出器120とを備える。
光源112は、光ディスク101に向かって光を出射する。この光源112には、波長が400nm〜650nm程度の短波長レーザを発する半導体レーザが用いられる。光源112から出射されたレーザ光は、シリンドリカルレンズ113に入射する。
シリンドリカルレンズ113に入射したレーザ光は、当該シリンドリカルレンズ113によってビーム整形される。そして、シリンドリカルレンズ113によってビーム整形されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ114を透過してコリメータレンズ115に入射する。
コリメータレンズ115に入射したレーザ光は、光ディスク101の光透過層103の厚さが規定値通りの場合には、当該コリメータレンズ115によって平行光とされる。なお、このコリメータレンズ115は、例えば、2枚の球面レンズ115a,115bが貼り合わされてなる。また、このコリメータレンズ115は、コリメータレンズ用アクチュエータ121に搭載されており、このコリメータレンズ用アクチュエータ121によって、入射レーザ光の光軸に沿って前後に移動可能とされている。
そして、このコリメータレンズ115は、光ディスク101の光透過層103の厚さが規定値から外れている場合には、当該光透過層103の厚み誤差に起因する球面収差を補正するように、コリメータレンズ用アクチュエータ121によって移動操作される。すなわち、光ディスク101の光透過層103の厚さが規定値から外れている場合、レーザ光は、光透過層103の厚み誤差に起因する球面収差を補正するように、コリメータレンズ115によって発散光或いは収束光とされる。そして、コリメータレンズ115から出射したレーザ光は、回折格子116に入射する。
回折格子116に入射したレーザ光は、当該回折格子116によって回折されて3ビームとされる。この回折格子116は、いわゆる3スポット法によるトラッキングサーボを可能とするために、レーザ光を少なくとも3つに分割するためのものである。そして、回折格子116から出射したレーザ光は、立ち上げミラー117によってその進行方向を折り曲げられて1/4波長板118に入射する。
1/4波長板118に入射したレーザ光は、当該1/4波長板118によって直線偏光から円偏光とされる。そして、1/4波長板118から出射したレーザ光は、2群対物レンズ119に入射する。
2群対物レンズ119に入射したレーザ光は、当該2群対物レンズ119によって集光され、光透過層103を介して光ディスク101の記録層上に入射する。なお、この2群対物レンズ119は、例えば、2枚のレンズ119a,119bからなる。また、この2群対物レンズ119は、2軸アクチュエータ111に搭載されており、光軸方向及び光軸に垂直な方向に沿って移動可能となされている。
上述のように2群対物レンズ119によって集光され光ディスク101の記録層に入射した入射レーザ光は、記録層で反射されて戻り光となる。この戻り光は、元の光路を辿って2群対物レンズ119を透過した後、コリメータレンズ115によって収束光とされた後、偏光ビームスプリッタ114で反射して光検出器120に入射し、この光検出器120によって検出される。
また、この第2の光学系105は、図9に示すように、偏光ビームスプリッタ114により反射されたレーザ光を集光する集光レンズ122と、この集光レンズ122により集光されたレーザ光を受光して、その受光量に基づいて、光源112から出射されるレーザ光の出力を自動調整する出力調整用光検出器123とを備えている。
そして、この光学ヘッド100では、第1の光学系104の対物レンズ109と、第2の光学系105の2群対物レンズ119とが、2軸アクチュエータ111に搭載されて、2軸方向に駆動変位することにより、光ディスク101に対するトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。
図10及び図11に、2軸アクチュエータ111の一構成例を示す。この2軸アクチュエータ111は、対物レンズ109と2群対物レンズ119とが取り付けられるボビン130と、このボビン130を互いに直交する2軸方向に移動させる電磁駆動機構131とを備えている。
ボビン130は、図10及び図11に示すように、天板を有する略円筒状に形成され、中心部を支軸132によって支持されている。そして、ボビン130は、支軸132の軸線方向に摺動可能であって支軸132の軸回り方向に回動可能に支持されている。このボビン130には、対物レンズ109と2群対物レンズ119とが、支軸132を挟んで点対称な位置に配され、光軸が互いに平行となるように設けられている。
ボビン130を駆動変位させる電磁駆動機構131は、図10及び図11に示すように、フォーカシング用マグネット133及びフォーカシング用ヨーク134,135と、トラッキング用マグネット136及びトラッキング用ヨーク137,138とを有する磁気回路と、フォーカシング用コイル139及びトラッキング用コイル140とを備えて構成されている。
また、この電磁駆動機構131のトラッキング用コイル140の内方には、図11に示すように、ボビン130の中立位置を位置決めするための金属片141が固定されて設けられている。ボビン130は、金属片141が単面2極分割されたトラッキング用マグネット136の2極の境界に引きつけられることによって、第2の方向であるトラッキング方向の中立位置に位置決めされるとともに、第1の方向であるフォーカス方向の中立位置に位置決めされる。また、ボビン130は、支軸132が立設された支持基台142上に、弾性を有するゴム等によって構成された中立点支持機構によって中立位置に保持される。
このように中立位置に保持されたボビン130は、電磁駆動機構131によって駆動変位されることによって支軸132の軸線方向に摺動され、さらに支軸132の軸回り方向に回動される。
すなわち、この電磁駆動機構131は、フォーカシング用コイル139にフレキシブル基板143を介してフォーカスエラー信号が供給されることにより、ボビン130を支軸132の軸線方向に駆動変位させる。そして、ボビン130が支軸132の軸線方向に摺動変位されることによって、2群対物レンズ119及び2群対物レンズ119の光ディスク101に対するフォーカス制御が行われる。
また、この電磁駆動機構131は、トラッキング用コイル140にフレキシブル基板143を介してトラッキングエラー信号が供給されることにより、ボビン130を支軸132の軸回り方向に回動変位させる。そして、ボビン130が支軸132の軸回り方向に回動変位されることによって、対物レンズ109及び2群対物レンズ119の光ディスク101に対するトラッキング制御が行われる。
なお、この光学ヘッド100では、フォーカスサーボ方法として、いわゆる非点収差法が用いられており、トラッキングサーボ方法として、いわゆる3スポット法が用いられている。非点収差法は、光ディスクからの反射レーザ光を例えばシリンドリカルレンズを介して検出領域が4分割された光検出器によって検出し、各検出領域から得られる検出出力の和及び/又は差を求めることによって、レーザ光の記録層に対する合焦ずれ成分であるフォーカスエラー信号を得るようにしたものである。
また、3スポット法は、光源から出射される1本のレーザ光を回折格子等を用いて、1本の主レーザ光(0次光)と2本の副レーザ光(±1次光)に分割し、記録トラックの中心に照射される主レーザ光の前後に2本の副レーザ光を照射する。主レーザ光の前後に照射された副レーザ光の反射レーザ光を、2つの受光部を有する光検出器により検出し、各受光部から得られる検出出力の差を求めることによって、主レーザ光の記録トラックに対するずれ成分であるトラッキングエラー信号を得るようにしたものである。
このような光学ヘッド100を用いて、光ディスク101からの再生を行う場合には、まず、第1の光学系104で、光ディスク101の光透過層103の表面及び記録層におけるフォーカスエラー信号から、光ディスク101の光透過層103の厚さを検出する。すなわち、この第1の光学系104では、上述したように、対物レンズ109の焦点位置が光透過層103の表面から記録層に至るまで、2軸アクチュエータ111によって対物レンズ109を光軸に沿って前後に動かし、このときの対物レンズ109の移動速度と、フォーカスエラー信号に現れる第1のS字曲線及び第2のS字曲線とに基づいて、上述した式(11)から光透過層103の厚さを検出する。
そして、第1の光学系104で検出された光ディスク101の光透過層103の厚みは、図示しない制御回路によって演算されて予め決められたテーブルや関数に従って判定される。光透過層103の厚みを判定した制御回路は、光ディスク101の厚み誤差に起因する球面収差を補正するための動作を決定し、その動作を指示する制御信号を第2の光学系105に送出する。そして、第2の光学系105では、この制御信号に基づいて、光透過層103の厚み誤差に起因する球面収差が最小となるように、コリメータレンズ用アクチュエータ121によってコリメータレンズ115を関数的に若しくは段階的に移動させる。
そして、第2の光学系105では、以上のように光透過層103の厚み誤差に起因する球面収差を補正した上で、光ディスク101に対して記録再生動作を行う。このように、コリメータレンズ用アクチュエータ121によってコリメータレンズ115を最適位置へ動かすことにより、光透過層103の厚みの誤差によって発生する球面収差を補正し、良好な信号を得ることができる。
また、第2の光学系105において光ディスク101を再生する場合、第1の光学系104は、第2の光学系105におけるワーキングディスタンス、すなわち、光ディスク101と2群対物レンズ119との間隔を検出するための光学系として機能する。
第2の光学系105では、2群対物レンズ119を光軸方向に沿って動かすことによりフォーカス引き込み動作を行うが、2群対物レンズ119が高開口数であるため、フォーカス引き込み範囲が狭く、光ディスク101と2群対物レンズ119との間の作動距離が例えば0.5mm以下とされている。そのため、光ディスク101に面揺れが生じたり、光ディスク101の高さが基準よりもずれていたりすると、フォーカス引き込み動作時に、光ディスク101と2群対物レンズ119とが衝突する恐れがある。
そのため、第2の光学系105でフォーカス引き込み動作を行う際に、第1の光学系104を補助的に用いることで、光ディスク101と2群対物レンズ119との衝突を防止する。
すなわち、第2の光学系105でフォーカス引き込み動作を行う際、第1の光学系104も、光源106から出射したレーザ光を光ディスク101に照射し、その反射光を光検出器110によって受光することで、フォーカスエラー信号を検出する。このフォーカスエラー信号に基づいて、第1の光学系104の対物レンズ109と共通のボビン130に搭載されている2群対物レンズ119のおよその位置を検出する。そして、上記光学ヘッド100では、このように第1の光学系104で検出した2群対物レンズ119の位置情報に基づいて、2軸アクチュエータ111を動作させることで、光ディスク101と2群対物レンズ119との衝突を防止する。
なお、第1の光学系104のフォーカス引き込み範囲を2群対物レンズ119が大きく外れてしまったときには、第1の光学系104でもフォーカスエラー信号が得られなくなってしまう。その場合は、例えば、第1の光学系104により光ディスク101からの反射光全体を検出し、そのレベルに基づいて2群対物レンズ119を第1の光学系104のフォーカス引き込み範囲に引き入れる。
このように、この光学ヘッド100では、第2の光学系105で光ディスク101の再生を行う際に、第1の光学系104をフォーカス引き込みの補助光学系として使用することで、光ディスク101の面揺れや高さずれ等があっても、光ディスク101に2群対物レンズ119が衝突することなく、確実にフォーカス引き込みを行うことができる。
なお、第1の光学系104におけるフォーカス引き込みの補助機能及びワーキングディスタンスの検出方法は、非点収差法以外の方法、例えば差動同心円法等によるものであってもよい。
<コリメータレンズの移動手段の構成例>
上記光学ヘッド1では、光ディスク2の光透過層4の厚さに応じて球面収差を打ち消すようにコリメータレンズ13を移動させる移動手段として、コリメータレンズ用アクチュエータ14を用いていた。また、上記光学ヘッド100では、光ディスク101の光透過層103の厚さに応じて球面収差を打ち消すようにコリメータレンズ115を移動させる移動手段として、コリメータレンズ用アクチュエータ121を用いていた。以下、このような移動手段(以下、レンズ駆動機構と称する。)の具体的な構成例を図12及び図13を参照して説明する。
図12及び図13に示すレンズ駆動機構160は、情報記録媒体の光透過層の厚さに応じて球面収差を打ち消すようにコリメータレンズを移動させるためのものであり、光軸に対して平行に配置された基準軸161と、光軸に対して平行に配置された副基準軸162と、これらの基準軸161,162によって支持されたコリメータレンズホルダ163とを備えている。
基準軸161及び副基準軸162は、光学ヘッドの固定部に取り付けられて固定される。また、コリメータレンズホルダ163は、これらの基準軸161,162に対して光軸方向に摺動移動可能に支持される。そして、球面収差を打ち消すように移動操作されるコリメータレンズは、このコリメータレンズホルダ163に搭載される。すなわち、このレンズ駆動機構160は、コリメータレンズホルダ163を基準軸161及び副基準軸162に沿って前後に動かすことで、コリメータレンズホルダ163に搭載されたコリメータレンズを光軸方向に対して平行に前後に動かす。
また、このレンズ駆動機構160は、コリメータレンズホルダ163を基準軸161及び副基準軸162に沿って前後に動かす駆動機構として、コリメータレンズホルダ163を動かす駆動源となるDCモータ164と、DCモータ164の回転を光軸方向に沿った平行移動に変換してコリメータレンズホルダ163に伝達するギヤ機構165とを備えている。そして、DCモータ164の回転をギヤ機構165によって光軸方向に沿った平行移動へと変換してコリメータレンズホルダ163を動かすことで、情報記録媒体の光透過層の厚さに応じて、球面収差を打ち消すようにコリメータレンズを移動させる。
上記ギヤ機構165は、コリメータレンズホルダ163に取り付けられたラック166と、DCモータ164の回転力を伝達するためにDCモータ164の回転軸に取り付けられた第1のギヤ167と、DCモータ164の回転を光軸方向に沿った平行移動に変換するための第2のギヤ168と、第2のギヤ168によって光軸方向に沿った平行移動に変換された駆動力をラック166に伝達するための第3のギヤ169とを備える。
なお、このレンズ駆動機構160は、光学ヘッドの固定部に取り付けられる台座170を備えており、DCモータ164、第2のギヤ168及び第3のギヤ169は、台座170に取り付けられている。また、第3のギヤ169から駆動力が伝達されるラック166は、ラック166と第3のギヤ169との間のバックラッシを除去するために、2枚のラック166a,166bが重ね合わされた2枚構造となっており、それらのラック166a,166bがバネ171により連結されている。
このレンズ駆動機構160で、コリメータレンズを移動操作する際は、DCモータ164を回転させる。これにより、第1のギヤ167が回転する。この第1のギヤ167の回転は、第2のギヤ168に伝達され、光軸方向に沿った平行移動に変換される。第2のギヤ168によって光軸方向に沿った平行移動に変換された駆動力は、第3のギヤ169を介してラック166に伝達される。
ここで、ラック166はコリメータレンズホルダ163に取り付けられており、コリメータレンズホルダ163は基準軸161,162に対して光軸方向に摺動移動可能に支持されている。したがって、第3のギヤ169を介してラック166に伝達された駆動力により、コリメータレンズホルダ163は、光軸方向に移動することとなる。これにより、コリメータレンズホルダ163に搭載されたコリメータレンズが、光軸方向に移動操作されることとなる。
以上のようなレンズ駆動機構160では、コリメータレンズの移動を精度良く行うことができる。したがって、このようなレンズ駆動機構160を用いることで、光透過層の厚さのばらつきに起因する球面収差を非常に良く打ち消すことが可能となる。
例えば、上記レンズ駆動機構160において、DCモータ164としてパルス駆動型ステッピングモータを用い、1パルスでの回転でコリメータレンズの移動距離が13.8μmとなるようにしたとする。これを後述する実施例1の光学系に採用した場合、DCモータの1パルスでの回転による球面収差補正量は、光透過層の厚さムラに換算すると約0.2μm相当となる。これは、光透過層の厚さのばらつきに起因する球面収差を補正するには十分な値である。
しかも、以上のようなレンズ駆動機構160は、比較的に簡易な構成なので、小型化しやすく、しかも製造コストで少なくてすむという利点もある。
以下、本発明を適用した光学ヘッドの光学系の要部について、その具体的な実施例を説明する。
なお、以下の説明では、コリメータレンズを含む往路光学系の具体例を挙げ、当該コリメータレンズの移動によって成される球面収差の補正について説明するが、コリメータレンズの移動距離やその精度は、通常の設計においては、対物レンズの設計によらず、対物レンズの光出射側の開口数NAと、光ディスクの記録層上に形成された光透過層の厚さとにだけ依存する。したがって、以下の説明において、対物レンズについては、光出射側の開口数NAについてだけ具体的な数値を挙げ、その他のレンズデータは省略する。
また、以下の説明では、コリメータレンズとして球面貼り合わせレンズを使用した例(実施例1)と、コリメータレンズとして表面位相型のホログラムレンズを使用した例(実施例2)とを挙げるが、本発明において、コリメータレンズには任意のものが使用可能である。すなわち、コリメータレンズとして、例えば、非球面レンズやフレネルレンズ等も使用可能であるし、或いは、いわゆる体積位相型のホログラムレンズ等も使用可能である。
<実施例1>
本実施例の光学系を図14に示す。この光学系は、基板50aの表面に記録層が形成され当該記録層上に光透過層50bが形成されてなる光ディスク50に対して記録再生を行う際に使用される光学ヘッドの光学系の要部であり、光源と対物レンズ51との間に、回折格子52と、偏光ビームスプリッタ53と、コリメータレンズ54と、開口絞り55とが配されてなる。ここで、コリメータレンズ54は、色消しのために、球面レンズからなる第1のレンズ54aと、球面レンズからなる第2のレンズ54bとを貼り合わせた球面貼り合わせレンズであり、その光入射側の開口数NAは0.14とされている。
この光学系のレンズデータを表1に示す。なお、表1では、この光学系のレンズデータについて、物体面をOBJ、回折格子52の光入射面をs1、回折格子52の光出射面をs2、偏光ビームスプリッタ53の光入射面をs3、偏光ビームスプリッタ53の光出射面をs4、コリメータレンズ54を構成する第1のレンズ54aの光入射面をs5、コリメータレンズ54を構成する第1のレンズ54aと第2のレンズ54bとの貼り合わせ面をs6、コリメータレンズ54を構成する第2のレンズ54bの光出射面をs7として示している。また、s8はダミー面であり、STOは、対物レンズ51に対応した開口絞り55である。
ここで、光ディスク50の光透過層50bの厚さは0.1mm、対物レンズ51の開口数NAは0.85、使用する光の波長λは635nmとする。そして、この光学系の物像間の倍率は0.1891である。
以上のような光学系について、光透過層50bの厚み誤差と、波面収差との関係を図15に示す。なお、図15において、波面収差については、射出瞳面上での標準偏差WFErmsを、使用する光の波長をλとして示している。また、図15において、点線A1は、コリメータレンズ54を動かしていない場合(すなわち、球面収差の補正を行っていない場合)について、光透過層50bの厚み誤差と波面収差との関係を示している。また、図15において、実線A2は、点線A3に示すように光透過層50bの厚み誤差に応じてコリメータレンズ54を動かした場合(すなわち、球面収差の補正を行った場合)について、光透過層50bの厚み誤差と波面収差との関係を示している。
図15に示すように、光ディスク50の光透過層50bに厚み誤差がない場合、この光学系において、波面収差は約0.003λである。そして、図15から分かるように、コリメータレンズ54を動かさない場合には、光透過層50bの厚み誤差があると波面収差が非常に大きくなってしまうが、光透過層50bの厚み誤差に応じてコリメータレンズ54を動かすことにより、光透過層50bの厚み誤差によって発生する波面収差を大幅に抑制することができる。
具体的には、図15から分かるように、光透過層50bの厚さにばらつきがあったとしても、下記式(12)に示すようにコリメータレンズ54を移動させることで、波面収差を抑制することができ、これにより、例えば、光透過層50bの厚み誤差が±10μm程度の範囲内であれば、波面収差を0.01λ以下に抑えることが可能となる。
ΔL≒21Δt ・・・(12)
なお、上記式(12)において、ΔLは、コリメータレンズ43の移動量であり、光ディスク50から遠ざかる方向を正としている。また、Δtは、光ディスク50の光透過層50bの厚み誤差である。
<実施例2>
本実施例の光学系を図16に示す。この光学系は、基板60aの表面に記録層が形成され当該記録層上に光透過層60bが形成されてなる光ディスク60に対して記録再生を行う際に使用される光学ヘッドの光学系の要部であり、光源と対物レンズ61との間に、ホログラムレンズからなるコリメータレンズ62と、開口絞り63とが配されてなる。
この光学系のレンズデータを表2に示す。なお、表2では、この光学系のレンズデータについて、物体面をOBJ、コリメータレンズ62の光入射面をs1、コリメータレンズ62の光出射面をs2として示している。また、s3はダミー面であり、STOは、対物レンズ61に対応した開口絞り63である。
ここで、光ディスク60の光透過層60bの厚さは0.1mm、対物レンズ61の開口数NAは0.85、使用する光の波長λは635nmとする。そして、この光学系の物像間の倍率は0.1891である。
なお、上記コリメータレンズ62は、入射光に位相差を生じさせて回折させる、いわゆる表面位相型のホログラムレンズであり、その光入射側の開口数NAは0.16とされている。
このコリメータレンズ62は、透過光に位相差が生じるように、レンズ表面に機械加工が施されてなる。すなわち、このコリメータレンズ62は、レンズ表面に機械加工が施されることにより、透過光に位相差が生じるようになされており、これにより、光の回折を生じさせる。そして、本実施例の光学系では、このコリメータレンズ62によって回折されてなる1次回折光が、開口絞り63を介して対物レンズ61に入射するようになされている。
なお、このコリメータレンズ62は、表面形状がブレーズド形状(すなわち鋸の歯のような形状)とされていることが好ましい。表面形状をブレーズド形状とした場合には、入射光のうちの100%近くが1次回折光となるので、高い光利用効率が得られる。
そして、このコリメータレンズ62の特性は、下記式(13)に示す位相差関数で表される。
m=C1R2+C2R4+C3R6+C4R8 ・・・(13)
上記式(13)は、表面位相型のホログラムレンズであるコリメータレンズ62の製造時に2つの点光源が無限遠にあるとしたときの各面での位相ずれを、基板上の極座標多項式で表したものであり、mは回折基準波長での光路差を示している。また、本実施例で用いるコリメータレンズ62は、位相差関数が軸対象となるホログラムレンズであり、上記式(13)において、Rは光軸からの距離を示している。そして、表2におけるC1,C2,C3,C4は、このコリメータレンズ62について、回折基準波長を635nmとしたときの位相差関数の各係数を示している。
以上のような光学系について、光透過層60bの厚み誤差と、波面収差との関係を図17に示す。なお、図17においても、図16と同様に、波面収差については、射出瞳面上での標準偏差WFErmsを、使用する光の波長をλとして示している。また、図17において、実線A4は、点線A5に示すように光透過層60bの厚み誤差に応じてコリメータレンズ62を動かした場合(すなわち、球面収差の補正を行った場合)について、光透過層60bの厚み誤差と波面収差との関係を示している。
図17に示すように、光ディスク60の光透過層60bに厚み誤差がない場合、この光学系において、波面収差は約0.003λである。そして、図17から分かるように、光透過層60bの厚み誤差に応じてコリメータレンズ62を動かすことにより、光透過層60bの厚み誤差によって発生する波面収差が大幅に抑制される。具体的には、図17から分かるように、光透過層60bの厚さにばらつきがあったとしても、下記式(14)に示すようにコリメータレンズ62を移動させることで、波面収差を抑制することができる。
ΔL≒14Δt ・・・(14)
なお、上記式(14)において、ΔLは、コリメータレンズ62の移動量であり、光ディスク60から遠ざかる方向を正としている。また、Δtは、光ディスク60の光透過層60bの厚み誤差である。
ところで、実施例1及び実施例2のようにコリメータレンズを移動させると、レンズ間に偏心が生じたり、レンズ面に傾きが生じたりする恐れがある。このような偏心や傾きはコマ収差や非点収差の原因となり、これらのコマ収差や非点収差があまりに大きくなると、システムが破綻してしまう。しかし、実施例1及び実施例2の光学系では、コリメータレンズの光入射側の開口数NAが小さいので、レンズ間の偏心やレンズ面の傾きの影響を受け難い。具体的には、これらの光学系では、30μm程度の偏心や0.1°程度の傾きまでならば、コマ収差や非点収差の発生量は十分に少なく、実用上問題はない。
以上の説明から明らかなように、本発明を適用した記録及び/又は再生装置によれば、対物レンズの開口数NAを大きくしても、光透過層の厚み誤差に起因する球面収差を低く抑えることが可能となる。したがって、本発明を適用した記録及び/又は再生装置によれば、光透過層の厚み誤差の公差を大きく許容したまま、情報記録媒体の製造原価を上げることなく、情報記録媒体の高記録密度化及び大容量化を図ることができる。
また、本発明を適用した記録及び/又は再生装置は、情報信号が記録される記録層上に光透過層を有する情報記録媒体に対して記録及び/又は再生を行う記録及び/又は再生装置であって、上記光透過層の厚さを検出する厚さ検出手段と、上記情報記録媒体に対して上記光透過層を介して上記記録層に光を照射するとともにその反射光を検出する光学ヘッドとを備える。そして、上記光学ヘッドが、光を出射する光源と、上記光源からの光を上記光透過層を介して上記記録層上に集光させる対物レンズと、上記光源と上記対物レンズとの間に配された所定の屈折力を有する光学素子と、上記厚さ検出手段によって検出された上記光透過層の厚さに応じて球面収差を打ち消すように上記光学素子を移動させる移動手段とを備えていることを特徴としている。
このような記録及び/又は再生装置では、光源と対物レンズとの間に配された所定の屈折力を有する光学素子を、光透過層の厚さに応じて球面収差を打ち消すように、移動手段により移動するようにしている。したがって、光透過層に厚み誤差があったとしても、当該厚み誤差に起因する球面収差の発生を抑えることができる。
また、本発明を適用した記録及び/又は再生装置を構成する光学ヘッドは、情報信号が記録される記録層上に光透過層を有する情報記録媒体用の光学ヘッドである。そして、光を出射する光源と、上記光源からの光を上記光透過層を介して上記記録層上に集光させる対物レンズと、上記光源と上記対物レンズとの間に配された所定の屈折力を有する光学素子と、厚さ検出手段によって検出された上記光透過層の厚さに応じて球面収差を打ち消すように上記光学素子を移動させる移動手段とを備えることを特徴とする。
なお、上記光学ヘッドにおいて、上記光学素子としては、例えば、コリメータレンズが好適である。このコリメータレンズは、上記光透過層の厚さが規定値通りの場合には、上記光源から出射され上記対物レンズに入射する光を略平行光とするものである。
また、上記光学ヘッドにおいて、対物レンズの開口数NAを0.65以上とする場合、上記情報記録媒体としては、光透過層の膜厚が0.47mm以下のものが好適である。
また、上記光学ヘッドにおいて、光学素子を移動させる移動手段としては、光源から出射し光学素子に入射する光の光軸に対して略平行に配された基準軸と、光学素子を支持するととともに基準軸に沿って平行移動可能とされた光学素子支持手段と、モータと、モータの回転を光軸方向に沿った平行移動に変換して光学素子支持手段に伝達するギヤ機構とを備えたものが好適である。この場合、移動手段は、モータの回転をギヤ機構によって光軸方向に沿った平行移動へと変換して光学素子支持手段を動かすことで、光透過層の厚さに応じて、球面収差を打ち消すように光学素子を移動させる。
このような光学ヘッドでは、光源と対物レンズとの間に配された所定の屈折力を有する光学素子を、光透過層の厚さに応じて球面収差を打ち消すように、移動手段により移動するようにしている。したがって、光透過層に厚み誤差があったとしても、当該厚み誤差に起因する球面収差の発生を抑えることができる。
また、本発明を適用した記録及び/又は再生装置、又は上記光学ヘッドを用いた記録及び/又は再生方法は、情報信号が記録される記録層上に光透過層を有する情報記録媒体に対して記録及び/又は再生を行う方法である。そして、上記情報記録媒体に対して記録及び/又は再生を行う際に、上記光透過層の厚さを検出する厚さ検出手段と、光を出射する光源と、上記光源からの光を上記光透過層を介して上記記録層上に集光させる対物レンズと、上記光源と上記対物レンズとの間に配された所定の屈折力を有する光学素子とを備えた光学ヘッドとを使用するとともに、上記厚さ検出手段により上記光透過層の厚さを検出し、その検出結果に応じて、球面収差を打ち消すように上記光学素子を移動させることを特徴としている。
なお、上記記録及び/又は再生方法において、上記光学素子としては、例えば、コリメータレンズを使用する。この場合、上記光透過層の厚さが規定値通りならば、上記光源から出射された光を上記コリメータレンズによって略平行光として、上記対物レンズに入射させるようにする。
また、上記記録及び/又は再生方法において、上記対物レンズの開口数NAを0.65以上とする場合、上記情報記録媒体としては、光透過層の膜厚が0.47mm以下のものが好適である。
このような記録及び/又は再生方法では、光源と対物レンズとの間に配された所定の屈折力を有する光学素子を、光透過層の厚さに応じて球面収差を打ち消すように移動するようにしている。したがって、光透過層に厚み誤差があったとしても、当該厚み誤差に起因する球面収差の発生を抑えることができる。
また、本発明を適用した記録及び/又は再生装置で用いられる厚み検出方法は、情報信号が記録される記録層上に光透過層を有する情報記録媒体の上記光透過層の厚みを検出する厚み検出方法である。そして、この厚み検出方法では、光源から光を出射し、上記光源から出射された光を、対物レンズによって上記情報記録媒体上に集光させ、上記対物レンズによって上記情報記録媒体上に集光され当該情報記録媒体で反射された戻り光を、光検出器によって受光してフォーカスエラー信号を検出する。そして、このフォーカスエラー信号のうち、上記記録層で反射された戻り光による信号と、上記光透過層の表面で反射された戻り光による信号とから、上記光透過層の厚さを検出する。
以上のような厚み検出方法では、フォーカスエラー信号から光透過層の厚さを検出しているので、特別な装置を必要とすることなく簡便に光透過層の厚さを検出することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、対物レンズの開口数NAを大きくしても、光透過層の厚み誤差に起因する球面収差を低く抑えることが可能となる。したがって、本発明によれば、光透過層の厚み誤差の公差を大きく許容したまま、情報記録媒体の製造原価を上げることなく、情報記録媒体の高記録密度化及び大容量化を図ることができる。